説明

磁気歯車装置

【課題】構造物をバランス良く支持することができる磁気歯車装置を提供する。
【解決手段】入力回転軸1の軸線周りに設けた磁力発生面を径方向外側に向けて設けた入力側磁気歯車2と、入力側磁気歯車2を同軸状に囲んで設けられた磁力発生面を入力側磁気歯車2の磁力発生面に対向するように径方向内側に向けて設けた出力側磁気歯車3と、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の対向する磁力発生面間に周方向に並べて固設された電磁鋼製の複数の磁気経路部材4と、出力側磁気歯車3の入力回転軸1と軸方向反対側の端部に接続された出力回転軸5とを備え、入力側磁気歯車2、出力側磁気歯車3及び磁気経路部材4の力回転軸5側端部に、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3、及び、出力側磁気歯車3と磁気経路部材4、それぞれの間における径方向への相対移動を抑制しつつ周方向への相対移動を可能に支持する第1支持機構6、及び第2支持機構7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石の磁気吸引・反発によってトルクを伝達する磁気歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
減速装置としては、高効率での伝動が比較的容易に可能な歯車装置が広く一般に用いられているが、その他に磁石の磁気的吸引・反発によってトルクを伝達する磁気歯車装置がある。
【0003】
磁気歯車装置の従来技術として、例えば、同心状に配置した内輪磁気歯車と外輪磁気歯車の間に磁気を透過する複数の磁性バーを環状に配置し、内輪磁気歯車に入力したトルクを外輪磁気歯車に伝達するものがある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,378,710号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術のような構造の磁気歯車装置においては、装置に対する入出力用の回転軸等を接続し、内輪磁気歯車や外輪磁気歯車、磁性バー等を周方向に相対回転可能な状態に支持した状態でトルクの伝達を行わなければならない。また、磁気歯車装置に用いる磁石や磁性バーなどの構造体は、磁気歯車装置として必要な特性を有する物質の特性上、かなりの重量物にならざるを得ない。したがって、これらの構造物を支持する支持構造は、重量物である構造物をバランスよく支持することが非常に重要となってくる。しかしながら、上記従来技術においては、磁気歯車装置における内輪磁気歯車や外輪磁気歯車、磁性バー等の支持構造については言及されておらず、この点について改善の必要性がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、構造物をバランス良く支持することができる磁気歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、第1回転軸と、第1回転軸の一端に接続され、該第1回転軸の軸線周りに設けた鉄心に複数の磁石を周方向に並べて配置した磁力発生面を径方向外側に向けて設けた第1磁気歯車と、前記第1磁気歯車を同軸状に囲んで設けられ、軸線周りに設けた鉄心に複数の磁石を周方向に並べて配置した磁力発生面を前記第1磁気歯車の磁力発生面に対向するように径方向内側に向けて設けた第2磁気歯車と、前記第1磁気歯車と前記第2磁気歯車の対向する磁力発生面間に、前記第1磁気歯車と第2磁気歯車の磁極間に介在するように周方向に並べて固設された電磁鋼製の複数の磁気経路部材と、前記第2磁気歯車の前記第1回転軸と軸方向反対側の端部に前記第1回転軸の軸線上に接続された第2回転軸と、前記第1磁気歯車及び前記第2磁気歯車の前記第2回転軸側端部に設けられ、前記第1磁気歯車と前記第2磁気歯車との径方向への相対移動を抑制しつつ周方向への相対移動を可能に支持する第1支持機構と、前記第2磁気歯車及び前記磁気経路部材の前記第2回転軸側端部に設けられ、前記第2磁気歯車と前記磁気経路部材との径方向への相対移動を抑制しつつ周方向への相対移動を可能に支持する第2支持機構とを備えたものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構造物をバランス良く支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係る磁気歯車装置を概略的に示す図であり、回転軸に垂直な面における断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る磁気歯車装置を概略的に示す図であり、回転軸を含む面における断面図である。
