磁気抵抗素子および磁気抵抗素子の製造方法
【課題】従来のTMR素子に比べて磁気抵抗を大きくし、出力電圧を大きくすることを目的とする。
【解決手段】磁気抵抗素子は、基板と、前記基板上に形成されたCo,Fe,Bを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層と、を有し、前記強磁性体層が結晶化していることに特徴がある。
【解決手段】磁気抵抗素子は、基板と、前記基板上に形成されたCo,Fe,Bを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層と、を有し、前記強磁性体層が結晶化していることに特徴がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)は、現在広く用いられている記憶素子であるDRAMに代わる大容量向け記憶素子であり、かつ、高速な不揮発性メモリとして広く研究開発が行われており、例えば、4MbitのMRAMがサンプル出荷されたという実績がある。
【0003】
図8は、MRAMの心臓部であるトンネル磁気抵抗素子(以下、「TMR素子」と称する)の構造と、その動作原理を示す図である。図8(A)に示すように、TMR素子においては、酸化物からなるトンネル障壁(以下、「バリア層」とも称する)の両側を強磁性金属からなる第1及び第2の2つの電極により挟んだトンネル構造を有している。トンネル障壁層としては、アモルファスのAl−O層が用いられている(非特許文献1参照)。図8(A)に示すように、第1の強磁性電極と第2の強磁性電極との磁化の向きが平行な平行磁化の場合には、トンネル構造の界面における法線方向に関する素子の電気抵抗が小さくなる。一方、図8(B)に示すように、第1の強磁性電極と第2の強磁性電極との磁化の向きが平行な反平行磁化の場合には、トンネル構造の界面における法線方向に関する素子の電気抵抗が大きくなる。この抵抗値は、一般的な状態では変化せず、抵抗値が高いか低いかに基づいて情報“1”、“0”として記憶される。平行磁化と反平行磁化とは不揮発に記憶されるため、不揮発性メモリの基本素子として用いることができる。
【0004】
図9は、MRAMの基本構造例を示す図であり、図9(A)はMRAMの斜視図であり、図9(B)は模式的な回路構成図であり、図9(C)は、構造例を示す断面図である。図9(A)に示すように、MRAMにおいてはワード線WLとビット線BLとが交差するように配置され、交差部にMRAMセルが配置されている。図9(B)に示すように、ワード線とビット線との交差部に配置されたMRAMセルは、TMR素子と、このTMR素子と直列接続されたMOSFETとを有しており、負荷抵抗として機能するTMR素子の抵抗値をMOSFETにより読み取ることにより、記憶情報を読み出すことができる。尚、情報の書き換えは、例えば、TMR素子への磁場の印加により行うことができる。図9(C)に示すように、MRAMメモリセルは、p型Si基板101内に形成されたソース領域105とドレイン領域103と、その間に画定されるチャネル領域に対して形成されたゲート電極111とを有するMOSFET100と、TMR素子117とを有している。ソース領域105は接地(GND)され、ドレインは、TMR素子を介してビット線BLに接続されている。ワード線WLはゲート電極111に対して図示しない領域において接続されている。
【0005】
以上に説明したように、不揮発性メモリMRAMは、1つのMOSFET100とTMR素子117とにより1つのメモリセルを形成することができるため、高集積化に適したメモリ素子ということができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】D.Wang, et al.:Science294 (2001) 1488.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現状の技術を用いることにより64Mbit程度のMRAMを実現する見通しは立っているが、それ以上の高集積化のためには、MRAMの心臓部であるTMR素子の特性を向上させる必要がある。特に、TMR素子の出力電圧を向上させるには、磁気抵抗の増大と電圧特性の改善の両方が必要である。図10は、アモルファスAl−Oをトンネル障壁とした従来型TMR素子の磁気抵抗のバイアス電圧による変化を示す図である(L1)。図10に示すように、従来型TMR素子においては、磁気抵抗が小さく、特に電圧を印加することにより磁気抵抗が急激に小さくなる傾向がみられる。このような特性では、動作マージンを考慮した出力電圧が小さすぎるため、実際の記憶素子に用いるのが難しい。より具体的には、現状のTMR素子の磁気抵抗は約70%と低く、また出力電圧も200 mV以下と低いため、DRAMの出力電圧に比べて実質的に半分であり、集積度を上げるに従い信号がノイズに埋もれて読み出せなくなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、TMR素子における出力電圧を大きくすることを目的とする。さらに、大きな磁気抵抗により、安定に動作する記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、トンネル障壁層と、該トンネル障壁層の第1面側に形成されたBCC構造を有する第1の強磁性体層と、前記トンネル障壁層の第2面側に形成されたBCC構造を有する第2の強磁性体層と、を有する磁気トンネル接合構造を備え、前記トンネル障壁層が、単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)層により形成されていることを特徴とする磁気抵抗素子が提供される。
【0010】
また、MgO(001)からなるトンネル障壁層と、該トンネル障壁層の第1面側に形成されたFe(001)からなる第1の強磁性体層と、前記トンネル障壁層の第2面側に形成されたFe(001)からなる第2の強磁性体層と、を有する磁気トンネル接合構造であって、前記MgO層が、単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)層により形成されていることを特徴とする磁気抵抗素子が提供される。前記MgO(001)層の伝導帯下端と前記Fe(001)層のフェルミエネルギーの間の不連続値(トンネル障壁高さ)を、欠陥のない完全な単結晶における理想的な値よりも低くしたことを特徴とする。上記構成を用いると、磁気抵抗が増大しTMR素子の出力電圧を大きくすることができた。1つのトランジスタの負荷として上記磁気抵抗素子を用いると、不揮発性の記憶素子を形成することができた。
【0011】
本発明の他の観点によれば、基板を準備する工程と、該基板上に第1のFe(001)層を堆積する工程と、前記第1のFe(001)層上に電子ビーム蒸着法により単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)からなるトンネル障壁層を高真空下において堆積する工程と、該トンネル障壁層上に第2のFe(001)層を形成する工程とを有することを特徴とする磁気抵抗素子の製造方法が提供される。
【0012】
