説明

磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造

【課題】磁気共鳴イメージング装置を用いた撮影に影響する電磁シールド性を良好にした磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造を提供すること。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置100を含む空間を電磁シールドするための電磁シールド構造200は、門形状の複数のフレーム221が内側に連続した空間を形成するフレーム集合体220と、複数のフレーム221に取り付けられ、可撓性及び透光性を有するシート状の電磁シールド部材250と、を備えている。複数のフレーム221は、床面310に設けられた導電性床材320との間に、この導電性床材320に当接する導電性部材228を介在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置を含む空間を電磁シールドするための磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(以下、「MRI装置」ともいう)を手術室内に置き、MRI装置を用いた撮影(以下、「MRI撮影」ともいう)を行いながら手術や治療等を行うという、術中MRI診断が知られている。例えば、頭部の腫瘍摘出手術等の手術においては、頭部定位固定具によって頭部を固定し、腫瘍の摘出手術等を行いながら、手術の進行や腫瘍の摘出状況を確認するために、術中MRI撮影が適宜行われる。
【0003】
通常、MRI撮影を行う場所は、電磁波を遮蔽するために、手術室全体をシールド工事するような大掛かりな工事と、大きな装置を入れるのに広い手術室が必要となる。したがって、術中MRI撮影を行う場合には、広い手術室にシールド工事を施してMRI装置を設置するか、MRI室を別途用意する必要があり、狭い手術室等にはMRI装置を設置することが困難であった。
【0004】
そこで、MRI撮影を行う時のみ、MRI装置と、当該MRI装置で診断される患者が横たわるベッドとを収容可能であって、垂直方向に折り畳み可能な蛇腹状の電磁波シールドカーテンと、この電磁波シールドカーテンを開閉するカーテン開閉手段と、平面視して矩形の電磁波シールドカーテンの下端部周縁に設けられて床面の電磁遮蔽材と電気的に接続された導電性のカーテン当接部材と、このカーテン当接部材と密着可能な形状に形成されて床面に敷設された導電性の床面当接部材と、を備え、MRI装置から発生する電磁波が漏洩するのを阻止する電磁シールド装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような電磁シールド構造は、狭い手術室にも設置でき、これにより術中MRI撮影が簡易な構成で実現可能となる。
【0005】
前記特許文献1の電磁シールド装置では、床面側のカーテン当接部材の下方に電磁石からなる下部シールド間隙解消手段を設けて、電磁波シールドカーテンの下端部の床面当接部材を磁気的に吸引してカーテン当接部材に密着させて、カーテン当接部材と床面当接部材との間に生じる撓み等を抑えて、電磁波シールドカーテンの下端部と床面側のカーテン当接部材との間の電気的な接続の信頼性を向上させている。
【0006】
その他、可動カーテンのカーテン本体に、床面上のロア部材に接触する接触帯部を設け、カーテン本体下縁からその接触帯部にかけて形成した扁平筒状袋に可動ウエイトを収容して、ロア部材と可動カーテンとの間の隙間の発生を防止して、所定の空間を仕切る間仕切り構造の電磁波シールド性能を向上させた電磁波シールド間仕切り構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−208214号公報
【特許文献2】特開2006−118260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の電磁シールド装置は、電磁石からなる下部シールド間隙解消手段によって電磁波シールドカーテンの下端部を磁気的に床面の床面当接部材に吸着しているため、MRI装置の画像に影響を及ぼす可能性があった。また、画像に影響を及ぼさないためには、MRI装置と電磁石との距離を離す必要があるため、電磁波シールドカーテンの囲う面積が広く必要になるという問題点が有った。
【0009】
また、特許文献2に記載の電磁波シールド間仕切り構造は、可動カーテンの下縁部に錘としての可動ウエイトを設けた場合、可動カーテンが移動したときに、床面の段差や凹凸等によって上下動するため、可動カーテンと床面とを確実に接触させることが困難であった。また、可動カーテンが上下動した際には、床面と床面に摺接する部材との摩擦によってカーテンが磨耗するため、磨耗性や耐久性が問題となっている。
【0010】
このような床面と可動カーテンとの間に、接触不良が生じると、電磁波シールド性能が低下するので、良好な画像が得られないと言う問題があった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、磁気共鳴イメージング装置を用いた撮影に影響する電磁シールド性を良好にした磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造は、磁気共鳴イメージング装置を含む空間を電磁シールドするための磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造であって、門形状の複数のフレームが内側に連続した空間を形成するように水平方向に並んで配置されると共に伸縮可能に連結されたフレーム集合体と、前記複数のフレームに取り付けられ、可撓性及び透光性を有するシート状の電磁シールド部材と、を備え、前記複数のフレームは、床面に設けられた導電性床材との間に、当該導電性床材に当接する導電性部材が介在されていることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、磁気共鳴イメージング装置を用いた撮影を行うために術者等の操作者がフレーム集合体を伸縮させる際には、フレーム集合体はほぼ真直ぐに伸縮する。そのフレーム集合体を伸縮させた際、複数のフレームは、床面に設けられた導電性床材との間に、この導電性床材に当接する導電性部材を介在していることによって、導電性床材が導電性床材上を摺接しながら移動する。このため、フレームと床面上の導電性床材との電気的接続は、フレーム集合体が移動しても常に接続されたアースの状態を維持することができるので、従来のシールドカーテンのみで床面に電気的に接続していた場合と比較して、電気的接続の安定性及び電磁シールド性を向上させることができる。
【0014】
また、前記導電性部材は、弾性部材からなることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、導電性部材は、弾性部材からなることによってばね性を備えているため、フレームの伸縮に伴って導電性床材を摺動した際に、その導電性床材の上面が凸凹状や段差状になっていたとしても、その段差をばね性で吸収して、導電性床材と導電性部材との電気的な接続状態、及び、電磁シールド性を常に維持することができる。