【図3】図1における冷媒流路部分をその周辺構成と共に示す拡大断面図である。
【図4】図3の冷媒流路部分の軸方向の構造を概略的に示す断面図である。
【図5】磁気歯車装置の組み立て工程の初期段階を示す図である。
【図6】磁気歯車装置の組み立て工程の第一段階を示す図である。
【図7】磁気歯車装置の組み立て工程の第二段階を示す図である。
【図8】磁気歯車装置の組み立て工程の最終段階を示す図である。
【図9】磁気歯車装置のベアリング部材の交換工程におけるベアリング部材を取り外す様子を示す図である。
【図10】磁気歯車装置のベアリング部材の交換工程におけるベアリング部材を取り付ける様子を示す図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る磁気歯車装置を備えたガスタービン発電機を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)装置構成
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図11は、本実施の形態に係る磁気歯車装置100を備えたガスタービン発電機を概略的に示す図である。
【0012】
図11において、ガスタービン発電機は、取り入れた空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機90と、圧縮機90からの圧縮空気と燃料とを混合燃焼する燃焼器91と、燃焼器91からの燃焼ガスにより回転駆動するタービン92と、タービン92と圧縮機90とを連結し、タービン92の回転を圧縮機90に伝達する中間軸93と、圧縮機90に接続され、タービン92及び中間軸93の回転により回転駆動される入力回転軸1と、入力回転軸1及び出力回転軸5に接続され、入力回転軸1への入力回転数を変換して出力回転軸5に出力する磁気歯車装置100と、出力回転軸5に接続され、出力回転軸5の回転数に応じて発電を行う発電機94とを備えている。入力回転軸1、出力回転軸5、及びその他の回転軸は同軸上に配置され、複数の軸受95及びスラスト軸受(図示せず)により回転可能に支持されている。
【0013】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態に係る磁気歯車装置100を概略的に示す図であり、図1は回転軸に垂直な面における断面図、図2は回転軸を含む面における断面図である。
【0014】
図1及び図2において、磁気歯車装置100は、略円柱状の入力側磁気歯車2と、入力側磁気歯車2を同軸状に囲むように配置された略円筒状の出力側磁気歯車3と、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の間に配置された複数の磁気経路部材4とを有している。磁気経路部材4は後述する磁気経路部材ホルダー41により保持されている。入力側磁気歯車2、出力側磁気歯車3、及び、磁気経路部材ホルダー41を含む磁気経路部材4は、互いに径方向に離間して配置されており、回転駆動によって接触しないように構成されている。また、入力側磁気歯車2は、その軸方向一端において入力回転軸1と同軸上に接続されている。同様に、出力側磁気歯車3は、その軸方向他端(入力回転軸1と反対側の一端)において出力回転軸5と同軸上に接続されている。すなわち、入力回転軸1と出力回転軸5は同軸上に、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3は同軸状に配置されている。
【0015】
入力側磁気歯車2は、入力回転軸1の軸線上に沿うように設けられた軸中心部21と、軸中心部21の外周を覆うように配置された鉄心25と、鉄心25中に周方向に並べて埋設された複数の磁石24とから構成されている。鉄心25は、互いに絶縁した薄板状の部材(例えば、珪素鋼板)を軸方向に積層することによって形成されている。また、複数の磁石24は、それぞれ、互いに絶縁した薄板状の永久磁石を軸方向に積層することにより形成されており、軸中心部21に沿って軸方向に延在するよう配置されている。複数の磁石24は、それぞれ、磁極(N極24aおよびS極24b)を周方向に向けて、かつ、隣り合う磁石24の互いの同極が周方向に対向する向きに配置されている。入力側磁気歯車2において、隣り合う磁石24の磁力線は、同極である相手側には向かず、その磁力線のほとんどが径方向外側に作用する。つまり、入力側磁気歯車2においては、その外周面(径方向外側の面)が磁力発生面となる。このように、入力側磁気歯車2は、入力回転軸1の軸線周りに設けた鉄心25に複数の磁石24を周方向に並べて配置した磁力発生面を径方向外側に向けて設けている。
【0016】
