説明

磁気ヘッド用ストッパー

【課題】圧縮永久歪みの低減、係止部に対する粘着性の低減、およびアームの動作に起因する削れの防止を満足しつつ、成形性に優れ、且つ製造コストが低減された磁気ヘッド用ストッパーを提供すること。
【解決手段】磁気ヘッド用ストッパーは、磁気ヘッドを有するアームに形成されている係止部と当接可能であり、表面粗さ(Rz)が1μm以上で6.5μm以下であり、ポリウレタン系エラストマー組成物からなる。このポリウレタン系エラストマー組成物は、ジイソシアネートとアジペート系ポリオールとよりなるポリウレタンエラストマーを含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッド用ストッパー(以下では「ストッパー」と記すことがある)に関し、特にポリウレタン系エラストマー組成物からなるストッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録装置などに設けられたストッパーは、磁気ヘッドを有するアームの回転量を規制する。アームは、その長手方向における一点を回転中心として回転可能であり、長手方向の一端に磁気ヘッドを有し、長手方向の他端に係止部を有する。この係止部がストッパーに当接することにより、アームの回転が規制される。アームは、データの記録またはデータの再生が終了すると、元の位置まで戻る。そのため、ストッパーには、係止部との粘着性の最適化が要求されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
また、磁気記録装置の動作中、当該装置の内部では熱が発生する。そのため、広い温度範囲における高い緩衝性および安定した荷重変位量を有するストッパーが提案されている(たとえば特許文献2)。さらに、磁気記録装置の内部が熱環境下に曝されるとアウトガスの発生を引き起こすため、磁気記録装置の内部が熱環境下に曝された場合であってもアウトガスの発生を防止可能なストッパーが提案されている(たとえば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−40373号公報
【特許文献2】特開2005−281655号公報
【特許文献3】特開2001−288241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、圧縮永久歪みの低減、係止部に対する粘着性の低減、およびアームの動作に起因する削れの防止を満足しつつ、成形性に優れ、且つ製造コストが低減された磁気ヘッド用ストッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁気ヘッド用ストッパーは、磁気ヘッドを有するアームに形成されている係止部と当接可能であり、表面粗さ(Rz)が1μm以上で6.5μm以下であり、ポリウレタン系エラストマー組成物からなる。
【0007】
ポリウレタン系エラストマー組成物は、ジイソシアネートとアジペート系ポリオールとよりなるポリウレタンエラストマーを含むことが好ましく、JIS−A硬度が90以上98以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る磁気ヘッド用ストッパーでは、圧縮永久歪みが低減し、係止部に対する粘着性が低減し、さらにはアームの動作に起因する削れが防止され、成形性に優れ、且つ低コストで製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態における磁気記録装置の平面図である。
【図2】図1におけるストッパ機構の水平断面図である。
【図3】図1におけるストッパ機構の垂直断面図である。
【図4】本発明の実施例において係止部の当接面とストッパーとの粘着率の測定方法を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る磁気ヘッド用ストッパーについて図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
【0011】
<磁気ヘッド用ストッパー>
本発明に係る磁気ヘッド用ストッパーは、磁気記録装置などに設けられており、磁気ヘッドを有するアームの回転を規制する。また、本発明に係るストッパーは、1μm以上6.5μm以下の表面粗さRzを有し、ポリウレタン系エラストマー組成物からなる。以下では、図1〜図3を用いて磁気記録装置1の構成を説明することによりストッパーの一般的な機能などを説明してから、本発明に係るストッパーの表面粗さRzなどを説明する。図1は、本発明における磁気記録装置1の一例を示す平面図である。図2および図3は、それぞれ、図1におけるストッパ機構の水平断面図および垂直断面図である。図1〜図3におけるインナーストッパー8aおよびアウターストッパー8bが本発明に係るストッパーに相当する。なお、本発明に係るストッパーが設けられる磁気記録装置の構成は、図1に示す構成に限定されない。