【0016】
また、前記導電性部材は、前記複数のフレームの下方に設置されると共に、前記複数のフレームに導通した状態に設置された導電性のカバー内に収納されていることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、導電性部材は、複数のフレームの下方に設置されると共に、複数のフレームに導通した状態に設置された導電性のカバー内に収納されていることによって、フレームが伸縮して移動した際にも、フレームの下方部位から離脱するのが抑制される。
【0018】
また、前記複数のフレームの内側面の下端部には、前記複数のフレームの内側に配置された電磁シールド部材の下端部が、前記複数のフレームの内側面よりも外側方向へ移動するのを規制する巻込み防止機構が設置されていることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、電磁シールド部材の下端部が、複数のフレームの内側面よりも外側方向へ移動するのを規制する巻込み防止機構が設置されていることによって、電磁シールド部材が導電性部材と導電性床材との間に入り込んで導通不良を起こしたり、伸縮移動するフレームの移動を邪魔したりするのを防止することができる。
【0020】
また、巻込み防止機構は、前記複数のフレームの内側面の下端部から前記導電性部材の内側面側に亘って配置された巻込み防止板を備え、前記巻込み防止板は、上下方向に調整可能に前記複数のフレームに設けられていることが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、前記巻込み防止板は、上下方向に調整可能に前記複数のフレームに設けられていることによって、床面の導電性床材の上面が傾いていたり、窪みや膨らんだ部位があった場合、その導電性床材の上面の形状に合わせて、巻込み防止板の高さを位置調整することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、磁気共鳴イメージング装置を用いた撮影に支障をきたす電磁シールド性を向上させて良好な画像が得られる磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造を提供することができる。その結果、手術室に高価なシールド工事を不要にすることができる。また、門形状で伸縮可能に連結されたフレーム集合体と、このフレーム集合体の内側に取り付けられた電磁シールド部材とは、伸縮移動させることができることによって、磁気共鳴イメージング装置以外に多目的手術室、あるいは、検査室として使用することが可能である。また、電磁シールド部材は、可撓性及び透光性を有するシート状の部材からなるので、磁気共鳴イメージング装置で撮影中に電磁シールド部材の外側からその内部にいる患者を視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造が適用された手術室の一例を示す外観図である。
【図2】電磁シールド構造の伸展状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】電磁シールド構造の収縮(折畳み)状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】電磁シールド構造の正面図であり、(a)は前面シールドカーテンで前面を覆った状態を示し、(b)は前面シールドカーテンを外した状態を示す。
【図5】トンネル状シールドカーテンの概略斜視図である。
【図6】トンネル状シールドカーテンの下側端部の構造を示す図であり、(a)は要部拡大概略、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図7】電磁シールド体の概略斜視図である。
【図8】フレーム集合体に取り付けられた蛇行抑制機構の伸展状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図9】フレーム集合体に取り付けられた蛇行抑制機構の収縮状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図10】蛇行抑制機構のアームの固定方法を説明するための平面図であり、(a)はアームが固定板を介して固定された状態を示す平面図、(b)は固定板の平面図である。
【図11】アームがガードローラに移動可能に係合される様子を示す図であり、(a)は(b)のB−B線に沿う横断面図、(b)は(a)のC−C線に沿う縦断面図である。
【図12】フレーム集合体に取り付けられた巻込み防止機構のフレーム内側から見た側面図であり、(a)は伸展状態を示し、(b)は収縮状態を示す。
【図13】巻込み防止機構及び導電性部材の設置状態を示す拡大図であり、(a)は図12(a)のD部の拡大図、(b)は(a)のF方向(後方)から見た図、(c)は(a)の上から見た図、(d)は図12(a)のE−E線に沿う断面図である。
【図14】フレームに取り付けられた巻込み防止板及び導電性部材の設置状態を示す図であり、(a)は後方から見た図、(b)は導電性部材の斜視図、(c)は中央側巻込み防止板の側面図、(d)は端部側巻込み防止板の側面図である。
【図15】筒状シールド部材の概略斜視図であり、(a)は本実施形態を示し、(b)は変形例を示す。
【図16】筒状シールド部材の使用方法を説明するための図であり、(a)は筒状シールド部材を使用する前の最前方側のフレームの開放面を部分的に示す概略斜視図、(b)は筒状シールド部材の使用状態を示す概略斜視図である。
【図17】筒状シールド部材を支持する第2フックの一例を示す図であり、(a)は、第2フックの設置状態を示すフレームの斜視図、(b)はフレームから第2フックを引出したときの状態を示す斜視図、(c)は筒状シールド部材を第2フックで支持しているときの状態を示す斜視図である。
【図18】電磁シールド構造における第1プランジャ機構の設置場所を説明するための側面図である。
【図19】第1プランジャ機構の詳細を示す一部を切り欠いた拡大図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のG−G線に沿う断面図である。
【図20】フレームに取り付けられた巻込み防止板及び導電性部材の第1変形例を示す図であり、(a)は後方から見た図、(b)は中央側巻込み防止板の側面図である。
【図21】(a)は導電性部材の第2変形例を示す要部拡大概略断面図であり、(b)は導電性部材のその他の変形例を示す要部拡大概略断面図である。
