説明

磁気探傷用磁化装置

【課題】磁気探傷検査を行うときに、磁化装置の操作者以外の者も検査部分を見ることができ、しかも操作者が検査部分を容易に目視することができる磁化装置を提供する。
【解決手段】電磁石部3の当接部32,32の各先端部には、連結腕部4,4の基端部それぞれを取り付ける。連結腕部4,4の各先端部には、撮像手段装着部5の取付腕部52,52の先端部をそれぞれ取り付ける。撮像手段装着部5の取付部51には、当接部31,31間の部分を撮影可能な撮像手段7を取り付ける。電磁石部3の把持部31と撮像手段装着部5の取付部5との間には、隙間Sを形成する。隙間Sは、当該隙間を通して当接部32,32を目視可能なものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気探傷検査装置に用いられる磁気探傷検査用磁化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の磁化装置は、下記特許文献1に記載されているように、電磁石部を備えている。電磁石部は、珪素鋼板等の強磁性材からなる鉄心と、この鉄心に巻回された電磁コイルとから構成されている。鉄心は、把持部と、この把持部の長手方向の両端部から互いに同一方向へ突出する一対の当接部とを有している。把持部及び一対の当接部のうちの少なくとも一つには電磁コイルが巻回されている。したがって、電磁コイルに電流を流すと鉄心が磁化される。そして、一対の当接部の先端部が磁極になる。
【0003】
上記磁化装置を用いて磁気探傷検査を行う場合には、一対の当接部の先端部を検査対象に接触させる。そして、鉄心を磁化させる。それによって、検査対象の当接間に位置する部分を磁化させる。次に、磁化した部分に蛍光磁粉を吹き付け、さらに紫外線を照射する。検査対象の磁化部分にクラック等の欠陥がある場合には、欠陥が存在する箇所に蛍光磁粉が多く付着する。その結果、欠陥部分の蛍光発光量が他の部分より多くなる。これにより、検査対象に欠陥があることが分る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−130849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の磁化装置においては、カメラ等の撮像手段が設けられていなかった。このため、検査した結果を映像として記録したり、あるいは磁化装置の操作者以外の者が検査部分を見ることができないという問題があった。
【0006】
そこで、この出願の発明者は、磁化装置に撮像手段を設けることを考えた。しかし、磁化装置に撮像手段をむやみに取り付けると、撮像手段が操作者の視界を妨げ、操作者が検査部分を見難くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、把持部及びこの把持部の両端部から互いに同一方向へ延び出す一対の当接部を有し、上記一対の当接部の各先端部が磁極とされた電磁石部と、上記把持部と平行に、かつ上記把持部の長手方向において上記把持部と同一位置に配置された取付部、及びこの取付部の両端部から互いに同一方向に延び出し、各先端部が上記一対の当接部の先端部にそれぞれ取り付けられた一対の取付腕部を有する撮像手段装着部と、この撮像手段装着部の上記取付部に上記一対の当接部間に位置する範囲を撮像可能な状態で取り付けられた撮像手段とを備え、上記把持部と上記取付部との間に隙間が形成され、その隙間を通して上記一対の当接部間に位置する部分を目視することができるよう、上記取付部と上記把持部とがそれらの長手方向と直交する方向へ互いに離間して配置されていることを特徴としている。
この場合、上記一対の当接部の先端部に、一対の連結腕部の基端部がそれぞれ取り付けられ、各連結腕部の長手方向の中間部に上記一対の取付腕部の先端部がそれぞれ取り付けられ、上記一対の連結腕部の先端部に上記一対の当接部間に光を照射可能な発光手段が設けられていることが望ましい。
上記取付部が上記把持部に対して接近離間し、それによって上記隙間の大きさを変えることができるよう、上記一対の取付腕部が上記一対の連結腕部に位置調節可能に取り付けられていることが望ましい。
