磁気ディスク及びその製造方法
【課題】磁気ディスク及びその製造方法において、パーティクルの発生の抑制及び安定した基板の支持を両立させる。
【解決手段】基板11上に少なくとも磁気記録層11−1,11−2が設けられた磁気ディスク10において、基板の外周端面12から基板の中心に向かって形成された案内溝を有し、案内溝は曲面で形成されており、前記案内溝を有する基板を支持部材で支持する工程を含み、前記基板は前記支持部材の支持部が前記案内溝に挿入されることで支持される。
【解決手段】基板11上に少なくとも磁気記録層11−1,11−2が設けられた磁気ディスク10において、基板の外周端面12から基板の中心に向かって形成された案内溝を有し、案内溝は曲面で形成されており、前記案内溝を有する基板を支持部材で支持する工程を含み、前記基板は前記支持部材の支持部が前記案内溝に挿入されることで支持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク及びその製造方法に係り、特に高密度記録に適した磁気ディスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスクに代表される高密度記録用の磁気記録媒体では、ヘッドの磁気記録媒体からの浮上量が非常に小さくなっている。このため、基板上に各種層をスパッタリング等により積層する場合、基板上に残渣物が残っていると記録層におけるデータ消失やヘッドが磁気ディスクと接触するヘッド・ディスク障害が発生してしまい、磁気ディスクを有する磁気ディスク装置の信頼性が低下してしまう。
【0003】
図1は、従来の基板支持方法の一例を説明する図である。図1において、1はディスク状の基板、2は処理工程で基板1を支持する支持部材を示す。支持部材2は、基板1をカセットケース(図示せず)から取り出して搬送機構(図示せず)にロードしたり基板を搬送機構からアンロードしてカセットケースに挿入するロード・アンロード工程、研磨等の加工工程、洗浄工程、乾燥工程、成膜工程等で基板1を支持するのに用いられる。基板1の外周部分には面取り部1Aが設けられており、基板1の外周部分が支持部材2に支持される際にV字状溝部2Aの斜面に円滑に案内されるようになっている。又、面取り部1Aを設けることで、支持部材2が基板1に強く押し付けられた際に基板1の外周部分が破損するのを防止している。
【0004】
図1中、(a)は基板1が支持部材2に支持される前の状態、(b)は基板1の面取り部1Aが支持部材2のV字状溝部2Aに案内される状態、(c)は基板1が支持部材2に支持された状態を示す。
【0005】
しかし、基板1の面取り部1Aが支持部材2のV字状溝部2Aに案内される時、摩擦により摩擦粉、所謂パーティクル3が発生する。このようなパーティクル3が基板1の表面1−1,1−2に付着すると、成膜工程においてパーティクル3の上に形成された層が剥離して記録層におけるデータ消失を発生したり、パーティクル3により磁気ディスクの表面に突起が形成されてHDIを発生したりする可能性がある。
【0006】
又、支持部材2の厚さは基板1の厚さより厚いにもかかわらず、面取り部1Aを支持するV字状溝部2Aの接触面積が比較的小さいため、基板1を安定に支持することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−225620号公報
【特許文献2】特開昭62−293515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の基板支持方法では、パーティクルの発生の抑制及び安定した基板の支持を両立させることは難しいという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、パーティクルの発生の抑制及び安定した基板の支持を両立させることが可能な磁気ディスク及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、基板上に少なくとも磁気記録層が設けられた磁気ディスクであって、前記基板の外周端面から前記基板の中心に向かって形成された案内溝を有し、前記案内溝は曲面で形成されている磁気ディスクが提供される。
【0011】
本発明の一観点によれば、外周端面から中心に向かって曲面で形成された案内溝を有する基板を支持部材で支持する工程を含み、前記基板は前記支持部材の曲面を有する支持部が前記案内溝に挿入されることで支持される磁気ディスクの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
開示の磁気ディスク及びその製造方法によれば、パーティクルの発生の抑制及び安定した基板の支持を両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の基板支持方法の一例を説明する図である。
【図2】本発明の一実施例における磁気ディスクの一例を示す斜視図である。
【図3】基板の溝の形状を説明する断面図である。
【図4】実施例における基板支持方法の一例を説明する図である。
【図5】カセットケースの一例を示す斜視図である。
【図6】カセットケースの一部を示す平面図である。
【図7】カセットケースで使用可能な支持部材の一例を示す図である。
【図8】カセットケースで使用可能な支持部材の他の例を示す図である。
【図9】図7及び図8の支持部材の支持部に使用可能な形状を示す図である。
【図10】カセットケースで使用可能な支持部材の更に他の例を示す図である。
【図11】カセットケースで使用可能な支持部材の更に他の例を示す図である。
【図12】カセットケースの底面に開口が設けられている場合の基板の取り出し方法の一例を説明する図である。
【図13】基板の開口の部分を支持する支持部材を示す図である。
【図14】基板を3箇所で支持する支持構造を示す図である。
【図15】磁気ディスクの製造方法の工程の一部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
開示の磁気ディスクは、基板上に少なくとも磁気記録層と、基板の外周端面から基板の中心に向かって形成された案内溝を有し、案内溝は曲面で形成されている。又、開示の磁気ディスクの製造方法では、支持部材の曲面を有する支持部が基板の案内溝に挿入されることで基板を支持する。
【0015】
以下に、本発明の磁気ディスク及びその製造方法の各実施例を、図2以降と共に説明する。
【実施例】
【0016】
