説明

磁気共鳴イメージング装置およびRFコイル

【課題】RFコイルが有するコイルエレメントの組み合わせを用途に応じて切り替える機能を有する場合でも、各コイルエレメント間のデカップリングを容易に実現することができるようにする。
【解決手段】腹部撮像時および脊椎撮像時に兼用される受信用RFコイル8bが、8の字コイルEと、8の字コイルEの中央に配置されたループコイルL1と、ループコイルL1に一部が重ねられたループコイルL2およびL3とを含んだコイルエレメント群を有する。そして、経路切替制御部が、ループコイルL1、L2およびL3の組み合わせ、または、8の字コイルEおよびループコイルL1の組み合わせによって信号が受信されるように受信経路を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置およびRF(Radio Frequency)コイルに関し、特に、複数のコイルエレメントを組み合わせて形成されたアレイコイルにおけるデカップリングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴現象を利用して被検体内を画像化する装置であり、被検体から発生される核磁気共鳴信号を検出するためのRFコイルを有する。このRFコイルとして、近年では、「アレイコイル」と呼ばれるものが広く利用されている。アレイコイルは、複数のコイルエレメントを組み合わせて形成されており、単一のコイルエレメントではカバーできない広い領域から信号を検出することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
アレイコイルは、具体的には、複数のコイルエレメントを組み合わせたコイルエレメント群によって形成される。ここで、コイルエレメントとしては、例えばループコイルや8の字コイル(「サドルコイル」とも呼ばれる)などが用いられ、各コイルエレメントの配置には、各種のパターンが考えられる。図14A〜14Dは、従来のアレイコイルにおけるコイルエレメント郡の幾何学的配置を説明するための図である。
【0004】
図14Aは、3つのループコイルを用いた場合の配置の一例を示している。この配置では、コイルエレメント群の感度は、被検体に対して深さ方向に深くかつ左右方向に広くなる。また、SN(Signal to Noise)比は普通程度となる。また、図14Bは、1つのループコイルおよび1つの8の字コイルを用いた場合の配置の一例を示している。この配置では、コイルエレメント群の感度は、被検体に対して深さ方向に深くかつ左右方向に狭くなる。また、SN比は、左右方向において中央が良好となる。
【0005】
また、図14Cは、4つのループコイルを用いた場合の配置の一例を示している。この配置では、コイルエレメント群の感度は、被検体に対して深さ方向に少し浅くかつ左右方向に広くなる。また、SN比は普通程度となる。また、図14Dは、3つのループコイルおよび1つの8の字コイルを用いた場合の配置の一例を示している。この配置では、コイルエレメント群の感度は、被検体に対して深さ方向に深くかつ左右方向に広くなる。また、SN比は、左右方向において左側および右側は普通程度となるが、中央が極めて良好となる。
【0006】
このように、複数のコイルエレメントを組み合わせる場合、組み合わせるコイルエレメントの種類や配置によって、コイルエレメント群の感度やSN比が異なる。そのため、撮像部位ごとに専用のアレイコイルを作製する場合には、撮像部位に適したコイルエレメント群を選択して用いる必要がある。
【0007】
例えば、図14A〜14Dに示したコイルエレメント群のうち、腹部撮像時および脊椎撮像時それぞれにおいて被検体の背中に配置されるものとして兼用可能なコイルエレメント群を考える。まず、腹部撮像時には、被検体に対して深さ方向に深くかつ左右方向に広い検出感度が必要となるため、図14Aまたは14Cに示したコイルエレメント群が適している。一方、脊椎を撮像時には、被検体に対して左右方向における中央のSNが高いことが必要となるため、図14Bに示したコイルエレメント群が適している。
【0008】
したがって、腹部撮像時および脊椎撮像時に兼用可能なコイルエレメント群としては、図14Aおよび14Bの構成を兼ね備えた図14Dのコイルエレメント群を用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−21188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図14Dに示したコイルエレメント群を腹部撮像時および脊椎撮像時それぞれにおいて被検体の背中に配置されるものとして兼用する場合、コイルエレメント間のデカップリングを実現することが難しいという課題がある。
【0011】
具体的には、隣り合うループコイル間については、それぞれのループコイルの一部を重ね、重ねた部分の面積の大きさを調整することで容易にデカップリングを実現することができる。また、中央のループコイルと8の字コイルとの間については、ループコイルおよび8の字コイルがそれぞれ発生する高周波磁場の総和がゼロになるため、構造的にデカップリングを実現することができる。
【0012】
しかし、両側のループコイルと8の字コイルとの間については、デカップリングを実現することが難しい。なぜなら、ループコイルの一部と8の字コイルの一部を重ねたとしても、装置の構造上、ループコイルを配置することができる左右方向の範囲が制限されるため、重ねた部分の面積を容易に調整することができないからである。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、RFコイルが有するコイルエレメントの組み合わせを用途に応じて切り替える機能を有する場合でも、各コイルエレメント間のデカップリングを容易に実現することができる磁気共鳴イメージング装置およびRFコイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様にかかる磁気共鳴イメージング装置は、少なくとも8の字コイルと、前記8の字コイルの中央に配置された第1のループコイルと、前記第1のループコイルに一部が重ねられた第2のループコイルとを含んだコイルエレメント群を有するRFコイルと、前記第1のループコイルおよび前記第2のループコイルの組み合わせ、または、前記8の字コイルおよび前記第1のループコイルの組み合わせによって信号が受信および/または送信されるように、該信号の伝送経路を切り替える経路切替部とを備える。
【0015】
