磁気検出装置、地磁気センサ
【課題】小型の磁電変換素子に対する磁束の収束効率を向上させることができる磁気検出装置、及びこれを用いた地磁気センサを提供する。
【解決手段】平板状の基板と、前記基板の一方面からその厚み方向に形成された凹部と、前記凹部内表面に形成された第1の磁性膜と、前記基板の一方面に対向する対向面に形成された第2の磁性膜と、前記第1及び第2の磁性膜の間に形成された磁電変換素子とを有する磁気検出装置であって、前記凹部は、その周壁が前記基板の一方面に対し垂直に形成され、前記凹部の底面部は、前記対向面と対向する平坦部と、前記平坦部から前記周壁部に向かうに従って大径となる傾斜部分とを有し、前記磁電変換素子の感度領域は、前記底面部と前記第2の磁性膜との間に形成した。
【解決手段】平板状の基板と、前記基板の一方面からその厚み方向に形成された凹部と、前記凹部内表面に形成された第1の磁性膜と、前記基板の一方面に対向する対向面に形成された第2の磁性膜と、前記第1及び第2の磁性膜の間に形成された磁電変換素子とを有する磁気検出装置であって、前記凹部は、その周壁が前記基板の一方面に対し垂直に形成され、前記凹部の底面部は、前記対向面と対向する平坦部と、前記平坦部から前記周壁部に向かうに従って大径となる傾斜部分とを有し、前記磁電変換素子の感度領域は、前記底面部と前記第2の磁性膜との間に形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を検出する磁気検出装置、及びこれを用いた地磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)を利用して位置情報を取得可能とした携帯型のGPS端末装置の需要が増大している。それに伴い、GPS端末装置の向き(方位)を検出するための電子コンパスの需要も増大しつつある。電子コンパスは、GPS端末装置の姿勢に関わりなく地磁気を検出するために、直交3軸方向の磁気検出が可能な小型の磁気検出装置を必要とする。
【0003】
この種の磁気検出装置として、例えば特許文献1に開示されるように、ホール素子と、ホール素子へ磁束を集束させる磁束集束素子とを備えたものが知られている。図17は、特許文献1に記載される従来の磁気検出装置を示す図であり、図17(a)は、この磁気検出装置の縦断面図、図17(b)は裏面側から見た同装置の斜視図、そして図18は同装置の動作説明図である。この磁気検出装置150では、シリコンを母材とする半導体基板111の第1主面113の上に、磁電変換素子であるホール素子115が形成されており、第2主面117の側のホール素子115に対向する部位に、ホール素子115の近傍にまで達する縦断面台形のエッチング溝119が形成されている。このエッチング溝119は、ホール素子115に対向する矩形の底面120と、底面120を囲む4つの台形の傾斜面とを有している。すなわち、エッチング溝119は、第2主面117から底面120に近づくほど小径となるように、テーパ状に形成されている。また、エッチング溝119には、外部磁界をホール素子115に集束させるために、パーマロイやフェライトなどの高透磁率材料からなる磁性体部121が埋め込まれている。更に、半導体基板111の第1主面113の上には絶縁膜125が積層して形成されており、この絶縁膜125を介してホール素子115に対向する位置に磁性体膜127が積層して形成されている。
【0004】
以上のように構成される磁気検出装置150では、ホール素子115が出力するホール電圧は、半導体基板111の第1主面113及び第2主面117の法線方向Z、即ちホール素子115の感度軸方向に外部磁界Hが向くときに、ホール素子115が最大感度を示す。一般に、ホール素子115が出力するホール電圧は、外部磁界Hの上記法線方向Zの成分に比例する。従って、外部磁界Hが地磁気のように一定の方向及び強さを持った磁界である場合には、外部磁界Hと法線方向Zとが交差する角度θが変化するのに伴い、ホール電圧はH・cosθに比例して変化する。従って、ホール電圧を計測することにより、外部磁界Hの方向θを検出することができる。
【0005】
但し、地磁気による磁界の強さは、東京において約0.3ガウス(=3×10-5テスラ)であり、ホール素子115の検出感度に対して比較的小さい。従って、検出精度を高めるためには、ホール素子115を通過する磁束密度を高める必要がある。図17に示す磁気検出装置150では、ホール素子115の感度軸方向に対向する磁性体部121及び磁性体膜127を設けることにより、磁束密度を外部磁界Hによる磁束密度よりも高め、それによってホール素子115の磁気検出素子としての感度を向上させている。また、磁気検出装置150は、単結晶シリコン基板の面方位を利用して異方性エッチングを実行することにより、エッチング溝119を容易に形成できるという利点をも有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−261131号公報(段落[0024]〜段落[0032]及び図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の磁気検出装置150では、ホール素子115の感度領域の面積がエッチング溝119の底面120と同等の面積の場合は磁束の収束効果による感度向上が有効に作用するが、例えば図18(b)に示すようにホール素子115を、磁気ダイオードのように感度領域が小さな面積のものに代えた場合、底面部120の面積を変化せずに同一の面積とすると、磁束を収束させたい磁気ダイオードの感度領域以外の領域に磁束が漏れる為、有効に磁束を収束させることができないという問題があった。
【0008】
また、このような磁束の漏れを減少させるためには、底面部120の面積を磁電変換素子の感度領域と同等の大きさまで縮小することが考えられる。しかし、基板の第2主面117側から単結晶シリコン基板の面方位を利用して異方性エッチングによって斜め研削する方法によれば、底面部120の面積は、エッチング溝119の開口部の大きさにされたエッチング用マスクの開口窓の大きさと基板111の厚みとにより決まる一方、基板厚みはばらつきが大きいため、基板厚みの公差や加工精度等によって底面120面積が大きく変動し、底面部120の面積を精度良く形成することが困難である。そのため、磁電変換素子の感度領域に収束される磁束にバラツキが生じ、その結果として磁気検出装置150の磁気検出感度にバラツキが生じるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みて為された発明であり、小型の磁電変換素子に対する磁束の収束効率を向上させることができる磁気検出装置、及びこれを用いた地磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る磁気検出装置は、平板状の基板と、前記基板の一方面からその厚み方向に形成された凹部と、前記凹部内表面に形成された第1の磁性膜と、前記基板の一方面に対向する対向面に形成された第2の磁性膜と、前記第1及び第2の磁性膜の間に形成された磁電変換素子とを有する磁気検出装置であって、前記凹部は、その周壁が前記基板の一方面に対し垂直に形成され、前記凹部の底面部は、前記対向面と対向する平坦部と、前記平坦部から前記周壁部に向かうに従って大径となる傾斜部分とを有し、前記磁電変換素子の感度領域は、前記底面部と前記第2の磁性膜との間に形成されている。
【0011】
また、前記凹部の底面部は、前記磁電変換素子に向かって凸状のドーム形状にされており、前記磁電変換素子の感度領域は、前記凹部の底面部と前記第2の磁性膜とが最も近接する位置に形成されている。
【0012】
また、前記第2の磁性膜は、前記磁電変換素子の感度領域に向かって凸状の部分を有する。
【0013】
また、本発明に係る地磁気センサは、上述の磁気検出装置を用いる。
【発明の効果】
【0014】
このような構成の磁気検出装置及び地磁気センサは、磁電変換素子の感度領域に磁束を集中させることができ、小型の磁電変換素子に対する磁束の収束効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図2】磁電変換素子の構成を説明するための説明図である。
【図3】図1に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図4】図1に示す磁気検出装置の変形例を示す図である。
