説明

磁気探傷方法及び装置

【課題】被検査物を治具などで掴んだり吸着することなく、円筒状の被検査物を、決まったセンサ位置にて、中心軸の周りで回転させ、全周面にわたって、また必要に応じて端部も同時に、欠陥検査が行えるようにする。
【解決手段】磁性材料からなる被検査物に磁界を印加し、その表面の欠陥部に生じた漏洩磁界の乱れを磁気センサを用いて検出する磁気探傷方法である。被検査物10は円筒状であって、その外周面が回転用ベルト12に接触しており、回転用ベルトを介して被検査物に対向している永久磁石14によって被検査物に磁界が印加されると共にその磁力により被検査物が回転用ベルトに引き付けられ、磁石をセンサ位置に停滞させた状態で回転用ベルトを動かすことにより、被検査物がセンサ位置に止まったままで回転用ベルトとの摩擦力で中心軸の周りに回転し、磁気16センサによって被検査物の周面を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料からなる円筒状の被検査物の表面欠陥を漏洩磁界の乱れから検出する磁気探傷技術に関し、更に詳しく述べると、磁石によって被検査物を回転用ベルトへ引き付け、その状態で該回転用ベルトを動かすことにより被検査物をセンサ位置にて回転させ、該被検査物の外周面近傍に設けた磁気センサによって欠陥検査を行うようにした磁気探傷方法及び装置に関するものである。この技術は、例えば電池外装ケース(通称「電池缶」)の欠陥検査などに有用である。
【背景技術】
【0002】
磁性材料からなる円筒状の電池外装ケースの表面欠陥を検出する従来の探傷方法としては、ホール素子などの磁気センサを用いる方法あるいはコイルを用いる方法などがある。磁気センサを用いる探傷方法では、磁気センサを電池外装ケースに近接させ、励磁された電池外装ケース表面からの漏洩磁界を測定することにより欠陥を検出する(特許文献1参照)。コイルを用いる方法では、交流電流あるいはパルス電流を流したコイルを電池外装ケースに近接させ、電池外装ケースに存在する欠陥でのインピーダンス変化や電圧変化に基づいて欠陥を判別する(特許文献2参照)。
【0003】
これら従来の探傷方法においては、通常、電池外装ケースを、その中心軸の周りに回転させて、その側面(周面)の欠陥を検査する。例えば、特許文献1においては、電池外装ケースの開口部を保持治具により固定して回転させている。特許文献2では、電池外装ケースの底部(閉塞端部)を保持治具により真空吸着して回転させている。これらの回転機構では、いずれも電池外装ケースを保持するために、電池外装ケースの向きをあらかじめ揃えておく必要があり、そのための整列機構を別に設けておかなければならない。更に、電池外装ケースの底部を保持する場合には、側面全周を検査することはできても、保持治具が邪魔になるので、そのままでは電池外装ケースの底部を検査することはできない。
【0004】
勿論、被検査物表面の欠陥は、ある程度大きければ、肉眼やカメラによっても検査できる。ところが、電池外装ケースはプレス加工で成形されるため、成形直後は表面に油類などが付着しており、洗浄して汚れをきれいに除去しなければカメラなどで検査することはできない。しかしながら、製品管理などのため、成形直後に洗浄することなく汚れたままであっても簡便に且つ迅速に欠陥を検出できる方法の開発が望まれており、そのため磁気センサを用いる手法は有用とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−153856号公報
【特許文献2】特開2009−252644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、被検査物を治具などで掴んだり吸着することなく、円筒状の被検査物を、決まったセンサ位置にて、中心軸の周りで回転させ、全周面にわたって、また必要に応じて端部も同時に、欠陥検査が行えるようにすることである。