磁気共鳴イメージングのためのガドリニウム発現脂質ナノ粒子
金属イオンを発現する脂質ナノ粒子および組成物を磁気共鳴イメージングに用いる方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は2009年2月13日に出願された米国仮出願第61/152,459号、および2009年3月24日に出願された米国仮出願第61/162,989号の利益を主張する。各出願は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府のライセンス権の陳述
この発明は、国立衛生研究所/国立アレルギー・感染症研究所によって授与された契約第AI 52663号の下で政府の支援を使ってなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
リンパ節転移の早期診断はほとんどの種類の癌に対する処置を決定するために必須である。リンパ節切除および組織学評価は現在ゴールドスタンダードであるが、侵襲性で偽陰性を生じることがあるため理想的なわけではない。磁気共鳴(MR)イメージングは、リンパ節への癌の伝播を検出するための強力で非侵襲性のツールになってきている。標準的なMRイメージングはサイズおよび形態の基準に頼ってリンパ節転移を含む潜伏リンパ球組織を決定しているが、これは60%程度の低い精度である。MRコントラスト増強剤は、早期腫瘍検出でのそれらの有用性により、より広範に使用されるようになってきている。コントラスト増強剤は、転移リンパ節および健全リンパ節中へ異なる速度で拡散して「陰影欠損」を生じさせる。造影剤による陰影欠損を用いてリンパ節転移を予測することは、サイズ基準と対照的に、感度を29%から93%へ増加させる。
【0004】
一般的に、2種のMRコントラスト増強剤がある。超常磁性造影剤は低いr2/r1比を有し、T2−およびT2*−強調イメージ中に暗点を作る。これらは通常、酸化鉄粒子をベースにしており、陰性造影剤と呼ばれる。他方、常磁性造影剤はr1緩和能を増加させ、高いr2/r1比を有し、T1強調MRイメージ中に明点を作る。これらの造影剤は陽性造影剤として知られ、通常はガドリニウム(Gd3+)の錯体である。
【0005】
T1短縮は水中のプロトンとの双極子−双極子相互作用によって起こるので、その7個の不対電子をもつGd3+はT1緩和剤に最適な選択肢である。Gd3+は重金属毒素であるため、これは通常、強固に結合した直鎖またはマクロなキレートとして配送される。キレート化された形態のGd3+は、遊離Gd3+の細胞取り込みを防止することによって、および腎毒性をもたらす腎臓ろ過に対するクリアランスをほとんど排他的に限定することによって毒性を減少させる。毒性を減少させるにもかかわらず、ガドリニウムキレートの急速なクリアランスおよび小さい分子サイズは低レベルGd3+がリンパ節中に蓄積することを意味し、これらの薬剤をMRリンパ管造影法に対する悪い選択肢にする。加えて、FDAは、急性または慢性の腎不全をもつ被験者の良好に灌流した組織および器官を同定する、すべての市販されているガドリニウム造影剤について、重篤な腎性全身性線維症の危険性についての警告を公表している。
【0006】
Gd3+を含むリポソームおよび脂質ナノ粒子はリンパ節のMRコントラストイメージングにとっていくつかの利点を有する。リポソームならびに脂質ナノ粒子は多量のGd3+を封入するかまたはそれらの表面に結合することによって毒性を低下させることができる。しかし、静脈内(IV)投与されたリポソームの急速クリアランスメカニズムは、リンパ節中のリポソーム会合Gd3+の蓄積をそれほど改善するわけではない。血液中の一部の脂質ナノ粒子のみが細網内皮細胞によって貪食され、これらの細胞の一部のみがリンパ系へ移動する。したがって、IV投与されたリポソームはリンパ系およびリンパ節の間接ターゲティングを与える。しかし、この手法はGd3+担持リポソームの大部分が血液中の細網内皮細胞によって除去されることをもたらす。サイズおよび表面修飾によってリンパ節蓄積に対して血液中のリポソームの薬物動態学を最適化できる。リポソームの直径を200nm未満に減少させると、食細胞依存クリアランスを減少させ、血液中の循環時間を増加させる。また、リポソーム表面にポリエチレングリコールを付加すること(PEG、通常、PEG化という)は循環時間およびリポソームの安定性を増加させることができる。
【0007】
現在、ジエチレントリアミンペンタアセチル(DTPA)でキレート化されたガドリニウムは、磁気共鳴イメージングにおいてコントラストを与えて病原組織を同定する。都合の悪いことに、臨床用途のために承認された可溶なGd−DTPA錯体(たとえばOMNISCAN)は数分以内に取り除かれ、リンパ球組織における十分な濃度または時間を与えない。加えて、残りの部分のガドリニウムは腎不全患者に線維症をもたらすことがある。
【0008】
造影剤の開発の進展にもかかわらず、より長い生体内寿命を有し、分析すべき組織に十分な濃度、および副作用を避ける低い残存ガドリニウム濃度を与える改善された造影剤に対する要望がある。本発明はこの要望を実現し、さらに関連する利点を与えることを追求する。
【0009】
発明の概要
本発明は金属イオンを発現する組成物およびこの組成物の使用方法を提供する。
【0010】
一態様において、本発明は脂質、ポリアルキレン含有脂質、および脂質含有金属キレート化剤を含む組成物を提供する。
【0011】
代表的な脂質はリン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロールおよびステロイド誘導体、胆汁酸および誘導体、カルジオリピン、アシル−グリセリドおよび誘導体、糖脂質、アシル−ペプチド、脂肪酸、炭水化物系 ポリマー、官能基化シリカ、ポリ無水物 ポリマー、ポリラクテート−グリコレート ポリマー、およびバイオポリマーを含む。一実施形態において、脂質はリン脂質である。代表的なリン脂質は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC);ジパルミトイル ホスファチジルコリン;ジミリストイル ホスファチジルコリン;ジオレオイル ホスファチジルコリン;卵、大豆,亜麻仁などから誘導されたエステル交換リン脂質;およびホスファチジル エタノールアミンで置換されたホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジル セリン、およびホスファチジン酸を含む。
【0012】
代表的なポリアルキレン含有脂質はポリオキシエチレン含有脂質またはポリオキシプロピレン含有脂質を含む。一実施形態において、ポリアルキレン含有脂質はポリエチレングリコールで官能基化されたリン脂質たとえばN−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノール−アミン(mPEG−2000−DSPE)である。
【0013】
代表的な脂質含有金属キレート化剤は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−ジエチレントリアミンペンタアセチル(DSPE−DTPA)、テトラアザシクロドデカン、テトラアセチル(ガドジアミド)−PE、および脂質官能基化−[N,N−ビス[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−エチル]−グリシナト−(5”)]を含む。一実施形態において、脂質含有金属キレート化剤はPEG化された脂質部分を含む。一実施形態において、脂質含有金属キレート化剤はPEG化されたDTPAである。他の実施形態において、脂質含有金属キレート化剤はDSPE−BOPTA、DSPE−DO3A、およびDSPE−DOTAである。
【0014】
一実施形態において、組成物はさらにターゲティング成分を含む。代表的なターゲティング成分は蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、抗体またはこれらのフラグメント、低分子、糖もしくは多糖またはこれらの誘導体、および核酸を含む。
【0015】
一実施形態において、本発明の組成物はナノ粒子の形態を有する。一実施形態において、ナノ粒子は約5nmないし約2μmの直径を有する。一実施形態において、ナノ粒子は約50nmないし約100μmの直径を有する。
【0016】
本発明の組成物はさらに金属イオンを含んでいてもよい。好適な金属イオンは常磁性金属イオンおよび放射性同位元素のイオンを含む。代表的な常磁性金属イオンGd3+、Cu2+、Fe3+、Fe2+,およびMn2+イオンを含む。代表的な放射性同位元素のイオンは68Ga、55Co、86Y、90Y、177Lu,および111Inイオンを含む。
【0017】
他の態様において、本発明はキャリアおよび複数の本発明のナノ粒子を含む投与可能な組成物を提供する。好適なキャリアは薬学的に許容できるキャリアたとえば注射用生理的食塩水または注射用ブドウ糖を含む。
【0018】
さらなる態様において、本発明はイメージ化される被験者に有効量の本発明の組成物を投与することを含む、組織のイメージング方法を提供する。この方法によってイメージ化できる代表的な組織は、リンパ球、心血管、肝臓、腎臓、脳、心臓、筋肉、および胃腸管組織、ならびにリンパ系または脈管(血液)系によって到達できる他の組織を含む。
【0019】
他の態様において、本発明は、放射性同位元素のアニオンを含む有効量の本発明の組成物を癌細胞に投与することを含む、放射線癌治療薬剤を癌細胞へ配送する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の上述の態様および多くの付随する利点は、添付の図面と関連して考慮したときに、以下の詳細な説明を参照することによってこれらがよりよく理解されるようになるので、より容易に把握されるようになるであろう。
【図1】図1は、本発明の代表的な配合物についてGd3+:DTPA−PE(m/m)比の関数としてのカルセインの蛍光の減少を示すグラフである。配合物をカルセインとともに培養してその蛍光を測定した。遊離のGd3+がカルセインと結合してその蛍光を減少させる。
【図2】図2Aおよび2BはGd3+ 濃度の関数としての緩和能を比較している。図2AはT1緩和速度へのGd3+投与量効果を比較している;本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)について標準的なスピンエコーシーケンスを用いて1.5Tの磁気共鳴(MR)スキャナーで測定したGd3+濃度(μmol/mL)のR1(1/T1)値を、他の配合物と比較している。図2BはT2緩和速度へのGd3+投与量効果を比較している;本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)について標準的なスピンエコーシーケンスを用いて1.5Tの磁気共鳴(MR)スキャナーで測定したGd3+濃度(μmol/mL)のR2(1/T2)値を、他の配合物と比較している。
【図3】図3は本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)の注射後24時間までのブタオザルの腹部腔の時間経過冠状イメージを示す。図3A−3Dは投与前(3A)ならびに投与後20分(3B)、6時間(3C)、および24時間(3D)の肝臓の時間系列イメージである。上のパネルはリンパ節の時間系列イメージを示す。リンパ節および肝臓は、バックグランドの組織と比較して高いコントラストを示す。
【図4】図4Aは24.4μmol/kgの本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)の皮下注射後24時間までのブタオザルのリンパ節(LN1、LN2、およびLN3)および肝臓(Liver)のMRダイナミックコントラスト増強イメージ強度を比較するグラフである。結果は図3A−3Dに示したイメージについてである。図4Bは隣接する対照組織と比較した組織特異的MR信号(リンパ節)の時間経過を比較するグラフである。
【図5】図5A−5Dは本発明の代表的な配合物(0.01mmol/kg Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)の静脈注射後のラットの時間経過MRイメージである:投与前(5A);5分(5B);14分(5C);および24時間(5D)。コントラスト増強は5分および14分でリンパ節の主に血管系および血管新生組織に局在化している。5Cにおける矢印は胆汁経路を通しての胃腸管へのガドリニウム除去の開始を示している。24時間(5D)までにほとんどの造影剤が除去され、残部が腸に現れる。
【図6】図6A−6Cは市販されているガドリニウム系造影剤(0.05mmol/kg Gd−DPTA、OMNISCAN)の静脈注射後のラットの時間経過MRイメージである:投与前(6A);5分(6B);および15分(6C)。コントラスト増強は、5分または15分で、全体にわたって拡散し、血管系、よく灌流された組織、またはリンパ節に局在化しない。造影剤の末梢および四肢への拡散が認められる。
