説明

磁気共鳴イメージング装置及び医用システム

【課題】関心の高い部位における画像データをより良好な画質で繰り返し収集することである。
【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、撮像条件設定手段及びイメージング手段を備える。撮像条件設定手段は、同一の被検体に対して過去と同一の複数のスライス位置を設定し、かつ前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス位置を代表する位置又は前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス範囲を代表する位置が磁場中心となるように前記被検体をセットした寝台の天板位置を設定する。イメージング手段は、前記寝台の天板位置において前記被検体に対して設定された前記複数のスライス位置から磁気共鳴データを収集し、収集した前記磁気共鳴データに基づいて前記複数のスライス位置に対応する画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング(MRI: Magnetic Resonance Imaging)装置及び医用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴(NMR: nuclear magnetic resonance)信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
MRIの検査では、しばしば過去に収集された画像データの撮像領域と同じ領域から画像データが収集される。すなわち、過去に収集された画像データの撮像条件を参照して、画像データの収集条件が設定される。より具体的には、装置座標系における被検体の位置が同一であることを前提として、過去の撮像条件と同一のスライス厚、スライス枚数及びスライス角度等の条件を設定し、イメージングを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−167634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MRI装置では磁場中心から離れる程、磁場の均一性が低下する。このため、磁場中心から離れたスライス位置における画像データの画質が劣化するという問題がある。特に、同一の撮像領域から繰り返し画像データを収集する場合において最も関心の高い部位が磁場中心から離れていると、常に同一の撮像領域が設定されることから画質の劣化した画像データであるにも関わらず繰り返し収集されることとなる。
【0006】
本発明は、関心の高い部位における画像データをより良好な画質で繰り返し収集することが可能な磁気共鳴イメージング装置及び医用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、撮像条件設定手段及びイメージング手段を備える。撮像条件設定手段は、同一の被検体に対して過去と同一の複数のスライス位置を設定し、かつ前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス位置が磁場中心に対して適切な位置となるように前記被検体をセットした寝台の天板位置を設定する。イメージング手段は、前記寝台の天板位置において前記被検体に対して設定された前記複数のスライス位置から磁気共鳴データを収集し、収集した前記磁気共鳴データに基づいて前記複数のスライス位置に対応する画像データを生成する。
また、本発明の実施形態に係る医用システムは、送信要求受付手段及び送信手段を備える。送信要求受付手段は、指定された被検体に対して過去に設定された複数のスライス位置を示す情報の送信要求を磁気共鳴イメージング装置から受け付ける。送信手段は、前記送信要求に対する応答として、前記複数のスライス位置を示す情報とともに、前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス位置を示す情報又は前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス範囲を示す情報を前記磁気共鳴イメージング装置に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成図。
【図2】図1に示すコンピュータの機能及び医用機器群の詳細構成を示すブロック図。
【図3】図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により被検体Pに設定された複数のスライス位置についてイメージングを繰返し実行する際の流れを示すフローチャート。
【図4】図3のステップS15に示すキー画像を磁場中心とする同一スライス位置を含む撮像条件の設定の詳細な流れを示すフローチャート。
【図5】図4のステップS25において仰向けの被検体に対して設定されたアキシャル断面のキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板の位置設定方法を説明する図。
【図6】図4のステップS25において横向きの被検体に対して設定されたサジタル断面のキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板の位置設定方法を説明する図。
【図7】図4のステップS25において被検体に対して設定されたアキシャル断面の複数のキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板の第1の位置設定方法を説明する図。
【図8】図4のステップS25において被検体に対して設定されたアキシャル断面の複数のキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板の第2の位置設定方法を説明する図。
【図9】図4のステップS25において被検体に対して設定されたアキシャル断面の複数のキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板の第3の位置設定方法を説明する図。
【図10】図4のステップS25においてstepping-table法による過去の撮像において設定されたキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板の位置設定方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置及び医用システムについて添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成図である。
【0011】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23及びRFコイル24を備えている。
【0012】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31及びコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35及び記憶装置36が備えられる。
【0013】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0014】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0015】
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24にはガントリに内蔵されたRF信号の送受信用の全身用コイル(WBC: whole body coil)や寝台37や被検体P近傍に設けられるRF信号の受信用の局所コイルなどがある。
【0016】
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0017】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0018】
RFコイル24は、送信器29及び受信器30の少なくとも一方と接続される。送信用のRFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能を有し、受信用のRFコイル24は、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0019】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gz及びRF信号を発生させる機能を有する。
【0020】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波及びA/D (analog to digital)変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0021】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0022】
