説明

磁気特性に優れた表面処理金属材およびその製造方法

【課題】本発明は、特別な高温を必要とせず、かつ成膜速度の速い経済的な製造方法により、磁気特性に優れた表面処理金属材を提供する。
【解決手段】金属材料の少なくとも一部の表面に、けい素金属含有鉄系めっき層を有する表面処理金属材であって、前記めっき層中のけい素含有量が3.5%超10%以下であることを特徴とする磁気特性に優れた表面処理金属材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高けい素鉄系合金めっきを表面に有する磁気特性に優れた金属材とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼中のけい素は鋼板の強度を増す等の優れた特性を持つため、鉄鋼材料の添加元素として有益に用いられている。その中でも、特に、高けい素含有鋼板は電磁特性に優れるため、モーターやトランス等の電磁材料として幅広く用いられている。けい素の添加は、鋼の電気抵抗を高め、全鉄損を低下させる効果がある。したがって、高けい素含有鋼のけい素量が増えるほど鉄損が低減され、けい素量が6.5%で磁歪がゼロとなり、最大透磁率がピークとなり、理想的な電磁特性を示すことが従来から知られている。
【0003】
現在、主に高けい素含有鋼板は圧延法によって製造されるが、加工性が悪いため、けい素量で3.5%程度までのものしか製造されていない。これは圧延時の加工で割れが入り、生産が難しいためである。これを克服するために、Siの成分比率を上げることなく特性を高めるために、圧延方法を種々工夫する等の方法が提案されている(特許文献1)。一方で、圧延法に代わる種々の方法が提案されている。例えば、四塩化けい素ガス中で化学気相蒸着し、加熱拡散させることで高けい素含有鋼板を作る方法が提案されている(特許文献2、3)。この方法では圧延時に割れが入る心配はない。また、蒸着法ではなく、溶融めっき法もしくは溶融塩電解法で、AlもしくはAl-Mnめっきを施し、電磁特性の優れた鋼板を製造する方法も提案されている(特許文献3、4)。この方法は、加工時の割れがなく、また、皮膜の成長速度も速く、経済的にも優れた方法と言える。
【0004】
【特許文献1】特開2005-256019号公報
【特許文献2】特開昭62-227032号公報
【特許文献3】特開昭62-227033号公報
【特許文献4】特開平7-258863号公報
【特許文献5】特許第2827890号公報
【非特許文献1】電気鍍金研究会編、めっき教本、137頁、日刊工業新聞社 (昭和61年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献1の方法は、本質的な解決方法ではなく、しかも経済的とは言えない。また、特許文献2、3の方法は、一般に、皮膜の成長速度が遅く、工業的に不可能ではないにせよ、経済的な方法とは考えられていない。特許文献3、4の溶融めっき法もしくは溶融塩電解法でAlもしくはAl-Mnめっきを施す方法は、けい素鋼板の特性と比べると、代替法としての限界が見られ、6.5%Si鋼と比べて劣ると言わざるを得ない。この方法を単純にけい素に適用することも考えられるが、溶融めっき法でけい素をめっきしようとすると、Alと比べて高いめっき浴温にしなくてはならず、また、けい素の酸化が激しく、実用的な方法とは言えない。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みて、特別な高温を必要とせず、かつ成膜速度の速い経済的な製造方法により、磁気特性に優れた表面処理金属材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、代替元素によらずSi濃度の高い金属材料の製造技術に拘り、種々の検討を行った。けい素は、前述のように融点が高く、酸化性も高く、また通常の水溶液からの電気めっきも不可能な元素である。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の(1)〜(7)を要旨とする発明に至った。これは、けい素を主成分とする金属微粒子を分散させた鉄系めっきを金属材料上に形成することで、優れた磁気特性を示す金属材料になることを見出したことによるものである。
【0009】
即ち、
(1) 金属材料の少なくとも一部の表面に、Si含有鉄系めっき層を有する表面処理金属材であって、前記めっき層中のSi含有量が3.5質量%超10質量%以下であることを特徴とする磁気特性に優れた表面処理金属材。
(2) 前記めっき層が、質量%で、Al:2.0%超8.0%以下、Mn:0.5%超1.5%以下の少なくとも1種類を含むことを特徴とする(1)記載の磁気特性に優れた表面処理金属材。
