磁気空中浮揚装置
【課題】空中浮揚した磁気要素の安定性を実現すること。
【解決手段】位置センサに接続され、平衡な位置に対する磁気要素の動作を制御するための制御磁場を生成するように構成された電磁石と、位置センサおよび電磁石に接続されたコントローラであって、位置センサからのフィードバック信号を受信し、これに応答する電磁石を制御するように構成されたコントローラとを備えている。
【解決手段】位置センサに接続され、平衡な位置に対する磁気要素の動作を制御するための制御磁場を生成するように構成された電磁石と、位置センサおよび電磁石に接続されたコントローラであって、位置センサからのフィードバック信号を受信し、これに応答する電磁石を制御するように構成されたコントローラとを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対するクロスリファレンス]
本出願は、2002年9月27日出願の米国特許出願第60/413,881号からの優先権を主張する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、磁気要素を空中に浮揚する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
空中浮揚した物体は、観察するのに関係し、そして、様々な適用に有用することが可能である。磁場は、磁気物体を空中に浮揚するのに使用されることが可能な1つのツールを提供する。アーンショウ(Earnshaw)の定理によれば、静磁場だけを使用して安定状態に磁気物体を支持することができない。アーンショウ(Earnshaw)の定理の1つの供述によると、空中浮揚した磁石は、静磁気力、あるいは、重力のあらゆる組合せによって安定平衡に保持されることができない。
【0004】
特許文献1のホワイトヘッド(Whitehead)は、分離平面の1つの側の磁石の配列により、分離平面の対抗する側に空中浮揚した磁気要素を支持することが可能である磁気空中浮揚システムを開示している。その磁気配列は、安定平面に平行な方向における空中浮揚した要素の移動のために、空中浮揚した要素と静磁場との間の磁気相互作用の位置エネルギーが増大するように静磁場をもたらす。その磁気配列は、安定平面に直交する方向に空中浮揚した要素を安定させるために、可変磁場である可変力を制御する制御システムを含む。
【0005】
本発明者達は、ホワイトヘッド(Whitehead)によって開示される実施形態によって生成される磁場が、トルクを空中浮揚した磁気要素に印加することが多いことを測定した。これは、空中浮揚した磁気要素の磁気双極子が、静磁場とほぼ整列するのに対して、“不安定な”方向における空中浮揚した磁気要素の位置を制御するのに使用される可変磁場は、空中浮揚した磁気要素の平衡な位置における静磁場にほぼ垂直に方向付けられるからである。このトルクによって引き起こされる回転は、空中浮揚した要素のねじれ振動と並進振動との組合せへと導くことが可能である。場合によっては、これは、安定フィードバック制御、したがって、空中浮揚した磁気要素の安定性に悪影響を及ぼす。
【0006】
空中浮揚した磁気要素の増大した安定性などの好ましい操作特性を有する、および/または、構造が簡単である、ホワイトヘッド(Whitehead)によって開示される一般的タイプの磁気空中浮揚システムが必要とされている。特定の適用のために、磁気材料の量の減少を組み込み、そして、比較的低コストで作られることが可能な上述の空中浮揚システムが特に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,168,183号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の1つの態様は、磁気要素を空中に浮揚する装置を提供する。その装置は、磁気要素との相互作用の位置依存位置エネルギーをもたらす静磁場を生成するように配列される少なくとも2つの磁石を備えている。特定の実施形態において、その少なくとも2つの磁石は、ダイヤモンドパターンに配列される4つの磁石を含む。静磁場は、平衡な位置をもたらし、そこにおいて、位置エネルギーが、不安定な軸に沿う平衡な位置から離れる磁気要素の移動のために減少し、そして、不安定な軸に直交するあらゆる方向に平衡な位置から離れる磁気要素の移動のために増大する。その装置は、不安定な軸の磁気要素のロケーションを示すフィードバック信号を生成する位置決めセンサと、電磁石であり、その電磁石を通る電流の通過時制御磁場を生成するように構成され、その制御磁場が、平衡な位置における不安定な軸に沿う移動に対して勾配(gradient)を有する、電磁石と、磁気要素が平衡な位置の付近を離れることを防止するために、フィードバック信号を受信し、そして、電磁石内の電流を制御するために接続されるコントローラとを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、電磁石は、不安定な軸に平行する軸に沿って一定の間隔が開けられる少なくとも2つのコイルを備える。たとえば、その電磁石は、不安定な軸に平行する軸に沿って一定の間隔が開けられる4つのコイルを備え、その4つのコイルを通る電流の通過時、4つのコイルのそれぞれが、4つのコイルの隣接したものの磁気極性に対向する磁気極性を有する。
【0010】
特定の実施形態は、その少なくとも2つの磁石が、不安定な軸に平行な方向に、第1の間隔D1だけ互いに離れて一定の間隔が開けられる第1の磁石および第2の磁石と、不安定な軸に横向きの方向に、第2の間隔D2だけ互いに離れて一定の間隔が開けられる第3の磁石および第4の磁石とを備え、その場合、D1<D2であり、第1の磁石および第2の磁石のそれぞれは、少なくとも2つの磁石の対称の軸から等距離であり、そして、第3の磁石および第4の磁石のそれぞれは、対称の軸から等距離である、装置を提供する。第1の磁石、第2の磁石、第3の磁石および第4の磁石のそれぞれは、平衡な位置の方へ向って面する第1の磁極と、平衡な位置から離れて面する第2の磁極とを有することができる。第1の磁石、第2の磁石、第3の磁石および第4の磁石の第1の磁極は、ほぼ同一平面上にあるのがよい
