説明

磁気パターン検出装置

【課題】個体差や温度に起因して磁気センサ装置のセンサ出力信号の出力レベルが変化しても磁気パターンの検出精度の低下を回避できる磁気パターン検出装置を提案すること。
【解決手段】磁気パターン検出装置1は、磁気センサ装置20からの整流信号に加算信号を加算した補正出力信号を生成する第1オフセット調整回路831と、媒体2が磁気センサ装置20を通過する際の補正出力信号に基づいて媒体2の磁気パターンを検出する磁気パターン検出部100と、媒体2の磁気パターンを検出する毎に加算信号の出力レベルを調整することによって補正出力信号の出力レベルを目標出力レベルとするオフセット調整処理を行う加算信号調整部97を有する。オフセット調整処理によって磁気センサ素子40の個体差や発熱などに起因するセンサ出力信号の出力レベルのばらつきが是正されるので、磁気パターンの検出精度の低下を回避あるいは抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサからのセンサ出力信号によって磁性体が取り付けられた物体や磁気インクで印刷が施された紙幣等といった媒体の磁気パターンを検出する磁気パターン検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気パターン検出装置は、着磁された媒体が磁気センサを通過する際の磁束変化を検出し、磁気センサから出力されるアナログのセンサ出力信号を信号処理部で増幅した後にデジタル信号化処理し、しかる後に、予め記憶保持しているパターンと照合して媒体の種類などを判別している。このような磁気パターン検出装置は特許文献1に記載されている。
【0003】
ここで、磁気センサは個体毎にセンサ出力信号の出力レベルが異なっている場合があり、磁気センサの出力レベルが個体毎にばらついていると磁気パターン検出装置毎に磁気パターンの検出精度がばらついてしまうという問題が発生する。このような問題を解消するために、特許文献1の磁気パターン検出装置の信号処理部は、増幅回路とA/D変換回路の間にセンサ出力信号のオフセット調整処理を行うオフセット調整回路を搭載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−241653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オフセット調整処理は、待機時における磁気センサからのセンサ出力信号の出力レベルを所定の出力レベルに調整することによって行われる。このようなオフセット調整処理を磁気パターン検出装置の電源投入時に行えば、磁気センサの個体差に起因したセンサ出力信号の出力レベルのばらつきを是正できるので、磁気センサの個体差に起因した磁気パターンの検出精度のばらつきを回避できる。しかし、センサ出力信号の出力レベルは、磁気センサ自体の発熱によっても変化するので、複数の媒体の磁気パターンの検出が連続して行われる場合には、最初の媒体の磁気パターンを検出する時点と最後の媒体の磁気パターンを検出する時点との間でセンサ出力信号の出力レベルが変化してしまい、磁気パターンの検出精度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、上記の問題点に鑑みて、磁気センサの個体差および磁気センサの温度条件に起因してセンサ出力信号の出力レベルがばらついた場合でも磁気パターンの検出精度を低下させることがない磁気パターン検出装置のオフセット調整処理方法および磁気パターン検出装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の磁気パターン検出装置は、
磁気センサからのアナログのセンサ出力信号に加算信号を加算した補正センサ出力信号を生成する出力補正部と、
媒体が前記磁気センサを通過する際の前記補正センサ出力信号に基づいて当該媒体の磁気パターンを検出する磁気パターン検出部と、
前記媒体が前記磁気センサを所定枚数通過した後であって次の前記媒体が当該磁気センサを通過するまでの間に、前記加算信号の出力レベルを調整することによって前記補正センサ出力信号の出力レベルを予め定めた目標出力レベルとする第1加算信号調整部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、複数の媒体の磁気パターンを連続して検出する際には、媒体が磁気センサを所定枚数通過した後であって次の媒体が当該磁気センサを通過するまでの間に、補正センサ出力信号の出力レベルを目標出力レベルに設定するオフセット調整処理が行われる。この結果、磁気センサの個体差や発熱などに起因するセンサ出力信号の出力レベルのばらつきが是正されるので、磁気パターンの検出精度の低下を回避あるいは抑制できる。
【0009】
本発明において、電源投入時および再起動時に、前記加算信号の出力レベルを調整することによって前記補正センサ出力信号の出力レベルを前記目標出力レベルとする第2加算信号調整部を有し、前記第1加算信号調整部が前記補正センサ出力信号の出力レベルを前記目標出力レベルとする処理速度は、前記第2加算信号調整部が前記補正センサ出力信号の出力レベルを前記目標出力レベルとする処理速度よりも高速であることが望ましい。このようにすれば、電源投入時および再起動時に、補正センサ出力信号の出力レベルを予め定めた目標出力レベルに設定するオフセット調整が行われるので、磁気センサの個体差に起因したセンサ出力信号の出力レベルのばらつきが是正される。また、第1加算信号調整部が補正センサ出力信号の出力レベルを目標出力レベルに設定する処理が第1加算信号調整部よりも高速であれば、媒体が磁気センサを所定枚数通過した後であって次の媒体が当該磁気センサを通過するまでの短い間に、オフセット調整処理を行うことが容易となる。ここで、再起動時とは、装置のリセットスイッチなどが操作されることによってそれ以前の加算信号の出力レベルが失われ、加算信号の出力レベルが調整されていない状態に戻った時点をいう。
【0010】
本発明において、前記出力補正部は、前記加算信号を出力するD/A変換回路と、前記センサ出力信号と前記加算信号とを加算する加算器とを備えており、前記第1加算信号調整部は、前記加算信号の出力レベルを調整するためのデジタルの指令値を前記D/A変換回路へ出力する第1指令値出力部と、前記補正センサ出力信号のダイナミックレンジ内で待機時における前記補正センサ出力信号の出力レベルと前記指令値との間で成立している比例関係を予め記憶保持している比例関係記憶保持部と、前記補正センサ出力信号の出力レベルと前記目標出力レベルとの差分を算出する差分算出部と、前記指令値出力部が出力している前記指令値、前記差分、および、前記比例関係に基づいて、前記補正センサ出力信号の出力レベルを前記目標出力レベルとするための前記指令値の適正値を算出する適正値算出部と、前記適正値が算出されると、前記第1指令値出力部から出力される前記指令値を前記適正値に設定する第1設定部とを備えていることが望ましい。すなわち、媒体が磁気センサを所定枚数通過した後であって次の媒体が当該磁気センサを通過するまでの間に行われるオフセット調整処理では、電源投入時或いは再起動時に行われたオフセット調整処理によって補正センサ出力信号の出力レベルが、一旦、目標出力レベルとされているので、その後にセンサ出力信号の出力レベルが変化しても、オフセット調整処理の開始時点における補正センサ出力信号の出力レベルはダイナミックレンジ内にある。また、ダイナミックレンジ内では、指令値と補正センサ出力信号の間に比例関係が成立しているので、指令値、差分、および、比例関係に基づいて、補正センサ出力信号の出力レベルを目標出力レベルとするための指令値の適正値を算出できる。この結果、補正センサ出力信号の出力レベルを予め定めた目標出力レベルに設定するオフセット調整処理を高速に行うことができるので、媒体が磁気センサを所定枚数通過した後であって次の媒体が当該磁気センサを通過するまでの間が短くても、オフセット調整処理が可能となる。
【0011】
