磁気検出素子及びこれを用いた回転角度検出装置
【課題】自動車のステアリングの回転角度検出等に用いられる磁気検出素子及びこれを用いた回転角度検出装置に関し、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】略矩形状に配列された四つの磁気抵抗22A〜22Dの、対向する二つずつの磁気抵抗22Aと22B、磁気抵抗22Cと22Dを接続すると共に、この磁気抵抗22Cと22Dの両端に切換手段24Aと24Bを設けて磁気検出素子21を形成すると共に、これを磁石34や35に対向して配置し、制御手段37が磁気検出素子21の切換手段24Aと24Bを切換え、差動増幅手段27Aを介した磁気抵抗22からの複数の磁気信号を減算して、回転体31の回転角度を検出することによって、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能なものを得ることができる。
【解決手段】略矩形状に配列された四つの磁気抵抗22A〜22Dの、対向する二つずつの磁気抵抗22Aと22B、磁気抵抗22Cと22Dを接続すると共に、この磁気抵抗22Cと22Dの両端に切換手段24Aと24Bを設けて磁気検出素子21を形成すると共に、これを磁石34や35に対向して配置し、制御手段37が磁気検出素子21の切換手段24Aと24Bを切換え、差動増幅手段27Aを介した磁気抵抗22からの複数の磁気信号を減算して、回転体31の回転角度を検出することによって、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能なものを得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングの回転角度の検出等に用いられる磁気検出素子、及びこれを用いた回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転角度検出装置を用いてステアリングの回転角度を検出し、この回転角度を用いて車両の各種制御を行うものが増えている。
【0003】
このような、従来の回転角度検出装置、及びこれに用いられる磁気検出素子について、図9〜図12を用いて説明する。
【0004】
図9は従来の磁気検出素子のブロック回路図、図10は同回転角度検出装置の斜視図であり、同図において、1はAMR(異方性磁気抵抗)素子等の磁気検出素子で、四つの磁気抵抗2A〜2Dが略矩形状に配列され接続されると共に、磁気抵抗2Aと2Cの結合点には電源端子3Aが、磁気抵抗2Bと2Dの結合点にはグランド端子3Bが各々設けられている。
【0005】
そして、磁気抵抗2Aと2Bの結合点には+出力端子3Cが、磁気抵抗2Cと2Dの結合点には−出力端子3Dが各々形成されて、磁気検出素子1が構成されている。
【0006】
さらに、4は同様に形成された磁気検出素子で、磁気検出素子1に対し45度傾けて重ねて形成されると共に、これらの+出力端子3Cや−出力端子3Dが、オペアンプ等の差動増幅手段7Aと7Bに各々接続されている。
【0007】
また、図10において、11は外周に平歯車部11Aが形成された回転体で、中央部には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する係合部11Bが設けられている。
【0008】
そして、12は外周に平歯車部12Aが形成された第一の検出体、13は外周に第一の検出体12とは歯数の異なる平歯車部13Aが形成された第二の検出体で、第一の検出体12と第二の検出体13が回転体11に各々噛合すると共に、第一の検出体12と第二の検出体13の中央には、磁石14と15がインサート成形等により各々装着されている。
【0009】
さらに、16は第一の検出体12と第二の検出体13の上面にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体12の磁石14や第二の検出体13の磁石15との対向面には、磁気検出素子1や4が各々実装装着されている。
【0010】
また、この磁気検出素子1や4が実装された配線基板16には、マイコン等を実装して制御手段17が形成され、この制御手段17に配線パターンを介して、差動増幅手段7Aと7Bが接続されて、回転角度検出装置が構成されている。
【0011】
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段17がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、自動車の電子回路(図示せず)に接続されると共に、磁気検出素子1や4の電源端子3Aが例えばDC5Vの電源に、グランド端子3Bがグランドに各々接続され、回転体11の係合部11Bにはステアリングの軸が挿通されて、自動車に装着される。
【0012】
以上の構成において、運転時にステアリングを回転すると、回転体11が回転し、これに連動して第一の検出体12と第二の検出体13が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石14と15も回転して、この磁石14と15の磁気の方向が変化し、これを磁気検出素子1や4が検出する。
【0013】
そして、例えば、磁石14と対向した磁気検出素子1の+出力端子3Cからは、図11(a)の波形図に示すような磁気信号L1が、−出力端子3Dからは、図11(b)に示すような磁気信号M1が各々差動増幅手段7Aに出力され、差動増幅手段7Aが例えば、基準値2.5Vに対する磁気信号L1から磁気信号M1を減算した後、これを所定の大きさに増幅する、いわゆる差動増幅を行い、図11(c)に示すような、例えば正弦波の磁気信号N1が、差動増幅手段7Aから制御手段17に出力される。
【0014】
また、同時に、磁気検出素子1に対して45度傾けて重ねて形成された磁気検出素子4からも、差動増幅手段7Bに磁気信号が出力されて差動増幅が行われ、差動増幅手段7Bからは余弦波の磁気信号が制御手段17に出力される。
【0015】
さらに、磁石15と対向した磁気検出素子1や4からも同様に、正弦波と余弦波の出力信号が差動増幅手段を介して制御手段17に出力されるが、第一の検出体12と第二の検出体13の平歯車部12Aと13Aは歯数が異なっているため、これらは位相差のある波形となって制御手段17に入力される。
【0016】