本発明の別の態様は、磁気要素を空中に浮揚する装置を提供する。その装置は、磁気要素との相互作用の位置依存位置エネルギーをもたらす静磁場を生成する手段を備え、その静磁場が、平衡な位置をもたらし、そこにおいて、位置エネルギーが、不安定な軸に沿う平衡な位置から離れる磁気要素の移動のために減少し、そして、不安定な軸に直交するあらゆる方向に平衡な位置から離れる磁気要素の移動のために増大する。その装置は、さらに、不安定な軸上の磁気要素のロケーションを示すフィードバック信号を生成する手段と、そのフィードバック信号に応じて平衡な位置における四極子制御磁場をもたらすことによって、磁気要素を平衡な位置に方向付ける制御手段とを備えている。
【0011】
本発明のさらなる態様および本発明の特定の実施形態の特徴は、以下に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1つの実施形態による磁気空中浮揚システムの部分略図である。
【図1A】本発明の別の実施形態による磁気空中浮揚システムの部分略図である。
【図1B】本発明の別の実施形態による磁気空中浮揚システムの部分略図である。
【図2A】図1のシステムのx軸,y軸およびz軸にそれぞれに沿う空中浮揚した磁気要素の平衡な位置からの移動に伴う磁気位置エネルギーの変動を示すプロットである。
【図2B】図1のシステムのx軸,y軸およびz軸にそれぞれに沿う空中浮揚した磁気要素の平衡な位置からの移動に伴う磁気位置エネルギーの変動を示すプロットである。
【図2C】図1のシステムのx軸,y軸およびz軸にそれぞれに沿う空中浮揚した磁気要素の平衡な位置からの移動に伴う磁気位置エネルギーの変動を示すプロットである。
【図3】平衡な位置において四極子磁場を生成するように配列される制御コイルを有する磁気空中浮揚システムの平面図である。
【図4】回転に対する空中浮揚した磁気要素の安定性を改善するために磁石を有する磁気空中浮揚システムの平面図である。
【図5】平衡な位置近くに磁気要素を支持する可動プラットフォームを有する磁気空中浮揚システムの側面図である。
【図6】空中浮揚した物体を照明し、そして、活動させるメカニズムを示す。
【図7】本発明の実施形態の制御コイルを通るx−z平面についての断面図である。
【図8A】本発明の別の実施形態によるコイル形状を示す。
【図8B】本発明の別の実施形態によるコイル形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明を通して、明確な詳細が、本発明のより充分な理解を与えるために述べられている。とはいえ、本発明は、これらの詳細がなくても実行できる。他の例では、周知の要素は、本発明を不必要に分かりにくくすることを回避するために、詳細に示されていないし、あるいは、説明されていない。ゆえに、明細書および図面は、制約する意味ではなく、例を示すように考慮されるべきである。
【0014】
図1は、本発明による磁気空中浮揚システム10を示している。平衡な位置13に磁気要素12を空中浮揚するシステム10が示されている。磁気要素12は、1つの磁気双極子、あるいは、一続きの磁気双極子を備えている。磁気要素12は、空中に浮揚される軽量本体に取り付けられる永久磁石を備えることができる。
【0015】
システム10は、間隔D1だけ離れて一定の間隔が開けられる第1の一対の磁石14(個々には、14A,14B)と、間隔D2だけ離れて一定の間隔が開けられる第2の一対の磁石16(個々には、16A,16B)とを備え、その場合、D2>D1である。本発明の一般に好ましい実施形態において、D2対D1の割合は、1.5:1〜2:2の範囲内である。
【0016】
磁石14よりさらに離れている磁石16は、磁石14のものよりも大きい、あるいは、磁石14のものと等しい双極子モーメントを有することが好ましい。磁石16の磁気双極子モーメントは、磁石16がないときに存在する磁場の力線の好ましくない湾曲を実質的に妨げるほど充分に大きいが、平衡な位置13への磁石14の接近のためにずっと高い勾配を有する強力でない磁石14の空中浮揚磁場を妨げるほど大きくないことが好ましい。磁石14A,14Bは、互いに同じ磁気の強さを有し、そして、磁石16A,16Bは、互いに同じ磁気の強さを有することが好ましい。磁石14の強さM14は、磁石16の強さM16未満か、あるいは、磁石16の強さM16に等しいことが好ましい。M16対M14の割合は、本発明のいくつかの実施形態においては、1対1から2対1の範囲内である。
【0017】
磁石14は、磁石14A,14Bが、第1の軸に配置され、そして、磁石16A,16Bが、第1の軸に直交する第2の軸に配置されるように配列されることが理想である。以下の説明において、磁石14,16は、すべて平面18に近接するように示されている。平面18で直交するx軸,y軸と、平面18に垂直なz軸とを有するデカルト座標系は、磁石14,16に対して対称的に位置するその原点を有する。x軸は、磁石14を延通し、そして、y軸は、磁石16を延通する。例示したシステム10の座標系のz軸は、システム10の対称軸をもたらす。z軸は、平面18から離れた間隔D3である平衡な位置13を延通する。
【0018】
図1は、磁石14,16が直交軸に位置する理想的なケースを示すのに対して、この理想的な配列からの多少のずれは、本発明から逸脱することなく可能である。例示した実施形態において、磁石14,16は、ダイヤモンドパターンに配列されている。デカルト座標系の確立は、例示した装置の形状を説明する際における便宜のためだけに行われている。他の座標系が使用されることが可能である。
【0019】
磁石14,16は、磁石14,16と、磁気要素12がシステム10によって空中に浮揚されることが可能な平衡な位置13との間の間隔と比べて、サイズが小さいことが好ましい。この場合、磁石14,16のそれぞれは、磁石14、あるいは、16のロケーションにおける単一の磁気双極子によって生成される磁場とほぼ同じ平衡な位置13における磁場を生成する。
【0020】
図1に示される実施形態において、磁石14,16は、すべて、z軸に平行である同じ方向に分極される。図1Aは、本発明の別の方法の実施形態を概略的に示し、磁石14のそれぞれは、角度φ1で、z軸の方に向って傾斜され、そして、磁石16のそれぞれは、角度φ2で、z軸の方に向って傾斜されている。いくつかの実施形態において、φ1=φ2である。他の実施形態において、φ1およびφ2は、互いに異なる。図1Aに示されるように、z軸の方へ向って磁石14および/または16を傾斜することは、1つ以上の他の方向における安定性の減少を犠牲にして、1つの方向におけるモーションに対して磁気要素12の空中浮揚における多少のスチフネス(stiffness)を得ることが多い。
