磁気共鳴イメージング装置及び体動アーチファクト低減法
【課題】 被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、画像に生じる体動アーチファクトを安定して低減する。
【解決手段】 呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを複数の区間に分割して、分割区間毎のk空間に充填するエコー信号を計測し、分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出し、動きの少ない領域を合成して画像を得る。
【解決手段】 呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを複数の区間に分割して、分割区間毎のk空間に充填するエコー信号を計測し、分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出し、動きの少ない領域を合成して画像を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する核磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置に関し、特に呼吸動によるアーチファクトを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮影においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
上記MRI装置で、呼吸動する被検者を撮像して得られる画像に発生する体動アーチファクトを抑制するために、呼吸に同期して撮像を実施する呼吸同期撮像が行われている。その場合は、被検者の呼吸動をモニタリングするための外部センサを被検者に装着して該外部センサからの信号に基づいて、或いは、ナビゲーターエコー信号(navigator echo) から再構成された1次元プロファイルに基づいて、被検者の呼吸動及びその状態の検出を行う。そして、所定の呼吸動状態(例えば腹壁面や横隔膜の位置)又は呼吸動時相で得られたエコー信号を主に用いて画像を再構成することで体動アーチファクトを低減する。特に、特許文献1では、各呼吸動サイクルにデータ収集窓を設定し、複数個のデータ収集窓の間にエコー信号を計測し、計測されたエコー信号を体動アーチファクトが低減されるように並び替えて画像を再構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-300750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となった場合には、複数個のデータ収集窓の間で、呼吸状態が変化してしまうことになる。その結果、異なる呼吸状態で計測されたエコー信号が混在することになり、所定の並び替え法が想定する、計測されたエコー信号の変動パターンが崩れてしまう。そのため、体動アーチファクトの低減効果が薄れてしまうと考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、画像に生じる体動アーチファクトを安定して低減することが可能なMRI装置及び体動アーチファクト低減法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを複数の区間に分割して、分割区間毎のk空間に充填するエコー信号を計測し、分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出し、動きの少ない領域を合成して画像を得ることを特徴とする。
【0008】
具体的には、本発明のMRI装置は、呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを取得する体動検出部と、所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する計測制御部と、エコー信号と、呼吸動データと、から呼吸動に基づくアーチファクトが低減された画像を取得する演算処理部と、を備え、演算処理部は、呼吸動データを複数の区間に分割する分割部と、分割区間毎のk空間を用意するk空間設定部と、各k空間に充填するエコー信号の計測を計測制御部に指示する撮像実行部と、各k空間に充填されたデータを用いて分割区間毎の画像を再構成する画像再構成部と、分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出する領域抽出部と、動きの少ない領域を合成して画像を得る領域合成部と、を有してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の体動アーチファクト低減法は、呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを取得するステップと、呼吸動データを複数の区間に分割するステップと、分割区間毎のk空間を用意するステップと、各k空間に充填するエコー信号の計測するステップと、各k空間に充填されたデータを用いて分割区間毎の画像を再構成するステップと、分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出するステップと、動きの少ない領域を合成して画像を得るステップと、を有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のMRI装置及び体動アーチファクト低減法によれば、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、画像に生じる体動アーチファクトを安定して低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るMRI装置の一実施例における全体基本構成のブロック図。
【図2】(a)図は、呼吸動データの一例を示す図。(b)図は、第1の実施形態における呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割する例を示す図。
【図3】第1の実施形態に係るCPU8の機能ブロック図。
【図4】第1の実施形態に係る撮像処理の処理フローを示すフローチャート。
【図5】動きの少ない領域のみを抽出して合成する処理の一例の流れを示す図
【図6】第2の実施形態における呼吸データの振幅を等幅間隔に分割する例を示す図。
【図7】第2の実施形態に係るCPU8の機能ブロック図。
【図8】第2の実施形態に係る撮像処理の処理フローを示すフローチャート。
【図9】第1の実施形態における呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割すると共に、振幅を等幅間隔に分割する例を示す図。
【図10】第3の実施形態に係るCPU8の機能ブロック図。
【図11】第3の実施形態に係る撮像処理の処理フローを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
最初に、本発明に係るMRI装置の一例の全体概要を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係るMRI装置の一実施例の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検者の断層画像を得るもので、図1に示すように、MRI装置は静磁場発生部2と、傾斜磁場発生部3と、送信部5と、受信部6と、演算処理部7と、計測制御部4と、を備えて構成される。
【0014】
静磁場発生部2は、垂直磁場方式であれば、被検者1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検者1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。
【0015】
傾斜磁場発生部3は、MRI装置の座標系(静止座標系)であるX,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成る。後述の計測制御部4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10が駆動されることにより、X,Y,Zの3軸方向の傾斜磁場Gx,Gy,Gzが、被検者1が横たわる静磁場空間に印加される。撮像時には、スライス面(撮像断面)に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)が印加されて被検者1に対するスライス面が設定され、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)とが印加されて、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報がエンコードされる。
【0016】
送信部5は、被検者1の生体組織を構成する原子の原子核スピンにNMR現象を誘起するために、被検者1に高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)を照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとから成る。高周波発振器11から出力された高周波パルスが、計測制御部4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調され、この振幅変調された高周波パルスが高周波増幅器13で増幅された後に、被検者1に近接して配置された高周波コイル14aに供給されることにより、RFパルスが被検者1に照射される。
【0017】
受信部6は、被検者1の生体組織を構成する原子核スピンのNMR現象により放出されるエコー信号を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル)14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射されたRFパルスによって誘起された被検者1の応答のエコー信号が被検者1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅された後、計測制御部4からの指令によるタイミングで、直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でデジタル量に変換されて、エコーデータとして演算処理部7に送られる。
【0018】
計測制御部4は、ある所定のパルスシーケンスに基づいて、傾斜磁場発生部3、送信部5、および受信部6を制御して、RFパルスと傾斜磁場パルスの印加と、エコー信号の計測とを、繰り返す制御手段である。計測制御部4は、CPU8の制御で動作し、被検者1の断層画像の再構成に必要なエコーデータ収集に必要な種々の命令を傾斜磁場発生部3、送信部5、および受信部6に送って、これらを制御する。
【0019】
演算処理部7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、CPU8と、光ディスク19や磁気ディスク18等の外部記憶装置と、ディスプレイ20と、から成る。受信部6からのエコーデータがCPU8に入力されると、CPU8内のK空間に対応するメモリに、このエコーデータが記憶される(以下、エコー信号またはエコーデータをK空間に配置する旨の記載は、エコーデータがこのメモリに書き込まれて記憶されることを意味する。そして、K空間に配置されたエコーデータをK空間データという)。そして、CPU8はこのK空間データに対して、信号処理、画像再構成等の演算処理を実行し、その結果である被検者1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置に記録する。
