説明

磁気ディスク基板用洗浄剤

【課題】 Ni−Pメッキしたアルミ基板に由来するニッケルイオン、ステンレス製の洗浄設備等に由来する鉄イオンの再析出に対して優れた溶解性を有するとともに、適度なエッチング性を有することで一旦吸着した後、基板表面から脱離したパーティクルの分散性が良好であり、かつパーティクルの再付着防止性に優れた磁気ディスク用基板洗浄剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 カルボキシル基を分子内に有するキレート剤(A1)、ホスホン基もしくはリン酸基を分子内に有するキレート剤(A2)および脂肪族アルカノールアミン(B)を必須成分とすることを特徴とする磁気ディスク基板用洗浄剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク基板用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク用基板の洗浄技術において、近年の磁気ディスクの高記録密度化に伴い、製造時における基板上に残存する微量のパーティクル(例えば砥粒、および研磨で発生した基板のくず)や不純物(例えば洗浄剤残さ、大気中からのゴミ)が磁気ディスクの性能や歩留まりに大きく影響するため、それを極力低減することが極めて重要になってきている。特に洗浄の対象となるパーティクルがより微粒子化してきており、従来以上にディスク用基板表面に残存しやすくなることから、高度洗浄技術の確立が急務となっている。
このため、これらのパーティクルによる汚染を防止する方法として、界面活性剤を用いて、パーティクルの除去性を向上させる方法が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
近年、磁気ディスク用基板のうちのアルミ基板の製造においては、基板表面に非磁性層であるNi−Pメッキを施し、その後アルミナスラリーやコロイダルシリカで研磨して鏡面仕上げする工程、および必要によりにその後にさらにダイヤモンドスラリー等を用いて基板表面を微細な凹凸状に加工する工程がある。しかし、その際にこれらの研磨剤や研磨屑が基板表面に強固に付着し、洗浄工程で十分に除去できないといった問題がある。
【0004】
これらの研磨剤や研磨屑に代表されるパーティクルは、アルミ製やガラス製の基板表面に強固に付着しているため、これらを十分に除去するためには、基板表面を僅かにエッチングし、パーティクルを液中に分散させ、さらに液中に分散したパーティクルを基板表面に再付着しないようにする必要がある。
また、基板から溶出した金属イオン(Ni−Pメッキされたアルミ基板の場合のニッケルイオン等)は、キレート剤を用いることで基板への再付着を抑制しているが、アルカリ条件下では、金属イオンはキレート剤との錯体を形成するとともに水酸化物イオンとの反応との平衡反応となる結果、経時とともに析出し、基板上に再付着するという問題。がある。
また、ガラス基板用の研磨剤スラリー中には、研磨速度を促進する目的で鉄イオンが含まれていることがある。さらに、洗浄設備のステンレスからもわずかに鉄イオンの溶出がある。これらの鉄イオンは上記同様、アルカリ条件下では経時とともに析出し、基板上に再付着する問題がある。
【0005】
ところで、上記の特許文献1では、洗浄対象となる研磨剤微粒子を凝集させ、粗大化させることで再付着を防止する方法が提案されているが、粗大化した粒子が僅かに基板表面に付着した場合でも深刻な問題を引き起こす恐れがある。さらに、金属イオンの再付着由来の残渣に対する洗浄性に問題がある。
また、上記特許文献2で提案されている方法は、アニオン性界面活性剤を用いることにより、パーティクルの再付着防止効果はある程度改善できるものの、エッチング性がほとんど無いため、パーティクル除去性が不十分であり、洗浄性が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−43791号公報
【特許文献2】特開2002−212597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、Ni−Pメッキしたアルミ基板に由来するニッケルイオン、ステンレス製の洗浄設備等に由来する鉄イオンの再析出に対して優れた溶解性を有するとともに、適度なエッチング性を有することで一旦吸着した後、基板表面から脱離したパーティクルの分散性が良好であり、かつパーティクルの再付着防止性に優れた磁気ディスク用基板洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決する磁気ディスク基板用洗浄剤を得るべく鋭意検討した結果、洗浄剤中にカルボキシル基を分子内に含有するキレート剤(A1)、ホスホン酸基もしくはリン酸基を分子内に有するキレート剤(A2)と脂肪族アルカノールアミンを含有させることにより、パーティクル除去性および基板成分、研磨剤スラリー、洗浄設備等由来金属イオンの再析出防止性が著しく向上することを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、カルボキシル基を分子内に含有するキレート剤(A1)、ホスホン酸基もしくはリン酸基を分子内に有するキレート剤(A2)、および脂肪族アルカノールアミン(B)を必須成分として含有することを特徴とする磁気ディスク基板用洗浄剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄剤は、磁気ディスクの製造工程において問題となる基板由来の微細なパーティクルの洗浄性に優れ、製造時の歩留まり向上や短時間かつ効率的な洗浄ができるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明磁気ディスク基板用の洗浄剤は、キレート剤(A)および脂肪族アルカノールアミン(B)を必須成分とすることを特徴とし、このキレート剤(A)はカルボキシル基を分子内に有するキレート剤(A1)とホスホン酸基もしくはリン酸基を分子内に有するキレート剤(A2)の両方を必須とする。
【0011】
本発明の洗浄剤は、キレート剤(A)を含有することで平坦性を損ねることなく適度なエッチング性を有することで微細なパーティクルの再付着防止性に優れた効果を発揮することができる。
また、キレート剤(A)としては、カルボン酸、ホスホン酸、リン酸など有機酸の形以外に対イオンと塩を形成してもよい。
【0012】
本発明に用いられるカルボキシル基を分子内に含有するキレート剤(A1)としては、以下の(A11)〜(A15)が挙げられる。
アミノポリカルボン酸(塩)(A11):
エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)(塩)、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸(TTHA)(塩)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)(塩)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸(DHEDDA)(塩)、ニトリロ酸酢酸(NTA)(塩)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)(塩)、β−アラニンジ酢酸(塩)、アスパラギン酸ジ酢酸(塩)、メチルグリシンジ酢酸(塩)、イミノジコハク酸(塩)、セリンジ酢酸(塩)、ヒドロキシイミノジコハク酸(塩)、ジヒドロキシエチルグリシン(塩)、アスパラギン酸(塩)及びグルタミン酸(塩)等
【0013】
ヒドロキシカルボン酸(塩)(A12):
ヒドロキシ酢酸(塩)、酒石酸(塩)、乳酸(塩)、クエン酸(塩)、没食子酸(塩)、サリチル酸(塩)、リンゴ酸(塩)及びグルコン酸(塩)等
シクロカルボン酸(塩)(A13):
ピロメリット酸(塩)、ベンゾポリカルボン酸(塩)及びシクロペンタンテトラカルボン酸(塩)等
【0014】
エーテルカルボン酸(塩)(A14):
カルボキシメチルタルトロネート、カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート等
その他カルボン酸(塩)(A15):
マレイン酸誘導体及びシュウ酸(塩)等
【0015】
本発明に用いられるホスホン酸基もしくはリン酸基を分子内に含有するキレート剤(A2)としては、ホスホン酸基を分子内に有する有機ホスホン酸(塩)(A21)とリン酸基を分子内に有する無機リン酸(塩)(A22)が挙げられる。
有機ホスホン酸(塩)(A21):
メチルジホスホン酸(塩)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(塩)、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸(塩)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸(塩)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(塩)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)、トリアミノトリエチルアミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)、トランス−1、2−シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、グリコールエーテルジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)及びテトラエチレンペンタミンヘプタ(メチレンホスホン酸)(塩)等
【0016】
無機リン酸(塩)(A22):
ピロリン酸(塩)、トリポリリン酸(塩)及びヘキサメタリン酸(塩)等
【0017】
キレート剤(A)が塩を形成する場合、その対イオンとしては、特に限定は無いが、例えば、1級アミン(メチルアミン、エチルアミン及びブチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン並びにグアニジン等);2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミン等のジアルキルアミン並びにジエタノールアミン等);3級アミン{トリメチルアミン、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等のトリアルキルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン並びに1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(以下、DABCOと略記)等};アミジン{1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(以下、DBUと略記)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(以下、DBNと略記)、1H−イミダゾール、2−メチル−1H−イミダゾール、2−エチル−1H−イミダゾール、4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、2−メチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、1,4,5,6−テトラヒドロ−ピリミジン、1,6(4)−ジヒドロピリミジン等};第4級アンモニウム(テトラアルキルアンモニウム等)の有機塩基;アルカリ金属(ナトリウムカチオン及びカリウムカチオン等)、アンモニウムなどの無機塩基が挙げられる。
また、これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
なお、キレート剤(A)として、アルカノールアミンを対イオンとする塩を用いる場合、このアルカノールアミンは、本発明の必須成分としての脂肪族アルカノールアミン(B)として取り扱う。
【0019】
カルボキシル基を分子内に有するキレート剤(A1)のうちで、パーティクル除去性の観点から好ましいのは、(A11)、(A12)及びこれらの塩であり、更に好ましいのは(A11)及びこれらの塩、特に好ましいのはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)(塩)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸(DHEDDA)(塩)である。
【0020】
ホスホン酸基もしくはリン酸基を分子内に有するキレート剤(A2)のうちで、パーティクル除去性の観点から好ましいのは、(A21)及びこれらの塩であり、更に好ましいのはニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)、(1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸(塩)(HEDP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、特に好ましいのはニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸(塩)(HEDP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)及びヘキサメタリン酸(塩)である。
