磁気歯車装置
【課題】大きな伝達トルクを得ることができる磁気歯車装置を提供する。
【解決手段】磁気歯車装置は、外歯車5と、内歯車6と、ステータ歯車7とを備えている。外歯車5は、外側筒21と、複数の第1外側磁石片22A,22Bと、複数の第2外側磁石片23A,23Bとを有している。内歯車6は、内側筒31と、複数の内側磁石片32A,32Bとを有している。ステータ歯車7は、外歯車5と内歯車6との間に配置される複数の磁性歯部53を有している。外歯車5の複数の第1外側磁石片22A,22Bは、異なる磁極が筒孔21aの周方向に隣り合うように並び、複数の第2外側磁石片23A,23Bは、同じ磁極が筒孔21aの周方向に隣り合うように並ぶ。これにより、複数の第1外側磁石片22A,22B及び複数の第2外側磁石片23A,23Bは、磁束が集中する磁束収束部25を形成する。
【解決手段】磁気歯車装置は、外歯車5と、内歯車6と、ステータ歯車7とを備えている。外歯車5は、外側筒21と、複数の第1外側磁石片22A,22Bと、複数の第2外側磁石片23A,23Bとを有している。内歯車6は、内側筒31と、複数の内側磁石片32A,32Bとを有している。ステータ歯車7は、外歯車5と内歯車6との間に配置される複数の磁性歯部53を有している。外歯車5の複数の第1外側磁石片22A,22Bは、異なる磁極が筒孔21aの周方向に隣り合うように並び、複数の第2外側磁石片23A,23Bは、同じ磁極が筒孔21aの周方向に隣り合うように並ぶ。これにより、複数の第1外側磁石片22A,22B及び複数の第2外側磁石片23A,23Bは、磁束が集中する磁束収束部25を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気引力又は斥力を利用して動力を伝達する磁気歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車は、トルクなどの動力を伝達する機械要素である。一般的な歯車は、原動側の歯と従動側の歯が接触することで動力を伝達するため、原動側の歯と従動側の歯との間に摩擦が生じる。したがって、原動側の歯と従動側の歯との間には、潤滑剤が必要になる。また、原動側の歯と従動側の歯との接触による騒音も発生する。そこで、近年、歯の接触の無い磁気歯車が開発されている。磁気歯車は、非接触でトルクを伝達するため、潤滑剤を必要とせず、且つ、無騒音で駆動させることができる。
【0003】
一方、ロボットや複写機等に用いられる減速機構には、過大なトルクが作用したときにそのトルクを遮断(動力伝達を遮断)するトルクリミッタ機能を有するものが要求されている。磁気歯車は、トルクリミッタ機能を有するため、簡単な構造でトルクリミッタ機能を備えた減速機構を構成することができる。
【0004】
磁気歯車装置としては、例えば、非特許文献1に記載されているものがある。この非特許文献1に記載された磁気歯車装置は、円筒状のハイスピードロータ及びロースピードロータを有しており、ハイスピードロータの外周面が、ロースピードロータの内周面に対向している。そして、ハイスピードロータの外周面に取り付けた磁石片とロースピードロータの内周面に取り付けた磁石片との間に生じる磁気引力を利用して、ハイスピードロータの動力をロースピードロータに伝達する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K.Atallah and D.Howe,「A Novel High−Performance Magnetic Gear」,IEEE Transactions on Magnetics,JULY 2001,Vol.37. No.4,p.2844−2846
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載された磁気歯車装置では、ハイスピードロータ及びロースピードロータにそれぞれ取り付けられた磁石片が厚み方向(ロータの径方向)に磁化されている。そのため、ロータの径方向に対向した磁石片間に生じる磁気引力が伝達トルクの大きさを決定することになり、実用的な大きさの伝達トルクを得ることが難しかった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を考慮し、大きな伝達トルクを得ることができる磁気歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の磁気歯車装置は、外歯車と、内歯車と、ステータ歯車と、を備えている。
外歯車は、円形の筒孔を有する外側筒と、筒孔の径方向に磁化されて外側筒の内周部に取り付けられた複数の第1外側磁石片と、筒孔の周方向に磁化されて複数の第1外側磁石片に取り付けられた複数の第2外側磁石片とを有する。複数の第1外側磁石片は、異なる磁極が筒孔の周方向に隣り合うように並び、複数の第2外側磁石片は、同じ磁極が筒孔の周方向に隣り合うように並ぶことにより、複数の第1外側磁石片及び複数の第2外側磁石片は、磁束が集中する磁束収束部を形成する。
内歯車は、外歯車の筒孔に配置され、円筒状の内側筒と、内側筒の外周部に取り付けられた複数の内側磁石片とを有する。
ステータ歯車は、外歯車と内歯車との間に配置され、筒孔の周方向に所定の間隔を開けて並ぶ複数の磁性歯部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の磁気歯車装置によれば、第1外側磁石片と複数の第2外側磁石片の同じ磁極が外側筒の周方向及び径方向に隣り合うように配置しているため、磁束が集中する磁束収束部が形成されている。磁束収束部の磁束がステータ歯車の磁性歯部を通り、内歯車の内側磁石片に作用するため、外歯車と内歯車との間に生じる磁気引力を大きくすることができる。その結果、大きな伝達トルクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置を示す断面図である。
【図2】図1に示すA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の外歯車の分解斜視図である。
【図4】図4Aは本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の外歯車の断面図であり、図4Bは図4Aに示すB−B線に沿う断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置のステータ歯車の斜視図である。
【図6】図6Aは本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置のステータ歯車の断面図であり、図6Bは図6Aに示すC−C線に沿う断面図である。
【図7】図7Aは本発明の第1の実施の形態例にかかるステータ歯車のステータ部材の平面図であり、図7Bは本発明の第1の実施の形態例にかかるステータ歯車のステータ部材を積層した状態を示す側面図である。図7Cは本発明の第1の実施の形態例にかかるステータ歯車におけるステータ部材に固定部が介在された状態を示す側面図であり、図7Dは本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置におけるステータ歯車の本体部の平面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における外歯車の第1の磁束収束部がステータ歯車の磁性歯部に対向した状態の説明図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における外歯車の第2の磁束収束部がステータ歯車の磁性歯部に対向した状態の説明図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における外歯車の第3の磁束収束部がステータ歯車の磁性歯部に対向した状態の説明図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における外歯車の第4の磁束収束部がステータ歯車の磁性歯部に対向した状態の説明図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における外歯車の第1の磁束収束部が図8に示す磁性歯部の隣の磁性歯部に対向した状態の説明図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の磁石片の配列と磁束密度の分布を示す説明図である。図13Aは内歯車の磁石片の配列と磁束密度の分布を示す説明図であり、図13Bは外歯車の磁石片の配列と磁束密度の分布を示す説明図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の外歯車の磁石片の要部を示す説明図である。
【図15】図15は本発明の磁気歯車装置の磁束収束部と磁束密度の分布を示す説明図である。図15Aは本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における磁束収束部の磁束密度の分布を示す説明図であり、図15Bは本発明の第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における磁束収束部の磁束密度の分布を示す説明図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置を示す断面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における内歯車の磁石片の配列と磁束密度の分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の磁気歯車装置の実施の形態例について、図1〜図17を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態例
1−1.磁気歯車装置の構成
1−2.磁気歯車装置の動作
1−3.磁気歯車装置の磁束密度
2.第2の実施の形態例
3.第3の実施の形態例
【0012】
<1.第1の実施の形態例>
1−1.磁気歯車装置の構成
まず、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる磁気歯車装置について、図1を参照して説明する。
図1は本例にかかる磁気歯車装置の構成を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の磁気歯車装置1は、ケース2と、第1の回転軸3と、第2の回転軸4と、外歯車5と、内歯車6と、ステータ歯車7を備えている。外歯車5は、第2の回転軸4に固定され、内歯車6は、第1の回転軸3に固定されている。また、ステータ歯車7は、ケース2に固定されている。
【0014】
ケース2は、非磁性材料により形成された筐体である。ケース2の材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム、銅等の金属、又は合成樹脂を挙げることができる。
【0015】
このケース2は、中空部2aと開口部2bを有している。ケース2の中空部2aには、外歯車5、内歯車6及びステータ歯車7が配置される。そして、ケース2の開口部2bでは、中空部2aに配置された外歯車5及びステータ歯車7の一部が露出する。
【0016】
また、ケース2は、底板11と、第1の支持板12と、第2の支持板13と、補強片14を備えている。底板11は、開口部2bと対向して配置される。そして、第1の支持板12と第2の支持板13は、底板11に連続して略垂直に突出している。第1の支持板12は、第2の支持板13に対向している。この第2の支持板13には、軸受17が設けられており、第2の支持板13の外面には、補強片14が固定されている。この補強片14は、軸受18を備えている。
【0017】
第1の回転軸3は、非磁性材料から形成されている。第1の回転軸3の材料としては、ケース2の材料と同様の材料を挙げることができる。
【0018】
第1の回転軸3は、第1の支持板12とステータ歯車7の後述するベース部47を貫通している。このベース部47には、軸受16が設けられている。第1の回転軸3は、ベース部47に設けられた軸受16を介してステータ歯車7のベース部47に回転可能に取り付けられている。
【0019】
第2の回転軸4は、第1の回転軸3と同様に、非磁性材料から形成されている。第2の回転軸4の材料としては、ケース2の材料と同様の材料を挙げることができる。
【0020】
第2の回転軸4は、軸部4aと、円板部4bから構成されている。軸部4aは、第2の支持板13と補強片14を貫通している。この軸部4aは、軸受17を介して第2の支持板13に取り付けられ、軸受18を介して補強片14に回転可能に取り付けられている。
【0021】
