説明

磁気テープ装置、データ記録方法、データ再生方法

【課題】磁気テープの幅方向の寸法変化に対するサーボトラッキング性能を大幅に向上させることができるリニア記録型磁気テープ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】データ記録時は、磁気テープに記録すべきデータを主データと副データとに分割し、主データを複数のデータトラックのうち主データトラックに記録し、副データを複数のデータトラックのうち副データトラックに記録する。データ再生時は、全てのヘッド素子で読み込んだデータのエラーレートを算出し、エラーレートが所定値よりも低い場合は全てのヘッド素子で主データおよび副データを読み込み、エラーレートが所定値よりも高い場合は、複数のヘッド素子のうち任意のヘッド素子で主データまたは副データを読み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ装置、データ記録方法、データ再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データバックアップ用磁気テープの分野では、バックアップの対象となるハードディスクの大容量化に伴い、1巻当たり800GB以上の記録容量を持つ磁気テープが商品化されている。また、今後4TBを超える大容量バックアップテープが提案されており、その高容量化は不可欠である。
【0003】
このような大容量磁気テープ装置に用いられる記録・再生用磁気ヘッドとしては、基体上に薄膜生成法により、磁極、コイル、磁気抵抗効果型素子層等を形成して、記録は誘導型ヘッド素子で行い、再生は磁気抵抗効果型ヘッド素子を利用して行うMR誘導型複合ヘッド素子(以下、単にヘッド素子あるいはヘッド素子ともいう)を用いることが多い。ヘッド素子は、磁気テープの移送方向に直交する方向に伸びる同一のヘッドレール上に、複数個(8〜16個)配されることが多い。このようなヘッドレールは、磁気テープの移送方向に1本以上配され、一般的には2本配されている。このような構成の磁気テープ装置において、磁気テープのフォワード方向移送時は先行レールに設けられたヘッド素子でデータを記録または再生し、リバース方向移送時には後行レールに設けられたヘッド素子でデータを記録または再生する。
【0004】
また、この磁気ヘッドには、ヘッド素子を複数個設けたヘッドレールの両端にサーボ信号再生用MR型ヘッド素子(以下、サーボヘッドと称する)が配されている。サーボヘッドは、磁気テープに記録されたサーボ信号を読み取ることができる。サーボヘッドで読み取ったサーボ信号を基準にして、多チャンネルのヘッドを同時に動作させて、磁気テープに多チャンネルのデータを記録したり、磁気テープから多チャンネルのデータを読み出したりすることができる。また、サーボヘッドを用いたサーボ制御以外に、磁気テープのバックコート側に光学的位置検出用の複数個の凹部を設けたサーボパターンを、ヘッド素子を複数個設置したレールに対して磁気テープをはさんで対向した位置にある光学センサーで読み取り、光学センサーで読み取ったサーボパターンに基づくサーボ信号を基準にして多チャンネルのデータを同時に記録または再生するようなサーボ制御がある。
【0005】
一方で、磁気テープの高記録密度化により、記録トラック幅が狭くなることや記録トラック幅と再生トラック幅との差(オフトラックマージン)に余裕が小さくなることで、磁気テープの幅方向の位置変動だけでなく、磁気テープの幅方向の僅かな寸法変化によってもデータ再生時にエラーを起こしてしまうことが懸念されている。
【0006】
ここでいう「磁気テープの幅方向の僅かな寸法変化」とは、様々な原因に基づくものがある。例えば、磁気テープがリールに巻かれた状態で保存されている場合、磁気テープ全長において巻き取り時のテンションがかかったまま保存されることになり、さらに巻きの中心部では巻圧が定常的に加わっている状態となるため、クリープ現象によって起こる寸法変化がある。また、データの記録再生時における、磁気テープのテンションの変化によっておこる寸法変化がある。また、磁気テープの使用環境における温度や湿度の影響で起こる寸法変化がある。
【0007】
非特許文献1は、磁気テープの幅方向の寸法変化や磁気テープの損傷等によって連続的に生じるエラー(バーストエラー)を補正する方法を開示している。具体的には、まずユーザーが記録するデータの集まり(データセット)を、細かく分割してエラー訂正コードを付加してサブデータセットを作成する。このサブデータセットをさらに細かく分割して、テープ全幅の全てのチャンネルに振り分けるとともに、テープ長手方向にも記録位置をずらして記録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】JIS X 6175:2006 情報技術―情報交換用12.7mm幅,384-トラック磁気テープカートリッジ−ウルトリウム1様式、JISハンドブック(65)情報記録媒体 2006(P.1857〜P.1945)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今後、さらなる磁気テープの高記録密度化により記録トラック幅が今まで以上に狭くなると、磁気テープの幅方向の位置変動による問題とは別に、磁気テープの幅方向の僅かな寸法変化によって、記録トラックと再生ヘッドとの位置ずれが生じエラーを起こしてしまうという問題が生じる可能性がある。非特許文献1に開示されている記録方法では、このような問題を解消することは困難である。
【0010】
図1は、磁気テープの幅方向の寸法変化の状態を示す模式図である。図1における磁気テープ100aは、幅方向寸法が変化する前の状態を示す。磁気テープ100bは、幅方向寸法が変化した後の状態を示す。磁気テープ100a及び100bには、8本のデータトラックDT0〜DT7と、サーボトラックST1及びST2が形成されている。磁気ヘッド101は、8個のヘッド素子CH0〜CH7と、サーボヘッド101a及び101bを備えている。ヘッド素子CH0〜CH7は、データトラックDT0〜DT7をトレースしながら、データトラックDT0〜DT7にデータを記録したり、データトラックDT0〜DT7に記録されているデータを読み出したりすることができる。
【0011】
サーボヘッド101a及び101bは、サーボトラックST1及びST2をトレースすることで、サーボ信号を再生することができる。磁気テープ装置は、再生されたサーボ信号に基づき、各ヘッド素子が各データトラックにオントラックするように、磁気ヘッド101を磁気テープの幅方向へ変位させる。このような磁気ヘッドの変位制御をトラッキングサーボと称する。
【0012】
磁気テープ100aに示すように、幅方向の寸法が変化する前には、磁気ヘッド101の8チャンネル全てのヘッド素子CH0〜CH7がデータトラックDT0〜DT7にオントラックしていたが、磁気テープ100bに示すように幅方向の寸法が変化(拡大)することにより、全てのヘッド素子CH0〜CH7をデータトラックDT0〜DT7にオントラックすることができなくなる。
【0013】
図1の例では、ヘッド素子CH3、CH4を中心にしてトラッキングサーボをかけているため、磁気テープ幅方向端部のチャンネルに向かうほどオフトラック量(ヘッド素子とデータトラックとの、磁気テープ幅方向のずれ量)が大きくなる。特に、磁気テープ幅方向端部のチャンネルであるヘッド素子CH0及びヘッド素子CH7は、オフトラック量が最大になっており、完全にデータトラックDT0及びDT7から外れている。
【0014】
図1から明確なように、最大オフトラック量は、磁気テープの幅方向に並んだ複数のヘッド素子のうち両端のヘッド素子間の距離が長いほど大きくなる。したがって、全チャンネルのトラッキング精度を向上させるためには、ヘッド素子の間隔を小さくすることが有効である。しかし、ヘッド素子の間隔を小さくするためには、磁気ヘッドの加工精度を高めるとともに、磁気ヘッドの高精度な組立技術が必要となり、製造コストが高くなる。
【0015】
非特許文献1に開示されている構成では、データを読み込んでエラー訂正を行うためには、全チャンネルのデータがほぼ同時に読めなければならない。しかしながら、今後、さらなる磁気テープの高記録密度化により記録トラック幅が今まで以上に狭くなると、磁気テープの幅方向の僅かな寸法変化によって、記録トラックと再生ヘッドとの位置ずれが生じ、エラーを起こしてしまう。したがって、全チャンネルで良好なエラー特性でデータを読み込むのは難しく、将来の磁気テープ装置の高記録密度化を達成することは極めて困難である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願の磁気テープ装置は、ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープにおける複数のデータトラックに同時にデータを記録可能な磁気テープ装置であって、前記ヘッドにおけるデータ記録動作を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記磁気テープに記録すべきデータを主データと副データとに分割し、前記主データを前記複数のデータトラックのうち主データトラックに記録し、前記副データを前記複数のデータトラックのうち副データトラックに記録するよう、前記ヘッドを制御する。
【0017】
本願の磁気テープ装置は、ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープの主データトラック及び副データトラックに記録されているデータを読み込み可能な磁気テープ装置であって、前記ヘッドにおけるデータ読み込み動作を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で前記磁気テープに記録されているデータを読み込み、読み込んだデータのエラーレートを算出し、前記エラーレートと所定値とを比較し、前記エラーレートが前記所定値よりも低い場合は、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データおよび前記副データトラックに記録されている副データを読み込み、前記エラーレートが前記所定値よりも高い場合は、前記複数のヘッド素子のうち任意のヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データまたは前記副データトラックに記録されている副データを読み込む。
