説明

磁気ディスク基板用洗浄剤

【課題】 製造工程時に使用する装置から溶出する鉄イオンに代表される金属イオンに由来するパーティクルに対して優れた洗浄性を有するとともに、適度なエッチング性を有することで基板表面から脱離したパーティクルの分散性が良好であり、かつ再付着防止性に優れた磁気ディスク用基板洗浄剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 オキシカルボン酸(A)とpH6.0における三価の鉄イオンに対するキレート安定度定数の対数値が7.0以上であって該オキシカルボン酸以外のキレート剤(B)およびアルカノールアミン(C)を必須成分として含有することを特徴とする磁気ディスク基板用洗浄剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク基板用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク用基板の洗浄技術において、近年の磁気ディスクの高記録密度化に伴い、製造時における基板上に残存する微量のパーティクル(例えば砥粒、研磨剤のくず)や不純物(例えば洗浄剤残さ、大気中からのゴミ)が磁気ディスクの性能や歩留まりに大きく影響するため、それを極力低減することが極めて重要になってきている。特に洗浄の対象となるパーティクルがより微粒子化してきており、従来以上にディスク用基板表面に残存しやすくなることから、高度洗浄技術の確立が急務となっている。
このため、これらのパーティクルによる汚染を防止する方法として、界面活性剤を用いて、パーティクルの除去性を向上させる方法が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
しかし、上記の特許文献1、2では基板表面を鏡面仕上げする工程およびテクスチャリングする工程の際に使用する研磨剤や研磨屑が基板表面に強固に付着し、洗浄工程で十分に除去できないといった問題がある。
【0004】
これらの研磨材や研磨屑に代表されるパーティクルを十分に除去する方法としてキレート剤を用いて、基板表面を僅かにエッチングし、パーティクルを液中に分散させ、更に液中に分散したパーティクルを基板表面に再付着しないようにする方法が提案されている(特許文献3)。
【0005】
しかし、特許文献3では、キレート剤を用いることで研磨材や研磨屑由来のパーティクルの再付着防止性は改善できるものの、製造工程で使用する装置表面もわずかにエッチングしてしまい、その結果装置から溶出する金属イオン由来のパーティクル除去性が不十分であり、洗浄性は不十分となるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−43791号公報
【特許文献2】特開2002−212597号公報
【特許文献3】特開2009−280802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、製造工程時に使用する装置から溶出する鉄イオンに代表される金属イオンに由来するパーティクルに対して優れた洗浄性を有するとともに、適度なエッチング性を有することで基板表面から脱離したパーティクルの分散性が良好であり、かつ再付着防止性に優れた磁気ディスク用基板洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決する磁気ディスク基板用洗浄剤を得るべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、オキシカルボン酸(A)、pH6.0における三価の鉄イオンに対するキレート安定度定数の対数値が7.0以上であって該オキシカルボン酸以外のキレート剤(B)、及びアルカノールアミン(C)を必須成分として含有することを特徴とする磁気ディスク基板用洗浄剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄剤は、磁気ディスクの製造工程において問題となる研磨剤や研磨屑などの微小なパーティクルの洗浄性にすぐれるとともに製造装置から溶出する鉄イオンに代表される金属イオン由来の微細なパーティクルの洗浄性に優れ、製造時の歩留まり向上や短時間かつ効率的な洗浄ができるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の磁気ディスク基板用の洗浄剤は、オキシカルボン酸(A)と、オキシカルボン酸の化学構造(カルボキシル基と水酸基の両方を有する)ではないキレート剤(B)及びアルカノールアミン(C)の3成分を必須成分とし、このキレート剤(B)はpH6.0における三価の鉄イオンに対するキレート安定度定数の常用対数値が7.0以上であることを特徴とする。
本発明の洗浄剤、またはこれを必要により水で希釈して得られる洗浄液は、磁気ディスク用基板の洗浄に好適に使用でき、磁気ディスク用アルミニウム基板及びガラス基板に好適に使用できる。
【0011】
本発明の洗浄剤は、オキシカルボン酸(A)、キレート剤(B)及びアルカノールアミン(C)を含有することで金属イオンに由来するパーティクルに対して優れた洗浄性を有するとともに、適度なエッチング性を有することで基板表面から脱離したパーティクルの分散性が良好であり、かつ再付着防止性に優れ効果を発揮することができる。
【0012】
本発明に用いられるオキシカルボン酸(A)は、少なくとも1個の水酸基、及び少なくとも1個のカルボキシル基を分子内に有する化合物であり、乳酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、サリチル酸、ヘプトン酸、リンゴ酸、没食子酸等;並びにこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩等である。
【0013】
磁気ディスク基板の製造装置等から溶出してくる鉄イオンは、水溶液中の水酸化物イオンと結合することで水酸化第一鉄を形成した後、水中の酸素と反応することで水酸化第二鉄として沈殿物を生じてしまう。オキシカルボン酸はこの水酸化第一鉄へ吸着することで水酸化第一鉄を安定化させ、水酸化第二鉄の析出を抑制することができる。
この観点から使用時の洗浄液中のオキシカルボン酸(A)の含有量は、0.0001重量%〜1重量%である。好ましくは、0.0002重量%〜0.3重量%、更に好ましくは0.0002重量%〜0.1重量%である。
