説明

磁気テープ装置

【課題】クリーニング用のブラシをリーダブロックに具備することによって、省スペースで磁気ヘッドのクリーニングを実現しつつ、他の部材とブラシが干渉することを防止できるようにした磁気テープ装置を提供する。
【解決手段】供給リールに巻き回された磁気テープの先端に設けたリーダピンと、供給リールから引き出された磁気テープが巻き取られる巻き取りリールとの間の磁気テープの搬送経路の途中に磁気ヘッドが配置された磁気テープ装置において、リーダピンに係合した状態で搬送経路に沿って移動することにより、供給リールから巻き取りリールに磁気テープを搬送固定するリーダブロック10と、リーダブロック10に搬送経路と平行な平面内で移動自在に設けられ、磁気ヘッドを擦ってクリーニングするブラシ21bを備えたクリーニング部材22と、リーダブロック10の移動をクリーニング部材22の移動に変換する伝動機構20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープに対してデータの読み取り/書き込みを行なうカートリッジ式の磁気テープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カートリッジ式の磁気テープ装置は、カートリッジが装填された際に、カートリッジ内の供給リールに巻き回された磁気テープの先端を、磁気テープ装置内部の巻き取りリールのハブに搬送固定するスレッディング機構を備えている。
【0003】
また、スレッディング機構は、駆動源からの駆動力をギアから受けてカムギアが回転するとともに移動するスレッディングアームを備え、スレッディングアームの移動に応じて、リーダブロックが磁気テープの搬送経路(スレッダ軌道、リーダブロックの走行経路)に沿って移動する。そして、リーダブロックのフック部で磁気テープの先端に設けたリーダピンをキャプチャし、このリーダブロックが移動して磁気テープの先端を供給リールから引き出し、巻き取りリールに搬送固定するように動作する。このように磁気テープを搬送することにより、磁気テープ装置の内部に設けられた磁気ヘッドに磁気テープが対向配置され、データの読み取り/書き込み(R/W)を行なうことができる。
【0004】
ここで、カートリッジの供給リールから磁気テープを引き出して巻き取りリールに固定する動作をスレッディングといい、スレッディングのときと反対方向にスレッディングアームを移動させて、巻き取りリールに固定されている磁気テープをカートリッジへ収納する動作をアンスレディングという。これらスレッディング、アンスレッディングの動作がスレッディング機構によって行なわれる。
【0005】
一方、安定して磁気テープにデータの読み取り/書き込みを行なうために、磁気ヘッドを定期的にクリーニングして清浄な状態に維持しておくことが必要になる。このため、磁気テープ装置には、磁気ヘッドをクリーニングするクリーニング機構を備えたものがある。このクリーニング機構としては、スレッダ軌道から外れた位置に、ブラシを備えたクリーニング部材を設け、このクリーニング部材をアームによってブラシが磁気ヘッドに接触する位置まで移動させるとともに所定の距離内で往復移動させ、ブラシで擦って磁気ヘッドをクリーニングするように構成したものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、上記のクリーニング機構においては、スレッダ軌道から外れた位置に設けたクリーニング部材と、アームと、アームを駆動する駆動源とを備え、アームの駆動とともにクリーニング部材をスレッダ軌道から外れた位置から磁気ヘッドの位置まで移動させる必要があり、ブラシ(クリーニング部材)のストロークが大きくなる。そして、この大きなストロークで移動するブラシの経路は、他の部品等を設置できないデッドスペースになる。このため、上記のクリーニング機構を備えることにより、磁気テープ装置が大型化するという問題があった。
【0007】
これに対し、特許文献3には、スレッディング機構とクリーニング機構を統合した磁気テープ装置が開示されている。この磁気テープ装置では、リーダブロックの側面にブラシを固定して設け、リーダブロックがスレッダ軌道を移動し、磁気ヘッドの前を通過するときに、ブラシによって磁気ヘッドを擦ってクリーニングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−318563号公報
【特許文献2】特開2006−155683号公報