【0018】
本願の磁気テープ装置は、ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープの主データトラック及び副データトラックに記録されているデータを読み込み可能な磁気テープ装置であって、前記ヘッドにおけるデータ読み込み動作を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で前記磁気テープに記録されているデータを読み込み、読み込んだデータの再生出力レベルを検出し、前記再生出力レベルと所定値とを比較し、前記再生出力レベルが前記所定値よりも高い場合は、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データおよび前記副データトラックに記録されている副データを読み込み、前記再生出力レベルが前記所定値よりも低い場合は、前記複数のヘッド素子のうち任意のヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データまたは前記副データトラックに記録されている副データを読み込む。
【0019】
本願のデータ記録方法は、ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープにおける複数のデータトラックにデータを同時に記録可能なデータ記録方法であって、前記磁気テープに記録すべきデータを主データと副データとに分割し、前記主データを前記複数のデータトラックのうち主データトラックに記録し、前記副データを前記複数のデータトラックのうち副データトラックに記録する。
【0020】
本願のデータ再生方法は、ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープの主データトラック及び副データトラックに記録されているデータを読み込み可能なデータ再生方法であって、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で前記磁気テープに記録されているデータを読み込み、読み込んだデータのエラーレートを算出し、前記エラーレートと所定値とを比較し、前記エラーレートが前記所定値よりも低い場合は、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データおよび前記副データトラックに記録されている副データを読み込み、前記エラーレートが前記所定値よりも高い場合は、前記複数のヘッド素子のうち任意のヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データまたは前記副データトラックに記録されている副データを読み込む。
【0021】
本願のデータ再生方法は、ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープの主データトラック及び副データトラックに記録されているデータを読み込み可能なデータ再生方法であって、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で前記磁気テープに記録されているデータを読み込み、読み込んだデータの再生出力レベルを検出し、前記再生出力レベルと所定値とを比較し、前記再生出力レベルが前記所定値よりも高い場合は、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データおよび前記副データトラックに記録されている副データを読み込み、前記再生出力レベルが前記所定値よりも低い場合は、前記複数のヘッド素子のうち任意のヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データまたは前記副データトラックに記録されている副データを読み込む。
【0022】
本願の磁気テープは、データをリニア記録可能な複数のデータトラックを備えた磁気テープであって、前記データトラックは、当該磁気テープの長手方向に平行に形成され、互いに平行かつ隣り合う複数の主データトラックと、当該磁気テープの長手方向に平行に形成され、互いに平行かつ隣り合う複数の副データトラックとを含み、前記主データトラックと前記副データトラックとは互いに平行である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、磁気テープの幅方向の寸法変化に対するサーボトラッキング性能を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】磁気テープの幅方向の寸法変動を説明するための模式図
【図2】本実施の形態にかかる磁気テープ装置のブロック図
【図3】磁気ヘッドの斜視図
【図4】本実施の形態にかかる磁気テープ装置で磁気テープに記録可能なデータの構造を示すブロック図
【図5A】グループAに含まれるデータの構造を示すブロック図
【図5B】グループBに含まれるデータの構造を示すブロック図
【図5C】本実施の形態にかかる磁気テープ装置で記録されたデータトラックの構成を示す模式図
【図6A】ヘッド素子CH0〜CH3でデータトラックDT0〜DT3をトレースしている状態を示す模式図
【図6B】ヘッド素子CH4〜CH7でデータトラックDT4〜DT7をトレースしている状態を示す模式図
【図7】データ再生動作を示すフローチャート
【図8】グループAに対応するデータブロックを読み込む動作を示すフローチャート
【図9】データ再生動作を示すフローチャート(変形例1)
【図10】グループAに対応するデータブロックを読み込む動作を示すフローチャート(変形例1)
【図11】本実施の形態にかかる磁気テープ装置で磁気テープに記録可能なデータの構造を示すブロック図(変形例2)
【図12A】グループAに含まれるデータの構造を示すブロック図(変形例2)
【図12B】グループBに含まれるデータの構造を示すブロック図(変形例2)
【図12C】グループCに含まれるデータの構造を示すブロック図(変形例2)
【図12D】グループDに含まれるデータの構造を示すブロック図(変形例2)
【図12E】本実施の形態にかかる磁気テープ装置で記録されたデータトラックの構成を示す模式図(変形例2)
【図13】図12Eに示すパターンでデータが記録された磁気テープから、データを読み込む際の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態)
〔1.磁気テープ装置の構成〕
非特許文献1に開示されているデータ記録方法は、ユーザーが記録するデータファイルを分割したデータの集まり(データセット)を、さらに細かく分割してエラー訂正コードを付加してサブデータセットを作成する。ここで1つのサブデータセットが、単独でエラー訂正が行えるエラー訂正処理単位であり、サブデータセットの中のデータが磁気テープの損傷やオフトラック等でデータが消滅して、その消滅したデータ量がエラー訂正で復元可能なデータ処理量を超えてしまうと、データが完全に消滅してしまう。
【0026】
また、非特許文献1に開示されているデータ記録方法では、磁気テープの損傷等によって連続的に生じるエラー(バーストエラー)の影響を少なくするために、1つのサブデータセットをさらに細かく分割(S1、S2、S3・・・Sn−2、Sn−1、Snのn個に分割)して全てのチャンネル(8チャンネル、CH0〜CH7)に振り分けて8本のデータトラック(トラック0からトラック7)に記録し、さらに同時に複数のサブデータセットを記録することにより、テープ長手方向にもずらして記録される。このため、データを読み込んでエラー訂正を行うためには、全チャンネルのデータがほぼ同時に読めなければならない。
【0027】
しかしながら、今後、さらなる磁気テープの高記録密度化により記録トラック幅が今まで以上に狭くなると、磁気テープの幅方向の僅かな寸法変化によって、記録トラックと再生ヘッドとの位置ずれが生じエラーを起こしてしまう。したがって、全チャンネルで良好なエラー特性でデータを読み込むのは難しく、将来の磁気テープ装置の高記録密度化を達成することは極めて困難である。
【0028】
一方、磁気テープにおいては、現在、リニア型磁気テープ装置用の磁気テープに使用しているベースフィルム(PETフィルムやPENフィルム)の寸法安定性は限界に近づいており、今後、さらなる磁気テープの高記録密度化に伴った狭トラック幅化に対応することは難しい。現在、PENフィルムよりも寸法安定性の優れたベースフィルムとしては、アラミドフィルムがある。アラミドフィルムは、リニア型磁気テープ装置用よりもテープ幅が狭く、テープ長が短い、ヘリカル型磁気テープ装置に用いられていることが多い。しかし、アラミドフィルムは、価格が高く、ヘリカル型磁気テープ装置よりもテープ幅が広く、テープ長が長いリニア型磁気テープ装置における製品化は、コスト的に難しい。したがって、リニア型磁気テープ装置に用いる磁気テープのベースフィルムは、PETフィルムやPENフィルムを用いることが望ましい。
【0029】
本実施の形態は、磁気テープの幅方向の寸法が変化したとしても、優れたエラー特性のデータを再生することができることを目的としている。また、そのような構成を、低コストに実現することを目的としている。
【0030】
図2は、本実施の形態にかかる磁気テープ駆動装置のブロック図である。図3は、磁気ヘッド1、ヘッド変位部7の具体構成を示す斜視図である。なお、本実施の形態にかかる磁気テープ駆動装置は、一例として、コンピュータテープに対してデータのリニア記録が可能な装置を挙げている。
