説明

磁気テープ駆動装置

【課題】磁気テープを停止状態から走行状態へ移行させる際、磁気テープを走行状態から停止状態へ移行させる際、または磁気テープの走行方向を逆転させる際に、磁気ヘッド及び磁気テープにダメージを与えない磁気テープ駆動装置を提供する。
【解決手段】磁気ヘッド1の磁気テープ入側または出側の少なくとも一方に、磁気テープ6を磁気ヘッド1から離間させることが可能な支持体7及び支持体駆動部14と、テープ駆動手段と支持体駆動部14の動作を制御する制御部12を備え、制御部12は、支持体7を待避位置から突出位置へ移動させた後、テープ駆動手段の動作を開始させて、磁気テープ6の走行を開始させるよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープを駆動可能な磁気テープ駆動装置に関する。特に、磁気センサー型ヘッドで、表面平滑性Raが3.0nm以下の磁気テープに、データをリニア記録可能な磁気テープ装置に有用である。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体の一種である磁気テープは、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピューターテープなど様々な用途がある。特に、コンピューター用のデータバックアップテープの分野では、バックアップの対象となるハードディスクの大容量化に伴い、1巻当たり数百GBの記憶容量のものが商品化されている。今後、ハードディスクのさらなる大容量化に対応するため、バックアップテープの高容量化は不可欠である。
【0003】
バックアップテープとして使用される磁気テープは、さらなる記録容量の増大に伴って記録波長が短波長化され、スペーシングによる記録再生特性の劣化を抑えるために、表面の平滑化が進んでいる。磁気テープの表面が平滑化されることで、磁気ヘッドと磁気テープとの接触面積が増え、両者間の摩擦が大きくなる。特に、磁気テープが磁気ヘッドに接触して停止している状態から、磁気テープの走行を開始する時などに発生する静止摩擦が大きくなると、磁気テープや磁気ヘッドにダメージが生じたり、磁気テープの表面が磁気ヘッドによって削られることによる異物(コンタミネーション)が発生するなどの問題が生じる。磁気ヘッドと磁気テープとの静止摩擦に対する対策として、例えば特許文献1に開示された技術がある。
【0004】
特許文献1は、磁気記録・再生時において磁気テープと磁気ヘッドとの静止摩擦を低減させるために、磁気テープのBOT部(BOT:Beginning of tape)及びEOT部(EOT:End of tape)に微小な凹部を形成している。これにより、磁気ヘッドが磁気テープ6の始端または終端に位置している時に、磁気テープの走行を開始しても、静止摩擦が低いためテープダメージなどを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−127666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に開示されている構成では、凹部を磁気テープのBOT部及びEOT部にしか形成することができないため、BOT部とEOT部との間の部分(凹部が形成されていない部分)に磁気ヘッドが接触している状態で磁気テープの走行及び停止動作を繰り返して行うと、磁気ヘッドと磁気テープとの間における静止摩擦により、磁気ヘッドまたは磁気テープにダメージを与えてしまうという問題がある。
【0007】
すなわち、磁気テープの停止状態において、走行し始めにおける磁気テープと磁気センサー型ヘッドとの静止摩擦によって、磁気センサー型ヘッドに対して磁気テープが張り付きを起こしてしまい、磁気テープにダメージを与えたり、磁気テープが切れてしまう可能性がある。または、磁気ヘッドのMR素子等にダメージを与える可能性がある。また、磁気テープが走行状態から停止する時にも、上記と同様な問題が起きる。また、磁気テープの走行方向を第1の方向(例えばフォワード方向)から第2の方向(例えばリバース方向)へ切り替える際、または第2の方向から第1の方向へ切り換える際にも、上記と同様な問題が起きる。
【0008】
本願の目的は、磁気テープを停止状態から走行状態へ移行させる際、磁気テープを走行状態から停止状態へ移行させる際、または磁気テープの走行方向を逆転させる際に、磁気ヘッド及び磁気テープにダメージを与えないとともに、異物(コンタミネーション)の発生を防止することができるので、磁気テープや磁気ヘッドに傷などのダメージを与えない磁気テープ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の磁気テープ駆動装置は、磁気テープが巻き付けられ、前記磁気テープに対して情報を記録または再生可能なヘッドユニットと、前記磁気テープを走行駆動するテープ駆動手段とを備えた磁気テープ駆動装置であって、前記ヘッドユニットの磁気テープ入側または出側の少なくとも一方に、前記磁気テープを前記ヘッドユニットから離間させることが可能なテープ離間手段を備え、前記テープ離間手段は、前記磁気テープとの間の摩擦が、前記磁気テープと前記ヘッドユニットとの間の摩擦よりも小さく、前記磁気テープを前記ヘッドユニットに接触させている状態と、前記磁気テープを前記ヘッドユニットから離間させている状態とを有し、前記テープ駆動手段が駆動命令に基づき前記磁気テープを停止状態から走行を開始する前に、前記ヘッドユニットと前記磁気テープのとの間の静止摩擦を生じないように前記磁気テープを前記磁気抵抗型ヘッドユニットから離間させる。