【特許文献3】特開2002−367127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のスレディング機構とヘッドクリーニング機構を統合した磁気テープ装置においては、ブラシ(クリーニング部材)がリーダブロックの側面に固定して設けられている。そして、このブラシは、磁気ヘッドに当たってクリーニングできる長さが必要で、リーダブロックよりも突出しているため、リーダブロックがスレッダ軌道に沿って移動する際に、磁気テープを案内するガイドローラに当たったり、巻き取りリールに格納して磁気テープを固定する際に当たってしまい、ブラシの毛が折れ曲がるなどの不都合が生じる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、クリーニング用のブラシをリーダブロックに具備することによって、省スペースで磁気ヘッドのクリーニングを実現しつつ、他の部材とブラシが干渉することを防止できるようにした磁気テープ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0012】
本発明の磁気テープ装置は、供給リールに巻き回された磁気テープの先端に設けたリーダピンと、前記供給リールから引き出された磁気テープが巻き取られる巻き取りリールとの間の磁気テープの搬送経路の途中に磁気ヘッドが配置された磁気テープ装置において、前記リーダピンに係合した状態で前記搬送経路に沿って移動することにより、前記供給リールから前記巻き取りリールに磁気テープを搬送固定するリーダブロックと、前記リーダブロックに前記搬送経路と平行な平面内で移動自在に設けられ、前記磁気ヘッドを擦ってクリーニングするブラシを備えたクリーニング部材と、前記リーダブロックの移動を前記クリーニング部材の移動に変換する伝動機構とを備えることを特徴とする。
【0013】
この発明においては、スレッディングやアンスレッディング時のリーダブロックの移動が伝動機構によってクリーニング部材の移動に変換されるため、リーダブロックが磁気ヘッドの前を通過する際に、ブラシが磁気ヘッドに当接するようにクリーニング部材を移動させて磁気ヘッドのクリーニングを行い、リーダブロックが磁気ヘッドから離れる際に、ブラシがリーダブロック側に引き込まれるようにクリーニング部材を移動させることが可能になる。これにより、単にリーダブロックにブラシ(クリーニング部材)を固設した従来のように、クリーニング部材が磁気テープを案内するガイドローラに当たったり、巻き取りリールに格納して磁気テープを固定する際に当たってしまうことを回避することができる。よって、ブラシの毛が折れ曲がるなどの不都合が生じることを防止することが可能になる。
【0014】
また、本発明の磁気テープ装置においては、前記クリーニング部材が、間隔をあけて並設された一対の突片部及び前記一対の突片部の後端同士を繋ぐように連設された連設部からなる押圧回動部と、前記連設部に下端を繋げて上方に延び、且つ前記一対の突片部の突出方向に突出する支持部及び前記支持部の先端面に設けられたブラシからなるクリーニング部とを備えるとともに、前記支持部の後端側を上下方向に延びる回動軸線周りに回動自在に前記リーダブロックに接続して設けられており、前記搬送経路には、前記リーダブロックが移動する際に、前記押圧回動部を押圧して前記クリーニング部材を前記回動軸線周りに回動させる押圧突起が固設されており、前記伝動機構が、前記クリーニング部材の押圧回動部と前記押圧突起とを備えて構成されていることが望ましい。
【0015】
この発明においては、リーダブロックが搬送経路を一方向に移動し、押圧突起が押圧回動部の一対の突片部と連設部で囲まれた空間内に入り、この押圧突起が連設部や一方の突片部に当接して押圧することで、クリーニング部材を回動軸線中心の一方向に回動させることができる。また、逆に、リーダブロックが搬送経路を他方向に移動し、押圧突起が押圧回動部の一対の突片部と連設部で囲まれた空間内に入り、この押圧突起が連設部や他方の突片部に当接して押圧することで、クリーニング部材を回動軸線中心の他方向に回動させることができる。
【0016】
そして、リーダブロックが一方向(又は他方向)に移動するとともにクリーニング部材が一方向(他方向)に回動することで、クリーニング部をリーダブロックに対して外側に突出させるとともにブラシを磁気ヘッドに当接させて、磁気ヘッドをクリーニングすることが可能になる。また、さらにリーダブロックが一方向(他方向)に移動すると、一方の突片部(又は他方の突片部)が押圧突起に押圧されてクリーニング部材が一方向(又は他方向)に回転し、ブラシが磁気ヘッドから離れ、クリーニング部をリーダブロック側に引き込むように移動させることができる。これにより、クリーニング部材が磁気テープを案内するガイドローラに当たったり、巻き取りリールに格納して磁気テープを固定する際に当たってしまうことを回避することができる。よって、ブラシの毛が折れ曲がるなどの不都合が生じることを防止することが可能になる。