図2は、本発明の一実施例における磁気ディスクの一例を示す斜視図である。図2に示すように、磁気ディスク10は、ディスク形状の基板11を有する。基板11の外周端面12には、円周に沿って案内溝13が形成されている。案内溝13は、曲面で形成されており、外周端面12から基板11の中心に向かって所定の深さを有する。基板11の中心には、内周端面14により形成された開口15が設けられている。内周端面14には、円周に沿って案内溝16が形成されている。案内溝16は、曲面で形成されており、内周端面14から基板11の外周に向かって所定の深さを有する。尚、案内溝13,16の一方のみを設けても良いことは言うまでもない。
【0017】
基板11の表面(以下、記録面と言う)11−1,11−2には、少なくとも磁気記録層(図示せず)が形成されている。磁気記録層は、水平磁気記録方式用の記録層構造を有するものであっても、垂直磁気記録方式用の記録層構造を有するものであっても良く、基板11上の層構造は特に限定されない。
【0018】
基板は、例えばアルミニウム、ステンレス、ガラス、セラミック及びプラスチックからなるグループから選択された1つの材料で形成されている。プラスチックは、例えばポリカーボネイト、非晶質ポリオレフィン(APC:Amorphous Poly-Olefine)、MCナイロン(登録商標)、POM(Poly-Oxy-Methylene,又は、ジュラコン(登録商標))、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE:Ultra High Molecular Weight Poly-Ethylene)、エーテル・エーテル・ケトン、ベークライト、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS:Acrylonitrile Butadiene Styrene)、塩化ビニル(PVC:Poly-Vinyl
Chloride)、アクリル、PET(Poly-Ethylene Terephthalate)、ポリプロピレン(PP:Poly-Propylene)、ポリエチレン(PE:PolyEthylene)、テフロン(Teflon:登録商標)からなるグループから選択された1つの材料である。
【0019】
案内溝13,16の形成方法は特に限定されないが、例えば基板11がアルミニウム基板であれば基板11を機械的に削ることで形成可能であり、基板11がプラスチック基板であれば基板11の成型時に同時に形成可能である。
【0020】
図3は、基板11の溝13,16の形状を説明する断面図である。溝16の形状は溝13の形状と同じであっても良いため、図3では一例として溝13の形状を示す。図3中、(a),(b)は円弧状の溝13を示し、(c)は2つの異なる曲面で形成された所謂だるま形状の溝13を示す。図3中、(a)の場合は溝13の幅が基板11の幅と等しいが、(b)の場合は溝13の幅が基板11の幅より狭い。図3中、(c)に示すだるま形状の溝13の場合、溝13の入り口が広いので支持部材21の支持部22が確実に溝13内に挿入され、又、溝13の奥が入り口より狭いので支持部22が基板11を安定に支持することができる。尚、溝13と溝16は、曲面で形成されていれば良く、互いに異なる形状を有するものであっても良いことは言うまでもない。
【0021】
図4は、本実施例における基板支持方法の一例を説明する図である。溝16の形状は溝13の形状と同じであっても良いため、図4では一例として溝13を用いた基板支持方法を示す。支持部材21は、先端が曲面で形成された支持部22を有する。この例では、支持部22の先端形状が基板11の溝13の形状と対応している。支持部22は、溝13を円周に沿って所定距離(即ち、所定角度範囲)に渡って連続的に支持する構造であっても、溝13を円周に沿った複数の不連続な箇所で支持する構造であっても良い。図4中、(a)は基板11の溝13が支持部材21の支持部22に案内される状態、(b)は基板11が支持部材21に支持された状態を示す。
【0022】
基板11の案内溝13に挿入される支持部材21の支持部22により基板11を支持することにより、支持部材21の支持部22が案内溝13を形成する曲面と接触する際の摩擦によるパーティクルの発生を抑えることができると共に、パーティクルが基板11の表面に付着しにくくすることができる。又、支持部材21の支持部22自体は、基板11の厚さより薄く形成しても、支持部材21の支持部22と基板11の案内溝13を形成する曲面との接触面積を比較的大きくすることができるので、基板11を安定に支持することができる。支持部材21の厚さは基板11の厚さと同程度としても良く、1つの支持部材21に複数の支持部22を形成しても良い。更に、基板11の外周部分に面取り部を形成する必要がないため、その分磁気ディスク10の記録面11−1,11−2の面積を増加させることができる。案内溝13を形成する曲面を適切な形状とすることで、パーティクルが基板11の案内溝13に溜まりにくくすることもできる。
【0023】
直径が2.5インチの磁気ディスク10の場合、基板11の厚さが0.635mmであると、溝13,16の半径方向上の深さは例えば0.05mmであり、基板11の外周部分に面取り部を形成しないことで外周部分で半径方向上例えば0.15mm〜0.20mm分磁気ディスク10の記録面11−1,11−2の面積を増加させることができる。ただし、溝13,16の半径方向上の深さは、深い方がより安定した基板11の支持が可能となる。
【0024】
図5は、カセットケースの一例を示す斜視図であり、図6は、カセットケースの一部を示す平面図である。図5及び図6に示すカセットケース31は、各種工程を施すべき基板11を収納したり、各種加工を施された基板11を収納するのに用いられる。カセットケース31は、複数の基板11を平行に並べて同時に支持する構造を有し、各基板11は上記の如き支持部材21の支持部22が溝13に挿入されることにより支持される。基板11の厚さが0.635mmであると、図1の如き従来の基板支持方法を用いると同じ厚さの基板は例えば6.35mmの間隔で同じ大きさのディスクケースに収納されるので、最大でも25枚しか収納できない。これに対し、本実施例では基板11を例えば0.1mmの間隔でディスクケース31に収納することができるので、最大208枚収納可能となる。つまり、基板11を支持する間隔は、支持部材21又は支持部22の厚さに制限されることはない。
【0025】
図7は、カセットケース31で使用可能な支持部材21の一例を示す図である。この例では、カセットケース31の両側の内壁に設けられた一対の支持部22は、溝13を円周に沿って所定距離(即ち、所定角度範囲)に渡って連続的に支持する構造を有する。
【0026】
図8は、カセットケース31で使用可能な支持部材21の他の例を示す図である。この例では、カセットケース31の両側の内壁に設けられた支持部22は、溝13を円周に沿った複数の不連続な箇所で支持する構造を有する。この例では基板11が4箇所で支持されているが、3箇所以上で支持する構造であれば良い。