【0021】
磁石14,16は、第1の方向(たとえば、+z方向)に方向付けられる第1の極性の極(たとえば、N)と、第1の方向(たとえば、−z方向)に対向する第2の方向に方向付けられる第2の極性の極(たとえば、S)とを有する。
【0022】
あらゆる適切な磁石は、磁石14,16に使用できる。磁石14,16は、たとえば、永久磁石、あるいは、電磁石を備えている。システム10が、電池、あるいは、総容量、あるいは、ピーク電力によって限定される別の電源装置によって動力が与えられる場合、あるいは、システム10の電力消費量を最小にすることが好ましいという場合には、磁石14,16は、永久磁石が好ましい。いくつかの実施形態において、磁石14,16は、NdFeB磁石、バリウムフェライト(Barium Ferrite)磁石、サマリウムコバルト(Samarium Cobalta)磁石、あるいは、AlNiCo磁石を備えている。磁石14,16は、それぞれ、一続きの磁気双極子を備えている。
【0023】
例示した実施形態において、平衡な位置13に最も近い磁石14,16の極は、同一平面上にあり、そして、すべては、平面18にすぐ近くに近接して位置する。磁石14,16は、ベース17内に取り付けられることができる(図1B,図5および図6を参照)。磁石14,16およびベース17は、z方向に薄い。いくつかの実施形態において、ベース17は、かなりD3未満である厚さを有する。たとえば、ベース17は、1/2×D3またはそれ以下の厚さを有する。
【0024】
磁石14,16は、平衡な位置13で空中浮揚状態に磁気要素12を支持する静磁場を生成する。その静磁場は、空中浮揚した磁気要素12と静磁場との間の磁気相互作用の位置エネルギーが、安定平面20(図1にy−z平面として示される)に平行な方向に平衡な位置13から、空中浮揚した磁気要素12の小さな移動のために増大するように勾配を有する。
【0025】
図2A,2B,2Cは、x軸、y軸およびz軸それぞれに沿う移動のために磁気要素12の位置決めに伴う磁気位置エネルギーの変動を示す。磁気位置エネルギーは、y軸およびz軸のいずれにも沿って平衡な位置13から離れる移動のために増大するということが分かった。磁気要素12は、その結果、これらの軸に沿う移動に対して安定である。これに反して、磁気位置エネルギーは、x軸に沿ういずれもの方向に平衡な位置13から離れる移動のために減少する。磁気要素12は、その結果、x軸に沿う平衡な位置13からの移動に対して不安定である。
【0026】
システム10は、コントローラ24(図1)の制御のもとに、可変磁場を生成する制御コイル22(個々には、22A,22B)を含む。磁気要素12が、その空中浮揚した平衡位置決め13から離れて移動するとき、コントローラ24は、制御コイル内の電流の1つまたは複数のフローを調整し、制御コイル22に、磁気要素12に印加される力を結果として生じる磁場を生成させる。その力は、不安定なx軸に沿う選択した方向に磁気要素12を押圧する。制御コイル内の電流の通過によって生成される可変磁場は、x軸の方向におけるモーションに対して、空中浮揚した磁気要素12を安定させる。図1に示される実施形態において、コイル22A,22Bは、互いに近接し、x軸に沿って離れて一定の間隔が開けられるそれらのセンターを有し、コイル22のそれぞれは、磁石14の1つを囲む。
【0027】
位置決めセンサ26は、コントローラ24に、不安定なx軸の空中浮揚した磁気要素12の移動を表わす信号を供給する。例示した実施形態において、センサ26は、平衡な位置13の真下のシステム10の対称のセンターに位置する。位置決めセンサ26は、たとえば、ホール効果センサを備えることができる。ホール効果センサは、x軸に平行な方向に、空中浮揚した磁気要素12からの磁場の強さを検出するように方向付けられることができる。磁気要素12は、平衡な位置13に位置するとき、その場合、磁気要素12の磁気双極子は、z軸に平行に方向付けられる、静磁場と整列される。磁気要素12の磁気双極子は、センサ26のロケーションにおけるx軸に平行な方向に正味磁場コンポーネントを生じない。磁気要素12が、いずれもの方向に不安定なx軸に沿って移動する場合、その場合、センサ26で検出されるように、磁気双極子からの磁場は、平衡な位置13から磁気要素12の増大する移動とともに増大するx方向にゼロでないコンポーネントを有する。したがって、ホール効果センサ26によって出力される信号は、不安定なx軸に沿う磁気要素12の位置決めに関して、コントローラ24にフィードバックを供給するのに使用されることが可能である。
【0028】
コントローラ24は、平衡な位置13に空中浮揚した磁気要素12を維持するためにコイル22内の電流を調整する。コントローラ24は、コンピュータ、プログラマブルコントローラ、あるいは、ディジタル信号プロセッサ、あるいは、適切なアナログ、または、ディジタルフィードバック制御回路などの適切にプログラムしたデータプロセッサを含むあらゆる適切な制御技術を備える。
【0029】
磁気要素12が安定して空中に浮揚される平衡な位置13と、磁石14,16に近接した平面18との間の間隔D3は、磁石14Aと磁石14Bとの間の間隔D1を調整することによって変えられることができる。磁気要素12が、空中に浮揚されている間にわずかに間隔D1を減少することにより、間隔D3を減少させると同時に、安定平面20(すなわち、図1におけるy−z平面)における平衡な位置13からの移動に対して磁気要素12の安定性を増大する。磁気要素12が、空中に浮揚されている間にわずかに間隔D1を増大することにより、間隔D3を増大させると同時に、安定平面20における平衡な位置13からの移動に対して磁気要素12の安定性を減少する。
【0030】
