磁気分離フィルター装置
【課題】高圧の流体にも適用できて高効率で強磁性体の異物を吸着できる。
【解決手段】略円筒状のハウジング2を2枚の仕切り板3で仕切って、内側領域4とその両側の外側領域5を形成し、内側領域4にアモルファス合金細線を充填した。内側領域4のハウジング外側にティース16を固定し、高透磁物質からなる略円弧状のヨーク14の両端に設けた永久磁石15の平面をティース16に密着させる。対向する2つの永久磁石15及びティース16間で内側領域4に磁場を形成させる。磁場が殆ど形成されない外側領域5に鉄粉等が混入した油を流入させて降下させ、反転して内側領域4を上昇する油中の鉄粉等をアモルファス合金細線の磁気勾配により吸着させる。
【解決手段】略円筒状のハウジング2を2枚の仕切り板3で仕切って、内側領域4とその両側の外側領域5を形成し、内側領域4にアモルファス合金細線を充填した。内側領域4のハウジング外側にティース16を固定し、高透磁物質からなる略円弧状のヨーク14の両端に設けた永久磁石15の平面をティース16に密着させる。対向する2つの永久磁石15及びティース16間で内側領域4に磁場を形成させる。磁場が殆ど形成されない外側領域5に鉄粉等が混入した油を流入させて降下させ、反転して内側領域4を上昇する油中の鉄粉等をアモルファス合金細線の磁気勾配により吸着させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスプラント等における高圧、高温下であっても、流体中に混入される強磁性体の異物を除去する磁気分離フィルター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械潤滑油や機械加工油等の油や液中には、機械加工や内部摩耗等に伴って発生する鉄粉等が異物として懸濁している。これら異物を含む油や液は機械駆動の信頼性の低下、切削性、洗浄効率の低下等、多くの不具合を発生させることになる。そのため、油や液中のこれら異物を除去するためのフィルター装置が提案されている。
例えば特許文献1に記載された磁気分離型浄油装置は、磁性合金からなるフィルターメディアとそれに磁場を与える着磁装置とで構成されており、磁性フィルターメディアにアモルファス合金細線を用い、着磁装置に永久磁石を用いていた。
また、特許文献2に記載された浄油装置では、四角筒状のシールド用外筒の中に磁場を供給するマグネットと液体通過用内筒とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−349908号公報
【特許文献2】特開平6−254314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の磁気分離フィルター装置は、機械潤滑油や機械加工油等の常温、常圧の油中に含まれる異物を除去して清浄な状態にして油を再使用するものであり、高圧や高温の液体の浄化には直接適用できなかった。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、常圧の流体だけでなく高圧の流体にも適用できて高効率で強磁性体の異物を吸着できるようにした磁気分離フィルター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による磁気分離フィルター装置は、略円筒状のハウジング内を仕切り板で仕切り、ハウジングと仕切り板で仕切られた第一領域内に非晶質磁性合金であるアモルファス合金細線からなるフィルターメディアを充填し、ハウジング外側の第一領域に対向する位置に永久磁石を配設して、第一領域内に磁場を形成するようにしたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明による磁気分離フィルター装置は、永久磁石には高透磁物質からなるヨークが帰磁路として接続されていることが好ましい。
また、永久磁石とハウジングの第一領域との間には高透磁率で残留磁気のない物質からなるティースが磁路として配設され、該ティースと永久磁石の当接面は平面とされていることが好ましい。
【0008】
本発明による磁気分離フィルター装置は、ハウジングに対してヨークと永久磁石を対向配置させ及び離間可能な開閉駆動装置を備えていることを特徴とする。
また、開閉駆動装置によるヨークと永久磁石のハウジングに対する対向配置及び離間配置の切り換え制御は、タイマーによる着磁時間、フィルターメディアの上下流側間の差圧、或いはフィルターメディアを通液した流体の積算流量のいずれか1または複数のデータによって判別するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明による磁気分離フィルター装置は、フィルターメディアで吸着すべき異物を含む流体が、第二領域を降下して反転した後に、第一領域に流入するようにしたことが好ましい。
或いは、フィルターメディアで吸着すべき異物を含む流体が、第一領域内を下方から上方に向けて流れるようにしても良い。
【0010】
また、ティースは中央の一部が切除されていてもよい。或いはティースそのものを省略して、永久磁石をハウジングに密着させてもよい。
また、永久磁石は、仕切り板で仕切られたハウジングの第一領域に対向して、それぞれ1または複数個配設されていてもよい。
【0011】
また、複数の磁気分離フィルターを並列接続し、逆洗タイミングが重ならない様に制御して交互に通液させ、連続通液で濾過処理が出来るようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による磁気分離フィルター装置によれば、略円筒状のハウジングと仕切り板で仕切られた第一領域内にアモルファス合金細線からなるフィルターメディアを充填し、ハウジング外側から第一領域に対向する位置に着磁装置として永久磁石を配設して第一領域内に磁場を形成している為、耐圧が円筒形状のハウジングで担保出来るので、常圧だけでなく高圧の流体にも適用できて、しかも平行な仕切り板で仕切られた第一領域内に磁路を形成したことで、対向する永久磁石の磁束が第一領域内から外側に広がらず、漏れ磁束のない均一かつ高レベルの平行磁場が形成され、流体中に含まれる強磁性体の異物を高効率でアモルファス合金細線に吸着できる。
【0013】
また、永久磁石には高透磁物質からなるヨークが接続されているから、永久磁石を含む着磁装置と第一領域でロスのない磁気の閉回路を構成し、その結果、第一領域に均一で高レベルの磁場を形成できる。
また、永久磁石とハウジングの第一領域の間には高透磁率で残留磁気のない物質からなるティースが配設され、該ティースと永久磁石の当接面は平面とされているから、当接面で密着して磁気ロスを低減しつつも、永久磁石を含む着磁装置の着脱が容易かつ確実となる。
【0014】
また、ハウジングに対して、ハウジングに対してヨークと永久磁石を対向配置可能で離間可能な開閉駆動装置を備えているから、該開閉駆動装置によってハウジングに対して着磁装置が離れて離間位置に待避して着磁OFFとさせることで、第一領域内の磁場が消えてアモルファス合金細線の磁気勾配が消滅し、異物の吸着力を失わせ、逆洗等の別の作業を行うことができる。このときアモルファス合金は残留磁束密度が低いため吸着力がゼロ近傍になり逆洗浄が容易である。その後、ハウジングに対して着磁装置を近接対向配置して着磁ONとさせることで、第一領域内に磁場を形成させ、アモルファス合金細線の磁気勾配によって異物の吸着力を発生させて、異物の吸着保持を行うことができる。
【0015】
また、開閉駆動装置によるヨークと永久磁石のハウジングに対する対向配置及び離間配置の切り換え制御は、タイマーによる着磁時間、フィルターメディアの上下流側間の差圧、或いはフィルターメディアを通液した流体の積算流量のいずれか1または複数のデータによって判別するようにしたことから、開閉駆動装置による着磁装置の近接対向配置と離間待避配置による着磁ON−OFFの切り換え制御に際し、磁気分離フィルターの目詰まりを適切に抑制しつつ、流体中の異物の吸着を行い適正な時期に異物の吸着作業を中止させて、逆洗等の別の作業を行うことができる。その結果、目詰まりトラブルが防止出来ると共にメンテナンス作業の間隔を長く設定できる。
【0016】
また、本発明による磁気分離フィルター装置によれば、仕切り板によってバウジングをアモルファス合金細線を充填する第一領域と第二領域に分けた結果、第二領域には磁場がほとんど形成されておらず流体の入口側の流路として用いることができる。この場合、第二領域を流体が仕切り板に沿って降下して下端で反転し、第一領域内を上昇することになる。そのため、流体の降下からの反転時に慣性力と重力によって流体中の一部の異物が沈降分離でき、フィルターメディアの負荷を軽減できる。