【図7】図7A−7Dは市販されているガドリニウム系造影剤の静脈注射後のラットの時間経過MRイメージ(0.05mmol/kg Gd−DPTA、OMNISCAN、投与前(7A)、5分(7B)、および15分(7C))本発明の代表的な配合物(0.01mmol/kg Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)投与後15分のラットのMRイメージを比較している。
【図8】図8A−8Fは本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)の静脈注射後のラットの投与量応答MRイメージを比較している:0.0mmol/kg(8A);0.00125mmol/kg(8B);0.0025mmol/kg(8C);0.005mmol/kg(8D);および0.010mmol/kg(8Eおよび8F)。リンパ節は図8Fに明確に認められる。
【図9】図9A−9Cは2つの市販されているガドリニウム系造影剤(0.05mmol/kgのMS−325、9A;0.05mmol/kgのMAGNEVIST Gd−DPTA、9B)および本発明の代表的な配合物(0.01mmol/kgのGd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC、9C)の静脈注射後のラットのMRイメージを比較している。イメージは投与後約1ないし2分でニアピーク増強を得た。
【図10】図10は代表的な脂質含有ガドリニウムキレート:DSPE−DOTA−Gdの調製の模式的な説明図である。
【図11】図11は代表的な脂質含有キレート調製するのに有用な3つの金属キレート化剤:p−SCN−Bn−DOTA;CHX−A”−DTPA;およびp−SCN−Bn−DTPAを示す。
【図12】図12は代表的な脂質含有ガドリニウムキレートの調製の模式的な説明図である。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は金属イオンを発現する組成物およびこの組成物を使用する方法を提供する。一実施形態において、組成物は常磁性金属イオンを含み、磁気共鳴イメージングに有用な脂質ナノ粒子である。他の実施形態において、組成物は放射性同位元素のイオンを含み、放射線癌治療薬剤の配送に有用な脂質ナノ粒子である。
【0022】
一態様において、本発明は磁気共鳴イメージングのための組成物および方法を提供する。前記組成物および方法はガドリニウムの分布およびリンパ管における蓄積を高める。本発明は皮下および静脈内の投与の両方に好適なガドリニウム組成物(本明細書において「Gd−DTPA−脂質ナノ粒子」という)を提供する。皮下投与はリンパ系への直接的な到達を可能にする。この組成物はリンパ節におけるT1強調MR信号を高めるとともに、リンパ管における造影剤の滞留時間を増加させる。静脈内投与すると、組成物は血管イメージング薬剤としての可溶なGd−DTPAに対して少なくとも100倍の増強を示し、腎臓のクリアランスよりもむしろ優勢に胆汁を除去する。この組成物は、マカクのリンパ節のMR画像化に対して信号対ノイズ比を300倍以上まで増加させることが示された。
【0023】
本発明の組成物は脂質、ポリアルキレン含有脂質、および脂質含有金属キレート化剤を含む。一実施形態において、組成物はさらにキレート化された金属イオンを含む。
【0024】
一実施形態において、本発明の組成物はキレート化剤(または金属キレート)発現粒子である。本明細書で使用する限り、「発現する」という用語は、活性についてキレート化剤またはキレート化された金属の代わりを務めるまたは利用できる粒子について言及する。上述したように、一実施形態において、本発明の組成物はキレート化されたガドリニウムイオン(Gd+3)を有する脂質ナノ粒子(たとえば、Gd−DTPA−脂質ナノ粒子)である。脂質ナノ粒子において、キレート化されたガドリニウムイオンが発現される。
【0025】
本発明の脂質ナノ粒子は生体適合性があり容易に投与される。ナノ粒子は約5nmないし約2μmの直径を有する。一実施形態において、ナノ粒子は約10nmないし約100μmの直径を有する。一実施形態において、ナノ粒子は約70nmの直径を有する。
【0026】
上述したように、本発明の組成物(たとえば、脂質ナノ粒子)は脂質、ポリアルキレン含有脂質、および脂質含有金属キレート化剤を含む。
【0027】
脂質。本発明のナノ粒子の脂質成分はナノ粒子のコアを含む。
【0028】
組成物において有用な代表的な脂質はリン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロールおよびステロイド誘導体、胆汁酸および誘導体、カルジオリピン、アシル−グリセリドおよび誘導体、糖脂質、アシル−ペプチド、脂肪酸、炭水化物系ポリマー(たとえばセルロースポリマー)、好適には官能基化シリカ、親油性ポリマー(たとえば、ポリ無水物、ポリラクテート−グリコレート)、および親油性バイオポリマー(たとえば、蛋白質、糖ポリマー)を含む。
【0029】
一実施形態において、脂質はジステアロイルアミドメチルアミンである。
【0030】
一実施形態において、脂質はリン脂質である。代表的なリン脂質は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC);ジパルミトイル ホスファチジルコリン;ジミリストイル ホスファチジル コリン;ジオレオイル ホスファチジル コリン;卵、大豆、亜麻仁などから誘導されたエステル交換リン脂質;およびホスファチジル エタノールアミンで置換されたホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジル セリン、およびホスファチジン酸を含む。一実施形態において、リン脂質は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である。
【0031】
ポリアルキレン含有脂質。本発明のナノ粒子のポリアルキレン含有脂質成分は表面水和剤として作用する。
【0032】
代表的なポリアルキレン含有脂質はポリオキシエチレン含有脂質およびポリオキシプロピレン含有脂質を含む。一実施形態において、ポリアルキレン含有脂質はポリエチレングリコールで官能基化されたリン脂質(たとえばPEG化されたリン脂質)を含む。好適なPEG化されたリン脂質は約500ないし約20,000の数平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む。一実施形態において、PEG化されたリン脂質はN−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(mPEG−2000−DSPE)(本明細書において「mPEG−DSPE」および「mPEG−PE」ともいう)である。
【0033】
ポリアルキレン含有脂質に加えて、他の実施形態において、表面水和剤は親水性のバイオ材料たとえば炭水化物ポリマー、ポリアミン、ポリビニルピロリドン、ポリ(アスパルテート)、またはポリ(L−アミノ酸)である。
【0034】
他の有用な表面水和剤はポリエトキシル、ポリメチレン グリコール、またはプロピレン グリコールと脂質または他の疎水性部分(たとえば、長鎖炭化水素)との共有結合型複合体を含む。
【0035】
表面水和剤は好ましくは組成物(すなわち、脂質、ポリアルキレン含有脂質(表面水和剤)、および脂質含有金属キレート化剤)の約5ないし約50モルパーセント存在する。
【0036】
脂質含有金属キレート化剤。本発明のナノ粒子の脂質含有金属キレート化剤成分はナノ粒子の表面上で発現され、キレート金属イオンとして機能する。好適な脂質含有金属キレート化剤は2つの部分を含む:(1)脂質部分および(2)金属キレート化剤部分である。
【0037】
代表的な脂質含有金属キレート化剤は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−ジエチレントリアミンペンタアセチル(DSPE−DTPA)、テトラアザシクロドデカン、テトラアセチル(ガドジアミンまたはOMNISCAN)−PE、および脂質−官能基化−[N,N−ビス[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]−グリシナト−(5”)](MAGNEVIST)を含む。
【0038】
代表的な金属キレート化剤はBOPTA、DO3A、およびDOTAキレート化剤を含む。
【0039】
一実施形態において、金属キレート化剤はPEG化された脂質部分を含む。代表的なPEG化された金属キレート化剤はDSPE−BOPTA、DSPE−DO3A、およびDSPE−DOTAを含む。一実施形態において、金属キレート化剤はPEG化されたDTPA(DPTA−PE)を含む。
【0040】
金属キレート化剤は好ましくは脂質、ポリアルキレン含有脂質(表面水和剤)、および金属キレート化剤の約5ないし約50モルパーセント存在する。
【0041】
キレート化された金属イオン。本発明の組成物は金属イオンの効果的なキャリアである。これらの実施形態において、組成物(たとえば、脂質ナノ粒子)はさらにキレート化された金属イオンを含む。
【0042】
MR用途のためには、有用な金属イオンは常磁性金属イオンを含む。代表的な常磁性金属イオンはGd3+、Cu2+、Fe3+、Fe2+、およびMn2+イオンを含む。
【0043】
他の用途たとえばイメージングおよび治療目的のイオン配送について、有用な金属イオンは放射性同位元素のイオンを含む。代表的な放射性同位元素は68Ga、55Co、86Y、90Y、177Lu、および111Inのイオンを含む。
【0044】
キレート化された金属イオンを含む実施形態について、金属イオン:金属キレート化剤の比は0.1−1.0:1.0である(1:1以下)。
【0045】
ターゲティング薬剤。本発明の組成物は特定の組織を標的にするのに用いることができる。これらの実施形態において、組成物(たとえば、脂質ナノ粒子)はさらにターゲティング成分を含む。代表的なターゲティング成分は蛋白質、ポリペプチド、およびペプチド;抗体および誘導体(フラグメント);低分子;糖、多糖、および誘導体;および核酸、たとえばヌクレオチドポリマー(たとえば、アプタマー)、DNA;およびRNAを含む。代表的なターゲティング成分の標的は癌細胞およびウイルス感染細胞を含む。
【0046】
脂質ナノ粒子配合物。本発明の脂質ナノ粒子を配合して投与のための組成物にすることができる。好適な投与のための組成物はキャリアおよび複数の脂質ナノ粒子を含む。代表的なキャリアは薬学的に許容できるキャリア、たとえば注射用生理的食塩水または注射用ブドウ糖を含む。
【0047】
本発明の脂質ナノ粒子はリポソームではなく、配合したときにリポソームを生成しない。
【0048】
組織イメージングのための方法。他の態様において、本発明は組織(たとえば、閉塞組織)をイメージ化するための方法を提供する。一実施形態において、この方法はイメージ化される被験者に診察に有効量の本発明の組成物を投与することを含む。組成物は皮下および静脈内を含む種々の方法によって投与できる。この方法は、リンパ球、心血管、肝臓、腎臓、脳、心臓、筋肉、および胃腸管組織、ならびにリンパ系または脈管(血液)系によって到達できる他の組織のような組織をイメージ化するのに有効である。この方法は上の組織をイメージングして組織が閉塞しているかどうかを決定するのに有効である。磁気共鳴イメージング法については、組成物は常磁性金属イオン(たとえば、Gd3+)を含む。
【0049】
一般的に、有効量は約0.001ないし約5mmol金属/kg被験者である。一実施形態において、有効量は約0.005ないし約0.050mmol金属/kg被験者である。一実施形態において、有効量は約0.010mmol金属/kg被験者である。
【0050】
放射線癌治療薬剤の配送方法。他の態様において、本発明は癌細胞へ放射線癌治療薬剤を配送する方法を提供する。一実施形態において、この方法は、これを必要とする被験者に、治療に有効量の、キレート化された金属イオンが放射性同位元素(たとえば、68Ga、55Co、86Y、90Y、177Lu、および111In)である本発明の組成物を投与することを含む。組成物を、皮下および静脈内を含む多様な方法によって投与できる。この方法は、リンパ球、心血管、肝臓、腎臓、脳、心臓、筋肉、および胃腸管組織、ならびにリンパ系または脈管(血液)系によって到達できる他の組織のような組織への配送に有効である。
【0051】
以下は本発明の代表的な脂質ナノ粒子についての、調製、特性評価、およびイメージングの結果の説明である。
【0052】
