説明

磁気熱量効果応用ヒートポンプ

【課題】装置の高効率化、小型化、安全性向上が図られつつ、しかも、ノンフロン型で、磁性材料の磁気熱量効果を有効に活用することができる磁気熱量効果応用ヒートポンプを提供する。
【解決手段】一対の磁場発生手段と磁性部材MBとを有する、磁気熱量効果を利用して流体を加熱冷却し、該流体を介して高温側熱交換部および低温側熱交換部に熱を移送する装置であって、高温側熱交換部と連通される高温側流体通路を切り換える高温側流路切換機構20と、低温側熱交換部と連通される低温側流体通路を切り換える低温側流路切換機構30とを有する流路切換機構とは、同一磁性部材MBにおいて、高温側熱交換部から流体が供給されている時間と、低温側熱交換部から流体が供給されている時間が同じ長さとなるように、各熱交換部と各磁性部材MBとを連通する流体通路を切り替えるものである

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気熱量効果応用ヒートポンプに関する。
従来、冷凍空調分野では、冷媒としてフロンガス(特定フロンガスや指定フロンガス)が使用されていたが、かかる特定フロンガスや指定フロンガスはオゾン層を破壊することから、製造禁止や規制がなされた。そこで、特定フロンガスや指定フロンガスに代えて、冷凍・空調分野では代替フロンが使用され広く普及しているが、代替フロンは京都議定書で温室効果ガスに指定されており、温暖化防止を防ぐ上ではその使用およびその排出削減が不可欠となっている。そこで、上記のごとき特定フロンガスや指定フロンガス、代替フロン等の環境に対して影響が大きい冷媒を使用しない冷凍・空調技術として、磁気熱量効果を利用した技術が注目されている。
本発明は、冷凍空調や蓄冷・蓄熱、低温−高温度間の熱移送等に使用できる、磁気熱量効果を利用した磁気熱量効果応用ヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気熱量効果を利用した冷凍装置として、能動型磁気冷凍装置(AMR)が開発されている。このAMRは、(1)磁性材料に磁場を印加する、(2)冷媒を低温側から高温側に流して高温側に熱を移送する、(3)磁性材料の磁場を消磁する、(4)冷媒を高温側から低温側に流して低温側に熱を移送する、ことを基本サイクルとして構成されている。
【0003】
特許文献1には、磁場発生手段を水平面内で回転させて磁性材料(磁気作業物質)に印加される磁力を変化させるように構成された装置が開示されている。
【0004】
図26に示すように、特許文献1の装置では、ケーシング121に固定された複数の磁気作業物質106が同一円周上に配設されており、この複数の磁気作業物質106を挟むように、垂直な軸122で支持された一対の回転板119が配設されている。この一対の回転板119には、その周上に、複数の磁気作業物質106を挟むように複数の永久磁石120が取着されている。
また、前記複数の磁気作業物質106には、流体(冷媒)を磁気作業物質106に供給する配管110が連通されており、配管110は被冷却体を冷却するための冷却器112および排熱熱交換器115に接続されている。つまり、冷却器112、複数の磁気作業物質106、排熱熱交換器115および配管110によって閉ループが形成されている。また、排熱熱交換器115と磁気作業物質106との間には、流体を配管110に供給する循環器114と、閉ループ内を流れる液体の方向を反転させる流路切換え弁113が設けられている。
このため、回転板119を回転させれば、各磁気作業物質106を、永久磁石120間の磁力の強い領域と磁力の弱い領域との間で移動させることができる。すると、閉ループ内を流れる液体の方向を、各永久磁石120が移動するタイミングに合わせて切り換えれば、磁気作業物質106から冷却器112に供給される流体の温度を冷凍能力とバランスする温度まで低下させることができる。
【0005】
しかるに、特許文献1の装置では、回転板119の回転を停止した状態で液体を流して熱交換を行い、熱交換の終了後回転板119を回転させて永久磁石120を所定の位置まで移動させ、所定の位置まで移動すると回転板119の回転を停止し、回転板119の回転を停止した状態で液体を流す方向を反転させて熱交換を行う、というサイクルを繰返すので、連続して熱交換を行うことができない。
しかも、複数の磁気作業物質106が配管110によって直列に連結されているので、閉ループ内を流れる液体の方向を反転させた場合、閉ループ内の液体を全て逆方向に移動させることになる。すると、反転したときに冷却器112と排熱熱交換器115との間の配管110内に存在する液体は、反転前に磁気作業物質106から供給された熱をそのまま磁気作業物質106に返すことになり、また、反転前に磁気作業物質106に供給した熱がそのまま磁気作業物質106から供給されることになる。つまり、液体の方向を反転したときに冷却器112と排熱熱交換器115との間の配管110内に存在する液体は、全く熱移送に寄与しないことになる。
まとめれば、特許文献1の装置は、連続して熱交換を行うことができない上、一回の熱交換でも無駄が非常に多いので、冷却効率が非常に悪いのである。
しかも、回転板119が回転するタイミングと流路切換え弁113を切換えるタイミングを制御しなければならないので、装置が複雑大型化してしまう。
【0006】
特許文献2には、磁性材料を水平面内で回転させて、磁場発生手段が形成する磁場内に進入離脱させることにより磁性材料に加わる磁力を変化させるように構成された装置が開示されている。
【0007】
図27および図28に示すように、特許文献2には、中心軸の周りで回転するように取り付けられた磁熱効果を示す材料からなる複数のベッド222を有するリング221と、ベッド222に対して熱伝達流体を供給排出するコンジット227と、ベッド222に対して磁界を印加するマグネット229と、コンジット227から熱伝達流体が供給されるホット熱交換器234およびコールド熱交換器238とを備えた装置が開示されている。
この装置では、リング221を中心軸周りに回転させると、複数のベッド222に対して加わる磁力を変化させることができるように構成されている。また、コンジット227と各ベッド222のホット端h及びコールド端cとの間に分配バルブ224が設けられており、リング221が回転するときに、熱伝達流体が、印加されている磁力が弱いベッド222からコールド熱交換器238、印加されている磁力が強いベッド222、ホット熱交換器234、印加されている磁力が弱いベッド222の順に流れるように自動的にスイッチングするようになっている。
このため、リング221を回転させれば、各ベッド222において、印加されている磁力が強い状態と印加されている磁力が弱い状態とが繰り返されるので、分配バルブ224によって、熱伝達流体が流れる方向が各ベッド222に対して印加されている磁力が切り替わるタイミングに合わせて切り換わるので、コールド熱交換器238に供給される熱伝達流体の温度を低下させることができる。
しかも、分配バルブ224によって流路が自動的にスイッチングされるので、特許文献1の装置のように、流路を切り換えるタイミングの制御を行わなくてもよく、装置の制御が容易になるという利点がある。
【0008】
さらに、コールド熱交換器238は、ベッド222のコールド端cに対してコンジット227によって接続されており、ホット熱交換器234は、ベッド222のホット端hに対してコンジット227によって接蔵されている。しかも、ベッド222のコールド端cでは、コールド熱交換器238から熱伝達流体が流入するポートciと、コールド熱交換器238に向かって熱伝達流体が流出するポートcoとが別々に設けられ、かつ、各ポートが別々のコンジット227に連通されている。同様に、ベッド222のホット端hでは、ホット熱交換器234から熱伝達流体が流入するポートhiと、ホット熱交換器234に向かって熱伝達流体が流出するポートhoとが別々に設けられ、かつ、各ポートが別々のコンジット227に連通されている。
このため、各コンジット227内において流体が流る方向は一方向に保持され、各コンジット227内において熱伝達流体が流れる方向が逆転することがないので、特許文献1の装置に比べて、熱移送の無駄を少なくできるという利点もある。
【0009】
ところで、特許文献2の装置では、リング221を回転させているので、ベッド222とマグネット229の相対的な位置関係によっては同じベッド222内でも磁場の状態が異なる部分が発生する。例えば、同じベッド222内でも印加されている磁力が弱い部分と印加されている磁力が強い部分が形成されてしまう可能性があり、かかる状態になると、位置によって熱伝達流体とベッド222との間の熱伝達状況が変化してしまい、その影響でベッド222から排出される熱伝達流体の温度が時間変動する可能性がある。
かかる問題を防ぐために、特許文献2の装置では、リング221の円周方向に沿ったマグネット229の長さをリング221の円周方向に沿ったベッド222の長さよりもかなり長く(ベッド222の長さの約2倍)して、同じベッド222内における磁場の分布を抑えている。
しかし、かかる構成とすれば、ベッド222において、強い磁力が印加されているにもかかわらず熱伝達流体が流されない部分ができるので、磁気熱量効果を有効に利用できない。
【0010】
【特許文献1】特開2002−106999号
【特許文献2】特表2004−506168号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、装置の高効率化、小型化、安全性向上が図られつつ、しかも、ノンフロン型で、磁性材料の磁気熱量効果を有効に活用することができる磁気熱量効果応用ヒートポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明の磁気熱量効果応用ヒートポンプは、磁性材料の磁気熱量効果を利用して流体を加熱冷却し、該流体を介して高温側熱交換部および低温側熱交換部に熱を移送する装置であって、間隔を空けて配設された一対の磁場発生手段と、前記一対の磁場発生手段間の空間に配設され、該一対の磁場発生手段間の空間において回転可能に設けられた、前記磁性材料からなる磁性部材を保持する前記磁性部材保持手段と、該磁性部材保持手段に保持された前記磁性部材に対して、前記流体を供給排出する流体給排手段とを備えており、前記磁性部材保持手段は、複数の前記磁性部材を、前記磁性部材保持手段の回転に伴って前記一対の磁場発生手段間の空間に進入離脱する位置であって、該磁性部材保持手段の回転軸を中心とする円周方向に沿って並ぶように保持しており、前記流体給排手段は、前記高温側熱交換部と前記複数の磁性部材との間に設けられ、該複数の磁性部材にそれぞれ連通された複数の高温側流体通路と、前記低温側熱交換部と前記複数の磁性部材との間に設けられ、該複数の磁性部材にそれぞれ連通された複数の低温側流体通路とを有する流体通路と、前記高温側熱交換部と前記高温側流体通路との間の連通遮断を切り換える高温側流路切換機構と、前記低温側熱交換部と前記低温側流体通路との間の連通遮断を切り換える低温側流路切換機構とを有する流路切換機構と、を備えており、前記流路切換機構は、同一磁性部材において、前記高温側熱交換部から前記流体が供給されている時間と、前記低温側熱交換部から前記流体が供給されている時間とが等しくなるように、各熱交換部と各磁性部材とを連通する前記流体通路を切り換えるものであることを特徴とする。
