説明

磁気テープ装置及びデータ記録方法

【課題】磁気テープ装置に記録するデータの信頼性の向上を図ること。
【解決手段】データ記録領域が形成された磁気テープに対してデータを記録再生する複数の磁気ヘッドと、この磁気ヘッド上に磁気テープを走行させるテープ走行機構と、走行中の磁気テープに対する磁気ヘッドによるデータの記録再生動作を制御する制御手段と、を備えた磁気テープ装置であって、制御手段が、記録対象データと、当該記録対象データの少なくとも一部と同一のデータと、を磁気テープ上の相互に隣接するデータ記録領域に記録することなく、記録対象データに冗長性を持たせて記録するよう磁気ヘッドの記録動作を制御する記録制御手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ装置にかかり、特に、磁気テープに記録したデータの信頼性の向上を図る磁気テープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープ装置は、磁気ヘッドにて磁気テープに対してデータを記録再生する装置であり、サーバコンピュータなどにおいて管理されているデータをバックアップ用に記録するなどの用途に利用されている。そして、磁気テープ装置の構成の1つとして、後述する図1に示すように、複数のヘッドをヘッドドラム周囲に配置し、このヘッドドラムが回転すると共にその周囲を磁気テープが走行することで、テープ上のトラックに対してデータを記録再生する、という方式のヘリカルスキャン方式がある。また、磁気ヘッド装置の別の構成として、後述する図12に示すように、磁気ヘッドを複数有する磁気ヘッドアセンブリを備え、この磁気ヘッドアセンブリを磁気テープの幅に対して垂直方向に移動させることで、走行する磁気テープに対するデータの記録再生を行うリニアレコーディング方式がある。
【0003】
そして、上述したような複数のヘッドを有する磁気テープ装置においては、磁気ヘッドの一部に問題が発生した場合やテープ上の汚れ・傷によって部分的に読み取れなくなった場合に、残りのデータが正常に読み取れても処理が失敗することがあった。つまり、従来の磁気テープ装置では、磁気ヘッドが複数設けられているにも関わらず、磁気ヘッドヘッド1本が故障したり、テープ上の一部に埃等が付着した場合でも、データを読み取ることができないという事態が生じ、信頼性に劣る、という問題があった。
【0004】
上記問題点を解決するための技術として、特許文献1には、複数の磁気ヘッドを有する磁気テープ装置にて、磁気テープ上の隣り合うトラックに同時に同一データを記録する、という技術が開示されている。このようにデータを2重に書き込むことにより、記録データに冗長性を持たせている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−282608
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、冗長性を持たせた同一のデータが隣り合うトラックに記録されているため、磁気テープ上の隣接するデータ記憶領域に傷や汚れなどにより読み取りエラーが生じた場合には、冗長記録した同一データをいずれも読み取ることができず、信頼性の向上を図ることができない、という問題が生じる。また、記録対象データの複製を記録しているため、データ容量が膨大になってしまう、という問題も生じる。
【0007】
このため、本発明は、上記従来例の有する不都合を改善し、特に、磁気テープ装置に記録するデータの信頼性の向上を図ることをその目的とする。また、本発明の他の目的としては、信頼性の向上に加え、磁気テープ装置に対する記録データ容量の増大化を抑制する、ことをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の一形態は、データ記録領域が形成された磁気テープに対してデータを記録再生する複数の磁気ヘッドと、この磁気ヘッド上に磁気テープを走行させるテープ走行機構と、走行中の磁気テープに対する磁気ヘッドによるデータの記録再生動作を制御する制御手段と、を備えた磁気テープ装置であって、制御手段が、記録対象データと、当該記録対象データの少なくとも一部と同一のデータと、を磁気テープ上の相互に隣接するデータ記録領域に記録することなく、記録対象データに冗長性を持たせて記録するよう磁気ヘッドの記録動作を制御する記録制御手段を備えた、ことを特徴としている。そして、上記記録制御手段は、記録対象データと、当該記録対象データに冗長性を持たせるための冗長データと、を磁気テープ上の異なるトラックにそれぞれ記録するよう制御する、ことを特徴としている。