【0020】
操作部25は、操作者からの、MRI装置の各種制御情報や上記演算処理部7で行う処理の制御情報の入力を受け付け、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作部25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0021】
また、本発明に係るMRI装置は、被検者に装着又は近傍に配置されて、被検者の体動を検出する体動センサと、体動センサからの信号が入力されて、被検者の体動情報を検出する体動検出ユニット26を備える。そして、体動検出ユニット26で検出された体動情報は、計測制御部4を介してCPU8に入力される。
【0022】
例えば、呼吸動に基づく腹壁面の位置変動を検出する体動検出センサの例として、腹部に腹壁面の位置に応じて伸縮する空中ベローズを装着し、その空中ベローズ内部の空気圧を検出する空気圧センサを用いることができる。ベローズの伸縮に応じてベローズ内部空気圧が変動するので、この空気圧により腹壁面の変動位置を間接的に検出することができる。或いは、超音波を腹壁面に照射して、反射波の検出に要する時間から腹壁面の変動位置を検出する超音波センサでも良い。
【0023】
なお、図1において、送信側の高周波コイル14aと傾斜磁場コイル9は、被検者1が挿入される静磁場発生部2の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検者1に対向して、水平磁場方式であれば被検者1を取り囲むようにして設置されている。また、受信側の高周波コイル14bは、被検者1に対向して、或いは取り囲むように設置されている。
【0024】
現在のMRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検者の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0025】
本発明は、呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを複数の区間に分割して、分割区間毎のk空間に充填するエコー信号を計測し、分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出し、動きの少ない領域を合成して画像を得ることで、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、画像に生じる体動アーチファクトを安定して低減する。以下、呼吸動データを複数の区間に分割する分割の仕方と、その分割の仕方に係る処理に関する各実施形態を詳細に説明する。
【0026】
<第1の実施形態>
次に、本発明のMRI装置及び体動アーチファクト低減法の第1の実施形態について説明する。本実施形態は、呼吸周期を等時間間隔に分割して、分割区間(計測区間)毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内の動きの少ない領域を抽出し、抽出した各動きの少ない領域を合成して、体動アーチファクトが低減された画像を取得する。以下、図2〜図4を用いて本実施形態を詳細に説明する。
【0027】
被検者の呼吸動や呼吸動状態は、体動センサを用いて直接検出したり、ナビゲーターエコー信号を計測することで間接的に検出したり、できる。体動センサを用いる場合には、被検者の腹部周囲に体動センサを装着し、該体動センサから被検者の呼吸による腹壁面の上下運動の位置を検出して、該振幅位置に比例する電気信号を出力するようにする。ナビゲーターエコー信号を計測する場合は、例えば被検者の横隔膜を跨ぐ領域からエコー信号(ナビゲーターエコー信号)を計測することで横隔膜位置を検出できる。この横隔膜位置は呼吸動に連動することから、横隔膜位置の変動に基づいて腹壁面の上下運動の位置を間接的に検出することになる。
【0028】
以下、上記いずれかの手法で得られる被検者の腹壁面の上下運動の位置の時系列データを呼吸動データと記載する。図2(a)に呼吸動データの一例を示す。横軸は時間であり、縦軸は被検者の腹壁面の上下運動の位置を表す。腹壁面位置が高い状態は吸期状態に対応し、腹壁面位置が低い状態は呼期状態に対応する。図2は、呼吸動の3サイクルの様子を示す。以下、あるピーク時点(極大値)から次のピーク時点(極大値)までの期間を一呼吸周期とするが、呼吸周期の定義は、周期的動きにおけるいずれかの一繰り返し時間とすれば良い。
【0029】
次に、本実施形態の体動アーチファクト低減法を実行するために、演算処理部7のCPU8が有する各機能を図3を用いて説明する。図3は、CPU8が、磁気ディスク18等に記憶されたプログラムを実行することにより実現する各機能を説明するための機能ブロック図である。
【0030】
CPU8は、プログラムにより、前述の各部を制御して、本実施形態の体動アーチファクト低減する撮像を実現する。そのため、CPU8は、周期分割部301と、k空間設定部303と、撮像実行部304と、画像再構成部305と、領域抽出部306と、領域合成部307と、を備える。
【0031】
周期分割部301は、呼吸周期に基づいて、呼吸動データのピーク位置から所定期間(例えば、5秒)を所定の数(N)に分割する。呼吸周期は、呼吸動データの変動に基づいて算出する。例えば、呼吸動データの各極大値(ピーク時刻)間の期間の平均、又は、各極小値間の期間の平均とする。呼吸周期の分割数は予め磁気ディスク18等に記憶されている値を用いても良いし、撮像条件で設定されるパルスシーケンスの繰り返し時間(TR)を基準にして、その整数倍の値で、所定期間を割った値としても良い。所定期間の終了後から次の呼吸周期の最初の極大値までは計測空き時間となるが、定常状態を利用するパルスシーケンスの場合には、その計測空き時間でもパルスシーケンスを実行していることが好ましい。
【0032】
k空間設定部303は、周期分割部301で設定された呼吸周期の分割数と同じ数のk空間(エコーデータ記憶領域)をCPU8内のメモリに設定する。つまり、周期分割部301で設定された各計測区間に対応するk空間をそれぞれ設定する。
【0033】
撮像実行部304は、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。その際、エコー信号を計測するタイミングが属する計測区間に対応するk空間の未配置領域に、該エコー信号のデータが配置されるように、該エコー信号に印加する位相エンコード量を計測制御部4に随時指示する。具体的には、撮像実行部304は、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)でパルスシーケンスの実行を繰り返す際に、各繰り返しが属する計測区間に応じて、該計測区間に対応するk空間の未計測領域のエコー信号を計測するように、2次元計測であれば位相エンコード量を、3次元計測であれば位相エンコード量とスライスエンコード量を計測制御部4に指示する。例えば、撮像実行部304は、k空間毎に最後に計測したエンコード番号を記憶しておき、エコー信号の計測の際には、対応するk空間において最後に計測したエンコード番号に、次に計測すべきエンコード番号(シーケンシャルオーダーのサンプリング法であれば1加算又は減算した値、セントリックオーダーのサンプリング法であれば絶対値を一つ増やして極性を反転した値)を計測制御部4に指示する。そして、そのエンコード番号を該k空間における最後に計測したエンコード番号として、次の計測に備える。
【0034】
画像再構成部305は、k空間設定部303で設定された各k空間に配置(記憶)されたエコーデータを用いて、k空間毎に画像を再構成する。その結果、周期分割部301で設定された分割数と同じ数の画像が生成される。
【0035】
領域抽出部306は、画像再構成部305で再構成された各画像Ii(x,y)[i=1,2,3,,‥,N]において、動きの少ない領域を抽出し、該動きの少ない領域のみを残した画像を作成する。例えば、隣接する計測区間の画像間で差分処理を行い、差分画像において、画素値の絶対値が所定の閾値以下の画素を1とし、所定の閾値より大きい画素をゼロとする画像マスクMi(x,y)を作成する。そして、差分画像の基画像である両画像の加算平均画像にこの画像マスクを掛け合わせる。その結果、マスク処理された画像は、動きの少ない領域のみが抽出された画像Ii(x,y)となり、その画素値は、動きの大きい領域がゼロ、動きの小さい領域が基画像の画素値の加算平均値となる。このような演算を、全ての隣接区間の画像間で行い、計測区間毎に動きの少ない領域のみが抽出された画像をそれぞれ求める。
【0036】
領域合成部307は、領域抽出部306で取得された計測区間毎の動きの少ない領域のみが抽出された画像を合成して一つの画像を作成する。具体的には、領域抽出部306で抽出された動きの少ない領域のみが抽出された画像Ii(x,y)の加算画像[ΣIi(x,y)]を求める。この加算画像[ΣIi(x,y)]を求める際には、各画像Ii(x,y)間で、同じ臓器であっても位置ずれや変形が生じているので、同一臓器同士の位置や形状を一致させて加算することが好ましい。そこで、最も大きな動きの少ない領域を有する画像Ij(x,y)の各臓器の位置と形状を基準にして、他の画像Ik(x,y)の同一臓器をパターンマッチングにより抽出して、その位置と形状を変更した後に、画像Ij(x,y)に加算していく。その際、他の画像Ik(x,y)の同一臓器の位置と形状の変更をマスク画像Mk(x,y)にも反映する。
【0037】
そして、領域合成部307は、加算画像[ΣIi(x,y)]の各画素の画素値を、領域抽出部306で算出されたマスク画像Mi(x,y)の加算マスク画像[ΣMi(x,y)]の同じ画素の画素値で割ることで、動きの少ない領域のみが加算平均された最終画像が作成される。 その結果、最終画像は体動アーチファクトが低減された画像となる。
【0038】
図5に、動きの少ない領域のみを抽出して合成する処理の一例の流れを示す。2つの計測区間毎の画像501,502から差分画像511を得る。そして、差分画像511から画素値の絶対値が所定の閾値以上の画素値を抽出して、マスク画像(画素値が0/1の画像)531を作成する。また、計測区間画像501と502の加算平均画像521を作成する。そして、マスク画像531と加算画像521とを画素毎に掛けて動きの少ない領域のみの画像541を得る。同様に、2つの計測区間毎の画像502,503から差分画像512を得る。そして、差分画像512から画素値の絶対値が所定の閾値以上の画素値を抽出して、マスク画像(画素値が0/1の画像)532を作成する。また、計測区間画像502と503の加算平均画像522を作成する。そして、マスク画像532と加算画像522とを画素毎に掛けて動きの少ない領域のみの画像542を得る。最後に、動きの少ない領域のみの画像541と542の加算画像と、マスク画像531と532の加算マスク画像とで、画素毎に割り算して、体動アーチファクトが低減された画像である合成画像551を得る。
【0039】
次に、上記の各機能部による、本実施形態の撮像処理の流れを、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態の撮像処理の処理フローである。
