説明

磁気バイオセンサ装置用の混合アクチュエーションプロトコル

本発明は、テストされるべきアッセイを受け取るセンサカートリッジと、センサカートリッジのセンサ表面に磁界を生成する電磁ユニットと、センサ表面の近傍の磁性粒子の存在を検出する検出手段と、を有する磁気バイオセンサ装置を提供する。電磁ユニットは、少なくとも第1及び第2の磁界強度をもつ磁界を周期的に生成するように適応され、第1及び第2の磁界強度を印加する期間の時間量に対する第1の磁界強度を印加する時間量の比率は、測定中、変えられる。本発明は、更に、磁気バイオセンサ装置のセンサ表面に磁界を印加する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気バイオセンサ装置に関し、特に、バイオセンサ装置のセンサ表面に向かう磁性粒子のアクチュエーションに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサの需要は、最近ますます増加している。通常、バイオセンサは、アナライト内の所与の特異的分子の検出を可能にし、前記ターゲット分子の量又は濃度は一般に小さい。例えば、唾液又は血液中の薬剤又は心臓マーカの量が、測定されることができる。乱用薬物は、概して、1つのエピトープのみを備える小分子であり、この理由のため、例えばサンドイッチアッセイによっては検出されることができない。競合又は抑制アッセイが、これらの分子を検出するための好適な方法である。良く知られている競合アッセイ装置は、表面上に関心のあるターゲット分子を結合させ、酵素、蛍光体又は磁気ビーズでありうる標識又は検出タグに抗体をリンクさせることができる。このシステムは、タグ付けされた抗体を使用して、サンプルからのターゲット分子と表面上のターゲット分子との間の競合アッセイを実施するために使用される。ロードサイドテストのために、アッセイは、高速且つロバストでなければならない。
【0003】
磁気標識バイオセンサにおいて、薬剤又は心臓マーカのような特定の生化学的作用物の存在を測定することは、磁性粒子又は磁気ビーズによる分子の捕獲及び標識化に基づく。アクチュエーションとも呼ばれるビーズの磁気引力が、ポイントオブケアアプリケーションのためのバイオセンサの性能、すなわちスピード、を増大させるために重要である。磁気引力の方向は、実際の測定が行われる表面に向かう方向又はこの表面から離れる方向である。前者の場合、磁気アクチュエーションは、センサ表面付近の磁性粒子の濃度の増大を与え、感受性表面における磁性粒子の結合プロセスの速度を上げる。第2のケースでは、粒子は、表面から除去され、これは、磁気洗浄と呼ばれる。磁気洗浄は、従来のウェット洗浄ステップと置き換わることができる。これは、より正確であり、動作アクションの数を減らす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
漏れ内部全反射(Frustrated Total Internal Reflection、FTIR)に基づくバイオセンサ装置のような磁気バイオセンサ装置の一般的な構成において、磁気ビーズが、センサカートリッジのセンサチャンバに配置される。センサチャンバ内のセンサ表面の少なくとも一部は、ターゲット分子の検出の準備ができている。テストを実施するために、カートリッジは、センサ表面に磁界を生成する磁気ユニットと、センサ表面付近の磁気ビーズの存在を検出する検出手段と、を有するリーダ内に配置される。カートリッジに挿入される液体中のターゲット分子の反応スピードを増大させるために、カートリッジがリーダ内に置かれると、カートリッジの下に配置された磁気ユニットが、ビーズをセンサ表面の方へ引っ張るために磁界を生成する。
【0005】
磁気引力のため、バイオセンサ装置のセンサ表面付近の磁気ビーズの数が増大し、センサ信号が、時間とともに増加する。粒子を表面に引き寄せるために、いわゆるパルス化された磁気引力スケジュールが、使用されることができる。このようなスキームにおいて、磁界は、例えば国際公開第2008/102218A1号明細書に記載されるように、周期的にオン/オフを切り替えられる。磁界がオンのとき、ビーズは、表面近傍の領域に向かって引き寄せられる。磁界がオフに切り替えられると、ビーズは、それらの最初の位置に依存して、表面に向かって又は表面から離れる方へ拡散する。概して、測定中、このようなパルス化された引力スキームの間、引力磁石の中心付近の信号は、磁石の磁極先端の一方の近くの信号よりもっと速く増大することが観察される。
【0006】