平衡な位置13は、磁石14,16の静磁場が、コイル22内を流れる電流がないとき、平衡な位置13における磁気要素12への重力を妨げるために充分な力をもたらすような位置決めであることが好ましい。磁気要素12は、x方向に不安定である。コイル22は、平衡な位置13から離れる磁気要素12のx方向におけるあらゆる動きを妨げるように操作される。そのような実施形態において、磁気要素12が、平衡な位置13から離れて、動いたとき、あるいは、動いているとき、電流をコイル22内に流させることが必要なだけである。これにより、平衡な位置13に磁気要素12を安定させるのに必要とされる電力消費量を最小にすることを可能にさせる。
【0031】
制御コイル22は、それらが不安定なx軸の磁気要素12の位置決めを制御するほど充分な磁場勾配(dBz/dx)を平衡な位置13近くにもたらすように操作されることが可能なように配列される。コイル22の寸法およびロケーションは、コイル22によって生成される磁場の大きさが平衡な位置13の付近においてきわめて小さいように選択されることが利点である。これにより、磁気要素12を回転することが多い磁気要素12のロケーションにおいてかなりの横方向磁場コンポーネントを導入することなく磁気要素12の安定性を可能にする。実際問題として、x方向,y方向およびz方向におけるコイル22からの磁場のコンポーネントが、平衡な位置13において実用的なように小さいのに対して、x軸の磁気要素12の位置決めを制御するために、充分な力をもたらすほどに充分に大きい勾配(dBz/dx)をx方向に有するということは好ましい。
【0032】
図3は、平衡な位置13の付近においてコイル22からの磁場を最小にする制御コイル22の1つの形状を有するシステム10Aを示している。同じ参照符号が、システム10Aのパーツを示すのに使用され、それは、図1のシステム10にも見られる。システム10Aは、4つのコイル22、すなわち、コイル22A,22B,22C,22Dを有する。コイル22Aから22Dは、平面18に平行に、かつ、互いに平行に配列される矩形のコイルである。コイル22Aから22Dの長側面は、y軸に平行に、かつ、不安定なx軸に横方向に延在する。コイル22Aから22Dは、x軸に沿って対称的に配列されている。磁石14A,14Bは、示されるように、それぞれに、コイル22A,22B内にある。コイル22Aから22Dは、y−z安定平面に対して対称的に位置する。コイル22A,22Bは、互いに近接し、コイル22A,22Cは、互いに近接し、そして、コイル22B,22Dは、互いに近接することが理想的である。コイル22C,22Dは、x軸に平行なそれらの寸法がコイル22A,22Bより幅広いことが好ましい。例示した実施形態において、コイル22Aは、コイル22Bと同じ寸法を有し、そして、コイル22Cは、コイル22Dと同じ寸法を有する。
【0033】
平面18に平行なコイル22によって生成される磁場の少なくともこれらのコンポーネントが、平衡な位置13の少なくとも付近において実質的に互いに相殺することが好ましい。この結果は、コイル22の寸法を適切に選択し、そして、適切な方向に、コイル22Aを通って適切な1つまたは複数の電流を通すことによって生成できる。電流は、磁石12に安定磁気力を生成するために、対向する方向に、内側のコイル22A,22Bを通過する。電流が時計回りの方向にコイル22Aを通過する場合、電流はコイル22Bを逆時計回りに通過する必要がある。同時に、コイル22C内の電流のフローは、逆時計回りであり、そして、コイル22D内の電流のフローは、時計回りである。これにより、不安定なx軸に沿う1つの方向に磁気要素12を押し進めるために力を印加する安定磁場を生成する。不安定なx軸に沿う対向する方向に磁気要素12を押し進めるために力を印加する安定磁場を生成するために、電流がコイル22のそれぞれに流れる方向は、逆にされることが可能である。
【0034】
図3に示されるコイル22の配列は、コイル22が、巻線の等しい数と、適切な寸法とを有し、そして、各コイル内において正確な方向に流れる等しい電流を搬送するとき、平衡な位置13において磁気四極子磁場を生成する。磁気四極子は、磁場の大きさがゼロであるのに対して、磁場の勾配が線形であり、そして、ポイントまわりに対称である、スペースにおいてポイントである。この場合、コイル22は、磁気要素12に印加される安定磁気力を生じる。磁気要素12に印加される安定力の大きさは、磁気要素12のロケーションにおける磁場の勾配dBz/dxの大きさに比例する。
【0035】
図7は、コイル22を通るx−z平面についての断面図である。平衡な位置13において四極子磁場を生成するためのコイル22については、コイル22A,22Bは、等しい幅W1を有し、コイル22C,22Dは、等しい幅W2を有することと、W1は、W1=D3およびW2≧D3によって、W2および間隔D3に相関していることとが好ましい。コイル22のすべては、同じ長さを有することがよい。不安定なx軸に対して横に作用する方向における各コイル22の長さは、その幅よりも大きい。
【0036】
コントローラ24は、磁気要素12が平衡な位置13の付近にあるとき、センサ26によって検出されないことに備えて、システム10の操作を抑制することが好ましい。たとえば、磁気要素12が機能を停止する場合、コントローラ24がコイル22を通して電流を通すことによって、磁気要素12の位置決めを補正しようとすることを防止することが好ましい。これは、エネルギーを消耗し、コイル22を過熱させ、極論すれば、コイル22に電力を供給する制御回路を損傷する可能性がある。磁気要素12が平衡な位置13の所望の間隔内にないことを、センサ26からの信号が表示するときは必ず、コントローラ24は、不活動モードにスイッチするように構成できる。コントローラ24は、リセットするまで不活動のモード状態のままであるように構成できる。システム10は、コントローラ24をリセットするために、ユーザーによって操作されることが可能なリセットスイッチを含むことができる。
【0037】
ある場合、平衡な位置13における静磁場の強さを増大する付加的な磁石をもたらすことが好ましいことがある。覆すモーメントに対する磁気要素12の安定性は、平衡な位置13における静磁場の強さとともに増大する。これは、磁気要素12の磁気双極子が周囲磁場とそれ自体を整列することが多いからである。磁気要素12の磁気双極子が、磁場と調整不良になる場合、その場合、磁気要素12は、補正トルクを受ける。補正トルクの大きさは、磁気要素12のロケーションにおける磁場の強さに比例する。
【0038】