【0021】
本発明において、キレート剤(A)は、カルボキシル基を分子内に含有するキレート剤(A1)とホスホン酸基もしくはリン酸基を分子内に有するキレート剤(A2)の両方を併用することで基板、研磨剤スラリー、洗浄設備等由来の金属イオンの再析出防止に優れ、基板のエッチング性コントロール及び洗浄性能を発揮することができる。
【0022】
洗浄剤組成中の実際の使用時の(A1)と(A2)の合計の含有量は、通常5重量%以下、好ましくは0.01〜2重量%、更に好ましくは0.05〜1重量%である。
【0023】
金属イオンの再析出防止の観点から、カルボキシル基を分子内に含有するキレート剤(A1)とホスホン酸基もしくはリン酸基を分子内に有するキレート剤(A2)の当量比(A2)/(A1)は、好ましくは0.1〜30であり、更に好ましくは0.4〜25である。0.1未満では、基板由来の金属イオンの再析出が生じるため好ましくなく、30を超えると洗浄設備由来の金属イオンの再析出防止性が劣るため好ましくない。
【0024】
本発明のもう1つの必須成分は脂肪族アルカノールアミン(B)であり、パーティクルの洗浄性の観点から、好ましくは炭素数2〜6の脂肪族アルカノールアミンである。
【0025】
脂肪族アルカノールアミン(B)としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、 ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、N−メチル−ジエタノールアミン、モノ−n−プロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリ−n−プロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、N−ステアリルジエタノールアミン、N,N−ジブチルモノエタノールアミン、N,N−ジオクチルモノエタノールアミン、N,N−ジデシルモノエタノールアミン、N−ジオレイルモノエタノールアミン、N−ジステアリルモノエタノールアミン等が挙げられる。
これらの脂肪族アルカノールアミンは、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、微小パーティクルの再付着防止およびエッチング性の観点から、好ましくはモノエタノールアミン、モノ−n−プロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなどである。
【0026】
洗浄剤組成中の脂肪族アルカノールアミン(B)の実際の使用時の含有量は、洗浄性の観点から通常0.05〜10重量%であり、0.1〜3重量%が好ましい。
【0027】
また、洗浄性の観点から、キレート剤と脂肪族アルカノールアミン(B)の当量比[(A1)+(A2)]/(B)は、好ましくは0.1〜3.0であり、更に好ましくは0.3〜2.5である。
【0028】
本発明の洗浄剤は、キレート剤(A)と脂肪族アルカノールアミン(B)を必須成分とするが、これらにさらに界面活性剤(C)を含有することで、平坦性を損ねることなく微細なパーティクルの再付着防止性に優れた効果を発揮することができる。
【0029】
このような目的で併用する界面活性剤(C)としては、アニオン性界面活性剤(C1)、非イオン性界面活性剤(C2)、カチオン性界面活性剤(C3)及び両性界面活性剤(C4)が挙げられる。
【0030】
アニオン性界面活性剤(C1)としては、高分子型アニオン性界面活性剤(C11)、スルホン酸系界面活性剤(C12)、硫酸エステル系界面活性剤(C13)、脂肪酸系界面活性剤(C14)及びリン酸エステル系界面活性剤(C15)等が挙げられる。
【0031】
高分子型アニオン性界面活性剤(C11)としては、スルホン酸(塩)基、硫酸エステル(塩)基、ホスホン酸(塩)基、リン酸エステル(塩)基及びカルボン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有し、300〜800,000の重量平均分子量(以下、Mwと略記する。)を有する高分子型アニオン性界面活性剤が挙げられる。
なお、本発明におけるMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、ポリエチレンオキサイドを基準物質として40℃で測定される。[例えば、装置本体:HLC−8120(東ソー株式会社製)、カラム:東ソー株式会社製TSKgel α6000、G3000 PWXL、検出器:装置本体内蔵の示差屈折計検出器、溶離液:0.5%酢酸ソーダ・水/メタノール(体積比70/30)、溶離液流量:1.0ml/分、カラム温度:40℃、試料:0.25%の溶離液溶液、注入量:200μl、標準物質:東ソー(株)製TSK STANDARD POLYETHYLENE OXIDE、データ処理ソフト:GPC−8020modelII(東ソー株式会社製)]。
高分子型アニオン性界面活性剤は、通常、1分子中に少なくとも2個以上の繰り返し単位を有する。
【0032】
(C11)の具体例としては、以下の(C111)〜(C115)が挙げられる。
(C111)スルホン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリスチレンスルホン酸、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、ポリ{2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸}、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びアニリンスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等並びにこれらの塩等
【0033】
(C112)硫酸エステル(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート硫酸エステル}、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート硫酸エステル共重合体、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}の硫酸エステル化物、ポリ{(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル}、(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル/アクリル酸共重合体及びセルロース、メチルセルロース又はエチルセルロースの硫酸エステル化物等並びにこれらの塩等