【図22】フレームに取り付けられた巻込み防止板及び導電性部材の第3変形例を示す図であり、(a)は後方から見た図、(b)は端部側巻込み防止板の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)100と、MRI装置用の電磁シールド構造200とが、例えば脳外科等の手術を行う手術室300に設置されている。MRI装置100は、所定の静磁場下に置かれた患者(被検者)の被撮像部位に、所定のパルスシーケンスでRFパルス、傾斜磁場を印加し、これによって発生したエコー信号を収集後処理して磁気共鳴画像を得るものである。
【0025】
図1に示すMRI装置100は、ここでは、側面視でコの字状に形成されたオープン型のMRI装置である。このMRI装置100は、患者の頭部等の被撮像部位が挿入されるガントリー開口部120が形成された本体部110を備えており、本体部110には、ガントリー開口部120を挟んで上下に対向する部位にそれぞれ磁石(図示せず)が設けられている。
【0026】
手術室300の床面310上におけるMRI装置100を含む所定の領域に、例えば、電磁波の反射損失が大きい銅合金板、非磁性ステンレス鋼板等の非磁性体の導電材料からなる導電性床板320が電磁シールド体210の下面から前方向に亘って延びて敷設されている。MRI撮影を行う場合には、患者を載せた手術台兼用のベッド(図示せず)が導電性床板320の長手方向(前後方向)に沿うように導電性床板320上に移動させられる。
【0027】
手術室300の壁330の内側が一部掘り込まれて凹部331が形成されており、この凹部331内には、ノイズフィルタ(図示せず)を有するフィルタボックス332が配置されている。フィルタボックス332は、MRI装置100の背面側に設けられており、外部からの電源や信号用のケーブル類は、フィルタボックス332を介してMRI装置100と接続される。なお、手術室300内におけるMRI装置100の設置位置は、壁際に限定されるものではなく、壁330から離間した位置であってもよい。
【0028】
電磁シールド構造200は、MRI装置100を含む所定の撮影空間を、電磁波から遮蔽(電磁シールド)するものである。この電磁シールド構造200は、MRI撮影を行うときに、後記するフレーム集合体220が導電性床板320上に伸展させられることによってMRI装置100とMRI撮影される患者が横たわるベッド(図示せず)とを収容可能となるように、全体としてベッドの長さ方向(前後方向)へ伸展状態とされる。なお、図1では、説明の都合上、電磁シールド部材250(図2参照)は、図示省略している。
【0029】
図2は、電磁シールド構造の伸展状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図3は、電磁シールド構造の収縮(折畳み)状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図4は、電磁シールド構造の正面図であり、(a)は前面シールドカーテンで前面を覆った状態を示し、(b)は前面シールドカーテンを外した状態を示す。
【0030】
図2〜図4に示すように、電磁シールド構造200は、MRI装置100を覆い、開口部210a(図1参照)を有する電磁シールド体210と、門形状の複数のフレーム221が内側に連続した空間222(図4(b)参照)を形成するように水平方向に並んで配置されると共に、前後方向に伸縮可能にX字状連結機構230により連結され、収縮時に電磁シールド体210の内部に収納可能なフレーム集合体220と、を有している。
【0031】
門形状のフレーム221は、例えばアルミニウム合金製の平角管を用いて形成される。フレーム221は、ここでは、水平部224及び一対の鉛直部225(図4参照)を構成する3つの平角管を接続部材226(図4参照)を介してねじ締結等により接続して門形状に形成されている。但し、フレーム221は、平角管を曲げ加工して形成されてもよい。空間222(図4(b)参照)は、MRI装置100及びベッド(図示せず)を収納するための収納部位である。
【0032】
X字状連結機構230は、一対のリンク部材231,232を中央部においてX字状に交差させると共に、その交差部を中央ピン233で軸支し、一対のX字状のリンク部材231,232を端部において上部ピン234及び下部ピン235で複数組連結することにより、前後方向へ伸縮自在に構成されている。そして、上部ピン234は、フレーム221の外側面に固定された凹溝部材236内に固定されており、一方、下部ピン235は、凹溝部材236内に上下方向に摺動可能に係合されている。なお、下部ピン235を凹溝部材236内に固定し、上部ピン234を凹溝部材236内に摺動可能に係合してもよい。凹溝部材236の素材として、例えばアルミニウム合金製の型材が使用される。
【0033】
複数のフレーム221の下部には、当該下部の下端面に床面310に敷設された導電性床板320(導電性床材)に当接する後記の導電性部材228(図13(b)、(d)参照)がそれぞれ配置され、当該下部の外側側面にそれぞれキャスタ223が取り付けられ、この下部の内側側面に後記する巻込み防止スライドパイプ271等が取り付けられている。
キャスタ223は、車輪223aと、車輪223aを回転可能に支持する支持部材223bとを備えており(図4(a)参照)、支持部材223bがフレーム221の下部の外側面にねじ締結等により固定される。
【0034】
また、複数のフレーム221のうちの伸展端側(最前方側)のフレーム221には、フレーム集合体220を伸縮させる際に術者等の操作者が掴持するための取っ手237が、左右に一対取り付けられている。一方、最後方側のフレーム221は、図示しない規制手段により移動が規制されている。
【0035】
電磁シールド構造200のフレーム集合体220に、フレーム集合体220が伸縮する際に当該フレーム集合体220の蛇行を抑制する後記の蛇行抑制機構260が取り付けられている。
【0036】
また、電磁シールド構造200は、複数のフレーム221内の空間222側に取り付けられ、可撓性及び透光性を有するシート状の電磁シールド部材250を有している。電磁シールド部材250は、MRI撮影を行う際の外部からの電磁波(ノイズ)を除去する役目と、MRI装置100から発生する電磁波が電磁シールド構造200外に漏洩してその周辺の周辺機器(図示せず)や人員等に影響を及ぼすのを防ぐ役目とを担っている。
【0037】
電磁シールド部材250の材料としては、例えば網状の繊維に銀等の非磁性体の導電材料をコーティングした透過シールド素材が使用され得る。図5及び図6(a)、(b)に示すように、電磁シールド部材250の下端は、導電性床板320上に接触するように、電磁シールド部材250と導電性床板320との導通を良好にするための床面接触部材257、及び、電磁シールド部材250を導電性床板320に押し付けるための錘258とが設けられて、電磁波のシールド性と、導電性床板320(導電性床材)との接触性とを確保できるようになっている。
【0038】
図2〜図5に示すように、電磁シールド部材250は、複数のフレーム221の内側にトンネル状に取り付けられるトンネル状シールドカーテン251(図2参照)と、複数のフレーム221のうちの最前方側のフレーム221の開放面を開放可能に閉止するための前面シールドカーテン252(図4(a)参照)と、を備えて、フレーム集合体220内に略蚊帳状(略テント状)に吊設されている。