第2の回転軸4の円板部4bは、軸部4aの先端に設けられている。また、円板部4bにおける軸部4aと反対側の面には、軸受19が設けられている。この円板部4bには、軸受19を介して第1の回転軸3の先端部が回転可能に取り付けられる。さらに、第1の回転軸3の軸心と第2の回転軸4の軸心は互いに一致する。
【0022】
軸受16,17,18及び19は、それぞれ転動体16a,17a,18a及び19aを有する転がり軸受(ボールベアリング)である。これら軸受16〜19の転動体16a〜19aは、非磁性材料または炭素含有量が多い材料によって形成することが好ましい。通常使用される転がり軸受は、硬度を確保するための焼き入れを行うため、炭素含有量は多い。したがって、そのような通常の転がり軸受を用いてもよい。
【0023】
なお、本発明に係る軸受は、転がり軸受に限定されるものではなく、例えば、すべり軸受、流体軸受等を適用することもできる。
【0024】
[内歯車]
次に、内歯車6について、図2を参照して説明する。
図2は図1に示す本例にかかる磁気歯車装置のA−A線に沿う断面図である。
図2に示すように、内歯車6は、内側筒31と、複数の内側磁石片32A,32Bとから構成されている。そして、内歯車6は、外歯車5内に配置されている(図1参照)。
【0025】
内側筒31は、円形の筒孔31aを有する円筒形状に形成されている。筒孔31aには、第1の回転軸3が嵌合されている。この内側筒31は、磁性材料により形成されている。内側筒31の材料としては、例えば、鉄や珪素鋼板等が挙げられる。
【0026】
内側筒31を、鉄や珪素鋼板等の板状部材を複数積層して形成してもよい。複数の板状部材を積層して内側筒31を形成する場合、カシメ、溶接、接着剤等の固着方法により固着され一体として成形される。
【0027】
内歯車6が回転すると、内側筒31の軸方向に渦電流が流れる。しかしながら、複数の板状部材を積層して内側筒31を形成した場合、複数の板状部材を積層した際に生じる微細な隙間が抵抗となり、渦電流を遮断することができる。そのため、渦電流によるトルクの損失を抑えることができる。なお、渦電流の遮断をより確実にするために、重なり合う板状部材間に電流絶縁材あるいは電流絶縁塗膜を介在させてもよい。
【0028】
この内側筒31の外周部には、複数の内側磁石片32A,32Bが取り付けられている。複数の内側磁石片32A,32Bは、それぞれ内側筒31の軸方向に長い板状の永久磁石である。複数の内側磁石片32A,32Bは、内側筒31の径方向に磁化されている。
【0029】
内側磁石片32Aは、内側筒31の径方向の外側(外歯車5側)がN極であり、内側筒31の径方向の内側(第1の回転軸3側)がS極である。一方、内側磁石片32Bは、内側筒31の径方向の外側(外歯車5側)がS極であり、内側筒31の径方向の内側(第1の回転軸3側)がN極である。
【0030】
これらの複数の内側磁石片32A,32Bは、内側筒31の周方向に交互に配設されている。そのため、複数の内側磁石片32A,32Bは、異なる磁極が内側筒31の筒孔31aの周方向に隣り合うように並べられている。
【0031】
本例では、複数の内側磁石片32A,32Bを磁性材料からなる内側筒31に貼り付けることにより、内側筒31の磁気モーメントを揃えて、大きな表面磁束密度を得ることができる。また、複数の内側磁石片32A,32Bは、磁気引力によって内側筒31の外周部に吸着させることができるため、複数の内側磁石片32A,32Bを内側筒31の外周部に簡単に取りつけることができる。
【0032】
[外歯車]
次に、外歯車5について、図3及び図4を参照して説明する。
図3は本例にかかる磁気歯車装置の外歯車の分解斜視図である。また、図4Aは本例にかかる磁気歯車装置の外歯車の断面図であり、図4Bは図4Aに示すB−B線に沿う断面図である。
【0033】
図3に示すように、外歯車5は、外側筒21と、複数の第1外側磁石片22A,22Bと、複数の第2外側磁石片23A,23Bから構成されている。
【0034】
外側筒21は、円形の筒孔21aを有する円筒形状に形成されている。また、図3及び図4Aに示すように、外側筒21は、筒孔21aから径方向内側に向かって突出する突起部21bを有している。外側筒21の軸方向の一側から第2の回転軸4の円板部4bが挿入されて、筒孔21aに円板部4bが嵌合されている。そして、外側筒21の突起部21bは、第2の回転軸4の円板部4bに当接している(図4A参照)。この外側筒21は、磁性材料で形成されている。なお、外側筒21の材料としては、例えば、鉄や珪素鋼板等が挙げられるが、積層鉄心が好ましい。
【0035】
積層鉄心を用いて外側筒21を形成すると、重なり合う板状部材間の微細な間隙が抵抗になり、外側筒21の軸方向に流れる渦電流を遮断することができる。渦電流の遮断をより確実にするために、重なり合う板状部材間に電流絶縁材あるいは電流絶縁塗膜を介在させてもよい。
【0036】
図4Bに示すように、外側筒21の筒孔21aには、複数の第1外側磁石片22A,22Bが筒孔21aの周方向に並べられている。複数の第1外側磁石片22A,22Bの内周部には、複数の第2外側磁石片23A,23Bが並べられている。つまり、第2外側磁石片23A,23Bは、第1外側磁石片22A,22Bよりも外側筒21の径方向の内側に配置されている。
【0037】
複数の第1外側磁石片22A,22Bは、それぞれ外側筒21の軸方向に沿った細長い略棒状の永久磁石である(図3参照)。そして、複数の第1外側磁石片22A,22Bは、外側筒21の径方向に磁化されている。
【0038】
第1外側磁石片22Aは、外側筒21の径方向の外側がN極であり、外側筒21の径方向の内側がS極である。一方、第1外側磁石片22Bは、外側筒21の径方向の外側がS極であり、外側筒21の径方向の内側がN極である。第1外側磁石片22Aと第1外側磁石片22Bは、異なる磁極が外側筒21の周方向に交互に配置されている。
【0039】
複数の第2外側磁石片23A,23Bは、それぞれ外側筒21の軸方向に沿った細長い略棒状の永久磁石である(図3参照)。そして、複数の第2外側磁石片23A,23Bは、外側筒21の周方向に磁化されている。
【0040】
第2外側磁石片23Aは、外側筒21の周方向の一側がN極であり、外側筒21の周方向の他側がS極である。一方、第2外側磁石片23Bは、外側筒21の周方向の一側がS極であり、外側筒21の周方向の他側がN極である。複数の第2外側磁石片23A,23Bは、同じ磁極が外側筒21の周方向に隣り合うように並べられている。
【0041】
また、第2外側磁石片23A,23BのN極は、第1外側磁石片22BのN極上に配置される。このとき、第2外側磁石片23A,23BのN極と第1外側磁石片22BのN極が外側筒21の径方向で隣り合う。そして、第2外側磁石片23A,23BのN極が隣り合う境界は、外側筒21の周方向における第1外側磁石片22Bの中間部に位置している。
【0042】
また、第2外側磁石片23A,23BのS極は、第1外側磁石片22AのS極上に配置される。このとき、第2外側磁石片23A,23BのS極と第1外側磁石片22AのS極が外側筒21の径方向で隣り合う。そして、第2外側磁石片23A,23BのS極が隣り合う境界は、外側筒21の周方向における第1外側磁石片22Aの中間部に位置している。
【0043】
第2外側磁石片23A,23Bは、外側筒21の周方向における両端に切欠き部を有している。第2外側磁石片23A,23Bが外側筒21の周方向に隣り合って配置されているため、この切欠き部は対向してV字状の溝部となり、磁束収束部25を形成する。磁束収束部25は、同じ磁極が外側筒21の径方向及び周方向に隣り合うため、磁束が集中する。
【0044】
この切欠き部により形成された磁束収束部25には、磁束が集中するため磁束密度が向上し、トルクを大きくすることができる。また、第2外側磁石片23A,23Bに切欠き部を設けたことにより、永久磁石の使用量を少なくすることができる。
【0045】
本例の磁束収束部25は、V字状の溝部により形成されているが、これに限定されない。例えば、切り欠きを有さない第2外側磁石片が間隔を開けて並べられることにより凹部を形成し、この凹部を磁束収束部としてもよい。
【0046】
[ステータ歯車]
次に、図5〜図7を参照してステータ歯車7について説明する。
図5は本例にかかる磁気歯車装置のステータ歯車の斜視図である。
また、図6Aは本例にかかる磁気歯車装置のステータ歯車の断面図であり、図6Bは図6Aに示すC−C線に沿う断面図である。
さらに、図7Aは本例にかかるステータ歯車のステータ部材の平面図であり、図7Bは本例にかかるステータ歯車のステータ部材を積層した状態を示す側面図である。図7Cは本例のステータ歯車におけるステータ部材に固定部が介在された状態を示す側面図であり、図7Dは本例のステータ歯車の本体部の平面図である。
【0047】
図5に示すように、ステータ歯車7は、本体部41と、本体部41を支持するベース部47により構成されている。このステータ歯車7は、ケース2の第1の支持板12に取り付けられ(図1参照)、外歯車5と内歯車6との間に配置される。
【0048】
本体部41は、略円筒形に形成されている。この本体部41は、複数の固定部50と、複数の磁性歯部53から構成されている。複数の磁性歯部53は、本体部41の周方向に沿って、略等間隔を開けて配置されている。すなわち、複数の磁性歯部53は、外歯車5の筒孔21aと同心円状に間隔を開けて並べられている(図2参照)。また、複数の磁性歯部53は、隣り合う磁性歯部53と間隔を開けて配置されているため、互いに独立している。
【0049】
磁性歯部53は、後述するステータ部材42の磁性片42b(図7A参照)が積層されることにより形成される。磁性歯部53は、本体部41の軸方向に対してスキューされている。すなわち、磁性歯部53は、本体部41の中心軸回りに回転するように捻れて配置される。
【0050】
固定部50は、磁性歯部53の間に介在される。この固定部50は、例えば合成樹脂からなる固定部材により形成される。
【0051】
ベース部47は、略円板形に形成されている。このベース部47は、本体部41の軸方向の一側に取り付けられている。図6A及び図6Bに示すように、ベース部47は、貫通孔47aと、凹部47bを有している。貫通孔47aは、ベース部47の中央部に設けられ、ベース部47の第1の支持板12に接続する面から反対側の面にかけて貫通している。この貫通孔47aには、第1の回転軸3が貫通する(図1参照)。
【0052】
ベース部47の凹部47bは、貫通孔47aの周囲に設けられ、本体部41に対向する面から窪んで形成される。この凹部47bには、軸受16が配設される(図1参照)。
【0053】
次に、本体部41の製造方法について、図7A〜図7Dを参照して説明する。
まず、磁性歯部53を形成するステータ部材42について説明する。
【0054】
図7Aに示すように、ステータ部材42は、中央部に円形の貫通孔を有する円板形状に形成されている。このステータ部材42は磁性材料からなり、ステータ部材42の材料としては、例えば、電磁鋼板等が用いられる。
【0055】
ステータ部材42は、連結部42aと、磁性片42bと、溝部42cを有している。ステータ部材42の連結部42aは、リング状に形成されており、ステータ部材42の径方向の内側に設けられている。
【0056】
ステータ部材42の磁性片42bは、略長方形の板状に形成されている。磁性片42bは、ステータ部材42の周方向に間隔を開けて複数設けられている。複数の磁性片42bの長手方向の一端部は、連結部42aに連続している。このため、複数の磁性片42bは、連結部42aを介して接続している。
【0057】
ステータ部材42の周方向に複数設けられている磁性片42bの間には、溝部42cが形成される。溝部42cは、磁性片42bと同様に、ステータ部材42の周方向に間隔を開けて複数設けられている。
【0058】
なお、磁性片の他端部が連結部と連続するようにステータ部材を形成してもよい。これにより、連結部はステータ部材の径方向の外側に設けられる。
【0059】
次に、本体部41の製造工程について、説明する。
図7Bに示すように、上述したステータ部材42をその周方向に少しずつ回転させて複数枚積層する。このとき、複数の磁性片42bは、ステータ部材42が回転した分だけずれて積層される。積層された複数の磁性片42bによって磁性歯部53が形成される。
【0060】
そして、図7Cに示すように、溝部42cには、固定部50が介在される。固定部50は、磁性歯部53の間に複数設けられており、隣り合う磁性歯部53を接続する。
【0061】
その後、図7Dに示すように、連結部42aを取り除き、複数の磁性歯部53と複数の固定部50を残す。これにより、円筒状の本体部41が完成する。
【0062】
本例では、円板状のステータ部材42をその周方向に回転させて、磁性片42bを周方向にずらして積層して磁性歯部53を形成した。他の例としては、円板状のステータ部材42をその周方向に回転させず、磁性片42bを積層させて磁性歯部を形成してもよい。