【発明の効果】
【0010】
本願の開示によれば、磁気テープを停止あるいは走行させる際に、磁気ヘッド及び磁気テープにダメージを与えないようにすることができる。また、異物(コンタミネーション)の発生を防止することができるので、磁気テープや磁気ヘッドに傷などのダメージを与えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】実施の形態1にかかる磁気テープ駆動装置の構成を示すブロック図
【図1B】実施の形態1にかかる磁気テープ駆動装置の構成を示すブロック図
【図2A】磁気テープ駆動装置における基本動作の流れを示すフローチャート
【図2B】磁気テープ駆動装置における反転動作の流れを示すフローチャート
【図3A】実施の形態2にかかる磁気テープ駆動装置の構成を示すブロック図
【図3B】実施の形態2にかかる磁気テープ駆動装置の構成を示すブロック図
【図4A】実施の形態3にかかる磁気テープ駆動装置の構成を示すブロック図
【図4B】実施の形態3にかかる磁気テープ駆動装置の構成を示すブロック図
【図5A】実施の形態3にかかるポストの構成を示す斜視図
【図5B】実施の形態3にかかるポストの構成を示す斜視図
【図6A】実施の形態4にかかる磁気テープ駆動装置の構成を示すブロック図
【図6B】実施の形態4にかかる磁気テープ駆動装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
図1A及び図1Bは、実施の形態1における磁気テープ駆動装置の構成である。図1Aは、支持体7が退避位置にある状態を示す。図1Bは、支持体7が突出位置にある状態を示す。
【0013】
磁気ヘッド1は、例えばMR素子を備え、磁気テープ6に対して各種情報を記録したり、磁気テープ6に記録されている各種情報を再生したりすることができる。テープガイド2及び3は、磁気ヘッド1の入側及び出側にそれぞれ配され、磁気ヘッド1に対する磁気テープ6の巻き付け角や、磁気テープ6の幅方向の位置を規制している。第1のリール4は、予め磁気テープ駆動装置内に配され、モータ21によって回転駆動される。第2のリール5は、磁気テープ駆動装置に着脱可能なカートリッジ(不図示)内に配され、カートリッジを装置内に装着した際に装置内に配されているリール台(不図示)に装着される。リール台は、制御部12によって駆動制御されるモータ22によって回転駆動される。磁気テープ6は、データ記録用の磁気テープで構成されている。第2のリール5から引き出された磁気テープ6は、テープガイド3、磁気ヘッド1、テープガイド2の順に接触され、第1のリール4に巻回される。
【0014】
支持体7は、磁気ヘッド1の近傍に配され、磁気テープ6のテープパス内へ進入して磁気テープ6を押圧する突出位置と、磁気テープ6に接触しない退避位置との間を移動可能に配されている。また、支持体7において、突出位置に移動した時に磁気テープ6が接触する面は、磁気テープ6にダメージを与えないように曲面で形成されている。また、支持体7は、少なくとも磁気テープ6を磁気ヘッド1の摺動面から離間させることが可能な突出位置まで移動可能に配されている。また、支持体7は、例えばAlTiC(Al23−TiC)で形成することができる。また、支持体7は、磁気テープ6との接触面積が少なくなるように、磁気テープ6との接触部分の曲率半径を小さくすることが望ましく、例えば曲率半径は4mm以下で形成することが望ましい。
【0015】
操作部11は、ユーザによる記録命令や停止命令などの各種操作を受け付ける。制御部12は、操作部11が操作されることにより、その操作の内容に応じて各部を制御する。磁気ヘッド制御部13は、制御部12からの制御指令により、磁気ヘッド1を記録動作あるいは再生動作させる。支持体駆動部14は、制御部12からの制御指令により、支持体7を退避位置から突出位置あるいは突出位置から退避位置へ移動させる。
【0016】
なお、支持体7及び支持体駆動部14は、テープ離間手段の一例である。また、テープガイド2及び3、制御部12、モータ21及び22は、テープ駆動手段の一例である。
【0017】
次に、磁気テープ駆動装置の動作を説明する。図2A及び図2Bは、本実施の形態の磁気テープ駆動装置の動作フローを示す。なお、図2Aに示すフローは、磁気テープ6に情報を記録する一連の動作を示す。
【0018】
まず、図1Aに示すように、磁気テープ6のローディングが完了した状態では、磁気テープ6は磁気ヘッド1の摺動面に接触した状態で停止し、支持体7は退避位置にある。この状態で、ユーザにより操作部11が操作されて記録命令が入力されると、制御部12は、支持体駆動部14に対して支持体7の駆動命令を出力する。支持体駆動部14は、入力される駆動命令に基づき、退避位置にある支持体7を突出位置へ移動させる。支持体7は、退避位置から突出位置へ移動される際、磁気テープ6を押圧して磁気ヘッド1から離間させる(S1)。
【0019】
次に、制御部12は、支持体7が突出位置まで移動すると、第1のリール4を回転駆動するモータ21及び第2のリール5を回転駆動するモータ22に対して動作命令を出力する。これによりモータが回転駆動し、第1のリール4及び第2のリール5を回転駆動し、磁気テープ6を矢印A方向へ走行させる。この時、磁気テープ6は、磁気ヘッド1から離間した状態で矢印Aに示す方向へ走行を開始するため、磁気ヘッド1と磁気テープ6との間に摩擦は発生しない(S2)。