【0014】
本発明の洗浄剤は、キレート剤を含有することで平坦性を損ねることなく適度なエッチング性を有することで微細なパーティクルの再付着防止性に優れた効果を発揮することができる。
なかでもpH6.0における三価の鉄イオンに対するキレート安定度定数の対数値が7.0以上であってオキシカルボン酸(A)以外の本発明のキレート剤(B)を含有することにより、製造装置から溶出する金属イオン由来のパーティクルの再付着防止を抑制することができる。
キレート効率の指標として一般的にキレート安定度定数の常用対数値が用いられ、この値が大きいほどキレート安定性は高いといえる。キレート安定度定数としては、以下の式で表される。
【0015】
【数1】

【0016】
[M]:金属イオン濃度、[L]:錯体濃度、[ML]:キレート錯体
n:金属イオンと反応する錯体の数
【0017】
キレート剤(B)としては三価の鉄イオンに対するキレート安定度定数の対数値が7.0以上のキレート剤であり、好ましくは9.0以上である。
三価の鉄イオンに対するキレート安定度定数の対数値が小さすぎると、鉄イオンを充分に捕捉することができず、満足のいく安定性が得られない。なお、キレート安定度定数の対数値の上限値は特に制限されるものではないが、通常三価の鉄イオンでは30以下である。
【0018】
本発明に用いられるキレート剤(B)としては、pH6.0でキレート安定度定数の対数値が7.0以上のキレート剤のうち、カルボキシル基を分子内に含有するキレート剤(B1)、ホスホン酸基又はリン酸基を分子内に含有するキレート剤(B2)、その他のキレート剤(B3)が挙げられる。
【0019】
カルボキシル基を分子内に含有するキレート剤(B1)としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)(塩)、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸(DCTA)(塩)、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸(TTHA)(塩)、ニトリロ酸酢酸(NTA)(塩)、β−アラニンジ酢酸(塩)、アスパラギン酸ジ酢酸(塩)、メチルグリシンジ酢酸(塩)、イミノジコハク酸(塩)、セリンジ酢酸(塩)、アスパラギン酸(塩)及びグルタミン酸(塩)、ピロメリット酸(塩)、ベンゾポリカルボン酸(塩)、シクロペンタンテトラカルボン酸(塩)等、カルボキシメチルタルトロネート、カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート、酒石酸モノサクシネート及び酒石酸ジサクシネート等、マレイン酸誘導体、シュウ酸(塩)、マロン酸(塩)、コハク酸(塩)、グルタル酸(塩)、アジピン酸(塩)等が挙げられる。
【0020】
ホスホン酸基又はリン酸基を分子内に含有するキレート剤(B2)としては、メチルジホスホン酸(塩)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(塩)、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸(塩)(HEDP)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸(塩)(NTMP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(塩)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)、トリアミノトリエチルアミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)、トランス−1、2−シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、グリコールエーテルジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)及びテトラエチレンペンタミンヘプタ(メチレンホスホン酸)(塩)、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、トリポリリン酸(塩)及びヘキサメタリン酸(塩)等
【0021】
その他のキレート剤(B3)としては、フッ酸(塩)、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,2−エタンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,2−プロパンジアミン、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,3−プロパンジアミン及びN,N’−ビス(サリチリデン)−1,4−ブタンジアミン等が挙げられる。
【0022】
キレート剤(B)が塩を形成する場合、その塩としては、特に限定は無い。
例えば、上記に例示した酸の1級アミン(メチルアミン、エチルアミン及びブチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン並びにグアニジン等)塩;2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミン等のジアルキルアミン並びにジエタノールアミン等)塩;3級アミン{トリメチルアミン、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等のトリアルキルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン並びに1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等}塩;アミジン{1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(以下、DBUと略記)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1H−イミダゾール、2−メチル−1H−イミダゾール、2−エチル−1H−イミダゾール、4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、2−メチル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール、1,4,5,6−テトラヒドロ−ピリミジン、1,6(4)−ジヒドロピリミジン等}塩、アルカリ金属(ナトリウムカチオン及びカリウムカチオン等)塩、アンモニウム塩及び第4級アンモニウム(テトラアルキルアンモニウム等)塩が挙げられる。