【0039】
トンネル状シールドカーテン251は、例えば、各フレーム221の水平部224の下側全体に所定間隔を介して固定された取付金具(図示せず)に紐等で結び付けることによって取り付けられる。一方、前面シールドカーテン252は、この前面シールドカーテン252の上端部に連結されるフック(図示せず)が、複数のフレーム221のうちの最前方側のフレーム221の上側に位置する水平部224(図4(a)参照)の下面に固定されたカーテンレール(図示せず)に沿って水平方向に摺動可能に取り付けられることによって、電磁シールド部材250の前面部に開閉自在に配置されている。
【0040】
図5は、トンネル状シールドカーテンの概略斜視図である。図6は、トンネル状シールドカーテンの下側端部の構造を示す図であり、(a)は要部拡大概略、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
図5に示すように、トンネル状シールドカーテン251は、空間222(図4(b)参照)の上面及び側面に位置する覆い部253と、空間222の前面に位置する下方に開口したコの字状の補助部254と、トンネル状シールドカーテン251の周縁部に内設された錘258(図6参照)と、トンネル状シールドカーテン251の周縁部の下面に取り付けられた床面接触部材257と、から構成されている。補助部254は、前面シールドカーテン252(図4(a)参照)の上部及び左右両側部と重なるように形成されることによって、トンネル状シールドカーテン251と前面シールドカーテン252との隙間を埋めてシールド性を高める機能を有している。
【0041】
図6(a)、(b)に示すように、前記錘258は、トンネル状シールドカーテン251の周縁部と、前面シールドカーテン252(図4(a)参照)の下側周縁部との折り返し部分をそれぞれ二列に袋状に縫製された袋状部位251aにそれぞれ内設された一対の非磁性体の金属製鎖からなる。なお、錘258は、例えば、屈曲変形可能なゴム製や樹脂製の棒状部材等であっても構わない。
【0042】
前記床面接触部材257は、トンネル状シールドカーテン251の周縁部下面と、前面シールドカーテン252の下側周縁部下面とにそれぞれ設けられた帯状の導電性の高い薄板材からなる。床面接触部材257は、導電性床板320(導電性床材)と、これに接触するトンネル状シールドカーテン251及び前面シールドカーテン252接触面との導電性を良好にするための部材であり、弾性変形可能な導電性ゴム部材や導電性樹脂等からなる。
【0043】
図7は、電磁シールド体の概略斜視図である。
図7に示すように、電磁シールド体210は、例えばアルミニウム合金板等の非磁性体の導電材料から形成されており、門形状を呈している。電磁シールド体210の側面には、MRI装置100を用いて診断される患者の状態を観察し得る全面が開放された観察窓211が設けられている。このような構成によれば、診断中の患者の視認性が増すため、例えば患者の被撮像部位がずれていないか、患者モニタ用ケーブル(図示せず)が患者から外れていないか等、患者の状態を外から十分に観察しながら、MRI装置100を用いた良好な撮影が可能となる。観察窓211は、電磁シールド体210の左右両方の側面に開設されることが左右両方から観察できる観点から好ましい。但し、観察窓211は、電磁シールド体210の左右いずれかの側面に形成されていてもよい。
【0044】
電磁シールド体210の下端には、一対の帯板部材212が固定されている。一対の帯板部材212は、フレーム集合体220が収縮されて電磁シールド体210内に収納されるとき、及びフレーム集合体220が収縮状態から伸展されて電磁シールド体210内から外に出されるときに、帯板部材212の内側面によってキャスタ223(図4(a)、(b)参照)の移動をガイドする。
【0045】
図8は、フレーム集合体に取り付けられた蛇行抑制機構の伸展状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図9は、フレーム集合体に取り付けられた蛇行抑制機構の収縮状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。なお、図8(a)及び図9(a)では、フレーム集合体220のうちフレーム221の水平部224以外の部材は、理解を容易にするため図示省略している。図10は、蛇行抑制機構のアームの固定方法を説明するための平面図であり、(a)はアームが固定板を介して固定された状態を示す平面図、(b)は固定板の平面図である。図11は、アームがガードローラに移動可能に係合される様子を示す図であり、(a)は(b)のB−B線に沿う横断面図、(b)は(a)のC−C線に沿う縦断面図である。なお、図11(a)では、図面の上下方向がフレーム集合体220の伸縮方向となっている。
【0046】
図8及び図9に示すように、蛇行抑制機構260は、フレーム221の水平部224の上部に取り付けられた複数のガイドローラ(ガイド部材)261(図11(a)、(b)参照)と、複数のガイドローラ261の一部とフレーム集合体220の伸縮方向に移動可能にそれぞれ係合される複数のアーム262と、を備えている。これらの複数のアーム262は、フレーム集合体220の伸縮方向(前後方向)に沿って延在すると共に、前記伸縮方向と直交する水平方向(左右方向)に隣接して並んで配置される。
【0047】
各アーム262は、そのアーム262がガイドされるガイドローラ261が取り付けられたフレーム221と隣接するフレーム221に、固定板263を介して固定されている。但し、蛇行抑制機構260が伸展状態(図8(a)参照)にあるときに伸縮方向(前後方向)中央に位置するアーム262は、複数のフレーム221のうちの中央寄りに位置する2つのフレーム221の上部に取り付けられた複数のガイドローラ261に係合されていて、フレーム221には固定されていない。これにより、蛇行抑制機構260が収縮状態(図9(a)参照)にあるときに、全てのアーム262の伸縮方向の端部位置を一部突出すること無く揃えることが可能となる。なお、蛇行抑制機構260が伸展状態にあるときに伸縮方向(前後方向)中央に位置するアーム262の両端には、アーム262がガイドローラ261から脱落することを防止するためのストッパ板265が設けられている。
【0048】
図10に示すように、アーム262は、より具体的には、固定板263を介してベース板264上にねじ締結等により固定されており、ベース板264がフレーム221の水平部224上にねじ締結等により固定されている。なお、図10(a)において、ねじ締結部は図示省略している。図10(b)中の符号263aは、固定板263に形成されたねじ締結用の孔を示す。
【0049】
図11に示すように、アーム262の素材として、例えばアルミニウム合金製(導電性部材)のC型チャンネルが使用される。図11に示すアーム262の断面形状における開口端部262aが、ガイドローラ261の溝261a内に係合される。これにより、アーム262は、フレーム集合体220の伸縮方向に移動可能となっている。
