磁気濃縮型爆薬発電機

【課題】コイルの巻き数を大きくすると共に、電流の増幅過程でのコイル温度の上昇によるコイル抵抗増加による影響を少なくすることによって、電流増幅率を上げること。
【解決手段】起動信号の付与により爆薬を起爆させる雷管を内蔵する金属筒と、この金属筒の外周に配置されたコイルとを有し、このコイルに電流を流して増幅を行う磁気濃縮型爆薬発電機において、前記コイルは、断面形状が長方形状の角型導体に絶縁皮膜を施した平角電線をコイル導体として用い、このコイル導体を前記金属筒の外周に所定間隔介して巻き付け、このコイル導体が前記金属筒と対向する面を除き、当該コイル導体間を絶縁性材料で絶縁して形成されており、前期コイルは後半部より絶縁皮膜を施した平角電線を線材とした複数のコイルをハンダ付けなどの手段により電気的に接合して一体化し、コイル断面積を増やしたことを特徴とする磁気濃縮型爆薬発電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電中のコイルを爆薬により順次短絡することにより電流増幅を行い大電流パルスを発生する磁気濃縮型爆薬発電機に関し、特にパルス電流をパルス電圧に変換する装置やパルス電圧を電磁波に変換する装置と組み合わせることにより高出力の電磁波を発生させ、各種の分野での応用が可能な可搬型の電磁波発生装置等に用いられる磁気濃縮型爆薬発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の磁気濃縮型爆薬発電機の動作原理を、図4〜図6を参照して説明する。図4において、1は磁気濃縮型爆薬発電機、2はコイル、8は金属筒、9は雷管、10は爆薬、12は配線、13はスイッチである。図示せぬ入力側装置から入力側の配線12およびスイッチ13を介して流れて来た電流は、コイル2を流れて出力側の配線12を介して図示せぬ出力側装置へ流れ、また、出力側装置から出力側の配線12へ戻ってきた電流は、金属筒8から入力側の配線12へと流れる。
【0003】
ここで、コイル2に流れる初期電流をI1とし、コイル2の初期インダクタンスをL1とすると、コイル2にはL1×I1の磁束が生じる。コイル2に流れる電流がピークに達したとき、雷管9を起爆させると同時に爆薬10も起爆し爆ごうを開始する。
【0004】
これによって、図5に示すように、金属筒8が拡張し、コイル2を順次短絡して行くため、コイル2のインダクタンスLは次第に小さくなって行く。一方、磁束保存則により、コイル2の磁束Lとコイルを流れる電流Iの積L×Iは一定に保持されるため、コイル2に流れる電流は時間とともに増幅される。
【0005】
電流が時間とともに増幅される様子を図6に示す。
発電の終期のコイルのインダクタンスをL2、コイルを流れる電流をI2とすると、
発電の初期と終期では磁束は保存されるので、L1×I1=L2×I2となる。
よって、発電終期の電流I2は I2=(L1/L2)×I1 となる。
【0006】
上述したように電流Iが増幅される割合はコイル2の初期インダクタンスL1と終期インダクタンスL2の比(L1/L2)に概ね比例する。また、コイル2の初期インダクタンスL1はコイル2の巻き数に概ね比例する。従って、出力電流/入力電流で表される電流増幅率を大きくするにはコイル2の巻き数を大きくすればよいことがわかる。
【0007】
また発電終期のコイルのインダクタンスL2は小さい方が良い。
【0008】
また、磁気濃縮型爆薬発電機1のコイル2は、角形導体に絶縁皮膜を施した平角電線をコイル導体として用い、このコイル導体を金属円筒の外周に所定間隔介して巻き付け、このコイル導体が前記金属筒と対面する面を除き、当該コイル導体間を絶縁材料で絶縁して形成されている。
【0009】
上述の平角電線をコイル導体として製作した従来の磁気濃縮型爆薬発電機の断面構成図を図2に示す。但し、図2(a)は長手軸方向の断面図、(b)は(a)のY1−Y2断面図である。
【0010】
図2において、1Bは磁気濃縮型爆薬発電機、2Bは平角電線を用いたコイル、4Bはコイル2Bの導体、5Bはコイル2Bの絶縁被覆、6Bは絶縁体、8は金属筒、9は雷管、10は爆薬、11はフランジである。
【0011】
前述したように、コイル2Bのインダクタンスは発電の初期では大きく、発電の終期では小さい方がよいため、コイル2Bの巻数は前半は密に巻き、後半は粗に巻いている。
【0012】
コイルの電流が増えると、電流の周波数が高くなり、表皮効果により電流はコイル表面に近い部分を流れるようになる。そのため、コイルの見かけ上の抵抗が大きくなる。平角電線は円形電線と比較すると導体の周長が長いため、抵抗の上昇が小さいという利点がある。
【0013】
