説明

磁気ディスク装置及び情報再生方法

【課題】磁気ディスクの記録密度の向上を容易にしつつ、記録された情報の再生を高速にすることのできる磁気ディスク装置、及び、情報再生方法を提供すること。
【解決手段】複数のトラックがスパイラルの周毎に配置された複数のゾーンと、複数の前記ゾーンの間に設けられ、前記トラックの幅の所定数倍より大きい幅の前記記録ビットを有しない領域であるギャップと、を有する磁気ディスクと、前記記録ビットに記録された情報を読み出す際に、一の前記ゾーンにおいて、一以上前記所定数に一加算した数以下のトラックがそれぞれ有する記録ビットに対して同時にアクセスする再生素子と、を有する磁気ディスク装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置及び情報再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理技術の急速な発展に伴い、磁気ディスク装置における記憶媒体の記録密度の向上や、記憶媒体への記録速度の向上がますます求められている。例えば、記録密度の向上を目的としたヘッドの高精度位置決めのための制御技術や、記録ビットサイズの縮小に伴う熱揺らぎ問題を解決するためのビットパターンドメディア技術が研究されている。
【0003】
記憶媒体への記録速度を向上させる技術として、例えば、特開平10−233063号公報(特許文献1参照。)には、回転中心に対し同心円状又は螺旋状に配置された複数本のトラックからなる複数のゾーンを設け、ゾーン毎に代替トラックを設ける磁気記録媒体の技術が開示されている。これにより、不良セクタが発生した場合でも、データのアクセスに時間を要しない磁気ディスクを提供することができる。
【0004】
また例えば、特開2007−73116号公報(特許文献2参照。)には、パターンドメディアにおける記録密度を高めるために、記録磁気ヘッドのコア幅をトラック幅よりも大きくし、磁気ヘッドをトラック幅方向にトラックピッチの幅だけずらしながら記録する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−233063号公報
【特許文献2】特開2007−73116号公報
【特許文献3】特開2006−48920号公報
【特許文献4】特開2007−128572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示の技術では、複数のトラックにまたがるアクセスにより、記録ビットから情報を再生することについては考慮されていない。磁気ヘッドによる再生素子の幅が1のトラックの幅より大きい場合には、一のアクセスにより取得される値は、複数の記録ビットに記録されている値をあわせたものとなる。そこで、取得した値から、個々の記録ビットに記録されている値を導出する処理が必要となる。この処理を高速に実現するために、磁気ディスク上の記録ビットを好適に配置するという課題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みて、これらの問題を解消するために発明されたものであり、磁気ディスクの記録密度の向上を容易にしつつ、記録された情報の再生を高速にすることのできる磁気ディスク装置、及び、情報再生方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の磁気ディスク装置は次の如き構成を採用した。
本発明の磁気ディスク装置は、複数のトラックがスパイラルの周毎に配置された複数のゾーンと、複数の前記ゾーンの間に設けられ、前記トラックの幅の所定数倍より大きい幅の前記記録ビットを有しない領域であるギャップと、を有する磁気ディスクと、前記記録ビットに記録された情報を読み出す際に、一の前記ゾーンにおいて、1以上前記所定数に1加算した数以下のトラックがそれぞれ有する記録ビットに対して同時にアクセスする再生素子と、を有する構成とすることができる。
【0009】