本発明が解決しようとする他の課題は、前記被検査物を、間欠的にセンサ位置まで順次移送し、センサ位置で回転させることで欠陥検査が連続的に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、磁性材料からなる被検査物に磁界を印加し、その表面の欠陥部に生じた漏洩磁界の乱れを、前記被検査物に近接配置した磁気センサを用いて検出する磁気探傷方法において、前記被検査物は円筒状であって、その外周面が回転用ベルトに接触しており、該回転用ベルトを介して前記被検査物に対向している磁石によって前記被検査物に磁界が印加されると共に前記磁石の磁力により被検査物が回転用ベルトに引き付けられ、前記磁石をセンサ位置に停滞させた状態で前記回転用ベルトを動かすことにより、円筒状の前記被検査物がセンサ位置に止まったままで前記回転用ベルトとの間の摩擦力を利用して前記被検査物を中心軸の周りに回転させ、前記磁気センサによって被検査物の周面を検査することを特徴とする磁気探傷方法である。磁気センサは、被検査物の外周面近傍のみならず、一方もしくは両方の端部近傍にも配置されていてよく、それによって被検査物の端面も同時に検査することができる。
【0008】
磁気センサとしては磁気光学素子が好ましい。この磁気光学素子を、被検査物の外周近傍に設置して、偏光子を通した光を磁気光学素子へ照射し、該磁気光学素子の表面で反射した光または磁気光学素子を透過後に反射した光を検光子を通して観察することにより、磁気光学効果を利用して前記被検査物表面の欠陥部に生じた漏洩磁界の乱れを1次元あるいは2次元の光強度分布として検出する。
【0009】
ここで使用する磁気光学素子としては、磁気光学膜の片面に反射膜を設けた構造が好ましい。その場合、この磁気光学素子を、被検査物の外周近傍にて反射膜が被検査物側となるように設置して、偏光子を通した光を磁気光学膜側から照射し、反射膜で反射した光を検光子を通して観察するように構成する。磁気光学膜としてはBi置換鉄ガーネット膜が好ましく、膜面平行方向の飽和に要する磁界が膜面垂直方向に比べて小さい特性を呈するものがよい。
【0010】
磁気センサとしてはホール素子やサーチコイル等も使用可能である。磁気探傷方法として、被検査物の表面に交流磁界を印加し、欠陥部で渦電流の乱れを生じさせて漏洩磁界の変化を検出する、いわゆる渦電流探傷法が知られているが、本発明方法はこれにも適用できる。
【0011】
前記被検査物は、例えば円筒状の電池外装ケースである。軸方向の外径が均一ではなく変化しているような場合には、回転用ベルトの断面形状を、その表面の幅方向で段差あるいは隙間を設けて被検査物の軸方向の外径変化を補正すればよい。なお、回転用ベルトは非磁性のものが好ましい。
【0012】
前記磁石は電磁石でもよいが、永久磁石の方が取り扱い易い。永久磁石をセンサ位置へと移動させることにより永久磁石の磁力を利用して被検査物をセンサ位置まで移送させ、永久磁石をセンサ位置から移動させることにより検査済みの被検査物をセンサ位置から移送することができる。
【0013】
また本発明は、磁性材料からなる被検査物に磁界を印加し、その表面の欠陥部に生じた漏洩磁界の乱れを、前記被検査物に近接配置した磁気センサを用いて検出する磁気探傷装置において、円筒状の被検査物を、その中心軸が水平となる向きで外周面が接するように載置する回転用ベルトと、該回転用ベルトを動かすベルト駆動機構と、前記回転用ベルトを介して前記被検査物に対向する永久磁石と、該永久磁石がセンサ位置で一時的に停滞するように間欠駆動する磁石移動機構と、センサ位置にて前記被検査物の外周面近傍となるように設置した磁気センサとを備え、前記永久磁石により前記被検査物に磁界を印加すると共に、前記永久磁石を移動させることにより磁力を利用して前記被検査物を移送させ、センサ位置にて前記回転用ベルトを動かすことにより摩擦力を利用して前記被検査物を回転させて前記磁気センサで欠陥検査を行うようにしたことを特徴とする磁気探傷装置である。
【0014】
また、前記磁気センサ近傍に位置し検査中に磁気センサと被検査物との距離を一定に保持する抑えローラと、前記永久磁石の移動に同期して前記抑えローラを上下させる抑えローラ上下動機構を設けることも有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の磁気探傷方法は、円筒状の磁性材料からなる被検査物を、治具などで掴んだり吸着することなく、中心軸の周りで回転させることができるため、被検査物の外周面のみならず端部の検査も同時に行うことが可能となる。また、上記のように被検査物を掴んだり吸着する治具などがないため、原理的に、あらかじめ被検査物の向きを揃えておく機構は不要である。