図4は、平衡な位置13における磁場の強さを増大するが、平衡な位置13に磁気要素12維持するのに使用される力を生成する磁場勾配に悪影響を及ぼさない付加的な磁石30の配列を示す。付加的な磁石30は、リング31に配置される。各付加的な磁石30は、磁石14と同じ方向に方向付けられる磁気双極子をもたらす。
【0039】
リング31は、平面18内に、あるいは、平面18に平行な平面内に位置する。平衡な位置13は、リング31のセンターからリング31の平面に直交して延在するライン上に位置する。リング31の半径は、磁石30によって生成される磁場のzコンポーネントが平衡な位置13においてz方向に実質的に勾配を持たないように選択され(すなわち、平衡な位置13において、dB(30)z/dz=0)、式中、B(30)zは、磁石30によって生成される磁場のzコンポーネントである。この状況において、“実質的に勾配がない”ということは、磁気要素12に、平衡な位置13において空中に浮揚させる磁石14,16によって生成される静磁場の勾配よりも少なくともかなり小さい、好ましくは、その静磁場の勾配の25%未満、そして、最も好ましくは、7%未満である勾配を意味する。z軸まわりのリング31内の磁石の対称によって、磁気要素12にあらゆる方向であるが、z軸に平行にそれ自体を整列させる平衡な位置13における磁石30によって生成される磁場の正味水平コンポーネントがない。
【0040】
システム10は、最初は、平衡な位置13の付近に磁気要素12を支持し、コントローラ24に連動し、そして、次に、サポートが、磁気要素12に初期サポートをもたらすのに使用されるときは必ず、取り外すことによって開始することができる。たとえば、システム10は、図5に示されるように降下位置42Aと上昇位置42Bとの間を、磁石14,16に対して移動可能である非磁気サポート40を含むことができる。サポート40が上昇位置42Bにあるとき、それは、平衡な位置13に磁気要素12を支持する。システム10が、平衡な位置13に磁気要素12を維持するために作動後、サポート40は、位置42Aに降下されることが可能である。
【0041】
サポート40は、アーム、テーブル、コラムなどを備えることができる。サポート40は、それが平衡な位置13に、あるいは、近くに、磁気要素12を支持する第1の位置決めと、それが平衡な位置13から常道を離れる第2の位置決めとの間を移動可能である。あらゆる適切なメカニズムは、サポート40が第1の位置決めと第2の位置決めとの間を移動することを可能にするために設けられることができる。そのメカニズムは、たとえば、1つ以上のヒンジ、ピボット、スライド部材、フレキシブルな部材などを備えることができる。
【0042】
図1Bに示されるように、システム10は、任意に、1つ以上の二次電磁石22′を含むことができる。二次電磁石22′は、さらに、磁気要素12を安定するのに使用することができる。一例を挙げれば、z軸まわりに対称であり、そして、平面18に平衡に位置する電磁石は、磁石14,16からの静磁場を増加するz軸に平行な磁場勾配を生成することが可能である。この磁場勾配は、z軸に平行な方向における磁気要素12への力を生成する。その力の大きさおよび方向は、二次電磁石22′内を流れる電流によって制御される。z軸に沿う磁気要素のモーションを検出するように方向付けられる二次センサ26Bは、二次コントローラ24Bにフィードバックをもたらす(それは、コントローラ24をもたらすのに使用されるのと同じハードウェア/ソフトウェアによって供給される独立制御経路であり得る、あるいは、分離独立コントローラであり得る)。コントローラ24Bは、二次電磁石22′内の電流フローを制御する。その二次電磁石システムは、z軸に沿う磁気要素12の震動を緩和するのに、あるいは、磁気要素12に平衡な位置13まわりの+z方向、または、−z方向に移動することをもたらすのに使用することができる。適切な速度で二次電磁石22′内の電流のフローを繰り返して逆にすることによって、コントローラ24Bは、磁気要素12にz軸に沿って平衡な位置13まわりに振動することをもたらすことを可能にする。
【0043】
適切なフィードバックセンサを有する他のオリエンテーションでの電磁石は、適切なコントローラとともに供給されることができ、y軸に沿って磁気要素12に力をもたらす、あるいは、磁気要素12に磁気トルクをもたらす。この方法で、空中浮揚した要素は、限定した程度に、平衡な位置まわりに操縦されることが可能である、あるいは、ある方向に震動させることが可能である。
【0044】
システム10は、磁気要素12を活動させる、あるいは、照明するためのメカニズムを含むことができる。図6は、新型おもちゃ50を示しており、それは、磁気要素12を活動させるメカニズムと、磁気要素を照明するシステムとを含む。図6は、明確化のために磁気要素12を空中に浮揚するメカニズムの詳細を省略している。空中浮揚メカニズムは、ベース17内に封入されている。
【0045】
おもちゃ50において、磁気要素12は、ヘリコプターの胴体に類似する軽量シェル52を備えている。永久磁石54は、シェル52内に取り付けられている。磁石54は、平衡な位置に磁気要素12を空中浮揚するために、上記に説明されるように、空中浮揚システムと相互に作用する。おもちゃ50は、アニメーションメカニズム60を含む。アニメーションメカニズム60は、ロータ56を駆動する小さいモータ62を含む。モータ62は、高周波結合システムによって供給される電力によって動力が与えられる。その結合システムは、空心変成器を備えることができる。ベース17に取り付けられる伝送コイル66は、高周波(たとえば、無線周波)電気信号で励磁される。伝送コイル66によって出される信号は、磁気要素12内の受容コイル67に結合される。これにより、受容コイル67に電流を誘導する。その電流は、モータ62を駆動する電気を生成するために、整流回路68によって整流される。整流回路68からの電気は、モータ62以外の、あるいは、モータ62に加えて、電気装置に動力を与えるのに使用することができる。たとえば、その電気は、小さなランプ(たとえば、発光ダイオード(LEDs)でよい)を作動するのに使用されることが可能である。
【0046】