そして、この第一の検出体12と第二の検出体13からの磁気信号と、各々の平歯車部の歯数から、制御手段17が所定の演算を行って、回転体11すなわちステアリングの回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0017】
なお、この時、回転角度検出装置が使用されている周囲の温度が変化し、例えば25度前後の常温から85度前後の高温に変化して、磁気検出素子1の四つの磁気抵抗2A〜2Dの抵抗値の変化に差が生じた場合、例えば磁気抵抗2Aだけの抵抗値が大きくなってしまった場合、磁気検出素子1の+出力端子3Cからは、図12(a)の波形図に示すような、電圧V1だけずれた磁気信号L2が差動増幅手段7Aに出力される。
【0018】
これに対し、−出力端子3Dからは図12(b)に示すような、ずれのない磁気信号M1が差動増幅手段7Aに出力されるため、これらによって差動増幅手段7Aが差動増幅を行った場合、図12(c)に示すような、電圧V2だけずれた磁気信号N2が、差動増幅手段7Aから制御手段17に出力される。
【0019】
したがって、このようなずれた磁気信号N2を用いて、制御手段17が回転体11の回転角度の演算を行った場合、角度として0.5度前後のものではあるが、回転角度の検出に誤差が生じてしまい、精度の劣った回転角度の検出となってしまうものであった。
【0020】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2009−198181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、上記従来の磁気検出素子及びこれを用いた回転角度検出装置においては、使用されている周囲の温度が変化し、特に常温から高温に変化した場合、磁気検出素子1の磁気抵抗2A〜2Dの抵抗値の変化の差によって、差動増幅手段7Aに出力される磁気信号L2にずれが発生し、回転角度の検出に誤差が生じてしまう場合があるため、高精度な角度検出を行うことが困難であるという課題があった。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出素子、及びこれを用いた回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0025】
本発明の請求項1に記載の発明は、略矩形状に配列された四つの磁気抵抗の、対向する二つずつの磁気抵抗を接続すると共に、この接続した一方の両端に切換手段を設けて磁気検出素子を構成したものであり、この磁気検出素子を検出体の磁石に対向して配置し、制御手段によって回転体の回転角度の検出を行う際、磁気抵抗に温度による抵抗値変化の差があった場合でも、制御手段が磁気検出素子の切換手段を切換え、磁気抵抗からの複数の磁気信号を減算して回転角度を検出することで、回転角度の正しい検出を行うことができるため、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出素子を得ることができるという作用を有する。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の磁気検出素子を、回転体に連動して回転する検出体中央の磁石に対向して配置し、制御手段が磁気検出素子の切換手段を切換え、磁気抵抗からの複数の磁気信号を減算して回転角度を検出するようにして回転角度検出装置を構成したものであり、誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置を実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によれば、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出素子、及びこれを用いた回転角度検出装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態による磁気検出素子のブロック回路図
【図2】同回転角度検出装置の斜視図
【図3】同波形図
【図4】同波形図
【図5】同波形図
【図6】同波形図
【図7】同波形図
【図8】同波形図
【図9】従来の磁気検出素子のブロック回路図
【図10】同回転角度検出装置の斜視図
【図11】同波形図
【図12】同波形図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図8を用いて説明する。
【0030】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による磁気検出素子のブロック回路図、図2は同回転角度検出装置の斜視図であり、同図において、21は磁気検出素子で、四つの磁気抵抗22A〜22Dが略矩形状に配列されると共に、対向する二つずつの磁気抵抗22Aと22B、磁気抵抗22Cと22Dが各々接続され、磁気抵抗22Aの端部には電源端子23Aが、磁気抵抗22Bの端部にはグランド端子23Bが各々設けられている。
【0031】
そして、磁気抵抗22Cと22Dの両端には、FET等の切換手段24Aと24Bが形成されると共に、磁気抵抗22Aと22Bの結合点には+出力端子25Aが、磁気抵抗22Cと22Dの結合点には−出力端子25Bが各々設けられて、磁気検出素子21が構成されている。
【0032】
さらに、26は同様に形成された磁気検出素子で、磁気検出素子21に対し45度傾けて重ねて形成されると共に、これらの+出力端子25Aや−出力端子25Bが、オペアンプ等の差動増幅手段27Aと27Bに各々接続されている。
【0033】
つまり、略矩形状に配列された四つの磁気抵抗22A〜22Dの、対向する二つずつの磁気抵抗22Aと22B、磁気抵抗22Cと22Dを各々接続すると共に、この接続した一方の磁気抵抗22Cと22Dの両端に、切換手段24Aと24Bが設けられて、磁気検出素子21や26が形成されている。
【0034】
また、図2において、31は外周に平歯車部31Aが形成された回転体で、中央部には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する係合部31Bが設けられている。
【0035】