この場合において、前記第2加算信号調整部は、前記加算信号の出力レベルを調整するためのデジタルの指令値を前記D/A変換回路へ出力する第2指令値出力部と、前記指令値の上限値と下限値の間を最初の探索範囲として、二分探索法に則って前記第2指令値出力部から出力される前記指令値を変化させる処理および前記補正センサ出力信号の出力レベルと前記目標出力レベルを比較する処理をこの順番で繰り返し、前記補正センサ出力信号の出力レベルが前記目標出力レベルとなったときの前記指令値を前記適正値として取得する二分探索部と、前記適正値が取得されると、前記第2指令値出力部から出力される前記指令値を前記適正値に維持する第2設定部とを備えていることが望ましい。すなわち、電源投入時或いは再起動時に行われるオフセット調整処理では、オフセット調整処理の開始時点における補正センサ出力信号の出力レベルがダイナミックレンジ内にあるか否かが不明なので、指令値と補正センサ出力信号の間に比例関係が成立しているか否かも不明である。従って、二分探索法に則って、補正センサ出力信号の出力レベルが目標出力レベルとなるまで指令値を探索すれば、比較的短い時間で指令値の適正値を求めることができる。
【0012】
また、この場合において、前記第2加算信号調整部は、前記加算信号の出力レベルを調整するためのデジタルの指令値を前記D/A変換回路へ出力する第2指令値出力部と、前記第2指令値出力部の前記オフセット指令値を上限値に設定し、しかる後に、前記補正センサ出力信号の出力レベルが前記目標出力レベルとなるまで、前記第2指令値出力部から出力される前記指令値を所定の値だけ減少させる処理および前記補正センサ出力信号の出力レベルと前記目標出力レベルと比較する処理をこの順番で繰り返すか、または、前記オフセット第2指令値出力部の前記指令値を下限値に設定し、しかる後に、前記補正センサ出力信号の出力レベルが前記目標出力レベルとなるまで、前記第2指令値出力部から出力される前記指令値を所定の値だけ増加させる処理および前記補正センサ出力信号の出力レベルと前記目標出力レベルと比較する処理をこの順番で繰り返し、前記補正センサ出力信号の出力レベルが前記目標出力レベルとなったときの前記指令値を適正値として取得する逐次探索部と、前記適正値が取得されると、前記第2指令値出力部から出力される前記指令値を前記適正値に維持する第2設定部とを備えているものとすることができる。このような逐次探索によれば、指令値の適正値を確実に求めることができる。
【0013】
本発明において、前記磁気センサとして、複数の磁気センサを備えており、前記センサ出力信号は、当該センサ出力信号が出力される前記磁気センサが前記複数の磁気センサのうちから一定のタイミングで順次に切り替わる信号であり、前記第1加算信号調整部および前記第2加算信号調整部は、前記一定のタイミングで前記磁気センサが切り替わる毎に、前記加算信号の出力レベルを調整することによって前記補正センサ出力信号の出力レベルを前記目標出力レベルに設定することが望ましい。すなわち、複数の磁気センサを搭載する多チャンネル型の磁気パターン検出装置では各磁気センサからのセンサ出力信号の出力レベルがばらついていると磁気パターンの検出精度が低下するという問題が発生する。従って、チャンネルが切り替えられる毎に各磁気センサの補正センサ出力信号の出力レベルを目標出力レベルに設定するオフセット調整処理を行えば、各磁気センサの個体差によるセンサ出力信号の出力レベルのばらつきに起因して磁気パターン検出精度が低下することを回避できる。ここで、媒体が磁気センサを所定枚数通過した後であって次の媒体が当該磁気センサを通過するまでの間に複数の磁気センサのオフセット調整処理を行う場合には、各磁気センサのオフセット調整処理を短時間で完了させなければならないが、本発明によれば、複数の媒体の磁気パターンを連続して検出する際にその途中で行われるオフセット調整では、第1加算信号調整部が補正センサ出力信号の出力レベルを目標出力レベルとするための指令値の適正値を算出しているので、僅かな時間で補正センサ出力信号の出力レベルを目標出力レベルに設定することができる。
【0014】
本発明において、前記所定枚数は1枚であることが望ましい。このようにすれば、媒体の磁気パターンを検出する毎にオフセット調整処理が行われるので、個体差や温度条件に起因する磁気センサのセンサ出力信号の出力レベルのばらつきを確実に是正できる。よって、磁気パターンの検出精度が低下することを回避できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、連続して複数の媒体の磁気パターンの検出が行われる場合には、媒体が磁気センサを所定枚数通過した後であって次の媒体が当該磁気センサを通過するまでの間に、補正センサ出力信号の出力レベルが目標出力レベルに設定される。従って、温度等に起因したセンサ出力信号の出力レベルのばらつきによって磁気パターンの検出精度が低下することを回避あるいは抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の磁気パターン検出装置の構成を示す説明図である。
【図2】磁気パターン検出装置が搭載する磁気センサ装置の説明図である。
【図3】磁気センサ装置に用いた磁気センサ素子の説明図である。
【図4】磁気パターン検出装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】第1オフセット調整処理の説明図である。
【図6】第2オフセット調整処理の説明図である。
【図7】媒体に形成される各種磁気インクの特性等を示す説明図である。
【図8】磁気パターン検出装置において種類の異なる磁気パターンが形成された媒体から磁気パターンの有無を検出する原理を示す説明図である。
【図9】変形例の第1オフセット調整処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本発明の実施の形態に係る磁気パターン検出装置を説明する。
【0018】
(全体構成)
図1は本発明に係る磁気パターン検出装置の構成を示す説明図であり、図1(a)、(b)は磁気パターン検出装置の要部構成を模式的に示す説明図、および断面構成を模式的に示す説明図である。
【0019】
図1に示す磁気パターン検出装置1は、銀行券、有価証券等の媒体2から磁気を検知して真偽判別や種類の判別を行なう装置であり、ローラやガイド(図示せず)等によってシート状の媒体2を媒体移動路11に沿って移動させる搬送装置10と、この搬送装置10による媒体移動路11の途中位置で媒体2から磁気を検出する磁気センサ装置20とを有している。本例において、ローラやガイドは、アルミニウム等といった非磁性材料から構成されている。本例において、磁気センサ装置(磁気検出部)20は、媒体移動路11の下方に配置されているが、媒体移動路11の上方に配置されることもある。いずれの場合も、磁気センサ装置20は、センサ面21を媒体移動路11に向けるように配置される。
【0020】
媒体2には、媒体2の移動方向Xに延在する細幅の磁性領域2aに磁気インクによって磁気パターンが付されており、かかる磁気パターンは、残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気インクによる形成されている。例えば、媒体2には、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとが形成されている。そこで、本形態の磁気パターン検出装置1は、媒体2における磁気パターン毎の有無を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて検出する。また、本例において、かかる2種類の磁気パターンの検出を行なうための磁気センサ装置20は共通である。
【0021】
(磁気センサ装置の構成)
図2は、本発明に係る磁気センサ装置20の説明図であり、図2(a)、(b)は、磁気センサ装置20における磁気センサ素子の等のレイアウトを示す説明図、および磁気センサ素子の向きを示す説明図である。
【0022】
図1および図2(a)に示すように、磁気センサ装置20は、媒体2に磁界を印加する磁界印加用磁石30と、磁界を印加した後の媒体2にバイアス磁界を印加した状態における磁束を検出する磁気センサ素子(磁気センサ)40と、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子40を覆う非磁性のケース25とを備えている。磁気センサ装置20は、媒体移動路11と略同一平面を構成するセンサ面21と、センサ面21に対して媒体2の移動方向の両側に連接する斜面部22、23とを備えており、かかる形状は、ケース25の形状によって規定されている。