【0063】
また、本例では、樹脂により固定としたが、これに限定されない。例えば、カシメ、接着剤等によりステータ部材42を固定させてよい。
【0064】
従来の磁気歯車装置(上記非特許文献1を参照)では、ロースピードロータ(外歯車)とハイスピードロータ(内歯車)が反対方向に回転するため、ステータの磁性歯部の中で渦電流が発生する。渦電流が発生すると、レンツの法則によりロースピードロータ(外歯車)及びハイスピードロータ(内歯車)の回転に抗する電磁ブレーキが生じてトルク損失となる。
【0065】
これに対し、本例では、磁性片42bが積層されることで、磁性片42b間に微細な間隙が形成される。この間隙は、本体部41の軸方向に流れる渦電流の抵抗となり、遮断することができる。その結果、磁気歯車装置1における渦電流によるトルク損失を少なくすることができる。
【0066】
磁性歯部が一体に繋がった状態でステータ歯車を形成すると、磁性歯部全体に磁束が通ることになる。また、磁極の固有振動数を歯車の回転数の数倍にするためには、ステータ歯車7の磁性歯部53に剛性が必要となる。そのため、ステータ歯車7の磁性歯部53は、剛性があり、独立して形成されていることが好ましい。
【0067】
本例のステータ歯車7では、本体部41の製造時において、ステータ部材42に複数の磁性片42bが連結部42aに連続して形成されている。そして、固定部50をステータ部材42の溝部42cに介在させた後、連結部42aを取り除いている。これにより、磁性歯部53は、固定部50を介して独立した状態となる。このとき、磁性歯部53を通る磁束は、固定部50により遮断され、隣り合う磁性歯部53を通ることができなくなる。その結果、渦電流の発生を軽減することができ、トルク損失を軽減することができる。
【0068】
そして、隣り合う磁性歯部53の間に固定部50を介在させた。これにより、複数の磁性歯部53の剛性を増加させることができ、磁性歯部53の変形を防止することができる。
【0069】
さらに、本例では、ステータ部材42を回転させて積層しているため、磁性歯部53は、本体部41の中心軸回りに回転するように捻れて配置される。これにより、磁気回路が本体部41の周方向にずれて配置され、磁性歯部53を通る磁束の急激な変化を抑制することができる。また、ステータ歯車7と、外歯車5の第1外側磁石片22A,22B、第2外側磁石片23A,23B及び内歯車6の内側磁石片32A,32Bとの引力及び斥力を小さく抑えることができる。その結果、磁気歯車装置1のコギングトルクを小さくすることができる。
【0070】
なお、本例のステータ部材42の材料を電磁鋼板として説明したが、これに限定されない。ステータ部材42の材料として、例えば圧粉磁心を用いてもよい。圧粉磁心は、鉄粉同士が絶縁されているため、電気抵抗が高い。圧粉磁心によりステータ部材42を形成した場合、磁性歯部53の電気抵抗が高くなるため渦電流が流れにくくなる。その結果、磁気歯車装置1における渦電流によるトルク損失を少なくすることができる。
【0071】
そして、圧粉磁心は安価であるため、圧粉磁心によりステータ部材42を形成すると材料コストを低減できる。また、圧粉磁心は成形しやすいため、容易にステータ部材42を製造することができる。
【0072】
ステータ歯車7の磁性歯部53の強度を考慮すると、一端(基端)を固定支持して他端(先端)を自由にした片持ち形状にする必要がある。そのため、ステータ歯車7は、本体部41の一端をベース部47に固定することで、一体に形成されている。したがって、磁束は、ベース部47にも漏れる構造となっている。
【0073】
これに対して、本例の磁気歯車装置1では、ケース2、第1の回転軸3及び第2の回転軸4を非磁性材料によって形成した。これにより、内歯車6からステータ歯車7のベース部47を通る磁気回路を遮断することができる。
【0074】
また、ケース2を導電性材料で形成する場合は、ステータ歯車7のベース部47とケース2との間に電流絶縁材あるいは電流絶縁塗膜を介在させて、ベース部47からケース2へ流れる渦電流を遮断することが好ましい。
【0075】
なお、内側磁石片の構成を、第1外側磁石片22A,22B及び第2外側磁石片23A,23Bと同様の構成としてもよい。つまり、内側筒31の径方向の外側(ステータ歯車7側)に向かってV字状に形成された磁束収束部を設ける構成としてもよい。
【0076】
1−2.磁気歯車装置の動作
次に、磁気歯車装置1の動作について、図8〜図12を参照して説明する。
図8は外歯車5の第1の磁束収束部25A,25Bがステータ歯車7の第1の磁性歯部53A,53Bに対向した状態を示す説明図である。
【0077】
図8に示すように、第1の磁性歯部53A,53Bは、内歯車6の内側磁石片32Ba,32Bbに対向する側が磁化されてN極となり、その反対側(外歯車5側)がS極となっている。そして、第1の磁束収束部25A,25Bは、第1の磁性歯部53A,53BのS極に対向している。
【0078】
この状態では、内側磁石片32Baと第1の磁性歯部53Aとの間及び、内側磁石片32Bbと第1の磁性歯部53Aとの間に生じる磁気引力は、径方向のみならず周方向にも釣り合っている。
【0079】
図9は、外歯車5の第2の磁束収束部25C,25Dがステータ歯車7の第2の磁性歯部53C,53Dに対向した状態の説明図である。
【0080】
図8に示す状態から第1の回転軸3によって内歯車6を矢印R1方向に回転させると、磁気引力の釣り合いが崩れ、第2の磁性歯部53Cと内側磁石片32Acとの間及び、第2の磁性歯部53Dと内側磁石片32Adとの間に周方向の引力が生じる。これにより、図9に示すように、第2の磁束収束部25C,25Dが第2の磁性歯部53C,53Dに対向する。
【0081】
内側磁石片32Ac,32Adが、第2の磁性歯部53C,53Dに対向すると、第2の磁性歯部53C,53Dの内側磁石片32Ac,32Adに対向する側が磁化されてS極となり、その反対側(外歯車5側)がN極となる。その結果、外歯車5が矢印R2方向に回転し、図9に示すような釣り合い状態になる。
【0082】
図10は、外歯車5の第3の磁束収束部25E,25Fがステータ歯車7の第3の磁性歯部53E,53Fに対向した状態の説明図である。
【0083】
図9に示す状態から第1の回転軸3によって内歯車6を矢印R1方向に回転させると、磁気引力の釣り合いが崩れ、第3の磁性歯部53Eと内側磁石片32Beとの間及び、第3の磁性歯部53Fと内側磁石片32Bfとの間に周方向の引力が生じる。これにより、図10に示すように、第3の磁束収束部25E,25Fが第3の磁性歯部53E,53Fに対向する。
【0084】
内側磁石片32Be,32Bfが、第3の磁性歯部53E,53Fに対向すると、第3の磁性歯部53E,53Fの内側磁石片32Be,32Bfに対向する側が磁化されてN極となり、その反対側(外歯車5側)がS極となる。その結果、外歯車5が矢印R2方向に回転し、図10に示すような釣り合い状態になる。
【0085】
図11は、外歯車5の第4の磁束収束部25G,25Hがステータ歯車7の第4の磁性歯部53G,53Hに対向した状態の説明図である。
【0086】
図10に示す状態から第1の回転軸3によって内歯車6を矢印R1方向に回転させると、磁気引力の釣り合いが崩れ、第4の磁性歯部53Gと内側磁石片32Agとの間及び、第4の磁性歯部53Hと内側磁石片32Ahとの間に周方向の引力が生じる。これにより、図11に示すように、第4の磁束収束部25G,25Hが第4の磁性歯部53G,53Hに対向する。
【0087】
内側磁石片32Ag,32Ahが、第4の磁性歯部53G,53Hに対向すると、第4の磁性歯部53G,53Hの内側磁石片32Ag,32Ahに対向する側が磁化されてS極となり、その反対側(外歯車5側)がN極となる。その結果、外歯車5が矢印R2方向に回転し、図11に示すような釣り合い状態になる。
【0088】
図12は、外歯車5の第5の磁束収束部25I,25Jがステータ歯車7の第5の磁性歯部53I,53Jに対向した状態の説明図である。
【0089】
図11に示す状態から第1の回転軸3によって内歯車6を矢印R1方向に回転させると、磁気引力の釣り合いが崩れ、第5の磁性歯部53Iと内側磁石片32Biとの間及び、第5の磁性歯部53Jと内側磁石片32Bjとの間に周方向の引力が生じる。これにより、図12に示すように、第5の磁束収束部25I,25Jが第5の磁性歯部53I,53Jに対向する。
【0090】
内側磁石片32Bi,32Bjが、第5の磁性歯部53I,53Jに対向すると、第5の磁性歯部53I,53Jの内側磁石片32Bi,32Bjに対向する側が磁化されてN極となり、その反対側(外歯車5側)がS極となる。その結果、外歯車5が矢印R2方向に回転し、図12に示すような釣り合い状態になる。
【0091】
第1の回転軸3によって内歯車6を矢印R1方向に回転させると、外歯車5が矢印R2方向に回転し、図8に示す状態から図12に示す状態に遷移する。そして、第5の磁性歯部53I,53Jは、矢印R1方向で第1の磁性歯部53A,53Bに隣り合う。磁気引力の釣り合いを繰り返して行うことで、磁気歯車装置1の状態が遷移する。外歯車5は、内歯車6よりも小さく回転し、本例では、内歯車6の回転角の1/5程度回転する。
【0092】
1−3.磁気歯車装置の磁束密度
次に、本例の磁気歯車装置1に用いられている磁石片の配列と磁束密度の分布について図13を参照して説明する。
図13Aは内側磁石片32A,32Bの配列と磁束密度の分布の関係を示す説明図であり、図13Bは第1外側磁石片22A,22B及び第2外側磁石片23A,23Bの配列と磁束密度の分布を示す説明図である。
【0093】
図13Aに示すように、内側磁石片32A,32Bは、異なる磁極が内側筒31の筒孔31aの周方向に隣り合うように配置されている。内側磁石片32A,32Bが内側筒31の径方向に磁化されているので、この配列の磁束密度の分布は略台形状に形成される。
【0094】
本例では、外歯車5よりも磁極数が少ない内歯車6の磁極片を図13Aに示す配列とした。内歯車6には、内側磁石片32A,32Bが内歯車6の周方向に交互に配置されているため、比較的大きい値の磁束密度を広範囲に渡って得ることができ、磁束密度の平均値が大きくなる。その結果、磁極数の少なくても大きな伝達トルクを得ることができる。
【0095】
図13Bに示すように、第1外側磁石片22A,22B及び第2外側磁石片23A,23Bの同じ磁極が外側筒21の径方向及び周方向に隣り合うように配置されている。第1外側磁石片22A,22B及び第2外側磁石片23A,23Bの配列では、磁束がV字状に形成された磁束収束部25に集中する。磁束密度の分布は、磁束が集まる磁束収束部25の狭い範囲で突出する。
【0096】
本例では、内歯車6よりも磁極数が多い外歯車5の磁極片を図13Bに示す配列とした。外歯車5には、多数の磁束収束部25が狭い間隔で設けられているため、ピークの大きな磁束密度を連続して得ることができる。そのため、磁束密度の平均値を大きくすることができ、大きな伝達トルクを得ることができる。
【0097】
本例の磁気歯車装置1では、隣り合う第2外側磁石片23A,23B間にV字状の溝部である磁束収束部25A〜25Jを形成した(図8〜図12参照)。これら磁束収束部25A〜25Jには、磁束が集中する。そして、磁束収束部25A〜25Jの磁束がステータ歯車7の幅の狭い磁性歯部53A〜53Jを通るため、外歯車5と内歯車6との間に生じる磁気引力を増大させることができる。その結果、磁気歯車装置1は、大きな伝達トルクを得ることができ、かつ、伝達効率を向上させることができる。
【0098】
2.第2の実施の形態例
次に、図14及び図15を参照して本発明の磁気歯車装置の第2の実施の形態例について説明する。
図14は本発明の第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の外歯車の磁石片の要部を示す説明図である。
【0099】
この第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置100が第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と異なるところは、磁束収束部の構成である。そのため、ここでは、外歯車の構成に関連する事項について説明し、磁気歯車装置1と共通する部分は同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0100】
[外歯車]
外歯車105について、図14及び図15を参照して説明する。
図14に示すように、外歯車105は、外側筒21と、複数の第1外側磁石片22A,22Bと、複数の第2外側磁石片23A,23Bから構成されている。
【0101】