【0027】
図9は、図7及び図8の支持部材21の支持部22に使用可能な形状を示す図である。図9に示すように、支持部22の曲面の曲率半径は、溝13を形成する曲面の曲率半径より小さい。図9中、(a)は支持部22が先端に向かって細くなった形状の例を示し、(b)は支持部22の先端が球形状を有する例を示す。このように、基板11の溝13(又は、16)の形状と支持部22の形状は、図4に示すように対応している必要はない。
【0028】
図10及び図11は、カセットケース31で使用可能な支持部材21の更に他の例を示す図である。図10の例では、カセットケース31の底面に設けられた支持部材21の支持部22は、溝13を円周に沿って所定距離(即ち、所定角度範囲)に渡って連続的に支持する構造を有する。図11の例では、カセットケース31の両側の内壁に設けられた一対の支持部22は、溝13を円周に沿って所定距離(即ち、所定角度範囲)に渡って連続的に支持する構造を有するが、所定距離が図7の場合より短い。尚、図10及び図11の支持構造は、基板11を搬送する際に基板11を支持する機構に使用可能であることは言うまでもない。
【0029】
図12は、カセットケース31の底面に開口33が設けられている場合の基板11の取り出し方法の一例を説明する図である。図12に示すカセットケース31は、図7と類似した構造を有するので、その説明は省略する。基板11をカセットケース31から取り出す時には、支持部材35を開口33からカセットケース31内に挿入して図12中上方向に移動し、支持部材35の支持部36を基板11の溝13に挿入した状態で更に上方向へ押し上げる。支持部36は、支持部22と同様の構造を有するので、基板11を安定に支持可能である。
【0030】
支持部材35が基板11を押し上げて基板11の開口15がカセットケース31の上端から露出すると、例えば図13に示す如き支持部材45により基板11をカセットケース31から取り出す。図13は、基板11の開口15の部分を支持する支持部材を示す図である。具体的には、基板11の開口15より径の小さい円柱状の支持部材45を開口15に挿入し、支持部材45を図13中上方向へ移動することで支持部材45の支持部(図示せず)を基板11の溝16に挿入し、基板11が支持部材45により支持された状態で所望の位置まで搬送する。支持部材45の支持部は、例えば支持部材45の外周面に連続的に、或いは、不連続に設けられている。支持部材45の支持部は、上記支持部22と同様の形状を有する。
【0031】
尚、図12及び図13において、カセットケース31から一度に取り出す基板11は1枚に限定されず、2枚以上の基板11を同時に取り出すようにしても良いことは言うまでもない。
【0032】
図14は、基板11を3箇所で支持する支持構造を示す図である。図14において、支持構造は3つのチャック55を有する。チャック55自体は、周知の機構により基板11に対して移動可能である。チャック55には円柱状の支持部材55Aが設けられており、支持部材55Aは支持部56を有する。支持部56は、支持部材55Aの外周面に連続的に環状に設けられている。支持部56の形状は、基板11の溝13の形状に対応している。基板11は、3箇所のチャック55により安定に支持される。このようなチャック55は、基板11を搬送する搬送機構、基板11を搬送すると共に反転する反転・搬送機構等の周知の機構で使用可能である。
【0033】
上記の如き支持構造を有する支持部材は、基板をカセットケースから取り出して搬送機構(図示せず)にロードすると共に基板を搬送機構からアンロードしてカセットケースに挿入するロード・アンロード工程、研磨(ポリッシュ)又はテキスチャリングを含む加工工程、洗浄工程、乾燥工程、成膜工程等において使用することができる。図15は、磁気ディスクの製造方法の工程の一部を説明する図である。
【0034】
図15において、ロード工程ST0では、基板11は上記の如き方法でカセットケース31から取り出されて搬送機構(図示せず)にロードされる。加工工程ST1では、基板11の一方の表面に対してテキスチャリングや研磨等の加工が施される。加工された基板11は、周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対してテキスチャリングや研磨等の加工が施された後、この反転・搬送機構により洗浄工程ST2へ移送される。
【0035】
洗浄工程ST2では、基板11の両面に対して例えば純水のシャワによる第1の洗浄工程を行い、周知の反転・搬送機構によりテープとシャワを併用した第2の洗浄工程へ移送される。第2の洗浄工程では、基板11の一方の表面に対してテープとシャワを併用した洗浄が施される。洗浄された基板11は、この周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対して第2の洗浄工程の洗浄が施された後、この反転・搬送機構により第3の洗浄工程へ移送され、基板11の両面に対して例えば純水のシャワによる洗浄が行われる。第3の洗浄工程では、純水のシャワにUS(Ultrasonic)波又はMS(Megasonic)波を印加する。
【0036】
第3の洗浄工程を経た基板11は、周知の反転・搬送機構により第4の洗浄工程へ移送され、基板11の一方の表面に対して洗浄ローラによるスクラブとシャワを併用した洗浄が施される。洗浄された基板11は、この周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対して第4の洗浄工程の洗浄が施された後、この反転・搬送機構により第5の洗浄工程へ移送され、基板11の一方の表面に対してシャワノズルによる純水のシャワによる洗浄が行われる。洗浄された基板11は、この周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対して第5の洗浄工程の洗浄が施された後、この反転・搬送機構により乾燥工程ST3へ移送される。
【0037】
乾燥工程ST3では、周知の乾燥装置(図示せず)により基板11の乾燥が行われ、基板11の一方の表面が乾燥されると、上記周知の反転・搬送機構により基板11が反転され、乾燥装置により基板11の他方の表面が乾燥される。つまり、基板11の両面を乾燥する場合は、基板11を乾燥させた下側の回転機構(図示せず)を上側の回転機構(図示せず)と入れ替えて基板11を上側の回転機構の図14に示す如きチャック55から一端取り外して反転してから再度上側の回転機構のチャック55に装着する。
【0038】