また、異物を含む流体が第一領域内の下方から上方に向けて流れるようにしているため、重力によって流体中の異物がスリップし、沈降分離したり、流体流速より緩速上昇となる為、フィルターメディアの負荷軽減と捕集効率の向上ができる。
【0017】
また、ティースは中央の一部が切除されているから、ティースが積層された電磁鋼板で形成されていると、ティースとハウジングとの接合面の磁気抵抗が大きい場合に電磁鋼板の形状に沿って磁束が横流れし易いが、磁路の中央の一部が切除されていると磁束の横流れを防止でき、磁束密度の分布がより平準化できる。
【0018】
また、永久磁石は、仕切り板で仕切られたハウジングの第一領域に対向して、それぞれ1または複数個配設されているから、第一領域に形成される磁場の強さを増減できる。
【0019】
また、複数の磁気分離フィルターを並列接続し、逆洗タイミングが重ならない様に制御して交互に通液させ、連続通液で濾過処理が出来るようにしてもよい。
一つの制御装置に対して複数の磁気分離フィルター装置を並列的に接続する場合には、逆洗タイミングが重ならないように交互に逆洗を行うよう制御することによって、連続的に流れる流体に対しても対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態による磁気分離フィルター装置の要部縦断面図である。
【図2】図1に示す磁気分離フィルター装置の要部水平断面図である。
【図3】実施形態による磁気分離フィルター装置の開閉駆動装置を示すもので、着磁装置が近接対向配置となった着磁ON状態を示す水平断面図である。
【図4】実施形態による磁気分離フィルター装置の開閉駆動装置を示すもので、着磁装置が離間待避配置となった着磁OFF状態を示す水平断面図である。
【図5】磁気分離フィルター装置の流路構成を示す図である。
【図6】磁気分離フィルター装置の開閉制御工程を示す図である。
【図7】分離状態にあるハウジングの磁路と永久磁石及び帰磁路とを示す断面図である。
【図8】永久磁石と磁路との構成に応じたハウジング内での磁束密度のベクトルとコンターを示す図である。
【図9】永久磁石と磁路との構成に応じたハウジング内での磁束密度のベクトルとコンターを示す図である。
【図10】図8の(1)において永久磁石からティースを経由してハウジングの内側領域へ流れる磁束密度のベクトル(全体)を示す図である。
【図11】ハウジング内の仕切り板の有無による実施例1、実施例2、比較例について、中心からの距離と磁束密度との関係を示すグラフであり,(a)は半径方向の磁束密度、(b)は長手方向の磁束密度である。
【図12】実施例1、実施例2、比較例によるハウジング内の磁束密度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による磁気分離フィルター装置について説明する。
図1及び図2に示す磁気分離フィルター装置1は、上下方向に配設された略円筒状のハウジング2の内部に一対の略平行板からなる非磁性金属の仕切り板3が上側から下方向に向けて延びている。仕切り板3の下端はハウジング2の直胴部下端と同じ長さもしくはより短く設定されている。仕切り板3の上端は略直角に外側に折り曲げられてハウジング2の周面で係止されて塞がれている。ハウジング2は例えばSUS配管からなる非磁性金属で形成され、高圧に耐え得るように例えばsch80等の肉厚管で形成されている。
そして、ハウジング2において、一対の仕切り板3とハウジング2の円弧状部2aとで仕切られた略小判型の第一領域が内側領域4とされ、各仕切り板3を挟んで内側領域4の両側に設けられた略円弧状の一対の第二領域が外側領域5とされている。内側領域4と外側領域5は仕切り板3が設けられた範囲内で流体が互いに流通しないように仕切られている。2つの外側領域5の水平断面積の和と内側領域4の水平断面積との比は1:5〜1:100の範囲とされている。
ハウジング2の下部はテーパ状に縮径されたホッパー部2bとされ、その下端は逆洗液を排出させる逆洗液出口6が形成されている。
【0022】
ハウジング2の内側領域4には、その上下にステンレス等の非磁性金属で形成したグレーチングからなる一対の支持金具8a,8bが配設されている。支持金具8a,8b間における2枚の仕切り板3に挟まれた内側領域4には、高透磁率で残留磁気の少ないアモルファス合金細線9が充填されている。
また、ハウジング2の上部領域には、仕切り板3の折り曲げ部の下側に油等の流体の入口11が形成され、入口11はハウジング2内の外側領域5に連通している。入口11は図1では2つ対向して配設されているが、入口11は外側領域5に流体を流入させる構成であれば適宜数設けられていてよい。ハウジング2の上端には流体の出口12が形成されている。
【0023】
次に図2により着磁装置について説明する。
図2において、ハウジング2の外側に図1では省略されている帰磁路を構成するヨーク14が設けられている。ヨーク14は略半円弧状の電磁鋼板が積層されて略半円筒状に形成され、略半円筒状の一対のヨーク14がハウジング2を囲むように対向して配設されている。ハウジング2と一対のヨーク14とは好ましくは同心円状に配設されている。
各ヨーク14の両端部には径方向内側に向けて永久磁石15がそれぞれ固定され密着している。ハウジング2の一対の仕切り板3で仕切られた円弧状部2aの外側には高透磁率で残留磁気の少ない積層電磁鋼板で形成されたティース16が磁路としてハウジングに固定されている。そして、ヨーク14の永久磁石15とティース16は平面同士で面接触して密着させられている。
なお、図2において、仕切り板3は対向する2つのティース16の外側端部間に設けられた平行板に加えて、その外側のハウジング2の円弧状部分にも形成してもよい。これにより、外側領域5は非磁性金属からなる仕切り板3によって円弧状に囲われて形成されることになる。
【0024】
図2に示す例では、ハウジング2の仮想の中心線Lで仕切られた略半円状の帰磁路14の両端にそれぞれ形成した永久磁石15とティース16を通してハウジング2内の内側領域4内に均一で高い磁場が形成され、仕切り板3で仕切られた外側領域5には磁場はほとんど形成されない。そのため、永久磁石15及びティース16の外側端部に仕切り板3の端部が位置するように形成されており、外側領域5を流体の流入路として構成できる。
ハウジング2の内側領域4内の磁場によってアモルファス合金細線9に磁気勾配が形成され、それによって流体中の強磁性体が吸着される。吸着される強磁性体として、例えば鉄、ニッケル、コバルト等がある。
仮想線Lの両側に設けられた二つのヨーク14,永久磁石15,ティース16は互いに当接状態でもよいし、分離状態でもよい。図2に示すように、装置は仮想線Lの部分で左右対称であり、仮想線Lを横切る磁束がないのでヨーク14が略半円状に二つに分割されていても、磁気のロスがなく、又そのことによって離間待避配置まで開閉できる。
【0025】
図3及び図4において、磁気分離フィルター装置1は、両端に永久磁石15を設けた略半円状のヨーク14によって分割可能であり、ヨーク14を開閉させる開閉駆動装置18が設けられている。
各略半円状のヨーク14の例えば中央部にはロッド19を介してエアシリンダー20が接続されている。エアシリンダー20のON、OFFによってロッド19が伸縮することでヨーク14に設けた永久磁石15をハウジング2の円弧状部2aに固定したティース16に対して密着及び離間可能とされている。そして、ヨーク14の両端部にはスライド22が連結されており、各スライド22は磁気分離フィルター装置1の両側に略平行に設けたガイドレール23にガイドされて進退可能とされている。
そのため、磁気分離フィルター装置1における着磁装置の離隔配置の着磁OFF時には、図4に示すように一対のエアシリンダー20でロッド19を収縮することで、一対のヨーク14及び永久磁石15からなる着磁装置をティース16から離間させ、閉鎖時には、図3に示すように一対のエアシリンダー20でロッド19を伸長させることで、一対のヨーク14及び永久磁石15からなる着磁装置をティース16に密着させることになる。
【0026】
次に図5に示す磁気分離フィルター装置1の流路構成について説明する。
磁気分離フィルター装置1のハウジング2における入口11に連通する入口流路25には入口開閉弁26が設けられている。また、ハウジングの出口12に連通する出口流路27には出口開閉弁28が形成されている。ハウジング2の内側領域4での流体の流速が早すぎると吸着が困難になるので、出口開閉弁28で出口12から排出される流量を調節することで、流体の流速を適正範囲内に調整し、メディアフィルターとしてのアモルファス合金細線9で強磁性体を効率的に吸着できるように制御する。