【0050】
ガイドローラ261は、より具体的には、フレーム221の水平部224上に固定されたベース板264上に、ねじ部材266により回転自在に取り付けられている。なお、水平部224上には、ねじ部材266による締結用の部品との干渉を避けるための逃げ孔(図示せず)が形成される。
【0051】
このように、複数のアーム262は、フレーム集合体220の収縮時に隣り合う2つのアーム262の両側面が互いに対向するように並んで収縮し(図9参照)、フレーム集合体220の伸展時に部分的にずれるように移動して伸展する(図8参照)構成となっている。
【0052】
また、図4(b)に示すように、電磁シールド構造200は、フレーム集合体220の下部に設けられたキャスタ223の内側に位置されてフレーム集合体220に取り付けられ、電磁シールド部材250のトンネル状シールドカーテン251がキャスタ223に巻き込まれることを防止するための巻込み防止機構270(図12参照)をさらに有している。
【0053】
図12は、フレーム集合体に取り付けられた巻込み防止機構のフレーム内側から見た側面図であり、(a)は伸展状態を示し、(b)は収縮状態を示す。
図12(a)、(b)に示すように、巻込み防止機構270は、巻込み防止スライドパイプ271と、巻込み防止板272とを備えており、アルミニウム合金等の非磁性体の導電材料から形成されている。巻込み防止機構270は、各フレーム221の内側に配置された電磁シールド部材250の下端部が、フレーム221の内側面よりも外側方向へ移動するのを規制する防止装置であり、各フレーム221の内側面の下端部に設置されている(図14(a)参照)。
【0054】
巻込み防止スライドパイプ271は、径の異なる複数のパイプが入れ子式(振り出し式ともいう)に組み合わされて構成された伸縮可能なパイプであり、電磁シールド部材250のトンネル状シールドカーテン251とキャスタ223との間に介在する(図14(a)参照)。また、巻込み防止板272は、略矩形状の板であり、トンネル状シールドカーテン251とキャスタ223との間に介在する(図14(a)参照)。なお、図14(a)では巻込み防止スライドパイプ271の取付け用部材を図示省略している。
【0055】
図12(a)、(b)に示すように、巻込み防止スライドパイプ271の前端部及び後端部は、最前方側及び最後方側のフレーム221にそれぞれ固定されている。巻込み防止板272は、フレーム集合体220の伸縮方向(前後方向)中央寄りのフレーム221に固定される中央側巻込み防止板272a(図14(c)参照)と、前後方向両端のフレーム221に固定される端部側巻込み防止板272b(図14(d)参照)と、を備えている。
【0056】
図13は、巻込み防止機構及び導電性部材の設置状態を示す拡大図であり、(a)は図12(a)のD部の拡大図、(b)は(a)のF方向(後方)から見た図、(c)は(a)の上から見た図、(d)は図12(a)のE−E線に沿う断面図である。図14は、フレームに取り付けられた巻込み防止板及び導電性部材の設置状態を示す図であり、(a)は後方から見た図、(b)は導電性部材の斜視図、(c)は中央側巻込み防止板の側面図、(d)は端部側巻込み防止板の側面図である。但し、理解を容易にするため、図14(b)、(c)では巻込み防止スライドパイプ271、その取付け用部材、及び、キャスタ223を図示省略している。また、図13及び図14における内外で示す矢印は、それぞれ門形状のフレーム221の内側方向、外側方向を示す(図19でも同様)。
【0057】
図13(a)〜(c)に示すように、巻込み防止スライドパイプ271の軸方向(前後方向)両端に、平面視してL字状の取付け用ブラケット273がねじ部材274により固定されてなる。この取付け用ブラケット273は、端部側巻込み防止板272bを間に挟んでフレーム221の下部の内側面にねじ部材275により固定されている。
また、図13(d)に示すように、巻込み防止スライドパイプ271の中央寄りの部分は、中央側巻込み防止板272aに固定されたUボルト276の内側に受け入れられて抱持されている。
【0058】
図14(a)〜(d)に示すように、巻込み防止板272(272a,272b)には長孔272cが形成されている。巻込み防止板272は、ねじ部材275を長孔272cに挿通させてフレーム221の下部の内側面に形成された図示しないねじ孔にねじ込むことにより、フレーム221に固定される。長孔272cは上下方向に長く形成されているため、巻込み防止板272の上下方向位置を、電磁シールド部材250のトンネル状シールドカーテン251がキャスタ223に巻き込まれない位置に高さを調整することが可能となっている。また、巻込み防止板272の前後方向の長さは、トンネル状シールドカーテン251の外側への移動を確実に阻止する観点から、フレーム221の幅(前後方向の長さ)よりも大きく設定されている。
【0059】
図14(a)に示すように、このような巻込み防止機構270によれば、電磁シールド部材250(図5参照)のトンネル状シールドカーテン251は、下端部から上方に寄った部位が、フレーム221の鉛直部225の空間側の側面にカーテン支持板材277をねじ止めすることによって保持されている。トンネル状シールドカーテン251において、このカーテン支持板材277がある部位よりも下端側は、巻込み防止機構270によって巻込み防止板272よりも、導電性部材228やキャスタ223がある外側方向へ出ないように規制される。
これにより、トンネル状シールドカーテン251がキャスタ223や導電性部材228に巻き込まれて、フレーム集合体220を伸縮させる操作が困難あるいは不可能となったり、電磁シールド性に支障をきたしたりするという事態を防止できる。
【0060】
図13(a)〜(d)、図14(a)〜(d)に示す前記導電性部材228は、各フレーム221の下端面221bと導電性床板320(導電性床材)との間に介在されて、両者を電気的に接続する部材であり、例えば、上下方向に対してばね性を有する導電性の板ばね部材からなる。この導電性部材228は、フィンガーとも言われる部材であり、例えば、銅合金、非磁性ステンレス鋼等の導電性の良好な非磁性金属製部材や、導電性ゴム材や、導電性ゴム部材等であっても構わない。
【0061】
この導電性部材228は、略湾曲形状に形成されて導電性床板320に接触する摺接部228aと、この摺接部228aの両端部を対向する方向に水平に折曲形成してフレーム221の下端面221bに当接する当接部228b,228bと、左右の当接部228b,228b間に形成された切欠部228c(図14(b)参照)と、を有する非磁性の金属製板部材からなる。導電性部材228は、例えば、各フレーム221の下端面221bに、設定された適宜な間隔を介して配置された4つの部材からなる。