出力側磁気歯車3は、略円筒状に形成され入力側磁気歯車2と同軸状に配置された外郭構造部31と、外郭構造部31の内周を覆うように配置された鉄心33と、鉄心33中に周方向に並べて埋設された複数の磁石32とから構成されている。鉄心33は、互いに絶縁した薄板状の部材(例えば、珪素鋼板)を軸方向に積層することによって形成されている。また、複数の磁石32は、それぞれ、互いに絶縁した薄板状の永久磁石を軸方向に積層することにより形成されており、外郭構造部31に沿って軸方向に延在するよう配置されている。複数の磁石32は、それぞれ、磁極(N極32aおよびS極32b)を周方向に向けて、かつ、隣り合う磁石32の互いの同極が周方向に対向する向きに配置されている。出力側磁気歯車3において、隣り合う磁石32の磁力線は、同極である相手側には向かず、その磁力線のほとんどが径方向内側に作用する。つまり、出力側磁気歯車3においては、その内周面(径方向内側の面)が磁力発生面となる。このように、出力側磁気歯車3は、入力側磁気歯車2を同軸状に囲んで設けられ、軸線周りに設けた鉄心33に複数の磁石32を周方向に並べて配置した磁力発生面を入力側磁気歯車2の磁力発生面に対向するように径方向内側に向けて設けている。
【0017】
磁気経路部材4は、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の対向する磁力発生面間に同軸状に形成された樹脂製(例えば、非金属材料であるFRP:Fiber Reinforced Plastics)の磁気経路部材ホルダー41により保持されることにより、周方向に複数並べて配置されている。磁気経路部材ホルダー41には、軸方向に延在する穴が周方向に等間隔に複数設けられており、この穴に、互いに絶縁した薄板状の電磁鋼製部材を軸方向に積層することにより、磁気経路部材4が軸方向に延在するよう形成されている。これにより、磁気経路部材41は、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の対向する磁力発生面間において、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の磁極間に介在するように周方向に並べて配置されている。
【0018】
ここで、図2に加え、図3及び図4を参照しつつ、磁気歯車装置100の詳細についてさらに説明する。図3は図2における磁気歯車と回転軸の接続部分を拡大して示す図であり、図4は図3における支持機構部分をさらに拡大して示す図である。
【0019】
入力回転軸1は、入力側磁気歯車2側の端部にフランジ構造部1aを有している。フランジ構造部1aは、入力側磁気歯車2と同程度の直径となるよう構成されており、入力回転軸1及び入力側磁気歯車2の回転時においても、他の部材と接触しないよう形成されている。フランジ構造部1aを軸方向から複数のボルト1bで入力側磁気歯車2の軸中心部21に結合することにより、入力回転軸1は入力側磁気歯車2に接続されている。また、フランジ構造部1aが入力側磁気歯車2の軸中心部21に結合されることにより、磁石24及び鉄心25が軸方向から保持されている。
【0020】
入力側磁気歯車2は、入力回転軸1と反対側の端部に端部構造部2aを有している。端部構造部2aは、軸方向から複数のボルト2bで入力側磁気歯車2の軸中心部21に結合されている。端部構造部2aが入力側磁気歯車2の軸中心部21に結合されることにより、磁石24及び鉄心25が軸方向から保持されている。
【0021】
出力回転軸5は、出力側磁気歯車3側の端部にフランジ構造部5aを有している。フランジ構造部5aは、出力側磁気歯車3と同程度の直径となるよう構成されており、出力回転軸5及び出力側磁気歯車3の回転時においても、他の部材と接触しないよう形成されている。フランジ構造部5aを軸方向から複数のボルト5bで出力側磁気歯車3の外郭構造部31に結合することにより、出力回転軸5は出力側磁気歯車3に接続されている。また、フランジ構造部5aが出力側磁気歯車3の外郭構造部31に結合されることにより、磁石32及び鉄心33が軸方向から保持されている。
【0022】
出力側磁気歯車3は、出力回転軸5と反対側の端部に端部構造部3aを有している。端部構造部3aは、軸方向から複数のボルト3bで出力側磁気歯車3の外郭構造部31に結合されている。端部構造部3aが出力側磁気歯車3の外郭構造部31に結合されることにより、磁石32及び鉄心33が軸方向から保持されている。
【0023】