【0027】
そして、入口11の上流側の入口流路25と出口12の下流側の出口流路27との間には充填部差圧計29が設けられている。また、出口流路27において、出口開閉弁28の下流側には出口流路27の流量が適正範囲内で一定になるように調整する流量制御装置30が設けられており、更に流量制御装置30を流通した流量を積算する積算流量計31が設けられている。
充填部差圧計29によって検知された差圧をデータTB1として制御装置33へ出力する。また、積算流量計31によって、ハウジング2内のアモルファス合金細線9を内蔵した内側領域4を流通する流体の積算流量を計測してデータTB2として制御装置33へ出力する。また、制御装置33には磁気分離フィルター装置1の通液時間を計測するタイマー34が設けられており、計測した駆動時間をデータTB3として出力する。
なお、ハウジング2のテーパ部2bには逆洗液を流出させるための逆洗出口6の下流側流路に開閉弁36が設けられている。
【0028】
そして、図6において、各データTB1、TB2、TB3が制御装置33に設けた判定手段35へ入力され、判定手段35によって各データTB1,TB2,TB3の予め設定した少なくともいずれか1つ、または2つ、或いは3つのデータが予め設定した各基準値を超えた場合に、磁気分離フィルター装置1の停止信号を出力することになる。
この停止信号によって、入口開閉弁26をOFFし、開閉駆動装置18を駆動させて永久磁石15とヨーク14をティース16から離間位置に待避させる。この状態で、ハウジング2の内側領域4内のアモルファス合金細線9に逆方向、例えば出口12から逆洗液出口6に向けて逆洗液を流して逆洗することになる。
このように、充填部差圧計29、積算流量計31、タイマー34のデータTB1、TB2、TB3によって、内側領域4での目詰まりの程度と、逆洗によるアモルファス合金細線9の洗浄のタイミングを検知できる。洗浄終了後は充填部差圧計29、積算流量計31、タイマー34をリセットして流体の通液を再開する。一つの制御装置33に対して、二つ以上の複数の磁気分離フィルター装置1を設ける場合は、逆洗タイミングが重ならないように交互に逆洗を行うよう制御することによって、連続的に流れる流体に対しても対応が可能である。
【0029】
本実施形態による磁気分離フィルター装置1は上述の構成を備えており、次に磁気分離フィルター装置1による強磁性体の吸着方法について説明する。
図1及び図2において、開閉駆動装置18によってヨーク14の永久磁石15をティース16に密着させた状態の磁気分離フィルター装置1では、ハウジング2に設けた入口11から流体として例えば鉄粉が異物として混入した油を流入させると、油はハウジング2内の略円筒状の周面と仕切り板3とで仕切られた外部領域5内で下方に向けて流れる。外側領域5内には永久磁石15による磁場がほとんど発生しない。
そして、図示しないポンプにより、仕切り板3の下端で油の流れを反転させて一対の仕切り板3で仕切られた内側領域4内を油が上昇する。このとき、下方から上方に向けて反転する油には、比較的重量の大きい鉄粉等の一部粒子は下方流の慣性力と重力によって沈降分離され、テーパ部2b方向に降下する。これによってアモルファス合金細線9によるフィルター負荷が低減するため、逆洗までの期間を長くとれる。
【0030】
そして、ハウジング2の仕切り板3で仕切られた内側領域4では、各ヨーク14の両端に対向して設けられた永久磁石15及びティース16間に高い磁場が均一に発生しており、内側領域4内に充填されたアモルファス合金細線9に発生した磁気勾配により、内側領域4内を上昇する油中の鉄粉等がアモルファス合金細線9に吸着される。
ここで、ハウジング4の外側領域5と内側領域4の面積比を1:5〜1:100の範囲とすることで、外側領域5を降下する油の線速を例えば0.75m/s〜1.0m/sとすると、内側領域4を上昇する油の線速は0.01m/s〜0.05m/sとなり、アモルファス合金細線9による磁気吸着に適した流速になる。
【0031】
所定時間経過すると、ハウジング2の内部領域4内のアモルファス合金細線9に吸着される鉄粉等の強磁性体が増大するため、内部領域4内を上昇して流通する油の流通抵抗が上昇する。これによって、図5,図6に示すように、充填部差圧計29で検知する入口流路25側の油圧と出口流路27側の油圧との差圧が増大し、充填部差圧計29から出力するデータTB1が予め設定した基準値を超えると制御部33の判定手段35で検知される。同様に積算流量計31から出力されるデータTB2、タイマー34で検知されるデータTB3がそれぞれ各基準値を超えることを判定手段35で検知される。
【0032】
この場合、上述したデータTB1、TB2、TB3のうち、予め設定した1または複数のデータが基準値を超えたことを判別手段35で検知することで、制御部33からの信号出力により入口流路25の開閉弁26を閉弁し、入口11から外側領域5内への油の通液をOFFにする。
そして、図3に示す開閉駆動装置18の一対のエアシリンダー20をONして各ロッド19を収縮することで、図4に示すようにヨーク14をそれぞれハウジング2から離間させる。これにより、各ヨーク14の両端に設けた永久磁石15がハウジング2の円弧状部2aに固定したティース16から離間する。そして、ハウジング2の内側領域4内のアモルファス合金細線9の着磁はOFFとなる。これによって、油の通液が停止されると共に油中の鉄粉等の強磁性体の吸着が停止される。
【0033】
この状態で、出口流路27からハウジング2の出口12を通して内部領域4内に逆洗液を流し、消磁状態のアモルファス合金細線9に吸着された鉄粉等の強磁性体を洗い流す。そして、鉄粉等の強磁性体を含む逆洗液をハウジング2の下部のテーパ部2bから逆洗出口6、そして開弁された開閉弁36を通して排出させる。
所定時間逆洗した後、制御部33からのON信号により、開閉駆動装置18のエアシリンダー20を駆動させてロッド19を伸長させることで、図4に示すように永久磁石15がハウジング2のティース16から分離された状態から図3に示すように永久磁石15がティース16に密着する状態になるようヨーク14が移動させられる。この状態で、磁気分離フィルター装置1は着磁ON状態になり、内側領域4内のアモルファス合金細線9に磁場が形成される。
そして、入口流路25の開閉弁26を開弁することで、油がハウジング2の外側領域5に流入される。
【0034】
上述のように本実施形態による磁気分離フィルター装置1によれば、ハウジング2を略円筒状に形成したことで、高圧の油等の流体に適用できる。そして、ハウジング2内に平行板からなる仕切り板3を対向配置させ、仕切り板3で仕切られた内側領域4内にアモルファス合金細線9を充填させて磁場を形成するようにしたから、磁場が高く均一であり内側領域4を大径化できる。しかも、ハウジング2内の外側領域5には磁場がほとんど形成されないから、油の流入側流路として使用できる。
また、ハウジング2内に流入する油は、入口11から仕切り板3で内側領域4と仕切られた外側領域5を降下して流れ、仕切り板3の下端で反転して内側領域4内を上昇するものであるから、反転時に慣性力と重力の沈降分離によって一部の鉄粉等の粒子を事前に分離できるため、フィルターメディアとしてのアモルファス合金細線9の負担を軽減できる。
しかも、外側領域5と内側領域4の面積比を1:5〜1;100に設定することで、吸着を行う内側領域4での油の流速を鉄粉等の非磁性体等の吸着に適するように低速に設定できる。
また、ハウジング2の下部にテーパ部2bを設けたことで、逆洗液を上側から下側に流す際の逆洗浄を安定的に行える。
【0035】
また、永久磁石15を固定したヨーク14を磁束のない部分で2分割でき、しかも、ハウジング2に固定したティース16と永久磁石15の接合面を平面にしたことで、磁気のロスを低減できる。
また、従来、磁気分離フィルター装置の永久磁石をハウジングから着脱する場合には手作業で行っていたが、本実施形態の磁気分離フィルター装置1によれば充填部差圧計29、積算流量計31、タイマー34等の測定量や測定時間を検知して判定手段35で洗浄時期を判別して開閉駆動装置18によって自動的にハウジング2に対するヨーク14及び永久磁石15の着脱を切り換えできる。しかも、開閉駆動装置18はエアシリンダー20による簡単な機構であり、充填部差圧計29、積算流量計31、タイマー34の少なくとも1以上のデータによって着磁と逆洗とを自動的に切り換え制御することができて適正な逆洗が可能であり、連続使用してもメンテナンスを行う間隔を長くできる。また、一つの制御装置33に対して、2つ以上の複数の磁気分離フィルター装置1を設けることで、連続的に流れる流体に対しても対応出来る。