第2発明の磁気熱量効果応用ヒートポンプは、第1発明において、前記流路切換機構は、前記高温側熱交換部から前記流体が供給されている同一磁性部材中では、磁場強度が強い領域を通過する前記流体の流量が、磁場強度が弱い領域を通過する前記流体の流量よりも少なく、前記低温側熱交換部から前記流体が供給されている同一磁性部材中では、磁場強度が強い領域を通過する前記流体の流量が、磁場強度が弱い領域を通過する前記流体の流量よりも多くなるように、各熱交換部と連通する前記流体通路を切り替えるものであることを特徴とする。
第3発明の磁気熱量効果応用ヒートポンプは、第1または第2発明において、各高温側流体通路は、前記高温側熱交換器から前記磁性部材に対して前記流体を供給する一対の高温側供給部および、該磁性部材から前記高温側熱交換器に対して前記流体を排出する一対の高温側排出部を有しており、各低温側流体通路は、前記一対の高温側供給部間に配設された、前記磁性部材から前記低温側熱交換器に対して前記流体を排出する低温側排出部と、前記一対の高温側排出部間に配設された、前記低温側熱交換器から前記磁性部材に対して前記流体を供給する低温側供給部とを備えていることを特徴とする。
第4発明の磁気熱量効果応用ヒートポンプは、第1、第2または第3発明において、前記複数の高温側流体通路は、各磁性部材の上部に前記流体を供給し、各磁性部材の下部から前記流体を排出するように設けられており、前記複数の低側流体通路は、各磁性部材の上部に前記流体を供給し、各磁性部材の下部から前記流体を排出するように設けられていることを特徴とする。
第5発明の磁気熱量効果応用ヒートポンプは、第1、第2、第3または第4発明において、前記複数の磁性部材は、該磁性部材保持手段の回転軸を中心とする円弧状に形成されており、前記一対の磁場発生手段は、両者の間に、一の磁場発生手段から他の磁場発生手段に向かう磁場が形成されており、該磁場を形成する磁場形成部は、前記磁性部材保持手段の回転軸を中心とする円弧状に形成されており、その半径は、前記磁性部材の半径と等距離となるように形成されていることを特徴とする。
第6発明の磁気熱量効果応用ヒートポンプは、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記一対の磁場発生手段は、前記磁場形成部を2箇所備えており、一方の磁場形成部は、一方の磁場発生手段から他方の磁場発生手段に向かう磁化方向を有しており、他方の磁場形成部は、他方の磁場発生手段から一方の磁場発生手段に向かう磁化方向を有しており、該2つの磁場形成部は、両者を循環する磁場が形成されるように配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、磁性部材保持手段を回転させれば、一対の磁場発生手段から各磁性部材に印加する磁場強度を変化させることができるので、この回転に合わせて、各磁性部材と接続される高温側流体通路および低温側流体通路を切り換える。つまり、強い磁場の領域に位置する磁性部材を通って低温側熱交換部から高温側熱交換部に流体が流れ、弱い磁場の領域に位置する磁性部材を通って高温側熱交換部から低温側熱交換部に流体が流れるように、流路切換機構によって、各磁性部材と接続される低温側流体通路および高温側流体通路を切り換える。すると、高温の流体を連続して高温側熱交換部に供給することができ、一方、低温の流体を連続して低温側熱交換部に供給することができる。しかも、流路切替機構は、同一磁性部材において、高温側熱交換部から流体が供給されている時間と低温側熱交換部から流体が供給されている時間とが等しくなるように、各熱交換部と各磁性部材とを連通する流体通路を切り換えるから、熱交換を効率的に行うことができる。
第2発明によれば、流路切換機構は、高温側熱交換部から流体が供給されている磁性部材中では冷却効果の高い領域に多くの流体を供給し、低温側熱交換部から流体が供給されている磁性部材中では加熱効果の高い領域に多くの流体を供給しているので、磁気熱量効果を有効に活用することができる。
第3発明によれば、磁性部材中において、高温側供給部から低温側排出部までの距離、および、低温側供給部から高温側排出部までの距離がいずれも短くなる。すると、各磁性部材中を液体が流れる抵抗を減少できるため、液体を流すための動力を小さくすることができるし、抵抗ロスで生じる発熱を低減できる。また、各磁性部材間に流れる流体の流路間の流れを、均一な流れとすることができる。そして、磁場強度の強弱に対応して磁性部材中における液体の流れる方向が逆転しても、各方向に流す両者の流体が混入することなく、しかも短期間で熱交換を行うことができる。
第4発明によれば、各磁性部材の上部に流体を供給して下部から排出するので、磁性部材全体と流体との接触状況を良好にすることができるから、各磁性部材と流体との間の熱交換効率を高くすることができる。
第5発明によれば、磁性部材保持手段の半径方向における磁場形成手段と磁性部材との相対的な位置の変化が変化しないので、磁性部材保持手段の回転に起因して、磁性部材に印加される磁場の状態が変化することを抑えることができる。
第6発明によれば、一対の磁場発生手段間に形成される磁場強度が強くなり、また、磁場形成部と他の部分との間における磁場を急激に変化させることができるから、磁性部材の温度変化を大きくでき、各磁性部材と流体との間の熱交換効率を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の磁気熱量効果応用ヒートポンプは、磁性材料の磁気熱量効果を利用して流体(例えば、エタノール水溶液等の冷媒)を加熱冷却し、この流体を介して高温側熱交換部および低温側熱交換部に熱を移送する装置であって、装置の高効率化、小型化、安全性向上が図られつつ、しかも、ノンフロン型で、磁性材料の磁気熱量効果を有効に活用することができるようにしたことに特徴を有している。
【0015】
まず、図1〜図3に基づいて、本実施形態の磁気熱量効果応用ヒートポンプ(以下、単にヒートポンプ1という)を説明する。なお、図2および図3において、符合CLは後述する磁性部材保持手段10の回転軸を示しており、この回転軸CLはヒートポンプ1の中心軸LLと一致している。
【0016】
本実施形態のヒートポンプ1は、一対の磁場発生手段5A,5Bと、複数の磁性部材MBを保持する磁性部材保持手段10と、この磁性部材保持手段10に保持された複数の磁性部材MBに対して流体を供給排出する流体給排手段と、高温側熱交換部および低温側熱交換部から構成されている。
【0017】
なお、本実施形態のヒートポンプ1において、高温側熱交換部は、流体の熱を外部に放出することができるもの(例えば、蓄熱装置に利用する機器等)であればよく、低温側熱交換部は、外部の熱を吸収して流体に供給することができるもの(例えば、冷凍機に利用する機器等)であればよく、特に限定されない。
また、熱交換媒体となる流体はとくに限定されないが、水や不凍液等の温室効果の低い液体が好ましい。
【0018】
図1および図2において、符号5A,5Bはそれぞれ磁場発生手段を示している。この上下一対の磁場発生手段5A,5Bは、互いに対向する面同士が間隔を空けた状態となるように配設されており、図示しないステーなどによってその相対的な位置が固定されている。
この一対の磁場発生手段5A,5Bは、2箇所の磁場発生部6,7によって両者の間の空間に一方の磁場発生手段から他方の磁場発生手段に向かう磁場が形成されるように構成されている(図6参照)。この磁場発生部6,7は、ヒートポンプ1の中心軸LLを中心とする円周方向に沿って、2箇所の磁場強度が強い領域(磁場発生部6,7間の領域)と、2箇所の磁場強度が弱い領域(磁場発生部6,7の無い領域)とが交互に形成されるように配設されている。
なお、上述した磁場強度の強い領域とは、磁場発生部6,7間に形成される最大磁場強度の20%以上の磁場強度を有する領域を意味しており、以下では、この領域を強磁場領域という。また、上述した磁場強度の弱い領域とは、磁場発生部6,7間に形成される最大磁場強度の20%以下の磁場強度しかない領域を意味しており、以下では、弱磁場領域という。
【0019】
この一対の磁場発生手段5A,5B間の空間には、磁性部材保持手段10のプレート部11が、この空間内で回転できるように配設されている。このプレート部11は、円板状に形成されており、例えば、La(FexSi1-x)13HY等の磁気熱量効果を有する磁性材料からなる磁性部材MBを複数保持している。そして、磁性部材MBは、プレート部11が回転軸CL周りに回転すると、一対の磁場発生手段5A,5B間の空間に形成されている強磁場領域に対して進入離脱する位置に配設されている。
そして、磁性部材MBは、2箇所の強磁場領域にはそれぞれ少なくとも一つの磁性部材MBが位置し、2箇所の弱磁場領域にもそれぞれ少なくとも一つの磁性部材MBが位置するように、プレート部11に配設されている。具体的には、複数の磁性部材MBは、プレート部11の回転に伴って前記強磁場領域に進入離脱する位置であって、プレート部11の回転軸CLを中心とする円周方向に沿って並ぶように配設されている。
【0020】
なお、磁気熱量効果を有する磁性材料とは、断熱条件で磁場が印加されると温度が上昇し、断熱条件で消磁される(または、磁場が弱くなる)と温度が低下するような現象を生じる材料である。本実施形態のヒートポンプ1であれば、磁性材料として、上述した強磁場領域中に位置すると温度が上昇し、弱磁場領域中に位置すると温度低下する性質を有するものが採用される。
また、本実施形態における磁性部材MBは、例えば、磁性材料の粒や粒子状に形成された磁性材料をネット等に収容したものや、磁性材料の粒や粒子状に形成された磁性材料を焼結等により結合した多孔質体などを採用できるが、流体を流すことができかつ流体と磁性材料とが接触する構造を有するものであればよく、とくに限定されない。
また、プレート部11は円板状に限られず、一対の磁場発生手段5A,5B間の空間において回転できる形状であればよい。例えば、楕円形や四角形などでもよく、とくに限定されない。
【0021】
図1〜図3に示すように、磁性部材保持手段10のプレート部11は、磁場発生手段5Aを貫通する上軸部15によって流体給排手段の高温側流路切換機構20に連結されており、磁場発生手段5Bを貫通する下軸部16によって流体給排手段の低温側流路切換機構30に連結されている。
なお、上下の軸部15,16は、いずれも磁場発生手段5A,5Bに対して回転可能に設けられている。
【0022】
高温側流路切換機構20は、ステーSTに取り付けられ固定された固定側部材22と、この固定側部材22に対してプレート部11の回転軸CL周りに回転可能であって前記上軸部15の軸端(図1〜図3では上端)に連結された回転側部材21とから構成されている。この高温側流路切換機構20は、図示しない高温側熱交換部と磁性部材保持手段10のプレート部11に保持されている複数の磁性部材MBとを連通するものであり、高温側熱交換部と連通させる磁性部材MBを切り換える機能を有している。
具体的には、固定側部材22に対して回転側部材21が回転すると、高温側熱交換部から供給される流体が、供給用高温側流体通路を通して、弱磁場領域中に位置する少なくとも2つの磁性部材MBに供給されるように接続されるように構成されている。しかも、強磁場領域中に位置する少なくとも2つの磁性部材MBから排出される流体が、排出用高温側流体通路を通して、高温側熱交換部に供給されるように接続するように構成されている。
【0023】
低温側流路切換機構30は、ステーSTに取り付けられ固定された固定側部材32と、この固定側部材32に対してプレート部11の回転軸CL周りに回転可能であって前記下軸部16の軸端(図1〜図3では下端)に連結された回転側部材31とから構成されている。この高温側流路切換機構20は、図示しない低温側熱交換部と磁性部材保持手段10のプレート部11に保持されている複数の磁性部材MBとを連通するものであり、低温側熱交換部と連通させる磁性部材MBを切り換える機能を有している。