【図5】図1に示す磁気検出装置の変形例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図7】図6に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図9】図8に示す磁気検出装置の製造方法を説明するための説明図である。
【図10】図8に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図12】図11に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図14】図13に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図16】図15に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図17】背景技術に係る磁気検出装置を示す説明図である。
【図18】図17に示す磁気検出装置の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0017】
また、本発明は磁電変換素子に磁気を収束させる構造に特徴を有するものであるから、磁電変換素子として半導体基板に形成可能な素子、例えば、以下の実施形態で説明する半導体ダイオード磁気センサの他、磁気トランジスタ、MR(MagnetoResistive)素子、ホール素子、磁気インピーダンス素子、あるいはフラックスゲート素子などが利用可能である。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気検出装置1の構成の一例を示す図である。図1(a)は、磁気検出装置1の正面図、図1(b)は図1(a)のX−X’断面図、図1(c)は図1(a)のY−Y’断面図である。図1に示す磁気検出装置1は、シリコン支持基板2上に埋込酸化膜3、p型のSOI(Semiconductor On Insulator)層4、及び絶縁層9を積層したSOI基板5を有し、SOI層4に磁電変換素子6が形成されている。また、磁電変換素子6の両端部には、配線11が接続されている。
【0019】
図2は、磁電変換素子6の構成を説明するための説明図である。磁電変換素子6は、p+型のアノード領域61、n+型のカソード領域62及びp型の高抵抗領域63を有し、高抵抗領域63の一方面には再結合層64が、再結合層64以外の面には非再結合領域65が形成されており、SOI層4の法線方向(以下Z軸方向と呼ぶ)に対して磁気感度軸を有するように構成されている。図2に示す磁電変換素子6は、例えばSOI基板5の単結晶シリコン薄膜層に形成されたp−π−nダイオードの順方向二重注入を利用するものであって、二重注入キャリアである電子と正孔が磁界によるローレンツ力により曲げられ、再結合層64側に曲げられると電流が減少し、非再結合領域65に曲げられると電流が増加するという性質を利用して、印加磁界の向きと大きさによる電流変化を検出するものである。(例えば、特開2002−134758号公報参照)。
【0020】
図1に戻って、SOI基板5における支持基板2側には、酸化膜の開口部などをマスクとしてシリコンの反応性エッチング、例えばRIE(Reactive Ion Etching、反応性イオンエッチング)によって支持基板2を垂直に研削することで、その周壁部が支持基板2の表面と略垂直に形成されると共に、平坦な底部が磁電変換素子6に対向して形成されている。また、支持基板2の表面と凹部7の底部及び周壁部の表面とを覆うようにして第1の磁性膜に相当する磁性体部8が形成されている。そして、絶縁層9の表面には、少なくとも平面視において凹部7の底部を覆う大きさであって、磁気検出装置1のチップ面積並びに磁束集束効果から適切に設計された大きさの、概ね正方形の第2の磁性膜に相当する磁性体部10が、少なくとも磁電変換素子6の形成領域とZ軸方向において重なるように形成されている。
【0021】
磁性体部8及び10としては、例えばパーマロイやフェライトなどの高透磁率材料が用いられる。凹部7の底部は埋込酸化膜3まで達しており、図1(a)に示すように磁電変換素子6はその感度領域である高抵抗領域63が平面視において凹部7の周壁部に重なるように形成され、従って、磁電変換素子6の感度領域は凹部7の周壁部の延長線と交わる位置に形成されている。
【0022】
次に、上述のように構成された磁気検出装置1を、例えば地磁気などによる一定の磁界中に置いた時の磁束の変化について説明する。図3は、図1に示す磁気検出装置1による磁束の収束動作を説明するための断面図である。Z軸方向の磁束は、シリコン支持基板2側の凹部7の周壁に形成された磁性体部8で集められ、磁性体部8を通って埋込酸化膜3の方向に向かい、埋込酸化膜3、SOI層4、及び高抵抗領域63を通過して磁性体部10に到達する。この時、SOI層4を通過する磁束は凹部7の底面部において均等ではなく、図3に破線で示すように凹部7の周壁部の延長線上に多くの磁束が通過する。
【0023】
この場合、図1に示す磁気検出装置1は、支持基板2を垂直に研削することによって凹部7を形成するため凹部7における周壁部の形成位置の精度が向上するので、小型の磁電変換素子6の感度領域を凹部7の周壁部の延長線と交わる位置に形成することが容易である。そして、磁電変換素子6の感度領域が、凹部7の周壁部の延長線と交わる位置に形成されていることによって、最も磁束の集中する領域の磁束を検出することができるので、小型の磁電変換素子に対する磁束の収束効率を向上させることができ、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0024】
また、図1に示す磁気検出装置1は、支持基板2に略垂直に凹部7を形成するので、図17に示す背景技術に係る磁気検出装置150と比較して、図1(b)に一点鎖線で示すテーパ状の広がりがなく、磁気検出装置1を小型化することができる。そして、凹部7を小型化できることから磁気検出装置1の機械的強度を向上することができる。
【0025】
なお、図4に示す磁気検出装置1aのように、磁電変換素子6aとして、感度領域である高抵抗領域63が平面視において長方形のものを用いて、その長手方向を凹部7の周壁部に形成された磁性体部8の辺に沿うように配列してもよい。磁束は凹部7の周壁部における磁性体部8内では略均一に分布するため、周壁部の磁性体部8に沿って長方形の感度領域を形成することで、磁電変換素子6aを通る磁束を増大させて有効に磁束を検出することができ、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0026】
また、図5に示す磁気検出装置1bのように、感度領域である高抵抗領域63が長方形にされた磁電変換素子6aを複数、例えば4個用いて、各磁電変換素子6aの長手方向を凹部7の4辺の周壁部に形成された磁性体部8の辺にそれぞれ沿うように配列してもよい。なお、磁電変換素子6aの数は4個に限定されない。また、複数の磁電変換素子6における感度領域が、それぞれ凹部7の周壁部の延長線と交わる位置に形成されていればよく、高抵抗領域63が長方形でなくてもよい。
【0027】
これにより、例えば図17に示す背景技術に係る磁気検出装置150では、複数のホール素子115を用いるためには複数のエッチング溝119を形成する必要があるが、図5に示す磁気検出装置1bでは、凹部7を一つ形成することによって、その周壁部の延長線と交わる位置に複数の磁電変換素子6,6aを形成することができるので、支持基板2上での磁気検出装置1bの専有面積を縮小することができ、例えばホイートストンブリッジのように複数の磁電変換素子6,6aを用いる回路を小型化することが容易である。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る磁気検出装置1cについて説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係る磁気検出装置1cの構成の一例を示す図である。図6(a)は、磁気検出装置1cの正面図、図6(b)は図6(a)のX−X’断面図、図6(c)は図6(a)のY−Y’断面図である。図6に示す磁気検出装置1cと図1に示す磁気検出装置1とでは、下記の点で異なる。
【0029】
すなわち、図6に示す磁気検出装置1cは、凹部7aの周壁部が埋込酸化膜3内に食い込む形で延設されていて、かつ磁性体部8aがその領域まで敷設され、その結果、図6(b)に示すように、磁電変換素子6aの感度領域が形成されている領域で磁性体部8と磁性体部10の間隙が最も小さくなるように構成されている。
【0030】
