説明

磁気的セパレータ及びその方法

【課題】顕微鏡的な生物学的試料の定性的、及び定量的分析を実行する改良型の装置及び方法を提供する。
【解決手段】流体媒体内部から生物学的物質を分離して、拘束して、定量化する装置と方法である。生物学的物質は、チャンバを内蔵する容器6を用いることによって観察されるが、この容器は、透明な収集壁5を含んでいる。高い内部勾配を持つ磁気捕獲構造体が透明収集壁5にあって、磁石3が、この透明収集壁5に向けて磁気反応性材料を移送するための外部印加力を発生させる。この磁気捕獲構造体は、生物学的物質を電気的に操作することを可能とするために、透明収集壁5上に支持された導体手段を含む。このチャンバは、1つのコンパートメント又は高さの異なった複数のコンパートメントを有する。チャンバは、多孔性壁を有することがある。本発明はまた、自動式細胞列挙技法と共に定量分析とサンプル製造を実行する際にも有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願へのクロスリファレンス)
本書は1996年6月7日に提出された米国暫定出願第60/019,282号と1996年11月5日に提出された米国暫定出願第60/030,436号に対して優先権が請求されている現在では米国特許第5,985,853号である、1997年6月2日に提出された米国特許第08/867,009号の一部継続出願である、1998年11月30日に提出された米国出願第09/201,603号の一部継続出願である。優先権はまた、本書では、1998年11月30日に提出された米国暫定出願第60,110,280号に対して主張されている。上記の出願及び特許は各々が、ここに参照して組み込まれる。
【0002】
本発明は、顕微鏡的な生物学的試料の定性的及び定量的分析を実行する改良型の装置及び方法に関する。本発明は、より特定的には、流体媒体内に磁気的ラベル付けされた種を発生するために結合剤を有する磁気反応性粒子と免疫特定的の又は非特定的の結合を受けやすい顕微鏡的な生物学的試料又は物質の隔離、収集、拘束及び/又は分析を実行する装置及び方法に関する。本書で用いられる「目標エンティティ」などの用語は、このような磁気的ラベル付けを受けやすい調査目的の生物学的試料又は物質のことである。
【背景技術】
【0003】
米国特許第5,985,853号には、外部磁気勾配を利用して、収集チャンバ内に存在する磁気的にラベル付けされた目標エンティティを自身の表面の内の1つに引き付けたり、内部磁気勾配を利用して、これらのエンティティを上記の表面上で正確に整合させる装置及び方法が記載されている。磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティを収集表面に移動させるには、垂直磁気勾配を印加して、この磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティをその収集表面に移動させる。この収集表面は、光学的に透明な表面上に支持された複数の強磁性ラインなどの強磁性収集構造体を備えている。
【0004】
この磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティは、一旦外部から印加された勾配によって表面に十分近接して引き付けられると、強磁性収集構造体が発生する強い局所勾配の影響下に置かれて、これに対して横方向に隣接する位置に拘束される。この局所勾配は、生物学的エンティティを、それが透明表面と衝突した後でその表面に保持することが可能な接着力を上回るのが望ましい。
【0005】
代替例では、この表面の接着性は、磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティが水平方向の磁力によって強磁性構造体に向けて移動させるに十分弱くなければならない。この表面の平滑さ並びに疎水性もしくは親水性は、収集表面用に選ばれた材料又はこの表面に滑り易さを与えるための処理に影響を与えうる要因である。
本発明によれば、収集チャンバ、収集チャンバの内部形状及び、垂直磁気勾配分離構造体を用いることによって遂行され得るさらなるより有用な技法に対するさらなる代替実施形態及び改良例が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,985,853号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、顕微鏡的な生物学的試料の定性的及び定量的分析を実行する改良型の装置及び方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