【0036】
なお、本発明は上述の実施形態による磁気分離フィルター装置1の構成に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない限り適宜の変更や追加等が行える。
図7は、磁気分離フィルター装置1におけるハウジング2におけるティース16及び仕切り板3とヨーク14の両端部に設けた永久磁石15との関係を示すものである。図7において、例えば略円筒状のハウジング2の外側領域5と内側領域4との水平断面における面積比を1:7に設定した場合、ハウジング2の中心Oから磁路16の両端部までの角度範囲は例えば46.2度となる。また、外側領域5と内側領域4との面積比を1:10に設定した場合には磁路16の両端部までの角度範囲は49.9度(図7参照)、外側領域5と内側領域4との面積比を1:20に設定した場合にはティース16の両端部までの角度範囲は55.7度となる。
このように設定することで、ヨーク14の両端部に設けた2つの永久磁石15間において、永久磁石15に密着するティース16の幅の磁束がそのまま仕切り板3でほぼ仕切られた範囲のハウジング2内の内側領域4内のアモルファス合金細線9を平行に通過する。仕切り板3によって磁束がその外側に広がらないために内側領域4で均一な磁場が形成される。一方、仕切り板3が設けられないと磁束が外側に広がり、好ましくない。
【0037】
次に、磁気分離フィルター装置1の実施例において、外側領域5と内側領域4との面積比に応じた着磁装置とハウジング2の内側領域4内の磁場について行ったシミュレーション結果を図8〜図10に示す。
図8及び図9において、(1)外側領域5と内側領域4との面積比を1:7に設定した場合、永久磁石15、ティース16から内側領域4へ磁束が真っ直ぐ進もうとするが、積層電磁鋼板からなるティース16は磁気抵抗が小さいため磁束はティース16内の幅方向外側に流れる傾向がある(図10参照)。そのため、磁路16の外側端部まで流れた後に内側領域4へ流れる傾向にある。面積比を(2)1:10と(3)1:20に設定した場合も同様な傾向にあるが、内側領域4内の磁場強度は(1)面積比1:7の場合より僅かずつ減縮した。
また、(4)面積比1:7で、ハウジング2に固定するティース16を省略した場合、(1)と比較して内側領域4内の磁場は低下したが、減衰幅は小さかったので、ティース16は省略してもよいことがわかった。(5)面積比1:7で、永久磁石15とハウジング2との間でギャップが広い両端側のみ積層電磁鋼板からなるティース16を形成し、その中間を空間に形成した場合、ティース16内で幅方向外側に流れる磁束を防止できて磁束密度の分布がより平準化される。(5)は(1)と比較して全体的には微減しているが、内側領域4の長手方向両端の磁束密度が上昇し(0.179T)全断面が均一化している。
【0038】
また、本発明の実施例と比較例についての磁束密度のシミュレーションを行い、その結果を図11及び図12に示す。
実施例と比較例の基本構成は上述した実施形態による磁気分離フィルター装置1と同じとし、図8の(1)のように、外側領域5と内側領域4との面積比を1:7に設定した場合で1対の仕切り板3を設けた構成を実施例1とし、図9の(5)に示すようにティース16の幅方向中央部の積層電磁鋼板を切除した(周方向の1/2程度の長さ分切除した)構成を実施例2とし、仕切り板3を設けない構成を比較例として、シミュレーションを行った。
図11において、磁束密度の測定は、ハウジング2の中心Oから内側領域4の仕切り板3に直交する半径方向をX方向とし、X方向に直交する内側領域4の長手方向(磁路16の方向)をY方向として下記表1及び表2に示す間隔で磁束密度[T](テスラ)を測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
図11(a)、(b)に示す測定結果において、X方向では実施例1及び実施例2とも比較例よりも磁束密度は高かった。特にX方向(幅方向)において、端部へ近づくほど磁束密度は上昇した。Y方向においても実施例1及び実施例2とも比較例よりも磁束密度は高かった。実施例1は中心から離れる程、磁束密度が減衰して比較例に近づく傾向にあった。
また、図12においては、実施例1及び2とも磁束密度は閾値0.16Tより大きく、両端部を除いて0.18以上であった。実施例2は磁束密度の分布がより平準化されている。これに対し、比較例では実施例1,2より低かった。
【0042】
なお、上述した実施形態による磁気分離フィルター装置1では、入口11からハウジング2の仕切り板3で仕切られた外側領域5に油等の流体を流入させて降下させ、仕切り板3の下端で反転させて内側領域4内を上昇するようにしたが、この構成に代えて、油等の流体を逆洗液出口6からハウジング2内に流入させ、内側領域4を通して上昇させて出口12から排出させるようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、略半円弧状のヨーク14の両端にそれぞれ永久磁石15を連結して、アモルファス合金細線9を充填した内側領域4の対向する円弧状部分2aにそれぞれ2個ずつの永久磁石15を設けたが、本発明に用いる永久磁石15はこの構成に限定されるものではなく、例えば片側に1個ずつ設けてもよい。或いは、片側のヨーク14に偶数個ずつ配設してもよい。
また、ヨーク14は電磁鋼板を積層して形成したものに限定されるものではなく、フェライトなどでもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 磁気分離フィルター装置
2 ハウジング
3 仕切り板
4 内側領域
5 外側領域
8a、8b 支持金具
9 アモルファス合金細線
11 入口
12 出口
14 ヨーク
15 永久磁石
16 ティース
18 開閉駆動装置
20 エアシリンダー
29 充填部差圧計
31 積算流量計
33 制御装置
34 タイマー
35 判定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスプラント等における高圧、高温下であっても、流体中に混入される強磁性体の異物を除去する磁気分離フィルター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械潤滑油や機械加工油等の油や液中には、機械加工や内部摩耗等に伴って発生する鉄粉等が異物として懸濁している。これら異物を含む油や液は機械駆動の信頼性の低下、切削性、洗浄効率の低下等、多くの不具合を発生させることになる。そのため、油や液中のこれら異物を除去するためのフィルター装置が提案されている。
例えば特許文献1に記載された磁気分離型浄油装置は、磁性合金からなるフィルターメディアとそれに磁場を与える着磁装置とで構成されており、磁性フィルターメディアにアモルファス合金細線を用い、着磁装置に永久磁石を用いていた。
また、特許文献2に記載された浄油装置では、四角筒状のシールド用外筒の中に磁場を供給するマグネットと液体通過用内筒とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−349908号公報
【特許文献2】特開平6−254314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の磁気分離フィルター装置は、機械潤滑油や機械加工油等の常温、常圧の油中に含まれる異物を除去して清浄な状態にして油を再使用するものであり、高圧や高温の液体の浄化には直接適用できなかった。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、常圧の流体だけでなく高圧の流体にも適用できて高効率で強磁性体の異物を吸着できるようにした磁気分離フィルター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による磁気分離フィルター装置は、略円筒状のハウジング内を仕切り板で仕切り、ハウジングと仕切り板で仕切られた第一領域内に非晶質磁性合金であるアモルファス合金細線からなるフィルターメディアを充填し、ハウジング外側の第一領域に対向する位置に永久磁石を配設して、第一領域内に磁場を形成するようにしたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明による磁気分離フィルター装置は、永久磁石には高透磁物質からなるヨークが帰磁路として接続されていることが好ましい。