(3) 前記めっき層の厚さが、1μm以上100μm以下である(1)又は(2)記載の磁気特性に優れた表面処理金属材。
(4) 前記めっき層が、めっき後、加熱拡散処理された皮膜である(1)〜(3)のいずれかに記載の磁気特性に優れた表面処理金属材。
(5) 前記金属材料の組成が、質量%で、C:0.001%以上0.010%以下、Si:0.01%以上3.5%以下、Mn:1.5%以下、Al:0.001%以上3.0%以下であり、残部がFe及び不可避的不純物である(1)〜(4)のいずれかに記載の磁気特性に優れた表面処理金属材。
(6) Fe2+、Ni2+、Co2+イオンのうち少なくとも1種類を含む水溶液中にSiを主成分とする微粒子を懸濁させためっき浴を用いて、金属材料の少なくとも一部の表面に、Si微粒子が分散した鉄系めっき層を電気めっきで形成することを特徴とする磁気特性に優れた表面処理金属材の製造方法。
(7) 前記電気めっき後、さらに1000℃以上1200℃以下の温度で加熱拡散処理する(6)記載の表面処理金属材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁気特性に優れた金属材料を圧延法や蒸着法によらずに、効率よく提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0012】
本発明で述べる鉄系めっき層とは、鉄、ニッケル、コバルトのうち、いずれか1種もしくは2種以上を質量%で50%以上含有するめっきのことであり、以後、鉄系めっきと称する。電磁鋼板として利用する場合には、鉄、ニッケル、コバルトは電磁特性の優れた元素である。また、それらの合金とすることも構わないが、磁気特性を効果的に生じるためにはこれら3種類の元素を合計で50質量%以上含有することが必要である。
【0013】
次に、本発明に用いられるけい素を主成分とする微粒子について説明する。この微粒子は、不可避的に表面に存在する酸化物等はあるものの、それ以外は酸素、窒素等との化合物を形成していない元素からなる微粒子のことである。その元素が、本発明ではけい素を主成分とするものである。本発明において、この微粒子がけい素を主成分とすることは必須であるが、磁気特性に有効な元素、例えばFe、Al、Mn等を含むことはさらに有効である。
【0014】
Alは磁気特性に有効な元素であるが、Siと同様に圧延加工性を劣化させるので、本発明でめっき層中に存在させることは有効である。また、Si、Alと同様にMgは水溶液からの電気めっきが難しい元素であり、めっき層中に存在させるために、金属微粒子中に含有させることは有効である。また、加熱拡散を容易にする目的からも、Fe、Alとの合金にすることが好ましい。
【0015】
なお、「けい素を主成分とする」とは、微粒子中で、けい素が構成元素中で最大含有量を持つことであり、好ましくは50質量%以上を占めることをいう。
【0016】
このような微粒子をめっき層中に分散させるが、その分散量は、めっき層中のSi換算の質量%が3.5%超〜10%の範囲でなければならない。磁気特性、特に鉄損は、鋼中のけい素含有量が6.5%で最小となるが、その後、上昇に転じ、10%を越えるとSi含有量が3.5%のときの鉄損と変わらないか、劣るようになるため、10%超添加することは無意味である。3.5%以下のけい素含有量では、圧延法で製造が容易であり、本発明の効果が現れない。
【0017】
また、めっき層中にSiと同時にAlもしくはMnを存在させることで、電気抵抗を増加させ、磁気特性をさらに向上させることができる。その量はAlの質量%で2.0%超7.0%以下が望ましい。2.0%以下ではSiと同様に圧延法で製造が可能であり、本発明の効果が現れない。7.0%を超えると効果が飽和するためこれを上限とする。Mnの添加量は0.5%以下では効果が殆ど現れない。また1.5%を超えると効果が飽和するため、0.5%超1.5%以下とする。
【0018】
めっき厚は1μm〜100μmの範囲とすることが好ましい。磁気特性を示すためには、めっき厚が1μm未満では効果が期待できないことが多い。また、高Si含有鋼が優れた電磁特性を示す1kHz以上の高周波数域では、100μm超の厚みで効果が飽和するためである。
【0019】
めっき中に存在するけい素の定量は、蛍光X線等の方法で確認が可能である。鋼板中にけい素が有意に含まれる場合には、断面のEPMA分析等でけい素の存在を定量化することが可能である。けい素と酸素や窒素の分布を比較することで、化合物を形成していないけい素か酸化けい素等の化合物かを同定することもできる。また、圧延された鋼板とFeめっきの組織の違いから、めっきに存在するか鋼板に存在するかの識別も容易である。
【0020】