【0020】
次に、制御部12は、モータ21及び22を制御して磁気テープ6の走行速度を徐々に加速させ、所定の走行速度で定速走行させる(S3)。
【0021】
次に、制御部12は、磁気テープ6の走行速度が安定したら、支持体駆動部14に対して支持体7の駆動命令を出力する。支持体駆動部14は、入力される駆動命令に基づき、突出位置にある支持体7を図1Aに示す退避位置まで移動させる。これにより、磁気テープ6は、磁気ヘッド1の摺動面に接触する。磁気テープ6が磁気ヘッド1に接触する時、磁気テープ6が走行中であるため、磁気テープ6と磁気ヘッド1との間に動摩擦が発生する。動摩擦は、静止摩擦に比べて摩擦係数が低いため、磁気テープ6や磁気ヘッド1にダメージを与える可能性は低い(S4)。
【0022】
次に、制御部12は、磁気ヘッド制御部13に対してトラッキングサーボを行う命令を出力する。磁気ヘッド制御部13は、入力される命令に基づき、磁気ヘッド1内のデータヘッドが所定のトラックを追従するように、磁気ヘッド1を磁気テープ6の幅方向へ移動させる(S5)。
【0023】
なお、磁気ヘッド1を磁気テープ6の幅方向へ駆動する構成には、周知であるため説明を省略する。また、磁気テープ6のトラッキングサーボは、磁気ヘッド1に備えられているサーボヘッドで、磁気テープ6に予め記録されているサーボ信号を再生することにより制御を行うことができるが、サーボヘッドの構成、サーボ信号の構成、具体的なトラッキングサーボの方法については説明を省略する。
【0024】
次に、制御部12は、磁気ヘッド制御部13に対してデータ記録を行う命令を出力する。磁気ヘッド制御部13は、入力される命令に基づき、磁気ヘッド1を記録動作させて、磁気テープ6のデータトラックにデータを記録するよう制御する。これにより、磁気テープ6には、磁気ヘッド1によりデータが記録される(S6)。
【0025】
次に、磁気テープ6にデータを記録している時に、ユーザによって操作部11が操作されて反転命令が入力されれば、制御部12は、磁気テープ6の走行方向を変えるよう各部を制御する。なお、反転制御の詳しい説明は後述する(S7)。
【0026】
次に、磁気テープ6にデータを記録している時に、ユーザによって操作部11が操作されて停止命令が入力されれば(S8)、制御部12は、支持体駆動部14に対して支持体7の駆動命令を出力する。支持体駆動部14は、入力される駆動命令に基づき、退避位置にある支持体7を図1Bに示す突出位置へ移動させる。支持体7は、退避位置から突出位置へ移動する際に、磁気テープ6を押圧して磁気ヘッド1から離間させる。磁気テープ6が磁気ヘッド1から離間する時、磁気テープ6が走行中であるため、磁気テープ6と磁気ヘッド1との間に動摩擦が発生する。動摩擦は、前述の静止摩擦に比べて摩擦係数が低いため、磁気テープ6や磁気ヘッド1にダメージを与える可能性は低い(S9)。
【0027】
次に、制御部12は、支持体7が突出位置まで移動すると、モータ21及び22に対して停止命令を出力する。これによりモータ21及び22は、第1のリール4及び第2のリール5の回転数を徐々に低下させる減速動作を行い、磁気テープ6の走行速度を低下させる(S10)。やがて、磁気テープ6の走行は停止する(S11)。
【0028】
次に、反転制御について説明する。
【0029】
磁気テープ6が矢印AまたはBに示す方向に走行中に、ユーザによって操作部11が操作されて反転命令が入力されると(図2AのS7)、制御部12は、図2Bに示すフローに従って制御を開始する。
【0030】
まず、制御部12は、支持体駆動部14に対して支持体7の駆動命令を出力する。支持体駆動部14は、入力される駆動命令に基づき、退避位置にある支持体7を図1Bに示す突出位置へ移動させる。支持体7は、退避位置から突出位置へ移動する際に、磁気テープ6を磁気ヘッド1から離間させる。磁気テープ6が磁気ヘッド1から離間する時、磁気テープ6が走行中であるため、磁気テープ6と磁気ヘッド1との間に動摩擦が発生する。動摩擦は前述の静止摩擦に比べて摩擦係数が低いため、磁気テープ6や磁気ヘッド1にダメージを与える可能性は低い(S21)。
【0031】
次に、制御部12は、支持体7が突出位置まで移動すると、モータ21及び22に対して停止命令を出力する。これによりモータ21及び22は、第1のリール4及び第2のリール5の回転数を徐々に低下させる減速動作を行い、磁気テープ6の走行速度を低下させ(S22)、やがて磁気テープ6の走行は停止する(S23)。
【0032】
次に、制御部12は、モータ21及び22に対して、モータ21及び22の回転方向(磁気テープ6の走行方向)を反転させる命令を出力する。これによりモータ21及び22は、前述とは逆方向に回転を開始して第1のリール4及び第2のリール5を回転駆動する。これにより、磁気テープ6は矢印B方向へ走行される。この時、磁気テープ6は、磁気ヘッド1から離間している状態で矢印Bに示す方向へ走行を開始するため、磁気ヘッド1と磁気テープ6との間に摩擦は発生しない(S24)。
【0033】
次に、制御部12は、モータ21及び22を制御して磁気テープ6の走行速度を徐々に加速させ、所定の走行速度で定速走行させる。なお、磁気テープ6の走行速度の制御方法は、周知であるため詳しい説明は省略する(S25)。