磁気経路部材4は、入力回転軸1側の端部に保持構造部43を有している。保持構造部43は、軸方向から複数のボルト43bで磁気経路部材4の磁気経路部材ホルダー41に結合されている。保持構造部43が磁気経路部材4の磁気経路部材ホルダー41に結合されることにより、磁気経路部材4が軸方向から保持されている。また、保持構造部43は、ガスタービン発電機に設けられた基部99(後の図8等参照)等に複数のボルト99bにより固設されている。これにより、磁気経路部材4及び磁気経路部材ホルダー41は、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の対向する磁力発生面間において、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の磁極間に介在するように周方向に並べて配置され、固設されている。また、磁気経路部材4は、出力回転軸5側の端部に端部構造部4aを有している。端部構造部4aは、軸方向から複数のボルト4bで磁気経路部材ホルダー41に結合されている。端部構造部4aが磁気経路部材ホルダー41に結合されることにより、磁気経路部材4が軸方向から保持されている。
【0024】
また、図2〜図4に示すように、磁気歯車装置100は、入力側磁気歯車2及び出力側磁気歯車3の出力回転軸5側端部に設けられ、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3との径方向への相対移動を抑制しつつ周方向への相対移動を可能に支持する第1支持機構6と、出力側磁気歯車3及び磁気経路部材ホルダー41を含む磁気経路部材4の出力回転軸5側端部に設けられ、出力側磁気歯車3と磁気経路部材4との径方向への相対移動を抑制しつつ周方向への相対移動を可能に支持する第2支持機構7とを備えている。
【0025】
第1支持機構6は、入力側磁気歯車2の出力回転軸5側端部(つまり、端部構造部2a)に軸線に沿って突出して設けられた支持突起61と、出力回転軸5の入力側磁気歯車2側端部に支持突起61を軸方向から挿入可能に設けられた支持凹部62と、支持突起61と支持凹部62の径方向の間隙に周方向に延在するように設けられたベアリング部材63とを備えている。
【0026】
支持突起61は、段差部61aを境に先端側(出力回転軸5側、図2〜図4中右側)の外径が小さくなるよう形成されている。また、ベアリング部材63は、その内径が支持突起61の先端側の外径に合うよう形成されている。そして、ベアリング部材63は、支持突起61の先端側から段差部61aまで挿入され、段差部61aによって軸方向の入力側磁気歯車2側への移動が制限される。
【0027】
支持凹部62は、その内径がペアリング部材63の外径に合うように形成されている。また、支持凹部62は、段差部62aを境に奥側(出力回転軸5側、図2〜図4中左側)の内径が小さくなるよう形成されている。そして、ベアリング部材63は、支持凹部62の開口側(入力側磁気歯車2側)から段差部62aまで挿入され、段差部62aによって軸方向の出力回転軸5側への移動が制限される。
【0028】
支持突起61の軸方向の長さや段差部61aの位置、支持凹部62の軸方向の深さや段差部61aの位置、ベアリング部材63の軸方向の幅などの寸法は、支持突起61や支持凹部62を有する入力側磁気歯車2や出力回転軸5が互いに接触しないように設定されている。
【0029】
第2支持機構7は、磁気経路部材4の出力回転軸5側端部(つまり、端部構造部4a)に軸線周りに円環状に延在するよう突出して設けられた支持突起71と、出力回転軸5の入力側磁気歯車2側端部に支持突起71を軸方向から挿入可能なように軸線周りに円環状に延在するように設けられた支持凹部72と、支持突起71と支持凹部72の径方向の間隙に周方向に延在するように設けられたベアリング部材73とを備えている。
【0030】
支持突起71は、段差部71aを境に先端側(出力回転軸5側、図2〜図4中右側)の外径(すなわち、円環状の支持突起71の外径)が小さくなるよう形成されている。また、ベアリング部材73は、その内径が支持突起71の先端側の外径に合うよう形成されている。そして、ベアリング部材73は、支持突起71の先端側から段差部71aまで挿入され、段差部71aによって軸方向の入力側磁気歯車2側への移動が制限される。
【0031】
支持凹部72は、その内径がペアリング部材73の外径に合うように形成されている。また、支持凹部72は、段差部72aを境に奥側(出力回転軸5側、図2〜図4中左側)の内径(すなわち、円環状の支持凹部72の径方向外側の内壁の径)が小さくなるよう形成されている。そして、ベアリング部材73は、支持凹部72の開口側(入力側磁気歯車2側)から段差部72aまで挿入され、段差部72aによって軸方向の出力回転軸5側への移動が制限される。
【0032】
支持突起71の軸方向の長さや段差部71aの位置、支持凹部72の軸方向の深さや段差部71aの位置、ベアリング部材73の軸方向の幅などの寸法は、支持突起71や支持凹部72を有する磁気経路部材4や出力回転軸5が互いに接触しないように設定されている。