具体的には、固定側部材32に対して回転側部材31が回転すると、低温側熱交換部から供給される流体が、供給用低温側流体通路を通して、強磁場領域中に位置する少なくとも2つの磁性部材MBに供給されるように接続されるように構成されている。しかも、弱磁場領域中に位置する少なくとも2つの磁性部材MBから排出される流体が、排出用低温側流体通路を通して、低温側熱交換部に供給されるように接続するように構成されている。
【0024】
なお、特許請求の範囲にいう高温側流体通路は、前記供給用高温側流体通路と前記排出用高温側流体通路とから構成されており、供給用高温側流体通路および排出用高温側流体通路は、各磁性部材MBに対して、それぞれ二系統設けられている。そして、供給用高温側流体通路は、固定側部材22の流入通路22i、回転側部材21の流入通路21i、上軸部15の流入通路15iおよびプレート部11の高温側供給部12hiから構成されており、排出用高温側流体通路は、固定側部材22の排出通路22o、回転側部材21の排出通路21o、上軸部15の排出通路15oおよびプレート部11の高温側排出部12hoから構成されている。
一方、特許請求の範囲にいう低温側流体通路は、前記供給用低温側流体通路と前記排出用低温側流体通路とから構成されており、供給用低温側流体通路および排出用低温側流体通路は、各磁性部材MBに対して、それぞれ一系統設けられている。そして、供給用低温側流体通路は、固定側部材32の流入通路32i、回転側部材31の流入通路31i、下軸部16の流入通路16iおよびプレート部11の低温側供給部12ciから構成されており、排出用低温側流体通路は、固定側部材32の排出通路32o、回転側部材31の排出通路31o、下軸部16の排出通路16oおよびプレート部11の低温側排出部12coから構成されている。
【0025】
そして、図1〜図3に示すように、本実施形態のヒートポンプ1では、磁性部材保持手段10のプレート部11の回転軸CLと同軸な駆動軸Sが設けられている。この駆動軸Sの上端には、この駆動軸Sを回転させる、例えば、モータ等の駆動手段Mを備えている。そして、前述した磁性部材保持手段10のプレート部11および軸部15,16、高温側流路切換機構20の回転側部材21、低温側流路切換機構30の回転側部材31は、駆動軸Sに連結されている。
このため、駆動手段Mを駆動すれば、駆動軸Sとともに磁性部材保持手段10のプレート部11等を回転させることができるのである。
また、高温側流路切換機構20の回転側部材21が回転すれば、回転側部材21と固定側部材22との相対的な位置が変化するから、高温側熱交換部と連通させる磁性部材MBが切り換えられるのである。
同様に、低温側流路切換機構30の回転側部材31が回転すれば、回転側部材31と固定側部材32との相対的な位置が変化するから、低温側熱交換部と連通させる磁性部材MBが切り換えられるのである。
【0026】
以上のごとき構成を有する本実施形態のヒートポンプ1における流体の流れを、図2、図3、図13および図14に基づいて説明する。
なお、図2において、ヒートポンプ1の中心線LL(図2および図3では、プレート部11の回転軸CLと一致する)に対して、右半分は高温側熱交換部に連通されている排出用高温側流体通路が存在する断面であり、左半分は低温側熱交換部に連通されている供給用低温側流体通路が存在する断面である。
また、図3において、ヒートポンプ1の中心線LLに対して、右半分は高温側熱交換部に連通されている供給用高温側流体通路が存在する断面であり、左半分は低温側熱交換部に連通されている排出用低温側流体通路が存在する断面である。
【0027】
図2において、CIPは、低温側熱交換部から低温側流路切換機構30に流体を供給するパイプを示している。図示しないポンプ等の流体駆動手段によって流体を流し、このパイプCIPから、流体を供給すると、流体は上述した供給用低温側流体通路を通して、強磁場領域中に位置する少なくとも2つの磁性部材MB(高温磁性部材MB)に流入する。つまり、流体は、固定側部材32の流入通路32i、回転側部材31の流入通路31i、下軸部16の流入通路16i、プレート部11の低温側供給部12ciをこの順番で流れて、高温磁性部材MBに供給される(図2、図13)。
すると、高温磁性部材MBは強磁場領域(一対の磁場発生手段5A,5Bの磁場発生部6,7間)に位置しておりその温度が上昇しているので、高温磁性部材MBを通過するときに、流体に熱が供給され、流体の温度が上昇する。
【0028】
上記高温磁性部材MBを通過した流体は、上述した排出用高温側流体通路と高温側熱交換部に連通されたパイプHOPを介して高温側熱交換部に供給される。つまり、流体は、プレート部11の高温側排出部12ho、上軸部15の排出通路15o、回転側部材21の排出通路21o、固定側部材22の排出通路22oをこの順番で流れて高温側熱交換部に供給される。
【0029】
図3に示すように、高温側熱交換部において外部に熱を放出した流体は、パイプHIPから上述した供給用高温側流体通路を通して、弱磁場領域中に位置する少なくとも2つの磁性部材MB(低温磁性部材MB)に流入する。つまり、流体は、固定側部材22の流入通路22i、回転側部材21の流入通路21i、上軸部15の流入通路15i、プレート部11の高温側供給部12hiをこの順番で流れて低温磁性部材MBに供給される(図3、図14)。
すると、低温磁性部材MBは弱磁場領域に位置しておりその温度が低下しているので、低温磁性部材MBを通過するときに、流体から熱が奪われ、流体の温度が低下する。
【0030】
低温磁性部材MBを通過した流体は、上述した排出用低温側流体通路と低温側熱交換部に連通されたパイプCOPを介して低温側熱交換部に供給される。つまり、流体は、プレート部11の低温側排出部12co、下軸部16の排出通路16o、回転側部材31の排出通路31o、固定側部材32の排出通路32oをこの順番で流れて低温側熱交換部に供給され、この低温側熱交換部において、外部の熱を吸収する。
【0031】
つまり、流体を、低温側熱交換部→供給用低温側流体通路→高温磁性部材MB→排出用高温側流体通路→高温側熱交換部→供給用高温側流体通路→低温磁性部材MB→排出用低側流体通路→低温側熱交換部の順(基本サイクル)で流せば、低温側熱交換部において外部から熱を吸収することができるし、高温側熱交換部において外部に対し熱を供給することもできるのである。
【0032】
ここで、一度流体が流れた磁性部材MBでは、高温磁性部材MBの場合には流体に熱を供給することによって温度が低下し、低温磁性部材MBの場合には流体から熱を吸収して温度が上昇する。
よって、同じ磁性部材MB(前記高温磁性部材MB)を強磁場領域中に配置したままとし、同じ磁性部材MB(前記低温磁性部材MB)を弱磁場領域中に配置したままとしていると、流体に対し磁性部材MBから供給できる熱や、磁性部材MBが流体から吸収できる熱が少なくなる。すると、上述した基本サイクルで流体を流しても、低温側熱交換部における外部の熱の吸収や、高温側熱交換部における外部への熱の供給ができなくなる。
【0033】
しかし、本実施形態のヒートポンプ1では、磁性部材保持手段10のプレート部11を回転させれば、プレート部11に保持されている複数の磁性部材MBを、交互に強磁場領域と弱磁場領域に配置することができ、各磁性部材MBに加わる磁場強度を交互に切り換えることができる。言い換えれば、各磁性部材MBについて、強い磁力が加わる状態と、弱い磁力が加わる状態とを交互に切り換えることができるのである。
【0034】
すると、強磁場領域中に配置されていた状態において低温側熱交換部から流体が供給されていた磁性部材MB(上述した高温磁性部材MB、図2の磁性部材MB)は、プレート部11の回転に伴って、弱磁場領域中に配置される。つまり、図3の磁性部材MBの状態となるから、印加される磁力が非常に弱くなることによって温度が低下する。このとき、高温側流路切換機構20を切り換えて、この磁性部材MBに対して高温側熱交換部から流体が供給されるようにすれば、磁性部材MBを通過するときに、流体の熱が吸収される。同時に、低温側流路切換機構30を切り換えて、磁性部材MBを通した流体が低温側熱交換部に供給されるようにすれば、低温側熱交換部に低温の流体を供給できるから、低温側熱交換部による熱吸収を継続することができる。
【0035】
逆に、弱磁場領域中に配置されていた状態において高温側熱交換部から流体が供給されていた磁性部材MB(上述した低温磁性部材MB、図3の磁性部材MB)は、プレート部11の回転に伴って、強磁場領域中に配置される。つまり、図2の磁性部材MBの状態となるから、印加される磁力が非常に強くなることによって温度が上昇する。このとき、高温側流路切換機構20を切り換えて、この磁性部材MBに対して低温側熱交換部から流体が供給されるようにすれば、磁性部材MBを通過するときに、流体に熱が供給される。同時に、低温側流路切換機構30を切り換えて、磁性部材MBを通した流体が高温側熱交換部に供給されるようにすれば、高温側熱交換部に高温の流体を供給できるから、高温側熱交換部による熱放出を継続することができるのである。
【0036】
しかも、本実施形態のヒートポンプ1では、強磁場領域と弱磁場領域とが磁性部材保持手段10の回転軸CLを中心とする円周方向に沿って交互に位置するように配設されているので、磁性部材保持手段10のプレート部11を回転させれば、各磁性部材MBを、強磁場領域と弱磁場領域に交互に配置することができる。つまり、弱磁場領域中に配置されていた磁性部材MBの強磁場領域中への移動と、強磁場領域中に配置されていた磁性部材MBを弱磁場領域中への移動とを連続的に行うことができる。
【0037】
したがって、本実施形態のヒートポンプ1によれば、プレート部11の回転に合わせて、高温側熱交換部および低温側熱交換部に接続される高温側流体通路および低温側流体通路、言い換えれば、高温側熱交換部および低温側熱交換部に接続される磁性部材MBを切り換えて、常に基本サイクルで流体が流れるようにすれば、高温の流体を連続して高温側熱交換部に供給することができるし、一方、低温の流体を連続して低温側熱交換部に供給することができる。つまり、プレート部11を連続して回転(例えば、約30rpm)で回転させれば、基本サイクルを維持したまま、高温側熱交換部−低温側熱交換部間において連続して流体を循環させることができるのである。
【0038】
ところで、各磁性部材MBが配置される領域が強磁場領域と弱磁場領域との間で切り換わるときに、各磁性部材MB中において流体が流れる方向を逆転させなければならないが、本実施形態のヒートポンプ1では、各部が以下のごとき構成を有しているので、流体が流れる方向が逆転するときでも流体の流れが停止することがない。
以下、上記のごとき作動を実現できる、本実施形態のヒートポンプ1を構成する各部を説明する。
【0039】
まず、磁性部材保持手段10を説明する。
図4は磁性部材保持手段10のプレート部11の概略説明図であって、(A)は図5(A)のA-O-B断面であり、(B)は図5(A)のC-C断面である。図5はプレート部11の本体部12の概略説明図であって、(A)は上面図であり、(B)は底面図である。
【0040】
図4および図5に示すように、磁性部材保持手段10のプレート部11は、円板状の本体部12と、この本体部12の上面および下面に取り付けられる蓋状部材13,14とから構成されている。
