説明

磁気ヘツド装置

【構成】 少なくとも一方が接地された一対の薄膜磁気コアによってMR感磁部が挾み込まれてなるMRヘッド3をヘッド支持機構1に支持されたスライダ2に一体形成してなる磁気ヘッド装置において、MRヘッド3とヘッド支持機構1を絶縁層16によって電気的に絶縁する。
【効果】 信号雑音比の向上が図れ、正確な再生信号を読み出すことができるとともに、静電破壊を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばハードディスクに対する再生ヘッドとして磁気抵抗効果型磁気ヘッドをスライダに搭載してなる磁気ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、ハードディスク・ドライブ装置の再生ヘッドとしては、短波長感度に優れることから磁気抵抗効果型磁気ヘッド(以下、MRヘッドと称する。)が主流となりつつある。このMRヘッドを用いてハードディスクに記録されている情報を読み出すには、ジンバルと称される弾性部材によって支持されたAl2 3 −TiC基体等よりなるスライダに上記MRヘッドを搭載し、回転操作されるハードディスクに対してこのMRヘッドを微小間隙を持って浮上せしめることで行われる。
【0003】ところで、上記MRヘッドにおいては、ハードディスクの回転によってディスク表面に帯電する電荷が動作開始時又は停止時に当該ハードディスクとの対接面、すなわちABS(エア・ベアリング・サーフェス)面に臨む磁気抵抗効果感磁部(以下、MR感磁部と称する。)或いはこのMR感磁部の先端電極に飛び込むことにより、これらMR感磁部又は先端電極が破壊されるという事故(静電破壊)が生じやすい。
【0004】このため、従来は、ハードディスクからの放電電荷を積極的に受け入れる導体をABS面に臨んで設け、その導体から直接接地部へ放電電荷を流し込むような構造がとられている。すなわち、先端部と後端部にそれぞれ積層されたMR感磁部を挾んで設けられる一対の薄膜磁気コアの一方の薄膜磁気コアと、MR感磁部のABS面に臨む接地側の電極とを導通することによって、上記ハードディスクからの放電電荷による電流を接地させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述の構成をとると、ドライブ装置内の例えば駆動系や回路系等から発生する広帯域にわたるノイズがヘッド支持機構のジンバル又はスライダを通じてMR感磁部に伝播されるという不都合が生ずる。このノイズは、信号雑音比を劣化させる要因となる。したがって、正確な再生信号を読み出すには、ドライブ装置内の系からのノイズの伝播を確実に遮断することが望まれる。そこで本発明は、かかる従来の技術的課題に鑑みて提案されたものであって、ハードディスク・ドライブ装置内の系からのノイズを確実に遮断し、信号雑音比の向上が図れる磁気ヘッド装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明は、少なくとも一方が接地された一対の薄膜磁気コアによって磁気抵抗効果感磁部が挾み込まれてなる磁気抵抗効果型磁気ヘッドをヘッド支持機構に支持されたスライダに一体形成してなる磁気ヘッド装置において、上記磁気抵抗効果型磁気ヘッドとヘッド支持機構が電気的に絶縁され、ノイズの伝播が遮断されていることを特徴とするものである。
【0007】さらに本発明は、請求項1記載の磁気ヘッド装置において、ヘッド支持機構とスライダ間に絶縁層が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
【作用】第1の発明では、磁気抵抗効果型磁気ヘッドとヘッド支持機構が電気的に絶縁されているので、ドライブ装置内の駆動系や回路系等より上記ヘッド支持機構を通じて伝播されてくるノイズが遮断され、抵抗効果型磁気ヘッドへは至らない。
【0009】第2の発明では、磁気抵抗効果型磁気ヘッドが形成されるスライダとヘッド支持機構間に絶縁層が設けられているので、駆動系や回路系等より上記ヘッド支持機構を通じて伝播されてくるノイズがこの絶縁層によって確実に遮断され、磁気抵抗効果型磁気ヘッドへは至らない。したがって、信号雑音比の信頼性が向上し、正確な再生信号の読出しが行える。
【0010】