10モルパーセントの表面結合DTPAからなる脂質ナノ粒子を調製した。これらの脂質ナノ粒子はジステアロイル−ホスファチジルコリンおよびPEG化された脂質、mPEG−2000−DSPEを含む。これらを、さまざまなGd3+対DTPA−PEモル比でGd3+と錯化させた(Gd3+・・Cl−と表す)。混合物中の遊離のGd3+の存在を、カルセインの蛍光を消光させる遊離のGd3+の能力によって決定した。Gd3+対DTPA−PEモル比4までは、カルセイン消光分析によって遊離のGd3+を検出できなかった。6またはそれより高いGd3+対DTPA−PEモル比で、遊離のすなわち結合していないGd3+が検出された(図1参照)。DTPAを発現する脂質ナノ粒子へのGd3+の効果を測定するために、我々は光子相関分光法によって粒径を測定した。DTPAを発現する脂質ナノ粒子の直径はGd3+濃度に依存していた。Gd3+対DTPAモル比1またはそれ未満で、Gd3+の存在は脂質ナノ粒子の直径に影響しなかった。Gd3+対DTPAモル比2で、Gd3+−DTPA脂質ナノ粒子の見かけの直径は約2ないし3倍まで増加するが、DTPA−脂質ナノ粒子と会合するGdの度合に見かけの減少はない(表1参照)。室温で24時間にわたってそれほどの直径の変化は検出されなかったので、これらの脂質ナノ粒子は安定であるように見える。全体として、これらのデータは、Gd3+対DTPAの比がGd−DTPA脂質ナノ粒子へのGd3+の組み込みの度合およびそれらの見かけの直径に影響することを示唆している。Gd3+対DTPAモル比2以下で、実質的にすべてのGd3+が脂質ナノ粒子と会合している。一実施形態において、本発明の組成物におけるGd3+対DTPAモル比は約1である。
【0053】
種々のGd3+配合物の、Gd3+のR1(1/T1)緩和能への影響を比較することにより、Gd3+発現脂質ナノ粒子のコントラスト特性を測定した。脂質ナノ粒子は、PEG化された脂質(mPEG−2000−DSPE、本明細書において「mPEG−DSPE」または「mPEG−PE」という)ありまたはなしのジステアロイル−ホスファチジルコリン(DSPC)からなり、Gd3+対DTPAモル比を1に固定した。T1およびT2測定を1.5TのMRスキャナーで収集した。臨床的に用いられているGd−DTPA製剤(OMNISCAN、 GE Healthcare, Princeton, NJから市販されている)が比較として含まれている。図2Aに示すように、本発明の代表的な組成物、mPEG−PEを含むGd−DTPA脂質ナノ粒子(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPC)は、OMNISCANおよびmPEGを含まない脂質ナノ粒子を含む他の製剤よりかなり高いR1値を示した。mPEGのGd−DTPA脂質ナノ粒子に対する効果はT2測定についてはより少ない(図2B参照)。しかし、両方のGd−DTPA脂質ナノ粒子組成物(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPCおよびGd−DTPA−PE:DSPC)についてのR1およびR2値は、可溶なGd−DTPA市販製剤(OMNISCAN)または溶液中の遊離のGd3+(Gd w/o DTPA)のそれよりもかなり高かった。我々の知識では、本発明のGd−DTPAナノ粒子についてのR1値は、PEGを含むGd3+発現リポソームで報告されている値を含み、現在までのところ最高の値である。事実、これらの結果は、DSPEに結合したmPEGの変わりに、卵エステル交換PEにリンクしたPEG(MW=5000)を発現する卵レクチンおよびコレステロールを含むGd−DTPAリポソームで収集されたデータよりも10倍高かった。
【0054】
Gd3+を含む両方のナノ粒子配合物は可溶なGd−DTPAよりも高いR1値を有していた。予測されるように、Gd3+なしの、DSPCおよびDSPCプラスmPEG−2000−PEの可溶な配合物は、緩和能に対して有意の効果を示さなかった。データは、他の配合物と比較して、PEG含有Gd−DTPA−脂質ナノ粒子がR1のより大きな増加を与えることを示している。市販されているOMNISCANと比較したとき、100倍までのR1緩和能が達成された。表面PEGのないGd−DTPAナノ粒子配合物(Gd−DTPA−PE:DSPC)もOMNISCANより高いR1値を示したが、PEG含有Gd−DTPA−脂質ナノ粒子配合物(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPC)よりもかなり低かった(図2A参照)。
【0055】
MRイメージにおいてGd3+によって生じた陽性コントラストは低いR2/R1比に依存売るので、R2値も決定した。図2Bは、R2(1/T2)緩和能測定に対する種々のGd3+配合物の効果を例示している。やはり、PEG化されたGd−DTPA−脂質ナノ粒子(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPCおよびGd−DTPA−PE:DSPC)は、他の処方と比較してR2の大きな増加を示したが、変化の大きさは小さかった。mPEG化されたGd−DTPA−脂質ナノ粒子(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPC)は、OMNISCANと比較して、R2の約8倍の増加を示した。Gd−DTPA含有DSPC(mPEGなし)ナノ粒子配合物(Gd−DTPA−PE:DSPC)はR1よりもR2の大きな増加を示し、これは陽性造影剤配合物としてのその有効性を限定するであろう。Gd3+なしのDSPCおよびDSPCプラスmPEG−2000−PEの対照配合物(DTPA−PE:mPEG−PE:DSPCおよびDTPA−PE:DSPC)はやはり緩和能に対して効果を示さなかった。緩和能実験は、他の配合物と比較して、mPEG化されたGd−DTPA−脂質ナノ粒子配合物がR1緩和能を非常に増加させることを示している。しかし、高濃度(3μmol/mlより高い)では、T2へのT1のスピルオーバーが顕著になり、T1信号の見かけの減少をもたらす(データは示していない)。最適なT1組織コントラストを、最小Gd3+濃度で得ることができた。これらのデータは、市販製品OMNISCANによって得られるそれよりもかなり高いコントラスト「能力」を明確に示している。
【0056】
霊長類におけるMRイメージング調査のための、mPEG−2000−PEを含むGd−DTPA脂質ナノ粒子(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPCすなわち「Gd−DTPA脂質ナノ粒子」)の使用を以下に説明する。
【0057】
図3A−3Dは、コントラスト前およびGd3+−DTPA−脂質ナノ粒子の皮下注射に続く24時間までの両方の、ブタオザルの腹部腔のいくつかの冠状MRイメージを示す。周辺の組織と比較して、高い強度増強度合で副リンパ節が明確に見える(図3トップパネル)。リンパ節の増強は20分ほどの早さで見ることができるが、24時間まで続く。図4はダイナミックコントラスト増強MRIの時間経過を示し、時間に対する種々の期間の相対強度を示している。このデータは、Gd3+−DTPA−脂質ナノ粒子が注射後20分以内に急速にリンパ節組織に達し、少なくとも24時間のあいだコントラスト増強を維持することを示している。可溶なGd−DTPA(OMNISCAN製剤)で静脈処置された動物のリンパ系で20分以内に消失する低い信号と比較して、1回の皮下へのGd−DTPA脂質ナノ粒子投与は、長時間のあいだ非常に増強した信号を与えた。
【0058】
Gd−DTPA−脂質ナノ粒子のMRイメージ増強特性を用いて、血管イメージ増強を生じさせ腎臓の負担も減少させるのに必要なIV投与量を最小化することができる。ラットへの0.01mmole/kgのGd−DTPAナノ粒子(ヒトに対する現在の投与量の約1/5)の投与は、5分以内に明確に認識できるラットの中心血管系および末梢血管系による高品質MRイメージを生じた(図5B)。これは15分以内に胆汁および腸を通して取り除かれ始め(図5C)、24時間までにクリアランスプロセスが完了したように見える(図5D)。対照的に、0.05mmoleの可溶なGd−DTPA(OMNISCAN)は、血管の鮮明度なしに拡散したコントラスト局在化を生じる;また、これは四肢の末梢に分布するように見える(図6A)。限定投与量応答調査において、現在のGd−DTPA配合物と比較して、ラットにおける等価またはより良好な鮮明度のコントラスト増強MRイメージを生じるのに、ラットにおいてわずかに約10−20倍低い投与量のGd−DTPA−脂質ナノ粒子を要する。0.0025mmole/kgのDTPA−脂質ナノ粒子中のGdが、0.05mmole/kgのGd−DTPA(OMNISCAN)製剤の等価なイメージ品質を生じる。したがって、Gd−DTPA−脂質ナノ粒子は、腎不全および神経毒症状による現在承認されているGd造影剤を用いた臨床使用における難題を克服するであろう。
【0059】
表面結合したガドリニウムイオンを有する本発明のPEG化された脂質ナノ粒子は、コントラスト増強MRリンパ管造影法および血管イメージングにおいて他の製剤を超える大きな改善を示した。これらの脂質ナノ粒子は皮下注射後にリンパ節において高度の蓄積を示した。リンパ球組織におけるコントラスト増強は、注射の20分以内に始まり、24時間維持された。静脈内に与えた場合、この薬剤は、現在の薬剤よりかなり高い感度で血管系の高品質イメージを生じた。静脈内に投与された脂質ナノ粒子はほとんど胆汁経路を通してのみ取り除かれ、24時間以内に完了したようである。脂質ナノ粒子にmPEGを付加することによる表面修飾は水分子の配位によってGd3+のMR信号を増大させた。これはかなり高いR1緩和能およびリンパ節イメージ増強をもたらす。脂質ナノ粒子配合物は、転移性リンパ節識別を増大させ、イメージングについてのかなり広い時間フレームを可能にするために、低い投与量を用いて高い信号対ノイズMRコントラスト比を達成することを可能にするであろう。MRコントラスに必要とされる、潜在的に低い投与量およびGd3+のより好ましい除去経路は、より高い安全性マージンを与えることができるであろう。
【0060】
本発明の配合物は、現在入手でき、承認されている造影剤と比較して、比較的低い投与量で有効なコントラストを与える。図8A−8Fは、本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)の静脈注射後のラットの投与量応答MRイメージを比較している:0.0mmol/kg(8A);0.00125mmol/kg(8B);0.0025mmol/kg(8C);0.005mmol/kg(8D);および0.010mmol/kg(8Eおよび8F)。リンパ節は図8Fに明確に認められる。
【0061】
上述したように、本発明の配合物は、現在入手でき、承認されている造影剤を超える利点を与える。図9A−9Cは、2種の市販されているガドリニウム系造影剤(0.05mmol/kg MS−325、 EPIX Pharmaceuticals, Inc., Cambridge, MA、図9A;および0.05mmol/kg MAGNEVIST Gd−DPTA、 Bayer HealthCare Pharmaceuticals、図9B)および本発明の代表的な配合物(0.01mmol/kg Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC、図9C)の静脈注射後のラットのMRイメージを比較している。イメージは投与後約1ないし2分でニアピーク増強を得た。イメージからわかるように、本発明の代表的な配合物は、現在入手できる薬剤よりもかなり大きいコントラストを示している。
【0062】
図10は、DSPEをp−SCN−Bn−DOTAと反応させた後にGdメタレーションを行うことによる本発明において有用な代表的なGd錯体(DSPE−DOTA−Gd)を調製する合成スキームである。図11は、リン脂質に対して反応性であり、本発明において有用な3種の代表的なキレート化薬剤(イソチオシアネート、−N=C=Sまたは−NCS)(p−SCN−Bn−DOTA、CHX−A”−DTPA、およびp−SCN−Bn−DTPA)を示す。図12は、4種の代表的な親油性化合物(DSA、ジエーテルPE、DSPE−PEG(2000)アミン、およびDSPE)、およびDSPEをp−SCN−Bn−DOTAと反応させた後にGdメタレーションを行うことによる、本発明において有用な代表的なGd錯体(DSPE−DOTA−Gd)を調製するための合成スキームを示す。本発明において有用な脂質含有金属キレート化剤は図10および12に示すように容易に調製される。好適な反応性の金属キレート化剤(たとえば、イソチオシアネート官能基化金属キレート化剤、図11参照)は、好適に反応性である基(たとえば、DSPEのアミノ基、DSPE−PEG(2000)アミン、ジエーテルPE、DSA、図10および12参照)を含む脂質化合物と反応して、脂質部分が金属キレート化剤と共有結合した脂質含有金属キレート化剤を与える。イソチオシアネート官能基化した金属キレート化剤および反応性アミン含有脂質については、生成脂質含有金属キレート化剤は、脂質をキレート化剤へ結合させるチオウレア(−NH−C(=S)−NH−)結合を含む。他の好適に反応性の金属キレート化剤(たとえば、イソシアネート)および好適に反応性である基(たとえば、アルコール)を含む脂質化合物は、本発明において有用な脂質含有金属キレート化剤を与えうることが認識されるであろう。キレート化剤のメタレーションは金属イオン含有化合物を与える。
【表1】
【0063】
aDTPAはDSPC、mPEG−PEおよびDTPA−PE(8:1:0.9モル比からなる脂質ナノ粒子上で発現されている。例1に記載。
【0064】
b指示したDTPA対Gd3+モル比でナノ粒子をGdCl3にさらした。
【0065】
cDTPA発現ナノ粒子の径を光子相関分光法によって測定し、発現データは表示した時点での4連サンプルの平均±SDである。
【0066】