外側筒21の筒孔21aには、複数の第1外側磁石片22A,22Bが配置されている。複数の第1外側磁石片22A,22Bの内周部には、複数の第2外側磁石片23A,23Bが並べられている。つまり、第2外側磁石片23A,23Bは、第1外側磁石片22A,22Bよりも外側筒21の径方向の内側に配置されている。
【0102】
第1外側磁石片22Aと第1外側磁石片22Bは、異なる磁極が外側筒21の周方向に交互に配置されている。一方、複数の第2外側磁石片23A,23Bは、同じ磁極が外側筒21の周方向に隣り合うように並べられている。
【0103】
そして、第2外側磁石片23A,23BのN極と第1外側磁石片22AのN極が外側筒21の径方向で隣り合う。また、第2外側磁石片23A,23BのS極と第1外側磁石片22AのS極が外側筒21の径方向で隣り合う。
【0104】
第2外側磁石片23A,23Bは、外側筒21の周方向における両端に切欠き部を有している。第2外側磁石片23A,23Bが外側筒21の周方向に隣り合って配置されているため、この切欠き部は、V字状の溝部を形成する。
【0105】
そして、このV字状の溝部には強磁性体124が挿入される。挿入された強磁性体124は、複数の第1外側磁石片22A,22Bと、複数の第2外側磁石片23A,23Bにより、磁化され、磁束収束部125を形成する。磁束収束部125では、同じ磁極が外側筒21の径方向及び周方向に隣り合うため、磁束が集中する。
【0106】
本発明の第2の実施の形態例における磁気歯車装置100では、V字状の溝部に強磁性体124を挿入して磁束収束部125を形成しているが、これに限定されない。例えば、切り欠きを有さない第2外側磁石片が間隔を開けて並べられることにより複数の凹部を形成する。そして、これらの複数の凹部に複数の強磁性体を挿入して磁束収束部を形成してもよい。
【0107】
凹部に強磁性体を挿入して磁束収束部を形成する場合、外歯車5の磁極数、内歯車6の磁極数及び磁性体角度により、得られる伝達トルクが異なる。ここで、磁性体角度とは、凹部に挿入された強磁性体における第2外側磁石片23A,23Bに当接する端部を磁気歯車装置の中心からみた角度をいう。
【0108】
例えば、外歯車5の磁極数を22極とし、内歯車6の磁極数を4極とした場合、磁性体角度を2°〜3°とすると、永久磁石の使用量に少なくすることができるとともに、大きな伝達トルクを得ることができる。
【0109】
なお、強磁性体の材料としては、例えば、電磁鋼板等を用いることができる。
【0110】
次に、本発明の第2の実施の形態例における磁気歯車装置の磁束収束部と磁束密度の分布について図15A及び図15Bを参照して説明する。
図15は本発明の磁気歯車装置の磁束収束部と磁束密度の分布を示す説明図である。図15Aは本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における磁束収束部の磁束密度の分布を示す説明図であり、図15Bは本発明の第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における磁束収束部の磁束密度の分布を示す説明図である。
【0111】
図15A及び図15Bの左図はそれぞれ第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1の磁束収束部25、第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置100の125の法線方向の磁束密度を示している。また、図15A及び図15Bの右図はそれぞれ第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1の磁束収束部25、第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置100の125の接線方向の磁束密度を示している。
【0112】
まず、図15Aの左図及び図15Bの左図を比較すると、磁束収束部25の法線方向の磁束密度の最大値は約1.2Tであるのに対して、磁束収束部125の法線方向の磁束密度の最大値は約1.4Tである。磁束収束部125の法線方向の磁束密度は、磁束収束部25の法線方向の磁束密度の1.2倍程度となる。
【0113】
そして、図15Aの右図及び図15Bの右図を比較すると、磁束収束部25の接線方向の磁束密度の最大値は0.1Tであるのに対して、磁束収束部125の接線方向の磁束密度の最大値は0.12Tである。磁束収束部125の接線方向の磁束密度は、磁束収束部25の接線方向の磁束密度より大きくなる。
【0114】
ここで、磁気歯車装置における伝達トルクの平均値は、磁束収束部の法線方向と接線方向の積を周方向に足し合わせたものに相当する。磁束収束部125の法線方向及び接線方向の磁束密度は、磁束収束部25の法線方向及び接線方向の磁束密度よりも大きいため、磁気歯車装置100は、強磁性体124を挿入していない磁気歯車装置1よりも伝達トルクの平均値が大きくなり、伝達トルクを向上させることができる。
【0115】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する磁気歯車装置100によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0116】
3.第3の実施の形態例
次に、図16及び図17を参照して本発明の磁気歯車装置の第3の実施の形態例について説明する。
図16は本発明の第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置を示す断面図であり、図17は本発明の第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の磁石片の配列と磁束密度の分布を示す説明図である。
【0117】
この第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置200が第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と異なるところは、内歯車の構成である。そのため、ここでは、内歯車の構成に関連する事項について説明し、磁気歯車装置1と共通する部分は同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0118】
[内歯車]
内歯車206について、図16及び図17を参照して説明する。
図16に示すように、内歯車206は、内側筒31と、複数の第1内側磁石片232A,232Bと、複数の第2内側磁石片233A,233Bから構成されている。
【0119】
複数の第1内側磁石片232A,232B及び複数の第2内側磁石片233A,233Bは、内側筒31の外周部に固定されている。第1内側磁石片232Aと第1内側磁石片232Bは、内側筒31の周方向に間隔を開けて交互に配設されている。そして、第2内側磁石片233A,233Bは、第1内側磁石片232A,232Bの間に介在され、内側筒31の周方向に交互に配置される。
【0120】
複数の第1内側磁石片232A,232Bは、それぞれ内側筒31の軸方向に長い略長方形の板状の永久磁石である。複数の第1内側磁石片232A,232Bは、内側筒31の径方向に磁化されている。
【0121】
第1内側磁石片232Aは、内側筒31の径方向の外側(外歯車5側)がN極であり、内側筒31の径方向の内側(第1の回転軸3側)がS極である。一方、第1内側磁石片232Bは、内側筒31の径方向の外側(外歯車5側)がS極であり、内側筒31の径方向の内側(第1の回転軸3側)がN極である。
【0122】
複数の第2内側磁石片233A,233Bは、それぞれ内側筒31の軸方向に長い略長方形の板状の永久磁石である。複数の第2内側磁石片233A,233Bは、内側筒31の周方向に磁化されている。
【0123】
第2内側磁石片233Aは、内側筒31の周方向の一側がN極であり、内側筒31の周方向の他側がS極である。一方、第2内側磁石片233Bは、内側筒31の周方向の一側がS極であり、内側筒31の周方向の他側がN極である。
【0124】
次に、本発明の第3の実施の形態例における第1内側磁石片232A,232B及び第2内側磁石片233A,233Bの配列と磁束密度の分布について図17を参照して説明する。
【0125】
本実施の形態では、内側筒31の径方向に磁化された第1内側磁石片232A,232Bと内側筒31の周方向に磁化された第2内側磁石片233A,233Bが交互に配置されている。図17に示すように、このような配列にすると、第1内側磁石片232A,232B及び第2内側磁石片233A,233Bから磁束が逃げにくくなり、磁束密度の分布は正弦曲線を形成する。
【0126】
この磁束密度の分布では、滑らかな磁束密度を得ることができる。これにより、磁束密度の大きさが滑らかに変化するため、磁気歯車装置におけるコギングトルクを小さくすることができる。
【0127】
また、この磁束密度の分布では、広範囲に渡って大きな磁束密度を得ることができ、磁束密度の平均値を大きくすることができる。その結果、磁極数が少ない内歯車206において磁束密度の平均値を大きくすることができるため、大きな伝達トルクを得ることができる。
【0128】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する磁気歯車装置200によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0129】
また、第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置200に、第2の実施の形態例で用いられた外歯車105を適用することもできる。これにより、磁束収束部の法線方向及び接線方向の磁束密度が大きくなり、大きな伝達トルクを得ることができる。
【0130】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0131】
1,100,200・・・磁気歯車装置、2・・・ケース、3・・・第1の回転軸、4・・・第2の回転軸、5,105・・・外歯車、6,206・・・内歯車、7・・・ステータ歯車、11・・・底板、12・・・第1の支持板、13・・・第2の支持板、14・・・補強片、16,17,18,19・・・軸受、21・・・外側筒、21a・・・筒孔、22A,22B・・・第1外側磁石片、23A,23B・・・第2外側磁石片、25,125・・・磁束収束部、25A,25B・・・第1の磁束収束部、25C,25D・・・第2の磁束収束部、25E,25F・・・第3の磁束収束部、25G,25H・・・第4の磁束収束部、25I,25J・・・第5の磁束収束部、31・・・内側筒、31a・・・筒孔、32A,32B・・・内側磁石片、41・・・本体部、42・・・ステータ部材、42a・・・内周部、42b・・・磁性片、42c・・・溝部、47・・・ベース部、47a・・・貫通孔、47b・・・凹部、50・・・固定部、53・・・磁性歯部、53A,53B・・・第1の磁性歯部、53C,53D・・・第2の磁性歯部、53E,53F・・・第3の磁性歯部、53G,53H・・・第4の磁性歯部、53I,53J・・・第5の磁性歯部、124・・・強磁性体、232A,232B・・・第1内側磁石片、233A,233B・・・第2内側磁石片
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気引力又は斥力を利用して動力を伝達する磁気歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車は、トルクなどの動力を伝達する機械要素である。一般的な歯車は、原動側の歯と従動側の歯が接触することで動力を伝達するため、原動側の歯と従動側の歯との間に摩擦が生じる。したがって、原動側の歯と従動側の歯との間には、潤滑剤が必要になる。また、原動側の歯と従動側の歯との接触による騒音も発生する。そこで、近年、歯の接触の無い磁気歯車が開発されている。磁気歯車は、非接触でトルクを伝達するため、潤滑剤を必要とせず、且つ、無騒音で駆動させることができる。
【0003】
一方、ロボットや複写機等に用いられる減速機構には、過大なトルクが作用したときにそのトルクを遮断(動力伝達を遮断)するトルクリミッタ機能を有するものが要求されている。磁気歯車は、トルクリミッタ機能を有するため、簡単な構造でトルクリミッタ機能を備えた減速機構を構成することができる。
【0004】
磁気歯車装置としては、例えば、非特許文献1に記載されているものがある。この非特許文献1に記載された磁気歯車装置は、円筒状のハイスピードロータ及びロースピードロータを有しており、ハイスピードロータの外周面が、ロースピードロータの内周面に対向している。そして、ハイスピードロータの外周面に取り付けた磁石片とロースピードロータの内周面に取り付けた磁石片との間に生じる磁気引力を利用して、ハイスピードロータの動力をロースピードロータに伝達する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K.Atallah and D.Howe,「A Novel High−Performance Magnetic Gear」,IEEE Transactions on Magnetics,JULY 2001,Vol.37. No.4,p.2844−2846