また、永久磁石とハウジングの第一領域との間には高透磁率で残留磁気のない物質からなるティースが磁路として配設され、該ティースと永久磁石の当接面は平面とされていることが好ましい。
【0008】
本発明による磁気分離フィルター装置は、ハウジングに対してヨークと永久磁石を対向配置させ及び離間可能な開閉駆動装置を備えていることを特徴とする。
また、開閉駆動装置によるヨークと永久磁石のハウジングに対する対向配置及び離間配置の切り換え制御は、タイマーによる着磁時間、フィルターメディアの上下流側間の差圧、或いはフィルターメディアを通液した流体の積算流量のいずれか1または複数のデータによって判別するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明による磁気分離フィルター装置は、フィルターメディアで吸着すべき異物を含む流体が、第二領域を降下して反転した後に、第一領域に流入するようにしたことが好ましい。
或いは、フィルターメディアで吸着すべき異物を含む流体が、第一領域内を下方から上方に向けて流れるようにしても良い。
【0010】
また、ティースは中央の一部が切除されていてもよい。或いはティースそのものを省略して、永久磁石をハウジングに密着させてもよい。
また、永久磁石は、仕切り板で仕切られたハウジングの第一領域に対向して、それぞれ1または複数個配設されていてもよい。
【0011】
また、複数の磁気分離フィルターを並列接続し、逆洗タイミングが重ならない様に制御して交互に通液させ、連続通液で濾過処理が出来るようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明による磁気分離フィルター装置によれば、略円筒状のハウジングと仕切り板で仕切られた第一領域内にアモルファス合金細線からなるフィルターメディアを充填し、ハウジング外側から第一領域に対向する位置に着磁装置として永久磁石を配設して第一領域内に磁場を形成している為、耐圧が円筒形状のハウジングで担保出来るので、常圧だけでなく高圧の流体にも適用できて、しかも平行な仕切り板で仕切られた第一領域内に磁路を形成したことで、対向する永久磁石の磁束が第一領域内から外側に広がらず、漏れ磁束のない均一かつ高レベルの平行磁場が形成され、流体中に含まれる強磁性体の異物を高効率でアモルファス合金細線に吸着できる。
【0013】
また、永久磁石には高透磁物質からなるヨークが接続されているから、永久磁石を含む着磁装置と第一領域でロスのない磁気の閉回路を構成し、その結果、第一領域に均一で高レベルの磁場を形成できる。
また、永久磁石とハウジングの第一領域の間には高透磁率で残留磁気のない物質からなるティースが配設され、該ティースと永久磁石の当接面は平面とされているから、当接面で密着して磁気ロスを低減しつつも、永久磁石を含む着磁装置の着脱が容易かつ確実となる。
【0014】
また、ハウジングに対して、ハウジングに対してヨークと永久磁石を対向配置可能で離間可能な開閉駆動装置を備えているから、該開閉駆動装置によってハウジングに対して着磁装置が離れて離間位置に待避して着磁OFFとさせることで、第一領域内の磁場が消えてアモルファス合金細線の磁気勾配が消滅し、異物の吸着力を失わせ、逆洗等の別の作業を行うことができる。このときアモルファス合金は残留磁束密度が低いため吸着力がゼロ近傍になり逆洗浄が容易である。その後、ハウジングに対して着磁装置を近接対向配置して着磁ONとさせることで、第一領域内に磁場を形成させ、アモルファス合金細線の磁気勾配によって異物の吸着力を発生させて、異物の吸着保持を行うことができる。
【0015】
また、開閉駆動装置によるヨークと永久磁石のハウジングに対する対向配置及び離間配置の切り換え制御は、タイマーによる着磁時間、フィルターメディアの上下流側間の差圧、或いはフィルターメディアを通液した流体の積算流量のいずれか1または複数のデータによって判別するようにしたことから、開閉駆動装置による着磁装置の近接対向配置と離間待避配置による着磁ON−OFFの切り換え制御に際し、磁気分離フィルターの目詰まりを適切に抑制しつつ、流体中の異物の吸着を行い適正な時期に異物の吸着作業を中止させて、逆洗等の別の作業を行うことができる。その結果、目詰まりトラブルが防止出来ると共にメンテナンス作業の間隔を長く設定できる。
【0016】
また、本発明による磁気分離フィルター装置によれば、仕切り板によってバウジングをアモルファス合金細線を充填する第一領域と第二領域に分けた結果、第二領域には磁場がほとんど形成されておらず流体の入口側の流路として用いることができる。この場合、第二領域を流体が仕切り板に沿って降下して下端で反転し、第一領域内を上昇することになる。そのため、流体の降下からの反転時に慣性力と重力によって流体中の一部の異物が沈降分離でき、フィルターメディアの負荷を軽減できる。
また、異物を含む流体が第一領域内の下方から上方に向けて流れるようにしているため、重力によって流体中の異物がスリップし、沈降分離したり、流体流速より緩速上昇となる為、フィルターメディアの負荷軽減と捕集効率の向上ができる。
【0017】
また、ティースは中央の一部が切除されているから、ティースが積層された電磁鋼板で形成されていると、ティースとハウジングとの接合面の磁気抵抗が大きい場合に電磁鋼板の形状に沿って磁束が横流れし易いが、磁路の中央の一部が切除されていると磁束の横流れを防止でき、磁束密度の分布がより平準化できる。
【0018】
また、永久磁石は、仕切り板で仕切られたハウジングの第一領域に対向して、それぞれ1または複数個配設されているから、第一領域に形成される磁場の強さを増減できる。
【0019】
また、複数の磁気分離フィルターを並列接続し、逆洗タイミングが重ならない様に制御して交互に通液させ、連続通液で濾過処理が出来るようにしてもよい。
一つの制御装置に対して複数の磁気分離フィルター装置を並列的に接続する場合には、逆洗タイミングが重ならないように交互に逆洗を行うよう制御することによって、連続的に流れる流体に対しても対応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態による磁気分離フィルター装置の要部縦断面図である。
【図2】図1に示す磁気分離フィルター装置の要部水平断面図である。
【図3】実施形態による磁気分離フィルター装置の開閉駆動装置を示すもので、着磁装置が近接対向配置となった着磁ON状態を示す水平断面図である。
【図4】実施形態による磁気分離フィルター装置の開閉駆動装置を示すもので、着磁装置が離間待避配置となった着磁OFF状態を示す水平断面図である。
【図5】磁気分離フィルター装置の流路構成を示す図である。
【図6】磁気分離フィルター装置の開閉制御工程を示す図である。
【図7】分離状態にあるハウジングの磁路と永久磁石及び帰磁路とを示す断面図である。
【図8】永久磁石と磁路との構成に応じたハウジング内での磁束密度のベクトルとコンターを示す図である。
【図9】永久磁石と磁路との構成に応じたハウジング内での磁束密度のベクトルとコンターを示す図である。
【図10】図8の(1)において永久磁石からティースを経由してハウジングの内側領域へ流れる磁束密度のベクトル(全体)を示す図である。
【図11】ハウジング内の仕切り板の有無による実施例1、実施例2、比較例について、中心からの距離と磁束密度との関係を示すグラフであり,(a)は半径方向の磁束密度、(b)は長手方向の磁束密度である。
【図12】実施例1、実施例2、比較例によるハウジング内の磁束密度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による磁気分離フィルター装置について説明する。
図1及び図2に示す磁気分離フィルター装置1は、上下方向に配設された略円筒状のハウジング2の内部に一対の略平行板からなる非磁性金属の仕切り板3が上側から下方向に向けて延びている。仕切り板3の下端はハウジング2の直胴部下端と同じ長さもしくはより短く設定されている。仕切り板3の上端は略直角に外側に折り曲げられてハウジング2の周面で係止されて塞がれている。ハウジング2は例えばSUS配管からなる非磁性金属で形成され、高圧に耐え得るように例えばsch80等の肉厚管で形成されている。
そして、ハウジング2において、一対の仕切り板3とハウジング2の円弧状部2aとで仕切られた略小判型の第一領域が内側領域4とされ、各仕切り板3を挟んで内側領域4の両側に設けられた略円弧状の一対の第二領域が外側領域5とされている。内側領域4と外側領域5は仕切り板3が設けられた範囲内で流体が互いに流通しないように仕切られている。2つの外側領域5の水平断面積の和と内側領域4の水平断面積との比は1:5〜1:100の範囲とされている。