【0040】
ステップ401で、被検者の呼吸動がモニタリングされ呼吸動データが収集される。体動センサを用いる場合は、体動検出ユニット26は、被検者に装着された体動センサからの信号をデジタル化して呼吸動データとして計測制御部4を介してCPU8に通知する。ナビゲーターエコー信号を用いる場合は、後述のステップ404でエコー信号の計測と共にナビゲーターエコー信号も計測することで、呼吸動データが取得される。
【0041】
ステップ402で、周期分割部301は、ステップ401(或いはステップ404)で取得された呼吸動データに基づいて、呼吸周期を算出すると共に、磁気ディスク18等から分割数を読み込み、各呼吸周期の最初の極大値(ピーク時刻)から所定期間を等時間間隔の分割数に分割する。図2(b)に呼吸周期を等時間間隔に分割する例を示す。図2(b)は各呼吸周期の最初の極大値からの所定期間を9分割する例を示しており、腹壁面のピーク位置を基準にして、その時点からの各計測区間を順に1〜9まで番号で示してある。なお、計測区間9と次の呼吸周期の最初のピーク時点までの計測空き時間をゼロとしてある。他の呼吸周期においても同様に等時間間隔で分割して区間番号を付してある。
【0042】
ステップ403で、k空間設定部302は、ステップ402で設定された分割数のk空間(エコーデータ記憶領域)をCPU8内のメモリに設定する。
【0043】
ステップ404で、撮像実行部304は、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。前述したように、呼吸動データの取得には呼吸動センサを用いても良いし、画像再構成用のエコー信号の計測と共にナビゲーターエコー信号を計測して、該ナビゲーターエコー信号に基づいて呼吸動データを取得しても良い。また、パルスシーケンスはいずれでも良い。撮像実行部304は、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)でパルスシーケンスの実行を繰り返し、その際、各繰り返しが属する計測区間に応じて、該計測区間に対応するk空間の未計測領域のエコー信号を計測するように、該エコー信号に印加するエンコード量を制御する。具体的なエンコード制御は前述したとおりである。
【0044】
ステップ405で、画像再構成部305は、ステップ404で取得された各k空間データをそれぞれ再構成して、計測区間毎に画像を取得する。
【0045】
ステップ406で、領域抽出部306は、ステップ405で再構成された計測区間毎の画像から、それぞれ動きの少ない領域のみが抽出された画像を求める。求め方は前述したとおりである。
【0046】
ステップ407で、領域合成部307は、ステップ406で取得された計測区間毎の動きの少ない領域のみが抽出された画像を合成して一つの画像を作成する。合成の仕方は前述したとおりである。この最終画像は動きの少ない領域を合成して得られたものであるので、体動アーチファクトが低減された画像となる。
以上までが本実施形態の処理フローの説明である。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置及び体動アーチファクト低減法は、各呼吸周期の最初の極大値(ピーク時点)からの所定期間を等時間間隔に分割して、各分割区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内で動きの少ない領域を抽出し、各動きの少ない領域を合成して一枚の画像を取得する。その結果、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、安定して体動アーチファクトを低減した画像を取得することができる。特に、各呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割して、計測区間毎のエコー信号を用いて画像を得るので、各計測区間の画像は体動アーチファクトが少なくなる。このように体動アーチファクトの少ない各画像から、動きの少ない領域を抽出して合成するので、最終画像はさらに体動アーチファクトが少なくなる。
【0048】
<第2の実施形態>
次に、本発明のMRI装置及び体動アーチファクト低減法の第2の実施形態について説明する。前述の第1の実施形態は、各呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割したが、本第2の実施形態は、体動振幅を等幅間隔に分割して、振幅区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内の動きの少ない領域を抽出し、抽出した各動きの少ない領域を合成して、体動アーチファクトが低減された一枚の画像を取得する。以下、図6〜図8を用いて本実施形態を詳細に説明する。
【0049】
最初に、体動振幅を等幅間隔に分割することについて図6を用いて説明する。図6は、図2と同じ呼吸動データの振幅を等幅間隔に4つに分割する例を示す。最大振幅を含む幅を、振幅の最大位置を含む振幅区間1と、振幅の最小位置を含む振幅区間4と、それらの間の振幅区間2,3とで等幅間隔に分割する。そして、振幅区間毎の画像を取得する。そのために、振幅区間毎のk空間を用意し、振幅が同じ振幅区間内で計測されたエコー信号を同じk空間に配置する。その結果、振幅区間毎に計測区間が異なることになる。具体的には、振幅変動が緩慢になるほど同じ振幅区間の計測区間が長くなり、振幅変動の平坦部で最大となる。逆に、振幅変動が急峻になるほど同じ振幅区間の計測区間が短くなる。図6の例では、振幅区間1,4では振幅の変動が略平坦となっており、振幅が長く振幅区間1、4に留まっているため計測区間が長くなっている。一方、振幅区間2,3では振幅の変動が急峻となっており、振幅が振幅区間2,3から他の振幅区間に変化してしまうため計測区間が短くなっている。
【0050】
したがって、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)を一定にすると、各計測区間の長さに応じて、各振幅区間におけるエコー信号の計測数、つまり、各振幅区間に対応するk空間へのエコーデータ充填率が異なる。具体的には、計測区間が長いほど計測するエコー信号が多くなり、k空間への充填率が高くなる。全ての振幅区間に対応するk空間がそれぞれ全てエコーデータで充填されるまで、計測は繰り返される必要があるので、最も計測区間の短い振幅区間の対応するk空間が全てエコーデータで充填されるまで計測が繰り返されることになる。その際、他のk空間において重複して計測されるエコーデータについては、平均化処理を行うことにおり画像のSNが向上する。
【0051】
次に、本実施形態の体動アーチファクト低減法を実行するために、演算処理部7のCPU8が有する各機能を図7を用いて説明する。図7は、CPU8が、磁気ディスク18等に記憶されたプログラムを実行することにより実現する各機能を説明するための機能ブロック図である。
【0052】
CPU8は、プログラムにより、前述の各部を制御して、本実施形態の体動アーチファクト低減する撮像を実現する。そのため、本第2の実施形態のCPU8は、前述の第1の実施形態における周期分割部301の代わりに振幅分割部701を備える。その他の機能部は、前述の第1の実施形態と同じであるが撮像実行部304が実行する機能の一部が異なるので、本第2の実施形態では、撮像実行部304aとする。以下、振幅分割部701と撮像実行部304aの機能のみを説明し、他の機能については説明を省略する。
【0053】
振幅分割部701は、体動振幅の最大振幅を含む幅を所定の数(M)に分割する。最大振幅は、呼吸動データの変動に基づいて算出する。例えば、呼吸動データの隣接する極大値と極小値との差の平均とする。体動振幅の分割数は予め磁気ディスク18等に記憶されている値を用いても良いし、操作者により指定された値を用いても良い。
【0054】
撮像実行部304aは、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。その際、エコー信号の計測時の体動振幅が属する振幅区間を判定し、該判定した振幅区間に対応するk空間の未配置領域に、該エコー信号のデータが配置されるように、該エコー信号に印加する位相エンコード量を計測制御部4に随時指示する。具体的には、撮像実行部304は、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)でパルスシーケンスの実行を繰り返す際に、体動振幅が属する振幅区間に応じて、該振幅区間に対応するk空間の未計測領域のエコー信号を計測するように、該エコー信号に印加するエンコード量を制御する。エンコード量制御の具体例については撮像実行部304と同様である。このように体動振幅を常にモニタリングしながら振幅区間を判定し、該振幅区間毎のエンコード量を制御することで、各振幅区間内での体動振幅の変動の急峻度に応じて、各振幅区間の計測区間がそれぞれ自動的に長短されることになる。
【0055】
次に、上記の各機能部による、本実施形態の撮像処理の流れを、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態の撮像処理の処理フローである。本第2の実施形態の処理フローは前述第1の実施形態の処理フローと比較して、ステップ402の代わりにステップ802を行い、ステップ404の処理内容が異なるので、本第2の実施形態では、ステップ404 aとする。以下、処理内容が異なるステップのみを説明し、同じ処理の説明を省略する。
【0056】
ステップ802で、振幅分割部701は、ステップ401(或いはステップ404)で取得された呼吸動データに基づいて、呼吸動における腹壁面の最大振幅を算出すると共に、磁気ディスク18等から振幅の分割数を読み込み、最大振幅を含む幅を等幅間隔の分割数(M)に分割する。分割の一例については図6で説明したとおりである。
【0057】
ステップ404aで、撮像実行部304aは、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。前述のステップ404と同様に、呼吸動センサの使用又はナビゲーターエコー信号の計測を介して呼吸動データが取得される。また、パルスシーケンスはいずれでも良い。撮像実行部30aは、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)でパルスシーケンスの実行を繰り返してエコー信号計測し、その際、呼吸動データの振幅が属する振幅区間を判定し、該振幅区間に応じて、該振幅区間に対応するk空間の未計測領域のエコー信号を計測するように、エンコード量を制御する。エンコード量制御の具体的についてはステップ404と同じである。
以上までが本実施形態の処理フローの説明である。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置及び体動アーチファクト低減法は、体動振幅の振幅を等幅間隔に分割して、分割区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内の動きの少ない領域を合成して、体動アーチファクトが低減された一枚の画像を取得する。その結果、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、安定して体動アーチファクトを低減した画像を取得することができる。特に、等幅の振幅区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を得るので、振幅区間毎の画像はそれぞれ体動アーチファクトが少なくなる。このように体動アーチファクトの少ない各画像から、動きの少ない領域を抽出して合成するので、最終画像はさらに体動アーチファクトが少なくなる。