【0012】
磁気記録装置1では、ベース部2に、データの記録媒体である磁気ディスク3と、磁気ヘッド4を有したアーム5とが配置されている。アーム5は、回転軸6を軸中心として回転し、先端部に磁気ヘッド4を有する。磁気ヘッド4は、磁気ディスク3へのデータの記録と磁気ディスク3からのデータの再生とを行なう。
【0013】
アーム5のうち回転軸6を挟んで磁気ヘッド4とは反対側には、係止部7が形成されており、係止部7は、インナーストッパー8aおよびアウターストッパー8bとストッパー機構を構成している。インナーストッパー8aおよびアウターストッパー8bは、係止部7の上に設けられたボイルコイルモーター9に保持されており、アーム5の移動量を所定範囲に規制する位置に設けられている。具体的には、磁気ヘッド4が磁気ディスク3へ近づく方向へ移動するようにアーム5が回転すると、係止部7のインナー側当接面7aがインナーストッパー8aに当接し、よって、アーム5のそれ以上の回転が阻止される(アームの回転規制)。同様に、磁気ヘッド4が磁気ディスク3から遠ざかる方向へ移動するようにアーム5が回転すると、図1に示すように、係止部7のアウター側当接面7bがアウターストッパー8bに当接し、よって、アーム5のそれ以上の回転が阻止される。
【0014】
表面粗さRz、JIS−A硬度およびポリウレタン系エラストマー組成物について、順に記す。下記<表面粗さRz>および<JIS−A硬度>では、「インナーストッパー8a」と「アウターストッパー8b」とを区別する必要がないため、単に「ストッパー8a」と表記し、「インナー側当接面7a」と「アウター側当接面7b」とを区別する必要がないため、単に「当接面7a」と表記する。また、下記<ポリウレタン系エラストマー組成物>では、図面を参照しながら説明する必要がないため、符号を付さずに単に「ストッパー」などと表記する。
【0015】
<表面粗さRz>
ストッパー8aの表面には、図2〜図3に示すように凹凸部10が形成されている。これにより、ストッパー8aの表面粗さRzは、1μm以上6.5μm以下となる。ここで、表面粗さRzは、最大高さ粗さであり、JIS B 0601:2001にしたがって測定される。
【0016】
ストッパー8aは係止部7の当接面7aに当接されるが、係止部7の当接面7aの表面は通常、平滑である。そのため、ストッパー8aの表面粗さRzが1μm未満であれば、係止部7の当接面7aとストッパー8aとの粘着率が高くなり過ぎることがある。よって、データの記録またはデータの再生が終了しても、アーム5を元の位置に戻すことができない場合がある。したがって、磁気記録装置1の誤作動などを招く。また、ストッパー8aの一部分が係止部7の当接面7aに付着した状態でアーム5が元の位置に戻ることがあり、ストッパー8aの破壊を招く。
【0017】
一方、ストッパー8aの表面粗さRzが6.5μmを超えると、離型性の低下を引き起こす。具体的には、成形されたストッパー8aを金型から取り外すこと(離型)が困難となり、離型時に凹凸部10の破壊を招くこともある。
【0018】
しかし、ストッパー8aの表面粗さRzが1μm以上6.5μm以下であれば、データの記録またはデータの再生が終了すると、ストッパー8aの破壊を招くことなくアーム5を元の位置に戻すことができ、磁気記録装置1の誤作動などを防止できる。それだけでなく、離型性の低下を防止できる(離型時における凹凸部10の破壊を防止できる)。
【0019】
また、ストッパー8aの表面粗さRzの下限値は1.7μmであることが好ましく、その上限値は4.5μmであることが好ましい。ストッパー8aの表面粗さRzが1.7μm以上4.5μm以下であれば、離型性の向上を図ることができる(成形されたストッパー8aを金型から容易に取り外すことができる)。
【0020】
また、係止部7の当接面7aとストッパー8aとの粘着率は、後述の実施例で記載の粘着トルク試験などにしたがって測定される。測定された粘着トルクが0.8mNm以下であれば、好ましくはこの粘着トルクが0.3mNm以下であれば、データの記録またはデータの再生が終了したときにアーム5を元の位置に戻すことができ、磁気記録装置1の誤作動などを防止できる。
【0021】