さらに、磁気共鳴イメージング装置20には、必要に応じて被検体PのECG (electro cardiogram)信号を取得するECGユニットが備えられる。ECGユニットにより取得されたECG信号はシーケンスコントローラ31を介してコンピュータ32に出力されるように構成される。
【0023】
尚、拍動を心拍情報として表すECG信号の代わりに拍動を脈波情報として表す脈波同期(PPG: peripheral pulse gating)信号を取得することもできる。PPG信号は、例えば指先の脈波を光信号として検出した信号である。PPG信号を取得する場合には、PPG信号検出ユニットが設けられる。
【0024】
また、寝台37は、天板37A及び寝台駆動装置37Bを備えている。寝台駆動装置37Bは、シーケンスコントローラ31を通じてコンピュータ32と接続される。そして、寝台駆動装置37Bは、コンピュータ32において設定された撮像条件に基づくシーケンスコントローラ31からの制御によって天板37Aの位置決めを行うことができるように構成される。
【0025】
また、寝台37の天板37Aを移動させてstepping-table法による撮像を行うこともできる。stepping-table法は、stationごとに寝台37の天板37Aをステップ移動させて撮像する技術である。stepping-table法は、全身撮像のように一度に撮像できないような広領域の撮像を行う場合に用いられる。天板37Aを移動して収集された複数の画像は、コンピュータ32における合成処理によって互いに繋ぎ合わせることもできる。
【0026】
一方、コンピュータ32は、医用情報管理システム、医用画像サーバ、医用画像処理装置、医用画像表示装置及び他の画像診断装置等の医用機器群39とネットワーク40を介して接続される。ネットワーク40は、単一の医療機関内における院内ネットワーク等のLAN (Local Area Network)に限らず、複数の医療機関の間において利用されるインターネットや専用の広域ネットワークであってもよい。磁気共鳴イメージング装置1を他の医療機関に設置された医用機器と接続すれば、磁気共鳴イメージング装置1を用いた遠隔医療が可能となる。
【0027】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムの少なくとも一部に代えて、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
【0028】
図2は、図1に示すコンピュータ32の機能及び医用機器群の詳細構成を示すブロック図である。
【0029】
コンピュータ32の演算装置35は、記憶装置36に保存されたプログラムを実行することにより撮像条件設定部41、データ処理部42、参照情報作成部43及び通信部44として機能する。撮像条件設定部41は、撮像位置取得部41A、関心画像特定部41B及び寝台位置設定部41Cを有する。また、記憶装置36は、k空間データ記憶部45及び画像データ記憶部46として機能する。
【0030】
一方、医用機器群39を構成する医用情報管理システム49、医用画像サーバ50、医用画像処理装置51、医用画像表示装置52及び他の画像診断装置53がネットワーク40を介してコンピュータ32と接続される。画像診断装置53としては、他の磁気共鳴イメージング装置、X線CT (computed tomography)装置、陽電子放出コンピュータ断層(PET: positron emission computed tomography)装置等が挙げられる。
【0031】
医用情報管理システム49は、患者の識別情報等の患者情報及び撮像部位等の撮像条件指定情報を含む検査オーダー情報を管理する放射線科情報システム(RIS: Radiology Information System)や病院情報システム(HIS: hospital information system)等のシステムである。
【0032】
医用画像サーバ50は、医用画像データの通信規格であるDICOM (Digital Imaging and Communication in Medicine)規格の画像データとして医用画像データを保存する画像保存通信システム(PACS: picture archiving and communication system)等の画像データ管理システムである。
【0033】
医用画像処理装置51は、医用画像サーバ50等の送信元からネットワーク40を介して取得したDICOM規格の画像データに対する画像処理機能を備えた装置である。医用画像処理装置51は、ワークステーション等のコンピュータシステムにより構築することができる。
【0034】
医用画像処理装置51では、複数のスライス画像データから関心のある単一又は複数のスライス画像データをキー画像データとして指定し、指定したスライス画像データにキー画像データであることを示すマーキング情報、被検体Pに固定された人体座標系におけるキー画像のスライス位置及びキー画像に対応するスライス位置の磁気共鳴イメージング装置20の磁場中心からの距離をキー画像情報として付帯させることができる。すなわち、キー画像情報をタグ情報としてDICOM規格の画像データに付帯させることができる。
【0035】
キー画像のスライス位置は、スライス画像データに含まれる座標情報に基づいて求めることができる。
【0036】
また、キー画像に対応するスライス位置の磁場中心からの距離は、磁気共鳴イメージング装置20の静磁場用磁石21に固定された装置座標系を用いて表すことができる。装置座標系は、静磁場用磁石21の中心軸方向をz軸、静磁場用磁石21の中心軸と直交する水平方向をx軸、鉛直方向をy軸として定義することができる。そして、装置座標系の原点(x, y, z)=(0, 0, 0)を磁場中心に設定することができる。
【0037】
従って、静磁場用磁石21内の磁場中心を原点とする装置座標系を用いれば、キー画像に対応するスライス位置の磁場中心からの距離は、装置座標系で表されたスライス位置の座標値として求めることができる。
【0038】
医用画像表示装置52は、医用画像サーバ50等の送信元からネットワーク40を介して取得したDICOM規格の画像データを表示させる画像ビューアである。医用画像表示装置52には、簡易な画像処理機能及び医用画像データを参照した読影レポートの作成機能が備えられる。
【0039】
特に、医用画像表示装置52は、医用画像サーバ50等の記憶装置に保存されている関心のある医用画像データにリンクを貼った読影レポート情報を作成する機能を備えている。そのために、医用画像表示装置52においても、複数のスライス画像データから関心のある単一又は複数のスライス画像データをキー画像データとして指定し、指定したスライス画像データにキー画像のマーキング情報、スライス位置及び磁場中心からの距離を含むキー画像情報を付帯させることができる。
【0040】
コンピュータ32の撮像条件設定部41は、医用情報管理システム49からネットワーク40を介して送信された検査オーダー情報を通信部44を通じて取得し、取得した検査オーダー情報に含まれる患者情報に基づいて患者登録処理を実行する機能、検査オーダー情報に含まれる撮像条件指定情報及び入力装置33からの指示情報に基づいてパルスシーケンス、撮像スライス位置及び寝台37の天板37Aの位置決め情報を含む撮像条件を設定する機能及び設定した撮像条件をシーケンスコントローラ31に出力する機能を有する。
【0041】
特に、撮像条件設定部41は、同一の被検体Pに対して過去の撮像条件として設定された複数の撮像スライス位置と同一の複数の撮像スライス位置を新たな撮像条件として設定する機能と、過去と同一の複数の撮像スライス位置を被検体Pに対して設定する場合において、関心の高いキー画像位置として指定された単一又は複数の撮像スライス位置が出来るだけ静磁場用磁石21内の磁場中心付近となるような磁場中心に対して適切な位置に天板37Aの制御位置を設定する機能とを備えている。
【0042】
すなわち、撮像条件設定部41は、被検体Pに固定された人体座標系を用いて被検体Pに対して設定された複数のスライスセットの位置を変えずに静磁場用磁石21内の磁場中心に固定された装置座標系におけるスライスセットの位置を調整して天板37Aの位置の制御条件として設定する機能を備えている。
【0043】
撮像位置取得部41Aは、同一の被検体Pに対して過去の撮像条件として人体座標系を用いて設定された複数の撮像スライス位置情報を取得する機能を有する。過去に設定されたスライス位置を特定する情報は、医用機器群39の任意の装置に保存することができる。従って、撮像位置取得部41Aには、入力装置33からの指示情報に従って、登録処理された患者情報に対応する過去のスライス位置情報を医用機器群39から検索してネットワーク40を介して取得する機能が備えられる。
【0044】