乾燥工程ST3の後は、基板11は周知の搬送機構によるアンロード工程ST4及びロード工程ST5を経て成膜工程ST6へ移送され、基板11上に磁気ディスクの記録層を含む各種層がスパッタリング等の工程により順次積層されて、最終的に磁気ディスクが製造される。磁気ディスクは、水平磁気記録方式を採用する構造を有するものであっても、垂直磁気記録方式を採用する構造を有するものであっても良い。
【0039】
成膜工程ST6の後のアンロード工程ST7では、基板11、即ち、磁気ディスク10は、上記の如き方法で搬送機構からアンロードされてカセットケース31に挿入される。
【0040】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
基板上に少なくとも磁気記録層が設けられた磁気ディスクであって、
前記基板の外周端面から前記基板の中心に向かって形成された第1の案内溝を有し、
前記第1の案内溝は曲面で形成されている、磁気ディスク。
(付記2)
前記基板の中心に設けられた開口と、
前記開口を形成する前記基板の内周端面から前記外周端面に向かって形成された第2の案内溝を更に有し、
前記第2の案内溝は曲面で形成されている、付記1記載の磁気ディスク。
(付記3)
前記基板はアルミニウム、ステンレス、ガラス、セラミック及びプラスチックからなるグループから選択された1つの材料で形成されている、付記1又は2記載の磁気ディスク。
(付記4)
前記プラスチックは、ポリカーボネイト、非晶質ポリオレフィン、MCナイロン(登録商標)、POM、超高分子量ポリエチレン、エーテル・エーテル・ケトン、ベークライト、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、塩化ビニル、アクリル、PET、ポリプロピレン、ポリエチレン、テフロン(登録商標)からなるグループから選択された1つの材料である、付記3記載の磁気ディスク。
(付記5)
外周端面から中心に向かって曲面で形成された第1の案内溝を有する基板を第1の支持部材で支持する第1の工程を含み、
前記基板は前記第1の支持部材の曲面を有する支持部が前記第1の案内溝に挿入されることで支持される、磁気ディスクの製造方法。
(付記6)
前記第1の工程は、前記支持部の厚さが前記基板の厚さより薄い第1の支持部材により前記基板を支持する、付記5記載の磁気ディスクの製造方法。
(付記7)
前記基板は、前記中心に設けられた開口を形成する内周端面から前記外周端面に向かって曲面で形成された第2の案内溝を更に有し、
前記基板を第2の支持部材で支持する第2の工程を更に含み、
前記基板は前記第2の支持部材の曲面を有する支持部が前記第2の案内溝に挿入されることで支持される、付記5又は6記載の磁気ディスクの製造方法。
(付記8)
前記第2の工程は、前記支持部の厚さが前記基板の厚さより薄い第2の支持部材により前記基板を支持する、付記7記載の磁気ディスクの製造方法。
(付記9)
前記第1の工程は、前記基板をカセットケースから取り出して搬送機構にロードすると共に前記基板を前記搬送機構からアンロードして前記カセットケースに挿入するロード・アンロード工程、研磨又はテキスチャリングを含む加工工程、洗浄工程、乾燥工程及び成膜工程からなるグループから選択された1つの工程である、付記5乃至8のいずれか1項記載の磁気ディスクの製造方法。
(付記10)
前記第2の工程は、前記基板をカセットケースから取り出して搬送機構にロードすると共に前記基板を前記搬送機構からアンロードして前記カセットケースに挿入するロード・アンロード工程、研磨又はテキスチャリングを含む加工工程、洗浄工程、乾燥工程及び成膜工程からなるグループから選択された1つの工程である、付記5乃至9のいずれか1項記載の磁気ディスクの製造方法。
(付記11)
複数の基板を平行に並べて同時に支持するカセットケースであって、
各基板は外周端面から中心に向かって曲面で形成された案内溝を有し、
各基板を前記案内溝で支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記案内溝に挿入される曲面で形成された支持部を有する、カセットケース。
(付記12)
前記支持部の厚さは前記基板の厚さより薄い、付記11記載のカセットケース。
(付記13)
前記支持部材の前記支持部の曲面形状は、前記案内溝を形成する曲面形状に対応している、付記11又は12記載のカセットケース。
(付記14)
前記支持部材の前記支持部は、前記溝を円周に沿って所定距離に渡って連続的に支持する構造を有する、付記11乃至13のいずれか1項記載のカセットケース。
(付記15)
前記支持部材の前記支持部は、前記溝を円周に沿った複数の不連続な箇所で支持する構造を有する、付記11乃至13のいずれか1項記載のカセットケース。
(付記16)
前記複数の基板を0.1mm〜6mmの間隔で支持する、付記11乃至15のいずれか1項記載のカセットケース。
【0041】
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
10 磁気ディスク
11 基板
11−1,11−2 記録面
12 外周端面
13,16 溝
14 内周端面
15 開口
21,35,45,55A 支持部材
22,36,56 支持部
55 チャック
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク及びその製造方法に係り、特に高密度記録に適した磁気ディスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスクに代表される高密度記録用の磁気記録媒体では、ヘッドの磁気記録媒体からの浮上量が非常に小さくなっている。このため、基板上に各種層をスパッタリング等により積層する場合、基板上に残渣物が残っていると記録層におけるデータ消失やヘッドが磁気ディスクと接触するヘッド・ディスク障害が発生してしまい、磁気ディスクを有する磁気ディスク装置の信頼性が低下してしまう。
【0003】
図1は、従来の基板支持方法の一例を説明する図である。図1において、1はディスク状の基板、2は処理工程で基板1を支持する支持部材を示す。支持部材2は、基板1をカセットケース(図示せず)から取り出して搬送機構(図示せず)にロードしたり基板を搬送機構からアンロードしてカセットケースに挿入するロード・アンロード工程、研磨等の加工工程、洗浄工程、乾燥工程、成膜工程等で基板1を支持するのに用いられる。基板1の外周部分には面取り部1Aが設けられており、基板1の外周部分が支持部材2に支持される際にV字状溝部2Aの斜面に円滑に案内されるようになっている。又、面取り部1Aを設けることで、支持部材2が基板1に強く押し付けられた際に基板1の外周部分が破損するのを防止している。
【0004】
