磁気テープ再生装置
【課題】斜め記録された磁気テープをリニア方式で再生する。
【解決手段】長さLg、幅Wgの複数の磁気ヘッドHrをテープ幅方向にピッチPgで配置してなり、テープ長さ方向と平行に磁気ヘッドHrを走行させる磁気テープ再生装置であって、磁気ヘッドHrがデータトラックTr上を再生距離Lr走行、再生すると、補正距離Lc移行した位置から後続の磁気ヘッドHrが再生して、各磁気ヘッドHrから検出された再生信号を接続して再生信号の再構成を行い、Wg,Pg,Lr,Lcは、磁気テープMTのデータトラック幅Wt、データトラック傾斜角度θt、アジマス角度θa、最短ビット長Lb、および磁気ヘッド長Lgにより規定されることを特徴とする。
【解決手段】長さLg、幅Wgの複数の磁気ヘッドHrをテープ幅方向にピッチPgで配置してなり、テープ長さ方向と平行に磁気ヘッドHrを走行させる磁気テープ再生装置であって、磁気ヘッドHrがデータトラックTr上を再生距離Lr走行、再生すると、補正距離Lc移行した位置から後続の磁気ヘッドHrが再生して、各磁気ヘッドHrから検出された再生信号を接続して再生信号の再構成を行い、Wg,Pg,Lr,Lcは、磁気テープMTのデータトラック幅Wt、データトラック傾斜角度θt、アジマス角度θa、最短ビット長Lb、および磁気ヘッド長Lgにより規定されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープに斜め記録されたデータを高速で読み取ることを可能とする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、映像記録用の媒体は磁気テープであったが、近年は光ディスク等の大容量、長寿命の媒体に移行しつつある。それに伴い、磁気テープを媒体とするテープ式映像記録装置(VTR:Video Tape Recorder)は、将来的には製造されなくなり、その保守サービスもなくなるため、磁気テープで保存された映像データを新しい映像記録用の媒体へコピー(ダビング)する必要がある。
【0003】
そのため、磁気テープに保有されている膨大な量の映像データのコピー作業の効率化のための、高速のデータ読み取り技術が必要とされる。
【0004】
磁気テープの再生速度の高速化の方法としては、磁気テープに対する磁気ヘッドの走行速度を速くすることが挙げられる。ここで、VTRは、磁気テープに、テープ送り方向(テープ長さ方向)に対して所定の角度で傾斜したデータトラックを記録するヘリカルスキャン方式を採用している。図10に示すように、ヘリカルスキャン方式の記録/再生装置において、磁気テープMTは、磁気ヘッドHdを搭載した回転ドラム(シリンダ)B1に斜めに巻き付けられ、磁気テープMTの送り方向に対して、回転ドラムB1の回転軸が傾斜している。これにより、磁気ヘッドHdの軌跡すなわちデータトラックTrはテープ長さ方向に対して傾斜して記録される(図1参照)。そして、同じ構成により、磁気ヘッドHdがデータトラックTr上を走行して再生される。なお、図10において磁気ヘッドHdは1つのみ図示されるが、実際は2種類のアジマスヘッドが搭載され、さらに記録用、再生用等にそれぞれ搭載されている装置が多い。
【0005】
このヘリカルスキャン方式において、上記のように磁気テープに対する磁気ヘッドの走行速度を速くする方法として、テープ送り速度と回転ドラムの回転速度とをそれぞれ記録時の速度に対して同じ倍率で変化させることで、磁気ヘッドをデータトラックに沿って高速走行させることが考えられる。しかしながら、ヘリカルスキャン方式の記録/再生装置は、通常(1倍速)状態で、テープ送り速度は数10mm/s、回転ドラムの回転速度は数10rpsと、テープ送り速度に対して回転ドラムの回転速度が高く、例えば2倍速再生であっても、回転ドラムの高速回転に伴う振動や、磁気ヘッドと磁気テープとの接触状態を良好に維持できないこと等により、画質や音質が悪化する等の問題を生じ、技術的な課題が多く困難である。
【0006】
一方、サーバのバックアップ等に適用される、テープ送り方向に対して平行なデータトラックに記録されるリニア方式の磁気テープ記録/再生装置は、図11に示すように、磁気ヘッドHdをテープ送り方向に対して固定した状態で磁気テープMTを送ることにより走行させるという単純な機構系であるため、そのテープ送り速度は数m/sとヘリカルスキャン方式と比較して高速である。また、リニア方式では、磁気ヘッドHdを搭載したヘッド部B2をテープ幅方向に移動させてテープ送りを繰り返すことにより、全ての記録領域を走行させているが、近年は、磁気ヘッドの狭ピッチ化および多ヘッド搭載によりテープ送り回数を減らすことが可能となっている。例えば特許文献1には、狭ピッチのデータトラックに複数の磁気ヘッドで再生する技術が開示されている。
【0007】
ヘリカルスキャン方式における高速再生としては、回転ドラムに磁気ヘッドを多数搭載し、複数本のデータトラックを同時に走行させる技術や、一方の速度(テープ送り速度)をより高速化してデータトラックと非平行に磁気ヘッドを走行させる技術が開示されている。例えば特許文献2には、回転ドラムの回転速度は1倍のまま、N倍のテープ送り速度で、N倍数の磁気ヘッドがそれぞれ異なるデータトラックを跨いでデータを読み取り、読み取ったデータを合成することにより1/Nの時間で再生する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−132504号公報(段落0021〜0028)
【特許文献2】特許第3669031号公報(段落0037〜0043)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、機構系が複雑なヘリカルスキャン方式では、テープ送り速度に限界があり、さらなる高速化は困難である。また、既にヘリカルスキャン方式で磁気テープに蓄積されたデータに対して、現行のリニア方式の磁気テープ再生装置を適用することは不可能である。
【0009】
本発明は前記問題点に鑑み創案されたもので、磁気テープにヘリカルスキャン方式で記録された映像データを高速で読み取ることが可能なリニア方式の磁気テープ再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1に係る磁気テープ再生装置は、テープ送り方向に対してデータトラックが傾斜してデータが記録されている磁気テープを、前記テープ送り方向に平行に磁気ヘッドを走行させて前記データを読み出す磁気テープ再生装置であって、前記磁気ヘッドは、テープ送り方向長さを長さLg、テープ幅方向長さを幅Wgとし、前記磁気テープにおいて、前記テープ送り方向に対するデータトラック傾斜角度をθt、アジマス角度をθa、最短ビット長をLbとするとき、前記磁気ヘッドの長さLgおよび幅Wgが以下の式(1)および式(2)を満足することを特徴とする。
【0011】
【数3】
【0012】
かかる構成により、リニア方式の単純な機構系で磁気テープを再生することができる。また、磁気ヘッドの大きさを制御することにより、磁気ヘッドが隣接する記録領域へはみ出すことなく再生することが可能である。
【0013】
また、請求項2に係る磁気テープ再生装置は、請求項1に記載の磁気テープ再生装置において、前記磁気テープ再生装置は、長さLg、幅Wgの前記磁気ヘッドをテープ幅方向にピッチPgで配置して備え、前記磁気テープ再生装置は、前記磁気ヘッドの前記磁気テープに対する走行距離Lr毎に再生信号を検出する前記磁気ヘッドを切り換え、前記磁気ヘッドにより検出された再生信号に、前記磁気ヘッドを切り換えた位置に対して補正距離Lc移行した位置から前記磁気ヘッドの隣の磁気ヘッドにより検出された再生信号を接続して再構成を行い、前記磁気テープにおいて、データトラック幅をWt、前記テープ送り方向に対するデータトラック傾斜角度をθt、アジマス角度をθa、最短ビット長をLbとするとき、前記磁気ヘッドの長さLgおよび幅Wgが以下の式(3)および式(4)を満足し、前記ピッチPgが以下の式(5)を満足し、前記走行距離Lrが以下の式(6)を満足し、前記補正距離Lcが以下の式(7)を満足することを特徴とする。
【0014】
【数4】
【0015】
このように、磁気ヘッドのピッチを制限して配置することにより、すべての記録領域に1つ以上の磁気ヘッドの全体が対面する。また、規定した走行距離毎に磁気ヘッドを切り換え、さらに補正距離を加算することにより、複数の磁気ヘッドで1本のデータトラックからデータを漏れなく読み取ることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る磁気テープ再生装置によれば、磁気テープの記録方向と異なる走行方向の磁気ヘッドでデータを再生することが可能となって、ヘリカルスキャン方式で記録された磁気テープを高速でテープ送りして再生することが可能となり、コピー作業が効率化される。また、1つの磁気ヘッドで異なるアジマス角度のデータトラックを読み取ることが可能となり、さらに、磁気テープ上の小さい記録領域のデータも正確に読み取ることが可能となる。
【0017】
請求項2に係る磁気テープ再生装置によれば、すべての記録領域のデータも正確に読み取ることが可能となる。また、隣り合う複数のデータトラックを同時に読み取ることが可能となり、コピー作業が効率化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る磁気テープ再生装置を実現するための最良の形態について、図を参照して説明する。図1は、本発明に係る磁気テープ再生装置で再生される磁気テープを示す平面図であり、図2は図1の部分拡大図である。なお、後述の図5〜9も含め、左右方向をテープ長さ方向(=テープ送り方向)、上下方向をテープ幅方向とする。
【0019】
本発明に係る磁気テープ再生装置で再生する磁気テープにおいては、図1に示すように、磁気テープMTの長さ方向に対して傾斜した複数のデータトラックTrが記録される。これは、テープ送り方向はテープ長さ方向に沿っているが、磁気テープMTと摺動する磁気ヘッド(記録ヘッド)が、このテープ送り方向に対して傾斜した軸で回転するドラムの周面に備えられているからである(図10参照)。
【0020】
データトラックTrのテープ送り方向に対する傾斜角度をデータトラック角度θt(0°<θt<90°)とする。このデータトラック角度θtは、磁気テープの記録方式によって規格が異なるが、例えばD−5方式で、θt=4.9384°である。
【0021】
データトラックTrの幅(データトラックTrの長さ方向に垂直な距離)をデータトラック幅Wtとする。このデータトラック幅Wtは、近年のデータの高密度化に伴ってより狭くなっているが、例えばD−5方式で、Wt=20μmである。なお、本発明においては、データトラックTrのピッチはデータトラック幅Wtと同値とする。
