説明

磁気分離装置および液体清浄化装置

【課題】 使い勝手の向上を容易に図ることのできる磁気分離装置および液体清浄化装置を提供する。
【解決手段】 磁気分離装置1は、非磁性体によって一端が有底の筒状に形成され、この一端側が被分離体の存在側に配置される磁石ケース2と、磁石ケース2の内筒内に装着され、磁石ケース2の内筒内において磁石ケース2の一端側と他端側との間を往復動可能に配設された永久磁石3と、磁石ケース2の外周面の一端側に付着した付着物を掻き落とすために非磁性体によって環状に形成され、磁石ケース2の外周面に磁石ケース2の長手方向に沿って移動可能に装着されたスクレーパ4とを設ける。また、液体清浄化装置51は、濾過分離装置52の液体Eの流動方向の下流側に、磁気分離装置1を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い勝手に優れた磁気分離装置および液体清浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、固体と固体または固体と液体とからなる被分離体を、粒径の異なる固体と固体とに篩い分けたり、固体から液分を脱水したり、あるいは、液体から固体を除去することのできる各種の分離装置が知られている。
【0003】
このような分離装置の一種として、磁性体を含む被分離体からバーマグネットやマグネットプレートなどの永久磁石の磁力によって磁性体を分離することのできる簡単な構造の磁気分離装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば、蓋によって密閉された作動油の油圧タンクの内部に永久磁石からなるマグネットプレートを配置し、マグネットプレートによって作動油に含まれる磁性体を磁力によって吸着分離するものがある。
【0005】
また、磁性体を含む被分離体から磁性体を分離することのできるものとして、スクリーン(篩)を用いた濾過分離装置があり、このような濾過分離装置は、例えば、加工部分の冷却および潤滑に循環使用される冷却液などの液体に含まれる微鉄粉の分離を行う液体清浄化装置のドラムフィルタなどとして用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−230345号公報
【特許文献2】特開平11−090763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年においては各種装置の高性能化が求められており、各種装置の高性能化の一つとして、磁性体の分離に用いる分離装置においても清掃などのメンテナンス作業性をはじめとする使い勝手の向上が求められている。
【0008】
すなわち、前述した従来の磁気分離装置においては、バーマグネットに吸引吸着させた磁性体の除去および清掃などのメンテナンスに多大な労力と時間とを必要とし、使い勝手が悪いという問題点があった。
【0009】
特に、作動油の油圧タンクの内部に配置されたマグネットプレートの清掃には、油圧タンクの蓋の分離、作動油からのマグネットプレートの取り出し、作動油にまみれたマグネットプレートの清掃に多大な労力と時間とを必要とし、使い勝手が悪いことが知られている。
【0010】
また、前述した従来の液体清浄化装置においては、濾過分離装置のスクリーンが破損することがあるが、スクリーンの破損の有無、すなわち、濾過分離装置の機能が正常か否かを判別することができず、使い勝手が悪いという問題点があった。
【0011】
さらに、濾過分離装置では、微細な磁性体がスクリーンを通過するので、加工部分に微細な磁性粉が供給されることになり、例えば、ワークの取付精度、加工精度のバラツキや、装置の故障の原因となるなどの不都合が生じることが知られている。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、使い勝手の向上を容易に図ることのできる磁気分離装置および液体清浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため特許請求の範囲の請求項1に記載の本発明の磁気分離装置の特徴は、磁性体を含む被分離体から磁力によって磁性体を分離するための磁気分離装置において、非磁性体によって一端が有底の筒状に形成され、この一端側が被分離体の存在側に配置される磁石ケースと、前記磁石ケースの内筒内に装着され、前記磁石ケースの内筒内において前記磁石ケースの一端側と他端側との間を往復動可能に配設された永久磁石と、前記磁石ケースの外周面の一端側に付着した付着物を掻き落とすために非磁性体によって環状に形成され、前記磁石ケースの外周面に前記磁石ケースの長手方向に沿って移動可能に装着されたスクレーパとを有している点にある。そして、このような構成を採用したことにより、磁石ケースの内筒の一端側に永久磁石を位置させることで、磁石ケースの外周面の一端側に永久磁石の磁力によって磁性体を吸引吸着させることができる。