また、本発明の他の態様にかかる磁気共鳴イメージング装置は、互いに種類が異なる2つのコイルエレメントを少なくとも有するRFコイルと、撮像条件に基づいて、前記2つのコイルエレメントのいずれか一方または両方によって信号が受信および/または送信されるように該信号の伝送経路を切り替える切替部とを備える。
【0016】
また、本発明の他の態様にかかるRFコイルは、少なくとも8の字コイル、該8の字コイルの中央に配置された第1のループコイル、該第1のループコイルと一部が重ねられた第2のループコイルを含んだコイルエレメント群を有し、前記第1のループコイルおよび前記第2のループコイルの組み合わせ、または、前記8の字コイルおよび前記第1のループコイルの組み合わせによって信号が受信および/または送信されるように、信号の伝送経路が切り替えられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、RFコイルが有するコイルエレメントの組み合わせを用途に応じて切り替える機能を有する場合でも、各コイルエレメント間のデカップリングを容易に実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本実施例1に係るMRI装置の全体構成を示す図である。
【図2A】図2Aは、図1に示した受信用RFコイルの位置関係を説明するための図(1)である。
【図2B】図2Bは、図1に示した受信用RFコイルの位置関係を説明するための図(2)である。
【図3】図3は、図1に示した受信用RFコイルの構成を説明するための図である。
【図4】図4は、図3に示したコイルエレメント群の配置を説明するための図である。
【図5】図5は、図4に示したコイルエレメント群の構成を説明するための図である。
【図6】図6は、本実施例1に係るコイルエレメント群の各コイルエレメントおよび受信部の受信経路を説明するための図である。
【図7】図7は、本実施例1に係る経路切替制御部による受信経路の切り替えの手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本実施例1に係る腹部撮像時の受信経路の状態を示す図である。
【図9】図9は、本実施例1に係る脊椎撮像時の受信経路の状態を示す図である。
【図10】図10は、本実施例2に係るコイルエレメント群の各コイルエレメントおよび受信部の受信経路を説明するための図である。
【図11】図11は、本実施例2に係る経路切替制御部による受信経路の切り替えの手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、本実施例2に係る腹部撮像時の受信経路の状態を示す図である。
【図13】図13は、本実施例2に係る脊椎撮像時の受信経路の状態を示す図である。
【図14A】図14Aは、従来のアレイコイルにおけるコイルエレメント郡の幾何学的配置を説明するための図(1)である。
【図14B】図14Bは、従来のアレイコイルにおけるコイルエレメント郡の幾何学的配置を説明するための図(2)である。
【図14C】図14Cは、従来のアレイコイルにおけるコイルエレメント郡の幾何学的配置を説明するための図(3)である。
【図14D】図14Dは、従来のアレイコイルにおけるコイルエレメント郡の幾何学的配置を説明するための図(4)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置およびRFコイルの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例では、腹部または脊椎が撮像される場合を中心に説明する。また、以下に示す実施例では、磁気共鳴イメージング装置を「MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置」と呼び、核磁気共鳴信号を「NMR(Nuclear Magnetic Resonance)信号」と呼ぶ。
【実施例1】
【0020】
最初に、本実施例1に係るMRI装置の全体構成について説明する。図1は、本実施例1に係るMRI装置100の全体構成を示す図である。図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信用RF(Radio Frequency)コイル6、送信部7、受信用RFコイル8aおよび8b、受信部9、シーケンス制御部10および計算機システム20を備える。
【0021】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成されており、内部の空間に一様な静磁場を発生させる。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石などが用いられる。
【0022】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されており、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されている。これら3つのコイルは、傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けることによって、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。
【0023】
かかる傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、リードアウト用傾斜磁場Gr、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびスライス選択用傾斜磁場Gsにそれぞれ対応している。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてNMR信号の周波数を変化させるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じてNMR信号の位相を変化させるために利用される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。
【0024】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、制御部26による制御のもと、寝台4を駆動して天板4aを長手方向および上下方向へ移動する。
【0025】
送信用RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信用RFコイル6に送信する。
【0026】