【0009】
上記発明によると、磁気テープに対して、記録対象データと、当該記録対象データの少なくとも一部と同一のデータとを、相互に隣接するデータ記憶領域に記録することなく、例えば、冗長データを異なるトラックに記録するなど、記録対象データに冗長性を持たせて記録しているため、記録するデータの信頼性の向上を図ることができる。
【0010】
また、上記磁気テープ装置において、冗長データは、記録対象データと同一のデータである、ことを特徴としている。このとき、記録制御手段は、磁気テープ上における記録対象データの記録方向に対して反転した方向に向かって冗長データを記憶する、ことを特徴としている。さらに、記録制御手段は、磁気テープ上で隣接せず離間する各トラックに、それぞれ記録対象データと冗長データとを記録する、ことを特徴としている。
【0011】
これにより、記録対象データと同一のデータとを記録するため、磁気テープ上にハードディスクにおける記録方式であるRAID1方式にて記録対象データが冗長に記憶される。特に、記録対象データと冗長データとの記録方向を相互に反転させたり、記録対象データと冗長データとを相互に離間するトラックに記憶させることで、磁気テープ上の一部を損傷した場合であってもデータを復旧することができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0012】
また、上記磁気テープ装置において、冗長データは、記録対象データの誤りを検出するためのパリティデータである、ことを特徴としている。このとき、さらに、記録制御手段は、記録対象データの分割データと、当該記録対象データのパリティデータと、を1グループとしてそれぞれ各トラックに記録する、ことを特徴としている。これにより、磁気テープ上にハードディスクにおける記録方式であるRAID5方式にて記録対象データが記憶されるため、上述同様に、データの信頼性を確保しつつ、記憶容量の利用の効率化を図ることができる。
【0013】
なお、上述した磁気テープ装置は、例えば、ヘリカルスキャン方式あるいはリニアレコーディング方式で、磁気テープに対するデータの記録再生を行う、という構成である。
【0014】
また、本発明の他の形態は、データ記録領域が形成された磁気テープに対してデータを記録再生する複数の磁気ヘッドと、この磁気ヘッド上に前記磁気テープを走行させるテープ走行機構と、走行中の前記磁気テープに対する磁気ヘッドによるデータの記録再生動作を制御する制御手段と、を備えた磁気テープ装置によるデータ記録方法であって、データ記録時に、記録対象データと、当該記録対象データの少なくとも一部と同一のデータと、を磁気テープ上の相互に隣接するデータ記録領域に記録することなく、記録対象データに冗長性を持たせて記録するよう磁気ヘッドの記録動作を制御する記録制御工程を有する、ことを特徴としている。そして、記録制御工程は、記録対象データと、当該記録対象データに冗長性を持たせるための冗長データと、を磁気テープ上の異なるトラックにそれぞれ記録するよう制御する、ことを特徴としている。
【0015】
また、上記記録制御工程は、冗長データとして記録対象データと同一のデータを記録する、ことを特徴としている。このとき、記録制御工程は、記録対象データを磁気テープに記録すると共に、磁気テープ上における記録対象データの記録方向に対して反転した方向に向かって冗長データを記憶する、ことを特徴としている。さらに、記録制御工程は、磁気テープ上で隣接せず離間する各トラックに、それぞれ記録対象データと冗長データとを記録する、ことを特徴としている。
【0016】
また、上記記録制御工程は、冗長データとして記録対象データの誤りを検出するためのパリティデータを記録する、ことを特徴としている。このとき、記録制御工程は、記録対象データの分割データと、当該記録対象データのパリティデータと、を1グループとしてそれぞれ各トラックに記録する、ことを特徴としている。
【0017】