この磁石ケースの外周面の一端側に吸着した磁性体は、永久磁石を他端側に移動させるという簡単な操作を行うことにより、磁性体を吸着している磁力を解除できるので、容易に除去することができる。さらに、磁力の解除によって除去しきれない付着物は、スクレーパを移動させることによって除去することができる。したがって、吸引吸着させた付着物の除去および清掃などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0014】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載の本発明の磁気分離装置の特徴は、請求項1において、前記磁石ケースの内筒の長さが、前記永久磁石の長さの2倍より長く形成されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、磁石ケースの外周面の一端側に吸着した磁性体に作用している磁力の解除を確実に行うことができる。
【0015】
さらに、特許請求の範囲の請求項3に記載の本発明の磁気分離装置の特徴は、請求項1または請求項2において、前記磁石ケースの外周面が装着され、前記磁石ケースをその長手方向に往復移動可能に支持する取付基体が設けられている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、設置箇所への設置を容易に行うことができる。
【0016】
また、特許請求の範囲の請求項4に記載の本発明の磁気分離装置の特徴は、請求項3において、前記スクレーパが、前記取付基体に支持されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、スクレーパを移動させずに、磁石ケースを移動させることができる。
【0017】
また、特許請求の範囲の請求項5に記載の本発明の磁気分離装置の特徴は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、複数の前記磁石ケースが設けられ、これらの磁石ケースが連結されて相互に平行に配列されているとともに、前記複数の磁石ケースの内筒内に装着されたそれぞれの永久磁石が連結されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、複数の永久磁石を配置することができるので、磁性体の分離効率を向上することができるとともに、複数の永久磁石あるいは複数の磁石ケースの移動を容易に行うことができる。
【0018】
また、特許請求の範囲の請求項6に記載の本発明の磁気分離装置の特徴は、請求項5において、前記複数の磁石ケースの間隔を調整する間隔調整手段が設けられている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、磁石ケースの間隔を容易に調整することができるので、取り扱い性を向上することができる。
【0019】
また、特許請求の範囲の請求項7に記載の本発明の液体清浄化装置の特徴は、循環使用される液体から磁性体を濾過分離装置によって分離し浄化することのできる液体清浄化装置において、前記濾過分離装置の液体の流動方向の下流側に、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の磁気分離装置を設けた点にある。そして、このような構成を採用したことにより、磁気分離装置によって磁性体の除去効率を向上することができるとともに、磁気分離装置に付着した磁性体を目視で確認するという簡単な動作で濾過分離装置のスクリーンの破損の有無を容易に判別することができる。その結果、メンテナンス時期を容易に判別することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る磁気分離装置および液体清浄化装置によれば、使い勝手の向上を容易に図ることができるなどの極めて優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0022】
図1ないし図6は本発明に係る磁気分離装置の実施形態を示すものであり、図1は要部の一部切断正面図、図2は図1の要部の平面図、図3は図1のA−A線に沿った要部を示す一部切断側面図、図4は図1の永久磁石および磁石用ロッドを示す正面図、図5は図1のケースグリップの要部を示す平面図、図6は図1のスクレーパの近傍の要部を示す拡大断面図である。
【0023】
図1ないし図3に示すように、本実施形態の磁気分離装置1は、磁石ケース2と、永久磁石3と、スクレーパ4と、取付基体5とを有している。
【0024】
前記磁石ケース2は、永久磁石3を内部に装着するとともに、永久磁石3の磁力によって磁性体を含む被分離体から磁性体を吸着するためのものであり、非磁性体によって、例えば、内径が28mm程度、肉厚が1.0mm程度、長さが400mm程度で、図1の下方に示す一端たる下端が有底とされた筒状に形成されている。