逆に、医用機器群3を構成する医用画像処理装置51等の各医用システムには、撮像位置取得部41Aからの要求に応答するために必要な機能を設けることができる。具体的には、医用システムには、指定された被検体Pに対して過去に設定された複数のスライス位置を示す情報の送信要求を磁気共鳴イメージング装置20から受け付ける送信要求受付手段としての機能及び送信要求に対する応答として、複数のスライス位置を示す情報とともに、複数のスライス位置のうち関心の高いキー画像位置として指定されたスライス位置を示す情報又は複数のスライス位置のうちキー画像位置として指定されたスライス範囲を示す情報を磁気共鳴イメージング装置20に送信する送信手段としての機能を設けることができる。
【0045】
人体座標系を用いて設定されたスライス位置情報は、DICOM規格の各診断画像データにそれぞれタグ情報として付帯させることができる。但し、スライス位置情報を含む撮像条件情報等の所望の情報を診断画像データとは別にDICOM規格の画像データとして保存及び管理することもできる。従って、過去のスライス位置情報は、被検体Pに対応するDICOM規格の画像データに付帯するタグ情報を参照することによって取得することができる。
【0046】
また、過去のスライス位置情報又はスライス位置情報を付帯させた画像データは、磁気共鳴イメージング装置20内の画像データ記憶部46にも保存することができる。従って、撮像位置取得部41Aが画像データ記憶部46を参照して過去のスライス位置情報を取得するようにしてもよい。
【0047】
関心画像特定部41Bは、関心の高いキー画像のマーキング情報、スライス位置及び磁場中心からの距離を含むキー画像情報を付帯させた過去の画像データからキー画像情報を取得し、撮像位置取得部41Aにおいて取得された複数のスライス位置のうちキー画像に対応する人体座標系におけるスライス位置を特定する機能を有する。
【0048】
また、関心画像特定部41Bは、過去の複数のスライス画像データのいずれもキー画像データとして指定されていない場合には、過去の複数のスライス画像データから関心のある単一又は複数のスライス画像データをキー画像データとして指定し、指定したキー画像データのスライス位置を特定するように構成される。
【0049】
キー画像データの指定は、入力装置33から関心画像特定部41Bに入力されるキー画像の指定情報に従って手動で行うことができる。また、関心画像特定部41Bが関心領域(ROI: region of interest)の設定情報等の参照情報を、ネットワーク40を介して所望の医用機器から取得し、取得した参照情報に基づいてキー画像データの指定を自動的に行うようにしてもよい。
【0050】
寝台位置設定部41Cは、キー画像に対応する単一又は複数のスライス位置が出来るだけ磁場中心となるように天板37Aの適切な制御位置を設定する機能と、設定した天板37Aの制御位置を、入力装置33からの指示情報に基づいてイメージング対象となる複数のスライス位置が磁場中心から所定の範囲内となるように補正する機能とを有する。
【0051】
単一のキー画像に対応するスライス位置が指定されている場合には、指定されたスライス位置が磁場中心に最も近い位置となるように天板37Aの制御位置を設定することができる。
【0052】
一方、複数の等間隔又は不等間隔のキー画像に対応するスライス位置が指定されている場合には、指定された複数のスライス位置を代表する中心位置や重心位置等の位置が磁場中心に最も近い位置となるように天板37Aの制御位置を設定することができる。複数のスライス位置を代表する位置については、予め決定した所望のアルゴリズムによって寝台位置設定部41Cが自動的に設定することもできるし、入力装置33からの指示情報に基づいて手動で設定できるようにしてもよい。
【0053】
或いは、複数のキー画像に対応する複数のスライス位置が指定されている場合には、複数のスライスの範囲が磁場中心から所定の範囲内となるように天板37Aの制御位置を設定することもできる。複数のスライスの範囲を含める所定の範囲は、例えば、静磁場の不均一性が小さい撮影視野(FOV: field of view)とすることができる。但し、FOVとは別に磁場中心に近い領域を複数のスライスの範囲を含めるべき所定の範囲としてもよい。
【0054】
また、指定されたスライス位置がアキシャル断面等の天板37Aの可動方向を法線方向とする断面である場合には、指定されたスライス位置又はスライス位置の代表位置が磁場中心となるように天板37Aの制御位置を設定することができる。従って、天板37Aが上下方向や長手方向に垂直な水平方向に可動できる場合には、指定されたスライス位置がコロナル断面又はサジタル断面であっても指定されたスライス位置又はスライス位置の代表位置が磁場中心となるように天板37Aの制御位置を設定することができる。
【0055】
また、指定されたスライス位置がオブリーク断面である場合には、指定されたスライス位置又はスライス位置の代表位置が磁場中心に最も近い位置、例えば磁場中心を通る位置となるように天板37Aの制御位置を設定することができる。
【0056】
更に、寝台位置設定部41Cは、設定した天板37Aの制御位置を補正するために、天板37Aの制御位置における複数のスライス位置が磁場中心から所定の範囲内であるか否かを判定する機能、天板37Aの制御位置における複数のスライス位置が磁場中心から所定の範囲内とならない場合には、その旨を示す警告情報を表示装置34に表示させる機能及び警告情報を表示させた場合に入力装置33から入力された指示情報に従って天板37Aの制御位置を再設定する機能を備えている。
【0057】
警告情報を表示させた場合には、寝台位置設定部41Cが再設定方法として選択肢を表示装置34に表示させ、選択肢の選択情報として入力装置33からの指示情報を寝台位置設定部41Cが取得するようにしてもよい。例えば、天板37Aの制御位置を手動で調整するという選択肢や天板37Aの制御位置を再設定しないという選択肢等の複数の選択肢を予め決定して表示させることができる。
【0058】
データ処理部42は、主にシーケンスコントローラ31から取得した生データに基づいて画像データを生成する機能と、生成した画像データを出力する機能とを有する。
【0059】
画像データの生成機能は、具体的には、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データ記憶部45形成されたk空間にk空間データとして配置する機能、k空間データにフーリエ変換(FT: Fourier transform)を含む画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する機能、画像データに必要な画像処理を施す機能及び医用機器群39からネットワーク40及び通信部44を通じて過去の画像データの生成のために用いられた画像処理条件を画像処理のために取得する機能などである。
【0060】
画像データの出力機能は、具体的には、画像データを表示装置34に表示させる機能、画像データを画像データ記憶部46に書き込む機能及び通信部44に医用機器群39内の所望の送信先にネットワーク40を介してDICOM規格の画像データを送信させる機能などである。
【0061】
また、データ処理部42は、撮像条件設定部41からスライス位置等の撮像条件を取得して、画像データに施した画像処理の条件を特定する画像処理条件情報とともに撮像条件を対応する画像データに付帯情報として付帯させる機能、入力装置33からの指示情報に基づいて複数のスライス画像データから関心のある単一又は複数のスライス画像データをキー画像データとして指定し、指定したスライス画像データにキー画像のマーキング情報、スライス位置及び磁場中心からの距離を含むキー画像情報を付帯させる機能、画像処理条件情報及びキー画像情報を参照情報作成部43に与える機能及び備えている。
【0062】
参照情報作成部43は、スライス位置の設定情報等の撮像条件や画像処理条件情報等の医用機器群39において参照情報として共有しようとする情報をDICOM規格の画像データとして作成する機能と、作成したDICOM規格の画像データを通信部44を通じて医用機器群39内の所望の送信先にネットワーク40を介して送信させる機能を有する。そのために、参照情報作成部43は、撮像条件設定部41から必要な撮像条件の設定情報を、データ処理部42から必要な画像処理条件情報を、それぞれ取得できるように構成される。
【0063】
また、参照情報作成部43は、データ処理部42からキー画像情報を取得した場合には、撮像条件や画像処理条件情報等の参照情報を記録したDICOM規格の画像データにキー画像情報をタグ情報として付加するように構成される。
【0064】
ここでは、参照情報を記録したDICOM規格の画像データを被検体Pの診断画像データと区別してオブジェクトデータと称する。オブジェクトデータは、複数のスライス位置の設定に用いられた位置決め画像データに各スライス位置を含む撮像条件及び画像処理条件情報を付帯させたデータとすると利便性が高い。そこで、以降では、参照情報作成部43が位置決め画像データに各スライス位置を含む撮像条件及び画像処理条件情報を付帯させたオブジェクトデータを生成する場合を例に説明する。
【0065】