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載された磁気歯車装置では、ハイスピードロータ及びロースピードロータにそれぞれ取り付けられた磁石片が厚み方向(ロータの径方向)に磁化されている。そのため、ロータの径方向に対向した磁石片間に生じる磁気引力が伝達トルクの大きさを決定することになり、実用的な大きさの伝達トルクを得ることが難しかった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を考慮し、大きな伝達トルクを得ることができる磁気歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の磁気歯車装置は、外歯車と、内歯車と、ステータ歯車と、を備えている。
外歯車は、円形の筒孔を有する外側筒と、筒孔の径方向に磁化されて外側筒の内周部に取り付けられた複数の第1外側磁石片と、筒孔の周方向に磁化されて複数の第1外側磁石片に取り付けられた複数の第2外側磁石片とを有する。複数の第1外側磁石片は、異なる磁極が筒孔の周方向に隣り合うように並び、複数の第2外側磁石片は、同じ磁極が筒孔の周方向に隣り合うように並ぶことにより、複数の第1外側磁石片及び複数の第2外側磁石片は、磁束が集中する磁束収束部を形成する。
内歯車は、外歯車の筒孔に配置され、円筒状の内側筒と、内側筒の外周部に取り付けられた複数の内側磁石片とを有する。
ステータ歯車は、外歯車と内歯車との間に配置され、筒孔の周方向に所定の間隔を開けて並ぶ複数の磁性歯部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の磁気歯車装置によれば、第1外側磁石片と複数の第2外側磁石片の同じ磁極が外側筒の周方向及び径方向に隣り合うように配置しているため、磁束が集中する磁束収束部が形成されている。磁束収束部の磁束がステータ歯車の磁性歯部を通り、内歯車の内側磁石片に作用するため、外歯車と内歯車との間に生じる磁気引力を大きくすることができる。その結果、大きな伝達トルクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置を示す断面図である。
【図2】図1に示すA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の外歯車の分解斜視図である。
【図4】図4Aは本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の外歯車の断面図であり、図4Bは図4Aに示すB−B線に沿う断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置のステータ歯車の斜視図である。
【図6】図6Aは本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置のステータ歯車の断面図であり、図6Bは図6Aに示すC−C線に沿う断面図である。
【図7】図7Aは本発明の第1の実施の形態例にかかるステータ歯車のステータ部材の平面図であり、図7Bは本発明の第1の実施の形態例にかかるステータ歯車のステータ部材を積層した状態を示す側面図である。図7Cは本発明の第1の実施の形態例にかかるステータ歯車におけるステータ部材に固定部が介在された状態を示す側面図であり、図7Dは本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置におけるステータ歯車の本体部の平面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における外歯車の第1の磁束収束部がステータ歯車の磁性歯部に対向した状態の説明図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における外歯車の第2の磁束収束部がステータ歯車の磁性歯部に対向した状態の説明図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における外歯車の第3の磁束収束部がステータ歯車の磁性歯部に対向した状態の説明図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における外歯車の第4の磁束収束部がステータ歯車の磁性歯部に対向した状態の説明図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における外歯車の第1の磁束収束部が図8に示す磁性歯部の隣の磁性歯部に対向した状態の説明図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の磁石片の配列と磁束密度の分布を示す説明図である。図13Aは内歯車の磁石片の配列と磁束密度の分布を示す説明図であり、図13Bは外歯車の磁石片の配列と磁束密度の分布を示す説明図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の外歯車の磁石片の要部を示す説明図である。
【図15】図15は本発明の磁気歯車装置の磁束収束部と磁束密度の分布を示す説明図である。図15Aは本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における磁束収束部の磁束密度の分布を示す説明図であり、図15Bは本発明の第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における磁束収束部の磁束密度の分布を示す説明図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置を示す断面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における内歯車の磁石片の配列と磁束密度の分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の磁気歯車装置の実施の形態例について、図1〜図17を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態例
1−1.磁気歯車装置の構成
1−2.磁気歯車装置の動作
1−3.磁気歯車装置の磁束密度
2.第2の実施の形態例
3.第3の実施の形態例
【0012】
<1.第1の実施の形態例>
1−1.磁気歯車装置の構成
まず、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる磁気歯車装置について、図1を参照して説明する。
図1は本例にかかる磁気歯車装置の構成を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の磁気歯車装置1は、ケース2と、第1の回転軸3と、第2の回転軸4と、外歯車5と、内歯車6と、ステータ歯車7を備えている。外歯車5は、第2の回転軸4に固定され、内歯車6は、第1の回転軸3に固定されている。また、ステータ歯車7は、ケース2に固定されている。
【0014】
ケース2は、非磁性材料により形成された筐体である。ケース2の材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム、銅等の金属、又は合成樹脂を挙げることができる。
【0015】
このケース2は、中空部2aと開口部2bを有している。ケース2の中空部2aには、外歯車5、内歯車6及びステータ歯車7が配置される。そして、ケース2の開口部2bでは、中空部2aに配置された外歯車5及びステータ歯車7の一部が露出する。
【0016】
また、ケース2は、底板11と、第1の支持板12と、第2の支持板13と、補強片14を備えている。底板11は、開口部2bと対向して配置される。そして、第1の支持板12と第2の支持板13は、底板11に連続して略垂直に突出している。第1の支持板12は、第2の支持板13に対向している。この第2の支持板13には、軸受17が設けられており、第2の支持板13の外面には、補強片14が固定されている。この補強片14は、軸受18を備えている。
【0017】
第1の回転軸3は、非磁性材料から形成されている。第1の回転軸3の材料としては、ケース2の材料と同様の材料を挙げることができる。
【0018】
第1の回転軸3は、第1の支持板12とステータ歯車7の後述するベース部47を貫通している。このベース部47には、軸受16が設けられている。第1の回転軸3は、ベース部47に設けられた軸受16を介してステータ歯車7のベース部47に回転可能に取り付けられている。
【0019】
第2の回転軸4は、第1の回転軸3と同様に、非磁性材料から形成されている。第2の回転軸4の材料としては、ケース2の材料と同様の材料を挙げることができる。
【0020】
第2の回転軸4は、軸部4aと、円板部4bから構成されている。軸部4aは、第2の支持板13と補強片14を貫通している。この軸部4aは、軸受17を介して第2の支持板13に取り付けられ、軸受18を介して補強片14に回転可能に取り付けられている。
【0021】
第2の回転軸4の円板部4bは、軸部4aの先端に設けられている。また、円板部4bにおける軸部4aと反対側の面には、軸受19が設けられている。この円板部4bには、軸受19を介して第1の回転軸3の先端部が回転可能に取り付けられる。さらに、第1の回転軸3の軸心と第2の回転軸4の軸心は互いに一致する。
【0022】
軸受16,17,18及び19は、それぞれ転動体16a,17a,18a及び19aを有する転がり軸受(ボールベアリング)である。これら軸受16〜19の転動体16a〜19aは、非磁性材料または炭素含有量が多い材料によって形成することが好ましい。通常使用される転がり軸受は、硬度を確保するための焼き入れを行うため、炭素含有量は多い。したがって、そのような通常の転がり軸受を用いてもよい。
【0023】
なお、本発明に係る軸受は、転がり軸受に限定されるものではなく、例えば、すべり軸受、流体軸受等を適用することもできる。
【0024】
[内歯車]
次に、内歯車6について、図2を参照して説明する。
図2は図1に示す本例にかかる磁気歯車装置のA−A線に沿う断面図である。
図2に示すように、内歯車6は、内側筒31と、複数の内側磁石片32A,32Bとから構成されている。そして、内歯車6は、外歯車5内に配置されている(図1参照)。
【0025】
内側筒31は、円形の筒孔31aを有する円筒形状に形成されている。筒孔31aには、第1の回転軸3が嵌合されている。この内側筒31は、磁性材料により形成されている。内側筒31の材料としては、例えば、鉄や珪素鋼板等が挙げられる。
【0026】
内側筒31を、鉄や珪素鋼板等の板状部材を複数積層して形成してもよい。複数の板状部材を積層して内側筒31を形成する場合、カシメ、溶接、接着剤等の固着方法により固着され一体として成形される。
【0027】
内歯車6が回転すると、内側筒31の軸方向に渦電流が流れる。しかしながら、複数の板状部材を積層して内側筒31を形成した場合、複数の板状部材を積層した際に生じる微細な隙間が抵抗となり、渦電流を遮断することができる。そのため、渦電流によるトルクの損失を抑えることができる。なお、渦電流の遮断をより確実にするために、重なり合う板状部材間に電流絶縁材あるいは電流絶縁塗膜を介在させてもよい。
【0028】
この内側筒31の外周部には、複数の内側磁石片32A,32Bが取り付けられている。複数の内側磁石片32A,32Bは、それぞれ内側筒31の軸方向に長い板状の永久磁石である。複数の内側磁石片32A,32Bは、内側筒31の径方向に磁化されている。
【0029】
内側磁石片32Aは、内側筒31の径方向の外側(外歯車5側)がN極であり、内側筒31の径方向の内側(第1の回転軸3側)がS極である。一方、内側磁石片32Bは、内側筒31の径方向の外側(外歯車5側)がS極であり、内側筒31の径方向の内側(第1の回転軸3側)がN極である。
【0030】
これらの複数の内側磁石片32A,32Bは、内側筒31の周方向に交互に配設されている。そのため、複数の内側磁石片32A,32Bは、異なる磁極が内側筒31の筒孔31aの周方向に隣り合うように並べられている。
【0031】
本例では、複数の内側磁石片32A,32Bを磁性材料からなる内側筒31に貼り付けることにより、内側筒31の磁気モーメントを揃えて、大きな表面磁束密度を得ることができる。また、複数の内側磁石片32A,32Bは、磁気引力によって内側筒31の外周部に吸着させることができるため、複数の内側磁石片32A,32Bを内側筒31の外周部に簡単に取りつけることができる。