【0025】
なお、磁石ケース2の下端は、磁石ケース2の長手方向の外側に向かって直径が漸減する形状、本実施形態においては、下方に凸の半球状に形成されており、下端を平面とした場合に比較して、吸着した磁性体が磁石ケース2の外周から下方に向かって落ちやすく形成されている。勿論、下端の形状を平面としてもよい。
【0026】
本実施形態の磁石ケース2は、図1に示すように、左磁石ケース2a、中磁石ケース2bおよび右磁石ケース2cの3本の磁石ケース2(符号2は、左磁石ケース2a、中磁石ケース2bおよび右磁石ケース2cを総称する)がその長手方向を上下方向に向けて、図1の左右方向に沿って相互に平行に配列されており、各磁石ケース2の下端側が被分離体の存在側に配置されるようになっている。
【0027】
本実施形態の磁石ケース2の素材としては、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレスが用いられている。勿論、アルミニウム、樹脂などの各種の非磁性体から選択することができる。
【0028】
なお、配置される磁石ケース2の数としては、1、2、4以上の任意の整数から、仕様、設計コンセプトなどの必要に応じて選択することができる。
【0029】
また、複数の磁石ケース2の配列としては、相互に平行に配列されていればよく、図2に示す平面直線状だけでなく、平面多角形状(三角形、四角形、五角形・・・)、平面環状(円形、楕円形)、平面ジグザク状、平面波状などの各種の形状から仕様、設計コンセプトなどの必要に応じて選択することができる。
【0030】
さらに、磁石ケース2のサイズも、仕様、設計コンセプトなどの必要に応じて設定することができる。
【0031】
前記磁石ケース2の内筒内には、永久磁石3が装着されている。この永久磁石3は、磁石ケース2の外周面の被分離体側に、磁性体を含む被分離体から磁力によって磁性体を吸引吸着するためのものであり、例えば、外径22mm程度、長さ170mm程度の円柱状に形成されている。この永久磁石3としては、KS磁石鋼、フェライト磁石、アルニコ磁石、白金コバルト磁石、希土類磁石、あるいはこれらの磁粉をゴムや樹脂に混合した樹脂磁石あるいはゴム磁石などの各種のものから選択することができる。
【0032】
なお、本実施形態においてはアルニコ磁石が用いられている。また、永久磁石3としては、初期の磁束密度が、100000μテスラ(1000ガウス)以上のもの、本実施形態においては600000μテスラ(6000ガウス)程度のものが用いられている。この磁束密度は、仕様、設計コンセプトなどの必要に応じて設定すればよい。
【0033】
前記永久磁石3の長さとしては、磁石ケース2の内筒の長さの半分より短く、言い替えると、磁石ケース2の内筒の長さを永久磁石3の長さの2倍より長く形成することが、磁石ケース2に付着した磁性体を容易に除去することができるという意味で好ましい。
【0034】
前記永久磁石3の上端面の中心には、図4に詳示するように、永久磁石3より小径の磁石用ロッド6の下端が螺入され、ロックナット7により固定されている。そして、磁石用ロッド6の上端部は、図1に示すように、磁石ケース2の開口端に着脱自在に取着されたほぼ筒状のケースキャップ8の内孔に挿入されている。また、各磁石用ロッド6の上端面は、図1から図3に示すように、水平配置された磁石移動用に用いられるハンドルステー9の下面に、例えば ハンドルステー9の上方から挿入される固定ボルト(図2)10によって取着されており、ハンドルステー9を上下動させることで、各磁石用ロッド6の下端に取着された永久磁石3のそれぞれを同期させて磁石ケース2の内筒内を上下動させることができるようになっている。そして、ハンドルステー9の下端面がケースキャップ8の上端面に上方から当接することで、磁石ケース2の内筒内における永久磁石3の下端側への最大移動位置が規制されており、磁石ケース2の内筒内における永久磁石3の上端側への最大移動位置は、ロックナット7の上面がケースキャップ8の下面に当接することで規制されている。
【0035】
したがって、ハンドルステー9を上下動させることで、各永久磁石3は、それぞれの磁石ケース2の内筒内において、磁石ケース2の一端側たる下端側と他端側たる上端側との間をそれぞれが同期して往復動させることができるようになっている。
【0036】
なお、各永久磁石3は、永久磁石3および磁石用ロッド6などの自重によって、図1に示すように、常時は、ハンドルステー9の下端面がケースキャップ8の上端面に上方から当接した磁石ケース2の内筒内の最下端に位置するようになっている。
【0037】