従って、医用機器群3を構成する医用画像処理装置51等の各医用システムについても、複数のスライス位置を示す情報並びに複数のスライス位置のうちキー画像として指定されたスライス位置を示す情報又は複数のスライス位置のうちキー画像として指定されたスライス範囲を示す情報を付帯情報として位置決め画像データに付帯させたオブジェクトデータを磁気共鳴イメージング装置20に送信できるように構成することができる。
【0066】
通信部44は、コンピュータ32と医用機器群39との間においてネットワーク40を介して通信を行う機能を有する。具体的には、通信部44は、撮像条件設定部41、データ処理部42及び参照情報作成部43と医用機器群39の所望の構成要素との間において撮像条件の設定情報、DICOM規格の診断画像データ、画像処理条件の設定情報、DICOM規格のオブジェクトデータ等のデータをネットワーク40を介して送受信する機能を備えている。
【0067】
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作及び作用について説明する。
【0068】
図3は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20により被検体Pに設定された複数のスライス位置についてイメージングを繰返し実行する際の流れを示すフローチャートである。
【0069】
まずステップS1において、医用情報管理システム49から検査オーダー情報がネットワーク40を介して磁気共鳴イメージング装置20のコンピュータ32に送信される。
【0070】
そうするとステップS2において、コンピュータ32の通信部44は、検査オーダー情報を受信して撮像条件設定部41に与える。そして、撮像条件設定部41は、検査オーダー情報に含まれる患者情報を取得し、患者登録を行う。
【0071】
一方、寝台37の天板37Aに患者情報に対応する被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。そして、寝台駆動装置37Bが駆動し、被検体Pがセットされた天板37Aが静磁場用磁石21を内蔵するガントリ内の撮像領域に送り込まれる。
【0072】
次に、ステップS3において、撮像条件設定部41は、複数のスライス位置を含む撮像条件を設定する。そのために、直交3断面画像データ等の基準となる被検体Pの画像データ及びスライス位置を設定するために参照される位置決め画像データが収集される。そして、撮像部位を含むサジタル断面画像、コロナル断面画像又はアキシャル断面画像等の表示装置34に表示された位置決め画像を通じた入力装置33の操作によってイメージング対象となる複数のスライスが被検体Pに固定された人体座標系を用いて設定される。
【0073】
次に、人体座標系を用いて設定された複数のスライスの中心が静磁場用磁石21内の磁場中心となるようにガントリ及び静磁場用磁石21に固定された装置座標系におけるスライスの中心位置が求められる。そして、装置座標系におけるスライスの中心位置及び人体座標系と装置座標系との相対的な位置関係に基づいて寝台駆動装置37Bが駆動し、スライスの中心が磁場均一性の高い磁場中心となるように被検体P及び人体座標系とともに天板37Aが移動する。
【0074】
また、検査オーダー情報に含まれる撮像条件指定情報及び入力装置33から入力された指示情報に従ってパルスシーケンス等の他の撮像条件が撮像条件設定部41において設定される。例えば、ECG同期イメージングを実行する場合には、ECG信号からの遅延時間等の撮像条件が設定される。
【0075】
次に、ステップS4において、設定された撮像条件に従って被検体Pに設定された複数のスライスのイメージングが実行される。すなわち、撮像条件設定部41から撮像条件がシーケンスコントローラ31に出力される。このため、シーケンスコントローラ31は、撮像条件従って傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
【0076】
このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からNMR信号を受けて、所要の信号処理を実行した後、A/D (analog to digital)変換することにより、デジタルデータのNMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データであるNMR信号をコンピュータ32に出力する。
【0077】
そうすると、コンピュータ32のデータ処理部42は、シーケンスコントローラ31から取得したNMR信号を、k空間データ記憶部45に形成されたk空間にk空間データとして配置する。次にデータ処理部42は、各スライスから収集されたk空間データに画像再構成処理を施すことにより複数のスライス画像データを再構成する。更に、データ処理部42において必要な画像処理が各スライス画像データに施され、画像処理後の診断用の複数のスライス画像が表示装置34に表示される。
【0078】
また、データ処理部42は、画像処理条件情報及び撮像条件設定部41から取得したスライス位置等の撮像条件を対応する各スライス画像データに付帯情報として付帯させる。そして、データ処理部42は、必要なスライス画像データを画像データ記憶部46に書き込んで保存させる。
【0079】
また、データ処理部42は、医用画像サーバ50に保存すべきスライス画像データをDICOM規格の画像データに変換する。この際、画像処理条件情報及び撮像条件等の付帯情報は、タグ情報としてDICOM規格の各スライス画像データに付帯させることができる。
【0080】
次に、ステップS5において、参照情報作成部43は、各スライス位置の設定に用いた位置決め画像データ及びスライス画像データに対する画像処理条件情報をデータ処理部42から、各スライス位置の特定情報を含む撮像条件を撮像条件設定部41から、それぞれ取得する。そして、参照情報作成部43は、位置決め画像データに各スライス位置を含む撮像条件及び画像処理条件情報を付帯させたDICOM規格のオブジェクトデータを生成する。
【0081】
次に、ステップS6において、通信部44は、データ処理部42において生成された複数のスライス位置に対応する画像データのセット及び参照情報作成部43において生成されたオブジェクトデータをネットワーク40を介して医用画像サーバ50に送信する。
【0082】
次に、ステップS7において、医用画像サーバ50は複数のスライス画像データ及びオブジェクトデータを受信して保存する。そして、ユーザは、医用画像処理装置51や医用画像表示装置52等の所望の医用機器で複数のスライス画像データ及びオブジェクトデータを医用画像サーバ50から取り込んで閲覧及び編集することができる。
【0083】
例えば、医用画像表示装置52に複数のスライス画像を表示させ、医用画像表示装置52に備えられる入力装置の操作によって関心のある単一又は複数のスライス画像をキー画像として指定することができる。これにより、キー画像として指定されたスライス画像データにキー画像のマーキング情報、スライス位置及び磁場中心からの距離を含むキー画像情報がタグ情報として付帯される。キー画像データの磁場中心からの距離は、キー画像に対応するスライス画像データにタグ情報として付帯する装置座標系における座標情報に基づいて求めることができる。そして、指定したキー画像を引用して診断レポートを作成することができる。
【0084】
次に、ステップS8において、医用画像表示装置52においてオブジェクトデータにキー画像のマーキング情報、スライス位置及び磁場中心からの距離を含むキー画像情報が付加される。すなわち、キー画像情報をタグ情報として含むオブジェクトデータが生成される。尚、キー画像情報を含むオブジェクトデータの生成は、他の医用機器において行ってもよい。
【0085】
次に、ステップS9において、キー画像情報を含むオブジェクトデータ及びキー画像データにキー画像情報が付帯した複数のスライス画像データのセットが医用画像サーバ50に転送され、検査情報として保存される。通常は、マルチスライススキャンによって収集された複数のスライス画像データのセット及び対応するオブジェクトデータは、共通のシリーズに属するデータとして医用画像サーバ50において保存及び管理される。
【0086】
尚、キー画像の指定及びスライス画像データへのキー画像情報の付加は、医用機器群39内の医用機器の他、磁気共鳴イメージング装置20におけるデータ処理部42の機能によって実行することもできる。この場合、キー画像情報を付帯情報として含むオブジェクトデータは、磁気共鳴イメージング装置20の参照情報作成部43において生成することができる。
【0087】
そして、医療計画に沿って、被検体Pの手術や治療を行うことができる。更に、被検体Pの術後など、画像データを収集して被検体Pの経過観察を要する場合には、磁気共鳴イメージング装置20による再検査が実施される。
【0088】
その場合には、ステップS10において、医用情報管理システム49から再検査オーダー情報がネットワーク40を介して磁気共鳴イメージング装置20に送信される。
【0089】