【0016】
本発明において、磁気センサとして磁気光学膜を用いると、広範囲にわたる磁界分布を光学的に瞬時に検出できるので、中心軸に平行に磁気センサを移動させるための複雑な機構が不要となり、装置を簡素化できるし、高速に検査することができる。一般的に平板状の被検査物の検査を、磁気光学膜を用いて2次元で行うには大面積が必要となり高価であるが、本発明ではセンサ部分に必要な磁気光学膜の大きさは、それに比べて小さいため安価に製作できる。
【0017】
更に、永久磁石を、被検査物への磁界印加手段と、該被検査物を回転させるための補助的手段、及び移送させるための手段として共用しているため、装置全体が簡便な構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る磁気探傷方法の概念図。
【図2】本発明に係る磁気探傷方法の他の構成例を示す説明図。
【図3】本発明に係る磁気探傷装置の一実施例を示す説明図。
【図4】本発明に係る磁気探傷装置の他の実施例の要部を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る磁気探傷方法の概略構成を図1に示す。ここで、Aは被検査物をセンサ位置にて回転させる状態を示しており、Bは被検査物をセンサ位置から移送している状態を示している。本発明は、磁性材料からなる円筒状の被検査物に、外部から磁界を印加し、その表面の欠陥部に生じた漏洩磁界の乱れを、前記被検査物に近接配置した磁気センサを用いて検出する。被検査物は、最も典型的には電池外装ケースである。
【0020】
図1に示すように、円筒状の被検査物10は、横向きの状態(中心軸が水平方向、図1では紙面に垂直な方向、を向いている状態)で回転用ベルト12の上に載置されており、該被検査物10の外周面が前記回転用ベルト12に接触している。該回転用ベルト12を介して前記被検査物10に対向するように、回転用ベルト12の下方に永久磁石14が位置する。このとき、永久磁石14は回転用ベルト12に接触している必要はない。永久磁石14は、典型的には直方体であり、被検査物10と平行になるように配置し、着磁方向は被検査物の長手方向に対して垂直あるいは、円周方向のどちらでもよい。
【0021】
センサ位置における被検査物10の上方には外周面に対して僅かな間隔をおいて磁気センサ16が設置されている。ここでは、磁気センサ16として磁気光学膜18の下面(被検査物との対向面)側に反射膜20を設けた磁気光学素子22を用いており、図示していないが、従来の磁気光学効果を観察する光学系と同様、偏光子を通して磁気センサの上方から光を照射し、反射した光を検光子を通してカメラなどで観察する。被検査物からの漏洩磁界の変化は磁気光学膜の磁化方向の乱れとなり、磁気光学効果により光の強度変化として検出されるため、被検査物の欠陥を検査することができる。
【0022】
磁気光学膜を用いた磁気センサは、磁界分布を2次元の光強度分布として検出できるので、例えば長方形の磁気光学膜を被検査物に沿って配置すれば、被検査物の全周面を検査することができ、ホール素子などの磁気センサあるいはコイルなどの検出素子に比べて、被検査物の回転軸と平行方向に移動させる必要が無く、機構を簡素化できる利点がある。
【0023】
ここで使用する磁気光学膜としては、磁気光学効果の大きなBi置換鉄ガーネット膜がよく、一般に液相エピタキシャル(LPE)法により製作される。磁気特性は、膜面平行方向の飽和に要する磁界が膜面垂直方向に比べて小さい特性を呈するものがよい。LPE法により作製されたBi置換鉄ガーネット膜の磁気特性は、膜面垂直方向に磁化し易い垂直磁化膜と磁化し難い面内磁化膜に分けられる。垂直磁化膜は一般に磁化容易軸が垂直方向にあり、ストライプ状のドメイン構造を有している。空間分解能はそのドメインのサイズに依存するためそれほど高くなく、飽和に要する磁界が小さい。一方、面内膜は膜面垂直方向の磁界を受けて、磁化方向が面内方向から滑らかに回転するため、空間分解能が高く、飽和に要する磁界は大きい。本発明においては、被検査物の外周面から全体的に漏洩磁界がでており、欠陥部での漏洩磁界の乱れを検出するため、垂直膜を用いる場合には、磁気光学膜が磁気飽和しないように、外部からのバイアス磁界による磁界分布調要機構が必要になり煩雑となる。更に、被検査物のエッジ部では特に漏洩磁界が大きくなるため、調整はさらに困難になる。その点で、膜面垂直方向の磁界検出レンジの大きな面内膜を用いることが好ましく、同時に空間分解能も高くすることができる。