また、単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)からなる基板を準備する第1工程と、該基板上に第1のFe(001)層を堆積し、次いで、表面を平坦にするためのアニールを行う第2工程と、前記第1のFe(001)層上に電子ビーム蒸着法により単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)からなるトンネル障壁層を高真空下において堆積する第3工程と、該トンネル障壁層上に第2のFe(001)層を形成する第4工程とを有することを特徴とする磁気抵抗素子の製造方法が提供される。尚、前記第1工程と第2工程との間に、単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)からなるシード層を成長する工程を有していても良い。また、前記MgO層を、MgOxのx値を調整済みのターゲットを用いて堆積しても良い。この際、前記MgOを形成する工程中に、MgOxのx値を調整しても良い。
【0013】
本発明のさらに別の観点によれば、MgO(001)からなるトンネル障壁層と、該トンネル障壁層の第1面側に形成されたアモルファス磁性合金からなる第1の強磁性体層と、前記トンネル障壁層の第2面側に形成されたアモルファス磁性合金からなる第2の強磁性体層と、を有する磁気トンネル接合構造を備え、前記MgO(001)層の伝導帯下端と前記アモルファス磁性合金からなる第1又は第2の強磁性体層とのフェルミ準位の間の不連続値(トンネル障壁の高さ)を、欠陥のない完全な単結晶における理想的な値よりも低くしたことを特徴とする磁気抵抗素子が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来のTMR素子に比べて大きな磁気抵抗を得ることができ、TMR素子の出力電圧を大きくすることができ、かつTMR素子の抵抗値をMRAMに最適な低抵抗にすることができる。従って、TMR素子を用いたMRAMの高集積化が容易になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるTMR素子の構造(図1(B))と、強磁性体金属であるFe(001)のエネルギーバンド構造を示す図であり、波数空間の[001]方向に対するE−EFの関係を示す図(図1(A))である。
【図2】図2(A)から図2(D)までは、本発明の実施の形態によるFe(001)/MgO(001)/Fe(001)構造を有する磁気抵抗素子(以下、「Fe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子」と称する。)の製造工程を模式的に示す図である。
【図3】図3(A)は、Fe(001)下部電極(第1電極)のRHEEDイメージを示す図であり、図3(B)は、この際のMgO(001)バリア層のRHEEDイメージを示す図である。
【図4】MgO蒸着時における成膜チャンバ中の四重極Massスペクトルの観測結果を示す図である。
【図5】MgO蒸着中の酸素分圧の膜堆積速度依存を示す図である。
【図6】Fe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子の典型的な磁気抵抗曲線を示す図である。
【図7】図7(A)は、室温におけるMR比のバイアス電圧依存性を示す図である。図7(B)は、TMR素子の出力電圧Voutは(=バイアス電圧×(Rap−Rp)/Rap)を示す図である。
【図8】TMR素子の構造と、その動作原理を示す図である。
【図9】MRAMの基本構造例を示す図であり、図9(A)はMRAMの斜視図であり、図9(B)は模式的な回路構成図であり、図9(C)は、構造例を示す断面図である。
【図10】アモルファスAl−Oをトンネル障壁とした従来型TMR素子の磁気抵抗のバイアス電圧による変化を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態の変形例によるTMR素子の素子構造を示す図であり、図1(B)に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、MgOは立方晶(NaCl型構造)であるため、(001)面、(100)面、(010)面は全て等価である。ここでは、膜面に垂直な方向をz軸とすることにより、膜面を(001)と統一的に記述している。また、本明細書において、電極層の結晶構造であるBCC構造とは体心立方晶のことである。より具体的には、化学的秩序のないBCC構造、いわゆるA2型構造、および化学的秩序のあるBCC構造、例えばB2型構造やL21構造、などのことを意味し、これらのBCC構造の結晶格子が僅かに歪んだものも含まれる。
【0017】
本明細書において用いた欠陥のない完全な単結晶における「理想的な値」との用語は、紫外線光電子分光の実験から推測した値である(参考文献:W. Wulfhekel, et al.: Appl. Phys. Lett. 78 (2001) 509.)。このような状態では、酸素欠損や格子欠陥がほとんど無い理想的な単結晶MgOのトンネル障壁の高さの上限値と言うことができるため、理想的な値という用語を用いた。
【0018】
発明の実施の形態について説明する前に、発明者の行った考察について説明を行う。TMR素子の磁気抵抗(MR)比は、以下の式で表される。
【0019】
ΔR/Rp=(Rap−Rp)/Rp
ここで、Rp及びRapは、2つの電極の磁化が平行と反平行の場合のトンネル接合抵抗である。Jullireの公式によれば、低バイアス電圧におけるMR比は、以下のように表される。
MR比=(Rap−Rp)/Rp=2P1P2/(1−P1P2)であり、
Pα=(Dα↑(EF)−Dα↓(EF))/(Dα↑(EF)+Dα↓(EF)、α=1,2 (1)
と表される。
【0020】
ここで、Pαは、電極のスピン分極率であり、Dα↑(EF)とDα↓(EF)とは、それぞれ、多数スピンバンドと少数スピンバンドのフェルミエネルギー(EF)における状態密度(Densityof state:DOS)である。強磁性遷移金属及び合金のスピンの偏極はおおよそ0.5以下であるため、Jullireの公式によれば、最も高い推定MR比として約70%が予測される。
【0021】
TMR素子をアモルファスのAl−Oのトンネル障壁と多結晶電極とを用いて作製すると、室温でのMR比として約70%という値が得られているが、DRAM並の出力電圧である200mVを得るのは難しく、上述のようにMRAM実現の対する問題点となっている。
【0022】
発明者は、酸化マグネシウム(MgO)の単結晶(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOをトンネル障壁として用いたTMR素子を成長するアプローチを試みている。従来のアモルファスのAl−O障壁とは異なり、酸化マグネシウムは結晶(原子が規則正しく配列した物質)であるため、電子が散乱されず、電子のコヒーレント状態がトンネル過程において保存されることが予測される。図1は、本実施の形態によるTMR素子構造(図1(B))と、強磁性体金属であるFe(001)のエネルギーバンド構造を示す図であり、波数空間の[001]方向に対するE−EFの関係を示す図(図1(A))である。図1(B)に示すように、本実施の形態によるTMR素子構造は、第1のFe(001)層1と、第2のFe(001)層5と、これらの間に挟まれた単結晶MgOx(001)層あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)層3と、を有して構成されている。上記Jullireのモデルによれば、伝導電子の運動量がトンネル過程において保存されるとすると、MgOを透過するトンネル電流はトンネル障壁に垂直な方向(接合界面に対する法線方向)の波数ベクトルkZを有する電子が支配的になる。図1(A)に示す[001](Γ−H)方向におけるFeのエネルギーバンド図によれば、フェルミ準位EFにおける状態密度(DOS)は、多数スピンと少数スピンのサブバンドがフェルミ準位EFにおいて状態を有しているため、それほど高い偏極率を示さない。しかしながら、電子のコヒーレント状態がトンネル過程において保存される場合には、障壁に垂直な軸に関して完全に対称な波動関数を有する伝導電子のみが障壁領域における状態と接続し、有限のトンネル確率を持つことになる。Fe(001)電極のΔ1バンドが前記のような完全に対称な波動関数を有する。図1(A)に示すように、多数スピンΔ1バンド(実線)がフェルミ準位EFに状態を有するが、少数スピンΔ1バンド(破線)はフェルミ準位EFに状態を有しない。このようなFeΔ1バンドのハーフメタル的な特徴により、非常に高いMR比がコヒーレントなスピン偏極トンネルにおいて得られる可能性がある。エピタキシャル(単結晶あるいは(001)配向多結晶)のTMR素子は、トンネル過程中における電子の散乱が抑制されるため、上記のようなコヒーレントなトンネルを実現するためには理想的であると考えられる。