このため、ステップS2と同様にステップS11において磁気共鳴イメージング装置20の撮像条件設定部41は、再検査オーダー情報に含まれる患者情報を取得し、患者登録を行う。
【0090】
次に、ステップS12において、撮像条件設定部41は、オーダー情報が再検査オーダー情報であることから、患者情報に対応する過去の検査情報の送信要求を医用画像サーバ50に通信部44及びネットワーク40を介して送信する。過去の検査情報としては、スライス画像データ自体やスライス画像データの付帯情報としてもよいが、ここでは利便性の高いオブジェクトデータの送信を要求するものとする。
【0091】
次に、ステップS13において、医用画像サーバ50は、撮像条件設定部41からのオブジェクトデータの送信要求に応答し、患者情報に対応する過去のオブジェクトデータを検索する。
【0092】
次に、ステップS14において、医用画像サーバ50は、検索の結果得られた患者情報に対応する過去のオブジェクトデータをネットワーク40を介して磁気共鳴イメージング装置20に送信する。
【0093】
次に、ステップS15において、撮像条件設定部41は、医用画像サーバ50からネットワーク40及び通信部44を介して患者情報に対応する過去のオブジェクトデータを取得する。そして、撮像条件設定部41は、過去のオブジェクトデータを参照し、キー画素のスライス位置を磁場中心として過去と同一の複数のスライス位置について再イメージングを実行するための天板37Aの位置を含む撮像条件を設定する。
【0094】
尚、過去のオブジェクトデータの代わりに過去のスライス画像データを撮像条件設定部41が取得し、過去のスライス画像データに付帯するタグ情報を参照して再イメージング用の撮像条件を設定するようにしてもよい。すなわち、撮像条件設定部41は、ネットワーク40を介して受信したDICOM通信規格の任意の画像データに付帯する付帯情報として、キー画像として指定されたスライス位置又は指定されたスライス範囲を取得することができる。そして、取得したキー画像のスライス位置又はスライス範囲を磁場中心とする再イメージング用の撮像条件を設定することができる。
【0095】
尚、キー画像として指定されたスライス位置を代表する位置又は指定されたスライス範囲を代表する位置の、磁場中心からの距離を付帯情報として取得し、取得した磁場中心からの距離に基づいて天板37Aの位置を含む撮像条件を再イメージング用に設定するようにしてもよい。
【0096】
図4は、図3のステップS15に示すキー画像を磁場中心とする同一スライス位置を含む撮像条件の設定の詳細な流れを示すフローチャートである。
【0097】
まずステップS20において、寝台駆動装置37Bが駆動し、被検体Pがセットされた天板37Aがガントリ内に移動する。そして、被検体Pの位置決め画像データが収集される。
【0098】
次に、ステップS21において、撮像条件設定部41の撮像位置取得部41Aは、過去のオブジェクトデータを参照し、位置決め画像データ及び位置決め画像データに設定された各スライスの位置を取得する。そして、撮像条件設定部41は、過去の位置決め画像データに設定された各スライスの位置を参照し、被検体Pの人体座標系に対して同一の複数のスライス位置を再検査用の撮像条件として設定する。
【0099】
次に、ステップS22において、撮像条件設定部41の関心画像特定部41Bは、過去のオブジェクトデータからキー画像のマーキング情報、スライス位置及び磁場中心からの距離を含むキー画像情報を取得し、撮像位置取得部41Aにおいて取得された複数のスライス位置のうちキー画像に対応する人体座標系におけるスライス位置を特定する。
【0100】
尚、関心画像特定部41Bが、オブジェクトデータではなくスライス画像データに付帯されているキー画像情報を取得するようにしてもよい。その場合、関心画像特定部41Bが、医用画像表示装置52において作成されたレポート情報を参照するようにすれば、レポート情報に貼られたキー画像データへのリンクを利用してキー画像データが保存されているアドレスを容易に取得することができる。このため、検索処理をスムーズに行うことができる。
【0101】
また、過去のオブジェクトデータ及び過去の複数のスライス画像データにキー画像情報が付帯されていない場合には、関心画像特定部41Bにより過去の複数のスライス画像データから関心のある単一又は複数のスライス画像データをキー画像データとして指定することができる。すなわち、入力装置33からキー画像の指定情報を関心画像特定部41Bに入力することによって、手動でキー画像データを指定することができる。或いは、過去のオブジェクトデータにベクトル情報として記録されているROIの設定情報に基づいて、関心画像特定部41Bが、ROIが設定されたスライス画像データを自動的にキー画像データとして指定するようにしてもよい。
【0102】
この場合、関心画像特定部41Bにより指定されたキー画像データのスライス位置が特定される。
【0103】
次に、ステップS23において、寝台位置設定部41Cは、被検体Pの向き及び体位に基づいて装置座標系における人体座標系の向きを設定する。上述したように装置座標系は、静磁場用磁石21の中心軸方向をz軸、静磁場用磁石21の中心軸と直交する水平方向をx軸、鉛直方向をy軸、原点(x, y, z)=(0, 0, 0)を磁場中心として設定することができる。
【0104】
従って、天板37Aのガントリ内への送り方向となる天板37Aの長手方向における被検体Pの向きに応じて、人体座標系における被検体Pの体軸方向Zbが装置座標系のz軸と同じ向きになる場合と互いに逆向きになる場合とがある。そこで、天板37Aの長手方向における被検体Pの向きに応じて装置座標系における体軸方向Zbの向きを表す正負の±の符号が決定される。
【0105】
また、被検体Pが仰向けかうつ伏せか或いは横向きかといった天板37Aにセットされる体位に応じて被検体Pのアキシャル方向、コロナル方向及びサジタル方向が代わることとなる。そこで、被検体Pの体位に応じてアキシャル方向、コロナル方向及びサジタル方向と装置座標系との相対的な向きの関係が決定される。
【0106】
例えば、天板37Aに被検体Pが横向きにセットされている場合には、サジタル断面に垂直なサジタル方向が装置座標系のy軸方向となり、コロナル断面に垂直なコロナル方向が装置座標系のx軸方向となる。このような座標系の設定により、天板37Aに対する被検体Pの向き及び体位に応じた天板37Aの位置の設定が可能となる。
【0107】
次に、ステップS24において、寝台位置設定部41Cは、スライス方向に対応する天板37Aの移動軸を設定する。すなわち、天板37Aの移動軸がキー画像及びスライスに垂直な方向に設定される。
【0108】
例えば、キー画像がサジタル断面像であり、天板37Aに仰向けにセットされた被検体Pに対して複数のサジタル断面がスライスとして設定されている場合には、キー画像の位置を磁場中心とするための天板37Aの移動方向が、被検体Pの左右方向となる。すなわち、天板37Aの移動方向が、天板37Aの長手方向に直交する水平方向となる。従って、天板37Aの移動軸は、装置座標系のx軸に設定される。
【0109】
一方、キー画像がコロナル断面像であり、天板37Aに仰向けにセットされた被検体Pに対して複数のコロナル断面がスライスとして設定されている場合には、キー画像の位置を磁場中心とするための天板37Aの移動方向が、天板37Aの上下方向となる。従って、天板37Aの移動軸は、装置座標系のy軸に設定される。
【0110】
或いは、キー画像がアキシャル断面像であり、天板37Aに仰向けにセットされた被検体Pに対して複数のアキシャル断面がスライスとして設定されている場合には、キー画像の位置を磁場中心とするための天板37Aの移動方向が、天板37Aの長手方向となる。従って、天板37Aの移動軸は、装置座標系のz軸に設定される。
【0111】
更に、キー画像がサジタル断面像であり複数のサジタル断面がスライスとして設定されている場合であっても、被検体Pが天板37Aに横向けにセットされていれば、キー画像の位置を磁場中心とするための天板37Aの移動方向が、上下方向となる。従って、天板37Aの移動軸は、装置座標系のy軸に設定される。
【0112】
同様に、被検体Pが天板37Aに横向けにセットされている場合に、キー画像及びスライスがコロナル断面であれば天板37Aの移動軸は装置座標系のx軸に、キー画像及びスライスがアキシャル断面であれば天板37Aの移動軸は装置座標系のz軸に、それぞれ設定される。
【0113】
このように天板37Aのガントリ内への送り方向となる装置座標系のz軸方向に限らず、天板37Aの上下方向となる装置座標系のy軸方向や天板37Aの長手方向に垂直な水平方向となる装置座標系のx軸方向に、天板37Aの移動軸を正負の符号を考慮して設定することができる。これにより、複数のスライス位置のスライス方向に応じて天板37Aの長手方向、上下方向又は長手方向と直交する水平方向における天板37Aの位置を設定することが可能となる。
【0114】