これにより、図7に示すように、磁電変換素子6aの感度領域により効率的に磁束を収束させることができ、磁気検出装置1cによる磁気検出の感度を向上させることができる。
【0031】
また、磁気検出装置1cは、図1に示す磁気検出装置1における凹部7を形成した後に、例えば支持基板2を斜めに傾けた状態でイオンミリング法などによって酸化膜エッチングを行うことにより、凹部7aの周壁部を埋込酸化膜3に食い込む形で延設するように形成することが容易であり、さらに例えばスパッタによって磁性体部8aを形成することにより、容易に磁気検出装置1cを形成することができる。
【0032】
その他の構成は図1に示す磁気検出装置1と同様であるのでその説明を省略する。
【0033】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る磁気検出装置1dについて説明する。図8は、本発明の第3の実施形態に係る磁気検出装置1dの構成の一例を示す図である。図8(a)は、磁気検出装置1dの正面図、図8(b)は図8(a)のX−X’断面図、図8(c)は図8(a)のY−Y’断面図である。図8に示す磁気検出装置1dと図1に示す磁気検出装置1とでは、下記の点で異なる。すなわち、図8に示す磁気検出装置1dでは、凹部7bの周壁部に形成された磁性体部8bと、凹部7bの底面部に形成された磁性体部8bとが分離されている。また、凹部7bの周壁部は、埋込酸化膜3の近傍において埋込酸化膜3に向かう方向に径が拡大するように形成されることにより、凹部7bの周壁部と底面部との接合部は、凹部7bの径の方向に切り欠き部12(いわゆるノッチ)が形成されている。
【0034】
その他の構成は図1に示す磁気検出装置1と同様であるのでその説明を省略し、図8に示す磁気検出装置1dにおける凹部7b及び磁性体部8bの製造方法について説明する。図9は、磁気検出装置1dの製造方法を説明するための説明図である。
【0035】
まず、図9(a)に示す第1工程において、SOI基板5の支持基板2側から、例えば酸化膜の開口部などをマスクとして選択的に例えばRIEによって支持基板2を垂直に、埋込酸化膜3に達するまで研削する。これによって、凹部7bの周壁部が、支持基板2の厚み方向に略垂直に形成されると共に、凹部7bの平坦な底面部が形成される。
【0036】
次に、図9(b)に示す第2工程において、例えばRIEやICP(Inductively Coupled Plasma)エッチングによる垂直研削を、凹部7bの平坦な底面部が埋込酸化膜3に達した後、予め定められた所定の期間継続する。そうすると、埋込酸化膜3は研削されずに凹部7bの周壁部が、埋込酸化膜3の近傍において埋込酸化膜3に向かう方向に径が拡大するように研削され、凹部7bの周壁部と底面部との接合部に凹部7bの径の方向に切り欠き部12が形成される。
【0037】
次に、図9(c)に示す第3工程において、例えばスパッタによって凹部7bの表面に磁性体膜を形成する。そうすると、凹部7bの周壁部に形成された磁性体膜と、凹部7bの底面部に形成された磁性体膜とが切り欠き部12によって自己整合的に分離される。
【0038】
これにより、凹部7bの周壁部に形成された磁性体部8bと、凹部7bの底面部に形成された磁性体部8bとが分離された磁気検出装置1dを容易に製造することができる。
【0039】
そして、凹部7bの周壁部に形成された磁性体部8bと、凹部7bの底面部に形成された磁性体部8bとが分離された磁気検出装置1dによれば、図10に示すように、凹部7bの底面部に形成された磁性体部8bを通過する磁束が減少し、凹部7bの周壁部に形成された磁性体部8bから直接磁性体部10方向に通過する磁束が増大する結果、磁電変換素子6aの感度領域に収束する磁束が増大し、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0040】
なお、図1、図4、図5、図6に示す磁気検出装置1,1a,1b,1cにおいて、凹部7の周壁部に形成された磁性体膜と凹部7の底面部に形成された磁性体膜とが分離された構成としても良く、磁性体部8を凹部7の周壁部のみに備える構成としても良い。この場合、図8に示す磁気検出装置1dと同様の効果が得られる。
【0041】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る磁気検出装置1eについて説明する。図11は、本発明の第4の実施形態に係る磁気検出装置1eの構成の一例を示す図である。図11(a)は、磁気検出装置1dの正面図、図11(b)は図11(a)のX−X’断面図、図11(c)は図11(a)のY−Y’断面図である。図11に示す磁気検出装置1eと図8に示す磁気検出装置1dとでは、下記の点で異なる。すなわち、図11に示す磁気検出装置1eでは、磁電変換素子6aの感度領域である高抵抗領域63と相対する位置において絶縁層9が、磁電変換素子6aとの間に絶縁層を残して例えばエッチングにより研削され、底部の面積が磁電変換素子6aにおける高抵抗領域63の平面視での形状、面積と略同等にされた凹状の部分が形成されている。
【0042】
そして、絶縁層9に形成された凹状の部分を磁性体で充填して磁性体部10が形成されることにより、磁性体部10には、磁電変換素子6aにおける高抵抗領域63に向かって凸状にされた凸部13が形成されている。
【0043】
これにより、図12に示すように、磁性体部10における凸部13が磁電変換素子6aにおける感度領域に近接するので、磁電変換素子6aの感度領域を通過する磁束を増大させることができ、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0044】
その他の構成は図8に示す磁気検出装置1dと同様であるのでその説明を省略する。
【0045】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る磁気検出装置1fについて説明する。図13は、本発明の第5の実施形態に係る磁気検出装置1fの構成の一例を示す図である。図13(a)は、磁気検出装置1fの正面図、図13(b)は図13(a)のX−X’断面図、図13(c)は図13(a)のY−Y’断面図である。図13に示す磁気検出装置1fと図1に示す磁気検出装置1とでは、下記の点で異なる。
【0046】
すなわち、磁気検出装置1fにおける凹部7cは、その開口部から支持基板2の表面に対し略垂直に形成された周壁部分71と、磁性体部10と略平行に対向する平坦部72及び平坦部72から周壁部分71に向かうに従って大径となる傾斜部分73からなる底面部とを有する。平坦部72は、埋込酸化膜3によって略平坦に形成されている。そして、このように構成された凹部7cの表面に、磁性体部8cが形成されている。
【0047】
そして、埋込酸化膜3を夾んで平坦部72と相対する位置に磁電変換素子6の感度領域である高抵抗領域63が位置するように、磁電変換素子6が一つ、SOI層4に形成されている。平坦部72の形状及び面積は、磁電変換素子6の高抵抗領域63の平面視における形状及び面積と略同等にされていることが望ましい。
【0048】
これにより、図14に示すように、周壁部分71及び傾斜部分73の表面に形成された磁性体部8cによって、磁電変換素子6aにおける高抵抗領域63に近接する平坦部72に磁束が収束され、磁電変換素子6aの感度領域を通過する磁束を増大させることができるので、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0049】
また、図13に示す凹部7cは、高抵抗領域63の平面視における形状と略同等の開口窓を有するマスクを用いてシリコン支持基板2の表面から例えばドライエッチングによる垂直研削で凹部及び平坦部72を形成した後、エッチング溶液としてKOH(水酸化カリウム)、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)等を用いた異方性エッチング等によって、凹部の径を広げることにより、凹部7cを形成することが容易である。
【0050】
この場合、平坦部72は垂直エッチングによって形成されるため、支持基板2の厚み公差による平坦部72の形状、面積のバラツキを低減することができる。これにより、平坦部72の形状、面積を磁電変換素子6の高抵抗領域63の平面視における形状及び面積と略同等にすることが容易となるので、小型の磁電変換素子に対する磁束の収束効率を向上させることができ、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0051】