【0022】
図2に示すように、隣接するデータトラックTr,Trは互いにデータの向きが異なって記録されている。これは、記録ヘッドの走行方向に対して異なる角度のギャップを有する記録ヘッドにより記録されたからであり、再生時にデータトラックTr,Tr間のクロストークを抑えるためのものである。データの向きはデータトラックTrに対してそれぞれθa0,θa1の角度で傾斜しており、これらθa0,θa1をアジマス角度という(−90°<θa0<0°,0°<θa1<90°)。アジマス角度θa0,θa1は、磁気テープの記録方式によって規格が異なるが、例えばD−5方式では、θa0=−20.038°、θa1=19.962°である。そして、|θa0|と|θa1|は同値または近似値であるため、本明細書においては、θa0,θa1を総称してアジマス角度θa(0°<|θa|<90)とする。また、本明細書においては、データトラック傾斜方向と同方向にデータが傾斜しているデータトラックTrを+アジマストラック、データトラック傾斜方向と逆方向にデータが傾斜しているデータトラックTrを−アジマストラックと称する。
【0023】
データトラックTr上に記録された領域で、最も短い領域(最小記録領域)の、データトラック長さ方向における距離(記録長)を最短ビット長Lbとする。この最短ビット長Lbは、記録周波数1周期あたりの記録ヘッドの走行距離である最短記録波長の1/2であり、データの高密度化に伴って短くなっているが、例えばD−5方式で、Lb=0.32μmである。
【0024】
次に、本発明に係る磁気テープ再生装置の磁気ヘッドについて説明する。図3は本発明に係る磁気テープ再生装置の模式図で、(a)は外観図、(b)は(a)の部分拡大図で磁気ヘッドの構成の一例を示す図、図4はマルチチャンネルヘッドのテープ送り方向に垂直な面による断面模式図である。
【0025】
図3(a)に示すように、本発明に係る磁気ヘッド(再生ヘッド)Hrは、固定されたマルチチャンネルヘッド10に、テープ幅方向に所定の間隔で複数個搭載されている。再生ヘッドHrは、狭ピッチ搭載の可能な、例えば磁気抵抗効果素子(MR素子)で構成され、そして、磁気テープMTに対する再生ヘッドHrの走行方向は、テープ送り方向の逆向きすなわち平行であり、テープ長さ方向でもある。なお、本図では、再生ヘッドHrは、マルチチャンネルヘッド10に数個しか記載されていないが、実際には、1個あたりの大きさはずっと小さくピッチも狭いので、もっと多く搭載されることが可能である。
【0026】
図3(b)および図4に示すように、マルチチャンネルヘッド10は、複数のMR素子と、各MR素子に接続された一対の電極と、これらのMR素子を両側から挟むシールドと、MR素子(再生ヘッドHr)から検出した再生信号を増幅する増幅器とを備える。また、図3(b)に示すように、MR素子の幅(テープ幅方向長)が再生ヘッドHrのテープ幅方向長さで再生ヘッド幅Wg、MR素子を挟んだシールド−シールド間隔(ギャップ長)が再生ヘッドHrのテープ送り方向長さで再生ヘッド長Lgとなる。
【0027】
次に、本発明に係る再生ヘッドの大きさについて説明する。図5は、本発明に係る磁気テープ再生装置で再生される磁気テープを示す拡大平面図である。
【0028】
再生ヘッドHrはテープ幅方向に沿った向きであるため、個々の記録領域は再生ヘッドHrに対して(θt+θa)傾斜している。また、+アジマストラックの記録領域は(θt+θa)、−アジマストラックの記録領域は(θt−|θa|)と、異なる角度で傾斜している。なお、一般的にθt<|θa|であるため、−アジマストラックの記録領域は+アジマストラックとは逆方向に(|θa|−θt)傾斜していることになる。
【0029】
再生ヘッドHrは、正確に再生信号を検出するために、再生ヘッドHrの全体が1つの記録領域に収まる必要がある。上記の通り、再生ヘッドHrはアジマス記録された記録領域とは非平行であるため、記録ヘッドのようなデータトラック幅に相当する幅の磁気ヘッドでは、小さい記録領域に収まらない。
【0030】
再生ヘッドHrは、その全体が1つの記録領域に収まるように、その大きさを規制する必要がある。すなわち、再生ヘッドHrの長さLgおよび幅Wgを、最小記録領域に収まるように規制する。そこで、傾斜の異なる+アジマストラック、−アジマストラックそれぞれの最小記録領域db1,db0に収まる大きさの再生ヘッドHrを比較して、小さい方を採用する。ここで、再生ヘッド長Lgは、MR素子の製造技術等により収束し、現在は約0.1μm以下となる磁気ヘッドが製造可能である。そこで、再生ヘッド長Lgに合わせて、+アジマストラック、−アジマストラックそれぞれの最小記録領域db1,db0に収まる再生ヘッド幅Wgを設計する。
図5より、+アジマストラックの最小記録領域(+アジマス最小記録領域)db1のテープ送り方向長さLb1’は次式(8)となる。
【0031】
【数5】
【0032】
+アジマス最小記録領域db1に内接し、テープ送り方向長さLgの長方形の、テープ幅方向長さが、再生ヘッドHrの最大幅Wg1maxとなるので、図5より、次式(9)が成立する。
【0033】
【数6】
【0034】
式(8)、(9)より次式(10)が成立する。
【0035】
【数7】
【0036】
同様に、−アジマストラックの最小記録領域(−アジマス最小記録領域)db0に収まる再生ヘッドHrの最大幅Wg0maxを設計する。図5より、−アジマス最小記録領域db0のテープ送り方向長さLb0’は次式(11)となる。
【0037】
【数8】
【0038】
+アジマストラックと同様に、−アジマストラックにおける再生ヘッドHrの最大幅Wg0maxは次式(12)となる。
【0039】
【数9】
【0040】
式(11)、(12)より次式(13)が成立する。
【0041】
【数10】
【0042】
図5に示すように、データトラック長さ方向における距離が同じである記録領域のテープ幅方向長さは、より傾斜の大きい+アジマストラックの方が小さい。したがって、原則として、Wg1max<Wg0maxとなって、再生ヘッド幅Wgは+アジマス最小記録領域db1に収束する。一方、同記録領域のテープ送り方向長さは、傾斜の小さい−アジマストラックの方が小さく、Lb0’<Lb1’が成立する。なお、理論上、再生ヘッド長Lgは、最小記録領域のテープ送り方向の長さより小さければ再生が可能である。すなわち、Lg<Lb0’である。ここで、Lg=Lb0’と仮定したとき、−アジマストラックにおいて、式(12)よりWg0max=0となる。一方、Lg<Lb1’であるので、+アジマストラックにおいては、式(9)よりWg1max>0となる。したがって、Lg=Lb0’のとき、Wg1max>Wg0maxとなる。
【0043】
このように、再生ヘッド長Lgが大きくなって−アジマス最小記録領域db0のテープ送り方向長さLb0’に近付くと、Wg1max>Wg0maxとなって、再生ヘッド幅Wgは−アジマス最小記録領域db0に収束するようになる。ただし、式(9)および式(12)より、再生ヘッド長Lgが大きくなるほど再生ヘッド最大幅Wg0max,Wg1maxは小さくなって、再生ヘッド幅Wgを小さくしなくてはならなくなる。そのため、再生ヘッド長LgはLb0’に対して、すなわち最短ビット長Lbに対してある程度小さいことが好ましい。そこで、再生ヘッド長Lgの上限を設けて、Wg1max≦Wg0maxが成立するようにする。式(10)と式(13)の差より、次式(14)が得られる。
【0044】
【数11】
【0045】
式(14)を変換すると式(1)となる。この式(1)を満足するとき、Wg1max≦Wg0maxであるので、再生ヘッド幅Wgの最大値はWg1maxとなる。すなわち、Wg≦Wg1maxであるから、式(10)より式(2)が成立する。
【0046】
再生ヘッドHrの長さLgおよび幅Wgを以上のように設定すれば、+アジマス最小記録領域db1、−アジマス最小記録領域db0それぞれに再生ヘッドHrの全体が収まって、再生ヘッドHrが隣接する記録領域の再生信号を同時に検出することがないので、正確に再生することが可能である。
【0047】
次に、本発明に係る磁気テープ再生装置における磁気ヘッドの配置を説明する。図6は、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図および磁気ヘッドで検出された再生信号の波形のエンベロープを示す図である。
【0048】
上述したように、本発明に係る磁気テープ再生装置において、再生ヘッドHr(Hr0,Hr1,Hr2)はその走行方向の垂直方向(テープ幅方向)に所定の間隔で配置される(図3(a)参照)。そして、図6に示すように、再生ヘッドHrの走行方向はデータトラックTrに対して所定の角度で傾斜している。したがって、1つの再生ヘッドHrが複数のデータトラックTr0,Tr1,…を順に跨いで走行する。また、1本のデータトラックTrから見れば、その上を複数の再生ヘッドHr0,Hr1,Hr2が順繰りに走行し、そして、1本のデータトラックTrにおいて、その幅方向に対する再生ヘッドHrの位置は変化する。すなわち、個々の記録領域において、再生ヘッドHrが対面するデータトラック幅方向の位置はそれぞれ異なることになる。
【0049】
全データを漏らさず再生するためには、すべての記録領域上を少なくとも1つの再生ヘッドHrの全体が走行する必要がある。したがって、2つの再生ヘッドHr,Hrの全体が、テープ幅方向長さの小さい、すなわち傾斜の大きい+アジマストラックにおける1つの記録領域に対面するように再生ヘッドHr,Hrの間隔を設定すればよい。このようにすれば、データトラックTrに対する再生ヘッドHrの相対位置が変化しても、すべての記録領域を少なくとも1つの再生ヘッドHrの全体が走行することとなる。
【0050】
以下に、そのための再生ヘッドHrの配置の設定方法を図6、図7および図8を参照して説明する。図7および図8は、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図である。長さLg、幅Wgの再生ヘッドHrのピッチをPgとする。データトラック角度θtで傾斜した、幅WtのデータトラックTrにさらにアジマス角度θaで傾斜した、+アジマストラックの記録領域に、2つの再生ヘッドHr,Hrの全体をテープ幅方向に配置するので、ピッチPgで配置された再生ヘッドHr,Hr2つ分のテープ幅方向長さ(Wg+Pg)を求めればよい。まず、記録長を無視した(0とした)ときの、+アジマストラックの記録領域のテープ幅方向長さWt1’を次式(15)により求める。
【0051】
【数12】
【0052】
長さWt1’上に2つの再生ヘッドHr,Hrの全体を配置するので、再生ヘッドHrの最大ピッチPgmaxは次式(16)にしたがう。