おもちゃ50は、さらに、照明システム70を含む。照明システム70は、ベース17に高輝度光源72を備えている。光源72は、光のビーム73を生成する。ビーム73は、磁気要素12の光受容器74を照明する。例示した実施形態において、光受容器74は、ビーム73からの光を一束の光ファイバ76に集束するレンズ75を備えている。光ファイバ76は、ナビゲーション灯などに対応するシェル52のロケーションに延入する。ビーム73は、それがおもちゃ50を監視する人にたやすく見えないようにしっかりと閉じ込まれるのがよい。ミラー、ディフーザ−、あるいは、他の光学部材は、光ファイバ76の代わりに、あるいは、光ファイバ76に加えて、磁気要素12の表面形体を照明するために光受容器74からの光を方向付けるのに使用することができる。
【0047】
コンポーネント(たとえば、磁石、アセンブリ、装置、回路など)は、上記に言及されているが、特に明記されなければ、そのコンポーネントへの言及(“手段”への言及を含む)は、そのコンポーネントの同等物として、説明したコンポーネントの機能を行う(すなわち、それは、機能的に同等である)あらゆるコンポーネントを含むように解釈されるべきであり、本発明の図示した例示的な実施形態における機能を行う開示した構造に構造上同等でないコンポーネントを含む。
【0048】
前述の開示を鑑みて当業者には明らかなように、多くの変更および修正は、本発明の精神、あるいは、範囲から逸脱することなく、本発明の実施において可能である。たとえば、
・例示した実施形態において、磁石14,16の磁気双極子モーメントは、互いに平行である。本発明のいくつかの実施形態において、磁石14および/または16は、それらの磁気双極子モーメントが、平面18に対して鋭角に位置するように方向付けられる。
・例示した実施形態において、磁石14,16の最上層極は、同一平面上にあり、そして、すべて、平面18に近接して位置する。磁石14,16は、必ずしも同一平面上でない。
・例示した実施形態において、磁石14,16の“N”極は、平衡な位置13に面する。磁石14,16の極性は、磁石14,16の“S”極が平衡な位置13に面するように逆にされることが可能である。
・制御コイル22は、複数のディスクリートコイルから必ずしも形成されない。シングル巻線は、多数のディスクリートコイルによってもたらされる磁場とほぼ同じ磁場をもたらすように配列することができる。
・リング31と同心の磁気双極子の付加的なリングが設けられることができる。1つまたは複数のリングは、異なる直径のリングがある平衡な位置13において、dB(30)z/dz=0である磁場を生成することは好ましいので、各リングは、dB(30)z/dz=0を保持するために、平衡な位置13から異なる間隔に位置することが好ましい。
・リング31は、ディスクリート双極子の代わりに、1つ以上のリング磁石を備えることができる。
・磁石14および/または磁石16は、類似の磁場を生成する対称的に配列したより小さい磁石の配置と置き換えられることが可能である。とはいえ、磁石によって占められるスペースを最小にするように、多いのではなくて、小数のディスクリート磁石を使用することは、一般に好ましい。
・コイル22は、矩形であるように例示されているのに対して、他のコイルの形状が、さらに、磁気要素12の安定磁気力を生成するのに使用されることが可能である。たとえば、コイルは、図8Aのコイル22E,22Fのように三角形、あるいは、図8Bの22G,22Hのように半円形でよい。
・あらゆる適切な非接点センサが、センサ26に使用することができる。センサ26は、たとえば、適切な光学センサ、容量性センサ、あるいは、他のセンサを備えることが可能である。センサ26は、あらゆる適切な方法で不安定な軸に沿う磁気要素12の位置を検出することができる。好ましい実施形態において、センサ26は、平面18と平衡な位置13との間の間隔に等しい間隔だけ平衡な位置13から移動されるロケーションから、不安定な軸に沿う磁気要素12のモーションを検出することが可能なタイプのものである。
【0049】
それゆえに、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される内容により解釈されるべきである。
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対するクロスリファレンス]
本出願は、2002年9月27日出願の米国特許出願第60/413,881号からの優先権を主張する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、磁気要素を空中に浮揚する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
空中浮揚した物体は、観察するのに関係し、そして、様々な適用に有用することが可能である。磁場は、磁気物体を空中に浮揚するのに使用されることが可能な1つのツールを提供する。アーンショウ(Earnshaw)の定理によれば、静磁場だけを使用して安定状態に磁気物体を支持することができない。アーンショウ(Earnshaw)の定理の1つの供述によると、空中浮揚した磁石は、静磁気力、あるいは、重力のあらゆる組合せによって安定平衡に保持されることができない。
【0004】
特許文献1のホワイトヘッド(Whitehead)は、分離平面の1つの側の磁石の配列により、分離平面の対抗する側に空中浮揚した磁気要素を支持することが可能である磁気空中浮揚システムを開示している。その磁気配列は、安定平面に平行な方向における空中浮揚した要素の移動のために、空中浮揚した要素と静磁場との間の磁気相互作用の位置エネルギーが増大するように静磁場をもたらす。その磁気配列は、安定平面に直交する方向に空中浮揚した要素を安定させるために、可変磁場である可変力を制御する制御システムを含む。
【0005】
本発明者達は、ホワイトヘッド(Whitehead)によって開示される実施形態によって生成される磁場が、トルクを空中浮揚した磁気要素に印加することが多いことを測定した。これは、空中浮揚した磁気要素の磁気双極子が、静磁場とほぼ整列するのに対して、“不安定な”方向における空中浮揚した磁気要素の位置を制御するのに使用される可変磁場は、空中浮揚した磁気要素の平衡な位置における静磁場にほぼ垂直に方向付けられるからである。このトルクによって引き起こされる回転は、空中浮揚した要素のねじれ振動と並進振動との組合せへと導くことが可能である。場合によっては、これは、安定フィードバック制御、したがって、空中浮揚した磁気要素の安定性に悪影響を及ぼす。