なお、上記課題を解決するため、本発明は、上記磁気ディスク装置における情報再生方法としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の磁気ディスク装置及び情報再生方法によれば、磁気ディスクの記録密度の向上を容易にしつつ、記録された情報の再生を高速にすることのできる磁気ディスク装置、及び、情報再生方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本実施の形態の説明に先んじて、磁気ディスク装置の記録密度の向上と情報転送速度の低下について説明する。
【0012】
磁気ディスク装置の記録密度を向上させるためには、BPI(Bit Per Inch)とTPI(Track Per Inch)の両方を高める必要がある。現行の磁気ディスク装置では、BPIとTPIの比であるBAR(Bit Aspect Ratio)は10:1程度であり、BPI方向の方がより密度が高い。しかし、1Tbpsi級の記録密度達成のために必須となるBPM(Bit Patterned Media)を採用した場合、メディアの構造に起因する理由から、BARが4:1程度になるまでTPIを高める必要があると言われている。
【0013】
TPIを高めるためには、ヘッドの位置決め精度を向上させなければならないだけでなく、記録・再生に用いるヘッド素子の幅自体を小さくしなければならない。このため、位置決め精度向上とヘッド幅削減との間でトレードオフが生じることになる。更に、BPIに対して相対的にTPIが高くなるということは、シーケンシャルリード/ライト時に、隣接トラックシークが発生する回数が増加するということを意味する。これにより、磁気ディスク装置の情報転送速度の相対的な低下が懸念される。
以下、本実施の形態を図面に基づき説明する。
【0014】
〔実施の形態〕
本実施の形態に係る磁気ディスク装置の構成、及びデータアクセス手法について述べる。本実施の形態に係る磁気ディスク装置は、NANDフラッシュなどの不揮発性メモリを具備した、ハイブリッド方式の磁気ディスク装置である。不揮発性メモリの容量は、磁気ディスクが有するゾーン1個あたりの記憶容量よりも大きな容量(数倍〜数10倍程度)となっているのが特徴である。
【0015】
不揮発性メモリは、例えば、NAND型フラッシュメモリ、ReRAM(Resistance Random Access Memory)、PRAM(Phase change RAM)、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、又は、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)である。
【0016】
本実施の形態に係る磁気ディスク装置が有する不揮発性メモリは、磁気ディスクドライブの部分に対するキャッシュの機能を実現する。サイズの小さなファイルや、頻繁なアクセスを要求されるファイルは、この不揮発性メモリに格納された後、磁気ディスク装置の外部から読み書きが行われる。一方、動画などの大容量ファイルは、磁気ディスク装置に対してダイレクトに読み書きされる。更に、不揮発性メモリ内にアクセス頻度の低いファイルがある程度の容量溜まった場合には、それらのファイルがまとめて磁気ディスクに書き込まれる。
【0017】
図1は、本実施形態に係る磁気ディスク装置の機能構成を示すブロック図である。図1の磁気ディスク装置100は、CPU10、メインメモリ20、情報取得部30、メモリ部80、及び、ハードディスク部90を有する。CPU10は、例えば、メインメモリ20等に展開されたプログラムを実行することにより、磁気ディスク装置100が有する各デバイスの制御を行う。
【0018】
メインメモリ20は、ハードディスク部90とメモリ部80との間で転送されるデータが一時的に格納される。メインメモリ20は、また、CPU10が実行するプログラムが格納されてもよい。情報取得部30は、ハードディスク部90から読み出された信号の値に基づいて、磁気ディスクが有する記録ビット毎のデータを取得する。
【0019】
メモリ部80は、不揮発性メモリ81、不揮発性メモリインタフェース部82、及び、不揮発性メモリコントローラ83を有する。不揮発性メモリ81は、磁気ディスクから読み出されたデータを格納する。不揮発性メモリ81の記録容量は、磁気ディスクから読み出されるデータの量に対応し、磁気ディスクが有する「ゾーン」1個分のデータより大きな記憶容量を有する。