【0041】
図4(A)および図5(A)に示すように、本体部12は、その上面に、磁性部材MBを保持する複数の保持溝12aが形成されている。複数の保持溝12aは、本体部12の中心(プレート部11の回転軸CL)を中心とする円弧状に形成されており、円周方向に沿って、同一円周上に等角度間隔で並ぶように配設されている。例えば、本実施形態の本体部12のように、保持溝12aが6箇所設けられる場合であれば、各保持溝12aを、その中心角θgが約50°となるように形成して、円周方向に沿って約60°間隔で並ぶように配設することができる。なお、保持溝12aの中心角θgおよび配設する間隔は、上記例に限られず、保持溝12aの数に応じて適宜設定される。
【0042】
この本体部12の上面には、複数の高温側供給部12hiが形成されている。この複数の高温側供給部12hiは、本体部12の中心から保持溝12aに向けて放射状に配設された溝である。そして、複数の高温側供給部12hiは、一つの保持溝12aに対して、それぞれ2本の高温側供給部12hiの先端が連通されるように配置されており、その基端(本体部12の中心側の端部)が本体部12の中心を中心とする同一円周上に位置するように形成されている。
また、本体部12の上面において、同じ保持溝12aに連通されている2本の高温側供給部12hiの間には、それぞれ低温側供給部12ciが配設されている。この複数の低温側供給部12ciも、本体部12の中心から保持溝12aに向けて放射状に配設された溝である。そして、複数の低温側供給部12ciも、その先端が保持溝12aに連通されるように配置されており、その基端(本体部12の中心側の端部)が本体部12の中心を中心とする同一円周上に位置するように形成されている。
例えば、本実施形態の本体部12のように、保持溝12aが6箇所設けられる場合であれば、2本の高温側供給部12hiを両者の挟む角θ1が約40°となるように形成し、低温側供給部12ciを、2本の高温側供給部12hiの挟む角θ1の2等分線上、つまり、低温側供給部12ciと高温側供給部12hiの挟む角θ2が約20°となるように形成することができる。なお、2本の高温側供給部12hiの挟む角θ1および、低温側供給部12ciと高温側供給部12hiの挟む角θ2は、上記例に限られず、保持溝12aの中心角θgおよび保持溝12aを配設する間隔に応じて適宜設定することができる。
なお、複数の低温側供給部12ciの基端は、本体部12を貫通する貫通孔によって、本体部12の下面と連通されている。
【0043】
一方、図5(B)に示すように、本体部12の下面には、複数の高温側排出部12hoが形成されている。各高温側排出部12hoは、前記複数の高温側供給部12hiの裏側(前記複数の高温側供給部12hiと対応する位置)に、本体部12の中心から保持溝12aに向けて放射状に配設された溝である。この複数の高温側排出部12hoは、その先端が保持溝12aに連通され、その基端が本体部12の中心を中心とする同一円周上に位置するように形成されている。そして、各高温側排出部12hoの基端(本体部12の中心側の端部)は、前記高温側供給部12hiの基端よりも本体部12の中心に近い位置に配設されており、本体部12を貫通する貫通孔によって、本体部12の上面と連通されている。
また、本体部12の下面には、複数の低温側排出部12coが形成されている。この各低温側排出部12coも、本体部12の中心から保持溝12aに向けて放射状に配設された溝である。複数の低温側排出部12coは、その先端が保持溝12aに連通されている。一方、低温側排出部12coの基端は、前記低温側供給部12ciよりも本体部12の中心から遠い位置に配設されており、本体部12の中心を中心とする同一円周上に位置するように形成されている。そして、各低温側排出部12coは、前記複数の低温側供給部12ciの裏側(前記複数の低温側供給部12ciと対応する位置)、つまり、同じ保持溝12aに連通されている2本の高温側排出部12hoの間に設けられている。
【0044】
蓋状部材13,14は、いずれも本体部12の上面及び下面に形成されている各溝を外部から液密に保つためのものである。つまり、蓋状部材13,14は、本体部12の上面及び下面にそれぞれ取り付けると、本体部12の各溝が完全に覆うことができるように形成されているのである。
この蓋状部材13,14には、複数の貫通孔が設けられており、この貫通孔を通してのみ本体部12の各溝が外部と連通されるように構成されている。つまり、蓋状部材13,14には、複数の貫通孔を通してのみ、本体部12の各溝に対して外部から流体の供給排出ができるように構成されている。
具体的には、蓋状部材13,14に形成されている複数の貫通孔は、蓋状部材13であれば、複数の高温側供給部12hiの基端および複数の高温側排出部12hoの基端と連通されている貫通孔と対応する位置に形成されており、蓋状部材14であれば、複数の低温側供給部12ciの基端と連通されている貫通孔および複数の低温側排出部12coの基端と対応する位置に形成されている。
【0045】
つぎに、軸部15,16について説明する。
図6(A)は一対の磁場発生手段5A,5Bの概略側面図であり、(B)は図1のVIB−VIB断面矢視図であり、(C)は図1のVIC−VIC断面矢視図である。なお、図1の図1のVIB−VIB断面および、図1のVIC−VIC断面は、図6(A)のB−B断面および、図1のC−C断面と対応している。
【0046】
図2、図3および図6に示すように、軸部15,16は、いずれも円筒状に形成された軸状の部材である。各軸部は、それぞれその軸方向に沿って貫通する、複数本の供給通路15i,16iおよび、複数本の排出通路15o,16oを備えている。
【0047】
この上軸部15における複数本の供給通路15iはプレート部11の回転軸CLを中心とする同一円周上に配設されており、複数本の排出通路15oはプレート部11の回転軸CLを中心とする同一円周上に配設されている。そして、複数本の供給通路15iおよび複数本の排出通路15oは、その下端の開口部が、前記蓋状部材13の貫通孔と対応する位置に形成されている。つまり、複数本の供給通路15iの下端の開口部は、複数の高温側供給部12hiの基端と対応する位置に形成されており、複数本の排出通路15oの下端の開口部は、複数の高温側排出部12hoの基端と連通されている貫通孔と対応する位置に形成されている。
具体的には、複数の供給通路15iが配設されている円周の半径が、前記プレート11における本体部12の高温側供給部12hiの基端が配設される円周の半径と同じ長さとなるように配設されている。また、複数の排出通路15oが配設されている円周の半径が、前記プレート11における本体部12の高温側排出部12hoの基端が配設される円周の半径と同じ長さとなるように配設されている。そして、本実施形態の本体部12のように、保持溝12aが6箇所設けられる場合であれば、上軸部15に設ける各供給通路15iおよび各排出通路15oは、20°間隔と40°間隔とが繰り返されるように並んで配設されている。
【0048】
一方、下軸部16における複数本の供給通路16iはプレート部11の回転軸CLを中心とする同一円周上に配設されており、複数本の排出通路16oはプレート部11の回転軸CLを中心とする同一円周上に配設されている。そして、下軸部16における複数本の供給通路16iおよび複数本の排出通路16oは、その上端の開口部が、前記蓋状部材14の貫通孔と対応する位置に形成されている。つまり、複数本の供給通路16iの上端の開口部は、複数の低温側供給部12ciの基端と連通されている貫通孔と対応する位置に形成されており、複数本の排出通路16oの上端の開口部は、複数の低温側排出部12coの基端と対応する位置に形成されている。
具体的には、供給通路16iが配設されている円周の半径が、前記プレート11における本体部12の低温側供給部12ciの基端が配設される円周の半径と同じ長さとなるように配設されている。また、排出通路16oが配設されている円周の半径が、前記プレート11における本体部12の低温側排出部12coの基端が配設される円周の半径と同じ長さとなるように配設されている。そして、本実施形態の本体部12のように、保持溝12aが6箇所設けられる場合であれば、下軸部16に設ける各供給通路16iおよび各排出通路16oは、60°間隔となるように配設されている。
【0049】
本実施形態のヒートポンプ1では、磁性部材保持手段10が以上のごとき構成を有しているから、上軸部15の供給通路15iから流体を供給すれば、この供給通路15iと連通されている高温側供給部12hi、この高温側供給部12hiの先端が連通されている保持溝12a内の磁性部材MB、この保持溝12aに先端が連通されている低温側排出部12co、この低温側排出部12coと連通されている下軸部16の排出通路16oの順で流体を流すことができる(図14参照)。
【0050】
一方、下軸部16の供給通路16iから流体を供給すれば、この供給通路16iと連通されている低温側供給部12ci、この低温側供給部12ciの先端が連通されている保持溝12a内の磁性部材MB、この保持溝12aに先端が連通されている高温側排出部12ho、この高温側排出部12hoと連通されている上軸部15の排出通路15oの順で流体を流すことができる(図13参照)。
【0051】
ここで、本実施形態のヒートポンプ1では、上述したように、磁性部材MBに対して、高温の流体は高温側供給部12hiから供給されて低温側排出部12coから排出されるが(図3、図14参照)、高温側供給部12hiが磁性部材MBの両端部にそれぞれ位置しており、低温側排出部12coが磁性部材MBの中央部に位置している。このため、磁性部材MB中において、高温の流体は両端部から中央に向かって流れるので、両端部が高温、中央部が低温の温度勾配を磁性部材MB中に形成させることができる。
一方、磁性部材MBに対して、低温の流体は低温側供給部12ciから供給されて高温側排出部12hoから排出されるが(図2、図13参照)、低温側排出部12coが磁性部材MBの中央部に位置しており、高温側供給部12hiが磁性部材MBの両端部にそれぞれ位置している。このため、磁性部材MB中において、低温の流体は、上述した高温の流体とは逆に、中央から両端部に向かって流体が流れるので、この場合も、両端部が高温、中央部が低温の温度勾配を磁性部材MB中に形成させることができる。
つまり、磁性部材MBに対して高温の流体が供給されるとき(強磁場領域中に位置しているとき)と、磁性部材MBに対して低温の流体が供給されるとき(弱磁場領域中に位置しているとき)とでは、磁性部材MB中における液体の流れる方向を逆転させることができる。
よって、本実施形態のヒートポンプ1では、同一の磁性部材MB中に形成される温度勾配を大きくすることができるので、磁気熱量効果を効果的に発揮させることができる。
【0052】
また、プレート部11が上記のごとき構成であるから、同一の磁性部材MBにおいて、流体の流れる流路を2本、つまり、中央と一方の端部間の流路および中央と他方の端部間の流路を有することになる。すると、磁性部材MBに対する流体の供給を完全に停止させなくても、磁性部材MB内における流体の流れる方向を逆転させることができる。つまり、高温の流体と低温の流体とが別々の流路を流れるように構成すれば、両流体を同時に加熱冷却しても両流体が混ざり合うことがないし、同一の磁性部材MBに対して両流体を同時に供給して両流体を同時に加熱冷却できるから、熱交換効率を向上させることができる。
【0053】