受信用RFコイル8aおよび8bは、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信用RFコイル6によって発生した高周波磁場の影響で被検体Pから放射されるNMR信号を受信する。ここで、受信用RFコイル8aおよび8bは、それぞれ、複数のコイルエレメントを組み合わせて形成されたアレイコイルである。さらに、受信用RFコイル8aは、被検体の腹側に装着される腹部用コイルであり、受信用RFコイル8bは、被検体の背中側に装着される脊椎用コイルであり、それぞれを同時に使用可能である。
【0027】
図2Aおよび2Bは、図1に示した受信用RFコイル8aおよび8bの位置関係を説明するための図である。図2Aは、腹部撮像時の受信用RFコイル8aおよび8bの位置関係を示している。また、図2Bは、脊椎撮像時の受信用RFコイル8bの位置関係を示している。
【0028】
図2Aに示すように、腹部撮像時には、仰向けに置かれた被検体Pの腹側(上側)に受信用RFコイル8aが装着され、背中側(下側)に受信用RFコイル8bが装着される。また、図2Bに示すように、脊椎撮像時には、仰向けに置かれた被検体Pの背中側に受信用RFコイル8bが装着される。このように、受信用RFコイル8bは、腹部撮像時および脊椎撮像時それぞれにおいて、被検体Pの背中に配置されるものとして兼用される。
【0029】
図1にもどって、受信部9は、受信用RFコイル8aおよび8bから出力されるNMR信号に基づいてデジタル信号の生データを生成し、生成した生データをシーケンス制御部10に送信する。また、受信部9は、NMR信号および生データを伝送するための複数の受信経路を有している。この受信経路を適宜に切り替えることによって、受信用RFコイル8aおよび8bが有するコイルエレメントの組み合わせを用途に応じて切り替えることが可能である。
【0030】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動することによって被検体Pのスキャンを行う。そして、スキャンを行った結果として受信部9から生データが送信されると、シーケンス制御部10は、そのk空間データを計算機システム20へ転送する。
【0031】
ここで、「シーケンス実行データ」とは、所定のシーケンスに基づいて撮像を実行するためのデータである。すなわち、シーケンス実行データとは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信用RFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9がNMR信号を検出するタイミングなどを定義したデータである。
【0032】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行う。この計算機システム20は、特に、インタフェース部21、画像再構成部22、記憶部23、入力部24、表示部25および制御部26を有する。
【0033】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、このインタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス実行データを送信したり、シーケンス制御部10から生データを受信したりする。
【0034】
ここで、インタフェース部21によって受信された生データは、傾斜磁場コイル2により発生したスライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場GrによってSE(Slice Encode)方向、PE(Phase Encode)方向およびRO(Read Out)方向における空間周波数の情報が対応付けられたk空間データとして、記憶部23に格納される。
【0035】
画像再構成部22は、記憶部23に記憶されたk空間データに対してフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを生成する。
【0036】
記憶部23は、インタフェース部21によって受信された生データ(k空間データ)や、画像再構成部22によって生成された画像データなどを被検体Pごとに記憶する。
【0037】
入力部24は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。この入力部24としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜に用いられる。
【0038】
表示部25は、制御部26による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する。この表示部25としては、液晶表示器などの表示デバイスが適宜に用いられる。
【0039】
制御部26は、MRI装置100全体を制御する。具体的には、制御部26は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、操作者からの指示に基づいて各種プログラムを実行することによって、上述した各部の動作を制御する。そして、制御部26は、特に、撮像条件設定部26aおよび経路切替制御部26bを有する。
【0040】
撮像条件設定部26aは、入力部24を介して操作者から入力される情報に基づいて撮像条件を設定する。ここで設定される撮像条件には、撮像の対象となる部位である撮像部位が含まれる。経路切替制御部26bは、撮像条件設定部26aによって設定された撮像条件に基づいて、受信部9の受信経路を切り替える。
【0041】
以上、本実施例1に係るMRI装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施例1では、腹部撮像時および脊椎撮像時に兼用される受信用RFコイル8bが、少なくとも8の字コイル(「サドルコイル」とも呼ばれる)と、その8の字コイルの中央に配置された第一のループコイルと、第一のループコイルに一部が重ねられた第二のループコイルとを含んだコイルエレメント群を有するように構成されている。
【0042】
そして、制御部26の経路切替制御部26bが、第一のループコイルおよび第二のループコイルの組み合わせ、または、8の字コイルおよび第一のループコイルの組み合わせによって信号が受信されるように、受信部9の受信経路を切り替える。これにより、本実施例1では、RFコイルが有するコイルエレメントの組み合わせを用途に応じて切り替える機能を有する場合でも、各コイルエレメント間のデカップリングを容易に実現することができるようにしている。