また、図13に示す磁気検出装置1fは、支持基板2に略垂直な周壁部分71を有するので、図17に示す背景技術に係る磁気検出装置150と比較して、図13(b)に一点鎖線で示すテーパ状の広がりがなく、磁気検出装置1fを小型化することができる。そして、凹部7cを小型化できることから磁気検出装置1の機械的強度を向上することができる。
【0052】
その他の構成は図1に示す磁気検出装置1と同様であるのでその説明を省略する。
【0053】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る磁気検出装置1gについて説明する。図15は、本発明の第6の実施形態に係る磁気検出装置1gの構成の一例を示す図である。図15(a)は、磁気検出装置1gの正面図、図15(b)は図15(a)のX−X’断面図、図15(c)は図15(a)のY−Y’断面図である。図15に示す磁気検出装置1fと図13に示す磁気検出装置1gとでは、下記の点で異なる。
【0054】
すなわち、磁気検出装置1gにおける凹部7dは、その開口部から支持基板2に対し略垂直に形成された周壁部分71と、磁電変換素子6に向かって凸状のドーム形状にされた底部74とを有する。そして、このように構成された凹部7dの表面に、磁性体部8dが形成されている。また、磁電変換素子6の高抵抗領域63は、底部74と磁性体部10とが最も近接する凹部7dにおけるドームの頂点位置において、底部74と磁性体部10との間に形成されている。
【0055】
これにより、図16に示すように、周壁部分71及び底部74の表面に形成された磁性体部8dによって、底部74における磁電変換素子6の高抵抗領域63に最も近接するドームの頂点部分に磁束が収束され、磁電変換素子6の感度領域を通過する磁束を増大させることができるので、磁気検出の感度を向上させることができる。また、図15に示す磁気検出装置1gにおける凹部7dは、図13に示す磁気検出装置1fにおける凹部7cの周壁部分71と傾斜部分73との継ぎ目、及び傾斜部分73と平坦部72との継ぎ目のような角部を有さないため、角部から漏れる磁束を減少させ、磁電変換素子6の感度領域を通過する磁束を増大させることができるので、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0056】
また、図15に示す凹部7dは、例えば支持基板2からICPエッチングによる垂直研削を行い、その研削の先端部が埋込酸化膜3に達したときに垂直研削を停止することによって、周壁部分71とドーム状の底部74とを有する凹部7dを容易に形成することができる。
【0057】
また、図15に示す磁気検出装置1gは、支持基板2に略垂直な周壁部分71を有するので、図17に示す背景技術に係る磁気検出装置150と比較して、図15(b)に一点鎖線で示すテーパ状の広がりがなく、磁気検出装置1gを小型化することができる。そして、凹部7dを小型化できることから磁気検出装置1gの機械的強度を向上することができる。
【0058】
なお、図1、図4〜図6、図8、図13、図15に示す磁気検出装置1,1a,1b,1c,1d,1f,1gのいずれにおいても図11に示す磁気検出装置1eと同様に、磁電変換素子の感度領域と相対する位置において、当該高抵抗領域に向かって凸状にされた凸部13を備える構成とすることができる。
【0059】
また、図1、図4〜図6、図8、図11、図13、図15に示す磁気検出装置1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1gは、いずれも例えば電子コンパスやGPSなどに使用され、地磁気を検出する地磁気センサ(方位センサ)として用いることができる。
【0060】
この場合、地磁気センサを小型化することができる。また、磁気検出装置1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1gは、シリコンウェハ上に構成することができるので、磁気検出装置によって検出された磁気から方位を取得するための制御回路や、アンプ等の回路などと同一のシリコン基板上に形成することができ、小型化が容易であると共に、センサ部と制御回路とが同一シリコン基板上に構成されることにより温度補正が容易となる。また、磁気検出装置1等の信号検出用のアンプを同一シリコン基板上に構成することにより、信号配線の配線長を短縮でき、外部からのノイズ耐性を向上させることができる。さらに、加速度センサなどの他のセンサを同一シリコン基板上に集積した複合センサを構成することも可能となる。
【0061】
上述の目的を達成するために、本発明の第1の手段に係る磁気検出装置は、平板状の基板と、前記基板の一方面からその厚み方向に形成された凹部と、前記凹部内表面に形成された第1の磁性膜と、前記基板の一方面に対向する対向面に形成された第2の磁性膜と、前記第1及び第2の磁性膜の間に形成された磁電変換素子とを有する磁気検出装置であって、前記凹部は、その周壁が前記基板の一方面に対し略垂直に形成され、前記磁電変換素子の感度領域は、前記周壁の延長線と交わる位置に形成されていることを特徴としている。
【0062】
また、上述の磁気検出装置は、前記第1の磁性膜は、前記凹部の周壁部に設けられた部分と底面部に設けられた部分とが分離していることを特徴としている。
【0063】
そして、上述の磁気検出装置は、前記第1の磁性膜は、前記凹部の周壁部のみに設けられていることを特徴としている。
【0064】
さらに、上述の磁気検出装置は、前記凹部の前記周壁部は底面部よりも前記基板内に延設されていることを特徴としている。
【0065】
また、上述の磁気検出装置は、前記凹部の底面部は、前記対向面と略平行に対向する平坦部と、前記平坦部から前記周壁部に向かうに従って大径となる傾斜部分とを有し、前記磁電変換素子の感度領域は、前記周壁の延長線と交わる位置に形成される代わりに前記底面部と前記第2の磁性膜との間に形成されていることを特徴としている。
【0066】
そして、上述の磁気検出装置は、前記凹部の底面部は、前記磁電変換素子に向かって凸状のドーム形状にされており、前記磁電変換素子の感度領域は、前記凹部の底面部と前記第2の磁性膜とが最も近接する位置に形成されていることを特徴としている。
【0067】
さらに、上述の磁気検出装置は、前記第2の磁性膜は、前記磁電変換素子の感度領域に向かって凸状の部分を有することを特長としている。
【0068】
また、本発明の第2の手段に係る地磁気センサは、上述の磁気検出装置を用いることを特徴としている。
【0069】
そして、本発明の第3の手段に係る磁気検出装置の製造方法は、シリコン・オン・インシュレータ基板の一方面から垂直研削して凹部を形成する工程と、前記凹部を形成する工程において、研削した凹部の底面が前記シリコン・オン・インシュレータ基板の埋込酸化膜に到達した後も予め定められた所定の期間研削を継続することで、前記凹部の底面部を開口部より広くする工程と、前記凹部の表面に磁性膜を形成する工程と、を有することを特徴としている。
【符号の説明】
【0070】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g 磁気検出装置
2 支持基板
3 埋込酸化膜
4 SOI層
5 SOI基板
6,6a 磁電変換素子
7,7a,7b,7c,7d 凹部
8,8a,8b,8c,8d 磁性体部
9 絶縁層
10 磁性体部
11 配線
12 切り欠き部
13 凸部
63 高抵抗領域
71 周壁部分
72 平坦部
73 傾斜部分
74 底部
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を検出する磁気検出装置、及びこれを用いた地磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)を利用して位置情報を取得可能とした携帯型のGPS端末装置の需要が増大している。それに伴い、GPS端末装置の向き(方位)を検出するための電子コンパスの需要も増大しつつある。電子コンパスは、GPS端末装置の姿勢に関わりなく地磁気を検出するために、直交3軸方向の磁気検出が可能な小型の磁気検出装置を必要とする。
【0003】