さらに、プレート部11が上記のごとき構成であるから、高温側供給部12hiから低温側排出部12coまでの距離、および、低温側供給部12ciから高温側排出部12hoまでの距離がいずれも短くなる。具体的には、磁性部材MB中において、流体は、保持溝12aの長さの約半分程度の流路を流れるだけである。すると、磁性部材MB中における流体の流路が短くなるので、磁性部材MB中を流体が流れるときの抵抗を減少でき、液体を流すための動力を小さくすることができる。
【0054】
また、本実施形態のヒートポンプ1では、上述したように、高温の流体は弱磁場領域中に位置する少なくとも2つの磁性部材MBに流入し、低温の流体は弱磁場領域中に位置する少なくとも2つの磁性部材MBに流入するようになっている。すると、異なる磁性部材MBにおける流路間において、流体の流れが不均一になり、熱交換効率が変動する可能性がある。
しかし、磁性部材MB中を流体が流れるときの抵抗がすくないので、異なる磁性部材MBにおける流路間において、均一な流れを確保しやすくなるから、熱交換効率を安定させることができる。
【0055】
そして、磁性部材MBにおける流路抵抗に起因するロスが少なくなり、このロスに起因して生じる発熱も低減できるから、かかる発熱によって弱磁場領域中の磁性部材MBの温度が上昇することを防ぐことができる。
【0056】
さらに、磁性部材MBに対して流体を供給する高温側供給部12hiおよび低温側供給部12ciがいずれも本体部12の上面に形成されており、一方、磁性部材MBから流体を排出する高温側排出部12hoおよび低温側供給部12coはいずれも本体部12の下面に形成されている。よって、磁性部材MBには、常に、その上部から流体が供給されて下部から排出されることになるので、磁性部材MBに供給された流体は、磁性部材MBの上部から下部に移動しながら、高温側供給部12hiから低温側供給部12coに向かって、または、低温側供給部12ciから高温側排出部12hoに向かって流れる。すると、磁性部材MBにおいて、流体と接触しない箇所を少なくでき、流体と接触する磁性部材MBの面積を大きくできるので、両者の接触状況を良好にすることができ、両者間の熱交換効率を高くすることができる。
【0057】
なお、図13および図14では、磁性部材MBの上部側面から流体が流入するように構成されているが、磁性部材MBの上面から流体が流入するように構成してもよい。
また、図13および図14では、磁性部材MBの底面から流体が流出するように構成されているが、磁性部材MBの下部側面から流体が流出するように構成してもよい。
【0058】
つぎに、一対の磁場発生手段5A,5Bを説明する。
図6に示すように、一対の磁場発生手段5A,5Bは、互いに対向する面間に間隔を空けた状態で配設されており、図示しないステーなどによってその相対的な位置が固定されている。
各磁場発生手段5A,5Bには、一方の磁場発生手段から他方の磁場発生手段に向かう磁場が形成されるように構成された磁場発生部6,7を備えている。
なお、一対の磁場発生手段5A,5Bには、その中心を貫通するように軸部15,16が配設される貫通孔5hを備えており、この貫通孔5h内で軸部15,16が回転できるようになっている。
【0059】
磁場発生部6は、上方の磁場発生手段5Aから下方の磁場発生手段5Bに向かう磁場を発生させるように形成されたものであり、上方の磁場発生手段5Aに保持された上側磁場発生部6Aと、下方の磁場発生手段5Bに保持された下側磁場発生部6Bとを備えている。各磁場発生部6A,6Bは、いずれも磁性部材保持手段10のプレート部11の回転軸CLを中心とする円弧状に形成されている。そして、各磁場発生部6A,6Bは、その半径Ra(回転軸CLから磁場発生部6A,6Bの中心線までの距離、図29参照)が、プレート部11の本体部12に形成されている保持溝12aの半径Rb(回転軸CLから保持溝12aの中心線までの距離、図5参照)とほぼ同じ長さとなるように形成されている。
【0060】
なお、磁場発生部6A,6Bの大きさ(幅)はとくに限定されないが、磁場発生部6A,6Bの内径(回転軸CLから磁場発生部6A,6Bの内端縁までの距離)が、保持溝12aの内径(回転軸CLから保持溝12aの内端縁までの距離)の約90〜100%となるよう形成するのが好ましい。また、同様に、磁場発生部6A,6Bの外径(回転軸CLから磁場発生部6A,6Bの外端縁までの距離)が、保持溝12aの外径(回転軸CLから保持溝12aの外端縁までの距離)の約100〜110%となるよう形成するのが好ましい。
また、各磁場発生部6A,6Bを設ける範囲(回転軸CL周りの角度)は、本体部12の保持溝12aを設ける範囲、言い換えれば、磁性部材MBを設ける範囲に応じて適宜設定できる。例えば、本実施形態の本体部12のように、保持溝12aが6箇所設けられる場合であて保持溝12aの中心各θgが約50°であるような場合には、各磁場発生部6A,6Bの最小角度θ3が約60°、最大角度θ4が約90°とすることができる。大まかに言えば、磁場発生部6A,6Bが存在する角度と他の部分の角度の比が、約1:2となるようにすることができる(図29)。
【0061】
磁場発生部7は、下方の磁場発生手段5Bから上方の磁場発生手段5Aに向かう磁場を発生させるように形成されたものであり、上方の磁場発生手段5Aに保持された上側磁場発生部7Aと、下方の磁場発生手段5Bに保持された下側磁場発生部7Bとを備えている。各磁場発生部7A,7Bは、磁場発生部6B,6Aと実質同様の構成であり、いずれも磁性部材保持手段10のプレート部11の回転軸CLを中心とする円弧状に形成されており、その半径が、プレート部11の本体部12に形成されている保持溝12aの半径とほぼ同じ長さとなるように形成されている。
【0062】
上記のごとき構造であるから、プレート部11を回転させたときに、保持溝12aに保持されている磁性部材MBは、磁場発生部6,7間によって形成されている磁場(強磁場領域)に沿って、円周方向に移動することになる。このため、プレート部11を回転させても、磁場発生部6,7と磁性部材MBとの相対的な位置、つまり、プレート部11の半径方向における相対的な位置は変化しない。よって、強磁場領域中を磁性部材MBが移動するときに、磁性部材MBに印加される磁場の強度の変動を抑制することができる。
【0063】
また、一対の磁場発生手段5A,5Bは、磁場発生部6,7を構成要素とするハルバッハ回路によって磁場を形成すれる構成としてもよい。具体的には、図6に示すように、磁場発生部6Aおよび磁場発生部7Bの周囲に、この磁場発生部6A,6Bおよび磁場発生部7A,7Bの磁化方向と垂直な磁化方向(図6(B)、(C)における矢印の方向)を有する磁石が配置する。すると、磁場発生部6A,6B間および磁場発生部7A,7B間に発生する磁界を強くすることができる。
しかも、かかる構成とした場合、磁場発生部6A,6B間および磁場発生部7A,7B間の周囲の磁界も弱くできるから、磁場発生部6A,6B間の空間とその周囲の空間との境界において磁場の強さを急激に変えることができる(図30参照)。すると、磁場発生部6A,6B間に配置されたときにおける磁性部材MBの温度上昇、および、磁場発生部6A,6B間から離脱したときにおける磁性部材MBの温度下降を大きくすることができるから、各磁性部材MBと流体との間の熱交換効率を高くすることができる。
【0064】
また、図29(A)に示すように、磁場発生部6Aを挟む2つの磁石は、それそれ一塊の磁石によって形成してもよいが、この場合には、各磁石の磁化方向を一方向(図29(A)の矢印の方向)にしか設定できない。しかし、磁場発生部6Aを挟む2つの磁石を、それぞれ複数の小さい磁石(磁石ブロック)を組み合わせて形成すれば、各磁石ブロックについてそれぞれ磁化方向を設定することができる。例えば、図29(B)に示すように、複数の磁石ブロックを、磁場発生部6Aの内端、外端に沿って配設し、各磁石ブロックの磁化方向を磁場発生部6Aの中心(回転軸CL)に向かう方向とする。すると、磁場発生部6Aから磁場発生部6Bに放出される磁力線密度を大きくすることができる。
同様に、磁場発生部7Aを挟む2つの磁石を、複数の磁石ブロックで形成し、各磁石ブロックの磁化方向を磁場発生部7Aの中心(回転軸CL)に向かう方向とすると、磁場発生部7Aに入る磁力線密度を大きくすることができる。
そして、磁場発生部6B,7Bを挟む磁石についても同様の構成とすれば、磁場発生部6A,7Aから放出される磁力線密度が大きくなり、しかも、磁場発生部6B,7Aに入る磁力線密度も大きくできる。すると、磁場発生部6A,6B間、および、磁場発生部7A,7B間の磁場強度を非常に強くでき、しかも、磁場強度の強い範囲を狭くすることができる。言い換えれば、磁場発生部6,7の位置と、磁場発生部6,7か外れた位置との間における磁場強度の変化を急激なものとすることができる。
【0065】
なお、図6(A)に示すように、磁場発生部6,7間をヨークYで連結するようにすれば、ヨークYを通って、磁場発生部6,7を循環する磁場(図6(A)における矢印)が形成される。すると、磁場発生部6A,6B間および磁場発生部7A,7B間に形成される磁場強度がさらに強くなり、また、磁場発生部6A,6B間の空間とその周囲の空間との境界において磁場の強さをさらに急激に変えることができる。
また、循環する磁場は、磁場発生部6,7を循環する磁場に限られず、磁場発生部6A,6B間を循環する磁場、磁場発生部7A,7B間を循環する磁場をそれぞれ独立して形成するようにしてもよい。例えば、C型ブロックなどによって磁場発生部6A,6Bを連結して磁場発生部6A,6B間を循環する磁場を形成してもよい。
【0066】
つぎに、高温側流路切換機構20および低温側流路切換機構30を説明する。
【0067】
まず、高温側流路切換機構20を説明する。
図7は高温側流路切換機構20の回転側部材21の概略説明図であって、(A)は上面図であり、(B)は底面図であり、(C)は(A)のC−C断面矢視図であり、(D)は(A)のD−D断面矢視図である。図8は高温側流路切換機構20の固定側部材22の概略説明図であって、(A)は上面図であり、(B)は底面図である。図9は(A)は図8(A)のIXA−IXA断面矢視図であり、(B)は図8(A)のIXB−IXB断面矢視図である。
【0068】
高温側流路切換機構20は、回転側部材21と固定側部材22とから構成されている。
回転側部材21は、その下端が磁性部材保持手段10の前記上軸部15の軸端に連結されており、キーなどによって軸Sとの回転が固定されている。
図7に示すように、この回転側部材21には、その上下を貫通する複数の貫通孔が形成されており、この複数の貫通孔によって、流入通路21iおよび排出通路21oが形成されている。各流入通路21iおよび各排出通路21oは、それぞれプレート部11の回転軸CLを中心とする同一円周上に配設されている。そして、流入通路21iは、前記上軸部15に設けられている流入通路15iと対応する位置に形成されており、排出通路21oは、前記上軸部15に設けられている排出通路15oと対応する位置に形成されている。
具体的には、流入通路21iが配設されている円周の半径が、前記上軸部15の供給通路15iが配設される円周の半径と同じ長さとなるように配設されている。また、排出通路21oが配設されている円周の半径が、前記上軸部15の排出通路15oが配設される円周の半径と同じ長さとなるように配設されている。そして、磁性部材MBを保持する磁性部材保持手段10が上述したような構造の場合には、回転側部材21設ける各流入通路21iおよび各排出通路21oは、20°間隔と40°間隔とが繰り返されるように並んで配設されている。
【0069】