そして、32は外周に平歯車部32Aが形成された第一の検出体、33は外周に第一の検出体32とは歯数の異なる平歯車部33Aが形成された第二の検出体で、第一の検出体32が回転体31に、第二の検出体33が第一の検出体32に各々噛合すると共に、第一の検出体32と第二の検出体33の中央には、磁石34と35がインサート成形等により各々装着されている。
【0036】
さらに、36は第一の検出体32と第二の検出体33の上面にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体32の磁石34や第二の検出体33の磁石35との対向面には、磁気検出素子21や26が各々実装装着されている。
【0037】
また、この磁気検出素子21や26が実装された配線基板36には、マイコン等を実装して制御手段37が形成され、この制御手段37に配線パターンを介して、差動増幅手段27Aと27B、切換手段24Aと24Bが接続されて、回転角度検出装置が構成されている。
【0038】
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段37がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、自動車の電子回路(図示せず)に接続されると共に、回転体31の係合部31Bにはステアリングの軸が挿通されて、自動車に装着される。
【0039】
また、磁気検出素子21や26の電源端子23Aが例えばDC5Vの電源に、グランド端子23Bがグランドに各々接続されると共に、切換手段24Aと24Bの端子の一方は電源に、他方はグランドに各々接続される。
【0040】
以上の構成において、運転時にステアリングを回転すると、回転体31が回転し、これに連動して第一の検出体32が、第一の検出体32に連動して第二の検出体33が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石34と35も回転して、この磁石34と35の磁気の方向が変化し、これを磁気検出素子21や26が検出する。
【0041】
そして、例えば、磁石34と対向した磁気検出素子21の+出力端子25Aからは、図3(a)の波形図に示すような、磁気信号L1が差動増幅手段27Aに出力される。
【0042】
また、この時、制御手段37によって切換手段24Aと24Bが切換えられ、切換手段24Aが電源に、切換手段24Bがグランドに各々接続されていた場合には、−出力端子25Bからは、図3(b)に示すような、磁気信号M1が差動増幅手段27Aに出力される。
【0043】
そして、先ず差動増幅手段27Aが、基準値2.5Vに対する磁気信号L1から磁気信号M1を減算した後、これを所定の大きさに増幅する、いわゆる差動増幅を行い、図3(c)に示すような、例えば正弦波の磁気信号N1が、差動増幅手段27Aから制御手段37に出力される。
【0044】
さらに、この後、制御手段37が上記とは逆に、切換手段24Aをグランドに、切換手段24Bを電源に切換えると、+出力端子25Aからは、図4(a)の波形図に示すような、上記と同様の磁気信号L1が差動増幅手段27Aに出力されるが、−出力端子25Bからは、図4(b)に示すような、上記とは逆の磁気信号M2が差動増幅手段27Aに出力される。
【0045】
したがって、差動増幅手段27Aが上記と同様に、磁気信号L1からこの磁気信号M2を差動増幅した場合には、図4(c)に示すような、磁気信号N3が差動増幅手段27Aから制御手段37に出力されるが、この時、制御手段37が基準値2.5Vに対する、切換手段24Aと24Bを切換える前の磁気信号N1から、切換えた後の磁気信号N3を減算し、図4(d)に示すような、正弦波の磁気信号N1への変換が行われる。
【0046】
なお、同時に、磁気検出素子21に対して45度傾けて重ねて形成された磁気検出素子26からも、差動増幅手段27Bに磁気信号が出力されて差動増幅が行われるが、この場合にも制御手段37が切換手段を切換え、切換え前の磁気信号から切換え後の磁気信号を減算して、余弦波の磁気信号への変換が行われる。
【0047】
さらに、磁石35と対向した磁気検出素子21や26からも同様に、差動増幅手段を介して磁気信号が制御手段37に入力され、同様に制御手段37が正弦波と余弦波の磁気信号への変換を行うが、この時、第一の検出体32と第二の検出体33の平歯車部32Aと33Aは歯数が異なっているため、これらは位相差のある波形となって制御手段37に入力される。
【0048】
そして、この第一の検出体32と第二の検出体33からの磁気信号と、各々の平歯車部の歯数から、制御手段37が所定の演算を行って、回転体31すなわちステアリングの回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0049】
なお、この時、回転角度検出装置が使用されている周囲の温度が変化し、例えば25度前後の常温から85度前後の高温に変化して、磁気検出素子21の四つの磁気抵抗22A〜22Dの抵抗値の変化に差が生じる場合がある。
【0050】
そして、例えば切換手段24Aが電源に、切換手段24Bがグランドに各々切換えられた状態で、例えば磁気抵抗22Aだけの抵抗値が大きくなってしまった場合、磁気検出素子21の+出力端子25Aからは、図5(a)の波形図に示すような、電圧V1だけずれた磁気信号L2が差動増幅手段27Aに出力される。
【0051】
これに対し、−出力端子25Bからは図5(b)に示すような、ずれのない磁気信号M1が差動増幅手段27Aに出力されるため、これらによって差動増幅手段27Aが差動増幅を行った場合、図5(c)に示すような、電圧V2だけずれた磁気信号N2が、差動増幅手段27Aから制御手段37に出力される。
【0052】
しかし、この後、上述したように、制御手段37が上記とは逆に、切換手段24Aをグランドに、切換手段24Bを電源に切換えると、+出力端子25Aからは、図6(a)の波形図に示すような、上記と同様の磁気信号L2が差動増幅手段27Aに出力されるが、−出力端子25Bからは、図6(b)に示すような、上記とは逆の磁気信号M2が差動増幅手段27Aに出力される。
【0053】
そして、差動増幅手段27Aが上記と同様に、磁気信号L2からこの磁気信号M2を差動増幅した場合には、図6(c)に示すような、電圧V2だけずれた磁気信号N4が差動増幅手段27Aから制御手段37に出力されるが、この時、制御手段37が基準値2.5Vに対する、切換手段24Aと24Bを切換える前の磁気信号N2から、切換えた後の磁気信号N4を減算するため、これらは図6(d)に示すような、ずれのない正弦波の磁気信号N1へ変換される。