凹凸部10は、ストッパー8aの表面全体に形成されている必要はなく、ストッパー8aの表面のうち係止部7の当接面7aが当接する部分に形成されていれば良い。別の言い方をすると、ストッパー8aの表面全体の表面粗さRzが1μm以上6.5μm以下である必要はなく、ストッパー8aの表面のうち係止部7の当接面7aが当接する部分の表面粗さRzが1μm以上6.5μm以下であれば良い。これにより、上記効果(データの記録または再生が終了するとストッパー8aの破壊を招くことなくアーム5を元の位置に戻すことができ、離型性の低下を防止できる)が得られる。
【0022】
ストッパー8aはポリウレタン系エラストマー組成物からなり、ポリウレタン系エラストマー組成物は熱可塑性樹脂材料である。よって、射出成形法によりストッパー8aを成形することができる。たとえば、所定の表面粗さ(たとえば3μm以上6μm以下の表面粗さ)Rzを有する金型を用いてストッパー8aを成形すれば良い。ここで、金型の表面粗さRzもまた、JIS B 0601:2001にしたがって測定される。
【0023】
<JIS−A硬度>
ストッパー8aは、90以上98以下のJIS−A硬度を有していることが好ましく、92以上98以下のJIS−A硬度を有していることがさらに好ましい。この硬度が90未満であれば、係止部7がストッパーに当接したときに(以下では単に「当接時」と記す。)ストッパーの変形量が大きくなるおそれがある。そのため、ストッパーの圧縮永久歪みおよび反発弾性率が大きくなり、よって、磁気ヘッドが脱落し、データの読み書きができないという不具合が生じることがある。一方、この硬度が98を超えれば、ストッパーは当接時に生じるエネルギーを吸収しにくいおそれがある。そのため、衝撃音または異音の発生という不具合が生じることがある。しかし、ストッパー8aが90以上98以下のJIS−A硬度を有していれば、ストッパー8aの圧縮永久歪みおよび反発弾性率の低減が図られ、また安定したデータの読み書きができるという効果も得られる。
【0024】
ここで、圧縮永久歪みは、ASTM D−395(JIS K 6262)にしたがって測定され、40%以下であることが好ましく、30%以下であればさらに好ましい。圧縮永久歪みが40%を超えると、ストッパー8aの永久変形を無視することができず、よって、当接による凹み変形の発生という不具合の発生を招く。
【0025】
また、反発弾性率は、JIS K 6255にしたがって測定され、40%以下であることが好ましく、30%以下であればさらに好ましい。反発弾性率が40%を超えると、当接時にストッパー8aが吸収するエネルギーが大きくなり過ぎ、よって、磁気ヘッドが脱落し、データの読み書きができないという不具合の発生を招く。
【0026】
<ポリウレタン系エラストマー組成物>
本発明におけるポリウレタン系エラストマー組成物は、イソシアネートとポリオールとからなるポリウレタンエラストマーを含むことが好ましい。イソシアネートは、アルキレン基が結合された芳香族基を有することが好ましい。ポリオールは、アジペート系ポリオールであることが好ましい。ジイソシアネートとアジペート系ポリオールとの混合により縮合反応が生じ、よって、上記ポリウレタンエラストマーが得られる。したがって、アジペート系ポリオールにおけるOH基数に応じて、ジイソシアネートとアジペート系ポリオールとのモル比を設定すれば良い。
【0027】
アルキレン基が結合された芳香族基を有するイソシアネートとアジペート系ポリオールとを混合して反応させることにより本発明におけるポリウレタン系エラストマー組成物が得られるため、ポリウレタン系エラストマー組成物のコストを低く抑えることができる。よって、本発明に係るストッパーを低コストで提供できる。また、材料の強度物性が高いので、本発明に係るストッパーの成形性が向上する。さらに、成形性が高いため、離型剤の添加量を少なく抑えることができ、よって、磁気記録装置の作動中に当該装置内におけるアウトガスの発生量を低減できる。
【0028】
ここで、ストッパーの成形性は、次の方法にしたがって判断される。成形後のストッパーを金型から取り外すときに行なう冷却の時間を40秒未満、好ましくは30秒未満に設定してストッパーを成形したとき、得られたストッパーの外観に欠陥がなければそのストッパーは成形性に優れていると判断される。
【0029】
また、アウトガスの発生量は、ガスクロマトグラフィーにしたがって、熱環境下に曝されたストッパーから発生するアウトガスの量(濃度)を測定すれば良い。アウトガス成分の濃度が120ppm以下であれば、好ましくは80ppm以下であれば、アウトガスの発生量の低減可能なストッパーを提供できる。
【0030】
<ジイソシアネート>
ジイソシアネートは、アルキレン基が結合された芳香族基を有することが好ましく、たとえばメチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(以下では「MDI」と記す)、またはキシリレンジイソシアナートなどであれば良い。