【0023】
以下、本発明の第1の実施の形態による磁気抵抗素子及びその製造方法について図面を参照しつつ説明を行う。図2(A)から図2(D)までは、本発明の実施の形態によるFe(001)/MgO(001)/Fe(001)構造を有する磁気抵抗素子(以下、「Fe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子」と称する。)の製造工程を模式的に示す図である。Fe(001)は、BCC構造を有する強磁性体である。まず、単結晶MgO(001)基板11を準備し、MBE法(分子線エピタキシー法)により、単結晶MgO(001)基板11の表面のモフォロジーを改善するため、MgO(001)シード層15を成長する。連続して、図1(B)に示すように、50nm厚のエピタキシャルFe(001)下部電極(第1電極)17をMgO(001)シード層15上に室温で成長し、次いで、超高真空下(2×10−8Pa)において、350℃でアニールを行う。尚、電子線蒸着における条件は、加速電圧が8kVであり、成長速度が0.02nm/秒、成長温度が室温(約293K)、電子線蒸着のソース材料としては化学量論的組成のMgO(MgとOとの比が1:1)を用い、ソースと基板との距離を40cmとし、最高到達真空度が1×10−8Pa、O2分圧が1×10−6Paである。尚、化学量論的組成のMgO(MgとOとの比が1:1)の代わりに、O欠損を有するソースを使用することも可能である。
【0024】
図3(A)は、この際のFe(001)下部電極(第1電極)17のRHEEDイメージを示す図である。図3(A)に示すように、Fe(001)下部電極(第1電極)17は良好な結晶性と平坦性を有していることを示している。次いで、図2(C)に示すように、2nm厚のMgO(001)バリア層21をFe(001)下部電極(第1電極)17上に室温でエピタキシャル成長する。この際も、MgOの電子ビーム蒸着法を用いた。図3(B)は、この際のMgO(001)バリア層21のRHEEDイメージを示す図である。図3(B)に示すように、MgO(001)バリア層21も良好な結晶性と平坦性を有していることを示している。
【0025】
図2(D)に示すように、MgO(001)バリア層21上に、室温で厚さ10nmのFe(001)上部電極(第2電極)23を形成した。連続して、10nm厚さのCo層25をFe(001)上部電極(第2電極)23上に堆積した。Co層25は、上部電極23の保持力を高めることによって反平行磁化配置を実現するためのものである。次いで、上記の作成試料を微細加工してFe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子を形成する。
【0026】
上記電子ビームによるMgO蒸着は、10−9Torrの超高真空状態で成膜を行った。この方法では、例えばガラス基板上に300nmの成膜を行った場合でも、無色透明であり、良好な結晶膜が形成されていることがわかる。図4は、MgO成長時における成膜チャンバ内の四重極Massスペクトルの観測結果を示す図である。図4に示すように、OのスペクトルP1とO2のスペクトルP2とに関する分圧が高いことがわかる。図5は、MgO蒸着中の酸素分圧の膜堆積速度依存を示す図である。図5に示すように、酸素分圧自体がかなり高いこと、堆積速度とともに酸素分圧も高くなること、などは、MgOの堆積時におけるMgOからの酸素の離脱を示唆するものであり、離脱した酸素は真空ポンプによって成膜装置の外に排気されることから、MgOx(0.9<x<1)のように酸素欠損が生じている可能性がある。酸素欠損が生じるとMgOトンネル障壁の高さが低くなると考えられ(例えば、0.10〜0.85eV、より詳細には0.2〜0.5eVの範囲内)、これにより、トンネル電流が増加するものと考えられる。尚、一般的なAl−Oトンネル障壁の場合、Fe(001)との間のトンネル障壁の高さは、0.7〜2.5eVと考えられる。これに対して、MgO結晶は理想的なトンネル障壁の高さは3.6eVであり、実験値としては0.9〜3.7eVの値が得られている。本実施の形態による方法を用いると、0.3eV程度のトンネル障壁の高さが推定され、トンネル障壁の低抵抗化が可能であることがわかる。但し、その他の要因、例えば前述のコヒーレントなトンネルの影響も関連している可能性がある。尚、酸素欠損に基づくMgOxのxの値としては、0.98<x<1、より好ましくは0.99<x<1程度であり、Mg単体のようなものは含まれず、MgOの特性が基本的には維持される範囲である。
【0027】
尚、上記、トンネル障壁の高さφは、TMR素子の電気伝導特性(トンネル電流密度Jとバイアス電圧Vの関係)を、WKB近似に基づいたSimmonsの公式(非特許文献 J. G. Simmons: J. Appl. Phys. 34, pp.1793-1803 (1963).の(20)式)に当てはまるように最小自乗法でフィッティングすることによって求めた。この際、電子の有効質量として、自由電子の質量(m=9.11×10−31kg)を用いてフィッティングを行った。J−V特性に非線形性が現れる程度のバイアス電圧V(通常500mV〜1000mV程度)まで印加すれば、Simmonsの式を用いてJ−V特性をフィッティングすることにより、トンネル障壁の高さφとトンネル障壁の有効厚さΔsを同時に決定することが出来る。
【0028】
ここで、トンネル障壁の有効厚さΔsは、TMR素子の断面透過電子顕微鏡(TEM)写真から求めた実際のMgO(001)トンネル障壁層の厚さ(tMgO)よりも、約0.5nmほど薄い値となった。これは、MgO(001)層とFeやCoを主成分とする合金層の界面に生じる鏡像ポテンシャルの効果によって、トンネル障壁の有効厚さΔsが実際のMgO(001)層の厚さよりも薄くなった結果である。
【0029】
尚、断面TEM写真を用いてtMgOを正確に求めることができる場合は、以下に述べるような手法で、より簡便にトンネル障壁の高さφを見積もることが出来る。すなわち、TMR素子に印加するバイアス電圧Vが低い(通常、100mV以下)場合、トンネル電流密度Jはバイアス電圧Vに比例し、J−V特性は線形関係となる。このような低バイアス電圧の領域では、Simmonsの式は、式(2)のように記述できる。
【0030】
J=[(2mφ)1/2/Δs](e/h)2×exp[−(4πΔs/h)×(2mφ)1/2]×V (2)