ハウジング2の下部はテーパ状に縮径されたホッパー部2bとされ、その下端は逆洗液を排出させる逆洗液出口6が形成されている。
【0022】
ハウジング2の内側領域4には、その上下にステンレス等の非磁性金属で形成したグレーチングからなる一対の支持金具8a,8bが配設されている。支持金具8a,8b間における2枚の仕切り板3に挟まれた内側領域4には、高透磁率で残留磁気の少ないアモルファス合金細線9が充填されている。
また、ハウジング2の上部領域には、仕切り板3の折り曲げ部の下側に油等の流体の入口11が形成され、入口11はハウジング2内の外側領域5に連通している。入口11は図1では2つ対向して配設されているが、入口11は外側領域5に流体を流入させる構成であれば適宜数設けられていてよい。ハウジング2の上端には流体の出口12が形成されている。
【0023】
次に図2により着磁装置について説明する。
図2において、ハウジング2の外側に図1では省略されている帰磁路を構成するヨーク14が設けられている。ヨーク14は略半円弧状の電磁鋼板が積層されて略半円筒状に形成され、略半円筒状の一対のヨーク14がハウジング2を囲むように対向して配設されている。ハウジング2と一対のヨーク14とは好ましくは同心円状に配設されている。
各ヨーク14の両端部には径方向内側に向けて永久磁石15がそれぞれ固定され密着している。ハウジング2の一対の仕切り板3で仕切られた円弧状部2aの外側には高透磁率で残留磁気の少ない積層電磁鋼板で形成されたティース16が磁路としてハウジングに固定されている。そして、ヨーク14の永久磁石15とティース16は平面同士で面接触して密着させられている。
なお、図2において、仕切り板3は対向する2つのティース16の外側端部間に設けられた平行板に加えて、その外側のハウジング2の円弧状部分にも形成してもよい。これにより、外側領域5は非磁性金属からなる仕切り板3によって円弧状に囲われて形成されることになる。
【0024】
図2に示す例では、ハウジング2の仮想の中心線Lで仕切られた略半円状の帰磁路14の両端にそれぞれ形成した永久磁石15とティース16を通してハウジング2内の内側領域4内に均一で高い磁場が形成され、仕切り板3で仕切られた外側領域5には磁場はほとんど形成されない。そのため、永久磁石15及びティース16の外側端部に仕切り板3の端部が位置するように形成されており、外側領域5を流体の流入路として構成できる。
ハウジング2の内側領域4内の磁場によってアモルファス合金細線9に磁気勾配が形成され、それによって流体中の強磁性体が吸着される。吸着される強磁性体として、例えば鉄、ニッケル、コバルト等がある。
仮想線Lの両側に設けられた二つのヨーク14,永久磁石15,ティース16は互いに当接状態でもよいし、分離状態でもよい。図2に示すように、装置は仮想線Lの部分で左右対称であり、仮想線Lを横切る磁束がないのでヨーク14が略半円状に二つに分割されていても、磁気のロスがなく、又そのことによって離間待避配置まで開閉できる。
【0025】
図3及び図4において、磁気分離フィルター装置1は、両端に永久磁石15を設けた略半円状のヨーク14によって分割可能であり、ヨーク14を開閉させる開閉駆動装置18が設けられている。
各略半円状のヨーク14の例えば中央部にはロッド19を介してエアシリンダー20が接続されている。エアシリンダー20のON、OFFによってロッド19が伸縮することでヨーク14に設けた永久磁石15をハウジング2の円弧状部2aに固定したティース16に対して密着及び離間可能とされている。そして、ヨーク14の両端部にはスライド22が連結されており、各スライド22は磁気分離フィルター装置1の両側に略平行に設けたガイドレール23にガイドされて進退可能とされている。
そのため、磁気分離フィルター装置1における着磁装置の離隔配置の着磁OFF時には、図4に示すように一対のエアシリンダー20でロッド19を収縮することで、一対のヨーク14及び永久磁石15からなる着磁装置をティース16から離間させ、閉鎖時には、図3に示すように一対のエアシリンダー20でロッド19を伸長させることで、一対のヨーク14及び永久磁石15からなる着磁装置をティース16に密着させることになる。
【0026】
次に図5に示す磁気分離フィルター装置1の流路構成について説明する。
磁気分離フィルター装置1のハウジング2における入口11に連通する入口流路25には入口開閉弁26が設けられている。また、ハウジングの出口12に連通する出口流路27には出口開閉弁28が形成されている。ハウジング2の内側領域4での流体の流速が早すぎると吸着が困難になるので、出口開閉弁28で出口12から排出される流量を調節することで、流体の流速を適正範囲内に調整し、メディアフィルターとしてのアモルファス合金細線9で強磁性体を効率的に吸着できるように制御する。
【0027】
そして、入口11の上流側の入口流路25と出口12の下流側の出口流路27との間には充填部差圧計29が設けられている。また、出口流路27において、出口開閉弁28の下流側には出口流路27の流量が適正範囲内で一定になるように調整する流量制御装置30が設けられており、更に流量制御装置30を流通した流量を積算する積算流量計31が設けられている。
充填部差圧計29によって検知された差圧をデータTB1として制御装置33へ出力する。また、積算流量計31によって、ハウジング2内のアモルファス合金細線9を内蔵した内側領域4を流通する流体の積算流量を計測してデータTB2として制御装置33へ出力する。また、制御装置33には磁気分離フィルター装置1の通液時間を計測するタイマー34が設けられており、計測した駆動時間をデータTB3として出力する。
なお、ハウジング2のテーパ部2bには逆洗液を流出させるための逆洗出口6の下流側流路に開閉弁36が設けられている。
【0028】
そして、図6において、各データTB1、TB2、TB3が制御装置33に設けた判定手段35へ入力され、判定手段35によって各データTB1,TB2,TB3の予め設定した少なくともいずれか1つ、または2つ、或いは3つのデータが予め設定した各基準値を超えた場合に、磁気分離フィルター装置1の停止信号を出力することになる。
この停止信号によって、入口開閉弁26をOFFし、開閉駆動装置18を駆動させて永久磁石15とヨーク14をティース16から離間位置に待避させる。この状態で、ハウジング2の内側領域4内のアモルファス合金細線9に逆方向、例えば出口12から逆洗液出口6に向けて逆洗液を流して逆洗することになる。
このように、充填部差圧計29、積算流量計31、タイマー34のデータTB1、TB2、TB3によって、内側領域4での目詰まりの程度と、逆洗によるアモルファス合金細線9の洗浄のタイミングを検知できる。洗浄終了後は充填部差圧計29、積算流量計31、タイマー34をリセットして流体の通液を再開する。一つの制御装置33に対して、二つ以上の複数の磁気分離フィルター装置1を設ける場合は、逆洗タイミングが重ならないように交互に逆洗を行うよう制御することによって、連続的に流れる流体に対しても対応が可能である。
【0029】
本実施形態による磁気分離フィルター装置1は上述の構成を備えており、次に磁気分離フィルター装置1による強磁性体の吸着方法について説明する。
図1及び図2において、開閉駆動装置18によってヨーク14の永久磁石15をティース16に密着させた状態の磁気分離フィルター装置1では、ハウジング2に設けた入口11から流体として例えば鉄粉が異物として混入した油を流入させると、油はハウジング2内の略円筒状の周面と仕切り板3とで仕切られた外部領域5内で下方に向けて流れる。外側領域5内には永久磁石15による磁場がほとんど発生しない。
そして、図示しないポンプにより、仕切り板3の下端で油の流れを反転させて一対の仕切り板3で仕切られた内側領域4内を油が上昇する。このとき、下方から上方に向けて反転する油には、比較的重量の大きい鉄粉等の一部粒子は下方流の慣性力と重力によって沈降分離され、テーパ部2b方向に降下する。これによってアモルファス合金細線9によるフィルター負荷が低減するため、逆洗までの期間を長くとれる。
【0030】
そして、ハウジング2の仕切り板3で仕切られた内側領域4では、各ヨーク14の両端に対向して設けられた永久磁石15及びティース16間に高い磁場が均一に発生しており、内側領域4内に充填されたアモルファス合金細線9に発生した磁気勾配により、内側領域4内を上昇する油中の鉄粉等がアモルファス合金細線9に吸着される。
ここで、ハウジング4の外側領域5と内側領域4の面積比を1:5〜1:100の範囲とすることで、外側領域5を降下する油の線速を例えば0.75m/s〜1.0m/sとすると、内側領域4を上昇する油の線速は0.01m/s〜0.05m/sとなり、アモルファス合金細線9による磁気吸着に適した流速になる。