このように、フレーム221と導電性床材320との間に導電性部材228を介在して両者を電気的に接続したことにより、常に、フレーム221の下端面221bが導電性床材320と導通した状態であるため、従来のシールドカーテンのみで導電性床材320に電気的に接続していた場合と比較して、電気的接続の安定性及び電磁シールド性を向上させることができる。導電性部材228は、導電性床板320との接触箇所に複数設置されているため、導電性床板320の表面が凸凹していても、それぞれの導電性部材228が弾性変形してガタツキを吸収して、接触した状態を維持することができる。
【0062】
また、電磁シールド構造200は、MRI装置100を用いて診断される患者の状態をモニタする患者モニタ用ケーブルや酸素供給用チューブ等のチューブ状部材340(図16(b)参照)が電磁シールド部材250の内側から外側に引き出される境界部分を筒状に包囲して電磁シールドするための筒状シールド部材255(図15(a)参照)をさらに有している。
【0063】
図15は、筒状シールド部材の概略斜視図であり、(a)は本実施形態を示し、(b)は変形例を示す。図16は、筒状シールド部材の使用方法を説明するための図であり、(a)は筒状シールド部材を使用する前の最前方側のフレームの開放面を部分的に示す概略斜視図、(b)は筒状シールド部材の使用状態を示す概略斜視図である。図17は、筒状シールド部材を支持する第2フックの一例を示す図であり、(a)は、第2フックの設置状態を示すフレームの斜視図、(b)は、フレームから第2フックを引出したときの状態を示す斜視図、(c)は筒状シールド部材を第2フックで支持しているときの状態を示す斜視図である。
【0064】
図15(a)に示すように、筒状シールド部材255は、展開状態において略矩形形状を呈するシート状部255aと、シート状部255aの適宜の箇所に設けられた面ファスナ255b(ベルクロともいう)とを有している。シート状部255aの材料としては、例えば電磁シールド部材250と同じ材料が使用され得る。筒状シールド部材255の使用時に、展開状態のシート状部255aは、チューブ状部材340の周囲を巻くようにして筒状に形成され、面ファスナ255bにより結束されて筒状に保持される。
【0065】
なお、図15(b)に示すように、軸方向のヒンジライン256cに沿って開閉自在に結合された一対の半割れ円筒256a,256bを備え、最前方側のフレーム221の内側面にねじ締結等により固定される筒状シールド部材256が使用されてもよい。筒状シールド部材256の中には、電磁波をカットするためのフェライトコア(図示せず)が配置される。使用の際には、開閉式の筒状シールド部材256を開き、チューブ状部材340を入れてから閉じる。筒状シールド部材256は、一つのチューブ状部材340が挿通される内径を有するように形成されてもよいし、複数のチューブ状部材340が挿通可能な内径に形成されてもよい。
【0066】
図16(a)に示すように、最前方側のフレーム221の内側面には、筒状シールド部材255を引っ掛けて保持するためのフック227が、左右に一対で取り付けられている(図4参照)。また、最前方側のフレーム221の外側面には、面ファスナの構成部品である第1面部252aが、左右に一対で取り付けられている(左側は図示せず)。
【0067】
図16(b)に示すように、前面シールドカーテン252の背面側(後側)の左右両側端部には、第1面部252aに押し付けられると貼着可能であり面ファスナの構成部品である第2面部252bが複数設置されている。
【0068】
チューブ状部材340を筒状に包囲した筒状シールド部材255がフック227に引っ掛けられて保持されると、トンネル状シールドカーテン251のコの字状の補助部254が、筒状シールド部材255によって外側に押し潰されるようにして筒状シールド部材255の周囲に接触する。それから、前面シールドカーテン252が閉じられて最前方側のフレーム221の開放面が閉止される。このとき、術者等の操作者が前面シールドカーテン252の側端部を、筒状シールド部材255に巻き付けるようにして丸く形成することにより、筒状シールド部材255の周囲に接触させる。この状態で術者等の操作者が前面シールドカーテン252の内側に設置された第2面部252bを最前方側のフレーム221の外側面に設置された第1面部252aに押し付けて貼着させることによって、前面シールドカーテン252の閉止状態が確実になると共に、前面シールドカーテン252の側端部が筒状シールド部材255の周囲に接触した状態に保たれる。なお、チューブ状部材340を筒状に包囲した筒状シールド部材255は、左右一対のフック227のいずれに保持されてもよい。
【0069】
図17(a)〜(c)に示すように、前記した最前方側のフレーム221よりも後方側に配置された各フレーム221の内側面側には、チューブ状部材340を包んだ筒状シールド部材255を掛止する第2フック227Aが回動自在にそれぞれ取り付けられている。第2フック227Aは、例えば、前後方向から見て略L字状に折曲された板部材からなり、フレーム221の内側面側に穿設された上下方向に長い矩形のフック設置孔221aに、このフック設置孔221aの下縁部を中心として回動可能に出し入れ自在に軸支されている。第2フック227Aは、下端部に設けられフック設置孔221aの下縁部に傾動自在に軸支された軸支部227Aaと、上端部に形成されてL字状に折曲形成された掛止部227Abと、を有している。
【0070】
この第2フック227Aは、使用しない場合、図17(a)に示すように、フレーム221の内側面と面一にフック設置孔221aに合致させておく。第2フック227Aを使用する場合は、図17(b)に示すように、フレーム221から第2フック227Aを傾動させて引出して、図17(c)に示すように、第2フック227Aに筒状シールド部材255を掛止する。
【0071】
このようにして筒状シールド部材255を掛止することにより、チューブ状部材340が挿通する開口を介して電磁波が電磁シールド部材250の内側に入ることや、チューブ状部材340自体を通して電磁波が電磁シールド部材250の内側に入ることを防止できる。ここで、電磁シールド部材250を筒状シールド部材255の全周に接触させることができると共に、チューブ状部材340の延在方向における筒状シールド部材255の全長を長くできるため、電磁波の出入りをより確実に防止できる。したがって、電磁シールド部材250の内側から外側に引き出されるチューブ状部材340を、電磁シールド構造200のシールド性を損なわずに電磁シールド部材250の外側に設置された患者モニタ用機器等の各種機器(図示せず)に接続することができる。これにより、MRI装置100を用いた良好な撮影が可能となる。
【0072】
図18は、電磁シールド構造における第1プランジャ機構の設置場所を説明するための側面図である。図19は、第1プランジャ機構の詳細を示す一部を切り欠いた拡大図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のG−G線に沿う断面図である。
【0073】