ここで、mは自由電子の質量(9.11×10−31kg)、eは素電荷(1.60×10−19C)、hはプランク定数(6.63×10−34J・s)である。また、トンネル障壁の有効厚さΔsは、Δs≒tMgO−0.5nmである。TMR素子の低バイアス電圧領域のJ−V特性を(2)式にフィッティングすれば、トンネル障壁の高さφを簡便かつ正確に見積もることが出来る。
【0031】
図6は、上記の方法により製造したFe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子の典型的な磁気抵抗曲線を示す図である。測定温度20KにおいてMR比146%であり、測定温度293KにおいてMR比は88%であった。この値は、現在までに室温において得られた最も高いMR比である。このような高いMR比は、Fe(001)電極のスピン分極率によって説明することはできず、むしろ、コヒーレントなスピン偏極トンネリングに関連すると考えられる。160個のTMR素子を試作した結果、MR比とトンネル抵抗値とに関するばらつきは、20%以内であった。TMR素子の歩留まりも実験室段階で90%以上であった。このような高い値は、本アプローチの有効性を示唆している。TMR素子の抵抗−エリア積(RA)は、数kΩμm2であり、この値は、MRAMに適した値である。
【0032】
図7(a)は、室温におけるMR比のバイアス電圧依存性を示す図である。図7(a)に示すように、MR比のバイアス電圧依存性はかなり低いことがわかる。非対称な特性を示すが、MR比が半減する電圧Vhalfは1250mVという非常に高い値が得られている。尚、従来のAl−O系におけるMR比の半減する電圧Vhalfは300〜600mVである。図7(b)に、TMR素子の出力電圧Voutは(=バイアス電圧×(Rap−Rp)/Rap)を示す。出力電圧Voutの最大値は順バイアスにおいて380mVの値が得られている。この値は、Al−Oバリアの場合の値(200mV弱)の約2倍の値である。このように、MR比と出力電圧との両方で高い値が得られたことは、本実施の形態による技術の有効性を示している。
【0033】
尚、上記実施の形態においては、BCCのFe(001)を用いたが、代わりにBCCのFe系合金、例えば、Fe−Co合金、Fe−Ni合金、Fe−Pt合金を用いることもできる。或いは電極層とMgO(001)層との間に、1原子層又は数原子層程度の厚さのCo、Niなどを挿入しても良い。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態による磁気抵抗素子及びその製造方法について説明を行う。本実施の形態によるFe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子の製造方法では、まずスパッタリング法などによりMgO(001)を多結晶またはアモルファス状態で堆積し、その後にアニール処理を行うことにより(001)結晶面が配向した多結晶または単結晶化する点を特徴とする。スパッタリング条件は、例えば。温度が室温(293K)であり、ターゲットとしては2インチφのMgOを用い、Ar雰囲気中でスパッタリングを行った。加速電力は200Wであり、成長速度は0.008nm/sである。この条件で堆積したMgOはアモルファス状態であるため、室温から300℃まで温度を上昇させ、300℃において一定時間保持をすることにより、結晶化されたMgOを得ることが出来る。
【0035】
尚、O欠損の導入方法としては、成長時にO欠損が生じる条件で成長を行う方法、O欠損を後から導入する方法、O欠損のある状態から例えば酸素プラズマ処理又は自然酸化などにより酸化を行ってある程度のO欠陥まで調整する方法のいずれを用いても良い。
【0036】
以上、本実施の形態による磁気抵抗素子技術によれば、スパッタリング法を用いてアモルファスMgOを堆積した後にアニール処理により結晶化するため、それほど大がかりな装置が必要ないという利点がある。
【0037】
次に、本発明の実施の形態の変形例による磁気抵抗素子について図面を参照しつつ説明を行う。図11は、本発明の実施の形態の変形例によるTMR素子の構造を示す図であり、図1(B)に対応する図である。図11に示すように、本実施の形態による磁気抵抗素子は、上記実施の形態による磁気抵抗素子と同様に、単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した酸素欠損多結晶MgOx(0<x<1)層503の両側に設けられる電極として、アモルファス強磁性合金、例えばCoFeB層501、505を用いた点に特徴がある。アモルファス強磁性合金は、例えば蒸着法或いはスパッタリング法を用いて形成可能である。得られた特性等は第1の実施の形態の場合とほぼ同様である。
【0038】
尚、アモルファス磁性合金については、例えば、FeCoB、FeCoBSi、FeCoBP、FeZr、CoZrなどを用いることもできる。また、素子を作製した後にアニール処理を施すと電極層のアモルファス磁性合金が部分的あるいは全体的に結晶化する場合があるが、これによってMR比が大きく劣化することはない。したがって、このように結晶化したアモルファス磁性合金を電極層に用いても構わない。
【0039】
以上、本実施の形態による磁気抵抗素子について説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。その他、種々の変更、改良、組み合わせが可能なことは当業者に自明であろう。例えば、MgO層に酸素欠陥を導入する代わりに、例えばCaやSrをドーピングすることでトンネル障壁の高さを調整する方法を用いても良い。また、MgO層の堆積方法として、電子ビーム蒸着法又はスパッタリング法を例にして説明したが、その他の堆積法も適用可能であることは言うまでもない。また、高真空との用語は、例えば酸素を導入しない場合において、概ね10−6Pa以下の値を指し、一方、酸素を積極的に導入する場合でも、10−4Pa程度の値を指す。
【産業上の利用可能性】
【0040】
MRAMの出力電圧値が従来の約2倍に向上し、ギガビット級の超高集積MRAMに適する。
【符号の説明】
【0041】
1…第1のFe(001)層、5…第2のFe(001)層、3…単結晶MgOx(001)層あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)は、現在広く用いられている記憶素子であるDRAMに代わる大容量向け記憶素子であり、かつ、高速な不揮発性メモリとして広く研究開発が行われており、例えば、4MbitのMRAMがサンプル出荷されたという実績がある。
【0003】
図8は、MRAMの心臓部であるトンネル磁気抵抗素子(以下、「TMR素子」と称する)の構造と、その動作原理を示す図である。図8(A)に示すように、TMR素子においては、酸化物からなるトンネル障壁(以下、「バリア層」とも称する)の両側を強磁性金属からなる第1及び第2の2つの電極により挟んだトンネル構造を有している。トンネル障壁層としては、アモルファスのAl−O層が用いられている(非特許文献1参照)。図8(A)に示すように、第1の強磁性電極と第2の強磁性電極との磁化の向きが平行な平行磁化の場合には、トンネル構造の界面における法線方向に関する素子の電気抵抗が小さくなる。一方、図8(B)に示すように、第1の強磁性電極と第2の強磁性電極との磁化の向きが平行な反平行磁化の場合には、トンネル構造の界面における法線方向に関する素子の電気抵抗が大きくなる。この抵抗値は、一般的な状態では変化せず、抵抗値が高いか低いかに基づいて情報“1”、“0”として記憶される。平行磁化と反平行磁化とは不揮発に記憶されるため、不揮発性メモリの基本素子として用いることができる。