速度は、磁極先端付近の位置によって支配されるので、この効果はアッセイの全体の速度を減速する。実際、この問題は、磁石の中心付近の幾つかの位置又は関心領域のみを使用することによって、回避されることができる。1種類のターゲット分子のみが測定されればよい場合、これは制約でない。しかしながら、マルチアナライトアッセイ又はマルチチャンバ構成の場合、これは制約である。
【0007】
磁気バイオセンサ装置において光学信号の全体の速度及び/又は均一性を増大させる必要がある。特に、マルチアナライトアッセイ又はマルチチャンバ構成が、なお現在のハードウェア構成を使用しながら、可能になるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、テストされるべきアッセイを受け取るセンサカートリッジと、センサカートリッジのセンサ表面に磁界を生成する電磁ユニットと、センサ表面の近傍の磁性粒子の存在を検出する検出手段と、を有する磁気バイオセンサ装置が提供される。電磁ユニットは、ビーズをセンサ表面に引き寄せるために印加されるべき少なくとも第1及び第2の磁界強度を有する磁界を生成するように適応される。第1及び第2の磁界強度を印加する全期間の時間量に対する第1の磁界強度を印加する時間量の比率は、測定中、変えられる。第2の磁界強度がゼロであり、第1の磁界強度が、ビーズをセンサ表面に引き寄せる予め決められた磁界強度に等しい場合、この比率は、デューティサイクルと呼ばれる。こうして、デューティサイクルは、測定中、規定されたやり方で変えられる。
【0009】
本発明の好適な実施態様において、第1及び第2の磁界強度を印加する期間の時間量に対する第1の磁界強度を印加する時間量の比率は、測定中、低下する。測定中の比率の変更は、測定の開始時には少なくとも1つの予め決められた比率及び測定の終了時には他の予め決められた比率を有するように、連続的に又は段階的に実施されることができる。
【0010】
好適には、測定の開始時の比率は、50%より大きく、好適には85%であり、測定の終了時の比率は、50%より小さく、好適には約15%である。
【0011】
本発明の一実施形態において、磁気バイオセンサ装置に含まれる検出手段は、内部全反射の角度でセンサ表面に光を向ける光源と、センサ表面から反射される光を検出する検出器と、を有する。すなわち、磁気バイオセンサ装置は、漏れ内部全反射の測定に基づく。
【0012】
本発明の別の例は、センサ表面に対して本質的に垂直な第1の磁界強度を生成する第1の電磁ユニットと、センサ表面と本質的に平行な第2の磁界強度を生成する第2の電磁ユニットと、を記述し、第1及び第2の電磁ユニットは、それぞれ、第1の磁界強度及び第2の磁界強度を交互に生成するように適応され、第1の磁界強度及び第2の磁界強度の生成の間には、磁界が生成されない時間期間がある。この構造は、連続的に、第2の電磁ユニットによってセンサ表面と本質的に平行な磁界強度を供給し、第1の電磁ユニットによってセンサ表面に対し本質的に垂直な磁界強度を生成する。第1及び第2の電磁ユニットが対応する磁界を生成するためにオンであるそれぞれの時間の合間の時間中は、両方の電磁ユニットがダウンしていることが有利であることがわかった。従って、時間シーケンスは、3つのステップで記述され、1つの第1ステップは、センサ表面と平行な磁界パルスであり、第2のステップは、表面に対し垂直な磁界パルスであり、第3のステップは、印加される磁界のない他のパルス持続時間より短い持続時間である。記述される3つのステップをもつ方法及び対応する装置によって、流体中に規則的に溶解される磁性粒子のランダム化及び混合の効果が達成される。
【0013】
更に、本発明は、磁気バイオセンサ装置において磁気ビーズを引き寄せる方法を提供する。
【0014】
本発明のこれらの及び他の見地は、以下に記述される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】センサ表面への連続する引き寄せの間、磁気ビーズをクラスタリングするプロセスを示す図。
【図2】磁気バイオセンサ装置のセンサ表面に一般に生成される磁界線の方向を概略的に示す図。
【図3】異なるアクチュエーションプロトコルを使用して、磁気バイオセンサ装置の磁気ユニットの中心部で記録される光学信号を示す図。
【図4】異なるアクチュエーションプロトコルを使用して、磁気バイオセンサ装置の磁気ユニットの中心部及び磁極先端で記録される信号の比率を示す図。
【図5】センサ表面に対してさまざまな異なる力方向をもつ磁気アクチュエーションを可能にするために、センサ表面、センサ表面の上方の1つの電磁ユニット、センサ表面の下方の1つの電磁ユニット、及びセンサ表面の側方の2つの電磁ユニットを有する本発明の一例を示す概略図。