上述した構成の磁気テープ装置であっても、上記磁気テープ装置と同様に作用するため、上述した本発明の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、磁気テープに対して、記録対象データと、当該記録対象データの少なくとも一部と同一のデータとを、相互に隣接するデータ記憶領域に記録することなく、記録対象データに冗長性を持たせて記録しているため、テープやヘッドの一部に障害が発生した場合であっても、データを復元して読み取ることができ、信頼性の向上を図ることができる、という従来にない優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明では、磁気テープに対して、記録対象データと、当該記録対象データの少なくとも一部と同一のデータとを、相互に隣接するデータ記憶領域に記録することなく、記録データに冗長性を持たせる、という点に特徴を有する。以下、実施例では、ヘリカルスキャン方式、リニアレコーディング方式の磁気テープ装置に適用した場合を、それぞれ説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の第1の実施例を、図1乃至図11を参照して説明する。図1乃至図4は、磁気テープ装置の構成を示す図である。図5乃至図8は、磁気テープ上におけるデータ記録方法を示す図である。図9乃至図10は、磁気テープ装置の動作を示すフローチャートである。図11は、磁気テープ上におけるデータ記録方法の変形例を示す図である。
【0021】
[構成]
本実施例における磁気テープ装置1は、ヘリカルスキャン方式(以下ヘリカル方式)の磁気テープ装置1である。このヘリカル式磁気テープ装置1は、図1に示すように、データ記録領域であるトラックが形成された磁気テープ2が収容されたデータカートリッジ3を装着し、磁気テープ2に対してデータを記録再生する複数の磁気ヘッドを有するヘッドドラム4と、このヘッドドラム4周囲に磁気テープ2を走行させるテープ走行機構6と、走行中の磁気テープ2に対する磁気ヘッドによるデータの記録再生動作を制御するコントローラ5(制御手段)と、を備えている。
【0022】
具体的に、ヘリカル方式磁気テープ装置1は、図3に示すように、ヘッドドラム4の軸が磁気テープ2の走行方向(矢印Y1)に対して傾いて配置されており(例えば、6度)、矢印Y2方向に回転可能に構成されている。そして、図4に示すように、ヘッドドラム4の周囲には、データ記録用の書き込みヘッドW1〜W4が4本、データ再生用の読み取りヘッドR1〜R4が4本、それぞれ交互に等間隔に装備されている。なお、各ヘッドの数は任意である。
【0023】
また、ヘリカル方式の磁気テープ装置1に設けられているコントローラ5には、所定のプログラムが組み込まれることによって、テープ走行制御部51、データ記録制御部52、データ再生制御部53が構築されている。テープ走行制御部51は、テープ走行機構6の回転を制御して、テープ走行動作を制御する。そして、データ記録制御部52は、ホストコンピュータHからの指令に応じて、ヘッドドラム4の動作を制御して磁気テープ2に記録対象となるデータを記録する。また、データ再生制御部53は、ヘッドドラム4の動作を制御して磁気テープ2に記録されているデータを読み取る。
【0024】
そして、本実施例では、特に、上記データ記録制御部52によって実現されるデータ記録方法に特徴を有するため、以下にデータ記録方法を詳述する。まず、磁気テープ2上のデータトラック21は、図5に示すように、走行方向に対して垂直ではなく、帯状に傾斜して形成されている。そして、従来例より行われているデータ書き込みは、ヘッドドラム4に形成された4つの書き込みヘッドW1〜W4によって、各トラック21に対して異なる記録対象データが1つずつ記録される。このため、従来例における書き込み方法では、記録データに冗長性は無い。
【0025】