【0053】
【数13】
【0054】
式(16)は、再生ヘッド長Lgを無視(Lg=0)しているので、最小記録領域において式(16)が成立する再生ヘッド長Lgを求める。図7に示すように、式(16)が成立する再生ヘッド長Lgは、+アジマス最小記録領域db1のテープ送り方向長さLb1’(式(8)参照)の1/2以下であるので、次式(17)が条件となる。
【0055】
【数14】
【0056】
式(8)、(17)より式(3)が成立する。また、Pg≦Pgmaxであるから、式(15)、(16)より式(5)が成立する。したがって、再生ヘッドHrの長さLgが式(3)を満足するとき、再生ヘッドHrのピッチPgを以上のように設定すれば、再生ヘッドHrの走行方向に対して傾斜した記録領域を、少なくとも1つの再生ヘッドHrの全体が対面して走行するので、全ての記録領域が、いずれか1つ以上の再生ヘッドHrにより正確に再生される。なお、図6においては、再生ヘッドHrの配置を説明するために、ピッチPgを最大値Pgmaxとして示している。
【0057】
前記の通り、再生ヘッド長Lgは、−アジマス最小記録領域db0のテープ送り方向長さLb0’(図5参照)より小さければ、理論上再生が可能である。そこで、式(3)の条件を満たさない場合、すなわち、再生ヘッド長Lgが+アジマス最小記録領域db1のテープ送り方向長さLb1’の1/2を超える場合のピッチPg1を求める。再生ヘッドHr,Hr2つ分のテープ幅方向最大長さ(Wg+Pgmax)は、+アジマス最小記録領域db1の内で、テープ送り方向長さが再生ヘッド長Lg以上である領域である。したがって、(Wg+Pgmax)が最小となるのは、再生ヘッド長Lgが最大である場合である。前記の通り、再生ヘッド長Lgの最大値(極限値)はLb0’であるが、Lb1’>Lb0’であるので、Lg=Lb1’と仮定する。このような再生ヘッドHrlim,Hrlimの全体が収まる領域は、+アジマス最小記録領域db1の内でテープ送り方向長さが再生ヘッド長と同じLb1’である領域である。この領域のテープ幅方向長さをWb1とすると、図7より、Wb1は次式(18)により求められる。また、最大ピッチPg1maxは次式(19)にしたがう。
【0058】
【数15】
【0059】
Pg1≦Pg1maxであるから、式(15)、(18)、(19)より次式(20)が成立する。
【0060】
【数16】
【0061】
以上のように設定すれば、再生ヘッド長Lgを最短ビット長Lbに対して十分小さく製造できない場合も、全ての記録領域をいずれか1つ以上の再生ヘッドHrにより正確に再生することが可能である。
【0062】
次に、図6における再生ヘッドHr1の走行軌跡に注目して説明する。
再生ヘッドHr1の全体が、データトラックTr1上に進入した位置を基点T0とする。そして、再生ヘッドHr1がデータトラックTr1を走行、再生し続けると、その一部がデータトラックTr1をはみ出して隣のデータトラックTr2に跨るようになる。この、はみ出し始める位置をT1とする。さらに、再生ヘッドHr1が走行すると、その全体がデータトラックTr2上に到達する。この位置をT2とする。
【0063】
このT0−T2間における再生ヘッドHr1が検出した再生信号は、以下の通りである。データトラックTr1の再生信号S11の波形は、基点T0で最大出力となり、T1まで継続して検出される。そして、T1から出力が漸減する。同時に、データトラックTr2の再生信号S12の検出が開始され、その出力が漸増する。そして、T2で、再生信号S11は出力が0となり、一方、再生信号S12は最大出力となる。図6では、再生信号S11,S12の波形を分けて示しているが、実際には、再生ヘッドHr1が、データトラックTr1,Tr2に跨っているT1−T2間で検出する信号は、2つの再生信号S11,S12が混信(クロストーク)したものであり、データトラックTr1,Tr2それぞれの再生信号とすることは困難である。したがって、再生ヘッドHr1の一部がこれまで再生していたデータトラックTr1を外れるT1より前に、隣に配置されている再生ヘッドHr2によりデータトラックTr1の再生信号を検出する必要がある。
【0064】
図6に、再生ヘッドHrが1本のデータトラックTrを連続再生可能なT0−T1間距離を、最長再生距離Lrmaxとし、T1−T2間距離をオーバーラップ距離Lovとして示す。
【0065】
一方、再生ヘッドHr2はその全体が、先行する再生ヘッドHr1に遅れて、位置T3でデータトラックTr1上に到達する。そして、このとき再生ヘッドHr2が検出したデータトラックTr1の再生信号S21の波形は最大出力となる。このT0−T3間距離を再生ピッチPrとする。再生ピッチPrは再生ヘッドHrのピッチPgに比例し、次式(21)にしたがう。
【0066】
【数17】
【0067】
ここで、磁気テープMTの記録領域の傾斜について考察する。上述したように、個々の記録領域はテープ送り方向すなわち再生ヘッドHrの走行方向に対して(θt+θa)傾斜している。特に+アジマストラック上の記録領域の傾斜は、再生ヘッドHrの走行方向と同じ向きに傾斜している。したがって、図6に示すように、再生ヘッドHr1がデータトラックTr1をはみ出し始める位置T1において、再生ヘッドHr2は、データトラックTr1に進入しているが、この位置における小さい記録領域d2を通過してその一部がはみ出している。すなわち、位置T1でデータトラックTr1を再生する再生ヘッドHrを切り換えると、記録領域d2は再生ヘッドHr1,Hr2のいずれによっても正確に検出されないことになる。
【0068】
再生ヘッドHrの切り換え時に全データを漏らさず再生するためには、後続の再生ヘッドHrによる再生信号の検出開始位置を記録領域の傾斜に合わせる必要がある。この合わせ込み用の距離を補正距離Lcとし、その距離は次式(7)にしたがう。
【0069】
【数18】
【0070】
すなわち、図6において、先行する再生ヘッドHr1と、その位置より補正距離Lc移行した位置にある再生ヘッドHr2とが、データトラックTr1から見て同じ位置にあるといえる。ここで、−アジマストラックにおける補正距離をLc0、+アジマストラックにおける補正距離をLc1とすると、補正距離Lc0,Lc1はそれぞれ次式(22)、(23)に置き換えられる。
【0071】
【数19】
【0072】
なお、+アジマストラックにおいて、Lc1<0であるので、Lc1移行したということは、|Lc1|後退させたことになる。
【0073】
ここで、再生ヘッド長Lgが大きいと、+アジマストラックにおいて、補正距離Lc(Lc1)移行した位置にある後続の再生ヘッドHrの全体が記録領域(データトラックTr)に収まりきらない場合が生じる。最大ピッチPgmaxにおいて、このような状態となる再生ヘッド長Lgは、図8より、次式(24)の範囲を超えて大きい場合である。
【0074】
【数20】
【0075】
すなわち、式(4)の条件を満たす必要がある。そこで、再生ヘッド幅Wgおよび再生ヘッド長Lgが式(4)を満たさない場合のピッチPg2を求める。上記の最大ピッチPgmaxにおいてLc移行させた配置から、データトラックTrからはみ出した再生ヘッドHrを記録領域の傾斜(θt+|θa|)に沿ってデータトラックTr内に収まる位置までシフトさせればよい。そこで、再生ヘッドHrがデータトラックTrから最も多くはみ出す場合を仮定する。これは、再生ヘッド長Lgが最大かつ再生ヘッド幅Wgが最小である場合である。すなわち、Lg=Lb1’かつWg=0と仮定する。このような再生ヘッドHrlim,Hrlimを最大ピッチPgmaxで、Lc移行させて配置した場合、そのはみ出し幅Pgovは、図8より次式(25)にしたがう。
【0076】
【数21】
【0077】
はみ出し幅Pgov分をシフトさせると、ピッチPg2の最大値は(Pgmax−Pgov)となるので式(18)よりWb1となり、さらに、Wg=0の場合であることから、ピッチPg2は式(20)のPg1と一致する。以上より、再生ヘッド長Lgおよび再生ヘッド幅Wgが式(4)を満たさない場合は、再生ヘッドHrのピッチはPg1となる。
【0078】
以上のようにピッチを設定すれば、再生ヘッド幅Wgを再生ヘッド長Lgに対して十分大きく設計できない場合、例えば再生ヘッド長Lgを最短ビット長Lbに対して十分小さく製造できない場合も、再生ヘッドHrの切り換え時に全データを漏らさず再生することが可能である。また、前記の通り、式(3)を満たさない場合の再生ヘッドHrのピッチもPg1である。したがって、再生ヘッドHrの長さLgおよび幅Wgが式(3)および式(4)を満足する場合は、再生ヘッドHrのピッチはPg(式(5))となり、それ以外の場合すなわち式(3)、式(4)の少なくとも一方を満たさない場合は、再生ヘッドHrのピッチはPg1(式(20))となる。
【0079】
ここで、式(3)を満足する再生ヘッド長Lgの最大値、すなわち再生ヘッド長Lgが+アジマス最小記録領域db1のテープ送り方向長さLb1’の1/2となるときの最短ビット長Lb(次式(26))を式(2)に代入すると、再生ヘッド幅Wgは次式(27)となる。
【0080】
【数22】
【0081】
式(27)において式(4)を満足するためには、再生ヘッド幅Wgは最大幅Wg1maxで固定される。このことから、再生ヘッド長Lgが式(3)を満たさない場合、すなわち+アジマス最小記録領域db1のテープ送り方向長さLb1’の1/2を超える場合は、必然的に式(4)も満たさないことになる。
【0082】
図6に戻って、1つの再生ヘッドHrによる再生について説明する。再生ヘッドHrの全体がデータトラックTrに到達した位置を基準とすると、前記の補正距離Lc加算した位置が、図6における位置T3となる。すなわち、1つの再生ヘッドHrが1本のデータトラックTrを連続再生する必要距離T0−T4間を再生距離Lrとすると、次式(28)が成立する。
【0083】
【数23】
【0084】
式(28)に式(21)、(7)を代入すると式(6)となる。
【0085】
図6に示すように、再生ヘッドHr1,Hr2それぞれによるデータトラックTr1の再生信号S11,S21における記録領域d1の信号位置は、補正距離Lcずれて検出されている。このことからも、再生信号S11に、その検出終点から補正距離Lc移行した位置を再生信号S21の検出始点として継ぎ合わせることによって、データトラックTr1の再生信号が完成することがわかる。
【0086】
ここで、−アジマストラックの場合、(θt+θa)=(θt−|θa|)であり、上述したように、θt<|θa|である場合、(θt+θa)<0となり、すなわち、Lc>0となる。したがって、−アジマストラックを再生する場合、先行する再生ヘッドHrが再生距離Lr走行した位置から補正距離Lc進めた位置において、後続の再生ヘッドHrが検出を開始する。なお、1本のデータトラックTrにおける各再生ヘッドHrによる検出開始位置間隔すなわち再生ピッチPrは+アジマストラックと−アジマストラックで同値である。