【図6】バイオセンサによる光学検出の例によって取得された曲線及び曲線の降下として示される非特異的結合の最小化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
磁気バイオセンサ装置において、両方の方法が同じエネルギー量を消費する状態の下で、パルス化されたアクチュエーションプロトコルが、連続的な磁気アクチュエーションプロトコルより良好に作用する理由が、以下のように説明されることができる。
【0017】
第1の考えにおいて、連続的な磁気引力は、より大きい時間量の間、磁気ビーズが表面に向かって引き寄せられるので、パルス化されたアクチュエーションより良いことが期待される。これは、部分的にのみ当てはまる。事実、連続的な引き寄せによって、同一の時間量のうちに、以下でビーズ又は粒子とも呼ばれる磁性粒子10のより多くが、センサ表面2付近に収集される。しかしながら、試験から、表面付近で収集される粒子10のほんの一部のみが、実際に、表面に到達し結合することが可能であることが分かった。図1に示されるように、これは、磁気ビーズ−ビーズ相互作用によって引き起こされる。
【0018】
図1に、磁気バイオセンサ用のセンサカートリッジ1のセンサチャンバのより低い壁1が、概略的に示されている。磁気バイオセンサという語は、ここでは、当分野において良く知られているように、磁性粒子10が検出されるべきアナライトの生物学的アッセイへの結合のプロセスに参加する生物学的アッセイを含むセンサとして規定される。壁1は、センサチャンバのセンサ表面2を形成する。センサ表面2の下には、電磁ユニットは配置され、電磁ユニットは、センサ表面の縁端部の近傍に配置される2つの磁極先端によって一般に形成される(図2に示される磁極先端3を参照)。矢印11によって示されるように磁力を印加する場合、ビーズ10は、センサ表面2に向かって引き寄せられる。表面2が、例えば中心部では約10%であり、センサ表面2の縁端部の近傍の磁極先端3の近傍ではより低くなるような、或る量のビーズ10で覆われるとすぐに、表面2に接近するビーズ10は、磁気アクチュエーション力のため、表面2上に既に存在しているビーズ10によって引き寄せられる。このプロセスは、「クラスタリング」として知られている。磁界は、表面と或る角度をなすので、クラスタリングされたビーズ10は、センサ表面2の検出領域21の外側にあり、すなわちFTIRバイオセンサの場合のエバネッセント場にある。
【0019】
従って、これらのビーズ10は、磁界によって引き寄せられるが、それらは、表面2と接触せず、ゆえに、表面2に結合することができない。磁界が、オフに切り替えられる場合のみ、クラスタリングされたビーズ10は、解放され、拡散によって表面2と接触することができる。磁界が、連続してオンにされている場合、クラスタリングされたビーズ10は、表面と決して接触せず、信号は低いままであり、一般に、利用可能な100%の信号のうちわずか3−10%を示す。従って、パルス化されたアクチュエーションプロトコルの場合、引力時間tON及び磁界がオフにされる時間tOFFの両方が重要である。
【0020】
引力時間の間、ビーズは、表面付近の領域へ運ばれ、そこでビーズの濃度は増大する。磁界がオフである間、ビーズは、拡散及び結合を通じて実際に表面に到達することができる。比率tON/(tON+tOFF)は、アクチュエーションプロトコルのデューティサイクル(DC)と呼ばれる。大きい信号を迅速に得るために、ONフェーズの間に表面付近の領域に運ばれるビーズの数は、OFFフェーズの間に拡散によって表面に運ばれるビーズの数と一致するべきである。これは、以下のような式で示されることができる:
ON.tON=ROFF.tOFF (1)
ここで、RON及びROFFは、それぞれ、ビーズ/秒で表現されるON/OFFフェーズの間の運搬レートあり、すなわち磁気引力及び拡散の間の運搬レートである。従って、パルス信号の最適なデューティサイクルは、以下の運搬レートで表現されることができる:

【0021】
この式は、パルス化されたアクチュエーション信号のデューティサイクルが重要であり、システムの運搬レートが与えられる場合、最適化されなければならないことを示す。
【0022】