【0004】
図9は、MRAMの基本構造例を示す図であり、図9(A)はMRAMの斜視図であり、図9(B)は模式的な回路構成図であり、図9(C)は、構造例を示す断面図である。図9(A)に示すように、MRAMにおいてはワード線WLとビット線BLとが交差するように配置され、交差部にMRAMセルが配置されている。図9(B)に示すように、ワード線とビット線との交差部に配置されたMRAMセルは、TMR素子と、このTMR素子と直列接続されたMOSFETとを有しており、負荷抵抗として機能するTMR素子の抵抗値をMOSFETにより読み取ることにより、記憶情報を読み出すことができる。尚、情報の書き換えは、例えば、TMR素子への磁場の印加により行うことができる。図9(C)に示すように、MRAMメモリセルは、p型Si基板101内に形成されたソース領域105とドレイン領域103と、その間に画定されるチャネル領域に対して形成されたゲート電極111とを有するMOSFET100と、TMR素子117とを有している。ソース領域105は接地(GND)され、ドレインは、TMR素子を介してビット線BLに接続されている。ワード線WLはゲート電極111に対して図示しない領域において接続されている。
【0005】
以上に説明したように、不揮発性メモリMRAMは、1つのMOSFET100とTMR素子117とにより1つのメモリセルを形成することができるため、高集積化に適したメモリ素子ということができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】D.Wang, et al.:Science294 (2001) 1488.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現状の技術を用いることにより64Mbit程度のMRAMを実現する見通しは立っているが、それ以上の高集積化のためには、MRAMの心臓部であるTMR素子の特性を向上させる必要がある。特に、TMR素子の出力電圧を向上させるには、磁気抵抗の増大と電圧特性の改善の両方が必要である。図10は、アモルファスAl−Oをトンネル障壁とした従来型TMR素子の磁気抵抗のバイアス電圧による変化を示す図である(L1)。図10に示すように、従来型TMR素子においては、磁気抵抗が小さく、特に電圧を印加することにより磁気抵抗が急激に小さくなる傾向がみられる。このような特性では、動作マージンを考慮した出力電圧が小さすぎるため、実際の記憶素子に用いるのが難しい。より具体的には、現状のTMR素子の磁気抵抗は約70%と低く、また出力電圧も200 mV以下と低いため、DRAMの出力電圧に比べて実質的に半分であり、集積度を上げるに従い信号がノイズに埋もれて読み出せなくなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、TMR素子における出力電圧を大きくすることを目的とする。さらに、大きな磁気抵抗により、安定に動作する記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、トンネル障壁層と、該トンネル障壁層の第1面側に形成されたBCC構造を有する第1の強磁性体層と、前記トンネル障壁層の第2面側に形成されたBCC構造を有する第2の強磁性体層と、を有する磁気トンネル接合構造を備え、前記トンネル障壁層が、単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)層により形成されていることを特徴とする磁気抵抗素子が提供される。
【0010】
また、MgO(001)からなるトンネル障壁層と、該トンネル障壁層の第1面側に形成されたFe(001)からなる第1の強磁性体層と、前記トンネル障壁層の第2面側に形成されたFe(001)からなる第2の強磁性体層と、を有する磁気トンネル接合構造であって、前記MgO層が、単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)層により形成されていることを特徴とする磁気抵抗素子が提供される。前記MgO(001)層の伝導帯下端と前記Fe(001)層のフェルミエネルギーの間の不連続値(トンネル障壁高さ)を、欠陥のない完全な単結晶における理想的な値よりも低くしたことを特徴とする。上記構成を用いると、磁気抵抗が増大しTMR素子の出力電圧を大きくすることができた。1つのトランジスタの負荷として上記磁気抵抗素子を用いると、不揮発性の記憶素子を形成することができた。
【0011】
本発明の他の観点によれば、基板を準備する工程と、該基板上に第1のFe(001)層を堆積する工程と、前記第1のFe(001)層上に電子ビーム蒸着法により単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)からなるトンネル障壁層を高真空下において堆積する工程と、該トンネル障壁層上に第2のFe(001)層を形成する工程とを有することを特徴とする磁気抵抗素子の製造方法が提供される。
【0012】
また、単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)からなる基板を準備する第1工程と、該基板上に第1のFe(001)層を堆積し、次いで、表面を平坦にするためのアニールを行う第2工程と、前記第1のFe(001)層上に電子ビーム蒸着法により単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)からなるトンネル障壁層を高真空下において堆積する第3工程と、該トンネル障壁層上に第2のFe(001)層を形成する第4工程とを有することを特徴とする磁気抵抗素子の製造方法が提供される。尚、前記第1工程と第2工程との間に、単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)からなるシード層を成長する工程を有していても良い。また、前記MgO層を、MgOxのx値を調整済みのターゲットを用いて堆積しても良い。この際、前記MgOを形成する工程中に、MgOxのx値を調整しても良い。
【0013】
本発明のさらに別の観点によれば、MgO(001)からなるトンネル障壁層と、該トンネル障壁層の第1面側に形成されたアモルファス磁性合金からなる第1の強磁性体層と、前記トンネル障壁層の第2面側に形成されたアモルファス磁性合金からなる第2の強磁性体層と、を有する磁気トンネル接合構造を備え、前記MgO(001)層の伝導帯下端と前記アモルファス磁性合金からなる第1又は第2の強磁性体層とのフェルミ準位の間の不連続値(トンネル障壁の高さ)を、欠陥のない完全な単結晶における理想的な値よりも低くしたことを特徴とする磁気抵抗素子が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来のTMR素子に比べて大きな磁気抵抗を得ることができ、TMR素子の出力電圧を大きくすることができ、かつTMR素子の抵抗値をMRAMに最適な低抵抗にすることができる。従って、TMR素子を用いたMRAMの高集積化が容易になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるTMR素子の構造(図1(B))と、強磁性体金属であるFe(001)のエネルギーバンド構造を示す図であり、波数空間の[001]方向に対するE−EFの関係を示す図(図1(A))である。
