説明

磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法

【課題】本発明は、磁気共鳴現象を利用して生体のMRスペクトルを得るMRI装置に関し、頭部脂肪信号抑圧のためのサチュレーション位置の設定に伴う負担を軽減することである。
【解決手段】本発明は、磁気共鳴現象を利用して生体のMRスペクトルを得るMRI装置であって、被検体に関する形態画像を表示する手段と、前記形態画像を解析して被検の脂肪領域にサチュレーション領域を自動設定する手段を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴現象を利用して生体のMRスペクトルを得る磁気共鳴イメージング(以下、MRIと称する)装置および磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法に関し、特に頭部の脂肪信号抑圧のためのサチュレーション領域設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮影においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
一方、生体の機能情報としてNアセチルアスパラギン酸、コリン、クレアチンなどの代謝物質のスペクトルを得る磁気共鳴スペクトロスコピー(以下、MRSと称する)が開発されている。MRSは、得られた信号に含まれる分子の共鳴周波数の違いを利用して生体内の分子成分を計測する。
【0004】
MRSにおいて、水抑制と脂肪抑制は良好なスペクトルを得るために必須である。水は他の全ての代謝物よりも高濃度であり、他の代謝物の検出を困難にする。典型的には、水のラーモア周波数に合わせた狭いバンド幅の周波数選択パルス(CHESSパルス)を使用して水信号を抑制する。
【0005】
一方、脂肪のスペクトルは広い周波数帯域にあり、水と同様の手法を用いると、測定したい生体情報も同時に抑制してしまうため、しばしば空間選択的に信号を抑制することができるサチュレーションパルスを使用する。サチュレーションは幅のある平面に含まれる領域の信号を抑制することができるため、この領域を複数組み合わせて皮下脂肪組織のような脂肪の存在する部位に設定し、脂肪の信号を抑制する。
【0006】
1つのサチュレーションを使用してPRESS法でMRS撮影を行う際のシーケンス図を図1に示す。サチュレーションパルス101はMRSパルス102の前に印加する。空間選択的なパルス103で対象領域の縦磁化を反転し、縦磁化が十分回復する前にMRSパルスを印加することにより、所望の領域の信号を抑制する。サチュレーションパルスは残留磁化によるアーチファクトを抑制するためにスポイラー傾斜磁場104、105、106と共に使用する。
【0007】
サチュレーション位置の設定方法として、特許文献1では関心領域の周囲を囲むようにサチュレーションを設定することにより、関心の低い領域の信号を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−17704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、頭部MRS撮像では、関心領域の一部が脂肪領域を含んでしまう場合でも脂肪の信号を除去あるいは抑制できるよう皮下脂肪を覆うようにサチュレーション位置を設定すると更に有効である。そのためには、AX(アキシャル)断面画像上のみでの方向設定だけでなく、SAG(サジタル)断面やCOR(コロナル)断面での傾きも考慮して3次元的に適切な位置・方向に設定することが必要であるため、手動での操作は煩雑かつ困難である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、磁気共鳴現象を利用して生体のMRスペクトルを得るMRI装置に関し、画像を解析してサチュレーション位置を自動設定することにより頭部脂肪信号抑圧のためのサチュレーション位置の設定に伴う負担を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本願発明のMRI装置の主なものは、以下の特徴を有する。
(1)磁気共鳴現象を利用して被検体のMRスペクトルを得るMRI装置において、被検体が発生するNMR信号を計測し画像化して、被検体のスカウト画像を取得する信号処理手段と、スカウト画像を含む画像情報に演算処理を施す制御手段と、制御手段を用いてスカウト画像の関心領域を除く領域からNMR信号が抑制されるように信号を飽和するサチュレーション領域を算出する手段と、サチュレーション領域の算出に要するサチュレーション条件を入力する入力手段と、サチュレーション領域をスカウト画像と重畳して表示する表示手段とを備え、サチュレーション条件により決定されたサチュレーション領域は、所定の間隔を保持する2つの平面に挟まれた領域で構成され、サチュレーション領域から発生する信号が抑制されたNMR信号を用いて、被検体の関心領域のMRスペクトルを得ることを特徴とする。
【0012】
すなわち、磁気共鳴現象を利用して生体のMRスペクトルを得るMRI装置であって、被検体に関する形態画像を表示する手段と、前記形態画像を解析して被検の脂肪領域にサチュレーション領域を自動設定する手段を具備することを特徴とする。
【0013】
また、本願発明の磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法の主なものは、以下の特徴を有する。