図1から図3に示すように、各磁石用ロッド6は、図1の中央に配置された磁石用ロッド6がハンドルステー9の長手方向の中央部に配置されており、図1の左側に配置された磁石用ロッド6がハンドルステー9の左端側に配置され、図1の右側に配置された磁石用ロッド6が、ハンドルステー9の右端側に配置されている。また、ハンドルステー9の上面の左右方向両側には、固定ボルト10の頭部が着座するざぐり穴11および固定ボルト10のねじ部が挿通される上下方向に貫通するボルト挿通孔12がハンドルステー9の長手方向に沿って形成されており、ハンドルステー9に対する図1の左右両側に配置されている2つの磁石用ロッド6の取付位置をハンドルステー9の長手方向、すなわち、磁石ケース2の配列方向に沿って調整することができるようになっている。
【0038】
前記各磁石ケース2の外周面の長手方向のほぼ中央部には、円筒状のパイプホルダ13がそれぞれ装着されている。これらのパイプホルダ13は、各磁石ケース2bの外周面をその長手方向に沿って移動可能に配設されている。また、中磁石ケース2bに装着されたパイプホルダ13の上端側の外周面には、蝶ボルトなどからなるホルダ用止めねじ14が螺入されており、ホルダ用止めねじ14の先端を中磁石ケース2bの外周面に当接させることで、パイプホルダ13を中磁石ケース2bの長手方向の所望の位置に固定することができるようになっている。
【0039】
前記中磁石ケース2bの外周面に装着されたパイプホルダ13の上端側の背面側には、図3および図5に示すように、ケースグリップ15が配設されている。 前記ケースグリップ15は、その長手方向が磁石ケース2の配列方向に沿って延在するグリップ部16と、このグリップ部16の長手方向の中央部に基端部が接続されたグリップ接続部17とにより、平面ほぼT字状に形成されており、グリップ接続部17の先端部が中磁石ケース2bの外周面に装着されたパイプホルダ13の外周面の上端側の背面側に接続されている。
【0040】
前記グリップ接続部17には、図5に示すように、磁石ケース2の配列方向に沿って延在するホルダ連結棒18の長手方向の中央部分が固着されており、ホルダ連結棒18の両端側には、筒状のスライダ19がそれぞれホルダ連結棒18の長手方向に沿って移動可能に装着されている。これらのスライダ19は、スライダ19の外周面に螺入されるスライダ用止めねじ20によってホルダ連結棒18の所望の位置に固定されるようになっている。また、ホルダ連結棒18の左端側に配置されたスライダ19は、接続部材21によって、左磁石ケース2aの外周面に装着されたパイプホルダ13の上端側の背面に接続されている。さらに、ホルダ連結棒18の右端側に配置されたスライダ19は、接続部材21によって、右磁石ケース2cの外周面に装着されたパイプホルダ13の上端側の背面に接続されている。
【0041】
したがって、3つのパイプホルダ13は、ケースグリップ15によってそれぞれが連結されているとともに、それぞれの間隔がホルダ連結棒18に対するスライダ19の取付位置によって調整可能に形成されている。この3つのパイプホルダ13の間隔を狭くした間隔狭状態を図7に示す。
【0042】
前記ハンドルステー9およびケースグリップ15により、本実施形態の複数の磁石ケース2、ひいては複数の永久磁石3の間隔を調整する間隔調整手段22が構成されている。
【0043】
なお、間隔調整手段22としては、複数の磁石ケース2の間隔を調整することのできる構成であればよく、特に、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【0044】
前記各パイプホルダ13の下端部には、図6に詳示するように、ほぼ円筒状に形成されたスクレーパホルダ23の上部内筒が螺着されており、スクレーパホルダ23の下部内筒にはジュラコンなどの樹脂によって環状に形成されたスクレーパ4が装着されている。このスクレーパ4は、磁石ケース2の外周面の一端側に付着した付着物を掻き落とすためのものであり、スクレーパホルダ23を回動したり、パイプホルダ13を上下方向に移動させたりすることなどにより、磁石ケース2の長手方向に沿って移動可能とされている。
【0045】
すなわち、スクレーパ4は、磁石ケース2の外周面に磁石ケース2の長手方向に沿って移動可能に装着されている。
【0046】
図1および図6に示すように、中磁石ケース2bの外周面に装着されたパイプホルダ13は、取付基体5に形成された筒状のホルダガイド24の内孔に装着されている。このホルダガイド24は、図6に示すように、ホルダガイド24の外周面に螺入されるホルダ固定ねじ25によって、パイプホルダ13をホルダガイド24の所望の位置に固定することができるようになっている。そして、このような構成により、ケースグリップ15により連結された3つのパイプホルダ13が取付基基体5に取り付けられている。また、ホルダガイド24は、ホルダ固定ねじ25を緩めることで、ケースグリップ15により連結された3つのパイプホルダ13を上下方向に移動可能に支持することができるようになっている。