流体媒体内に磁気的ラベル付けされた種を発生するために結合剤を有する磁気反応性粒子と免疫特定的の又は非特定的の結合を受けやすい顕微鏡的な生物学的試料又は物質の隔離、収集、拘束及び/又は分析を実行する装置及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A−1B】図1Aは、磁気セパレータの略図である。図1Bは、図1Aの磁気セパレータ内の磁場を示す図である。
【図2A−2C】磁気セパレータ中に収集された試料の顕微鏡写真である。
【図3A−3I】磁気セパレータ中で用いられる代替の強磁性収集構造体の平面図である。
【図4】磁気セパレータ中に収集された種を分析するための光学的追跡・検出メカニズムの略図である。
【図5A−5B】同一の流体サンプル中の種を定量化するための用いられた磁気セパレータ(5A)及びフローサイトメータ(5B)から得られた蛍光信号のヒストグラムである。
【図6A−6B】磁気セパレータ中に収集された資料の顕微鏡写真である。
【図7A−7B】磁気セパレータ内における電荷強化収集法を示す連続した略図である。
【図8A−8B】磁気セパレータ用の強磁性で電導性の合成収集構造体のそれぞれ断面図と平面図である。
【図9A−9C】磁気セパレータ内亜での粒子分離方法を示す連続した略図である。
【図10A−10C】未知の粒子密度を有する流体中の粒子密度を測定する方法を示す連続した略図である。
【図11A−11B】互いに異なった濃度を持つ複数の目標種を包含する流体の複数同時分析を実行するように構成された分離容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.垂直勾配収集と目標エンティティの観察
本発明の第1の実施形態では、細胞などの目標エンティティは、強磁性収集構造体に隣接した容器の収集表面に対して後続の整合無しで収集される。収集表面は、外部磁石が発生した磁気勾配に対して直交するように方位付けされている。この実施形態では、ナノ粒子及び磁気的ラベル付け済み生物学的エンティティは、光学的に透明な表面上に実質的に均一な分布で収集され、一方、選択されないエンティティは流体媒体中で下方に留まる。
【0011】
この結果は、図1Aに示すように配置された2つの磁石間のギャップ中にチャンバを置き、これによって、チャンバの透明な収集表面が外部磁石3が発生した垂直磁気勾配に対して効果的に直交するようにすることによって達成される。磁石3は、厚さ3mmであり、3mmというギャップに向かってテーパーが付いている。磁石3は、ハウジング2の頂部にあるヨーク1中に保持されている。
【0012】
容器サポート4は、磁力線が容器6の収集表面5に対して実質的に直交するように方向付けされている磁石同士間の領域中に容器6を保持している。容器の収集表面は、厚さ0.1mmのポリカーボネート部材であることが望ましい。収集表面は、外部磁石3の上方表面に対して平行でこの2mm下方にある。磁石の内部エッジと頂部表面エッジ間のスペースは3mmである。
【0013】
磁石3のテーパー角度及び2つの磁石間のギャップ幅によって、印加される磁場勾配の強度と、容器上での収集表面の望ましい位置と、が決定される。磁石が発生した磁場勾配の特徴は、勾配磁場線が実質的に平行である実質的に均一な領域と、勾配磁場線が磁石に向かって発散する周縁領域を有することであといってもよい。
【0014】
図1Bに、このような磁石配置の場合の数学的に近似された磁場勾配を示す。磁場線(図示せず)はチャンバ表面に対して圧倒的に平行であり、一方、勾配線はそれに対して圧倒的に直角である。均一分布した目標エンティティの層を収集するために、横断方向の磁気勾配要素が実質的に内容にチャンバを均一な領域に置くように容器が位置付けされ、これによって、磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティが収集表面に横方向に移送される。
【0015】
収集表面領域上での磁性材料の収集パターンを図示するために、2.5mmの高さ(z)、3mmの幅(x)及び30mmの長さ(y)という内部寸法を持つチャンバが、150nm直径の磁気ビーズを包含し図1Aに示すように磁石間に置かれた225μlの溶液で充填された。磁気ビーズは、収集表面に向けて移動して均等に分布した。容器を磁石に対して上昇させて、容器の頂部の重要な部分が周縁領域に位置するようになると、かなりの分量の磁気粒子が、磁石に最も近接した収集表面のそれぞれの横方向領域に対して平行に移動してそこに蓄積された。
【0016】