d未結合すなわち遊離のGd3+の存在をカルセインの蛍光消光分析により見積もった。
【0067】
以下の例は、本発明を限定するのではなく、説明する目的で提供している。
【0068】
例
例1
材料および方法
脂質ナノ粒子の調製。1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC、Avanti Polar Lipids, AL)、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(mPEG−2000−DSPE、Genzyme, MA)、および1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−DTPA(DSPE−DTPA、Avanti Polar Lipids, AL)を、クロロホルム(DSPC:mPEG−DSPE:DSPE−DTPA)中において8:2:1の比で化合させ、窒素下、次に高真空下で終夜乾燥させて薄膜にした。種々の分子量(すなわち鎖長)のPEGポリマーを含むmPEG−DSPEもGenzyme, MAから購入している。この時点でリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)を膜に加えて、バスタイプ超音波処理器(Laboratory Supplies Company, New York)中で超音波処理した。Malvern Zetasizer 5000の光子相関分光法(Malvern Instruments, PA)を用いて動的光散乱によって測定したところ、ベシクル径は50nmであった。懸濁液中のナノ粒子を塩化ガドリニウム(III)六水和物(Aldrich, St Louis, MO)と示したモル比で20分間混合して、Gd−DTPA−脂質ナノ粒子を制裁させた。結合していないGd3+を測定するために、ナノ粒子をカルセイン(0.5μM)(Sigma, St Louis, MO)とともにPBS中、pH7.4で培養し、Victor3V 1420マルチラベルカウンター(PerkinElmer, Waltham, MA)を用いて485/535nmで蛍光を測定した。遊離のイオン性Gd3+は[Gd3+]に依存する仕方でカルセイン蛍光を消光させる。最終的なGd濃度を測定するために、誘導結合プラズマ発光分光を用いて、元素Gd質量を測定した。本明細書に記載した調査には、これらの粒子とともに、Gd3+を含まない可溶な粒子を用いた。
【0069】
緩和能調査。Gd−DTPA−脂質ナノ粒子の希釈液を、0−5μmol/mlのあいだのGd3+濃度で調製した。比較のために、市販の薬剤たとえばOMNISCAN(Gd−DTPA−BMA)から0−5μmol/mlのGd3+濃度でいくつかのサンプルを調製した。RFレシーバーとしてボリュームヘッドコイルをもつ1.5TMRスキャナーで標準的なスピンエコーシーケンスを用いて緩和時間T1を測定した。T1測定について、TEを9msに、ならびに7つのTRをそれぞれ133、200、300、500、750、1000および2000msに固定した。T2測定について、TRを2000msに、ならびに4つのTEをそれぞれ15、30、45、および60msに固定した。イメージング強度をフィッチングして対応するT1およびT2の値を得て、これらをGd3+濃度に対してプロットした。
【0070】
霊長類のリンパ管MRI調査。ダイナミックコントラスト増強(DCE)MRIのためのGd−DTPA−脂質ナノ粒子を用いてリンパ節の生体内イメージングを、1.5TのMRスキャナーで実施した。ブタオマカク(ブタオザル)に吸入イソフルオラン(1−2%)で麻酔をかけ、実験中に詳しくモニターした。霊長類のコントラスト前イメージを記録して、適当なリンパ節位置を測定し、イメージングパラメーターを微調整した。動物をMRスキャナーから取り出して4個所に皮下注射した。各々の注射部位に、それぞれ2、5、5、および8.5mLの6.1μmol/ml Gd−DTPA−脂質ナノ粒子を入れて、投与量効果および注射部位からのコントラスト拡散のプロービングを可能にした。Gdの全投与量は霊長類調査について24.4μmol/kgであると見積もられた。表面コイル12×12インチ2を用いてSignaの1.5Tスキャナーでイメージを記録した。標準的なスピンエコーイメージングシーケンスを、TR=500ms、TE=15ms、3mmのスライス厚さ、21スライス、スライスギャップ=0.5mm、FOV(視野)=320×320mm2、マトリックスサイズ=512×512で用い、これは0.63×0.63mm2の面内分解能を与え、時間分解能は3.1分である。
【0071】
ラットの血管のMRI調査。ダイナミックコントラスト増強(DCE)MRIのためのGd−DTPA−脂質ナノ粒子を用いてラットの生体内イメージングを、3.0TのMRスキャナーで実施した。ラット(SD)に吸入イソフルオラン(1−2%)で麻酔をかけ、実験中に詳しくモニターした。ラットのコントラスト前イメージを記録して、適当な位置、方向を測定し、イメージングパラメーターを微調整した。動物をMRスキャナーから取り出して、大腿静脈を通して、400μLの指示したGd造影剤を注射した。表面コイル12×12インチを用いてSignaの1.5Tスキャナーでイメージを記録した。標準的なスピンエコーイメージングシーケンスを、TR=500ms、TE=15ms、3mmのスライス厚さ、21スライス、スライスギャップ=0.5mm、FOV(視野)=320×320mm2、マトリックスサイズ=512×512で用い、これは0.63×0.63mm2の面内分解能を与え、時間分解能は3.1分である。
【0072】
本発明の好ましい実施形態を説明し記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、その中で種々の変更をなしうることが理解されるであろう。
【0073】
独占的所有または権利を主張している本発明の実施形態は下記のように定義される。
【発明の概要】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は2009年2月13日に出願された米国仮出願第61/152,459号、および2009年3月24日に出願された米国仮出願第61/162,989号の利益を主張する。各出願は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府のライセンス権の陳述
この発明は、国立衛生研究所/国立アレルギー・感染症研究所によって授与された契約第AI 52663号の下で政府の支援を使ってなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
リンパ節転移の早期診断はほとんどの種類の癌に対する処置を決定するために必須である。リンパ節切除および組織学評価は現在ゴールドスタンダードであるが、侵襲性で偽陰性を生じることがあるため理想的なわけではない。磁気共鳴(MR)イメージングは、リンパ節への癌の伝播を検出するための強力で非侵襲性のツールになってきている。標準的なMRイメージングはサイズおよび形態の基準に頼ってリンパ節転移を含む潜伏リンパ球組織を決定しているが、これは60%程度の低い精度である。MRコントラスト増強剤は、早期腫瘍検出でのそれらの有用性により、より広範に使用されるようになってきている。コントラスト増強剤は、転移リンパ節および健全リンパ節中へ異なる速度で拡散して「陰影欠損」を生じさせる。造影剤による陰影欠損を用いてリンパ節転移を予測することは、サイズ基準と対照的に、感度を29%から93%へ増加させる。
【0004】
一般的に、2種のMRコントラスト増強剤がある。超常磁性造影剤は低いr2/r1比を有し、T2−およびT2*−強調イメージ中に暗点を作る。これらは通常、酸化鉄粒子をベースにしており、陰性造影剤と呼ばれる。他方、常磁性造影剤はr1緩和能を増加させ、高いr2/r1比を有し、T1強調MRイメージ中に明点を作る。これらの造影剤は陽性造影剤として知られ、通常はガドリニウム(Gd3+)の錯体である。
【0005】
T1短縮は水中のプロトンとの双極子−双極子相互作用によって起こるので、その7個の不対電子をもつGd3+はT1緩和剤に最適な選択肢である。Gd3+は重金属毒素であるため、これは通常、強固に結合した直鎖またはマクロなキレートとして配送される。キレート化された形態のGd3+は、遊離Gd3+の細胞取り込みを防止することによって、および腎毒性をもたらす腎臓ろ過に対するクリアランスをほとんど排他的に限定することによって毒性を減少させる。毒性を減少させるにもかかわらず、ガドリニウムキレートの急速なクリアランスおよび小さい分子サイズは低レベルGd3+がリンパ節中に蓄積することを意味し、これらの薬剤をMRリンパ管造影法に対する悪い選択肢にする。加えて、FDAは、急性または慢性の腎不全をもつ被験者の良好に灌流した組織および器官を同定する、すべての市販されているガドリニウム造影剤について、重篤な腎性全身性線維症の危険性についての警告を公表している。
【0006】
Gd3+を含むリポソームおよび脂質ナノ粒子はリンパ節のMRコントラストイメージングにとっていくつかの利点を有する。リポソームならびに脂質ナノ粒子は多量のGd3+を封入するかまたはそれらの表面に結合することによって毒性を低下させることができる。しかし、静脈内(IV)投与されたリポソームの急速クリアランスメカニズムは、リンパ節中のリポソーム会合Gd3+の蓄積をそれほど改善するわけではない。血液中の一部の脂質ナノ粒子のみが細網内皮細胞によって貪食され、これらの細胞の一部のみがリンパ系へ移動する。したがって、IV投与されたリポソームはリンパ系およびリンパ節の間接ターゲティングを与える。しかし、この手法はGd3+担持リポソームの大部分が血液中の細網内皮細胞によって除去されることをもたらす。サイズおよび表面修飾によってリンパ節蓄積に対して血液中のリポソームの薬物動態学を最適化できる。リポソームの直径を200nm未満に減少させると、食細胞依存クリアランスを減少させ、血液中の循環時間を増加させる。また、リポソーム表面にポリエチレングリコールを付加すること(PEG、通常、PEG化という)は循環時間およびリポソームの安定性を増加させることができる。
【0007】
現在、ジエチレントリアミンペンタアセチル(DTPA)でキレート化されたガドリニウムは、磁気共鳴イメージングにおいてコントラストを与えて病原組織を同定する。都合の悪いことに、臨床用途のために承認された可溶なGd−DTPA錯体(たとえばOMNISCAN)は数分以内に取り除かれ、リンパ球組織における十分な濃度または時間を与えない。加えて、残りの部分のガドリニウムは腎不全患者に線維症をもたらすことがある。
【0008】
造影剤の開発の進展にもかかわらず、より長い生体内寿命を有し、分析すべき組織に十分な濃度、および副作用を避ける低い残存ガドリニウム濃度を与える改善された造影剤に対する要望がある。本発明はこの要望を実現し、さらに関連する利点を与えることを追求する。
【0009】
発明の概要
本発明は金属イオンを発現する組成物およびこの組成物の使用方法を提供する。
【0010】
一態様において、本発明は脂質、ポリアルキレン含有脂質、および脂質含有金属キレート化剤を含む組成物を提供する。
【0011】
代表的な脂質はリン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロールおよびステロイド誘導体、胆汁酸および誘導体、カルジオリピン、アシル−グリセリドおよび誘導体、糖脂質、アシル−ペプチド、脂肪酸、炭水化物系 ポリマー、官能基化シリカ、ポリ無水物 ポリマー、ポリラクテート−グリコレート ポリマー、およびバイオポリマーを含む。一実施形態において、脂質はリン脂質である。代表的なリン脂質は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC);ジパルミトイル ホスファチジルコリン;ジミリストイル ホスファチジルコリン;ジオレオイル ホスファチジルコリン;卵、大豆,亜麻仁などから誘導されたエステル交換リン脂質;およびホスファチジル エタノールアミンで置換されたホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジル セリン、およびホスファチジン酸を含む。
【0012】
代表的なポリアルキレン含有脂質はポリオキシエチレン含有脂質またはポリオキシプロピレン含有脂質を含む。一実施形態において、ポリアルキレン含有脂質はポリエチレングリコールで官能基化されたリン脂質たとえばN−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノール−アミン(mPEG−2000−DSPE)である。
【0013】
代表的な脂質含有金属キレート化剤は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−ジエチレントリアミンペンタアセチル(DSPE−DTPA)、テトラアザシクロドデカン、テトラアセチル(ガドジアミド)−PE、および脂質官能基化−[N,N−ビス[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−エチル]−グリシナト−(5”)]を含む。一実施形態において、脂質含有金属キレート化剤はPEG化された脂質部分を含む。一実施形態において、脂質含有金属キレート化剤はPEG化されたDTPAである。他の実施形態において、脂質含有金属キレート化剤はDSPE−BOPTA、DSPE−DO3A、およびDSPE−DOTAである。
