説明

磁気変換器

本発明は、交番磁界にさらされると大量の熱を発生する、SAR値の高い生体適合性磁気ナノ粒子の製造に関する。発生した熱は、数ある利用法の中でも特に治療目的、具体的には、がんを消滅させるために利用可能である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、交番磁界にさらされると大量の熱を発生する、SAR値の高い生体適合性磁気ナノ粒子の製造に関する。発生した熱は、数ある利用法の中でも特に治療目的、具体的には、がんを消滅させるのに利用可能である。
【0002】
磁気ナノ粒子は、さまざまな方法で磁界のエネルギーを熱に変換できる。いわゆるヒステリシス損失を通じての加熱の他に、ナノ粒子は緩和を通じて熱を発生させることができる(それぞれネール及びブラウン緩和)。発生した熱エネルギーの量は、磁界の強度(振幅)及び交番磁界の周波数に依存する。熱発生の効率性は、磁界の規定の強度及び周波数で、いわゆるSAR(比吸収率)またはSLP(比出力損失)値によって測定される。ある物質のSAR値が、測定に使用される質量(グラム)に標準化され、単位[W/g]で表現される。しかしながら、磁気物質のSAR値は、粒子サイズ及び粒子形状などのその他の要因、異方性、物質の金属含有量によっても左右される。SARは、100kHzの周波数及び18kA/Mの磁界強度で、Jordan et al.[International Journal of Hyperthemia,1993,Vol.9,No.1,51−68]によって開発された方法に従って決定されるのが好ましい。この場合、SAR値は、mW/mg Feにおける物質の鉄含有量についての標準化により表示される。
最新技術
生体適合性磁気ナノ粒子は、いわゆる沈殿法によって頻繁に製造される。このことは、文献[例えばDE19614136A1]に多くの例を使って記載されている。水溶液中で製造されるため、これらの粒子は問題なく官能化され、良好な生体適合性を通常備えることができる。しかしながら、この方法で製造された粒子は、比較的低いSAR値を示し、そのために本特許の革新的要件を満たすことができない。
【0003】
磁気ナノ粒子は、いわゆる走磁性細菌によっても製造可能である[WO98/40049]。この方法で製造された粒子のSARはより高い。しかしながら、製造過程が非常に複雑かつ高価である。さらに、粒子が比較的速く堆積するため、適用可能性が非常に制限される。
【0004】
有機溶媒中における金属錯体の熱分解により、コロイドまたはナノ粒子が形成されることが多年にわたって知られている[例えば、Smith et al.,J.Phys.Chem.1980,84,1621−1629]。異なるサイズの単分散粒子が、Peng et al.[US2006/0211152A1]及びHyeon et al.[WO2006/057533A1]により公開された方法によって製造できる。しかしながら、この方法によって製造された粒子は、有機溶媒のみに分散可能であり、そのために生体適合性がない。さらに、この方法によって製造された粒子のSAR値は低い。このような(疎水性)粒子の水中における分散は、主にシェルの改良によって達成可能である[例えば、Wang et al.,Nano Lett.,2003,3(11),1555−1559あるいはDe Palma et al.,Chem.Mater,2007,19,1821−1831]。これらの方法は、親水性リガンドを通じての疎水性リガンドの直接交換に基づいている。これらのコーティング方法は、薄い(単分子層)コーティングのみを生じ、本発明の安定した生体適合性コーティングの要件に合致しない。さらに、粒子のコロイド安定性が制限されているため、本発明の粒子はこの方法でコーティングされることはできない。さらに、高度希釈した粒子の分散体のみがコーティングされることができる。このため、工業規模で本発明の粒子の分散体について満足できる技術的解決は存在しない。さらに、分散させるために使用される物質または溶媒は、通常毒性が高い。したがって、生体適合性が制限されてしまう。
【0005】
生体適合性酸化鉄ナノ粒子も、DE19614136A1のシランによるコーティングにより獲得できるが、この方法は、粒子がすでに水に分散されている場合にのみ適用可能である。その一方、疎水性分子は、簡単にシランやシリカでコーティングすることができない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、交番磁界においてSAR値が高い生体適合性磁気ナノ粒子を提供することであって、粒子のコーティングが、厚さ0.5〜10nmの安定したシリコン含有シェルから構成される。SARの決定に使用される交番磁界の強度は、好ましくは3〜18kA/mであり、その周波数は、1kHz〜100MHz、好ましくは10〜1000kHzである。
【0007】
記載の課題は、請求項1の製造方法、請求項26のナノ粒子、請求項28の医薬組成物、請求項31のナノ粒子の使用によって解決される。
さらなる有利な実施例は、従属請求項、実施例、図面及び明細書に起因する。
【0008】
本発明は、安定した、シリコン含有シェルを備えた生体適応性のあるナノ粒子に関し、その厚みは好ましくは0.5〜10nmであり、より好ましくは1nm〜6nm、さらに好ましくは2nm〜4nm、最も好ましくは3nmからであり、交番磁界におけるSAR値が高く、交番磁界の強度が好ましくは3〜18kA/mであり、その周波数が好ましくは10〜1000kHzである。
【0009】
本発明によれば、SAR値の高い粒子が以下のステップを含む方法によって製造可能である。
A1)少なくとも1つの有機溶媒LM1に、少なくとも1つの鉄含有化合物Aの組成物を提供するステップと、
B1)少なくとも10分間、ステップC1)に従って、該組成物を、50℃から鉄含有化合物Aの実際の反応温度より50℃低い温度までの範囲の温度に加熱するステップと、
C1)該組成物を、200℃〜400℃の温度に加熱するステップと、
D1)得られた粒子を精製するステップと、
E1)精製されたナノ粒子を、水または酸の水溶液に懸濁するステップと、
F1)ステップE1)で得られた水溶液に、表面活性化合物を加えるステップと、
G1)超音波を使って、ステップF1)の水溶液を処理するステップと、
H1)請求項G1)で得られた粒子の水分散液を精製するステップと、
I1)水及び水と混ざる溶媒を含む溶媒混合液中で、ステップH1)の粒子の分散体を製造するステップと、
J1)ステップI1)の溶媒混合液における粒子の分散体に、アルコキシシランを加えるステップと、
K1)該粒子を精製するステップ。
【0010】
ステップA1〜K1は、通常続いて起き、追加のステップA2がステップA1の後でステップB1の前に発生、及び/または追加のステップB2がステップB1の後でステップC1の前に発生することができる。同様に、ステップC1、D1、E1、F1、G1、H1、I1、J1またはK1の後に、選択的に酸化ステップC2、D2、E2、F2、G2、H2、I2、J2またはK2を続けることも可能である。本願では、ステップC2、D2、E2、F2、G2、H2、I2、J2またはK2は、ステップX2とも表される。追加のステップA2、B2及び/またはX2は選択的であり、本発明の性能にとって重要ではない。
【0011】
さらに、選択した反応温度または選択された鉄含有化合物Aまたは選択されたその他の化合物によって、反応パラメータを適応させて最適化することは当業者の平均的な能力の一部である。例えば、各反応の加熱時間B1の持続時間を、当業者によって最大SARを備えた粒子が形成されるように最適化することができる。最小加熱時間の持続時間は、10分である。加熱時間は温度が上がるにつれて短くなることが当業者には明らかである。同様に、ステップC1における加熱率、最終温度、最終温度の持続時間は、最大SARを備えた粒子が形成されるように当業者によって適合されることができる。
【0012】
粒子は、粒子の直径がナノメートル範囲にあるナノ粒子であるのが好ましく、ナノ粒子は、本発明の方法に従って得られてもよい。
使用された複数の鉄含有化合物Aまたは使用された1つの鉄含有化合物Aは、鉄錯化合物、鉄カルボニル化合物、鉄塩、特に飽和または不飽和脂肪酸の鉄塩、有機鉄化合物、及び鉄サンドイッチ錯体を含むまたはそれらからなるグループから選択されるのが好ましい。
【0013】
鉄カルボニル化合物としては、鉄ジカルボニル(Fe(CO)2)、鉄テトラカルボニル(Fe(CO)4)または鉄ペンタカルボニル(Fe(CO)5)が挙げられ、鉄塩の例としては、二塩化鉄、二臭化鉄、二フッ化鉄、二ヨウ化鉄、三塩化鉄、三臭化鉄、三フッ化鉄、三ヨウ化鉄、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、酢酸鉄、シュウ酸鉄、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、炭酸鉄、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、リン酸鉄、二リン酸三鉄がある。フェロセンは、鉄サンドイッチ錯体の例であり、鉄アセチルアセトナートは、鉄複合化合物の例である。有機金属鉄化合物としては、例えば、酢酸鉄(II)、アクリル酸鉄(III)、オレイン酸鉄(III)、エトキシド鉄(III)などのアルコキシド鉄、あるいはまた、アセチル−シクロブタジエン−鉄−トリカルボニル、ブタジエン−鉄−トリカルボニル及びオレフィン−鉄−テトラカルボニルなどの鉄カルボニル化合物が考えられる。
【0014】