収集表面上での収集の均一性を高めるためには、収集された種を接着的に引き付けるために表面材料を選択したり別様に処理したりすればよい。このように接着性を配慮すると、チャンバの位置付けの変位又は「実質的に均一な」領域中での所望の直交磁気勾配からの変位による収集された種の水平方向ドリフトを解消することが可能である。
【0017】
本実施形態を用いて検討されたデバイスの例では、血液ガン検査が用いられている。腫瘍誘導された上皮形成された細胞は、末梢血液中で検出可能である。低密度ではあるが、反上皮形成細胞別のフェロ流体を用いて末梢血液サンプルから血液10ml中の1〜1000個の細胞を検出して定量的に分析できる。
【0018】
図3に、収集表面上に強磁性構造体を持たないチャンバと磁石を用いて、末梢血液選択された上皮形成誘導済み腫瘍細胞を局所化し、区別し、列挙した例を示す。この例では、5mlの血液を上皮形成細胞別フェロ流体(ペンシルバニア州ハンチンドンバレー市のEPCAM−FF、イミュニコン社)を35μg用いて15分にわたって培養した。このサンプルは四極子磁気セパレータ(イミュニコン社のQMS17)中に10分にわたって置かれて血液は廃棄された。
【0019】
容器はセパレータから取り出されて、分離容器の壁にある収集された細胞は、洗剤を含む緩衝液3ml中で再懸濁されて細胞(イミュニコン社のイミュノパーム)を浸透性化して、10分にわたってセパレータ中に戻された。この洗剤を含んだ緩衝液は捨てられて、容器はセパレータから取り出されて、壁に収集された細胞は、紫外線励起可能核酸染料DAPI(モレキュールプローブ社)と、蛍光色素Cy3でラベル付けされたサイトケラチンモノクロナル抗体(上皮形成細胞を識別するためのもの)と、を含む緩衝液200μl中で再懸濁された。
【0020】
これらの細胞は15分間培養され、その後で、容器はセパレータ中に置かれた。5分後に、余分の試薬を含む収集されなかった部分が捨てられ、容器はセパレータから取り出されて、収集された細胞は等張緩衝液200μl中で再懸濁された。この溶液は収集チャンバ中に置かれて図1Aに示す磁気セパレータ中に置かれた。
【0021】
フェロ流体でラベル付けされた細胞と自由フェロ流体粒子は、即座に収集表面に移動して、図2Aに示すように表面に沿って均等に分布した。同図は、透過光線と20倍の対物レンズを用いた収集表面上の代表的な領域を示す。図2Bでは、同じ磁場が示されているが、この場合、Cy3の励起と放出用にフィルタキューブを用いている。2つの物体は1と2の数字で示されて識別可能である。
【0022】
図2Cに、同じ磁場を示すが、ここでは、フィルタキューブはDAPI用の励起・放出用フィルタキューブを持つ一方に切り換えられている。位置1と2にある物体は双方共が、位置3と5においてDAPIで着色されていて、これで、上皮形成細胞であることが識別されるようになっている。追加の非上皮形成細胞と他の細胞エレメント細胞はDAPI着色剤によって識別されるが;その例が番号4で示されている。
【0023】
II.細胞を中心に整合させる強磁性収集構造体
目標エンティティを空間的なパターンで収集するようにするには、強磁性収集構造体を容器の収集表面上に装備して強い局所磁気勾配を発生させ、これによって、構造体に横方向に隣接させて目標エンティティを拘束すればよい。
【0024】
以下に記載するさまざまな強磁性構造体は、ニッケル(NI)やパーマロイ(ニッケル・鉄合金)を用いた標準のリトグラフ技術によって製造可能である。蒸着された金属層の厚さは、10〜1700nmの範囲で変動する。10nmの構造体は部分的に透明である。しかしながら、これらの薄い構造体の拘束力は、200〜700nmという厚さ範囲の構造体の拘束力よりかなり劣る。
【0025】
磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティの拘束と整合は十分信頼性高く発生したが、これらの中程度の厚さの構造体は、全く乃至はほとんど接着力を持たない収集表面によって使いやすくなった。200〜1700nm範囲の厚さの収集構造体は、磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティを捕獲して表面接着力を上回るという点で効果的であった。
【0026】
図3A〜3Iに、強磁性収集構造体用のさまざまな磁石を示す。
図3Bでは、強磁性収集構造体は、細胞の直径(公称値で10ミクロン)に匹敵する間隔を持つニッケル製のワイヤを備えている。図3Cに示すワイヤ同士間の間隔が減少すると、ワイヤエッジに対する細胞の位置がはるかに均一になる。ほとんど全ての細胞が、中心で整合されているように見える。しかしながら、各細胞のある部分は重なり合っており、ニッケル製ワイヤのため不明瞭になっている。
【0027】