【0014】
一実施形態において、組成物はさらにターゲティング成分を含む。代表的なターゲティング成分は蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、抗体またはこれらのフラグメント、低分子、糖もしくは多糖またはこれらの誘導体、および核酸を含む。
【0015】
一実施形態において、本発明の組成物はナノ粒子の形態を有する。一実施形態において、ナノ粒子は約5nmないし約2μmの直径を有する。一実施形態において、ナノ粒子は約50nmないし約100μmの直径を有する。
【0016】
本発明の組成物はさらに金属イオンを含んでいてもよい。好適な金属イオンは常磁性金属イオンおよび放射性同位元素のイオンを含む。代表的な常磁性金属イオンGd3+、Cu2+、Fe3+、Fe2+,およびMn2+イオンを含む。代表的な放射性同位元素のイオンは68Ga、55Co、86Y、90Y、177Lu,および111Inイオンを含む。
【0017】
他の態様において、本発明はキャリアおよび複数の本発明のナノ粒子を含む投与可能な組成物を提供する。好適なキャリアは薬学的に許容できるキャリアたとえば注射用生理的食塩水または注射用ブドウ糖を含む。
【0018】
さらなる態様において、本発明はイメージ化される被験者に有効量の本発明の組成物を投与することを含む、組織のイメージング方法を提供する。この方法によってイメージ化できる代表的な組織は、リンパ球、心血管、肝臓、腎臓、脳、心臓、筋肉、および胃腸管組織、ならびにリンパ系または脈管(血液)系によって到達できる他の組織を含む。
【0019】
他の態様において、本発明は、放射性同位元素のアニオンを含む有効量の本発明の組成物を癌細胞に投与することを含む、放射線癌治療薬剤を癌細胞へ配送する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の上述の態様および多くの付随する利点は、添付の図面と関連して考慮したときに、以下の詳細な説明を参照することによってこれらがよりよく理解されるようになるので、より容易に把握されるようになるであろう。
【図1】図1は、本発明の代表的な配合物についてGd3+:DTPA−PE(m/m)比の関数としてのカルセインの蛍光の減少を示すグラフである。配合物をカルセインとともに培養してその蛍光を測定した。遊離のGd3+がカルセインと結合してその蛍光を減少させる。
【図2】図2Aおよび2BはGd3+ 濃度の関数としての緩和能を比較している。図2AはT1緩和速度へのGd3+投与量効果を比較している;本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)について標準的なスピンエコーシーケンスを用いて1.5Tの磁気共鳴(MR)スキャナーで測定したGd3+濃度(μmol/mL)のR1(1/T1)値を、他の配合物と比較している。図2BはT2緩和速度へのGd3+投与量効果を比較している;本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)について標準的なスピンエコーシーケンスを用いて1.5Tの磁気共鳴(MR)スキャナーで測定したGd3+濃度(μmol/mL)のR2(1/T2)値を、他の配合物と比較している。
【図3】図3は本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)の注射後24時間までのブタオザルの腹部腔の時間経過冠状イメージを示す。図3A−3Dは投与前(3A)ならびに投与後20分(3B)、6時間(3C)、および24時間(3D)の肝臓の時間系列イメージである。上のパネルはリンパ節の時間系列イメージを示す。リンパ節および肝臓は、バックグランドの組織と比較して高いコントラストを示す。
【図4】図4Aは24.4μmol/kgの本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)の皮下注射後24時間までのブタオザルのリンパ節(LN1、LN2、およびLN3)および肝臓(Liver)のMRダイナミックコントラスト増強イメージ強度を比較するグラフである。結果は図3A−3Dに示したイメージについてである。図4Bは隣接する対照組織と比較した組織特異的MR信号(リンパ節)の時間経過を比較するグラフである。
【図5】図5A−5Dは本発明の代表的な配合物(0.01mmol/kg Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)の静脈注射後のラットの時間経過MRイメージである:投与前(5A);5分(5B);14分(5C);および24時間(5D)。コントラスト増強は5分および14分でリンパ節の主に血管系および血管新生組織に局在化している。5Cにおける矢印は胆汁経路を通しての胃腸管へのガドリニウム除去の開始を示している。24時間(5D)までにほとんどの造影剤が除去され、残部が腸に現れる。
【図6】図6A−6Cは市販されているガドリニウム系造影剤(0.05mmol/kg Gd−DPTA、OMNISCAN)の静脈注射後のラットの時間経過MRイメージである:投与前(6A);5分(6B);および15分(6C)。コントラスト増強は、5分または15分で、全体にわたって拡散し、血管系、よく灌流された組織、またはリンパ節に局在化しない。造影剤の末梢および四肢への拡散が認められる。
【図7】図7A−7Dは市販されているガドリニウム系造影剤の静脈注射後のラットの時間経過MRイメージ(0.05mmol/kg Gd−DPTA、OMNISCAN、投与前(7A)、5分(7B)、および15分(7C))本発明の代表的な配合物(0.01mmol/kg Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)投与後15分のラットのMRイメージを比較している。
【図8】図8A−8Fは本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)の静脈注射後のラットの投与量応答MRイメージを比較している:0.0mmol/kg(8A);0.00125mmol/kg(8B);0.0025mmol/kg(8C);0.005mmol/kg(8D);および0.010mmol/kg(8Eおよび8F)。リンパ節は図8Fに明確に認められる。
【図9】図9A−9Cは2つの市販されているガドリニウム系造影剤(0.05mmol/kgのMS−325、9A;0.05mmol/kgのMAGNEVIST Gd−DPTA、9B)および本発明の代表的な配合物(0.01mmol/kgのGd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC、9C)の静脈注射後のラットのMRイメージを比較している。イメージは投与後約1ないし2分でニアピーク増強を得た。
【図10】図10は代表的な脂質含有ガドリニウムキレート:DSPE−DOTA−Gdの調製の模式的な説明図である。
【図11】図11は代表的な脂質含有キレート調製するのに有用な3つの金属キレート化剤:p−SCN−Bn−DOTA;CHX−A”−DTPA;およびp−SCN−Bn−DTPAを示す。
【図12】図12は代表的な脂質含有ガドリニウムキレートの調製の模式的な説明図である。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は金属イオンを発現する組成物およびこの組成物を使用する方法を提供する。一実施形態において、組成物は常磁性金属イオンを含み、磁気共鳴イメージングに有用な脂質ナノ粒子である。他の実施形態において、組成物は放射性同位元素のイオンを含み、放射線癌治療薬剤の配送に有用な脂質ナノ粒子である。
【0022】
一態様において、本発明は磁気共鳴イメージングのための組成物および方法を提供する。前記組成物および方法はガドリニウムの分布およびリンパ管における蓄積を高める。本発明は皮下および静脈内の投与の両方に好適なガドリニウム組成物(本明細書において「Gd−DTPA−脂質ナノ粒子」という)を提供する。皮下投与はリンパ系への直接的な到達を可能にする。この組成物はリンパ節におけるT1強調MR信号を高めるとともに、リンパ管における造影剤の滞留時間を増加させる。静脈内投与すると、組成物は血管イメージング薬剤としての可溶なGd−DTPAに対して少なくとも100倍の増強を示し、腎臓のクリアランスよりもむしろ優勢に胆汁を除去する。この組成物は、マカクのリンパ節のMR画像化に対して信号対ノイズ比を300倍以上まで増加させることが示された。
【0023】
本発明の組成物は脂質、ポリアルキレン含有脂質、および脂質含有金属キレート化剤を含む。一実施形態において、組成物はさらにキレート化された金属イオンを含む。
【0024】
一実施形態において、本発明の組成物はキレート化剤(または金属キレート)発現粒子である。本明細書で使用する限り、「発現する」という用語は、活性についてキレート化剤またはキレート化された金属の代わりを務めるまたは利用できる粒子について言及する。上述したように、一実施形態において、本発明の組成物はキレート化されたガドリニウムイオン(Gd+3)を有する脂質ナノ粒子(たとえば、Gd−DTPA−脂質ナノ粒子)である。脂質ナノ粒子において、キレート化されたガドリニウムイオンが発現される。
【0025】
本発明の脂質ナノ粒子は生体適合性があり容易に投与される。ナノ粒子は約5nmないし約2μmの直径を有する。一実施形態において、ナノ粒子は約10nmないし約100μmの直径を有する。一実施形態において、ナノ粒子は約70nmの直径を有する。
【0026】
上述したように、本発明の組成物(たとえば、脂質ナノ粒子)は脂質、ポリアルキレン含有脂質、および脂質含有金属キレート化剤を含む。
【0027】
脂質。本発明のナノ粒子の脂質成分はナノ粒子のコアを含む。
【0028】
組成物において有用な代表的な脂質はリン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロールおよびステロイド誘導体、胆汁酸および誘導体、カルジオリピン、アシル−グリセリドおよび誘導体、糖脂質、アシル−ペプチド、脂肪酸、炭水化物系ポリマー(たとえばセルロースポリマー)、好適には官能基化シリカ、親油性ポリマー(たとえば、ポリ無水物、ポリラクテート−グリコレート)、および親油性バイオポリマー(たとえば、蛋白質、糖ポリマー)を含む。
【0029】
一実施形態において、脂質はジステアロイルアミドメチルアミンである。
【0030】
一実施形態において、脂質はリン脂質である。代表的なリン脂質は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC);ジパルミトイル ホスファチジルコリン;ジミリストイル ホスファチジル コリン;ジオレオイル ホスファチジル コリン;卵、大豆、亜麻仁などから誘導されたエステル交換リン脂質;およびホスファチジル エタノールアミンで置換されたホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジル セリン、およびホスファチジン酸を含む。一実施形態において、リン脂質は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)である。
【0031】
ポリアルキレン含有脂質。本発明のナノ粒子のポリアルキレン含有脂質成分は表面水和剤として作用する。
【0032】
代表的なポリアルキレン含有脂質はポリオキシエチレン含有脂質およびポリオキシプロピレン含有脂質を含む。一実施形態において、ポリアルキレン含有脂質はポリエチレングリコールで官能基化されたリン脂質(たとえばPEG化されたリン脂質)を含む。好適なPEG化されたリン脂質は約500ないし約20,000の数平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む。一実施形態において、PEG化されたリン脂質はN−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(mPEG−2000−DSPE)(本明細書において「mPEG−DSPE」および「mPEG−PE」ともいう)である。
【0033】
ポリアルキレン含有脂質に加えて、他の実施形態において、表面水和剤は親水性のバイオ材料たとえば炭水化物ポリマー、ポリアミン、ポリビニルピロリドン、ポリ(アスパルテート)、またはポリ(L−アミノ酸)である。
【0034】
他の有用な表面水和剤はポリエトキシル、ポリメチレン グリコール、またはプロピレン グリコールと脂質または他の疎水性部分(たとえば、長鎖炭化水素)との共有結合型複合体を含む。
【0035】
表面水和剤は好ましくは組成物(すなわち、脂質、ポリアルキレン含有脂質(表面水和剤)、および脂質含有金属キレート化剤)の約5ないし約50モルパーセント存在する。
【0036】
脂質含有金属キレート化剤。本発明のナノ粒子の脂質含有金属キレート化剤成分はナノ粒子の表面上で発現され、キレート金属イオンとして機能する。好適な脂質含有金属キレート化剤は2つの部分を含む:(1)脂質部分および(2)金属キレート化剤部分である。