【0054】
つまり、常温から高温といった周囲の温度変化によって、例えば磁気抵抗22Aだけの抵抗値が大きくなってしまった場合、差動増幅手段27Aには磁気検出素子21から電圧V1だけずれた磁気信号L2が出力され、これによって差動増幅された磁気信号N2やN4も電圧V2だけずれたものとなるが、制御手段37がこれらを減算することによって、ずれのない正弦波の磁気信号N1が得られるようになっている。
【0055】
すなわち、制御手段37が磁気検出素子21の切換手段24Aと24Bを切換え、差動増幅手段27Aから入力された切換え前の磁気信号N2から、切換え後の磁気信号N4を減算して回転体31の回転角度を検出することで、磁気抵抗22A〜22Dに、温度による抵抗値変化の差があった場合でも、回転角度の検出に誤差がなく、高精度な検出を行うことができるように構成されている。
【0056】
なお、以上の説明では、磁気抵抗22Aの抵抗値が大きくなった場合について説明したが、他の磁気抵抗22Bや22C、22Dの抵抗値が大きくなった場合でも、同様に誤差がなく、高精度な回転角度の検出を行うことができる。
【0057】
つまり、例えば切換手段24Aが電源に、切換手段24Bがグランドに各々切換えられた状態で、例えば磁気抵抗22Cだけの抵抗値が大きくなってしまった場合、磁気検出素子21の+出力端子25Aからは、図7(a)の波形図に示すような、ずれのない磁気信号L1が差動増幅手段27Aに出力される。
【0058】
これに対し、磁気抵抗22Cの抵抗値が大きな場合、−出力端子25Bからは図7(b)に示すような、電圧V1だけずれた磁気信号M3が差動増幅手段27Aに出力されるため、これらによって差動増幅手段27Aが差動増幅を行った場合、図7(c)に示すような、電圧V2だけずれた磁気信号N5が、差動増幅手段27Aから制御手段37に出力される。
【0059】
しかし、この後、制御手段37が上記とは逆に、切換手段24Aをグランドに、切換手段24Bを電源に切換えると、+出力端子25Aからは、図8(a)の波形図に示すような、上記と同様の磁気信号L1が差動増幅手段27Aに出力されるが、−出力端子25Bからは、図8(b)に示すような、上記とは逆で電圧V1だけずれた磁気信号M4が差動増幅手段27Aに出力される。
【0060】
そして、差動増幅手段27Aが磁気信号L1からこの磁気信号M4を差動増幅した場合には、図8(c)に示すような、電圧V2だけずれた磁気信号N6が差動増幅手段27Aから制御手段37に出力され、制御手段37がこの磁気信号N6を、図7(c)に示した磁気信号N5から減算することで、図8(d)に示すような、ずれのない正弦波の磁気信号N1に変換される。
【0061】
すなわち、制御手段37が磁気検出素子21の切換手段24Aと24Bを切換え、切換え前の磁気信号N5から切換え後の磁気信号N6を減算することによって、磁気抵抗22A以外の、例えば磁気抵抗22Cだけの抵抗値が大きくなった場合でも、同様に誤差がなく、高精度な回転角度の検出を行うことができるようになっている。
【0062】
このように本実施の形態によれば、略矩形状に配列された四つの磁気抵抗22A〜22Dの、対向する二つずつの磁気抵抗22Aと22B、磁気抵抗22Cと22Dを接続すると共に、この接続した一方の両端に切換手段24Aと24Bを設けて磁気検出素子21を形成すると共に、これを第一の検出体32や第二の検出体33中央の磁石34や35に対向して配置し、制御手段37が磁気検出素子21の切換手段24Aと24Bを切換え、差動増幅手段27Aを介した磁気抵抗22からの複数の磁気信号を減算して、回転体31の回転角度を検出することによって、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出素子21、及びこれを用いた回転角度検出装置を得ることができるものである。
【0063】
なお、以上の説明では、磁気検出素子21や26と差動増幅手段27Aや27Bを別体に設け、これらを配線基板36の配線パターンを介して接続した構成として説明したが、これらを一つのチップ部品として一体に形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0064】
また、磁気検出素子21や26と差動増幅手段27Aや27B、制御手段37を、配線基板36の配線パターンを介して接続して、回転角度検出装置を形成した構成として説明したが、制御手段37を車両の電子回路側に一体に形成した構成としてもよい。
【0065】
さらに、以上の説明では、回転体31に第一の検出体32を噛合させ、この第一の検出体32に第二の検出体33を噛合させた構成の回転角度検出装置について説明したが、背景技術の項で説明したように、回転体31に第一の検出体32と第二の検出体33の両方を噛合させた構成や、あるいは一方の検出体のみを回転体31に噛合させた構成のものとしても、本発明の実施は可能である。
【0066】
また、回転体31や第一の検出体32、第二の検出体33の外周に各々平歯車部を形成し、これらが噛合して互いに連動して回転する構成について説明したが、平歯車部以外にも傘歯車等、他の形状の歯車を用いた構成や、あるいは歯車に代えて、回転を伝達できる凹凸部や高摩擦部などを回転体や各検出体の外周に形成し、これによって互いに連動して回転する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明による磁気検出素子及びこれを用いた回転角度検出装置は、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能なものが得られ、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に有用である。
【符号の説明】
【0068】
21、26 磁気検出素子
22A、22B、22C、22D 磁気抵抗
23A 電源端子
23B グランド端子
24A、24B 切換手段
25A +出力端子
25B −出力端子
27A、27B 差動増幅手段
31 回転体
31A、32A、33A 平歯車部
31B 係合部
32 第一の検出体
33 第二の検出体
34、35 磁石
36 配線基板