有機溶媒LM1としては、あらゆる高沸点溶媒を用いることができる。好ましいものとしては、高沸点のアミン、アルカン、オレフィン、アルコールまたはエーテルを含むまたはそれらからなるグループの溶媒である。さらに、ジオール(アルカンジオール)のモノエーテル及びジエーテル、トリオール(アルカントリオール)のモノエーテル、ジエーテル、トリエーテル、アルキレン−グリコール−モノエーテル、アルキレン−グリコール−ジエーテル、エチレン−グリコール−モノエーテル、エチレン−グリコール−ジエーテル、プロピレン−グリコール−モノエーテル、プロピレン−グリコール−ジエーテル、グリセリン−モノエーテル、グリセリン−ジエーテル、グリセリン−トリエーテル、及びグリコール−ジエーテル(グリム)が使用できる。溶媒L2もまた、上記のグループから選択されることができる。
【0015】
特に好ましい溶媒LM1及びLM2は、最小沸点が200℃のグリコール−ジエーテル(“グリム”とも呼ばれる)である。鉄塩(例えば塩化物)からナノ粒子を製造するためには、エチレングリコールも適当である。基本的に、溶媒の沸点は150℃を超えるべきで、さらに好ましいのは175℃を超え、特に好ましいのは200℃を超えることである。
【0016】
少なくとも1つの鉄含有化合物Aが、溶媒LM1において分散、溶解または懸濁され、得られた組成物はその後、最低10分間、ステップC1に従って、50℃から鉄含有化合物Aの実際の反応温度より50℃低い温度までの範囲の温度に加熱される。実際の反応温度は、粒子形成のための温度として理解され、200℃〜400℃の範囲である。したがって、ステップB1の核生成の温度は、50℃〜最大350℃の範囲であるが、ステップC1温度より少なくとも50℃常に下回る。したがって、有機触媒LM1または有機触媒LM1の混合物における1つ以上の鉄含有化合物Aの加熱は、ステップC1の化合物Aの粒子形成のための実際温度より約50℃低い温度で実施されるのが好ましい。
【0017】
ステップB1)の粒子形成前のこの加熱フェーズは、その後の規定の粒子形成を可能にするいわゆる種の形成のために使用される。加熱フェーズの時間は、ステップC1)において生成される、結果として生じる粒子、好ましくはナノ粒子、のSARに大きな影響を与える。高いSARを有する粒子またはナノ粒子を製造するため、最低10分間、好ましくは最低30分間、特に好ましくは最低40分間、到達した温度が維持される。したがって、少なくとも1つの鉄含有化合物A及び少なくとも1つの溶媒LM1の化合物は、好ましくは30〜50分間、上記に特定される温度に加熱されるべきである。
【0018】
使用される鉄含有化合物Aによって、ステップC1)の粒子形成のための実際の反応温度より約100℃〜300℃、好ましくは約130℃〜270℃、よく好ましくは約150℃〜250℃、さらに好ましくは約170℃〜230℃、さらに好ましくは約180℃〜220℃、さらに好ましくは約190℃〜210℃、そして特に好ましくは約200℃以下の温度を目標とするのが好ましい一方で、目標とされた温度は、70℃、好ましくは90℃、特に好ましくは100℃を下回らない。第1加熱フェーズの間の温度が、ステップB1)に従って、100℃〜150℃で維持されるのが好ましい。
【0019】
種の形成に影響を与えるあるいはそれを促進するために、ステップA2)に従って、添加物または表面活性化合物を加えてもよい。本願で使用される“添加物”または“表面活性化合物”という用語は、大部分の添加物は表面活性化合物でもあるが、必ずしも全ての添加物にそれが当てはまるわけではないという文脈に立つ。従って、どの表面活性化合物も添加物と称されることができるが、どの添加物も表面活性化合物と称されることができるわけではない。これには、テンサイド(tensides)、シラン、Si-またはAl-含有有機化合物、ホスフィン、飽和または非飽和脂肪酸、アミン、ジアミン、カルボン酸及びその塩、飽和及び非飽和脂肪酸、またはポリマーが含まれる。ポリマーの例は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、デキストラン、PLGA,キチン、フィブリン、ヘパリン、キトサン及びポリエチレンイミンである。
【0020】
ステップB1)の加熱フェーズ後、実際の粒子形成がステップC1)で行われる。ステップB1)で形成された粒子種を、500℃まで、好ましくは200℃〜400℃の温度に加熱する。
【0021】
これにより、鉄含有粒子、好ましくは鉄含有ナノ粒子が、粒子種及び余分の鉄含有化合物Aから形成される。
鉄含有化合物Aの全量とではなく、B1)の種形成ステップ後に、ステップB2)における有機溶媒L2中の鉄含有化合物Bをさらに加えて、B1)の加熱フェーズを開始及び実行すると有利であることがわかっている。
【0022】
少なくとも1つの鉄含有化合物Bは、上述した鉄含有化合物のグループから選択されることができ、少なくとも1つの鉄含有化合物Aと同一あるいは異なっていてもよい。
同じことが、上述した溶媒LM1のグループから選択されることができ、溶媒LM1と同一あるいは異なっている有機溶媒L2にも当てはまり、溶媒LM1とLM2が同一であることが好ましい。
【0023】
従って、種形成ステップB1)の後に、新しい鉄含有化合物Bが、好ましくは同じ溶媒(LM1=LM2)に追加され、それにより得られたC1)の化合物が、500℃までの温度、好ましくは200℃〜400℃の範囲の温度に加熱されるのが好ましい。LM1及びLM2の最低沸点が、200℃であるのが好ましい。
【0024】
これにより、溶媒LM2における少なくとも1つの鉄含有化合物Bの追加後に、実際の粒子が製造される。鉄含有化合物Bと共に、さらなる添加物が、ステップB1後に得られた化合物に追加されてもよい。これらの添加物もまた、溶液にすでに存在するのと同じ添加物から強制的に選択される必要はないが、そうするのが好ましい。
【0025】
この場合もまた、添加物の、追加された鉄含有化合物Bの量と、溶媒L2の種類及び量とが、SARが最大の粒子が形成されるように当業者によって適合される。
前述したように、必要とされる鉄含有化合物の総量を、ステップAで追加することができるため、ステップB)が好ましいが、必須ではない。ステップB1)の第1加熱フェーズの後にさらなる鉄含有化合物Bが追加されなくても、さらなる添加物をステップB2)として追加でき、その添加物は、化合物中にすでに存在する添加物と同じであるべきである。従って、ステップB2)として、添加物のみあるいは鉄含有化合物Bのみあるいはそれらの両方を同時にあるいは順次、ステップB2)として追加できる。
【0026】
ステップC1)の第2加熱フェーズの持続時間は、少なくとも30分間、好ましくは1−30時間、より好ましくは10−20時間、特に好ましくは15時間である。
驚くべきことに、SARは、加熱フェーズの延長により、あるいは単に加熱フェーズをより長くすることにより、さらに増加することが明らかになった。そのため、長い加熱フェーズ、また特に追加の焼戻しフェーズが好ましい。特にステップC1)において、加熱フェーズは、10時間より長いのが好ましく、14時間より長いのがより好ましい。
【0027】
D1*及び/またはD2*としてのステップD1の後に選択的に続く焼戻しフェーズは、SARをさらに増加でき、そのため10時間より長い、より好ましくは14時間より長い、特に好ましくは18時間より長いのが好ましい。したがって、焼戻しフェーズは、1−30時間、好ましくは10−25時間、より好ましくは13−22時間、特に好ましくは15−20時間かかる。
【0028】
結果として生じる粒子のSARは、加熱フェーズB1)の持続時間の変化により、ステップC1)における最終温度及び最終温度の維持時間により、及びステップC1)において追加した鉄化合物または添加物の量により、改変可能で、その結果、SARが最大の粒子が形成される。これらのパラメータは、使用される鉄化合物の種類と溶媒及び添加物の種類に依存する。したがって、加熱フェーズは、どのシステムにも適応していなければならず、その結果、当業者によって容易に自身の特別な知識に基づいて実行されることができる。
【0029】
製造された発明の粒子のSARは、100kHzの交番磁界の周波数で、4kA/mの磁界強度で、Fe1gにつき10−40W、好ましくは4kA/mの磁界強度で、Fe1gにつき20−40W、より好ましくは4kA/mの磁界強度で、Fe1gにつき25−40W、特に好ましくは4kA/mの磁界強度で、Fe1gにつき30−40Wである。
【0030】
以下に発明の粒子の製造のためのシステムのいくつかの例と、製造された粒子のSAR値とを示す。例(I)〜(VIII)は、4kA/mの磁界強度及び100kHzの交番磁界の周波数で、Fe1gにつき20−40WのSAR値及びの発明の粒子になる。“Fe”という用語は、Fe0、Fe+2、Fe+3の総鉄量をさす。
【0031】
【表1】

【0032】
上記の表1において、“添加物なし”とは、本発明による合成が、各欄に記載の組成物を用いて、ただし添加物を加えずに、実行されたことを意味する。表1に記載の組成物は、実施例1及び3Aまたは2及び3A(ステップA1〜C2)に従って使用され、その後、全てのシステムが、実施例4−6及び4−7に従ってさらに使用された。追加的な焼戻しフェーズ(実施例7;ステップD1*またはD2*)の適用によって、SARが約5kA/mで約5W/g Fe増加できることが明らかになった。表1に示すSAR値は、4kA/mの磁界強度及び100kHzの交番磁界の周波数についてのものである。
【0033】
【表2】

【0034】
フェーズA)及びC)は、大気中での標準圧力下または保護ガス圧力下(アルゴン、窒素)または400バールまでの圧力下の反応加圧滅菌器において選択的に実行されることができる。