固定側部材22は、ステーSTに取り付けられて固定されており、回転側部材21が回転しても回転しないように設けられている。
図8および図9に示すように、固定側部材22には、その上下を貫通する4つの貫通孔が形成されており、この複数の貫通孔によって、2つの流入通路22iおよび2つの排出通路22oが形成されている。なお、2つの流入通路22iおよび2つの排出通路22oは、回転軸CLを中心とする円周方向に沿って、等角度間隔(本実施形態では90°間隔)で交互に配設されている。
各排出通路22oおよび各流入通路22iは、その上端がそれぞれパイプHOP,HIPが接続される排出口22OP、流入口22IPとなっている。一方、各排出通路22oおよび各流入通路22iの下端は、いずれもプレート部11の回転軸CLを中心とする円周に沿って円弧状に形成された長孔である排出溝22OG、流入溝22IGになっている。この排出溝22OG、流入溝22IGは、いずれも同じ中心角を有する円弧状に形成されている。例えば、磁性部材MBを保持する磁性部材保持手段10が上述したような構造の場合には、排出溝22OG、流入溝22IGは、いずれも中心角が50°となるように形成することができる。
そして、流入溝22IGは、その半径(回転軸CLからの距離)が回転側部材21の流入通路21iから回転軸CLまでの距離と同じとなるように形成されている。また、排出溝22OGは、その半径(回転軸CLからの距離)が回転側部材21の排出通路21oから回転軸CLまでの距離と同じとなるように形成されている。
【0070】
以上のごとき構成であるので、回転側部材21が上軸部15とともに回転すると、回転側部材21の複数の流入通路21i、複数の排出通路21oのうち、固定側部材22の流入通路22i、排出通路22oと連通される流入通路21iおよび排出通路21oが変化する。つまり、回転側部材21の複数の流入通路21i、複数の排出通路21oのうち、その上端が流入溝22IG、排出溝22OGと重なりあう位置に配置されたものが固定側部材22の流入通路22i、排出通路22o流入通路22iと連通され、高温側熱交換部と連通されるのである。
しかも、回転側部材21が軸部15とともに回転すれば、自動的に高温側熱交換部と連通される回転側部材21の複数の流入通路21i、複数の排出通路21oが切り替わる。言い換えれば、固定側部材22に形成する流入溝22IG、排出溝22OGの形状と、回転側部材21の複数の流入通路21i、複数の排出通路21oとの相対的な位置を調整しておけば、自動的に高温側熱交換部と連通される磁性部材MBが切り替わるので、流体を供給する流路を切り換えるタイミングの制御を行わなくてもよく、装置の制御が容易になる。そして、特別な制御機器が不要となるので、装置を小型化することもできる。
【0071】
つぎに、低温側流路切換機構30を説明する。
図10は低温側流路切換機構30の回転側部材31の概略説明図であって、(A)は上面図であり、(B)は底面図であり、(C)は(A)のC−C断面矢視図であり、(D)は(A)のD−D断面矢視図である。図11は低温側流路切換機構30の固定側部材32の概略説明図であって、(A)は上面図であり、(B)は底面図である。図12(A)は図11(A)のXIIA−XIIA断面矢視図であり、(B)は図11(A)のXIIB−XIIB断面矢視図である。
【0072】
回転側部材31は、その上端が磁性部材保持手段10の前記下軸部16の軸端に連結されており、キーなどによって軸Sとの回転が固定されている。
図10に示すように、この回転側部材31には、その上下を貫通する複数の貫通孔が形成されており、この複数の貫通孔によって、流入通路31iおよび排出通路31oが形成されている。流入通路31iおよび排出通路31oは、それぞれプレート部11の回転軸CLを中心とする同一円周上に配設されている。そして、流入通路31iは、前記下軸部16に設けられている流入通路16iと対応する位置に形成されており、排出通路31oは、前記下軸部16に設けられている排出通路16oと対応する位置に形成されている。
具体的には、流入通路31iが配設されている円周の半径が、前記下軸部16に設ける供給通路16iが配設される円周の半径と同じ長さとなるように配設されている。また、排出通路31oが配設されている円周の半径が、前記下軸部16に設ける排出通路15oが配設される円周の半径と同じ長さとなるように配設されている。そして、磁性部材MBを保持する磁性部材保持手段10が上述したような構造の場合には、回転側部材31に設ける各流入通路31iおよび各排出通路31oは、60°間隔となるように配設されている。
【0073】
固定側部材32は、ステーSTに取り付けられて固定されており、回転側部材31が回転しても回転しないように設けられている。
図11および図12に示すように、固定側部材32には、その上下を貫通する4つの貫通孔が形成されており、この複数の貫通孔によって、2つの流入通路32iおよび2つの排出通路32o形成されている。なお、2つの流入通路32iおよび2つの排出通路32oは、回転軸CLを中心とする円周方向に沿って、等角度間隔(本実施形態では90°間隔)で交互に配設されている。
各排出通路32oおよび各流入通路32iは、その下端がそれぞれパイプCOP,CIPが接続される排出口32OP、流入口32IPとなっている。一方、各排出通路32oおよび各流入通路32iの上端は、いずれもプレート部11の回転軸CLを中心とする円周に沿って円弧状に形成された長孔である排出溝32OG、流入溝32IGになっている。この排出溝32OG、流入溝32IGは、いずれも同じ中心角を有する円弧状に形成されている。例えば、磁性部材MBを保持する磁性部材保持手段10が上述したような構造の場合には、排出溝32OG、流入溝32IGは、いずれも中心角が90°となるように形成することができる。
そして、流入溝32IGは、その半径(回転軸CLからの距離)が回転側部材31の流入通路31iから回転軸CLまでの距離と同じとなるように形成されている。また、排出溝32OGは、その半径(回転軸CLからの距離)が回転側部材31の排出通路31oから回転軸CLまでの距離と同じとなるように形成されている。
【0074】
以上のごとき構成であるので、回転側部材31が下軸部16とともに回転すると、回転側部材31の複数の流入通路31i、複数の排出通路31oのうち、固定側部材32の流入通路32i、排出通路32oと連通される流入通路31iおよび排出通路31oが変化する。つまり、回転側部材31の複数の流入通路31i、複数の排出通路31oのうち、その上端が流入溝32IG、排出溝32OGと重なりあう位置に配置されたものが固定側部材32の流入通路32i、排出通路32o流入通路32iと連通され、低温側熱交換部と連通されるのである。
しかも、回転側部材31が下軸部16とともに回転すれば、自動的に低温側熱交換部と連通される回転側部材31の複数の流入通路31i、複数の排出通路31oが切り替わる。言い換えれば、固定側部材32に形成する流入溝32IG、排出溝32OGの形状と、回転側部材21の複数の流入通路31i、複数の排出通路31oとの相対的な位置を調整しておけば、自動的に低温側熱交換部と連通される磁性部材MBが切り替わるので、流体を供給する流路を切り換えるタイミングの制御を行わなくてもよく、装置の制御が容易になる。そして、特別な制御機器が不要となるので、装置を小型化することもできる。
【0075】
なお、高温側流路切換機構20および低温側流路切換機構30は、両者が、以下の関係となるように相対的な位置が調整されている。
高温側流路切換機構20の固定側部材22の流入溝22IGは、上軸部15の流入通路15iを介して、常に少なくとも2つの弱磁場領域に位置する磁性部材MB(低温磁性部材MB)と連通されているので、低温側流路切換機構30は、固定側部材32の排出溝32OGが、この低温磁性部材MBに連通されている下軸部16の排出通路16oと連通するように調整されている。
しかも、上記状態のときに、低温側流路切換機構30の固定側部材32の流入溝32IGは、下軸部16の流入通路16iを介して、常に少なくとも強磁場領域に位置する磁性部材MB(高温磁性部材MB)と連通されように調整されており、かつ、高温側流路切換機構20の固定側部材22の排出溝22OGは、高温磁性部材MBと連通されている上軸部15の排出通路15oと連通されるように調整されている。
つまり、高温側流路切換機構20および低温側流路切換機構30は、高温側熱交換部から低温側熱交換部まで連続した流路であって、高温磁性部材MBと低温磁性部材MBとを通過する流路が形成されるように相対的な位置が調整されているのである。
【0076】
上述した高温側熱交換部から低温側熱交換部まで連続する流路の例を、図13、図14を用いて説明する。
なお、図13では、低温側熱交換部から高温側熱交換部への流体の流れのみを示しており、図14では、高温側熱交換部から低温側熱交換部への流体の流れのみを示している。
【0077】
図13(C)に示すように、低温側熱交換部から供給される流体は、固定側部材32に形成する流入溝32IGと重なっている回転側部材31の流入通路31i(黒く塗りつぶしている部分)に流入する。すると、この流体は、下軸部16の流入通路16iを通ってプレート部11の低温側供給部12ciに流入する(図13(B))。
低温側供給部12ciに流入した流体は、磁性部材MBに流入し、この磁性部材MB(前記低温磁性部材MB)内を、この磁性部材MBに連通されている高温側排出部12hoに向かって流れる(図13(A))。
ついで、高温側排出部12hoに流入した流体は、上軸部15の排出通路15oに流入する。このとき、この排出通路15oと連通されている回転側部材21の排出通路21o(黒く塗りつぶしている部分)は、固定側部材22の排出溝22OGと重なるように調整されているので、流体は高温側熱交換部に供給される。
【0078】
一方、図14(A)に示すように、高温側熱交換部から供給される流体は、固定側部材22に形成する流入溝22IGと重なっている回転側部材21の流入通路21i(黒く塗りつぶしている部分)に流入する。すると、この流体は、上軸部15の流入通路15iを通ってプレート部11の高温側供給部12hiに流入する(図14(B))。
高温側供給部12hiに流入した流体は、磁性部材MB(前記高温磁性部材MB)に流入し、この磁性部材MB内を、この磁性部材MBに連通されている低温側排出部12coに向かって流れる(図14(C))。
ついで、低温側排出部12coに流入した流体は、下軸部16の排出通路16oに流入する。このとき、この排出通路16oと連通されている回転側部材31の排出通路31o(黒く塗りつぶしている部分)は、固定側部材32の排出溝32OGと重なるように調整されているので、流体は高温側熱交換部に供給される。
【0079】
つぎに、プレート部11の回転に伴う流路の変化を、図15〜図25および図30に基づいて説明する。
図15〜図19、図21〜図25では、プレート部11が時計回りに回転した状態を10度毎に示したものであるが、図20と図21では、図19および図20の状態からそれぞれ5度回転した状態を示している。また、図15〜図25における左右方向が、磁場発生手段5A,5Bの中心軸MCL(図29(A)参照)と一致しており、図15では、磁性部材MB1の中心が中心軸MCL上に位置している状態である。
【0080】
図30において、横軸は、図15〜図25における左右方向(つまり、磁場発生手段5A,5Bの中心軸MCL)をX軸、上下方向をY軸とした場合において、X軸から時計回りに回転した角度を示しており、縦軸は、強磁場領域における磁場強度の最大値を100%とした場合における相対的な磁場強度を示している。