【図2】図2(A)から図2(D)までは、本発明の実施の形態によるFe(001)/MgO(001)/Fe(001)構造を有する磁気抵抗素子(以下、「Fe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子」と称する。)の製造工程を模式的に示す図である。
【図3】図3(A)は、Fe(001)下部電極(第1電極)のRHEEDイメージを示す図であり、図3(B)は、この際のMgO(001)バリア層のRHEEDイメージを示す図である。
【図4】MgO蒸着時における成膜チャンバ中の四重極Massスペクトルの観測結果を示す図である。
【図5】MgO蒸着中の酸素分圧の膜堆積速度依存を示す図である。
【図6】Fe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子の典型的な磁気抵抗曲線を示す図である。
【図7】図7(A)は、室温におけるMR比のバイアス電圧依存性を示す図である。図7(B)は、TMR素子の出力電圧Voutは(=バイアス電圧×(Rap−Rp)/Rap)を示す図である。
【図8】TMR素子の構造と、その動作原理を示す図である。
【図9】MRAMの基本構造例を示す図であり、図9(A)はMRAMの斜視図であり、図9(B)は模式的な回路構成図であり、図9(C)は、構造例を示す断面図である。
【図10】アモルファスAl−Oをトンネル障壁とした従来型TMR素子の磁気抵抗のバイアス電圧による変化を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態の変形例によるTMR素子の素子構造を示す図であり、図1(B)に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、MgOは立方晶(NaCl型構造)であるため、(001)面、(100)面、(010)面は全て等価である。ここでは、膜面に垂直な方向をz軸とすることにより、膜面を(001)と統一的に記述している。また、本明細書において、電極層の結晶構造であるBCC構造とは体心立方晶のことである。より具体的には、化学的秩序のないBCC構造、いわゆるA2型構造、および化学的秩序のあるBCC構造、例えばB2型構造やL21構造、などのことを意味し、これらのBCC構造の結晶格子が僅かに歪んだものも含まれる。
【0017】
本明細書において用いた欠陥のない完全な単結晶における「理想的な値」との用語は、紫外線光電子分光の実験から推測した値である(参考文献:W. Wulfhekel, et al.: Appl. Phys. Lett. 78 (2001) 509.)。このような状態では、酸素欠損や格子欠陥がほとんど無い理想的な単結晶MgOのトンネル障壁の高さの上限値と言うことができるため、理想的な値という用語を用いた。
【0018】
発明の実施の形態について説明する前に、発明者の行った考察について説明を行う。TMR素子の磁気抵抗(MR)比は、以下の式で表される。
【0019】
ΔR/Rp=(Rap−Rp)/Rp
ここで、Rp及びRapは、2つの電極の磁化が平行と反平行の場合のトンネル接合抵抗である。Jullireの公式によれば、低バイアス電圧におけるMR比は、以下のように表される。
MR比=(Rap−Rp)/Rp=2P1P2/(1−P1P2)であり、
Pα=(Dα↑(EF)−Dα↓(EF))/(Dα↑(EF)+Dα↓(EF)、α=1,2 (1)
と表される。
【0020】
ここで、Pαは、電極のスピン分極率であり、Dα↑(EF)とDα↓(EF)とは、それぞれ、多数スピンバンドと少数スピンバンドのフェルミエネルギー(EF)における状態密度(Densityof state:DOS)である。強磁性遷移金属及び合金のスピンの偏極はおおよそ0.5以下であるため、Jullireの公式によれば、最も高い推定MR比として約70%が予測される。
【0021】
TMR素子をアモルファスのAl−Oのトンネル障壁と多結晶電極とを用いて作製すると、室温でのMR比として約70%という値が得られているが、DRAM並の出力電圧である200mVを得るのは難しく、上述のようにMRAM実現の対する問題点となっている。
【0022】
発明者は、酸化マグネシウム(MgO)の単結晶(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOをトンネル障壁として用いたTMR素子を成長するアプローチを試みている。従来のアモルファスのAl−O障壁とは異なり、酸化マグネシウムは結晶(原子が規則正しく配列した物質)であるため、電子が散乱されず、電子のコヒーレント状態がトンネル過程において保存されることが予測される。図1は、本実施の形態によるTMR素子構造(図1(B))と、強磁性体金属であるFe(001)のエネルギーバンド構造を示す図であり、波数空間の[001]方向に対するE−EFの関係を示す図(図1(A))である。図1(B)に示すように、本実施の形態によるTMR素子構造は、第1のFe(001)層1と、第2のFe(001)層5と、これらの間に挟まれた単結晶MgOx(001)層あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)層3と、を有して構成されている。上記Jullireのモデルによれば、伝導電子の運動量がトンネル過程において保存されるとすると、MgOを透過するトンネル電流はトンネル障壁に垂直な方向(接合界面に対する法線方向)の波数ベクトルkZを有する電子が支配的になる。図1(A)に示す[001](Γ−H)方向におけるFeのエネルギーバンド図によれば、フェルミ準位EFにおける状態密度(DOS)は、多数スピンと少数スピンのサブバンドがフェルミ準位EFにおいて状態を有しているため、それほど高い偏極率を示さない。しかしながら、電子のコヒーレント状態がトンネル過程において保存される場合には、障壁に垂直な軸に関して完全に対称な波動関数を有する伝導電子のみが障壁領域における状態と接続し、有限のトンネル確率を持つことになる。Fe(001)電極のΔ1バンドが前記のような完全に対称な波動関数を有する。図1(A)に示すように、多数スピンΔ1バンド(実線)がフェルミ準位EFに状態を有するが、少数スピンΔ1バンド(破線)はフェルミ準位EFに状態を有しない。このようなFeΔ1バンドのハーフメタル的な特徴により、非常に高いMR比がコヒーレントなスピン偏極トンネルにおいて得られる可能性がある。エピタキシャル(単結晶あるいは(001)配向多結晶)のTMR素子は、トンネル過程中における電子の散乱が抑制されるため、上記のようなコヒーレントなトンネルを実現するためには理想的であると考えられる。
【0023】
以下、本発明の第1の実施の形態による磁気抵抗素子及びその製造方法について図面を参照しつつ説明を行う。図2(A)から図2(D)までは、本発明の実施の形態によるFe(001)/MgO(001)/Fe(001)構造を有する磁気抵抗素子(以下、「Fe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子」と称する。)の製造工程を模式的に示す図である。Fe(001)は、BCC構造を有する強磁性体である。まず、単結晶MgO(001)基板11を準備し、MBE法(分子線エピタキシー法)により、単結晶MgO(001)基板11の表面のモフォロジーを改善するため、MgO(001)シード層15を成長する。連続して、図1(B)に示すように、50nm厚のエピタキシャルFe(001)下部電極(第1電極)17をMgO(001)シード層15上に室温で成長し、次いで、超高真空下(2×10−8Pa)において、350℃でアニールを行う。尚、電子線蒸着における条件は、加速電圧が8kVであり、成長速度が0.02nm/秒、成長温度が室温(約293K)、電子線蒸着のソース材料としては化学量論的組成のMgO(MgとOとの比が1:1)を用い、ソースと基板との距離を40cmとし、最高到達真空度が1×10−8Pa、O2分圧が1×10−6Paである。尚、化学量論的組成のMgO(MgとOとの比が1:1)の代わりに、O欠損を有するソースを使用することも可能である。