【0031】
<アジペート系ポリオール>
アジペート系ポリオールは、アジピン酸と多価アルコールまたはグリコールとが脱水重縮合反応して得られた化合物であり、アジピン酸も含む。
【0032】
なお、本発明におけるポリウレタン系エラストマー組成物は、アウトガスの発生量が120ppmを超えない程度に、離型剤を含んでいても良い。これにより、離型性の更なる向上を図ることができる。
【実施例】
【0033】
実施例を挙げて本発明に係るストッパーをより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0034】
<実施例1〜3、比較例1〜2>
表面粗さが互いに異なる金型を用いて実施例1〜3および比較例1〜2の各ストッパーを作製し、ストッパーの表面粗さ、離型性、粘着トルク、硬度、圧縮永久歪み、反発弾性率、およびアウトガスの発生量を調べた。
【0035】
<ストッパーの作製>
表1に示す材料を用いてポリウレタン系エラストマー組成物を得た。サイドゲートによる樹脂材料の注入法により、220℃に加熱されたポリウレタン系エラストマー組成物を所定の金型(金属製)内に注入した。ポリウレタン系エラストマー組成物が室温まで低下したら、成形されたストッパーを金型から取り外した。
【0036】
金型は、それぞれ、表1に示す表面粗さを有していた。そのため、成形されたストッパーには金型の凹凸が転写されていた。なお、表1に示す金型の表面粗さは、JIS B 0601:2001にしたがって測定されたものである。
【0037】
<表面粗さの測定>
JIS B 0601:2001にしたがって、ストッパーの表面粗さを測定した。その結果を表1の「ストッパーの表面粗さ(μm)」に記す。
【0038】
<離型性の評価>
金型から取り外したストッパーを視認して外見上の不良の有無を調べた。外見上の不良が確認されなかった場合には表1の「離型性」に「A1」と記し、突出または表面の剥がれなどの外見上の不良が確認された場合には表1の「離型性」に「C1」と記している。
【0039】
<粘着トルクの測定>
まず、係止部をストッパーに当接させた状態にして0℃と80℃とのそれぞれの環境下に2時間放置した状態を1サイクルとして、それを15サイクル行なった。その後、図4に示すように、トルクゲージ11の先端と磁気ヘッド4とをワイヤー12で連結させて、アウターストッパー8bの引き剥がし力を確認した。回転軸6から磁気ヘッド4とワイヤー12との接続部13までの距離と引き剥がし力とによって、粘着トルクを計算した。算出結果を表1の「粘着トルク(mNm)」に記す。
【0040】
<硬度の測定>
JIS K 6253にしたがって、ストッパーの硬度(JIS−A硬度)を測定した。その結果を表1の「硬度」に記す。
【0041】
<圧縮永久歪みの測定>
ASTM D−395(JIS K 6262)にしたがって、ストッパーの圧縮永久歪みを測定した。その結果を表1の「圧縮永久歪み(%)」に記す。数値が小さいほどストッパーが永久変形し難いことを示す。
【0042】
<反発弾性率の測定>
JIS K 6255にしたがって、ストッパーの反発弾性率を測定した。その結果を表1の「反発弾性率(%)」に記す。数値が小さいほど当接時におけるストッパーの吸収エネルギーが小さいことを示す。
【0043】
<アウトガスの発生量の計測>
密閉されたチャンバー内でストッパーを150℃下に曝した。発生したアウトガスを活性炭に吸着させ、別のチャンバー内でこの活性炭からアウトガス成分を熱抽出し、グラスウールに濃縮させた。濃縮されたアウトガス成分をガスクロマトグラフィー/質量分析法で定量した。その結果を表1の「アウトガスの発生量(ppm)」に記す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すように、ストッパーの表面粗さRzは、金型の表面粗さに近い値を示した。このことから、金型の表面粗さを制御すれば所望の表面粗さを有するストッパーが得られることが分かった。
【0046】
また、ストッパーの表面粗さRzは、比較例1では1μm未満であり、比較例2では6.5μmを上回っていたが、実施例1〜3では1μm以上6.5μm以下であった。よって、実施例1〜3では、比較例1〜2に比べて離型性が向上し、凹凸部の破壊を伴うことなくストッパーを金型から取り外すことができた。
【0047】
また、ストッパーの表面粗さRzは、比較例1では1μm未満であったが、実施例1〜3では1μm以上6.5μm以下であった。そのため、実施例1〜3では、比較例1に比べて、ストッパーの粘着トルクが低下した。よって、実施例1〜3におけるストッパーを用いれば、データの記録または再生が終了したときにアームをスムーズに元の位置に戻すことができる。