【0034】
(C113)ホスホン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ{(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸}、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸共重合体、ナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びアニリンホスホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物、ポリエチレンイミンポリメチレンホスホン酸及びポリアリルアミンポリメチレンホスホン酸等並びにこれらの塩等
【0035】
(C114)リン酸エステル(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートリン酸エステル}、2−ヒドロキシ
エチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートリン酸エステル共重合体、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}のリン酸エステル化物、ポリ{(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル}、(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル/アクリル酸共重合体及びセルロース、メチルセルロース又はエチルセルロースのリン酸エステル化物並びにこれらの塩等
【0036】
(C115)カルボン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤:
ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−イタコン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−フマル酸共重合体、(メタ)アクリル酸/酢酸ビニル共重合体及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}のカルボキシメチル化物、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、安息香酸ホルムアルデヒド縮合物、安息香酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩等
【0037】
(C11)が塩を形成する場合の塩としては、特に限定は無いが、例えば、上記のキレート剤(A)で例示した対カチオンとの塩が挙げられる。
これらの塩の中で、基板への金属汚染防止の観点から、好ましいのは1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩、アンモニウム塩及び第4級アンモニウム塩であり、特に好ましいのは3級アミン塩、アミジン塩及び第4級アンモニウム塩である。最も好ましいのはアミジン塩である。
【0038】
(C11)のMwは、パーティクルの再付着防止性及び低泡性の観点等から、通常300〜800,000、好ましくは600〜400,000、更に好ましくは1,000〜80,000、特に好ましくは2,000〜40,000である。
【0039】
アニオン性界面活性剤の内のスルホン酸系界面活性剤(C12)としては、炭素数6〜24のアルコールのスルホコハク酸モノ又はジエステル(塩)、炭素数8〜24のα−オレフィンのスルホン酸化物(塩)、炭素数8〜14のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び石油スルホネート(塩)等が挙げられる。
【0040】
硫酸エステル系界面活性剤(C13)としては、炭素数8〜18の脂肪族アルコールの硫酸エステル(塩)、炭素数8〜18の脂肪族アルコールのAO1〜10モル付加物の硫酸エステル(塩)、硫酸化油(塩)、硫酸化脂肪酸エステル(塩)及び硫酸化オレフィン(塩)等が挙げられる。
【0041】
脂肪酸系界面活性剤(C14)としては、炭素数8〜18の脂肪酸(塩)及び炭素数8〜18の脂肪族アルコールのエーテルカルボン酸(塩)等が挙げられる。
【0042】
リン酸エステル系界面活性剤(C15)としては、炭素数8〜24の高級アルコールの燐酸モノ又はジエステル(塩)及び炭素数8〜24の高級アルコールのAO付加物の燐酸モノ又はジエステル(塩)等が挙げられる。
【0043】
(C12)、(C13)、(C14)及び(C15)が塩を形成する場合の対イオンとしては、特に限定は無いが、例えば、上記のキレート剤(A)で例示したカチオンが挙げられる。
【0044】
アニオン性界面活性剤(C1)の内好ましいのは、再付着防止性の観点から高分子型アニオン性界面活性剤(C11)である。
高分子型アニオン性界面活性剤(C11)を使用する場合は、必要によりさらにスルホン酸系界面活性剤(C12)、硫酸エステル系界面活性剤(C13)及び脂肪酸系界面活性剤(C14)から選ばれる1種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明の洗浄剤に用いる非イオン性界面活性剤(C2)としては、アルキレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤(C21)及び多価アルコール型非イオン界面活性剤(C22)等が挙げられる。
【0046】
アルキレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤(C21)としては、高級アルコール(炭素数8〜18)アルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)付加物、アルキル(炭素数1〜12)フェノールエチレンオキサイド(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)付加物、脂肪酸(炭素数8〜18)エチレンオキサイド(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)付加物、脂肪族アミン(炭素数6〜24)のアルキレンオキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)、ポリプロピレングリコール(分子量200〜4000)エチレンオキサイド(活性水素1個当たりの付加モル数1〜50)付加物、ポリオキシエチレン(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)アルキル(炭素数1〜20)アリルエーテル並びにソルビタンモノラウレートエチレンオキサイド(付加モル数1〜30)付加物及びソルビタンモノオレートエチレンオキサイド(付加モル数1〜30)付加物等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステルエチレンオキサイド付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)等が挙げられる。
【0047】
多価アルコール型非イオン界面活性剤(C22)としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル並びにラウリン酸モノエタノールアミド及びラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0048】
非イオン界面活性剤(C2)のうち、洗浄性の観点から、好ましいのはアルキレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤(C21)であり、さらに好ましいのは高級アルコール(炭素数10〜16)アルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(活性水素1個当たりの付加モル数2〜20)付加物、フェノール又はアルキル(炭素数1〜18)フェノールのエチレンオキサイド(活性水素1個当たりの付加モル数2〜20)付加物及び脂肪族アミン(炭素数9〜18)のアルキレンオキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数2〜20)である。
【0049】
カチオン性界面活性剤(C3)としては、4級アンモニウム塩型の界面活性剤(C31){例えば、アルキル(炭素数1〜30)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(炭素数1〜30)ジメチルアンモニウム塩、窒素環含有第4級アンモニウム塩、ポリ(付加モル数2〜15)オキシアルキレン(炭素数2〜4)鎖含有第4級アンモニウム塩及びアルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜10)ジアルキル(炭素数1〜4)メチルアンモニウム塩};アミン系界面活性剤(C32){例えば、炭素数3〜90の脂肪族3級アミン、炭素数3〜90の脂環式(含窒素ヘテロ環を含む)3級アミン及び炭素数3〜90のヒドロキシアルキル基含有3級アミンの無機酸塩又は有機酸塩}等が挙げられる。
【0050】
両性界面活性剤(C4)としては、ベタイン型両性界面活性剤(C41){例えば、アルキル(炭素数1〜30)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜4)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)ジヒドロキシアルキル(炭素数1〜30)ベタイン及びスルフォベタイン型};アミノ酸型両性界面活性剤(C42){例えば、アラニン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノプロピオン酸型及びアルキル(炭素数1〜30)イミノジプロピオン酸型]及びグリシン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノ酢酸型等]};アミノスルホン酸塩型両性界面活性剤(C43){例えば、アルキル(炭素数1〜30)タウリン型両性界面活性剤}等が挙げられる。
【0051】
界面活性剤(C)のうち、パーティクルの再付着防止の観点から好ましいのは、アニオン性界面活性剤(C1)、非イオン性界面活性剤(C2)及び(C1)と(C2)の併用であり、さらに好ましいのは高分子型アニオン性界面活性剤(C11)である。
【0052】
使用時の洗浄剤中の界面活性剤(C)の含有量は、通常0.001〜2.0重量%であり、0.003〜0.5重量%が好ましい。
【0053】
(C1)と(C2)を併用の場合の(C1)と(C2)の重量比率[(C1)/(C2)]は、洗浄性及び起泡性の観点から通常0.5以下、好ましくは0.01〜0.2、更に好ましくは0.01〜0.1である。
【0054】
本洗浄剤は、洗浄剤の効果を損なわない範囲において、さらに還元剤(D)、アルカリ成分(E)、分散剤(F)、3価以上の多価アルコール(G)、水溶性有機溶剤(H)、その他の添加剤(I)の成分を含有することができる。
【0055】
電子材料表面に対するエッチング性をコントロールする目的で、本発明の洗浄剤に還元剤(D)をさらに含有させることができる。
【0056】
還元剤(D)としては、有機還元剤(D1)及び無機還元剤(D2)が挙げられる。
有機還元剤(D1)としては、脂肪族有機還元剤、芳香族有機還元剤及びその他の有機還元剤が挙げられる。
【0057】
本発明の洗浄剤は、アルカリ成分(E)を含有することによりパーティクルに対する洗浄性がさらに向上する。
このようなアルカリ成分(E)としては、脂肪族アルカノールアミン(B)以外の塩基性物質が挙げられ、炭素数1〜30の脂肪族アミン(E1)、第四級アンモニウム塩(E2)、無機アルカリ(E3)及びこれらの混合物が挙げられる。尚、炭素数1〜10の脂肪族アミンは還元剤としての効果とアルカリ成分としての効果の両方を有する。
【0058】
炭素数1〜30の脂肪族アミン(E1)としては、炭素数1〜8のアルキル基を有する1〜3級のアルキルアミン[メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等];炭素数2〜6のアルキレン基を1個以上有する(ポリ)アルキレンポリアミン[エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン等];環式アミジン化合物〔1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1,6−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5等〕およびヒドラジン等が挙げられる。