【0059】
<第3の実施形態>
次に、本発明のMRI装置及び体動アーチファクト低減法の第3の実施形態について説明する。本実施形態は前述の第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせて、呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割すると共に体動振幅を等幅間隔に分割して、分割区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内の動きの少ない領域を抽出し、抽出した各動きの少ない領域を合成して、体動アーチファクトが低減された画像を取得する。以下、図9〜図11を用いて本実施形態を詳細に説明する。
【0060】
最初に、体動の各呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割すると共に、体動振幅を等幅間隔に分割することについて図9を用いて説明する。図9は、図2と同じ呼吸動データについて、前述の第1の実施形態と同様に、呼吸周期の所定期間を等時間間隔に9つに分割する(本第3の実施形態でも計測空き時間をゼロとしている)と共に、前述の第2の実施形態と同様に、体動振幅を等幅間隔に4つに分割する例を示す。そして、振幅区間毎の画像を取得するために、振幅区間毎にk空間を用意し、振幅が同じ振幅区間内で計測されたエコー信号のデータを同じk空間に配置する。ただし、呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割するので、エコー信号の計測及び計測されたエコー信号のデータのk空間への振り分けは、計測区間毎に等時間間隔で行う。そのために、呼吸動データを随時監視し、各計測区間の開始時の体動振幅が属する振幅区間を判定して、その振幅区間に対応するk空間の未計測領域にエコー信号のデータが配置されるようにエンコード量が各エコー信号に印加される。一計測区間に複数のエコー信号を計測する場合には、同じk空間の未計測領域にエコー信号のデータが配置されるように各エコー信号に印加するエンコード量が制御される。このように振幅区間を判定すると、ある計測期間では体動振幅が複数の振幅区間に跨る場合も生じる。その場合には、ある振幅区間に対応するk空間が他の振幅区間のデータを含んでしまうことになる。しかし、各呼吸周期の所定期間の分割数を増やすことによって、そのような場合を低減することができる。
【0061】
また、本第3の実施形態の場合も、前述の第2の実施形態と同様に、振幅変動が緩慢になるほど同じ振幅区間となる計測区間の回数が多くなり、振幅変動の平坦部で最大となる。逆に、振幅変動が急峻になるほど同じ振幅区間となる計測区間の回数が少なくなる。図9の例では、振幅区間1,4では振幅の変動が略平坦となっており、振幅が長く振幅区間1、4に留まっているため計測区間の回数が多くなっている。一方、振幅区間2,3では振幅の変動が急峻となっており、振幅が振幅区間2,3から他の振幅区間に変化してしまうため計測区間の回数が少なくなっている。したがって、各計測区間の回数に応じて、各振幅区間におけるエコー信号の計測数、つまり、各振幅区間に対応するk空間へのエコーデータの充填率が異なる。具体的には、計測区間の回数が多いほど計測するエコー信号が多くなり、k空間への充填率が高くなる。全ての振幅区間に対応するk空間がそれぞれ全てエコーデータで充填されるまで、計測は繰り返される必要があるので、最も計測区間の回数の少ない振幅区間の対応するk空間が全てエコーデータで充填されるまで計測が繰り返されることになる。
また、図9には、各振幅区間で得られる画像例を示す。
【0062】
次に、本実施形態の体動アーチファクト低減法を実行するために、演算処理部7のCPU8が有する各機能を図10を用いて説明する。図10は、CPU8が、磁気ディスク18等に記憶されたプログラムを実行することにより実現する各機能を説明するための機能ブロック図である。
【0063】
CPU8は、プログラムにより、前述の各部を制御して、本実施形態の体動アーチファクト低減する撮像を実現する。そのため、本第3の実施形態のCPU8は、前述の第1の実施形態の周期分割部301と前述の第2の実施形態の振幅分割部701とを共に備え、それらの機能はそれぞれ前述の第1の実施形態及び第2の実施形態と同様である。その他の機能部は、前述の第1の実施形態と同じであるが撮像実行部304が実行する機能が一部異なるので、本第3の実施形態では、撮像実行部304bとする。以下、撮像実行部304bの機能のみを説明し、他の機能については説明を省略する。
【0064】
撮像実行部304bは、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。その際、各計測区間の開始時点での体動振幅を検出して、該体動振幅が属する振幅区間を判定し、該判定した振幅区間に対応するk空間の未計測領域に、その計測区間で計測するエコー信号のデータが配置されるように、該エコー信号に印加するエンコード量を計測制御部4に随時指示する。したがって、仮に同じ計測区間の途中で体動振幅が他の振幅区間に変化しても、振幅区間の判定は計測区間の開始時点で判定した振幅区間のままとなる。このように、撮像実行部304bは、各計測区間の開始時点での体動振幅に基づいて、該計測区間でのk空間の選択及びエンコード量の制御を行う。
【0065】
次に、上記の各機能部による、本実施形態の撮像処理の流れを、図11を用いて説明する。図11は、本実施形態の撮像処理の処理フローである。本第3の実施形態の処理フローは前述第1の実施形態の処理フローに前述の第2の実施形態のステップ802を追加したものであが、ステップ802の処理内容は前述の第2の実施形態と同じである。また、ステップ404の処理内容が異なるので、本第3の実施形態では、ステップ404 bとする。以下、処理内容が異なるステップ404bのみを説明し、同じ処理の説明を省略する。
【0066】
ステップ404bで、撮像実行部304bは、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。前述のステップ404と同様に、呼吸動センサの使用又はナビゲーターエコー信号の計測を介して呼吸動データが取得される。また、パルスシーケンスはいずれでも良い。撮像実行部304bは、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)でパルスシーケンスの実行を繰り返してエコー信号計測し、その際、各計測区間の開始時点での呼吸動データの振幅を検出し、該振幅が属する振幅区間を判定する。そして、撮像実行部304bは、該判定した振幅区間に対応するk空間の未計測領域に、該計測期間中に計測されるエコー信号のデータが配置されるように、該エコー信号に印加するエンコード量を制御する。エンコード量制御の具体的についてはステップ404と同じである。
以上までが本実施形態の処理フローの説明である。
【0067】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置及び体動アーチファクト低減法は、各呼吸周期を等時間間隔に分割すると共に体動振幅を等幅間隔に分割して、分割区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内の動きの少ない領域を合成して、体動アーチファクトが低減された一枚の画像を取得する。その結果、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、安定して体動アーチファクトを低減した画像を取得することができる。特に、各呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割すると共に体動振幅を等幅間隔に分割して、各計測区間の開始時の振幅から振幅区間を判定するので、呼吸動データの取得と振幅区間の判定処理の回数を低減できる。その結果、エコー信号の取得効率を向上できるので、撮像効率を向上できる。
【符号の説明】
【0068】
1 被検体、2 静磁場発生系、3 傾斜磁場発生系、4 シーケンサ、5 送信系、6 受信系、7 信号処理系、8 中央処理装置(CPU)、9 傾斜磁場コイル、10 傾斜磁場電源、11 高周波発信器、12 変調器、13 高周波増幅器、14a 高周波コイル(送信コイル)、14b 高周波コイル(受信コイル)、15 信号増幅器、16 直交位相検波器、17 A/D変換器、18 磁気ディスク、19 光ディスク、20 ディスプレイ、21 ROM、22 RAM、23 トラックボール又はマウス、24 キーボード、25 操作部、26 体動検出ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体中の水素や燐等からの核磁気共鳴(以下、「NMR」という)信号を測定し、核の密度分布や緩和時間分布等を画像化する核磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」という)装置に関し、特に呼吸動によるアーチファクトを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮影においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
上記MRI装置で、呼吸動する被検者を撮像して得られる画像に発生する体動アーチファクトを抑制するために、呼吸に同期して撮像を実施する呼吸同期撮像が行われている。その場合は、被検者の呼吸動をモニタリングするための外部センサを被検者に装着して該外部センサからの信号に基づいて、或いは、ナビゲーターエコー信号(navigator echo) から再構成された1次元プロファイルに基づいて、被検者の呼吸動及びその状態の検出を行う。そして、所定の呼吸動状態(例えば腹壁面や横隔膜の位置)又は呼吸動時相で得られたエコー信号を主に用いて画像を再構成することで体動アーチファクトを低減する。特に、特許文献1では、各呼吸動サイクルにデータ収集窓を設定し、複数個のデータ収集窓の間にエコー信号を計測し、計測されたエコー信号を体動アーチファクトが低減されるように並び替えて画像を再構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-300750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となった場合には、複数個のデータ収集窓の間で、呼吸状態が変化してしまうことになる。その結果、異なる呼吸状態で計測されたエコー信号が混在することになり、所定の並び替え法が想定する、計測されたエコー信号の変動パターンが崩れてしまう。そのため、体動アーチファクトの低減効果が薄れてしまうと考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、画像に生じる体動アーチファクトを安定して低減することが可能なMRI装置及び体動アーチファクト低減法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを複数の区間に分割して、分割区間毎のk空間に充填するエコー信号を計測し、分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出し、動きの少ない領域を合成して画像を得ることを特徴とする。