【0031】
図2に示すように、本実施の形態にかかる磁気テープ駆動装置は、磁気ヘッド1、テープガイド2及び3、第1のリール4、ヘッド変位部7、操作部11、制御部12、記録再生制御部13、変位制御部14、モータ21及び22を備えている。第2のリール5、磁気テープ6は、磁気テープ駆動装置に着脱可能である。
【0032】
磁気ヘッド1は、磁気テープ6に対して各種情報を記録したり、磁気テープ6に記録されている各種情報を再生したりすることができる。磁気ヘッド1は、磁気テープ6が本装置内の所定の位置にローディングされている状態において、MR素子を組み込んだMRヘッドユニット1a(図3参照)が配されている摺動面1b(図3参照)が磁気テープ6に接触している。なお、本実施の形態では磁気ヘッド1は、MR素子(磁気抵抗効果素子)を備えたMRヘッドで実現したが、これに限定されるものではない。
【0033】
テープガイド2及び3は、磁気ヘッド1の第1のリール4側及び第2のリール5側にそれぞれ配され、磁気ヘッド1に対する磁気テープ6の巻き付け角や、磁気テープ6の幅方向の位置を規制している。
【0034】
第1のリール4は、第2のリール5(後述)から引き出された磁気テープ6を巻き回すことができる。第1のリール4は、予め磁気テープ駆動装置内に配されている。第1のリール4は、制御部12によって駆動制御されるモータ21によって矢印EまたはGに示す方向へ回転駆動される。
【0035】
第2のリール5は、磁気テープ駆動装置に着脱可能なカートリッジ(不図示)内に配されている。第2のリール5は、カートリッジ(不図示)を装置内に装着した際に、装置内に配されているリール台(不図示)に装着される。リール台は、制御部12によって駆動制御されるモータ22によって矢印FまたはHに示す方向へ回転駆動される。第1のリール4が矢印Eに示す方向へ回転し、第2のリール5が矢印Fに示す方向へ回転することにより、磁気テープ6を矢印Aに示す方向(第1の方向、フォワード方向)へ移送させることができる。また、第1のリール4が矢印Gに示す方向へ回転し、第2のリール5が矢印Hに示す方向へ回転することにより、磁気テープ6を矢印Bに示す方向(第2の方向、リバース方向)へ移送させることができる。
【0036】
磁気テープ6は、データ記録用の磁気テープである。第2のリール5から引き出された磁気テープ6は、テープガイド3、磁気ヘッド1、テープガイド2の順に接触され、第1のリール4に巻回される。磁気テープ6は、本実施の形態ではLTO規格に準拠した磁気テープで実現したが、これに限定されるものではない。
【0037】
ヘッド変位部7は、本実施の形態では、ボイスコイルモータで実現したが、これに限定されない。ヘッド変位部7は、変位制御部14からのトラッキングサーボ制御に基づいて、磁気ヘッド1を図3に示す矢印C及びDに示す方向(磁気テープ6の幅方向)に変位させることができる。すなわち、本実施の形態の磁気テープ駆動装置は、LTO規格に準拠したフォーマットで磁気テープ6にデータを記録する装置である、したがって、磁気ヘッド1は、データ記録時に磁気テープ6の幅方向に平行な複数のトラックを形成するため、およびデータ再生時に磁気テープの幅方向に形成された複数のトラックを選択的にトレースするために、磁気テープ6の幅方向へ変位可能である。なお、磁気テープ6に対する磁気ヘッド1のトラッキング動作については、例えば特許第4139428号公報に開示されているため、本明細書での詳しい説明は省略する。
【0038】
操作部11は、ユーザによる記録命令や停止命令などの各種操作を受け付ける。操作部11は、ユーザによる各種操作を受け付けると、制御信号を制御部12に送る。
【0039】
制御部12は、操作部11から制御信号が送られると、その制御信号の内容に応じて、記録再生制御部13、変位制御部14、モータ21及び22を制御する。具体的には、制御部12は、記録再生制御部13に対して、磁気テープ6に情報を記録するための命令信号、および磁気テープ6に記録されている情報を読み出すための命令信号を出力する。制御部12は、変位制御部14に対して、磁気ヘッド1を磁気テープ6の幅方向へ変位させるための命令を送る。制御部12は、モータ21及び22に対して、動作開始または動作停止させるための命令を送る。
【0040】
記録再生制御部13は、制御部12からの制御指令により、磁気ヘッド1を記録動作あるいは再生動作させる。具体的には、記録再生制御部13は、磁気ヘッド1に含まれる複数のヘッド素子CH0〜CH7(図1参照)に所定の電流を流すよう制御して、磁気ヘッド1における磁気テープ6との摺接部近傍に磁界を発生させる。これにより、磁気テープ6に対してデータを記録する。また磁気テープ6に記録されているデータ信号から発生する磁界を、磁気ヘッド6のヘッド素子に流した電流の変化から検出することにより、データを読み込んだりすることができる。本実施の形態では、磁気ヘッド1に含まれる複数のヘッド素子CH0〜CH7の中のヘッド素子CH0〜CH3をグループAのヘッド素子、ヘッド素子CH4〜CH7をグループBのヘッド素子として、記録再生制御部13は、少なくとも磁気テープ6に記録されているデータを読み込む際、グループAのヘッド素子であるヘッド素子CH0〜CH3の動作と、グループBのヘッド素子であるヘッド素子CH4〜CH7の動作とを、独立して制御可能である。
【0041】
変位制御部14は、ヘッド変位部7に対して磁気ヘッド1を磁気テープ6の幅方向へ変位させる命令を送る。具体的には、変位制御部14は、ヘッド変位部7が例えばボイスコイルモータで実現されている場合は、ボイスコイルモータに対して駆動電流を印加する。
【0042】
〔2.データ記録時の動作〕
図4は、本実施の形態にかかる磁気テープ装置で生成可能なデータの構造を示す。図4は、ホストコンピューター31及び磁気テープ装置32で生成されるデータの遷移を示している。
【0043】
磁気テープにデータを記録する場合は、まずユーザーがホストコンピューター31を操作して、ユーザーファイルを作成する。ユーザーファイルのサイズは、例えばLTO規格では最大約1.6MByteである。作成されたユーザーファイルは、ホストコンピューター31においてエラー訂正コードが付加されて、プロテクテドレコードPに変換される。
【0044】
プロテクテドレコードPは、ケーブルなどの通信手段を介して磁気テープ装置32へ伝送され、磁気テープ装置32内のバッファメモリに一時的に格納される。
【0045】
磁気テープ装置32は、ホストコンピューター31から順次伝送されるプロテクテドレコードPをグループAとグループBとに振り分ける。本実施の形態では、ホストコンピューター31から伝送されるプロテクテドレコードPを交互にグループAとグループBとに振り分ける。これにより、グループAには、プロテクテドレコードP1、P3、・・・Pmが振り分けられる。また、グループBには、プロテクテドレコードP2、P4、・・・Pnが振り分けられる。なお、本実施の形態における振り分け方法は一例である。
【0046】
次に、磁気テープ装置32は、グループA及びBに含まれる各プロテクテドレコードを、それぞれ例えば403884Byteのサイズ毎に分割する。次に、分割したプロテクテドレコードに、例えば468ByteのDSIT(Data Set Information Table)を付加して、404352ByteのデータセットD1、D2、・・・Dmを作成する。
【0047】
次に、磁気テープ装置32は、作成したデータセットを例えば25272Byteに分割する。次に、分割したデータセットにエラー訂正コード(ECC:Error Correcting Code)を付加して、サブデータセットS1、S2、・・・Snを作成する。サブデータセットは、単独でエラー訂正が行えるエラー訂正処理単位である。
【0048】
なお、上記のようにホストコンピューター31から伝送されるプロテクテドレコードPに基づきサブデータセットS1、S2、・・・Snを作成するまでの処理は、図2に示す制御部12で実行することができる。
【0049】
また、グループBについても同様にデータセット及びサブデータセットが作成されるが、図4では図示を省略している。また、グループAに対応するデータセット及びサブデータセットの作成処理と、グループBに対応するデータセット及びサブデータセットの作成処理とは、同時に実行することが好ましい。
【0050】
次に、磁気テープ装置32は、作成したサブデータセットをさらに分割してグループA、グループB内の複数のデータトラックに分散して、磁気テープにデータを記録する。以下、記録動作について図5A、図5B、および図5Cを参照して説明する。
【0051】
図5A、図5Bは、磁気テープに記録するデータの構造を示す模式図である。図5Cは、磁気テープにおけるデータトラックを示す模式図である。図5Cにおいて、矢印方向は磁気テープの長手方向に対応し、矢印方向に直交する方向はデータトラックDT0〜DT7を示している。格子により囲まれた領域は、データが記録可能な領域である。ドットハッチングを付している領域は、グループA、Bにおける1番目のサブテータセットS1から分割されたデータが記録されている領域であり、1つのサブデータセットから分割されたデータブロックのデータトラック上における分散の様子を示す。
【0052】
磁気テープにデータを記録する場合、制御部12は、まずグループAに対応する1番目のサブデータセットS1を64個(=4トラック×16)のデータブロックA1、A2、・・・Anに分割処理し、グループBに対応する1番目のデータセットS1を64個(=4トラック×16)のデータブロックB1、B2、・・・Bnに分割処理する。続いてグループA、Bにおける2番目から4番目に対応するサブデータセットS2、S3、S4も同様に分割処理する。
【0053】