【0024】
図3(A)は、この際のFe(001)下部電極(第1電極)17のRHEEDイメージを示す図である。図3(A)に示すように、Fe(001)下部電極(第1電極)17は良好な結晶性と平坦性を有していることを示している。次いで、図2(C)に示すように、2nm厚のMgO(001)バリア層21をFe(001)下部電極(第1電極)17上に室温でエピタキシャル成長する。この際も、MgOの電子ビーム蒸着法を用いた。図3(B)は、この際のMgO(001)バリア層21のRHEEDイメージを示す図である。図3(B)に示すように、MgO(001)バリア層21も良好な結晶性と平坦性を有していることを示している。
【0025】
図2(D)に示すように、MgO(001)バリア層21上に、室温で厚さ10nmのFe(001)上部電極(第2電極)23を形成した。連続して、10nm厚さのCo層25をFe(001)上部電極(第2電極)23上に堆積した。Co層25は、上部電極23の保持力を高めることによって反平行磁化配置を実現するためのものである。次いで、上記の作成試料を微細加工してFe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子を形成する。
【0026】
上記電子ビームによるMgO蒸着は、10−9Torrの超高真空状態で成膜を行った。この方法では、例えばガラス基板上に300nmの成膜を行った場合でも、無色透明であり、良好な結晶膜が形成されていることがわかる。図4は、MgO成長時における成膜チャンバ内の四重極Massスペクトルの観測結果を示す図である。図4に示すように、OのスペクトルP1とO2のスペクトルP2とに関する分圧が高いことがわかる。図5は、MgO蒸着中の酸素分圧の膜堆積速度依存を示す図である。図5に示すように、酸素分圧自体がかなり高いこと、堆積速度とともに酸素分圧も高くなること、などは、MgOの堆積時におけるMgOからの酸素の離脱を示唆するものであり、離脱した酸素は真空ポンプによって成膜装置の外に排気されることから、MgOx(0.9<x<1)のように酸素欠損が生じている可能性がある。酸素欠損が生じるとMgOトンネル障壁の高さが低くなると考えられ(例えば、0.10〜0.85eV、より詳細には0.2〜0.5eVの範囲内)、これにより、トンネル電流が増加するものと考えられる。尚、一般的なAl−Oトンネル障壁の場合、Fe(001)との間のトンネル障壁の高さは、0.7〜2.5eVと考えられる。これに対して、MgO結晶は理想的なトンネル障壁の高さは3.6eVであり、実験値としては0.9〜3.7eVの値が得られている。本実施の形態による方法を用いると、0.3eV程度のトンネル障壁の高さが推定され、トンネル障壁の低抵抗化が可能であることがわかる。但し、その他の要因、例えば前述のコヒーレントなトンネルの影響も関連している可能性がある。尚、酸素欠損に基づくMgOxのxの値としては、0.98<x<1、より好ましくは0.99<x<1程度であり、Mg単体のようなものは含まれず、MgOの特性が基本的には維持される範囲である。
【0027】
尚、上記、トンネル障壁の高さφは、TMR素子の電気伝導特性(トンネル電流密度Jとバイアス電圧Vの関係)を、WKB近似に基づいたSimmonsの公式(非特許文献 J. G. Simmons: J. Appl. Phys. 34, pp.1793-1803 (1963).の(20)式)に当てはまるように最小自乗法でフィッティングすることによって求めた。この際、電子の有効質量として、自由電子の質量(m=9.11×10−31kg)を用いてフィッティングを行った。J−V特性に非線形性が現れる程度のバイアス電圧V(通常500mV〜1000mV程度)まで印加すれば、Simmonsの式を用いてJ−V特性をフィッティングすることにより、トンネル障壁の高さφとトンネル障壁の有効厚さΔsを同時に決定することが出来る。
【0028】
ここで、トンネル障壁の有効厚さΔsは、TMR素子の断面透過電子顕微鏡(TEM)写真から求めた実際のMgO(001)トンネル障壁層の厚さ(tMgO)よりも、約0.5nmほど薄い値となった。これは、MgO(001)層とFeやCoを主成分とする合金層の界面に生じる鏡像ポテンシャルの効果によって、トンネル障壁の有効厚さΔsが実際のMgO(001)層の厚さよりも薄くなった結果である。
【0029】
尚、断面TEM写真を用いてtMgOを正確に求めることができる場合は、以下に述べるような手法で、より簡便にトンネル障壁の高さφを見積もることが出来る。すなわち、TMR素子に印加するバイアス電圧Vが低い(通常、100mV以下)場合、トンネル電流密度Jはバイアス電圧Vに比例し、J−V特性は線形関係となる。このような低バイアス電圧の領域では、Simmonsの式は、式(2)のように記述できる。
【0030】
J=[(2mφ)1/2/Δs](e/h)2×exp[−(4πΔs/h)×(2mφ)1/2]×V (2)
ここで、mは自由電子の質量(9.11×10−31kg)、eは素電荷(1.60×10−19C)、hはプランク定数(6.63×10−34J・s)である。また、トンネル障壁の有効厚さΔsは、Δs≒tMgO−0.5nmである。TMR素子の低バイアス電圧領域のJ−V特性を(2)式にフィッティングすれば、トンネル障壁の高さφを簡便かつ正確に見積もることが出来る。
【0031】
図6は、上記の方法により製造したFe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子の典型的な磁気抵抗曲線を示す図である。測定温度20KにおいてMR比146%であり、測定温度293KにおいてMR比は88%であった。この値は、現在までに室温において得られた最も高いMR比である。このような高いMR比は、Fe(001)電極のスピン分極率によって説明することはできず、むしろ、コヒーレントなスピン偏極トンネリングに関連すると考えられる。160個のTMR素子を試作した結果、MR比とトンネル抵抗値とに関するばらつきは、20%以内であった。TMR素子の歩留まりも実験室段階で90%以上であった。このような高い値は、本アプローチの有効性を示唆している。TMR素子の抵抗−エリア積(RA)は、数kΩμm2であり、この値は、MRAMに適した値である。
【0032】
図7(a)は、室温におけるMR比のバイアス電圧依存性を示す図である。図7(a)に示すように、MR比のバイアス電圧依存性はかなり低いことがわかる。非対称な特性を示すが、MR比が半減する電圧Vhalfは1250mVという非常に高い値が得られている。尚、従来のAl−O系におけるMR比の半減する電圧Vhalfは300〜600mVである。図7(b)に、TMR素子の出力電圧Voutは(=バイアス電圧×(Rap−Rp)/Rap)を示す。出力電圧Voutの最大値は順バイアスにおいて380mVの値が得られている。この値は、Al−Oバリアの場合の値(200mV弱)の約2倍の値である。このように、MR比と出力電圧との両方で高い値が得られたことは、本実施の形態による技術の有効性を示している。
【0033】