この種の磁気検出装置として、例えば特許文献1に開示されるように、ホール素子と、ホール素子へ磁束を集束させる磁束集束素子とを備えたものが知られている。図17は、特許文献1に記載される従来の磁気検出装置を示す図であり、図17(a)は、この磁気検出装置の縦断面図、図17(b)は裏面側から見た同装置の斜視図、そして図18は同装置の動作説明図である。この磁気検出装置150では、シリコンを母材とする半導体基板111の第1主面113の上に、磁電変換素子であるホール素子115が形成されており、第2主面117の側のホール素子115に対向する部位に、ホール素子115の近傍にまで達する縦断面台形のエッチング溝119が形成されている。このエッチング溝119は、ホール素子115に対向する矩形の底面120と、底面120を囲む4つの台形の傾斜面とを有している。すなわち、エッチング溝119は、第2主面117から底面120に近づくほど小径となるように、テーパ状に形成されている。また、エッチング溝119には、外部磁界をホール素子115に集束させるために、パーマロイやフェライトなどの高透磁率材料からなる磁性体部121が埋め込まれている。更に、半導体基板111の第1主面113の上には絶縁膜125が積層して形成されており、この絶縁膜125を介してホール素子115に対向する位置に磁性体膜127が積層して形成されている。
【0004】
以上のように構成される磁気検出装置150では、ホール素子115が出力するホール電圧は、半導体基板111の第1主面113及び第2主面117の法線方向Z、即ちホール素子115の感度軸方向に外部磁界Hが向くときに、ホール素子115が最大感度を示す。一般に、ホール素子115が出力するホール電圧は、外部磁界Hの上記法線方向Zの成分に比例する。従って、外部磁界Hが地磁気のように一定の方向及び強さを持った磁界である場合には、外部磁界Hと法線方向Zとが交差する角度θが変化するのに伴い、ホール電圧はH・cosθに比例して変化する。従って、ホール電圧を計測することにより、外部磁界Hの方向θを検出することができる。
【0005】
但し、地磁気による磁界の強さは、東京において約0.3ガウス(=3×10-5テスラ)であり、ホール素子115の検出感度に対して比較的小さい。従って、検出精度を高めるためには、ホール素子115を通過する磁束密度を高める必要がある。図17に示す磁気検出装置150では、ホール素子115の感度軸方向に対向する磁性体部121及び磁性体膜127を設けることにより、磁束密度を外部磁界Hによる磁束密度よりも高め、それによってホール素子115の磁気検出素子としての感度を向上させている。また、磁気検出装置150は、単結晶シリコン基板の面方位を利用して異方性エッチングを実行することにより、エッチング溝119を容易に形成できるという利点をも有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−261131号公報(段落[0024]〜段落[0032]及び図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の磁気検出装置150では、ホール素子115の感度領域の面積がエッチング溝119の底面120と同等の面積の場合は磁束の収束効果による感度向上が有効に作用するが、例えば図18(b)に示すようにホール素子115を、磁気ダイオードのように感度領域が小さな面積のものに代えた場合、底面部120の面積を変化せずに同一の面積とすると、磁束を収束させたい磁気ダイオードの感度領域以外の領域に磁束が漏れる為、有効に磁束を収束させることができないという問題があった。
【0008】
また、このような磁束の漏れを減少させるためには、底面部120の面積を磁電変換素子の感度領域と同等の大きさまで縮小することが考えられる。しかし、基板の第2主面117側から単結晶シリコン基板の面方位を利用して異方性エッチングによって斜め研削する方法によれば、底面部120の面積は、エッチング溝119の開口部の大きさにされたエッチング用マスクの開口窓の大きさと基板111の厚みとにより決まる一方、基板厚みはばらつきが大きいため、基板厚みの公差や加工精度等によって底面120面積が大きく変動し、底面部120の面積を精度良く形成することが困難である。そのため、磁電変換素子の感度領域に収束される磁束にバラツキが生じ、その結果として磁気検出装置150の磁気検出感度にバラツキが生じるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みて為された発明であり、小型の磁電変換素子に対する磁束の収束効率を向上させることができる磁気検出装置、及びこれを用いた地磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る磁気検出装置は、平板状の基板と、前記基板の一方面からその厚み方向に形成された凹部と、前記凹部内表面に形成された第1の磁性膜と、前記基板の一方面に対向する対向面に形成された第2の磁性膜と、前記第1及び第2の磁性膜の間に形成された磁電変換素子とを有する磁気検出装置であって、前記凹部は、その周壁が前記基板の一方面に対し垂直に形成され、前記凹部の底面部は、前記対向面と対向する平坦部と、前記平坦部から前記周壁部に向かうに従って大径となる傾斜部分とを有し、前記磁電変換素子の感度領域は、前記底面部と前記第2の磁性膜との間に形成されている。
【0011】
また、前記凹部の底面部は、前記磁電変換素子に向かって凸状のドーム形状にされており、前記磁電変換素子の感度領域は、前記凹部の底面部と前記第2の磁性膜とが最も近接する位置に形成されている。
【0012】
また、前記第2の磁性膜は、前記磁電変換素子の感度領域に向かって凸状の部分を有する。
【0013】
また、本発明に係る地磁気センサは、上述の磁気検出装置を用いる。
【発明の効果】
【0014】
このような構成の磁気検出装置及び地磁気センサは、磁電変換素子の感度領域に磁束を集中させることができ、小型の磁電変換素子に対する磁束の収束効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図2】磁電変換素子の構成を説明するための説明図である。
【図3】図1に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図4】図1に示す磁気検出装置の変形例を示す図である。
【図5】図1に示す磁気検出装置の変形例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図7】図6に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図9】図8に示す磁気検出装置の製造方法を説明するための説明図である。
【図10】図8に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図12】図11に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図14】図13に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る磁気検出装置の構成の一例を示す図である。
【図16】図15に示す磁気検出装置による磁束の収束動作を説明するための説明図である。
【図17】背景技術に係る磁気検出装置を示す説明図である。
【図18】図17に示す磁気検出装置の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0017】
また、本発明は磁電変換素子に磁気を収束させる構造に特徴を有するものであるから、磁電変換素子として半導体基板に形成可能な素子、例えば、以下の実施形態で説明する半導体ダイオード磁気センサの他、磁気トランジスタ、MR(MagnetoResistive)素子、ホール素子、磁気インピーダンス素子、あるいはフラックスゲート素子などが利用可能である。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気検出装置1の構成の一例を示す図である。図1(a)は、磁気検出装置1の正面図、図1(b)は図1(a)のX−X’断面図、図1(c)は図1(a)のY−Y’断面図である。図1に示す磁気検出装置1は、シリコン支持基板2上に埋込酸化膜3、p型のSOI(Semiconductor On Insulator)層4、及び絶縁層9を積層したSOI基板5を有し、SOI層4に磁電変換素子6が形成されている。また、磁電変換素子6の両端部には、配線11が接続されている。
【0019】