【0033】
このように、第1支持機構6および第2支持機構7によって、磁気歯車装置100を構成する入力側磁気歯車2、出力側磁気歯車3、及び、磁気経路部材ホルダー41を含む磁気経路部材4は、径方向への相対移動が抑制されることにより中心軸のずれが抑制されつつ、周方向への相対移動が可能に支持されている。
【0034】
入力側磁気歯車2及び出力側磁気歯車3のそれぞれにおいて、磁力発生面の複数の磁石24,32は、軸線に垂直な面における重心が軸線上となるよう重量計算され配置されている。すなわち、入力側磁気歯車2及び出力側磁気歯車3のそれぞれにおいて、磁石24,32の重量が配置前に測定されており、磁石24,32による重心が軸線上、すなわち、回転中心になるように配置される。また、入力回転軸1のフランジ部1a、入力側磁気歯車2の端部構造部2a、出力側磁気歯車3の端部構造部3a、出力回転軸5のフランジ部5aの軸方向外側には、それぞれ複数のバランスウェイト1c,2c,3c,5cが配置されている。このバランスウェイト1c,2c,3c,5cの周方向および径方向の位置を調整することにより、磁石24,32の配置により調整した回転バランスの微調整を行うことができる。
【0035】
(2)動作原理
ここで、磁気歯車装置100の入力回転軸1と出力回転軸5の回転数の関係について説明する。
【0036】
磁気歯車装置100の入力回転軸1(入力側磁気歯車2)の回転数と出力回転軸5(出力側磁気歯車3)の回転数の関係は、入力側磁気歯車2の磁力発生面における極性対数と出力側磁気歯車3の磁力発生面における極性対数の比により決まる。言い換えると、入力回転軸1の回転数と出力回転軸5の回転数の関係は、入力側磁気歯車2の磁石24の極性対数と出力側磁気歯車3の磁石32の極性対数の比で決まるということである。つまり、入力回転軸1の回転数(入力回転数)をNin、入力側磁気歯車2に設けられた磁石24の極性対数をXin、出力回転軸5の回転数(出力回転数)をNout、出力側磁気歯車3に設けられた磁石32の極性対数をXoutとすると、入力回転数Ninと出力回転数Noutの関係は以下の式1で表される。
【0037】
Nin:Nout=Xout:Xin ・・・(式1)
例えば、本実施の形態(図1参照)に示したように、磁石24の極性対数を7、磁石32の極性対数を17とすると、入力回転数Ninと出力回転数Noutの比は、17:7となる。
【0038】
入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の間の伝達可能トルクは、磁石24,32の体積が増えるに従って増加する。その際、鉄心25,33、磁気経路部材4は、磁気飽和を起こさない寸法である必要がある。磁気経路部材4の員数を入力側磁気歯車2の磁力発生面の極性対数と出力側磁気歯車3の磁力発生面の極性対数の和となるように構成した場合に、入力回転軸1から出力回転軸5への伝達可能トルクは最大(極大値)となる。この知見は、フーリエ解析等を用いたシミュレーションにより得られる。例えば、本実施の形態のように、入力側磁気歯車2の磁力発生面の極性対数を7、出力側磁気歯車3の磁力発生面の極性対数を17とした場合において、磁気経路部材4の員数を24とすると入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の間の伝達可能トルクは最大(極大値)となる。
【0039】
(3)組立工程
次に、以上のように構成した磁気歯車装置100の組み立て工程について図面を参照しつつ説明する。図5〜図8は、磁気歯車装置の組み立て工程を示す図である。
【0040】
図5に示すように、組み立て工程においては、まず、出力回転軸5を接続した出力側磁気歯車3を軸線が垂直になるように出力回転軸5側を下方に向けて台座80に載置する。出力側磁気歯車3は、予め、外郭構造部31に出力回転軸5のフランジ構造部5aを複数のボルト5bにより結合し、磁石32及び鉄心33を配置し、端部構造部3aを複数のボルト3bにより結合して、その後、バランスウェイト3c、5c等により回転バランスの調整を行ってある。
【0041】
次に、第2支持機構7を構成する出力回転軸5の支持凹部72にベアリング部材73を嵌め込み、磁気経路部材4を軸線が垂直となるように端部構造部4a側を下方に向けて出力側磁気歯車3内に挿入し、第2支持機構7を構成する支持突起71をベアリング部材73に挿入する。磁気経路部材4は、予め、磁気経路部材ホルダー41に端部構造部4aを複数のボルト4bにより結合したものに配置されている。
【0042】
続いて、第1支持機構6を構成する出力回転軸5の支持凹部62にベアリング部材63を嵌め込む。
【0043】