また、これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
キレート剤(B)のうちで、パーティクル除去性の観点から好ましいのは、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)[18.9]、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)[21.5]、ニトリロ酸酢酸(NTA)[14.3]、ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)[7.46]、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸(HEDP)[9.79]、ピロリン酸[19.4]、N,N’−ビス(サリチリデン)−1,2−エタンジアミン[10.0以上]等;及びこれらの塩である。なお、[ ]内にpH6.0での三価の鉄イオンとのキレート安定度定数の対数値{『Complexation in Analytical Chemistry』(1963)Anders Ringbom著、又はキレスト社カタログ値}を示した。更に好ましいのは、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、ニトリロ酸酢酸(NTA)、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸(HEDP)及びこれらの塩である。
【0024】
本発明において、キレート剤(B)は、pH6.0における三価の鉄イオンに対する安定度定数の対数値が7.0以上のキレート剤を併用することで装置由来の金属イオンの再析出防止に優れ、基板のエッチング性コントロール及び洗浄性能を発揮することができる。
【0025】
この観点から、使用時の洗浄液中のキレート剤(B)の含有量は0.01重量%〜2重量%である。好ましくは、0.02重量%〜1重量%、更に好ましくは0.04重量%〜0.5重量%である。
【0026】
また、洗浄性の観点からオキシカルボン酸(A)とキレート剤(B)を、(A)/(B)の重量比で0.005〜3.0含有することが好ましい。0.005未満では、装置から溶出する金属イオン由来のパーティクルの再析出が起こりやすい。一方、3.0を超える場合は、オキシカルボン酸が過剰であり、研磨剤由来のパーティクルの洗浄性が劣る傾向にある。
【0027】
本発明に用いられるアルカノールアミン(C)としては、炭素数2〜6の脂肪族アルカノールアミン[モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、 ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、N−メチル−ジエタノールアミン、モノ−n−プロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリ−n−プロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、及びN−(アミノエチル)エタノールアミン等]が挙げられる。
原理は明確ではないが、アルカノールアミン(C)を添加することにより、水酸化第一鉄を安定化させ、水酸化鉄の析出を抑制する事ができるため、微細なパーティクルの洗浄性に優れる。特に、オキシカルボン酸(A)、キレート剤(B)及びアルカノールアミン(C)を併用することで、再析出防止性に大きな効果が発揮される。
【0028】
この観点から、使用時の洗浄液中のアルカノールアミン(C)の含有量は0.01重量%〜2重量%である。好ましくは、0.02重量%〜1重量%、更に好ましくは0.04重量%〜0.5重量%である。
【0029】
キレート剤(B)の当量に対するアルカノールアミン(C)の当量比率[B]/[C]は、再析出防止性の観点から好ましくは0.1〜5であり、更に好ましくは、0.2〜3である。
アルカノールアミンは中和塩の状態になっていないことが洗浄性の観点から好ましく、洗浄剤を調製する際には、オキシカルボン酸(A)やキレート剤(B)の中和には後述するpH調整剤(E)を用い、最後にアルカノールアミンを配合することが好ましい。
【0030】
本発明の洗浄剤は、オキシカルボン酸(A)、キレート剤(B)、及びアルカノールアミン(C)を必須成分とするが、これらにさらに界面活性剤(D)を含有することで、平坦性を損ねることなく微細なパーティクルの再付着防止性に優れた効果を発揮することができる。
【0031】
このような目的で併用する界面活性剤(D)としては、アニオン性界面活性剤(D1)、非イオン性界面活性剤(D2)カチオン性界面活性剤(D3)及び両性界面活性剤(D4)が挙げられる。
【0032】
アニオン性界面活性剤(D1)としては、高分子型アニオン性界面活性剤(D11)、スルホン酸系界面活性剤(D12)、硫酸エステル系界面活性剤(D13)、脂肪酸系界面活性剤(D14)及びリン酸エステル系界面活性剤(D15)等が挙げられる。
【0033】
高分子型アニオン性界面活性剤(D11)としては、スルホン酸(塩)基、硫酸エステル(塩)基、ホスホン酸(塩)基、リン酸エステル(塩)基及びカルボン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有し、300〜800,000の重量平均分子量(以下、Mwと略記する。)を有する高分子型アニオン性界面活性剤が挙げられる。
なお、本発明におけるMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、ポリエチレンオキサイドを基準物質として40℃で測定される。[例えば、装置本体:HLC−8120(東ソー株式会社製)、カラム:東ソー株式会社製TSKgel α6000、G3000 PWXL、検出器:装置本体内蔵の示差屈折計検出器、溶離液:0.5%酢酸ソーダ・水/メタノール(体積比70/30)、溶離液流量:1.0ml/分、カラム温度:40℃、試料:0.25%の溶離液溶液、注入量:200μl、標準物質:東ソー(株)製TSK STANDARD POLYETHYLENE OXIDE、データ処理ソフト:GPC−8020modelII(東ソー株式会社製)]。