【0043】
以下、上述した受信用RFコイル8b、受信部9および経路切替制御部26bの機能について詳細に説明する。
【0044】
まず、受信用RFコイル8bの構成について説明する。図3は、図1に示した受信用RFコイル8bの構成を説明するための図である。図3に示すように、具体的には、受信用RFコイル8bは、コイルエレメント群G1およびG2を有する。
【0045】
ここで、コイルエレメント群G1およびG2は、2つの列をなすように被検体Pに対して体軸方向に並べて配置されている。なお、本実施例1では、受信用RFコイル8bが2列のコイルエレメント群を有する場合について説明するが、コイルエレメント群の数はこれに限られるわけではない。
【0046】
次に、図3に示したコイルエレメント群G1およびG2の配置について説明する。図4は、図3に示したコイルエレメント群G1およびG2の配置を説明するための図である。図4に示すように、各コイルエレメント群に含まれるループコイルおよび8の字コイルは、それぞれ被検体Pに対して左右方向に並べて配置されている。
【0047】
次に、図4に示したコイルエレメント群G1およびG2の構成について説明する。なお、図4に示したコイルエレメント群G1およびG2はいずれも同じ構成を有するので、ここではコイルエレメント群G1を例にあげて説明する。図5は、図4に示したコイルエレメント群G1の構成を説明するための図である。図5に示すように、コイルエレメント群G1は、8の字コイルEと、ループコイルL1、L2およびL3とを有する。
【0048】
ここで、ループコイルL1は、8の字コイルEの中央に配置されている。こうして、ループコイルL1が8の字コイルEの中央に配置されることによって、8の字コイルEとループコイルL1との間のデカップリングが実現されている。
【0049】
また、ループコイルL2およびL3は、それぞれ、ループコイルL1に一部が重なるように配置されている。こうして、ループコイルL2およびL3の一部がループコイルL1に重ねられることによって、ループコイルL1とL2との間、および、ループコイルL1とL3との間のデカップリングがそれぞれ実現されている。
【0050】
なお、本実施例1では、コイルエレメント群G1およびG2がそれぞれ3つのループコイルおよび1つの8の字コイルを有する場合について説明するが、ループコイルおよび8の字コイルの数はこれに限られるわけではない。例えば、2つ以上の8の字コイルが用いられてもよいし、4つ以上のループコイルが用いられてもよい。すなわち、複数のコイルの中からいくつかのコイルを選んで組み合わせた場合に、デカップリングが実現されたコイルの組み合わせが少なくとも2つ得られるように各コイルが配置されていれば、コイルの数はいくつであってもよい。
【0051】
次に、本実施例1に係るコイルエレメント群G1の各コイルエレメントおよび受信部9の受信経路について説明する。図6は、本実施例1に係るコイルエレメント群G1の各コイルエレメントおよび受信部9の受信経路を説明するための図である。なお、図6は、受信部9が有する複数の受信経路のうち、コイルエレメント群G1に接続される3つの受信経路(受信系ch1、ch2およびch3)を示している。
【0052】
図6に示すように、8の字コイルE、ループコイルL1、L2およびL3の各コイルエレメントには、それぞれチューニング/マッチング回路およびトラップ回路が設けられている。チューニング/マッチング回路は、NMR信号を受信しやすいように、各コイルエレメントの共振周波数およびインピーダンスを調整する。
【0053】
トラップ回路は、PIN(P-intrinsic-N)ダイオードやコンデンサなどの回路素子を有し、駆動時にコイルエレメントを高インピーダンスにする。このトラップ回路を駆動することによって、コイルエレメントに電流が流れないように制御することができる。
【0054】
また、各チューニング/マッチング回路の出力側には、コイルエレメントによって受信されたNMR信号を増幅するアンプ(増幅器)が接続されている。さらに、各アンプの出力側には、NMR信号の受信経路を切り替えるためのスイッチSW11およびSW12がそれぞれ設けられている。これらアンプ、スイッチSW11、SW12は、例えば、受信用RFコイル8bまたは受信部9などに実装される。
【0055】
具体的には、8の字コイルEから信号が送られるアンプの出力側、および、ループコイルL2から信号が送られるアンプの出力側は、それぞれスイッチSW11を介して受信系ch1に接続されている。また、ループコイルL1から信号が送られるアンプの出力側は、直接的に受信系ch2に接続されている。また、ループコイルL3から信号が送られるアンプの出力側は、スイッチSW12を介して受信系ch3に接続されている。
【0056】
ここで、スイッチSW11は、8の字コイルEまたはループコイルL2のいずれか一方と受信系ch1とを導通状態にするように切り替えが可能である。また、スイッチSW12は、ループコイルL3と受信系ch3とを導通状態または非導通状態に切り替えることが可能である。すなわち、これらスイッチSW11およびSW12を適宜に制御することによって、受信用RFコイル8aおよび8bが有するコイルエレメントの組み合わせを用途に応じて切り替えることが可能である。
【0057】
次に、本実施例1に係る経路切替制御部26bによる受信経路の切り替えの手順について説明する。図7は、本実施例1に係る経路切替制御部26bによる受信経路の切り替えの手順を示すフローチャートである。また、図8は、本実施例1に係る腹部撮像時の受信経路の状態を示す図であり、図9は、本実施例1に係る脊椎撮像時の受信経路の状態を示す図である。
【0058】
図7に示すように、NMR信号の受信時には、経路切替制御部26bは、まず、撮像条件設定部26aによって設定された撮像条件に基づいて、撮像に使用されるRFコイルとして受信用RFコイル8aおよび8bの両方が選択されているか否かを検知する。
【0059】
そして、両方が選択されていた場合には、経路切替制御部26bは、腹部が撮像されると判定し(ステップS101,Yes)、スイッチSW11をループコイルL2側に切り替える(ステップS102)。また、経路切替制御部26bは、スイッチSW12をループコイルL3側に切り替える(ステップS103)。さらに、経路切替制御部26bは、8の字コイルEのトラップ回路を駆動する(ステップS104)。
【0060】