37 制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のステアリングの回転角度の検出等に用いられる磁気検出素子、及びこれを用いた回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転角度検出装置を用いてステアリングの回転角度を検出し、この回転角度を用いて車両の各種制御を行うものが増えている。
【0003】
このような、従来の回転角度検出装置、及びこれに用いられる磁気検出素子について、図9〜図12を用いて説明する。
【0004】
図9は従来の磁気検出素子のブロック回路図、図10は同回転角度検出装置の斜視図であり、同図において、1はAMR(異方性磁気抵抗)素子等の磁気検出素子で、四つの磁気抵抗2A〜2Dが略矩形状に配列され接続されると共に、磁気抵抗2Aと2Cの結合点には電源端子3Aが、磁気抵抗2Bと2Dの結合点にはグランド端子3Bが各々設けられている。
【0005】
そして、磁気抵抗2Aと2Bの結合点には+出力端子3Cが、磁気抵抗2Cと2Dの結合点には−出力端子3Dが各々形成されて、磁気検出素子1が構成されている。
【0006】
さらに、4は同様に形成された磁気検出素子で、磁気検出素子1に対し45度傾けて重ねて形成されると共に、これらの+出力端子3Cや−出力端子3Dが、オペアンプ等の差動増幅手段7Aと7Bに各々接続されている。
【0007】
また、図10において、11は外周に平歯車部11Aが形成された回転体で、中央部には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する係合部11Bが設けられている。
【0008】
そして、12は外周に平歯車部12Aが形成された第一の検出体、13は外周に第一の検出体12とは歯数の異なる平歯車部13Aが形成された第二の検出体で、第一の検出体12と第二の検出体13が回転体11に各々噛合すると共に、第一の検出体12と第二の検出体13の中央には、磁石14と15がインサート成形等により各々装着されている。
【0009】
さらに、16は第一の検出体12と第二の検出体13の上面にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体12の磁石14や第二の検出体13の磁石15との対向面には、磁気検出素子1や4が各々実装装着されている。
【0010】
また、この磁気検出素子1や4が実装された配線基板16には、マイコン等を実装して制御手段17が形成され、この制御手段17に配線パターンを介して、差動増幅手段7Aと7Bが接続されて、回転角度検出装置が構成されている。
【0011】
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段17がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、自動車の電子回路(図示せず)に接続されると共に、磁気検出素子1や4の電源端子3Aが例えばDC5Vの電源に、グランド端子3Bがグランドに各々接続され、回転体11の係合部11Bにはステアリングの軸が挿通されて、自動車に装着される。
【0012】
以上の構成において、運転時にステアリングを回転すると、回転体11が回転し、これに連動して第一の検出体12と第二の検出体13が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石14と15も回転して、この磁石14と15の磁気の方向が変化し、これを磁気検出素子1や4が検出する。
【0013】
そして、例えば、磁石14と対向した磁気検出素子1の+出力端子3Cからは、図11(a)の波形図に示すような磁気信号L1が、−出力端子3Dからは、図11(b)に示すような磁気信号M1が各々差動増幅手段7Aに出力され、差動増幅手段7Aが例えば、基準値2.5Vに対する磁気信号L1から磁気信号M1を減算した後、これを所定の大きさに増幅する、いわゆる差動増幅を行い、図11(c)に示すような、例えば正弦波の磁気信号N1が、差動増幅手段7Aから制御手段17に出力される。
【0014】
また、同時に、磁気検出素子1に対して45度傾けて重ねて形成された磁気検出素子4からも、差動増幅手段7Bに磁気信号が出力されて差動増幅が行われ、差動増幅手段7Bからは余弦波の磁気信号が制御手段17に出力される。
【0015】
さらに、磁石15と対向した磁気検出素子1や4からも同様に、正弦波と余弦波の出力信号が差動増幅手段を介して制御手段17に出力されるが、第一の検出体12と第二の検出体13の平歯車部12Aと13Aは歯数が異なっているため、これらは位相差のある波形となって制御手段17に入力される。
【0016】
そして、この第一の検出体12と第二の検出体13からの磁気信号と、各々の平歯車部の歯数から、制御手段17が所定の演算を行って、回転体11すなわちステアリングの回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0017】
なお、この時、回転角度検出装置が使用されている周囲の温度が変化し、例えば25度前後の常温から85度前後の高温に変化して、磁気検出素子1の四つの磁気抵抗2A〜2Dの抵抗値の変化に差が生じた場合、例えば磁気抵抗2Aだけの抵抗値が大きくなってしまった場合、磁気検出素子1の+出力端子3Cからは、図12(a)の波形図に示すような、電圧V1だけずれた磁気信号L2が差動増幅手段7Aに出力される。
【0018】
これに対し、−出力端子3Dからは図12(b)に示すような、ずれのない磁気信号M1が差動増幅手段7Aに出力されるため、これらによって差動増幅手段7Aが差動増幅を行った場合、図12(c)に示すような、電圧V2だけずれた磁気信号N2が、差動増幅手段7Aから制御手段17に出力される。
【0019】
したがって、このようなずれた磁気信号N2を用いて、制御手段17が回転体11の回転角度の演算を行った場合、角度として0.5度前後のものではあるが、回転角度の検出に誤差が生じてしまい、精度の劣った回転角度の検出となってしまうものであった。