図1中、(a)は基板1が支持部材2に支持される前の状態、(b)は基板1の面取り部1Aが支持部材2のV字状溝部2Aに案内される状態、(c)は基板1が支持部材2に支持された状態を示す。
【0005】
しかし、基板1の面取り部1Aが支持部材2のV字状溝部2Aに案内される時、摩擦により摩擦粉、所謂パーティクル3が発生する。このようなパーティクル3が基板1の表面1−1,1−2に付着すると、成膜工程においてパーティクル3の上に形成された層が剥離して記録層におけるデータ消失を発生したり、パーティクル3により磁気ディスクの表面に突起が形成されてHDIを発生したりする可能性がある。
【0006】
又、支持部材2の厚さは基板1の厚さより厚いにもかかわらず、面取り部1Aを支持するV字状溝部2Aの接触面積が比較的小さいため、基板1を安定に支持することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−225620号公報
【特許文献2】特開昭62−293515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の基板支持方法では、パーティクルの発生の抑制及び安定した基板の支持を両立させることは難しいという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、パーティクルの発生の抑制及び安定した基板の支持を両立させることが可能な磁気ディスク及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、基板上に少なくとも磁気記録層が設けられた磁気ディスクであって、前記基板の外周端面から前記基板の中心に向かって形成された案内溝を有し、前記案内溝は曲面で形成されている磁気ディスクが提供される。
【0011】
本発明の一観点によれば、外周端面から中心に向かって曲面で形成された案内溝を有する基板を支持部材で支持する工程を含み、前記基板は前記支持部材の曲面を有する支持部が前記案内溝に挿入されることで支持される磁気ディスクの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
開示の磁気ディスク及びその製造方法によれば、パーティクルの発生の抑制及び安定した基板の支持を両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の基板支持方法の一例を説明する図である。
【図2】本発明の一実施例における磁気ディスクの一例を示す斜視図である。
【図3】基板の溝の形状を説明する断面図である。
【図4】実施例における基板支持方法の一例を説明する図である。
【図5】カセットケースの一例を示す斜視図である。
【図6】カセットケースの一部を示す平面図である。
【図7】カセットケースで使用可能な支持部材の一例を示す図である。
【図8】カセットケースで使用可能な支持部材の他の例を示す図である。
【図9】図7及び図8の支持部材の支持部に使用可能な形状を示す図である。
【図10】カセットケースで使用可能な支持部材の更に他の例を示す図である。
【図11】カセットケースで使用可能な支持部材の更に他の例を示す図である。
【図12】カセットケースの底面に開口が設けられている場合の基板の取り出し方法の一例を説明する図である。
【図13】基板の開口の部分を支持する支持部材を示す図である。
【図14】基板を3箇所で支持する支持構造を示す図である。
【図15】磁気ディスクの製造方法の工程の一部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
開示の磁気ディスクは、基板上に少なくとも磁気記録層と、基板の外周端面から基板の中心に向かって形成された案内溝を有し、案内溝は曲面で形成されている。又、開示の磁気ディスクの製造方法では、支持部材の曲面を有する支持部が基板の案内溝に挿入されることで基板を支持する。
【0015】
以下に、本発明の磁気ディスク及びその製造方法の各実施例を、図2以降と共に説明する。
【実施例】
【0016】
図2は、本発明の一実施例における磁気ディスクの一例を示す斜視図である。図2に示すように、磁気ディスク10は、ディスク形状の基板11を有する。基板11の外周端面12には、円周に沿って案内溝13が形成されている。案内溝13は、曲面で形成されており、外周端面12から基板11の中心に向かって所定の深さを有する。基板11の中心には、内周端面14により形成された開口15が設けられている。内周端面14には、円周に沿って案内溝16が形成されている。案内溝16は、曲面で形成されており、内周端面14から基板11の外周に向かって所定の深さを有する。尚、案内溝13,16の一方のみを設けても良いことは言うまでもない。
【0017】
基板11の表面(以下、記録面と言う)11−1,11−2には、少なくとも磁気記録層(図示せず)が形成されている。磁気記録層は、水平磁気記録方式用の記録層構造を有するものであっても、垂直磁気記録方式用の記録層構造を有するものであっても良く、基板11上の層構造は特に限定されない。
【0018】
基板は、例えばアルミニウム、ステンレス、ガラス、セラミック及びプラスチックからなるグループから選択された1つの材料で形成されている。プラスチックは、例えばポリカーボネイト、非晶質ポリオレフィン(APC:Amorphous Poly-Olefine)、MCナイロン(登録商標)、POM(Poly-Oxy-Methylene,又は、ジュラコン(登録商標))、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE:Ultra High Molecular Weight Poly-Ethylene)、エーテル・エーテル・ケトン、ベークライト、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS:Acrylonitrile Butadiene Styrene)、塩化ビニル(PVC:Poly-Vinyl
Chloride)、アクリル、PET(Poly-Ethylene Terephthalate)、ポリプロピレン(PP:Poly-Propylene)、ポリエチレン(PE:PolyEthylene)、テフロン(Teflon:登録商標)からなるグループから選択された1つの材料である。
【0019】
案内溝13,16の形成方法は特に限定されないが、例えば基板11がアルミニウム基板であれば基板11を機械的に削ることで形成可能であり、基板11がプラスチック基板であれば基板11の成型時に同時に形成可能である。
【0020】
