説明

磁気テープ装置

【課題】磁気テープと磁気ヘッドが確かに吸着した場合にのみ、素早く磁気テープと磁気ヘッドの吸着を解除する吸着解除動作を実行させることで、吸着解除動作に無駄がなく、かつ、磁気テープの寿命も長く保つことができる磁気テープ装置を実現する。
【解決手段】磁気テープ装置1は、磁気テープ7に対してデータの記録および再生動作を行う磁気ヘッド2と、磁気ヘッドの記録および再生動作に対応して磁気テープを磁気ヘッドに対して接触させながら走行させる駆動手段6と、磁気テープと磁気ヘッドの接触を解除する解除手段3と、磁気テープの動作における異常を検出する異常検出手段とを備えた磁気テープ装置であって、磁気テープが走行中に、異常検出手段によって異常を検出した場合、強制的に解除手段で磁気テープと磁気ヘッドの接触を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープに対するデータの記録/再生を行う磁気テープ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの外部記憶装置として、記憶媒体として磁気テープを用いた磁気テープ装置が開発されている。磁気テープ装置における記憶/再生動作に関しては、磁気テープは、磁気ヘッドに接触しながら走行する。記憶/再生処理の待機時には、磁気テープは磁気ヘッドに接触した状態にあるので、この状態が長時間におよぶ場合、磁気テープが磁気ヘッドに吸着することがあり、その対策が要望されていた。
【0003】
そこで、磁気テープと磁気ヘッドの当接を良好にするために、磁気ヘッドの磁気テープ当接面にエアの逃溝を施して対応する場合があるが、この溝の形状が磁気テープに転写され、磁気テープに凹凸が生じて記録、再生時のエラーの原因となることがあり、ここでも、さらなる対策が要望されていた。
【0004】
これらの問題の対策として、磁気テープが磁気ヘッドに吸着することを防止し、かつ、溝形状が磁気テープに転写されることを防止するための従来の方法のひとつは、磁気ヘッドの中央部に空隙を設け、エアポンプを用いてこの空隙からエアを磁気テープに吹きつけることにより、磁気テープと磁気ヘッドの接触を回避するものである。
【0005】
また、従来の方法の他のひとつは、磁気ヘッドの記録/再生動作が行われない休止期間内に、磁気テープについて微小距離の往復走行動作を行わせるものである。
【0006】
しかし、従来の前者の方法では、磁気テープと磁気ヘッドの接触を回避するために高価で大きなエアポンプが必要になり、磁気テープ装置の小型化及び低コスト化が困難になるという問題がある。
【0007】
また、従来の後者の方法では、磁気テープについての微小距離の往復走行動作は、通常、予め定められた周期をおいて行われるのであるが、この周期は磁気テープ装置内の温度にかかわらず一定に設定されるため、次のような不都合が生じる。即ち、一般的には、磁気テープと磁気ヘッドの吸着は高温になるほど生じやすいのであるが、低温であるにもかかわらず前述の周期が必要以上に短く設定されていると往復走行動作によって磁気テープが傷むし、高温であるにもかかわらず長い周期が設定されていると磁気テープと磁気ヘッドの吸着を防止し得ないのである。
【0008】
そこで、これらの問題を解決するため、特許文献1では、装置の小型化・低コスト化に適し、装置内の温度を検出した上で、磁気テープと磁気ヘッドの吸着を良好に防止し得る磁気テープ装置を提供している。
【0009】
【特許文献1】特開平8−96438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では、磁気テープと磁気ヘッドの吸着を良好に防止し得るために、磁気テープ装置内の磁気ヘッド近傍に設置された温度センサによって温度を検出し、その検出した温度がある一定以上になったところで、磁気テープと磁気ヘッドの吸着を解除する動作を実行している。
【0011】
このように、上述の温度センサでは、磁気テープと磁気ヘッドの温度を直接検出しているわけではなく、磁気ヘッド近傍の温度が、磁気テープと磁気ヘッドが吸着すると予測される基準温度を越えた場合に、磁気テープと磁気ヘッドの吸着解除動作を実行している。
よって、設定された基準温度が低い場合には、磁気テープと磁気ヘッドが吸着していないのに、磁気テープと磁気ヘッドの吸着解除動作が実行され、過度に吸着解除動作が行われるという問題がある。また、設定された基準温度が高い場合には、磁気テープと磁気ヘッドが吸着しているのに、なかなか磁気テープと磁気ヘッドの吸着解除動作が実行されないという問題がある。
また、特許文献1では、磁気ヘッドの記録/再生動作が行われない休止期間内でなければ、磁気テープと磁気ヘッドの吸着解除動作を実行することができないという問題がある。