制御部12は、グループAにおける1番目から4番目に対応するサブデータセットから作成したデータブロックA1、C1、E1、G1・・・An、Cn、En、GnとグループBにおける1番目から4番目に対応するサブデータセットから作成したデータブロックB1、D1、F1、H1・・・Bn、Dn、Fn、Hnとを、記録再生制御部13に送る。記録再生制御部13は、磁気ヘッド1におけるヘッド素子CH0〜CH3を動作させて、データブロックA1、C1、E1、G1・・・An、Cn、En、Gnを磁気テープ6におけるデータトラックDT0〜DT3に記録するよう制御する。また、記録再生制御部13は、磁気ヘッド1におけるヘッド素子CH4〜CH7を動作させて、データブロックB1、D1、F1、H1・・・Bn、Dn、Fn、Hnを磁気テープ6におけるデータトラックDT4〜DT7に記録するよう制御する。
【0054】
具体的には、図5Cに示すように、まずヘッド素子CH0、CH1、CH2、CH3を動作させてデータブロックA1、C1、E1、G1をデータトラックDT0、DT1、DT2、DT3に記録する動作と、ヘッド素子CH4、CH5、CH6、CH7を動作させてデータブロックB1、D1、F1、H1をデータトラックDT4、DT5、DT6、DT7に記録する動作とを同時に実行する。次に、ヘッド素子CH0、CH1、CH2、CH3を動作させてデータブロックC2、E2、G2、A2をデータトラックDT0、DT1、DT2、DT3に記録する動作と、ヘッド素子CH4、CH5、CH6、CH7を動作させてデータブロックD2、F2、H2、B2をデータトラックDT4、DT5、DT6、DT7に記録する動作とを同時に実行する。次に、ヘッド素子CH0、CH1、CH2、CH3を動作させてデータブロックE3、G3、A3、C3をデータトラックDT0、DT1、DT2、DT3に記録する動作と、ヘッド素子CH4、CH5、CH6、CH7を動作させてデータブロックF3、H3、B3、D3をデータトラックDT4、DT5、DT6、DT7に記録する動作とを同時に実行する。次に、ヘッド素子CH0、CH1、CH2、CH3を動作させてデータブロックG4、A4、C4、E4をデータトラックDT0、DT1、DT2、DT3に記録する動作と、ヘッド素子CH4、CH5、CH6、CH7を動作させてデータブロックH4、B4、D4、F4をデータトラックDT4、DT5、DT6、DT7に記録する動作とを同時に実行する。以降、上記と同様に、図5Cに示す配置及び記録順で、グループAに対応するデータブロックをデータトラックDT0、DT1、DT2、DT3に記録し、グループBに対応するデータブロックをデータトラックDT4、DT5、DT6、DT7に記録する。
【0055】
ここで、非特許文献1に開示されている記録方法では、ホストコンピューターから伝送されるプロテクテドレコードをグループ分けする処理は行っていないため、1つのサブデータセットから分割した8チャンネルのデータブロックを磁気テープの幅方向及び長手方向に順次記録する方法であった。本実施の形態では、ホストコンピューターから伝送されるプロテクテドレコードを複数のグループに分け、そのグループ毎にデータブロックを作成し、図5A〜図5Cに示すようにグループ毎に1つのサブデータセットから分割した4チャンネルのデータブロックを磁気テープの幅方向及び長手方向に順次記録する方法である。
【0056】
本実施の形態では、グループA及びBに対応するデータブロックを、磁気テープ6に同時に記録することができるので、磁気テープ装置が持っている最大の転送レートでデータを記録することができる。
【0057】
〔3.データ再生時の動作〕
図6Aは、ヘッド素子CH0〜CH3でデータトラックDT0〜DT3をトレースしている状態を示す模式図である。図6Bは、ヘッド素子CH4〜CH7でデータトラックDT4〜DT7をトレースしている状態を示す模式図である。図6A及び図6Bに示す磁気テープ6は、幅方向の寸法が増加した磁気テープである。図6Aに示す状態と図6Bに示す状態とは、磁気ヘッド1の位置が異なる。
【0058】
図6A及び図6Bに示すように幅方向の寸法が拡大した磁気テープ6に対して、データトラックDT3及びDT4を基準にトラッキングサーボを行うと、図1に示す磁気テープ100bのようにデータトラックDT0及びDT7に対してヘッド素子が大きく外れてしまうことになる(オフトラック量が最大)。そこで本実施の形態では、図5A〜図5Cに示すように、磁気テープ6に2つのグループA及びBに分けたデータブロックを記録する構成としたことによって、データ再生時、グループA及びBに対応するデータブロックのうちいずれか一方にトラッキングサーボを行うことで、オフトラック量を低減させている。以下、データ再生時の動作について詳しく説明する。
【0059】
図7は、データ再生時の動作を示すフローチャートである。図8は、グループAに対応するデータブロックを読み込む時の動作を示すフローチャートである。
【0060】
図7に示すようにデータ再生始端部からデータ再生時、制御部12は、まず記録再生制御部13に対してグループA及びBに対応するデータブロック(8CH)を同時に読み込む命令を送る。記録再生制御部13は、制御部12からの命令に基づき、磁気ヘッド1における全てのヘッド素子CH0〜CH7を動作させて、データトラックDT0〜DT7に記録されているデータブロックを読み込む。例えばこのとき、グループA及びBに対応するデータブロックをそれぞれ約10MByte(例えば25データセット、10.0971MByte)づつ読み込む。記録再生制御部13は、ヘッド素子CH0〜CH7により読み込まれたデータブロックを、制御部12に送る。制御部12は、記録再生制御部13から送られるデータブロックからサブデータセットを復元する(S71)。
【0061】
次に、制御部12は、グループA、Bのそれぞれにおいて、サブデータセットに付加されているエラー訂正コード(ECC)に基づき、エラー訂正を行い、同時にエラーレートを算出する。エラーレートは、エラー訂正コードで検出されたエラー数(単位:Byte)をデータ容量(単位:Byte)で除算することで算出することができる(S72)。
【0062】
次に、制御部12は、グループAにおけるエラーレートと、グループBにおけるエラーレートと、第1の上限値(例えば10-5)とを比較する(S73)。
【0063】
制御部12は、比較処理S73の結果、グループA及びBの両方において、エラーレートが第1の上限値以下の場合は、ヘッド素子CH0〜CH7でデータトラックDT0〜DT7のデータブロックを同時に読み込む処理(8チャンネル同時読み込み)を継続する。すなわち、「グループA及びBの両方においてエラーレートが第1の上限値以下の場合」とは、ヘッド素子CH0〜CH7がそれぞれデータトラックDT0〜DT7にオントラックし、データトラックDT0〜DT7におけるデータを確実に読み込むことができることを示している。したがって、8チャンネル同時読み込み処理を実行することができる。この場合、磁気テープ装置が持っている最大の転送レートでデータを読み込むことができる(S74)。
【0064】
一方、制御部12は、比較処理S73の結果、グループA及びBのうち少なくともいずれか一方においてエラーレートが第1の上限値を超えると、8チャンネル同時読み込み処理から4チャンネル同時読み込み処理へ移行する。具体的には、まず、ヘッド素子CH4〜CH7の動作を停止させて、データ再生始端部からヘッド素子CH0〜CH3のみでデータトラックDT0〜DT3のデータブロックを読み込むよう制御する(S75)。次に、ヘッド素子CH0〜CH3の動作を停止させて、データ再生始端部に戻り、ヘッド素子CH4〜CH7を動作させてデータトラックDT4〜DT7のデータブロックを読み込むよう制御する(S76)。
【0065】
すなわち、磁気テープ6の幅方向の寸法変化などによりオフトラック量が大きくなっている場合は、8チャンネル同時読み込み処理を行ったときに得られるデータに基づき算出されるエラーレートが高くなる。したがって、算出されたエラーレートと第1の上限値とを比較して、エラーレートが第1の上限値よりも高い場合は、磁気テープ6の幅方向の寸法変化などによりオフトラック量が大きくなっていると判断することができる。本実施の形態では、この判断に基づき、8チャンネル同時読み込み処理から、4チャンネル同時読み込み処理(S75、S76)へ移行する。
【0066】
図8に示すように、グループAに対応するデータブロックを読み込む場合は、まず磁気ヘッド1を磁気テープ6の幅方向(図3における矢印Cに示す方向)へ変位させる。具体的には、磁気ヘッド1を、8チャンネルのデータトラックDT0〜DT7のうちの中央のデータトラックDT3及びDT4に対してトラッキングサーボを行っている位置から、矢印Cに示す方向へ、例えばトラック幅の1/8の移動量について変位させる(S81)。
【0067】
次に、制御部12は、記録再生制御部13に対してグループAに対応するデータブロック(4CH)を同時に読み込む命令を送る。記録再生制御部13は、制御部12からの命令に基づき、磁気ヘッド1におけるヘッド素子CH0〜CH3を動作させて、データトラックDT0〜DT3に記録されているデータブロックを読み込む。例えばこのとき、グループAに対応するデータブロックA1、C1、E1、G1・・・An、Cn、En、Gnを約10MByte(例えば25データセット、10.0971MByte)読み込む。記録再生制御部13は、ヘッド素子CH0〜CH3により読み込まれたデータブロックを、制御部12に送る。制御部12は、記録再生制御部13から送られるデータブロックからサブデータセットを復元する(S82)。
【0068】
次に、制御部12は、グループAのデータブロック(サブデータセット)に付加されているエラー訂正コード(ECC)に基づき、エラー訂正を行い、同時にエラーレートを算出する。エラーレートは、エラー訂正コードで検出されたエラー数(単位:Byte)をデータ容量(単位:Byte)で除算することで算出することができる(S83)。
【0069】
次に、制御部12は、算出したエラーレートと第2の上限値(例えば10-6)とを比較する(S84)。
【0070】