【0035】
ステップC1)の第2加熱フェーズの後には、酸化フェーズX2)が続けられる。酸化フェーズX2)は選択的であり、ステップC1の直後に必ずしも続く必要はないが、ステップC1〜K1)のうちのどれかの後にも起きることができる。粒子は、ここでは、大気中の酸素の伝導により酸化されるのが好ましい。大気中の酸素の伝導は、4〜24時間、好ましくは8〜16時間、そしてさらに好ましくは20℃〜50℃で行われる。しかしながら、他の揮発性酸化剤あるいは酸素(純)などの蒸留により除去可能な酸化剤、過酸化水素あるいはアミンオキシドなどのその他の有機酸化剤もまた使用可能である。したがって、ステップC1)〜K1)の後に酸化ステップX2)が続くのが好ましい。この場合、Xは文字C〜Kの変数であり、どのステップの後に酸化が行われるかによって決まる。選択的な酸化がステップE1)の後に実行される場合、酸化はステップE2)と称され、K1の後に実行される場合、酸化ステップはK2)と称される。さらに、酸化ステップは複数回繰り返されてもよいし、あるいはさらなる酸化ステップX2’がさらなる手続きステップの後に続いてもよい。ただし前記は可能であるけれども好ましくない。したがって、本発明の方法は、第1酸化ステップX2(例えばF2)及び第2酸化ステップX2’(例えばH2’)を含むことができる。すでに部分的にまたは完全に酸化された状態にある粒子については、もちろん、さらなる酸化は不要である。通常、大気下における酸化は自動で開始するため、追加的な酸化、例えば自動で開始する酸化に対する酸化ステップX2の追加は不要である。酸化ステップX2は、絶対に必要というわけでなくても実行されてもよい。なぜなら害がないことが明らかになっているためである。
【0036】
ステップC1に従って形成された粒子、好ましくはナノ粒子は、精製される必要がある。このステップは、本発明にとって不可欠で重要である。精製されていない粒子の使用は、水中でよく分散し、ひいてはSARが高い本発明の粒子を製造しない。この精製は、無極性溶媒における粒子の分散がそれ以上起きなくなるまで、ステップD1に従って好ましくはソックスレー抽出によって行われる。驚いたことに、添加物及び特にステップA2)及び/またはB2)からの表面活性化合物が、可能な限り、粒子から完全に洗い落とされる、すなわち再び大部分除去されることが、水中での後の分散[ステップF1)]に不可欠であることがわかった。“可能な限り”及び“大部分”という用語それぞれは、70−100%の範囲、好ましくは90%までの添加物の除去として理解される。したがって、添加物は、70%を越えて、好ましくは80%を越えて、より好ましくは90%を越えて、特に好ましくは95%を超えて、粒子から除去される。前述した割合は、粒子に付着した添加物についてのものである。自由な添加物、すなわち溶液中を自由に浮遊する添加物であって粒子により吸収されない添加物は、例えば95%より多く、好ましくは98%より多く、遠心分離によって大部分除去されることができる。粒子に付着している残りの添加物の量は、例えば元素分析または赤外分光法によって決定できる。その割合は、本願では重さ(重量%)を表す。粒子に付着してない添加物は、遠心分離により除去され、粒子に付着している粒子は、形成された粒子のソックスレー抽出により除去されるのが好ましく、超音波によりサポートされる抽出もまた使用可能である。この使用のために、ナノ粒子は、次の精製ステップが起きる前に、まず遠心分離により分離される。
【0037】
ソックスレー抽出に使用される溶媒は、アルコール、ケトン、エーテルまたはエステルのような電流極性有機溶媒であってもよい。アセトン、エチルアセテートまたはエタノールが好ましい。
【0038】
抽出時間は、1〜8時間、好ましくは2〜6時間、特に好ましくは約4時間である。重要なのは、鉄含有粒子、好ましくはナノ粒子が、抽出後に、トルオール、キシロールまたはヘキサンなどの無極性溶媒においてそれ以上分散可能でないという点である。しかしながら、この場合には、抽出時間を調整する必要がある。そのようにして精製されたナノ粒子の粉末は、真空状態下で乾燥される。
【0039】
粒子の結晶化度を高めるために、いくつかの“焼戻しフェーズ”を、ステップD1後に続けることができる。これらの焼戻しフェーズは、数時間、400℃までの高沸点溶媒において実行可能である。溶媒は、最低沸点が200℃、好ましくは300℃であれば高沸点と称される。焼戻し処理は、本願では空気中または保護ガス(例えばアルゴン)下で行うことができる。約200℃〜250℃の温度で、反応が保護ガスなしで行われるのが好ましく、約200℃〜250℃より高い温度で、反応が保護ガス下で行われるのが好ましい。その代わりに、ナノ粒子は、保護ガス下では1000℃までの温度で(溶媒なしの)粉末として焼戻しされることができる。好ましい保護ガスは、アルゴンまたはCO2/H2混合物である。この少なくとも1つの焼戻しステップは、ステップD1の後にステップD1*として、あるいは酸化ステップD2の後にD2*として続く。
【0040】
X=CまたはDまたはEまたはFまたはGまたはHまたはIまたはJまたはKのステップX2の酸化が、Fe(NO33の追加及び連続する環流下での沸騰を伴う0.5〜2M HNO3、好ましくは1M HNO3で粒子を懸濁することによって実行されることができるのが好ましい。FeOxに対するFe(NO33の割合または一般にFeOxに対するFe(III)の割合は、1:2であるのが好ましい。この酸化処理は、粒子のSARに有利な効果を有するために好ましい。このステップは、Fe(NO33に制限されず、例えば、FeCl3、FePO4などのその他のFe(III)塩もまた使用されることができることは留意されるべきである。
【0041】
精製された粒子またはナノ粒子の分散は、ステップE1)及びF1)の表面活性化合物を使用したリバーシブルコーティングによって水中で行われる。
このステップでは、粒子またはナノ粒子の精製された粉末が、水中で懸濁され、親水性層が、後で容易に除去できるような方法でドッキングされる。最初に、このコーティングの固形分(酸化鉄)を、好ましくは2−20%、より好ましくは3−12%、さらに好ましくは5−8%、さらに好ましくは6−7%、特に好ましくは6.5%に設定する。粒子をより細かく分散させるためには、塩酸または硝酸などの酸、好ましくはF1)の鉱酸を、表面活性化合物を加える前に加えることができる。それにより、2−6、好ましくは3−5、特に好ましくは約4のpH値が得られる。
【0042】
酸は、好ましくは、塩酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ホウ酸または硝酸などの鉱酸から選択可能である。しかしながら、粒子の表面に不可逆的に結合していない酸、好ましくは鉱酸を使用することが重要である。鉱酸が好ましく、アミノ酸とカルボン酸は避けるべきであることが実験で明らかになっている。しかしながら、以下の酸は、基本的に本発明の方法において使用可能である:スルホン酸、硝酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンスルホン酸、p−トルオール(toluol)スルホン酸、ナフタレレ(naphtalele)スルホン酸、ナフチル(naphtyl)アミンスルホン酸、スルファニル酸及びカンファースルホン酸。
【0043】
水溶液のpHが酸または鉱酸によって設定される場合、少なくとも1つの表面活性化合物の追加を、ステップF1)に従って行う。少なくとも1つの表面活性化合物は、飽和及び特に不飽和脂肪酸の塩を含むまたはそれらから構成されるグループから選択されるのが好ましい。さらに、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、デキストラン、PLGA、キトサン及びポリエチレンイミンなどのテンサイド(tensides)またはポリマーが使用可能である。
【0044】
飽和脂肪酸の例は:酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸及びリグノセリン酸である。
【0045】
