説明

磁気分離用布帛及び磁気分離装置

【課題】水中で酸化劣化を起さず、磁性を有する粒子と布帛との接着性が高い、取り扱い性に優れた磁気分離用布帛及び磁気分離装置を提供する。
【解決手段】磁気分離装置に用いる磁気分離用布帛10を、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩のうちから選ばれる少なくとも1種の官能基を側鎖および/または分子末端に有する熱可塑性共重合ポリエステル樹脂を少なくとも1種類含む樹脂組成物に磁性を有する粒子を含有させた繊維で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気分離用布帛及び磁気分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
染色工場、食品工場、製紙工場、半導体工場などから出る産業廃水や生活排水には、COD原因物質やBOD原因物質などの水質汚濁物質が懸濁状態やコロイド物質及び溶解状態にて存在している。この様な環境汚染物質の除去は環境浄化のため必要とされている。
【0003】
また上述の廃水中にはレアアースメタルが混入しており、これらの捕獲は省資源技術として期待されている。
【0004】
環境汚染物質の除去方法については、濾過、沈殿、吸着、磁気分離などの物理的処理方法、オゾン、過酸化水素、紫外線等による酸化分解を利用した化学処理法、活性汚泥法、生物処理法などが挙げられるが、たとえば活性汚泥法では曝気槽の必要性や余剰汚泥発生が問題となる。
【0005】
磁気分離法は環境汚染物質の除去、レアアースメタルなど希少資源の捕獲などに利用可能であり、特に超電導コイルの利用によりその技術は進んでいる(特許文献1)。しかしながら、磁気分離法では磁性を有する物質を捕獲するための網、フィルターが必要であり、鉄製のものが多く使われている。しかしながら、鉄網は水中で使用すると酸化劣化するという問題点がある。マグネタイトに代表される酸化物磁性を有する体の場合、脆いため取り扱い性・加工性に優れた磁性を有する繊維とすることは困難である。(特許文献3)
【0006】
上記問題を解決する手段として磁性を有する材料を混入した有機高分子繊維からなる、磁性を有する繊維の使用が挙げられる。一般には磁性を有する粒子を熱可塑ポリマーに混合し、紡糸するものが知られているが、無機粒子を混合した高分子の紡糸は困難であった。このため、芯鞘構造の複合糸が開発されてきた。磁性を有する粒子と混合する熱可塑ポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどが検討された(特許文献2〜5)。しかしながら、磁性を有する粒子と熱可塑性ポリマーの親和性は悪く、特に水中使用により、磁性を有する粒子と熱可塑性ポリマーの界面が破壊され易いため、折れやすく、加工性・取り扱い性が悪く、また長期使用に対し性能が低下する可能性があった。特に磁気分離目的の場合、磁気粉は電磁力を受けるため周辺樹脂との間の破壊が起こりやすい問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−106854
【特許文献2】特開平3−130413
【特許文献3】特公昭64−482
【特許文献4】特公昭 61−1525
【特許文献5】特開平3−199407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
磁気分離システムに用いられる磁気繊維網、フィルターは現在、鉄など強磁性を有する金属からなるものが使用されているため、特に水中にて酸化劣化を起す問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の磁気分離用布帛は所定の官能基を有する熱可塑性ポリマーの中に磁性を有する粉が含まれてなるため、水中での酸化劣化を起こしにくい。また磁性を有する粉と所定の官能基を有する熱可塑性ポリマーの複合体はその界面での接着性が高いため、本発明に用いる磁性を有する繊維は靭性を有し、折れ・切断などの破損が起こりにくい。よって本発明の磁性を有する繊維を用いた磁気分離用布帛は設置時、使用中に破損を起しにくく、取り扱い性が良好である。また本発明の磁気分離用布帛に用いる繊維は靭性があるため、ニット、平織り、不織布などへの加工が可能であり、よって本発明の磁気分離用布帛は目的に応じた形態に作製することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来においては不十分であった、酸化や磁気粉離脱による劣化を起さず、取り扱い性に優れた磁気分離用布帛及びこれを用いた磁気分離装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の磁気分離装置の一実施を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の磁気分離網の模式図である。
【図3】芯鞘複合糸を紡糸する際の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者は上記問題を解決するために、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の通りである。