【0020】
不揮発性メモリインタフェース部82は、不揮発性メモリ81に対して不揮発性メモリコントローラ83がアクセスする際のインタフェースである。不揮発性メモリコントローラ83は、不揮発性メモリ81に記録されたデータを読み出し、また、不揮発性メモリ81に対してデータを記録させる。
【0021】
ハードディスク部90は、ハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)91、HDDインタフェース部92、及び、HDDコントローラ93を有する。HDD91は、本実施形態に係る磁気ディスク、その磁気ディスク上の記録ビットから信号値を取得する磁気ヘッド、及び、磁気ディスクと磁気ヘッドとを駆動させる駆動部を有する。
【0022】
HDDインタフェース部92は、HDDコントローラ93がHDD91に対してアクセスする際のインタフェースである。HDDコントローラ93は、HDD91に記録されたデータを読み出し、また、HDD91に対してデータを記録させる。
【0023】
図2は、本実施形態に係る磁気ディスク装置が有する磁気ディスク1のフォーマット構成を示す図である。図2(a)の磁気ディスク1は、ディスク面上の記録可能領域が、一定容量毎のゾーン3に分割されている。ゾーン毎の一定容量は、例えば、数GB程度である。ゾーンとゾーンの間は、データが書いていない部分によって隔てられている。データが書かれない部分を「ギャップ」という。各ゾーン内の記録ビットは、ディスク外周から内周方向に一本のスパイラル状に繋がる複数のトラックに含まれている。従って、一度もシーク動作を行うことなく、各ゾーン内の全てのデータを連続して読み出し又は書き込みすることができる。
【0024】
図2(b)は、ゾーンの一部の詳細なフォーマットを説明する図である。トラック5aから5cは、磁気ディスク1の外周に沿う疑似同心円であり、複数のトラックがスパイラル状に連なる。より詳細には、スパイラルの周毎に、一のトラックが対応づけられる。これにより、記録ビット2が、最外周から最内周にむけて配置される。
【0025】
データへのアクセスのために必要なインデックス信号は、各ゾーンを構成するトラック毎にトラックの先頭部分に存在している。このため、データのアクセスは必ずゾーン単位で行われることになり、従来の磁気ディスクのようなシリンダごとのランダムアクセスは不可能である。
【0026】
図2の磁気ディスク1のフォーマット構成によれば、ゾーン1個の中のデータを読み書きする際にシーク動作は全く発生しない。そこで、連続した大容量ファイルをまとめて記録又は再生する場合のアクセス速度は、従来の磁気ディスク装置よりも遥かに高速になる。
【0027】
本実施の形態に係る磁気ディスク装置は、例えば、1Tbpsi以上という超高記録密度の磁気ディスク装置である。このような超高記録密度の磁気ディスク装置の場合、2.5"ドライブで1TB以上という大容量となる。
【0028】
そこで、数GB〜数10GBのフラッシュメモリを内蔵したハードディスク装置を供給することにより、ランダムアクセス性よりも、数GBを超える大容量な動画データ、アーカイブデータ等を高速に記録・再生できる。
【0029】
また、BPMの作成に用いられるファザースタンパを電子ビーム描画にて作成する際、同心円状の記録ビットのパターンを描画しようとすると、ステージ送り精度の誤差などにより、トラックの書きはじめと書き終わりが重ならない等の技術的困難が発生することがある。そこで、複数のトラックをスパイラル状に配置することで、このような描画時の困難をなくすというメリットも存在する。
【0030】
図3は、本実施形態における磁気ディスク装置のデータ読み出しアルゴリズムを説明する図である。従来の磁気ディスク装置が有する磁気ヘッドのリード素子の幅は、トラック幅と同等又はトラック幅より狭い。これにより、1つのトラックに書かれた情報のみを読み出すことができ、隣接トラックに記録された情報をノイズとして拾うことを防止している。
【0031】
本実施の形態に係る磁気ディスク装置は、磁気ヘッドのリード素子の幅が、トラックの幅の所定数倍である。これにより、複数のトラックにまたがって複数の記録ビットの情報を同時に読み出すことができる。図3の例では、リード素子の幅が、トラック幅の3倍となっており、同時に読み出す記録ビットの数は3個である。