【0087】
図9を参照して、本発明に係る磁気テープ再生装置における1本のデータトラックについての再生方法を説明する。図9は、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図で、図6の範囲を広げた図である。図9は、図6と同様に、磁気テープMTには傾斜したデータトラックTr0,Tr1,…が記録され、同図の左端に再生ヘッドHr0,Hr1,Hr2,…がテープ幅方向に並んで配置されている。そして、再生ヘッドHr0,Hr1,Hr2,…は、それぞれテープ送り方向と反対方向に走行する。また、データトラックTr0は−アジマストラック、データトラックTr1は+アジマストラックである。
【0088】
データトラックTr1について見ると、まず、再生ヘッドHr1が走行し、再生を行う(区間L11)。再生ヘッドHr1が再生ピッチPr走行した位置で、再生ヘッドHr2がデータトラックTr1に到達し、再生を開始する(区間L12)。この時点では、再生ヘッドHr1による再生も並行して行われる。そして、再生ヘッドHr1が距離Lr1走行したら、再生ヘッドHr1によるデータトラックTr1再生は完了する。一方、再生ヘッドHr2が再生ピッチPr走行した位置で、再生ヘッドHr3がデータトラックTr1に到達し、再生を開始する(区間L13)。以下、同様にデータトラックTr1上を再生ヘッドHr3,Hr4,…が一部区間で重なりながら交替で再生する。そして、再生ヘッドHr1,Hr2,…により検出された再生信号は、それぞれ先行する再生ヘッドHrにより検出された再生信号の末端に継ぎ合わされて、データトラックTr1の再生信号に再構成される。なお、距離Lr1は+アジマストラックにおける再生距離Lrである。
【0089】
同様に、データトラックTr0について見ると、まず、再生ヘッドHr3が走行し、再生を行う(区間L03)。そして、再生ヘッドHr3が距離Lr0走行したら、再生ヘッドHr3によるデータトラックTr0再生は完了する。一方、再生ヘッドHr3による再生開始位置から再生ピッチPr移行した位置で、再生ヘッドHr4がデータトラックTr0に到達し、再生を開始する(区間L04)。以下、同様に再生ヘッドHr5に交替して再生される(区間L05)。−アジマストラックの場合、Lr0<Prなので、距離(Pr−Lr0)すなわちLc0において、再生ヘッドHr3,Hr4,Hr5いずれによっても検出されない空白区間が発生する。そして、再生ヘッドHr3,Hr4,…により検出された再生信号は、それぞれ先行する再生ヘッドHrにより検出された再生信号の末端に継ぎ合わされて、データトラックTr0の再生信号に再構成される。なお、距離Lr0は−アジマストラックにおける再生距離Lrである。
【0090】
以上の方法で、(ヘリカルスキャン方式で)斜め記録された磁気テープをリニア方式で再生することが可能となる。
【0091】
なお、各再生ヘッドHr1,Hr2,…から検出された再生信号を一時記憶するメモリ、再構成を行う処理手段(CPU)、および再構成されたデータを格納する記憶手段(HDD)は、磁気テープ再生装置に内蔵してもよいし、外部装置であってもよい。また、記憶手段を設けず、再構成されたデータを直接コピー先の媒体に書き込む記録装置を内蔵あるいは接続してもよい。
【実施例】
【0092】
以上、本発明を実施するための最良の形態について述べてきたが、以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0093】
D−5方式で記録された磁気テープを再生するための本発明に係る磁気テープ再生装置を設計する。D−5方式において、データトラック角度θt=4.9384°、データトラック幅Wt=20μm、最短ビット長Lb=0.32μm、そしてアジマス角度は、θa0=−20.038°、θa1=19.962°のうち傾斜の大きいθa0の絶対値にさらに公差の最大値として+0.015°とし、θa=20.188°とする。また、再生ヘッドHrのヘッド長はLg=0.1μmとする。
【0094】
まず、再生ヘッドHrの長さLgが式(1)、(3)を満足するかを確認する。
【0095】
【数24】
【0096】
Lg=0.1μmなので、式(29)、(30)より、ヘッド長Lgは式(1)、(3)を共に満足する。ヘッド長Lgが、式(1)を満足することから式(2)を、式(3)を満足することから式(4)、(5)をそれぞれ適用できる。そして、再生ヘッドHrの幅Wgを設計する。式(2)、(4)より幅Wgの範囲を求める。
【0097】
【数25】
【0098】
式(31)、(32)より、再生ヘッドHrの幅Wgを0.49μmとする。次に、式(5)よりピッチPgの範囲を求める。
【0099】
【数26】
【0100】
式(33)より、再生ヘッドHrのピッチPgを18.75μmとする。さらに、再生ピッチPrは、式(21)にしたがう。
【0101】
【数27】
【0102】
式(34)より、走行距離217.0μm毎に、次の再生ヘッドHrによる検出を開始する。また、+アジマストラックにおける補正距離Lc1、−アジマストラックにおける補正距離Lc0は、それぞれ式(23)、(22)にしたがう。
【0103】
【数28】
【0104】
式(35)より、+アジマストラックにおいては補正距離8.794μm手前から、次の再生ヘッドHrにより検出を開始する。一方、式(36)より、−アジマストラックにおいては補正距離5.112μm通過してから、次の再生ヘッドHrにより検出を開始する。そして、1本のデータトラックTrにおける1つの再生ヘッドHrによる再生距離Lrについて、+アジマストラックにおける再生距離Lr1、−アジマストラックにおける再生距離Lr0は、それぞれ式(28)にしたがう。
【0105】
【数29】
【0106】
式(37)より、+アジマストラックにおいては225.794μm、式(38)より、−アジマストラックにおいては211.888μmが、1本のデータトラックTrにおける再生距離である。そして、それぞれの再生ヘッドHrにより検出された再生信号を接続することで、データトラックTr毎の再生信号が得られる。また、D−5方式で記録された磁気テープMTのデータトラックTrのある領域は、テープ幅方向において、音声トラックの下縁位置が11.95mm、映像トラックの下縁位置が1.629mmであるので、両者の差とみなすことができる。この全域に再生ヘッドHrを配置すると、その個数は次式(39)となる。
【0107】
【数30】
【0108】
式(39)より、マルチチャンネルヘッド10に再生ヘッドHrを551個搭載すれば、1回のテープ送りで磁気テープMTの全てのデータトラックTrを再生可能な磁気テープ再生装置となる。また、この磁気テープ再生装置のテープ送り速度を3.0m/sとしたとき、D−5方式におけるテープ送り速度は167.228mm/sであるので、約18倍速再生となる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明に係る磁気テープ再生装置で再生される磁気テープを示す平面図である。
【図2】図1の磁気テープの部分拡大図である。
【図3】本発明に係る磁気テープ再生装置を説明する模式図であり、(a)は外観図、(b)は(a)の部分拡大図で磁気ヘッドの構成の一例を示す図である。
【図4】本発明に係る磁気テープ再生装置のマルチチャンネルヘッドの断面模式図である。
【図5】本発明に係る磁気テープ再生装置における磁気ヘッドの長さおよび幅を説明する図であり、磁気テープの拡大平面図である。
【図6】本発明に係る磁気テープ再生装置における磁気ヘッドの配置を説明する図であり、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図、および、磁気ヘッドで検出された再生信号の波形のエンベロープを示す図である。
【図7】本発明に係る磁気テープ再生装置の磁気ヘッドの長さとピッチの関係を説明する図であり、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図である。
【図8】本発明に係る磁気テープ再生装置の磁気ヘッドの長さおよび幅とピッチとの関係を説明する図であり、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図である。
【図9】本発明に係る磁気テープ再生装置の磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図である。
【図10】ヘリカルスキャン方式の磁気テープ記録/再生装置を説明する模式図である。
【図11】リニア方式の磁気テープ記録/再生装置を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0110】
10 マルチチャンネルヘッド
MT 磁気テープ
Hr 再生ヘッド(磁気ヘッド)
Tr データトラック
Wt データトラック幅
θt データトラック角度
θa,θa0,θa1 アジマス角度
Lb 最短ビット長
Lg 再生ヘッド長
Wg 再生ヘッド幅
Pg 再生ヘッドピッチ
Lr,Lr0,Lr1 1本のデータトラックにおける再生ヘッドの再生距離
Lc,Lc0,Lc1 補正距離
Pr 再生ピッチ
Hr0〜Hr6 再生ヘッド
Tr0,Tr1,Tr2 データトラック
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープに斜め記録されたデータを高速で読み取ることを可能とする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、映像記録用の媒体は磁気テープであったが、近年は光ディスク等の大容量、長寿命の媒体に移行しつつある。それに伴い、磁気テープを媒体とするテープ式映像記録装置(VTR:Video Tape Recorder)は、将来的には製造されなくなり、その保守サービスもなくなるため、磁気テープで保存された映像データを新しい映像記録用の媒体へコピー(ダビング)する必要がある。
【0003】
そのため、磁気テープに保有されている膨大な量の映像データのコピー作業の効率化のための、高速のデータ読み取り技術が必要とされる。
【0004】