尚、上記実施の形態においては、BCCのFe(001)を用いたが、代わりにBCCのFe系合金、例えば、Fe−Co合金、Fe−Ni合金、Fe−Pt合金を用いることもできる。或いは電極層とMgO(001)層との間に、1原子層又は数原子層程度の厚さのCo、Niなどを挿入しても良い。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態による磁気抵抗素子及びその製造方法について説明を行う。本実施の形態によるFe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子の製造方法では、まずスパッタリング法などによりMgO(001)を多結晶またはアモルファス状態で堆積し、その後にアニール処理を行うことにより(001)結晶面が配向した多結晶または単結晶化する点を特徴とする。スパッタリング条件は、例えば。温度が室温(293K)であり、ターゲットとしては2インチφのMgOを用い、Ar雰囲気中でスパッタリングを行った。加速電力は200Wであり、成長速度は0.008nm/sである。この条件で堆積したMgOはアモルファス状態であるため、室温から300℃まで温度を上昇させ、300℃において一定時間保持をすることにより、結晶化されたMgOを得ることが出来る。
【0035】
尚、O欠損の導入方法としては、成長時にO欠損が生じる条件で成長を行う方法、O欠損を後から導入する方法、O欠損のある状態から例えば酸素プラズマ処理又は自然酸化などにより酸化を行ってある程度のO欠陥まで調整する方法のいずれを用いても良い。
【0036】
以上、本実施の形態による磁気抵抗素子技術によれば、スパッタリング法を用いてアモルファスMgOを堆積した後にアニール処理により結晶化するため、それほど大がかりな装置が必要ないという利点がある。
【0037】
次に、本発明の実施の形態の変形例による磁気抵抗素子について図面を参照しつつ説明を行う。図11は、本発明の実施の形態の変形例によるTMR素子の構造を示す図であり、図1(B)に対応する図である。図11に示すように、本実施の形態による磁気抵抗素子は、上記実施の形態による磁気抵抗素子と同様に、単結晶MgOx(001)あるいは(001)結晶面が優先配向した酸素欠損多結晶MgOx(0<x<1)層503の両側に設けられる電極として、アモルファス強磁性合金、例えばCoFeB層501、505を用いた点に特徴がある。アモルファス強磁性合金は、例えば蒸着法或いはスパッタリング法を用いて形成可能である。得られた特性等は第1の実施の形態の場合とほぼ同様である。
【0038】
尚、アモルファス磁性合金については、例えば、FeCoB、FeCoBSi、FeCoBP、FeZr、CoZrなどを用いることもできる。また、素子を作製した後にアニール処理を施すと電極層のアモルファス磁性合金が部分的あるいは全体的に結晶化する場合があるが、これによってMR比が大きく劣化することはない。したがって、このように結晶化したアモルファス磁性合金を電極層に用いても構わない。
【0039】
以上、本実施の形態による磁気抵抗素子について説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。その他、種々の変更、改良、組み合わせが可能なことは当業者に自明であろう。例えば、MgO層に酸素欠陥を導入する代わりに、例えばCaやSrをドーピングすることでトンネル障壁の高さを調整する方法を用いても良い。また、MgO層の堆積方法として、電子ビーム蒸着法又はスパッタリング法を例にして説明したが、その他の堆積法も適用可能であることは言うまでもない。また、高真空との用語は、例えば酸素を導入しない場合において、概ね10−6Pa以下の値を指し、一方、酸素を積極的に導入する場合でも、10−4Pa程度の値を指す。
【産業上の利用可能性】
【0040】
MRAMの出力電圧値が従来の約2倍に向上し、ギガビット級の超高集積MRAMに適する。
【符号の説明】
【0041】
1…第1のFe(001)層、5…第2のFe(001)層、3…単結晶MgOx(001)層あるいは(001)結晶面が優先配向した多結晶MgOx(0<x<1)層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層と、を有する磁気抵抗素子であって、
前記強磁性体層が結晶化していることを特徴とする磁気抵抗素子。
【請求項2】
前記磁性合金が、FeCoB、FeCoBSiおよびFeCoBPのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗素子。
【請求項3】
基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層と、を有し、前記強磁性体層が結晶化している磁気抵抗素子の製造方法であって、
前記基板を準備する工程と、
前記基板上にCo、FeおよびBを含むアモルファス磁性合金からなる層を形成する工程と、
前記アモルファス磁性合金からなる層の上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層を形成する工程と、
前記アモルファス磁性合金を結晶化する工程と、
を含むことを特徴とする磁気抵抗素子の製造方法。
【請求項4】
前記磁性合金が、FeCoB、FeCoBSiおよび又はFeCoBPのいずれかであることを特徴とする請求項3記載の磁気抵抗素子の製造方法。
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層と、を有する磁気抵抗素子であって、
前記強磁性体層が結晶化していることを特徴とする磁気抵抗素子。
【請求項2】
前記磁性合金が、FeCoB、FeCoBSiおよびFeCoBPのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗素子。
【請求項3】
基板上に形成されたCo、FeおよびBを含む磁性合金からなる強磁性体層と、前記強磁性体層上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層と、を有し、前記強磁性体層が結晶化している磁気抵抗素子の製造方法であって、
前記基板を準備する工程と、
前記基板上にCo、FeおよびBを含むアモルファス磁性合金からなる層を形成する工程と、
前記アモルファス磁性合金からなる層の上にトンネル障壁層として(001)結晶面が優先配向した多結晶酸化マグネシウム層を形成する工程と、
前記アモルファス磁性合金を結晶化する工程と、
を含むことを特徴とする磁気抵抗素子の製造方法。
【請求項4】
前記磁性合金が、FeCoB、FeCoBSiおよび又はFeCoBPのいずれかであることを特徴とする請求項3記載の磁気抵抗素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−151494(P2012−151494A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67089(P2012−67089)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2011−226907(P2011−226907)の分割
【原出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2011−226907(P2011−226907)の分割
【原出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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