次に、図6に示すように、入力回転軸1を接続した入力側磁気歯車2を軸線が垂直となるように端部構造部2a側を下方に向けて磁気経路部材4を含む磁気経路部材ホルダー41内に挿入し、第1支持機構6を構成する支持突起61をベアリング部材63に挿入する。入力側磁気歯車2は、予め、軸中心部21に入力回転軸1のフランジ構造部1aを複数のボルト1bにより結合し、磁石24及び鉄心25を配置し、端部構造部2aを複数のボルト2bにより結合して、その後、バランスウェイト1c、2c等により回転バランスの調整を行ってある。
【0044】
次に、図7に示すように、磁気経路部材4の磁気経路部材ホルダー41に保持構造部43を複数のボルト43bにより結合する。
【0045】
次に、図8に示すように、磁気歯車装置100の保持構造部43をガスタービン発電機に設けられた基部99に複数のボルト99bにより固設し、発電機94側に出力回転軸5を接続し、タービン92側に入力回転軸1を接続する。
【0046】
(4)交換工程
以上のように構成した磁気歯車装置100のベアリング部材63,73の交換工程について図面を参照しつつ説明する。図9及び図10は、磁気歯車装置のベアリング部材の交換工程を示す図である。
【0047】
図9に示すように、ベアリング部材63,73の交換工程においては、まず、磁気歯車装置100の入力回転軸1及び出力回転軸5をガスタービン発電機から取外し、さらに、磁気歯車装置100の保持構造部43を基部99から取り外して、軸線が水平になるように台座81に載置する。
【0048】
次に、フランジ構造部5aを出力側磁気歯車3の外郭構造部31に結合している複数のボルト5bを取り外す。続いて、フランジ構造部5aのボルト5bを通していたボルト孔に、浮かしボルト82を挿入する。この状態で、出力回転軸5、磁気経路部材4(磁気経路部材ホルダー41)、及び、入力側磁気歯車3が同心となる位置関係を保持させたまま、出力回転軸5を軸方向に移動して取り外し、さらに、ベアリング部材63,73を軸方向に移動して取り外す。
【0049】
その後、新たなベアリング部材63,73を軸方向から挿入して取り付け、浮かしボルト82を用いて、出力回転軸5、磁気経路部材4(磁気経路部材ホルダー41)、及び、入力側磁気歯車3が同心となる位置関係を保持させたまま、軸方向から挿入する。続いて、フランジ構造部5aをボルト5bにより出力側磁気歯車3の外郭構造部31に結合して、出力回転軸5を接続する。これにより、ベアリング部材63,73を損傷することなく交換を実施することができる。そして、磁気歯車装置100の保持構造部43を基部99に取り付け、入力回転軸1及び出力回転軸5をガスタービン発電機に取り付ける。
【0050】
なお、以上の組立工程および交換工程は、各構成部材に必要に応じてアイボルト等を設置し、クレーン等の機器を用いて運搬することにより行うことは言うまでも無い。
【0051】
(5)装置動作
以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
【0052】
圧縮機90及びタービン92を起動し、入力回転軸1を回転駆動すると磁気歯車装置100の入力側磁気歯車2が回転駆動される。入力側磁気歯車2の磁力発生面と出力側磁気歯車3の磁力発生面は、磁気経路部材4を介して磁気的に噛み合っている。具体的には、入力側磁気歯車2が磁気経路部材4に相対して回転すると、各磁気経路部材4の入力側磁気歯車2および出力側磁気歯車3との対向面がN極又はS極に交互に磁化される。このように、磁化された磁気経路部材4と出力側磁気歯車3の磁力発生面の間にはたらく磁気的吸引力または反発力によって出力側磁気歯車3は周方向に回転駆動される。すなわち、磁気歯車装置100は、磁気経路部材4を遊星歯車のように機能させて入力回転軸1の回転動力を出力回転軸5に伝達する。
【0053】
(6)効果
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0054】
減速装置としては、高効率での伝動が比較的容易に可能な歯車装置が広く一般に用いられているが、その他に磁石の磁気的吸引・反発によってトルクを伝達する磁気歯車装置がある。磁気歯車装置の従来技術として、例えば、同心状に配置した内輪磁気歯車と外輪磁気歯車の間に磁気を透過する複数の磁性バーを環状に配置し、内輪磁気歯車に入力したトルクを外輪磁気歯車に伝達するものがある。この従来技術のような構造の磁気歯車装置においては、装置に対する入出力用の回転軸等を接続し、内輪磁気歯車や外輪磁気歯車、磁性バー等を周方向に相対回転可能な状態に支持した状態でトルクの伝達を行わなければならない。また、磁気歯車装置に用いる磁石や磁性バーなどの構造体は、磁気歯車装置として必要な特性を有する物質の特性上、かなりの重量物にならざるを得ない。したがって、これらの構造物を支持する支持構造は、重量物である構造物をバランスよく支持することが非常に重要となってくる。しかしながら、上記従来技術においては、磁気歯車装置における内輪磁気歯車や外輪磁気歯車、磁性バー等の支持構造については言及されておらず、この点について改善の必要性がある。