これに対し、本実施例においては、データ記録制御部52によって、ハードディスクでの書込み方式であるRAID1と同様に、記録対象データの少なくとも一部と同一のデータを冗長データとして記録するよう、書き込みヘッド4の動作を制御することが可能となっている。このとき、特に、相互に隣接するトラックに同一のデータを記録することなく、かつ、間に他のトラックを介して相互に離間するトラックに記録対象データとそれと同一のデータとをそれぞれ記録するよう制御する。一例としては、図7に示すように、まず、書き込みヘッドW1がデータ1を所定のトラックに書き込み、その隣のトラックには書き込みヘッドW2がデータ1とは異なるデータ2を書き込む。また、さらに隣のトラックには書き込みヘッドW3が上記データ1と同一のデータ1を書き込み、その隣のトラックには書き込みヘッドW4が上記データ2と同一のデータ2を書き込む。このように、例えば、データ1は、1つのトラックを間に挟んで対となって記録されるため、仮にデータ1が記録されている片方のトラックが読み取り不良となった場合であっても、後述するデータ再生制御部53の機能によりデータを復元することができる。なお、このデータの記録順序は任意であり、データ1と対となる同一のデータ1は、さらに離間したトラックに記録されてもよい。また、他のデータ2,3,4についても冗長性が確保されている。
【0026】
また、データ記録制御部52は、上記とは異なる記録方式にてデータを記録する機能を備えている。例えば、ハードディスクでの書込み方式であるRAID5と同様に、記録対象データを分割した複数の分割データと、この記録対象データの誤りを検出するためのパリティデータと、を生成して、各分割データとパリティデータとを1グループとしてそれぞれを各トラックに記録するよう、書き込みヘッド4の動作を制御することが可能となっている。つまり、記録対象データの冗長データとして、パリティデータを生成してトラックに記録する。一例としては、図8に示すように、まず、記録対象データをデータ1,2,3に分割して、そのパリティデータを生成する。そして、書き込みヘッドW1で分割データであるデータ1を所定のトラックに書き込み、その隣のトラックには書き込みヘッドW2が分割データであるデータ2を書き込む。そして、さらに隣のトラックには書き込みヘッドW3が分割データであるデータ3を書き込み、その隣のトラックには書き込みヘッドW4がパリティデータを書き込む。このように、データ1,2,3及びパリティデータの4トラックでグループGを形成して記録される。従って、仮にグループG内で1トラックが読み取り不良になったとしても、後述するデータ再生制御部53の機能によりデータを復元することができ、冗長性が確保される。また、記録容量の増大化も抑制することができる。なお、上記例では、書き込みヘッドW1〜W4が4つ設けられているため、パリティデータを含む4つのトラックで1グループを構成するようデータを記録する場合を説明したが、さらに多くのトラックでグループを形成してもよく、また、1グループに対してパリティデータを複数設けてもよい。
【0027】
そして、データ再生制御部53は、上述したように磁気テープ2上の各トラックに記録されたデータを、読み取りヘッドR1〜R4を介して読み取るよう制御するが、このとき、読み取りエラーが検出された場合には、設定された書き込み方式に応じてエラー訂正を行う。例えば、図7に示すように、RAID1方式である場合に一部のトラックからデータを読み取れない場合には、対となる他のトラックに記録された同一のデータから復元する。また、図8に示すように、RAID5方式である場合に一部のトラックからデータを読み取れない場合には、同一グループの他のデータ(パリティを含む)からデータを復元する。そして、必要に応じて、ホストコンピュータHに通知する。
【0028】
[動作]
次に、上記構成の磁気テープ装置1の動作を、図9乃至図10のフローチャートを参照して説明する。はじめに図9を参照して、書き込み動作について説明する。
【0029】
まず、初期設定やホストコンピュータHからの指令に応じて、磁気テープ装置1内に書き込みモードが設定記憶されている。そして、データの書き込みが開始されると(ステップS1)、磁気テープ装置1の書き込みモードが、ユーザやホストコンピュータHによる指定、あるいは、初期設定にて、どのモードに設定されているか確認する(ステップS2)。
【0030】