また、図30において、網掛けをしている期間は磁性部材MBに高温の流体が流れている期間を示しており、網掛けをしてない期間は磁性部材MBに低温の流体が流れている期間を示している。上記期間は、磁性部材MB1の中心が磁場発生手段5A,5Bの中心軸MCL上に位置している状態から回転させたときにおけるその回転角度に対応させている。具体的には、図30において、-45°〜45°期間は網掛けされているが、これは、磁性部材MB1の中心が磁場発生手段5A,5Bの中心軸MCL上に位置している状態から、プレート部11が−45°〜45°回転する間は、磁性部材MBに高温の流体が流れていることを示している。
【0081】
なお、以下では、磁性部材保持手段10のプレート部11が、保持溝12a(中心各θgが約50°)を6箇所有し、2本の高温側供給部12hiを両者の挟む角θ1が約40°、低温側供給部12ciと高温側供給部12hiの挟む角θ2が約20°となるように形成されており、各磁場発生部6,7の最小角度θ3が約60°、最大角度θ4が約90°である場合を例示している。
また、プレート部11とともに回転する部材に形成されている各流路は、全て回転対称に形成されているので、以下では、磁性部材MB1のみに着目して、流路の変化および流体の流れを説明する。
【0082】
図15では、磁性部材MB1は、磁場発生部7が形成する磁場(以下、単に磁場という)の中心に配置されている。つまり、磁性部材MB1の中心が0°と一致しているので、磁性部材MB1全体が強磁場領域に位置している状態である。
このため、磁性部材MB1には、低温側熱交換部から低温側供給部12ciに流体が供給され、磁性部材MB1内には、低温側供給部12ciから一対の高温側排出部12hoに流体が流れる2つの流路が形成される。つまり、この状態では、磁性部材MB1内全体で流体を加熱しているのである。
【0083】
図16に示すように、図15の状態から10度回転すると、磁性部材MB1は全体が磁場内に配置されているものの、その端部が磁場形成部7の端縁近傍に位置するようになる。
図30に示すように、X軸方向(左右方向)から30°以上の領域では、強磁場領域における磁場強度の最大値に対して、20%〜80%程度の磁場強度の領域(以下、遷移磁場領域という)となるが、図16の状態では、磁性部材MB1の端部の約5°程度がこの遷移磁場領域に配置される。
このため、磁性部材MB1には、引き続き低温側熱交換部から低温側供給部12ciに流体が供給されているものの、磁場の中心側に位置する一方の高温側排出部12hoにのみ流体が流れる流路が形成される。つまり、磁性部材MB1において、磁場が弱くなっている遷移磁場領域に位置する部分には、低温側熱交換部からの流体が流れないようになる。
【0084】
図17に示すように、図16の状態から10度回転すると、磁性部材MB1は、磁場の中心側と反対側に位置するその端部は弱磁場領域に位置するようになり、この端部と磁性部材MB1の中心の間の大部分が遷移磁場領域に位置する。
しかし、磁性部材MB1の中心と磁場の中心側に位置する端部との間の部分は、全体が強磁場領域に位置する。
このため、磁性部材MB1には、図16と同様に、低温側供給部12ciから磁場の中心側に位置する一方の高温側排出部12hoにのみ流体が流れる流路が形成される。
【0085】
図18に示すように、図17の状態からさらに10度回転すると、磁性部材MB1の中心が、強磁場領域と遷移磁場領域のほぼ境界に位置する。
しかし、磁性部材MB1の中央部から磁場の中心側に位置する端部間における流路となる部分は、ほぼ全体が強磁場領域に位置する。つまり、低温側供給部12ciから磁場の中心側に位置する一方の高温側排出部12hoの間に位置する部分は強磁場領域に位置した状態に保たれる。
このため、磁性部材MB1では、図16、図17と同様に、低温側供給部12ciから磁場の中心側に位置する一方の高温側排出部12hoにのみ流体が流れる流路が形成される。
【0086】
図19に示すように、図18の状態から10度回転すると、磁性部材MB1の中心も遷移磁場領域に配置される。しかし、磁性部材MB1の中央部から磁場の中心側に位置する端部間における流路となる部分は、大部分が強磁場領域に位置する。
このため、磁性部材MB1では、図18と同様に、低温側供給部12ciから磁場の中心側に位置する一方の高温側排出部12hoにのみ流体が流れる流路が維持される。
【0087】
図20に示すように、図19の状態から5度回転すると、磁性部材MB1の中央部が弱磁場領域に位置するようになる。そして、磁性部材MB1において、その中央部と磁場の中心側に位置する端部間の部分は、一部が遷移磁場領域に配置され、一部が強磁場領域に配置される。この場合、上記部分での熱交換効率は低下する。
すると、磁性部材MB1の低温側供給部12ciと連通する下軸部16の流入通路16iと、低温側流路切換機構30の固定側部材32の流入溝32IGとの重なりが少なくなる。同様に、高温側排出部12hoと連通する上軸部15の排出通路15oと高温側流路切換機構20の固定側部材22の排出溝22OGとの重なりも少なくなる。そして、低温側熱交換部から供給される流体は、低温側供給部12ciから磁場の中心側に位置する一方の高温側排出部12hoへの流体の流れは維持されるものの、その流量が少なくなる。
一方、磁性部材MB1は、これまで高温側熱交換部とは連通されていなかったが、図20の状態になると、磁場の中心から遠い位置の高温側供給部12hiと連通する上軸部15の流入通路15iと、高温側流路切換機構20の固定側部材22の流入溝22IGとが重なりあうようになる。そして、低温側排出部12coと連通する下軸部15の排出通路16oと低温側流路切換機構30の固定側部材32の排出溝32OGとが重なりあうようになる。すると、磁場の中心から遠い位置の高温側供給部12hiから低温側排出部12coに流体が流れる流路が形成される。
つまり、磁性部材MB1において、遷移磁場領域および強磁場領域中に位置する部分には、低温側熱交換部から供給される流体が流れる流路が形成され、弱磁場領域中に位置する部分には、高温側熱交換部から供給される流体が流れる流路が形成される。ただし、図20の状態では、高温側供給部12hiと低温側排出部12coとの間の圧力差、および、低温側供給部12ciと高温側排出部12hoとの間の圧力差は、いずれも小さいので、遷移磁場領域および強磁場領域中に位置する部分に流れる流体の流量、および、弱磁場領域中に位置する部分に流れる流体の流量はいずれも少ない。
【0088】
図21に示すように、図20の状態からさらに5度回転すると、磁性部材MB1は、全体が遷移磁場領域または弱磁場領域中に位置するようになる。
すると、磁場の中心から遠い位置の高温側供給部12hiと連通する上軸部15の流入通路15iと、高温側流路切換機構20の固定側部材22の流入溝22IGとが完全に重なるようになる。同様に、低温側排出部12coと連通する下軸部15の排出通路16oと低温側流路切換機構30の固定側部材32の排出溝32OGも完全に重なるようになる。すると、磁場の中心から遠い位置の高温側供給部12hiから低温側排出部12coに流体が流れる流路が維持され、その流量が多くなる。
一方、磁性部材MB1の低温側供給部12ciと連通する下軸部16の流入通路16iと、低温側流路切換機構30の固定側部材32の流入溝32IGとの重なりがなくなる。同様に、高温側排出部12hoと連通する上軸部15の排出通路15oと高温側流路切換機構20の固定側部材22の排出溝22OGとの重なりもなくなる。すると、磁性部材MB1には、低温側熱交換部から流体が供給されなくなり、低温側供給部12ciから高温側排出部12hoへの流体の流れは無くなり、遷移磁場領域中に位置する領域には流体が流れない状態となる。
つまり、図19の状態から図21の状態に移るときに、磁性部材MB1に供給される流体は、低温側熱交換部から供給される流体から、高温側熱交換部から供給される流体へと切り換わるのである。
【0089】
図22に示すように、図21の状態から10度回転すると、磁性部材MB1は、その端部がわずかに遷移磁場領域内に位置するが、弱磁場領域に位置する状態となる。この状態でも、磁性部材MB1では、弱磁場領域中に位置しない高温側供給部12hiに対してのみ高温側熱交換部から流体が供給され、一方の高温側供給部12hiから低温側排出部12coに流体が流れる流路が形成される。つまり、磁性部材MB1では、弱磁場領域内に位置する部分では高温側熱交換部からの流体が流れるが、遷移磁場領域内に位置する部分には流体が流れない状態となる。
【0090】
図23に示すように、図22の状態から10度回転すると、磁性部材MB1は、全体が弱磁場領域内に位置するようになっているが、この状態でも、図22で流体が供給されていた高温側供給部12hiに対してのみ高温側熱交換部から流体が供給される。つまり、磁性部材MB2内には、一方の高温側供給部12hiから低温側排出部12coに流体が流れる流路のみが形成された状態が維持される。
【0091】
図24に示すように、図23の状態から10度回転しても、図24と同様に、磁性部材MB1には、一方の高温側供給部12hiから低温側排出部12coに流体が流れる流路のみが形成された状態が維持される。
【0092】
図25は、図24の状態から10度回転した状態で、言い換えれば、図15の状態から90度回転した状態である。この状態となると、一対の高温側供給部12hiの両方に高温側熱交換部から流体が供給される状態となり、一対の高温側供給部12hiから低温側排出部12coに流体が流れる流路が形成される。つまり、磁性部材MB1全体に高温側熱交換部から供給される流体が流れる流路が形成されるのである。
【0093】
そして、図25の状態から回転を進めた場合には、図25の状態から図15の状態に向かって逆回転させた場合と実質同様の流路の変化が生じる。
【0094】
ここで、図15の状態から図25の状態までプレート部11を回転させたときに、磁性部材MB1中において、低温側熱交換部から供給される流体の流路が形成されている時間と、高温側熱交換部から供給される流体の流路が形成されている時間は等しい(図30参照)。言い換えれば、図15の状態から図20の状態に変化するためにプレート部11が回転する角度(45度)は、図20の状態から図25の状態に変化するためにプレート部11が回転する角度(45度)と同じである。しかも、これらの期間中において、磁性部材MB1全体に流路が形成されるのは、それぞれ図15、図25の状態近傍の角度だけであり、あとの期間は、いずれも場合も磁性部材MB1の半分の領域でのみ流体が流れる流路が形成されている。
したがって、プレート部11を回転させたときに、同じ磁性部材MB中において、高温側熱交換部から供給される流体が流れる時間およびそのときの流量と、低温側熱交換部から供給される流体が流れる時間およびそのときの流量とは、ほぼ同じになる。すると、高温流体が磁性部材MBに供給する熱量と、低温流体に磁性部材MBが供給する熱量とはほぼ同じになるから、熱交換を効率的に行うことができる。
【0095】
しかも、図16〜図20に示すように、高温側熱交換部から流体が供給されている同一磁性部材MB中では、強磁場領域に位置する部分を通過する流体の流量が、遷移磁場領域または弱磁場領域に位置する部分を通過する前記流体の流量よりも多くなるように、各流路切換機構20,30が切り換わっている。
また、図21や図22に示すように、低温側熱交換部から流体が供給されている同一磁性部材MB中では、遷移磁場領域に位置する部分を通過する流体の流量が、弱磁場領域に位置する部分を通過する流体の流量よりも少なくなるように、各流路切換機構20,30が切り換わっている。