【0032】
[外歯車]
次に、外歯車5について、図3及び図4を参照して説明する。
図3は本例にかかる磁気歯車装置の外歯車の分解斜視図である。また、図4Aは本例にかかる磁気歯車装置の外歯車の断面図であり、図4Bは図4Aに示すB−B線に沿う断面図である。
【0033】
図3に示すように、外歯車5は、外側筒21と、複数の第1外側磁石片22A,22Bと、複数の第2外側磁石片23A,23Bから構成されている。
【0034】
外側筒21は、円形の筒孔21aを有する円筒形状に形成されている。また、図3及び図4Aに示すように、外側筒21は、筒孔21aから径方向内側に向かって突出する突起部21bを有している。外側筒21の軸方向の一側から第2の回転軸4の円板部4bが挿入されて、筒孔21aに円板部4bが嵌合されている。そして、外側筒21の突起部21bは、第2の回転軸4の円板部4bに当接している(図4A参照)。この外側筒21は、磁性材料で形成されている。なお、外側筒21の材料としては、例えば、鉄や珪素鋼板等が挙げられるが、積層鉄心が好ましい。
【0035】
積層鉄心を用いて外側筒21を形成すると、重なり合う板状部材間の微細な間隙が抵抗になり、外側筒21の軸方向に流れる渦電流を遮断することができる。渦電流の遮断をより確実にするために、重なり合う板状部材間に電流絶縁材あるいは電流絶縁塗膜を介在させてもよい。
【0036】
図4Bに示すように、外側筒21の筒孔21aには、複数の第1外側磁石片22A,22Bが筒孔21aの周方向に並べられている。複数の第1外側磁石片22A,22Bの内周部には、複数の第2外側磁石片23A,23Bが並べられている。つまり、第2外側磁石片23A,23Bは、第1外側磁石片22A,22Bよりも外側筒21の径方向の内側に配置されている。
【0037】
複数の第1外側磁石片22A,22Bは、それぞれ外側筒21の軸方向に沿った細長い略棒状の永久磁石である(図3参照)。そして、複数の第1外側磁石片22A,22Bは、外側筒21の径方向に磁化されている。
【0038】
第1外側磁石片22Aは、外側筒21の径方向の外側がN極であり、外側筒21の径方向の内側がS極である。一方、第1外側磁石片22Bは、外側筒21の径方向の外側がS極であり、外側筒21の径方向の内側がN極である。第1外側磁石片22Aと第1外側磁石片22Bは、異なる磁極が外側筒21の周方向に交互に配置されている。
【0039】
複数の第2外側磁石片23A,23Bは、それぞれ外側筒21の軸方向に沿った細長い略棒状の永久磁石である(図3参照)。そして、複数の第2外側磁石片23A,23Bは、外側筒21の周方向に磁化されている。
【0040】
第2外側磁石片23Aは、外側筒21の周方向の一側がN極であり、外側筒21の周方向の他側がS極である。一方、第2外側磁石片23Bは、外側筒21の周方向の一側がS極であり、外側筒21の周方向の他側がN極である。複数の第2外側磁石片23A,23Bは、同じ磁極が外側筒21の周方向に隣り合うように並べられている。
【0041】
また、第2外側磁石片23A,23BのN極は、第1外側磁石片22BのN極上に配置される。このとき、第2外側磁石片23A,23BのN極と第1外側磁石片22BのN極が外側筒21の径方向で隣り合う。そして、第2外側磁石片23A,23BのN極が隣り合う境界は、外側筒21の周方向における第1外側磁石片22Bの中間部に位置している。
【0042】
また、第2外側磁石片23A,23BのS極は、第1外側磁石片22AのS極上に配置される。このとき、第2外側磁石片23A,23BのS極と第1外側磁石片22AのS極が外側筒21の径方向で隣り合う。そして、第2外側磁石片23A,23BのS極が隣り合う境界は、外側筒21の周方向における第1外側磁石片22Aの中間部に位置している。
【0043】
第2外側磁石片23A,23Bは、外側筒21の周方向における両端に切欠き部を有している。第2外側磁石片23A,23Bが外側筒21の周方向に隣り合って配置されているため、この切欠き部は対向してV字状の溝部となり、磁束収束部25を形成する。磁束収束部25は、同じ磁極が外側筒21の径方向及び周方向に隣り合うため、磁束が集中する。
【0044】
この切欠き部により形成された磁束収束部25には、磁束が集中するため磁束密度が向上し、トルクを大きくすることができる。また、第2外側磁石片23A,23Bに切欠き部を設けたことにより、永久磁石の使用量を少なくすることができる。
【0045】
本例の磁束収束部25は、V字状の溝部により形成されているが、これに限定されない。例えば、切り欠きを有さない第2外側磁石片が間隔を開けて並べられることにより凹部を形成し、この凹部を磁束収束部としてもよい。
【0046】
[ステータ歯車]
次に、図5〜図7を参照してステータ歯車7について説明する。
図5は本例にかかる磁気歯車装置のステータ歯車の斜視図である。
また、図6Aは本例にかかる磁気歯車装置のステータ歯車の断面図であり、図6Bは図6Aに示すC−C線に沿う断面図である。
さらに、図7Aは本例にかかるステータ歯車のステータ部材の平面図であり、図7Bは本例にかかるステータ歯車のステータ部材を積層した状態を示す側面図である。図7Cは本例のステータ歯車におけるステータ部材に固定部が介在された状態を示す側面図であり、図7Dは本例のステータ歯車の本体部の平面図である。
【0047】
図5に示すように、ステータ歯車7は、本体部41と、本体部41を支持するベース部47により構成されている。このステータ歯車7は、ケース2の第1の支持板12に取り付けられ(図1参照)、外歯車5と内歯車6との間に配置される。
【0048】
本体部41は、略円筒形に形成されている。この本体部41は、複数の固定部50と、複数の磁性歯部53から構成されている。複数の磁性歯部53は、本体部41の周方向に沿って、略等間隔を開けて配置されている。すなわち、複数の磁性歯部53は、外歯車5の筒孔21aと同心円状に間隔を開けて並べられている(図2参照)。また、複数の磁性歯部53は、隣り合う磁性歯部53と間隔を開けて配置されているため、互いに独立している。
【0049】
磁性歯部53は、後述するステータ部材42の磁性片42b(図7A参照)が積層されることにより形成される。磁性歯部53は、本体部41の軸方向に対してスキューされている。すなわち、磁性歯部53は、本体部41の中心軸回りに回転するように捻れて配置される。
【0050】
固定部50は、磁性歯部53の間に介在される。この固定部50は、例えば合成樹脂からなる固定部材により形成される。
【0051】
ベース部47は、略円板形に形成されている。このベース部47は、本体部41の軸方向の一側に取り付けられている。図6A及び図6Bに示すように、ベース部47は、貫通孔47aと、凹部47bを有している。貫通孔47aは、ベース部47の中央部に設けられ、ベース部47の第1の支持板12に接続する面から反対側の面にかけて貫通している。この貫通孔47aには、第1の回転軸3が貫通する(図1参照)。
【0052】
ベース部47の凹部47bは、貫通孔47aの周囲に設けられ、本体部41に対向する面から窪んで形成される。この凹部47bには、軸受16が配設される(図1参照)。
【0053】
次に、本体部41の製造方法について、図7A〜図7Dを参照して説明する。
まず、磁性歯部53を形成するステータ部材42について説明する。
【0054】
図7Aに示すように、ステータ部材42は、中央部に円形の貫通孔を有する円板形状に形成されている。このステータ部材42は磁性材料からなり、ステータ部材42の材料としては、例えば、電磁鋼板等が用いられる。
【0055】
ステータ部材42は、連結部42aと、磁性片42bと、溝部42cを有している。ステータ部材42の連結部42aは、リング状に形成されており、ステータ部材42の径方向の内側に設けられている。
【0056】
ステータ部材42の磁性片42bは、略長方形の板状に形成されている。磁性片42bは、ステータ部材42の周方向に間隔を開けて複数設けられている。複数の磁性片42bの長手方向の一端部は、連結部42aに連続している。このため、複数の磁性片42bは、連結部42aを介して接続している。
【0057】
ステータ部材42の周方向に複数設けられている磁性片42bの間には、溝部42cが形成される。溝部42cは、磁性片42bと同様に、ステータ部材42の周方向に間隔を開けて複数設けられている。
【0058】
なお、磁性片の他端部が連結部と連続するようにステータ部材を形成してもよい。これにより、連結部はステータ部材の径方向の外側に設けられる。
【0059】
次に、本体部41の製造工程について、説明する。
図7Bに示すように、上述したステータ部材42をその周方向に少しずつ回転させて複数枚積層する。このとき、複数の磁性片42bは、ステータ部材42が回転した分だけずれて積層される。積層された複数の磁性片42bによって磁性歯部53が形成される。
【0060】
そして、図7Cに示すように、溝部42cには、固定部50が介在される。固定部50は、磁性歯部53の間に複数設けられており、隣り合う磁性歯部53を接続する。
【0061】
その後、図7Dに示すように、連結部42aを取り除き、複数の磁性歯部53と複数の固定部50を残す。これにより、円筒状の本体部41が完成する。
【0062】
本例では、円板状のステータ部材42をその周方向に回転させて、磁性片42bを周方向にずらして積層して磁性歯部53を形成した。他の例としては、円板状のステータ部材42をその周方向に回転させず、磁性片42bを積層させて磁性歯部を形成してもよい。
【0063】
また、本例では、樹脂により固定としたが、これに限定されない。例えば、カシメ、接着剤等によりステータ部材42を固定させてよい。
【0064】
従来の磁気歯車装置(上記非特許文献1を参照)では、ロースピードロータ(外歯車)とハイスピードロータ(内歯車)が反対方向に回転するため、ステータの磁性歯部の中で渦電流が発生する。渦電流が発生すると、レンツの法則によりロースピードロータ(外歯車)及びハイスピードロータ(内歯車)の回転に抗する電磁ブレーキが生じてトルク損失となる。
【0065】
これに対し、本例では、磁性片42bが積層されることで、磁性片42b間に微細な間隙が形成される。この間隙は、本体部41の軸方向に流れる渦電流の抵抗となり、遮断することができる。その結果、磁気歯車装置1における渦電流によるトルク損失を少なくすることができる。
【0066】
磁性歯部が一体に繋がった状態でステータ歯車を形成すると、磁性歯部全体に磁束が通ることになる。また、磁極の固有振動数を歯車の回転数の数倍にするためには、ステータ歯車7の磁性歯部53に剛性が必要となる。そのため、ステータ歯車7の磁性歯部53は、剛性があり、独立して形成されていることが好ましい。
【0067】
本例のステータ歯車7では、本体部41の製造時において、ステータ部材42に複数の磁性片42bが連結部42aに連続して形成されている。そして、固定部50をステータ部材42の溝部42cに介在させた後、連結部42aを取り除いている。これにより、磁性歯部53は、固定部50を介して独立した状態となる。このとき、磁性歯部53を通る磁束は、固定部50により遮断され、隣り合う磁性歯部53を通ることができなくなる。その結果、渦電流の発生を軽減することができ、トルク損失を軽減することができる。
【0068】
そして、隣り合う磁性歯部53の間に固定部50を介在させた。これにより、複数の磁性歯部53の剛性を増加させることができ、磁性歯部53の変形を防止することができる。
【0069】
さらに、本例では、ステータ部材42を回転させて積層しているため、磁性歯部53は、本体部41の中心軸回りに回転するように捻れて配置される。これにより、磁気回路が本体部41の周方向にずれて配置され、磁性歯部53を通る磁束の急激な変化を抑制することができる。また、ステータ歯車7と、外歯車5の第1外側磁石片22A,22B、第2外側磁石片23A,23B及び内歯車6の内側磁石片32A,32Bとの引力及び斥力を小さく抑えることができる。その結果、磁気歯車装置1のコギングトルクを小さくすることができる。
【0070】
なお、本例のステータ部材42の材料を電磁鋼板として説明したが、これに限定されない。ステータ部材42の材料として、例えば圧粉磁心を用いてもよい。圧粉磁心は、鉄粉同士が絶縁されているため、電気抵抗が高い。圧粉磁心によりステータ部材42を形成した場合、磁性歯部53の電気抵抗が高くなるため渦電流が流れにくくなる。その結果、磁気歯車装置1における渦電流によるトルク損失を少なくすることができる。
【0071】
そして、圧粉磁心は安価であるため、圧粉磁心によりステータ部材42を形成すると材料コストを低減できる。また、圧粉磁心は成形しやすいため、容易にステータ部材42を製造することができる。