【0034】
次に、制御部12は、磁気テープ6の走行速度が安定したら、支持体駆動部14に対して支持体7の駆動命令を出力する。支持体駆動部14は、入力される駆動命令に基づき、突出位置にある支持体7を図1Aに示す退避位置まで移動させる。これにより、磁気テープ6は、磁気ヘッド1の摺動面に接触する。磁気テープ6が磁気ヘッド1に接触する時、磁気テープ6が走行中であるため、磁気テープ6と磁気ヘッド1との間に動摩擦が発生する。動摩擦は前述の静止摩擦に比べて摩擦係数が低いため、磁気テープ6や磁気ヘッド1にダメージを与える可能性は低い(S26)。
【0035】
次に、制御部12は、磁気ヘッド制御部13に対してトラッキングサーボを行う命令を出力する。磁気ヘッド制御部13は、入力される命令に基づき、磁気ヘッド1内のデータヘッドが所定のトラックを追従するように、磁気ヘッド1を磁気テープ6の幅方向へ移動させる(S27)。
【0036】
次に、制御部12は、磁気ヘッド制御部13に対してデータ記録を行う命令を出力する。磁気ヘッド制御部13は、入力される命令に基づき、磁気ヘッド1を記録動作させて、磁気テープ6にデータを記録するよう制御する。これにより、磁気テープ6には、磁気ヘッド1によりデータが記録される(S28)。
【0037】
以降のフローは、図2AのB部に戻る。
【0038】
なお、以上の動作では、磁気テープ6の走行方向を反転させる時(S23〜S24)、支持体7を突出位置に配置させたまま反転制御を行っているが、磁気テープ6が停止(S23)した後、支持体7を退避位置に移動させ、磁気テープ6を磁気ヘッド1に接触させるよう制御を行ってもよい。すなわち、図2Bにおいて、S23とS24との間に、支持体7を退避位置へ移動させるステップ、および支持体7を突出位置へ再度移動させるステップを追加するフローとしてもよい。
【0039】
以上のように本実施の形態によれば、磁気テープ6を磁気ヘッド1から離間させることが可能な支持体7を備えたことにより、磁気ヘッド1または磁気テープ6にダメージを与える可能性を低くすることができる。すなわち、磁気テープ6の走行開始時、走行状態からの停止時、および磁気テープ6の走行方向の反転時に、磁気テープ6と磁気ヘッド1とを一時的に離し、磁気テープ6が走行状態になった時に磁気テープ6と磁気ヘッド1とを接触させることにより、磁気ヘッド1と磁気テープ6との間に静止摩擦が生じないため、磁気ヘッド1(MR素子等)または磁気テープ6にダメージを与える可能性を低くすることができる。
【0040】
また、磁気テープ6の走行方向の反転時に、磁気テープ6と磁気ヘッド1とを一時的に離間させることにより、磁気テープ6と磁気ヘッド1との間に静止摩擦が発生しないため、磁気テープ6から異物(コンタミネーション)が発生するのを抑えることができる。すなわち、磁気テープ6の走行方向反転時など、磁気テープ6と磁気ヘッド1との間に繰り返して静止摩擦が生じる場合、磁気テープ6の表面が磁気ヘッド1によって僅かに削られ、異物が発生する可能性がある。このような異物が発生すると、リールに磁気テープ6を巻装した際に、異物が磁気テープと磁気テープとの間に挟まって巻き取り転写を起こし、磁気テープ6にダメージを与えてしまう。また、上記のような異物が磁気ヘッド1と磁気テープ6との間に噛み込まれている状態で、磁気テープ6を停止状態から走行状態へ移行(静止摩擦から動摩擦への変化)、または走行状態から停止状態へ移行(動摩擦から静止摩擦への変化)させると、異物によって磁気ヘッド1や磁気テープ6に傷などのダメージを与えてしまう。そこで本実施の形態では、磁気テープ6の走行方向反転時、磁気テープ6を磁気ヘッド1から一時的に離間させることにより、上記のような異物の発生を防止することができ、巻き取り転写による磁気テープ6へのダメージ、ならびに異物の噛み込みによる磁気ヘッド及び磁気テープへのダメージを防止することができる。
【0041】
なお、実施の形態1では、支持体7は、磁気テープ6が矢印A方向に走行することを基準とした時の磁気ヘッド1のテープ出側(テープガイド2側)に配したが、磁気ヘッド1のテープ入側(テープガイド3側)に配しても、同様の効果が得られる。また、磁気ヘッド1のテープ入側とテープ出側との両方に配しても、同様の効果が得られる。
【0042】
また、本実施の形態では、磁気テープ6を停止状態から走行を開始させる時、および磁気テープ6を走行状態から停止させる時の両方の時点で、磁気テープ6を磁気ヘッド1から離間させる構成としたが、いずれか一方の時点でのみ磁気テープ6を磁気ヘッド1から離間させる構成としてもよい。このような構成とすることで、磁気ヘッド1及び磁気テープ6に与えるダメージを低減させることができるとともに、磁気テープ6が磁気ヘッド1によって削られることによる異物(コンタミネーション)の発生を低減させることができる。
【0043】
(実施の形態2)
図3A及び図3Bは、実施の形態2にかかる磁気テープ駆動装置の構成である。図3A及び図3Bに示す構成は、図1A及び図1Bに示す構成において支持体7に代えてエアー噴出部8を備え、支持体駆動部14に代えてエアー制御部15を備えている。エアー噴出部8は、磁気ヘッド1の近傍に配され、空気Eが噴出される噴射口が磁気テープ6側に向くように配されている。エアー制御部15は、制御部12からの命令によりエアー噴出部8に対して空気Eの噴射命令および停止命令を出力する。
【0044】