【0037】
代表的な脂質含有金属キレート化剤は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−ジエチレントリアミンペンタアセチル(DSPE−DTPA)、テトラアザシクロドデカン、テトラアセチル(ガドジアミンまたはOMNISCAN)−PE、および脂質−官能基化−[N,N−ビス[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]−グリシナト−(5”)](MAGNEVIST)を含む。
【0038】
代表的な金属キレート化剤はBOPTA、DO3A、およびDOTAキレート化剤を含む。
【0039】
一実施形態において、金属キレート化剤はPEG化された脂質部分を含む。代表的なPEG化された金属キレート化剤はDSPE−BOPTA、DSPE−DO3A、およびDSPE−DOTAを含む。一実施形態において、金属キレート化剤はPEG化されたDTPA(DPTA−PE)を含む。
【0040】
金属キレート化剤は好ましくは脂質、ポリアルキレン含有脂質(表面水和剤)、および金属キレート化剤の約5ないし約50モルパーセント存在する。
【0041】
キレート化された金属イオン。本発明の組成物は金属イオンの効果的なキャリアである。これらの実施形態において、組成物(たとえば、脂質ナノ粒子)はさらにキレート化された金属イオンを含む。
【0042】
MR用途のためには、有用な金属イオンは常磁性金属イオンを含む。代表的な常磁性金属イオンはGd3+、Cu2+、Fe3+、Fe2+、およびMn2+イオンを含む。
【0043】
他の用途たとえばイメージングおよび治療目的のイオン配送について、有用な金属イオンは放射性同位元素のイオンを含む。代表的な放射性同位元素は68Ga、55Co、86Y、90Y、177Lu、および111Inのイオンを含む。
【0044】
キレート化された金属イオンを含む実施形態について、金属イオン:金属キレート化剤の比は0.1−1.0:1.0である(1:1以下)。
【0045】
ターゲティング薬剤。本発明の組成物は特定の組織を標的にするのに用いることができる。これらの実施形態において、組成物(たとえば、脂質ナノ粒子)はさらにターゲティング成分を含む。代表的なターゲティング成分は蛋白質、ポリペプチド、およびペプチド;抗体および誘導体(フラグメント);低分子;糖、多糖、および誘導体;および核酸、たとえばヌクレオチドポリマー(たとえば、アプタマー)、DNA;およびRNAを含む。代表的なターゲティング成分の標的は癌細胞およびウイルス感染細胞を含む。
【0046】
脂質ナノ粒子配合物。本発明の脂質ナノ粒子を配合して投与のための組成物にすることができる。好適な投与のための組成物はキャリアおよび複数の脂質ナノ粒子を含む。代表的なキャリアは薬学的に許容できるキャリア、たとえば注射用生理的食塩水または注射用ブドウ糖を含む。
【0047】
本発明の脂質ナノ粒子はリポソームではなく、配合したときにリポソームを生成しない。
【0048】
組織イメージングのための方法。他の態様において、本発明は組織(たとえば、閉塞組織)をイメージ化するための方法を提供する。一実施形態において、この方法はイメージ化される被験者に診察に有効量の本発明の組成物を投与することを含む。組成物は皮下および静脈内を含む種々の方法によって投与できる。この方法は、リンパ球、心血管、肝臓、腎臓、脳、心臓、筋肉、および胃腸管組織、ならびにリンパ系または脈管(血液)系によって到達できる他の組織のような組織をイメージ化するのに有効である。この方法は上の組織をイメージングして組織が閉塞しているかどうかを決定するのに有効である。磁気共鳴イメージング法については、組成物は常磁性金属イオン(たとえば、Gd3+)を含む。
【0049】
一般的に、有効量は約0.001ないし約5mmol金属/kg被験者である。一実施形態において、有効量は約0.005ないし約0.050mmol金属/kg被験者である。一実施形態において、有効量は約0.010mmol金属/kg被験者である。
【0050】
放射線癌治療薬剤の配送方法。他の態様において、本発明は癌細胞へ放射線癌治療薬剤を配送する方法を提供する。一実施形態において、この方法は、これを必要とする被験者に、治療に有効量の、キレート化された金属イオンが放射性同位元素(たとえば、68Ga、55Co、86Y、90Y、177Lu、および111In)である本発明の組成物を投与することを含む。組成物を、皮下および静脈内を含む多様な方法によって投与できる。この方法は、リンパ球、心血管、肝臓、腎臓、脳、心臓、筋肉、および胃腸管組織、ならびにリンパ系または脈管(血液)系によって到達できる他の組織のような組織への配送に有効である。
【0051】
以下は本発明の代表的な脂質ナノ粒子についての、調製、特性評価、およびイメージングの結果の説明である。
【0052】
10モルパーセントの表面結合DTPAからなる脂質ナノ粒子を調製した。これらの脂質ナノ粒子はジステアロイル−ホスファチジルコリンおよびPEG化された脂質、mPEG−2000−DSPEを含む。これらを、さまざまなGd3+対DTPA−PEモル比でGd3+と錯化させた(Gd3+・・Cl−と表す)。混合物中の遊離のGd3+の存在を、カルセインの蛍光を消光させる遊離のGd3+の能力によって決定した。Gd3+対DTPA−PEモル比4までは、カルセイン消光分析によって遊離のGd3+を検出できなかった。6またはそれより高いGd3+対DTPA−PEモル比で、遊離のすなわち結合していないGd3+が検出された(図1参照)。DTPAを発現する脂質ナノ粒子へのGd3+の効果を測定するために、我々は光子相関分光法によって粒径を測定した。DTPAを発現する脂質ナノ粒子の直径はGd3+濃度に依存していた。Gd3+対DTPAモル比1またはそれ未満で、Gd3+の存在は脂質ナノ粒子の直径に影響しなかった。Gd3+対DTPAモル比2で、Gd3+−DTPA脂質ナノ粒子の見かけの直径は約2ないし3倍まで増加するが、DTPA−脂質ナノ粒子と会合するGdの度合に見かけの減少はない(表1参照)。室温で24時間にわたってそれほどの直径の変化は検出されなかったので、これらの脂質ナノ粒子は安定であるように見える。全体として、これらのデータは、Gd3+対DTPAの比がGd−DTPA脂質ナノ粒子へのGd3+の組み込みの度合およびそれらの見かけの直径に影響することを示唆している。Gd3+対DTPAモル比2以下で、実質的にすべてのGd3+が脂質ナノ粒子と会合している。一実施形態において、本発明の組成物におけるGd3+対DTPAモル比は約1である。
【0053】
種々のGd3+配合物の、Gd3+のR1(1/T1)緩和能への影響を比較することにより、Gd3+発現脂質ナノ粒子のコントラスト特性を測定した。脂質ナノ粒子は、PEG化された脂質(mPEG−2000−DSPE、本明細書において「mPEG−DSPE」または「mPEG−PE」という)ありまたはなしのジステアロイル−ホスファチジルコリン(DSPC)からなり、Gd3+対DTPAモル比を1に固定した。T1およびT2測定を1.5TのMRスキャナーで収集した。臨床的に用いられているGd−DTPA製剤(OMNISCAN、 GE Healthcare, Princeton, NJから市販されている)が比較として含まれている。図2Aに示すように、本発明の代表的な組成物、mPEG−PEを含むGd−DTPA脂質ナノ粒子(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPC)は、OMNISCANおよびmPEGを含まない脂質ナノ粒子を含む他の製剤よりかなり高いR1値を示した。mPEGのGd−DTPA脂質ナノ粒子に対する効果はT2測定についてはより少ない(図2B参照)。しかし、両方のGd−DTPA脂質ナノ粒子組成物(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPCおよびGd−DTPA−PE:DSPC)についてのR1およびR2値は、可溶なGd−DTPA市販製剤(OMNISCAN)または溶液中の遊離のGd3+(Gd w/o DTPA)のそれよりもかなり高かった。我々の知識では、本発明のGd−DTPAナノ粒子についてのR1値は、PEGを含むGd3+発現リポソームで報告されている値を含み、現在までのところ最高の値である。事実、これらの結果は、DSPEに結合したmPEGの変わりに、卵エステル交換PEにリンクしたPEG(MW=5000)を発現する卵レクチンおよびコレステロールを含むGd−DTPAリポソームで収集されたデータよりも10倍高かった。
【0054】
Gd3+を含む両方のナノ粒子配合物は可溶なGd−DTPAよりも高いR1値を有していた。予測されるように、Gd3+なしの、DSPCおよびDSPCプラスmPEG−2000−PEの可溶な配合物は、緩和能に対して有意の効果を示さなかった。データは、他の配合物と比較して、PEG含有Gd−DTPA−脂質ナノ粒子がR1のより大きな増加を与えることを示している。市販されているOMNISCANと比較したとき、100倍までのR1緩和能が達成された。表面PEGのないGd−DTPAナノ粒子配合物(Gd−DTPA−PE:DSPC)もOMNISCANより高いR1値を示したが、PEG含有Gd−DTPA−脂質ナノ粒子配合物(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPC)よりもかなり低かった(図2A参照)。
【0055】
MRイメージにおいてGd3+によって生じた陽性コントラストは低いR2/R1比に依存売るので、R2値も決定した。図2Bは、R2(1/T2)緩和能測定に対する種々のGd3+配合物の効果を例示している。やはり、PEG化されたGd−DTPA−脂質ナノ粒子(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPCおよびGd−DTPA−PE:DSPC)は、他の処方と比較してR2の大きな増加を示したが、変化の大きさは小さかった。mPEG化されたGd−DTPA−脂質ナノ粒子(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPC)は、OMNISCANと比較して、R2の約8倍の増加を示した。Gd−DTPA含有DSPC(mPEGなし)ナノ粒子配合物(Gd−DTPA−PE:DSPC)はR1よりもR2の大きな増加を示し、これは陽性造影剤配合物としてのその有効性を限定するであろう。Gd3+なしのDSPCおよびDSPCプラスmPEG−2000−PEの対照配合物(DTPA−PE:mPEG−PE:DSPCおよびDTPA−PE:DSPC)はやはり緩和能に対して効果を示さなかった。緩和能実験は、他の配合物と比較して、mPEG化されたGd−DTPA−脂質ナノ粒子配合物がR1緩和能を非常に増加させることを示している。しかし、高濃度(3μmol/mlより高い)では、T2へのT1のスピルオーバーが顕著になり、T1信号の見かけの減少をもたらす(データは示していない)。最適なT1組織コントラストを、最小Gd3+濃度で得ることができた。これらのデータは、市販製品OMNISCANによって得られるそれよりもかなり高いコントラスト「能力」を明確に示している。
【0056】
霊長類におけるMRイメージング調査のための、mPEG−2000−PEを含むGd−DTPA脂質ナノ粒子(Gd−DTPA−PE:mPEG−PE:DSPCすなわち「Gd−DTPA脂質ナノ粒子」)の使用を以下に説明する。
【0057】
図3A−3Dは、コントラスト前およびGd3+−DTPA−脂質ナノ粒子の皮下注射に続く24時間までの両方の、ブタオザルの腹部腔のいくつかの冠状MRイメージを示す。周辺の組織と比較して、高い強度増強度合で副リンパ節が明確に見える(図3トップパネル)。リンパ節の増強は20分ほどの早さで見ることができるが、24時間まで続く。図4はダイナミックコントラスト増強MRIの時間経過を示し、時間に対する種々の期間の相対強度を示している。このデータは、Gd3+−DTPA−脂質ナノ粒子が注射後20分以内に急速にリンパ節組織に達し、少なくとも24時間のあいだコントラスト増強を維持することを示している。可溶なGd−DTPA(OMNISCAN製剤)で静脈処置された動物のリンパ系で20分以内に消失する低い信号と比較して、1回の皮下へのGd−DTPA脂質ナノ粒子投与は、長時間のあいだ非常に増強した信号を与えた。
【0058】
Gd−DTPA−脂質ナノ粒子のMRイメージ増強特性を用いて、血管イメージ増強を生じさせ腎臓の負担も減少させるのに必要なIV投与量を最小化することができる。ラットへの0.01mmole/kgのGd−DTPAナノ粒子(ヒトに対する現在の投与量の約1/5)の投与は、5分以内に明確に認識できるラットの中心血管系および末梢血管系による高品質MRイメージを生じた(図5B)。これは15分以内に胆汁および腸を通して取り除かれ始め(図5C)、24時間までにクリアランスプロセスが完了したように見える(図5D)。対照的に、0.05mmoleの可溶なGd−DTPA(OMNISCAN)は、血管の鮮明度なしに拡散したコントラスト局在化を生じる;また、これは四肢の末梢に分布するように見える(図6A)。限定投与量応答調査において、現在のGd−DTPA配合物と比較して、ラットにおける等価またはより良好な鮮明度のコントラスト増強MRイメージを生じるのに、ラットにおいてわずかに約10−20倍低い投与量のGd−DTPA−脂質ナノ粒子を要する。0.0025mmole/kgのDTPA−脂質ナノ粒子中のGdが、0.05mmole/kgのGd−DTPA(OMNISCAN)製剤の等価なイメージ品質を生じる。したがって、Gd−DTPA−脂質ナノ粒子は、腎不全および神経毒症状による現在承認されているGd造影剤を用いた臨床使用における難題を克服するであろう。