【0059】
第四級アンモニウム塩(E2)の具体例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、トリメチルエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、トリエチルメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラペンチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラヘキシルアンモニウムハイドロキサイド等。
【0060】
無機アルカリ(E3)としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられる。
【0061】
(E)のうち、洗浄性の観点から、第4級アンモニウム塩(E2)及び無機アルカリ(E3)が好ましく、更に好ましいのは、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、トリメチルエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、トリエチルメチルアンモニウムハイドロキサイド、水酸化カリウム及びこれらの併用である。
【0062】
アルカリ成分(E)を含有する場合、洗浄性の観点等から、使用時の(E)の含有量は、本発明の洗浄剤の(A)と(B)の合計重量に基づいて通常5重量%以下、好ましくは0.01〜1重量%、更に好ましくは0.03〜0.5重量%である。
【0063】
分散剤(F)としては、従来から微粒子の分散剤として使用されているもの、例えば、多糖類及びその誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グァーガム、カチオン化グァーガム、キサンタンガム、アルギン酸塩、カチオン化デンプン等);ポバール等が挙げられる。なお前記(C11)も分散剤としての効果を有する。
【0064】
本発明の洗浄剤は、3価以上の多価アルコール(G)を含有することにより基板の腐食を防止する効果が向上する。
【0065】
3価以上の多価アルコール(G)としては、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価アルコールのの脱水縮合物、糖類、糖アルコール、トリスフェノール、これらのアルキレンオキシド(炭素数2〜4)付加物(付加モル数1〜7モル)等が挙げられる。
【0066】
本発明の洗浄剤は、水溶性有機溶剤(H)を含有することにより洗浄剤中の成分が基板表面に残留することを防止することで洗浄性が更に向上する。
水溶性有機溶剤(H)としては、20℃における水に対する溶解度(g/100gH2
O)が3以上、好ましくは10以上の有機溶剤が挙げられる。
一価アルコール、多価アルコール、アルコール以外の水溶性有機溶媒が挙げられる。
【0067】
その他、酸化防止剤、防錆剤、pH調整剤、緩衝剤、消泡剤、防腐剤、ハイドロトロープ剤等を適宜添加することができる。
【0068】
また、本発明の電子材料用洗浄剤を使用する際には、必要により、希釈水、特にイオン交換水(導電率0.2μS/cm以下)又は超純水(電気抵抗率18MΩ・cm以上)で希釈して、有効成分濃度を0.01〜15%、特に0.05〜10%にすることが、使用時の作業性及びコストの観点から好ましい。
【0069】
本発明の電子材料用洗浄剤を希釈水で希釈した場合の使用時における25℃でのpHは、通常は7〜14であり、好ましくは8〜14、更に好ましくは9〜14である。pHがこの範囲にあると、基板の平坦性を損ねることなく、適度なエッチング性を有し、また微細なパーティクルの再付着防止性に優れた効果を発揮し易くなる。
【0070】
本発明の洗浄剤を必要により希釈して得られる上記洗浄液は、磁気ディスク用基板の洗浄に好適に使用でき、磁気ディスク用アルミニウム基板及びガラス基板に好適に使用できる。
【0071】
本発明の別の実施態様は、上記の磁気ディスク基板用洗浄剤を用いて、磁気ディスク用基板を洗浄する工程を含む磁気ディスク基板の製造方法である。
洗浄対象物(汚れ)は、無機パーティクル{研磨剤(例えば、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化セリウム、ダイヤモンド等)、研磨屑等}等の無機物が挙げられる。
【0072】
本発明の製造方法において、本洗浄剤は、パーティクルの除去性に極めて優れていることから、、研磨剤又は研磨屑等のパーティクルが発生する工程や高度な清浄度が要求される工程で使用することが好ましく、研削工程後の洗浄工程、研磨工程後の洗浄工程、テクスチャリング工程後の洗浄工程及び/又は成膜工程(例えば、下地層、磁性層及び保護層等をスパッタリング装置により成膜する工程)前の洗浄工程で適用することが好ましい。
前記研磨工程が、研磨剤としてはシリカや酸化セリウム、アルミナなどを用いる研磨工程である場合や前記テクスチャリング工程でダイヤモンドを用いる場合に、本発明の洗浄方法の効果が特に発揮されやすい。
【0073】
本発明の製造方法において行われる洗浄の洗浄方式としては、超音波洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、浸漬洗浄、浸漬揺動洗浄及び枚葉式洗浄からなる群から選ばれる少なくとも1種の洗浄方式が挙げられ、いずれの方式であっても本発明の洗浄剤の効果が発揮されやすい。
【0074】
本発明の洗浄剤を使用する際の洗浄温度(℃)としては、洗浄性の観点から、通常は10〜80℃であり、好ましくは15〜70℃、更に好ましくは20〜60℃である。
【0075】
本発明の磁気ディスク基板は、前記製造方法で製造された磁気ディスク基板である。本発明の磁気ディスク基板は、清浄度が従来の磁気ディスク基板より高いため、高性能(高記録容量、クラッシュが少ない等)の磁気ディスクドライブを作成することができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に限定がない限り以下において部は重量部を示す。ポリマーのGPCによる分子量の測定条件は前述の方法により測定した。
なお、以下において超純水は比抵抗値が18MΩ・cm以上のものを使用した。
【0077】
[製造例1]
攪拌付き反応容器にナフタレンスルホン酸21部、超純水を10部仕込み、撹拌下、系内の温度を80℃に保ちながら、37%ホルムアルデヒド8部を3時間かけて滴下した。