【0017】
さらに、本発明の磁気テープ装置においては、前記磁気ヘッドに前記ブラシが当接した状態で、前記磁気ヘッドを上下方向に進退移動させる進退機構を備えていることがより望ましい。
【0018】
この発明においては、クリーニング部材が回動して磁気ヘッドにブラシが当接した状態で、進退機構によって磁気ヘッドを上下方向に進退移動させることで、磁気ヘッドの表面の上下方向に延びる溝をブラシで擦って好適にクリーニングすることができる。
【0019】
また、本発明の磁気テープ装置において、前記リーダブロックには、前記搬送経路を移動する際に前記磁気ヘッド側を向く一側面から他側面側に凹み、前記クリーニング部を収容する収容凹所が形成されていることがさらに望ましい。
【0020】
この発明においては、リーダブロックに収容凹所が形成されているため、リーダブロックが一方向(又は他方向)に移動し、クリーニング部材が回動して、ブラシが磁気ヘッドから離れ、リーダブロック側に引き込まれるようにクリーニング部が移動したとき、このクリーニング部を収容凹所に収容することができる。これにより、クリーニング部がリーダブロックの側面から大きく突出することがなく、クリーニング部材が、磁気テープを案内するガイドローラに当たったり、巻き取りリールに格納して磁気テープを固定する際に当たってしまうことをより確実に回避することが可能になる。よって、従来のようにブラシの毛が折れ曲がるなどの不都合が生じることをさらに確実に防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の磁気テープ装置においては、スレッディングやアンスレッディング時のリーダブロックの移動が伝動機構によってクリーニング部材の移動に変換されるため、リーダブロックが磁気ヘッドの前を通過する際に、ブラシが磁気ヘッドに当接するようにクリーニング部材を移動させて磁気ヘッドのクリーニングを行い、リーダブロックが磁気ヘッドから離れる際に、ブラシがリーダブロック側に引き込まれるようにクリーニング部材を移動させることが可能になる。これにより、クリーニング部材が磁気テープを案内するガイドローラに当たったり、巻き取りリールに格納して磁気テープを固定する際に当たってしまうことを回避することができ、ブラシの毛が折れ曲がるなどの不都合が生じることを防止することが可能になる。
【0022】
よって、本発明の磁気テープ装置によれば、クリーニング用のブラシをリーダブロックに具備することによって、省スペースで磁気ヘッドのクリーニングを実現することが可能になるとともに、他の部材とブラシが干渉することを確実に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気テープ装置を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る磁気テープ装置のリーダブロックを示す斜視図である。
【図3】図2のX1−X1線矢視図であり、本発明の一実施形態に係る磁気テープ装置のリーダブロックを示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る磁気テープ装置のリーダブロックが搬送経路を一方向に移動している状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る磁気テープ装置のリーダブロックが搬送経路を一方向に移動している状態を示す図であり、押圧突起によって押圧回動部が押圧されてクリーニング部材が回動している状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る磁気テープ装置のリーダブロックが搬送経路を一方向に移動している状態を示す図であり、押圧突起によって押圧回動部が押圧されてクリーニング部材のブラシが磁気ヘッドに当接した状態を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る磁気テープ装置のリーダブロックが搬送経路を一方向に移動している状態を示す図であり、押圧突起によって押圧回動部が押圧されてクリーニング部材が回動し、クリーニング部がリーダブロック側に引き込まれた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1から図7を参照し、本発明の一実施形態に係る磁気テープ装置について説明する。