【0023】
磁気センサ装置20は、媒体2の移動方向Xと交差する方向に延在しており、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子40は、媒体2の移動方向Xと交差する方向に複数、配列されている。本例において、磁気センサ装置20は、媒体2の移動方向Xと交差する方向のうち、移動方向Xと直交する媒体2幅方向Yに延在しており、磁界印加用磁石30および磁気センサ素子40は、移動方向Xと直交する媒体2幅方向Yに複数、配列されている。
【0024】
本例において、磁界印加用磁石30は、磁気センサ素子40に対して媒体2の移動方向の両側に磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32として配置されており、矢印X1で示す媒体2の移動方向に沿って、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子40および磁界印加用第2磁石32がこの順に配置されている。また、矢印X2で示す媒体2の移動方向に沿って、磁界印加用第2磁石32、磁気センサ素子40および磁界印加用第1磁石31がこの順に配置されており、媒体2が矢印X1で示す方向および矢印X2で示す方向のいずれの方向に移動した場合でも、媒体2の磁気特性を検出することができる。ここで、磁気センサ素子40は、磁界印加用第1磁石31と磁界印加用第2磁石32との中間位置に配置されており、磁界印加用第1磁石31との磁気センサ素子40との離間距離と、磁界印加用第2磁石32と磁気センサ素子40との離間距離が等しい。なお、磁界印加用第1磁石31、磁気センサ素子40および磁界印加用第2磁石32はいずれも、媒体2の移動方向で重なる位置に配置されている。
【0025】
本例において、磁界印加用磁石30(磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32)は、フェライトやネオジウム磁石等の永久磁石35を備えている。磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、永久磁石35は、センサ面21に位置する側と、センサ面21が位置する側とは反対側とが異なる極に着磁されている。永久磁石35において、センサ面21の側に位置する面が媒体2に対する着磁面350として機能する。
【0026】
磁界印加用磁石30に用いた複数の永久磁石35はいずれも、サイズや形状は同一であるが、各々は、以下の向きに配置されている。まず、磁界印加用第1磁石31および磁界印加用第2磁石32のいずれにおいても、媒体2の移動方向Xと直交する媒体2幅方向Yで隣り合う永久磁石35同士は、互いに反対の向きに着磁されている。すなわち、媒体2の移動方向Xと直交する媒体2幅方向Yに配列された複数の永久磁石35のうち、1つの永久磁石35は、媒体移動路11側に位置する端部がN極に着磁され、媒体移動路11側とは反対側に位置する端部はS極に着磁されているが、この永久磁石35に対して媒体2の移動方向Xと直交する媒体2幅方向Yで隣り合う永久磁石35は、媒体移動路11側に位置する端部がS極に着磁され、媒体移動路11側とは反対側に位置する端部はN極に着磁されている。なお、本形態では、媒体2の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子40を挟んで異なる極が対向している。但し、媒体2の移動方向で対向する磁界印加用第1磁石31の永久磁石35と磁界印加用第2磁石32の永久磁石35とは、磁気センサ素子40を挟んで同じ極が対向するように配置されることもある。
【0027】
(磁気センサ素子の構成)
図3は、本発明に係る磁気センサ装置20に用いた磁気センサ素子40の説明図であり、図3(a)、(b)、(c)は、磁気センサ素子40の正面図、この磁気センサ素子40に対する励磁波形の説明図、および磁気センサ素子40からの出力信号の説明図である。なお、図3(a)では、図面に対して垂直な方向で媒体2が移動する状態を示してある。
【0028】
図1(b)に示すように、磁気センサ素子40はいずれも、薄板状であり、幅方向W40のサイズは厚さ方向T40の寸法に比して大である。かかる磁気センサ素子40は、媒体2の移動方向Xに厚さ方向T40を向けて配置されており、媒体2の移動方向Xと直交する媒体2幅方向Yには幅方向W40が向いている。
【0029】
磁気センサ素子40は、両面がセラミック等からなる厚さ0.3mm〜1mm程度の薄板状の非磁性部材47により覆われている。かかる磁気センサ素子40は、磁気シールドケース(図示せず)に収納されていることもある。この場合、磁気シールドケースは、媒体2移動路が位置する上方が開口しており、磁気センサ素子40は、媒体移動路11に向けて磁気シールドケースから露出した状態にある。
【0030】
図1(b)、図2(a)、(b)、および図3(a)に示すように、磁気センサ素子40は、センサコア41と、センサコア41に巻回された励磁コイル48と、センサコア41に巻回された検出コイル49とを備えている。本例において、センサコア41は、磁気センサ素子40の幅方向W40に延在する胴部42と、胴部42から媒体2の媒体移動路11の側に向けて突出する集磁用突部43とを備えている。ここで、集磁用突部43は、胴部42の幅方向W40の両端部から媒体2の媒体移動路11の側に向けて突出した2つの集磁用突部431、432として構成されており、2つの集磁用突部431、432は、幅方向W40で離間している。また、センサコア41は、胴部42から集磁用突部43とは反対側に突出した突部44を備えており、本例において、突部44は、胴部42の幅方向W40の両端部から媒体2の媒体移動路11の側とは反対側に向けて突出した2つの突部441、442として構成されている。
【0031】
このように構成したセンサコア41に対して、励磁コイル48は、胴部42において集磁用突部431、432で挟まれた部分に巻回されている。また、検出コイル49は、集磁用突部43に巻回されており、本例において、検出コイル49は、センサコア41の2つの集磁用突部43(集磁用突部431、432)のうち、集磁用突部431に巻回された検出コイル491と、集磁用突部432に巻回された検出コイル492とからなる。ここで、2つの検出コイル491、492は、集磁用突部431、432に対して互いに逆方向に巻回されている。また、2つの検出コイル491、492は、1本のコイル線を集磁用突部431、432に対して連続して巻回してなるため、2つの検出コイル491、492は、直列に電気的に接続されている。なお、2つの検出コイル491、492を各々集磁用突部431、432に巻回した後、直列に電気的に接続してもよい。
【0032】
このように構成した磁気センサ素子40は、幅方向W40および集磁用突部43の突出方向(高さ方向V40)の双方に対して直交する厚さ方向T40が媒体2の移動方向Xに向くように配置されており、磁気センサ素子40において集磁用突部43(集磁用突部431、432)および検出コイル49(検出コイル491、492)が離間する幅方向W40は、媒体2の移動方向Xに対して直交する媒体2幅方向Yに向いている。
【0033】
磁気センサ素子40において、励磁コイル48には、図4を参照して後述する励磁回路50から交番電流(図3(b)参照)からなる励磁信号が印加される。このため、図3(a)に示すように、センサコア41の周りには、バイアス磁界が形成されるとともに、検出コイル49からは、検出信号として、図3(c)に示す検出波形の信号が出力されることになる。ここで、図3(c)に示す検出波形は、励磁信号により発生する磁束の時間的な微分信号であり、励磁信号の時間的な微分信号に近いものとなる。
【0034】