次に、ステップS25において、寝台位置設定部41Cは、キー画素のスライス位置が磁場中心に最も近い位置となるような装置座標系における天板37Aの位置を求める。天板37Aの位置は、キー画像に対応するスライス位置の磁場中心からの距離に基づいて求めることができる。
【0115】
キー画像に対応する複数のスライス位置が設定されている場合には、複数のスライス位置の中心や重心等の代表位置又は複数のスライス位置をカバーする範囲が磁場中心に最も近い位置となるように天板37Aの装置座標系における位置が求められる。また、キー画像に対応するスライス位置がオブリーク断面である場合のように天板37Aの可動方向を法線方向としない断面である場合には、キー画像に対応するスライス位置又は複数のスライス位置の代表位置が磁場中心を通る位置など磁場中心に最も近い位置となるように天板37Aの装置座標系における位置が求められる。
【0116】
まず、単一のキー画像に対応する単一のスライス位置を磁場中心とするための装置座標系における天板37Aの位置を求める場合を例に説明する。
【0117】
図5は、図4のステップS25において仰向けの被検体Pに対して設定されたアキシャル断面のキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板37Aの位置設定方法を説明する図である。
【0118】
図5(A)は、過去に設定された複数のスライス位置を示す図であり、図5(B)はキー画像のスライス位置が磁場中心となるように天板37Aが位置決めされた状態を示す図である。尚、以降の図に示す(A)及び(B)についても同様である。
【0119】
図5(A)に示すように、静磁場用磁石21の中心軸方向を装置座標系のz軸とし、磁場中心を装置座標系の原点z=0とすることができる。また、天板37Aのガントリ内への送り方向を正の方向とし、天板37Aをガントリ内から出す方向を負の方向とすることができる。
【0120】
図5(A)に示すように、過去の検査において体軸方向Zbを+z軸方向として仰向けにセットされた被検体Pに対してアキシャル方向の複数のスライス位置が設定された場合、通常はスライス位置の中心が磁場中心となるように天板37Aが位置決めされた状態でイメージングが実行される。このため、関心のあるキー画像のスライス位置が磁場中心になるとは限らない。
【0121】
そこで、図5(B)に示すように再検査では、キー画像のスライス位置が磁場中心になるように天板37Aの位置がz方向にシフトされる。例えば、過去の検査において複数のスライス位置が装置座標系の-5cm≦z≦+5cmの範囲でイメージングされ、キー画像のスライス位置がz=2cmであった場合には、キー画像のスライス位置がz=0となるように天板37Aの位置が設定される。
【0122】
今回の再検査においてイメージング対象となる複数のスライス位置の中心が磁場中心となるように天板37Aのデフォルト位置が一旦設定された場合には、装置座標系における被検体Pの位置は過去の検査における被検体Pの位置と同じになる。従って、z=2cmに位置するキー画像のスライス位置が磁場中心となるように天板37Aはz軸方向に-2cmだけ移動させた位置に設定される。
【0123】
一方、天板37Aのデフォルト位置が過去の検査における天板37Aの位置と異なる場合には、装置座標系における被検体Pの位置が過去の検査における被検体Pの位置と異なる。そこで、人体座標系と装置座標系との間の相対距離に応じて天板37Aの移動距離が計算される。
【0124】
例えば、人体座標系で過去と同一の位置に設定された複数のスライス位置が装置座標系において-4cm≦z≦+6cmの範囲となった場合には、キー画像のスライス位置がz=3cmに位置することとなる。従って、天板37Aのデフォルト位置ではz=3cmに位置するキー画像のスライス位置が磁場中心となるように、天板37Aはz軸方向に-3cmだけ移動させた位置に設定される。
【0125】
図6は、図4のステップS25において横向きの被検体Pに対して設定されたサジタル断面のキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板37Aの位置設定方法を説明する図である。
【0126】
図6(A)に示すように、鉛直方向を装置座標系のy軸、静磁場用磁石21の中心軸に直交する水平方向を装置座標系のx軸、磁場中心を装置座標系の原点(x, y)=(0, 0)とすることができる。
【0127】
図6(A)に示すように、過去の検査において横向きにセットされた被検体Pに対してサジタル方向の複数のスライス位置が設定された場合、関心のあるキー画像のスライス位置を磁場中心としてイメージングが実行されるとは限らない。
【0128】
そこで、図6(B)に示すように再検査では、キー画像のスライス位置が磁場中心になるように天板37Aを上下させて天板37Aのデフォルト位置をy方向にシフトさせた位置に設定することができる。
【0129】
次に、複数のキー画像に対応する複数のスライス位置を磁場中心とするための天板37Aの位置設定について説明する。
【0130】
図7は、図4のステップS25において被検体Pに対して設定されたアキシャル断面の複数のキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板37Aの第1の位置設定方法を説明する図である。
【0131】
図7(A)に示すように、複数のスライス位置のうち、複数のキー画像として指定された複数のスライス位置が、他のスライス位置を挟んで離れて設定された場合には、図7(B)に示すように複数のキー画像として指定された複数のスライス位置の中心位置が磁場中心となるように天板37Aの位置を設定することができる。
【0132】
尚、複数のキー画像のスライス位置が、他のスライス位置を挟まずに連続的に設定された場合においても、同様に両端のキー画像のスライス位置の中心位置が磁場中心となるように天板37Aを位置決めすることができる。
【0133】
図8は、図4のステップS25において被検体Pに対して設定されたアキシャル断面の複数のキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板37Aの第2の位置設定方法を説明する図である。
【0134】
図8(A)に示すように、複数のキー画像のスライス範囲が設定された場合には、図8(B)に示すように複数のキー画像のスライス範囲が全体として磁場中心となるように天板37Aを位置決めすることができる。そのため、FOVとは別に磁場中心から所定の範囲を磁場中心領域として定め、複数のキー画像のスライス範囲が磁場中心領域内となるように天板37Aを位置決めすることもできる。或いは、複数のキー画像のスライス範囲がFOV内となるように天板37Aを位置決めすることもできる。つまり、複数のスライス位置のうちキー画像として指定されたスライス範囲がFOV等の磁場中心から所定の範囲内となるように天板37Aの位置を設定することができる。
【0135】
また、寝台位置設定部41Cが、複数のキー画像のスライス範囲の中心位置や端部位置を自動検出し、自動検出した中心位置や端部位置が磁場中心となるように天板37Aを位置決めすることもできる。尚、複数のキー画像のスライス範囲の中心位置を磁場中心とする場合には、図7に示す例と同様に天板37Aが位置決めされる。
【0136】
図9は、図4のステップS25において被検体Pに対して設定されたアキシャル断面の複数のキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板37Aの第3の位置設定方法を説明する図である。
【0137】
図9(A)に示すように、複数のキー画像のスライス位置が設定された場合には、図9(B)に示すように複数のキー画像のスライス位置の中から指定されたスライス位置が磁場中心となるように天板37Aを位置決めすることができる。すなわち、複数のスライス位置のうち、キー画像として指定された複数のスライス位置から更に指定された単一のスライス位置が磁場中心となるように天板37Aの位置を設定することができる。
【0138】
磁場中心とするスライス位置は、寝台位置設定部41Cが、予め決定したアルゴリズムに従って自動的に決定するようにしても良いし、入力装置33から入力された指定情報に従って手動で寝台位置設定部41Cが特定するようにしてもよい。
【0139】
自動的に磁場中心とするスライス位置を決定するアルゴリズムの例としては、キー画像の数が奇数である場合には中央のキー画像のスライス位置を磁場中心とする一方、キー画像の数が偶数である場合には最も中心付近にある2つのスライス位置のいずれかを磁場中心とするというアルゴリズムが挙げられる。
【0140】
また、医用画像処理装置51等の医用機器群39において、予め複数のキー画像のスライス位置のうち磁場中心とすべきスライス位置を自動又は手動で指定しておくこともできる。この場合には、オブジェクトデータや診断画像データ等のDICOM規格のデータのタグ情報として磁場中心とするスライス位置を付帯させることができる。そして、寝台位置設定部41Cは、DICOM規格のデータのタグ情報を参照して、複数のキー画像のスライス位置のうち磁場中心とすべき1つのスライス位置を特定することができる。