【0006】
空中浮揚した磁気要素の増大した安定性などの好ましい操作特性を有する、および/または、構造が簡単である、ホワイトヘッド(Whitehead)によって開示される一般的タイプの磁気空中浮揚システムが必要とされている。特定の適用のために、磁気材料の量の減少を組み込み、そして、比較的低コストで作られることが可能な上述の空中浮揚システムが特に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,168,183号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の1つの態様は、磁気要素を空中に浮揚する装置を提供する。その装置は、磁気要素との相互作用の位置依存位置エネルギーをもたらす静磁場を生成するように配列される少なくとも2つの磁石を備えている。特定の実施形態において、その少なくとも2つの磁石は、ダイヤモンドパターンに配列される4つの磁石を含む。静磁場は、平衡な位置をもたらし、そこにおいて、位置エネルギーが、不安定な軸に沿う平衡な位置から離れる磁気要素の移動のために減少し、そして、不安定な軸に直交するあらゆる方向に平衡な位置から離れる磁気要素の移動のために増大する。その装置は、不安定な軸の磁気要素のロケーションを示すフィードバック信号を生成する位置決めセンサと、電磁石であり、その電磁石を通る電流の通過時制御磁場を生成するように構成され、その制御磁場が、平衡な位置における不安定な軸に沿う移動に対して勾配(gradient)を有する、電磁石と、磁気要素が平衡な位置の付近を離れることを防止するために、フィードバック信号を受信し、そして、電磁石内の電流を制御するために接続されるコントローラとを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、電磁石は、不安定な軸に平行する軸に沿って一定の間隔が開けられる少なくとも2つのコイルを備える。たとえば、その電磁石は、不安定な軸に平行する軸に沿って一定の間隔が開けられる4つのコイルを備え、その4つのコイルを通る電流の通過時、4つのコイルのそれぞれが、4つのコイルの隣接したものの磁気極性に対向する磁気極性を有する。
【0010】
特定の実施形態は、その少なくとも2つの磁石が、不安定な軸に平行な方向に、第1の間隔D1だけ互いに離れて一定の間隔が開けられる第1の磁石および第2の磁石と、不安定な軸に横向きの方向に、第2の間隔D2だけ互いに離れて一定の間隔が開けられる第3の磁石および第4の磁石とを備え、その場合、D1<D2であり、第1の磁石および第2の磁石のそれぞれは、少なくとも2つの磁石の対称の軸から等距離であり、そして、第3の磁石および第4の磁石のそれぞれは、対称の軸から等距離である、装置を提供する。第1の磁石、第2の磁石、第3の磁石および第4の磁石のそれぞれは、平衡な位置の方へ向って面する第1の磁極と、平衡な位置から離れて面する第2の磁極とを有することができる。第1の磁石、第2の磁石、第3の磁石および第4の磁石の第1の磁極は、ほぼ同一平面上にあるのがよい
本発明の別の態様は、磁気要素を空中に浮揚する装置を提供する。その装置は、磁気要素との相互作用の位置依存位置エネルギーをもたらす静磁場を生成する手段を備え、その静磁場が、平衡な位置をもたらし、そこにおいて、位置エネルギーが、不安定な軸に沿う平衡な位置から離れる磁気要素の移動のために減少し、そして、不安定な軸に直交するあらゆる方向に平衡な位置から離れる磁気要素の移動のために増大する。その装置は、さらに、不安定な軸上の磁気要素のロケーションを示すフィードバック信号を生成する手段と、そのフィードバック信号に応じて平衡な位置における四極子制御磁場をもたらすことによって、磁気要素を平衡な位置に方向付ける制御手段とを備えている。
【0011】
本発明のさらなる態様および本発明の特定の実施形態の特徴は、以下に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1つの実施形態による磁気空中浮揚システムの部分略図である。
【図1A】本発明の別の実施形態による磁気空中浮揚システムの部分略図である。
【図1B】本発明の別の実施形態による磁気空中浮揚システムの部分略図である。
【図2A】図1のシステムのx軸,y軸およびz軸にそれぞれに沿う空中浮揚した磁気要素の平衡な位置からの移動に伴う磁気位置エネルギーの変動を示すプロットである。
【図2B】図1のシステムのx軸,y軸およびz軸にそれぞれに沿う空中浮揚した磁気要素の平衡な位置からの移動に伴う磁気位置エネルギーの変動を示すプロットである。
【図2C】図1のシステムのx軸,y軸およびz軸にそれぞれに沿う空中浮揚した磁気要素の平衡な位置からの移動に伴う磁気位置エネルギーの変動を示すプロットである。
【図3】平衡な位置において四極子磁場を生成するように配列される制御コイルを有する磁気空中浮揚システムの平面図である。
【図4】回転に対する空中浮揚した磁気要素の安定性を改善するために磁石を有する磁気空中浮揚システムの平面図である。
【図5】平衡な位置近くに磁気要素を支持する可動プラットフォームを有する磁気空中浮揚システムの側面図である。
【図6】空中浮揚した物体を照明し、そして、活動させるメカニズムを示す。
【図7】本発明の実施形態の制御コイルを通るx−z平面についての断面図である。
【図8A】本発明の別の実施形態によるコイル形状を示す。
【図8B】本発明の別の実施形態によるコイル形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明を通して、明確な詳細が、本発明のより充分な理解を与えるために述べられている。とはいえ、本発明は、これらの詳細がなくても実行できる。他の例では、周知の要素は、本発明を不必要に分かりにくくすることを回避するために、詳細に示されていないし、あるいは、説明されていない。ゆえに、明細書および図面は、制約する意味ではなく、例を示すように考慮されるべきである。
【0014】