図2は、磁電変換素子6の構成を説明するための説明図である。磁電変換素子6は、p+型のアノード領域61、n+型のカソード領域62及びp型の高抵抗領域63を有し、高抵抗領域63の一方面には再結合層64が、再結合層64以外の面には非再結合領域65が形成されており、SOI層4の法線方向(以下Z軸方向と呼ぶ)に対して磁気感度軸を有するように構成されている。図2に示す磁電変換素子6は、例えばSOI基板5の単結晶シリコン薄膜層に形成されたp−π−nダイオードの順方向二重注入を利用するものであって、二重注入キャリアである電子と正孔が磁界によるローレンツ力により曲げられ、再結合層64側に曲げられると電流が減少し、非再結合領域65に曲げられると電流が増加するという性質を利用して、印加磁界の向きと大きさによる電流変化を検出するものである。(例えば、特開2002−134758号公報参照)。
【0020】
図1に戻って、SOI基板5における支持基板2側には、酸化膜の開口部などをマスクとしてシリコンの反応性エッチング、例えばRIE(Reactive Ion Etching、反応性イオンエッチング)によって支持基板2を垂直に研削することで、その周壁部が支持基板2の表面と略垂直に形成されると共に、平坦な底部が磁電変換素子6に対向して形成されている。また、支持基板2の表面と凹部7の底部及び周壁部の表面とを覆うようにして第1の磁性膜に相当する磁性体部8が形成されている。そして、絶縁層9の表面には、少なくとも平面視において凹部7の底部を覆う大きさであって、磁気検出装置1のチップ面積並びに磁束集束効果から適切に設計された大きさの、概ね正方形の第2の磁性膜に相当する磁性体部10が、少なくとも磁電変換素子6の形成領域とZ軸方向において重なるように形成されている。
【0021】
磁性体部8及び10としては、例えばパーマロイやフェライトなどの高透磁率材料が用いられる。凹部7の底部は埋込酸化膜3まで達しており、図1(a)に示すように磁電変換素子6はその感度領域である高抵抗領域63が平面視において凹部7の周壁部に重なるように形成され、従って、磁電変換素子6の感度領域は凹部7の周壁部の延長線と交わる位置に形成されている。
【0022】
次に、上述のように構成された磁気検出装置1を、例えば地磁気などによる一定の磁界中に置いた時の磁束の変化について説明する。図3は、図1に示す磁気検出装置1による磁束の収束動作を説明するための断面図である。Z軸方向の磁束は、シリコン支持基板2側の凹部7の周壁に形成された磁性体部8で集められ、磁性体部8を通って埋込酸化膜3の方向に向かい、埋込酸化膜3、SOI層4、及び高抵抗領域63を通過して磁性体部10に到達する。この時、SOI層4を通過する磁束は凹部7の底面部において均等ではなく、図3に破線で示すように凹部7の周壁部の延長線上に多くの磁束が通過する。
【0023】
この場合、図1に示す磁気検出装置1は、支持基板2を垂直に研削することによって凹部7を形成するため凹部7における周壁部の形成位置の精度が向上するので、小型の磁電変換素子6の感度領域を凹部7の周壁部の延長線と交わる位置に形成することが容易である。そして、磁電変換素子6の感度領域が、凹部7の周壁部の延長線と交わる位置に形成されていることによって、最も磁束の集中する領域の磁束を検出することができるので、小型の磁電変換素子に対する磁束の収束効率を向上させることができ、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0024】
また、図1に示す磁気検出装置1は、支持基板2に略垂直に凹部7を形成するので、図17に示す背景技術に係る磁気検出装置150と比較して、図1(b)に一点鎖線で示すテーパ状の広がりがなく、磁気検出装置1を小型化することができる。そして、凹部7を小型化できることから磁気検出装置1の機械的強度を向上することができる。
【0025】
なお、図4に示す磁気検出装置1aのように、磁電変換素子6aとして、感度領域である高抵抗領域63が平面視において長方形のものを用いて、その長手方向を凹部7の周壁部に形成された磁性体部8の辺に沿うように配列してもよい。磁束は凹部7の周壁部における磁性体部8内では略均一に分布するため、周壁部の磁性体部8に沿って長方形の感度領域を形成することで、磁電変換素子6aを通る磁束を増大させて有効に磁束を検出することができ、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0026】
また、図5に示す磁気検出装置1bのように、感度領域である高抵抗領域63が長方形にされた磁電変換素子6aを複数、例えば4個用いて、各磁電変換素子6aの長手方向を凹部7の4辺の周壁部に形成された磁性体部8の辺にそれぞれ沿うように配列してもよい。なお、磁電変換素子6aの数は4個に限定されない。また、複数の磁電変換素子6における感度領域が、それぞれ凹部7の周壁部の延長線と交わる位置に形成されていればよく、高抵抗領域63が長方形でなくてもよい。
【0027】
これにより、例えば図17に示す背景技術に係る磁気検出装置150では、複数のホール素子115を用いるためには複数のエッチング溝119を形成する必要があるが、図5に示す磁気検出装置1bでは、凹部7を一つ形成することによって、その周壁部の延長線と交わる位置に複数の磁電変換素子6,6aを形成することができるので、支持基板2上での磁気検出装置1bの専有面積を縮小することができ、例えばホイートストンブリッジのように複数の磁電変換素子6,6aを用いる回路を小型化することが容易である。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る磁気検出装置1cについて説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係る磁気検出装置1cの構成の一例を示す図である。図6(a)は、磁気検出装置1cの正面図、図6(b)は図6(a)のX−X’断面図、図6(c)は図6(a)のY−Y’断面図である。図6に示す磁気検出装置1cと図1に示す磁気検出装置1とでは、下記の点で異なる。
【0029】
すなわち、図6に示す磁気検出装置1cは、凹部7aの周壁部が埋込酸化膜3内に食い込む形で延設されていて、かつ磁性体部8aがその領域まで敷設され、その結果、図6(b)に示すように、磁電変換素子6aの感度領域が形成されている領域で磁性体部8と磁性体部10の間隙が最も小さくなるように構成されている。
【0030】
これにより、図7に示すように、磁電変換素子6aの感度領域により効率的に磁束を収束させることができ、磁気検出装置1cによる磁気検出の感度を向上させることができる。
【0031】
また、磁気検出装置1cは、図1に示す磁気検出装置1における凹部7を形成した後に、例えば支持基板2を斜めに傾けた状態でイオンミリング法などによって酸化膜エッチングを行うことにより、凹部7aの周壁部を埋込酸化膜3に食い込む形で延設するように形成することが容易であり、さらに例えばスパッタによって磁性体部8aを形成することにより、容易に磁気検出装置1cを形成することができる。
【0032】
その他の構成は図1に示す磁気検出装置1と同様であるのでその説明を省略する。
【0033】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る磁気検出装置1dについて説明する。図8は、本発明の第3の実施形態に係る磁気検出装置1dの構成の一例を示す図である。図8(a)は、磁気検出装置1dの正面図、図8(b)は図8(a)のX−X’断面図、図8(c)は図8(a)のY−Y’断面図である。図8に示す磁気検出装置1dと図1に示す磁気検出装置1とでは、下記の点で異なる。すなわち、図8に示す磁気検出装置1dでは、凹部7bの周壁部に形成された磁性体部8bと、凹部7bの底面部に形成された磁性体部8bとが分離されている。また、凹部7bの周壁部は、埋込酸化膜3の近傍において埋込酸化膜3に向かう方向に径が拡大するように形成されることにより、凹部7bの周壁部と底面部との接合部は、凹部7bの径の方向に切り欠き部12(いわゆるノッチ)が形成されている。
【0034】
その他の構成は図1に示す磁気検出装置1と同様であるのでその説明を省略し、図8に示す磁気検出装置1dにおける凹部7b及び磁性体部8bの製造方法について説明する。図9は、磁気検出装置1dの製造方法を説明するための説明図である。
【0035】
まず、図9(a)に示す第1工程において、SOI基板5の支持基板2側から、例えば酸化膜の開口部などをマスクとして選択的に例えばRIEによって支持基板2を垂直に、埋込酸化膜3に達するまで研削する。これによって、凹部7bの周壁部が、支持基板2の厚み方向に略垂直に形成されると共に、凹部7bの平坦な底面部が形成される。
【0036】
