説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】 熱シールドの支持負荷を軽減する。
【解決手段】 静磁場を発生する環状の超電導コイル11、12を冷媒と共に収納するコイル容器21、22と、コイル容器を包囲して設けられた熱シールド31、32と、熱シールドを包囲して設けられ内部が真空に保持された真空容器41、42と、真空容器を空間を空けて上下に対向させて支持するとともに上下の前記真空容器を相互に連結する連結管61、62と、上下の真空容器内に設置された磁場調整体83、84とを備えてなるMRI装置において、磁場調整体を支持部材81、82を介して各真空容器の上壁又は底壁に直接支持することにより、熱シールドの支持負荷を軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置)に係り、特に、開放型のMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開放型のMRI装置は、被検体が横臥される観測領域を挟んで一対の超電導コイルを上下に配置し、上下一対の超電導コイル間を例えば2本の支柱で支持することにより、観測領域を広く開放して、被検体に閉塞感を与えない構造になっている。
【0003】
すなわち、超電導コイルを冷媒が封入された円環状のコイル容器に収納し、そのコイル容器を円環状の熱シールドにより包囲し、さらに円筒状の真空容器に収納して構成されるライオスタットを、観測領域を挟んで上下に対向させて配置し、上下のクライオスタットを例えば2本の連結管で連結して構成している。連結管内に、上下のコイル容器を連結する冷媒管と、その冷媒管を包囲して上下の熱シールドを連結する熱シールド管を配置している。また、観測領域に傾斜磁場を印加するための傾斜磁場コイル(以下、GCと省略する。)が、上下の真空容器に支持させてそれぞれ設けられている。さらに、観測領域に形成される静磁場の均一性を調整するために、上下の真空容器の内部に磁性体(一般に、鉄)からなる磁場調整体が配置される。
【0004】
このように構成されるMRI装置においては、静磁場の均一性を保持するとともに、静磁場の変動を抑制して、計測されるMR画像に悪影響を与えないようにするため、上下の超電導コイルの相対位置を保持することが重要である。そのため、クライオスタットを構成するコイル容器、熱シールド及び真空容器の支持関係を健全に保ち、かつ、高い断熱性能を有した支持を実現することが肝要である。
【0005】
そこで、特許文献1では、静磁場発生源である相対向する永久磁石が取り付けられた一対のベース継鉄相互間の支持を補強して、一対の永久磁石が対向する開口部ギャップを固定することにより、一対の永久磁石の相対位置を保持することが提案されている。これにより、特に、輸送時等の変形を抑制することができるとしている。
【0006】
また、特許文献2には、超電導コイルが収納された冷却容器を3本の支持棒で真空容器の内壁に支持させ、冷却容器の支持系の支持剛性のバランスを取ることで、外部加振に対してほぼ同じ振動をするようにして、静磁場の変動を抑制することが提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−325743号公報
【特許文献2】特開2002−159466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、GCにはパルス状の電流が流され、かつ静磁場中に設置されているため、GCの導体にパルス電流に応じたローレンツ力が作用して、GCに振動を誘発する。このGCの振動が支持部材等を介して静磁場発生源である超電導コイルに伝達して、超電導コイルが例えばミクロンオーダーで振動すると、静磁場が時間的に変動するからMR画像に悪影響を与える。
【0009】
そこで、GCの振動が超電導コイルが収容されたコイル容器に伝わり難くするため、コイル容器を熱シールドを介して真空容器に支持させるとともに、GCを独立して真空容器に支持させることが行われている。さらに、特願2003−376367号に、上下のコイル容器及び熱シールドのうち、下のコイル容器を熱シールドを介して下の(床側の)真空容器にのみ固定し、上のコイル容器と熱シールドは上の真空容器に対して自由状態とすることにより、真空容器に支持されたGCの振動が超伝導コイルに伝わり難くした構造が提案されている。
【0010】