そこで、本願発明は、磁気テープと磁気ヘッドが確かに吸着した場合にのみ、素早く磁気テープと磁気ヘッドの吸着を解除する吸着解除動作を実行させることで、吸着解除動作に無駄がなく、かつ、磁気テープに対する負担の少ない吸着解除を実現できる磁気テープ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の磁気テープ装置は、磁気テープに対してデータの記録および再生動作を行う磁気ヘッドと、磁気ヘッドの記録および再生動作に対応して磁気テープを磁気ヘッドに対して接触させながら走行させる駆動手段と、磁気テープと磁気ヘッドの接触を解除する解除手段と、磁気テープの動作における異常を検出する異常検出手段とを備えた磁気テープ装置であって、磁気テープが走行中に、異常検出手段によって異常を検出した場合、強制的に解除手段で磁気テープと磁気ヘッドの接触を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、磁気テープと磁気ヘッドが確かに吸着した場合にのみ、素早く磁気テープと磁気ヘッドの吸着を解除する吸着解除動作を実行させることができるという効果を奏する。
【0014】
また、本願発明によれば、磁気テープと磁気ヘッドの吸着を解除する吸着解除動作に、無駄な動きがなく、磁気テープへの負担が少なくなるので、磁気テープの寿命を長く保つことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である磁気テープ装置を説明するための主要部の平面図である。同図において、磁気テープ装置1は、磁気ヘッド2、テープリフター3、ローラガイド4、カートリッジリール5、マシンリールフランジ6、および、磁気テープ7を含んで構成される。
【0016】
次に、磁気テープ装置1における磁気テープ7の走行について説明を行う。図1に示されている磁気テープ7の状態は、カートリッジリール5に収納されている磁気テープ7の端部が、ローラガイド4および磁気ヘッド2に当接し、マシンリールフランジ6のある部分に結合している。
【0017】
カートリッジリール5とマシンリールフランジ6は、別々に独立した不図示のリールモータによって駆動される。このように、独立したリールモータを駆動させることで、磁気テープ7にある程度のテンションをかけて、磁気テープ7を走行させことができるので、磁気ヘッド2を用いて、磁気テープ7に対する記録、再生等を行うことができる。
【0018】
図2は、磁気テープ7が磁気ヘッド2に吸着した場合に、テープリフター3で、吸着を解除している状態を示した図である。テープリフター3が、図における上方へ移動し、磁気テープ7を持ち上げることで、磁気テープ7と磁気ヘッド2との吸着を解除している。テープリフター3の機構に関する詳細な説明は、図3にて行う。
【0019】
図3は、テープリフター3のしくみを示した図である。磁気テープ7と磁気ヘッド2とが吸着した場合、テープリフター3を駆動させる。具体的には、モータ35を駆動させることで、モータ35に備えられた不図示のピニヨンギアで、リフター棒31の一部のラック36を摺動させることで、リフター棒31を突き出すことができる。テープリフター3には、リフター棒31が摺動した際の位置検出を行うため、リフター棒31に取り付けられたフラグ33とフォトセンサ34が備え付けられている。このフラグ33をフォトセンサ34で検出することによって、リフター棒31が十分に突き出され、その先端部32で磁気テープ7を押し上げ、磁気ヘッド2との吸着から磁気テープ7が解除されたことを確認している。
【0020】
図4は、ハードウェアの構成例を示した図である。MPU(マイクロプロセッサユニット)85は、インターフェイス制御回路81を介して不図示の上位制御装置であるホストコンピュータに接続されている。
【0021】
そして、各種プログラムに基づく演算結果が、電気信号によって、MPU85から磁気ヘッド2を制御する記録/再生/消去制御回路82とテープリフター3を駆動させるリフター駆動回路83とリールモータ8を駆動させるリールモータ駆動回路88とに供給される。また、パルス検出センサ89は、リールモータ8が発するパルスを検出し、その検出結果をMPU85へ伝達する。
【0022】
図5は、磁気テープ7と磁気ヘッド2との吸着を解除する一連の処理フローを示した図である。
【0023】
まず、S101のステップでは、磁気テープ7のローディングを開始される。S102では、磁気テープ7に対してトラッキングが実施された後、記録/再生が行われる。
【0024】
S103のステップでは、リールモータ8のパルスを検出する。リールモータ8のパルスが検出されるのであれば、S107に進み、そのまま、リールモータ8の駆動を継続させ、S102のステップで行われていた記録/再生を継続する。
【0025】