図3は、基板11の溝13,16の形状を説明する断面図である。溝16の形状は溝13の形状と同じであっても良いため、図3では一例として溝13の形状を示す。図3中、(a),(b)は円弧状の溝13を示し、(c)は2つの異なる曲面で形成された所謂だるま形状の溝13を示す。図3中、(a)の場合は溝13の幅が基板11の幅と等しいが、(b)の場合は溝13の幅が基板11の幅より狭い。図3中、(c)に示すだるま形状の溝13の場合、溝13の入り口が広いので支持部材21の支持部22が確実に溝13内に挿入され、又、溝13の奥が入り口より狭いので支持部22が基板11を安定に支持することができる。尚、溝13と溝16は、曲面で形成されていれば良く、互いに異なる形状を有するものであっても良いことは言うまでもない。
【0021】
図4は、本実施例における基板支持方法の一例を説明する図である。溝16の形状は溝13の形状と同じであっても良いため、図4では一例として溝13を用いた基板支持方法を示す。支持部材21は、先端が曲面で形成された支持部22を有する。この例では、支持部22の先端形状が基板11の溝13の形状と対応している。支持部22は、溝13を円周に沿って所定距離(即ち、所定角度範囲)に渡って連続的に支持する構造であっても、溝13を円周に沿った複数の不連続な箇所で支持する構造であっても良い。図4中、(a)は基板11の溝13が支持部材21の支持部22に案内される状態、(b)は基板11が支持部材21に支持された状態を示す。
【0022】
基板11の案内溝13に挿入される支持部材21の支持部22により基板11を支持することにより、支持部材21の支持部22が案内溝13を形成する曲面と接触する際の摩擦によるパーティクルの発生を抑えることができると共に、パーティクルが基板11の表面に付着しにくくすることができる。又、支持部材21の支持部22自体は、基板11の厚さより薄く形成しても、支持部材21の支持部22と基板11の案内溝13を形成する曲面との接触面積を比較的大きくすることができるので、基板11を安定に支持することができる。支持部材21の厚さは基板11の厚さと同程度としても良く、1つの支持部材21に複数の支持部22を形成しても良い。更に、基板11の外周部分に面取り部を形成する必要がないため、その分磁気ディスク10の記録面11−1,11−2の面積を増加させることができる。案内溝13を形成する曲面を適切な形状とすることで、パーティクルが基板11の案内溝13に溜まりにくくすることもできる。
【0023】
直径が2.5インチの磁気ディスク10の場合、基板11の厚さが0.635mmであると、溝13,16の半径方向上の深さは例えば0.05mmであり、基板11の外周部分に面取り部を形成しないことで外周部分で半径方向上例えば0.15mm〜0.20mm分磁気ディスク10の記録面11−1,11−2の面積を増加させることができる。ただし、溝13,16の半径方向上の深さは、深い方がより安定した基板11の支持が可能となる。
【0024】
図5は、カセットケースの一例を示す斜視図であり、図6は、カセットケースの一部を示す平面図である。図5及び図6に示すカセットケース31は、各種工程を施すべき基板11を収納したり、各種加工を施された基板11を収納するのに用いられる。カセットケース31は、複数の基板11を平行に並べて同時に支持する構造を有し、各基板11は上記の如き支持部材21の支持部22が溝13に挿入されることにより支持される。基板11の厚さが0.635mmであると、図1の如き従来の基板支持方法を用いると同じ厚さの基板は例えば6.35mmの間隔で同じ大きさのディスクケースに収納されるので、最大でも25枚しか収納できない。これに対し、本実施例では基板11を例えば0.1mmの間隔でディスクケース31に収納することができるので、最大208枚収納可能となる。つまり、基板11を支持する間隔は、支持部材21又は支持部22の厚さに制限されることはない。
【0025】
図7は、カセットケース31で使用可能な支持部材21の一例を示す図である。この例では、カセットケース31の両側の内壁に設けられた一対の支持部22は、溝13を円周に沿って所定距離(即ち、所定角度範囲)に渡って連続的に支持する構造を有する。
【0026】
図8は、カセットケース31で使用可能な支持部材21の他の例を示す図である。この例では、カセットケース31の両側の内壁に設けられた支持部22は、溝13を円周に沿った複数の不連続な箇所で支持する構造を有する。この例では基板11が4箇所で支持されているが、3箇所以上で支持する構造であれば良い。
【0027】
図9は、図7及び図8の支持部材21の支持部22に使用可能な形状を示す図である。図9に示すように、支持部22の曲面の曲率半径は、溝13を形成する曲面の曲率半径より小さい。図9中、(a)は支持部22が先端に向かって細くなった形状の例を示し、(b)は支持部22の先端が球形状を有する例を示す。このように、基板11の溝13(又は、16)の形状と支持部22の形状は、図4に示すように対応している必要はない。
【0028】
図10及び図11は、カセットケース31で使用可能な支持部材21の更に他の例を示す図である。図10の例では、カセットケース31の底面に設けられた支持部材21の支持部22は、溝13を円周に沿って所定距離(即ち、所定角度範囲)に渡って連続的に支持する構造を有する。図11の例では、カセットケース31の両側の内壁に設けられた一対の支持部22は、溝13を円周に沿って所定距離(即ち、所定角度範囲)に渡って連続的に支持する構造を有するが、所定距離が図7の場合より短い。尚、図10及び図11の支持構造は、基板11を搬送する際に基板11を支持する機構に使用可能であることは言うまでもない。
【0029】
図12は、カセットケース31の底面に開口33が設けられている場合の基板11の取り出し方法の一例を説明する図である。図12に示すカセットケース31は、図7と類似した構造を有するので、その説明は省略する。基板11をカセットケース31から取り出す時には、支持部材35を開口33からカセットケース31内に挿入して図12中上方向に移動し、支持部材35の支持部36を基板11の溝13に挿入した状態で更に上方向へ押し上げる。支持部36は、支持部22と同様の構造を有するので、基板11を安定に支持可能である。
【0030】
支持部材35が基板11を押し上げて基板11の開口15がカセットケース31の上端から露出すると、例えば図13に示す如き支持部材45により基板11をカセットケース31から取り出す。図13は、基板11の開口15の部分を支持する支持部材を示す図である。具体的には、基板11の開口15より径の小さい円柱状の支持部材45を開口15に挿入し、支持部材45を図13中上方向へ移動することで支持部材45の支持部(図示せず)を基板11の溝16に挿入し、基板11が支持部材45により支持された状態で所望の位置まで搬送する。支持部材45の支持部は、例えば支持部材45の外周面に連続的に、或いは、不連続に設けられている。支持部材45の支持部は、上記支持部22と同様の形状を有する。