【0141】
図10は、図4のステップS25においてstepping-table法による過去の撮像において設定されたキー画像のスライス位置を磁場中心とする場合における天板37Aの位置設定方法を説明する図である。
【0142】
stepping-table法により過去の撮像が行われた場合には、図10(A)に示すように、アキシャル断面の複数のスライス位置が異なるstation位置(station1, station2)に跨って設定される。また、複数のキー画像が設定された場合には、キー画像が異なるstation位置(station1, station2)に跨る場合もあり得る。図10(A)に示す例では、2つのstation位置(station1, station2)がオーバーラップして設定されており、5枚のキー画像のスライス位置が2つのstation位置(station1, station2)に跨って設定されている。
【0143】
そこで、図10(B)に示すように、少なくとも単一又は複数のキー画像に対応する単一又は複数のスライス位置が共通のstation位置において磁場中心となるように天板37Aを位置決めすることができる。この場合、共通のstation位置において全てのキー画像を収集することが可能となる。すなわち、天板37Aの移動を伴って過去に設定された複数のスライス位置のうち、天板37Aの互いに異なる複数の位置に跨ってキー画像として指定された複数のスライス位置が、天板37Aの共通の位置において設定できるように天板37Aの位置を設定することができる。
【0144】
このように同一の被検体Pに対して過去と同一の複数のスライス位置を設定し、かつ複数のスライス位置のうち指定されたスライス位置を代表する位置又は複数のスライス位置のうち指定されたスライス範囲を代表する位置が磁場中心となるように被検体Pをセットした寝台37の天板位置を設定することができる。
【0145】
上述のような天板37Aの位置の設定が完了すると、次に、ステップS26において、寝台位置設定部41Cは、キー画像のスライス位置が磁場中心となるように設定された天板37Aの位置の確認及び補正を行う。
【0146】
すなわち、キー画像のスライス位置が磁場中心となるように天板37Aの位置を設定した場合、キー画像以外のスライス位置が磁場中心から離れすぎる恐れがある。また、複数のキー画像の各スライス位置が磁場中心付近の範囲となるように天板37Aの位置を設定した場合には、キー画像以外のスライス位置のみならず、キー画像の一部のスライス位置が磁場中心から離れすぎる恐れもある。このような場合、設定された天板37Aの位置においてそのままイメージングを実行すると、磁場中心から離れたスライス位置に対応する画像の画質が劣化する可能性がある。
【0147】
そこで、寝台位置設定部41Cは、天板37Aの位置の設定後における複数のスライス位置を表示装置34に表示させる。このため、ユーザは複数のスライス位置の磁場中心からの距離を目視により確認することができる。
【0148】
更に、寝台位置設定部41Cは、天板37Aの位置の設定後における複数のスライス位置が磁場中心から所定の範囲内であるか否かを判定する。そして、天板37Aの位置の設定後における過去と同一の複数のスライス位置が磁場中心から所定の範囲内とならない場合には、寝台位置設定部41Cが過去と同一の複数のスライス位置が磁場中心から所定の範囲内とならないことを示す情報を提示する。例えば警告情報を表示装置34に表示させることができる。尚、判定処理の基準となる所定の範囲は、画質劣化に影響がないと考えられる経験的な範囲として予め決定しておくことができる。
【0149】
また、寝台位置設定部41Cは、警告情報とともに選択肢を表示装置34に表示させる。選択肢は、天板37Aの位置の設定後における複数のスライス位置が磁場中心から所定の範囲外となった場合に、ユーザが選択し得る任意の選択肢とすることができる。
【0150】
例えば、キー画像のスライス位置が磁場中心となるように設定した天板37Aの位置に天板37Aを移動させてイメージングを行うという第1の選択肢、複数のスライス位置が磁場中心から所定の範囲内となる範囲においてキー画像のスライス位置が磁場中心から最も近くなる天板37Aの位置に天板37Aを移動させてイメージングを行うという第2の選択肢、入力装置33から寝台位置設定部41Cに指示情報を入力して手動で天板37Aの位置の調整を行ってイメージングを行うという第3の選択肢、天板37Aのデフォルト位置において天板37Aを移動させずにイメージングを行うという第4の選択肢等の様々な選択肢を準備しておくことができる。
【0151】
また、キー画像として指定された複数のスライス位置から更に指定された単一のスライス位置が磁場中心となるように天板37Aの位置を設定した結果、キー画像として指定された複数のスライス位置が磁場中心から所定の範囲内とならない場合には、キー画像として指定された複数のスライス位置が磁場中心から所定の範囲内となるように天板37Aの位置を再設定するという選択肢を設けることもできる。
【0152】
そして、入力装置33から指示情報として選択肢の選択情報を寝台位置設定部41Cに入力することによって寝台位置設定部41Cにより天板37Aの制御位置の補正を行うことができる。すなわち、過去と同一の複数のスライス位置が磁場中心から所定の範囲内とならないことを示す情報に対して入力装置33から入力された指示情報に従って天板37Aの位置を再設定することができる。
【0153】
例えば入力装置33の操作によって第2の選択肢を選択すれば、イメージング対象となる全てのスライス位置について最適な位置に天板37Aを移動させてイメージングを行うことができる。具体例としては、磁場不均一性による画質の乱れの影響が許容できる磁場中心からの所定の範囲が磁場中心から±20cmである場合には、全てのスライス位置が磁場中心から±20cm以内となり、かつキー画像のスライス位置が磁場中心に最も近くなる天板37Aの位置が調整後の天板37Aの制御位置に設定される。
【0154】
次に、ステップS27において、磁場中心からキー画像のスライス位置までの距離、イメージング対象となる全てのスライス位置及び磁場不均一性による画質の乱れの影響が許容できる磁場中心から所定の距離に基づいて設定された天板37Aの適切な制御位置に天板37Aが移動される。
【0155】
すなわち、撮像条件設定部41は、天板37Aの制御位置を、シーケンスコントローラ31を通じて寝台駆動装置37Bに出力する。そうすると、寝台駆動装置37Bは、シーケンスコントローラ31から制御信号として入力された天板37Aの位置決め情報に従って天板37Aを制御位置に移動させる。これにより、キー画像のスライス位置を含む複数のスライス位置の磁場中心からの距離を考慮した適切な位置に天板37Aが位置決めされる。
【0156】
次に、図3のステップS16において、移動後の天板37Aの位置においてステップS4におけるイメージングと同様な流れで再イメージングが実行される。すなわち、寝台37の天板位置において被検体Pに対して設定された複数のスライス位置からMRデータが収集され、収集されたMRデータに基づいて複数のスライス位置に対応する画像データが生成される。これにより、再検査に対応するキー画像データを含むスライス画像データが収集され、表示装置34に表示及び画像データ記憶部46に保存することができる。
【0157】
次に、ステップS17において、ステップS5と同様に、再イメージング用の撮像条件の設定に用いられた位置決め画像データに各スライス位置を含む撮像条件、画像処理条件情報及びキー画像情報を付帯させたDICOM規格のオブジェクトデータが参照情報作成部43において生成される。
【0158】
次に、ステップS18において、ステップS6と同様に、通信部44は、再イメージングで収集されたスライス画像データのセット及び対応するオブジェクトデータをネットワーク40を介して医用画像サーバ50に送信する。
【0159】
次に、ステップS19において、磁気共鳴イメージング装置20の通信部44から送信された再検査に対応するスライス画像データ及びオブジェクトデータが医用画像サーバ50に保存される。そして、ユーザは、医用画像表示装置52や医用画像処理装置51等の医用機器を用いて医用画像サーバ50に保存された過去の検査に対応するスライス画像データ及び再検査で収集されたスライス画像データを表示させ、比較読影を行って診断レポートを作成することができる。
【0160】
この際、関心のあるキー画像データは、再検査において磁場中心から近い距離において収集されたNMR信号に基づいて生成されている。このため、良好な画質の画像として関心のあるキー画像を観察するこができる。
【0161】
更に、ステップS10からステップS19に示す同様な流れで繰り返しキー画像のスライス位置を磁場中心に近い位置に設定して再検査を実行することができる。この場合、一旦キー画像のスライス位置が確定した後は、常に良好な画質でキー画像データを収集及び表示させることが可能となる。