本例において、磁気センサ素子40のセンサコア41は、図1(b)に示すように、非磁性の第1基板41aと非磁性の第2基板41bとの間に磁性材料層41cが挟まれた構造になっている。本例において、磁性材料層41cは、第1基板41aの一方面に接着層(図示せず)によって接着されたアモルファス(非晶質)金属の磁性材料からなる薄板状のアモルファス金属箔からなり、かかる第1基板41aの一方面には、磁性材料層41cを間に挟むように第2基板41bが接着層によって接合されている。
【0035】
(信号処理部の構成)
図4は、本発明に係る磁気パターン検出装置1の電気的構成を示すブロック図である。図4に示す回路部5は、図3(b)に示す交番電流を各磁気センサ素子40の励磁コイル48に励磁信号として印加する励磁回路50と、検出コイル49に電気的に接続された信号処理部60とを備えている。信号処理部60は検出コイル49から出力される検出信号から、残留磁束密度レベルに対応する第1信号S1、および透磁率レベルに対応する第2信号S2を生成する。信号処理部60は、磁気センサ素子40から出力された検出信号を増幅する増幅部70と、増幅部70から出力された信号からピーク値およびボトム値を抽出する抽出部80と、A/Dコンバータ91を備えたデジタル信号処理部90とを有している。抽出部80およびデジタル信号処理部90は媒体2の磁気パターンを検出する磁気パターン検出部100を構成しており、増幅部70と磁気パターン検出部100はアナログスイッチ101およびゼロクランプ部102を介して接続されている。
【0036】
励磁回路50は、励磁信号の供給を受ける1つの励磁用ドライバアンプ51と、励磁用ドライバアンプ51の後段に接続されたマルチプレクサ52を備えている。励磁回路50は、単一チャンネルの励磁信号を増幅し、しかる後に、一定のタイミングおよび一定の順次で切り替わる多チャンネルの時分割励磁信号に分割する。すなわち、マルチプレクサ52は、切替信号に基づいて、増幅された増幅励磁信号を時分割して各磁気センサ素子40の励磁コイル48に一定のタイミングおよび一定の順次で供給する。切替信号は、デジタル信号処理部90からフリップフロップ53を介してマルチプレクサ52に入力される。
【0037】
増幅部70は、複数の磁気センサ素子40に接続されたマルチプレクサ71と、マルチプレクサ71の後段に接続されたアンプ72を備えている。増幅部70は、磁気センサ装置20の各磁気センサ素子40の検出コイル49から出力される多チャンネルの検出信号を、一定のタイミングおよび一定の順次に切り替えながら合成し、しかる後に増幅して、単一チャンネルの時系列検出信号を出力する。すなわち、マルチプレクサ71は、切替信号に基づいて、検出信号が出力される磁気センサ素子40を、複数の磁気センサ素子40の中から一定のタイミングおよび一定の順次でアンプ72に接続する。切替信号は、フリップフロップ53からマルチプレクサ71に入力される。
【0038】
アナログスイッチ101は、増幅部70から磁気パターン検出部100に対する時系列検出信号の供給路101aを所定の時間遮断するためのものである。アナログスイッチ101は、スイッチ制御信号に基づいて制御され、時分割励磁信号による各磁気センサ素子40の励磁コイル48の励磁開始時点において、この励磁開始時点を含む所定時間オフに切り替えられて供給路101aを電気的に遮断する。これにより、増幅部70から出力される時系列検出信号は、磁気センサ素子40の切り替えに起因して生じるノイズが含まれている可能性が高い期間、すなわち、磁気センサ素子40の励磁開始時点を含む所定の時間がアナログスイッチ101のオフ状態によってマスクされる。この結果、磁気センサ素子40の切り替え時に発生するノイズの乗った時系列検出信号が、磁気パターン検出部100に入力されることを回避或いは低減できるので、媒体2の磁気パターンを精度よく検出できる。スイッチ切替信号は、フリップフロップ53およびタイミング調整部54を介してアナログスイッチ101に入力されている。
【0039】
ゼロクランプ部102は、接地されたアナログスイッチ103を備えている。アナログスイッチ103は、スイッチ制御信号に基づいて制御され、アナログスイッチ101がオフ状態となる所定期間、供給路101aの電位を0にクランプする。スイッチ切替信号は、フリップフロップ53およびタイミング調整部54を介してアナログスイッチ103に入力される。
【0040】
抽出部80は、クランプ回路82と、クランプ回路82から出力された整流信号(磁気センサからのアナログのセンサ出力信号)のオフセット調整処理を行なうオフセット調整回路(出力補正部)83を備えている。より詳細には、クランプ回路82は、増幅部70から出力された時系列検出信号を整流する第1ダイオード821と、増幅部70から出力された時系列検出信号の極性反転を行なう極性反転回路822と、極性反転回路822において極性反転された信号を整流する第2ダイオード823とを備えている。従って、オフセット調整回路83は、第1ダイオード821からの整流信号に対する第1オフセット調整回路831と、第2ダイオード823からの整流信号に対する第2オフセット調整回路832を有している。
【0041】
ここで、第1オフセット調整回路831および第2オフセット調整回路832は、同一の構成を有しており、それぞれ、オフセット調整用基準電圧生成回路(D/A変換回路)831a、832aと、オフセット調整用基準電圧生成回路831a、832aの後段に接続されたオペアンプ(加算器)831b、832bを備えている。オフセット調整用基準電圧生成回路831a、832aには、デジタル信号処理部90からのタイマ信号およびオフセット指令値(指令値)が入力される。オフセット指令値が入力されると、オフセット調整用基準電圧生成回路831a、832aからは当該オフセット指令値に対応するアナログの加算信号が出力される。加算信号はオペアンプ831b、832bによって整流信号と加算されて補正出力信号(補正センサ出力信号)として出力される。オフセット調整処理とは、加算信号の出力レベルを調整することにより、待機時における補正出力信号の出力レベルを予め定めた目標出力レベルとするものであり、検出信号が出力される磁気センサ素子40が複数の磁気センサ素子40の中から一定のタイミングおよび一定の順次で切り替えられる毎に行われる。
【0042】
また、抽出部80は、オフセット調整回路83の後段にホールド回路84を備えており、ホールド回路84の後段にゲイン設定部85を備えている。ホールド回路84は、第1オフセット調整回路831からのオフセット調整処理された補正出力信号のピーク値をホールドする第1ピークホールド回路841と、第2オフセット調整回路832からのオフセット調整処理された補正出力信号のピーク値をホールドする第2ピークホールド回路842とを備えている。ここで、第2オフセット調整回路832には、増幅部70から出力された信号を極性反転回路822で極性反転した後、第2ダイオード823で整流した後の信号が入力されている。このため、第2ピークホールド回路842は、増幅部70から出力された増幅信号のボトム値をホールドするボトムホールド回路に相当する。
【0043】
ゲイン設定部85は、第1ピークホールド回路841でホールドされた値のゲインを設定するゲイン設定用第1アンプ851(メインアンプ)と、第2ピークホールド回路842(ボトムホールド回路)でホールドされた値のゲインを設定するゲイン設定用第2アンプ852(メインアンプ)とを備えており、第1ピークホールド回路841および第2ピークホールド回路842でホールドされた値を所定のゲインに設定してデジタル信号処理部90のA/Dコンバータ91に出力する。ゲイン設定部85には、デジタル信号処理部90からのタイマ信号およびゲイン指令値が入力される。ゲイン設定部85は、タイマ信号およびゲイン指令値に基づいて、磁気センサ素子40が切り替えられる毎に、ゲインを更新する。
【0044】
デジタル信号処理部90は、第1ピークホールド回路841でホールドされた値と、第2ピークホールド回路842でホールドされた値とを加算して第1信号S1を生成する加算回路92と、第1ピークホールド回路841でホールドされた値と、第2ピークホールド回路842でホールドされた値とを減算して第2信号S2を生成する減算回路93とを備えている。また、デジタル信号処理部90は、制御信号出力部94、タイマ信号を出力するハードタイマ95、および、加算信号調整部96、97を備えている。
【0045】