この種の従来の装置として、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0014】
【特許文献1】特許願2006−155001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、従来の磁気濃縮型爆薬発電機には、次のような問題がある。磁気濃縮型爆薬発電機のコイルには発電の後半に電流が増大し、大きな電流が流れる。それとともにコイル導体にはジュールが発生し、コイル導体は温度が急に上昇し、コイルの抵抗はコイルの温度に比例するため、コイルの抵抗も急に増大する。そのためにコイル電流の増幅は制限を受け、電流の増幅が阻害される。
【0016】
これを防ぐために、コイルの導体を大きくするとコイルの抵抗増大を防ぐことができるが、コイルの断面積が大きくなり、コイルの前半部で巻数を大きくすることができなくなる。
【0017】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、絶縁皮膜を施した平角電線を線材として用い、コイルの巻き数を大きくすると共に、電流の増幅過程でのコイル導体の温度上昇による影響を少なくすることによって電流増幅率を上げることができる磁気濃縮型爆薬発電機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1による磁気濃縮型爆薬発電機は、
起動信号の付与により爆薬を起爆させる雷管を内蔵する金属筒と、この金属筒の外周に配置されたコイルとを有し、このコイルに電流を流して増幅を行う磁気濃縮型爆薬発電機において、
前記コイルは、断面形状が長方形状の角型導体に絶縁皮膜を施した平角電線をコイル導体として用い、このコイル導体を前記金属筒の外周に所定間隔介して巻き付け、このコイル導体が前記金属筒と対向する面を除き、当該コイル導体間を絶縁性材料で絶縁して形成されており、前記コイルは後半部より複数コイルをハンダ付けなどの手段により電気的に接合して一体化し、コイル断面積を増やしたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、コイルの後半部の導体断面積が大きくなるため、コイルを流れる電流が増大しても、コイルの温度上昇が緩和されるため、電流の増幅過程におけるコイル抵抗の増大の影響を軽減することができる。更に、コイルの前半部のコイル導体として、予め絶縁被膜を持つ小断面積の平角電線を使用するため、コイル間隔を小さくし、コイル前半部の巻数を増加させることで初期インダクタンスを大きくすることが可能となり、コイルの初期インダクタンスと終期インダクタンスの比、L1/L2で表される電流増幅率を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明の磁気濃縮型爆薬発電機によれば、コイルの巻き数を大きくすると共に、電流の増幅過程でのコイル温度の上昇による影響を少なくすることによって電流増幅率を上げることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
【0022】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る磁気濃縮型爆薬発電機の断面構成を示し、(a)は長手軸方向の断面図、(b)は(a)のX1−X2断面図である。
【0023】
図1において、1Aは磁気濃縮型爆薬発電機、2A、3Aはコイルの導体、4Aはコイルの絶縁被覆、5Aはコイルの絶縁被覆、6Aは絶縁体、7Aはコイル2Aと3Aの導体間のハンダ付け部、8は金属筒、9は雷管、10は爆薬、11はフランジである。
【0024】
本実施の形態の磁気濃縮型爆薬発電機1Aが、従来の磁気濃縮型爆薬発電機1Bと異なる点は、コイルの後半部において、コイル2Aの他にコイル3Aを設け、7Aに示すようにコイル2Aと3Aをハンダ付けしてコイル2Aと3Aを電気的に一体化して構成したことにある。
【0025】
このような構成の磁気濃縮型爆薬発電機1Aによれば、コイルの後半部のコイル導体の断面積が増すため、コイル後半部でコイルに流れる電流値が急上昇しても、コイルの温度上昇が抑制され、コイルの抵抗が大きくならないので、その分、電流増幅率を大きくすることができる。
【0026】
また、コイル前半部はコイル2A単体で構成されるため、コイルの断面積が小さく、コイルの巻数を大きくとることができ、コイルの初期インダクタンス値L1が大きくなり、コイルの初期インダクタンスL1とコイルの終期インダクタンスL2の比、L1/L2で表される電流増幅率を大きくすることができる。
【0027】