磁気テープの再生速度の高速化の方法としては、磁気テープに対する磁気ヘッドの走行速度を速くすることが挙げられる。ここで、VTRは、磁気テープに、テープ送り方向(テープ長さ方向)に対して所定の角度で傾斜したデータトラックを記録するヘリカルスキャン方式を採用している。図10に示すように、ヘリカルスキャン方式の記録/再生装置において、磁気テープMTは、磁気ヘッドHdを搭載した回転ドラム(シリンダ)B1に斜めに巻き付けられ、磁気テープMTの送り方向に対して、回転ドラムB1の回転軸が傾斜している。これにより、磁気ヘッドHdの軌跡すなわちデータトラックTrはテープ長さ方向に対して傾斜して記録される(図1参照)。そして、同じ構成により、磁気ヘッドHdがデータトラックTr上を走行して再生される。なお、図10において磁気ヘッドHdは1つのみ図示されるが、実際は2種類のアジマスヘッドが搭載され、さらに記録用、再生用等にそれぞれ搭載されている装置が多い。
【0005】
このヘリカルスキャン方式において、上記のように磁気テープに対する磁気ヘッドの走行速度を速くする方法として、テープ送り速度と回転ドラムの回転速度とをそれぞれ記録時の速度に対して同じ倍率で変化させることで、磁気ヘッドをデータトラックに沿って高速走行させることが考えられる。しかしながら、ヘリカルスキャン方式の記録/再生装置は、通常(1倍速)状態で、テープ送り速度は数10mm/s、回転ドラムの回転速度は数10rpsと、テープ送り速度に対して回転ドラムの回転速度が高く、例えば2倍速再生であっても、回転ドラムの高速回転に伴う振動や、磁気ヘッドと磁気テープとの接触状態を良好に維持できないこと等により、画質や音質が悪化する等の問題を生じ、技術的な課題が多く困難である。
【0006】
一方、サーバのバックアップ等に適用される、テープ送り方向に対して平行なデータトラックに記録されるリニア方式の磁気テープ記録/再生装置は、図11に示すように、磁気ヘッドHdをテープ送り方向に対して固定した状態で磁気テープMTを送ることにより走行させるという単純な機構系であるため、そのテープ送り速度は数m/sとヘリカルスキャン方式と比較して高速である。また、リニア方式では、磁気ヘッドHdを搭載したヘッド部B2をテープ幅方向に移動させてテープ送りを繰り返すことにより、全ての記録領域を走行させているが、近年は、磁気ヘッドの狭ピッチ化および多ヘッド搭載によりテープ送り回数を減らすことが可能となっている。例えば特許文献1には、狭ピッチのデータトラックに複数の磁気ヘッドで再生する技術が開示されている。
【0007】
ヘリカルスキャン方式における高速再生としては、回転ドラムに磁気ヘッドを多数搭載し、複数本のデータトラックを同時に走行させる技術や、一方の速度(テープ送り速度)をより高速化してデータトラックと非平行に磁気ヘッドを走行させる技術が開示されている。例えば特許文献2には、回転ドラムの回転速度は1倍のまま、N倍のテープ送り速度で、N倍数の磁気ヘッドがそれぞれ異なるデータトラックを跨いでデータを読み取り、読み取ったデータを合成することにより1/Nの時間で再生する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−132504号公報(段落0021〜0028)
【特許文献2】特許第3669031号公報(段落0037〜0043)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、機構系が複雑なヘリカルスキャン方式では、テープ送り速度に限界があり、さらなる高速化は困難である。また、既にヘリカルスキャン方式で磁気テープに蓄積されたデータに対して、現行のリニア方式の磁気テープ再生装置を適用することは不可能である。
【0009】
本発明は前記問題点に鑑み創案されたもので、磁気テープにヘリカルスキャン方式で記録された映像データを高速で読み取ることが可能なリニア方式の磁気テープ再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1に係る磁気テープ再生装置は、テープ送り方向に対してデータトラックが傾斜してデータが記録されている磁気テープを、前記テープ送り方向に平行に磁気ヘッドを走行させて前記データを読み出す磁気テープ再生装置であって、前記磁気ヘッドは、テープ送り方向長さを長さLg、テープ幅方向長さを幅Wgとし、前記磁気テープにおいて、前記テープ送り方向に対するデータトラック傾斜角度をθt、アジマス角度をθa、最短ビット長をLbとするとき、前記磁気ヘッドの長さLgおよび幅Wgが以下の式(1)および式(2)を満足することを特徴とする。
【0011】
【数3】
【0012】
かかる構成により、リニア方式の単純な機構系で磁気テープを再生することができる。また、磁気ヘッドの大きさを制御することにより、磁気ヘッドが隣接する記録領域へはみ出すことなく再生することが可能である。
【0013】
また、請求項2に係る磁気テープ再生装置は、請求項1に記載の磁気テープ再生装置において、前記磁気テープ再生装置は、長さLg、幅Wgの前記磁気ヘッドをテープ幅方向にピッチPgで配置して備え、前記磁気テープ再生装置は、前記磁気ヘッドの前記磁気テープに対する走行距離Lr毎に再生信号を検出する前記磁気ヘッドを切り換え、前記磁気ヘッドにより検出された再生信号に、前記磁気ヘッドを切り換えた位置に対して補正距離Lc移行した位置から前記磁気ヘッドの隣の磁気ヘッドにより検出された再生信号を接続して再構成を行い、前記磁気テープにおいて、データトラック幅をWt、前記テープ送り方向に対するデータトラック傾斜角度をθt、アジマス角度をθa、最短ビット長をLbとするとき、前記磁気ヘッドの長さLgおよび幅Wgが以下の式(3)および式(4)を満足し、前記ピッチPgが以下の式(5)を満足し、前記走行距離Lrが以下の式(6)を満足し、前記補正距離Lcが以下の式(7)を満足することを特徴とする。
【0014】
【数4】
【0015】
このように、磁気ヘッドのピッチを制限して配置することにより、すべての記録領域に1つ以上の磁気ヘッドの全体が対面する。また、規定した走行距離毎に磁気ヘッドを切り換え、さらに補正距離を加算することにより、複数の磁気ヘッドで1本のデータトラックからデータを漏れなく読み取ることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る磁気テープ再生装置によれば、磁気テープの記録方向と異なる走行方向の磁気ヘッドでデータを再生することが可能となって、ヘリカルスキャン方式で記録された磁気テープを高速でテープ送りして再生することが可能となり、コピー作業が効率化される。また、1つの磁気ヘッドで異なるアジマス角度のデータトラックを読み取ることが可能となり、さらに、磁気テープ上の小さい記録領域のデータも正確に読み取ることが可能となる。
【0017】
請求項2に係る磁気テープ再生装置によれば、すべての記録領域のデータも正確に読み取ることが可能となる。また、隣り合う複数のデータトラックを同時に読み取ることが可能となり、コピー作業が効率化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る磁気テープ再生装置を実現するための最良の形態について、図を参照して説明する。図1は、本発明に係る磁気テープ再生装置で再生される磁気テープを示す平面図であり、図2は図1の部分拡大図である。なお、後述の図5〜9も含め、左右方向をテープ長さ方向(=テープ送り方向)、上下方向をテープ幅方向とする。
【0019】
本発明に係る磁気テープ再生装置で再生する磁気テープにおいては、図1に示すように、磁気テープMTの長さ方向に対して傾斜した複数のデータトラックTrが記録される。これは、テープ送り方向はテープ長さ方向に沿っているが、磁気テープMTと摺動する磁気ヘッド(記録ヘッド)が、このテープ送り方向に対して傾斜した軸で回転するドラムの周面に備えられているからである(図10参照)。
【0020】
データトラックTrのテープ送り方向に対する傾斜角度をデータトラック角度θt(0°<θt<90°)とする。このデータトラック角度θtは、磁気テープの記録方式によって規格が異なるが、例えばD−5方式で、θt=4.9384°である。
【0021】
データトラックTrの幅(データトラックTrの長さ方向に垂直な距離)をデータトラック幅Wtとする。このデータトラック幅Wtは、近年のデータの高密度化に伴ってより狭くなっているが、例えばD−5方式で、Wt=20μmである。なお、本発明においては、データトラックTrのピッチはデータトラック幅Wtと同値とする。
【0022】
図2に示すように、隣接するデータトラックTr,Trは互いにデータの向きが異なって記録されている。これは、記録ヘッドの走行方向に対して異なる角度のギャップを有する記録ヘッドにより記録されたからであり、再生時にデータトラックTr,Tr間のクロストークを抑えるためのものである。データの向きはデータトラックTrに対してそれぞれθa0,θa1の角度で傾斜しており、これらθa0,θa1をアジマス角度という(−90°<θa0<0°,0°<θa1<90°)。アジマス角度θa0,θa1は、磁気テープの記録方式によって規格が異なるが、例えばD−5方式では、θa0=−20.038°、θa1=19.962°である。そして、|θa0|と|θa1|は同値または近似値であるため、本明細書においては、θa0,θa1を総称してアジマス角度θa(0°<|θa|<90)とする。また、本明細書においては、データトラック傾斜方向と同方向にデータが傾斜しているデータトラックTrを+アジマストラック、データトラック傾斜方向と逆方向にデータが傾斜しているデータトラックTrを−アジマストラックと称する。
【0023】
データトラックTr上に記録された領域で、最も短い領域(最小記録領域)の、データトラック長さ方向における距離(記録長)を最短ビット長Lbとする。この最短ビット長Lbは、記録周波数1周期あたりの記録ヘッドの走行距離である最短記録波長の1/2であり、データの高密度化に伴って短くなっているが、例えばD−5方式で、Lb=0.32μmである。
【0024】
次に、本発明に係る磁気テープ再生装置の磁気ヘッドについて説明する。図3は本発明に係る磁気テープ再生装置の模式図で、(a)は外観図、(b)は(a)の部分拡大図で磁気ヘッドの構成の一例を示す図、図4はマルチチャンネルヘッドのテープ送り方向に垂直な面による断面模式図である。
【0025】
図3(a)に示すように、本発明に係る磁気ヘッド(再生ヘッド)Hrは、固定されたマルチチャンネルヘッド10に、テープ幅方向に所定の間隔で複数個搭載されている。再生ヘッドHrは、狭ピッチ搭載の可能な、例えば磁気抵抗効果素子(MR素子)で構成され、そして、磁気テープMTに対する再生ヘッドHrの走行方向は、テープ送り方向の逆向きすなわち平行であり、テープ長さ方向でもある。なお、本図では、再生ヘッドHrは、マルチチャンネルヘッド10に数個しか記載されていないが、実際には、1個あたりの大きさはずっと小さくピッチも狭いので、もっと多く搭載されることが可能である。