【0059】
表面結合したガドリニウムイオンを有する本発明のPEG化された脂質ナノ粒子は、コントラスト増強MRリンパ管造影法および血管イメージングにおいて他の製剤を超える大きな改善を示した。これらの脂質ナノ粒子は皮下注射後にリンパ節において高度の蓄積を示した。リンパ球組織におけるコントラスト増強は、注射の20分以内に始まり、24時間維持された。静脈内に与えた場合、この薬剤は、現在の薬剤よりかなり高い感度で血管系の高品質イメージを生じた。静脈内に投与された脂質ナノ粒子はほとんど胆汁経路を通してのみ取り除かれ、24時間以内に完了したようである。脂質ナノ粒子にmPEGを付加することによる表面修飾は水分子の配位によってGd3+のMR信号を増大させた。これはかなり高いR1緩和能およびリンパ節イメージ増強をもたらす。脂質ナノ粒子配合物は、転移性リンパ節識別を増大させ、イメージングについてのかなり広い時間フレームを可能にするために、低い投与量を用いて高い信号対ノイズMRコントラスト比を達成することを可能にするであろう。MRコントラスに必要とされる、潜在的に低い投与量およびGd3+のより好ましい除去経路は、より高い安全性マージンを与えることができるであろう。
【0060】
本発明の配合物は、現在入手でき、承認されている造影剤と比較して、比較的低い投与量で有効なコントラストを与える。図8A−8Fは、本発明の代表的な配合物(Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC)の静脈注射後のラットの投与量応答MRイメージを比較している:0.0mmol/kg(8A);0.00125mmol/kg(8B);0.0025mmol/kg(8C);0.005mmol/kg(8D);および0.010mmol/kg(8Eおよび8F)。リンパ節は図8Fに明確に認められる。
【0061】
上述したように、本発明の配合物は、現在入手でき、承認されている造影剤を超える利点を与える。図9A−9Cは、2種の市販されているガドリニウム系造影剤(0.05mmol/kg MS−325、 EPIX Pharmaceuticals, Inc., Cambridge, MA、図9A;および0.05mmol/kg MAGNEVIST Gd−DPTA、 Bayer HealthCare Pharmaceuticals、図9B)および本発明の代表的な配合物(0.01mmol/kg Gd−DPTA−PE:mPEG−PE:DSPC、図9C)の静脈注射後のラットのMRイメージを比較している。イメージは投与後約1ないし2分でニアピーク増強を得た。イメージからわかるように、本発明の代表的な配合物は、現在入手できる薬剤よりもかなり大きいコントラストを示している。
【0062】
図10は、DSPEをp−SCN−Bn−DOTAと反応させた後にGdメタレーションを行うことによる本発明において有用な代表的なGd錯体(DSPE−DOTA−Gd)を調製する合成スキームである。図11は、リン脂質に対して反応性であり、本発明において有用な3種の代表的なキレート化薬剤(イソチオシアネート、−N=C=Sまたは−NCS)(p−SCN−Bn−DOTA、CHX−A”−DTPA、およびp−SCN−Bn−DTPA)を示す。図12は、4種の代表的な親油性化合物(DSA、ジエーテルPE、DSPE−PEG(2000)アミン、およびDSPE)、およびDSPEをp−SCN−Bn−DOTAと反応させた後にGdメタレーションを行うことによる、本発明において有用な代表的なGd錯体(DSPE−DOTA−Gd)を調製するための合成スキームを示す。本発明において有用な脂質含有金属キレート化剤は図10および12に示すように容易に調製される。好適な反応性の金属キレート化剤(たとえば、イソチオシアネート官能基化金属キレート化剤、図11参照)は、好適に反応性である基(たとえば、DSPEのアミノ基、DSPE−PEG(2000)アミン、ジエーテルPE、DSA、図10および12参照)を含む脂質化合物と反応して、脂質部分が金属キレート化剤と共有結合した脂質含有金属キレート化剤を与える。イソチオシアネート官能基化した金属キレート化剤および反応性アミン含有脂質については、生成脂質含有金属キレート化剤は、脂質をキレート化剤へ結合させるチオウレア(−NH−C(=S)−NH−)結合を含む。他の好適に反応性の金属キレート化剤(たとえば、イソシアネート)および好適に反応性である基(たとえば、アルコール)を含む脂質化合物は、本発明において有用な脂質含有金属キレート化剤を与えうることが認識されるであろう。キレート化剤のメタレーションは金属イオン含有化合物を与える。
【表1】
【0063】
aDTPAはDSPC、mPEG−PEおよびDTPA−PE(8:1:0.9モル比からなる脂質ナノ粒子上で発現されている。例1に記載。
【0064】
b指示したDTPA対Gd3+モル比でナノ粒子をGdCl3にさらした。
【0065】
cDTPA発現ナノ粒子の径を光子相関分光法によって測定し、発現データは表示した時点での4連サンプルの平均±SDである。
【0066】
d未結合すなわち遊離のGd3+の存在をカルセインの蛍光消光分析により見積もった。
【0067】
以下の例は、本発明を限定するのではなく、説明する目的で提供している。
【0068】
例
例1
材料および方法
脂質ナノ粒子の調製。1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC、Avanti Polar Lipids, AL)、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(mPEG−2000−DSPE、Genzyme, MA)、および1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−DTPA(DSPE−DTPA、Avanti Polar Lipids, AL)を、クロロホルム(DSPC:mPEG−DSPE:DSPE−DTPA)中において8:2:1の比で化合させ、窒素下、次に高真空下で終夜乾燥させて薄膜にした。種々の分子量(すなわち鎖長)のPEGポリマーを含むmPEG−DSPEもGenzyme, MAから購入している。この時点でリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)を膜に加えて、バスタイプ超音波処理器(Laboratory Supplies Company, New York)中で超音波処理した。Malvern Zetasizer 5000の光子相関分光法(Malvern Instruments, PA)を用いて動的光散乱によって測定したところ、ベシクル径は50nmであった。懸濁液中のナノ粒子を塩化ガドリニウム(III)六水和物(Aldrich, St Louis, MO)と示したモル比で20分間混合して、Gd−DTPA−脂質ナノ粒子を制裁させた。結合していないGd3+を測定するために、ナノ粒子をカルセイン(0.5μM)(Sigma, St Louis, MO)とともにPBS中、pH7.4で培養し、Victor3V 1420マルチラベルカウンター(PerkinElmer, Waltham, MA)を用いて485/535nmで蛍光を測定した。遊離のイオン性Gd3+は[Gd3+]に依存する仕方でカルセイン蛍光を消光させる。最終的なGd濃度を測定するために、誘導結合プラズマ発光分光を用いて、元素Gd質量を測定した。本明細書に記載した調査には、これらの粒子とともに、Gd3+を含まない可溶な粒子を用いた。
【0069】
緩和能調査。Gd−DTPA−脂質ナノ粒子の希釈液を、0−5μmol/mlのあいだのGd3+濃度で調製した。比較のために、市販の薬剤たとえばOMNISCAN(Gd−DTPA−BMA)から0−5μmol/mlのGd3+濃度でいくつかのサンプルを調製した。RFレシーバーとしてボリュームヘッドコイルをもつ1.5TMRスキャナーで標準的なスピンエコーシーケンスを用いて緩和時間T1を測定した。T1測定について、TEを9msに、ならびに7つのTRをそれぞれ133、200、300、500、750、1000および2000msに固定した。T2測定について、TRを2000msに、ならびに4つのTEをそれぞれ15、30、45、および60msに固定した。イメージング強度をフィッチングして対応するT1およびT2の値を得て、これらをGd3+濃度に対してプロットした。
【0070】
霊長類のリンパ管MRI調査。ダイナミックコントラスト増強(DCE)MRIのためのGd−DTPA−脂質ナノ粒子を用いてリンパ節の生体内イメージングを、1.5TのMRスキャナーで実施した。ブタオマカク(ブタオザル)に吸入イソフルオラン(1−2%)で麻酔をかけ、実験中に詳しくモニターした。霊長類のコントラスト前イメージを記録して、適当なリンパ節位置を測定し、イメージングパラメーターを微調整した。動物をMRスキャナーから取り出して4個所に皮下注射した。各々の注射部位に、それぞれ2、5、5、および8.5mLの6.1μmol/ml Gd−DTPA−脂質ナノ粒子を入れて、投与量効果および注射部位からのコントラスト拡散のプロービングを可能にした。Gdの全投与量は霊長類調査について24.4μmol/kgであると見積もられた。表面コイル12×12インチ2を用いてSignaの1.5Tスキャナーでイメージを記録した。標準的なスピンエコーイメージングシーケンスを、TR=500ms、TE=15ms、3mmのスライス厚さ、21スライス、スライスギャップ=0.5mm、FOV(視野)=320×320mm2、マトリックスサイズ=512×512で用い、これは0.63×0.63mm2の面内分解能を与え、時間分解能は3.1分である。
【0071】
ラットの血管のMRI調査。ダイナミックコントラスト増強(DCE)MRIのためのGd−DTPA−脂質ナノ粒子を用いてラットの生体内イメージングを、3.0TのMRスキャナーで実施した。ラット(SD)に吸入イソフルオラン(1−2%)で麻酔をかけ、実験中に詳しくモニターした。ラットのコントラスト前イメージを記録して、適当な位置、方向を測定し、イメージングパラメーターを微調整した。動物をMRスキャナーから取り出して、大腿静脈を通して、400μLの指示したGd造影剤を注射した。表面コイル12×12インチを用いてSignaの1.5Tスキャナーでイメージを記録した。標準的なスピンエコーイメージングシーケンスを、TR=500ms、TE=15ms、3mmのスライス厚さ、21スライス、スライスギャップ=0.5mm、FOV(視野)=320×320mm2、マトリックスサイズ=512×512で用い、これは0.63×0.63mm2の面内分解能を与え、時間分解能は3.1分である。
【0072】
本発明の好ましい実施形態を説明し記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、その中で種々の変更をなしうることが理解されるであろう。
【0073】
独占的所有または権利を主張している本発明の実施形態は下記のように定義される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)脂質と、
(b)ポリアルキレン含有脂質と、
(c)脂質含有金属キレート化剤と
を含む組成物。
【請求項2】
前記脂質は、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロールおよびステロイド誘導体、胆汁酸および誘導体、カルジオリピン、アシル−グリセリドおよび誘導体、糖脂質、アシル−ペプチド、脂肪酸、炭水化物系ポリマー、官能基化シリカ、ポリ無水物ポリマー、ポリラクテート−グリコレートポリマー,およびバイオポリマーからなる群より選択される請求項1の組成物。
【請求項3】
前記脂質はリン脂質である、請求項1の組成物。
【請求項4】
前記リン脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC);ジパルミトイル ホスファチジルコリン;ジミリストイル ホスファチジルコリン;ジオレオイル ホスファチジルコリン;卵、大豆,亜麻仁などから誘導されたエステル交換リン脂質;およびホスファチジル エタノールアミンで置換されたホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジル セリン、およびホスファチジン酸からなる群より選択される、請求項3の組成物。
【請求項5】
前記ポリアルキレン含有脂質はポリオキシエチレン含有脂質およびポリオキシプロピレン含有脂質からなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項6】