【0047】
したがって、取付基体5は、パイプホルダ13とともに、スクレーパ4を移動可能に支持することができるとともに、磁石ケース2の外周面が装着され、磁石ケース2をその長手方向に往復移動可能に支持することができるようになっている。
【0048】
前記取付基体5は、磁気分離装置1を図1に二点鎖線にて示す各種の被取付部Pにボルトなどによって簡単に取り付けるためのものであり、全体重量の軽量化と剛性の確保をはかるため、アルミニウムあるいは樹脂などの非磁性体によって、平面横長矩形の平板状に形成されている。
【0049】
前記取付基体5の上面のほぼ中央部にはホルダガイド24の下端が固着されている。また、取付基体5の中央部には、板厚方向に貫通する中ホルダ挿通孔26がその内孔をホルダガイド24の内孔に連通するように形成されており、パイプホルダ13を上下方向に移動させることができるようになっている。また、取付基体5の中ホルダ挿通孔26の磁石ケース2の配列方向の両側には、図2に示すように、左磁石ケース2aおよび右磁石ケース2cの外周面に装着された各パイプホルダ13を上下方向に移動させるための左ホルダ挿通孔27および右ホルダ挿通孔28が形成されている。これらの左ホルダ挿通孔27および右ホルダ挿通孔28は、それぞれ平面横長の長孔状に形成されており、間隔調整手段22によって各磁石ケース2の間隔を調整する際に、取付基体5が各パイプホルダ13と干渉するのを防止することができるように形成されている。
【0050】
前記取付基体5の下面の左右方向両端側には、被取付部Pへの取付性の向上および位置決めを兼ねた平板状に形成された左右一対のスカート29がその厚さ方向を磁石ケース2の配列方向に向けて突設されている。これらのスカート29の先端位置は、磁石ケース2の下端より取付基体5の下面から遠方に配置されている。このスカート29は、仕様、設計コンセプトなどの必要に応じて設ければよい。
【0051】
なお、取付基体5の形状やサイズも、被取付部Pの形状およびサイズ、仕様、設計コンセプトなどの必要に応じて設定すればよい。
【0052】
図2および図3に示すように、本実施形態の磁気分離装置1には、永久磁石3の磁力を判別するための磁力判別手段30が配設されている。この磁力判別手段30は、図3に示すように、指示針31と、鉄球32と、目盛板33とを有している。そして、指示針31は、長手方向のほぼ中央部が取付基体5の上面の上方に回動可能に支持されており、取付基体5の下方に配置された下端に鉄球32が固着されている。また、目盛板33は、取付基体5の上面に指示針31の移動面に沿って平行に立設されており、磁性体の吸引に十分な磁力を保持するフル状態を示すFULマークと、永久磁石3の交換あるいは再着磁を示すENPマークが形成されている。そして、磁力判別手段30は、永久磁石3の磁力が十分な場合には、図3の実線にて示すように、鉄球32が永久磁石3の磁力によって磁石ケース2の外周面に接近し、指示針31の先端が目盛板33のFULマークを指し示すようになっている。また、磁力判別手段30は、永久磁石3の磁力が不十分な場合には、図3の二点鎖線にて示すように、鉄球32の自重によって鉄球32が磁石ケース2の外周面から離間し、指示針31の先端が目盛板33のENPマークを指し示すようになっている。
【0053】
前記磁力判別手段30としては、永久磁石3の磁力を目視などにより簡便に判別することのできるものであればよい。例えば、磁石ケース2の外周面に、永久磁石3の磁力が十分な場合その自重によって下端に向かって移動するリングを例示できる。
【0054】
なお、本実施形態の磁気分離装置1においては、永久磁石3および鉄球32を除く各部材の素材として、非磁性体が用いられている。また、永久磁石3および鉄球32の表面に、腐食防止のための樹脂コーティングを行ってもよい。
【0055】
また、本実施形態の磁気分離装置1においては、総重量を5キログラム以内とすることが、磁石ケース2に付着した磁性体の除去動作を人手によって行う際の操作性を向上できるという意味で好ましい。
【0056】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0057】
まず、本実施形態の磁気分離装置1の設置動作について説明する。
【0058】
本実施形態の磁気分離装置1によれば、図1に示すように、永久磁石3を磁石ケース2の下端に位置させた状態で被取付部Pに取り付けることにより設置する。そして、取付基体5の下方に位置する磁石ケース2の下端側を、被分離体の存在側に配置することにより使用する。この磁気分離装置1を被取付部Pに取り付けて設置した設置状態の一例を簡略化して図8に示す。なお、図8において、符号41は被分離体としての磁性体(図9参照)Mを含む循環使用される液体Eが貯留可能なタンクを示し、符号42は液体Eを加工部分に供給するためのポンプを示している。また、図8に示すように、磁石ケース2の下端をタンク41の底面に接触させることが、液体Eの深さ方向の全領域を磁石ケース2に接触させることができるという意味で好ましい。勿論、磁石ケース2の下端と、タンク41の底面との間に、例えば1〜5mm程度の隙間を設けてもよい。