1.カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩のうちから選ばれる少なくとも1種の官能基を側鎖および/または分子末端に有する熱可塑性共重合ポリエステル樹脂を少なくとも1種類含む樹脂組成物に磁性を有する粒子を含有させて繊維を構成し、この磁性を有する繊維を用いることを特徴とする磁気分離用布帛。
2.磁性を有する繊維が芯鞘型複合繊維構造を有し、芯、鞘の少なくともいずれか一方に磁性を有する粒子を含有することを特徴とする上記1記載の磁気分離用布帛。
3.上記1〜2記載の磁気分離用布帛を用いることを特徴とする磁気分離装置。
4.超電導磁石を利用することを特徴とする上記4記載の磁気分離装置。
【0013】
本発明の磁気分離用布帛は、磁性を有する粒子を含有する熱可塑性ポリマーからなる磁性を有する繊維を用いることが特徴である。本発明に用いる磁性を有する粒子としては鉄、コバルト、ニッケルなどの鉄族磁性を有する金属、ネオジウムなどのレアアース系の金属、マグネタイト、酸化コバルトなどの酸化物磁性を有する化合物などが挙げられる。特にマグネタイトなど磁性を有する酸化物が望ましい。
【0014】
本発明における磁性を有する粒子を含有する熱可塑性樹脂のうち、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂とはカルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩のうちから選ばれる少なくとも1種の官能基を側鎖及び/または分子末端に有する熱可塑性共重合ポリエステル樹脂であるが、耐久性・成型加工性・金属及び金属酸化物粒子分散性・金属及び金属酸化物粒子密着性から、特に5−ナトリウムスルホイソフタル酸またはそのジエステル誘導体が共重合されている共重合ポリエステル樹脂であることより望ましい。
【0015】
本発明における共重合ポリエステルを構成するジカルボン酸モノマー成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族系二塩基酸や、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の脂肪族系二塩基酸、或いは1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族系二塩基酸が挙げられる。これら二塩基酸の内、テレフタル酸、イソフタル酸が得られるポリエステル樹脂の物性低下が少なく好ましい。
【0016】
グリコール成分としては例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3−ヒドロキシプロパネート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール等の脂肪族系ジオール類や1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシプロピル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシメトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4ヒドロキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、3(4),8(9)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール等の脂環族系グリコール類が挙げられる。
【0017】
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、これら複数のポリマーの混合体でもよい。また、水中での加水分解を防ぐ為、末端封止剤として、エポキシやカルボジイミド等を添加しても良い。さらに、成型加工中の耐熱劣化性や、長期耐熱老化性を上げる為に、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤を適宜使用しても良い。一方、必要な耐久性に応じて、金属粒子との接触による劣化を防ぐ為の、金属接触劣化防止剤を適宜使用しても良い。しかし前記共重合ポリエステル樹脂を、高分子中少なくとも10体積%以上、望ましくは20体積%以上含まれることが必要である。
【0018】
本発明における磁性を有する粒子を含有する熱可塑性ポリマーとしては、結晶性ポリマー、非晶性ポリマーのいずれでもよいが、加工時および加工後の取扱いの簡便さから結晶性ポリマーが望ましい。
【0019】
本発明における磁性を有する繊維は単一構造からなる繊維でも芯鞘構造からなる複合繊維でもよいが、芯鞘構造からなる複合繊維が望ましい。
【0020】
本発明における磁性を有する繊維が芯鞘構造からなる複合繊維である場合、磁性を有する粒子を含有する熱可塑性ポリマーは芯部分を構成していても、鞘部分を構成していても、その両方を構成していてもよいが、鞘部分に含まれる構造が望ましい。
【0021】