【0008】
具体的には、本発明のMRI装置は、呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを取得する体動検出部と、所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する計測制御部と、エコー信号と、呼吸動データと、から呼吸動に基づくアーチファクトが低減された画像を取得する演算処理部と、を備え、演算処理部は、呼吸動データを複数の区間に分割する分割部と、分割区間毎のk空間を用意するk空間設定部と、各k空間に充填するエコー信号の計測を計測制御部に指示する撮像実行部と、各k空間に充填されたデータを用いて分割区間毎の画像を再構成する画像再構成部と、分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出する領域抽出部と、動きの少ない領域を合成して画像を得る領域合成部と、を有してなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の体動アーチファクト低減法は、呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを取得するステップと、呼吸動データを複数の区間に分割するステップと、分割区間毎のk空間を用意するステップと、各k空間に充填するエコー信号の計測するステップと、各k空間に充填されたデータを用いて分割区間毎の画像を再構成するステップと、分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出するステップと、動きの少ない領域を合成して画像を得るステップと、を有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のMRI装置及び体動アーチファクト低減法によれば、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、画像に生じる体動アーチファクトを安定して低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るMRI装置の一実施例における全体基本構成のブロック図。
【図2】(a)図は、呼吸動データの一例を示す図。(b)図は、第1の実施形態における呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割する例を示す図。
【図3】第1の実施形態に係るCPU8の機能ブロック図。
【図4】第1の実施形態に係る撮像処理の処理フローを示すフローチャート。
【図5】動きの少ない領域のみを抽出して合成する処理の一例の流れを示す図
【図6】第2の実施形態における呼吸データの振幅を等幅間隔に分割する例を示す図。
【図7】第2の実施形態に係るCPU8の機能ブロック図。
【図8】第2の実施形態に係る撮像処理の処理フローを示すフローチャート。
【図9】第1の実施形態における呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割すると共に、振幅を等幅間隔に分割する例を示す図。
【図10】第3の実施形態に係るCPU8の機能ブロック図。
【図11】第3の実施形態に係る撮像処理の処理フローを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
最初に、本発明に係るMRI装置の一例の全体概要を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係るMRI装置の一実施例の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検者の断層画像を得るもので、図1に示すように、MRI装置は静磁場発生部2と、傾斜磁場発生部3と、送信部5と、受信部6と、演算処理部7と、計測制御部4と、を備えて構成される。
【0014】
静磁場発生部2は、垂直磁場方式であれば、被検者1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検者1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。
【0015】
傾斜磁場発生部3は、MRI装置の座標系(静止座標系)であるX,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成る。後述の計測制御部4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10が駆動されることにより、X,Y,Zの3軸方向の傾斜磁場Gx,Gy,Gzが、被検者1が横たわる静磁場空間に印加される。撮像時には、スライス面(撮像断面)に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)が印加されて被検者1に対するスライス面が設定され、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)とが印加されて、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報がエンコードされる。
【0016】
送信部5は、被検者1の生体組織を構成する原子の原子核スピンにNMR現象を誘起するために、被検者1に高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)を照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとから成る。高周波発振器11から出力された高周波パルスが、計測制御部4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調され、この振幅変調された高周波パルスが高周波増幅器13で増幅された後に、被検者1に近接して配置された高周波コイル14aに供給されることにより、RFパルスが被検者1に照射される。
【0017】
受信部6は、被検者1の生体組織を構成する原子核スピンのNMR現象により放出されるエコー信号を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル)14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射されたRFパルスによって誘起された被検者1の応答のエコー信号が被検者1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅された後、計測制御部4からの指令によるタイミングで、直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でデジタル量に変換されて、エコーデータとして演算処理部7に送られる。
【0018】
計測制御部4は、ある所定のパルスシーケンスに基づいて、傾斜磁場発生部3、送信部5、および受信部6を制御して、RFパルスと傾斜磁場パルスの印加と、エコー信号の計測とを、繰り返す制御手段である。計測制御部4は、CPU8の制御で動作し、被検者1の断層画像の再構成に必要なエコーデータ収集に必要な種々の命令を傾斜磁場発生部3、送信部5、および受信部6に送って、これらを制御する。
【0019】
演算処理部7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、CPU8と、光ディスク19や磁気ディスク18等の外部記憶装置と、ディスプレイ20と、から成る。受信部6からのエコーデータがCPU8に入力されると、CPU8内のK空間に対応するメモリに、このエコーデータが記憶される(以下、エコー信号またはエコーデータをK空間に配置する旨の記載は、エコーデータがこのメモリに書き込まれて記憶されることを意味する。そして、K空間に配置されたエコーデータをK空間データという)。そして、CPU8はこのK空間データに対して、信号処理、画像再構成等の演算処理を実行し、その結果である被検者1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置に記録する。
【0020】
操作部25は、操作者からの、MRI装置の各種制御情報や上記演算処理部7で行う処理の制御情報の入力を受け付け、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作部25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0021】
また、本発明に係るMRI装置は、被検者に装着又は近傍に配置されて、被検者の体動を検出する体動センサと、体動センサからの信号が入力されて、被検者の体動情報を検出する体動検出ユニット26を備える。そして、体動検出ユニット26で検出された体動情報は、計測制御部4を介してCPU8に入力される。
【0022】
例えば、呼吸動に基づく腹壁面の位置変動を検出する体動検出センサの例として、腹部に腹壁面の位置に応じて伸縮する空中ベローズを装着し、その空中ベローズ内部の空気圧を検出する空気圧センサを用いることができる。ベローズの伸縮に応じてベローズ内部空気圧が変動するので、この空気圧により腹壁面の変動位置を間接的に検出することができる。或いは、超音波を腹壁面に照射して、反射波の検出に要する時間から腹壁面の変動位置を検出する超音波センサでも良い。
【0023】
なお、図1において、送信側の高周波コイル14aと傾斜磁場コイル9は、被検者1が挿入される静磁場発生部2の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検者1に対向して、水平磁場方式であれば被検者1を取り囲むようにして設置されている。また、受信側の高周波コイル14bは、被検者1に対向して、或いは取り囲むように設置されている。
【0024】
現在のMRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検者の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0025】
本発明は、呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを複数の区間に分割して、分割区間毎のk空間に充填するエコー信号を計測し、分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出し、動きの少ない領域を合成して画像を得ることで、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、画像に生じる体動アーチファクトを安定して低減する。以下、呼吸動データを複数の区間に分割する分割の仕方と、その分割の仕方に係る処理に関する各実施形態を詳細に説明する。
【0026】
<第1の実施形態>
次に、本発明のMRI装置及び体動アーチファクト低減法の第1の実施形態について説明する。本実施形態は、呼吸周期を等時間間隔に分割して、分割区間(計測区間)毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内の動きの少ない領域を抽出し、抽出した各動きの少ない領域を合成して、体動アーチファクトが低減された画像を取得する。以下、図2〜図4を用いて本実施形態を詳細に説明する。