【0031】
所定時間経過すると、ハウジング2の内部領域4内のアモルファス合金細線9に吸着される鉄粉等の強磁性体が増大するため、内部領域4内を上昇して流通する油の流通抵抗が上昇する。これによって、図5,図6に示すように、充填部差圧計29で検知する入口流路25側の油圧と出口流路27側の油圧との差圧が増大し、充填部差圧計29から出力するデータTB1が予め設定した基準値を超えると制御部33の判定手段35で検知される。同様に積算流量計31から出力されるデータTB2、タイマー34で検知されるデータTB3がそれぞれ各基準値を超えることを判定手段35で検知される。
【0032】
この場合、上述したデータTB1、TB2、TB3のうち、予め設定した1または複数のデータが基準値を超えたことを判別手段35で検知することで、制御部33からの信号出力により入口流路25の開閉弁26を閉弁し、入口11から外側領域5内への油の通液をOFFにする。
そして、図3に示す開閉駆動装置18の一対のエアシリンダー20をONして各ロッド19を収縮することで、図4に示すようにヨーク14をそれぞれハウジング2から離間させる。これにより、各ヨーク14の両端に設けた永久磁石15がハウジング2の円弧状部2aに固定したティース16から離間する。そして、ハウジング2の内側領域4内のアモルファス合金細線9の着磁はOFFとなる。これによって、油の通液が停止されると共に油中の鉄粉等の強磁性体の吸着が停止される。
【0033】
この状態で、出口流路27からハウジング2の出口12を通して内部領域4内に逆洗液を流し、消磁状態のアモルファス合金細線9に吸着された鉄粉等の強磁性体を洗い流す。そして、鉄粉等の強磁性体を含む逆洗液をハウジング2の下部のテーパ部2bから逆洗出口6、そして開弁された開閉弁36を通して排出させる。
所定時間逆洗した後、制御部33からのON信号により、開閉駆動装置18のエアシリンダー20を駆動させてロッド19を伸長させることで、図4に示すように永久磁石15がハウジング2のティース16から分離された状態から図3に示すように永久磁石15がティース16に密着する状態になるようヨーク14が移動させられる。この状態で、磁気分離フィルター装置1は着磁ON状態になり、内側領域4内のアモルファス合金細線9に磁場が形成される。
そして、入口流路25の開閉弁26を開弁することで、油がハウジング2の外側領域5に流入される。
【0034】
上述のように本実施形態による磁気分離フィルター装置1によれば、ハウジング2を略円筒状に形成したことで、高圧の油等の流体に適用できる。そして、ハウジング2内に平行板からなる仕切り板3を対向配置させ、仕切り板3で仕切られた内側領域4内にアモルファス合金細線9を充填させて磁場を形成するようにしたから、磁場が高く均一であり内側領域4を大径化できる。しかも、ハウジング2内の外側領域5には磁場がほとんど形成されないから、油の流入側流路として使用できる。
また、ハウジング2内に流入する油は、入口11から仕切り板3で内側領域4と仕切られた外側領域5を降下して流れ、仕切り板3の下端で反転して内側領域4内を上昇するものであるから、反転時に慣性力と重力の沈降分離によって一部の鉄粉等の粒子を事前に分離できるため、フィルターメディアとしてのアモルファス合金細線9の負担を軽減できる。
しかも、外側領域5と内側領域4の面積比を1:5〜1;100に設定することで、吸着を行う内側領域4での油の流速を鉄粉等の非磁性体等の吸着に適するように低速に設定できる。
また、ハウジング2の下部にテーパ部2bを設けたことで、逆洗液を上側から下側に流す際の逆洗浄を安定的に行える。
【0035】
また、永久磁石15を固定したヨーク14を磁束のない部分で2分割でき、しかも、ハウジング2に固定したティース16と永久磁石15の接合面を平面にしたことで、磁気のロスを低減できる。
また、従来、磁気分離フィルター装置の永久磁石をハウジングから着脱する場合には手作業で行っていたが、本実施形態の磁気分離フィルター装置1によれば充填部差圧計29、積算流量計31、タイマー34等の測定量や測定時間を検知して判定手段35で洗浄時期を判別して開閉駆動装置18によって自動的にハウジング2に対するヨーク14及び永久磁石15の着脱を切り換えできる。しかも、開閉駆動装置18はエアシリンダー20による簡単な機構であり、充填部差圧計29、積算流量計31、タイマー34の少なくとも1以上のデータによって着磁と逆洗とを自動的に切り換え制御することができて適正な逆洗が可能であり、連続使用してもメンテナンスを行う間隔を長くできる。また、一つの制御装置33に対して、2つ以上の複数の磁気分離フィルター装置1を設けることで、連続的に流れる流体に対しても対応出来る。
【0036】
なお、本発明は上述の実施形態による磁気分離フィルター装置1の構成に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない限り適宜の変更や追加等が行える。
図7は、磁気分離フィルター装置1におけるハウジング2におけるティース16及び仕切り板3とヨーク14の両端部に設けた永久磁石15との関係を示すものである。図7において、例えば略円筒状のハウジング2の外側領域5と内側領域4との水平断面における面積比を1:7に設定した場合、ハウジング2の中心Oから磁路16の両端部までの角度範囲は例えば46.2度となる。また、外側領域5と内側領域4との面積比を1:10に設定した場合には磁路16の両端部までの角度範囲は49.9度(図7参照)、外側領域5と内側領域4との面積比を1:20に設定した場合にはティース16の両端部までの角度範囲は55.7度となる。
このように設定することで、ヨーク14の両端部に設けた2つの永久磁石15間において、永久磁石15に密着するティース16の幅の磁束がそのまま仕切り板3でほぼ仕切られた範囲のハウジング2内の内側領域4内のアモルファス合金細線9を平行に通過する。仕切り板3によって磁束がその外側に広がらないために内側領域4で均一な磁場が形成される。一方、仕切り板3が設けられないと磁束が外側に広がり、好ましくない。
【0037】
次に、磁気分離フィルター装置1の実施例において、外側領域5と内側領域4との面積比に応じた着磁装置とハウジング2の内側領域4内の磁場について行ったシミュレーション結果を図8〜図10に示す。
図8及び図9において、(1)外側領域5と内側領域4との面積比を1:7に設定した場合、永久磁石15、ティース16から内側領域4へ磁束が真っ直ぐ進もうとするが、積層電磁鋼板からなるティース16は磁気抵抗が小さいため磁束はティース16内の幅方向外側に流れる傾向がある(図10参照)。そのため、磁路16の外側端部まで流れた後に内側領域4へ流れる傾向にある。面積比を(2)1:10と(3)1:20に設定した場合も同様な傾向にあるが、内側領域4内の磁場強度は(1)面積比1:7の場合より僅かずつ減縮した。
また、(4)面積比1:7で、ハウジング2に固定するティース16を省略した場合、(1)と比較して内側領域4内の磁場は低下したが、減衰幅は小さかったので、ティース16は省略してもよいことがわかった。(5)面積比1:7で、永久磁石15とハウジング2との間でギャップが広い両端側のみ積層電磁鋼板からなるティース16を形成し、その中間を空間に形成した場合、ティース16内で幅方向外側に流れる磁束を防止できて磁束密度の分布がより平準化される。(5)は(1)と比較して全体的には微減しているが、内側領域4の長手方向両端の磁束密度が上昇し(0.179T)全断面が均一化している。
【0038】
また、本発明の実施例と比較例についての磁束密度のシミュレーションを行い、その結果を図11及び図12に示す。
実施例と比較例の基本構成は上述した実施形態による磁気分離フィルター装置1と同じとし、図8の(1)のように、外側領域5と内側領域4との面積比を1:7に設定した場合で1対の仕切り板3を設けた構成を実施例1とし、図9の(5)に示すようにティース16の幅方向中央部の積層電磁鋼板を切除した(周方向の1/2程度の長さ分切除した)構成を実施例2とし、仕切り板3を設けない構成を比較例として、シミュレーションを行った。
図11において、磁束密度の測定は、ハウジング2の中心Oから内側領域4の仕切り板3に直交する半径方向をX方向とし、X方向に直交する内側領域4の長手方向(磁路16の方向)をY方向として下記表1及び表2に示す間隔で磁束密度[T](テスラ)を測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