高分子型アニオン性界面活性剤は、通常、1分子中に少なくとも2個の繰り返し単位を有する。
【0034】
高分子型アニオン性界面活性剤(D11)の具体例としては、以下の(D111)〜(D115)が挙げられる。
スルホン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤(D111):
ポリスチレンスルホン酸、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、ポリ{2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸}、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びアニリンスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等並びにこれらの塩等
【0035】
硫酸エステル(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤(D112):
ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート硫酸エステル}、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート硫酸エステル共重合体、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}の硫酸エステル化物、ポリ{(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル}、(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル/アクリル酸共重合体及びセルロース、メチルセルロース又はエチルセルロースの硫酸エステル化物等並びにこれらの塩等
【0036】
ホスホン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤(D113):
ポリ{(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸}、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸共重合体、ナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンホスホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びアニリンホスホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物、ポリエチレンイミンポリメチレンホスホン酸及びポリアリルアミンポリメチレンホスホン酸等並びにこれらの塩等
【0037】
リン酸エステル(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤(D114):
ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートリン酸エステル}、2−ヒドロキシ
エチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートリン酸エステル共重合体、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}のリン酸エステル化物、ポリ{(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル}、(メタ)アクリロイルオキシポリオキシアルキレンリン酸エステル/アクリル酸共重合体及びセルロース、メチルセルロース又はエチルセルロースのリン酸エステル化物並びにこれらの塩等
【0038】
カルボン酸(塩)基を有する高分子型アニオン性界面活性剤(D115):
ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−イタコン酸共重合体、(メタ)アクリル酸−フマル酸共重合体、(メタ)アクリル酸/酢酸ビニル共重合体及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ{2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート}のカルボキシメチル化物、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、安息香酸ホルムアルデヒド縮合物、安息香酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩等
【0039】
高分子型アニオン性界面活性剤(D11)が塩を形成する場合の塩としては、特に限定は無いが、例えば、上記のキレート剤(B)で例示した対カチオンとの塩が挙げられる。
これらの塩の中で、基板への金属汚染防止の観点から、好ましいのは1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩、アミジン塩、アンモニウム塩及び第4級アンモニウム塩であり、特に好ましいのは3級アミン塩、アミジン塩及び第4級アンモニウム塩である。
【0040】
高分子型アニオン性界面活性剤(D11)のMwは、パーティクルの再付着防止性及び低泡性の観点等から、通常300〜800,000、好ましくは600〜400,000、更に好ましくは1,000〜80,000、特に好ましくは2,000〜40,000である。
【0041】
アニオン性界面活性剤の内のスルホン酸系界面活性剤(D12)としては、炭素数6〜24のアルコールのスルホコハク酸モノ又はジエステル(塩)、炭素数8〜24のα−オレフィンのスルホン酸化物(塩)、炭素数8〜14のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸(塩)及び石油スルホネート(塩)等が挙げられる。
【0042】