上記一対の当接部の各先端部に上記把持部と平行な当接平面が形成され、上記一対の当接部の各当接平面を水平面に面接触させたとき、上記把持部及び上記取付部が上記隙間を間にして上記当接平面の両側に位置するように、上記当接平面が上記当接部に対して傾斜させられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、磁化装置に撮像手段が設けられているので、撮像手段によって撮影された映像を記録し、あるいは映像をモニター等によって見ることにより、磁化装置の操作者以外ものも検査部分を見ることができる。しかも、電磁石部の把持部と撮像手段装着部の取付部との間に隙間が形成されているから、磁化装置の操作者は隙間を通して検査部分を見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、この発明に係る磁化装置が用いられた磁気探傷検査装置の一例の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示す磁気探傷検査装置において用いられている磁化装置であって、この発明に係る磁化装置の一実施の形態を示す側面図である。
【図3】図3は、図2のX矢視図である。
【図4】図4は、図2のY矢視図である。
【図5】図5は、図2のZ矢視図である。
【図6】図6は、同実施の形態において用いられている電磁石部を示す正面図である。
【図7】図7は、同電磁石部を示す側面図である。
【図8】図8は、同実施の形態において用いられている連結腕部を示す正面図である。
【図9】図9は、同連結腕部を示す側面図である。
【図10】図10は、同実施の形態において用いられている撮像手段装着部を示す正面図である。
【図11】図11は、同撮像手段装着部を示す平面図である。
【図12】図12は、同撮像手段装着部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、添付の図1〜図12を参照して説明する。
図1は、磁気探傷検査装置1の概略構成を示すものであり、磁気探傷検査装置1は、この発明に係る磁化装置2と、磁化装置2を制御するための制御ユニット10とを有している。
【0011】
まず、磁化装置2について説明すると、磁化装置2は、電磁石部3、連結腕部4、撮像手段装着部5、発光手段6及び撮像手段7を主な構成要素としている。
【0012】
電磁石部3は、珪素鋼板、その他の強磁性体からなる鉄心3Aを有している。鉄心3Aは、図6及び図7に示すように、ストレートに延びる把持部31と、この把持部31の長手方向の両端部に設けられた一対の当接部32,32とを有している。把持部31は、磁化装置2の操作者が一方の手で把持して磁化装置2全体を操作するためのものであり、手で把持するのに十分な長さを有している。しかも、把持部31は、当該把持部31を手で持ち易くするために、テープその他の被覆体(図示せず)によって被覆されている。
【0013】
一対の当接部32,32は、把持部31の両端部から、互いに同一方向へ、互いに平行に延び出している。特に、この実施の形態では、当接部33が把持部31と直交するように設けられている。その結果、電磁石部3全体が「コ」字状に形成されている。当接部32,32は、把持部31に対して必ずしも直交させる必要がなく、当接部32,32の間隔が当接部32の先端側へ向かうにしたがって広がるよう、当接部32,32を把持部31に対して鈍角をもって交差させてもよい。
【0014】
把持部31及び一対の当接部32,32のうちの少なくとも一つには、励磁用のコイル(図示せず)が巻回されている。この実施の形態では、励磁コイルが把持部31に巻回されている。励磁コイルは、把持部31と共に上記被覆体によって被覆されている。励磁コイルに電流を流すと、電磁石部3が磁化され、一対の当接部32,32の両先端部が磁極になる。
【0015】
一対の当接部32,32の各先端部には、当接平面32aがそれぞれ形成されている。当接平面32a,32aは、検査対象の磁化すべき部分の両端部にそれぞれ接触させられる。したがって、励磁コイルに電流を流すと、検査対象のうちの当接平面32a,32a間に位置する部分(以下磁化部分という。)が磁化される。
【0016】
二つの当接平面32a,32aは、把持部31と平行な一つの平面上に位置するように配置されている。しかも、二つの当接平面32a,32aを一つの仮想平面に面接触させたとき、一対の当接部32,32が当該仮想平面に対して同一角度だけ傾斜するように、当接平面32aが当接部33の長手方向に対して傾斜させられている。この傾斜角度は、通常30°〜60°程度に設定されるが、この実施の形態では、約45°に設定されている。当接平面32aがこのように傾斜させられている結果、図2に示すように、二つの当接平面32a,32aを仮想平面に面接触させると、把持部31が当接平面32aに対し、二つの当接面32a,32aを結ぶ直線と直交する方向へ、さらに詳しくは仮想平面上において二つの当接面32a,32aと直交する方向(以下、直交方向という。)へ離間する。ここで、把持部31の幅方向の中央と同方向における当接平面32aの中央とを結ぶ線上での当接部32の長さをLとし、当接部32と当接平面32aとの傾斜角度をαとすると、把持部31の幅方向の中央部は、同方向における当接平面32aの中央部に対し次式で求められる距離Dだけ離間する。