図2に示されるように、引力磁石の磁界は、或る角度をなして表面2を横切る。この角度は、理想的な磁石の磁極先端3の間では正確にゼロであり、磁極先端3付近では数十度、例えば30度になりうる。従って、中心部では、磁界の方向は、表面2と平行であるが、磁極先端3の近くでは、より上方又は下方を向いている。磁界の方向は、ビーズ10のクラスタが形成される方向を決定する。クラスタが、磁気アクチュエーションの下で形成され、続いて磁界がオフにされると、ビーズは、表面2に向かって拡散しなければならない。クラスタの角度が大きいほど、ビーズ10が拡散するためにより多くの時間を要する。従って、磁極先端3付近での拡散による運搬レートは、磁石の中心部よりも小さい。式2から、運搬レートROFFが小さくなると、パルス化されたアクチュエーションのためのより小さいデューティサイクルが選択されなければならず、これは、より多くの時間が拡散ステップのために必要とされることを表すことが分かる。
【0023】
図3には、中心位置、すなわち磁気ユニットの磁極先端の間の中心部、において記録された光学信号が、3つの異なるアクチュエーションプロトコルに関して示されている。拡散スピードは、磁極先端の間のセンサ表面の中心部では高いので(ビーズは、表面までの短い距離を移動するだけでよい)、デューティサイクルを増大させ、表面付近の領域へのビーズの収集スピードを高めることは、信号レートを増大させる。
【0024】
第1のプロトコル(破線曲線)によれば、印加されるパルス化磁界のデューティサイクルは、測定全体の間の50%であり、第2のプロトコル(点線曲線)によれば、デューティサイクルは、測定全体の間の75%であり、第3のプロトコル(連続曲線)においては、デューティサイクルの組み合わせが適用され、すなわちデューティサイクルは、測定の開始時には85%であり、測定の終了時には15%である。この例では、50%のデューティサイクルが75%のデューティサイクルより遅い信号を与えることが明確に認識できる。
【0025】
図4には、磁極先端付近の信号と表面の中心部の信号との間の比率が、プロットされている。1の比率は、磁極先端付近の信号の強度が、中心部における信号の強度と等しいことを示す。これは好適な状況であり、できるだけ近付いて及びできるだけ速くこの1の比率を確立することが、アクチュエーションプロトコルのゴールである。より低い比率は、磁極先端付近の信号が、中心部での信号より遅れることを示す。拡散のためのより多くの時間がアクチュエーションプロトコルにおいて与えられる場合、すなわちより低いデューティサイクルが適用される場合、比率が改善することは明らかである。50%のデューティサイクルは、75%のデューティサイクルより良好な比率を与える。しかしながら、中心位置に関しては、これとは反対のことが当てはまる:75%のデューティ−サイクルは、50%のデューティサイクルより速い信号を与える。
【0026】
例えば、第1のステップでは、表面付近のビーズを迅速に収集するために85%のデューティサイクルを適用し、第2のステップでは、磁極先端付近の信号スピードを改善するために、より大きい拡散時間を適用するというような、連続曲線によって示されるデューティサイクルの組み合わせは、中心部での信号を損なうことなく磁極先端と中心部との間の比率を改善する。
【0027】
従って、異なるデューティサイクルをもつ2又はそれ以上のステップを含むアクチュエーションプロトコルが、光学バイオセンサシステムの全体の性能を改善することができる。それは、磁極間の表面上の使用できるエリアを拡大し、異なる測定スポット間の信号の均一性を改善し、及び/又はマルチアナライトアッセイ及び/又はマルチチャンバ構造を可能にする。
【0028】
磁石のハードウェア構成から生じうる表面上の磁界方向の差のため、ビーズが表面と接触するようにされることができる運搬レートは、表面上の位置に依存する。例えば異なるデューティサイクルをもつ連続するステップを含む、測定中の変化するデューティサイクルをもつアクチュエーションプロトコルは、記録された信号の全体のスピード及び均一性を改善することができる。
【0029】
以下、本発明の他の例が、図5に関して記述される。図5は、磁気ビーズとも呼ばれる磁性粒子10を使用するバイオセンサ装置のカートリッジ1の一部として、上述のセンサ表面1の概略図を示す。図示される構造において、幾つかの電磁ユニット3a、3b、3c、3c'が、センサ表面2に適用される流体をランダム化し混合するために有用な磁界パターンを生成するために実現されている。この例において、例えば制御されたコイルである1つの電磁ユニット3aが、センサ表面2の上方に配置され、1つの電磁ユニット3bが、センサ表面2の下方に配置され、2つの電磁ユニット3c、3c'が、センサ表面2の側方に配置される。電磁ユニット3cは、センサ表面2の左方に配置され、電磁ユニット3c'は、センサ表面2の右方に配置される。図5に示される構造は、センサ表面2に対して異なる力方向を有する磁気アクチュエーションを可能にする。