【0026】
図3(b)および図4に示すように、マルチチャンネルヘッド10は、複数のMR素子と、各MR素子に接続された一対の電極と、これらのMR素子を両側から挟むシールドと、MR素子(再生ヘッドHr)から検出した再生信号を増幅する増幅器とを備える。また、図3(b)に示すように、MR素子の幅(テープ幅方向長)が再生ヘッドHrのテープ幅方向長さで再生ヘッド幅Wg、MR素子を挟んだシールド−シールド間隔(ギャップ長)が再生ヘッドHrのテープ送り方向長さで再生ヘッド長Lgとなる。
【0027】
次に、本発明に係る再生ヘッドの大きさについて説明する。図5は、本発明に係る磁気テープ再生装置で再生される磁気テープを示す拡大平面図である。
【0028】
再生ヘッドHrはテープ幅方向に沿った向きであるため、個々の記録領域は再生ヘッドHrに対して(θt+θa)傾斜している。また、+アジマストラックの記録領域は(θt+θa)、−アジマストラックの記録領域は(θt−|θa|)と、異なる角度で傾斜している。なお、一般的にθt<|θa|であるため、−アジマストラックの記録領域は+アジマストラックとは逆方向に(|θa|−θt)傾斜していることになる。
【0029】
再生ヘッドHrは、正確に再生信号を検出するために、再生ヘッドHrの全体が1つの記録領域に収まる必要がある。上記の通り、再生ヘッドHrはアジマス記録された記録領域とは非平行であるため、記録ヘッドのようなデータトラック幅に相当する幅の磁気ヘッドでは、小さい記録領域に収まらない。
【0030】
再生ヘッドHrは、その全体が1つの記録領域に収まるように、その大きさを規制する必要がある。すなわち、再生ヘッドHrの長さLgおよび幅Wgを、最小記録領域に収まるように規制する。そこで、傾斜の異なる+アジマストラック、−アジマストラックそれぞれの最小記録領域db1,db0に収まる大きさの再生ヘッドHrを比較して、小さい方を採用する。ここで、再生ヘッド長Lgは、MR素子の製造技術等により収束し、現在は約0.1μm以下となる磁気ヘッドが製造可能である。そこで、再生ヘッド長Lgに合わせて、+アジマストラック、−アジマストラックそれぞれの最小記録領域db1,db0に収まる再生ヘッド幅Wgを設計する。
図5より、+アジマストラックの最小記録領域(+アジマス最小記録領域)db1のテープ送り方向長さLb1’は次式(8)となる。
【0031】
【数5】
【0032】
+アジマス最小記録領域db1に内接し、テープ送り方向長さLgの長方形の、テープ幅方向長さが、再生ヘッドHrの最大幅Wg1maxとなるので、図5より、次式(9)が成立する。
【0033】
【数6】
【0034】
式(8)、(9)より次式(10)が成立する。
【0035】
【数7】
【0036】
同様に、−アジマストラックの最小記録領域(−アジマス最小記録領域)db0に収まる再生ヘッドHrの最大幅Wg0maxを設計する。図5より、−アジマス最小記録領域db0のテープ送り方向長さLb0’は次式(11)となる。
【0037】
【数8】
【0038】
+アジマストラックと同様に、−アジマストラックにおける再生ヘッドHrの最大幅Wg0maxは次式(12)となる。
【0039】
【数9】
【0040】
式(11)、(12)より次式(13)が成立する。
【0041】
【数10】
【0042】
図5に示すように、データトラック長さ方向における距離が同じである記録領域のテープ幅方向長さは、より傾斜の大きい+アジマストラックの方が小さい。したがって、原則として、Wg1max<Wg0maxとなって、再生ヘッド幅Wgは+アジマス最小記録領域db1に収束する。一方、同記録領域のテープ送り方向長さは、傾斜の小さい−アジマストラックの方が小さく、Lb0’<Lb1’が成立する。なお、理論上、再生ヘッド長Lgは、最小記録領域のテープ送り方向の長さより小さければ再生が可能である。すなわち、Lg<Lb0’である。ここで、Lg=Lb0’と仮定したとき、−アジマストラックにおいて、式(12)よりWg0max=0となる。一方、Lg<Lb1’であるので、+アジマストラックにおいては、式(9)よりWg1max>0となる。したがって、Lg=Lb0’のとき、Wg1max>Wg0maxとなる。
【0043】
このように、再生ヘッド長Lgが大きくなって−アジマス最小記録領域db0のテープ送り方向長さLb0’に近付くと、Wg1max>Wg0maxとなって、再生ヘッド幅Wgは−アジマス最小記録領域db0に収束するようになる。ただし、式(9)および式(12)より、再生ヘッド長Lgが大きくなるほど再生ヘッド最大幅Wg0max,Wg1maxは小さくなって、再生ヘッド幅Wgを小さくしなくてはならなくなる。そのため、再生ヘッド長LgはLb0’に対して、すなわち最短ビット長Lbに対してある程度小さいことが好ましい。そこで、再生ヘッド長Lgの上限を設けて、Wg1max≦Wg0maxが成立するようにする。式(10)と式(13)の差より、次式(14)が得られる。
【0044】
【数11】
【0045】
式(14)を変換すると式(1)となる。この式(1)を満足するとき、Wg1max≦Wg0maxであるので、再生ヘッド幅Wgの最大値はWg1maxとなる。すなわち、Wg≦Wg1maxであるから、式(10)より式(2)が成立する。
【0046】
再生ヘッドHrの長さLgおよび幅Wgを以上のように設定すれば、+アジマス最小記録領域db1、−アジマス最小記録領域db0それぞれに再生ヘッドHrの全体が収まって、再生ヘッドHrが隣接する記録領域の再生信号を同時に検出することがないので、正確に再生することが可能である。
【0047】
次に、本発明に係る磁気テープ再生装置における磁気ヘッドの配置を説明する。図6は、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図および磁気ヘッドで検出された再生信号の波形のエンベロープを示す図である。
【0048】
上述したように、本発明に係る磁気テープ再生装置において、再生ヘッドHr(Hr0,Hr1,Hr2)はその走行方向の垂直方向(テープ幅方向)に所定の間隔で配置される(図3(a)参照)。そして、図6に示すように、再生ヘッドHrの走行方向はデータトラックTrに対して所定の角度で傾斜している。したがって、1つの再生ヘッドHrが複数のデータトラックTr0,Tr1,…を順に跨いで走行する。また、1本のデータトラックTrから見れば、その上を複数の再生ヘッドHr0,Hr1,Hr2が順繰りに走行し、そして、1本のデータトラックTrにおいて、その幅方向に対する再生ヘッドHrの位置は変化する。すなわち、個々の記録領域において、再生ヘッドHrが対面するデータトラック幅方向の位置はそれぞれ異なることになる。
【0049】
全データを漏らさず再生するためには、すべての記録領域上を少なくとも1つの再生ヘッドHrの全体が走行する必要がある。したがって、2つの再生ヘッドHr,Hrの全体が、テープ幅方向長さの小さい、すなわち傾斜の大きい+アジマストラックにおける1つの記録領域に対面するように再生ヘッドHr,Hrの間隔を設定すればよい。このようにすれば、データトラックTrに対する再生ヘッドHrの相対位置が変化しても、すべての記録領域を少なくとも1つの再生ヘッドHrの全体が走行することとなる。
【0050】
以下に、そのための再生ヘッドHrの配置の設定方法を図6、図7および図8を参照して説明する。図7および図8は、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図である。長さLg、幅Wgの再生ヘッドHrのピッチをPgとする。データトラック角度θtで傾斜した、幅WtのデータトラックTrにさらにアジマス角度θaで傾斜した、+アジマストラックの記録領域に、2つの再生ヘッドHr,Hrの全体をテープ幅方向に配置するので、ピッチPgで配置された再生ヘッドHr,Hr2つ分のテープ幅方向長さ(Wg+Pg)を求めればよい。まず、記録長を無視した(0とした)ときの、+アジマストラックの記録領域のテープ幅方向長さWt1’を次式(15)により求める。
【0051】
【数12】
【0052】
長さWt1’上に2つの再生ヘッドHr,Hrの全体を配置するので、再生ヘッドHrの最大ピッチPgmaxは次式(16)にしたがう。
【0053】
【数13】
【0054】
式(16)は、再生ヘッド長Lgを無視(Lg=0)しているので、最小記録領域において式(16)が成立する再生ヘッド長Lgを求める。図7に示すように、式(16)が成立する再生ヘッド長Lgは、+アジマス最小記録領域db1のテープ送り方向長さLb1’(式(8)参照)の1/2以下であるので、次式(17)が条件となる。
【0055】
【数14】
【0056】
式(8)、(17)より式(3)が成立する。また、Pg≦Pgmaxであるから、式(15)、(16)より式(5)が成立する。したがって、再生ヘッドHrの長さLgが式(3)を満足するとき、再生ヘッドHrのピッチPgを以上のように設定すれば、再生ヘッドHrの走行方向に対して傾斜した記録領域を、少なくとも1つの再生ヘッドHrの全体が対面して走行するので、全ての記録領域が、いずれか1つ以上の再生ヘッドHrにより正確に再生される。なお、図6においては、再生ヘッドHrの配置を説明するために、ピッチPgを最大値Pgmaxとして示している。
【0057】
前記の通り、再生ヘッド長Lgは、−アジマス最小記録領域db0のテープ送り方向長さLb0’(図5参照)より小さければ、理論上再生が可能である。そこで、式(3)の条件を満たさない場合、すなわち、再生ヘッド長Lgが+アジマス最小記録領域db1のテープ送り方向長さLb1’の1/2を超える場合のピッチPg1を求める。再生ヘッドHr,Hr2つ分のテープ幅方向最大長さ(Wg+Pgmax)は、+アジマス最小記録領域db1の内で、テープ送り方向長さが再生ヘッド長Lg以上である領域である。したがって、(Wg+Pgmax)が最小となるのは、再生ヘッド長Lgが最大である場合である。前記の通り、再生ヘッド長Lgの最大値(極限値)はLb0’であるが、Lb1’>Lb0’であるので、Lg=Lb1’と仮定する。このような再生ヘッドHrlim,Hrlimの全体が収まる領域は、+アジマス最小記録領域db1の内でテープ送り方向長さが再生ヘッド長と同じLb1’である領域である。この領域のテープ幅方向長さをWb1とすると、図7より、Wb1は次式(18)により求められる。また、最大ピッチPg1maxは次式(19)にしたがう。
【0058】
【数15】
【0059】
Pg1≦Pg1maxであるから、式(15)、(18)、(19)より次式(20)が成立する。
【0060】
【数16】
【0061】