なお、エアー噴出部8及びエアー制御部15は、テープ離間手段の一例である。
【0045】
図3A及び図3Bに示す磁気テープ駆動装置の動作は、前述の図2A及び図2Bに示す動作とほとんど同じである。異なるのは、図2Aまたは図2BにおけるS1、S4、S9、S21、およびS26に示す支持体7の移動制御が、エアー噴出部8による空気噴出制御及び空気噴出停止制御に代わる点である。基本的な動作は同じであるため、詳しい動作説明は省略する。
【0046】
図3Aに示すように磁気テープ6が磁気ヘッド1に接触している状態で、制御部12からエアー制御部15に空気噴出命令が出力されると、エアー制御部15は、図2AにおけるS1及びS9,図2BにおけるS21のタイミングで、エアー噴出部8に対して空気Eを噴出するよう制御を行う。エアー噴出部8は、エアー制御部15からの制御により、噴出口から所定の空気圧で空気Eを噴出する。噴出された空気Eは磁気テープ6に当たり、磁気テープ6は噴出される空気Eに押圧されて、矢印Cに示す方向へ移動される。これにより、磁気テープ6は、図3Bに示すように磁気ヘッド1から離間する。すなわち、エアー噴出部8から噴出される空気Eの圧力は、少なくとも磁気テープ6及び磁気ヘッド1間の静止摩擦に抗して、磁気テープ6を磁気ヘッド1から浮上させることが可能な圧力であればよい。また、エアー噴出部8は、磁気テープ6を磁気ヘッド1から浮上させている間は、連続的に空気Eを噴出しているが、少なくとも磁気テープ6を磁気ヘッド1から浮上させることができれば、間欠的に空気Eを噴出する構成であってもよい。
【0047】
また、図3Bに示すように磁気テープ6が磁気ヘッド1から離間している状態で、制御部12からエアー制御部15に空気停止命令が出力されると、エアー制御部15は、図2AにおけるS4、および図2BにおけるS26のタイミングで、エアー噴出部8に対して空気Eの噴出動作を停止させるよう制御を行う。エアー噴出部8は、エアー制御部15からの制御により、噴出動作を停止する。これにより、磁気テープ6は、走行制御によってかかるテンションにより矢印Dに示す方向へ移動されて、図3Aに示すように磁気ヘッド1の摺動面に接触する。
【0048】
以上のように本実施の形態によれば、磁気テープ6に対して空気Eを噴出して、磁気テープ6を磁気ヘッド1から離間させることが可能なエアー噴出部8を備えたことにより、磁気ヘッド1または磁気テープ6にダメージを与える可能性を低くすることができる。すなわち、磁気テープ6の走行開始時、走行状態からの停止時、および磁気テープ6の走行方向の反転時に、磁気テープ6と磁気ヘッド1とを一時的に離し、磁気テープ6が走行状態になった時に磁気テープ6と磁気ヘッド1とを接触させることにより、磁気ヘッド1と磁気テープ6との間に静止摩擦が生じないため、磁気ヘッド1(MR素子等)または磁気テープ6にダメージを与える可能性を低くすることができる。
【0049】
また、磁気テープ6の走行方向の反転時に、磁気テープ6と磁気ヘッド1とを一時的に離間させることにより、磁気テープ6と磁気ヘッド1との間に静止摩擦が発生しないため、磁気テープ6から異物(コンタミネーション)が発生するのを抑えることができる。これにより、巻き取り転写による磁気テープ6へのダメージを防止することができる。
【0050】
また、異物の発生を抑えることにより、磁気テープ6を停止状態から走行状態へ移行(静止摩擦から動摩擦への変化)させる時、ならびに走行状態から停止状態へ移行(動摩擦から静止摩擦への変化)させる時に、磁気ヘッド1と磁気テープ6との間に異物が噛み込まないため、磁気ヘッド1や磁気テープ6に傷などのダメージを与えてしまうことを防止することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、磁気テープ6を停止状態から走行を開始させる時、および磁気テープ6を走行状態から停止させる時の両方の時点で、磁気テープ6を磁気ヘッド1から離間させる構成としたが、いずれか一方の時点でのみ磁気テープ6を磁気ヘッド1から離間させる構成としてもよい。このような構成とすることで、磁気ヘッド1及び磁気テープ6に与えるダメージを低減させることができるとともに、磁気テープ6が磁気ヘッド1によって削られることによる異物(コンタミネーション)の発生を低減させることができる。
【0052】
(実施の形態3)
図4A及び図4Bは、実施の形態3にかかる磁気テープ駆動装置の構成である。図4A及び図4Bに示す構成は、図1A及び図1Bに示す構成において支持体7に代えて回転ローラ9を備え、支持体駆動部14に代えてローラ駆動部16を備えている。
【0053】
回転ローラ9は、磁気ヘッド1の近傍に、突出位置及び退避位置(実施の形態1と同様)との間を移動自在に配されている。また、回転ローラ9は、走行する磁気テープ6に接触した際に磁気テープ6の走行に従って回転するように構成されている。また、回転ローラ9は、例えば図5Aに示すように円筒形に形成されている。また、回転ローラ9は、例えばAlTiC(Al23−TiC)で形成することができる。また、回転ローラ9は、磁気テープ6との接触面積が少なくなるように、磁気テープ6との接触部分の曲率半径を小さくすることが望ましく、例えば曲率半径は4mm以下で形成することが望ましい。
【0054】