そして、書き込みモードが、上述したRAID5に設定されている場合には(ステップS2:はい)、記録対象データを分割すると共にパリティデータを生成し(ステップS4)、図8に示すように4トラックで1グループを構成して磁気テープ2に書き込む(ステップS5、記録制御工程)。一方、書き込みモードが上述したRAID1に設定されている場合には(ステップS2:いいえ、ステップS3:はい)、図7に示すように、相互に離間した2トラックで記録対象データのミラーを構成して磁気テープ2に書き込む(ステップS6、記録制御工程)。なお、冗長モードの設定がされていない場合には(ステップS3:いいえ)、図8に示すように、通常モードでデータを書き込む(ステップS7)。その後、磁気テープ2上のシステムエリアに、上述したように書き込んだときのモード(冗長無し;RAID1;RAID5)の情報を記録し(ステップS8)、書き込み処理を終了する(ステップS9)。
【0031】
次に、読み取り動作を、図10を参照して説明する。まず、読み取りが開始されると(ステップS11)、磁気テープ2のシステムエリアに記録された書き込みモードの情報を読み取る(ステップS12)。そして、データの読み取りを実行し(ステップS13)、通常モードで書き込まれている場合には(ステップS14:いいえ)、正常終了となる(ステップS19)。
【0032】
一方、冗長性有り(RAID1、RAID5)で書き込まれていた場合には(ステップS14:はい)、読み取り実行の結果、エラー訂正が実施されずに正常に読み取れていれば(ステップS15:いいえ)、正常終了となる(ステップS19)。エラー訂正が実施され(ステップS15:はい)、エラー訂正が成功している場合には(ステップS16:いいえ)、訂正が実施されたことをユーザに通知して(ステップS17)、正常終了となる(ステップS19)。エラー訂正が実施されたがエラー訂正が失敗している場合には(ステップS16:はい)、異常終了となる(ステップS18)。なお、ステップS17にてエラー訂正が実施されたことの通知を受けたユーザは、ヘッド汚れ・クリーニング要求・テープ寿命(交換要求)などを認識することができ、早期に磁気テープ装置1に対する対応を取ることができる。
【0033】
ここで、ステップS15のエラー訂正は、上述したように記録モード(RAID1、RAID5)ごとに対応して実施される。そして、図7に示すRAID1でテープ上に記録した場合には、同じデータが2箇所に記録されているため、片方が読み取れない場合でもデータを復元することが可能となる。特に、このRAID1の例では、磁気テープ2側に問題があって2トラック連続で読み取り不良となった場合であっても、同一データが物理的に離れた位置に書き込まれているため、データの復元が可能となる。また、図8に示すRAID5でテープ上に記録した場合には、グループG内で1トラックが読み取れない場合でもデータを復元することが可能となる。これにより、磁気テープ装置1内部で冗長構成を構築できると共に、データ記録容量を抑制でき、安価にデータの信頼性を向上することが可能となる。
【0034】
[変形例]
次に、上述した磁気テープ装置1によるデータ記録方式の変形例、つまり、磁気テープ装置1のデータ記録制御部52によるデータ記録方法の他の例を、図11を参照して説明する。
【0035】
この変形例では、基本的には、RAID1の構成にてデータを冗長に記録するが、特に、1対の各同一データを、それぞれ異なる方向に向かって記録する。具体的に図11に示す例では、トラック1(T1)にデータ1がデータ先頭A側からデータ終端B側に向かって記録されるが、これと離れたトラック3(T3)には、データ1と同一のデータ1が、上記トラック1(T1)の記録方向に対して反転した方向に向かって記録される。つまり、トラック1(T1)のデータ先頭A及びデータ終端Bと、トラック3(T3)のデータ先頭A及びデータ終端Bとが相互に反対側に位置するようデータが記録される。また、データ2についても同様である。
【0036】
これにより、例えば、図11に示すように、テープ走行方向に直線的な傷・汚れ(符号9参照)が発生した場合であっても、対のデータ(トラック1(T1)とトラック3(T2))のデータ配列が反転して記録されているため、対のデータにおいてデータ配列上の同じ箇所を失うことを有効に回避することができる。従って、かかる場合であってもデータの復元が可能となり、信頼性が向上しうる。
【0037】
なお、図11の例では、トラック1(T1)のデータ1に対してトラック3(T3)に同一のミラーデータを記録した場合を例示したが、ミラーデータをトラック1(T1)の前に記録してもよい。
【実施例2】
【0038】