強磁性収集構造体に沿って収集された細胞は、自動式の光学的追跡・検出システムによって検出することが可能である。図4に示すこの追跡・検出システムは、2〜15μmの楕円状のスポットを有するレーザービーム下でX方向とY方向に磁石とチャンバを移動させる、コンピュータ制御の動力式ステージを用いている。テーブルの最高速度は、Y方向に2cm/秒、X方向に1mm/秒である。ソニー社のコンパクト・ディスクプレーヤから得た2つの円筒形レンズ(1)と(2)及び位置調整式対物レンズ(3)を用いて、光源(差込5を参照)としての635nmのレーザーダイオード(4)でサンプル上の2x15μmの楕円形スポットを作った。
【0028】
サンプルから反射された光線はダイクロイックミラー(7)、球形レンズ(8)、ダイアフラム(9)及び帯域通過フィルタ(10)を介して光電増倍管上に投射される。ワイヤから反射されてミラー(12)、ダイクロイックミラー(7)、1/4波長プレート(13)、偏光ビームスプリッタ(14)、円筒形レンズ(15)及び球形レンズ(16)を介して象限光ダイオード(11)上に投射された光線の偏光方向の差の測定値を用いて、サンプル上におけるレーザースポットの位置を決定し、また、信号を対物レンズにフィードバックさせて、祖の値のあらゆる変位(差込17を参照)を補正した。光ダイオード(18)をサンプルに対して直角に置いて用いて、照射されたイベントから散乱した光線を測定した。
【0029】
この追跡システムのフィードバックメカニズムは、最大で1cm/秒の速度でY方向に走査している間は、レーザービームがラインに対して同じX位置とZ位置を保つように最適化された。2cm長のラインの端で、対物レンズの位置は次のラインに偏光され、これが、チャンバのライン全てが走査されるまで繰り返された。
【0030】
追跡・検出システムの性能を評価して、それをフローサイトメータの性能と比較するために、6μmのポリスチレン製のビーズが作成されて、フェロ流体と互いに異なった4つの量の蛍光色素Cy5に対して接合された。これらのビーズを図3Cに示すタイプの強磁性収集構造体を持つチャンバ中に105ml−1という濃度で用いられた。このチャンバは、2つの磁石間の均一勾配領域中に置かれ、全てのビーズがライン間で整合された。追跡・検出システムを用いて、強磁性ワイヤに沿って走査している間に得られた蛍光信号を測定した。
【0031】
図5Aに、ビーズ混合体の蛍光信号のヒストグラムを示す。4つの明瞭に解像されたピークが、Cy5の無し、暗示、中間及び明示ラベル付けのビーズを区別している。同じビーズから成る混合体を作成して、これまた635nmレーザーダイオード(カリフォルニア州サンホセ市、FACScaibur、BDIS)を装備したフローサイトメータで測定した。
【0032】
この蛍光信号のヒストグラムを、図5Bに示すが、これは、互いに異なった4つの母集団が区別可能ではあるが、サンプルを本発明の磁気光束サイトメータで測定した場合よりその解像度は劣っていることが明らかである。これらの結果は、本書に記載するシステムによる整合によって、フローサイトメータによる場合より蛍光ビーズの測定の感度と精度が優れていることを示している。
【0033】
サイズが著しく異なっている生物学的エンティティを同時に測定することが望ましいような用途においては、収集構造体を不均一な形状を持つように構成して、異なったサイズの細胞や他の種を中心整合するようにすればよい。
【0034】
このような構造体の例を図3Dに示す。ある収集構造体のパターンは、10μmの周期と7μmの間隔を持つワイヤを有する1つの収集表面領域と、25μmの周期と7μmの間隔を持つワイヤを有する別の領域と、から形成された。これを用いて、サイズの小さい血小板と大きい白血球の双方を全血液から収集した。収集に先立って、血液は、血小板と白血球に固有のフェロ流体、すなわち、それぞれモノクロナルCD41でラベル付けされたフェロ流体とモノクロナル抗体CD45でラベル付けされたフェロ流体で培養された。
【0035】
血小板と白血球は、図3Dに示すように、収集表面上のそれぞれの領域中でワイヤに沿って整合する。血小板の測定は、ワイヤ同士間のスペースが小さい領域で実行可能であり、白血球の測定はワイヤ同士間のスペースが大きい領域で可能である。強磁性構造体の延長に沿って発生するギャップ幅のを変化させることによって、互いに異なったサイズを持つ収集済み細胞が共通の中心線に沿って線形に整合される。
【0036】