図11(a)、(b)に示す測定結果において、X方向では実施例1及び実施例2とも比較例よりも磁束密度は高かった。特にX方向(幅方向)において、端部へ近づくほど磁束密度は上昇した。Y方向においても実施例1及び実施例2とも比較例よりも磁束密度は高かった。実施例1は中心から離れる程、磁束密度が減衰して比較例に近づく傾向にあった。
また、図12においては、実施例1及び2とも磁束密度は閾値0.16Tより大きく、両端部を除いて0.18以上であった。実施例2は磁束密度の分布がより平準化されている。これに対し、比較例では実施例1,2より低かった。
【0042】
なお、上述した実施形態による磁気分離フィルター装置1では、入口11からハウジング2の仕切り板3で仕切られた外側領域5に油等の流体を流入させて降下させ、仕切り板3の下端で反転させて内側領域4内を上昇するようにしたが、この構成に代えて、油等の流体を逆洗液出口6からハウジング2内に流入させ、内側領域4を通して上昇させて出口12から排出させるようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、略半円弧状のヨーク14の両端にそれぞれ永久磁石15を連結して、アモルファス合金細線9を充填した内側領域4の対向する円弧状部分2aにそれぞれ2個ずつの永久磁石15を設けたが、本発明に用いる永久磁石15はこの構成に限定されるものではなく、例えば片側に1個ずつ設けてもよい。或いは、片側のヨーク14に偶数個ずつ配設してもよい。
また、ヨーク14は電磁鋼板を積層して形成したものに限定されるものではなく、フェライトなどでもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 磁気分離フィルター装置
2 ハウジング
3 仕切り板
4 内側領域
5 外側領域
8a、8b 支持金具
9 アモルファス合金細線
11 入口
12 出口
14 ヨーク
15 永久磁石
16 ティース
18 開閉駆動装置
20 エアシリンダー
29 充填部差圧計
31 積算流量計
33 制御装置
34 タイマー
35 判定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状のハウジング内を仕切り板で仕切り、前記ハウジングと仕切り板で仕切られた第一領域内にアモルファス合金細線からなるフィルターメディアを充填し、前記ハウジング外側の第一領域に対向する位置に永久磁石を配設して、前記第一領域内に磁場を形成するようにしたことを特徴とする磁気分離フィルター装置。
【請求項2】
前記永久磁石には高透磁物質からなるヨークが帰磁路として接続されている請求項1に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項3】
前記永久磁石と前記ハウジングの第一領域との間には高透磁率で残留磁気のない物質からなるティースが配設され、該ティースと永久磁石の当接面は平面とされている請求項1または2に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項4】
前記ハウジングに対して前記ヨークと永久磁石を対向配置させ及び離間可能な開閉駆動装置を備えている請求項1乃至3のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項5】
前記開閉駆動装置によるヨークと永久磁石のハウジングに対する対向配置及び離間の切り換え制御は、タイマーによる着磁時間、前記フィルターメディアの上下流側間の差圧、或いは前記フィルターメディアを通液した流体の積算流量のいずれか1または複数のデータによって判別されるようにした請求項1乃至4のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項6】
前記フィルターメディアで吸着すべき異物を含む流体が、前記ハウジングと仕切り板で仕切られたアモルファス合金細線を充填する第一領域内を下方から上方に向けて流れるようにした請求項1乃至5のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項7】
前記フィルターメディアで吸着すべき異物を含む流体が、前記ハウジングと仕切り板で第一領域と仕切られた第二領域を降下して反転し、前記第一領域を上昇するようにした請求項1乃至6のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項8】
前記ティースは中央の一部が切除されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項9】
前記永久磁石は、仕切り板で仕切られたハウジングの第一領域に対向して、それぞれ1または複数個配設されている請求項1乃至8のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項10】
複数の磁気分離フィルターを並列接続し、逆洗タイミングが重ならない様に制御して交互に通液させ、連続通液で濾過処理が出来るようにした請求項1乃至9のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項1】
略円筒状のハウジング内を仕切り板で仕切り、前記ハウジングと仕切り板で仕切られた第一領域内にアモルファス合金細線からなるフィルターメディアを充填し、前記ハウジング外側の第一領域に対向する位置に永久磁石を配設して、前記第一領域内に磁場を形成するようにしたことを特徴とする磁気分離フィルター装置。
【請求項2】
前記永久磁石には高透磁物質からなるヨークが帰磁路として接続されている請求項1に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項3】
前記永久磁石と前記ハウジングの第一領域との間には高透磁率で残留磁気のない物質からなるティースが配設され、該ティースと永久磁石の当接面は平面とされている請求項1または2に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項4】
前記ハウジングに対して前記ヨークと永久磁石を対向配置させ及び離間可能な開閉駆動装置を備えている請求項1乃至3のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項5】
前記開閉駆動装置によるヨークと永久磁石のハウジングに対する対向配置及び離間の切り換え制御は、タイマーによる着磁時間、前記フィルターメディアの上下流側間の差圧、或いは前記フィルターメディアを通液した流体の積算流量のいずれか1または複数のデータによって判別されるようにした請求項1乃至4のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項6】
前記フィルターメディアで吸着すべき異物を含む流体が、前記ハウジングと仕切り板で仕切られたアモルファス合金細線を充填する第一領域内を下方から上方に向けて流れるようにした請求項1乃至5のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項7】
前記フィルターメディアで吸着すべき異物を含む流体が、前記ハウジングと仕切り板で第一領域と仕切られた第二領域を降下して反転し、前記第一領域を上昇するようにした請求項1乃至6のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項8】
前記ティースは中央の一部が切除されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項9】
前記永久磁石は、仕切り板で仕切られたハウジングの第一領域に対向して、それぞれ1または複数個配設されている請求項1乃至8のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【請求項10】
複数の磁気分離フィルターを並列接続し、逆洗タイミングが重ならない様に制御して交互に通液させ、連続通液で濾過処理が出来るようにした請求項1乃至9のいずれか1項に記載された磁気分離フィルター装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−176382(P2012−176382A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41654(P2011−41654)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
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