制御部12は、比較処理S84の結果、算出したエラーレートが第2の上限値以下の場合は、磁気ヘッド1及び磁気テープ6を読み込み開始位置へ戻し、ヘッド素子CH0〜CH3でデータトラックDT0〜DT3のデータブロックを同時に読み込む処理(4チャンネル同時読み込み)を開始する。このまま、読み込み終了位置まで、データブロックの読み込みを実行する(S85)。
【0071】
一方、制御部12は、比較処理S84の結果、算出したエラーレートが第2の上限値を超えると、磁気ヘッド1の変位方向を反転させる。すなわち、磁気ヘッド1を任意の位置から磁気テープ6の幅方向へ変位させたとき、磁気ヘッド1の変位方向がオフトラック量が小さくなる方向である場合は、エラーレートが小さくなるはずである。結果的に、磁気ヘッド1の変位後にエラーレートが高くなるということは、オフトラック量が大きくなったことを示し、磁気ヘッド1の変位方向が誤っているということが考えられる。よって、エラーレートが増加して第2の上限値を超えると、磁気ヘッド1の変位方向が誤っていると判断し、磁気ヘッド1の変位方向を反転させる(S86)。
【0072】
以降、S81〜S84、S86の処理を繰り返し実行することで、磁気ヘッド1を少しずつ矢印CまたはDに示す方向へ変位させながら、エラーレートが第2の上限値(10-6)よりも小さくなる位置を探す。磁気ヘッド1を、エラーレートが第2の上限値よりも小さくなる位置へ変位させることにより、図6Aに示すようにヘッド素子CH0〜CH3をデータトラックDT0〜DT3にオントラックさせることができる。
【0073】
なお、ヘッド素子CH4〜CH7でデータトラックDT4〜DT7のデータブロックB1、D1、F1、H1・・・Bn、Dn、Fn、Hnを読み込む動作は、磁気ヘッド1の変位方向以外は図8に示すフローと同等であるため、詳細な説明は省略する。すなわち、データ再生始端部に戻り、図8に示すフローに基づいて磁気ヘッド1を磁気テープ6の幅方向へ変位させ、図6Bに示すようにヘッド素子CH4〜CH7をデータトラックDT4〜DT7にオントラックさせることで、データブロックB1、D1、F1、H1・・・Bn、Dn、Fn、Hnを読み込むことができる。
【0074】
〔4.磁気テープ装置の動作の変形例1〕
本実施の形態では、8チャンネル同時読み込み動作と4チャンネル同時読み込み動作とを切り替える判断方法として、エラーレートと上限値とを比較した結果を用いているが、再生出力レベルと上限値とを比較した結果を用いる構成としてもよい。
【0075】
図9は、データ再生時の動作の変形例を示すフローチャートである。図10は、グループAに対応するデータブロックを読み込む時の動作を示すフローチャートである。
【0076】
図9に示すようにデータ再生始端部からデータ再生時、制御部12は、まず記録再生制御部13に対してグループA及びBに対応するデータブロック(8CH)を同時に読み込む命令を送る。記録再生制御部13は、制御部12からの命令に基づき、磁気ヘッド1における全てのヘッド素子CH0〜CH7を動作させて、データトラックDT0〜DT7に記録されているデータブロックを読み込む。例えばこのとき、グループA及びBに対応するデータブロックをそれぞれ約2MByte(例えば5データセット、2.02176MByte)づつ読み込む。記録再生制御部13は、ヘッド素子CH0〜CH7により読み込まれたデータブロックの再生信号レベルの平均値をグループA、Bのそれぞれにおいて算出する(S92)。次に記録再生制御部13はグループAにおける再生出力レベルの平均値と、グループBにおける再生出力レベルの平均値と、第1の所定値とを比較する(S93)。記録再生制御部13は、比較処理S93の結果、グループA及びBの両方において、再生出力レベルの平均値が第1の所定値以上の場合は、読み込んだデータブロックを、制御部12に送り、制御部12は、記録再生制御部13から送られるデータブロックからサブデータセットを復元する。
【0077】
次に、制御部12は、グループA、Bのそれぞれにおいて、サブデータセットに付加されているエラー訂正コード(ECC)に基づきエラー訂正を行う。以後、制御部12と記録再生制御部13は、ヘッド素子CH0〜CH7でデータトラックDT0〜DT7のデータブロックを同時に読み込む処理(8チャンネル同時読み込み)を継続する。すなわち、「グループA及びBの両方において再生出力レベルの平均値が第1の所定値以上の場合」とは、ヘッド素子CH0〜CH7がそれぞれデータトラックDT0〜DT7にオントラックし、データトラックDT0〜DT7におけるデータを確実に読み込むことができることを示している。したがって、8チャンネル同時読み込み処理を実行することができる。この場合、磁気テープ装置が持っている最大の転送レートでデータを読み込むことができる(S94)。
【0078】
一方、記録再生制御部13は、比較処理S93の結果、グループA及びBのうち少なくともいずれか一方において再生出力レベルの平均値が第1の所定値未満の場合は、制御部12に対して、8チャンネル同時読み込み処理から4チャンネル同時読み込み処理へ移行する命令を送る。記録再生制御部13から送られてきた命令に基づき、制御部12は8チャンネル同時読み込み処理から4チャンネル同時読み込み処理へ移行する。具体的には、まず、ヘッド素子CH4〜CH7の動作を停止させて、データ再生始端部からヘッド素子CH0〜CH3のみでグループAに対応するデータトラックDT0〜DT3のデータブロックを読み込むよう制御する(S95)。次に、ヘッド素子CH0〜CH3の動作を停止させて、データ再生始端部に戻り、ヘッド素子CH4〜CH7を動作させてデータトラックDT4〜DT7のデータブロックを読み込むよう制御する(S96)。
【0079】
すなわち、磁気テープ6の幅方向の寸法変化などによりオフトラック量が大きくなっている場合は、8チャンネル同時読み込み処理を行ったときに得られるデータの再生出力レベルが低くなる。したがって、検出された再生出力レベルの平均値と第1の所定値とを比較して、再生出力レベルの平均値が第1の所定値未満の場合は、磁気テープ6の幅方向の寸法変化などによりオフトラック量が大きくなっていると判断することができる。本実施の形態では、この判断に基づき、8チャンネル同時読み込み処理から、4チャンネル同時読み込み処理(S95、S96)へ移行する。この場合、基準となる信号を予め記録し、この信号の出力レベルと再生出力レベルとを比較することが好ましい。
【0080】
なお、本実施の形態では、再生出力レベルの平均値と第1の所定値とを比較する構成としたが、各グループに含まれる複数のデータブロックの再生出力レベルのうち、各グループにおける特定のデータブロックの再生出力レベルと第1の所定値とを比較する構成としてもよい。また、各グループ毎に、複数のデータブロックの再生出力レベルのうち上限値または下限値と、第1の所定値とを比較する構成としてもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、グループA,Bのそれぞれにおいて算出した再生出力レベルの平均値と第1の所定値とを比較する構成としたが、グループA,Bの全ての再生出力レベルの平均値と第1の所定値とを比較する構成としてもよい。
【0082】
図10に示すように、グループAに対応するデータブロックを読み込む場合は、まず磁気ヘッド1を磁気テープ6の幅方向(図3における矢印Cに示す方向)へ変位させる。具体的には、磁気ヘッド1を、8チャンネルのデータトラックDT0〜DT7のうちの中央のデータトラックDT3及びDT4に対してトラッキングサーボを行っている位置から、矢印Cに示す方向へ、例えばトラック幅の1/8の移動量について変位させる(S101)。
【0083】
次に、制御部12は、記録再生制御部13に対してグループAに対応するデータブロック(4CH)を同時に読み込む命令を送る。記録再生制御部13は、制御部12からの命令に基づき、磁気ヘッド1におけるヘッド素子CH0〜CH3を動作させて、データトラックDT0〜DT3に記録されているデータブロックを読み込む(S102)。例えばこのとき、グループAに対応するデータブロックA1、C1、E1、G1・・・An、Cn、En、Gnを約2MByte(例えば25データセット、2.02176MByte)読み込む。記録再生制御部13は、ヘッド素子CH0〜CH3により読み込まれたデータブロックの再生信号レベルの平均値を算出する(S103)。
【0084】
次に、記録再生制御部13はグループAにおける再生出力レベルの平均値と、第2の所定値とを比較する(S104)。
【0085】
記録再生制御部13は、比較処理S104の結果、再生出力レベルの平均値が第2の所定値以上の場合は、制御部12に対してヘッド素子CH0〜CH3でグループAに対応するデータトラックDT0〜DT3のデータブロックを同時に読み込む処理(4チャンネル同時読み込み)を開始する命令を送る。記録再生制御部13からの命令に基づき、制御部12は、磁気ヘッド1及び磁気テープ6を読み込み開始位置へ戻し、ヘッド素子CH0〜CH3でデータトラックDT0〜DT3のデータブロックを同時に読み込む処理を、読み込み終了位置まで実行する(S105)。
【0086】
一方、記録再生制御部13は、比較処理S104の結果、再生出力レベルの平均値が第2の所定値未満の場合は、制御部12に対して磁気ヘッド1の変位方向を反転させる命令を送る。すなわち、磁気ヘッド1を任意の位置から磁気テープ6の幅方向へ変位させたとき、磁気ヘッド1の変位方向がオフトラック量が小さくなる方向である場合は、再生出力レベルが大きくなるはずである。結果的に、磁気ヘッド1の変位後に再生出力レベルが低くなるということは、オフトラック量が大きくなったことを示し、磁気ヘッド1の変位方向が誤っているということが考えられる。よって、再生出力レベルが低下してその平均値が第2の所定値未満になると、磁気ヘッド1の変位方向が誤っていると判断し、磁気ヘッド1の変位方向を反転させる(S106)。
【0087】