さまざまなサイズの細胞を捕獲して1つのサンプル中に中心に整合させるさらに多くの収集構造パターンが本発明の範囲内で可能である。4つの例を図3E、3F、3G、3H及び3Iに示す。図3Eに、図3Cに示すのと類似のワイヤ間隔を示すが、ワイヤはその全長に沿って形成された横方向の突起を有している。図3Eの形状の場合、細胞によって2つの位置を選択した、すなわち、図示するように突起の右又は左側である。このような設計では、収集平面上での双方の軸上で細胞を周期的に位置付けされる。
【0037】
図3Fに示すように、「バー」の代わりに非対称三角形の「プロング」エッジ形状を追加すると、図3Eでは観察される些少な(左右方向の)非対称性が除去される。図3Gに示すような大型の非対称性三角形「プロング」エッジ形状を追加してもまた、さまざまなサイズの細胞にとって効果的である。より鋭角的な三角形スタイルを図3Hに示す。
【0038】
図3Iに、細胞のサイズに合うように一方の軸に沿って間隔を設定された隔離された三角形の配列を示す。他方の軸に沿った間隔細胞のサイズより大きく、このため、細胞は、三角形のより近接して空間置きされた辺同士間の位置に向かって自由に移動する。
【0039】
収集方面上にあるカスタム設計された強磁性構造体を利用する例としては、血液ガン検査がある。腫瘍誘導された上皮形成細胞は、末梢血液中で検出可能であり、また、反上皮形成細胞別のフェロ流体を用いて末梢血液から定量的に検索可能である。腫瘍誘導上皮形成細胞の物理的外観は、そのサイズが2〜5μmという極めて均一的な範囲のアポプトティック細胞から、100μm以上のサイズを持つ腫瘍細胞凝集まである。この大きな範囲のサイズを収納するには、図3Gまたは3Hに略図を示すような三角形状の強磁性構造体を用いればよい。
【0040】
末梢血液誘導ガン細胞を位置付けする例を図6に示す。この例では、5mlの血液を上皮形成細胞別のフェロ流体(イミュニコン社、EPCAM−FF)で培養して、上記と同じ方法で処理した。最終的な細胞懸濁物を磁気セパレータ中に置いた。フェロ流体ラベル付けされた細胞と地通フェロ流体は、即座に収集表面に移動した。
【0041】
図6Aに、透過光線と20倍の対物レンズを用いた収集表面を示す。強磁性収集構造体は1で、開放幅広収集スペースは2で、狭い収集スペースは3で、大型の物体は4で示されている。図6Bに、ここでだけ紫外線励起を用いている同じ領域を示している。この大きい物体は実は、核酸染料インジケータ5で着色することによって確認されるような大きい細胞であり、良好に整合している。図4に示す追跡システムを用いて、図3Hと6Aに示す強磁性構造体に沿って走査することに成功した。
【0042】
III.アドレス可能強磁性収集構造体
強磁性構造体は、これを用いて強磁性構造体を用いて局所的な高い磁気勾配を作ることに加えて、電子的導体として働いて、局所的な電子場電荷を印加することも可能である。さらに、電子導体を収集表面上で形成して、収集された目標エンティティを電子的に操作することが可能である。最初に生物学的エンティティを特定のロケーションに移動させて次に光学的に分析するという機能を、図7Aに略図で示す。次いで一般的又は局所的な電子電荷を図7Bに示すように印加すると、既述のシステムの有用性に別の寸法を追加することになる。
【0043】
細胞、RNA、タンパク質及びDNAを伴う応用分野において、局所的な電子電荷を有用に印加することが知られている。このような収集表面の1つの設計の略図を図8に示す。
【0044】
電子電荷を最適に制御するには、最初にアルミ1から成る特定のパターン/層を光学的に透明な基板4に蒸着し、これで、図8Bに示す個別の強磁性構造体の5に対する電子回路となる。ニッケル又は他の強磁性材料から成る次の層を図8Aの基板2上に蒸着して、図8Bに示す個別の強磁性構造体を作成する。SiO2又は他の説粘性材料を蒸着して絶縁層3を得ることができる。
【0045】
磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティ7は、強磁性構造体同士間に局在している。次に、電子電荷を印加して、免疫特定的結合の特定性を改善し、捕獲された生物学的エンティティの方位をその電子極性に従って変化させること、又は、電子電荷を導体に印加することによってエンティティの特性を変性する(例えば、それを「爆発させる」)ことが可能である。生物学的エンティティは、電子電荷の印加の前及び/後で研究することが可能である。
【0046】
IV.余分の粒子を除去する多孔性チャンバ表面
大きい初期体積の流体サンプルを磁気分離によって処理してその体積を縮小すると、それに比例してナノメートルサイズ(<200nm)の磁気的ラベル付け粒子の濃度が増加する。チャンバ中の収集表面は、非結合の余分の磁気粒子を捕獲するには容量が限られており、また、これらの粒子は、磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティの位置付けや観察にとっては邪魔である。