好ましい不飽和脂肪酸またはその塩の例としては、どんな脂肪酸であってもよく、例えば、シス−9−テトラデセン酸(ミリストレイン酸)、シス−9−ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、シス−6−オクタデセン酸(ペトロセリン酸)、シス−9−オクタデセン酸(オレイン酸)、シス−11−オクタデセン酸(バクセン酸)、シス−9−エイコセン酸(ガドレイン酸)、シス−11−エイコセン酸(ゴンド酸)、シス−13−ドコセン酸(エルカ酸)、シス−15−テトラコセン酸(ネルボン酸)、t9−オクタデセン酸(エライジン酸)、t11−オクタデセン酸(トランス−バクセン酸)、t3−ヘキサデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、(リノレン酸)、6,9,12−オクタデセン酸(γ−リノレン酸)、8,11,14−エイコサトリエン酸(ジホモ−γ−リノレン酸)、5,8,11,14−エイコサトリエン酸(アラキドン酸)、7,10,13,16−ドコサテトラエン酸、4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸(α−リノレン酸)、6,9,12,15−オクタデカトリエン酸(ステアリドン酸)、8,11,14,17−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸(EPA)、7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸(DPA)、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸(DHA)、5,8,11−エイコサトリエン酸(ミード酸)、9c,11t,13t−エレオステアリン酸、8t,10t,12c−カレンジン酸(calendinoic acid)、9c,11t,13c−カタルピン酸(catalpinoic acid)、4,7,9,11,13,16,19−ドコサヘプタデカン酸(ステラヘプタエン酸)、タキソール酸(taxolic acid)、ピノレン酸、スシアドン酸(sciadonic acid)、6−オクタデシン酸(octadecinoic acid)(タリリン酸(taririnic acid))、t11−オクタデセン(octadecinoic)−9−イン酸(inoic acid)(サンタルビン(santalbinic)またはキシメニン(ximeninic)酸)、9−オクタデシン酸(octadecinoic acid)(ステアロリン酸(stearolinoic acid)、6−オクタデセン(octadecen)−9−イン酸(inoic acid)(6,9−オクタデセニン酸(octadeceninoic acid))、t10−ヘプタデセン(heptadecen)−8−イン酸(inoic acid)(ピルリン酸(pyrulinic acid))、9−オクタデセン(octadecen)−12−イン酸(inoic acid)(クレペニン酸(crepeninic acid))、t7,t11−オクタデカジエン(octadecadien)−9−イン酸(inoic (ヘイステリン酸heisterinic acid))、t8,t10−オクタデカジエン(octadecadien)−12−イン酸(inoic acid)、5,8,11,14−エイコサテトライン酸(eicosatetrainoic acid)(ETYA)及びt8,t10−オクタデカジエン(octadecadien)−12−イン酸(inoic acid)などである。脂肪酸の塩は、アルカリ及びアルカリ土類イオンで形成されるのが好ましい。
【0046】
ナノ粒子の表面活性化合物に対する質量比は、好ましくは1:0.02〜1:10、より好ましくは1:0.1〜1:2、特に好ましくは1:0.5である。
表面活性化合物の追加後、ステップG1)の懸濁液を、最低30分間、超音波で処理するのが好ましい。
【0047】
その後、懸濁液を、好ましくは30℃〜70℃、より好ましくは50℃〜60℃、特に好ましくは40℃の温度で約2時間攪拌する。その後、ステップI1)に従って精製を行う。分散しない粒子は、好ましくは遠心分離(1000U/分)によって分離する。
【0048】
分子の分散体は、コーティング直後の過剰な表面活性物質を除く必要がある。この精製は、透析またはジエチルエーテル抽出によって行うことができる。代わりに、粒子を、超遠心分離機を使用して遠心分離し、水及び水とジエチルエーテルとの混合物で洗浄してもよい。
【0049】
その後、粒子の脂肪酸ベースのコーティングは、ステップI1)及びJ1)に従って、シリコン含有生体適合性シェルと交換される。
シェルの交換のために、粒子は、水及びステップI1)の水と混合可能な少なくとも1つの溶媒との混合物中に分散していなければならない。水と混合可能な溶媒としては、アルコール、ポリオール、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチル−ホルムアミド(DMF)、ジメチル−アセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、酢酸、ギ酸、メチル−ギ酸エステル、エチル−ギ酸エステル、メチル−酢酸エステル、エチル−酢酸エステル及びその他が挙げられる。
【0050】
しかしながら、アルコールが特に好ましい。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びエチレングリコールを含むまたはそれらから構成されるグループから選択されるのが好ましく、その中でもエタノールが好ましい。
【0051】
水とアルコール、水とエタノールそれぞれの混合比は、好ましくは1:1〜1:5、特に好ましくは1:3である。これにより、脂肪酸シェルの除去とシリコン含有シェルによる交換とを並行して行うことができる。
【0052】
さらに、アルコールと水との混合物が、1−5重量%、さらに好ましくは1−3重量%、特に好ましくは1.5重量%のアミン、好ましくは1級アミン、特に好ましくはアンモニアを含むのが好ましい。
【0053】
溶媒の混合物、特にアルコールと水との混合物、好ましくはステップI1)の水とエタノールとの混合物へのナノ粒子の分散体の追加の直後に、適当なアルコキシシランを加えなればならない。アルコキシシランの追加は、超音波処理下で行うべきである。適当なアルコキシシランは、好ましくは、アミノ基、チオール基及び/またはエポキシ基などのSi−C結合により連結された官能基を有する、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランなどのあらゆるテトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、及びモノアルコキシシランである。
【0054】
シェルの交換をスムーズに進めるために、鉄とアルコキシシランとのモル比は、1:1〜1:5、好ましくは1:3にするべきである。
反応物の追加後、分散体は、ステップJ1)に従って、1−8時間、好ましくは3−5時間、特に好ましくは4時間、超音波で処理される。その後、好ましくは水に対する透析により、粒子の精製が行われる。代わりに、高いG値で粒子を遠心分離して、超純水で沈殿物を洗浄することにより、精製を行ってもよい。
【0055】
さらに、本発明は、本願に開示される方法で得ることが可能な粒子及び好ましくはナノ粒子にも言及する。
本発明の鉄含有粒子はそれ自身、強磁性、フェリ磁性、あるいは超常磁性を有する。このような粒子またはナノ粒子は、交番磁界により温めることができる。これらの粒子またはナノ粒子を含む組織を50℃より高い温度に温めることが可能である。なぜなら、本発明によると、粒子やナノ粒子は、SAR値が高いからである。
【0056】
本発明に従って製造される鉄含有粒子の最低SAR値は、6kA/mの磁界強度で、18、好ましくは20、特に好ましくは22mW/mg Feである。
粒子の直径は、500nmより小さいのが好ましい。ナノ粒子の平均直径は、好ましくは20nmであり、または好ましくは1−100nmのサイズ範囲、特に好ましくは15−30nmのサイズ範囲にある。
【0057】
ナノ粒子の安定したシリコン含有シェルの厚さは、0.5〜10nm、好ましくは3nmである。
シリコン含有シェルは、さらなるアルコキシシランによって官能基化されて、粒子の特性を変更することができる。これらは、Si−C結合により連結された官能基を有するトリアルコキシシランであるのが好ましい。その例は、(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、トリエトキシシリル−ブチルアルデヒド、3−アミノ−プロピルトリエトキシシラン、及び3−イソシアナート−プロピルトリエトキシシランである。トリエトキシシランは、異なる長さのSi−C結合ポリエチレングリコール側鎖を有していてもよい。この例としては、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシランが挙げられる。
【0058】
本発明の鉄含有粒子は、薬の分野で使用されることができ、例えば水溶液の形で注入することができる。本発明の鉄含有粒子は、増殖性疾患、がん、腫瘍、リューマチ、関節炎、関節症、及び細菌感染の処置及び予防に使用できる。
【0059】
さらに、本発明は、本発明のナノ粒子を含む医薬組成物、及びそのような医薬組成物の調合のための本発明のナノ粒子の使用に言及する。
これらの医薬組成物は、特に点滴または注射のための溶液中に存在する。例えば生理食塩水中の、このようなナノ粒子の溶液は、間質あるいは腫瘍内での応用に適している。さらに、動脈内または静脈内の応用は、非固形及び/または転移形成型の腫瘍のための全身に影響を与える全身治療の選択を可能にする。
【0060】
さらに好ましい医薬組成物は、本発明の鉄含有粒子を含む粉末、吸入粉末及び凍結乾燥品である。
本発明のナノ粒子及び医薬組成物は、変性細胞種または外因性細胞により特徴付けられる病気の処置及び予防のために使用されるのが好ましく、そのために、外因性または変性細胞と身体自身の健康な細胞とを区別するナノ粒子の特徴を利用できる。変性細胞としては、特にがん細胞または増殖障害及び狭窄または再狭窄組織の細胞が考えられる。外因性細胞の例は、特に細菌である。
【0061】
したがって、本発明のナノ粒子とナノ粒子を含む医薬組成物とは、腫瘍、癌及びがんの予防及び治療のために使用される。