硫酸エステル系界面活性剤(D13)としては、炭素数8〜18の脂肪族アルコールの硫酸エステル(塩)、炭素数8〜18の脂肪族アルコールのAO1〜10モル付加物の硫酸エステル(塩)、硫酸化油(塩)、硫酸化脂肪酸エステル(塩)及び硫酸化オレフィン(塩)等が挙げられる。
【0043】
脂肪酸系界面活性剤(D14)としては、炭素数8〜18の脂肪酸(塩)及び炭素数8〜18の脂肪族アルコールのエーテルカルボン酸(塩)等が挙げられる。
【0044】
リン酸エステル系界面活性剤(D15)としては、炭素数8〜24の高級アルコールの燐酸モノ又はジエステル(塩)及び炭素数8〜24の高級アルコールのAO付加物の燐酸モノ又はジエステル(塩)等が挙げられる。
【0045】
(D12)、(D13)、(D14)及び(D15)が塩を形成する場合の対イオンとしては、特に限定は無いが、例えば、上記のキレート剤(B)で例示したカチオンが挙げられる。
【0046】
アニオン性界面活性剤(D1)の内、好ましいのは、再付着防止性の観点から高分子型アニオン性界面活性剤(D11)である。
高分子型アニオン性界面活性剤(D11)を使用する場合は、必要によりさらにスルホン酸系界面活性剤(D12)、硫酸エステル系界面活性剤(D13)及び脂肪酸系界面活性剤(D14)から選ばれる1種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明の洗浄剤に用いる非イオン性界面活性剤(D2)としては、アルキレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤(D21)及び多価アルコール型非イオン界面活性剤(D22)等が挙げられる。
【0048】
カチオン性界面活性剤(D3)としては、4級アンモニウム塩型の界面活性剤、アミン系界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
両性界面活性剤(D4)としては、ベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤、アミノスルホン酸塩型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0050】
界面活性剤(D)のうち、パーティクルの再付着防止性の観点から好ましいのは、アニオン性界面活性剤(D1)、非イオン性界面活性剤(D2)及び(D1)と(D2)の併用であり、更に好ましいのは高分子型アニオン性界面活性剤(D11)である。
【0051】
使用時の洗浄液中の界面活性剤(D)の含有量は1重量%以下である。好ましくは、0.3重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下である。
【0052】
本洗浄剤は、洗浄剤の効果を損なわない範囲において、さらにpH調整剤(E)、分散剤(F)、3価以上の多価アルコール(G)、水溶性有機溶剤(H)、その他の添加剤の成分を含有することができる。
【0053】
本発明の洗浄剤を水を除く配合組成物の濃度を0.01〜15重量%になるように希釈水で調整した場合の25℃でのpHは、洗浄性の観点から通常は8.5〜14.0であり、好ましくは8.5〜13.5、更に好ましくは8.5〜13.0である。
【0054】
pHがこの範囲にあると、基板の平坦性を損ねることなく、適度なエッチング性を有し、また微細なパーティクルの再付着防止性に優れた効果を発揮し易くなる。
このようなpH調整剤(E)としては、アルカノールアミン(C)以外の有機アルカリ(E1)および無機アルカリ(E2)が挙げられる。
【0055】
有機アルカリ(E1)としては、第4級アンモニウム塩[テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド(以下、TMAHと略記)、トリメチルエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、トリエチルメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラペンチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラヘキシルアンモニウムハイドロキサイド等];炭素数1〜8のアルキル基を有する1〜3級のアルキルアミン[メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等];炭素数2〜6のアルキレン基を1個以上有する(ポリ)アルキレンポリアミン[エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン等];環式アミジン化合物〔1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1,6−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5等〕等が挙げられる。
【0056】
無機アルカリ(E2)としては、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられる。
【0057】
pH調整剤(E)のうち、洗浄性の観点から、第4級アンモニウム塩、及び無機アルカリが好ましく、更に好ましいのは、TMAH、トリメチルエチルアンモニウムハイドロキサイド、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及びこれらの併用である。
【0058】
pH調整剤(E)を含有する場合、洗浄性の観点等から、使用時の洗浄液中の含有量は0.01重量%〜3重量%である。好ましくは、0.05重量%〜1重量%、更に好ましくは0.1重量%〜0.7重量%である。
【0059】
分散剤(F)としては、従来から微粒子の分散剤として使用されているもの、多糖類及びその誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グァーガム、カチオン化グァーガム、キサンタンガム、アルギン酸塩、カチオン化デンプン等);ポバール等が挙げられる。なお前記(D11)も分散剤としての効果を有する。
【0060】
本発明の洗浄剤は、3価以上の多価アルコール(G)を含有することにより基板の腐食を防止する効果が向上する。
【0061】
3価以上の多価アルコール(G)としては、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価アルコールの脱水縮合物、糖類、糖アルコール、トリスフェノール、これらのアルキレンオキシド(炭素数2〜4)付加物(付加モル数1〜7モル)等が挙げられる。