制御信号出力部94は、ゲイン指令値をゲイン設定部85に出力する。また、制御信号出力部94は、ソフトウエア割り込みにより定期的に生成される切替制御信号をフリップフロップ53に出力する。フリップフロップ53にはハードタイマ95のタイマ信号が入力されており、フリップフロップ53はこの切替制御信号を、タイマ信号に同期させた切替信号としてマルチプレクサ52およびマルチプレクサ71に出力する。
【0046】
ここで、切替制御信号をタイマ信号に同期させた切替信号は、タイミング調整部54を介することにより、スイッチ切替信号としてアナログスイッチ101およびアナログスイッチ103に入力される。タイミング調整部54は、アナログスイッチ101をオフ状態に維持するとともに、アナログスイッチ103をオン状態に維持する所定時間を設定している。すなわち、制御信号出力部94、ハードタイマ95、フリップフロップ53、およびタイミング調整部54によって、アナログスイッチ101およびアナログスイッチ103を制御するスイッチ制御部が構成されている。
【0047】
加算信号調整部(第2加算信号調整回路)96は、電源投入時、再起動時にオフセット調整用基準電圧生成回路831a、832aへオフセット指令値を出力してオフセット調整処理を行う。再起動時とは、装置のリセットスイッチなどが操作されることによってそれ以前の加算信号の出力レベルが失われ、加算信号の出力レベルが調整されていない状態に戻った時点をいう。加算信号調整部(第1加算信号調整回路)97は、媒体2が磁気センサ装置20を通過した後であって次の媒体2が磁気センサ装置20を通過するまでの間に、オフセット調整用基準電圧生成回路831a、832aへオフセット指令値を出力してオフセット調整処理を行う。
【0048】
このように構成したデジタル信号処理部90からは、上位の制御部(図示せず)に対して第1信号S1および第2信号S2が出力され、上位の制御部では、第1信号S1および第2信号S2に基づいて媒体2の真偽を判定する。より具体的には、上位の制御部には、第1信号S1および第2信号S2を磁気センサ素子40と媒体2との相対位置情報に関係づけて、記録部に予め記録されている比較パターンとの照合を行って媒体2の真偽を判定する判定部を備えており、かかる判定部は、ROM或いはRAM等といった記録部(図示せず)に予め記録されているプログラムに基づいて所定の処理を行い、媒体2の真偽を判定する。
【0049】
(オフセット調整処理)
次に図4〜図6を参照してオフセット調整処理を詳細に説明する。なお、第1オフセット調整回路831を介して行われるオフセット調整処理および第2オフセット調整回路832を介して行われるオフセット調整処理は同一なので、第1オフセット調整回路831を介して行われるオフセット調整処理を説明して、第2オフセット調整回路832を介して行われるオフセット調整処理の説明は省略する。
【0050】
(電源投入時および再起動時のオフセット調整処理)
電源投入時および再起動時にオフセット調整処理を行う加算信号調整部96は、図4に示すように、指令値出力部961、二分探索部962および設定部963を備えている。
【0051】
指令値出力部961は、加算信号の出力レベルを調整するためのデジタルの指令値をオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力する。二分探索部962は、オフセット指令値の上限値と下限値の間を最初の探索範囲として、二分探索法に則ってオフセット指令値を変化させる処理および補正出力信号の出力レベルと目標出力レベルを比較する処理をこの順番で繰り返し、出力レベルが目標出力レベルとなったときのオフセット指令値を適正値として取得する。設定部963は、二分探索部962によって適正値が取得されると、指令値出力部961から出力されるオフセット指令値を適正値に維持する。
【0052】
図5(a)は加算信号調整部96によるオフセット調整処理のフローチャートであり、図5(b)は二分探索法による適正値の探索例を示すグラフである。図5(b)のグラフの縦軸は補正出力信号の出力レベルであり、横軸はオフセット指令値である。図5(a)に示すように、磁気パターン検出装置1に電源が投入されると、或いは、磁気パターン検出装置1が再起動されると、二分探索部962は、オフセット指令値の上限値と下限値の間を最初の探索範囲として、二分探索法に則ってオフセット指令値を変化させる処理および補正出力信号の出力レベルと目標出力レベルを比較する処理をこの順番で繰り返して(ステップST11)、出力レベルが目標出力レベルとなったときのオフセット指令値を適正値として取得する(ステップST12)。適正値が取得されると、設定部963は指令値出力部961からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力されるオフセット指令値を適正値に維持する(ステップST13)。ステップST11〜ST13は磁気センサ素子40が一定のタイミングおよび一定の順次で切り替えられる毎に行われる。そして、全ての磁気センサ素子40からの調整出力信号について、これらステップST11〜ST13が行われることにより、オフセット調整処理が完了する。
【0053】
図5(b)に示す例では、電源投入時または再起動時に、指令値出力部961からオフセット指令値の上限値と下限値の第1中央値C1をオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力して、補正出力信号の出力レベルV1と目標出力レベルV0を比較している。本例では、補正出力信号の出力レベルV1が目標出力レベルV0よりも大きくなっており、補正出力信号の出力レベルを目標出力レベルV0とするためには第1中央値よりも図5(b)のグラフの右側の領域の二分探索が必要となる。よって、第1中央値と上限値との間の第2中央値C2を新たなオフセット指令値に設定して指令値出力部961からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力して、補正出力信号の出力レベルV2と目標出力レベルV0を比較する。
【0054】
この時点では、補正出力信号の出力レベルV2が目標出力レベルV0よりも小さくなっているので、補正出力信号の出力レベルを目標出力レベルV0とするためには第1中央値C1よりも図5(b)のグラフの右側の領域であって、第2中央値C2よりも図5(b)のグラフの左側の領域の二分探索が必要となる。従って、第1中央値C1と第2中央値C2との間の第3中央値C3を新たなオフセット指令値に設定して指令値出力部961からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力して、補正出力信号の出力レベルV3と目標出力レベルV0を比較する。
【0055】
この時点では、補正出力信号の出力レベルV3が目標出力レベルV0よりも大きくなっているので、補正出力信号の出力レベルを目標出力レベルV0とするためには第3中央値C3よりも図5(b)のグラフの右側の領域であって、第2中央値C2よりも図5(b)のグラフの左側の領域の二分探索が必要となる。従って、第3中央値C3と第2中央値C2との間の第4中央値C4を新たなオフセット指令値に設定して指令値出力部961からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力して、補正出力信号の出力レベルV4と目標出力レベルV0を比較する。
【0056】
本例では、第4中央値C4を新たなオフセット指令値に設定して指令値出力部961からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力すると、補正出力信号の出力レベルV4が目標出力レベルV0となる。従って、この時点のオフセット指令値C4を適正値として取得し、指令値出力部961からのオフセット指令値を適正値に維持する。
【0057】
電源投入時或いは再起動時に行われるオフセット調整処理では、オフセット調整処理の開始時点における補正出力信号の出力レベルがダイナミックレンジ内にあるか否かが不明なので、オフセット指令値と補正出力信号の間に比例関係が成立しているか否かも不明である。従って、二分探索法に則って、補正出力信号の出力レベルが目標出力レベルとなるまでオフセット指令値を探索すれば、比較的短い時間でオフセット指令値の適正値を求めることができる。