前記ポリアルキレン含有脂質がポリエチレングリコールで官能基化されたリン脂質である、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコールで官能基化されたリン脂質は、約500ないし約20,000の数平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む、請求項6の組成物。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコールで官能基化されたリン脂質は、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(mPEG−2000−DSPE)である、請求項7の組成物。
【請求項9】
前記脂質含有金属キレート化剤は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−ジエチレントリアミンペンタアセチル(DSPE−DTPA)、テトラアザシクロドデカン、テトラアセチル(ガドジアミド)−PE、脂質官能基化[N,N−ビス[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−エチル]−グリシナト−(5”)]からなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項10】
前記脂質含有金属キレート化剤はPEG化された脂質部分を含む、請求項1の組成物。
【請求項11】
前記脂質含有金属キレート化剤はPEG化されたDTPAである、請求項1の組成物。
【請求項12】
前記脂質含有金属キレート化剤はDSPE−BOPTA、DSPE−DO3A、およびDSPE−DOTAからなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項13】
前記ポリアルキレン含有脂質は、脂質、ポリアルキレン含有脂質、および脂質含有金属キレート化剤の約5ないし約50モルパーセント存在する、請求項1の組成物。
【請求項14】
前記脂質含有金属キレート化剤は、脂質、ポリアルキレン含有脂質、および脂質含有金属キレート化剤の約5ないし約50モルパーセント存在する、請求項1の組成物。
【請求項15】
さらにターゲティング成分を含む、請求項1−14のいずれか1項の組成物。
【請求項16】
前記ターゲティング成分は、蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、抗体またはこれらのフラグメント、小分子、糖もしくは多糖またはこれらの誘導体、および核酸からなる群より選択される、請求項15の組成物。
【請求項17】
前記ターゲティング成分は癌細胞またはウイルス感染細胞を標的にする、請求項15の組成物。
【請求項18】
ナノ粒子の形態にある、請求項1−17のいずれか1項の組成物。
【請求項19】
前記ナノ粒子は約5nmないし約2μmの直径を有する、請求項18の組成物。
【請求項20】
前記ナノ粒子は約50nmないし約100μmの直径を有する、請求項18の組成物。
【請求項21】
さらにキレート化された金属イオンを含む、請求項1−20のいずれか1項の組成物。
【請求項22】
キレート化された金属イオン:金属キレート化剤の比が0.1−1.0:1.0である、請求項21の組成物。
【請求項23】
前記キレート化された金属イオンは常磁性金属イオンである、請求項21または22の組成物。
【請求項24】
前記常磁性金属イオンはGd3+、Cu2+、Fe3+、Fe2+、およびMn2+からなる群より選択される、請求項23の組成物。
【請求項25】
前記キレート化された金属イオンは放射性同位元素のイオンである、請求項21または22の組成物。
【請求項26】
前記放射性同位元素のイオンは68Ga、55Co、86Y、90Y、177Lu、および111Inのイオンからなる群より選択される、請求項25の組成物。
【請求項27】
キャリアと、請求項18の複数のナノ粒子とを含む組成物。
【請求項28】
前記キャリアは薬学的に許容できるキャリアである、請求項27の組成物。
【請求項29】
前記キャリアは注射用生理的食塩水または注射用ブドウ糖である、請求項27の組成物。
【請求項30】
イメージ化される被験者に有効量の請求項21−29のいずれか1項の組成物を投与することを含む、組織をイメージ化する方法。
【請求項31】
前記組成物を皮下に投与する、請求項30の方法。
【請求項32】
前記組成物を静脈内に投与する、請求項30の方法。
【請求項33】
前記組織はリンパ球、心血管、肝臓、腎臓、脳、心臓、筋肉、および胃腸管組織、ならびにリンパ系または脈管(血液)系によって到達できる他の組織からなる群より選択される、請求項30の方法。
【請求項34】
前記有効量は約0.001ないし約5mmol金属/kg被験者である、請求項30の方法。
【請求項35】
前記有効量は約0.005ないし約0.050mmol常磁性金属/kg被験者である、請求項30の方法。
【請求項36】
前記有効量は約0.01mmol常磁性金属/kg被験者である、請求項30の方法。
【請求項37】
癌細胞に有効量の請求項25または26の組成物を投与することを含む、癌細胞に放射線癌治療薬剤を配送する方法。
【請求項38】
前記組成物を皮下に投与する、請求項37の方法。
【請求項39】
前記組成物を静脈内に投与する、請求項37の方法。
【請求項1】
(a)脂質と、
(b)ポリアルキレン含有脂質と、
(c)脂質含有金属キレート化剤と
を含む組成物。
【請求項2】
前記脂質は、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロールおよびステロイド誘導体、胆汁酸および誘導体、カルジオリピン、アシル−グリセリドおよび誘導体、糖脂質、アシル−ペプチド、脂肪酸、炭水化物系ポリマー、官能基化シリカ、ポリ無水物ポリマー、ポリラクテート−グリコレートポリマー,およびバイオポリマーからなる群より選択される請求項1の組成物。
【請求項3】
前記脂質はリン脂質である、請求項1の組成物。
【請求項4】
前記リン脂質は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC);ジパルミトイル ホスファチジルコリン;ジミリストイル ホスファチジルコリン;ジオレオイル ホスファチジルコリン;卵、大豆,亜麻仁などから誘導されたエステル交換リン脂質;およびホスファチジル エタノールアミンで置換されたホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジル セリン、およびホスファチジン酸からなる群より選択される、請求項3の組成物。
【請求項5】
前記ポリアルキレン含有脂質はポリオキシエチレン含有脂質およびポリオキシプロピレン含有脂質からなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項6】
前記ポリアルキレン含有脂質がポリエチレングリコールで官能基化されたリン脂質である、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコールで官能基化されたリン脂質は、約500ないし約20,000の数平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む、請求項6の組成物。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコールで官能基化されたリン脂質は、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(mPEG−2000−DSPE)である、請求項7の組成物。
【請求項9】
前記脂質含有金属キレート化剤は1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−ジエチレントリアミンペンタアセチル(DSPE−DTPA)、テトラアザシクロドデカン、テトラアセチル(ガドジアミド)−PE、脂質官能基化[N,N−ビス[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−エチル]−グリシナト−(5”)]からなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項10】
前記脂質含有金属キレート化剤はPEG化された脂質部分を含む、請求項1の組成物。
【請求項11】
前記脂質含有金属キレート化剤はPEG化されたDTPAである、請求項1の組成物。
【請求項12】
前記脂質含有金属キレート化剤はDSPE−BOPTA、DSPE−DO3A、およびDSPE−DOTAからなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項13】
前記ポリアルキレン含有脂質は、脂質、ポリアルキレン含有脂質、および脂質含有金属キレート化剤の約5ないし約50モルパーセント存在する、請求項1の組成物。
【請求項14】
前記脂質含有金属キレート化剤は、脂質、ポリアルキレン含有脂質、および脂質含有金属キレート化剤の約5ないし約50モルパーセント存在する、請求項1の組成物。
【請求項15】
さらにターゲティング成分を含む、請求項1−14のいずれか1項の組成物。
【請求項16】
前記ターゲティング成分は、蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、抗体またはこれらのフラグメント、小分子、糖もしくは多糖またはこれらの誘導体、および核酸からなる群より選択される、請求項15の組成物。
【請求項17】
前記ターゲティング成分は癌細胞またはウイルス感染細胞を標的にする、請求項15の組成物。
【請求項18】
ナノ粒子の形態にある、請求項1−17のいずれか1項の組成物。
【請求項19】
前記ナノ粒子は約5nmないし約2μmの直径を有する、請求項18の組成物。
【請求項20】
前記ナノ粒子は約50nmないし約100μmの直径を有する、請求項18の組成物。
【請求項21】
さらにキレート化された金属イオンを含む、請求項1−20のいずれか1項の組成物。
【請求項22】
キレート化された金属イオン:金属キレート化剤の比が0.1−1.0:1.0である、請求項21の組成物。
【請求項23】
前記キレート化された金属イオンは常磁性金属イオンである、請求項21または22の組成物。
【請求項24】
前記常磁性金属イオンはGd3+、Cu2+、Fe3+、Fe2+、およびMn2+からなる群より選択される、請求項23の組成物。
【請求項25】
前記キレート化された金属イオンは放射性同位元素のイオンである、請求項21または22の組成物。
【請求項26】
前記放射性同位元素のイオンは68Ga、55Co、86Y、90Y、177Lu、および111Inのイオンからなる群より選択される、請求項25の組成物。
【請求項27】
キャリアと、請求項18の複数のナノ粒子とを含む組成物。
【請求項28】
前記キャリアは薬学的に許容できるキャリアである、請求項27の組成物。
【請求項29】
前記キャリアは注射用生理的食塩水または注射用ブドウ糖である、請求項27の組成物。
【請求項30】
イメージ化される被験者に有効量の請求項21−29のいずれか1項の組成物を投与することを含む、組織をイメージ化する方法。
【請求項31】
前記組成物を皮下に投与する、請求項30の方法。
【請求項32】
前記組成物を静脈内に投与する、請求項30の方法。
【請求項33】
前記組織はリンパ球、心血管、肝臓、腎臓、脳、心臓、筋肉、および胃腸管組織、ならびにリンパ系または脈管(血液)系によって到達できる他の組織からなる群より選択される、請求項30の方法。
【請求項34】
前記有効量は約0.001ないし約5mmol金属/kg被験者である、請求項30の方法。
【請求項35】
前記有効量は約0.005ないし約0.050mmol常磁性金属/kg被験者である、請求項30の方法。
【請求項36】
前記有効量は約0.01mmol常磁性金属/kg被験者である、請求項30の方法。
【請求項37】
癌細胞に有効量の請求項25または26の組成物を投与することを含む、癌細胞に放射線癌治療薬剤を配送する方法。
【請求項38】
前記組成物を皮下に投与する、請求項37の方法。
【請求項39】
前記組成物を静脈内に投与する、請求項37の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−518012(P2012−518012A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550316(P2011−550316)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/024324
【国際公開番号】WO2010/094043
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/024324
【国際公開番号】WO2010/094043
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【Fターム(参考)】
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