【0027】
被検者の呼吸動や呼吸動状態は、体動センサを用いて直接検出したり、ナビゲーターエコー信号を計測することで間接的に検出したり、できる。体動センサを用いる場合には、被検者の腹部周囲に体動センサを装着し、該体動センサから被検者の呼吸による腹壁面の上下運動の位置を検出して、該振幅位置に比例する電気信号を出力するようにする。ナビゲーターエコー信号を計測する場合は、例えば被検者の横隔膜を跨ぐ領域からエコー信号(ナビゲーターエコー信号)を計測することで横隔膜位置を検出できる。この横隔膜位置は呼吸動に連動することから、横隔膜位置の変動に基づいて腹壁面の上下運動の位置を間接的に検出することになる。
【0028】
以下、上記いずれかの手法で得られる被検者の腹壁面の上下運動の位置の時系列データを呼吸動データと記載する。図2(a)に呼吸動データの一例を示す。横軸は時間であり、縦軸は被検者の腹壁面の上下運動の位置を表す。腹壁面位置が高い状態は吸期状態に対応し、腹壁面位置が低い状態は呼期状態に対応する。図2は、呼吸動の3サイクルの様子を示す。以下、あるピーク時点(極大値)から次のピーク時点(極大値)までの期間を一呼吸周期とするが、呼吸周期の定義は、周期的動きにおけるいずれかの一繰り返し時間とすれば良い。
【0029】
次に、本実施形態の体動アーチファクト低減法を実行するために、演算処理部7のCPU8が有する各機能を図3を用いて説明する。図3は、CPU8が、磁気ディスク18等に記憶されたプログラムを実行することにより実現する各機能を説明するための機能ブロック図である。
【0030】
CPU8は、プログラムにより、前述の各部を制御して、本実施形態の体動アーチファクト低減する撮像を実現する。そのため、CPU8は、周期分割部301と、k空間設定部303と、撮像実行部304と、画像再構成部305と、領域抽出部306と、領域合成部307と、を備える。
【0031】
周期分割部301は、呼吸周期に基づいて、呼吸動データのピーク位置から所定期間(例えば、5秒)を所定の数(N)に分割する。呼吸周期は、呼吸動データの変動に基づいて算出する。例えば、呼吸動データの各極大値(ピーク時刻)間の期間の平均、又は、各極小値間の期間の平均とする。呼吸周期の分割数は予め磁気ディスク18等に記憶されている値を用いても良いし、撮像条件で設定されるパルスシーケンスの繰り返し時間(TR)を基準にして、その整数倍の値で、所定期間を割った値としても良い。所定期間の終了後から次の呼吸周期の最初の極大値までは計測空き時間となるが、定常状態を利用するパルスシーケンスの場合には、その計測空き時間でもパルスシーケンスを実行していることが好ましい。
【0032】
k空間設定部303は、周期分割部301で設定された呼吸周期の分割数と同じ数のk空間(エコーデータ記憶領域)をCPU8内のメモリに設定する。つまり、周期分割部301で設定された各計測区間に対応するk空間をそれぞれ設定する。
【0033】
撮像実行部304は、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。その際、エコー信号を計測するタイミングが属する計測区間に対応するk空間の未配置領域に、該エコー信号のデータが配置されるように、該エコー信号に印加する位相エンコード量を計測制御部4に随時指示する。具体的には、撮像実行部304は、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)でパルスシーケンスの実行を繰り返す際に、各繰り返しが属する計測区間に応じて、該計測区間に対応するk空間の未計測領域のエコー信号を計測するように、2次元計測であれば位相エンコード量を、3次元計測であれば位相エンコード量とスライスエンコード量を計測制御部4に指示する。例えば、撮像実行部304は、k空間毎に最後に計測したエンコード番号を記憶しておき、エコー信号の計測の際には、対応するk空間において最後に計測したエンコード番号に、次に計測すべきエンコード番号(シーケンシャルオーダーのサンプリング法であれば1加算又は減算した値、セントリックオーダーのサンプリング法であれば絶対値を一つ増やして極性を反転した値)を計測制御部4に指示する。そして、そのエンコード番号を該k空間における最後に計測したエンコード番号として、次の計測に備える。
【0034】
画像再構成部305は、k空間設定部303で設定された各k空間に配置(記憶)されたエコーデータを用いて、k空間毎に画像を再構成する。その結果、周期分割部301で設定された分割数と同じ数の画像が生成される。
【0035】
領域抽出部306は、画像再構成部305で再構成された各画像Ii(x,y)[i=1,2,3,,‥,N]において、動きの少ない領域を抽出し、該動きの少ない領域のみを残した画像を作成する。例えば、隣接する計測区間の画像間で差分処理を行い、差分画像において、画素値の絶対値が所定の閾値以下の画素を1とし、所定の閾値より大きい画素をゼロとする画像マスクMi(x,y)を作成する。そして、差分画像の基画像である両画像の加算平均画像にこの画像マスクを掛け合わせる。その結果、マスク処理された画像は、動きの少ない領域のみが抽出された画像Ii(x,y)となり、その画素値は、動きの大きい領域がゼロ、動きの小さい領域が基画像の画素値の加算平均値となる。このような演算を、全ての隣接区間の画像間で行い、計測区間毎に動きの少ない領域のみが抽出された画像をそれぞれ求める。
【0036】
領域合成部307は、領域抽出部306で取得された計測区間毎の動きの少ない領域のみが抽出された画像を合成して一つの画像を作成する。具体的には、領域抽出部306で抽出された動きの少ない領域のみが抽出された画像Ii(x,y)の加算画像[ΣIi(x,y)]を求める。この加算画像[ΣIi(x,y)]を求める際には、各画像Ii(x,y)間で、同じ臓器であっても位置ずれや変形が生じているので、同一臓器同士の位置や形状を一致させて加算することが好ましい。そこで、最も大きな動きの少ない領域を有する画像Ij(x,y)の各臓器の位置と形状を基準にして、他の画像Ik(x,y)の同一臓器をパターンマッチングにより抽出して、その位置と形状を変更した後に、画像Ij(x,y)に加算していく。その際、他の画像Ik(x,y)の同一臓器の位置と形状の変更をマスク画像Mk(x,y)にも反映する。
【0037】
そして、領域合成部307は、加算画像[ΣIi(x,y)]の各画素の画素値を、領域抽出部306で算出されたマスク画像Mi(x,y)の加算マスク画像[ΣMi(x,y)]の同じ画素の画素値で割ることで、動きの少ない領域のみが加算平均された最終画像が作成される。 その結果、最終画像は体動アーチファクトが低減された画像となる。
【0038】
図5に、動きの少ない領域のみを抽出して合成する処理の一例の流れを示す。2つの計測区間毎の画像501,502から差分画像511を得る。そして、差分画像511から画素値の絶対値が所定の閾値以上の画素値を抽出して、マスク画像(画素値が0/1の画像)531を作成する。また、計測区間画像501と502の加算平均画像521を作成する。そして、マスク画像531と加算画像521とを画素毎に掛けて動きの少ない領域のみの画像541を得る。同様に、2つの計測区間毎の画像502,503から差分画像512を得る。そして、差分画像512から画素値の絶対値が所定の閾値以上の画素値を抽出して、マスク画像(画素値が0/1の画像)532を作成する。また、計測区間画像502と503の加算平均画像522を作成する。そして、マスク画像532と加算画像522とを画素毎に掛けて動きの少ない領域のみの画像542を得る。最後に、動きの少ない領域のみの画像541と542の加算画像と、マスク画像531と532の加算マスク画像とで、画素毎に割り算して、体動アーチファクトが低減された画像である合成画像551を得る。
【0039】
次に、上記の各機能部による、本実施形態の撮像処理の流れを、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態の撮像処理の処理フローである。
【0040】
ステップ401で、被検者の呼吸動がモニタリングされ呼吸動データが収集される。体動センサを用いる場合は、体動検出ユニット26は、被検者に装着された体動センサからの信号をデジタル化して呼吸動データとして計測制御部4を介してCPU8に通知する。ナビゲーターエコー信号を用いる場合は、後述のステップ404でエコー信号の計測と共にナビゲーターエコー信号も計測することで、呼吸動データが取得される。
【0041】
ステップ402で、周期分割部301は、ステップ401(或いはステップ404)で取得された呼吸動データに基づいて、呼吸周期を算出すると共に、磁気ディスク18等から分割数を読み込み、各呼吸周期の最初の極大値(ピーク時刻)から所定期間を等時間間隔の分割数に分割する。図2(b)に呼吸周期を等時間間隔に分割する例を示す。図2(b)は各呼吸周期の最初の極大値からの所定期間を9分割する例を示しており、腹壁面のピーク位置を基準にして、その時点からの各計測区間を順に1〜9まで番号で示してある。なお、計測区間9と次の呼吸周期の最初のピーク時点までの計測空き時間をゼロとしてある。他の呼吸周期においても同様に等時間間隔で分割して区間番号を付してある。
【0042】
ステップ403で、k空間設定部302は、ステップ402で設定された分割数のk空間(エコーデータ記憶領域)をCPU8内のメモリに設定する。
【0043】
ステップ404で、撮像実行部304は、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。前述したように、呼吸動データの取得には呼吸動センサを用いても良いし、画像再構成用のエコー信号の計測と共にナビゲーターエコー信号を計測して、該ナビゲーターエコー信号に基づいて呼吸動データを取得しても良い。また、パルスシーケンスはいずれでも良い。撮像実行部304は、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)でパルスシーケンスの実行を繰り返し、その際、各繰り返しが属する計測区間に応じて、該計測区間に対応するk空間の未計測領域のエコー信号を計測するように、該エコー信号に印加するエンコード量を制御する。具体的なエンコード制御は前述したとおりである。
【0044】
ステップ405で、画像再構成部305は、ステップ404で取得された各k空間データをそれぞれ再構成して、計測区間毎に画像を取得する。
【0045】
ステップ406で、領域抽出部306は、ステップ405で再構成された計測区間毎の画像から、それぞれ動きの少ない領域のみが抽出された画像を求める。求め方は前述したとおりである。
【0046】
ステップ407で、領域合成部307は、ステップ406で取得された計測区間毎の動きの少ない領域のみが抽出された画像を合成して一つの画像を作成する。合成の仕方は前述したとおりである。この最終画像は動きの少ない領域を合成して得られたものであるので、体動アーチファクトが低減された画像となる。