【実施例】以下、本発明を適用した具体的な実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】第1の実施例本実施例の磁気ヘッド装置は、図1に示すように、ヘッド支持機構1により支持されたスライダ2の一主面に再生ヘッドとしてMRヘッド(磁気抵抗効果型磁気ヘッド)3が形成されている。上記ヘッド支持機構1は、ドライブ装置のアーム部に固定されるマウンティングプレート(図示は省略する。)と、このマウンティングプレートによって基端部がアーム部に固定されるロードビーム4と、このロードビーム4の先端部に設けられる薄板よりなるジンバル5とから構成され、これらはスポット溶接されて組み立てられている。
【0012】マウンティングプレートとロードビーム4は、アーム部と連動して動き、スライダ2に搭載されるMRヘッド3をハードディスクの所望の記録トラック位置にディスクの径方向に移動してアクセスするようになっている。上記ジンバル5は、アーム部とスライダ2間のクッション的な役割を果たすもので、スライダ2の安定した浮上姿勢を確保するようになっている。
【0013】一方、スライダ2は、例えばAl2 3 −TiC等の非磁性且つ導電性を有する材料からなり、ハードディスクとの対向面にはこのスライダを当該ハードディスクに対して微小間隙を持って浮上させるための空気流入溝6が設けられている。上記スライダ2は、ジンバル5に取付けられ、このジンバル5に設けられるディンプルと称される突起によっていわゆる点接触状態で支持されている。したがって、仮にスライダ2に不用意な外力が加わっても、このディンプルによりスライダ2の浮上姿勢が可変され、ハードディスクに大きな衝撃を与えないようになっている。
【0014】そして、上記MRヘッド3は、再生ギャップとして動作する磁気ギャップgをハードディスクとの対接面となるABS面7に望ませるようにして上記スライダ2の短辺方向の一側面に設けられている。このMRヘッド3は、図2及び図3に示すように、前方端部間に磁気ギャップgを構成する第1の薄膜磁気コア8と第2の薄膜磁気コア9がスライダ2に相対向して所定の間隔を持って積層形成されている。
【0015】第1の薄膜磁気コア8は、ABS面7にその一端を臨ませるようにしてこのABS面7に対して略直交する方向に延在して設けられている。一方、第2の薄膜磁気コア9は、上記ABS面7にその一端を臨ませるようにしてこのABS面7に対して略直交する方向に延在して設けられるとともに、そのABS面7に臨む前方端部が上記第1の薄膜磁気コア8との間隙が狭まるように直角に折折曲されている。その折曲された前方端部間に再生用ギャップとして機能する磁気ギャップgが上記ABS面4に臨んで構成されている。さらに、上記第2の薄膜磁気コア9は、後方端部で上記第1の薄膜磁気コア8と磁気的に接続するようになっている。なお、第2の薄膜磁気コア9の上には、上記MRヘッド3を保護するための保護層17が設けられている。
【0016】上記ABS面7に臨む第1の薄膜磁気コア8と第2の薄膜磁気コア9の先端部間には、磁気抵抗効果感磁部であるMR感磁部10が設けられている。MR感磁部10は、平面形状が細長い長方形パターンとして形成され、その長手方向がABS面7に対する直交方向と合わせて設けられている。そしてこのMR感磁部10は、その一端縁がABS面7に臨むようになされるとともに、後端縁が相対向する第1の薄膜磁気コア8と第2の薄膜磁気コア9の略中途部に至る位置とされている。なお、上記MR感磁部10は、第1の薄膜磁気コア8との絶縁をとるために、これら第1の薄膜磁気コア8と第2の薄膜磁気コア9間に設けられる絶縁層11によって電気的に絶縁されるようになっている。また、上記MR感磁部10は、バルクハウゼンノイズの発生を回避するために、例えばSiO2 等よりなる非磁性絶縁層を介して静磁的に結合する一対のMR薄膜を積層する形とすることが望ましい。
【0017】そして、上記MR感磁部10の先端部と後端部には、図示しない定電流源からのセンス電流を通ずるための一対の電極12a,12b(以下、ABS面7側に設けられる電極11aを先端電極12a、後端側に設けられる電極12bを後端電極12bと称する。)がそれぞれ当該MR感磁部10と電気的に接続して積層形成されている。先端電極12aは、その一端がABS面7に臨んで設けられるとともに、第2の薄膜磁気コア9と磁気的には絶縁されるが電気的には導通してこの第2の薄膜磁気コア9の形状に沿ってバック側に至る位置まで連続膜として形成されている。そして、この先端電極12aは、電気的に導通する第2の薄膜磁気コア9のバック側より伸びる導体パターン9aを介して接地側のMR端子13に接続されている。なお、上記先端電極12aには、例えば非磁性且つ導電性に優れたTi,Cr,Mo,W,C,ステンレス等の耐湿性の良い材料が使用される。