(2)被検体が置かれる空間に静磁場、傾斜磁場および高周波磁場の各磁場を発生する磁場発生手段と、被検体の発生するNMR信号を検出する検出手段と、検出した磁気共鳴信号を用いて画像再構成する画像再構成手段と、再構成された画像を表示する表示手段と、各手段を制御する制御手段とを備えたMRI装置を用いて被検体のMRスペクトルを得る磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法において、被検体が発生するNMR信号を計測し画像化して、被検体のスカウト画像を取得する信号処理ステップと、制御手段を用いてスカウト画像の関心領域を除く領域からNMR信号が抑制されるように信号を飽和するサチュレーション領域を算出するステップと、サチュレーション領域の算出に要するサチュレーション条件を入力する入力ステップと、サチュレーション領域をスカウト画像と重畳して表示手段に表示するステップと、サチュレーション条件により決定されたサチュレーション領域は、所定の間隔を保持する2つの平面に挟まれた領域で構成され、サチュレーション領域から発生する信号が抑制されたNMR信号を用いて、被検体の関心領域のMRスペクトルを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁気共鳴現象を利用して生体のMRスペクトルを得るMRI装置において、頭部脂肪信号抑制のためのサチュレーション位置の設定に伴う負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】サチュレーションを使用したMRSのシーケンス図である。
【図2】本発明の全体構成を説明するための図である。
【図3】実施例1の構成を説明するための図である。
【図4】実施例1で示す操作者の操作手順を説明するためのフロー図である。
【図5】実施例1で使用するUIを説明するための図である。
【図6】マウスでサチュレーション位置の調整を行う方法を説明するための図である。
【図7】サチュレーション位置設定処理フローを説明するための図である。
【図8】サチュレーション位置設定処理内容を説明するための図である。
【図9】実施例2で示す操作者の操作手順を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
最初に、本発明に係るMRI装置の一例の全体概要を図2に基づいて説明する。図2は、本発明に係るMRI装置の一実施例の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体1の断層画像を得るもので、図2に示すように、MR装置は静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、シーケンサ4と、中央処理装置(CPU)8とを備えて構成される。
【0018】
静磁場発生系2は、垂直磁場方式であれば、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。
【0019】
傾斜磁場発生系3は、MRI装置の座標系(静止座標系)であるX,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成り、後述のシ−ケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場Gx,Gy,Gzを印加する。
【0020】
シーケンサ4は、高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」と称する)と傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御手段で、CPU8の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。
【0021】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1にRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとから成る。高周波発振器11から出力されたRFパルスをシーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調されたRFパルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、RFパルスが被検体1に照射される。
【0022】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル)14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射された電磁波によって誘起された被検体1の応答のNMR信号が被検体1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。
【0023】
信号処理系7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有する。受信系6からのデータがCPU8に入力されると、CPU8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。
【0024】
操作部25は、MRI装置の各種制御情報や上記信号処理系7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作部25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMR装置の各種処理を制御する。
【0025】