【0162】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、同一の被検体Pに設定された複数のスライス位置について繰り返しイメージングを行う場合に、関心のある画像として指定されたキー画像に対応するスライス位置が磁場中心に近くなるように自動的に天板37Aの位置を設定できるようにしたものである。
【0163】
このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、過去と同一の複数のスライス位置を設定して同一の被検体Pについて再検査を行う場合において、関心のある対象部位を含むスライス位置における画像データを、磁場中心又は磁場中心に近い位置において収集したNMR信号に基づいて生成することができる。この結果、特に関心のあるスライス画像データを良好な画質で収集しつつ、過去のマルチスライス画像データ群と比較可能なスライス画像データのセットを取得することができる。
【0164】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【0165】
例えば、上述した例では、同一の磁気共鳴イメージング装置20において繰返し撮像を行う場合について説明したが、他の磁気共鳴イメージング装置又はPET装置等の磁気共鳴イメージング装置以外の画像診断装置において過去に設定された複数のスライス位置と同一の複数のスライス位置を磁気共鳴イメージング装置20において設定することもできる。
【符号の説明】
【0166】
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイル
24 RFコイル
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
29 送信器
30 受信器
31 シーケンスコントローラ
32 コンピュータ
33 入力装置
34 表示装置
35 演算装置
36 記憶装置
37 寝台
37A 天板
37B 寝台駆動装置
39 医用機器群
40 ネットワーク
41 撮像条件設定部
41A 撮像位置取得部
41B 関心画像特定部
41C 寝台位置設定部
42 データ処理部
43 参照情報作成部
44 通信部
45 k空間データ記憶部
46 画像データ記憶部
49 医用情報管理システム
50 医用画像サーバ
51 医用画像処理装置
52 医用画像表示装置
53 画像診断装置
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の被検体に対して過去と同一の複数のスライス位置を設定し、かつ前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス位置を代表する位置又は前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス範囲を代表する位置が磁場中心となるように前記被検体をセットした寝台の天板位置を設定する撮像条件設定手段と、
前記寝台の天板位置において前記被検体に対して設定された前記複数のスライス位置から磁気共鳴データを収集し、収集した前記磁気共鳴データに基づいて前記複数のスライス位置に対応する画像データを生成するイメージング手段と、
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記撮像条件設定手段は、前記複数のスライス位置のうち、指定された複数のスライス位置の中心位置が磁場中心となるように前記天板位置を設定するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記撮像条件設定手段は、前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス範囲が前記磁場中心から所定の範囲内となるように前記天板位置を設定するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記撮像条件設定手段は、前記複数のスライス位置のうち、指定された複数のスライス位置から更に指定された単一のスライス位置が磁場中心となるように前記天板位置を設定するように構成される請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記撮像条件設定手段は、前記指定された複数のスライス位置が前記磁場中心から所定の範囲内とならない場合には、前記指定された複数のスライス位置が前記磁場中心から所定の範囲内となるように前記天板位置を再設定するように構成される請求項4記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記撮像条件設定手段は、ネットワークを介して受信した、医用画像データの通信規格の画像データに付帯する付帯情報として前記指定されたスライス位置又は前記指定されたスライス範囲を取得するように構成される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記撮像条件設定手段は、前記指定されたスライス位置を代表する位置又は前記指定されたスライス範囲を代表する位置の、前記磁場中心からの距離を前記付帯情報として更に取得し、取得した前記磁場中心からの距離に基づいて前記天板位置を設定するように構成される請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記撮像条件設定手段は、前記天板に対する前記被検体の向き及び体位に応じて前記天板位置を設定するように構成される請求項1乃至7のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記撮像条件設定手段は、前記複数のスライス位置のスライス方向に応じて前記天板の長手方向、上下方向又は長手方向と直交する水平方向における前記天板の位置を設定するように構成される請求項1乃至8のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記撮像条件設定手段は、前記天板位置の設定後における前記過去と同一の複数のスライス位置が前記磁場中心から所定の範囲内とならない場合には、前記過去と同一の複数のスライス位置が前記所定の範囲内とならないことを示す情報を提示するように構成される請求項1乃至9のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記撮像条件設定手段は、前記過去と同一の複数のスライス位置が前記所定の範囲内とならないことを示す情報に対して入力装置から入力された指示情報に従って前記天板位置を再設定するように構成される請求項10記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記撮像条件設定手段は、磁気共鳴イメージング装置以外の画像診断装置において過去に設定された複数のスライス位置と同一の複数のスライス位置を設定するように構成される請求項1乃至11のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記撮像条件設定手段は、前記天板の移動を伴って過去に設定された複数のスライス位置のうち、前記天板の互いに異なる複数の位置に跨って指定された複数のスライス位置が、前記天板の共通の位置において設定できるように前記天板位置を設定するように構成される請求項1乃至12のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
指定された被検体に対して過去に設定された複数のスライス位置を示す情報の送信要求を磁気共鳴イメージング装置から受け付ける送信要求受付手段と、
前記送信要求に対する応答として、前記複数のスライス位置を示す情報とともに、前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス位置を示す情報又は前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス範囲を示す情報を前記磁気共鳴イメージング装置に送信する送信手段と、
を備える医用システム。
【請求項15】
前記送信手段は、前記複数のスライス位置を示す情報並びに前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス位置を示す情報又は前記複数のスライス位置のうち指定されたスライス範囲を示す情報を付帯情報として位置決め画像データに付帯させた通信規格のデータを前記磁気共鳴イメージング装置に送信するように構成される請求項14記載の医用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−232111(P2012−232111A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87974(P2012−87974)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】