【0018】一方、後端電極12bは、平面矩形状の導体パターンとして形成され、その一部が上記MR感磁部10を横切るようにして設けられている。そして、この後端電極12bの一部よりバック側に伸びる導体パターンの端部14が、上記MR感磁部10にセンス電流を流す電流源側の端子となっている。
【0019】そして、上記先端電極12aと後端電極12bの間には、MR感磁部10への通電によってこのMR感磁部10に所要の向きの磁化状態を与え、磁気抵抗特性が優れた直線性と高い感度を示す特性領域で動作するようになすバイアス導体15が設けられている。バイアス導体15は、MR感磁部10を横切る形で上記一対の電極12a,12b間に設けられ、その両端部がそれぞれバック側へ引き出されるようになっている。そのバック側に引き出された端部15a,15bが、上記バイアス導体15に電流を通ずるための端子とされている。
【0020】そして特に、本実施例の磁気ヘッド装置では、MRヘッド3とヘッド支持機構1が電気的に絶縁されるようになっている。すなわち、スライダ2と第1の薄膜磁気コア8の間に絶縁層16が設けられることによって、MRヘッド3とヘッド支持機構1が電気的に絶縁されている。この結果、ドライブ装置内の例えば駆動系や回路系等からヘッド支持機構1を通じて伝播されてくるノイズは、この絶縁層16によって確実に遮断される。これにより、MRヘッド3へのノイズの入り込みが防止され、読出し時における信号雑音比が向上するとともに、正確な再生信号の読出しが行える。
【0021】また、この例の磁気ヘッド装置においては、先端電極12aと第2の薄膜磁気コア9とが電気的に導通され且つ接地されていることから、ハードディスク上に帯電した電荷が磁気ギャップ部に飛び込んできたとしても、第1の薄膜磁気コア8、第2の薄膜磁気コア9、先端電極12aの何れかを介して接地されたMR端子13へと流れる。この結果、MR感磁部10へは放電電流が流れないため、上記MR感磁部10の放電による損傷事故、つまり静電破壊が回避される。
【0022】第2の実施例この実施例の磁気ヘッド装置は、主として先端電極12aが第2の薄膜磁気コア9と電気的に導通していない点を除き、先の実施例1の磁気ヘッド装置と同様にMRヘッド3がヘッド支持機構1によって支持されたスライダ2に搭載される構成をとり、且つMRヘッド3とスライダ2間にドライブ装置内の系からのノイズの伝播を遮断する絶縁層16が設けられる構成となっている。したがって、この例では先の実施例1と相違する部分についてのみ説明する。
【0023】この実施例の磁気ヘッド装置では、第2の薄膜磁気コア9はABS面7の前方端部で屈曲することなく当該ABS面7に対して直交方向にストレートに設けられ、実施例1の磁気ヘッドよりも第1の薄膜磁気コア8と第2の薄膜磁気コア9間の対向距離が大きくなされている。そしてさらに、この第2の薄膜磁気コア9は、第1の薄膜磁気コア8に対してバック側で当該第1の薄膜磁気コア9に穿設された孔部1aに埋め込まれることによって磁気的に導通するようになっている。
【0024】また、先端電極12aは、後端電極12bよりも大きな平面矩形状の導体パターンとして形成され、その一部が上記MR感磁部10を横切るようにして設けられている。そして、この後端電極12bよりバック側に引き出された導体パターンの端部18が接地側のMR端子となされている。なお、このMR端子には第2の薄膜磁気コア9よりバック側へ伸びる導体パターン9aが電気的に接続されている。
【0025】この実施例の磁気ヘッド装置においては、実施例1の磁気ヘッド装置と同様に、MRヘッド3とスライダ2間に設けられた絶縁層16によってドライブ装置内の駆動系・回路系等からのノイズの伝播がここで確実に遮断されるようになっており、読出し時における信号雑音比の信頼性が確保されている。また、この実施例の磁気ヘッド装置においても、導通された第1の薄膜磁気コア8と第2の薄膜磁気コア9が接地されているため、ハードディスクに帯電する電荷は電位が零になっている第1の薄膜磁気コア8又は第2の薄膜磁気コア9に優先的に流れる。したがって、ABS面7にその一端部が臨む先端電極12a又はMR感磁部10へは放電電流が流れず、静電破壊が起こらないようになっている。