【0062】
本発明の洗浄剤は、水溶性有機溶剤(H)を含有することにより洗浄剤中の成分が基板表面に残留することを防止することで洗浄性が更に向上する。
水溶性有機溶剤(H)としては、20℃における水に対する溶解度(g/100gH2
O)が3以上、好ましくは10以上の有機溶剤が挙げられる。
一価アルコール、多価アルコール、アルコール以外の水溶性有機溶媒が挙げられる。
【0063】
本発明の洗浄剤は、その他の添加剤として、酸化防止剤[フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等];防錆剤[ベンゾトリアゾール等];緩衝剤[有機酸、無機酸及びこれらの塩等];消泡剤[シリコーン消泡剤等];防腐剤[トリアジン誘導体、イソチアゾリン誘導体等]、ハイドロトロープ剤[トルエンスルホン酸(塩)、キシレンスルホン酸(塩)等]等を適宜添加することができる。
【0064】
本発明の洗浄剤の水を除く組成物の含量は、運搬効率の観点からは、通常は洗浄剤全量に対して、0.1〜100重量%であり、好ましくは0.2〜90重量%、更に好ましくは0.5〜70重量%、特に好ましくは1.0〜50重量%である。
また、本発明の電子材料用洗浄剤に使用される水としては、超純水(電気抵抗率18MΩ・cm以上)、イオン交換水(導電率0.2μS/cm以下)、逆浸透膜を通した水、蒸留水が挙げられる。
【0065】
本発明の洗浄剤を必要により希釈して得られる上記洗浄液は、磁気ディスク用基板の洗浄に好適に使用でき、磁気ディスク用アルミニウム基板及びガラス基板に好適に使用できる。
【0066】
本発明の磁気ディスク基板の洗浄方法は、上記の洗浄液中で磁気ディスク基板を洗浄する洗浄方法である。
洗浄対象物(汚れ)は、無機パーティクル{研磨剤(コロイダルシリカ、アルミナ、酸化セリウム、ダイヤモンド等)、研磨屑、製造装置から溶出する金属イオンの析出物等}等の無機物が挙げられる。
【0067】
本発明の洗浄方法は、パーティクルの除去性に極めて優れていることから、磁気ディスクの製造工程の内、研磨剤又は研磨屑等のパーティクルが発生する工程や高度な清浄度が要求される工程で行うことが好ましく、研削工程後の洗浄工程、研磨工程後の洗浄工程、テクスチャリング工程後の洗浄工程及び/又は成膜工程(例えば、下地層、磁性層及び保護層等をスパッタリング装置により成膜する工程)前の洗浄工程での洗浄方法として適用することが好ましい。
前記研磨工程が、研磨剤としてはシリカや酸化セリウムなどを用いる研磨工程である場合や前記テクスチャリング工程でダイヤモンドを用いる場合に、本発明の洗浄方法の効果が特に発揮されやすい。
【0068】
本発明の洗浄方法における洗浄方式としては、超音波洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、浸漬洗浄、浸漬揺動洗浄及び枚葉式洗浄からなる群から選ばれる少なくとも1種の洗浄方式が挙げられ、いずれの方式であっても本発明の洗浄方法の効果が発揮されやすい。
【0069】
本発明の洗浄液を使用する際の洗浄温度(℃)としては、洗浄性の観点から、通常は10〜80℃であり、好ましくは15〜70℃、更に好ましくは20〜60℃である。
【0070】
本発明の磁気ディスク基板の製造方法は、前記洗浄方法で磁気ディスク基板を洗浄する工程を含む磁気ディスク基板の製造方法である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に限定がない限り以下において部は重量部、%は重量%を示す。
なお、以下において超純水は比抵抗値が18MΩ・cm以上のものを使用した。
【0072】
[製造例1]
攪拌付き反応容器にナフタレンスルホン酸21部、超純水を10部仕込み、撹拌下、反応容器内の温度を80℃に保ちながら、37%ホルムアルデヒド8部を3時間かけて滴下した。
滴下終了後、105℃に昇温して25時間反応した後、室温まで冷却して水浴中、25℃に調整しながらDBUを徐々に加え、pH6.5に調整した。超純水を加えて固形分を40%にして、アニオン性界面活性剤であるナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のDBU塩(D1−1)の40%水溶液を得た。なお、(D1−1)のMwは5,000であった。
【0073】
[製造例2]
温度調節及び攪拌が可能な反応容器にイソプロピルアルコール300部、超純水100部を仕込み、窒素置換後、75℃に昇温した。撹拌下で、アクリル酸の75%水溶液407部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートの15%イソプロピルアルコール溶液95部を3.5時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、75℃で5時間撹拌した後、反応容器内が固化しないように超純水を間欠的に投入し、イソプロピルアルコールが検出できなくなるまで水とイソプロピルアルコールの混合物を留去した。
得られたポリアクリル酸水溶液にDBU約450部を加えてpHが7.0になるまで中和し、超純水で濃度40%になるように調整することにより、アニオン性界面活性剤であるポリアクリル酸DBU塩(D1−2)の40%水溶液を得た。なお、(D1−2)のMwは10,000であった。
【0074】
[製造例3]
温度調節及び還流が可能な攪拌付き反応容器にエチレンジクロライド100部を仕込み、攪拌下、窒素置換した後に90℃まで昇温し、エチレンジクロライドを還流させた。スチレン120部と、予め2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.7部をエチレンジクロライド20部に溶かした開始剤溶液を、それぞれ別々に6時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後更に1時間重合を行った。
重合後、窒素シール下で20℃に冷却した後、温度を20℃にコントロールしながら無水硫酸105部を10時間かけて滴下し、滴下終了後更に3時間スルホン化反応させた。反応後、溶媒を留去し固化させた後、超純水345部を投入して溶解し、ポリスチレンスルホン酸水溶液を得た。