本発明のナノ粒子を使用可能ながん及び腫瘍の種類の例は、腺癌、脈絡膜黒色腫、急性白血病、聴神経鞘腫、膨大部癌、肛門癌、星細胞腫、基底細胞癌、膵臓がん、結合組織腫瘍、膀胱がん、肺癌、非小細胞気管支癌、乳がん、バーキットリンパ腫、体癌(corpus carcinoma)、CUP(原発不明癌)症候群、大腸がん、小腸がん、小腸腫瘍、卵巣がん、子宮内膜癌、上衣腫、上皮がん、ユーイング腫瘍、消化管腫瘍、胆嚢がん、胆道癌(gall carcinomas)、子宮がん、子宮頸がん、膠芽腫、婦人科腫瘍、耳、鼻、喉の腫瘍、血液腫瘍(hematological neoplasias)、有毛細胞白血病、尿道がん、皮膚がん、脳腫瘍(グリオーマ)、脳転移、精巣がん、下垂体腫瘍、カルチノイド、カポジ肉腫、喉頭がん、胚細胞腫瘍、骨がん、結腸直腸癌、頭頸部腫瘍(首、鼻、耳の部位に位置する腫瘍)、結腸癌、頭蓋咽頭腫、口の周辺及び唇のがん、肝臓がん、肝転移、白血病、まぶたの腫瘍、肺がん、悪性リンパ腫(ホジキンリンパ腫/非ホジキンリンパ腫)、リンパ腫、胃がん、悪性黒色腫、悪性腫瘍、胃腸管の悪性腫、乳癌、直腸がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、ホジキン病、菌状息肉腫、鼻のがん、神経鞘腫、神経芽腫、腎臓がん、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫、乏突起膠腫、食道癌、骨破壊性腫瘍及び造骨性腫瘍、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、形質細胞腫、頭頸部の扁平上皮癌、前立腺がん、咽頭がん、直腸癌、網膜芽細胞腫、膣がん、甲状腺癌、シュネーベルガー肺がん、食道がん、有棘細胞癌、T細胞リンパ腫(菌状息肉腫)、胸腺腫、管癌(tube carcinoma)、眼腫瘍、尿道癌、泌尿器系腫瘍、尿路上皮癌、外陰癌、性器疣贅(wart appearance)、軟部組織腫瘍、軟部肉腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌及び舌がんである。
【0062】
固形腫瘍が特に好ましい。さらに、好ましいのは、前立腺癌、脳腫瘍、肉腫、子宮頚癌、卵巣癌、乳癌、気管支癌、黒色腫、頭頸部腫瘍、食道癌、直腸癌、膵臓癌、膀胱及び腎臓癌、肝臓、脳及びリンパ節における転移である。
【0063】
特に好ましいのは、本発明のナノ粒子を、従来の温熱療法、放射線療法及び/または従来の化学療法と組み合わせて応用及び使用することである。
さらに、本発明の磁気及び好ましくは超常磁性の粒子は、抗がん剤の活動を活発にし、付加的にその副作用を減少する。
【0064】
従って、本発明に従って製造された粒子は、抗がん剤、すなわち細胞毒性及び/または細胞増殖抑制化合物、すなわち細胞毒性及び/または細胞増殖抑制作用を備えた化合物、と組み合わせて使用されるのが好ましい。抗がん薬の例には、とりわけ、アルキル化剤、細胞増殖抑制作用のある抗生物質、代謝拮抗剤、微小管阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、白金含有化合物及びその他の細胞増殖抑制剤、アスパラギナーゼ、トレチノイン、アルカロイド、ポドフィロトキシン、タキサン及びミルテホシン(miltefosine)(登録商標)、ホルモン、免疫調節剤、モノクローナル抗体、シグナル伝達分子(シグナル伝達のための分子)、キナーゼ阻害剤及びサイトカインが含まれる。
【0065】
アルキル化剤の例としては、とりわけクロレタミン、シクロホスファミド、トロホスアミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロマイド、トレオスルファン、エストラムスチン及びニムスチンが含まれる。
【0066】
細胞増殖抑制作用を持つ抗生物質の例としては、ダウノルビシン及びリポソームダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダクチノマイシン、マイトマイシン C、ブレオマイシン、エピルビシン(4−エピ−アドリアマイシン)、イダルビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン及びアクチノマイシン Dが含まれる。
【0067】
メトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−チオグアニン、6−メルカプトプリン、フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、ゲムシタビン、シタラビン、アザチオプリン、ラルチトレキセド、カペシタビン、シトシン、アラビノシド、チオグアニン及びメルカプトプリンを、代謝拮抗剤(代謝拮抗薬)の例として挙げることができる。
【0068】
アルカロイド及びポドフィロトキシンの種類に含まれるのは、とりわけ、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド及びテニポシドである。さらに、白金含有化合物を、本発明に従って使用することができる。シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチンが、白金を含有する化合物の例である。微小管阻害剤として数えられるのは、例えば、ヴィンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン)などのアルカロイド及びパクリタキセル(タキソール(Taxol)(登録商標))とパクリタキセルの誘導体である。トポイソメラーゼ阻害剤の例として、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカンが含まれる。
【0069】
パクリタキセル及びドセタキセルは、タキサン化合物の例で、その他の細胞増殖抑制剤(その他の細胞増殖抑制薬)として数えられるのは、例えば、ヒドロキシカルバミド(ヒドロキシウレア)、イマチニブ、ミルテホシン(Miltefosine)(登録商標)、アムサクリン、トポテカン(トポイソメラーゼ−I阻害剤)、ペントスタチン、ベキサロテン、トレチノイン及びアスパラギナーゼである。モノクローナル抗体の化合物群の代表としては、とりわけトラスツズマブ(ハーセプチン(Herceptin)(登録商標)としても知られている)、アレムツズマブ(マブキャンパス(MabCampath)(登録商標)としても知られている)及びリツキシマブ(マブテラ(MabThera)(登録商標)としても知られている)が挙げられる。キナーゼ阻害剤の代表としては、ソラフェニブ(ネクサバール(Nexavar)(登録商標))及びスニチニブ(スーテント(Sutent)(登録商標))が挙げられる。ホルモンの例としては、グルココルチコイド(プレドニゾン)、エストロゲン(ホスフェストロール、エストラムスチン)、LHRH(ブセレリン、ゴセレリン、リュープロレリン、トリプトレリン)、フルタミド、酢酸シプロテロン、タモキシフェン、トレミフェン、アミノグルテチミド、フォルメスタン、エキセメスタン、レトロゾール及びアナストロゾールが挙げられる。免疫調節剤、サイトカイン、抗体及びシグナル伝達分子の種類として数えられるのは、インターロイキン−2、インターフェロン−α、エリスロポエチン、G−CSF、トラスツズマブ(ハーセプチン(Herceptin)(登録商標))、リツキシマブ(マブテラ(Mabthera)(登録商標))、ゲフィチニブ(イレッサ(Iressa)(登録商標))、イブリツモマブ(ゼヴァリン(Zevalin)(登録商標))、レバミゾール及びレチノイドである。
【0070】
したがって、本発明はまた、本発明に従って製造された粒子と少なくとも1つの抗がん剤との組み合わせに言及し、少なくとも1つの抗がん剤とは、アクチノマイシン−D、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、プリン及びピリミジン塩基の拮抗剤、アントラサイクリン、アロマターゼ阻害剤、アスパラギナーゼ、抗エストロゲン剤(anti-estrogenes)、ベキサロテン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン誘導体、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、シトシンアラビノシド、アルキル化細胞増殖抑制剤(alkalyting cytostatics)、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシンリポ、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フルダラビン、フルオロウラシル、葉酸拮抗剤、フォルメスタン、ゲムシタビン、グルココルチコイド、ゴセレリン、ホルモン及びホルモン拮抗剤、ハイカムチン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、レトロゾール、ロイプロリド、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミルテホシン、マイトマイシン、分裂抑制剤、ミトキサントロン、ニムスチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、プロカルバジン、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド、テストラクトン、チオテパ、チオグアニン、トポイソメラーゼ阻害剤、トポテカン、トレオスルファン、トレチノイン、トリプトレリン、トロホスファミド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、前記組み合わせを含む細胞増殖抑制効果のある抗生物質及び医薬組成物、などである。
【0071】
上記の薬は、本発明の粒子との組み合わせとして使用されることができるだけでなく、がん細胞により効率的にインポートされるように、粒子、好ましくはナノ粒子と共有結合されることができる。