【0032】
図3の(A)では、ゾーンの先頭部分に当たる、最外周のトラック5aに書かれた情報のみを、リード素子の縁の部分で読み出す。この際、リード素子の反対側の縁が1つ外周にあるゾーンに書かれた情報を拾ってしまわないように、ゾーンとゾーンの間のギャップの幅は、リード素子の幅から一のトラックの幅を減じた幅よりも広くなっている。
【0033】
ゾーン内のトラックはスパイラル状に繋がっている。そこで、(A)の位置からデータを読み進めていた磁気ヘッドは、磁気ディスクを1周以上した後に(B)の位置に来る。(B)の位置では、磁気ヘッドが最外周のトラックの情報と、最外周から1つ内側に入ったトラック5bの情報とをまとめて読み出す。1つのヘッドで2つの記録ビットのデータを同時に読んだ場合、この2つのデータに対応する信号値の和が出力される。そこで、本実施形態の磁気ディスク装置では、情報取得部30が、(A)と同様にして読み出した最外周のトラック5aのデータを、(B)の位置で読みした信号値から差し引くことにより、(B)の位置の最外周から2番目の周の記録ビットにおけるデータを取り出すことが出来る。
【0034】
磁気ヘッドがさらに記録ビット毎に移動することにより、3周目のトラック5cに進み、(C)の位置に来る。(C)の位置では、磁気ヘッドが3つの周における3つの記録ビットのデータを同時に読み出す。(C)の位置で読み出された信号の値から、既に取得した外側2周分のデータを差し引くことで、3周目のデータを抽出することができる。
【0035】
なお、図3では、説明を容易にするために(A)ないし(C)の位置において、読み出される記録ビットが互いに全て異なる図を示している。本実施の形態では、(A)の位置において取得された信号の値を、(A)の位置から1周だけ内周側のトラックの記録ビットを含む位置(A2)において取得された信号の値から差し引くことにより、2周目のトラック5bにおける記録ビット2bに対応するデータを取得する。
【0036】
また、本実施の形態では、(A2)の位置から1周だけ内周側の記録ビットを含む位置(A3)において取得された信号の値から、記録ビット2a及び記録ビット2bに対応する値を差し引くことにより、3周目のトラック5cにおける記録ビット2cに対応するデータを取得する。
【0037】
以上詳述したように、複数のトラックのそれぞれが有する記録ビットに対する一のアクセスにより得られる信号値に基づいて、隣接するトラックの記録ビットを含むアクセスにより得られる信号値を差し引くことにより、一の記録ビットに記録されている信号値を取得する。これにより、その信号値による情報を取得することができる。さらに、その信号値を誤り訂正するとよい。
【0038】
なお、図3に示すデータの抽出方法は、「ひとつのゾーン内のデータを、必ず一度に全部、最外周から順に読んでいく」という本実施形態によるデータアクセス方法により可能となる。
【0039】
なお、図3の例ではトラックにより構成されるスパイラルがディスクの外周から内周に向けて配置されている。そこで、図3の場合には、各ゾーンにおける最外周からの順次読み出しとなる。図3とは逆に、スパイラルを内周から外周に向けて配置し、各ゾーンの最内周から順次読み出していく構成でもよい。
【0040】
図4は、本実施形態に係る磁気ディスク装置100が有する磁気ヘッドのリード素子4の再生感度分布を示す図である。図4では、リード素子4の中央部が最も再生感度が高く、リード素子4の端部に近づくにつれて再生感度が低下する。本実施の形態では、3つの記録ビットに対して同時にアクセスする。そこで、それぞれの記録ビットに対応する位置の再生感度を、内周側から順に、α、β、及び、γとする。
【0041】
図3及び図4の例に基づいて、情報取得部30が、磁気ヘッドにより読み取られた信号から、読み取り済みトラックのデータの影響を差し引く処理の詳細を以下に述べる。図3及び図4では、再生ヘッドが互いに周の異なる3つの記録ビットの情報を同時に読み出せる幅を有している。
【0042】
図3(1)の位置で、最外周のトラック5aに書かれた情報s1を読み出すことによって得られる信号r1とs1との関係は、次式(1)で表される。