D=L・cosα
【0017】
当接部32の先端部には、連結腕部4が固定されている。連結腕部4は、金属製の板材からなるものであり、その基端部(図2において下端部)に形成された基板部41と、この基板部41の先端部に連設された傾斜板部42とを有している。基板部41の基端部(図2において下端部)は、当接部32の外側の面(当接部32,32の互いに対向する面と逆側を向く面)に介装材43を介して取り付けられている。基板部41は、当接部32に直接取り付けてもよい。基板部41は、当接平面32aに対し当接部32の当接平面32aに対する傾斜方向と逆方向に傾斜した状態で当接部32に取り付けられている。この結果、基板部41の先端部と当接部32の基端部とは、直交方向において当接平面32aを間にして逆側に位置しており、それらの間の距離は、当接平面32aから当接部32の基端側又は基板部41の先端側(図2において上側)へ離れるにしたがって漸次大きくなっている。基板部41の当接平面32aに対する傾斜角度は、当接部32の当接平面32aに対する傾斜角度と異なる角度であってもよいが、この実施の形態では同一角度に設定されている。
【0018】
連結腕部4の傾斜板部42は、基板部41に対して傾斜させられている。すなわち、当接平面32a,32aを仮想平面に面接触させたとき、傾斜板部42の内側の面(図3及び図4において斜め下方を向く面)が仮想平面のうちの一対の当接部32,32間に位置する部分、つまり磁化部分を向くように、特にこの実施の形態では一対の当接部32,32間の中央部を向くように、傾斜板部42が基板部41に対して傾斜させられている。
【0019】
傾斜板部42の内側の面には、発光手段6が設けられている。発光手段6は、紫外線を発光する紫外線発光部と、可視光線を発光する可視光線発光部(いずれも図示せず)とを有している。紫外線発光部及び可視光線発光部は、上記磁化部分に紫外線又は可視光線を照射する。この場合、紫外線発光部及び可視光線発光部は、上記磁化部分全体をほぼ均一に照射するものであってもよく、磁化部分のうちの当接部32,32を結ぶ方向の中央部を最も強く照射し、中央部から離間するにしたがって照射量が少なくなるものであってもよい。また、発光手段6は、少なくとも紫外線発光部を有していればよく、可視光線発光部は必ずしも必要ではない。
【0020】
撮像手段装着部5は、平板状をなす板材からなるものであり、平面視(図2においてZ方向視)長方形状をなす取付部51と、この取付部51の長手方向の両端部にそれぞれ一体に設けられた一対の取付腕部52,52とを有している。取付腕部52,52は、取付部51から互いに同一方向へ互いに平行に延びだしており、同一長さを有している。この結果、撮像手段装着部5全体が「コ」字状をなしている。
【0021】
取付部51は、当接平面32aに関し電磁石部3の把持部31と同一側に位置し、かつ把持部31と平行に配置されている。しかも、取付部51は、その長手方向においては把持部31とほぼ同一位置に位置させられている。一方、取付腕部52は、その長手方向を当接平面32aとほぼ直交する方向に向けた状態で配置されている。取付腕部52の先端部(図2において下端部)は、連結腕部4の基板部41の先端部に取り付けられている。取付部51及び取付腕部52が上記のように配置され、しかも取付腕部52の先端部が基板部41の先端部に取り付けられているため、取付部51と把持部31とは、そられの長手方向と直交する方向へ互いに離間させられている。その結果、取付部51と把持部31との間には、それらに沿って延びる隙間Sが形成されている。ここで。把持部31と取付部51とが上記直交方向において当接平面32aを間にして互いに逆側に位置させられているので、隙間Sは、当接平面32aと対向するように位置させられている。
【0022】
取付腕部52の先端部には、基板部41の長手方向とほぼ同一方向へ延びる長孔52aが形成されている。この長孔52aに挿通されたボルトTを基板部41に螺合させて締め付けることにより、取付腕部52が基板部41に固定され、ひいては撮像手段装着部5が連結腕部4,4に固定されている。したがって、ボルトTを緩めることにより、撮像手段装着部5を基板部41の長手方向(長孔52aの長手方向)へ位置調節可能である。撮像手段装着部5を基板部41の基端側へ移動させると、取付部51が把持部31に接近し、取付部51と把持部31との間の隙間Sの幅が狭くなる。逆に、撮像手段装着部5を基板部41の先端側へ移動させると、取付部51が把持部31から離間し、取付部51と把持部31との間の隙間Sの幅が大きくなる。