【0072】
ステータ歯車7の磁性歯部53の強度を考慮すると、一端(基端)を固定支持して他端(先端)を自由にした片持ち形状にする必要がある。そのため、ステータ歯車7は、本体部41の一端をベース部47に固定することで、一体に形成されている。したがって、磁束は、ベース部47にも漏れる構造となっている。
【0073】
これに対して、本例の磁気歯車装置1では、ケース2、第1の回転軸3及び第2の回転軸4を非磁性材料によって形成した。これにより、内歯車6からステータ歯車7のベース部47を通る磁気回路を遮断することができる。
【0074】
また、ケース2を導電性材料で形成する場合は、ステータ歯車7のベース部47とケース2との間に電流絶縁材あるいは電流絶縁塗膜を介在させて、ベース部47からケース2へ流れる渦電流を遮断することが好ましい。
【0075】
なお、内側磁石片の構成を、第1外側磁石片22A,22B及び第2外側磁石片23A,23Bと同様の構成としてもよい。つまり、内側筒31の径方向の外側(ステータ歯車7側)に向かってV字状に形成された磁束収束部を設ける構成としてもよい。
【0076】
1−2.磁気歯車装置の動作
次に、磁気歯車装置1の動作について、図8〜図12を参照して説明する。
図8は外歯車5の第1の磁束収束部25A,25Bがステータ歯車7の第1の磁性歯部53A,53Bに対向した状態を示す説明図である。
【0077】
図8に示すように、第1の磁性歯部53A,53Bは、内歯車6の内側磁石片32Ba,32Bbに対向する側が磁化されてN極となり、その反対側(外歯車5側)がS極となっている。そして、第1の磁束収束部25A,25Bは、第1の磁性歯部53A,53BのS極に対向している。
【0078】
この状態では、内側磁石片32Baと第1の磁性歯部53Aとの間及び、内側磁石片32Bbと第1の磁性歯部53Aとの間に生じる磁気引力は、径方向のみならず周方向にも釣り合っている。
【0079】
図9は、外歯車5の第2の磁束収束部25C,25Dがステータ歯車7の第2の磁性歯部53C,53Dに対向した状態の説明図である。
【0080】
図8に示す状態から第1の回転軸3によって内歯車6を矢印R1方向に回転させると、磁気引力の釣り合いが崩れ、第2の磁性歯部53Cと内側磁石片32Acとの間及び、第2の磁性歯部53Dと内側磁石片32Adとの間に周方向の引力が生じる。これにより、図9に示すように、第2の磁束収束部25C,25Dが第2の磁性歯部53C,53Dに対向する。
【0081】
内側磁石片32Ac,32Adが、第2の磁性歯部53C,53Dに対向すると、第2の磁性歯部53C,53Dの内側磁石片32Ac,32Adに対向する側が磁化されてS極となり、その反対側(外歯車5側)がN極となる。その結果、外歯車5が矢印R2方向に回転し、図9に示すような釣り合い状態になる。
【0082】
図10は、外歯車5の第3の磁束収束部25E,25Fがステータ歯車7の第3の磁性歯部53E,53Fに対向した状態の説明図である。
【0083】
図9に示す状態から第1の回転軸3によって内歯車6を矢印R1方向に回転させると、磁気引力の釣り合いが崩れ、第3の磁性歯部53Eと内側磁石片32Beとの間及び、第3の磁性歯部53Fと内側磁石片32Bfとの間に周方向の引力が生じる。これにより、図10に示すように、第3の磁束収束部25E,25Fが第3の磁性歯部53E,53Fに対向する。
【0084】
内側磁石片32Be,32Bfが、第3の磁性歯部53E,53Fに対向すると、第3の磁性歯部53E,53Fの内側磁石片32Be,32Bfに対向する側が磁化されてN極となり、その反対側(外歯車5側)がS極となる。その結果、外歯車5が矢印R2方向に回転し、図10に示すような釣り合い状態になる。
【0085】
図11は、外歯車5の第4の磁束収束部25G,25Hがステータ歯車7の第4の磁性歯部53G,53Hに対向した状態の説明図である。
【0086】
図10に示す状態から第1の回転軸3によって内歯車6を矢印R1方向に回転させると、磁気引力の釣り合いが崩れ、第4の磁性歯部53Gと内側磁石片32Agとの間及び、第4の磁性歯部53Hと内側磁石片32Ahとの間に周方向の引力が生じる。これにより、図11に示すように、第4の磁束収束部25G,25Hが第4の磁性歯部53G,53Hに対向する。
【0087】
内側磁石片32Ag,32Ahが、第4の磁性歯部53G,53Hに対向すると、第4の磁性歯部53G,53Hの内側磁石片32Ag,32Ahに対向する側が磁化されてS極となり、その反対側(外歯車5側)がN極となる。その結果、外歯車5が矢印R2方向に回転し、図11に示すような釣り合い状態になる。
【0088】
図12は、外歯車5の第5の磁束収束部25I,25Jがステータ歯車7の第5の磁性歯部53I,53Jに対向した状態の説明図である。
【0089】
図11に示す状態から第1の回転軸3によって内歯車6を矢印R1方向に回転させると、磁気引力の釣り合いが崩れ、第5の磁性歯部53Iと内側磁石片32Biとの間及び、第5の磁性歯部53Jと内側磁石片32Bjとの間に周方向の引力が生じる。これにより、図12に示すように、第5の磁束収束部25I,25Jが第5の磁性歯部53I,53Jに対向する。
【0090】
内側磁石片32Bi,32Bjが、第5の磁性歯部53I,53Jに対向すると、第5の磁性歯部53I,53Jの内側磁石片32Bi,32Bjに対向する側が磁化されてN極となり、その反対側(外歯車5側)がS極となる。その結果、外歯車5が矢印R2方向に回転し、図12に示すような釣り合い状態になる。
【0091】
第1の回転軸3によって内歯車6を矢印R1方向に回転させると、外歯車5が矢印R2方向に回転し、図8に示す状態から図12に示す状態に遷移する。そして、第5の磁性歯部53I,53Jは、矢印R1方向で第1の磁性歯部53A,53Bに隣り合う。磁気引力の釣り合いを繰り返して行うことで、磁気歯車装置1の状態が遷移する。外歯車5は、内歯車6よりも小さく回転し、本例では、内歯車6の回転角の1/5程度回転する。
【0092】
1−3.磁気歯車装置の磁束密度
次に、本例の磁気歯車装置1に用いられている磁石片の配列と磁束密度の分布について図13を参照して説明する。
図13Aは内側磁石片32A,32Bの配列と磁束密度の分布の関係を示す説明図であり、図13Bは第1外側磁石片22A,22B及び第2外側磁石片23A,23Bの配列と磁束密度の分布を示す説明図である。
【0093】
図13Aに示すように、内側磁石片32A,32Bは、異なる磁極が内側筒31の筒孔31aの周方向に隣り合うように配置されている。内側磁石片32A,32Bが内側筒31の径方向に磁化されているので、この配列の磁束密度の分布は略台形状に形成される。
【0094】
本例では、外歯車5よりも磁極数が少ない内歯車6の磁極片を図13Aに示す配列とした。内歯車6には、内側磁石片32A,32Bが内歯車6の周方向に交互に配置されているため、比較的大きい値の磁束密度を広範囲に渡って得ることができ、磁束密度の平均値が大きくなる。その結果、磁極数の少なくても大きな伝達トルクを得ることができる。
【0095】
図13Bに示すように、第1外側磁石片22A,22B及び第2外側磁石片23A,23Bの同じ磁極が外側筒21の径方向及び周方向に隣り合うように配置されている。第1外側磁石片22A,22B及び第2外側磁石片23A,23Bの配列では、磁束がV字状に形成された磁束収束部25に集中する。磁束密度の分布は、磁束が集まる磁束収束部25の狭い範囲で突出する。
【0096】
本例では、内歯車6よりも磁極数が多い外歯車5の磁極片を図13Bに示す配列とした。外歯車5には、多数の磁束収束部25が狭い間隔で設けられているため、ピークの大きな磁束密度を連続して得ることができる。そのため、磁束密度の平均値を大きくすることができ、大きな伝達トルクを得ることができる。
【0097】
本例の磁気歯車装置1では、隣り合う第2外側磁石片23A,23B間にV字状の溝部である磁束収束部25A〜25Jを形成した(図8〜図12参照)。これら磁束収束部25A〜25Jには、磁束が集中する。そして、磁束収束部25A〜25Jの磁束がステータ歯車7の幅の狭い磁性歯部53A〜53Jを通るため、外歯車5と内歯車6との間に生じる磁気引力を増大させることができる。その結果、磁気歯車装置1は、大きな伝達トルクを得ることができ、かつ、伝達効率を向上させることができる。
【0098】
2.第2の実施の形態例
次に、図14及び図15を参照して本発明の磁気歯車装置の第2の実施の形態例について説明する。
図14は本発明の第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の外歯車の磁石片の要部を示す説明図である。
【0099】
この第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置100が第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と異なるところは、磁束収束部の構成である。そのため、ここでは、外歯車の構成に関連する事項について説明し、磁気歯車装置1と共通する部分は同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0100】
[外歯車]
外歯車105について、図14及び図15を参照して説明する。
図14に示すように、外歯車105は、外側筒21と、複数の第1外側磁石片22A,22Bと、複数の第2外側磁石片23A,23Bから構成されている。
【0101】
外側筒21の筒孔21aには、複数の第1外側磁石片22A,22Bが配置されている。複数の第1外側磁石片22A,22Bの内周部には、複数の第2外側磁石片23A,23Bが並べられている。つまり、第2外側磁石片23A,23Bは、第1外側磁石片22A,22Bよりも外側筒21の径方向の内側に配置されている。
【0102】
第1外側磁石片22Aと第1外側磁石片22Bは、異なる磁極が外側筒21の周方向に交互に配置されている。一方、複数の第2外側磁石片23A,23Bは、同じ磁極が外側筒21の周方向に隣り合うように並べられている。
【0103】
そして、第2外側磁石片23A,23BのN極と第1外側磁石片22AのN極が外側筒21の径方向で隣り合う。また、第2外側磁石片23A,23BのS極と第1外側磁石片22AのS極が外側筒21の径方向で隣り合う。
【0104】
第2外側磁石片23A,23Bは、外側筒21の周方向における両端に切欠き部を有している。第2外側磁石片23A,23Bが外側筒21の周方向に隣り合って配置されているため、この切欠き部は、V字状の溝部を形成する。
【0105】
そして、このV字状の溝部には強磁性体124が挿入される。挿入された強磁性体124は、複数の第1外側磁石片22A,22Bと、複数の第2外側磁石片23A,23Bにより、磁化され、磁束収束部125を形成する。磁束収束部125では、同じ磁極が外側筒21の径方向及び周方向に隣り合うため、磁束が集中する。
【0106】
本発明の第2の実施の形態例における磁気歯車装置100では、V字状の溝部に強磁性体124を挿入して磁束収束部125を形成しているが、これに限定されない。例えば、切り欠きを有さない第2外側磁石片が間隔を開けて並べられることにより複数の凹部を形成する。そして、これらの複数の凹部に複数の強磁性体を挿入して磁束収束部を形成してもよい。
【0107】
凹部に強磁性体を挿入して磁束収束部を形成する場合、外歯車5の磁極数、内歯車6の磁極数及び磁性体角度により、得られる伝達トルクが異なる。ここで、磁性体角度とは、凹部に挿入された強磁性体における第2外側磁石片23A,23Bに当接する端部を磁気歯車装置の中心からみた角度をいう。
【0108】
例えば、外歯車5の磁極数を22極とし、内歯車6の磁極数を4極とした場合、磁性体角度を2°〜3°とすると、永久磁石の使用量に少なくすることができるとともに、大きな伝達トルクを得ることができる。
【0109】
なお、強磁性体の材料としては、例えば、電磁鋼板等を用いることができる。
【0110】
次に、本発明の第2の実施の形態例における磁気歯車装置の磁束収束部と磁束密度の分布について図15A及び図15Bを参照して説明する。
図15は本発明の磁気歯車装置の磁束収束部と磁束密度の分布を示す説明図である。図15Aは本発明の第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における磁束収束部の磁束密度の分布を示す説明図であり、図15Bは本発明の第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置における磁束収束部の磁束密度の分布を示す説明図である。
【0111】