r1=α×s1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

よって、次式(2)により、情報s1を算出することができる。

s1=r1/α・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
【0043】
次に、図3(1b)の位置で、最外周のトラック5aの情報s1、及び最外周のトラック5aから、1本内側のトラック5bに書かれた情報s2を同時に読み出す場合、得られる信号r2は、次式(3)で表される。

r2=α×s2+β×s1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)

よって、次式(4)により、情報s2を算出することができる。

s2=(r2−β×s1)/α=(r2−β×r1/α)/α・・・(4)
【0044】
なお、r1は読み出し時に再生ヘッドが検出した生の信号であるため、検出時に生じたノイズ成分を含んでいる。そのため、式(4)においてs2の算出にr1を用いた場合、ノイズの影響が増大する危険性がある。
【0045】
そこで、式(2)によって得られた信号s1を一旦復号してデータ列化し、それを再変調することによって得られた信号s1´を用いる次式(5)により、再生時のノイズの影響を減じることができる。

s2=(r2−β×s1´)/α・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
【0046】
s1´はノイズ成分を含まない理想化された信号であるため、式(4)によるs2よりも、式(5)によるs2の方が、再生時のノイズの影響を減じることができる。
【0047】
同様に、図3の(1c)の位置において、トラックの最外周から2本内側の周に書かれた情報s3までをまとめて読み出す際に得られる信号は、次式(6)で表される。

r3=α×s3+β×s2+γ×s1・・・・・・・・・・・・・・(6)

したがって、最外周から3本内側のトラック5cに書かれた情報s3は、次式(7)により得られる。
【0048】
s3=(r3−β×s2−γ×s1)/α=(r3−β(r2−β×r1/α)/α−γ×r1/α)/α・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)