【0031】
尚、図12及び図13において、カセットケース31から一度に取り出す基板11は1枚に限定されず、2枚以上の基板11を同時に取り出すようにしても良いことは言うまでもない。
【0032】
図14は、基板11を3箇所で支持する支持構造を示す図である。図14において、支持構造は3つのチャック55を有する。チャック55自体は、周知の機構により基板11に対して移動可能である。チャック55には円柱状の支持部材55Aが設けられており、支持部材55Aは支持部56を有する。支持部56は、支持部材55Aの外周面に連続的に環状に設けられている。支持部56の形状は、基板11の溝13の形状に対応している。基板11は、3箇所のチャック55により安定に支持される。このようなチャック55は、基板11を搬送する搬送機構、基板11を搬送すると共に反転する反転・搬送機構等の周知の機構で使用可能である。
【0033】
上記の如き支持構造を有する支持部材は、基板をカセットケースから取り出して搬送機構(図示せず)にロードすると共に基板を搬送機構からアンロードしてカセットケースに挿入するロード・アンロード工程、研磨(ポリッシュ)又はテキスチャリングを含む加工工程、洗浄工程、乾燥工程、成膜工程等において使用することができる。図15は、磁気ディスクの製造方法の工程の一部を説明する図である。
【0034】
図15において、ロード工程ST0では、基板11は上記の如き方法でカセットケース31から取り出されて搬送機構(図示せず)にロードされる。加工工程ST1では、基板11の一方の表面に対してテキスチャリングや研磨等の加工が施される。加工された基板11は、周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対してテキスチャリングや研磨等の加工が施された後、この反転・搬送機構により洗浄工程ST2へ移送される。
【0035】
洗浄工程ST2では、基板11の両面に対して例えば純水のシャワによる第1の洗浄工程を行い、周知の反転・搬送機構によりテープとシャワを併用した第2の洗浄工程へ移送される。第2の洗浄工程では、基板11の一方の表面に対してテープとシャワを併用した洗浄が施される。洗浄された基板11は、この周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対して第2の洗浄工程の洗浄が施された後、この反転・搬送機構により第3の洗浄工程へ移送され、基板11の両面に対して例えば純水のシャワによる洗浄が行われる。第3の洗浄工程では、純水のシャワにUS(Ultrasonic)波又はMS(Megasonic)波を印加する。
【0036】
第3の洗浄工程を経た基板11は、周知の反転・搬送機構により第4の洗浄工程へ移送され、基板11の一方の表面に対して洗浄ローラによるスクラブとシャワを併用した洗浄が施される。洗浄された基板11は、この周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対して第4の洗浄工程の洗浄が施された後、この反転・搬送機構により第5の洗浄工程へ移送され、基板11の一方の表面に対してシャワノズルによる純水のシャワによる洗浄が行われる。洗浄された基板11は、この周知の反転・搬送機構により反転され、他方の表面に対して第5の洗浄工程の洗浄が施された後、この反転・搬送機構により乾燥工程ST3へ移送される。
【0037】
乾燥工程ST3では、周知の乾燥装置(図示せず)により基板11の乾燥が行われ、基板11の一方の表面が乾燥されると、上記周知の反転・搬送機構により基板11が反転され、乾燥装置により基板11の他方の表面が乾燥される。つまり、基板11の両面を乾燥する場合は、基板11を乾燥させた下側の回転機構(図示せず)を上側の回転機構(図示せず)と入れ替えて基板11を上側の回転機構の図14に示す如きチャック55から一端取り外して反転してから再度上側の回転機構のチャック55に装着する。
【0038】
乾燥工程ST3の後は、基板11は周知の搬送機構によるアンロード工程ST4及びロード工程ST5を経て成膜工程ST6へ移送され、基板11上に磁気ディスクの記録層を含む各種層がスパッタリング等の工程により順次積層されて、最終的に磁気ディスクが製造される。磁気ディスクは、水平磁気記録方式を採用する構造を有するものであっても、垂直磁気記録方式を採用する構造を有するものであっても良い。
【0039】
成膜工程ST6の後のアンロード工程ST7では、基板11、即ち、磁気ディスク10は、上記の如き方法で搬送機構からアンロードされてカセットケース31に挿入される。
【0040】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
基板上に少なくとも磁気記録層が設けられた磁気ディスクであって、
前記基板の外周端面から前記基板の中心に向かって形成された第1の案内溝を有し、
前記第1の案内溝は曲面で形成されている、磁気ディスク。
(付記2)
前記基板の中心に設けられた開口と、
前記開口を形成する前記基板の内周端面から前記外周端面に向かって形成された第2の案内溝を更に有し、
前記第2の案内溝は曲面で形成されている、付記1記載の磁気ディスク。
(付記3)
前記基板はアルミニウム、ステンレス、ガラス、セラミック及びプラスチックからなるグループから選択された1つの材料で形成されている、付記1又は2記載の磁気ディスク。
(付記4)
前記プラスチックは、ポリカーボネイト、非晶質ポリオレフィン、MCナイロン(登録商標)、POM、超高分子量ポリエチレン、エーテル・エーテル・ケトン、ベークライト、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、塩化ビニル、アクリル、PET、ポリプロピレン、ポリエチレン、テフロン(登録商標)からなるグループから選択された1つの材料である、付記3記載の磁気ディスク。
(付記5)
外周端面から中心に向かって曲面で形成された第1の案内溝を有する基板を第1の支持部材で支持する第1の工程を含み、
前記基板は前記第1の支持部材の曲面を有する支持部が前記第1の案内溝に挿入されることで支持される、磁気ディスクの製造方法。
(付記6)
前記第1の工程は、前記支持部の厚さが前記基板の厚さより薄い第1の支持部材により前記基板を支持する、付記5記載の磁気ディスクの製造方法。
(付記7)
前記基板は、前記中心に設けられた開口を形成する内周端面から前記外周端面に向かって曲面で形成された第2の案内溝を更に有し、