【0058】
(媒体の磁気パターンを検出する毎に行われるオフセット調整処理)
媒体2の磁気パターンを検出する毎にオフセット調整処理を行う加算信号調整部97は、図4に示すように、指令値出力部971、比例関係記憶保持部972、差分算出部973、適正値算出部974および設定部975を備えている。
【0059】
指令値出力部971は、加算信号の出力レベルを調整するためのデジタルの指令値をオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力する。比例関係記憶保持部972は、補正出力信号のダイナミックレンジ内における待機時の補正出力信号の出力レベルとオフセット指令値の間に成立している比例関係を記憶保持している。差分算出部973は、補正出力信号の出力レベルと目標出力レベルとの差分を算出する。適正値算出部974は、指令値出力部971が出力しているオフセット指令値、差分、および、比例関係に基づいて、出力レベルを目標出力レベルとするためのオフセット指令値の適正値を算出する。設定部975は、適正値が算出されると、指令値出力部971から出力されるオフセット指令値を適正値に設定する。ここで、加算信号調整部97の指令値出力部971と加算信号調整部96の指令値出力部961とは同一の機能を備えているので、これらを一つの指令値出力部971として、加算信号調整部96と加算信号調整部97とが共用するように構成することもできる。
【0060】
図6(a)は加算信号調整部97によるオフセット調整処理のフローチャートであり、図6(b)は適正値の算出例を示すグラフである。図6(b)のグラフの縦軸は補正出力信号の出力レベルであり、横軸はオフセット指令値である。図6(a)に示すように、媒体2の磁気パターンが検出されると、差分算出部973は補正出力信号の出力レベルと目標出力レベルの差分を算出する(ステップST21)。次に、適正値算出部974は、この時点におけるオフセット指令値と、算出された差分と、比例関係記憶保持部972が記憶保持している比例関係に基づいて適正値を算出する(ステップST22)。適正値が算出されると、設定部975は指令値出力部971からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力されるオフセット指令値を適正値に設定する(ステップST23)。ステップST21〜ST23は磁気センサ素子40が一定のタイミングおよび一定の順次で切り替えられる毎に行われる。そして、全ての磁気センサ素子40からの調整出力信号について、これらステップST21〜ST23が行われることにより、オフセット調整処理が完了する。
【0061】
図6(b)に示す例では、第2オフセット調整処理開始時点の補正出力信号の出力レベルV1と目標出力レベルV0の差分としてΔVが算出されている。また、比例関係の比例定数はaとなっている。従って、差分ΔVに対応する分だけ出力レベルを変更するためのオフセット指令値の変化量ΔCはΔV/aとなる。よって、適正値は、現時点のオフセット指令値C1にΔV/aを加算することにより算出される。適正値が算出されると、指令値出力部971から出力されるオフセット指令値を適正値に設定する。
【0062】
媒体2が磁気センサ装置20を通過した後であって次の媒体2が磁気センサ装置20を通過するまでの間のオフセット調整処理では、電源投入時或いは再起動時に行われたオフセット調整処理によって補正出力信号の出力レベルが、一旦、目標出力レベルとされているので、オフセット調整処理の開始時点における補正出力信号はダイナミックレンジ内にある。また、ダイナミックレンジ内では、オフセット指令値と補正出力信号の間に比例関係が成立しているので、補正出力信号の出力レベルを目標出力レベルとするためのオフセット指令値の適正値を算出できる。この結果、僅かな時間で補正出力信号の出力レベルを目標出力レベルに設定することができるので、媒体2が磁気センサ装置20を通過した後であって次の媒体2が磁気センサ装置20を通過するまでの短い時間の間に、複数の磁気センサ素子40からの調整出力信号の全てについてのオフセット調整処理が可能となる。
【0063】
(検出原理)
図7は、本発明に係る磁気パターン検出装置1において媒体2に形成される各種磁気インクの特性等を示す説明図である。図8は、本発明に係る磁気パターン検出装置1において種類の異なる磁気パターンが形成された媒体2から磁気パターンの有無を検出する原理を示す説明図である。
【0064】
まず、図1および図2に示す矢印X1の方向に媒体2が移動する際に媒体2の真偽を判定する原理を説明する。本例において、媒体2の磁性領域2aには、残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターンが形成されている。より具体的には、媒体2には、ハード材を含む磁気インキにより印刷された第1の磁気パターンと、ソフト材を含む磁気インキにより印刷された第2の磁気パターンとが形成されている。ここで、ハード材を含む磁気インキは、図7(b1)にヒステリシスループによって、残留磁束密度Brや透磁率μ等を示すように、磁界を印加したときの残留磁束密度Brのレベルは高いが、透磁率μは低い。これに対して、ソフト材を含む磁気インキは、図7(c1)にそのヒステリシスループを示すように、磁界を印加したときの残留磁束密度Brのレベルは低いが、透磁率μは高い。
【0065】
従って、以下に説明するように、残留磁束密度Brと透磁率μとを測定すれば、磁気インキの材質の判別を行なうことができる。より具体的には、透磁率μは保磁力Hcと相関性を有しているので、本形態では、残留磁束密度Brと保磁力Hcとを測定していることになり、かかる残留磁束密度Brと保磁力Hcとの比は、磁気インキ(磁性材料)によって相違する。それ故、磁気インキの材質の判別を行なうことができる。また、残留磁束密度Brおよび透磁率μ(保磁力Hc)の測定値は、インキの濃淡や、媒体2と磁気センサ装置20との距離により変動するが、本形態では、磁気センサ装置20が同一位置で残留磁束密度Brおよび透磁率μ(保磁力Hc)を測定するため、残留磁束密度Brと保磁力Hcとの比によれば、磁気インキの材質を確実に判別することができる。
【0066】
本形態の磁気パターン検出装置1において、媒体2が矢印X1で示す方向に移動して磁気センサ装置20を通過する際、まず、磁界印加用第1磁石31から媒体2に磁界が印加され、磁界が印加された後の媒体2が磁気センサ素子40を通過する。それまでの間、磁気センサ素子40の検出コイル49からは、図7(a3)に示すように、図7(a2)に示すセンサコア41のB−Hカーブに対応する信号が出力される。従って、図4に示す加算回路92から出力される第1信号S1、および減算回路93から出力される第2信号S2は各々、図7(a4)に示す通りである。
【0067】
ここで、フェライト粉等のハード材を含む磁気インキにより第1の磁気パターンが媒体2に形成されていると、かかる第1の磁気パターンは、図7(b1)に示すように、高レベルの残留磁束密度Brを有する。このため、図8(a1)に示すように、磁界印加用磁石30を媒体2が通過した際、第1の磁気パターンは、磁界印加用磁石30からの磁界により、磁石となる。このため、磁気センサ素子40の検出コイル49から出力される信号は、図7(b2)に示すように、第1の磁気パターンから直流的なバイアスを受けて、図7(b3)および図8(a2)に示す波形に変化する。すなわち、信号S0のピーク電圧およびボトム電圧が矢印A1、A2で示すように、同一の方向にシフトするとともに、ピーク電圧のシフト量とボトム電圧のシフト量が相違する。しかも、かかる信号S0は、媒体2の移動に伴って変化する。従って、図4に示す減算回路93から出力される第1信号S1は、図7(b4)に示す通りであり、磁気センサ素子40を媒体2の第1の磁気パターンが通過するたびに変動する。ここで、ハード材を含む磁気インクにより形成された第1の磁気パターンは、透磁率μが低いため、信号S0のピーク電圧およびボトム電圧のシフトに影響しているのは、第1の磁気パターンの残留磁束密度Brだけと見做すことができる。それ故、図4に示す加算回路92から出力される第2信号S2は、磁気センサ素子40を媒体2の第1の磁気パターンが通過しても変動せず、図7(b4)に示す信号と同様である。