【0023】
取付腕部52は、基板部41に対し接近離間する方向へ位置調節可能に取り付けることに代えて、基板部41に取付部51と平行に延びる軸線を中心として所定角度だけ回動可能に取り付けてもよい。そのようにした場合には、取付腕部52を基板部41に対して正逆方向へ回動させることにより、隙間Sの幅を大小に変化させることができる。
【0024】
取付部51には、撮像手段7が取り付けられている。撮像手段7としては、CCDカメラ、光学カメラその他の周知の撮像手段を用いることができる。この撮像手段7の撮像用の入射部71は、取付部51の中央部に形成された貫通孔51aに挿通されており、その光軸を当接平面32aと直交する方向に向けて配置されている。しかも、入射部71は、取付部51のほぼ中央部に位置するように配置されている。つまり、入射部71は、当接平面31a,31aを結ぶ方向において磁化部分の中央に位置するように配置されている。ただし、入射部71は、直交方向においては当接平面32aに対し若干外れた位置に配置されている。勿論、入射部71は、直交方向において当接平面32aの中央部に位置するように入射部71を配置してもよい。あるいは、入射部71の光軸を当接平面32aに対して傾斜させ、入射部71の光軸が直交方向において磁化部分の中央部を通るように入射部71を配置してもよい。いずれにしても、撮像手段7は、磁化部分全体を撮影することができるようになっている。なお、入射部71の光軸方向は、取付腕部52を基板部41に回動可能に取り付けた場合には、撮像手段装着部5を基板部41に対して回動させることによって調節することができる。
【0025】
次に、制御ユニット10について説明すると、制御ユニット10は、磁化装置2の把持部31の長手方向の一端部に設けられたスイッチSW1,SW2,SW3からの入力信号S1,S2,S3に基づいて磁化装置2を制御するためのものであり、バッテリー11、制御回路12、磁化用駆動回路13、照明用駆動回路14及び撮像用駆動回路15を有している。そして、バッテリー11、制御回路12、磁化用駆動回路13、照明用駆動回路14及び撮像用駆動回路15が一つのケーシング16内に収容されることにより、全体としてユニット化されている。ケーシング16は、磁化装置2の操作者に対し着脱可能に装着することができるものであることが望ましい。例えば、操作者の腰ベルトに着脱可能に装着することができるものであることが望ましい。
【0026】
バッテリー11は、磁化用駆動回路13を介して磁化装置2の励磁コイルに接続され、照明用駆動回路14を介して発光手段6に接続され、撮像用駆動回路15を介して撮像手段7に接続されている。バッテリー11としては、軽量かつ蓄電量の多さという観点から、リチウム電池を用いることが望ましい。
【0027】
制御回路12は、スイッチSW1、SW2及びSW3からそれぞれ入力される入力信号S1,S2,S3に対応して磁化用駆動回路13、照明用駆動回路14及び撮像用駆動回路15をそれぞれ次のように制御する。
【0028】
すなわち、スイッチSW1を「オフ」状態にすると、制御回路12は、磁化用駆動回路13と励磁コイルとの間を切断する。一方、スイッチSW1を「オン」状態にすると、制御回路12は、磁化用駆動回路13と励磁コイルとの間を接続する。しかも、制御回路12は、スイッチSW1の操作量及び/又は操作位置に対応して、磁化用駆動回路13から励磁コイルに流れる電流の大きさ及び周波数をそれぞれ調節する。したがって、操作者は、スイッチSW1を適宜に操作することにより、励磁コイルに流れる電流の大きさ及び周波数をそれぞれ独立して調節することができる。それにより、電磁石部3の磁力の強さ及び磁気極性の変換周波数を変えることができる。また、スイッチSW1を「消磁」に切り替えると、制御回路12は、磁化用駆動回路13が励磁コイルに消磁用の電流を流すように磁化用駆動回路13を制御する。
【0029】
スイッチSW2を「オフ」状態にすると、制御回路12は、照明用駆動回路14と発光手段6との間を切断する。一方、スイッチSW2を「オン」状態にすると、照明用駆動回路14と発光手段6との間を接続し、照明用駆動回路14から発光手段6に発光用の電流が流される。特に、この実施の形態では、スイッチSW2を「第1オン状態」にすると、照明用駆動回路14と発光手段6の紫外線発光部との間が接続され、紫外線発光部から紫外線が発光され、磁化部分に照射される。スイッチSW2を「第2のオン状態」にすると、照明用駆動回路14と可視光線発光部との間が接続され、可視光線発光部から可視光線が発光され、磁化部分に照射される。また、スイッチSW2は、第1オン状態において連続状態と断続状態とに切り替え可能であり、連続状態に切り換えると、紫外線発光部から紫外線が連続して発光され、断続状態に切り換えると、紫外線発光部から紫外線が断続的に発光される。同様に、スイッチSW2を第2オン状態において連続状態に切り換えると、可視光線発光部から可視光線が連続して発光され、断続状態に切り換えると、可視光線発光部から可視光線が断続的に発光される。断続的に発光される紫外線及び可視光線の周期は、スイッチSW2の操作量に応じて変更される。