本発明における磁気繊維の製造方法として、磁性を有する粒子と熱可塑ポリマーの混合方法として、磁性を有する粒子と熱可塑ポリマーを溶融混合する方法、溶液混合する方法、また鉄族錯塩を熱可塑ポリマーに溶解混合した上で化学反応によって磁性を有する粒子を生成する方法等が挙げられるが、そのいずれでもよい。しかし、製造方法の難度を考慮すると、磁性を有する粒子と熱可塑性ポリマーを溶融混合する方法が望ましい。また磁性を有する粒子と熱可塑性ポリマーの混合後、紡糸して繊維を作製した後、磁性を有する粒子を混入してもよいが、磁性を有する粒子の脱落を防止するための接着剤や熱可塑性ポリマーの再溶融等の作業が必要となる。紡糸方法としては溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸などあらゆる紡糸方法のいずれでもよい。本発明に記載される芯鞘構造からなる磁性を有する繊維の製造方法、構造などは特許文献(2)〜(5)に記されている。これらを利用してもよいが、それに限るものではない。
【0022】
本発明における磁性を有する繊維は長繊維からなるモノフィラメント、マルチフィラメント、カバリング糸、短繊維集合体紡績糸などいずれでもよいが、長繊維からなるモノフィラメント、マルチフィラメントが望ましい。また前記磁性を有する粒子を含有する繊維はその全体を構成していても、一部分を構成していてもよい。
【0023】
本発明における磁性を有する繊維は磁性を有する粒子を含有しないポリマー繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維などの無機繊維と複合、混合使用してもよい。
【0024】
本発明における磁気分離用布帛は該磁性を有する繊維を含んでなる布帛であるが、その形態は平織り、ニット、綾織、繻子織、不織布、短繊維集合体からなるフィルターなどいずれの形態でもよい。また、これら複数の形態の布帛を組み合わせてもよい。
【0025】
本発明における磁気分離用布帛は該磁性を有する繊維を含んでなる布帛であるが、ガラス繊維、ポリマー繊維、炭素繊維など他の繊維と混合したものでもよい。
【0026】
本発明における磁気分離装置は該磁気繊維布帛を用いてなるが、磁場発生装置として永久磁石、電磁石、超電導磁石が利用できる。永久磁石としては鉄、コバルト、ニッケルなど鉄族金属、強磁性を有する合金、ユーロピウム、ガドリニウムなど希土類金属などが挙げられるが、特にネオジウム磁石が望ましい。電磁石、超電導磁石では、そのいずれでも良いが、強磁場を発生する超電導磁石が望ましい。超電導磁石としてはNbTi, NbAl, NbSnなど金属系超電導線材を用いるマグネットコイル、ビスマス系酸化物、イットリウム系酸化物を用いる高温超電導コイル、またはバルク磁石などが上げられるが、これらに特に制限されるものではない。
【実施例】
【0027】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することはすべて本発明の技術範囲に包含される。
【0028】
本発明で用いた実験方法を以下に示す。本発明では超電導マグネットを利用した磁気分離装置を作製し、その分離特性の耐久性を測定した。以下にこれを具体的に示す。
【0029】
(1)実験装置
図1に実験装置概略を示す。実験装置は超電導マグネットと捕獲するための磁気微粒子を流す水路、これを捕獲する磁気分離網とからなる。各部分について以下に記す。
i)超電導マグネット:コイル内径100mm, コイルボビン外径140mm, コイル高さ12mmのボビンにビスマス系超電導テープ(Bi−2223)線材を巻いてなる高温超電導マグネットを10段積み重ねたものである。これをGM冷凍機にて冷却せしめ、超電導通電時に磁場を発生する。発生磁場は約5Tである。
ii)水流経路:内径30mmのプラスチック製パイプからなる。
iii)磁性を有する分離網:外径30mm, 肉厚1.5mm、高さ10mmのパイプに磁気網を貼り付けたものである。これを図2に示す。これを図1に示すように水流経路中にセットする。
(2)測定方法:70ナノメーター径の酸化鉄(Fe)微粒子を0.5%濃度となるよう水に分散し、これを図1に示す実験系に投入し、5L/minの速度で24時間循環させ、磁気網に捕獲される磁気微粒子量を測定した。これを6ヶ月継続し、1ヶ月経過ごとに酸化鉄の濃度を測定することにより、捕獲量変化を観察した。以下に実施例を示す。
【0030】
(実施例1)
テレフタル酸/イソフタル酸/トリメリット酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//ブタンジオールがモル比52/44/1/3//100となる共重合ポリエステル樹脂を1kgに対し、マグネタイト(0.23ミクロン径)を3kg混合してなるレジンを鞘成分とし、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコールがモル比66/34//97/3となる共重合ポリエステルを芯成分とした。図3に使用した紡糸装置の略図を示す。これを用いて、芯/鞘面積比が1/1の磁性を有する繊維を得た。得られた磁性を有する繊維の断面は25ミクロンの円形であった。得られた磁性を有する繊維12本を集めて磁気繊維ヤーンとした。