このようなけい素を主体とする微粒子を分散させた鉄めっきが金属材料の少なくとも一部の表面に存在することにより、磁気特性が向上するものである。
【0021】
上記のめっき層をさらに加熱拡散処理することは、めっき層の均一性をさらに高めるためより望ましいことである。この加熱処理は、表面に酸化層を形成させないため、不活性もしくは還元性雰囲気で行われることが適当である。加熱温度は、1000℃以上であれば拡散が効率的に進めることが可能である。温度が高いほど拡散が速く進むが、経済性、汎用性から1200℃を上限とする。
【0022】
基材となる金属材料は、鉄鋼やアルミニウム、銅等の金属が考えられるが、特に組成が、質量%で、C:0.001%以上0.010%以下、Si:0.01%以上3.5%以下、Al:0.001%以上3.0%以下、Mn:1.5%以下であり、残部がFe及び不可避的不純物である鉄鋼材料であれば、より良い磁気特性を示すことが期待できる。
【0023】
Cは、鋼板の強度向上等に有効な元素であり、0.001%以上の添加が望ましいが、0.01%を超えると鉄損に悪影響を示す。
【0024】
Siは、電気抵抗を上げ磁気特性に効果的であるため、0.1%以上の添加が望ましいが、3.5%を超えると加工性に劣る。
【0025】
Alも、Si同様磁気特性に有効な元素であり、0.001%以上の添加が望ましいが、鋼を鋳造する時や圧延時に悪影響を示すので、上限を3.0%とする。
【0026】
Mnも、Si、Alと同様に電気抵抗を上げるために有効であるが、経済性の観点から上限を1.5%とした。
【0027】
金属材料に施される鉄系めっき層の形成方法は、電気めっき法により形成するのが好適である。鉄めっきの場合のめっき浴成分は、例えば、非特許文献1に記載されるような硫酸鉄もしくは塩化鉄を用いる通常の方法で構わない。目的によっては、鉄、ニッケル、コバルト以外の元素、例えば、亜鉛と鉄との合金めっき浴とすることも可能である。亜鉛は耐食性等に寄与することが期待できる。ただし、亜鉛は、沸点が低いため、加熱拡散を伴う場合、温度には気をつけることが求められる。
【0028】
微粒子の製造方法は特に規定しない。けい素もしくはけい素合金のインゴットを粉砕して分級する方法が経済的かつ一般的である。微粒子のサイズは、めっき中に存在させることから、めっき皮膜厚より小さいことが必要となる。磁気特性を示すためには小さいサイズの方が効果的で、さらにめっきへの取り込みの効率から、直径5μm以下の粉末が50%以上(平均粒径が5μm程度を示す)を占めることが適当である。さらに望ましくは、直径1μm以下の粉末が50%以上を占めることである。
【0029】
上記のけい素を主成分とする微粒子をめっき液中に懸濁させてめっき液とする。懸濁させる微粒子の量は厳しく規定されるものではないが、あまり少ないと必要量が取り込めず、めっき効率が下がり、ある程度以上多くても効果がなく、経済的に見合わないためめっき液1L当たり、5g以上50g以下でよい。粉末を効率よくめっき皮膜中に取り込むために、めっき液に界面活性剤を加えることは好ましい。しかし、界面活性剤を過度に加えると、めっきそのものの効率の低下、鉄比率の高いめっき液の場合、表面性状の悪化等の問題を生じることもあるので、界面活性剤の添加量はめっき液1L当たり0.01g以上、5g以下にすることが望ましい。
【0030】
上記のような、めっき液を用いて、金属材料に電気めっきする方法は、従来から行われている電気めっきの方法で構わない。
【0031】
また、Siを含む鉄系めっき層の形成方法としては、上記、水溶液からの電気めっきの他に、非水溶液溶媒を用いた低融点の溶融塩電解法も有効である。
【0032】
電気めっき法により、Siを含む金属めっきを形成した後、加熱拡散処理することは、例えば、連続ライン中での、合金化炉のような加熱でも、めっき後のコイル毎に加熱するバッチ焼鈍でも構わない。冷却速度は特に規定しない。強度、加工性等求められる特性によって、任意の冷却速度を選ぶことが可能である。
【0033】
このようにして製造された表面処理金属材料は、その後、周知の後処理、例えば、化成処理、絶縁被膜の形成等を行うことができる。
【0034】
本発明の表面処理金属材は、無方向性電磁鋼板と同等、もしくはそれを凌ぐ特性を持つ材料としてモーター等に使用することができる。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
質量%で、C:0.015%、Si:0.05%、Mn:0.2%、Al:0.03%を含み、残部がFe及び不可避的不純物である板厚0.1mmの冷間圧延鋼板を用いて、これを脱脂、酸洗後、下記に示すめっき条件での電気めっき法により、Si微粒子分散Feめっきを冷間圧延鋼板の表面に施した。
<めっき条件>
陽極:SS400