以降、制御部12と記録再生制御部13は、S101〜S104、S106の処理を繰り返し実行することで、磁気ヘッド1を少しずつ矢印CまたはDに示す方向へ変位させながら、再生出力レベルの平均値が第2の所定値以上となる位置を探す。磁気ヘッド1を、再生出力レベルの平均値が第2の所定値以上となる位置へ変位させることにより、図6Aに示すようにヘッド素子CH0〜CH3をデータトラックDT0〜DT3にオントラックさせることができる。
【0088】
なお、ヘッド素子CH4〜CH7でグループAに対応するデータトラックDT4〜DT7のデータブロックB1、D1、F1、H1・・・Bn、Dn、Fn、Hnを読み込む動作は、磁気ヘッド1の変位方向以外は図10に示すフローと同等であるため、詳細な説明は省略する。すなわち、データ再生始端部に戻り、図10に示すフローに基づいて磁気ヘッド1を磁気テープ6の幅方向へ変位させ、図6Bに示すようにヘッド素子CH4〜CH7をデータトラックDT4〜DT7にオントラックさせることで、データブロックB1、D1、F1、H1・・・Bn、Dn、Fn、Hnを読み込むことができる。
【0089】
なお、本実施の形態では、再生出力レベルの平均値と第2の所定値とを比較する構成としたが、各グループに含まれる複数のデータブロックの再生出力レベルのうち、各グループにおける特定のデータブロックの再生出力レベルと第2の所定値とを比較する構成としてもよい。また、各グループ毎に、複数のデータブロックの再生出力レベルのうち上限値または下限値と、第2の所定値とを比較する構成としてもよい。
【0090】
〔5.磁気テープ装置の動作の変形例2〕
上記説明では、本実施の形態にかかる磁気テープ装置は、ホストコンピューターから送られるプロテクテドレコードを2つに分割して、磁気テープに記録する構成としているが、プロテクテドレコードの分割数は「2」に限らない。以下、データ記録時の動作の変形例として、プロテクテドレコードの分割数を「4」としたときの動作について説明する。
【0091】
図11は、本実施の形態にかかる磁気テープ装置で生成可能なデータの構造を示す。図11は、ホストコンピューター31及び磁気テープ装置32で生成されるデータの遷移を示している。
【0092】
磁気テープにデータを記録する場合は、まずユーザーがホストコンピューター31を操作して、ユーザーファイルを作成する。ユーザーファイルのサイズは、例えばLTO規格では最大約1.6MByteである。作成されたユーザーファイルは、ホストコンピューター31においてエラー訂正コードが付加されて、プロテクテドレコードPに変換される。
【0093】
プロテクテドレコードPは、ケーブルなどの通信手段を介して磁気テープ装置32へ伝送され、磁気テープ装置32内のバッファメモリに一時的に格納される。
【0094】
磁気テープ装置32は、ホストコンピューター31から順次伝送されるプロテクテドレコードPをグループA、グループB、グループC、およびグループDに振り分ける。本実施の形態では、ホストコンピューター31から伝送されるプロテクテドレコードPを順次にグループA〜Dに振り分ける。これにより、グループAには、プロテクテドレコードP11、P15、・・・Ppが振り分けられる。また、グループBには、プロテクテドレコードP12、P16、・・・Pqが振り分けられる。また、グループCには、プロテクテドレコードP13、P17、・・・Prが振り分けられる。また、グループDには、プロテクテドレコードP14、P18、・・・Psが振り分けられる。なお、本実施の形態における振り分け方法は一例である。
【0095】
次に、磁気テープ装置32は、各グループA〜Dに含まれる各プロテクテドレコードを、それぞれ例えば403884Byteのサイズ毎に分割する。次に、分割したプロテクテドレコードに、例えば468ByteのDSIT(Data Set Information Table)を付加して、404352ByteのデータセットD1、D2、・・・Dmを作成する。
【0096】
次に、磁気テープ装置32は、作成したデータセットを例えば25272Byteに分割する。次に、分割したデータセットにエラー訂正コード(ECC:Error Correcting Code)を付加して、サブデータセットS1、S2、・・・Snを作成する。サブデータセットは、単独でエラー訂正が行えるエラー訂正処理単位である。
【0097】
なお、上記のようにホストコンピューター31から伝送されるプロテクテドレコードPに基づきサブデータセットS1、S2、・・・Snを作成するまでの処理は、図2に示す制御部12で実行することができる。
【0098】
また、グループB〜Dについても同様にデータセット及びサブデータセットが作成されるが、図11では図示を省略している。また、グループAに対応するデータセット及びサブデータセットの作成処理と、グループB〜Dに対応するデータセット及びサブデータセットの作成処理とは、同時に実行することが好ましい。
【0099】
次に、磁気テープ装置32は、作成したサブデータセットをさらに分割してグループA、〜D内の複数のデータトラックに分散して、磁気テープにデータを記録する。以下、記録動作について図12A〜図12Eを参照して説明する。
【0100】
図12A、図12B、図12C、および図12Dは、磁気テープに記録するデータの構造を示す模式図である。図12Eは、磁気テープにおけるデータトラックを示す模式図である。図12Eにおいて、矢印方向は磁気テープの長手方向に対応し、矢印方向に直交する方向はデータトラックDT0〜DT7を示している。格子により囲まれた領域は、データが記録可能な領域である。ドットハッチングを付している領域は、グループAにおける1番目のサブテータセットS1から分割されたデータが記録されている領域であり、1つのサブデータセットから分割されたデータブロックのデータトラック上における分散の様子を示す。
【0101】
磁気テープにデータを記録する場合、制御部12は、まず図12Aに示すように、グループAに対応する1番目のサブデータセットS1を64個(=2トラック×32)のデータブロックA1、A2、・・・Anに分割処理する。また、制御部12は、図12Bに示すように、グループBに対応する1番目のデータセットS1を64個(=2トラック×32)のデータブロックB1、B2、・・・Bnに分割処理する。また、制御部12は、図12Cに示すように、グループCに対応する1番目のデータセットS1を64個(=2トラック×32)のデータブロックC1、C2、・・・Cnに分割処理する。また、制御部12は、図12Dに示すように、グループDに対応する1番目のデータセットS1を64個(=2トラック×32)のデータブロックD1、D2、・・・Dnに分割処理する。続いてグループA〜DにおけるサブデータセットS2も同様に分割処理する。
【0102】
制御部12は、グループAにおけるサブデータセットから作成したデータブロックA1、E1・・・An、Enと、グループBにおけるサブデータセットから作成したデータブロックB1、F1・・・Bn、Fnと、グループCにおけるサブデータセットから作成したデータブロックC1、G1・・・Cn、Gnと、グループDにおけるサブデータセットから作成したデータブロックD1、H1・・・Dn、Hnとを、記録再生制御部13に送る。記録再生制御部13は、磁気ヘッド1におけるヘッド素子CH0、CH1を動作させて、データブロックA1、E1・・・An、Enを磁気テープ6におけるデータトラックDT0、DT1に記録するよう制御する。また、記録再生制御部13は、磁気ヘッド1におけるヘッド素子CH2、CH3を動作させて、データブロックB1、F1・・・Bn、Fnを磁気テープ6におけるデータトラックDT2、DT3に記録するよう制御する。また、記録再生制御部13は、磁気ヘッド1におけるヘッド素子CH4、CH5を動作させて、データブロックC1、G1・・・Cn、Gnを磁気テープ6におけるデータトラックDT4〜DT5に記録するよう制御する。また、記録再生制御部13は、磁気ヘッド1におけるヘッド素子CH6、CH7を動作させて、データブロックD1、H1・・・Dn、Hnを磁気テープ6におけるデータトラックDT6〜DT7に記録するよう制御する。
【0103】
具体的には、図12Eに示すように、まずヘッド素子CH0、CH1を動作させてデータブロックA1、E1をデータトラックDT0、DT1に記録する動作と、ヘッド素子CH2、CH3を動作させてデータブロックB1、F1をデータトラックDT2、DT3に記録する動作と、ヘッド素子CH4、CH5を動作させてデータブロックC1、G1をデータトラックDT4、DT5に記録する動作と、ヘッド素子CH6、CH7を動作させてデータブロックD1、H1をデータトラックDT6、DT7に記録する動作とを同時に実行する。
【0104】
次に、ヘッド素子CH0、CH1を動作させてデータブロックE2、A2をデータトラックDT0、DT1に記録する動作と、ヘッド素子CH2、CH3を動作させてデータブロックF2、B2をデータトラックDT2、DT3に記録する動作と、ヘッド素子CH4、CH5を動作させてデータブロックG2、C2をデータトラックDT4、DT5に記録する動作と、ヘッド素子CH6、CH7を動作させてデータブロックH2、D2をデータトラックDT6、DT7に記録する動作とを同時に実行する。
【0105】
以降、上記と同様に、図12Eに示す配置及び記録順で、グループAに対応するデータブロックをデータトラックDT0、DT1に記録し、グループBに対応するデータブロックをデータトラックDT2、DT3に記録し、グループCに対応するデータブロックをデータトラックDT4、DT5に記録し、グループDに対応するデータブロックをデータトラックDT6、DT7に記録する。
【0106】
本実施の形態では、グループA〜Dに対応するデータブロックを、磁気テープ6に同時に記録することができるので、磁気テープ装置が持っている最大の転送レートでデータを記録することができる。
【0107】
次に、データ読み込み時の動作について説明する。
【0108】