【0020】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2009−198181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、上記従来の磁気検出素子及びこれを用いた回転角度検出装置においては、使用されている周囲の温度が変化し、特に常温から高温に変化した場合、磁気検出素子1の磁気抵抗2A〜2Dの抵抗値の変化の差によって、差動増幅手段7Aに出力される磁気信号L2にずれが発生し、回転角度の検出に誤差が生じてしまう場合があるため、高精度な角度検出を行うことが困難であるという課題があった。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出素子、及びこれを用いた回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0025】
本発明の請求項1に記載の発明は、略矩形状に配列された四つの磁気抵抗の、対向する二つずつの磁気抵抗を接続すると共に、この接続した一方の両端に切換手段を設けて磁気検出素子を構成したものであり、この磁気検出素子を検出体の磁石に対向して配置し、制御手段によって回転体の回転角度の検出を行う際、磁気抵抗に温度による抵抗値変化の差があった場合でも、制御手段が磁気検出素子の切換手段を切換え、磁気抵抗からの複数の磁気信号を減算して回転角度を検出することで、回転角度の正しい検出を行うことができるため、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出素子を得ることができるという作用を有する。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の磁気検出素子を、回転体に連動して回転する検出体中央の磁石に対向して配置し、制御手段が磁気検出素子の切換手段を切換え、磁気抵抗からの複数の磁気信号を減算して回転角度を検出するようにして回転角度検出装置を構成したものであり、誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な回転角度検出装置を実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によれば、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出素子、及びこれを用いた回転角度検出装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態による磁気検出素子のブロック回路図
【図2】同回転角度検出装置の斜視図
【図3】同波形図
【図4】同波形図
【図5】同波形図
【図6】同波形図
【図7】同波形図
【図8】同波形図
【図9】従来の磁気検出素子のブロック回路図
【図10】同回転角度検出装置の斜視図
【図11】同波形図
【図12】同波形図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図8を用いて説明する。
【0030】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による磁気検出素子のブロック回路図、図2は同回転角度検出装置の斜視図であり、同図において、21は磁気検出素子で、四つの磁気抵抗22A〜22Dが略矩形状に配列されると共に、対向する二つずつの磁気抵抗22Aと22B、磁気抵抗22Cと22Dが各々接続され、磁気抵抗22Aの端部には電源端子23Aが、磁気抵抗22Bの端部にはグランド端子23Bが各々設けられている。
【0031】
そして、磁気抵抗22Cと22Dの両端には、FET等の切換手段24Aと24Bが形成されると共に、磁気抵抗22Aと22Bの結合点には+出力端子25Aが、磁気抵抗22Cと22Dの結合点には−出力端子25Bが各々設けられて、磁気検出素子21が構成されている。
【0032】
さらに、26は同様に形成された磁気検出素子で、磁気検出素子21に対し45度傾けて重ねて形成されると共に、これらの+出力端子25Aや−出力端子25Bが、オペアンプ等の差動増幅手段27Aと27Bに各々接続されている。
【0033】
つまり、略矩形状に配列された四つの磁気抵抗22A〜22Dの、対向する二つずつの磁気抵抗22Aと22B、磁気抵抗22Cと22Dを各々接続すると共に、この接続した一方の磁気抵抗22Cと22Dの両端に、切換手段24Aと24Bが設けられて、磁気検出素子21や26が形成されている。
【0034】
また、図2において、31は外周に平歯車部31Aが形成された回転体で、中央部には挿通するステアリング(図示せず)の軸と係合する係合部31Bが設けられている。
【0035】
そして、32は外周に平歯車部32Aが形成された第一の検出体、33は外周に第一の検出体32とは歯数の異なる平歯車部33Aが形成された第二の検出体で、第一の検出体32が回転体31に、第二の検出体33が第一の検出体32に各々噛合すると共に、第一の検出体32と第二の検出体33の中央には、磁石34と35がインサート成形等により各々装着されている。
【0036】
さらに、36は第一の検出体32と第二の検出体33の上面にほぼ平行に配置された配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、第一の検出体32の磁石34や第二の検出体33の磁石35との対向面には、磁気検出素子21や26が各々実装装着されている。
【0037】
また、この磁気検出素子21や26が実装された配線基板36には、マイコン等を実装して制御手段37が形成され、この制御手段37に配線パターンを介して、差動増幅手段27Aと27B、切換手段24Aと24Bが接続されて、回転角度検出装置が構成されている。
【0038】
そして、このように構成された回転角度検出装置が、制御手段37がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、自動車の電子回路(図示せず)に接続されると共に、回転体31の係合部31Bにはステアリングの軸が挿通されて、自動車に装着される。
【0039】
また、磁気検出素子21や26の電源端子23Aが例えばDC5Vの電源に、グランド端子23Bがグランドに各々接続されると共に、切換手段24Aと24Bの端子の一方は電源に、他方はグランドに各々接続される。
【0040】