また、図18に示すように、電磁シールド構造200は、フレーム集合体220の伸展方向の端部の位置LがMRI装置100(図1参照)により発生する磁場の強度が所定の磁束密度にあることを報知するための報知手段としての第1プランジャ機構280(図19(a)参照)をさらに有している。
【0074】
所定の磁束密度は、ここでは、WHO(世界保健機関)の「5ガウス以下ではいかなる生物学的影響も認められない」との知見に基づいて、5G(ガウス)(0.5mT)に設定されている。また、MRI装置のJIS個別規格では、立ち入り制限区域として、5G(ガウス)(0.5mT)が定義されている。但し、所定の磁束密度は、前記値に限定されるものではなく、例えば信頼できる別の基準に基づいて適宜設定され得る。
【0075】
第1プランジャ機構280は、前から数えて3番目及び5番目のフレーム221の外側面に固定された凹溝部材236にそれぞれ設置されている。但し、第1プランジャ機構280は、他のフレーム221の凹溝部材236に設けられてもよいし、設置個数も任意に設定可能である。
【0076】
図19(a)に示すように、第1プランジャ機構280は、ナット282により凹溝部材236の前後の少なくとも一方の面(図17では後面)に固定された一対のボールプランジャ283を備えている。ボールプランジャ283は、外面にねじ溝が形成された筒状体内の開口先端部に配置されたボール283aを筒状体内のばね部材で先端側に付勢した構造のものである。このボールプランジャ283は、先端が凹溝部材236の内壁面から突出するように配置されている。
【0077】
一方、図19(b)に示すように、リンク部材231,232を連結する下部ピン235は、リンク部材231,232にそれぞれ形成された貫通孔(図示せず)に挿通される軸部235bと、軸部235bの先端側に設けられリンク部材231,232の外側への抜けを防止するヘッド部235aと、軸部235bの基端側に設けられ凹溝部材236内に上下方向に摺動可能に係合される円柱部材235cとを有している。
【0078】
フレーム集合体220の伸縮にともなって下部ピン235が上下方向に移動し、下部ピン235の円柱部材235cが一対のボールプランジャ283の一方の先端に当接すると、このボールプランジャ283のボール283aがばね部材の付勢力に抗して後退する。このときフレーム集合体220を伸縮させる操作が適度に重くなる。円柱部材235cが一方のボールプランジャ283のボール283aを乗り越えると、円柱部材235cは一対のボールプランジャ283の先端部に配置された一対のボール283aの間に位置される。
【0079】
この状態でフレーム集合体220を伸縮させようとすると、一対のボールプランジャ283により下部ピン235の移動に抗する抵抗力が働き、フレーム集合体220を伸縮させる操作が適度に重くなるくため、フレーム集合体220が所定長さに伸展された状態で保持されることになる。本実施形態では、この状態においてフレーム集合体220の伸展方向の端部の位置Lが5Gラインとなるように、第1プランジャ機構280の上下方向の設置位置が設定されている。なお、下部ピン235を凹溝部材236内に固定し、上部ピン234を凹溝部材236内に摺動可能に係合した場合には、上部ピン234の移動に抗する抵抗力が働くように第1プランジャ機構280の上下方向の設置位置が設定されることは言うまでもない。
【0080】
また、電磁シールド構造200は、フレーム集合体220の伸展方向の端部の位置Lが最大伸展位置にある(フレーム集合体220が最大伸展状態にある)ことを報知するための第2プランジャ機構281(図18参照)をさらに有している。
なお、電磁シールド体210について、電磁シールド部材の素材自体の性能が低い場合には、金属製の電磁シールド体を設けることでシールド性能を補助しているが、電磁シールド体はなくてもよい。
【0081】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、前記実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。なお、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
【0082】
[第1変形例]
図20は、フレームに取り付けられた巻込み防止板及び導電性部材の第1変形例を示す図であり、(a)は後方から見た図、(b)は中央側巻込み防止板の側面図である。
前記実施形態では、導電性部材228の一例として、図14(a)に示すように、フレーム221の下端面と、床面310に敷設された導電性床板320(導電性床材)との間に直接介在した場合を説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、導電性部材228は、図20(a)、(b)に示すように、この導電性部材228と、フレーム221の下端面221bとの間にトンネル状シールドカーテン251を保持するカーテン支持板材277Aを介在しても構わない。
【0083】
この場合、カーテン支持板材277Aは、例えば、非磁性の導電性金属製平板材を折曲加工したものからなり、それぞれ後記する介在部277Aaと、固定部277Abと、突出部277Acと、カーテン保持部277Adと、カーテン抑板材277Aeと、を有して構成されている。
【0084】
介在部277Aaは、カーテン支持板材277Aの下端部を水平に折曲された部位であり、導電性部材228とフレーム221の下端面221bとの間に水平に介在されている。介在部277Aaは、導電性の両面テープ等よってフレーム221の下端面221bに固定されている。
固定部277Abは、その介在部277Aaに対して上方向へ垂直に折曲されて、フレーム221の内側側面にねじ止めされる部位である。この固定部277Abの空間222側には、前記実施形態で説明した巻込み防止板272がねじ止めされている。
【0085】
突出部277Acは、その固定部277Abからフレーム221の内部側に水平に折曲された部位である。突出部277Acは、カーテン支持板材277Aが突出部277Acの長さ分だけフレーム221から内側方向へ突出していることによって、トンネル状シールドカーテン251をフレーム221の鉛直部225から離間した位置に垂下状態に配置することができるため、トンネル状シールドカーテン251の巻込み防止効果がある。
【0086】
カーテン保持部277Adは、その突出部277Acから下方向に向けて折曲された部位であり、トンネル状シールドカーテン251を介在してカーテン抑板材277Aeが固定される。
カーテン抑板材277Aeは、カーテン保持部277Adに対向して配置されてねじ止めされる板部材である。
【0087】
[第2変形例]
図21は、(a)が導電性部材の第2変形例を示す要部拡大概略断面図であり、(b)が導電性部材のその他の変形例を示す要部拡大概略断面図である。
また、前記実施形態で説明した接続部材226は、図21(a)に示す導電性部材228Bのように、フレーム221の下端面221bに設けた接続部材226Bに固定したカバー229の内部に収納したものであっても構わない。
【0088】