ローラ駆動部16は、制御部12からの制御によって、回転ローラ9を突出位置または退避位置へ移動させる。また、ローラ駆動部16は、制御部12から回転ローラ9の移動命令が出力されると、退避位置にある回転ローラ9を突出位置へ移動させるか、あるいは突出位置にある回転ローラ9を退避位置へ移動させる。
【0055】
なお、回転ローラ9及びローラ駆動部16は、テープ離間手段の一例である。
【0056】
次に、回転ローラ9の移動動作を中心に動作説明を行う。なお、図4A及び図4Bに示す磁気テープ駆動装置の動作は、前述の図2A及び図2Bに示す動作とほとんど同じである。異なるのは、図2A及び図2BにおけるS1、S4、S9、S21、およびS26に示す支持体7の移動制御が、回転ローラ9の移動制御に代わる点である。基本的な動作は同じであるため、装置全体の動作説明は省略する。
【0057】
図4Aに示すように回転ローラ9が待避位置にある状態で、制御部12からローラ駆動部16に移動命令が出力されると、ローラ駆動部16は、図2AにおけるS1及びS9,図2BにおけるS21のタイミングで、回転ローラ9を退避位置から突出位置へ移動させるよう制御を行う。回転ローラ9は、ローラ駆動部16からの制御により、退避位置から突出位置へ移動される。突出位置へ向かって移動する回転ローラ9は、磁気テープ6を押圧し、磁気テープ6を矢印Cに示す方向へ移動させる。回転ローラ9が突出位置に到達した時、磁気テープ6は、図4Bに示すように磁気ヘッド1から離間する位置に移動された状態になる。
【0058】
また、図4Bに示すように回転ローラ9が突出位置にある状態で、制御部12からローラ駆動部16に移動命令が出力されると、ローラ駆動部16は、図2AにおけるS4、および図2BにおけるS26のタイミングで、回転ローラ9を突出位置から退避位置へ移動させるよう制御を行う。回転ローラ9は、ローラ駆動部16からの制御により、突出位置から退避位置へ移動される。回転ローラ9が退避位置に到達すると、磁気テープ6は磁気ヘッド1の摺動面に接触するとともに回転ローラ9から離間する。これにより、磁気テープ6は、走行時にかかるテンションにより矢印Dに示す方向へ移動されて、図4Aに示すように磁気ヘッド1の摺動面に接触する。回転ローラ9が退避位置に到達した時、磁気テープ6と回転ローラ9とが離間する構成としたが、磁気テープ6が磁気ヘッド1と回転ローラ9との両方に接触するように構成してもよい。その場合、回転ローラ9が、磁気ヘッド1に対する磁気テープ6の所定の巻き付け角を阻害しない位置に配されている必要がある。
【0059】
なお、図5Aに示すように、回転ローラ9の円筒面(テープ摺動面)に、複数の溝部9aを形成してもよい。溝部9aが形成されていることにより、回転ローラ9が突出位置に移動し、磁気テープ9に接触した際に、磁気テープ6との接触面積を少なくすることができるため、磁気テープ6にかかる走行負荷を低減させることができる。
【0060】
また、溝部9aが形成されていることにより、磁気テープ6を回転ローラ9に接触させて磁気テープ6を走行させている時に、磁気テープ6の表面に付着している異物が溝部9a内に入り、磁気テープ6から異物を除去することができる。異物を除去することによって磁気ヘッド1や磁気テープ6の表面にダメージを与えることを防止することができる。すなわち、磁気テープ6上に異物が付着した状態で、磁気テープ6を第1のリール4または第2のリール5に巻き取ると巻き取り転写を起こしてしまい、テープダメージを起こしてしまう可能性がある。また、磁気ヘッド1と磁気テープ6との間に異物を噛み込んだ状態で磁気テープ6の走行を開始させたり停止させたりすると、磁気ヘッド1や磁気テープ6に傷などのダメージを与えてしまう可能性がある。図5Aに示すように、回転ローラ9の円筒面に溝部9aを形成することにより、磁気テープ6の表面に付着している異物を除去し、巻き取り転写によるテープダメージを防止することができるとともに、異物の噛み込みにより磁気ヘッド1及び磁気テープ6に傷などのダメージを与えることを防止することができる。
【0061】
また、図5Bに示すように溝部9bを形成することもできる。溝部9bは、回転ローラ9の円筒面に螺旋状に形成されている。このように溝部9bを形成することで、磁気テープ6が走行するのに伴い回転ローラ9が回転することで、磁気テープ6の幅方向全域に溝部9bを対向させることができ、磁気テープ6の表面に付着した異物を効率的に除去することができる。また、回転ローラ9が突出位置に移動し、磁気テープ9に接触した際に、磁気テープ6との接触面積を少なくすることができるため、磁気テープ6にかかる走行負荷を低減させることができる。
【0062】
また、磁気テープ6の一部分において反転動作を繰り返すことにより、磁気テープ6の表面において反転動作を繰り返し行った部分の近傍に、異物が蓄積される可能性がある。本実施の形態のように、回転ローラ9に溝部9aまたは9bを形成して磁気テープ6の表面に付着している異物を除去することにより、磁気テープ6の一部分において反転動作を繰り返しても、磁気テープ6の表面に異物が蓄積されることを防止することができる。
【0063】
以上のように本実施の形態によれば、磁気テープ6を磁気ヘッド1から離間させる突出位置と、磁気テープ6を磁気ヘッド1に接触させる退避位置との間を移動可能な回転ローラ9を備えたことにより、磁気ヘッド1または磁気テープ6にダメージを与える可能性を低くすることができる。すなわち、磁気テープ6の走行開始時、走行状態からの停止時、および磁気テープ6の走行方向の反転時に、磁気テープ6と磁気ヘッド1とを一時的に離し、磁気テープ6が走行状態になった時に磁気テープ6と磁気ヘッド1とを接触させることにより、磁気ヘッド1(MR素子等)と磁気テープ6との間に静止摩擦が生じないため、磁気ヘッド1または磁気テープ6にダメージを与える可能性を低くすることができる。