以上までが本実施形態の処理フローの説明である。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置及び体動アーチファクト低減法は、各呼吸周期の最初の極大値(ピーク時点)からの所定期間を等時間間隔に分割して、各分割区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内で動きの少ない領域を抽出し、各動きの少ない領域を合成して一枚の画像を取得する。その結果、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、安定して体動アーチファクトを低減した画像を取得することができる。特に、各呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割して、計測区間毎のエコー信号を用いて画像を得るので、各計測区間の画像は体動アーチファクトが少なくなる。このように体動アーチファクトの少ない各画像から、動きの少ない領域を抽出して合成するので、最終画像はさらに体動アーチファクトが少なくなる。
【0048】
<第2の実施形態>
次に、本発明のMRI装置及び体動アーチファクト低減法の第2の実施形態について説明する。前述の第1の実施形態は、各呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割したが、本第2の実施形態は、体動振幅を等幅間隔に分割して、振幅区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内の動きの少ない領域を抽出し、抽出した各動きの少ない領域を合成して、体動アーチファクトが低減された一枚の画像を取得する。以下、図6〜図8を用いて本実施形態を詳細に説明する。
【0049】
最初に、体動振幅を等幅間隔に分割することについて図6を用いて説明する。図6は、図2と同じ呼吸動データの振幅を等幅間隔に4つに分割する例を示す。最大振幅を含む幅を、振幅の最大位置を含む振幅区間1と、振幅の最小位置を含む振幅区間4と、それらの間の振幅区間2,3とで等幅間隔に分割する。そして、振幅区間毎の画像を取得する。そのために、振幅区間毎のk空間を用意し、振幅が同じ振幅区間内で計測されたエコー信号を同じk空間に配置する。その結果、振幅区間毎に計測区間が異なることになる。具体的には、振幅変動が緩慢になるほど同じ振幅区間の計測区間が長くなり、振幅変動の平坦部で最大となる。逆に、振幅変動が急峻になるほど同じ振幅区間の計測区間が短くなる。図6の例では、振幅区間1,4では振幅の変動が略平坦となっており、振幅が長く振幅区間1、4に留まっているため計測区間が長くなっている。一方、振幅区間2,3では振幅の変動が急峻となっており、振幅が振幅区間2,3から他の振幅区間に変化してしまうため計測区間が短くなっている。
【0050】
したがって、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)を一定にすると、各計測区間の長さに応じて、各振幅区間におけるエコー信号の計測数、つまり、各振幅区間に対応するk空間へのエコーデータ充填率が異なる。具体的には、計測区間が長いほど計測するエコー信号が多くなり、k空間への充填率が高くなる。全ての振幅区間に対応するk空間がそれぞれ全てエコーデータで充填されるまで、計測は繰り返される必要があるので、最も計測区間の短い振幅区間の対応するk空間が全てエコーデータで充填されるまで計測が繰り返されることになる。その際、他のk空間において重複して計測されるエコーデータについては、平均化処理を行うことにおり画像のSNが向上する。
【0051】
次に、本実施形態の体動アーチファクト低減法を実行するために、演算処理部7のCPU8が有する各機能を図7を用いて説明する。図7は、CPU8が、磁気ディスク18等に記憶されたプログラムを実行することにより実現する各機能を説明するための機能ブロック図である。
【0052】
CPU8は、プログラムにより、前述の各部を制御して、本実施形態の体動アーチファクト低減する撮像を実現する。そのため、本第2の実施形態のCPU8は、前述の第1の実施形態における周期分割部301の代わりに振幅分割部701を備える。その他の機能部は、前述の第1の実施形態と同じであるが撮像実行部304が実行する機能の一部が異なるので、本第2の実施形態では、撮像実行部304aとする。以下、振幅分割部701と撮像実行部304aの機能のみを説明し、他の機能については説明を省略する。
【0053】
振幅分割部701は、体動振幅の最大振幅を含む幅を所定の数(M)に分割する。最大振幅は、呼吸動データの変動に基づいて算出する。例えば、呼吸動データの隣接する極大値と極小値との差の平均とする。体動振幅の分割数は予め磁気ディスク18等に記憶されている値を用いても良いし、操作者により指定された値を用いても良い。
【0054】
撮像実行部304aは、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。その際、エコー信号の計測時の体動振幅が属する振幅区間を判定し、該判定した振幅区間に対応するk空間の未配置領域に、該エコー信号のデータが配置されるように、該エコー信号に印加する位相エンコード量を計測制御部4に随時指示する。具体的には、撮像実行部304は、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)でパルスシーケンスの実行を繰り返す際に、体動振幅が属する振幅区間に応じて、該振幅区間に対応するk空間の未計測領域のエコー信号を計測するように、該エコー信号に印加するエンコード量を制御する。エンコード量制御の具体例については撮像実行部304と同様である。このように体動振幅を常にモニタリングしながら振幅区間を判定し、該振幅区間毎のエンコード量を制御することで、各振幅区間内での体動振幅の変動の急峻度に応じて、各振幅区間の計測区間がそれぞれ自動的に長短されることになる。
【0055】
次に、上記の各機能部による、本実施形態の撮像処理の流れを、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態の撮像処理の処理フローである。本第2の実施形態の処理フローは前述第1の実施形態の処理フローと比較して、ステップ402の代わりにステップ802を行い、ステップ404の処理内容が異なるので、本第2の実施形態では、ステップ404 aとする。以下、処理内容が異なるステップのみを説明し、同じ処理の説明を省略する。
【0056】
ステップ802で、振幅分割部701は、ステップ401(或いはステップ404)で取得された呼吸動データに基づいて、呼吸動における腹壁面の最大振幅を算出すると共に、磁気ディスク18等から振幅の分割数を読み込み、最大振幅を含む幅を等幅間隔の分割数(M)に分割する。分割の一例については図6で説明したとおりである。
【0057】
ステップ404aで、撮像実行部304aは、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。前述のステップ404と同様に、呼吸動センサの使用又はナビゲーターエコー信号の計測を介して呼吸動データが取得される。また、パルスシーケンスはいずれでも良い。撮像実行部30aは、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)でパルスシーケンスの実行を繰り返してエコー信号計測し、その際、呼吸動データの振幅が属する振幅区間を判定し、該振幅区間に応じて、該振幅区間に対応するk空間の未計測領域のエコー信号を計測するように、エンコード量を制御する。エンコード量制御の具体的についてはステップ404と同じである。
以上までが本実施形態の処理フローの説明である。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置及び体動アーチファクト低減法は、体動振幅の振幅を等幅間隔に分割して、分割区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内の動きの少ない領域を合成して、体動アーチファクトが低減された一枚の画像を取得する。その結果、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、安定して体動アーチファクトを低減した画像を取得することができる。特に、等幅の振幅区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を得るので、振幅区間毎の画像はそれぞれ体動アーチファクトが少なくなる。このように体動アーチファクトの少ない各画像から、動きの少ない領域を抽出して合成するので、最終画像はさらに体動アーチファクトが少なくなる。
【0059】
<第3の実施形態>
次に、本発明のMRI装置及び体動アーチファクト低減法の第3の実施形態について説明する。本実施形態は前述の第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせて、呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割すると共に体動振幅を等幅間隔に分割して、分割区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内の動きの少ない領域を抽出し、抽出した各動きの少ない領域を合成して、体動アーチファクトが低減された画像を取得する。以下、図9〜図11を用いて本実施形態を詳細に説明する。
【0060】
最初に、体動の各呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割すると共に、体動振幅を等幅間隔に分割することについて図9を用いて説明する。図9は、図2と同じ呼吸動データについて、前述の第1の実施形態と同様に、呼吸周期の所定期間を等時間間隔に9つに分割する(本第3の実施形態でも計測空き時間をゼロとしている)と共に、前述の第2の実施形態と同様に、体動振幅を等幅間隔に4つに分割する例を示す。そして、振幅区間毎の画像を取得するために、振幅区間毎にk空間を用意し、振幅が同じ振幅区間内で計測されたエコー信号のデータを同じk空間に配置する。ただし、呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割するので、エコー信号の計測及び計測されたエコー信号のデータのk空間への振り分けは、計測区間毎に等時間間隔で行う。そのために、呼吸動データを随時監視し、各計測区間の開始時の体動振幅が属する振幅区間を判定して、その振幅区間に対応するk空間の未計測領域にエコー信号のデータが配置されるようにエンコード量が各エコー信号に印加される。一計測区間に複数のエコー信号を計測する場合には、同じk空間の未計測領域にエコー信号のデータが配置されるように各エコー信号に印加するエンコード量が制御される。このように振幅区間を判定すると、ある計測期間では体動振幅が複数の振幅区間に跨る場合も生じる。その場合には、ある振幅区間に対応するk空間が他の振幅区間のデータを含んでしまうことになる。しかし、各呼吸周期の所定期間の分割数を増やすことによって、そのような場合を低減することができる。
【0061】
また、本第3の実施形態の場合も、前述の第2の実施形態と同様に、振幅変動が緩慢になるほど同じ振幅区間となる計測区間の回数が多くなり、振幅変動の平坦部で最大となる。逆に、振幅変動が急峻になるほど同じ振幅区間となる計測区間の回数が少なくなる。図9の例では、振幅区間1,4では振幅の変動が略平坦となっており、振幅が長く振幅区間1、4に留まっているため計測区間の回数が多くなっている。一方、振幅区間2,3では振幅の変動が急峻となっており、振幅が振幅区間2,3から他の振幅区間に変化してしまうため計測区間の回数が少なくなっている。したがって、各計測区間の回数に応じて、各振幅区間におけるエコー信号の計測数、つまり、各振幅区間に対応するk空間へのエコーデータの充填率が異なる。具体的には、計測区間の回数が多いほど計測するエコー信号が多くなり、k空間への充填率が高くなる。全ての振幅区間に対応するk空間がそれぞれ全てエコーデータで充填されるまで、計測は繰り返される必要があるので、最も計測区間の回数の少ない振幅区間の対応するk空間が全てエコーデータで充填されるまで計測が繰り返されることになる。