これにより、図8に示すように、ループコイルL2と受信系ch1とがスイッチSW11を介して導通状態となり、ループコイルL1と受信系ch2とが導通状態となり、ループコイルL3と受信系ch3とがスイッチSW12を介して導通状態となる。さらに、8の字コイルEのトラップ回路によって、8の字コイルEに電流が流れないようになる。この結果、ループコイルL1、L2およびL3の組み合わせでNMR信号が受信されるようになる。
【0061】
一方、受信用RFコイル8bのみが選択されていた場合には、経路切替制御部26bは、脊椎が撮像されると判定し(ステップS105,Yes)、スイッチSW11を8の字コイルE側に切り替える(ステップS106)。また、経路切替制御部26bは、スイッチSW12をループコイルL3側から切り離す(ステップS107)。さらに、経路切替制御部26bは、ループコイルL2およびL3のトラップ回路を駆動する(ステップS108)。
【0062】
これにより、図9に示すように、8の字コイルEと受信系ch1とがSW11を介して導通状態となり、ループコイルL1と受信系ch2とが導通状態となる。さらに、ループコイルL2およびL3それぞれのトラップ回路によって、ループコイルL2およびL3に電流が流れないようになる。この結果、8の字コイルEおよびループコイルL1の組み合わせでNMR信号が受信されるようになる。
【0063】
なお、経路切替制御部26bは、制御線を介して各スイッチおよび各トラップ回路に制御信号を送ることによって、各スイッチおよび各トラップ回路の駆動を制御するが、同じタイミングで駆動するものについては、制御線を共通にすることができる。具体的には、図7のステップS102〜S104に示したように、スイッチSW11をループコイルL2側に切り替えるタイミング、スイッチSW12をループコイルL3側に切り替えるタイミング、8の字コイルEのトラップ回路を駆動するタイミングはそれぞれ同じであるので、これらの制御を行うための制御線は共通にすることができる。
【0064】
同様に、ステップS106〜S108に示したように、スイッチSW11を8の字コイルE側に切り替えるタイミング、スイッチSW12をループコイルL3側から切り離すタイミング、ループコイルL2およびL3のトラップ回路を駆動するタイミングも同じであるので、これらの制御線も共通にすることができる。さらに、送信用RFコイル6が高周波磁場を発生する際には、受信用RFコイル8bが有するすべてのコイルエレメントに電流が流れないように制御する必要があるため、各トラップ回路を同時に駆動する必要がある。つまり、少なくとも3本の制御線があれば、1つのコイルエレメント群を制御することが可能である。
【0065】
上述してきたように、本実施例1では、腹部撮像時および脊椎撮像時に兼用される受信用RFコイル8bが、8の字コイルEと、8の字コイルEの中央に配置されたループコイルL1と、ループコイルL1に一部が重ねられたループコイルL2およびL3とを含んだコイルエレメント群を有する。そして、制御部26の経路切替制御部26bが、ループコイルL1、L2およびL3の組み合わせ、または、8の字コイルEおよびループコイルL1の組み合わせによって信号が受信されるように、受信部9の受信経路を切り替える。したがって、RFコイルが有するコイルエレメントの組み合わせを用途に応じて切り替える機能を有する場合でも、各コイルエレメント間のデカップリングを容易に実現することができる。
【実施例2】
【0066】
ところで、従来のMRI装置の中には、複数のコイルエレメントによって受信された信号の位相を変化させて合成する合成回路を有するものもある。本発明は、このようなMRI装置にも同様に適用することが可能である。そこで、実施例2では、受信部に合成回路を有するMRI装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0067】
なお、本実施例2に係るMRI装置は、基本的には実施例1で説明したMRI装置100と同様の構成を有し、受信部9における受信経路の構成が異なるのみである。そこで、ここでは、本実施例2に係るコイルエレメント群G1の各コイルエレメントおよび受信部9の受信経路、ならびに、本実施例1に係る経路切替制御部26bによる受信経路の切り替えの手順について説明する。
【0068】
まず、本実施例2に係るコイルエレメント群G1の各コイルエレメントおよび受信部9の受信経路について説明する。図10は、本実施例2に係るコイルエレメント群G1の各コイルエレメントおよび受信部9の受信経路を説明するための図である。なお、図10は、受信部9が有する複数の受信経路のうち、コイルエレメント群G1に接続される3つの受信経路(受信系ch1、ch2およびch3)を示している。
【0069】
図10に示すように、8の字コイルE、ループコイルL1、L2およびL3の各コイルエレメントには、それぞれチューニング/マッチング回路およびトラップ回路が設けられている。チューニング/マッチング回路は、NMR信号を受信しやすいように、各コイルエレメントの共振周波数およびインピーダンスを調整する。
【0070】
トラップ回路は、PIN(P-intrinsic-N)ダイオードやコンデンサなどの回路素子を有し、駆動時にコイルエレメントを高インピーダンスにする。このトラップ回路を駆動することによって、コイルエレメントに電流が流れないように制御することができる。
【0071】
また、各チューニング/マッチング回路の出力側には、コイルエレメントによって受信されたNMR信号を増幅するアンプ(増幅器)が接続されている。さらに、各アンプの出力側には、NMR信号の受信経路を切り替えるためのスイッチSW21、SW22およびSW23、ならびに、合成回路SCがそれぞれ設けられている。これらアンプ、スイッチSW21、SW22、SW23、合成回路SCは、例えば、受信用RFコイル8bまたは受信部9などに実装される。
【0072】
具体的には、8の字コイルEから信号が送られるアンプの出力側は、スイッチSW21を介して受信系ch1に接続されている。また、ループコイルL1から信号が送られるアンプの出力側は、スイッチSW22を介して合成回路SCおよびスイッチSW23それぞれに接続されている。また、ループコイルL2から信号が送られるアンプの出力側、および、ループコイルL3から信号が送られるアンプの出力側は、それぞれ直接的に合成回路SCに接続されている。また、合成回路SCの出力側は、3つの経路に分岐しており、1つめの経路がスイッチSW21を介して受信系ch1に接続され、2つめの経路が直接的に受信系ch2に接続され、3つ目の経路がスイッチSW23を介して受信系ch3に接続されている。
【0073】