【0072】
本発明のもう一つの側面は、本発明の方法によって得られる粒子に向けられており治療効果のある物質が、粒子またはナノ粒子に共有結合されている。治療効果のある物質は、抗増殖、抗移動(anti-migrative)、抗血管形成、抗血栓、抗炎症、消炎、細胞増殖抑制、細胞毒性、抗凝固、抗細菌、抗ウイルス及び/または抗真菌薬から選択されることができ、抗増殖、抗移動、抗血管新生、細胞増殖抑制及び/または抗細胞毒性薬及び、抗増殖、抗移動、抗血管形成、抗血栓、抗炎症、消炎、細胞増殖抑制、細胞毒性、抗凝固、抗細菌、抗ウイルス及び/または抗真菌特性を備えた核酸、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、炭水化物、脂質、糖タンパク質、グリカン(glycanes)またはリポタンパク質が好ましい。さらに、これらの物質は、放射線増感剤または増感剤またはそのような増感剤と組み合わされたあるいはそれを含む他の従来のがん治療方法のエンハンサーも含んでいてもよい。
【0073】
治療活性物質の連結は、それぞれの薬剤によってどの官能基が保持されているかによって、例えば、水酸基、アミノ基、カルボニル基、チオール基またはカルボキシル基を介して行われることが可能である。水酸基は、エステル、アセタールまたはケタールと、チオール基は、チオエステル、チオアセタールまたはチオケタールと、アミノ基は、アミド、そして部分的にイミン(シッフ塩基)と、カルボキシル基は、エステルまたはアミドと、カルボニル基は、ケタールと連結されるのが好ましい。さらに、ナノ粒子の表面の官能基化はよく知られているため、既知の方法を使用して、アミノ基、水酸基、カルボキシル基あるいはカルボニル基が、ナノ粒子の表面に生成される。
【0074】
WO98/58673の特許明細書に記載されているような活性化ナノ粒子の薬物複合体(例えば、ポリマーによる)のさらなるコーティングも可能であり、粒子薬物複合体の生物学的特性を改善するために使用することができる。さらに、標的とする特性を全体的な構成概念に与える分子を連結することもできる(例えば、ポリクロナール抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ハマーナ抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメント、アプタマー、Fab−フラグメント、Fc−フラグメント、ペプチド、ペプチドミメティクス、ギャップミア、リボザイム、CpG−オリゴマー、DNA−ザイム、リボスイッチ、または脂質)。すべてのさらなる変更が、標的部位での治療活性物質の活性化可能な放出に支障を来たさないことが重要である。
【0075】
さらに、治療活性物質が直接ナノ粒子に結合されずに、リンカー分子を使って固定されるのが好ましい。リンカーとしては、リンカーに、熱により、光化学的にまたは酵素的に開裂できる基、酸に不安定な基または他の手段により簡単に分離できる基が含まれていることを条件に、最大50の炭素原子の分子を持つ多様な分子を使用できる。リンカー分子内部での結合及び/またはリンカーの薬との結合及び/またはリンカーのナノ粒子の表面への結合は、交番磁界の作用によって、直接または間接的に開裂可能でなければならない。例えば、ペプチダーゼ、エステラーゼまたはヒドロラーゼが与えられると、あるいはその活性または発現が、標的部位、例えばがん細胞、の交番磁界によって強化されて、これらの酵素が、その後上述の開裂を行うことができると、間接開裂が発生する。さらに、間接開裂は、磁気ナノ粒子を使用して発生することもできる。磁気ナノ粒子は、交番磁界によって加熱され、それにより熱不安定な結合が開裂する。交番磁界の作用により標的部位のpHを増加させて、その後、リンカー分子内部で酸に不安定な結合を開裂することも可能である。
【0076】
リンカー分子内部あるいはリンカー分子において酵素的に開裂可能な基としては、アミド基を挙げる必要がある。熱または酸によって開裂可能な基は、例えばリン酸基、チオリン酸基、硫酸基、ホスファミド基、カルバメート基またはイミン基を含む。
【0077】
リンカー分子は、核酸分子、ポリペプチド、ペプチド核酸、アプタマー、DNA、RNA、ロイシンジッパー、オリゴヌクレオチド、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ハプテン抗体ブリッジまたはビオチン−アビジンブリッジであってもよい。
【0078】
薬は、必ずしも共有リンカーに結合されなくてもよいが、イオンや水素結合により結合されるか、あるいは挿入または複合化されてもよい。
抗がん剤、モノクローナル抗体、アプタマー、核酸、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、炭水化物、脂質、糖タンパク質、グリカン、リポタンパク質、または抗増殖、抗移動、抗血管形成、抗血栓、抗炎症、消炎、細胞増殖抑制、細胞毒性、抗凝固、抗細菌、抗ウイルスまたは抗真菌薬などの治療効果物質と微粒子及びナノ粒子との結合の様々な可能性が、WO2006108405Aに記載されている。
【0079】
したがって、本発明の方法には、ステップK1)に従って、抗がん剤、モノクローナル抗体、アプタマー、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、糖タンパク質、グリカン、リポタンパク質、または抗増殖、抗移住、抗血管形成、抗血栓、抗炎症、消炎、細胞増殖抑制、細胞毒性、抗凝固、抗細菌、抗ウイルスまたは抗真菌薬を粒子と結合させるステップL1)がさらに含まれていてもよい。
【0080】
さらに、吸着によりナノ粒子の表面に薬を結合して、薬の放出を大部分防止するバリア層が、交番磁界の作用により薬の放出が起きることができるように変形あるいは具体的には劣化するまで、バリア層でカバーすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の酸化鉄ナノ粒子の(透過電子顕微鏡画像による)粒子サイズの分布を示す。
【図2】DE19614136A1の特許明細書に記載の、析出により製造された従来の酸化鉄ナノ粒子のSAR値と比較された、水中における本発明の酸化鉄ナノ粒子のSAR値を示す。SAR値は、周波数が100kHzの交番磁界を参照したものである。
【図3】核及びシェルを備えた本発明の酸化鉄ナノ粒子の略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明の粒子を生成するための一般的な合成法
ステップA1)
沸点が約200℃〜約400℃の有機溶媒LM1において、粒子種を製造するために、0.02モルの鉄含有化合物A及び100mlの溶媒をガラスフラスコに投入する。
ステップA2)
必要に応じて、本願に記載の添加物のうちの1つを、0.008〜0.05モル加える。
ステップB1)
その後の反応温度より約50℃低い50℃〜350℃の温度に、最低10分間、好ましくは1時間、溶液を加熱する。
ステップB2)
必要に応じて、さらなる添加物とさらなる鉄含有化合物Bとを加える。
ステップC1)
得られた混合物を、ステップB1)の加熱フェーズの温度より少なくとも50℃高い各溶媒LM1またはLM2の沸点に、保護ガス下の環流冷却により三つ口フラスコで加熱し、最低約1時間、この温度を維持する。
ステップC2)
必要に応じて、得られた酸化鉄粒子を酸化する。
ステップD1)
遠心分離、洗浄、そして好ましくはソックスレー抽出により、粒子の精製を行う。
ステップD1* )
必要に応じて、酸化鉄ナノ粒子の少なくとも1つの焼戻しフェーズを行う。
ステップD2)
ここまで行われていない場合は、必要に応じて、酸化鉄ナノ粒子を酸化する。
ステップD2*)
必要に応じて、酸化鉄ナノ粒子の少なくとも1つの焼戻しフェーズを行う。
ステップE1)
精製粒子の分散または懸濁のために、精製粒子を中性pHの水あるいは好ましくは鉱酸を含む酸性水溶液中で再懸濁する。酸の濃度は、0.002〜0.1Mである。分散または懸濁をサポートするために、超音波処理を行ってもよい。
ステップE2)
ここまで行われていない場合は、必要に応じて、酸化鉄ナノ粒子を酸化する。
ステップF1)
3〜8モルの量の表面活性化合物を加える。
ステップF2)
ここまで行われていない場合は、必要に応じて、酸化鉄ナノ粒子を酸化する。
ステップG1)
必要に応じて、50℃〜900℃で、好ましくは1〜2時間攪拌する。撹拌しながら1〜3時間、超音波処理を行う。
ステップG2)
ここまで行われていない場合は、必要に応じて、酸化鉄ナノ粒子を酸化する。
ステップH1)
遠心分離、洗浄、さらに、どの方法またはどの方法の組み合わせがよりよいかによって、抽出及び/または透析により、得られた粒子の精製を行う。
ステップH2)
ここまで行われていない場合は、必要に応じて、酸化鉄ナノ粒子を酸化する。
ステップI1)
得られた粒子を、選択的に、アミン及び好ましくはアンモニアを低濃度で含む水及びアルコール混合物(1: 1〜5:1)に再懸濁する。
ステップI2)
ここまで行われていない場合は、必要に応じて、酸化鉄ナノ粒子を酸化する。
ステップJ1)
0.04〜0.08モルの量のアルコキシシランを加える。
ステップJ2)
ここまで行われていない場合は、必要に応じて、酸化鉄ナノ粒子を酸化する。
ステップK1)
遠心分離、透析、洗浄、及び/または、どの方法またはどの方法の組み合わせがよりよいかによって、再分散抽出により、得られた粒子の精製を行う。
ステップK2)
ここまで行われていない場合は、必要に応じて、酸化鉄ナノ粒子を酸化する。
ステップL1)
必要に応じて、薬物の酸化鉄ナノ粒子への結合を行う。