【0055】
これに対し、本発明の実施の形態においては、入力側磁気歯車2及び出力側磁気歯車3の出力回転軸5側端部に第1支持機構6を設け、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3との径方向への相対移動を抑制しつつ周方向への相対移動を可能に支持し、かつ、出力側磁気歯車3及び磁気経路部材4の出力回転軸5側端部に第2支持機構7を設け、出力側磁気歯車3と磁気経路部材4との径方向への相対移動を抑制しつつ周方向への相対移動を可能に支持するように構成したので、磁気歯車装置において、各構造物をバランス良く支持することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 入力回転軸(第1回転軸)
2 入力側磁気歯車(第1磁気歯車)
3 出力側磁気歯車(第2磁気歯車)
4 磁気経路部材
5 出力回転軸(第2回転軸)
6 支持機構(第1支持機構)
7 支持機構(第2支持機構)
21 軸中心部
24,32 磁石
25,33 鉄心
41 磁気経路部材ホルダー
43 保持部
80,81 台座
82 浮かしボルト
90 圧縮機
91 燃焼器
92 タービン
93 中間軸
94 発電機
95 軸受
99 基部
100,100A 磁気歯車装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸と、
第1回転軸の一端に接続され、該第1回転軸の軸線周りに設けた鉄心に複数の磁石を周方向に並べて配置した磁力発生面を径方向外側に向けて設けた第1磁気歯車と、
前記第1磁気歯車を同軸状に囲んで設けられ、軸線周りに設けた鉄心に複数の磁石を周方向に並べて配置した磁力発生面を前記第1磁気歯車の磁力発生面に対向するように径方向内側に向けて設けた第2磁気歯車と、
前記第1磁気歯車と前記第2磁気歯車の対向する磁力発生面間に、前記第1磁気歯車と第2磁気歯車の磁極間に介在するように周方向に並べて固設された電磁鋼製の複数の磁気経路部材と、
前記第2磁気歯車の前記第1回転軸と軸方向反対側の端部に前記第1回転軸の軸線上に接続された第2回転軸と、
前記第1磁気歯車及び前記第2磁気歯車の前記第2回転軸側端部に設けられ、前記第1磁気歯車と前記第2磁気歯車との径方向への相対移動を抑制しつつ周方向への相対移動を可能に支持する第1支持機構と、
前記第2磁気歯車及び前記磁気経路部材の前記第2回転軸側端部に設けられ、前記第2磁気歯車と前記磁気経路部材との径方向への相対移動を抑制しつつ周方向への相対移動を可能に支持する第2支持機構と
を備えたことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記第1支持機構は、
前記第1磁気歯車の前記第2回転軸側端部に軸線に沿って突出して設けられた第1支持突起と、
前記第2回転軸の前記第1磁気歯車側端部に前記第1支持突起を軸方向から挿入可能に設けられた第1支持凹部と、
前記第1支持突起と前記第1支持凹部の径方向の間隙に周方向に延在するように設けられたベアリング部材と
を備えたことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の磁気歯車装置において、
前記第2支持機構は、
前記磁気経路部材の前記第2回転軸側端部に軸線周りに円環状に延在するよう突出して設けられた第2支持突起と、
前記第2回転軸の前記第1磁気歯車側端部に前記第1支持突起を軸方向から挿入可能なように軸線周りに円環状に延在するように設けられた第2支持凹部と、
前記第2支持突起と前記第2支持凹部の径方向の間隙に周方向に延在するように設けられたベアリング部材と
を備えたことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記第1及び第2磁気歯車の軸方向両端側に配置され、前記第1及び第2磁気歯車の回転バランスをとるための錘を備えたことを特徴とする磁気歯車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−53733(P2013−53733A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194156(P2011−194156)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)