【0068】
これに対して、軟磁性ステンレス紛等のソフト材を含む磁気インキにより第2の磁気パターンが媒体2に形成されていると、かかる第2の磁気パターンのヒステリシスループは、図7(c1)に示すように、図7(b1)に示すハード材を含む磁気インクによる第1の磁気パターンのヒステリシスカーブの内側を通り、残留磁束密度Brのレベルが低い。このため、磁界印加用磁石30を媒体2が通過した後も、第2の磁気パターンは、残留磁束密度Brのレベルが低い。但し、第2の磁気パターンは透磁率μが高いため、図8(b1)に示すように、磁性体として機能する。このため、磁気センサ素子40の検出コイル49から出力される信号は、図7(c2)に示すように、第2の磁気パターンの存在によって透磁率μが高くなっている分、図7(c3)および図8(b2)に示す波形に変化する。すなわち、信号S0のピーク電圧は矢印A3で示すように高い方にシフトする一方、ボトム電圧は、矢印A4で示すように低い方にシフトする。その際、ピーク電圧のシフト量とボトム電圧のシフト量は絶対値が略等しい。しかも、かかる信号S0は、媒体2の移動に伴って変化する。従って、図4に示す加算回路92から出力される第2信号S2は、図7(c4)に示す通りであり、磁気センサ素子40を媒体2の第2の磁気パターンが通過するたびに変動する。ここで、ソフト材を含む磁気インクにより形成された第2の磁気パターンは、残留磁束密度Brが低いため、信号のピーク電圧およびボトム電圧のシフトに影響しているのは、第2の磁気パターンの透磁率μだけと見做すことができる。それ故、図4に示す減算回路93から出力される第1信号S1は、磁気センサ素子40を媒体2の第2の磁気パターンが通過しても変動せず、図7(c4)に示す信号と同様である。
【0069】
このように、本形態の磁気パターン検出装置1では、減算回路93において磁気センサ素子40から出力される信号のピーク値とボトム値とを減算した第1信号S1は、磁気パターンの残留磁束密度レベルに対応する信号であり、かかる第1信号S1を監視すれば、ハード材を含む磁気インキにより形成された第1の磁気パターンの有無および形成位置を検出することができる。また、加算回路92において磁気センサ素子40から出力される信号のピーク値とボトム値とを加算した第2信号S2は、磁気パターンの透磁率μに対応する信号であり、かかる第2信号S2を監視すれば、ソフト材を含む磁気インキにより形成された第2の磁気パターンの有無および形成位置を検出することができる。それ故、磁界を印加したときの残留磁束密度Brおよび透磁率μが異なる複数種類の磁気パターンの媒体2における磁気パターン毎の有無および形成位置を残留磁束密度レベルおよび透磁率レベルの双方に基づいて識別することができる。
【0070】
また、磁気特性が第1の磁気パターンと第2の磁気パターンの中間に位置するような磁気パターンについては、図7(d1)に示すように、ヒステリシスループが、図7(b1)に示すハード材の磁気パターンのヒステリシスループと図7(c1)に示すソフト材の磁気パターンのヒステリシスループとの中間に位置するので、図7(d4)に示す信号パターンを得ることができ、かかる磁気パターンについても、有無や形成位置を検出することができる。
【0071】
(作用効果)
本例によれば、電源投入時および再起動時のオフセット調整処理により、磁気センサ装置20の個体差に起因した補正出力信号の出力レベルのばらつきが是正される。また、連続して複数の媒体2の磁気パターンを検出する場合には、媒体2の磁気パターンを検出する毎にオフセット調整処理が行われるので、温度等に起因した補正出力信号の出力レベルのばらつきによって磁気パターンの検出精度が低下することを回避或いは抑制できる。
【0072】
さらに、複数の磁気センサ素子40を搭載する多チャンネル型の磁気パターン検出装置1では各磁気センサ素子40からの検出信号の出力レベルがばらついていると磁気パターンの検出精度が低下するという問題が発生するが、本例によれば、チャンネルが切り替えられる毎に、各磁気センサ素子40からの補正出力信号の出力レベルを目標出力レベルに設定しているので、各磁気センサ素子40の個体差によるセンサ出力信号の出力レベルのばらつきに起因して磁気パターン検出精度が低下することを回避できる。
【0073】
(その他の実施の形態)
上記の例では、媒体2の磁気パターンを検出する毎にオフセット調整処理を行っているが、複数枚の媒体2の磁気パターンを検出する毎にオフセット調整処理を行ってもよい。
【0074】
また、上記の例では、電源投入時および再起動時にオフセット調整処理を行う加算信号調整部96は、二分探索法を用いてオフセット指令値の適正値を探索しているが、逐次探索によってオフセット指令値の適正値を探索してもよい。図9(a)はオフセット指令値を逐次探索するオフセット調整処理のフローチャートであり、図9(b)は逐次探索による適正値の探索例を示すグラフである。図9(b)のグラフの縦軸は補正出力信号の出力レベルであり、横軸はオフセット指令値である。本例の加算信号調整部96Aは、二分探索部962に代えて逐次探索部962Aを備える。
【0075】
ここで、逐次探索部962Aは、指令値出力部961からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力されるオフセット指令値を上限値に設定し、しかる後に、出力レベルが目標出力レベルとなるまで、指令値出力部961からのオフセット指令値を所定の値だけ減少させる処理および補正出力信号の出力レベルと目標出力レベルと比較する処理をこの順番で繰り返し、出力レベルが目標出力レベルとなったときのオフセット指令値を適正値として取得するものとすることができる。或いは、逐次探索部962Aは、指令値出力部961からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力されるオフセット指令値を下限値に設定し、しかる後に、出力レベルが目標出力レベルとなるまで、指令値出力部961からのオフセット指令値を所定の値だけ増加させる処理および補正出力信号の出力レベルと目標出力レベルと比較する処理をこの順番で繰り返し、出力レベルが目標出力レベルとなったときのオフセット指令値を適正値として取得するものとすることができる。
【0076】
本例では、逐次探索部962Aは、電源投入時または再起動時に、指令値出力部961からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力されるオフセット指令値を当該オフセット指令値の下限値に設定する(ステップST31)。次に、オフセット指令値を所定の値だけ加算して増加させる処理および補正出力信号の出力レベルと目標出力レベルと比較する処理をこの順番で繰り返して(ステップST32)、出力レベルが目標出力レベルとなったときのオフセット指令値を適正値として取得する(ステップST33)。適正値が取得されると、指令値出力部961から出力されるオフセット指令値を適正値に維持する(ステップST34)。ステップST31〜ST34は磁気センサ素子40が一定のタイミングおよび一定の順次で切り替えられる毎に行われる。そして、全ての磁気センサ素子40からの調整出力信号について、これらステップST31〜ST34が行われることにより、オフセット調整処理が完了する。
【0077】
図9(b)に示す例では、電源投入時または再起動時に、オフセット指令値として下限値C1を指令値出力部961からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力し、補正出力信号の出力レベルV1と目標出力レベルV0を比較している。この時点で補正出力信号の出力レベルV1と目標出力レベルV0は相違しているので、次にC1に所定の値を加算したC2を新たなオフセット指令値として指令値出力部961からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力し、補正出力信号の出力レベルV2と目標出力レベルV0を比較する。
【0078】