次に、図9(b)に示す第2工程において、例えばRIEやICP(Inductively Coupled Plasma)エッチングによる垂直研削を、凹部7bの平坦な底面部が埋込酸化膜3に達した後、予め定められた所定の期間継続する。そうすると、埋込酸化膜3は研削されずに凹部7bの周壁部が、埋込酸化膜3の近傍において埋込酸化膜3に向かう方向に径が拡大するように研削され、凹部7bの周壁部と底面部との接合部に凹部7bの径の方向に切り欠き部12が形成される。
【0037】
次に、図9(c)に示す第3工程において、例えばスパッタによって凹部7bの表面に磁性体膜を形成する。そうすると、凹部7bの周壁部に形成された磁性体膜と、凹部7bの底面部に形成された磁性体膜とが切り欠き部12によって自己整合的に分離される。
【0038】
これにより、凹部7bの周壁部に形成された磁性体部8bと、凹部7bの底面部に形成された磁性体部8bとが分離された磁気検出装置1dを容易に製造することができる。
【0039】
そして、凹部7bの周壁部に形成された磁性体部8bと、凹部7bの底面部に形成された磁性体部8bとが分離された磁気検出装置1dによれば、図10に示すように、凹部7bの底面部に形成された磁性体部8bを通過する磁束が減少し、凹部7bの周壁部に形成された磁性体部8bから直接磁性体部10方向に通過する磁束が増大する結果、磁電変換素子6aの感度領域に収束する磁束が増大し、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0040】
なお、図1、図4、図5、図6に示す磁気検出装置1,1a,1b,1cにおいて、凹部7の周壁部に形成された磁性体膜と凹部7の底面部に形成された磁性体膜とが分離された構成としても良く、磁性体部8を凹部7の周壁部のみに備える構成としても良い。この場合、図8に示す磁気検出装置1dと同様の効果が得られる。
【0041】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る磁気検出装置1eについて説明する。図11は、本発明の第4の実施形態に係る磁気検出装置1eの構成の一例を示す図である。図11(a)は、磁気検出装置1dの正面図、図11(b)は図11(a)のX−X’断面図、図11(c)は図11(a)のY−Y’断面図である。図11に示す磁気検出装置1eと図8に示す磁気検出装置1dとでは、下記の点で異なる。すなわち、図11に示す磁気検出装置1eでは、磁電変換素子6aの感度領域である高抵抗領域63と相対する位置において絶縁層9が、磁電変換素子6aとの間に絶縁層を残して例えばエッチングにより研削され、底部の面積が磁電変換素子6aにおける高抵抗領域63の平面視での形状、面積と略同等にされた凹状の部分が形成されている。
【0042】
そして、絶縁層9に形成された凹状の部分を磁性体で充填して磁性体部10が形成されることにより、磁性体部10には、磁電変換素子6aにおける高抵抗領域63に向かって凸状にされた凸部13が形成されている。
【0043】
これにより、図12に示すように、磁性体部10における凸部13が磁電変換素子6aにおける感度領域に近接するので、磁電変換素子6aの感度領域を通過する磁束を増大させることができ、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0044】
その他の構成は図8に示す磁気検出装置1dと同様であるのでその説明を省略する。
【0045】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る磁気検出装置1fについて説明する。図13は、本発明の第5の実施形態に係る磁気検出装置1fの構成の一例を示す図である。図13(a)は、磁気検出装置1fの正面図、図13(b)は図13(a)のX−X’断面図、図13(c)は図13(a)のY−Y’断面図である。図13に示す磁気検出装置1fと図1に示す磁気検出装置1とでは、下記の点で異なる。
【0046】
すなわち、磁気検出装置1fにおける凹部7cは、その開口部から支持基板2の表面に対し略垂直に形成された周壁部分71と、磁性体部10と略平行に対向する平坦部72及び平坦部72から周壁部分71に向かうに従って大径となる傾斜部分73からなる底面部とを有する。平坦部72は、埋込酸化膜3によって略平坦に形成されている。そして、このように構成された凹部7cの表面に、磁性体部8cが形成されている。
【0047】
そして、埋込酸化膜3を夾んで平坦部72と相対する位置に磁電変換素子6の感度領域である高抵抗領域63が位置するように、磁電変換素子6が一つ、SOI層4に形成されている。平坦部72の形状及び面積は、磁電変換素子6の高抵抗領域63の平面視における形状及び面積と略同等にされていることが望ましい。
【0048】
これにより、図14に示すように、周壁部分71及び傾斜部分73の表面に形成された磁性体部8cによって、磁電変換素子6aにおける高抵抗領域63に近接する平坦部72に磁束が収束され、磁電変換素子6aの感度領域を通過する磁束を増大させることができるので、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0049】
また、図13に示す凹部7cは、高抵抗領域63の平面視における形状と略同等の開口窓を有するマスクを用いてシリコン支持基板2の表面から例えばドライエッチングによる垂直研削で凹部及び平坦部72を形成した後、エッチング溶液としてKOH(水酸化カリウム)、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)等を用いた異方性エッチング等によって、凹部の径を広げることにより、凹部7cを形成することが容易である。
【0050】
この場合、平坦部72は垂直エッチングによって形成されるため、支持基板2の厚み公差による平坦部72の形状、面積のバラツキを低減することができる。これにより、平坦部72の形状、面積を磁電変換素子6の高抵抗領域63の平面視における形状及び面積と略同等にすることが容易となるので、小型の磁電変換素子に対する磁束の収束効率を向上させることができ、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0051】
また、図13に示す磁気検出装置1fは、支持基板2に略垂直な周壁部分71を有するので、図17に示す背景技術に係る磁気検出装置150と比較して、図13(b)に一点鎖線で示すテーパ状の広がりがなく、磁気検出装置1fを小型化することができる。そして、凹部7cを小型化できることから磁気検出装置1の機械的強度を向上することができる。
【0052】
その他の構成は図1に示す磁気検出装置1と同様であるのでその説明を省略する。
【0053】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る磁気検出装置1gについて説明する。図15は、本発明の第6の実施形態に係る磁気検出装置1gの構成の一例を示す図である。図15(a)は、磁気検出装置1gの正面図、図15(b)は図15(a)のX−X’断面図、図15(c)は図15(a)のY−Y’断面図である。図15に示す磁気検出装置1fと図13に示す磁気検出装置1gとでは、下記の点で異なる。
【0054】
すなわち、磁気検出装置1gにおける凹部7dは、その開口部から支持基板2に対し略垂直に形成された周壁部分71と、磁電変換素子6に向かって凸状のドーム形状にされた底部74とを有する。そして、このように構成された凹部7dの表面に、磁性体部8dが形成されている。また、磁電変換素子6の高抵抗領域63は、底部74と磁性体部10とが最も近接する凹部7dにおけるドームの頂点位置において、底部74と磁性体部10との間に形成されている。
【0055】
これにより、図16に示すように、周壁部分71及び底部74の表面に形成された磁性体部8dによって、底部74における磁電変換素子6の高抵抗領域63に最も近接するドームの頂点部分に磁束が収束され、磁電変換素子6の感度領域を通過する磁束を増大させることができるので、磁気検出の感度を向上させることができる。また、図15に示す磁気検出装置1gにおける凹部7dは、図13に示す磁気検出装置1fにおける凹部7cの周壁部分71と傾斜部分73との継ぎ目、及び傾斜部分73と平坦部72との継ぎ目のような角部を有さないため、角部から漏れる磁束を減少させ、磁電変換素子6の感度領域を通過する磁束を増大させることができるので、磁気検出の感度を向上させることができる。
【0056】
また、図15に示す凹部7dは、例えば支持基板2からICPエッチングによる垂直研削を行い、その研削の先端部が埋込酸化膜3に達したときに垂直研削を停止することによって、周壁部分71とドーム状の底部74とを有する凹部7dを容易に形成することができる。