また、図9には、各振幅区間で得られる画像例を示す。
【0062】
次に、本実施形態の体動アーチファクト低減法を実行するために、演算処理部7のCPU8が有する各機能を図10を用いて説明する。図10は、CPU8が、磁気ディスク18等に記憶されたプログラムを実行することにより実現する各機能を説明するための機能ブロック図である。
【0063】
CPU8は、プログラムにより、前述の各部を制御して、本実施形態の体動アーチファクト低減する撮像を実現する。そのため、本第3の実施形態のCPU8は、前述の第1の実施形態の周期分割部301と前述の第2の実施形態の振幅分割部701とを共に備え、それらの機能はそれぞれ前述の第1の実施形態及び第2の実施形態と同様である。その他の機能部は、前述の第1の実施形態と同じであるが撮像実行部304が実行する機能が一部異なるので、本第3の実施形態では、撮像実行部304bとする。以下、撮像実行部304bの機能のみを説明し、他の機能については説明を省略する。
【0064】
撮像実行部304bは、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。その際、各計測区間の開始時点での体動振幅を検出して、該体動振幅が属する振幅区間を判定し、該判定した振幅区間に対応するk空間の未計測領域に、その計測区間で計測するエコー信号のデータが配置されるように、該エコー信号に印加するエンコード量を計測制御部4に随時指示する。したがって、仮に同じ計測区間の途中で体動振幅が他の振幅区間に変化しても、振幅区間の判定は計測区間の開始時点で判定した振幅区間のままとなる。このように、撮像実行部304bは、各計測区間の開始時点での体動振幅に基づいて、該計測区間でのk空間の選択及びエンコード量の制御を行う。
【0065】
次に、上記の各機能部による、本実施形態の撮像処理の流れを、図11を用いて説明する。図11は、本実施形態の撮像処理の処理フローである。本第3の実施形態の処理フローは前述第1の実施形態の処理フローに前述の第2の実施形態のステップ802を追加したものであが、ステップ802の処理内容は前述の第2の実施形態と同じである。また、ステップ404の処理内容が異なるので、本第3の実施形態では、ステップ404 bとする。以下、処理内容が異なるステップ404bのみを説明し、同じ処理の説明を省略する。
【0066】
ステップ404bで、撮像実行部304bは、呼吸動データをモニタリングしながら所定のパルスシーケンスを用いて被検者からエコー信号を計測する。前述のステップ404と同様に、呼吸動センサの使用又はナビゲーターエコー信号の計測を介して呼吸動データが取得される。また、パルスシーケンスはいずれでも良い。撮像実行部304bは、パルスシーケンスの繰り返し時間(TR)でパルスシーケンスの実行を繰り返してエコー信号計測し、その際、各計測区間の開始時点での呼吸動データの振幅を検出し、該振幅が属する振幅区間を判定する。そして、撮像実行部304bは、該判定した振幅区間に対応するk空間の未計測領域に、該計測期間中に計測されるエコー信号のデータが配置されるように、該エコー信号に印加するエンコード量を制御する。エンコード量制御の具体的についてはステップ404と同じである。
以上までが本実施形態の処理フローの説明である。
【0067】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置及び体動アーチファクト低減法は、各呼吸周期を等時間間隔に分割すると共に体動振幅を等幅間隔に分割して、分割区間毎に計測されたエコー信号を用いて画像を再構成し、再構成した各画像内の動きの少ない領域を合成して、体動アーチファクトが低減された一枚の画像を取得する。その結果、被検者の呼吸動が不安定又は不規則となっても、安定して体動アーチファクトを低減した画像を取得することができる。特に、各呼吸周期の所定期間を等時間間隔に分割すると共に体動振幅を等幅間隔に分割して、各計測区間の開始時の振幅から振幅区間を判定するので、呼吸動データの取得と振幅区間の判定処理の回数を低減できる。その結果、エコー信号の取得効率を向上できるので、撮像効率を向上できる。
【符号の説明】
【0068】
1 被検体、2 静磁場発生系、3 傾斜磁場発生系、4 シーケンサ、5 送信系、6 受信系、7 信号処理系、8 中央処理装置(CPU)、9 傾斜磁場コイル、10 傾斜磁場電源、11 高周波発信器、12 変調器、13 高周波増幅器、14a 高周波コイル(送信コイル)、14b 高周波コイル(受信コイル)、15 信号増幅器、16 直交位相検波器、17 A/D変換器、18 磁気ディスク、19 光ディスク、20 ディスプレイ、21 ROM、22 RAM、23 トラックボール又はマウス、24 キーボード、25 操作部、26 体動検出ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを取得する体動検出部と、
所定のパルスシーケンスを用いて前記被検者からエコー信号を計測する計測制御部と、
前記エコー信号と、前記呼吸動データと、から前記呼吸動に基づくアーチファクトが低減された画像を取得する演算処理部と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
前記演算処理部は、
前記呼吸動データを複数の区間に分割する分割部と、
前記分割された分割区間毎のk空間を用意するk空間設定部と、
前記各k空間に充填するエコー信号の計測を前記計測制御部に指示する撮像実行部と、
前記各k空間に充填されたデータを用いて前記分割区間毎の画像を再構成する画像再構成部と、
前記分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出する領域抽出部と、
前記動きの少ない領域を合成して画像を得る領域合成部と、
を有してなることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記分割部は、前記呼吸動データの各呼吸周期の所定期間をそれぞれ複数の計測区間に分割し、
前記k空間設定部は、前記計測区間毎のk空間を用意し、
前記画像再構成部は、前記各k空間に充填されたデータを用いて前記計測区間毎の画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記分割部は、前記呼吸動データの振幅を複数の振幅区間に分割し、
前記k空間設定部は、前記振幅区間毎のk空間を用意し、
前記画像再構成部は、前記各k空間に充填されたデータを用いて前記振幅区間毎の画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記分割部は、前記呼吸動データの各呼吸周期の所定期間をそれぞれ複数の計測区間に分割すると共に、前記呼吸動データの振幅を複数の振幅区間に分割し、
前記k空間設定部は、前記振幅区間毎のk空間を用意し、
前記画像再構成部は、前記各k空間に充填されたデータを用いて前記振幅区間毎の画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを取得するステップと、
前記呼吸動データを複数の区間に分割するステップと、
前記分割区間毎のk空間を用意するステップと、
前記各k空間に充填するエコー信号の計測するステップと、
前記各k空間に充填されたデータを用いて前記分割区間毎の画像を再構成するステップと、
前記分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出するステップと、
前記動きの少ない領域を合成して画像を得るステップと、
を有してなることを特徴とする体動アーチファクト低減法。
【請求項1】
呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを取得する体動検出部と、
所定のパルスシーケンスを用いて前記被検者からエコー信号を計測する計測制御部と、
前記エコー信号と、前記呼吸動データと、から前記呼吸動に基づくアーチファクトが低減された画像を取得する演算処理部と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置であって、
前記演算処理部は、
前記呼吸動データを複数の区間に分割する分割部と、
前記分割された分割区間毎のk空間を用意するk空間設定部と、
前記各k空間に充填するエコー信号の計測を前記計測制御部に指示する撮像実行部と、
前記各k空間に充填されたデータを用いて前記分割区間毎の画像を再構成する画像再構成部と、
前記分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出する領域抽出部と、
前記動きの少ない領域を合成して画像を得る領域合成部と、
を有してなることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記分割部は、前記呼吸動データの各呼吸周期の所定期間をそれぞれ複数の計測区間に分割し、
前記k空間設定部は、前記計測区間毎のk空間を用意し、
前記画像再構成部は、前記各k空間に充填されたデータを用いて前記計測区間毎の画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記分割部は、前記呼吸動データの振幅を複数の振幅区間に分割し、
前記k空間設定部は、前記振幅区間毎のk空間を用意し、
前記画像再構成部は、前記各k空間に充填されたデータを用いて前記振幅区間毎の画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記分割部は、前記呼吸動データの各呼吸周期の所定期間をそれぞれ複数の計測区間に分割すると共に、前記呼吸動データの振幅を複数の振幅区間に分割し、
前記k空間設定部は、前記振幅区間毎のk空間を用意し、
前記画像再構成部は、前記各k空間に充填されたデータを用いて前記振幅区間毎の画像を再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
呼吸動を伴う被検者の呼吸状態を表す呼吸動データを取得するステップと、
前記呼吸動データを複数の区間に分割するステップと、
前記分割区間毎のk空間を用意するステップと、
前記各k空間に充填するエコー信号の計測するステップと、
前記各k空間に充填されたデータを用いて前記分割区間毎の画像を再構成するステップと、
前記分割区間毎の画像から動きの少ない領域を抽出するステップと、
前記動きの少ない領域を合成して画像を得るステップと、
を有してなることを特徴とする体動アーチファクト低減法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−111305(P2013−111305A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261135(P2011−261135)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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