ここで、スイッチSW21は、8の字コイルEまたは合成回路SCのいずれか一方と受信系ch1とを導通状態にするように切り替えが可能である。また、スイッチSW22は、ループコイルL1と合成回路SCとを導通状態または非導通状態に切り替えることが可能である。また、スイッチSW23は、合成回路SCと受信系ch3とを導通状態または非道通状態に切り替えることが可能である。すなわち、これらスイッチSW21、SW22およびSW23を適宜に制御することによって、受信用RFコイル8aおよび8bが有するコイルエレメントの組み合わせを用途に応じて切り替えることが可能である。
【0074】
次に、本実施例2に係る経路切替制御部26bによる受信経路の切り替えの手順について説明する。図11は、本実施例2に係る経路切替制御部26bによる受信経路の切り替えの手順を示すフローチャートである。また、図12は、本実施例2に係る腹部撮像時の受信経路の状態を示す図であり、図13は、本実施例2に係る脊椎撮像時の受信経路の状態を示す図である。
【0075】
図11に示すように、NMR信号の受信時には、経路切替制御部26bは、まず、撮像条件設定部26aによって設定された撮像条件に基づいて、撮像に使用されるRFコイルとして受信用RFコイル8aおよび8bの両方が選択されているか否かを検知する。
【0076】
そして、両方が選択されていた場合には、経路切替制御部26bは、腹部が撮像されると判定し(ステップS201,Yes)、スイッチSW21を合成回路SC側に切り替える(ステップS202)。また、経路切替制御部26bは、スイッチSW22を合成回路SC側に切り替える(ステップS203)。また、経路切替制御部26bは、スイッチSW23を合成回路SC側に切り替える(ステップS204)。さらに、経路切替制御部26bは、8の字コイルEのトラップ回路を駆動する(ステップS205)。
【0077】
これにより、図12に示すように、ループコイルL1、L2、L3それぞれと合成回路SCとが導通状態となり、合成回路SCと受信系ch1、ch2、ch3それぞれとが導通状態となる。さらに、8の字コイルEのトラップ回路によって、8の字コイルEに電流が流れないようになる。この結果、ループコイルL1、L2およびL3の組み合わせでNMR信号が受信されるようになる。
【0078】
一方、受信用RFコイル8bのみが選択されていた場合には、経路切替制御部26bは、脊椎が撮像されると判定し(ステップS206,Yes)、スイッチSW21を8の字コイルE側に切り替える(ステップS207)。また、経路切替制御部26bは、スイッチSW22をスイッチSW23側に切り替える(ステップS208)。また、経路切替制御部26bは、スイッチSW23をスイッチSW22側に切り替える(ステップS209)。さらに、経路切替制御部26bは、ループコイルL2およびL3のトラップ回路を駆動する(ステップS210)。
【0079】
これにより、図13に示すように、8の字コイルEと受信系ch1とがスイッチSW21を介して導通状態となり、ループコイルL1と受信系ch3とがスイッチSW22およびSW23を介して導通状態となる。さらに、ループコイルL2およびL3それぞれのトラップ回路によって、ループコイルL2およびL3に電流が流れないようになる。この結果、8の字コイルEおよびループコイルL1の組み合わせでNMR信号が受信されるようになる。
【0080】
上述してきたように、本実施例2では、実施例1と同様に、腹部撮像時および脊椎撮像時に兼用される受信用RFコイル8bが、8の字コイルEと、8の字コイルEの中央に配置されたループコイルL1と、ループコイルL1に一部が重ねられたループコイルL2およびL3とを含んだコイルエレメント群を有する。そして、制御部26の経路切替制御部26bが、ループコイルL1、L2およびL3の組み合わせ、または、8の字コイルEおよびループコイルL1の組み合わせによって信号が受信されるように、受信部9の受信経路を切り替える。したがって、複数のコイルエレメントによって受信された信号を合成する合成回路を有する場合でも、各コイルエレメント間のデカップリングを容易に実現することができる。
【0081】
なお、上記実施例では、MRI装置100が、受信用RFコイル8bと同時に使用可能な受信用RFコイル8aを備える。したがって、2つの受信用RFコイルを用いて広い撮像領域を撮像することができる。
【0082】
また、上記実施例では、経路切替制御部26bが、操作者によって設定された撮像条件に基づいて、受信用RFコイル8aおよび8bが同時に使用されるか否かを検知し、検知した結果に基づいて、受信経路を切り替える。したがって、撮像に用いられるコイルエレメントの組み合わせを自動的に切り替えることができる。
【0083】
なお、ここでいう撮像条件に基づいて受信用RFコイル8aおよび8bが同時に使用されるか否かを検知する方法としては、いくつかの例があげられる。例えば、撮像条件を設定する際に選択される撮像シーケンスごとに、各シーケンスを実行する際に用いられる受信RFコイルがあらかじめ決められている場合もある。その場合には、経路切替制御部26bは、操作者によって選択された撮像シーケンスに対応付けられている受信RFコイルの中に腹部撮像用コイルおよび脊椎撮像用コイルが両方とも含まれていたときには、腹部が撮像されると判定する。また、経路切替制御部26bは、選択された撮像シーケンスに対応付けられている受信RFコイルの中に腹部撮像用コイルが含まれておらず、脊椎撮像用コイルのみが含まれていたときには、脊椎が撮像されると判定する。
【0084】
また、例えば、MRI装置100は、撮像条件を設定するための機能のひとつとして、撮像に用いられる受信RFコイルを操作者に選択させるため機能(例えば、受信RFコイル選択用のGUIなど)を備えている場合もある。その場合には、経路切替制御部26bは、操作者によって選択された受信RFの中に腹部撮像用コイルおよび脊椎撮像用コイルが両方とも含まれていたときには、腹部が撮像されると判定する。また、経路切替制御部26bは、選択された受信RFの中に腹部撮像用コイルが含まれておらず、脊椎撮像用コイルのみが含まれていたときには、脊椎が撮像されると判定する。
【0085】
また、上記実施例では、撮像条件に基づいて、受信用RFコイル8aおよび8bが同時に使用されるか否かを検知することとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、経路切替制御部26bが、装置に電気的に接続されているRFコイルからRFコイルの種類を識別する識別情報を取得し、取得した識別情報に基づいて、受信用RFコイル8aおよび8bが同時に使用されるか否かを検知するようにしてもよい。