本実施形態は、磁気テープに対してデータの読み取り/書き込みを行なうカートリッジ式の磁気テープ装置に関するものである。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の磁気テープ装置Aは、従来周知の磁気テープ装置と同様、磁気テープ1が巻き回された供給リール2(不図示)を収容したテープカートリッジ3と、テープカートリッジ3を装置内部に搬送するためのローディング機構(不図示)と、テープカートリッジ3内に収容された磁気テープ1の先端に設けたリーダピン4を係合保持し、磁気テープ1を搬送経路(スレッダ軌道)Rに沿って配置しつつ、装置内の巻き取りリール(不図示)に引き込んで搬送固定するスレッディング機構5とを備えている。
【0026】
また、本実施形態の磁気テープ装置Aは、搬送経路Rの途中に磁気ヘッド6が、ヘッド部6aを搬送経路R側に向けて配設され、この磁気ヘッド6を上下方向T1に進退移動させる進退機構7を備えている。さらに、磁気ヘッド6を間に、供給リール2から引き出された磁気テープ1を案内するための複数のガイドローラ8が、略搬送経路Rに沿う方向に間隔をあけて配設されている。
【0027】
スレッディング機構5は、磁気テープ1の先端に取り付けたリーダピン4を係合保持するリーダブロック10と、磁気テープ装置Aのデッキベース11に設けられてリーダブロック10を案内するガイド溝12と、リーダブロック10を支持し、リーダブロック10をガイド溝12に沿って移動させるスレッディングアーム13と、スレッディングアーム13が回動可能に取り付けられ、駆動源からの駆動力をギア14から受けて回転するとともにスレッディングアーム13を移動させるカムギア15とを備えて構成されている。
【0028】
リーダブロック10には、図1から図3に示すように、先端10a側に、リーダピン4を保持するためのフック部16が設けられており、後端10b側に、スレッディングアーム13に回転自在に支持される回転軸17が設けられている。また、リーダブロック10には、ガイド溝12に係合させて、回転軸17周りのリーダブロック10の向きを制御しつつガイド溝12に沿ってリーダブロック10を移動させるためのガイドピン18が設けられている。
【0029】
さらに、本実施形態のリーダブロック10には、押圧回動部20とクリーニング部21からなるクリーニング部材22が一体に取り付けられている。このクリーニング部材22の押圧回動部20は、所定の間隔をあけて並設された一対の突片部20a、20bと、一対の突片部20a、20bの後端同士を繋ぐように連設された連設部20cとを備えて平面視コ字状を呈するように形成されている。一方、クリーニング部21は、押圧回動部20の連設部20cに後端側の下端を接続して上方に延び、且つ一対の突片部20a、20bの突出方向に沿って突出する略平板状の支持部21aと、支持部21aの突出方向先端面に付設(固設)されたブラシ21bとを備えて形成されている。そして、このクリーニング部材22は、クリーニング部21の支持部21aの後端側を上下方向T1に延びる回動軸線O1周りに回動自在にリーダブロック10に接続して、前記搬送経路Rと平行な平面内で移動自在に設けられている。
【0030】
さらに、このリーダブロック10は、搬送経路Rに沿って移動する際に、磁気ヘッド6側を向く一側面10cから他側面10d側に凹む収容凹所25が形成されている。そして、クリーニング部材22は、初期姿勢の状態で、この収容凹所25にクリーニング部21が収容され、回動軸線O1周りに回動することによって、リーダブロック10からクリーニング部21が外側に突出する。
【0031】
また、図1及び図4に示すように、本実施形態の磁気テープ装置Aにおいては、押圧回動部20を押圧してクリーニング部材22を回動させるための押圧突起26が設けられている。この押圧突起26は、搬送経路R内で、且つ磁気ヘッド6の近傍の所定位置に、下端をデッキベース11に固着して凸設されている。
【0032】
そして、本実施形態では、クリーニング部材22の押圧回動部20と、搬送経路Rに凸設され、押圧回動部20を押圧してクリーニング部材22を回動させるための押圧突起26とによって伝動機構27が構成されている。
【0033】