実施例
実施例1:
ジエチレングリコールジブチルエーテル中で粒子種を製造するために、0.3グラムの鉄ペンタカルボニルを、ガラスフラスコ中の50mlのジエチレングリコールジブチルエーテルに溶解した。1.7gのオレイン酸を溶液に加えた。その溶液を1時間15O℃まで加熱した。
実施例2:
ポリグリコールDME500中での(クラリアント社)粒子種の製造のために、8グラムのオレイン酸鉄(III)を、ガラスフラスコ中のポリグリコールDME500に溶解した。1.5gのオレイン酸を溶液に加え、その溶液を30分間120℃まで加熱した。
実施例3A:
酸化鉄ナノ粒子の製造のために、実施例1−2の溶液を、各溶液の沸点まで、保護ガス(アルゴン)の伝導下の環流凝縮により三つ口フラスコにおいて加熱し、この温度を最低1時間維持した。これにより、溶液は赤く変化した。冷却後、大気酸素の伝導により、一晩、粒子を酸化した。
実施例3B:
酸化鉄ナノ粒子の製造のために、実施例1−2の溶液を、各溶液の沸点まで、保護ガス(アルゴン)の伝導下の環流冷却により三つ口フラスコにおいて加熱し、この温度を最低1時間維持した。ここでは、溶液は黒く変化した。
実施例4:
実施例3の粒子を、高G値で遠心分離し、エタノールで洗浄した。500mgの洗浄製品を円筒ろ紙(603g、ワットマン社)で重みをかけ、ソックスレー装置に置いた。200mlの抽出エタノールをソックスレー装置のナスフラスコに満たし、抽出物をその沸点まで加熱した。連続抽出は、8時間以上実施され、約16抽出サイクルを含んだ。この結果、エタノール溶液は黄色っぽくなった。抽出完了後、円筒ろ紙を除去し、粉末をシュレンク容器に移動し、真空中で1時間乾燥した。
実施例5:
抽出後の粒子の分散体のために、実施例4のナノ粒子の粉末0.5gを20mlの0.01M HCIで懸濁した。その後、ナノ粒子を30分超音波で処理した。次に、0.5グラムの固体オレイン酸ナトリウムを加えた。
ステップG1:
その後、70℃で1.5時間攪拌し、さらに2時間攪拌しながら超音波処理を行った。分散が成功裡に行われた後、分散体を低G値で遠心分離して非分散粒子を分離した。また、残りの分散体を洗浄して、過剰なオレイン酸ナトリウムを除去した。これは、高G値での遠心分離とジエチルエーテルでの洗浄と水中での再分散により行われる。代わりに、ジエチルエーテルまたは透析で抽出を行ってもよい。再分散を完全にするために、分散体を超音波で処理した。
実施例6:
実施例5の粒子分散体3.3ml(0.97mol/ l Fe)及びテトラエトキシシラン2.14mlを、水とエタノール(3:1)及びアンモニア1.5重量%の混合物120mlに加えた。加えている間、分散体を攪拌し、その後6時間超音波で処理した。分散体を遠心分離及び水中での再分散により精製した。
実施例7(焼戻しフェーズ):
実施例4で得られた粒子を200mlのジエチレングリコールジブチルエーテルで懸濁した。次に、80℃で12時間、空気で消毒し、その後、環流下で8時間(約256℃の沸点)沸騰させた。懸濁液を、その後、徐々に(8時間以内)室温に冷却した。このプロセスを2回繰り返した。
【0083】
そのようにして得られた(焼戻しされた)粒子を洗浄し、20mlの1M HNO3で懸濁した。次に、0.3mmolの硝酸鉄(Fe(NO33*9H2O)を加えて、還流下で1時間(100℃)沸騰させた。各回、100mlの水で3回、粒子を洗浄した。
【0084】
次にこれらの粒子を、実施例4−6と同様にコーティングした。
実施例8A(酸化あり/空気での消毒なし):
エチレングリコール中での酸化鉄ナノ粒子の製造のために、0.1モルのFeCl3*6H2Oと0.2molのFeCl3(無水)、50gの酢酸ナトリウムと195gの
ジアミノヘキサンを、900mlのエチレングリコールに溶解し、6O℃まで1時間加熱した。
【0085】
次に、溶液を30分以内に沸点に加熱した。
沸騰温度は6時間維持された。形成された分散体を、徐々に室温まで冷却した。
粒子を、エタノールと水の混合物で3回洗浄した。
【0086】
その後、粒子を900mlのエチレングリコールで再懸濁した。懸濁液をエチレングリコールの沸点まで加熱し、24時間この温度で維持した。
冷却後、粒子を水とエタノールの混合液で洗浄し、900mlの1M HNO3で再懸濁した。次に、450mlの0.7M硝酸鉄(Fe(NO33*9H2O)溶液を加えて、1時間(100℃)還流下で沸騰させた。各回、500mlの水で3回、粒子を洗浄した。
【0087】
これらの粒子を、実施例4−6と同様にコーティングした。
実施例8B(酸化なし/空気での消毒あり):
エチレングリコール中での酸化鉄ナノ粒子の製造のため、0.1molのFeCl3*6H2Oと0.2molのFeCl3(無水)、50gの酢酸ナトリウムと195gの
ジアミノヘキサンを、900mlのエチレングリコールに溶解し、6O℃まで1時間加熱した。
【0088】
次に、溶液を30分以内に沸点まで加熱した。沸騰温度は6時間維持された。形成された分散体を、徐々に室温まで冷却した。
粒子を、エタノールと水の混合物で3回洗浄した。
【0089】
その後、粒子を900mlのエチレングリコールで再懸濁し、大気酸素で消毒した。懸濁液をエチレングリコールの沸点まで加熱し、24時間この温度で維持した。
冷却後、粒子を水とエタノールの混合液で洗浄し、水で再懸濁した。
【0090】
これらの粒子を、実施例4−6と同様にコーティングした。
実施例8C(酸化あり/空気での消毒あり):
エチレングリコール中での酸化鉄ナノ粒子の製造のため、0.1molのFeCl3*6H2Oと0.2molのFeCl3(無水)、50gの酢酸ナトリウムと195gの
ジアミノヘキサンを、900mlのエチレングリコールに溶解し、6O℃まで1時間加熱した。
【0091】
次に、溶液を30分以内に沸点まで加熱した。沸騰温度は6時間維持された。形成された分散体を、徐々に室温まで冷却した。
粒子を、エタノールと水の混合物で3回洗浄した。
【0092】
その後、粒子を900mlのエチレングリコールで再懸濁し、大気酸素で消毒した。懸濁液をエチレングリコールの沸点まで加熱し、24時間この温度で維持した。
冷却後、粒子を水とエタノールの混合液で洗浄し、900mlの1M HNO3で再懸濁した。その後、450mlの0.7M 鉄硝酸溶液(Fe(NO33*9H2O)
を加え、1時間(100℃)還流下で沸騰させた。粒子は、各回、500mlの水で3回洗浄された。
【0093】
これらの粒子を、実施例4−6と同様にコーティングした。
実施例8D(酸化なし/空気での消毒あり):
エチレングリコール中での酸化鉄ナノ粒子の製造のため、0.1molのFeCl3*6H2Oと0.2molのFeCl3(無水)、50gの酢酸ナトリウムと195gの
ジアミノヘキサンを、900mlのエチレングリコールに溶解し、6O℃まで1時間加熱した。
【0094】
次に、溶液を30分以内に沸点まで加熱した。沸騰温度は6時間維持された。形成された分散体を、徐々に室温まで冷却した。
粒子を、エタノールと水の混合物で3回洗浄した。
【0095】
その後、粒子を900mlのエチレングリコールで再懸濁した。懸濁液をエチレングリコールの沸点まで加熱し、24時間この温度で維持した。
冷却後、粒子を水とエタノールの混合液で洗浄し、水で再懸濁した。
【0096】
これらの粒子を、実施例4−6と同様にコーティングした。
実施例9
酸化鉄ナノ粒子の製造のために、2000mlのメタノール中に96gの水酸化ナトリウムと680mlのオレイン酸を含む溶液を、500mlのメタノール中の216gの塩化鉄(III)六水和物に加えた。その結果生じた固体をメタノールで洗浄し、ジエチルエーテルに溶解した。その後、数回水で抽出した。固体をアセトンで沈殿させ、洗浄し、真空下で乾燥させた。この固体75gを250mlのトリオクチルアミンに溶解させ、120℃まで1時間加熱した。
【0097】
次に、溶液を30分以内で380℃の温度までオートクレーブにて加熱した。この温度を4時間維持した。形成された分散体を、徐々に室温に冷却した。
粒子を、エタノールと水の混合物で3回洗浄した。
【0098】
その後、粒子を300mlのジエチレングリコールジブチルエーテルで懸濁し、大気酸素で消毒した。懸濁液をオートクレーブにて300℃の温度に加熱し、24時間この温度で維持した。
【0099】
冷却後、粒子を水とエタノールの混合液で洗浄し、水で再懸濁した。
これらの粒子を、実施例8Cのように酸化し、その後、実施例4−6と同様にコーティングした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の製造方法であって、
A1)少なくとも1つの有機溶媒LM1に、少なくとも1つの鉄含有化合物Aの組成物を提供するステップと、
B1)少なくとも10分間、ステップC1)に従って、該組成物を、50℃から鉄含有化合物Aの実際の反応温度より50℃低い温度までの範囲の温度に加熱するステップと、
C1)該組成物を、200℃〜400℃の温度に加熱するステップと、
D1)得られた粒子を精製するステップと、
E1)精製されたナノ粒子を、水または酸の水溶液に懸濁するステップと、
F1)ステップE1)で得られた水溶液に、表面活性化合物を加えるステップと、
G1)超音波を使って、ステップF1)の水溶液を処理するステップと、
H1)請求項G1)で得られた粒子の水分散液を精製するステップと、
I1)水及び水と混ざる溶媒を含む溶媒混合液中で、ステップH1)の粒子の分散体を製造するステップと、
J1)ステップI1)の溶媒混合液における粒子の分散体に、アルコキシシランを加えるステップと、