滴下終了後、105℃に昇温して25時間反応した後、室温まで冷却して水浴中、25℃に調整しながらDBUを徐々に加え、pH6.5に調整した。超純水を加えて固形分を40%にして、アニオン性界面活性剤であるナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のDBU塩(C1−1)の40%水溶液を得た。
なお、(C1−1)のMwは5,000であった。
【0078】
[製造例2]
温度調節及び攪拌が可能な反応容器にイソプロピルアルコール300部、超純水100部を仕込み、窒素置換後、75℃に昇温した。撹拌下で、アクリル酸の75%水溶液407部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートの15%イソプロピルアルコール溶液95部を3.5時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、75℃で5時間撹拌した後、系内が固化しないように超純水を間欠的に投入し、イソプロピルアルコールが検出できなくなるまで水とイソプロピルアルコールの混合物を留去した。
得られたポリアクリル酸水溶液にDBU約450部を加えてpHが7.0になるまで中和し、超純水で濃度40%になるように調整することにより、アニオン性界面活性剤であるポリアクリル酸DBU塩(C1−2)の40%水溶液を得た。なお、(C1−2)のMwは10,000であった。
【0079】
[製造例3]
温度調節及び還流が可能な攪拌付き反応容器にエチレンジクロライド100部を仕込み、攪拌下、窒素置換した後に90℃まで昇温し、エチレンジクロライドを還流させた。スチレン120部と、予め2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.7部をエチレンジクロライド20部に溶かした開始剤溶液を、それぞれ別々に6時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後更に1時間重合を行った。
重合後、窒素シール下で20℃に冷却した後、温度を20℃にコントロールしながら無水硫酸105部を10時間かけて滴下し、滴下終了後更に3時間スルホン化反応させた。反応後、溶媒を留去し固化させた後、超純水345部を投入して溶解し、ポリスチレンスルホン酸水溶液を得た。
得られたポリスチレンスルホン酸水溶液に25%TMAH水溶液約400部を加えてpHが7.0になるまで中和し、超純水で濃度40%になるように調整することにより、アニオン性界面活性剤であるポリスチレンスルホン酸テトラメチルアンモニウム塩(C1−3)の40%水溶液を得た。なお、(C1−3)のMwは、40,000、スルホン化率は97%であった。
【0080】
[製造例4]
撹拌装置及び温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコールを200部(1.1モル部)、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド(以下、TMAHと略記する。)の25%水溶液を10部(0.027モル)を仕込み、100℃、4kPa以下の減圧下で30分間脱水した。EO430部(9.8モル)を、反応温度を100℃に制御しながら、3時間かけて滴下した後、100℃で3時間熟成した。さらに、2.6kPa以下の減圧下に、150℃で2時間撹拌して、残存するTMAHを分解して除去し、非イオン性界面活性剤であるラウリルアルコールEO9モル付加物(C2−1)630部を得た。
【0081】
[製造例5]
撹拌装置及び温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアミンを185部(1.0モル)、25%TMAH水溶液を3.6部(0.01モル)を仕込み、100℃、4kPa以下の減圧下で30分間脱水した。EO264部(6.0モル)を、反応温度を100℃に制御しながら、3時間かけて滴下した後、100℃で3時間熟成した。
さらに、2.6kPa以下の減圧下、150℃で2時間撹拌して、残存するTMAHを分解して除去し、非イオン性界面活性剤であるラウリルアミンEO6モル付加物(C2−2)445部を得た。
【0082】
実施例1〜12および比較例1〜4
表1に記載の配合部数の各配合成分を均一撹拌・混合し、実施例1〜12および比較例1〜4の洗浄剤を作製した。
【0083】
【表1】

【0084】
なお、表1中のキレート剤(A)、脂肪族アルカノールアミン(B)、アルカリ成分(E)の略号は下記の通りである。
(A1−1):エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)
(A1−2):ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)
(A2−1):1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)
(A2−2):ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)
MEA:モノエタノールアミン
MDEA:N−メチルジエタノールアミン
MIPA:モノイソプロパノールアミン
BEA:N−ベンジルエタノールアミン
TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド
【0085】
得られた洗浄剤を超純水で50倍希釈して性能評価のための洗浄液とし、以下の方法で、pH、ニッケルイオンの再析出防止性(再析出防止性−1)、鉄イオンの再析出防止性(再析出防止性−2)、、シリカ粒子洗浄性(洗浄性−1)、酸化セリウム粒子の洗浄性(洗浄性−2)、ダイヤモンド粒子の洗浄性(洗浄性−3)、アルミナ粒子の洗浄性(洗浄性−4)、酸化ニッケル粒子の洗浄性(洗浄性−5)を評価した結果を表2に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
<pHの測定方法>
洗浄液のpHを25℃でpHメーター(東亜ディーケーケー社製HM−30R)で測定した。
【0088】
<ニッケルイオンの再析出防止性(再析出防止性−1)の評価方法>
水酸化ニッケル0.5gを0.5重量%硝酸水溶液49.5gで溶解させ、0.6重量%ニッケルイオン水溶液を作成し、25℃に保持した。
実施例または比較例の洗浄液1,000gをガラス製ビーカーに入れ、上記の0.6重量%ニッケルイオン水溶液を撹拌しながら50gずつ添加して、混合した。25℃で12時間静置後、混合液を観察し、固形物の析出がないか目視で確認した。固形物が析出する場合は沈殿が見られる。