つまり、本実施形態のヒートポンプ1では、各流路切換機構20,30は、高温側熱交換部から流体が供給されている磁性部材MB中では冷却効果の高い領域に多くの流体を供給し、低温側熱交換部から流体が供給されている磁性部材MB中では加熱効果の高い領域に多くの流体を供給しているので、磁気熱量効果を有効に活用することができるのである。
【0096】
そして、図20に示すように、本実施形態のヒートポンプ1では、磁性部材MBに供給される流体が流体が切り換わるときでも、同じ磁性部材MB中に、高温側熱交換部から供給される流体と、低温側熱交換部から供給される流体とを同時に流している。
このため、磁性部材MB中に供給される流体が切り換わる場合でも、磁性部材MBが全く熱交換に寄与しない状況が発生することを防ぐことができる。
しかも、一つの磁性部材MBに連通された2本の高温側供給部12hiの間に低温側排出部12coが位置し、2本の高温側排出部12hoの間に低温側供給部12ciが配設されている。そして、高温側供給部12hiから低温側排出部12coに向かって流体が流れる流路と、低温側供給部12ciから高温側排出部12hoに向かって流体が流れる流路が同じ位置とならないように、各流路切換機構20,30が切り換わる。つまり、同じ磁性部材MB中に高温流体と低温流体とを流しても両流体の干渉が生じないから、熱交換効率が低下することも防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のヒートポンプは、ノンフロン型冷凍空調装置のうち、CO2を冷媒とする装置(7kw程度以下)に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施形態のヒートポンプ1の概略側面図である。
【図2】本実施形態のヒートポンプ1における一対の磁場発生手段5A,5B間から磁性部材MBが離脱している状態の概略説明図であって、右半分に高温側熱交換部に連通されている排出用高温側流体通路が存在する断面、左半分に低温側熱交換部に連通されている供給用低温側流体通路が存在する断面を表した図である。
【図3】本実施形態のヒートポンプ1における一対の磁場発生手段5A,5B間に磁性部材MBが配置されている状態の概略説明図であって、右半分に高温側熱交換部に連通されている供給用高温側流体通路が存在する断面、左半分に低温側熱交換部に連通されている排出用低温側流体通路が存在する断面を表した図である。
【図4】磁性部材保持手段10のプレート部11の概略説明図であって、(A)は図5(A)のA-O-B断面であり、(B)は図5(A)のC-C断面である。
【図5】プレート部11の本体部12の概略説明図であって、(A)は上面図であり、(B)は底面図である。
【図6】(A)は一対の磁場発生手段5A,5Bの概略側面図であり、(B)は図1のVIB−VIB断面矢視図であり、(C)は図1のVIC−VIC断面矢視図である。
【図7】高温側流路切換機構20の回転側部材21の概略説明図であって、(A)は上面図であり、(B)は底面図であり、(C)は(A)のC−C断面矢視図であり、(D)は(A)のD−D断面矢視図である。
【図8】高温側流路切換機構20の固定側部材22の概略説明図であって、(A)は上面図であり、(B)は底面図である。
【図9】(A)は図8(A)のIXA−IXA断面矢視図であり、(B)は図8(A)のIXB−IXB断面矢視図である。
【図10】低温側流路切換機構30の回転側部材31の概略説明図であって、(A)は上面図であり、(B)は底面図であり、(C)は(A)のC−C断面矢視図であり、(D)は(A)のD−D断面矢視図である。
【図11】低温側流路切換機構30の固定側部材32の概略説明図であって、(A)は上面図であり、(B)は底面図である。
【図12】(A)は図11(A)のXIIA−XIIA断面矢視図であり、(B)は図11(A)のXIIB−XIIB断面矢視図である。
【図13】低温側熱交換部から高温側熱交換部への流体の流れを説明した図であり、(A)はプレート部11の上面側の流れの概略説明図であり、(B)は右半分に(A)のBR断面、左半分に(A)のBL断面を表した図であり、(C)はプレート部11の下面側の流れの概略説明図である。
【図14】高温側熱交換部から低温側熱交換部への流体の流れを説明した図であり、(A)はプレート部11の上面側の流れの概略説明図であり、(B)は右半分に(A)のBR断面、左半分に(A)のBL断面を表した図であり、(C)はプレート部11の下面側の流れの概略説明図である。る。
【図15】プレート部11の磁性部材MB内における流体の流路を示した図である。
【図16】図15の状態からプレート部11が10度回転した状態における流路を示した図である。
【図17】図15の状態からプレート部11が20度回転した状態における流路を示した図である。
【図18】図15の状態からプレート部11が30度回転した状態における流路を示した図である。
【図19】図15の状態からプレート部11が40度回転した状態における流路を示した図である。
【図20】図15の状態からプレート部11が45度回転した状態における流路を示した図である。
【図21】図15の状態からプレート部11が50度回転した状態における流路を示した図である。
【図22】図15の状態からプレート部11が60度回転した状態における流路を示した図である。
【図23】図15の状態からプレート部11が70度回転した状態における流路を示した図である。
【図24】図15の状態からプレート部11が80度回転した状態における流路を示した図である。
【図25】図15の状態からプレート部11が90度回転した状態における流路を示した図である。
【図26】従来の磁気熱量効果を利用した冷凍装置の概略説明図である。
【図27】従来の磁気熱量効果を利用した冷凍装置の概略説明図である。
【図28】従来の磁気熱量効果を利用した冷凍装置の概略説明図である。
【図29】(A)は磁場発生手段5Aの概略説明図であり、(B)は他の実施形態の磁場発生手段5Aの概略説明図である。
【図30】磁場発生部6,7の最小角度θ3が約60°、最大角度θ4が約90°の場合における、回転軸CLを中心とする半径Raの円周に沿った磁場強度の分布と、プレート部11の回転に伴って同一磁性部材MBに流れる流体の変化を示した図である。
【符号の説明】
【0099】
1 ヒートポンプ
5 磁場発生手段
6 磁場発生部
7 磁場発生部
10 磁性部材保持手段
20 高温側流路切換機構
30 低温側流路切換機構
MB 磁性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料の磁気熱量効果を利用して流体を加熱冷却し、該流体を介して高温側熱交換部および低温側熱交換部に熱を移送する装置であって、
間隔を空けて配設された一対の磁場発生手段と、
前記一対の磁場発生手段間の空間に配設され、該一対の磁場発生手段間の空間において回転可能に設けられた、前記磁性材料からなる磁性部材を保持する前記磁性部材保持手段と、
該磁性部材保持手段に保持された前記磁性部材に対して、前記流体を供給排出する流体給排手段とを備えており、
前記磁性部材保持手段は、
複数の前記磁性部材を、前記磁性部材保持手段の回転に伴って前記一対の磁場発生手段間の空間に進入離脱する位置であって、該磁性部材保持手段の回転軸を中心とする円周方向に沿って並ぶように保持しており、
前記流体給排手段は、
前記高温側熱交換部と前記複数の磁性部材との間に設けられ、該複数の磁性部材にそれぞれ連通された複数の高温側流体通路と、前記低温側熱交換部と前記複数の磁性部材との間に設けられ、該複数の磁性部材にそれぞれ連通された複数の低温側流体通路とを有する流体通路と、
前記高温側熱交換部と前記高温側流体通路との間の連通遮断を切り換える高温側流路切換機構と、前記低温側熱交換部と前記低温側流体通路との間の連通遮断を切り換える低温側流路切換機構とを有する流路切換機構と、を備えており、
前記流路切換機構は、
同一磁性部材において、前記高温側熱交換部から前記流体が供給されている時間と、前記低温側熱交換部から前記流体が供給されている時間とが等しくなるように、各熱交換部と各磁性部材とを連通する前記流体通路を切り換えるものである
ことを特徴とする磁気熱量効果応用ヒートポンプ。
【請求項2】
前記流路切換機構は、
前記高温側熱交換部から前記流体が供給されている同一磁性部材中では、磁場強度が強い領域を通過する前記流体の流量が、磁場強度が弱い領域を通過する前記流体の流量よりも少なく、
前記低温側熱交換部から前記流体が供給されている同一磁性部材中では、磁場強度が強い領域を通過する前記流体の流量が、磁場強度が弱い領域を通過する前記流体の流量よりも多くなるように、各熱交換部と連通する前記流体通路を切り替えるものである
ことを特徴とする請求項1記載の磁気熱量効果応用ヒートポンプ。
【請求項3】
各高温側流体通路は、
前記高温側熱交換器から前記磁性部材に対して前記流体を供給する一対の高温側供給部および、該磁性部材から前記高温側熱交換器に対して前記流体を排出する一対の高温側排出部を有しており、
各低温側流体通路は、
前記一対の高温側供給部間に配設された、前記磁性部材から前記低温側熱交換器に対して前記流体を排出する低温側排出部と、
前記一対の高温側排出部間に配設された、前記低温側熱交換器から前記磁性部材に対して前記流体を供給する低温側供給部とを備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の磁気熱量効果応用ヒートポンプ。
【請求項4】
前記複数の高温側流体通路は、
各磁性部材の上部に前記流体を供給し、各磁性部材の下部から前記流体を排出するように設けられており、
前記複数の低側流体通路は、
各磁性部材の上部に前記流体を供給し、各磁性部材の下部から前記流体を排出するように設けられている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の磁気熱量効果応用ヒートポンプ。
【請求項5】
前記複数の磁性部材は、
該磁性部材保持手段の回転軸を中心とする円弧状に形成されており、
前記一対の磁場発生手段は、
両者の間に、一の磁場発生手段から他の磁場発生手段に向かう磁場が形成されており、
該磁場を形成する磁場形成部は、
前記磁性部材保持手段の回転軸を中心とする円弧状に形成されており、
その半径は、前記磁性部材の半径と等距離となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の磁気熱量効果応用ヒートポンプ。
【請求項6】
前記一対の磁場発生手段は、
前記磁場形成部を2箇所備えており、
一方の磁場形成部は、一方の磁場発生手段から他方の磁場発生手段に向かう磁化方向を有しており、
他方の磁場形成部は、他方の磁場発生手段から一方の磁場発生手段に向かう磁化方向を有しており、
該2つの磁場形成部は、両者を循環する磁場が形成されるように配設されている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の磁気熱量効果応用ヒートポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2010−43775(P2010−43775A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207300(P2008−207300)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)