得られたポリスチレンスルホン酸水溶液に25%TMAH水溶液約400部を加えてpHが7.0になるまで中和し、超純水で濃度40%になるように調整することにより、アニオン性界面活性剤であるポリスチレンスルホン酸トリメチルアンモニウム塩(D1−3)の40%水溶液を得た。なお、(D1−3)のMwは、40,000、スルホン化率は97%であった。
【0075】
[製造例4]
撹拌および温度調節機能の付いたステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール186部(1.0モル)、水酸化カリウム0.5部を投入し、混合系内を窒素で置換した後、減圧下で、120℃にて1時間脱水を行った。次いでエチレンオキサイド88部(2.0モル)を150℃にて、ゲージ圧が0.1〜0.3MPaとなるように10時間かけて導入した。反応物をガラス容器に移し、温度を20℃に保ちながら、クロルスルホン酸120部(1.03モル)を徐々に滴下し、2時間脱塩酸を行った後、水酸化ナトリウム41.2部(1.03モル)を水1110部に溶解した水溶液で硫酸化物を中和し、ラウリルアルコールエチレンオキシド2モル付加物の硫酸エステルナトリウム塩(D1−4)の25%水溶液を得た。
【0076】
[製造例5]
撹拌装置及び温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコールを200部(1.1モル)、25%TMAH水溶液を10部(0.027モル)を仕込み、100℃、4kPa以下の減圧下で30分間脱水した。EO430部(9.8モル)を、反応温度を100℃に制御しながら、3時間かけて滴下した後、100℃で3時間熟成した。さらに、2.6kPa以下の減圧下に、150℃で2時間撹拌して、残存するTMAHを分解して除去し、非イオン性界面活性剤であるラウリルアルコールEO9モル付加物(D2−1)630部を得た。
【0077】
[製造例6]
撹拌装置及び温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアミンを185部(1.0モル)、25%TMAH水溶液を3.6部(0.01モル)を仕込み、100℃、4kPa以下の減圧下で30分間脱水した。EO264部(6.0モル)を、反応温度を100℃に制御しながら、3時間かけて滴下した後、100℃で3時間熟成した。
さらに、2.6kPa以下の減圧下、150℃で2時間撹拌して、残存するTMAHを分解して除去し、非イオン性界面活性剤であるラウリルアミンEO6モル付加物(D2−2)445部を得た。
【0078】
実施例1〜15及び比較例1〜12
表1と表2に記載の配合部数の各配合成分を、超純水、オキシカルボン酸(A)、キレート剤(B)、pH調整剤(E)、その他の添加剤、界面活性剤(D)、アルカノールアミン(C)の順で均一撹拌・混合して実施例1〜15及び比較例1〜12の洗浄剤を作製した。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
なお、表1、2中のキレート剤(B)、アルカノールアミン(C)、アルカリ成分(E)の略号とそのキレート安定度定数の対数値は下記の通りである。
(B−1):1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)[キレート安定度定数の対数値9.8]
(B−2):エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)[18.9]
(B−3):ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)[21.5]
(B−4):ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)[7.5]
(B’−1):N,N'-ビス(2-ヒドロキシベンジリデン)エチレンジアミン(サレン)[10以上]
(B’−2)酢酸[6.0]
(C−1):モノエタノールアミン(MEA)
(C−2):ジエタノールアミン(DEA)
(C−3):イソプロパノールアミン(MIPA)
(E−3):テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド(TMAH)
【0082】
得られた洗浄剤の内、実施例1〜7および比較例1〜6の洗浄剤は超純水で50倍希釈して性能評価のための洗浄液とし、以下の方法で、pH、水酸化鉄再析出防止性(洗浄性−1)、シリカ洗浄性(洗浄性−2)、アルミナの洗浄性(洗浄性−3)、NiP基板のエッチング性[Niイオン含量(ppb)]を評価した。
その結果を表1に示す。
また、実施例8〜15および比較例7〜12の洗浄剤は、超純水で20倍希釈して性能評価のための洗浄液とし、以下の方法で、pH、水酸化鉄再析出防止性(洗浄性−4)、シリカ洗浄性(洗浄性−5)、酸化セリウムの洗浄性(洗浄性−6)、ガラス基板のエッチング性[Si含量(ppb)]を評価した。
その結果を表2に示す。
【0083】
<pHの測定方法>
洗浄液のpHを25℃でpHメーター(東亜ディーケーケー社製HM−30R)で測定した。
【0084】
<水酸化第二鉄の再析出防止性(洗浄性−1)の評価方法>
硫酸第一鉄・一水和物3.0gをイオン交換水17gで溶解させ、5%Fe(II)イオン水溶液を作成し、25℃に保持した。
実施例1〜7および比較例1〜6の洗浄液100gに上記の5%Fe(II)イオン水溶液を撹拌しながら80mg添加した。Fe(II)イオン水溶液を添加する前のpHになるように水酸化ナトリウム水溶液で調製した後、25℃で1時間静置し、液の外観を観察した。1時間静置後、混合液を観察し、固形物の析出がないか目視で確認した。固形物が析出する場合は沈殿が見られる。
固形物の析出がない場合は、80mgの5%Fe(II)イオン水溶液を追加し1時間静置後に同様に観察した。固形物の析出が見られるまで上記操作を繰り返し、固形物の析出が見られた重量(mg)を、再析出防止性として下記評価基準で評価した。
[水酸化第二鉄の再析出防止性の評価基準]
4:320mg添加で析出あり
3:240mg添加で析出あり
2:160mg添加で析出あり
1:80mg添加で析出あり
【0085】
<シリカの洗浄性(洗浄性−2)の評価方法>
研磨剤として市販のコロイダルシリカスラリー(粒径約30nm)100部及び発泡ウレタン製の研磨シートを用いて、3.5インチのNi−Pメッキされた磁気ディスク用基板を研磨した。超純水で表面をすすぎ、窒素でブローして乾燥させることにより、試験用の汚染基板を作製した。