前記基板を第2の支持部材で支持する第2の工程を更に含み、
前記基板は前記第2の支持部材の曲面を有する支持部が前記第2の案内溝に挿入されることで支持される、付記5又は6記載の磁気ディスクの製造方法。
(付記8)
前記第2の工程は、前記支持部の厚さが前記基板の厚さより薄い第2の支持部材により前記基板を支持する、付記7記載の磁気ディスクの製造方法。
(付記9)
前記第1の工程は、前記基板をカセットケースから取り出して搬送機構にロードすると共に前記基板を前記搬送機構からアンロードして前記カセットケースに挿入するロード・アンロード工程、研磨又はテキスチャリングを含む加工工程、洗浄工程、乾燥工程及び成膜工程からなるグループから選択された1つの工程である、付記5乃至8のいずれか1項記載の磁気ディスクの製造方法。
(付記10)
前記第2の工程は、前記基板をカセットケースから取り出して搬送機構にロードすると共に前記基板を前記搬送機構からアンロードして前記カセットケースに挿入するロード・アンロード工程、研磨又はテキスチャリングを含む加工工程、洗浄工程、乾燥工程及び成膜工程からなるグループから選択された1つの工程である、付記5乃至9のいずれか1項記載の磁気ディスクの製造方法。
(付記11)
複数の基板を平行に並べて同時に支持するカセットケースであって、
各基板は外周端面から中心に向かって曲面で形成された案内溝を有し、
各基板を前記案内溝で支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記案内溝に挿入される曲面で形成された支持部を有する、カセットケース。
(付記12)
前記支持部の厚さは前記基板の厚さより薄い、付記11記載のカセットケース。
(付記13)
前記支持部材の前記支持部の曲面形状は、前記案内溝を形成する曲面形状に対応している、付記11又は12記載のカセットケース。
(付記14)
前記支持部材の前記支持部は、前記溝を円周に沿って所定距離に渡って連続的に支持する構造を有する、付記11乃至13のいずれか1項記載のカセットケース。
(付記15)
前記支持部材の前記支持部は、前記溝を円周に沿った複数の不連続な箇所で支持する構造を有する、付記11乃至13のいずれか1項記載のカセットケース。
(付記16)
前記複数の基板を0.1mm〜6mmの間隔で支持する、付記11乃至15のいずれか1項記載のカセットケース。
【0041】
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
10 磁気ディスク
11 基板
11−1,11−2 記録面
12 外周端面
13,16 溝
14 内周端面
15 開口
21,35,45,55A 支持部材
22,36,56 支持部
55 チャック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも磁気記録層が設けられた磁気ディスクであって、
前記基板の外周端面から前記基板の中心に向かって形成された第1の案内溝を有し、
前記第1の案内溝は曲面で形成されている、磁気ディスク。
【請求項2】
前記基板の中心に設けられた開口と、
前記開口を形成する前記基板の内周端面から前記外周端面に向かって形成された第2の案内溝を更に有し、
前記第2の案内溝は曲面で形成されている、請求項1記載の磁気ディスク。
【請求項3】
外周端面から中心に向かって曲面で形成された第1の案内溝を有する基板を第1の支持部材で支持する第1の工程を含み、
前記基板は前記第1の支持部材の曲面を有する支持部が前記第1の案内溝に挿入されることで支持される、磁気ディスクの製造方法。
【請求項4】
前記基板は、前記中心に設けられた開口を形成する内周端面から前記外周端面に向かって曲面で形成された第2の案内溝を更に有し、
前記基板を第2の支持部材で支持する第2の工程を更に含み、
前記基板は前記第2の支持部材の曲面を有する支持部が前記第2の案内溝に挿入されることで支持される、請求項3記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程は、前記基板をカセットケースから取り出して搬送機構にロードすると共に前記基板を前記搬送機構からアンロードして前記カセットケースに挿入するロード・アンロード工程、研磨又はテキスチャリングを含む加工工程、洗浄工程、乾燥工程及び成膜工程からなるグループから選択された1つの工程である、請求項3又は4記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項1】
基板上に少なくとも磁気記録層が設けられた磁気ディスクであって、
前記基板の外周端面から前記基板の中心に向かって形成された第1の案内溝を有し、
前記第1の案内溝は曲面で形成されている、磁気ディスク。
【請求項2】
前記基板の中心に設けられた開口と、
前記開口を形成する前記基板の内周端面から前記外周端面に向かって形成された第2の案内溝を更に有し、
前記第2の案内溝は曲面で形成されている、請求項1記載の磁気ディスク。
【請求項3】
外周端面から中心に向かって曲面で形成された第1の案内溝を有する基板を第1の支持部材で支持する第1の工程を含み、
前記基板は前記第1の支持部材の曲面を有する支持部が前記第1の案内溝に挿入されることで支持される、磁気ディスクの製造方法。
【請求項4】
前記基板は、前記中心に設けられた開口を形成する内周端面から前記外周端面に向かって曲面で形成された第2の案内溝を更に有し、
前記基板を第2の支持部材で支持する第2の工程を更に含み、
前記基板は前記第2の支持部材の曲面を有する支持部が前記第2の案内溝に挿入されることで支持される、請求項3記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程は、前記基板をカセットケースから取り出して搬送機構にロードすると共に前記基板を前記搬送機構からアンロードして前記カセットケースに挿入するロード・アンロード工程、研磨又はテキスチャリングを含む加工工程、洗浄工程、乾燥工程及び成膜工程からなるグループから選択された1つの工程である、請求項3又は4記載の磁気ディスクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−205365(P2010−205365A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52379(P2009−52379)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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