なお、図2において、送信側の高周波コイル14aと傾斜磁場コイル9は、被検体1が挿入される静磁場発生系2の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検体1に対向して、水平磁場方式であれば被検体1を取り囲むようにして設置されている。また、受信側の高周波コイル14bは、被検体1に対向して、或いは取り囲むように設置されている。
【実施例1】
【0026】
本発明の実施例1について図3を用いて説明する。本実施例は、磁気共鳴現象を利用して生体のMRスペクトルを得るMRI装置であって、被検体1に関する形態画像およびサチュレーション領域を表示する表示手段301と、前記形態画像を解析して被検の脂肪領域にサチュレーション領域を自動設定する自動設定手段302と、サチュレーションの設定数を入力する入力手段303、304と、サチュレーションの位置、向き、幅を微調整する調整手段305で構成されている。
【0027】
ここで、サチュレーションの位置、向き、幅を具体的に説明する。サチュレーションの位置は、AX断面画像などの関心領域を除く領域からNMR信号が除去あるいは抑制されるように信号を飽和させる領域の座標位置を指し、この位置座標の集合体に依りサチュレーション領域が形成されるが、この領域は所定の間隔を保持した2つの平面に囲まれる空間とする。座標は磁場空間を表わす3次元空間であり、通常磁場中心を原点として被検者の左右、前後、上下を基底ベクトルとする。次に、サチュレーションの向きは、前述の3次元空間中でのサチュレーション平面の傾きを指すものとし、通常は法線ベクトルの方向で定義する。次に、サチュレーションの幅は、この領域を構成する2つの平面間の所定の間隔、あるいは幅(または厚さ)を指すものとする。
【0028】
実施例1の動作について図4を用いて説明する。
ステップ401で、MRI撮像にて位置決め用画像(以下、スカウト画像と称する)を撮像する。スカウト画像には、ステップ403でシステムが行う画像解析の入力として使用するための複数のAX方向の断面画像を含むものとする。
【0029】
ステップ402で、ステップ401により撮像されたスカウト画像を表示手段301に表示する。
【0030】
ステップ403で、本撮像で使用するサチュレーションの数を図3で示す入力手段303に設定する。このとき、システムはAX断面画像を解析してサチュレーション位置を自動設定する。設定したサチュレーション位置はスカウト画像上に表示し、操作者が確認できる。
【0031】
ステップ404で、自動設定されたサチュレーションの位置、向き、幅を必要に応じて微調整する。サチュレーション位置の微調整は、サチュレーションの領域504(図5を参照)をマウスで直接操作もしくは数値入力で従来通り手動で行うことができる。
【0032】
ステップ405で、MRSの撮像を開始する。
【0033】
なお、サチュレーションの設定を任意の時点で実施可能なように実施開始手段を設けてもよい。この実施開始手段を設けることで、例えば、サチュレーション位置の微調整が完了した後に、再度、自動設定により、サチュレーションの位置を決定することが可能となる。
【0034】
以下に、上記ステップ403の動作につき、具体的に説明する。
先ず、ステップ403で使用するUI(User Interface)の例を図5に示す。本UIは、被検体1の形態画像およびその表示領域(COR方向501、SAG方向502、AX方向503)、サチュレーションの領域504、サチュレーションの設定数を表示・変更するための入力領域505、MRスペクトル取得領域506を備えている。MRスペクトル取得領域506は、図5中の太い実線で示す複数の格子状領域であって、複数同時に取得するマルチボクセルMRSである。本例では、4つの格子状領域を示している。
【0035】
本実施例では、入力領域505にサチュレーション数を3と設定している。このとき、自動設定されたサチュレーション領域がAX方向503には3つ表示され、AX方向で縦に設定されているサチュレーション領域はCOR方向501では傾いて設定されている。ここで、サチュレーション領域は、所定の間隔を保持した2つの平面で挟まれる領域で構成される。2つの平面は、通常、互いに平行となるように設定するが、ほぼ平行に設定しても良い。
【0036】
次に、図6を用いてサチュレーション位置の調整を、マウスを用いて手動で行う方法を示す。
サチュレーション中心位置601をマウスでドラッグして、サチュレーションを画像に対して平行する上下左右方向に移動する。また、サチュレーション両端位置602、603をマウスドラッグしてサチュレーションを画像法線に対して任意の角度に回転する。さらに、サチュレーション境界位置604、605をマウスドラッグしてサチュレーションの厚さを調整する。
【0037】
図7および図8を用いて、実施例1のサチュレーション位置の自動設定方法について説明する。図7は、サチュレーション位置設定処理フローを説明するための図であり、図8は、サチュレーション位置設定処理内容を説明するための図である。
【0038】
以下の説明では、図7で示す各ステップの説明と、そのステップに対応する画像を図8の各図で示す。
ステップ701で、被検体1の頭部AX断面画像(図8(a))を使用して組織範囲を抽出する。組織範囲を抽出するために、背景と被検体1との信号値の閾値τを求める。MRIの背景画像信号はRayleigh分布に従うため、図の被検体画像のヒストグラムh(f)から、h(f)にフィッテイングしたRayleigh曲線r(f)の差分をとる(式(1))。
【0039】
ここで、fは信号強度を示す。
【0040】
【数1】