本例では、このような逐次探索を11回行っており、オフセット指令値としてC12を指令値出力部961からオフセット調整用基準電圧生成回路831aへ出力したときの補正出力信号の出力レベルV12が目標出力レベルV0となっている。従って、この時点のオフセット指令値C12を適正値として取得して、指令値出力部961からのオフセット指令値を適正値に維持する。このような逐次探索によれば、オフセット指令値の適正値を確実に求めることができる。
【符号の説明】
【0079】
1・磁気パターン検出装置、2・媒体、2a・磁性領域、5・回路部、10・搬送装置、11・媒体移動路、20・磁気センサ装置、21・センサ面、22・斜面部、25・ケース、30・磁界印加用磁石、31・磁界印加用第1磁石、32・磁界印加用第2磁石、35・永久磁石、40・磁気センサ素子、41・センサコア、41a・第1基板、41b・第2基板、41c・磁性材料層、42・胴部、43・集磁用突部、44・突部、47・非磁性部材、48・励磁コイル、49・検出コイル、50・励磁回路、51・励磁用ドライバアンプ、52・マルチプレクサ、53・フリップフロップ、54・タイミング調整部、60・信号処理部、70・増幅部、71・マルチプレクサ、72・アンプ、80・抽出部、82・クランプ回路、83・オフセット調整回路、84・ホールド回路、85・ゲイン設定部、90・デジタル信号処理部、91・コンバータ、92・加算回路、93・減算回路、94・制御信号出力部、95・ハードタイマ、96・加算信号調整部(第2加算信号調整部)、96A・加算信号調整部、97・加算信号調整部(第1加算信号調整部)、100・磁気パターン検出部、101・アナログスイッチ、101a・供給路、102・ゼロクランプ部、103・アナログスイッチ、350・着磁面、431・432・集磁用突部、441・442・突部、491・検出コイル、492・検出コイル、821・第1ダイオード、822・極性反転回路、823・第2ダイオード、831・第1オフセット調整回路、831a・832a・オフセット調整用基準電圧生成回路(D/A変換回路)、831b・832b・オペアンプ(加算器)、832・第2オフセット調整回路、841・第1ピークホールド回路、842・第2ピークホールド回路、851・ゲイン設定用第1アンプ、852・ゲイン設定用第2アンプ、961・指令値出力部、962・二分探索部、962A・逐次探索部、963・設定部、971・指令値出力部、972・比例関係記憶保持部、973・差分算出部、974・適正値算出部、975・設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサからのアナログのセンサ出力信号に加算信号を加算した補正センサ出力信号を生成する出力補正部と、
媒体が前記磁気センサを通過する際の前記補正センサ出力信号に基づいて当該媒体の磁気パターンを検出する磁気パターン検出部と、
前記媒体が前記磁気センサを所定枚数通過した後であって次の前記媒体が当該磁気センサを通過するまでの間に、前記加算信号の出力レベルを調整することによって前記補正センサ出力信号の出力レベルを予め定めた目標出力レベルとする第1加算信号調整部とを有することを特徴とする磁気パターン検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
電源投入時および再起動時に、前記加算信号の出力レベルを調整することによって前記補正センサ出力信号の出力レベルを前記目標出力レベルとする第2加算信号調整部を有し、
前記第1加算信号調整部が前記補正センサ出力信号の出力レベルを前記目標出力レベルとする処理速度は、前記第2加算信号調整部が前記補正センサ出力信号の出力レベルを前記目標出力レベルとする処理速度よりも高速であることを特徴とする磁気パターン検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記出力補正部は、前記加算信号を出力するD/A変換回路と、前記センサ出力信号と前記加算信号とを加算する加算器とを備えており、
前記第1加算信号調整部は、
前記加算信号の出力レベルを調整するためのデジタルの指令値を前記D/A変換回路へ出力する第1指令値出力部と、
前記補正センサ出力信号のダイナミックレンジ内で待機時における前記補正センサ出力信号の出力レベルと前記指令値との間で成立している比例関係を予め記憶保持している比例関係記憶保持部と、
前記補正センサ出力信号の出力レベルと前記目標出力レベルとの差分を算出する差分算出部と、
前記指令値出力部が出力している前記指令値、前記差分、および、前記比例関係に基づいて、前記補正センサ出力信号の出力レベルを前記目標出力レベルとするための前記指令値の適正値を算出する適正値算出部と、
前記適正値が算出されると、前記第1指令値出力部から出力される前記指令値を前記適正値に設定する第1設定部とを備えていることを特徴とする磁気パターン検出装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第2加算信号調整部は、
前記加算信号の出力レベルを調整するためのデジタルの指令値を前記D/A変換回路へ出力する第2指令値出力部と、
前記指令値の上限値と下限値の間を最初の探索範囲として、二分探索法に則って前記第2指令値出力部から出力される前記指令値を変化させる処理および前記補正センサ出力信号の出力レベルと前記目標出力レベルを比較する処理をこの順番で繰り返し、前記補正センサ出力信号の出力レベルが前記目標出力レベルとなったときの前記指令値を前記適正値として取得する二分探索部と、
前記適正値が取得されると、前記第2指令値出力部から出力される前記指令値を前記適正値に維持する第2設定部とを備えていることを特徴とする磁気パターン検出装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記第2加算信号調整部は、
前記加算信号の出力レベルを調整するためのデジタルの指令値を前記D/A変換回路へ出力する第2指令値出力部と、
前記第2指令値出力部の前記オフセット指令値を上限値に設定し、しかる後に、前記補正センサ出力信号の出力レベルが前記目標出力レベルとなるまで、前記第2指令値出力部から出力される前記指令値を所定の値だけ減少させる処理および前記補正センサ出力信号の出力レベルと前記目標出力レベルと比較する処理をこの順番で繰り返すか、または、前記オフセット第2指令値出力部の前記指令値を下限値に設定し、しかる後に、前記補正センサ出力信号の出力レベルが前記目標出力レベルとなるまで、前記第2指令値出力部から出力される前記指令値を所定の値だけ増加させる処理および前記補正センサ出力信号の出力レベルと前記目標出力レベルと比較する処理をこの順番で繰り返し、前記補正センサ出力信号の出力レベルが前記目標出力レベルとなったときの前記指令値を適正値として取得する逐次探索部と、
前記適正値が取得されると、前記第2指令値出力部から出力される前記指令値を前記適正値に維持する第2設定部とを備えていることを特徴とする磁気パターン検出装置。
【請求項6】
請求項3ないし5のうちのいずれかの項において、
前記磁気センサとして、複数の磁気センサを備えており、
前記センサ出力信号は、当該センサ出力信号が出力される前記磁気センサが前記複数の磁気センサのうちから一定のタイミングで順次に切り替わる信号であり、
前記第1加算信号調整部および前記第2加算信号調整部は、前記一定のタイミングで前記磁気センサが切り替わる毎に、前記加算信号の出力レベルを調整することによって前記補正センサ出力信号の出力レベルを前記目標出力レベルに設定することを特徴とする磁気パターン検出装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項において、
前記所定枚数は1枚であることを特徴とする磁気パターン検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−128683(P2012−128683A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279776(P2010−279776)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】