以上の構成において、運転時にステアリングを回転すると、回転体31が回転し、これに連動して第一の検出体32が、第一の検出体32に連動して第二の検出体33が各々回転するため、これらの中央に装着された磁石34と35も回転して、この磁石34と35の磁気の方向が変化し、これを磁気検出素子21や26が検出する。
【0041】
そして、例えば、磁石34と対向した磁気検出素子21の+出力端子25Aからは、図3(a)の波形図に示すような、磁気信号L1が差動増幅手段27Aに出力される。
【0042】
また、この時、制御手段37によって切換手段24Aと24Bが切換えられ、切換手段24Aが電源に、切換手段24Bがグランドに各々接続されていた場合には、−出力端子25Bからは、図3(b)に示すような、磁気信号M1が差動増幅手段27Aに出力される。
【0043】
そして、先ず差動増幅手段27Aが、基準値2.5Vに対する磁気信号L1から磁気信号M1を減算した後、これを所定の大きさに増幅する、いわゆる差動増幅を行い、図3(c)に示すような、例えば正弦波の磁気信号N1が、差動増幅手段27Aから制御手段37に出力される。
【0044】
さらに、この後、制御手段37が上記とは逆に、切換手段24Aをグランドに、切換手段24Bを電源に切換えると、+出力端子25Aからは、図4(a)の波形図に示すような、上記と同様の磁気信号L1が差動増幅手段27Aに出力されるが、−出力端子25Bからは、図4(b)に示すような、上記とは逆の磁気信号M2が差動増幅手段27Aに出力される。
【0045】
したがって、差動増幅手段27Aが上記と同様に、磁気信号L1からこの磁気信号M2を差動増幅した場合には、図4(c)に示すような、磁気信号N3が差動増幅手段27Aから制御手段37に出力されるが、この時、制御手段37が基準値2.5Vに対する、切換手段24Aと24Bを切換える前の磁気信号N1から、切換えた後の磁気信号N3を減算し、図4(d)に示すような、正弦波の磁気信号N1への変換が行われる。
【0046】
なお、同時に、磁気検出素子21に対して45度傾けて重ねて形成された磁気検出素子26からも、差動増幅手段27Bに磁気信号が出力されて差動増幅が行われるが、この場合にも制御手段37が切換手段を切換え、切換え前の磁気信号から切換え後の磁気信号を減算して、余弦波の磁気信号への変換が行われる。
【0047】
さらに、磁石35と対向した磁気検出素子21や26からも同様に、差動増幅手段を介して磁気信号が制御手段37に入力され、同様に制御手段37が正弦波と余弦波の磁気信号への変換を行うが、この時、第一の検出体32と第二の検出体33の平歯車部32Aと33Aは歯数が異なっているため、これらは位相差のある波形となって制御手段37に入力される。
【0048】
そして、この第一の検出体32と第二の検出体33からの磁気信号と、各々の平歯車部の歯数から、制御手段37が所定の演算を行って、回転体31すなわちステアリングの回転角度を検出し、これが自動車本体の電子回路へ出力されて、車両の様々な制御が行われるように構成されている。
【0049】
なお、この時、回転角度検出装置が使用されている周囲の温度が変化し、例えば25度前後の常温から85度前後の高温に変化して、磁気検出素子21の四つの磁気抵抗22A〜22Dの抵抗値の変化に差が生じる場合がある。
【0050】
そして、例えば切換手段24Aが電源に、切換手段24Bがグランドに各々切換えられた状態で、例えば磁気抵抗22Aだけの抵抗値が大きくなってしまった場合、磁気検出素子21の+出力端子25Aからは、図5(a)の波形図に示すような、電圧V1だけずれた磁気信号L2が差動増幅手段27Aに出力される。
【0051】
これに対し、−出力端子25Bからは図5(b)に示すような、ずれのない磁気信号M1が差動増幅手段27Aに出力されるため、これらによって差動増幅手段27Aが差動増幅を行った場合、図5(c)に示すような、電圧V2だけずれた磁気信号N2が、差動増幅手段27Aから制御手段37に出力される。
【0052】
しかし、この後、上述したように、制御手段37が上記とは逆に、切換手段24Aをグランドに、切換手段24Bを電源に切換えると、+出力端子25Aからは、図6(a)の波形図に示すような、上記と同様の磁気信号L2が差動増幅手段27Aに出力されるが、−出力端子25Bからは、図6(b)に示すような、上記とは逆の磁気信号M2が差動増幅手段27Aに出力される。
【0053】
そして、差動増幅手段27Aが上記と同様に、磁気信号L2からこの磁気信号M2を差動増幅した場合には、図6(c)に示すような、電圧V2だけずれた磁気信号N4が差動増幅手段27Aから制御手段37に出力されるが、この時、制御手段37が基準値2.5Vに対する、切換手段24Aと24Bを切換える前の磁気信号N2から、切換えた後の磁気信号N4を減算するため、これらは図6(d)に示すような、ずれのない正弦波の磁気信号N1へ変換される。
【0054】
つまり、常温から高温といった周囲の温度変化によって、例えば磁気抵抗22Aだけの抵抗値が大きくなってしまった場合、差動増幅手段27Aには磁気検出素子21から電圧V1だけずれた磁気信号L2が出力され、これによって差動増幅された磁気信号N2やN4も電圧V2だけずれたものとなるが、制御手段37がこれらを減算することによって、ずれのない正弦波の磁気信号N1が得られるようになっている。
【0055】
すなわち、制御手段37が磁気検出素子21の切換手段24Aと24Bを切換え、差動増幅手段27Aから入力された切換え前の磁気信号N2から、切換え後の磁気信号N4を減算して回転体31の回転角度を検出することで、磁気抵抗22A〜22Dに、温度による抵抗値変化の差があった場合でも、回転角度の検出に誤差がなく、高精度な検出を行うことができるように構成されている。
【0056】
なお、以上の説明では、磁気抵抗22Aの抵抗値が大きくなった場合について説明したが、他の磁気抵抗22Bや22C、22Dの抵抗値が大きくなった場合でも、同様に誤差がなく、高精度な回転角度の検出を行うことができる。
【0057】
つまり、例えば切換手段24Aが電源に、切換手段24Bがグランドに各々切換えられた状態で、例えば磁気抵抗22Cだけの抵抗値が大きくなってしまった場合、磁気検出素子21の+出力端子25Aからは、図7(a)の波形図に示すような、ずれのない磁気信号L1が差動増幅手段27Aに出力される。
【0058】