【0086】
その場合には、例えば、経路切替制御部26bは、取得した識別情報の中に腹部撮像用コイルおよび脊椎撮像用コイルそれぞれの識別情報が含まれていたときには、腹部が撮像されると判定する。また、経路切替制御部26bは、取得した識別情報の中に腹部撮像用コイルの識別情報が含まれておらず、脊椎撮像用コイルの識別情報のみが含まれていたときには、脊椎が撮像されると判定する。
【0087】
また、例えば、受信用RFコイルをMRI装置100の本体に接続するためのポートが用途ごとに設けられている場合には、撮像用に用いられる受信RFコイルがどのポートに接続されるかに応じて、受信経路を切り替えるようにしてもよい。例えば、被検体Pの背中に配置される受信用コイル8bを接続するためのポートとして、腹部撮像用のポートと脊椎撮像用のポートとがそれぞれ設けられていたとする。その場合には、経路切替制御部26bは、各ポートの接続状況を監視し、腹部撮像用のポートに受信用コイル8bが接続されたときには、腹部が撮像されると判定する。また、経路切替制御部26bは、脊椎撮像用のポートに受信用コイル8bが接続されたときには、脊椎が撮像されると判定する。
【0088】
また、上記実施例では、受信用RFコイル8bが、コイルエレメント群を複数有しており、各コイルエレメント群は、被検体に対して体軸方向に並べて配置され、各コイルエレメント群に含まれるループコイルおよび8の字コイルは、それぞれ前記被検体に対して左右方向に並べて配置されている。これにより、体軸方向に広い範囲をカバーできるように構成されたRFコイルであっても、デカップリングを容易に実現しつつコイルエレメントの組み合わせを切り替えることができる。
【0089】
また、上記実施例では、受信用RFコイル8bが、被検体の背中側に配置される。したがって、背中側に配置される受信用RFコイルを兼用しつつ、腹部撮像時および脊椎撮像時の両方で良好な画像を得ることができる。
【0090】
また、上記実施例では、コイルエレメントによって受信された信号を増幅するアンプをさらに備え、経路切替制御部26bが、受信経路に接続されたスイッチを制御することによって受信経路を切り替えるものであって、そのスイッチが、増幅器の出力側に接続されている。すなわち、コイルエレメントによって受信された信号が増幅器によって増幅された後にスイッチを通過することになるので、スイッチによる信号への影響を抑制することができる。
【0091】
また、上記実施例では、受信用RFコイル8aおよび8bがそれぞれ別々に被検体に装着される場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、受信用RFコイル8aに対して受信用RFコイル8bが着脱可能に構成されている場合でも同様に適用することができる。すなわち、腹部側の部分と背中側の部分とに分割可能な腹部用RFコイルであっても、背中側に配置される部分のコイルエレメント群に本発明を同様に適用することが可能である。または、全身撮像対応用型等の一体型コイルのように多数のコイルエレメント群を用いて構成されたRFコイルであっても、背中側に配置されるコイルエレメント群に本発明を同様に適用することができる。
【0092】
また、上記実施例では、MRI装置100が受信用RFコイルおよび送信用RFコイルをそれぞれ有する場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、送受信兼用のRFコイルが用いられる場合でも、本発明を同様に適用することができる。その場合には、経路切替制御部26bが、上記実施例で説明した受信経路の切り替えと同様に、送信部7からRFコイルに供給される高周波パルスの経路を切り替える。
【0093】
また、上記実施例では、腹部または脊椎が撮像される場合を中心に説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、胴部全体を撮像する場合と特定の臓器を撮像する場合など、広い領域を撮像する場合と狭い範囲を撮像する場合とで兼用可能なRFコイルについて、コイルエレメントの組み合わせを切り替える場合にも同様に適用することができる。その場合、広い領域および狭い領域の両方で良好な画像を得ることができる。
【0094】
また、上記実施例では、8の字コイルと3つのループコイルとを組み合わせたRFコイルに本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、互いに種類が異なる2つのコイルエレメントを少なくとも有するRFコイルであれば、本発明を同様に適用することができる。ここでいうRFコイルは、例えば、頭部撮像用のRFコイルや、胸部から腹部までを覆うことが可能なパラレルイメージング用のRFコイル、撮像部位によらず汎用的に使用可能なRFコイルなどである。そして、この場合には、例えば、経路切替制御部26bが、撮像条件に基づいて、RFコイルが有する2つのコイルエレメントのいずれか一方または両方によって信号が受信および/または送信されるように、信号の伝送経路を切り替える。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置およびRFコイルは、複数のコイルエレメントを組み合わせて形成されたアレイコイルが用いられる場合に有用であり、特に、被検体の背中側に配置される脊椎用コイルが用いられる場合に適している。
【符号の説明】
【0096】
100 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
1 静磁場磁石
2 傾斜磁場コイル
3 傾斜磁場電源
4 寝台
4a 天板
5 寝台制御部
6 送信用RFコイル
7 送信部
8a,8b 受信用RFコイル
9 受信部
10 シーケンス制御部
20 計算機システム
21 インタフェース部
22 画像再構成部
23 記憶部
24 入力部
25 表示部
26 制御部
26a 撮像条件設定部
26b 経路切替制御部
G1,G2 コイルエレメント群
E 8の字コイル
L1,L2,L3 ループコイル
SW11,SW12,SW21,SW22,SW23 スイッチ
SC 合成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも8の字コイルと、前記8の字コイルの中央に配置された第1のループコイルと、前記第1のループコイルに一部が重ねられた第2のループコイルとを含んだコイルエレメント群を有するRFコイルと、