【0024】
図1のAに示すように、センサ位置に停滞している永久磁石14によって、回転用ベルト12を介して対向している被検査物10に磁界が印加されると共に、前記永久磁石14の磁力により前記被検査物10が回転用ベルト12へと引き付けられる。従って、被検査物10は、その自重と磁力とにより回転用ベルト12の表面に押し付けられている。この状態(永久磁石が静止している状態)で、前記回転用ベルト12を横方向(中心軸に直交する水平方向:矢印a方向)に動かすと、被検査物10と回転用ベルト12との間の摩擦力によって、前記被検査物10に回転力が生じ、該被検査物10はセンサ位置に止まったままの状態で、即ち位置を変えずに、中心軸の周りに回転する(矢印b方向)。このとき回転用ベルト12の下方の永久磁石14により磁界を印加された被検査物10の表面からは漏洩磁界が生じ、上方に設置されている磁気センサ16を用いて、被検査物10が1回転する間に外周面全体の欠陥を検査することが可能になる。
【0025】
1個の被検査物10についての検査が終了したならば、図1のBに示すように、永久磁石14をセンサ位置から横方向(矢印c方向)に移動する。すると、被検査物10も磁力で引き付けられて永久磁石14と一緒に移送される(矢印d方向)。このとき、回転用ベルト12は停止してもよいし、動き続けていてもよい。これを利用すると、複数の永久磁石を間隔をおいて配列して順次センサ位置へと移動させることにより、複数の被検査物を間欠的に順次センサ位置まで移送させることができる。永久磁石を横方向へ移動させて被検査物をセンサ位置に移動し、永久磁石を止めた状態で回転用ベルトを動かすと被検査物が回転し検査部分で検査ができる。検査が終了すれば再び永久磁石を移動して、被検査物を移送させることができる。
【0026】
なお、図1には示していないが、円筒状の被検査物の両端部近傍にも磁気センサを設置しておけば、外周面のみならず、端部における開口部の判別や閉塞部の欠陥検査も同時に行うことが可能となる。
【0027】
例えば、被検査物が円筒状の電池外装ケースの場合、内部に電池素子を収容した後にかしめるために開口端近傍部がわずかに大径になっていることがある。そのように、円筒状の被検査物の外径が軸方向で僅かに変わっているような場合には、図2に示すように、回転用ベルト32の表面に幅方向の段差を設けることで、被検査物30の軸方向の外径変化を補正し、被検査物30の軸方向の傾きを矯正することも可能である。回転用ベルト32の下方で前記被検査物30に対向するように永久磁石34が位置し、センサ位置にて被検査物30の上方に磁気センサ36が設けられる点は、図1の場合と同様である。
【0028】
なお、回転用ベルトの断面形状を、図示のように、幅方向で対称にすれば、被検査物の開口端近傍が僅かに大径となっている場合でも、被検査物を向きを揃えることなく移送し検査することができる。そこで図2では、被検査物30の両端近傍にも、それぞれ別の磁気センサ36a,36bを設けて、開口端がどちら側にあるのか、及び閉塞端(底部)の欠陥検査ができるように構成している。
【実施例】
【0029】
図3は、本発明に係る磁気探傷装置の一実施例を示す説明図である。この装置は、被検査物である円筒状の電池外装ケース40を横向き(ここでは中心軸が紙面に垂直な方向となる向き)で移送する方式であり、電池外装ケース40を、その外周面が接するように支持する無端の回転用ベルト42と、該回転用ベルト42を動かすベルト駆動機構43と、回転用ベルト42を介して前記電池外装ケース40に対向するように下方に配置した複数の永久磁石44と、該永久磁石44がセンサ位置で一時的に停滞するように間欠駆動する磁石移動機構45と、前記電池外装ケース40の上方に位置するようにセンサ位置に設置した磁気センサ46を備えている。