【0047】
非結合の余分の磁気的ラベル付け粒子を磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティから分離する配置を図9に示す。収集チャンバは、外側コンパートメント1と内側コンパートメント2を備えている。非結合磁気粒子3並びに磁気的ラベル付け及び非ラベル付けの生物学的エンティティ4を含む流体サンプルが、内側コンパートメント2中に置かれる。
【0048】
内側チャンバの少なくとも1つの表面は多孔性の、例えばフィルタ膜であり、その孔のサイズは0.5〜2μmの範囲にある。ナノサイズの磁気粒子は、この孔を通過できるが、これより大きい磁気的ラベル付け済み細胞は通過不可能である。内側チャンバ6の反対側の表面は、上述したように強磁性収集構造体あるなしに関わらず透明表面から成っている。
【0049】
内側チャンバが流体サンプルで充填されたら、外側チャンバが緩衝液で充填される。次に、容器が、図9Bに示すように2つの磁石間に置かれる。チャンバは、容器のそれぞれの横方向部分が周縁の磁気勾配領域中に延長するように位置付けされる。
【0050】
非結合磁気粒子は、磁気勾配のため、膜(5)を通って外側チャンバ(1)のそれぞれの横方向領域8に向かう。この運動は、図1Bに示す磁気勾配場ラインと一貫している。粒子の横方向における蓄積は、最初に表面に当たって次に滑りやすい表面(7’)に沿って滑動するこれらのナノ粒子の水平方向の運動によって効果的に支援される。
【0051】
細胞などの磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティもまた、膜に到達するまでは勾配ライン(9)に従って運動するが、非磁気的な生物学的エンティティは、重力の影響で底部に沈殿する。非結合粒子の分離が完了したら、チャンバは磁気セパレータから取り出されて反転される(10)。チャンバは均一な勾配領域中で再位置付けされ、これによって、図9Cに示すように、収集表面での細胞の分布の均質性を最適化する。
【0052】
磁気的ラベル付けされた細胞は、光学的に透明な表面(6)に向かって運動し(図9Bと9C中で番号11で示す)、一方、非磁気生物学的エンティティは重力の影響で膜(5)に沈殿する。自由磁気ナノ粒子は、垂直方向に表面6に向かって運動する。自由磁気ナノ粒子は、観察経路上にはもはや存在せず、これで、磁気的ラベル付けされた生物学的エンティティを検査することができる。上述した本システムは、膜の目詰まりを防ぐように目標細胞数が低いような応用分野には特に適している。
【0053】
V.チャンバ高さの長手方向変動
目標エンティティの濃度と調和したチャンバの高さによって、上述したような容器の収集表面に収集された目標エンティティの分布が決定される。正確なカウントと分析にとって受け入れ可能な表面収集密度の範囲を増すには、チャンバの高さを変化させて、濃度が大幅に変動し得るようなサンプルを分析するためのサンプルを希釈したり濃密化したりする必要性を解消すればよい。
【0054】
図10Aに、収集表面1と6つのコンパートメントの高さが互いに異なっているチャンバの断面図を示す。目標細胞が、チャンバ中にランダムに置かれている。図10Bに同じ断面を示すが、ここでは、細胞は磁気勾配の影響で収集表面に移動している。チャンバの最も高い領域では、細胞の密度は高すぎて正確に測定できず、一方、チャンバの最も深いところでは、細胞を正確にカウントするにはその数が少なすぎる。
【0055】
この原理をさらに説明するために、収集表面にそって示した細胞密度のヒストグラムを図11Cに示す。ここで、最高密度の領域中の細胞の数は過小評価されることに注意されたい。ここに述べる方式は、ヘマトロジ分析装置やフローサイトメータで従来用いられてきた細胞数測定と比較して正確に測定可能な濃度範囲を増すものである。
【0056】
VI.チャンバ中のさまざまなコンパートメント
サンプル中には、さまざまな濃度を持つさまざまなタイプの目標エンティティが存在し得る。同時に複数の分析を可能とするには、チャンバを複数のコンパートメントで作成すればよい。このようなチャンバの例を図11Aに示す。このようなチャンバ中に収集表面1並びに2つの分離したコンパートメント2及び3が存在することによって、さまざまな試薬の集合を用いることができる。
【0057】
図11B中で番号4で図示するようにチャンバ中の領域が壁で分離されていない場合、使用される試薬は全ての磁気的ラベル付けされた細胞タイプを頂部に向けて移動させる。その例として、例えば、白血球固有のフェロ流体と血小板固有のフェロ流体を同時に用いる場合がある。