一方、磁気ヘッド6を上下方向Tに進退移動させる進退機構7は、例えば、デッキベース11に駆動モータが付設され、磁気ヘッド6に取り付けたナットに螺合したリードスクリューを駆動モータで正逆回転させることによって、磁気ヘッド6を上下させるように構成されている。
【0034】
そして、上記構成からなる本実施形態の磁気テープ装置Aにおいては、図1及び図4に示すように、例えば、カートリッジ3の供給リール2から磁気テープ1を引き出して巻き取りリールに固定するスレッディング時に、駆動源の駆動によってギア14が回転し、このギア14から駆動力を受けてカムギア15が回転するとともに、スレッディングアーム13が移動する。スレッディングアーム13の移動に従動して、リーダブロック10が、ガイド溝12に沿って、搬送経路Rを巻き取りリールから供給リール2側に向かう一方向に移動する。なお、このとき、クリーニング部材10は、図4に示すように、クリーニング部21をリーダブロック10の収容凹所25に収容した初期姿勢の状態とされている。
【0035】
次に、図1、図4及び図5に示すように、リーダブロック10が磁気ヘッド6の近くに達すると、クリーニング部材22の押圧回動部20の一対の突片部20a、20bと連設部20cで囲まれた空間内に押圧突起26が入り込み、さらにリーダブロック10が一方向に移動すると、押圧突起26が連設部20cに当接してこれを押圧し、クリーニング部材22が回動軸線O1周りの一方向に回動し、収容凹所25からクリーニング部21がリーダブロック10の一側面から横方向T2外側に突出する。また、図1及び図6に示すように、リーダブロック10が所定位置に達すると、押圧突起26が連設部20cから一方の突片部20aを押圧し、さらにクリーニング部材22が一方向に回動し、クリーニング部21のブラシ21bが磁気ヘッド6の表面(ヘッド部6aの表面)に当接する。
【0036】
このようにクリーニング部21のブラシ21bが磁気ヘッド6に当接するとともに、進退機構7が駆動して磁気ヘッド6が上下方向T1に進退する。これにより、磁気ヘッド6のヘッド部6aの溝をブラシ21bで擦り、磁気ヘッド6の表面がクリーニングされる。なお、このように磁気ヘッド6をブラシ21bで擦ってクリーニングを行う際には、クリーニング部21のブラシ21bが磁気ヘッド6に当接する位置でリーダブロック10の移動を一旦停止するように駆動制御する。
【0037】
また、さらにリーダブロック10が搬送経路Rを一方向に移動すると、押圧突起26が一方の突片部20aを押圧して、さらにクリーニング部材22が一方向に回動し、クリーニング部21がリーダブロック10の後端側に引き込まれるように配される。
【0038】
そして、リーダブロック10が供給リール2側の所定位置に達すると、供給リール2に巻き回された磁気テープ1の先端に設けたリーダピン4をフック部16でキャプチャし、ギア14から駆動力を受けてカムギア15が回転し、スレッディングアーム13が移動に従動して、リーダブロック10が、ガイド溝12に沿って、搬送経路Rを供給リール2から巻き取りリール側に向かう他方向に移動する。
【0039】
このように他方向に移動して、リーダブロック10が磁気ヘッド6の近くに達すると、図4から図7に示す動作と逆に、クリーニング部材22の押圧回動部20の一対の突片部20a、20bと連設部20cで囲まれた空間内に押圧突起26が入り込み、さらにリーダブロック10が他方向に移動すると、押圧突起26が連設部20cに当接してこれを押圧し、クリーニング部材22が回動軸線O1周りの他方向に回動し、クリーニング部21がリーダブロック10の一側面から横方向T2外側に突出する。また、リーダブロック10が所定位置に達すると、押圧突起26が連設部20cから他方の突片部21bを押圧し、さらにクリーニング部材22が他方向に回動し、クリーニング部21のブラシ21bが磁気ヘッド6の表面側に配される。
【0040】
なお、リーダブロック10が他方向に移動する際にも磁気ヘッド6の表面にクリーニング部21のブラシ21bが当接するように構成し、クリーニングを行うようにしてもよいし、リーダブロック10が一方向と他方向のどちらか一方に移動する際に、磁気ヘッド6の表面にクリーニング部21のブラシ21bが当接するように構成し、クリーニングを行うようにしてもよい。
【0041】
また、さらにリーダブロック10が搬送経路Rを他方向に移動すると、押圧突起26が他方の突片部20bを押圧して、さらにクリーニング部材22が他方向に回動し、クリーニング部21がリーダブロック10側に引き込まれて収容凹部25に収容される。また、リーダブロック10が巻き取りリールに達するとともに、フック部16で保持したリーダピン4を巻き取りリールに固定する。