また、式(5)と同様に、信号s2を復号、再変調した信号s2´を用いる次式(8)により、再生時のノイズの影響を減じることができる。

s3=(r3−β×s2´−γ×s1´)/α・・・・・・・・・・(8)
【0049】
最外周から3本内側の周より内側の周については、式(7)又は式(8)に、直近の2周の既知信号を代入することで、同時にアクセスした記録ビットのうち、最も内側に位置する記録ビットの信号を算出することができる。
【0050】
以上の実施の形態では、磁気ヘッドが3つのトラックにまたがる信号を同時に読み出す例について説明した。本発明の実施の形態は、この例に限らず、同時に読み出す記録ビットが何個であっても、同様のアルゴリズムにより記録ビット毎の信号を分離することができる。
【0051】
図5は、ゾーンにおけるトラックを区別するSyncパターンを説明する図である。図5では、ディスク上の同一半径方向に位相を揃える形でSyncパターン7を配置し、この部分をトラックとトラックとの区切りと定義している。これにより、上述したアルゴリズムを用いる際に、スパイラル状に繋がった複数のトラックを同心円状に個々のトラックに区分し、それぞれの開始点と終了点とを明確にすることができる。
【0052】
冒頭で述べたように、TPI向上を目指す上で、記録・再生に用いるヘッド素子の幅の縮小と、ヘッドの位置決め精度向上の二者は、トレードオフの関係にある。ヘッドの幅を複数のトラックにまたがる幅まで広げることにより、位置決め精度を緩和することができ、記録密度を容易に向上させることができる。
【0053】
なお、磁気ヘッドの位置決めするためのサーボ方式については、セクタサーボを用いてもよい。サーボ方式は、また、トラックがスパイラル状になっているために、特許文献3に記載の連続サーボ方式を用いてもよい。
【0054】
一方、記録ビットのトラックがスパイラル状である磁気ディスク装置において、アイドル時にヘッドをトラックに追従させると、トラックに沿って磁気ヘッドが内側にシフトする。これを防止するために、スパイラル状に配置されたサーボ信号を読み込みつつ、ヘッドをディスクの同心円上に停留させる必要がある。そこで、特許文献4に記載の技術を用いてこれを実現してもよい。
【0055】
以上、発明を実施するための最良の形態について説明を行ったが、本発明は、この最良の形態で述べた実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施形態に係る磁気ディスク装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】磁気ディスク1のフォーマット構成を示す図である。
【図3】磁気ディスク装置のデータ読み出しアルゴリズムを説明する図である。
【図4】磁気ヘッドのリード素子4の再生感度分布を示す図である。
【図5】トラックを区別するSyncパターンを説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
1 磁気ディスク
2 記録ビット
2a 記録ビット
2b 記録ビット
2c 記録ビット
3 ゾーン
4 リード素子
5a トラック
5b トラック
5c トラック
7 Syncパターン
20 メインメモリ
30 情報取得部
80 メモリ部
81 不揮発性メモリ
82 不揮発性メモリインタフェース部
83 不揮発性メモリコントローラ
90 ハードディスク部
91 HDD
92 HDDインタフェース部
93 HDDコントローラ
100 磁気ディスク装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトラックがスパイラルの周毎に配置された複数のゾーンと、
複数の前記ゾーンの間に設けられ、前記トラックの幅の所定数倍より大きい幅の前記記録ビットを有しない領域であるギャップと、
を有する磁気ディスクと、
前記記録ビットに記録された情報を読み出す際に、一の前記ゾーンにおいて、1以上前記所定数に1加算した数以下のトラックがそれぞれ有する記録ビットに対して同時にアクセスする再生素子と、
を有する磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記トラックが当該磁気ディスクの外周側から内周側にむけてスパイラル状に配置されている場合に、
前記再生素子は、一の前記ゾーンにおける最外周のトラックから順に前記磁気ディスクの内周側にアクセスする請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記トラックが当該磁気ディスクの内周側から外周側にむけてスパイラル状に配置されている場合に、
前記再生素子は、一の前記ゾーンにおける最内周のトラックから順に前記磁気ディスクの外周側にアクセスする請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
一のゾーンにおける最外周のトラックの記録ビットのみに対して前記再生素子がアクセスすることにより取得する値と、前記最外周のトラックの記録ビットと最外周から2番目のトラックの記録ビットとに対して前記再生素子がアクセスすることにより取得する値と、の差を求めることにより、前記最外周から2番目のトラックの記録ビットに記録された情報を取得する情報取得部を有する請求項2記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
一のゾーンにおける最内周のトラックの記録ビットのみに対して前記再生素子がアクセスすることにより取得する値と、前記最内周のトラックの記録ビットと最内周から2番目のトラックの記録ビットとに対して前記再生素子がアクセスすることにより取得する値と、の差を求めることにより、前記最内周から2番目のトラックの記録ビットに記録された情報を取得する情報取得部を有する請求項3記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
複数のトラックがそれぞれ有する記録ビットに対して前記再生素子が一のアクセスをすることにより得る値を第一アクセス値とし、前記複数のトラックがそれぞれ有する記録ビットのうちの一以上の記録ビットを含み、かつ、前記複数のトラックに隣接するトラックの記録ビットを含む複数の記録ビットに対して前記再生素子がアクセスすることにより得る値を隣接アクセス値とし、
前記情報取得部は、前記第一アクセス値と前記隣接アクセス値との差を求めることにより、前記複数のトラックに隣接するトラックの記録ビットに記録された情報を取得する請求項4又は5記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記第一アクセス値は、前記再生素子が得る信号値を誤り訂正した値である請求項6記載の磁気ディスク装置。
【請求項8】
前記再生素子及び前記情報取得部に対し、一の前記ゾーン毎に、該ゾーンに含まれる全ての記録ビットに記録された情報を連続して取得させる制御を行う制御手段を有する請求項4ないし7何れか一項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項9】
一の前記ゾーンに含まれる全ての記録ビットに記録された情報を格納する不揮発性メモリに対するインタフェースを有する請求項1ないし8何れか一項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項10】
複数のトラックがスパイラルの周毎に配置された複数のゾーンと、複数の前記ゾーンの間に設けられ、前記トラックの幅の所定数倍より大きい幅の前記記録ビットを有しない領域であるギャップと、を有する磁気ディスクにおける情報再生方法であって、
前記記録ビットに記録された情報を読み出す際に、一の前記ゾーンにおいて、1以上前記所定数に1加算した数以下のトラックがそれぞれ有する記録ビットに対して同時にアクセスするアクセスステップを有する情報再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−80004(P2010−80004A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248461(P2008−248461)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】