しかし、従来、磁場調整体を熱シールドに支持させて設けていることから、輸送等において装置が衝撃を受けると、熱シールドに過大な負荷がかかるという問題がある。特に、真空容器に対して自由状態に保持された上の熱シールドに曲げや軸力で過大な負荷がかかる。このような問題について、特許文献1、2では、何ら考慮されていない。
【0011】
そこで、本発明は、熱シールドの支持負荷を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明は、静磁場を発生する環状の超電導コイルを冷媒と共に収納するコイル容器と、該コイル容器を包囲して設けられた熱シールドと、前記熱シールドを包囲して設けられ内部が真空に保持された真空容器と、前記真空容器を空間を空けて上下に対向させて支持するとともに上下の前記真空容器を相互に連結する連結管と、上下の前記真空容器内に設置された磁性体からなる磁場調整体とを備えてなるMRI装置において、前記磁場調整体を支持部材を介して前記各真空容器の上壁又は底壁に支持することを特徴とする。つまり、磁場調整体を真空容器に直接支持することにより、熱シールドの支持負荷を軽減することを特徴とする。これにより、熱シールドを軽量化でき、GCの振動による超電導コイル、コイル容器及び熱シールドの応答変位を改善して、誤差磁場を低減できる。
【0013】
この場合において、磁場調整体を支持する支持部材は、断熱性及び減衰性の少なくとも一方を有することが好ましい。断熱性を有する場合は、支持部材を介して真空容器から放熱される熱量を低減できるから、コイル容器の冷媒を冷却する冷凍機の負荷の増大を抑えることができる。また、減衰性を有する場合は、真空容器から磁場調整体に伝わる振動を減衰させて、磁場均一度の変動を抑えることができる。
【0014】
また、本発明は、静磁場を発生する環状の超電導コイルと、該超電導コイルを冷媒と共に収納するコイル容器と、該コイル容器を包囲して設けられた熱シールドと、前記熱シールドを包囲して設けられ内部が真空に保持された真空容器と、前記真空容器を空間を空けて上下に対向させて支持するとともに上下の前記真空容器を相互に連結する連結管と、上下の前記コイル容器を連結して前記連結管内に設けられた冷媒管と、上下の熱シールドを連結するとともに前記冷媒管を包囲して前記連結管内に設けられた熱シールド管と、上下の前記真空容器の対向面の内側にそれぞれ配置された傾斜磁場コイルと、上下の前記真空容器内に設置された磁性体からなる磁場調整体とを備えてなるMRI装置に適用できる。
【0015】
この場合、上の前記真空容器内に設けられた前記磁場調整体を第1の支持部材を介して上の前記熱シールドに支持し、下の前記真空容器内に設けられた前記磁場調整体を第2の支持部材を介して下の前記真空容器の底壁に支持して構成することができる。
【0016】
また、これに代えて、磁場調整体を第1の支持部材を介して各真空容器の上壁又は底壁に支持するとともに、傾斜磁場コイルを第2の支持部材を介して磁場調整体に支持して構成することができる。この場合は、傾斜磁場コイルを、真空容器の上壁又は底壁から浮かして配置することができ、これにより真空容器に直接伝達する傾斜磁場コイルの振動を低減できる。特に、第1と第2の支持部材は、断熱性及び減衰性の少なくとも一方を有するものとすることにより、振動及び冷凍機負荷の増大を抑制できる。
【0017】
また、傾斜磁場コイルと磁場調整体が設置された空間と熱シールドとの間に隔壁を設け、傾斜磁場コイルと磁場調整体が設置された空間の真空度を真空容器内の真空度よりも低くして構成することができる。
【0018】
上述したように、本発明によれば、熱シールドの負荷荷重を軽減できるから、輸送等の衝撃に対する熱シールド自体の強度及び支持力を低減できる。その結果、熱シールド支持構造からの熱侵入量を軽減でき、冷凍機の負荷の増加を抑制できるだけでなく、GCの振動による超電導コイルの応答変位を改善して、誤差磁場を低減できる。
【0019】