【0030】
前記回転用ベルト42は、摩擦力を利用して電池外装ケース40を回転させるものであり、通常のベルトコンベアなどと同様に、両端に位置するローラを回転駆動するベルト駆動機構43によって回転用ベルト42を矢印a方向に動かすことができる構成である。磁石移動機構45は、前記回転用ベルト42の内側に位置し、複数の永久磁石44を間隔をおいて配列して連結ベルトなどに固定しておき、前記回転用ベルト42とは別々に動かすことができるように構成したものである。前記連結ベルトを間欠的に駆動し、それによる永久磁石44の移動(矢印c方向)により磁力を利用して電池外装ケース40を移送(矢印d方向)する。
【0031】
電池外装ケース40には対応する永久磁石44で磁界が印加されているので、センサ位置で該永久磁石44の移動を止め、回転用ベルトのみを動かす(矢印a方向)ことで、電池外装ケース40はセンサ位置にて回転(矢印b方向)し、欠陥検査が行われる。1個の電池外装ケースについての検査が終了すれば、再び永久磁石を移動して次の電池外装ケースをセンサ位置に移送して検査を行う。このようにして複数の電池外装ケースを連続して検査することができる。電池外装ケースの表面にプレス加工時の油が付着している場合でも付着量が多くはないので上記の移送・回転動作は可能であった。
【0032】
ここでは、磁気センサ46として、700μm厚の透明なSGGG単結晶基板上に液相エピタキシャル法により2μm厚のBi置換鉄ガーネット膜(磁気光学膜)を育成し、その上に200nm厚のPtスパッタ膜(反射膜)を形成した磁気光学素子を使用した。磁性ガーネット膜は、膜面垂直方向の飽和に要する磁界が400Oeの面内膜である。
【0033】
検査に使用する光学系は次の如くである。光源50には緑色のLEDを用い、その出射光を偏光子52を用いて直線偏光にし、ビームスプリッタ54で光路を曲げて、磁気センサ56を上方から照射する。磁気光学膜を通り反射膜で反射した光は、ビームスプリッタ54を透過し、検光子56を通ってCCDカメラ58で受光し、パソコン60で画像データを取得した。なお、ビームスプリッタに代えてハーフミラーを用いてもよい。
【0034】
磁気光学膜内の磁化方向は自然状態で面内方向なので、直線偏光を磁気光学膜に照射すると、反射膜による反射光の偏波面は回転しない。従って、偏光子52と検光子56の透過軸が直交していれば、反射光は検光子56を透過できずCCDカメラ58で撮影した画像は暗くなる(黒色)。磁気光学膜内の磁化方向が膜面に対して垂直方向を向くと、直線偏光を磁気光学膜に照射したとき、反射膜による反射光の偏波面は回転する。従って、偏光子52と検光子56の透過軸が直交していれば、反射光は検光子56を透過しCCDカメラ58で撮影した画像は明るくなる(白色)。このようにして、被検査物表面の欠陥部に生じた漏洩磁界の乱れを1次元あるいは2次元の光強度分布として検出することで、欠陥検査が行える。
【0035】
本実施例の装置を用い、直方体のネオジム磁石を、円筒状の電池外装ケースと平行に回転用ベルトを介して配置して電池外装ケース周面の欠陥を観察したところ、幅200μm程度の微小な線状キズであっても確実に検出することができた。
【0036】
また、図4に示すように、磁気センサ46の近傍に、該磁気センサ46を挟むように前後両方にそれぞれ抑えローラ48を設け、検査中に磁気センサ46と被検査物40との距離を一定に保持するようにすると、回転位置が定まり安定した検査が行える。なお、これらの抑えローラ48は自由に回転するフリーローラでよい。また、永久磁石44の移動に同期して前記抑えローラ48を上下させる(矢印eで示す)抑えローラ上下動機構49を設けると、被検査物をセンサ位置に搬入したり、センサ位置から搬出する障害になることもない。この図4に示す部分は、図3にそのまま適用できるものなので、対応する部分には同一符号を付し、それらについての説明は省略する。ここで、磁気センサと抑えローラが一体となって上下に可動するように構成してもよいし、磁気センサは固定で抑えローラのみ上下に可動する構成でもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 被検査物
12 回転用ベルト
14 永久磁石