浴組成:FeSO4・7H2O 250g/L FeCl2・4H2O 35g/L NH4Cl 20g/L
(pHを3.0〜3.5に調整) 界面活性剤(第一製薬工業製;シャロールDC-902P)0.05g/L
添加微粒子:Si微粒子(純度:99.8%、平均粒径0.8μm)
微粒子添加量:25〜50g/Lの範囲で変化
めっき浴温:35℃
電流密度:10A/dm2〜50A/dm2
通電時間:30〜600sec
浴の攪拌:板速度が60m/minに相当するように攪拌
上記条件で電気めっきすることにより、Si微粒子を分散させたFeめっきを形成した。めっき厚は、電流密度もしくは通電時間で制御した。微粒子の分散量は、めっき液中への添加量で制御した。冷却後の鋼板を、JIS-C2550(2000)に示された方法で、1kg当りの鉄損(W1/10k)を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1から分かるように、本発明によるめっき皮膜を形成することで鉄損が大幅に下がり、優れた電磁特性を示す電磁鋼板が製造できる。
【0038】
(実施例2)
質量%で、C:0.003%、Si:3.0%、Mn:0.2%、Al:1.2%を含み、残部がFe及び不可避的不純物である板厚0.1mmの冷間圧延鋼板を用いて、これを脱脂、酸洗後、下記に示すめっき条件での電気めっき法により、Si微粒子分散Niめっきを冷間圧延鋼板の表面に施した。
<めっき条件>
陽極:SS400
浴組成:NiSO4・6H2O 240g/L NiCl2・6H2O 45g/L H3BO3 20g/L
(pHを3.0〜4.5) 界面活性剤(第一製薬工業製;シャロールDC-902P)0.05g/L
添加金属微粒子:Si微粒子(純度:99.8%、平均粒径0.8μm)
微粒子添加量:25〜50g/Lの範囲で変化
めっき浴温:35℃
電流密度:10A/dm2〜50A/dm2
通電時間:30〜600sec
浴の攪拌:板速度が60m/minに相当するように攪拌
上記条件で電気めっきすることにより、Si微粒子を分散させたNiめっきを形成した。めっき厚は、電流密度もしくは通電時間で制御した。微粒子の分散量は、めっき液中への添加量で制御した。めっき後の鋼板を、JIS-C2550(2000)に示された方法で、1kg当りの鉄損(W1/10k)を測定した。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
表2から分かるように、本発明によるめっき皮膜を形成することで鉄損が大幅に下がり、優れた電磁特性を示す電磁鋼板が製造できる。
【0041】
(実施例3)
質量%で、C:0.003%、Si:3.0%、Mn:0.2%、Al:1.2%を含み、残部がFe及び不可避的不純物である板厚0.1mmの冷間圧延鋼板を用いて、これを脱脂、酸洗後、下記に示すめっき条件での電気めっき法により、Si-48%Fe微粒子分散Feめっきを冷間圧延鋼板の表面に施した。
<めっき条件>
陽極:SS400
浴組成:FeSO4・7H2O 250g/L FeCl2・4H2O 35g/L NH4Cl 20g/L
(pHを3.0〜3.5に調整) 界面活性剤(第一製薬工業製;シャロールDC-902P)0.05g/L
添加金属微粒子:Si-48%Fe微粒子(平均粒径3.4μm)
微粒子添加量:50〜100g/Lの範囲で変化
めっき浴温:35℃
電流密度:10A/dm2〜50A/dm2
通電時間:30〜600sec
浴の攪拌:板速度が60m/minに相当するように攪拌
上記条件で電気めっきすることにより、Si-48%Fe微粒子を分散させたFeめっきを形成した。めっき厚は、電流密度もしくは通電時間で制御した。微粒子の分散量は、めっき液中への添加量で制御した。めっき後の鋼板を、JIS-C2550(2000)に示された方法で、1kg当りの鉄損(W1/10k)を測定した。No.54〜No.57は、その後、N2-10%H2雰囲気で1200℃、1時間加熱処理を行った。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
表3から分かるように、本発明によるめっき皮膜を形成することで鉄損が大幅に下がり、優れた電磁特性を示す電磁鋼板が製造できる。
【0044】
(実施例4)
質量%で、C:0.003%、Si:3.0%、Mn:0.2%、Al:1.2%を含み、残部がFe及び不可避的不純物である板厚0.1mmの冷間圧延鋼板を用いて、これを脱脂、酸洗後、下記に示すめっき条件での電気めっき法により、Si-40%Al微粒子分散Ni-20%Feめっきを冷間圧延鋼板の表面に施した。
<めっき条件>
陽極:SS400
浴組成:FeSO4・7H2O 18g/L NiCl2・6H2O 20g/L NiSO4・7H2O 320g/L