また、上下のコイル容器はそれぞれ上下の熱シールドに支持され、上下の熱シールドの連結体は、下の真空容器の底壁に支持された構成の場合、つまり、下の熱シールドのみで超伝導コイルとコイル容器と熱シールドからなる連結体を下の真空容器の底壁に固定した構造とすることができる。これによれば、GCの振動が超電導コイルに伝わり難い支持構造となる。この場合は、輸送等の衝撃を受けた際に、衝撃力により大きく変形し、熱シールド支持に曲げや軸力で過大な荷重負荷が生じ、熱シールド支持が損傷してしまうおそれがあるが、本発明によれば、磁場調整体を真空容器に直接支持させたことにより、熱シールドに加わる負荷荷重を軽減できるので、輸送等の衝撃を受けた際の損傷発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、GCの振動が超電導コイルに伝わり難い支持構造を採用しても、輸送等の衝撃に起因する熱シールドの支持負荷を軽減して、損傷発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。まず、本発明が適用可能なMRI装置の概要構成を図6に示す。図示のように、MRI装置は、超電導コイル(図示せず)、該超電導コイルを冷媒と共に収納するコイル容器(図示せず)、該コイル容器を包囲し、且つ内部が真空に保持された真空容器41、42と、上下のコイル容器間の冷媒を連結するように撮像空間99を挟んで配置された連結管61、62と、前記冷媒を冷却する冷凍機50からなる超電導磁石装置80と、被検体を乗せるベッド98と、被検体からの核磁気共鳴信号を解析する制御装置100とから構成され、真空容器41、42を相互に離間して相対向するように配置すると共に、両真空容器41、42間に垂直に磁場空間を形成し、ベッド98に乗った被検体に対して断層撮影を行うものである。以下に、本発明が適用されたMRI装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0022】
図1に、本発明の実施例1を示す。図示のように、本実施例は、静磁場を発生する環状の上下一対の超電導コイル11、12と、超電導コイル11、12を冷媒19と共に収納する円環状の上下一対のコイル容器21、22と、コイル容器21、22を包囲して設けられた円環状の上下一対の熱シールド31、32と、熱シールド31、32を包囲して設けられ内部が真空に保持された円筒状の上下一対の真空容器41、42とにより、上下一対のクライオスタット51、52が構成されている。
【0023】
このように構成されるクライオスタット51、52は、複数(図示例では2本)の連結管61、62により上下の真空容器41、42を空間を空けて対向させて支持される。また、連結管61、62は、上下の真空容器41、42を相互に連結するとともに、上下のコイル容器21、22を連結する冷媒管と、上下の熱シールド31、32を連結する熱シールド管が挿通されるようになっている。
【0024】
コイル容器21、22は、複数の垂直方向の支持部材71、72を介して、また、複数の横方向の支持部材73、74を介して熱シールド31、32の内壁に支持されている。熱シールド31、32の連結体は、下の真空容器42の底壁においてのみ支持されている。つまり、下の熱シールド32を複数の垂直方向の支持部材75を介して、また、複数の横方向の支持部材76を介して、真空容器42の底壁に支持されている。これらの支持部材71、72、73、74、75、76は、熱伝導率の小さい非磁性の材料、例えば、ガラス繊維補強エポキシ樹脂などの繊維補強合成樹脂材料で形成されている。
【0025】
また、上下の真空容器41、42が対向する面の内側に、上下一対の傾斜磁場コイル(GC)101、102が取り付けられている。一対の熱シールド31、32の空心部に磁性体(例えば、鉄)からなる上下一対の磁場調整体83、84が設けられている。磁場調整体83は複数の支持部材81を介して真空容器41の上壁に支持されている。また、磁場調整体84は複数の支持部材82を介して真空容器42の底壁に支持されている。
【0026】
このように構成されることから、本実施例によれば、磁場調整体83、84を真空容器41、42に直接支持していることから、熱シールド31、32の支持負荷を軽減することができる。これにより、熱シールド31、32を軽量化でき、GCの振動による超電導コイル、コイル容器及び熱シールドの応答変位を改善して、誤差磁場を低減できる。さらに、常温である磁場調整体83、84を、冷却が施された熱シールド31、32から支持を切り離したから、熱侵入量を減少させて、冷凍機の負荷を低減できる。
【0027】
特に、熱シールド31、32の負荷荷重を軽減できるから、輸送等の衝撃に対する熱シールド自体の強度及び支持力を低減できる。その結果、支持部材75、76からなる熱シールド支持構造を軽量化できるから、それらの支持構造からの熱侵入量を低減でき、冷凍機の負荷の増加を抑制できるだけでなく、GCの振動による超電導コイルの応答変位を改善して、誤差磁場を低減できる。
【0028】