これに対し、磁気抵抗22Cの抵抗値が大きな場合、−出力端子25Bからは図7(b)に示すような、電圧V1だけずれた磁気信号M3が差動増幅手段27Aに出力されるため、これらによって差動増幅手段27Aが差動増幅を行った場合、図7(c)に示すような、電圧V2だけずれた磁気信号N5が、差動増幅手段27Aから制御手段37に出力される。
【0059】
しかし、この後、制御手段37が上記とは逆に、切換手段24Aをグランドに、切換手段24Bを電源に切換えると、+出力端子25Aからは、図8(a)の波形図に示すような、上記と同様の磁気信号L1が差動増幅手段27Aに出力されるが、−出力端子25Bからは、図8(b)に示すような、上記とは逆で電圧V1だけずれた磁気信号M4が差動増幅手段27Aに出力される。
【0060】
そして、差動増幅手段27Aが磁気信号L1からこの磁気信号M4を差動増幅した場合には、図8(c)に示すような、電圧V2だけずれた磁気信号N6が差動増幅手段27Aから制御手段37に出力され、制御手段37がこの磁気信号N6を、図7(c)に示した磁気信号N5から減算することで、図8(d)に示すような、ずれのない正弦波の磁気信号N1に変換される。
【0061】
すなわち、制御手段37が磁気検出素子21の切換手段24Aと24Bを切換え、切換え前の磁気信号N5から切換え後の磁気信号N6を減算することによって、磁気抵抗22A以外の、例えば磁気抵抗22Cだけの抵抗値が大きくなった場合でも、同様に誤差がなく、高精度な回転角度の検出を行うことができるようになっている。
【0062】
このように本実施の形態によれば、略矩形状に配列された四つの磁気抵抗22A〜22Dの、対向する二つずつの磁気抵抗22Aと22B、磁気抵抗22Cと22Dを接続すると共に、この接続した一方の両端に切換手段24Aと24Bを設けて磁気検出素子21を形成すると共に、これを第一の検出体32や第二の検出体33中央の磁石34や35に対向して配置し、制御手段37が磁気検出素子21の切換手段24Aと24Bを切換え、差動増幅手段27Aを介した磁気抵抗22からの複数の磁気信号を減算して、回転体31の回転角度を検出することによって、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能な磁気検出素子21、及びこれを用いた回転角度検出装置を得ることができるものである。
【0063】
なお、以上の説明では、磁気検出素子21や26と差動増幅手段27Aや27Bを別体に設け、これらを配線基板36の配線パターンを介して接続した構成として説明したが、これらを一つのチップ部品として一体に形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0064】
また、磁気検出素子21や26と差動増幅手段27Aや27B、制御手段37を、配線基板36の配線パターンを介して接続して、回転角度検出装置を形成した構成として説明したが、制御手段37を車両の電子回路側に一体に形成した構成としてもよい。
【0065】
さらに、以上の説明では、回転体31に第一の検出体32を噛合させ、この第一の検出体32に第二の検出体33を噛合させた構成の回転角度検出装置について説明したが、背景技術の項で説明したように、回転体31に第一の検出体32と第二の検出体33の両方を噛合させた構成や、あるいは一方の検出体のみを回転体31に噛合させた構成のものとしても、本発明の実施は可能である。
【0066】
また、回転体31や第一の検出体32、第二の検出体33の外周に各々平歯車部を形成し、これらが噛合して互いに連動して回転する構成について説明したが、平歯車部以外にも傘歯車等、他の形状の歯車を用いた構成や、あるいは歯車に代えて、回転を伝達できる凹凸部や高摩擦部などを回転体や各検出体の外周に形成し、これによって互いに連動して回転する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明による磁気検出素子及びこれを用いた回転角度検出装置は、温度変化等による誤差がなく、高精度で確実な回転角度の検出が可能なものが得られ、主に自動車のステアリングの回転角度検出等に有用である。
【符号の説明】
【0068】
21、26 磁気検出素子
22A、22B、22C、22D 磁気抵抗
23A 電源端子
23B グランド端子
24A、24B 切換手段
25A +出力端子
25B −出力端子
27A、27B 差動増幅手段
31 回転体
31A、32A、33A 平歯車部
31B 係合部
32 第一の検出体
33 第二の検出体
34、35 磁石
36 配線基板
37 制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形状に配列された四つの磁気抵抗の、対向する二つずつの磁気抵抗を接続すると共に、この接続した一方の両端に切換手段を設けた磁気検出素子。
【請求項2】
ステアリングに連動して回転する回転体と、この回転体に連動して回転する検出体と、この検出体の中央に装着された磁石と、この磁石に対向して配置された請求項1記載の磁気検出素子と、この磁気検出素子に接続された制御手段からなり、上記制御手段が上記磁気検出素子の切換手段を切換え、磁気抵抗からの複数の磁気信号を減算して、上記回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置。
【請求項1】
略矩形状に配列された四つの磁気抵抗の、対向する二つずつの磁気抵抗を接続すると共に、この接続した一方の両端に切換手段を設けた磁気検出素子。
【請求項2】
ステアリングに連動して回転する回転体と、この回転体に連動して回転する検出体と、この検出体の中央に装着された磁石と、この磁石に対向して配置された請求項1記載の磁気検出素子と、この磁気検出素子に接続された制御手段からなり、上記制御手段が上記磁気検出素子の切換手段を切換え、磁気抵抗からの複数の磁気信号を減算して、上記回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−78207(P2012−78207A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223749(P2010−223749)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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