【0059】
このように、本実施形態の磁気分離装置1によれば、取付基体5を被取付部Pに取り付けるという簡単な操作によって設置箇所に容易に設置することができる。
【0060】
この時、本実施形態の磁気分離装置1によれば、ホルダ固定ねじ25を緩め、ケースグリップ15をもって上下動し、その後ホルダ固定ねじ25を締めるという簡単な操作によって、各磁石ケース2の下端の位置、すなわち、被分離体の存在側への位置を同時に調整することができる。勿論、設置前に各磁石ケース2の位置を調整してもよい。
【0061】
なお、本実施形態の磁気分離装置1を作動油の油圧タンクに装着する場合、油圧タンクの蓋に、取付基体5を取り付けるための被取付部Pとなる開口とボルト孔を設けるという簡便な構成で、ボルトによって油圧タンクへの磁気分離装置1の着脱を容易に行うことができる。
【0062】
ついで、本実施形態の磁気分離装置1の磁性体分離動作について説明する。
【0063】
本実施形態の磁気分離装置1によれば、被分離体、例えば磁性体Mを含む循環使用される液体Eが磁石ケース2の下端側を通過する際に、液体Eに含まれる磁性体Mを永久磁石3の磁力によって磁石ケース2の下端側の外周面に吸引吸着することができるので、被分離体から磁性体Mを容易に分離することができる。この磁性体Mを磁石ケース2に吸着した磁性体分離状態の一例を簡略化して図9に示す。
【0064】
また、本実施形態の磁気分離装置1によれば、磁石ケース2が複数であり、これらの磁石ケース2が連結されて相互に平行に配列されているとともに、複数の磁石ケース2の内筒内に装着されたそれぞれの永久磁石3が連結されているので、複数の永久磁石3を配置することで磁性体Mの分離(除鉄)効率を向上することができるとともに、複数の永久磁石3あるいは複数の磁石ケース2の移動を容易に行うことができる。
【0065】
なお、被分離体から磁性体Mを分離するための永久磁石3の磁力は、時間の経過とともに減少するが、本実施形態の磁気分離装置1には、磁力判別手段30が設けられているので、永久磁石3のメンテナンス、例えば、永久磁石3の交換、あるいは、磁力の低下した永久磁石3の再着磁によるリサイクルを容易に行うことができる。
【0066】
ついで、本実施形態の磁気分離装置1の吸着させた磁性体の除去動作について説明する。
【0067】
本実施形態の磁気分離装置1によれば、磁石ケース2の外周面に吸着した磁性体Mの除去は、被取付部Pから磁気分離装置1を例えば定期的に取り外して実施する。この磁気分離装置1の被取付部Pからの取り外しは、磁気分離装置1の取付基体5を被取付部Pに固定しているボルトなどを取り外すことにより容易に行うことができる。
【0068】
つぎに、本実施形態の磁気分離装置1のハンドルステー9を上方へ移動する。すると、各磁石ケース2の内部を3つの永久磁石3が同期して上方へ移動する。そして、磁石ケース2の内筒の上端側に永久磁石3を位置させると、磁石ケース2の下端側に作用していた永久磁石3の磁力が解除されるので、磁性体は、その自重によって落下する。この永久磁石3を磁石ケース2の内筒の上端側に位置させた磁性体除去状態を図10に示す。なお、磁石ケース2の下端が半球状に形成されているので、磁石ケース2の外周面から磁性体Mが落ち易い。また、永久磁石3の移動により、磁性体Mが落下するので、図10に示すように、磁気分離装置1を回収コンテナ43の上方に配置して磁性体Mの除去作業を行うことが好ましい。
【0069】
すなわち、本実施形態の磁気分離装置1によれば、永久磁石3が磁石ケース2の内筒内において磁石ケース2の下端側と上端側との間を往復動可能に配設されているので、磁石ケース2の外周面の下端側に吸着した磁性体Mは、永久磁石3を上端側に移動させるという簡単な操作を行うことにより、磁性体Mを吸着している磁力を解除できるので、容易に除去することができる。
【0070】
この時、本実施形態の磁気分離装置1によれば、磁石ケース2の内筒の長さが、永久磁石3の長さの2倍より長く形成されているので、磁石ケース2の外周面の下端側に吸着した磁性体Mに作用している磁力の解除を確実に行うことができる。
【0071】
また、本実施形態の磁気分離装置1によれば、磁石ケース2の外周面に磁石ケース2の長手方向に沿って移動可能に装着されたスクレーパ4が設けられているので、磁力の解除によって除去しきれない付着物を、スクレーパ4を移動させることによって除去することができる。
【0072】