次に、本発明の第2の実施例を、図12乃至図17を参照して説明する。図12乃至図14は、本実施例における磁気テープ装置の構成を示す図である。図15乃至図17は、磁気テープ上におけるデータ記録方法を示す図である。
【0039】
本実施例における磁気テープ装置100は、リニアレコーディング方式(以下リニア方式)の磁気テープ装置100である。このリニア方式磁気テープ装置100は、図12に示すように、データ記録領域であるトラックが形成された磁気テープ102が収容されたデータカートリッジ103を装着し、磁気テープ102に対してデータを記録再生する複数の磁気ヘッドを有する磁気ヘッドアセンブリ104と、磁気ヘッドに対して磁気テープ102を走行させるテープ走行機構106及びガイドローラ107と、走行中の磁気テープ102に対する磁気ヘッドによるデータの記録再生動作を制御するコントローラ105(制御手段)と、を備えている。
【0040】
具体的に、リニア方式磁気テープ装置100は、図14に示すように、磁気テープ102がガイドローラ107の誘導により磁気ヘッドアセンブリ104の磁気ヘッド装備部分に対向して配置される。そして、磁気ヘッドアセンブリ104は、矢印Y3に示すよう、磁気テープ102の走行方向とは垂直の方向、つまり、磁気テープ102の幅方向に可動可能となっており、往復しながら走行する磁気テープ102に対してデータを記録再生することができる。なお、磁気ヘッドアセンブリ104は、磁気ヘッドを複数有しているため、複数トラックを同時に書き込むことが可能である。例えば、磁気ヘッドアセンブリ104は、書き込みヘッド・読み取りヘッドをそれぞれ8本〜16本有している。
【0041】
また、磁気テープ装置100に設けられているコントローラ105(制御手段)には、所定のプログラムが組み込まれることによって、テープ走行制御部151、データ記録制御部152、データ再生制御部153が構築されている。テープ走行制御部151は、テープ走行機構106の回転を制御して、テープ走行動作を制御する。そして、データ記録制御部152(記録制御手段)は、ホストコンピュータHからの指令に応じて、磁気ヘッド(磁気ヘッドアセンブリ4)の動作を制御して磁気テープ102に記録対象となるデータを記録する。また、データ再生制御部153は、磁気ヘッドの動作を制御して磁気テープ102に記録されているデータを読み取る。
【0042】
そして、本実施例では、特に、上記データ記録制御部152によって実現されるデータ記録方法に特徴を有しており、これについて以下に詳述する。まず、磁気テープ102上のデータトラック121は、図15に示すように、走行方向に沿って所定の長さに形成されている。具体的には、走行方向に沿って形成された複数本のサーボトラック123間に複数本のデータトラック121が形成されており、データバンド122を構成している。ここで、図16に示すデータトラック121の一部であるA部の拡大図を、図17に示す。
【0043】
図17に示すように、磁気テープ102の各データトラックには、データが分散して記録される。そして、特に、本実施例では、データ記録制御部152によって、ハードディスクでの書込み方式であるRAID5と同様に、記録対象データを分割した複数の分割データと、この記録対象データの誤りを検出するためのパリティデータと、を生成して、各分割データとパリティデータとを1グループとしてそれぞれを各トラックに記録するよう、書き込みヘッド4の動作を制御することが可能となっている。つまり、記録対象データの冗長データとして、パリティデータを生成してトラックに記録する。一例としては、図17に示すように、まず、記録対象データをデータ1,2,3に分割して、そのパリティデータを生成する。そして、磁気ヘッドアセンブリ104の書き込みヘッドにて分割データであるデータ1〜3及びパリティのデータを、それぞれトラック1〜4に書き込む。これにより、1グループの冗長性を有するデータが記録される。つまり、仮にグループ1内で1トラックが読み取り不良になったとしても、後述するデータ再生制御部53の機能により、パリティデータを用いてデータを復元することができ、冗長性が確保される。また、RAID5方式にて記録していることで、記録容量の増大化も抑制することができる。
【0044】