電磁場理論によって、電磁ユニット3a、3bは、生成される磁界の方向に依存して、センサ表面2の上方のエリアにおいて磁性粒子10を引き寄せ又は押し返す。これに関連して、磁界線が、そこに適用されるアッセイに対する結合を達成するために、図示されるように像平面の上方から下方に、すなわちセンサ表面2の方向に向けられる場合に、引力が生じる。同様に、磁界線が、図示されるように像平面の下方から上方に向けられる場合、斥力が生じる。言い換えると、センサ表面2に対し本質的に垂直な磁界が、生成される。後者の場合、磁力は、センサ表面2から磁性粒子10を除去するために、センサ表面2から離れるように磁性粒子10に及ぼされる。例えばカートリッジ1上のセンサ表面2の下方の2つの電磁ユニット3b及び上方の1つの電磁ユニット3aを備える他の構造が、設計可能である。更に、別の電磁ユニット3cが、センサ表面2を有するカートリッジ1の左側に配置され、別の電磁ユニット3c'が、センサ表面2を有するカートリッジ1の右側に配置される。電磁ユニット3c,3c'は、センサを有するカートリッジ1及びセンサ表面2と本質的に平行に向けられる磁界線を有する磁界を、像平面に対して左又は右の任意の方向に生成する。センサ表面2の側方の付加の電磁ユニット3c、3c'は、センサ表面2におけるアッセイへのアナライトの結合挙動を改善する。センサ表面2と垂直な磁界だけでなく、平行な方向を向く磁界を印加する場合、磁性粒子10のランダム化及び混合が達成される。かかる磁性粒子は、一般に、バイオセンサによって検出されるべきアナライトにアタッチされる。4つの電磁ユニット3a,3b,3c,3c'を制御することは、アナライトをアッセイに結合するプロセスを改善し、特に特異的結合の数が増大されることができることが分かった。これは、センサ表面2に対し垂直な磁界だけを用いるプロセスと比較して、流体中のより多くのアナライトがアッセイに結合されるので、流体中のアナライトの有効量の検出が改善されることを意味する。特異的結合のプロセスの更なる改善は、最初にセンサ表面2と平行な磁界パルスを印加し、次にセンサ表面2に対し垂直な磁界パルスを印加し、次に短い時間期間中、磁界を印加しないように、電磁ユニット3a、3b、3c、3c'を制御することによって達成される。印加される磁界の時間期間及び磁界のない時間期間は、数秒のレンジにある。上述の構造は、磁性粒子10及びアタッチされたアナライトを、流体又はバルクからセンサ表面2まで効率的に運搬するように設計されている。
【0030】
図6は、図5に関して記述される構造によって、例えば漏れ内部全反射(FTIR)のような、例えば光学検出方法によって行われる、バイオセンサの測定の結果としての曲線を示す。x軸は、分の時間として示され、y軸は、バイオセンサによって検出される光学信号のパーセンテージにとして示されている。図6に見られるように、信号は、最初、ほぼ一定の高いレベルを有し、ランダム化及び混合が、電磁ユニット3a、3b、3c、3c'を作動させることによって、上述されたように適用される。光学信号は、低下し、元の信号レベルより低いほぼ一定のレベルに再び達する。このより低い一定の信号レベルは、流体中の非特異的結合の減少として説明され、非特異的結合に対する特異的結合は増大される。図示されるように、何秒かの間、磁界はオフであり、それにより、最小からほぼ一定のレベルまで上昇する測定される光学信号をもたらし、これは、ある種の拡散緩和である。図5に関して記述されたプロセスを動作させることにより、作動される磁界は、信号の最小値が達成されるまで、別の信号降下をもたらす。再び、磁界が生成されない時間期間は、ほぼ一定のレベルまで信号を高め、そのレベルは、再び、以前測定された信号レベルよりも低い。再び、非特異的結合によって引き起こされる信号部分が、減少される。プロセスを繰り返し適用することは、非特異的結合によって引き起こされる信号部分を最小にし、特異的結合によって引き起こされる正しい信号を増強することを意味する。
【0031】
本発明は、図面及び上述の説明において詳しく図示され記述されたが、このような図示及び記述は、説明的又は例示的なものとして及び非限定的なものとして考えられるべきである。従って、本発明は、開示された実施形態に制限されない。開示される実施形態に対する変更は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、本発明を実施する当業者によって理解され、実現されることができる。請求項において、「含む、有する」という語は、他の構成要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に列挙されるいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。請求項における任意の参照符号は、請求項の範囲を制限することとして考えられるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)テストされるべきアッセイを受け取るセンサカートリッジと、