【0057】
また、図15に示す磁気検出装置1gは、支持基板2に略垂直な周壁部分71を有するので、図17に示す背景技術に係る磁気検出装置150と比較して、図15(b)に一点鎖線で示すテーパ状の広がりがなく、磁気検出装置1gを小型化することができる。そして、凹部7dを小型化できることから磁気検出装置1gの機械的強度を向上することができる。
【0058】
なお、図1、図4〜図6、図8、図13、図15に示す磁気検出装置1,1a,1b,1c,1d,1f,1gのいずれにおいても図11に示す磁気検出装置1eと同様に、磁電変換素子の感度領域と相対する位置において、当該高抵抗領域に向かって凸状にされた凸部13を備える構成とすることができる。
【0059】
また、図1、図4〜図6、図8、図11、図13、図15に示す磁気検出装置1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1gは、いずれも例えば電子コンパスやGPSなどに使用され、地磁気を検出する地磁気センサ(方位センサ)として用いることができる。
【0060】
この場合、地磁気センサを小型化することができる。また、磁気検出装置1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1gは、シリコンウェハ上に構成することができるので、磁気検出装置によって検出された磁気から方位を取得するための制御回路や、アンプ等の回路などと同一のシリコン基板上に形成することができ、小型化が容易であると共に、センサ部と制御回路とが同一シリコン基板上に構成されることにより温度補正が容易となる。また、磁気検出装置1等の信号検出用のアンプを同一シリコン基板上に構成することにより、信号配線の配線長を短縮でき、外部からのノイズ耐性を向上させることができる。さらに、加速度センサなどの他のセンサを同一シリコン基板上に集積した複合センサを構成することも可能となる。
【0061】
上述の目的を達成するために、本発明の第1の手段に係る磁気検出装置は、平板状の基板と、前記基板の一方面からその厚み方向に形成された凹部と、前記凹部内表面に形成された第1の磁性膜と、前記基板の一方面に対向する対向面に形成された第2の磁性膜と、前記第1及び第2の磁性膜の間に形成された磁電変換素子とを有する磁気検出装置であって、前記凹部は、その周壁が前記基板の一方面に対し略垂直に形成され、前記磁電変換素子の感度領域は、前記周壁の延長線と交わる位置に形成されていることを特徴としている。
【0062】
また、上述の磁気検出装置は、前記第1の磁性膜は、前記凹部の周壁部に設けられた部分と底面部に設けられた部分とが分離していることを特徴としている。
【0063】
そして、上述の磁気検出装置は、前記第1の磁性膜は、前記凹部の周壁部のみに設けられていることを特徴としている。
【0064】
さらに、上述の磁気検出装置は、前記凹部の前記周壁部は底面部よりも前記基板内に延設されていることを特徴としている。
【0065】
また、上述の磁気検出装置は、前記凹部の底面部は、前記対向面と略平行に対向する平坦部と、前記平坦部から前記周壁部に向かうに従って大径となる傾斜部分とを有し、前記磁電変換素子の感度領域は、前記周壁の延長線と交わる位置に形成される代わりに前記底面部と前記第2の磁性膜との間に形成されていることを特徴としている。
【0066】
そして、上述の磁気検出装置は、前記凹部の底面部は、前記磁電変換素子に向かって凸状のドーム形状にされており、前記磁電変換素子の感度領域は、前記凹部の底面部と前記第2の磁性膜とが最も近接する位置に形成されていることを特徴としている。
【0067】
さらに、上述の磁気検出装置は、前記第2の磁性膜は、前記磁電変換素子の感度領域に向かって凸状の部分を有することを特長としている。
【0068】
また、本発明の第2の手段に係る地磁気センサは、上述の磁気検出装置を用いることを特徴としている。
【0069】
そして、本発明の第3の手段に係る磁気検出装置の製造方法は、シリコン・オン・インシュレータ基板の一方面から垂直研削して凹部を形成する工程と、前記凹部を形成する工程において、研削した凹部の底面が前記シリコン・オン・インシュレータ基板の埋込酸化膜に到達した後も予め定められた所定の期間研削を継続することで、前記凹部の底面部を開口部より広くする工程と、前記凹部の表面に磁性膜を形成する工程と、を有することを特徴としている。
【符号の説明】
【0070】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g 磁気検出装置
2 支持基板
3 埋込酸化膜
4 SOI層
5 SOI基板
6,6a 磁電変換素子
7,7a,7b,7c,7d 凹部
8,8a,8b,8c,8d 磁性体部
9 絶縁層
10 磁性体部
11 配線
12 切り欠き部
13 凸部
63 高抵抗領域
71 周壁部分
72 平坦部
73 傾斜部分
74 底部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基板と、前記基板の一方面からその厚み方向に形成された凹部と、
前記凹部内表面に形成された第1の磁性膜と、
前記基板の一方面に対向する対向面に形成された第2の磁性膜と、
前記第1及び第2の磁性膜の間に形成された磁電変換素子とを有する磁気検出装置であって、
前記凹部は、その周壁が前記基板の一方面に対し垂直に形成され、
前記凹部の底面部は、前記対向面と対向する平坦部と、前記平坦部から前記周壁部に向かうに従って大径となる傾斜部分とを有し、
前記磁電変換素子の感度領域は、前記底面部と前記第2の磁性膜との間に形成されていることを特徴とする磁気検出装置。
【請求項2】
前記凹部の底面部は、前記磁電変換素子に向かって凸状のドーム形状にされており、
前記磁電変換素子の感度領域は、前記凹部の底面部と前記第2の磁性膜とが最も近接する位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項3】
前記第2の磁性膜は、前記磁電変換素子の感度領域に向かって凸状の部分を有することを特長とする請求項1又は2記載の磁気検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3記載の磁気検出装置を用いることを特徴とする地磁気センサ。
【請求項1】
平板状の基板と、前記基板の一方面からその厚み方向に形成された凹部と、
前記凹部内表面に形成された第1の磁性膜と、
前記基板の一方面に対向する対向面に形成された第2の磁性膜と、
前記第1及び第2の磁性膜の間に形成された磁電変換素子とを有する磁気検出装置であって、
前記凹部は、その周壁が前記基板の一方面に対し垂直に形成され、
前記凹部の底面部は、前記対向面と対向する平坦部と、前記平坦部から前記周壁部に向かうに従って大径となる傾斜部分とを有し、
前記磁電変換素子の感度領域は、前記底面部と前記第2の磁性膜との間に形成されていることを特徴とする磁気検出装置。
【請求項2】
前記凹部の底面部は、前記磁電変換素子に向かって凸状のドーム形状にされており、
前記磁電変換素子の感度領域は、前記凹部の底面部と前記第2の磁性膜とが最も近接する位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気検出装置。
【請求項3】
前記第2の磁性膜は、前記磁電変換素子の感度領域に向かって凸状の部分を有することを特長とする請求項1又は2記載の磁気検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3記載の磁気検出装置を用いることを特徴とする地磁気センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−237217(P2010−237217A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126956(P2010−126956)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【分割の表示】特願2004−218808(P2004−218808)の分割
【原出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【分割の表示】特願2004−218808(P2004−218808)の分割
【原出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]