【0064】
また、磁気テープ6の走行方向の反転時に、磁気テープ6と磁気ヘッド1とを一時的に離間させることにより、磁気テープ6と磁気ヘッド1との間に静止摩擦が発生しないため、磁気テープ6から異物(コンタミネーション)が発生するのを抑えることができる。これにより、巻き取り転写による磁気テープ6へのダメージを防止することができる。
【0065】
また、異物の発生を抑えることにより、磁気テープ6を停止状態から走行状態へ移行(静止摩擦から動摩擦への変化)させる時、ならびに走行状態から停止状態へ移行(動摩擦から静止摩擦への変化)させる時に、磁気ヘッド1と磁気テープ6との間に異物が噛み込まないため、磁気ヘッド1や磁気テープ6に傷などのダメージを与えてしまうことを防止することができる。
【0066】
また、回転ローラ9の表面に溝部9aまたは9bを形成したことにより、磁気テープ6と回転ローラ9との接触面積を少なくすることができ、磁気テープ6における走行負荷を低減させることができる。特に、回転ローラ9が突出位置にあって、磁気テープ6が巻き付けられている時に効果を発揮する。
【0067】
また、回転ローラ9の表面に溝部9aまたは9bを形成したことにより、磁気テープ6の表面に付着している異物を除去することができる。特に、溝部9bに示すように、螺旋状に形成することで、溝部9bを磁気テープ6の幅方向全域に対向させることができるため、効率的に異物を除去することができる。これにより、巻き取り転写による磁気テープ6へのダメージを防止することができるとともに、異物が噛み込むことにより磁気ヘッドや磁気テープに傷などのダメージを与えることを防止することができる。
【0068】
なお、回転ローラ9に形成されている溝部は、図5Aまたは図5Bに示す形状に限らない。少なくとも、磁気テープ6と回転ローラ9の表面との接触面積を少なくすることができ、磁気テープ6の表面に付着している異物を除去することができれば、他の形状であってもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、磁気テープ6を停止状態から走行を開始させる時、および磁気テープ6を走行状態から停止させる時の両方の時点で、磁気テープ6を磁気ヘッド1から離間させる構成としたが、いずれか一方の時点でのみ磁気テープ6を磁気ヘッド1から離間させる構成としてもよい。このような構成とすることで、磁気ヘッド1及び磁気テープ6に与えるダメージを低減させることができるとともに、磁気テープ6が磁気ヘッド1によって削られることによる異物(コンタミネーション)の発生を低減させることができる。
【0070】
(実施の形態4)
図6A及び図6Bは、実施の形態4にかかる磁気テープ駆動装置の構成である。図6A及び図6Bに示す構成は、図1A及び図1Bに示す構成において支持体7及び支持体駆動部14を無くし、新たに磁気ヘッド駆動部17を備えている。
【0071】
磁気ヘッド駆動部17は、制御部12からの命令に基づき、磁気ヘッド1を磁気テープ6に接触する突出位置と、磁気テープ6から離間する退避位置との間を移動させる。
【0072】
次に、磁気ヘッド1の移動動作を中心に動作説明を行う。なお、図6A及び図6Bに示す磁気テープ駆動装置の動作は、前述の図2A及び図2Bに示す動作とほとんど同じである。異なるのは、図2A及び図2BにおけるS1、S4、S9、S21、およびS26に示す支持体7の移動制御が、磁気ヘッド1の移動制御に代わる点である。基本的な動作は同じであるため、装置全体の動作説明は省略する。
【0073】
図6Bに示すように磁気ヘッド1が待避位置にある状態で、制御部12から磁気ヘッド駆動部17に移動命令が出力されると、磁気ヘッド駆動部17は、図2AにおけるS1及びS9,図2BにおけるS21のタイミングで、磁気ヘッド1を退避位置から突出位置へ移動させるよう制御を行う。磁気ヘッド1は、磁気ヘッド駆動部17からの制御によって退避位置から突出位置へ移動されることにより磁気テープ6に接触し、磁気テープ6にデータを記録または再生することが可能な状態になる。
【0074】
また、図6Aに示すように磁気ヘッド1が突出位置にある状態で、制御部12から磁気ヘッド駆動部17に移動命令が出力されると、磁気ヘッド駆動部17は、図2AにおけるS4、および図2BにおけるS26のタイミングで、磁気ヘッド1を突出位置から退避位置へ移動させるよう制御を行う。磁気ヘッド1は、磁気ヘッド駆動部17からの制御によって突出位置から退避位置へ移動されることにより、磁気テープ6から離間する。
【0075】
以上のように本実施の形態によれば、磁気ヘッド1を磁気テープ6に接触させる突出位置と、磁気ヘッド1を磁気テープ6から離間させる退避位置との間を移動可能な構成にしたことにより、磁気ヘッド1または磁気テープ6にダメージを与える可能性を低くすることができる。すなわち、磁気テープ6の走行開始時、走行状態からの停止時、および磁気テープ6の走行方向の反転時に、磁気テープ6と磁気ヘッド1とを一時的に離し、磁気テープ6が走行状態になった時に磁気テープ6と磁気ヘッド1とを接触させることにより、磁気ヘッド1(MR素子等)と磁気テープ6との間に静止摩擦が生じないため、磁気ヘッド1または磁気テープ6にダメージを与える可能性を低くすることができる。