(b)前記センサカートリッジのセンサ表面に磁界を生成する少なくとも電磁ユニットと、
(c)前記センサ表面近傍の磁性粒子の存在を検出する検出手段と、
を有する磁気バイオセンサ装置であって、前記電磁ユニットは、少なくとも第1及び第2の磁界強度をもつ磁界を周期的に生成し、前記第1及び前記第2の磁界強度を印加する期間の時間量に対する、前記第1の磁界強度を印加する時間量の比率が、測定中に変えられる、磁気バイオセンサ装置。
【請求項2】
前記第2の磁界強度がゼロである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記比率が、測定中、低下される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記比率が、測定中、連続的に変えられる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記比率が、測定中、段階的に変えられる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記比率が、測定中、約85%から約15%まで変化する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記検出手段は、内部全反射の角度で前記センサ表面に光を向ける光源と、前記センサ表面から反射される光を検出する検出器と、を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
第1の電磁ユニットが、前記センサ表面に対し本質的に垂直な第1の磁界強度を生成し、
第2の電磁ユニットが、前記センサ表面に本質的に平行な第2の磁界強度を生成し、
前記第1の電磁ユニット及び前記第2の電磁ユニットは、それぞれ前記第1の磁界強度及び前記第2の磁界強度を交互に生成し、前記第1の磁界強度の生成と前記第2の磁界強度の生成との間に、磁界が生成されない時間期間がある、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
磁気バイオセンサ装置のセンサ表面に磁界を印加する方法であって、
少なくとも第1及び第2の磁界強度を有する磁界を周期的に生成することを含み、前記第1及び前記第2の磁界強度を印加する期間の時間量に対する、前記第1の磁界強度を印加する時間量の比率が、測定中、変えられる、方法。
【請求項10】
前記第2の磁界強度がゼロである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記比率が、測定中、低下される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記比率が、測定中、連続的に変えられる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記比率が、測定中、約85%から約15%まで段階的に変化する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記検出手段は、内部全反射の角度で前記センサ表面に光を向ける光源と、前記センサ表面から反射される光を検出する検出器と、を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記バイオセンサ装置は、FTIRバイオセンサ装置であり、前記検出される信号は、前記センサ表面付近の磁性粒子の存在により散乱される光に関する、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−515917(P2012−515917A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546977(P2011−546977)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051496
【国際公開番号】WO2010/084383
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】