(pHを2.8〜3.0に調整) 界面活性剤(第一製薬工業製;シャロールDC-902P)0.05g/L
添加微粒子:Si-40%Al合金微粒子(平均粒径3.4μm)
微粒子添加量:50〜100g/Lの範囲で変化
めっき浴温:35℃
電流密度:10A/dm2〜50A/dm2
通電時間:30〜600sec
浴の攪拌:板速度が60m/minに相当するように攪拌
上記条件で電気めっきすることにより、Si-40%Al微粒子を分散させたNi-20%Feめっきを形成した。めっき厚は、電流密度もしくは通電時間で制御した。微粒子の分散量は、めっき液中への添加量で制御した。めっき後の鋼板を、JIS-C2550(2000)に示された方法で、1kg当りの鉄損(W1/10k)を測定した。No.72〜No.75は、その後、N2-10%H2雰囲気で1200℃、1時間加熱処理を行った。結果を表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
表4から分かるように、本発明によるめっき皮膜を形成することで鉄損が大幅に下がり、優れた電磁特性を示す電磁鋼板が製造できる。
【0047】
(実施例5)
質量%で、C:0.003%、Si:3.0%、Mn:0.2%、Al:1.2%を含み、残部がFe及び不可避的不純物である板厚0.1mmの冷間圧延鋼板を用いて、これを脱脂、酸洗後、下記に示すめっき条件での電気めっき法により、Si-40%Al微粒子分散Feめっきを冷間圧延鋼板の表面に施した。
<めっき条件>
陽極:SS400
浴組成:FeSO4・7H2O 18g/L NiCl2・6H2O 20g/L NiSO4・7H2O 320g/L
(pHを2.8〜3.0に調整) 界面活性剤(第一製薬工業製;シャロールDC-902P)0.05g/L
添加微粒子:Si-33%Al-17%Mn合金微粒子(平均粒径3.4μm)
微粒子添加量:50〜100g/Lの範囲で変化
めっき浴温:35℃、電流密度:50A/dm2、通電時間:170sec
浴の攪拌:板速度が60m/minに相当するように攪拌
上記条件で電気めっきすることにより、Si-33%Al-17%Mn微粒子を分散させたNi-20%Feめっきを形成した。微粒子の分散量は、めっき液中への添加量で制御した。めっき後の鋼板を、JIS-C2550(2000)に示された方法で、1kg当りの鉄損(W1/10k)を測定した。結果を表5に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
表5から分かるように、本発明によるめっき皮膜を形成することで鉄損が大幅に下がり、優れた電磁特性を示す電磁鋼板が製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料の少なくとも一部の表面に、Si含有鉄系めっき層を有する表面処理金属材であって、前記めっき層中のSi含有量が3.5質量%超10質量%以下であることを特徴とする磁気特性に優れた表面処理金属材。
【請求項2】
前記めっき層が、質量%で、Al:2.0%超8.0%以下、Mn:0.5%超1.5%以下の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の磁気特性に優れた表面処理金属材。
【請求項3】
前記めっき層の厚さが、1μm以上100μm以下である請求項1又は2記載の磁気特性に優れた表面処理金属材。
【請求項4】
前記めっき層が、めっき後、加熱拡散処理された皮膜である請求項1〜3のいずれかに記載の磁気特性に優れた表面処理金属材。
【請求項5】
前記金属材料の組成が、質量%で、C:0.001%以上0.010%以下、Si:0.01%以上3.5%以下、Mn:1.5%以下、Al:0.001%以上3.0%以下であり、残部がFe及び不可避的不純物である請求項1〜4のいずれかに記載の磁気特性に優れた表面処理金属材。
【請求項6】
Fe2+、Ni2+、Co2+イオンのうち少なくとも1種類を含む水溶液中にSiを主成分とする微粒子を懸濁させためっき浴を用いて、金属材料の少なくとも一部の表面に、Si微粒子が分散した鉄系めっき層を電気めっきで形成することを特徴とする磁気特性に優れた表面処理金属材の製造方法。
【請求項7】
前記電気めっき後、さらに1000℃以上1200℃以下の温度で加熱拡散処理する請求項6記載の磁気特性に優れた表面処理金属材の製造方法。

【公開番号】特開2007−262492(P2007−262492A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89016(P2006−89016)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】