以上のように設定すれば、再生ヘッド長Lgを最短ビット長Lbに対して十分小さく製造できない場合も、全ての記録領域をいずれか1つ以上の再生ヘッドHrにより正確に再生することが可能である。
【0062】
次に、図6における再生ヘッドHr1の走行軌跡に注目して説明する。
再生ヘッドHr1の全体が、データトラックTr1上に進入した位置を基点T0とする。そして、再生ヘッドHr1がデータトラックTr1を走行、再生し続けると、その一部がデータトラックTr1をはみ出して隣のデータトラックTr2に跨るようになる。この、はみ出し始める位置をT1とする。さらに、再生ヘッドHr1が走行すると、その全体がデータトラックTr2上に到達する。この位置をT2とする。
【0063】
このT0−T2間における再生ヘッドHr1が検出した再生信号は、以下の通りである。データトラックTr1の再生信号S11の波形は、基点T0で最大出力となり、T1まで継続して検出される。そして、T1から出力が漸減する。同時に、データトラックTr2の再生信号S12の検出が開始され、その出力が漸増する。そして、T2で、再生信号S11は出力が0となり、一方、再生信号S12は最大出力となる。図6では、再生信号S11,S12の波形を分けて示しているが、実際には、再生ヘッドHr1が、データトラックTr1,Tr2に跨っているT1−T2間で検出する信号は、2つの再生信号S11,S12が混信(クロストーク)したものであり、データトラックTr1,Tr2それぞれの再生信号とすることは困難である。したがって、再生ヘッドHr1の一部がこれまで再生していたデータトラックTr1を外れるT1より前に、隣に配置されている再生ヘッドHr2によりデータトラックTr1の再生信号を検出する必要がある。
【0064】
図6に、再生ヘッドHrが1本のデータトラックTrを連続再生可能なT0−T1間距離を、最長再生距離Lrmaxとし、T1−T2間距離をオーバーラップ距離Lovとして示す。
【0065】
一方、再生ヘッドHr2はその全体が、先行する再生ヘッドHr1に遅れて、位置T3でデータトラックTr1上に到達する。そして、このとき再生ヘッドHr2が検出したデータトラックTr1の再生信号S21の波形は最大出力となる。このT0−T3間距離を再生ピッチPrとする。再生ピッチPrは再生ヘッドHrのピッチPgに比例し、次式(21)にしたがう。
【0066】
【数17】
【0067】
ここで、磁気テープMTの記録領域の傾斜について考察する。上述したように、個々の記録領域はテープ送り方向すなわち再生ヘッドHrの走行方向に対して(θt+θa)傾斜している。特に+アジマストラック上の記録領域の傾斜は、再生ヘッドHrの走行方向と同じ向きに傾斜している。したがって、図6に示すように、再生ヘッドHr1がデータトラックTr1をはみ出し始める位置T1において、再生ヘッドHr2は、データトラックTr1に進入しているが、この位置における小さい記録領域d2を通過してその一部がはみ出している。すなわち、位置T1でデータトラックTr1を再生する再生ヘッドHrを切り換えると、記録領域d2は再生ヘッドHr1,Hr2のいずれによっても正確に検出されないことになる。
【0068】
再生ヘッドHrの切り換え時に全データを漏らさず再生するためには、後続の再生ヘッドHrによる再生信号の検出開始位置を記録領域の傾斜に合わせる必要がある。この合わせ込み用の距離を補正距離Lcとし、その距離は次式(7)にしたがう。
【0069】
【数18】
【0070】
すなわち、図6において、先行する再生ヘッドHr1と、その位置より補正距離Lc移行した位置にある再生ヘッドHr2とが、データトラックTr1から見て同じ位置にあるといえる。ここで、−アジマストラックにおける補正距離をLc0、+アジマストラックにおける補正距離をLc1とすると、補正距離Lc0,Lc1はそれぞれ次式(22)、(23)に置き換えられる。
【0071】
【数19】
【0072】
なお、+アジマストラックにおいて、Lc1<0であるので、Lc1移行したということは、|Lc1|後退させたことになる。
【0073】
ここで、再生ヘッド長Lgが大きいと、+アジマストラックにおいて、補正距離Lc(Lc1)移行した位置にある後続の再生ヘッドHrの全体が記録領域(データトラックTr)に収まりきらない場合が生じる。最大ピッチPgmaxにおいて、このような状態となる再生ヘッド長Lgは、図8より、次式(24)の範囲を超えて大きい場合である。
【0074】
【数20】
【0075】
すなわち、式(4)の条件を満たす必要がある。そこで、再生ヘッド幅Wgおよび再生ヘッド長Lgが式(4)を満たさない場合のピッチPg2を求める。上記の最大ピッチPgmaxにおいてLc移行させた配置から、データトラックTrからはみ出した再生ヘッドHrを記録領域の傾斜(θt+|θa|)に沿ってデータトラックTr内に収まる位置までシフトさせればよい。そこで、再生ヘッドHrがデータトラックTrから最も多くはみ出す場合を仮定する。これは、再生ヘッド長Lgが最大かつ再生ヘッド幅Wgが最小である場合である。すなわち、Lg=Lb1’かつWg=0と仮定する。このような再生ヘッドHrlim,Hrlimを最大ピッチPgmaxで、Lc移行させて配置した場合、そのはみ出し幅Pgovは、図8より次式(25)にしたがう。
【0076】
【数21】
【0077】
はみ出し幅Pgov分をシフトさせると、ピッチPg2の最大値は(Pgmax−Pgov)となるので式(18)よりWb1となり、さらに、Wg=0の場合であることから、ピッチPg2は式(20)のPg1と一致する。以上より、再生ヘッド長Lgおよび再生ヘッド幅Wgが式(4)を満たさない場合は、再生ヘッドHrのピッチはPg1となる。
【0078】
以上のようにピッチを設定すれば、再生ヘッド幅Wgを再生ヘッド長Lgに対して十分大きく設計できない場合、例えば再生ヘッド長Lgを最短ビット長Lbに対して十分小さく製造できない場合も、再生ヘッドHrの切り換え時に全データを漏らさず再生することが可能である。また、前記の通り、式(3)を満たさない場合の再生ヘッドHrのピッチもPg1である。したがって、再生ヘッドHrの長さLgおよび幅Wgが式(3)および式(4)を満足する場合は、再生ヘッドHrのピッチはPg(式(5))となり、それ以外の場合すなわち式(3)、式(4)の少なくとも一方を満たさない場合は、再生ヘッドHrのピッチはPg1(式(20))となる。
【0079】
ここで、式(3)を満足する再生ヘッド長Lgの最大値、すなわち再生ヘッド長Lgが+アジマス最小記録領域db1のテープ送り方向長さLb1’の1/2となるときの最短ビット長Lb(次式(26))を式(2)に代入すると、再生ヘッド幅Wgは次式(27)となる。
【0080】
【数22】
【0081】
式(27)において式(4)を満足するためには、再生ヘッド幅Wgは最大幅Wg1maxで固定される。このことから、再生ヘッド長Lgが式(3)を満たさない場合、すなわち+アジマス最小記録領域db1のテープ送り方向長さLb1’の1/2を超える場合は、必然的に式(4)も満たさないことになる。
【0082】
図6に戻って、1つの再生ヘッドHrによる再生について説明する。再生ヘッドHrの全体がデータトラックTrに到達した位置を基準とすると、前記の補正距離Lc加算した位置が、図6における位置T3となる。すなわち、1つの再生ヘッドHrが1本のデータトラックTrを連続再生する必要距離T0−T4間を再生距離Lrとすると、次式(28)が成立する。
【0083】
【数23】
【0084】
式(28)に式(21)、(7)を代入すると式(6)となる。
【0085】
図6に示すように、再生ヘッドHr1,Hr2それぞれによるデータトラックTr1の再生信号S11,S21における記録領域d1の信号位置は、補正距離Lcずれて検出されている。このことからも、再生信号S11に、その検出終点から補正距離Lc移行した位置を再生信号S21の検出始点として継ぎ合わせることによって、データトラックTr1の再生信号が完成することがわかる。
【0086】
ここで、−アジマストラックの場合、(θt+θa)=(θt−|θa|)であり、上述したように、θt<|θa|である場合、(θt+θa)<0となり、すなわち、Lc>0となる。したがって、−アジマストラックを再生する場合、先行する再生ヘッドHrが再生距離Lr走行した位置から補正距離Lc進めた位置において、後続の再生ヘッドHrが検出を開始する。なお、1本のデータトラックTrにおける各再生ヘッドHrによる検出開始位置間隔すなわち再生ピッチPrは+アジマストラックと−アジマストラックで同値である。
【0087】
図9を参照して、本発明に係る磁気テープ再生装置における1本のデータトラックについての再生方法を説明する。図9は、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図で、図6の範囲を広げた図である。図9は、図6と同様に、磁気テープMTには傾斜したデータトラックTr0,Tr1,…が記録され、同図の左端に再生ヘッドHr0,Hr1,Hr2,…がテープ幅方向に並んで配置されている。そして、再生ヘッドHr0,Hr1,Hr2,…は、それぞれテープ送り方向と反対方向に走行する。また、データトラックTr0は−アジマストラック、データトラックTr1は+アジマストラックである。
【0088】
データトラックTr1について見ると、まず、再生ヘッドHr1が走行し、再生を行う(区間L11)。再生ヘッドHr1が再生ピッチPr走行した位置で、再生ヘッドHr2がデータトラックTr1に到達し、再生を開始する(区間L12)。この時点では、再生ヘッドHr1による再生も並行して行われる。そして、再生ヘッドHr1が距離Lr1走行したら、再生ヘッドHr1によるデータトラックTr1再生は完了する。一方、再生ヘッドHr2が再生ピッチPr走行した位置で、再生ヘッドHr3がデータトラックTr1に到達し、再生を開始する(区間L13)。以下、同様にデータトラックTr1上を再生ヘッドHr3,Hr4,…が一部区間で重なりながら交替で再生する。そして、再生ヘッドHr1,Hr2,…により検出された再生信号は、それぞれ先行する再生ヘッドHrにより検出された再生信号の末端に継ぎ合わされて、データトラックTr1の再生信号に再構成される。なお、距離Lr1は+アジマストラックにおける再生距離Lrである。
【0089】
同様に、データトラックTr0について見ると、まず、再生ヘッドHr3が走行し、再生を行う(区間L03)。そして、再生ヘッドHr3が距離Lr0走行したら、再生ヘッドHr3によるデータトラックTr0再生は完了する。一方、再生ヘッドHr3による再生開始位置から再生ピッチPr移行した位置で、再生ヘッドHr4がデータトラックTr0に到達し、再生を開始する(区間L04)。以下、同様に再生ヘッドHr5に交替して再生される(区間L05)。−アジマストラックの場合、Lr0<Prなので、距離(Pr−Lr0)すなわちLc0において、再生ヘッドHr3,Hr4,Hr5いずれによっても検出されない空白区間が発生する。そして、再生ヘッドHr3,Hr4,…により検出された再生信号は、それぞれ先行する再生ヘッドHrにより検出された再生信号の末端に継ぎ合わされて、データトラックTr0の再生信号に再構成される。なお、距離Lr0は−アジマストラックにおける再生距離Lrである。