そして、データ再生制御部153は、上述同様に、磁気ヘッドアセンブリに組み込まれた読み取りヘッドを介して、各データトラックからデータを読み取るよう制御するが、このとき、読み取りエラーが検出された場合には、設定された書き込み方式に応じてエラー訂正を行う。つまり、図17に示すように、RAID5方式である場合に一部のトラックからデータを読み取れない場合には、同一グループの他のデータ(パリティを含む)からデータを復元する。そして、必要に応じて、ホストコンピュータHに通知する。
【0045】
なお、上記では、データをRAID5方式にて記録する場合を例示したが、本実施例におけるリニア方式磁気テープ装置にて、上述した実施例1と同様に、RAID1方式にてデータを記録してもよい。つまり、記録するデータとそのミラーデータとを、相互に離間したデータ記録領域に記録することで冗長構成にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の磁気テープ装置は、サーバコンピュータにて管理されたデータをバックアップするなどの用途に利用することができ、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1におけるヘリカルスキャン方式の磁気テープ装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1に開示した磁気テープ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に開示した磁気テープ装置のヘッドドラムと磁気テープとの位置関係を示す図である。
【図4】図1に開示したヘッドドラムの構成を示す図である。
【図5】図1に開示した磁気テープのデータトラックの様子を示す図である。
【図6】図1に開示した磁気テープに対するデータ記録の様子を示す図であり、通常書き込み時の様子を示す。
【図7】図1に開示した磁気テープに対するデータ記録の様子を示す図であり、冗長性を持たせた書き込み時の様子を示す。
【図8】図1に開示した磁気テープに対するデータ記録の様子を示す図であり、冗長性を持たせた書き込み時の様子を示す。
【図9】図1に開示した磁気テープ装置におけるデータ記録時の動作を示すフローチャートである。
【図10】図1に開示した磁気テープ装置におけるデータ再生時の動作を示すフローチャートである。
【図11】図1に開示した磁気テープに対するデータ記録の様子を示す図であり、冗長性を持たせた書き込み時の様子を示す。
【図12】実施例2におけるリニアレコーディング方式の磁気テープ装置の構成を示す概略図である。
【図13】図12に開示した磁気テープ装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図12に開示した磁気テープ装置の磁気ヘッドアセンブリと磁気テープとの位置関係を示す図である。
【図15】図12に開示した磁気テープのデータトラックの様子を示す図である。
【図16】図12に開示した磁気テープのデータトラックの様子を示す図である。
【図17】図16に開示した磁気テープのデータトラックの拡大図であり、冗長性を持たせてデータを書き込んだときの様子を示す。
【符号の説明】
【0048】
1,100 磁気テープ装置
2,102 磁気テープ
3,103 データカートリッジ
4 ヘッドドラム
5,105 コントローラ
6,106 テープ走行機構
21 トラック
51,151 テープ走行制御部
52,152 データ記録制御部
53,153 データ再生制御部
104 磁気ヘッドアセンブリ
107 ガイドローラ
A データ先頭
H ホストコンピュータ
B データ終端
W1,W2,W3,W4 書き込みヘッド
R1,R2,R3,R4 読み取りヘッド
T1,T2,T3,T4 トラック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ記録領域が形成された磁気テープに対してデータを記録再生する複数の磁気ヘッドと、この磁気ヘッド上に前記磁気テープを走行させるテープ走行機構と、走行中の前記磁気テープに対する前記磁気ヘッドによるデータの記録再生動作を制御する制御手段と、を備えた磁気テープ装置であって、
前記制御手段が、記録対象データと、当該記録対象データの少なくとも一部と同一のデータと、を前記磁気テープ上の相互に隣接するデータ記録領域に記録することなく、前記記録対象データに冗長性を持たせて記録するよう前記磁気ヘッドの記録動作を制御する記録制御手段を備えた、