【0030】
スイッチSW3を「オフ」状態にすると、制御回路12は、撮像用駆動回路15と撮像手段7との間を切断する。スイッチSW3を「オン」状態にすると、制御回路12は、撮像用駆動回路15と撮像手段7との間を接続する。この結果、撮像手段7は、磁化部分を撮影する。しかも、制御回路12は、スイッチSW2が断続状態にあるときには、紫外線又は可視光線の発光周期に合わせて撮像手段7を撮影状態と非撮影状態とに切り換える。勿論、紫外線又は可視光線が発光されているときには、撮像手段7が撮影状態に切り換えられ、紫外線又は可視光線が発光されていないときには、撮像手段7が非撮影状態に切り換えられる。撮像手段7の撮影状態と非撮影状態とは、通常、撮像手段7に設けられたシャッター(図示せず)によって行われる。撮像手段7は、モニター(図示せず)に接続されており、撮像手段7によって撮影された映像をモニターで見ることができる。さらに、撮像手段7は、記録媒体(図示せず)に接続されており、撮像手段によって撮影された映像が記録媒体に記録される。
【0031】
上記構成の磁気探傷検査装置1によって発電用タービン等の検査対象物に欠陥があるか否かを検査する場合には、電磁石部3の当接平面32a,32aを検査対象物に押し付ける。このとき、電磁石部3の把持部31と撮像手段装着部5の取付部51との間に隙間Sが形成されており、その隙間Sが当接平面32a,32a間の部分と対向するように位置しているから、検査対象物の所定の部分(以下、検査部分と称する。)が当接平面32a,32a間に正しく位置しているか否かを目視で確認することができる。検査部分が暗い場合には、スイッチSW2を操作して発光手段4の可視光線発光部から可視光線を連続して発光させ、検査部分に可視光線を照射させる。それによって、検査部分を明瞭に確認することができる。
【0032】
その後、スイッチSW1を操作して電磁石部2の励磁コイルに磁化用の電流を流す。これによって、検査部分が磁化され、その結果検査部分が磁化部分になる。その後、磁化部分に蛍光磁粉(図示せず)を吹き付ける。蛍光磁粉は、磁気探傷検査装置1とは独立して設けられた吹き付け装置のノズル(図示せず)から蛍光磁粉を噴出させることによって磁化部分に吹き付けられる。吹き付け装置のノズルは、電磁石部2、連結腕部4及び発光手段装着部5のいずれかに設けておいてもよい。その場合には、蛍光磁粉が発光手段6の前面及び撮像手段7の入射部71の前面に付着することを防止するために、蛍光磁粉の噴射時には蛍光磁粉が発光手段6の前面及び撮像手段7の入射部の前面を覆い、かつ蛍光磁粉の噴射中断ないしは終了時には発光手段6の前面及び撮像手段7の入射部71の前面を開くシャッター等の開閉手段を発光手段6及び撮像手段7にそれぞれ付設しておくことが望ましい。
【0033】
次にスイッチSW2を操作し、発光手段6から紫外線を発光させて磁化部分に照射させる。これと同時に、スイッチSW3を操作して撮像手段7を起動し、磁化部分を撮影する。この映像をモニターに映し出される。したがって、磁化装置2の操作者以外の者は、モニターで磁化部分を見ることができる。磁化部分を撮像手段7によって撮像する場合には、紫外線を断続的に発光させることが望ましい。その方が紫外線を連続発光させた場合に比して撮像手段による映像が鮮明になるからである。映像は、モニターによって映し出されるのみならず、記憶媒体(図示せず)によって記録される。勿論、磁化部分は、隙間Sを通して目視することもできる。いずれにしても、磁化部分に欠陥があるか否かは、磁化部分の各部の蛍光発光量によって確認することができる。欠陥の有無の確認後、スイッチSW1を操作して電磁石部2の励磁コイルに消磁用の電流を流し、磁化部分を消磁する。その後、蛍光磁粉を除去して検査部分の磁気探傷検査を終了する。勿論、上記のようにして検査が完了した検査部分以外の部分も上記と同様にして検査することができる。
【0034】
上記のように、この発明の磁化装置2においては、撮像手段装着部5に撮像手段7が設けられているから、撮像手段7によって撮影された映像をモニターで見ることにより、磁化装置2の操作者のみならず、他の者も検査部分(磁化部分)を見ることができる。また、映像を記録することにより、検査対象物に欠陥があるか否かや、欠陥が検査対象物のいずれの箇所に存在するかを検査終了後にも確認することができる。