また、熱シールド31、32の負荷荷重を軽減できるから、下の熱シールドのみで超伝導コイル11、12とコイル容器21、22と熱シールド31、32からなる連結体を、下(床側)の真空容器42の底壁に固定する構造を採用できる。また、この場合は、輸送等の衝撃を受けた際に、衝撃力により大きく変形し、熱シールド支持に曲げや軸力で過大な荷重負荷が生じが、熱シールドに加わる負荷荷重が軽減されているので、輸送等の衝撃を受けた際の損傷発生を抑制できる。
【0029】
本実施例において、磁場調整体83、84を支持する支持部材81、82は、非磁性の金属材料(例えば、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、真鍮など)を用いることができる。これによれば、剛性が高いから、GCの振動に伴う磁場調整体83、84の振動を抑制できる。また、製作性に優れるから、支持強度に応じて種々の形状に対応できる。
【0030】
また、支持部材81、82は、非磁性の繊維補強合成樹脂材料FRP(例えば、CFRP、AFRP、GFRPなど)を用いることが好ましい。これによれば、軽量で、かつ剛性が高いから、GCの振動に伴う磁場調整体83、84の振動を抑制できる。特に、FRPは断熱性を有するから、支持部材FRPを介して真空容器41、42からの熱侵入を低減できる。また、室温変化が生じた際にも、磁場均一度に悪影響を与える磁場調整体83、84の熱膨張による形状変化を最低限に留めることができ、室温変化が生じた場合でも磁場均一度の安定効果が望める。
【0031】
さらに、支持部材81、82は、減衰性を有するゴム(例えば、天然ゴム、磯プレンゴムなど)を用いることができる。これによれば、真空容器41、42から伝動される振動を減衰させて、磁場均一度の変動を抑えることができる。また、ある程度の断熱性を確保できる。また、支持部材81、82に減衰性能を持たせることで、真空容器41、42に外部振動が生じた際にも、磁場均一度に悪影響を与える磁場調整体83、84の振動変位による位置変化を最低限に留めることができ、磁場均一度の安定効果が望める。
【実施例2】
【0032】
図2に本発明の実施例2を示す。本実施例が、実施例1と相違する点は、上側の磁場調整体83を、支持部材85を介して熱シールド31の内側の側面に支持させたことにある。その他は、実施例1と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。なお、支持部材85の材料は、実施例1と同様に、非磁性の金属、FRP又はゴムを用いることができる。
【0033】
本実施例によれば、拘束端に近い床側の磁場調整体84のみ床側の真空容器42に支持部材82により支持し、拘束端から遠く揺れが比較的大きい上側の真空容器41では、磁場調整体83を熱シールド31に支持部材85によって支持することで、GCの振動による磁場均一度に直結する磁場調整体83の振動と、超伝導コイル11の振動との差を小さくすることができる。また、熱シールド31、32の連結体の負荷質量の低減効果も期待できる。
【実施例3】
【0034】
図3に、本発明の実施例3を示す。本実施例が、実施例1と相違する点は、GC101及びGC102を真空容器41、42の対向面の内面から浮かせ、支持部材90、91を介して磁場調整体83、84にそれぞれ支持させたことにある。その他は、実施例1と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。なお、支持部材90、91の材料は、実施例1と同様に、非磁性の金属、FRP又はゴムを用いることができる。また、支持部材81、82と支持部材90、91の材料を変えて、適宜組み合わせることができる。
【0035】
本実施例によれば、真空容器41、42に直接伝達するGC101及びGC102の振動を低減できる。特に、実施例1の効果に加えて、GC101及びGC102を磁場調整体83、84に支持させることにより、GC101及びGC102を真空容器41、42の内部に格納できる。そして、十分な剛性を有した磁場調整体83、84に抱き合わせることが可能となり、GC101及びGC102を真空中でもしっかりと固定できる。特に、被検体の入る観測領域の赤道面側の真空容器からの放射による騒音低減も期待できる。また、更に赤道面側の真空容器にはGC101及びGC102を支持する必要がなくなるため、板厚を薄くでき、質量を減らすことも可能となる。その結果、開放型MRI装置に重要な赤道面側の真空容器間のスペースを広く取ることができ、被検体に対する寸法制限が緩くなるという効果がある。