【0086】
実施例1〜7および比較例1〜6の洗浄液1,000gを1Lガラス製ビーカーにとり、作製した汚染基板を浸漬し、超音波洗浄機(200kHz)内で、30℃、5分間洗浄を行った。洗浄後、基板を取り出し、超純水で再び1分間リンスを行った後、窒素ガスでブローして乾燥し、アルミ基板表面を表面検査装置(ビジョンサイテック社製「Micro−Max VMX−6100」)で観察し、パーティクル付着数を数えた。
また、洗浄液の代わりにブランクとして超純水で同様に試験した。
その際のブランクのパーティクル付着数は350個であった。
以下の評価基準で洗浄性試験を評価し、評価結果を表1に示した。
なお、本評価は大気からの汚染を防ぐため、クラス1,000(HED−STD−209D、米国連邦規格、1988年)のクリーンルーム内で実施した。
【0087】
[洗浄性試験の評価基準]
5:パーティクル付着数がブランクの1/100未満
4:パーティクル付着数がブランクの1/100〜1/20
3:パーティクル付着数がブランクの1/20〜1/5
2:パーティクル付着数がブランクの1/5〜1/2
1:パーティクル付着数がブランクの1/2以上
【0088】
<アルミナの洗浄性(洗浄性−3)の評価方法>
洗浄性−2の評価方法において、研磨剤としてコロイダルシリカスラリーを市販のアルミナスラリー(フジミインコーポレーティド社製、CEPOL−120)に変更した以外は洗浄性−2と同様にして評価した。
【0089】
<NiP基板のエッチング性>
50mlのポリプロピレン製容器に実施例1〜7および比較例1〜6の洗浄液10gをとり、23℃に温調した後、NiP(ニッケルリンめっき)基板を入れ、20分静置した。試験溶液を2ml採取し、ICP発光分析装置(VARIAN社製、Varian730−ES)で洗浄剤中のNiイオン含量を測定した。
なお、予め試験前の洗浄液についても同様にNiイオン含量を測定しておき、その差を求めることで試験溶液中に溶出したNiイオン含量(ppb)を求めた。この溶出したNiイオン含量が多いほど、エッチング性は高い。
【0090】
<水酸化第二鉄の再析出防止性(洗浄性−4)の評価方法>
洗浄性−1の評価方法において、洗浄液を実施例8〜15および比較例7〜12の洗浄液に変更した以外は洗浄性−1と同様にして評価した。
判定基準も洗浄性−1と同様である。
【0091】
<シリカの洗浄性(洗浄性−5)の評価方法>
洗浄性−2の評価方法において、基板を3.5インチのNi−Pメッキされた磁気ディスク基板を2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板に変更し洗浄液を実施例8〜15および比較例7〜12の洗浄液に変更した以外は洗浄性−2と同様にして評価した。
<酸化セリウムの洗浄性(洗浄性−6)の評価方法>
洗浄性−5の評価方法において、研磨剤としてコロイダルシリカスラリーを市販の酸化セリウム(フジミインコーポレーティド社製、CEPOL−120)に変更し洗浄液を実施例8〜15および比較例7〜12の洗浄液に変更した以外は洗浄性−5と同様にして評価した。
【0092】
<ガラス基板のエッチング性>
50mlのポリプロピレン製容器に実施例8〜15および比較例7〜12の洗浄液10gをとり、23℃に温調した後、ガラス基板を入れ、20分静置した。試験溶液を2ml採取し、ICP発光分析装置(VARIAN社製、Varian730−ES)で洗浄剤中のSiイオン含量を測定した。
なお、予め試験前の洗浄液についても同様にSiイオン含量を測定しておき、その差を求めることで試験溶液中に溶出したSiイオン含量(ppb)を求めた。この溶出したSiイオン含量が多いほど、エッチング性は高い。
【0093】
表1、2で明らかなように、本発明のオキシカルボン酸(A)、キレート剤(B)及びアルカノールアミン(C)を含有する実施例1〜15はいずれも、装置から溶出する金属イオン等に由来するパーティクルの洗浄性が優れていることがわかる。
一方、オキシカルボン酸(A)、キレート剤(B)、及びアルカノールアミン(C)を併用しない比較例1、2、4〜8、10〜12は、装置から溶出する金属イオン等に由来するパーティクルの再析出防止性が十分でない。
またpH6.0における三価の鉄イオンに対する安定度定数の対数値が7.0よりも小さい比較例3、9は鉄イオン由来パーティクルの洗浄性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の洗浄剤は、磁気ディスク基板上のパーティクルの洗浄性に優れているため、磁気ディスク基板(アルミ基板及びガラス基板等)を製造する工程の洗浄剤として有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシカルボン酸(A)、pH6.0における三価の鉄イオンに対するキレート安定度定数の対数値が7.0以上であって該オキシカルボン酸(A)以外のキレート剤(B)、及びアルカノールアミン(C)を必須成分として含有することを特徴とする磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項2】
キレート剤(B)とアルカノールアミン(C)との当量比[B]/[C]が0.1〜5である請求項1記載の磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項3】
更に、アニオン性界面活性剤(D1)及び/又は非イオン性界面活性剤(D2)を含有する請求項1又は2記載の磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項4】
該アニオン性界面活性剤(D1)が高分子型アニオン性界面活性剤(D11)である請求項3記載の磁気ディスク基板用洗浄剤。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の磁気ディスク基板用洗浄剤を用いて洗浄した磁気ディスク基板。

【公開番号】特開2011−227984(P2011−227984A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78612(P2011−78612)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】