本磁気繊維ヤーンを用いて、ウェル=26ヤーン/インチ、コース=21ヤーン/インチのニット織物を作製し、これを2枚重ねて磁気分離用布帛とした。
【0031】
(実施例2)
テレフタル酸/イソフタル酸/トリメリット酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//ブタンジオールがモル比53/43/1/3//100となる共重合ポリエステル樹脂を1kgに対し、マグネタイト(0.23ミクロン径)を3kg混合してなるレジンを鞘成分とし、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコールがモル比66/34//97/3となる共重合ポリエステルを芯成分とした。図3に使用した紡糸装置の略図を示す。これを用いて、芯/鞘面積比が1/1の磁性を有する繊維を得た。得られた磁性を有する繊維の断面は60ミクロンの円形であった。得られた磁性を有する繊維を12本集めて磁気繊維ヤーンとした。
本磁気繊維ヤーンを用いて、ウェル=26ヤーン/インチ、コース=21ヤーン/インチのニット織物を作製し、これを2枚重ねて磁気分離用布帛とした。
【0032】
(実施例3)
テレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸/トリメリット酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//ブタンジオールがモル比50/43/3/1/3//100となる共重合ポリエステル樹脂を1kgに対し、マグネタイト(0.23ミクロン径)を3kg混合してなるレジンを鞘成分とし、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコールがモル比63/37//97/3となる共重合ポリエステルを芯成分とした。図3に使用した紡糸装置の略図を示す。これを用いて、芯/鞘面積比が1/1の磁性を有する繊維を得た。得られた磁性を有する繊維の断面は60ミクロンの円形であった。得られた磁性を有する繊維12本を集めて磁気繊維ヤーンとした。
本磁気繊維ヤーンを用いて、ウェル=26ヤーン/インチ、コース=21ヤーン/インチのニット織物を作製し、これを2枚重ねて磁気分離用布帛とした。
【0033】
(実施例4)
テレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸/トリメリット酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//ブタンジオールがモル比50/43/3/1/3//100となる共重合ポリエステル樹脂を1kgに対し、マグネタイト(0.23ミクロン径)を4.5kg混合してなるレジンを鞘成分とし、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコールがモル比63/37//97/3となる共重合ポリエステルを芯成分とした。図3に使用した紡糸装置の略図を示す。これを用いて、芯/鞘面積比が1/1の磁性を有する繊維を得た。得られた磁性を有する繊維の断面は60ミクロンの円形であった。得られた磁性を有する繊維12本を集めて磁気繊維ヤーンとした。
本磁気繊維ヤーンを用いて、平均繊維長6cmの短繊維を作製し、これを用いてなる目付け300g/mの不織布シートを作製した。これを磁気分離用布帛とした。
【0034】
(実施例5)
テレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//ブタンジオールがモル比50/43/3/3//100となる共重合ポリエステル樹脂を1kgに対し、マグネタイト(0.23ミクロン径)を4.5kg混合してなるレジンを鞘成分とし、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコールがモル比63/37//97/3となる共重合ポリエステルを芯成分とした。図3に使用した紡糸装置の略図を示す。これを用いて、芯/鞘面積比が1/1の磁性を有する繊維を得た。得られた磁性を有する繊維の断面は60ミクロンの円形であった。得られた磁性を有する繊維12本を集めて磁気繊維ヤーンとした。
本磁気繊維ヤーンを用いて、ウェル=26ヤーン/インチ、コース=21ヤーン/インチのニット織物を作製し、これを2枚重ねて磁気分離用布帛とした。
【0035】
(実施例6)
テレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸/トリメリット酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//ブタンジオール/エチレングリコール/ネオペンチルグリコールがモル比50/43/2/2/3 //60/20/20となる共重合ポリエステル樹脂1kgに対し、マグネタイト(短軸径0.02ミクロン、長軸径0.08ミクロン)を2kg混合してなるレジンを芯成分とし、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール/ジエチレングリコールがモル比60/40//98/2となる共重合ポリエステルを鞘成分とした。図3に使用した紡糸装置の略図を示す。これを用いて、芯/鞘面積比が2/1の磁性を有する繊維を得た。得られた磁性を有する繊維の断面は550ミクロンの円形であった。本磁性を有する繊維を用いて、目付け300g/mの平織りシートを作製した。これを磁気分離用布帛とした。