図6A及び図6Bに示すように幅方向の寸法が拡大した磁気テープ6に対して、データトラックDT3及びDT4を基準にトラッキングサーボを行うと、図1に示す磁気テープ100bのようにデータトラックDT0及びDT7に対してヘッド素子が大きく外れてしまうことになる(オフトラック量が最大)。そこで本実施の形態では、図12A〜図12Eに示すように、磁気テープ6に4つのグループA〜Dに分けたデータブロックを記録する構成としたことによって、データ再生時、グループA〜Dに対応するデータブロックのうちいずれか一つにトラッキングサーボを行うことで、オフトラック量を低減させている。以下、データ再生時の動作について詳しく説明する。
【0109】
図13は、図12Eに示すパターンでデータが記録された磁気テープから、データを読み込む際の動作を示すフローチャートである。
【0110】
図13に示すようにデータ再生始端部からデータ再生時、制御部12は、まず記録再生制御部13に対してグループA〜Dに対応するデータブロック(8チャンネル)を同時に読み込む命令を送る。記録再生制御部13は、制御部12からの命令に基づき、磁気ヘッド1における全てのヘッド素子CH0〜CH7を動作させて、データトラックDT0〜DT7に記録されているデータブロックを読み込む。例えばこのとき、グループA〜Dに対応するデータブロックをそれぞれ約10MByte(例えば25データセット、10.0971MByte)づつ読み込む。記録再生制御部13は、ヘッド素子CH0〜CH7により読み込まれたデータブロックを、制御部12に送る。制御部12は、記録再生制御部13から送られるデータブロックからサブデータセットを復元する(S71)。
【0111】
次に、制御部12は、グループA〜Dのそれぞれにおいて、サブデータセットに付加されているエラー訂正コード(ECC)に基づき、エラー訂正を行い、同時にエラーレートを算出する。エラーレートは、エラー訂正コードで検出されたエラー数(単位:Byte)をデータ容量(単位:Byte)で除算することで算出することができる(S72)。
【0112】
次に、制御部12は、グループA〜Dのそれぞれにおけるエラーレートと第1の上限値(例えば10-5)とを比較する(S73)。
【0113】
制御部12は、比較処理S73の結果、グループA〜Dの全てにおいて、エラーレートが第1の上限値以下の場合は、ヘッド素子CH0〜CH7でデータトラックDT0〜DT7のデータブロックを同時に読み込む処理(8チャンネル同時読み込み)を継続する。すなわち、「グループA〜Dの全てにおいてエラーレートが第1の上限値以下の場合」とは、ヘッド素子CH0〜CH7がそれぞれデータトラックDT0〜DT7にオントラックし、データトラックDT0〜DT7におけるデータを確実に読み込むことができることを示している。したがって、8チャンネル同時読み込み処理を実行することができる。この場合、磁気テープ装置が持っている最大の転送レートでデータを読み込むことができる(S74)。
【0114】
一方、制御部12は、比較処理S73の結果、グループA〜Dのうち少なくともいずれか一つのグループにおいてエラーレートが第1の上限値を超えると、8チャンネル同時読み込み処理から2チャンネル同時読み込み処理へ移行する。具体的には、まず、ヘッド素子CH2〜CH7の動作を停止させて、データ再生始端部からヘッド素子CH0、CH1のみでデータトラックDT0、DT1のデータブロックを読み込むよう制御する(S75)。次に、ヘッド素子CH0、CH1の動作を停止させて、磁気テープ6をデータ再生始端部に戻し、ヘッド素子CH2、CH3を動作させてデータトラックDT2、DT3のデータブロックを読み込むよう制御する(S76)。次に、ヘッド素子CH2、CH3の動作を停止させて、磁気テープ6をデータ再生始端部に戻し、ヘッド素子CH4、CH5を動作させてデータトラックDT4、DT5のデータブロックを読み込むよう制御する(S77)。次に、ヘッド素子CH4、CH5の動作を停止させて、磁気テープ6をデータ再生始端部に戻し、ヘッド素子CH6、CH7を動作させてデータトラックDT6、DT7のデータブロックを読み込むよう制御する(S78)。
【0115】
すなわち、磁気テープ6の幅方向の寸法変化などによりオフトラック量が大きくなっている場合は、8チャンネル同時読み込み処理を行ったときに得られるデータに基づき算出されるエラーレートが高くなる。したがって、算出されたエラーレートと第1の上限値とを比較して、エラーレートが第1の上限値よりも高い場合は、磁気テープ6の幅方向の寸法変化などによりオフトラック量が大きくなっていると判断することができる。本実施の形態では、この判断に基づき、8チャンネル同時読み込み処理から、2チャンネル同時読み込み処理(S75〜S78)へ移行する。なお、2チャンネル同時読み込み処理時の詳しい動作については、図8に示すフローと同等であるため、詳しい説明を省略する。
【0116】
このように、分割グループ数を多くする方が、ヘッド素子グループの端のヘッド素子からもう一方の端のヘッド素子までの距離が短くなるため、対応できる磁気テープ幅方向の寸法変化がより大きい場合、効果は大きくなる。すなわち、2チャンネル同時読み込み処理では、同時に動作させる複数のヘッド素子の端部間距離は、4チャンネル同時読み込み処理や8チャンネル同時読み込み処理時において同時に動作させる複数のヘッド素子の端部間距離に比べて短い。同時に動作させる複数のヘッド素子の数が多ければ多いほど、磁気テープ6の幅方向寸法の変動量が大きい場合にオントラックさせにくくなるため、本実施の形態のように、磁気テープ6の幅方向寸法の変動量が大きく、ヘッド素子をデータトラックにオントラックさせにくい場合は、動作させるヘッド素子を減少させてトレースするデータトラックを少なくすることによって、オントラックさせやすくなる。
【0117】
なお、変形例2では、読み込んだデータのエラーレートが第1の上限値を越えると、8チャンネル同時読み込み処理から2チャンネル同時読み込み処理へ移行する構成としたが、8チャンネル同時読み込み処理から4チャンネル同時読み込み処理へ移行し、再度データのエラーレートを算出し、算出したエラーレートと第1の上限値とを比較してエラーレートが第1の上限値を越えたときに、4チャンネル同時読み込み処理から2チャンネル同時読み込み処理へ移行する構成としてもよい。
【0118】
また、変形例2では、データのエラーレートを第1の上限値とを比較して、その比較結果に基づき8チャンネル同時読み込み処理と2チャンネル同時読み込み処理のうちいずれかを選択する構成としたが、データの再生出力レベルと所定値とを比較して、その比較結果に基づき8チャンネル同時読み込み処理と2チャンネル同時読み込み処理のうちいずれかを選択する構成としてもよい。なお、再生出力レベルに基づく読み込み処理の切換動作は、変形例1において説明した動作と同等である。
【0119】
〔6.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態では、磁気テープ6の寸法変化によって8チャンネルのデータを同時に読み込むことができない場合は、まずグループAに対応するデータだけを読み込んでエラー訂正を行って、次にグループBに対応するデータを読み込んでエラー訂正を行う。この場合には、データの転送レートが最大値の半分以下になるが、寸法変化が大きい磁気テープであっても確実にデータを読み込むことができる。グループ内のデータを全て読み込むことができれば、正常にデータを再生できる。したがって、磁気テープ6の幅方向寸法が変化し、磁気テープ6に対する磁気ヘッド1のオフトラック量が増加したとしても、正常にデータを読み込むことができる。
【0120】
また、本実施の形態(変形例2)では、磁気テープ6の寸法変化によって8チャンネルのデータを同時に読み込むことができない場合は、グループAに対応するデータだけを読み込んでエラー訂正を行い、次にグループBに対応するデータを読み込んでエラー訂正を行い、次にグループCに対応するデータを読み込んでエラー訂正を行い、次にグループDに対応するデータを読み込んでエラー訂正を行う。この場合には、データの転送レートが最大値の1/4以下になるが、寸法変化が大きい磁気テープであっても確実にデータを読み込むことができる。グループ内のデータを全て読み込むことができれば、正常にデータを再生できる。したがって、磁気テープ6の幅方向寸法が大幅に変化し、磁気テープ6に対する磁気ヘッド1のオフトラック量が大幅に増加したとしても、正常にデータを読み込むことができる。
【0121】
また、磁気テープの寸法安定性が従来よりも悪い磁気テープであっても、全てのデータを読むことができる。したがって、将来的に高記録密度化が進んでも、使用する磁気テープの寸法安定性を向上させる必要がないため、磁気テープに既存のベースフィルムあるいはより低コストのベースフィルムを使用することができる。したがって、磁気テープのコストを低減することが可能となる。
【0122】
また、本実施の形態では、磁気ヘッド1のヘッド素子を2つのグループに分割することにより、各グループの端のヘッド素子(例えばグループAの場合はヘッド素子CH0)からもう一方の端のヘッド素子(例えばグループAの場合はヘッド素子CH3)までの距離が、8チャンネルを同時に記録再生する磁気ヘッドにおける両端のヘッド素子間の距離に比べて半分になるため、幅方向の寸法変化が約2倍大きい磁気テープに対応することができる。
【0123】
また、本実施の形態は、磁気テープへのデータ記録方式の変更、およびソフトウエア等の変更等を行うことで実現が可能である。したがって、ハードウエアの変更が少なくてすむため、磁気テープ装置の開発コスト、製造コストも低減することができる。
【0124】