【0058】
血小板の密度は、図3Dに示す配置の場合のように、白血球の密度よりかなり大きいため、血小板の測定はチャンバの浅い部分(これは収集表面上では比較的小さいライン間隔を有する)で実行され、白血球の測定はチャンバの深い領域(これは収集表面上では比較的大きいライン間隔を有する)で実行される。
【0059】
説明のための用語として用いられた用語と表現は、制限的なものではない。このような用語や表現を用いるに際して、図示し説明した特徴やそのいかなる部分のいかなる同等物をも排除する意図はない。したがって、さまざまな修正例が請求される本発明の範囲内で可能であることが認識されよう。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体媒体中で懸濁した微小生物学的試料を光学的に分析する方法において、前記方法が:
前記微小生物学的試料を磁気的にラベル付けするステップと;
前記流体媒体を受容するチャンバを内部に有し、また、透明な頂部部材を有する容器中に前記流体媒体を包含するステップと;
垂直方向の磁気勾配の実質的に均一な領域を有する磁場中に前記容器を位置付けし、これによって、チャンバが前記均一領域中に置かれるようにするステップと;
前記磁気的ラベル付けされた微小生物学的試料から成る不均一分布した層を、前記透明部材によって結合された前記チャンバの内部表面上に収集するステップと;
前記透明部材で結合された前記チャンバの前記内部表面上に収集された前記試料を保持しながら、前記微小生物学的試料を光学的に分析するステップと;
を含む方法。
【請求項2】
前記容器を位置付けする前記ステップが、後出のギャップに対面するそれぞれテーパー付きの表面を有する1対の磁石間のギャップ中に前記容器を位置付けするステップを含み;
前記光学分析ステップが、前記磁石同士間ギャップ中と前記チャンバ中に垂直に延長する観察経路に沿って前記試料を顕微鏡で観察するステップを含む;
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記透明部材で結合された前記チャンバの前記内部表面と前記試料間を接着して、収集された前記試料の水平方向の移動を防止するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
流体媒体中の微小生物学的試料を収集して観察する方法において、前記方法が:
前記試料に複数の磁気的ラベル付け粒子を接触させることによって前記試料ヲ磁気的にラベル付けするステップと;
透明な表面と多孔性の壁を持つチャンバを有する容器中に前記流体媒体を置くステップと;
前記チャンバに磁場勾配を印加して、前記ラベル付けされた試料を保持しながら、前記チャンバの前記多孔性壁を介して余分の前記磁気ラベル付け粒子を除去するステップと;
前記ラベル付けされた試料を前記透明壁に向けて引き付けて、前記余分の粒子の除去後に観察するステップと;
を含む方法。
【請求項5】
流体媒体中に懸濁した微小生物学的試料を光学的に分析する方法において、前記方法が:
前記微小生物学的試料を磁気的にラベル付けするステップと;
前記流体媒体を受容するチャンバと、透明な頂部部材と、高さの異なった2つの収集領域を有するチャンバと、を有する容器中に前記流体媒体を含むステップと;
垂直方向の磁気勾配を持つ実質的に均一な領域を有する磁場中に前記容器を置き、これによって、前記チャンバが前記均一な領域中に置かれるようにするステップと;
前記チャンバの前記収集領域に対応する前記透明頂部部材の内部表面のそれぞれの領域上に磁気的ラベル付けされた微小生物学的試料を収集するステップと;
を含む方法。
【請求項6】
前記チャンバの前記収集領域同士間にバリヤを備えるステップを含む、請求項5に記載の方法。

【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−19850(P2010−19850A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220205(P2009−220205)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【分割の表示】特願2000−584976(P2000−584976)の分割
【原出願日】平成11年11月30日(1999.11.30)
【出願人】(309021320)ベリデックス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (7)
【氏名又は名称原語表記】Veridex,LLC
【Fターム(参考)】