図15A及び図15Bの左図はそれぞれ第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1の磁束収束部25、第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置100の125の法線方向の磁束密度を示している。また、図15A及び図15Bの右図はそれぞれ第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1の磁束収束部25、第2の実施の形態例にかかる磁気歯車装置100の125の接線方向の磁束密度を示している。
【0112】
まず、図15Aの左図及び図15Bの左図を比較すると、磁束収束部25の法線方向の磁束密度の最大値は約1.2Tであるのに対して、磁束収束部125の法線方向の磁束密度の最大値は約1.4Tである。磁束収束部125の法線方向の磁束密度は、磁束収束部25の法線方向の磁束密度の1.2倍程度となる。
【0113】
そして、図15Aの右図及び図15Bの右図を比較すると、磁束収束部25の接線方向の磁束密度の最大値は0.1Tであるのに対して、磁束収束部125の接線方向の磁束密度の最大値は0.12Tである。磁束収束部125の接線方向の磁束密度は、磁束収束部25の接線方向の磁束密度より大きくなる。
【0114】
ここで、磁気歯車装置における伝達トルクの平均値は、磁束収束部の法線方向と接線方向の積を周方向に足し合わせたものに相当する。磁束収束部125の法線方向及び接線方向の磁束密度は、磁束収束部25の法線方向及び接線方向の磁束密度よりも大きいため、磁気歯車装置100は、強磁性体124を挿入していない磁気歯車装置1よりも伝達トルクの平均値が大きくなり、伝達トルクを向上させることができる。
【0115】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する磁気歯車装置100によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0116】
3.第3の実施の形態例
次に、図16及び図17を参照して本発明の磁気歯車装置の第3の実施の形態例について説明する。
図16は本発明の第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置を示す断面図であり、図17は本発明の第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置の磁石片の配列と磁束密度の分布を示す説明図である。
【0117】
この第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置200が第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と異なるところは、内歯車の構成である。そのため、ここでは、内歯車の構成に関連する事項について説明し、磁気歯車装置1と共通する部分は同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0118】
[内歯車]
内歯車206について、図16及び図17を参照して説明する。
図16に示すように、内歯車206は、内側筒31と、複数の第1内側磁石片232A,232Bと、複数の第2内側磁石片233A,233Bから構成されている。
【0119】
複数の第1内側磁石片232A,232B及び複数の第2内側磁石片233A,233Bは、内側筒31の外周部に固定されている。第1内側磁石片232Aと第1内側磁石片232Bは、内側筒31の周方向に間隔を開けて交互に配設されている。そして、第2内側磁石片233A,233Bは、第1内側磁石片232A,232Bの間に介在され、内側筒31の周方向に交互に配置される。
【0120】
複数の第1内側磁石片232A,232Bは、それぞれ内側筒31の軸方向に長い略長方形の板状の永久磁石である。複数の第1内側磁石片232A,232Bは、内側筒31の径方向に磁化されている。
【0121】
第1内側磁石片232Aは、内側筒31の径方向の外側(外歯車5側)がN極であり、内側筒31の径方向の内側(第1の回転軸3側)がS極である。一方、第1内側磁石片232Bは、内側筒31の径方向の外側(外歯車5側)がS極であり、内側筒31の径方向の内側(第1の回転軸3側)がN極である。
【0122】
複数の第2内側磁石片233A,233Bは、それぞれ内側筒31の軸方向に長い略長方形の板状の永久磁石である。複数の第2内側磁石片233A,233Bは、内側筒31の周方向に磁化されている。
【0123】
第2内側磁石片233Aは、内側筒31の周方向の一側がN極であり、内側筒31の周方向の他側がS極である。一方、第2内側磁石片233Bは、内側筒31の周方向の一側がS極であり、内側筒31の周方向の他側がN極である。
【0124】
次に、本発明の第3の実施の形態例における第1内側磁石片232A,232B及び第2内側磁石片233A,233Bの配列と磁束密度の分布について図17を参照して説明する。
【0125】
本実施の形態では、内側筒31の径方向に磁化された第1内側磁石片232A,232Bと内側筒31の周方向に磁化された第2内側磁石片233A,233Bが交互に配置されている。図17に示すように、このような配列にすると、第1内側磁石片232A,232B及び第2内側磁石片233A,233Bから磁束が逃げにくくなり、磁束密度の分布は正弦曲線を形成する。
【0126】
この磁束密度の分布では、滑らかな磁束密度を得ることができる。これにより、磁束密度の大きさが滑らかに変化するため、磁気歯車装置におけるコギングトルクを小さくすることができる。
【0127】
また、この磁束密度の分布では、広範囲に渡って大きな磁束密度を得ることができ、磁束密度の平均値を大きくすることができる。その結果、磁極数が少ない内歯車206において磁束密度の平均値を大きくすることができるため、大きな伝達トルクを得ることができる。
【0128】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する磁気歯車装置200によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる磁気歯車装置1と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0129】
また、第3の実施の形態例にかかる磁気歯車装置200に、第2の実施の形態例で用いられた外歯車105を適用することもできる。これにより、磁束収束部の法線方向及び接線方向の磁束密度が大きくなり、大きな伝達トルクを得ることができる。
【0130】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0131】
1,100,200・・・磁気歯車装置、2・・・ケース、3・・・第1の回転軸、4・・・第2の回転軸、5,105・・・外歯車、6,206・・・内歯車、7・・・ステータ歯車、11・・・底板、12・・・第1の支持板、13・・・第2の支持板、14・・・補強片、16,17,18,19・・・軸受、21・・・外側筒、21a・・・筒孔、22A,22B・・・第1外側磁石片、23A,23B・・・第2外側磁石片、25,125・・・磁束収束部、25A,25B・・・第1の磁束収束部、25C,25D・・・第2の磁束収束部、25E,25F・・・第3の磁束収束部、25G,25H・・・第4の磁束収束部、25I,25J・・・第5の磁束収束部、31・・・内側筒、31a・・・筒孔、32A,32B・・・内側磁石片、41・・・本体部、42・・・ステータ部材、42a・・・内周部、42b・・・磁性片、42c・・・溝部、47・・・ベース部、47a・・・貫通孔、47b・・・凹部、50・・・固定部、53・・・磁性歯部、53A,53B・・・第1の磁性歯部、53C,53D・・・第2の磁性歯部、53E,53F・・・第3の磁性歯部、53G,53H・・・第4の磁性歯部、53I,53J・・・第5の磁性歯部、124・・・強磁性体、232A,232B・・・第1内側磁石片、233A,233B・・・第2内側磁石片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の筒孔を有する外側筒と、前記筒孔の径方向に磁化されて前記外側筒の内周部に取り付けられた複数の第1外側磁石片と、前記筒孔の周方向に磁化されて前記複数の第1外側磁石片に取り付けられた複数の第2外側磁石片とを有する外歯車と、
前記外歯車の前記筒孔に配置され、円筒状の内側筒と、前記内側筒の外周部に取り付けられた複数の内側磁石片とを有する内歯車と、
前記外歯車と前記内歯車との間に配置され、前記筒孔の周方向に所定の間隔を開けて並ぶ複数の磁性歯部を有するステータ歯車と、を備え、
前記複数の第1外側磁石片は、異なる磁極が前記筒孔の周方向に隣り合うように並び、前記複数の第2外側磁石片は、同じ磁極が前記筒孔の周方向に隣り合うように並ぶことにより、前記複数の第1外側磁石片及び前記複数の第2外側磁石片は、磁束が集中する磁束収束部を形成する
磁気歯車装置。
【請求項2】
前記磁束収束部は、隣り合う第2内側磁石片の間に形成された溝部である請求項1に記載の磁気歯車装置。
【請求項3】
前記溝部は、各第2内側磁石片の前記筒孔の周方向の両端に切欠き部を設けることにより、隣り合う第2内側磁石片の間にV字状に形成される請求項2に記載の磁気歯車装置。
【請求項4】
前記磁束収束部は、隣り合う第2内側磁石片の間に介在された複数の強磁性体である請求項2又は請求項3に記載の磁気歯車装置。
【請求項5】
前記複数の強磁性体は、電磁鋼板である請求項4に記載の磁気歯車装置。
【請求項6】
前記複数の内側磁石片は、
前記内側筒の周方向に沿って間隔を開けて配置し、前記内側筒の径方向に磁化された複数の第1内側磁石片と、
各第1内側磁石片の間に配置し、前記内側筒の周方向に磁化された複数の第2内側磁石片から構成される請求項1〜5のいずれかに記載の磁気歯車装置。
【請求項7】
前記外側筒は、積層鉄心により形成される請求項1〜6のいずれかに記載の磁気歯車装置。
【請求項1】
円形の筒孔を有する外側筒と、前記筒孔の径方向に磁化されて前記外側筒の内周部に取り付けられた複数の第1外側磁石片と、前記筒孔の周方向に磁化されて前記複数の第1外側磁石片に取り付けられた複数の第2外側磁石片とを有する外歯車と、
前記外歯車の前記筒孔に配置され、円筒状の内側筒と、前記内側筒の外周部に取り付けられた複数の内側磁石片とを有する内歯車と、
前記外歯車と前記内歯車との間に配置され、前記筒孔の周方向に所定の間隔を開けて並ぶ複数の磁性歯部を有するステータ歯車と、を備え、
前記複数の第1外側磁石片は、異なる磁極が前記筒孔の周方向に隣り合うように並び、前記複数の第2外側磁石片は、同じ磁極が前記筒孔の周方向に隣り合うように並ぶことにより、前記複数の第1外側磁石片及び前記複数の第2外側磁石片は、磁束が集中する磁束収束部を形成する
磁気歯車装置。
【請求項2】
前記磁束収束部は、隣り合う第2内側磁石片の間に形成された溝部である請求項1に記載の磁気歯車装置。
【請求項3】
前記溝部は、各第2内側磁石片の前記筒孔の周方向の両端に切欠き部を設けることにより、隣り合う第2内側磁石片の間にV字状に形成される請求項2に記載の磁気歯車装置。
【請求項4】
前記磁束収束部は、隣り合う第2内側磁石片の間に介在された複数の強磁性体である請求項2又は請求項3に記載の磁気歯車装置。
【請求項5】
前記複数の強磁性体は、電磁鋼板である請求項4に記載の磁気歯車装置。
【請求項6】
前記複数の内側磁石片は、
前記内側筒の周方向に沿って間隔を開けて配置し、前記内側筒の径方向に磁化された複数の第1内側磁石片と、
各第1内側磁石片の間に配置し、前記内側筒の周方向に磁化された複数の第2内側磁石片から構成される請求項1〜5のいずれかに記載の磁気歯車装置。
【請求項7】
前記外側筒は、積層鉄心により形成される請求項1〜6のいずれかに記載の磁気歯車装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−48522(P2013−48522A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186099(P2011−186099)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年5月18日 日本AEM学会発行「第23回 電磁力関連のダイナミクスシンポジウム 講演論文集」
【出願人】(591218307)株式会社ニッセイ (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年5月18日 日本AEM学会発行「第23回 電磁力関連のダイナミクスシンポジウム 講演論文集」
【出願人】(591218307)株式会社ニッセイ (17)
【Fターム(参考)】
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