16 磁気センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料からなる被検査物に磁界を印加し、その表面の欠陥部に生じた漏洩磁界の乱れを、前記被検査物に近接配置した磁気センサを用いて検出する磁気探傷方法において、
前記被検査物は円筒状であって、その外周面が回転用ベルトに接触しており、該回転用ベルトを介して前記被検査物に対向している磁石によって前記被検査物に磁界が印加されると共に前記磁石の磁力により被検査物が回転用ベルトに引き付けられ、前記磁石をセンサ位置に停滞させた状態で前記回転用ベルトを動かすことにより、円筒状の前記被検査物がセンサ位置に止まったままで前記回転用ベルトとの間の摩擦力を利用して前記被検査物を中心軸の周りに回転させ、前記磁気センサによって被検査物の周面を検査することを特徴とする磁気探傷方法。
【請求項2】
前記被検査物の一方もしくは両方の端部近傍にも磁気センサを配置し、被検査物の端面も同時に検査する請求項1記載の磁気探傷方法。
【請求項3】
前記磁気センサが磁気光学素子であり、該磁気光学素子を、被検査物の外周近傍に設置して、偏光子を通した光を磁気光学素子へ照射し、該磁気光学素子の表面で反射した光または磁気光学素子を透過後に反射した光を検光子を通して観察することにより、磁気光学効果を利用して前記被検査物表面の欠陥部に生じた漏洩磁界の乱れを1次元あるいは2次元の光強度分布として検出する請求項1又は2記載の磁気探傷方法。
【請求項4】
前記磁気光学素子が磁気光学膜の片面に反射膜を設けた構造であり、前記磁気光学膜として、膜面平行方向の飽和に要する磁界が膜面垂直方向に比べて小さいBi置換鉄ガーネット膜を使用する請求項3記載の磁気探傷方法。
【請求項5】
前記回転用ベルトの断面形状は、その表面の幅方向に段差あるいは隙間を設けた形状であり、その形状によって円筒状の前記被検査物の軸方向の外径変化を補正している請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気探傷方法。
【請求項6】
前記被検査物が円筒状の電池外装ケースである請求項5記載の磁気探傷方法。
【請求項7】
前記磁石が永久磁石であって、永久磁石をセンサ位置へと移動させることにより永久磁石の磁力を利用して被検査物をセンサ位置まで移送させ、永久磁石をセンサ位置から移動させることにより検査済みの被検査物をセンサ位置から移送する請求項1乃至6のいずれかに記載の磁気探傷方法。
【請求項8】
磁性材料からなる被検査物に磁界を印加し、その表面の欠陥部に生じた漏洩磁界の乱れを、前記被検査物に近接配置した磁気センサを用いて検出する磁気探傷装置において、
円筒状の被検査物を、その中心軸が水平となる向きで外周面が接するように載置する回転用ベルトと、該回転用ベルトを動かすベルト駆動機構と、前記回転用ベルトを介して前記被検査物に対向する永久磁石と、該永久磁石がセンサ位置で一時的に停滞するように間欠駆動する磁石移動機構と、センサ位置にて前記被検査物の外周面近傍となるように設置した磁気センサとを備え、前記永久磁石により前記被検査物に磁界を印加すると共に、前記永久磁石を移動させることにより磁力を利用して前記被検査物を移送させ、センサ位置にて前記回転用ベルトを動かすことにより摩擦力を利用して前記被検査物を回転させて前記磁気センサで欠陥検査を行うようにしたことを特徴とする磁気探傷装置。
【請求項9】
前記磁気センサ近傍に位置し検査中に磁気センサと被検査物との距離を一定に保持する抑えローラと、前記永久磁石の移動に同期して前記抑えローラを上下させる抑えローラ上下動機構が設けられている請求項8記載の磁気探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−122832(P2012−122832A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273413(P2010−273413)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【出願人】(592129774)株式会社FDKエンジニアリング (11)
【Fターム(参考)】