具体的には、ホルダ用止めねじ14を緩めることにより、スクレーパホルダ23は、パイプホルダ13とともに取付基体5に固定され、磁石ケース2は取付基体5に対して上下方向に移動可能になる。そこで、ケースグリップ15を取付基体5の上方へ向かって移動すると、ケースグリップ15の上方への移動に連動して各磁石ケース2が上方へ向かってそれぞれが同期して移動する。これにより、スクレーパ4が相対的に磁石ケース2の外周面を下方に向かって移動し、磁石ケース2の下端側に付着している磁力の解除によって除去しきれない付着物、例えば磁性体Mを含むスカムや油分などを物理的に掻き落として除去することが容易かつ確実にできる。このスクレーパ4を磁石ケース2の下端に移動させたスクレーパ移動状態を簡略化して図11に示す。
【0073】
なお、本実施形態の磁気分離装置1においては、スクレーパホルダ23を緩めることによっても、スクレーパ4が磁石ケース2の下端側に向かって移動するので、このスクレーパホルダ23を緩める動作を組み合わせてもよい。
【0074】
したがって、本実施形態の磁気分離装置1によれば、吸引吸着させた付着物の除去および清掃などのメンテナンスを容易かつ確実に行うことができるなどの使い勝手の向上を容易に図ることができる。
【0075】
また、本実施形態の磁気分離装置1による磁性体Mの除去動作は、人手によって容易に行うことができる。
【0076】
なお、本実施形態の磁気分離装置1を従来のマグネットプレートのかわりに油圧タンクに設けた場合、ボルトによって油圧タンクへの磁気分離装置1の着脱を容易に行うことができるとともに、作動油にまみれた磁石ケース2からの磁性体Mの除去および清掃などのメンテナンスを容易に行うことができるので、使い勝手の向上を格段に図ることができる。
【0077】
また、本実施形態の磁気分離装置1によれば、複数の磁石ケース2の間隔を調整する間隔調整手段22が設けられているので、各磁石ケース2の間隔を容易に調整することができるので、取り扱い性を向上することができる。
【0078】
本発明の磁気分離装置は、磁性体を含む粉体などの固体から磁性体を分離する固体清浄化装置や、循環使用される冷却液、切削液、研削液などの液体から微鉄粉などの磁性体を除去する液体清浄化装置などの各種の分離装置に用いることができる。
【0079】
また、本発明の磁気分離装置は、既存の分離装置に付設することが容易にできるので、既存の分離装置の分離効率の向上に寄与できる。
【0080】
図12は本発明に係る液体清浄化装置の実施形態の要部を示す構成図である。
【0081】
本実施形態の液体清浄化装置51は、循環使用される液体の流動方向に沿って、濾過分離装置52と、磁気分離装置1をこの順に設けたものである。
【0082】
本実施形態の濾過分離装置52は、スクリーン(篩)を用いて被分離体から磁性体分離するためのものであり、例えば、加工部分の冷却および潤滑に循環使用される冷却液などの液体Eに含まれる微鉄粉からなる磁性体Mの分離を行うドラムフィルタなどを挙げることができる。
【0083】
なお、濾過分離装置52の構成および作用は、従来公知の濾過分離装置と同様なので、その詳しい説明は省略する。
【0084】
本実施形態の磁気分離装置1は、磁力を用いて被分離体を分離するためのものであり、本実施形態においては、前述した実施形態の磁気分離装置1が用いられている。なお、磁気分離装置1の構成および作用は、前述した実施形態の磁気分離装置1と同様なので、その詳しい説明は省略する。また、磁気分離装置1は、液体Eを貯留可能な貯留タンク53に設置されており、この貯留タンク53には、加工部分へ液体を循環供給するための循環ポンプ54が、磁気分離装置1より液体Eの流動方向の下流側に配置されている。
【0085】
このような構成からなる本実施形態の液体清浄化装置51によれば、濾過分離装置52の液体Eの流動方向の下流側に磁気分離装置1が設けられているので、濾過分離装置52の図示しないスクリーンを通過した細かい微鉄粉などの磁性体Mを、磁気分離装置1によって吸引吸着することができる。その結果、磁性体Mの分離効率を向上することができる。
【0086】
このことは、例えば、加工部分に微細な磁性粉Mが供給されるのを防止できるので、磁性体Mが供給されることにより生じている加工部分におけるワークの取付精度、加工精度のバラツキ、装置の故障の原因を除去することができる。これにより、装置の耐久性の向上、ワークの加工精度の向上および安定した品質の維持に格段に寄与する。
【0087】
すなわち、本実施形態の液体清浄化装置51によれば、高性能化を容易に図ることができる。
【0088】
また、本実施形態の液体清浄化装置51によれば、貯留タンク53の被取付部Pから磁気分離装置1を定期的に取り外して、磁気分離装置1、詳しくは、磁石ケース2の外周面の下端側に付着した磁性体Mの大きさを目視で確認するという簡単な動作で濾過分離装置52のスクリーンの破損の有無を容易に判別することができるとともに、磁気分離装置1に付着した磁性体Mを含む付着物を回収することができる。すなわち、磁気分離装置1に付着した磁性体Mの大きさによってスクリーンの破損の有無を容易に判別することができる。