ことを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項2】
前記記録制御手段は、前記記録対象データと、当該記録対象データに冗長性を持たせるための冗長データと、を前記磁気テープ上の異なるトラックにそれぞれ記録するよう制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の磁気テープ装置。
【請求項3】
前記冗長データは、前記記録対象データと同一のデータである、
ことを特徴とする請求項2記載の磁気テープ装置。
【請求項4】
前記記録制御手段は、前記磁気テープ上における前記記録対象データの記録方向に対して反転した方向に向かって前記冗長データを記憶する、
ことを特徴とする請求項3記載の磁気テープ装置。
【請求項5】
前記記録制御手段は、前記磁気テープ上で隣接せず離間する各トラックに、それぞれ前記記録対象データと前記冗長データとを記録する、
ことを特徴とする請求項3又は4記載の磁気テープ装置。
【請求項6】
前記冗長データは、前記記録対象データの誤りを検出するためのパリティデータである、
ことを特徴とする請求項2記載の磁気テープ装置。
【請求項7】
前記記録制御手段は、前記記録対象データの分割データと、当該記録対象データの前記パリティデータと、を1グループとしてそれぞれ各トラックに記録する、
ことを特徴とする請求項6記載の磁気テープ装置。
【請求項8】
ヘリカルスキャン方式あるいはリニアレコーディング方式で、前記磁気テープに対するデータの記録再生を行う、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の磁気テープ装置。
【請求項9】
データ記録領域が形成された磁気テープに対してデータを記録再生する複数の磁気ヘッドと、この磁気ヘッド上に前記磁気テープを走行させるテープ走行機構と、走行中の前記磁気テープに対する前記磁気ヘッドによるデータの記録再生動作を制御する制御手段と、を備えた磁気テープ装置によるデータ記録方法であって、
データ記録時に、記録対象データと、当該記録対象データの少なくとも一部と同一のデータと、を前記磁気テープ上の相互に隣接するデータ記録領域に記録することなく、前記記録対象データに冗長性を持たせて記録するよう前記磁気ヘッドの記録動作を制御する記録制御工程を有する、
ことを特徴とするデータ記録方法。
【請求項10】
前記記録制御工程は、前記記録対象データと、当該記録対象データに冗長性を持たせるための冗長データと、を前記磁気テープ上の異なるトラックにそれぞれ記録するよう制御する、
ことを特徴とする請求項9記載のデータ記録方法。
【請求項11】
前記記録制御工程は、前記冗長データとして前記記録対象データと同一のデータを記録する、
ことを特徴とする請求項10記載のデータ記録方法。
【請求項12】
前記記録制御工程は、前記記録対象データを前記磁気テープに記録すると共に、前記磁気テープ上における前記記録対象データの記録方向に対して反転した方向に向かって前記冗長データを記憶する、
ことを特徴とする請求項11記載のデータ記録方法。
【請求項13】
前記記録制御工程は、前記磁気テープ上で隣接せず離間する各トラックに、それぞれ前記記録対象データと前記冗長データとを記録する、
ことを特徴とする請求項11又は12記載のデータ記録方法。
【請求項14】
前記記録制御工程は、前記冗長データとして前記記録対象データの誤りを検出するためのパリティデータを記録する、
ことを特徴とする請求項10記載のデータ記録方法。
【請求項15】
前記記録制御工程は、前記記録対象データの分割データと、当該記録対象データの前記パリティデータと、を1グループとしてそれぞれ各トラックに記録する、
ことを特徴とする請求項14記載のデータ記録方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−217953(P2008−217953A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58117(P2007−58117)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】