前記第1のループコイルおよび前記第2のループコイルの組み合わせ、または、前記8の字コイルおよび前記第1のループコイルの組み合わせによって信号が受信および/または送信されるように、該信号の伝送経路を切り替える経路切替部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記RFコイルは、前記8の字コイルを1つ有し、前記第1のループコイルを1つ有し、前記第2のループコイルを2つ有することを特徴とする、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記RFコイルは第1のRFコイルであって、
前記第1のRFコイルと同時に使用可能な第2のRFコイルをさらに備える、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記RFコイルは第1のRFコイルであって、
前記第1のRFコイルと同時に使用可能な第2のRFコイルをさらに備える、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第2のRFコイルは、前記第1のRFコイルに対して着脱可能に構成されている、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記第2のRFコイルは、前記第1のRFコイルに対して着脱可能に構成されている、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記経路切替部は、前記第1のRFコイルおよび前記第2のRFコイルが同時に使用されるか否かを検知し、検知した結果に基づいて、前記伝送経路を切り替える、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記経路切替部は、前記第1のRFコイルおよび前記第2のRFコイルが同時に使用されるか否かを検知し、検知した結果に基づいて、前記伝送経路を切り替える、
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記経路切替部は、操作者によって設定された撮像条件に基づいて、前記第1のRFコイルおよび前記第2のRFコイルが同時に使用されるか否かを判定する、
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記RFコイルは、前記コイルエレメント群を複数有しており、各コイルエレメント群は、前記被検体に対して体軸方向に並べて配置され、各コイルエレメント群に含まれるループコイルおよび8の字コイルは、それぞれ前記被検体に対して左右方向に並べて配置されている、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記RFコイルは、前記コイルエレメント群を複数有しており、各コイルエレメント群は、前記被検体に対して体軸方向に並べて配置され、各コイルエレメント群に含まれるループコイルおよび8の字コイルは、それぞれ前記被検体に対して左右方向に並べて配置されている、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記第1のRFコイルは、前記コイルエレメント群を複数有しており、各コイルエレメント群は、前記被検体に対して体軸方向に並べて配置され、各コイルエレメント群に含まれるループコイルおよび8の字コイルは、それぞれ前記被検体に対して左右方向に並べて配置されている、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記RFコイルは、前記被検体の背中側に配置される、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記RFコイルは、前記被検体の背中側に配置される、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記第1のRFコイルは、前記被検体の背中側に配置される、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
前記コイルエレメントによって受信された信号を増幅する増幅器をさらに備え、
前記経路切替部は、前記伝送経路に接続されたスイッチを制御することによって前記伝送経路を切り替えるものであって、
前記スイッチは、前記増幅器の出力側に接続されている、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項17】
前記コイルエレメントによって受信された信号を増幅する増幅器をさらに備え、
前記経路切替部は、前記伝送経路に接続されたスイッチを制御することによって前記伝送経路を切り替えるものであって、
前記スイッチは、前記増幅器の出力側に接続されている、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項18】
前記コイルエレメントによって受信された信号を増幅する増幅器をさらに備え、
前記経路切替部は、前記伝送経路に接続されたスイッチを制御することによって前記伝送経路を切り替えるものであって、
前記スイッチは、前記増幅器の出力側に接続されている、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項19】
互いに種類が異なる2つのコイルエレメントを少なくとも有するRFコイルと、
撮像条件に基づいて、前記2つのコイルエレメントのいずれか一方または両方によって信号が受信および/または送信されるように該信号の伝送経路を切り替える切替部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項20】
少なくとも8の字コイル、該8の字コイルの中央に配置された第1のループコイル、該第1のループコイルと一部が重ねられた第2のループコイルを含んだコイルエレメント群を有し、
前記第1のループコイルおよび前記第2のループコイルの組み合わせ、または、前記8の字コイルおよび前記第1のループコイルの組み合わせによって信号が受信および/または送信されるように、信号の伝送経路が切り替えられる、RFコイル。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【公開番号】特開2010−269130(P2010−269130A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52125(P2010−52125)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】