【0026】実施例3この実施例の磁気ヘッド装置は、実施例1の磁気ヘッド装置と同様にMRヘッド3がヘッド支持機構1によって支持されたスライダ2に搭載される構成をとるが、ジンバル5とスライダ2の接続部にドライブ装置内の系からのノイズの伝播を遮断する絶縁層16が設けられている点で異なる。なお、その他の構成、つまりMRヘッド3は実施例1と同一の構成である。
【0027】したがって、この実施例の磁気ヘッド装置では、ジンバル5が固定されるスライダ2の主面全面に亘ってドライブ装置内の駆動系・回路系等から上記ヘッド支持機構1を通じて伝播されてくるノイズがこの絶縁層16によって確実に遮断される。これにより、MRヘッド3へのノイズの伝播が遮断され、読出し時における信号雑音比が向上し、正確な再生信号を読み出すことができる。
【0028】なお、前述した実施例1ないし実施例3では、ヘッド支持機構1とスライダ2或いはスライダ2とMRヘッド3間に絶縁層16を設けることにより、ドライブ装置内の系からのノイズを遮断するようにしたが、ヘッド支持機構1自体をノイズを遮断する絶縁材料で形成するようにしても同様の効果がある。
【0029】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、第1の発明にかかる磁気ヘッド装置によれば、MRヘッドとヘッド支持機構が電気的に絶縁されているので、ドライブ装置内の例えば駆動系や回路系等より上記ヘッド支持機構を通じて伝播されてくるノイズが上記MRヘッドへ至ることはない。したがって、信号雑音比の向上が図れるとともに、正確な再生信号を読み出すことができる。また、MR感磁部を挾み込む薄膜磁気コアの少なくとも一方が接地されているので、媒体からの電荷のMR感磁部への飛び込みを防止することができ、静電破壊を回避することができる。
【0030】さらに第2の発明にかかる磁気ヘッド装置によれば、ヘッド支持機構とMRヘッドが形成されるスライダ間に絶縁層が設けられているので、ドライブ装置内の駆動系や回路系等より上記ヘッド支持機構を通じて伝播されてくるノイズをこの絶縁層によって確実に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明を適用した磁気ヘッド装置の全体を示す斜視図である。
【図2】第1の発明を適用した磁気ヘッド装置のMRヘッド部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図3】図2のMRヘッドの概略的な平面図である。
【図4】第1の発明を適用した磁気ヘッド装置の他の例のMRヘッド部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図5】図4のMRヘッドの概略的な平面図である。
【図6】第2の発明を適用した磁気ヘッド装置のMRヘッド部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図7】第2の発明を適用した磁気ヘッド装置の全体を示す斜視図である。
【符号の説明】
1・・・ヘッド支持機構
2・・・スライダ
3・・・MRヘッド(磁気抵抗効果型磁気ヘッド)
5・・・ジンバル
7・・・ABS面
8・・・第1の薄膜磁気コア
9・・・第2の薄膜磁気コア
10・・・MR感磁部
12a・・・先端電極
12b・・・後端電極
15・・・バイアス導体
16・・・絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも一方が接地された一対の薄膜磁気コアによって磁気抵抗効果感磁部が挾み込まれてなる磁気抵抗効果型磁気ヘッドをヘッド支持機構に支持されたスライダに一体形成してなる磁気ヘッド装置において、上記磁気抵抗効果型磁気ヘッドとヘッド支持機構が電気的に絶縁され、ノイズの伝播が遮断されていることを特徴とする磁気ヘッド装置。
【請求項2】 ヘッド支持機構とスライダ間に絶縁層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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