【0036】
(実施例7)
アジピン酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸//ネオペンチルグリコール/1,6−ヘキサンジオールがモル比96/4//25/75で共重合してなるポリエステルジオール、アジピン酸//ネオペンチルグリコール/1,6−ヘキサンジオールがモル比100//25/75で共重合してなるポリエステルジオール、これらとネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジフェニルメタンジイソシアネートを重量比36/36/4/1/23の比率で共重合してなるポリエステルウレタンを得た。マグネタイト(短軸径0.02ミクロン、長軸径0.08ミクロン)を5kg, 同ポリエステルウレタンを1kg混合し、直径20ミクロンのPET繊維表面に塗布して磁性を有する繊維を得た。これを用いて目付け300g/mの平織りシートを作製した。これを磁気分離用布帛とした。
【0037】
(比較例1)
直径300ミクロンの磁化した鉄のワイヤーを用いて3mmピッチのメッシュを作製し、これを磁気分離網として用いた。
【0038】
(比較例2)
直径300ミクロンの磁化した鉄のワイヤーを用いて2mmピッチのメッシュを作製し、これを磁気分離網として用いた。
【0039】
(比較例3)
直径30ミクロンの鉄のワイヤーの表面に厚み5ミクロンでポリエステルを塗布したものを磁気繊維とし、これを長さ8cmに切ったものを用いて目付け300g/mの不織布を作製して磁気分離布帛とした。
【0040】
(比較例4)
直径50ミクロンのネオジウムのワイヤーに厚み5ミクロンでエナメルを塗布したものを磁気繊維とし、これを用いて不織布を作製して磁気分離布帛とした。
【0041】
(比較例5)
直径500ミクロンの針金からなる5mmピッチのメッシュを作成し、これを磁気分離布帛として用いた。
【0042】
(比較例6)
ポリプロピレン1kgとマグネタイト(0.23ミクロン径)を3kg混合してなるレジンを芯成分とし、ポリプロピレン・エチレン共重合体を鞘成分とし、芯/鞘断面積比=4/6で直径600ミクロンの糸を作製した。これを用いて、目付け300g/mの平織りシートを作製し、磁気分離用布帛とした。
【0043】
(比較例7)
ポリエチレンテレフタレート3kgにストロンチウムフェライト2kgを混合したものを芯成分とし、ポリブチレンテレフタレートを鞘成分とし、芯/鞘断面積比=5/5で直径600ミクロンの糸を作製した。これを用いて、目付け300g/mの平織りシートを作製し、磁気分離用布帛とした。
【0044】
(比較例8)
ナイロン6を2.5kg, マグネタイト(0.23ミクロン径)2.5kgを混合したものを芯成分とし、ポリプロピレンを鞘成分とし、芯/鞘断面積比=5/5で直径600ミクロンの糸を作製した。これを用いて、目付け300g/mの平織りシートを作製し、磁気分離用布帛とした。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の磁気分離用布帛及び磁気分離装置は優れた磁気分離能を有し、且つ耐久性に優れるため、廃水処理などの環境改善、レアアースメタル回収などの省資源化技術に貢献するため、産業界に寄与すること大である。
【符号の説明】
【0047】
10:磁気分離布帛(網)
11:超電導マグネット
12:磁気成分が混入した水流投入口
13:プラスチックパイプ
21:芯糸用ポリマー
22:鞘糸用ポリマー
23:芯糸用ノズル孔
24:鞘糸用ノズル孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩のうちから選ばれる少なくとも1種の官能基を側鎖および/または分子末端に有する熱可塑性共重合ポリエステル樹脂を少なくとも1種類含む樹脂組成物に磁性を有する粒子を含有させて繊維を構成し、この磁性を有する繊維を用いることを特徴とする磁気分離用布帛。
【請求項2】
磁性を有する繊維が芯鞘型複合繊維構造を有し、芯、鞘の少なくともいずれか一方に磁性を有する粒子を含有することを特徴とする請求項1記載の磁気分離用布帛。
【請求項3】
請求項1〜2記載の磁気分離用布帛を用いることを特徴とする磁気分離装置。
【請求項4】
超電導磁石を利用することを特徴とする請求項3記載の磁気分離装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−52374(P2013−52374A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193800(P2011−193800)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】