【0048】
<実施例2、実施例4、比較例3〜5>
表2に示す材料を用いたことを除いては上記<実施例1〜3、比較例1〜2>における<ストッパーの作製>での方法にしたがって、実施例2、実施例4および比較例3〜5の各ストッパーを作製した。その後、上記<実施例1〜3、比較例1〜2>に記載の方法にしたがって、ストッパーの表面粗さ、硬度、圧縮永久歪み、反発弾性率、およびアウトガスの発生量を調べた。また、以下の方法にしたがって、ストッパーの成形性を調べた。
【0049】
<成形性の評価>
成形後のストッパーを金型から取り外すときに行なう冷却の時間を変更して、金型から取り外されたストッパーの変形の有無を調べた。冷却時間を30秒未満としたときにストッパーが変形していなければ表2の「成形性」に「A2」と記し、冷却時間を30秒以上40秒未満としたときにストッパーが変形していなければ表2の「成形性」に「B2」と記し、冷却時間を40秒以上としなければストッパーの変形を防止できなかった場合には表2の「成形性」に「C2」と記した。
【0050】
【表2】

【0051】
表2に示すように、実施例2では、ポリオールとしてアジペート系ポリオールを用い、イソシアネートとしてMDIを用いた。一方、比較例3では、イソシアネートとしてMDIを用いたが、ポリオールとしてエーテル系ポリオールを用いた。比較例4では、ポリオールとしてカプロラクトン系ポリオールを用いたが、イソシアネートとしてTODI(3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート)を用いた。比較例5では、ポリオールとしてカーボネート系ポリオールを用い、イソシアネートとしてTODIを用いた。よって、実施例2に係るポリウレタン系エラストマー組成物の材料は、比較例3〜5におけるポリウレタン系エラストマー組成物の材料に比べて、強度物性に優れた。したがって、実施例2では、比較例3〜5に比べてストッパーの成形性が向上した。
【0052】
また、実施例4においても、イソシアネートとしてMDIを用いたため、比較例3〜5に比べてストッパーの成形性が向上した。
【0053】
さらに、実施例2および実施例4では、成形性に優れるため、離型剤の添加が不要であり、よって、アウトガスの発生量を120ppm以下に抑えることができた。
【0054】
<実施例2、実施例5および実施例6>
硬度が互いに異なるようにポリオールの配合量およびイソシアネートの配合量の少なくとも1つを変更したことを除いては上記<実施例1〜3、比較例1〜2>における<ストッパーの作製>での方法にしたがって、実施例2、実施例5および実施例6の各ストッパーを作製した。その後、上記<実施例2、実施例4、比較例3〜5>に記載の方法にしたがって、ストッパーの表面粗さ、成形性、硬度、圧縮永久歪み、反発弾性率、およびアウトガスの発生量を調べた。
【0055】
【表3】

【0056】
表3に示すように、硬度が92以上98以下であれば、成形性に優れ、且つ所定の圧縮永久歪みおよび所定の反発弾性率を有するストッパーを提供できることが分かった。
【0057】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 磁気記録装置、2 ベース部、3 磁気ディスク、4 磁気ヘッド、5 アーム、6 回転軸、7 係止部、7a インナー側当接面、7b アウター側当接面、8a インナーストッパー、8b アウターストッパー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドを有するアームに形成されている係止部と当接し、表面粗さ(Rz)が1μm以上で6.5μm以下であり、ポリウレタン系エラストマー組成物からなる磁気ヘッド用ストッパー。
【請求項2】
前記ポリウレタン系エラストマー組成物は、ジイソシアネートとアジペート系ポリオールとよりなるポリウレタンエラストマーを含む請求項1記載の磁気ヘッド用ストッパー。
【請求項3】
前記ポリウレタン系エラストマー組成物は、JIS−A硬度が90〜98である請求項1または2記載の磁気ヘッド用ストッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−45494(P2013−45494A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184745(P2011−184745)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】