【0076】
また、磁気テープ6の走行方向の反転時に、磁気テープ6と磁気ヘッド1とを一時的に離間させることにより、磁気テープ6と磁気ヘッド1との間に静止摩擦が発生しないため、磁気テープ6から異物(コンタミネーション)が発生するのを抑えることができる。これにより、巻き取り転写による磁気テープ6へのダメージを防止することができる。
【0077】
また、異物の発生を抑えることにより、磁気テープ6を停止状態から走行状態へ移行(静止摩擦から動摩擦への変化)させる時、ならびに走行状態から停止状態へ移行(動摩擦から静止摩擦への変化)させる時に、磁気ヘッド1と磁気テープ6との間に異物が噛み込まないため、磁気ヘッド1や磁気テープ6に傷などのダメージを与えてしまうことを防止することができる。
【0078】
なお、実施の形態4における磁気ヘッド駆動部17は、磁気ヘッド1を突出位置と退避位置との間を移動させる機能とともに、トラッキングサーボを行う際に磁気ヘッド1を磁気テープ6の幅方向に移動させる機能を備えてもよい。このような構成とすることで、磁気ヘッド1を矢印CまたはDに示す方向へ移動させる手段を別途用意する必要がないため、部品点数を削減することができ、コストダウンをすることができる。
【0079】
また、本実施の形態では、磁気テープ6を停止状態から走行を開始させる時、および磁気テープ6を走行状態から停止させる時の両方の時点で、磁気ヘッド1を磁気テープ6から離間させる構成としたが、いずれか一方の時点でのみ磁気ヘッド1を磁気テープ6から離間させる構成としてもよい。このような構成とすることで、磁気ヘッド1及び磁気テープ6に与えるダメージを低減させることができるとともに、磁気テープ6が磁気ヘッド1によって削られることによる異物(コンタミネーション)の発生を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本願の磁気テープ駆動装置は、磁気テープを情報媒体として使用する装置に有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 磁気ヘッド
7 支持体
8 エアー噴出部
9 ポスト
9a、9b 溝部
12 制御部
13 磁気ヘッド制御部
14 支持体駆動部
15 エアー制御部
16 ポスト駆動部
17 磁気ヘッド駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープが巻き付けられ、前記磁気テープに対して情報を記録または再生可能なヘッドユニットと、
前記磁気テープを走行駆動するテープ駆動手段とを備えた磁気テープ駆動装置であって、
前記ヘッドユニットの磁気テープ入側または出側の少なくとも一方に、前記磁気テープを前記ヘッドユニットから離間させることが可能なテープ離間手段を備え、
前記テープ離間手段は、
前記磁気テープとの間の摩擦が、前記磁気テープと前記ヘッドユニットとの間の摩擦よりも小さく、
前記磁気テープを前記ヘッドユニットに接触させている状態と、前記磁気テープを前記ヘッドユニットから離間させている状態とを有し、
前記テープ駆動手段が駆動命令に基づき前記磁気テープを停止状態から走行を開始する前に、前記ヘッドユニットと前記磁気テープのとの間の静止摩擦を生じないように前記磁気テープを前記ヘッドユニットから離間させる、磁気テープ駆動装置。
【請求項2】
前記テープ離間手段は、
前記磁気テープが停止している状態において、前記テープ駆動手段に駆動命令が送られると、前記磁気テープが走行を開始する前に前記磁気テープを前記ヘッドユニットから離間させ、
前記テープ駆動手段が前記磁気テープの走行を開始させ、前記磁気テープの走行速度が安定したら、前記磁気テープを前記ヘッドユニットに接触させる、請求項1記載の磁気テープ駆動装置。
【請求項3】
前記テープ離間手段は、
前記テープ駆動手段に停止命令が送られた場合、前記テープ駆動手段が前記磁気テープを走行状態から停止させる前に、前記ヘッドユニットと前記磁気テープとの間の静止摩擦を生じないように前記磁気テープを前記ヘッドユニットから離間させる、請求項1記載の磁気テープ駆動装置。
【請求項4】
前記テープ離間手段は、
前記テープ駆動手段に反転命令が送られた場合、前記テープ駆動手段が前記磁気テープの走行方向を反転させる前に、前記ヘッドユニットと前記磁気テープのとの間の静止摩擦を生じないように前記磁気テープを前記ヘッドユニットから離間させ、
前記テープ駆動手段が前記磁気テープの走行方向を反転させ、前記磁気テープの走行速度が安定したら、前記磁気テープを前記ヘッドユニットに接触させる、請求項1記載の磁気テープ駆動装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2010−272207(P2010−272207A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202985(P2010−202985)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【分割の表示】特願2008−98307(P2008−98307)の分割
【原出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)