【0042】
そして、上記のように、リーダブロック10が磁気ヘッド6の前を通過するときに、クリーニング部材22を回動させて、自動的にクリーニング部21(ブラシ21b)を横方向T2外側に突出させ、搬送経路Rの他の位置をリーダブロック10が移動するときには、クリーニング部材22を回動させて、自動的にクリーニング部21をリーダブロック10側に引き込む。このため、本実施形態の磁気テープ装置Aにおいては、クリーニング部材22が磁気テープ1を案内するガイドローラ8に当たったり、巻き取りリールに格納して磁気テープ1を固定する際に当たってしまうことがない。
【0043】
なお、カートリッジ3の供給リール2から磁気テープ1を引き出して巻き取りリールに固定するスレッディング動作時に、クリーニング部材22が回動して磁気ヘッド6のクリーニングを行なうように説明したが、スレッディングのときと反対方向にスレッディングアーム13を移動させて、巻き取りリールに固定されている磁気テープ1をカートリッジ3へ収納するアンスレディング動作時に、上記の説明と同様に、クリーニング部材22を自動的に回動させて磁気ヘッド6のクリーニングを行なうようにすることも勿論可能である。
【0044】
したがって、本実施形態の磁気テープ装置Aにおいては、スレッディングやアンスレッディング時のリーダブロック10の移動が伝動機構27によってクリーニング部材22の移動に変換されるため、リーダブロック10が磁気ヘッド6の前を通過する際に、ブラシ21bが磁気ヘッド6に当接するようにクリーニング部材22を移動させて磁気ヘッド6のクリーニングを行い、リーダブロック10が磁気ヘッド6から離れる際に、ブラシ21bがリーダブロック10側に引き込まれるようにクリーニング部材22を移動させることが可能になる。
【0045】
これにより、単にリーダブロック10にブラシ(クリーニング部材)を固設した従来のように、クリーニング部材22が磁気テープ1を案内するガイドローラ8に当たったり、巻き取りリールに格納して磁気テープ1を固定する際に当たってしまうことを回避することができ、ブラシ21bの毛が折れ曲がるなどの不都合が生じることを防止することが可能になる。
【0046】
よって、本実施形態の磁気テープ装置Aによれば、クリーニング用のブラシ21bをリーダブロック10に具備することによって、省スペースで磁気ヘッド6のクリーニングを実現することが可能になるとともに、他の部材とブラシ21bが干渉することを確実に防止することが可能になる。
【0047】
また、本実施形態の磁気テープ装置Aにおいては、リーダブロック10が搬送経路Rを一方向に移動し、押圧突起26が押圧回動部20の一対の突片部20a、20bと連設部20cで囲まれた空間内に入り、この押圧突起26が連設部20cや一方の突片部20aに当接して押圧することで、クリーニング部材22を回動軸線O1中心の一方向に回動させることができる。また、逆に、リーダブロック10が搬送経路Rを他方向に移動し、押圧突起26が押圧回動部20の一対の突片部20a、20bと連設部20cで囲まれた空間内に入り、この押圧突起26が連設部20cや他方の突片部20bに当接して押圧することで、クリーニング部材22を回動軸線O1中心の他方向に回動させることができる。
【0048】
そして、リーダブロック10が一方向(又は他方向)に移動するとともにクリーニング部材22が一方向(他方向)に回動することで、クリーニング部21をリーダブロック10に対して外側に突出させるとともにブラシ21bを磁気ヘッド6に当接させて、磁気ヘッド6をクリーニングすることが可能になる。また、さらにリーダブロック10が一方向(他方向)に移動すると、一方の突片部20a(又は他方の突片部20b)が押圧突起26に押圧されてクリーニング部材22が一方向(又は他方向)に回転し、ブラシ21bが磁気ヘッド6から離れ、クリーニング部21をリーダブロック10側に引き込むように移動させることができる。これにより、クリーニング部材22が磁気テープ1を案内するガイドローラ8に当たったり、巻き取りリールに格納して磁気テープ1を固定する際に当たってしまうことを回避することができる。よって、ブラシ21bの毛が折れ曲がるなどの不都合が生じることを防止することが可能になる。
【0049】
さらに、クリーニング部材22が回動して磁気ヘッド6にブラシ21bが当接した状態で、進退機構7によって磁気ヘッド6を上下方向T1に進退移動させることで、磁気ヘッド6の表面の上下方向T1に延びる溝をブラシ21bで擦って好適にクリーニングすることができる。