固形物の析出がない場合は、50gのニッケルイオン水溶液を追加し12時間静置後に同様に観察した。固形物の析出が見られるまで上記操作を繰り返し、固形物の析出が見られた重量(g)を、再析出防止性として下記評価基準で評価した。
【0089】
5:250g
4:200g
3:150g
2:100g
1:50g
【0090】
<鉄イオンの再析出防止性(再析出防止性−2)の評価方法>
水酸化ニッケルの代わりに水酸化第二鉄を用いる以外は、上記ニッケルの再析出防止性と同様におこない、鉄イオンの再析出防止性を評価した。
【0091】
<シリカ粒子の洗浄性(洗浄性−1)の評価方法>
研磨剤として市販のコロイダルシリカスラリー(粒径約30nm)100部及びウレタン製の研磨布を用いて、3.5インチのNi−Pメッキされた磁気ディスク用基板を研磨した。超純水で表面をすすぎ、窒素でブローして乾燥させることにより、汚染基板を作製した。
実施例、比較例の洗浄剤1,000gを1Lガラス製ビーカーにとり、作製した汚染基板を浸漬し、超音波洗浄機(200kHz)内で、30℃、5分間洗浄を行った。洗浄後、基板を取り出し、超純水で再び1分間リンスを行った後、窒素ガスでブローして乾燥し、アルミ基板表面を表面検査装置(ビジョンサイテック社製「Micro−Max VMX−6100」)で観察し、パーティクル付着数を数えた。
また、洗浄液の代わりにブランクとして超純水で同様に試験した。
その際のブランクのパーティクル付着数は150個であった。
以下の評価基準で洗浄性試験を評価し、評価結果を表2に示した。
なお、本評価は大気からの汚染を防ぐため、クラス1,000(HED−STD−209D、米国連邦規格、1988年)のクリーンルーム内で実施した。
【0092】
[洗浄性試験の評価基準]
5:パーティクル付着数がブランクの1/100未満
4:パーティクル付着数がブランクの1/100〜1/20
3:パーティクル付着数がブランクの1/20〜1/5
2:パーティクル付着数がブランクの1/5〜1/2
1:パーティクル付着数がブランクの1/2以上
【0093】
<酸化セリウム粒子の洗浄性(洗浄性−2)の評価方法>
洗浄性−1の評価方法において、研磨剤としてコロイダルシリカスラリーを市販の酸化セリウムスラリー(フジミインコーポレーティド社製、CEPOL−120)に変更し、基板を2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板に変更した以外は洗浄性−1と同様にして評価した。判断基準も洗浄性−1と同様である。
【0094】
<ダイヤモンド粒子の洗浄性(洗浄性−3)の評価方法>
洗浄性−1の評価方法において、研磨剤としてコロイダルシリカスラリーを市販のダイヤモンドスラリー(ユシロ化学工業製、ユシロンテックWD)に変更した以外は洗浄性−1と同様にして評価した。判断基準も洗浄性−1と同様である。
【0095】
<アルミナ粒子の洗浄性(洗浄性−4)の評価方法>
洗浄性−1の評価方法において、研磨剤としてコロイダルシリカスラリーをアルミナ懸濁液(フジミインコーポレーティド社製、Disk−liteを超純水で3倍希釈したもの)に変更した以外は洗浄性−1と同様にして評価した。判断基準も洗浄性−1と同様である。
なお、このアルミナは、アルミナ砥粒とアルミ基板の研磨くず由来を想定したものである。
【0096】
<酸化ニッケル粒子の洗浄性(洗浄性−5)の評価方法>
洗浄性−1の評価方法において、研磨剤としてコロイダルシリカスラリーを酸化ニッケル懸濁液(和光純薬製の酸化ニッケルを1wt%となるように超純水に懸濁させたもの)に変更した以外は洗浄性−1と同様にして評価した。判断基準も洗浄性−1と同様である。
なお、この酸化ニッケルは、Ni−Pメッキしたアルミ基板の研磨くず由来を想定したものである。
【0097】
表1で明らかなように、本発明のキレート剤(A1)、(A2)および脂肪族アルカノールアミン(B)を用いた実施例1〜12はいずれも、金属イオンの再析出防止並びにパーティクルの洗浄性が優れていることがわかる。
一方、カルボキシル基を分子内に含有するキレート剤(A1)とホスホン酸基もしくはリン酸基を分子内に含有するキレート剤(A2)とを併用しない比較例1、2は、金属イオンの再析出残さに対する洗浄性が十分でない。また、脂肪族アルカノールアミン(B)を使用しない比較例3並びに比較例4は、パーティクルの除去性が十分でないため、洗浄性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の洗浄剤は、磁気ディスク基板上のパーティクルの洗浄性に優れているため、磁気ディスク基板(アルミ基板及びガラス基板等)を製造する工程の洗浄剤として有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を分子内に有するキレート剤(A1)、ホスホン酸基もしくはリン酸基を分子内に有するキレート剤(A2)、および脂肪族アルカノールアミン(B)を必須成分とすることを特徴とする磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項2】
キレート剤と脂肪族アルカノールアミン(B)の当量比[(A1)+(A2)]/(B)が0.1〜3.0である請求項1記載の磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項3】
使用時のpHが9.0〜14.0である請求項1または2記載の磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項4】
さらに、アニオン性界面活性剤(C1)および/または非イオン性界面活性剤(C2)を含有する請求項1〜3いずれか記載の磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項5】
該アニオン性界面活性剤(C1)が高分子型アニオン性界面活性剤(C11)である請求項4記載の磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の磁気ディスク基板用洗浄剤を用いて、磁気ディスク用基板を洗浄する工程を含む磁気ディスク基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の磁気ディスク基板の製造方法で製造された磁気ディスク基板。

【公開番号】特開2011−170952(P2011−170952A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11201(P2011−11201)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】