【0089】
したがって、本実施形態の液体清浄化装置51によれば、メンテナンス時期を容易に判別することができるなどの使い勝手の向上を容易に図ることができる。
【0090】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る磁気分離装置の実施形態の要部を示す一部切断正面図
【図2】図1の要部の平面図
【図3】図1のA−A線に沿った要部を示す一部切断側面図
【図4】図1の永久磁石および磁石用ロッドを示す正面図
【図5】図1のケースグリップの要部を示す平面
【図6】図1のスクレーパの近傍の要部を示す拡大断面図
【図7】図1のパイプホルダの間隔を狭くした間隔狭状態の要部を示す図5と同様の図を
【図8】本発明に係る磁気分離装置の実施形態の設置状態の一例を簡略化して示す模式図
【図9】本発明に係る磁気分離装置の実施形態の磁性体分離状態の一例を簡略化して示す模式図
【図10】本発明に係る磁気分離装置の実施形態の磁性体除去状態の一例を簡略化して示す模式図
【図11】本発明に係る磁気分離装置の実施形態のスクレーパ移動状態の一例を簡略化して示す模式図
【図12】本発明に係る液体清浄化装置の実施形態の要部を示す構成図
【符号の説明】
【0092】
1 磁気分離装置
2 磁石ケース
3 永久磁石
4 スクレーパ
5 取付基体
6 磁石用ロッド
9 ハンドルステー
13 パイプホルダ
14 ホルダ用止めねじ
15 ケースグリップ
18 ホルダ連結棒
19 スライダ
20 スライダ用止めねじ
21 接続部材
22 間隔調整手段
23 スクレーパホルダ
24 ホルダガイド
25 ホルダ固定ねじ
30 磁力判別手段
41 タンク
42 ポンプ
43 回収コンテナ
51 液体清浄化装置
52 濾過分離装置
53 貯留タンク
54 循環ポンプ
E 液体
M 磁性体
P 被取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を含む被分離体から磁力によって磁性体を分離するための磁気分離装置において、
非磁性体によって一端が有底の筒状に形成され、この一端側が被分離体の存在側に配置される磁石ケースと、
前記磁石ケースの内筒内に装着され、前記磁石ケースの内筒内において前記磁石ケースの一端側と他端側との間を往復動可能に配設された永久磁石と、
前記磁石ケースの外周面の一端側に付着した付着物を掻き落とすために非磁性体によって環状に形成され、前記磁石ケースの外周面に前記磁石ケースの長手方向に沿って移動可能に装着されたスクレーパとを有していることを特徴とする磁気分離装置。
【請求項2】
前記磁石ケースの内筒の長さが、前記永久磁石の長さの2倍より長く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気分離装置。
【請求項3】
前記磁石ケースの外周面が装着され、前記磁石ケースをその長手方向に往復移動可能に支持する取付基体が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気分離装置。
【請求項4】
前記スクレーパが、前記取付基体に支持されていることを特徴とする請求項3に記載の磁気分離装置。
【請求項5】
複数の前記磁石ケースが設けられ、これらの磁石ケースが連結されて相互に平行に配列されているとともに、
前記複数の磁石ケースの内筒内に装着されたそれぞれの永久磁石が連結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の磁気分離装置。
【請求項6】
前記複数の磁石ケースの間隔を調整する間隔調整手段が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の磁気分離装置。
【請求項7】
循環使用される液体から磁性体を濾過分離装置によって分離し浄化することのできる液体清浄化装置において、
前記濾過分離装置の液体の流動方向の下流側に、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の磁気分離装置を設けたことを特徴とする液体清浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−102625(P2006−102625A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292471(P2004−292471)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000179328)リックス株式会社 (33)
【出願人】(502224814)株式会社 ユメックス (7)