この場合、中空状のフレーム221の下端面221bには、接続部材226Bがねじ部材275によって固定される。その接続部材226Bの下には、複数の導電性部材228Bを上下方向に弾性変形可能に収納したカバー229が固定されている。カバー229は、下面を摺動面とするボックス形状の部材であり、上面に形成された開口229aを有する。カバー229は、ベリリウム銅などの導電製の良好な金属によって中空状に形成された箱型の収納ケースであり、導電性床板320との接触面積を増加させて導通性を向上させることができると共に、摺動に対する耐久性も向上させることができる。
【0089】
導電性部材228Bは、前記実施形態で説明した導電性部材228と同様、上下方向にばね性有する大略C字形状の金属製板部材からなる。この導電性部材228Bは、上面が接続部材226Bの下面に圧接し、下面が導電性床板320(導電性床材)に圧接した状態に配置されて、アースの状態を維持すると共に、床面310の凹凸による浮き上がり等の変動に対応できるように、カバー229の開口229a内に挿入されている。
【0090】
このように、例えば、4個の導電性部材228Bは、カバー229に所定間隔でそれぞれ内設したことにより、各導電性部材228Bがフレーム221と共に移動しても、水平方向の動きが支持孔229bによって規制されてカバー229やフレーム221が一体的の動くようになる。このため、導電性部材228Bが摺動中にカバー229から離脱するのを防止して、アースの電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0091】
また、前記カバー229は、図21(b)に示すように、上面に前記支持孔229bがなく、下側だけ開口229Baを有するカバー229Bであっても構わない。このカバー229Bは、導電性の両面テープT等によってフレーム221に下端面221bに導通した状態に固定される。
【0092】
[第3変形例]
図22は、フレームに取り付けられた巻込み防止板及び導電性部材の第3変形例を示す図であり、(a)は後方から見た図、(b)は端部側巻込み防止板の側面図である。
前記導電性部材228は、図22(a)に示すように、上下方向にばね性を有する非磁性体製のばね部材からなる導電性部材228Cであっても構わない。
この場合、導電性部材228Cは、例えば、圧縮コイルばねからなり、上端部がフレーム221の下端面221bに当接し、下端部が巻込み防止板272Cと一体の受部272Caを介して導電性床板320(導電性床材)に接触している。
このように、導電性部材228Cは、導電性及びばね性を有するものであれば、適宜に形状を変更しても構わない。
【0093】
また、巻込み防止板272Cには、図22(a)、(b)に示すように、トンネル状シールドカーテン251の巻込み防止の役目と、トンネル状シールドカーテン251の下方部位を保持する役目とを果たす。巻込み防止板272Cには、この巻込み防止板272Cをフレーム221に固定するねじ部材275Cに対して、巻込み防止板272Cを上下方向に位置調整可能にする長孔272Ccと、前記受部272Caと、を有する正面視してL字状の厚板部材からなる。
【0094】
巻込み防止板272Cは、フレーム集合体220を伸縮移動させる場合、ねじ部材275Cを緩めて巻込み防止板272Cを上昇させれば、移動させ易くなり、フレーム集合体220を伸ばした状態で安定化させた場合、巻込み防止板272Cを下降させて導電性床板320(導電性床材)に圧接させればよい。
【0095】
[その他の変形例]
また、前記実施形態では、電磁シールド構造200は、オープン型のMRI装置に適用
されているが、トンネル型のMRI装置にも適用可能である。また、電磁シールド構造200の設置場所は、脳外科手術室に限定されるものではなく、他の手術室、MRI室等の各種の場所であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
100 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
200 電磁シールド構造
210 電磁シールド体
220 フレーム集合体
221 フレーム
228 導電性部材
229 カバー
250 電磁シールド部材
270 巻込み防止機構
272 巻込み防止板
310 床面
320 導電性床材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング装置を含む空間を電磁シールドするための磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造であって、
門形状の複数のフレームが内側に連続した空間を形成するように水平方向に並んで配置されると共に伸縮可能に連結されたフレーム集合体と、
前記複数のフレームに取り付けられ、可撓性及び透光性を有するシート状の電磁シールド部材と、を備え、
前記複数のフレームは、床面に設けられた導電性床材との間に、当該導電性床材に当接する導電性部材が介在されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造。
【請求項2】
前記導電性部材は、弾性部材からなることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造。
【請求項3】
前記導電性部材は、前記複数のフレームの下方に設置されると共に、前記複数のフレームに導通した状態に設置された導電性のカバー内に収納されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造。
【請求項4】
前記複数のフレームの内側面の下端部には、前記複数のフレームの内側に配置された電磁シールド部材の下端部が、前記複数のフレームの内側面よりも外側方向へ移動するのを規制する巻込み防止機構が設置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造。
【請求項5】
巻込み防止機構は、前記複数のフレームの内側面の下端部から前記導電性部材の内側面側に亘って配置された巻込み防止板を備え、
前記巻込み防止板は、上下方向に調整可能に前記複数のフレームに設けられていることを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置用の電磁シールド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−4821(P2013−4821A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135797(P2011−135797)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000141598)株式会社吉田製作所 (117)
【出願人】(390001339)光洋産業株式会社 (46)
【出願人】(391030686)株式会社協和興業 (6)
【Fターム(参考)】