【実施例4】
【0036】
図4に、本発明の実施例4を示す。本実施例が実施例3と異なる点は、GC101及びGC102と磁場調整体83、84が設置された空間103、104と、熱シールド31、32との間に隔壁88、89を設け、空間103、104の真空度を真空容器41、42内の真空度よりも低くしたことにある。その他は、実施例3と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
本実施例によれば、GC101及びGC102、磁場調整体83、84、支持部材81、82と支持部材90、91と、超電導コイル11、12及び熱シールド31、32とを、別々の真空容器に格納することになる。したがって、空間103、104の真空度は、GCの振動の遮音効果や室温変化の影響を磁場調整体83、84に急激に与えない程度で十分である。その結果、実施例3の効果に加えて、空間103、104の真空シール部の小型軽量化や、真空容器の熱シールドに対する内表面積減少による熱進入量削減効果が得られる。これにより、冷凍機負荷も低減でき、製作性向上による磁場均一度の向上効果が期待できる。
【0038】
なお、支持部材81、82と支持部材90、91の材料は、実施例1と同様に、非磁性の金属、FRP又はゴムを用いることができる。また、支持部材81、82と支持部材90、91の材料を変えて、適宜組み合わせることができる。
【実施例5】
【0039】
図5に、本発明の実施例5を示す。本実施例が、実施例4と異なる点は、GC101及びGC102を実施例1と同様に真空容器41、42に取り付けたことにある。その他は、実施例4と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、磁場調整体及びその支持部材を超電導コイルや熱シールドとを別々の容器に格納しているから、空間103、104の真空度は、GCの振動の遮音効果や室温変化の影響を磁場調整体83、84に急激に与えない程度で十分である。その結果、実施例1の効果に加えて、空間103、104の真空シール部の小型軽量化や、真空容器の熱シールドに対する内表面積減少による熱進入量削減効果が得られる。これにより、冷凍機負荷も低減でき、製作性向上による磁場均一度の向上効果が期待できる。
【0041】
以上説明した実施例1〜5では、磁場調整体を真空容器に直接固定し、磁場調整体を常温とし、室温変化が生じた場合にも真空容器との間に時間変化がなだらかな断熱支持とすることで、温度変化による磁場調整体の形状変化を最小に抑え、磁場均一度への影響を考慮しつつ、熱シールドの付加質量を低減できる。その結果、熱シールドの剛性も小さくてすみ、熱シールドの必要板厚減少及び熱シールド支持の小型軽量化による質量低減も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の磁気共鳴イメージング装置の実施例1の断面図である。
【図2】本発明の磁気共鳴イメージング装置の実施例2の断面図である。
【図3】本発明の磁気共鳴イメージング装置の実施例3の断面図である。
【図4】本発明の磁気共鳴イメージング装置の実施例4の断面図である。
【図5】本発明の磁気共鳴イメージング装置の実施例5の断面図である。
【図6】本発明が適用可能な磁気共鳴イメージング装置の一例の斜視外観図である。
【符号の説明】
【0043】
11、12 超電導コイル
19 冷媒
21、22 コイル容器
31、32 熱シールド
41、42 真空容器
51、52 クライオスタット
61、62 連結管
71、72、73、74 支持部材
75、76 支持部材
81、82、85 支持部材
83、84 磁場調整体
90、91 支持部材
101、102 傾斜磁場コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場を発生する環状の超電導コイルを冷媒と共に収納するコイル容器と、該コイル容器を包囲して設けられた熱シールドと、前記熱シールドを包囲して設けられ内部が真空に保持された真空容器と、前記真空容器を空間を空けて上下に対向させて支持するとともに上下の前記真空容器を相互に連結する連結管と、上下の前記真空容器内に設置された磁性体からなる磁場調整体と、前記磁場調整体を前記各真空容器の上壁又は底壁に支持する支持部材とを備えてなる磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記支持部材は、断