なお、本実施の形態では、全部で8個のヘッド素子を4個のヘッド素子からなる2グループに分割した事例を示したが、16個のヘッド素子、または32個以上のヘッド素子を2グループに分割しても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、変形例2において、8個のヘッド素子を2個のヘッド素子からなる4グループに分割した事例を示したが、16個のヘッド素子、または32個以上のヘッド素子を4グループに分割しても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、3グループ、または5グループ以上に分割しても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。分割グループ数を多くする方が、ヘッド素子グループの端のヘッド素子からもう一方の端のヘッド素子までの距離が短くなるため、対応できる磁気テープ幅方向の寸法変化がより大きくなり、効果は大きくなる。
【0125】
また、本実施の形態における制御部12、記録再生制御部13は、本発明の制御手段の一例である。本実施の形態におけるデータトラックDT0〜DT3は、本発明の主データトラックまたは第1のデータトラックの一例である。本実施の形態におけるデータトラックDT4〜DT7は、本発明の副データトラックまたは第2のデータトラックの一例である。本実施の形態におけるデータブロックA1、C1、E1、G1・・・An、Cn、En、Gnは、本発明の主データまたは第1のデータの一例である。本実施の形態におけるデータブロックB1、D1、F1、H1・・・Bn、Dn、Fn、Hnは、本発明の副データまたは第2のデータの一例である。本実施の形態における第1の上限値、第2の上限値、第1の所定値、および第2の所定値は、本発明の所定値の一例である。
【0126】
また、本実施の形態の変形例2におけるデータブロックA1,E1・・・An、Enは、本発明の第1のデータの一例である。本実施の形態の変形例2におけるデータブロックB1、F1・・・Bn、Fnは、本発明の第2のデータの一例である。本実施の形態の変形例2におけるデータブロックC1、G1・・・Cn、Gnは、本発明の第3のデータの一例である。本実施の形態の変形例2におけるデータブロックD1、H1・・・Dn、Hnは、本発明の第4のデータの一例である。本実施の形態の変形例2におけるデータトラックDT0、DT1は、本発明の第1のデータトラックの一例である。本実施の形態の変形例2におけるデータトラックDT2、DT3は、本発明の第2のデータトラックの一例である。本実施の形態の変形例2におけるデータトラックDT4、DT5は、本発明の第3のデータトラックの一例である。本実施の形態の変形例2におけるデータトラックDT6、DT7は、本発明の第4のデータトラックの一例である。
【0127】
なお、主データと副データとの関係は、副データが主データに対して補助的または補完的であるという意味合いではなく、データの数を限定しないことを意味している。したがって、主データ及び副データのうちいずれか一方または両方には、単数または複数のデータを含む。また、主データトラックと副データトラックとの関係は、副データトラックが主データトラックに対して補助的または補完的であるという意味合いではなく、データトラックの数を限定しないことを意味している。したがって、主データトラック及び副データトラックのうちいずれか一方または両方には、単数または複数のデータトラックを含む。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本願は、磁気テープ装置、データ記録方法、データ再生方法に有用である。
【符号の説明】
【0129】
1 磁気ヘッド
7 ヘッド変位部
12 制御部
13 記録再生制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープにおける複数のデータトラックに同時にデータを記録可能な磁気テープ装置であって、
前記ヘッドにおけるデータ記録動作を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記磁気テープに記録すべきデータを主データと副データとに分割し、
前記主データを前記複数のデータトラックのうち主データトラックに記録し、前記副データを前記複数のデータトラックのうち副データトラックに記録するよう、前記ヘッドを制御する、磁気テープ装置。
【請求項2】
前記主データ及び前記副データは、記録するデータにエラー訂正コードを付加した単独でエラー訂正可能なデータの集まりである、請求項1記載の磁気テープ装置。
【請求項3】
ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープの主データトラック及び副データトラックに記録されているデータを読み込み可能な磁気テープ装置であって、
前記ヘッドにおけるデータ読み込み動作を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で前記磁気テープに記録されているデータを読み込み、
読み込んだデータのエラーレートを算出し、
前記エラーレートと所定値とを比較し、
前記エラーレートが前記所定値よりも低い場合は、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データおよび前記副データトラックに記録されている副データを読み込み、
前記エラーレートが前記所定値よりも高い場合は、前記複数のヘッド素子のうち任意のヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データまたは前記副データトラックに記録されている副データを読み込む、磁気テープ装置。
【請求項4】
ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープの主データトラック及び副データトラックに記録されているデータを読み込み可能な磁気テープ装置であって、
前記ヘッドにおけるデータ読み込み動作を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で前記磁気テープに記録されているデータを読み込み、
読み込んだデータの再生出力レベルを検出し、
前記再生出力レベルと所定値とを比較し、
前記再生出力レベルが前記所定値よりも高い場合は、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データおよび前記副データトラックに記録されている副データを読み込み、
前記再生出力レベルが前記所定値よりも低い場合は、前記複数のヘッド素子のうち任意のヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データまたは前記副データトラックに記録されている副データを読み込む、磁気テープ装置。
【請求項5】
ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープにおける複数のデータトラックにデータを同時に記録可能なデータ記録方法であって、
前記磁気テープに記録すべきデータを主データと副データとに分割し、
前記主データを前記複数のデータトラックのうち主データトラックに記録し、前記副データを前記複数のデータトラックのうち副データトラックに記録する、データ記録方法。
【請求項6】
ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープの主データトラック及び副データトラックに記録されているデータを読み込み可能なデータ再生方法であって、
前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で前記磁気テープに記録されているデータを読み込み、
読み込んだデータのエラーレートを算出し、
前記エラーレートと所定値とを比較し、
前記エラーレートが前記所定値よりも低い場合は、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データおよび前記副データトラックに記録されている副データを読み込み、
前記エラーレートが前記所定値よりも高い場合は、前記複数のヘッド素子のうち任意のヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データまたは前記副データトラックに記録されている副データを読み込む、データ再生方法。
【請求項7】
ヘッド素子を複数備えたヘッドで、磁気テープの主データトラック及び副データトラックに記録されているデータを読み込み可能なデータ再生方法であって、
前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で前記磁気テープに記録されているデータを読み込み、
読み込んだデータの再生出力レベルを検出し、
前記再生出力レベルと所定値とを比較し、
前記再生出力レベルが前記所定値よりも高い場合は、前記ヘッドにおける全てのヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データおよび前記副データトラックに記録されている副データを読み込み、
前記再生出力レベルが前記所定値よりも低い場合は、前記複数のヘッド素子のうち任意のヘッド素子で、前記主データトラックに記録されている主データまたは前記副データトラックに記録されている副データを読み込む、データ再生方法。
【請求項8】
データをリニア記録可能な複数のデータトラックを備えた磁気テープであって、
前記データトラックは、
当該磁気テープの長手方向に平行に形成され、互いに平行かつ隣り合う複数の主データトラックと、
当該磁気テープの長手方向に平行に形成され、互いに平行かつ隣り合う複数の副データトラックとを含み、
前記主データトラックと前記副データトラックとは互いに平行である、磁気テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−192335(P2011−192335A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55945(P2010−55945)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】