なお、7Aに示すコイルのハンダ付け部はコイルの全周にわたって行う必要はなく、コイルの数カ所で部分的に行えばよい。これにより、コイル線材の絶縁皮膜を施した平角電線の特徴を生かし、コイル表面積を大幅に増加することが可能であり、コイル後半の表皮効果によるコイルの抵抗値増加がいっそう緩和される。
【実施例1】
【0028】
次に、本実施の形態の磁気濃縮型爆薬発電機1Aの実施例について説明する。
【0029】
図1において、コイル2Aの導体4Aを縦12mm、横2mmの平角電線を用い、絶縁皮膜5Aとしてポリエステル膜0.03mmとし、内径15mm、ピッチ4mmで、前半のコイルを38ターン、後半をコイル2Aと同じ仕様の平角電線によるコイル3Aを設け、コイル2Aとコイル2Aをハンダ付けし一体とし、ピッチ20mmで4ターンのコイルを形成した。コイルの初期インダクタンスは100μHであった。
【0030】
ここでコイルの形成方法について説明する。まず、テフロン(登録商標)樹脂のような滑りの良い円筒樹脂上に接して平角電線2Aを、その樹脂の軸方向に対するコイル断面の長辺が垂直となるようにテンションを調整しながら巻く。その後、後半部にコイル3Aを2Aと密着して巻く。さらに、コイル後半の数カ所においてコイル2Aとコイル3Aの絶縁皮膜をはぎ取り、ハンダ付けをする。しかる後にエポキシ樹脂等の電気絶縁性のよい樹脂を流し込み、樹脂が固まった時点でテフロン(登録商標)樹脂の円筒を除去する。
【0031】
このような磁気濃縮型爆薬発電機1Aを作動させたところ、出力電流/入力電流で表される電流増幅率として100倍を得た。
【0032】
次に、本実施の形態の磁気濃縮型爆薬発電機1Aとの比較のため、図2の従来の磁気濃縮型爆薬発電機1Bを製作し、作動させたところ、電流増幅率は50倍であった。
【0033】
図3に本発明による磁気濃縮型爆薬発電機1Aと従来技術による磁気濃縮型発電機1Bの電流増幅率の時間的特性図の様子を示す。図に示す曲線(a)は従来技術による電流値、曲線(b)は本発明による電流値を示す。
【0034】
図3で、電流値はコイル後半から差が発生し、本発明による磁気濃縮型爆薬発電機1Aの方が従来技術によるものより電流が大きくなることがわかる。
【0035】
以上説明したように、本発明の磁気濃縮型爆薬発電機1Aによれば、コイルの巻数を大きくでき、電流の増幅過程でのコイルの温度上昇による影響を少なくできるので、電流増幅率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気濃縮型爆薬発電機の断面構成を示し、(a)は長手軸方向の断面図、(b)は(a)のX1−X2断面図である。
【図2】従来技術の形態に係る磁気濃縮型爆薬発電機の断面構成を示し、(a)は長手軸方向の断面図、(b)は(a)のY1−Y2断面図である。
【図3】本実施の形態に係る磁気濃縮型爆薬発電機と従来の磁気濃縮型爆薬発電機との電流増幅率の特性図である。
【図4】従来の磁気濃縮型爆薬発電機の構成を示す図である。
【図5】従来の磁気濃縮型爆薬発電機の作動を示す原理図である。
【図6】従来の磁気濃縮型爆薬発電機の電流増幅率の特性図である。
【符号の説明】
【0037】
1A,1B 磁気濃縮型爆薬発電機
2A,2B,3A コイル
4A,4B コイルの導体
5A,5B コイルの絶縁体
6A,6B 絶縁体
7A ハンダ付け部
8 金属筒
9 雷管
10 爆薬
11 フランジ
12 配線
13 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起動信号の付与により爆薬を起爆させる雷管を内蔵する金属筒と、この金属筒の外周に配置されたコイルとを有し、このコイルに電流を流して増幅を行う磁気濃縮型爆薬発電機において、
前記コイルは、断面形状が長方形状の角型導体に絶縁皮膜を施した平角電線をコイル導体として用い、このコイル導体を前記金属筒の外周に所定間隔介して巻き付け、このコイル導体が前記金属筒と対向する面を除き、当該コイル導体間を絶縁性材料で絶縁して形成されており、前記コイルは後半部より絶縁皮膜を施した平角電線を線材とした複数のコイルをハンダ付けなどの手段により電気的に接合して一体化し、コイル断面積及びコイル表面積を増やしたことを特徴とする磁気濃縮型爆薬発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−50047(P2009−50047A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211303(P2007−211303)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)