熱性及び減衰性の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記コイル容器を包囲して前記真空容器内に設けられた熱シールドを備え、前記磁場調整体が設置された空間と前記熱シールドとの間に隔壁を設け、前記磁場調整体が設置された空間の真空度を前記真空容器内の真空度よりも低くしたことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記磁場調整体が設置された空間に傾斜磁場コイルが設置されてなることを特徴とする請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
静磁場を発生する環状の超電導コイルと、該超電導コイルを冷媒と共に収納するコイル容器と、該コイル容器を包囲して設けられた熱シールドと、前記熱シールドを包囲して設けられ内部が真空に保持された真空容器と、前記真空容器を空間を空けて上下に対向させて支持するとともに上下の前記真空容器を相互に連結する連結管と、上下の前記コイル容器を連結して前記連結管内に設けられた冷媒管と、上下の熱シールドを連結するとともに前記冷媒管を包囲して前記連結管内に設けられた熱シールド管と、上下の前記真空容器の対向面の内側にそれぞれ配置された傾斜磁場コイルと、上下の前記真空容器内に設置された磁性体からなる磁場調整体とを備え、上の前記真空容器内に設けられた前記磁場調整体を第1の支持部材を介して上の前記熱シールドに支持し、下の前記真空容器内に設けられた前記磁場調整体を第2の支持部材を介して下の前記真空容器の底壁に支持してなる磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
上下の前記コイル容器はそれぞれ上下の前記熱シールドに支持され、上下の前記熱シールドの連結体は、下の前記真空容器の底壁に支持されてなることを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記第1と第2の支持部材は、断熱性及び減衰性の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
環状の超電導コイルと、該超電導コイルを冷媒と共に収納するコイル容器と、該コイル容器を包囲して設けられた熱シールドと、前記熱シールドを包囲して設けられ内部が真空に保持された真空容器と、前記真空容器を空間を空けて上下に対向させて支持するとともに上下の前記真空容器を相互に連結する連結管と、上下の前記コイル容器を連結して前記連結管内に設けられた冷媒管と、上下の熱シールドを連結するとともに前記冷媒管を包囲して前記連結管内に設けられた熱シールド管と、上下の前記真空容器の対向面の内側にそれぞれ配置された傾斜磁場コイルと、上下の前記真空容器内に設置された磁性体からなる磁場調整体とを備え、前記磁場調整体を第1の支持部材を介して前記各真空容器の上壁又は底壁に支持するとともに、前記傾斜磁場コイルを第2の支持部材を介して前記磁場調整体に支持してなる磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
上下の前記コイル容器はそれぞれ上下の前記熱シールドに支持され、上下の前記熱シールドの連結体は、下の前記真空容器の底壁に支持されてなることを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記傾斜磁場コイルは、前記真空容器の上壁又は底壁から浮かして配置されたことを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記傾斜磁場コイルと前記磁場調整体が設置された空間と前記熱シールドとの間に隔壁を設け、前記傾斜磁場コイルと前記磁場調整体が設置された空間の真空度を前記真空容器内の真空度よりも低くしたことを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記第1と第2の支持部材は、断熱性及び減衰性の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−305146(P2006−305146A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132744(P2005−132744)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】