【0090】
以上の方法で、(ヘリカルスキャン方式で)斜め記録された磁気テープをリニア方式で再生することが可能となる。
【0091】
なお、各再生ヘッドHr1,Hr2,…から検出された再生信号を一時記憶するメモリ、再構成を行う処理手段(CPU)、および再構成されたデータを格納する記憶手段(HDD)は、磁気テープ再生装置に内蔵してもよいし、外部装置であってもよい。また、記憶手段を設けず、再構成されたデータを直接コピー先の媒体に書き込む記録装置を内蔵あるいは接続してもよい。
【実施例】
【0092】
以上、本発明を実施するための最良の形態について述べてきたが、以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0093】
D−5方式で記録された磁気テープを再生するための本発明に係る磁気テープ再生装置を設計する。D−5方式において、データトラック角度θt=4.9384°、データトラック幅Wt=20μm、最短ビット長Lb=0.32μm、そしてアジマス角度は、θa0=−20.038°、θa1=19.962°のうち傾斜の大きいθa0の絶対値にさらに公差の最大値として+0.015°とし、θa=20.188°とする。また、再生ヘッドHrのヘッド長はLg=0.1μmとする。
【0094】
まず、再生ヘッドHrの長さLgが式(1)、(3)を満足するかを確認する。
【0095】
【数24】
【0096】
Lg=0.1μmなので、式(29)、(30)より、ヘッド長Lgは式(1)、(3)を共に満足する。ヘッド長Lgが、式(1)を満足することから式(2)を、式(3)を満足することから式(4)、(5)をそれぞれ適用できる。そして、再生ヘッドHrの幅Wgを設計する。式(2)、(4)より幅Wgの範囲を求める。
【0097】
【数25】
【0098】
式(31)、(32)より、再生ヘッドHrの幅Wgを0.49μmとする。次に、式(5)よりピッチPgの範囲を求める。
【0099】
【数26】
【0100】
式(33)より、再生ヘッドHrのピッチPgを18.75μmとする。さらに、再生ピッチPrは、式(21)にしたがう。
【0101】
【数27】
【0102】
式(34)より、走行距離217.0μm毎に、次の再生ヘッドHrによる検出を開始する。また、+アジマストラックにおける補正距離Lc1、−アジマストラックにおける補正距離Lc0は、それぞれ式(23)、(22)にしたがう。
【0103】
【数28】
【0104】
式(35)より、+アジマストラックにおいては補正距離8.794μm手前から、次の再生ヘッドHrにより検出を開始する。一方、式(36)より、−アジマストラックにおいては補正距離5.112μm通過してから、次の再生ヘッドHrにより検出を開始する。そして、1本のデータトラックTrにおける1つの再生ヘッドHrによる再生距離Lrについて、+アジマストラックにおける再生距離Lr1、−アジマストラックにおける再生距離Lr0は、それぞれ式(28)にしたがう。
【0105】
【数29】
【0106】
式(37)より、+アジマストラックにおいては225.794μm、式(38)より、−アジマストラックにおいては211.888μmが、1本のデータトラックTrにおける再生距離である。そして、それぞれの再生ヘッドHrにより検出された再生信号を接続することで、データトラックTr毎の再生信号が得られる。また、D−5方式で記録された磁気テープMTのデータトラックTrのある領域は、テープ幅方向において、音声トラックの下縁位置が11.95mm、映像トラックの下縁位置が1.629mmであるので、両者の差とみなすことができる。この全域に再生ヘッドHrを配置すると、その個数は次式(39)となる。
【0107】
【数30】
【0108】
式(39)より、マルチチャンネルヘッド10に再生ヘッドHrを551個搭載すれば、1回のテープ送りで磁気テープMTの全てのデータトラックTrを再生可能な磁気テープ再生装置となる。また、この磁気テープ再生装置のテープ送り速度を3.0m/sとしたとき、D−5方式におけるテープ送り速度は167.228mm/sであるので、約18倍速再生となる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明に係る磁気テープ再生装置で再生される磁気テープを示す平面図である。
【図2】図1の磁気テープの部分拡大図である。
【図3】本発明に係る磁気テープ再生装置を説明する模式図であり、(a)は外観図、(b)は(a)の部分拡大図で磁気ヘッドの構成の一例を示す図である。
【図4】本発明に係る磁気テープ再生装置のマルチチャンネルヘッドの断面模式図である。
【図5】本発明に係る磁気テープ再生装置における磁気ヘッドの長さおよび幅を説明する図であり、磁気テープの拡大平面図である。
【図6】本発明に係る磁気テープ再生装置における磁気ヘッドの配置を説明する図であり、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図、および、磁気ヘッドで検出された再生信号の波形のエンベロープを示す図である。
【図7】本発明に係る磁気テープ再生装置の磁気ヘッドの長さとピッチの関係を説明する図であり、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図である。
【図8】本発明に係る磁気テープ再生装置の磁気ヘッドの長さおよび幅とピッチとの関係を説明する図であり、磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図である。
【図9】本発明に係る磁気テープ再生装置の磁気ヘッドを配置した磁気テープの拡大平面図である。
【図10】ヘリカルスキャン方式の磁気テープ記録/再生装置を説明する模式図である。
【図11】リニア方式の磁気テープ記録/再生装置を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0110】
10 マルチチャンネルヘッド
MT 磁気テープ
Hr 再生ヘッド(磁気ヘッド)
Tr データトラック
Wt データトラック幅
θt データトラック角度
θa,θa0,θa1 アジマス角度
Lb 最短ビット長
Lg 再生ヘッド長
Wg 再生ヘッド幅
Pg 再生ヘッドピッチ
Lr,Lr0,Lr1 1本のデータトラックにおける再生ヘッドの再生距離
Lc,Lc0,Lc1 補正距離
Pr 再生ピッチ
Hr0〜Hr6 再生ヘッド
Tr0,Tr1,Tr2 データトラック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ送り方向に対してデータトラックが傾斜してデータが記録されている磁気テープを、前記テープ送り方向に平行に磁気ヘッドを走行させて前記データを読み出す磁気テープ再生装置であって、
前記磁気ヘッドは、テープ送り方向長さを長さLg、テープ幅方向長さを幅Wgとし、
前記磁気テープにおいて、前記テープ送り方向に対するデータトラック傾斜角度をθt、アジマス角度をθa、最短ビット長をLbとするとき、前記磁気ヘッドの長さLgおよび幅Wgが以下の式(1)および式(2)を満足することを特徴とする磁気テープ再生装置。
【数1】
【請求項2】
前記磁気テープ再生装置は、長さLg、幅Wgの前記磁気ヘッドをテープ幅方向にピッチPgで配置して備え、
前記磁気テープ再生装置は、前記磁気ヘッドの前記磁気テープに対する走行距離Lr毎に再生信号を検出する前記磁気ヘッドを切り換え、
前記磁気ヘッドにより検出された再生信号に、前記磁気ヘッドを切り換えた位置に対して補正距離Lc移行した位置から前記磁気ヘッドの隣の磁気ヘッドにより検出された再生信号を接続して再構成を行い、
前記磁気テープにおいて、データトラック幅をWt、前記テープ送り方向に対するデータトラック傾斜角度をθt、アジマス角度をθa、最短ビット長をLbとするとき、前記磁気ヘッドの長さLgおよび幅Wgが以下の式(3)および式(4)を満足し、前記ピッチPgが以下の式(5)を満足し、前記走行距離Lrが以下の式(6)を満足し、前記補正距離Lcが以下の式(7)を満足することを特徴とする請求項1に記載の磁気テープ再生装置。
【数2】
【請求項1】
テープ送り方向に対してデータトラックが傾斜してデータが記録されている磁気テープを、前記テープ送り方向に平行に磁気ヘッドを走行させて前記データを読み出す磁気テープ再生装置であって、
前記磁気ヘッドは、テープ送り方向長さを長さLg、テープ幅方向長さを幅Wgとし、
前記磁気テープにおいて、前記テープ送り方向に対するデータトラック傾斜角度をθt、アジマス角度をθa、最短ビット長をLbとするとき、前記磁気ヘッドの長さLgおよび幅Wgが以下の式(1)および式(2)を満足することを特徴とする磁気テープ再生装置。
【数1】
【請求項2】
前記磁気テープ再生装置は、長さLg、幅Wgの前記磁気ヘッドをテープ幅方向にピッチPgで配置して備え、
前記磁気テープ再生装置は、前記磁気ヘッドの前記磁気テープに対する走行距離Lr毎に再生信号を検出する前記磁気ヘッドを切り換え、
前記磁気ヘッドにより検出された再生信号に、前記磁気ヘッドを切り換えた位置に対して補正距離Lc移行した位置から前記磁気ヘッドの隣の磁気ヘッドにより検出された再生信号を接続して再構成を行い、
前記磁気テープにおいて、データトラック幅をWt、前記テープ送り方向に対するデータトラック傾斜角度をθt、アジマス角度をθa、最短ビット長をLbとするとき、前記磁気ヘッドの長さLgおよび幅Wgが以下の式(3)および式(4)を満足し、前記ピッチPgが以下の式(5)を満足し、前記走行距離Lrが以下の式(6)を満足し、前記補正距離Lcが以下の式(7)を満足することを特徴とする請求項1に記載の磁気テープ再生装置。
【数2】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−15993(P2009−15993A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178439(P2007−178439)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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