K1)該粒子を精製するステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、ステップA1に続いて、
A2) テンサイド、シラン、Si-またはAl-含有有機化合物、ホスフィン、飽和または非飽和脂肪酸、アミン、ジアミン、カルボン酸及びその塩、飽和及び非飽和脂肪酸、ポリマーを含むグループから選択される添加物を加えるステップと
をさらに含む方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2の方法であって、ステップB1に続いて、
B2) テンサイド、シラン、Si-またはAl-含有有機化合物、ホスフィン、飽和または非飽和脂肪酸、アミン、ジアミン、カルボン酸及びその塩、飽和及び非飽和脂肪酸、ポリマーを含むグループから選択される添加物を加えるステップ、または
B2) 少なくとも1つの有機溶媒L2中の少なくとも1つの鉄含有化合物Bの組成物を加えるステップ、または
B2) 少なくとも1つの有機溶媒L2中の少なくとも1つの鉄含有化合物Bの組成物を加えると共に、テンサイド、シラン、Si-またはAl-含有有機化合物、ホスフィン、飽和または非飽和脂肪酸、アミン、ジアミン、カルボン酸及びその塩、飽和及び非飽和脂肪酸、ポリマーを含むグループから選択される添加物を加えるステップ
をさらに含む方法。
【請求項4】
請求項3の方法であって、少なくとも1つの鉄含有化合物Bが、鉄錯化合物、鉄カルボニル化合物、鉄塩、有機鉄化合物、飽和または不飽和脂肪酸の鉄塩、鉄サンドイッチ錯体を含むグループから選択される方法。
【請求項5】
請求項3の方法であって、少なくとも1つの溶媒L2の最低沸点が、200℃である方法。
【請求項6】
請求項3の方法であって、少なくとも1つの溶媒L2が、高沸点アミン、アルカン、オレフィン、アルコールまたはエーテル、アルキレングリコールモノエーテル、アルキレングリコールジエーテル、エチレングリコールモノエーテル、エチレングリコールジエーテル、プロピレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールジエーテル、グリセリンモノエーテル、グリセリンジエーテル、グリセリントリエーテル、グリコールジエーテル(グリム)を含むグループから選択される方法。
【請求項7】
請求項3の方法であって、少なくとも1つの鉄含有化合物Bが、少なくとも1つの鉄含有化合物Aと同一、及び/または、少なくとも1つの有機溶媒LM1が、少なくとも1つの有機溶媒LM2と同一である方法。
【請求項8】
前記請求項のうちの1つの方法であって、ステップC1またはD1またはE1またはF1またはG1またはH1またはI1またはJ1またはK1に続いて、
X2) 形成された粒子を酸化するステップ
をさらに含む方法。
【請求項9】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、ステップD1に続いて
D1*) 得られた粒子を焼戻しするステップ、または
ステップD2に続いて、
D2*) 得られた粒子を焼戻しするステップ
をさらに含む方法。
【請求項10】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、少なくとも1つの鉄含有化合物Aが、鉄錯化合物、鉄カルボニル化合物、鉄塩、有機鉄化合物、飽和または不飽和脂肪酸の鉄塩、鉄サンドイッチ錯体を含むグループから選択される方法。
【請求項11】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、少なくとも1つの溶媒の最低沸点が、200℃である方法。
【請求項12】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、少なくとも1つの溶媒LM1が、高沸点アミン、アルカン、オレフィン、アルコール、エーテル、アルキレングリコール−モノエーテル、アルキレングリコール−ジエーテル、エチレングリコール−モノエーテル、エチレングリコール−ジエーテル、プロピレングリコール−モノエーテル、プロピレングリコールジエーテル、グリセリンモノエーテル、グリセリンジエーテル、グリセリントリエーテル、グリコールジエーテル(グリム)を含むグループから選択される方法。
【請求項13】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、ステップC1)の加熱が、最低30分間実行される方法。
【請求項14】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、ステップD1)の精製が、ソックスレー抽出によって行われる方法。
【請求項15】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、ステップD1)の精製ステップにおいて、潜在的に存在する添加物の大部分が除去される方法。
【請求項16】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、鉱酸の水溶液のpHが、2〜6、好ましくは3〜5である方法。
【請求項17】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、ステップE1)の鉱酸が、塩酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ホウ酸または硝酸を含むグループから選択される方法。
【請求項18】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、ステップF1)の表面活性化合物が、脂肪酸、脂肪酸塩、テンサイド、ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、デキストラン、PLGA、キトサン及びポリエチレンイミンを含むグループから選択される方法。
【請求項19】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、ステップI1)の溶媒混合液が、アルコールと水との混合物であって、アルコールと水との体積比が1:1から1:5である方法。
【請求項20】
請求項19の方法であって、前記溶媒混合液が、アミンまたはアンモニアをさらに含む方法。
【請求項21】
請求項19の方法であって、前記アルコールが、タノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールを含むグループから選択される方法。
【請求項22】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、ステップJ1)のアルコキシシランが、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン及びモノアルコキシシランを含むグループから選択される方法。
【請求項23】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、粒子とステップJ1)のアルコキシシランとのモル比が、1:1〜1:5の範囲にある方法。
【請求項24】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、ステップJ1)のアルコキシシランを、超音波処理下で加える方法。
【請求項25】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、クレームJ1)で得られた分散体を、1〜8時間、超音波で処理する方法。
【請求項26】
前記請求項のうちのいずれか1つの方法であって、
L1) ステップK1)で得られた粒子に、抗がん剤、モノクローナル抗体、アプタマー、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、糖タンパク質、グリカン、リポタンパク質、または抗増殖、抗移住、抗血管形成、抗血栓、抗炎症、消炎、細胞増殖抑制、細胞毒性、抗凝固、抗細菌、抗ウイルス、または抗真菌薬を結合させるステップをさらに含む方法。
【請求項27】
請求項1〜26のうちのいずれか1つの方法により得られる鉄含有粒子。
【請求項28】
請求項1〜26のうちのいずれか1つの方法により得られる、6KA/mの磁界強度で最低SAR値が20mW/mgの鉄含有粒子。
【請求項29】
請求項25の鉄含有粒子を含む医薬組成物。
【請求項30】
輸液、注射液、粉末、吸入粉末または凍結乾燥品の形態である請求項29の医薬組成物。
【請求項31】
薬品に使用される請求項27の鉄含有粒子。
【請求項32】
増殖性疾患、がん、腫瘍、リューマチ、関節炎、関節症、及び細菌感染の処置及び/または予防のための医薬組成物を製造するための請求項27の鉄含有粒子の使用法。
【請求項33】
抗がん剤と組み合わせた請求項27の鉄含有粒子の使用法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公表番号】特表2011−509233(P2011−509233A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541692(P2010−541692)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000038
【国際公開番号】WO2009/086824
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510160890)マグフォース ナノテクノロジーズ アーゲー (2)
【Fターム(参考)】