【0041】
次式の誤差εを最小にする閾値τを求める(式(2))。
【0042】
【数2】

【0043】
求めた閾値τにより、被検体1と背景が図8(b)で示すように切り分けられる。
【0044】
背景ノイズおよび組織内の小領域を削除するために、5×5カーネル程度でモルフォロジックフィルタのopening処理およびclosing処理を適用して、図8(c)のように組織範囲を抽出する。
【0045】
ここで、モルフォロジックフィルタのopening処理とは、後述するerosion処理を行った後にdilation処理を行うことであり、ノイズのような小さな点を効果的に削減できる。また、closing処理とは、逆にdilation処理を行った後にerosion処理を行うことであり、領域上の小さな穴を効果的に埋めることができる。
【0046】
次に、dilation処理を説明する。
dilation処理は、2次元座標a=(a1,a2)とb=(b1,b2)を要素として持つ図形AとBを用いて、
【0047】
【数3】

【0048】
と表され、
【0049】
【数4】

【0050】
と定義される。
【0051】
erosion処理を、
【0052】
【数5】

【0053】
と表わすと、
【0054】
【数6】

【0055】
と定義される。
【0056】
ステップ702では、被検体1の組織の重心Pを求める。被検体1の位置ベクトルをP、組織中のピクセル数をNとすると、重心は、
【0057】
【数7】

【0058】
となる(図8(d))。
【0059】
ステップ703では、サチュレーションの位置候補点Qを決定する。重心から任意の角度θの方向ベクトルをνθ、被検体組織内のピクセルをOとすると、候補点は、
【0060】
【数8】

【0061】
となる。このとき、より候補点の位置を正確に算出するために、任意の複数の角度θ±αに対して候補点を求めて代表値を決める等の処理を行うことができる(図8(d))。
【0062】
ステップ704では、全てのスライスについて求めた候補点から、3次元的にサチュレーションの位置と法線の方向を求める(図8(e))。最小2乗近似により全候補点から求めた近似直線の方向ベクトルをs、ベクトルの外積をxとすると、サチュレーションの法線方向nは、
【0063】
【数9】