【0035】
また、この実施の形態電磁石部3を磁化する前に検査部分をモニターで見ることにより、電磁石部2が検査部分に正しくセットされているか否かを確認することができる。特に、この実施の形態では、発光手段6に紫外線発光部のみならず、可視光線発光部を設けているので、検査部分に可視光線を照射することによってより、電磁石部2が検査部分に正しくセットされているか否かをより一層明瞭に確認することができる。
【0036】
さらに、電磁石部3の把持部31と撮像手段装着部5の取付部51との間に隙間Sを形成し、この隙間Sから検査部分(磁化部分)を目視することができるので、磁化装置2の操作者は、電磁石部2が正しい位置にセットされているか否か、及び磁化部の各部の蛍光発光量を隙間Sを通して容易に確認することができる。
【0037】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、撮像手段装着部5を電磁石部3に連結腕部4を介して取り付けているが、連結腕部4を省き、撮像手段装着部5の取付腕部52,52を電磁石部3の当接部32,32にそれぞれ直接取り付けてもよい。この場合、撮像手段装着部5の取付部51が電磁石部3の把持部31に対して接近離間する方向へ位置調節することができるよう、取付腕部52を当接部32に対し移動可能に、又は回動可能に取り付けることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明に係る磁化装置は、磁気探傷検査において検査対象物の検査部分を磁化するためのものとして利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
S 隙間
2 磁化装置
3 電磁石部
4 連結腕部
5 撮像手段装着部
6 発光手段
7 撮像手段
31 把持部
32 当接部
32a 当接平面
51 取付部
52 取付腕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部及びこの把持部の両端部から互いに同一方向へ延び出す一対の当接部を有し、上記一対の当接部の各先端部が磁極とされた電磁石部と、上記把持部と平行に、かつ上記把持部の長手方向において上記把持部と同一位置に配置された取付部、及びこの取付部の両端部から互いに同一方向に延び出し、各先端部が上記一対の当接部の先端部にそれぞれ取り付けられた一対の取付腕部を有する撮像手段装着部と、この撮像手段装着部の上記取付部に上記一対の当接部間に位置する範囲を撮像可能な状態で取り付けられた撮像手段とを備え、上記把持部と上記取付部との間に隙間が形成され、その隙間を通して上記一対の当接部間に位置する部分を目視することができるよう、上記取付部と上記把持部とがそれらの長手方向と直交する方向へ互いに離間して配置されていることを特徴とする磁気探傷用磁化装置。
【請求項2】
上記一対の当接部の先端部に、一対の連結腕部の基端部がそれぞれ取り付けられ、各連結腕部の長手方向の中間部に上記一対の取付腕部の先端部がそれぞれ取り付けられ、上記一対の連結腕部の先端部に上記一対の当接部間に光を照射可能な発光手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の磁気探傷用磁化装置。
【請求項3】
上記取付部が上記把持部に対して接近離間し、それによって上記隙間の大きさを変えることができるよう、上記一対の取付腕部が上記一対の連結腕部に位置調節可能に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の磁気探傷用磁化装置。
【請求項4】
上記一対の当接部の各先端部に上記把持部と平行な当接平面が形成され、上記一対の当接部の各当接平面を水平面に面接触させたとき、上記把持部及び上記取付部が上記隙間を間にして上記当接平面の両側に位置するように、上記当接平面が上記当接部に対して傾斜させられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁気探傷用磁化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−42239(P2012−42239A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181571(P2010−181571)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(391037814)株式会社東京エネシス (24)
【出願人】(593074824)株式会社エルテル (12)
【Fターム(参考)】