S103のステップで、リールモータ8のパルスが検出されない場合、リールモータ駆動回路88からリールモータ8へ駆動するように電気信号が出ているにも関わらず、リールモータ8が回転していないと判断し、S104のステップに進む。ここで、リールモータ8が回転していないということは、磁気テープ7と磁気ヘッド2とが吸着し、リールモータ8が回転できなくなったと判断する。なぜなら、ここでは、MPU85からリールモータ駆動回路88に対して、リールモータ8を停止するように電気信号が供給されていないからである。
【0026】
S104のステップでは、上述の図3で説明したように、テープリフター3のリフター棒31を突き出すことで、磁気テープ7と磁気ヘッド2との吸着を解除する。S105のステップでは、リフター棒31が十分に突き出された否かを判定し、十分突き出されていない場合は、テープリフター3のモータ35を駆動させて、リフター棒31の突き出し動作を行う。なお、リフター棒31が十分に突き出された否かの判定は、リフター棒31に取り付けられたフラグ33とフォトセンサ34によって判定する。リフター棒31が十分に突き出された場合、その先端部32が磁気テープ7を押し上げ、磁気テープ7と磁気ヘッド2の吸着が解除できたとする。
【0027】
S106のステップでは、S105のステップで、リフター棒31が十分に突き出されたと判定された場合、磁気テープ7と磁気ヘッド2の吸着が解除できたとして、リフター棒31の収納を行う。実際には、リフター棒31の突き出しのために駆動させたモータ35を逆回転させ、リフター棒31を元の位置に戻す。このリフター棒31の収納が完了したならば、S107ステップに進み、S102のステップで行われていた記録/再生を継続する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の磁気テープ装置の主要部の平面図。
【図2】磁気テープと磁気ヘッドとの吸着を解除した状態を示した図。
【図3】テープリフター3のしくみを示した図。
【図4】ハードウェアの構成例を示した図。
【図5】吸着した磁気テープの解除処理フローを示した図。
【符号の説明】
【0029】
1 磁気テープ装置
2 磁気ヘッド
3 テープリフター
4 ローラガイド
5 リールカートリッジ
6 マシンリールフランジ
7 磁気テープ
8 リールモータ
31 リフター棒
33 フラグ
34 フォトセンサ
82 記録/再生/消去制御回路
83 リフター駆動回路
85 MPU
88 リールモータ駆動回路
89 パルス検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープに対してデータの記録および再生動作を行う磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドの記録および再生動作に対応して前記磁気テープを前記磁気ヘッドに対して接触させながら走行させる駆動手段と、
前記磁気テープと前記磁気ヘッドの接触を解除する解除手段と、
前記磁気テープの動作における異常を検出する異常検出手段と、
を備えた磁気テープ装置であって、
前記磁気テープが走行中に、前記異常検出手段によって異常を検出した場合、強制的に前記解除手段で前記磁気テープと前記磁気ヘッドの接触を解除する
ことを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気テープ装置であって、
前記異常検出手段は、前記磁気テープに対して記録または再生が行われている状態で、前記駆動手段における前記磁気テープを走行させる駆動モータが停止したことを検出する
ことを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気テープ装置であって、
前記異常検出手段は、前記磁気テープに対して記録または再生が行われている状態で、前記駆動手段における前記磁気テープを走行させる駆動モータのパルスが発生しないことを検出する
ことを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の磁気テープ装置であって、
前記解除手段は、前記異常検出手段の異常検出に基づいて、棒状の突起物が摺動して、前記磁気テープを走行方向に対して垂直方向に移動させる
ことを特徴とする磁気テープ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−211754(P2009−211754A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52764(P2008−52764)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(302069930)NECパーソナルプロダクツ株式会社 (738)