【0064】
である。
また、サチュレーションの位置は、近似直線上の任意の点とする。ここで求めたサチュレーションの位置と方向を使用して、サチュレーション(801)は、図8(f)のように設定される。
【0065】
全てのサチュレーションについて同様の処理を行い、図8(g)に示すように全てのサチュレーションを設定する。ここでは、サチュレーション(802〜809)を8箇所に設定した場合を示している。
【0066】
特にユーザが意図せずに脂肪信号が混入することを回避するため、サチュレーションの領域を設定する順番は、化学シフトの大きい位相エンコード方向から設置する。
【0067】
本実施例により、操作者はサチュレーションの数のみを入力することにより、サチュレーションの位置を自動設定することが可能になる。
【実施例2】
【0068】
次に、図9を用いて実施例2の説明をする。実施例1と異なる点は、サチュレーションの設定数を入力する手段およびサチュレーションの設定数を入力するステップを省略していることである。すなわち、スカウト画像を表示する際に、サチュレーション位置を自動設定することである。
【0069】
なお、自動設定に要する情報は、図2に示す外部記憶装置などに記憶され、その記憶された情報を用いて、中央処理装置8でサチュレーションの設定数を算出する。
【0070】
図9に示す各ステップと図4に示す各ステップとの対応は、ステップ901は401に、ステップ902は402に、ステップ903は404に、ステップ904は405に、それぞれ対応する。以下、図4と異なる箇所のみ説明し、同じ箇所の説明は省略する。
【0071】
ステップ902で、スカウト画像を表示する。このときに、サチュレーション位置設定処理を実行する。サチュレーションの設定情報は通常撮像プロトコルに保存されているため、保存されているサチュレーション情報、例えば重心からの角度θおよびサチュレーション数を使用してサチュレーションを設定する。
【0072】
本実施例によると、サチュレーション設定のためのユーザ操作を無くし、自動設定することが可能となるため、サチュレーションの設定に伴う操作の負担を軽減することができる。
以上、本発明の実施例を述べたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0073】
1:被検体、
2:静磁場発生系、
3:傾斜磁場発生系、
4:シ−ケンサ、
5:送信系、
6:受信系、
7:信号処理系、
8:中央処理装置(CPU)、
9:傾斜磁場コイル、
10:傾斜磁場電源、
11:高周波発振器、
12:変調器、
13:高周波増幅器、
14a:高周波コイル(送信コイル)、
14b:高周波コイル(受信コイル)、
15:信号増幅器、
16:直交位相検波器、
17:A/D変換器、
18:磁気ディスク、
19:光ディスク、
20:ディスプレイ、
21:ROM、
22:RAM、
23:トラックボール又はマウス、
24:キーボード、
25:操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴現象を利用して被検体のMRスペクトルを得るMRI装置において、
前記被検体より発生するNMR信号を計測し画像化して、前記被検体の位置決め画像を取得する信号処理手段と、
前記位置決め画像に基づいて前記被検体の関心領域を除く領域から前記NMR信号が抑制されるように該信号を飽和させておくサチュレーション領域を決定する手段と、
前記サチュレーション領域を前記位置決め画像と重畳して表示する表示手段と、
前記各手段の制御および前記各手段における演算処理を行う制御手段と、
前記制御手段の演算処理に要する情報を入力する入力手段と、を備え、
前記決定されたサチュレーション領域は、所定の間隔を保持する2つの平面に挟まれた領域で構成され、
前記サチュレーション領域から発生する信号が抑制された前記NMR信号を用いて、前記被検体の関心領域のMRスペクトルを得ることを特徴とするMRI装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記位置決め画像に基づいてサチュレーション領域の決定に要するサチュレーション条件を自動設定すること特徴とする請求項1に記載のMRI装置。
【請求項3】
前記サチュレーション条件が、前記サチュレーション領域の位置、向き、幅を含むことを特徴とする請求項2に記載のMRI装置。
【請求項4】
前記サチュレーション領域の位置、向き、幅の微調整を、前記表示手段を用いて行うことを特徴とする請求項3に記載のMRI装置。
【請求項5】
前記入力手段から前記サチュレーション領域の設定数を入力すること特徴とする請求項1に記載のMRI装置。
【請求項6】
前記サチュレーション領域の位置、向き、幅の前記微調整の実施後に、再度、自動設定への切り替えを可能とする実行開始手段を備えたこと特徴とする請求項4に記載のMRI装置。
【請求項7】
被検体が置かれる空間に静磁場、傾斜磁場および高周波磁場の各磁場を発生する磁場発生手段と、前記被検体の発生するNMR信号を検出する検出手段と、検出した磁気共鳴信号を用いて画像再構成する画像再構成手段と、再構成された画像を表示する表示手段と、前記各手段を制御する制御手段とを備えたMRI装置を用いて前記被検体のMRスペクトルを得る磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法において、
前記被検体が発生するNMR信号を計測し画像化して、前記被検体の位置決め画像を取得する信号処理ステップと、
前記位置決め画像を参照して前記被検体の関心領域を除く領域から前記NMR信号が抑制されるように信号を飽和するサチュレーション領域を決定するステップと、
前記サチュレーション領域を前記位置決め画像と重畳して表示手段に表示するステップと、を有し、
前記制御手段により、上記各ステップが実行され、
前記決定されたサチュレーション領域は、所定の間隔を保持する2つの平面に挟まれた領域で構成され、
前記サチュレーション領域から発生する信号が抑制された前記NMR信号を用いて、前記被検体の関心領域のMRスペクトルを得ることを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
【請求項8】
前記制御手段は、前記位置決め画像に基づいてサチュレーション領域の決定に要するサチュレーション条件を自動設定すること特徴とする請求項7に記載の磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
【請求項9】
前記サチュレーション条件の自動設定が、前記制御手段を用いて以下のステップ1)−6)により実行されること特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
前記被検体の組織範囲を抽出するステップ、
抽出された前記被検体の組織の重心を算出するステップ、
前記被検体の組織範囲内にサチュレーションの位置候補点を決定するステップ、
上記1)から3)のステップを全スライスにつき繰り返し実行するステップ、
上記4)のステップの完了後、サチュレーションの位置と傾きを決定するステップ、
上記1)から5)のステップを予め指定された設定数分の全サチュレーションにつき設定を行うステップ。
【請求項10】
前記サチュレーション条件が、前記サチュレーション領域の位置、向き、幅を含むことを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。
【請求項11】
前記サチュレーション領域の位置、向き、サイズの微調整を前記表示手段を用いて行うことを特徴とする請求項10に記載の磁気共鳴スペクトロスコピー撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−34661(P2013−34661A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173067(P2011−173067)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】