【0050】
また、リーダブロック10に収容凹所25が形成されているため、リーダブロック10が一方向(又は他方向)に移動し、クリーニング部材22が回動して、ブラシ21bが磁気ヘッド6から離れ、リーダブロック10側に引き込まれるようにクリーニング部21が移動したとき、このクリーニング部21を収容凹所25に収容することができる。これにより、クリーニング部21がリーダブロック10の側面10cから大きく突出することがなく、クリーニング部材22が、磁気テープ1を案内するガイドローラ8に当たったり、巻き取りリールに格納して磁気テープ1を固定する際に当たってしまうことをより確実に回避することが可能になる。よって、従来のようにブラシ21bの毛が折れ曲がるなどの不都合が生じることをさらに確実に防止することが可能になる。
【0051】
以上、本発明に係る磁気テープ装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 磁気テープ
2 供給リール
3 テープカートリッジ
4 リーダピン
5 スレッディング機構
6 磁気ヘッド
6a ヘッド部
7 進退機構
8 ガイドローラ
10 リーダブロック
10a 先端
10b 後端
10c 側面
10d 側面
11 デッキベース
12 ガイド溝
13 スレッディングアーム
14 ギア
15 カムギア
16 フック部
17 回転軸
18 ガイドピン
20 押圧回動部
20a 突片部
20b 突片部
20c 連設部
21 クリーニング部
21a 支持部
21b ブラシ
22 クリーニング部材
25 収容凹所
26 押圧突起
27 伝動機構
A 磁気テープ装置
O1 回動軸線
R 搬送経路(スレッダ軌道、走行経路)
T1 上下方向
T2 横方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給リールに巻き回された磁気テープの先端に設けたリーダピンと、前記供給リールから引き出された磁気テープが巻き取られる巻き取りリールとの間の磁気テープの搬送経路の途中に磁気ヘッドが配置された磁気テープ装置において、
前記リーダピンに係合した状態で前記搬送経路に沿って移動することにより、前記供給リールから前記巻き取りリールに磁気テープを搬送固定するリーダブロックと、
前記リーダブロックに前記搬送経路と平行な平面内で移動自在に設けられ、前記磁気ヘッドを擦ってクリーニングするブラシを備えたクリーニング部材と、
前記リーダブロックの移動を前記クリーニング部材の移動に変換する伝動機構とを備えることを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気テープ装置において、
前記クリーニング部材が、間隔をあけて並設された一対の突片部及び前記一対の突片部の後端同士を繋ぐように連設された連設部からなる押圧回動部と、前記連設部に下端を繋げて上方に延び、且つ前記一対の突片部の突出方向に突出する支持部及び前記支持部の先端面に設けられたブラシからなるクリーニング部とを備えるとともに、前記支持部の後端側を上下方向に延びる回動軸線周りに回動自在に前記リーダブロックに接続して設けられており、
前記搬送経路には、前記リーダブロックが移動する際に、前記押圧回動部を押圧して前記クリーニング部材を前記回動軸線周りに回動させる押圧突起が固設されており、
前記伝動機構が、前記クリーニング部材の押圧回動部と前記押圧突起とを備えて構成されていることを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の磁気テープ装置において、
前記磁気ヘッドに前記ブラシが当接した状態で、前記磁気ヘッドを上下方向に進退移動させる進退機構を備えていることを特徴とする磁気テープ装置。
【請求項4】
請求項2記載の磁気テープ装置において、
前記リーダブロックには、前記搬送経路を移動する際に前記磁気ヘッド側を向く一側面から他側面側に凹み、前記クリーニング部を収容する収容凹所が形成されていることを特徴とする磁気テープ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−73638(P2013−73638A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210207(P2011−210207)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(302069930)NECエンベデッドプロダクツ株式会社 (738)