図1は、本発明による磁気空中浮揚システム10を示している。平衡な位置13に磁気要素12を空中浮揚するシステム10が示されている。磁気要素12は、1つの磁気双極子、あるいは、一続きの磁気双極子を備えている。磁気要素12は、空中に浮揚される軽量本体に取り付けられる永久磁石を備えることができる。
【0015】
システム10は、間隔D1だけ離れて一定の間隔が開けられる第1の一対の磁石14(個々には、14A,14B)と、間隔D2だけ離れて一定の間隔が開けられる第2の一対の磁石16(個々には、16A,16B)とを備え、その場合、D2>D1である。本発明の一般に好ましい実施形態において、D2対D1の割合は、1.5:1〜2:2の範囲内である。
【0016】
磁石14よりさらに離れている磁石16は、磁石14のものよりも大きい、あるいは、磁石14のものと等しい双極子モーメントを有することが好ましい。磁石16の磁気双極子モーメントは、磁石16がないときに存在する磁場の力線の好ましくない湾曲を実質的に妨げるほど充分に大きいが、平衡な位置13への磁石14の接近のためにずっと高い勾配を有する強力でない磁石14の空中浮揚磁場を妨げるほど大きくないことが好ましい。磁石14A,14Bは、互いに同じ磁気の強さを有し、そして、磁石16A,16Bは、互いに同じ磁気の強さを有することが好ましい。磁石14の強さM14は、磁石16の強さM16未満か、あるいは、磁石16の強さM16に等しいことが好ましい。M16対M14の割合は、本発明のいくつかの実施形態においては、1対1から2対1の範囲内である。
【0017】
磁石14は、磁石14A,14Bが、第1の軸に配置され、そして、磁石16A,16Bが、第1の軸に直交する第2の軸に配置されるように配列されることが理想である。以下の説明において、磁石14,16は、すべて平面18に近接するように示されている。平面18で直交するx軸,y軸と、平面18に垂直なz軸とを有するデカルト座標系は、磁石14,16に対して対称的に位置するその原点を有する。x軸は、磁石14を延通し、そして、y軸は、磁石16を延通する。例示したシステム10の座標系のz軸は、システム10の対称軸をもたらす。z軸は、平面18から離れた間隔D3である平衡な位置13を延通する。
【0018】
図1は、磁石14,16が直交軸に位置する理想的なケースを示すのに対して、この理想的な配列からの多少のずれは、本発明から逸脱することなく可能である。例示した実施形態において、磁石14,16は、ダイヤモンドパターンに配列されている。デカルト座標系の確立は、例示した装置の形状を説明する際における便宜のためだけに行われている。他の座標系が使用されることが可能である。
【0019】
磁石14,16は、磁石14,16と、磁気要素12がシステム10によって空中に浮揚されることが可能な平衡な位置13との間の間隔と比べて、サイズが小さいことが好ましい。この場合、磁石14,16のそれぞれは、磁石14、あるいは、16のロケーションにおける単一の磁気双極子によって生成される磁場とほぼ同じ平衡な位置13における磁場を生成する。
【0020】
図1に示される実施形態において、磁石14,16は、すべて、z軸に平行である同じ方向に分極される。図1Aは、本発明の別の方法の実施形態を概略的に示し、磁石14のそれぞれは、角度φ1で、z軸の方に向って傾斜され、そして、磁石16のそれぞれは、角度φ2で、z軸の方に向って傾斜されている。いくつかの実施形態において、φ1=φ2である。他の実施形態において、φ1およびφ2は、互いに異なる。図1Aに示されるように、z軸の方へ向って磁石14および/または16を傾斜することは、1つ以上の他の方向における安定性の減少を犠牲にして、1つの方向におけるモーションに対して磁気要素12の空中浮揚における多少のスチフネス(stiffness)を得ることが多い。
【0021】
磁石14,16は、第1の方向(たとえば、+z方向)に方向付けられる第1の極性の極(たとえば、N)と、第1の方向(たとえば、−z方向)に対向する第2の方向に方向付けられる第2の極性の極(たとえば、S)とを有する。
【0022】
あらゆる適切な磁石は、磁石14,16に使用できる。磁石14,16は、たとえば、永久磁石、あるいは、電磁石を備えている。システム10が、電池、あるいは、総容量、あるいは、ピーク電力によって限定される別の電源装置によって動力が与えられる場合、あるいは、システム10の電力消費量を最小にすることが好ましいという場合には、磁石14,16は、永久磁石が好ましい。いくつかの実施形態において、磁石14,16は、NdFeB磁石、バリウムフェライト(Barium Ferrite)磁石、サマリウムコバルト(Samarium Cobalta)磁石、あるいは、AlNiCo磁石を備えている。磁石14,16は、それぞれ、一続きの磁気双極子を備えている。
【0023】
例示した実施形態において、平衡な位置13に最も近い磁石14,16の極は、同一平面上にあり、そして、すべては、平面18にすぐ近くに近接して位置する。磁石14,16は、ベース17内に取り付けられることができる(図1B,図5および図6を参照)。磁石14,16およびベース17は、z方向に薄い。いくつかの実施形態において、ベース17は、かなりD3未満である厚さを有する。たとえば、ベース17は、1/2×D3またはそれ以下の厚さを有する。
【0024】
磁石14,16は、平衡な位置13で空中浮揚状態に磁気要素12を支持する静磁場を生成する。その静磁場は、空中浮揚した磁気要素12と静磁場との間の磁気相互作用の位置エネルギーが、安定平面20(図1にy−z平面として示される)に平行な方向に平衡な位置13から、空中浮揚した磁気要素12の小さな移動のために増大するように勾配を有する。
【0025】
図2A,2B,2Cは、x軸、y軸およびz軸それぞれに沿う移動のために磁気要素12の位置決めに伴う磁気位置エネルギーの変動を示す。磁気位置エネルギーは、y軸およびz軸のいずれにも沿って平衡な位置13から離れる移動のために増大するということが分かった。磁気要素12は、その結果、これらの軸に沿う移動に対して安定である。これに反して、磁気位置エネルギーは、x軸に沿ういずれもの方向に平衡な位置13から離れる移動のために減少する。磁気要素12は、その結果、x軸に沿う平衡な位置13からの移動に対して不安定である。
【0026】
システム10は、コントローラ24(図1)の制御のもとに、可変磁場を生成する制御コイル22(個々には、22A,22B)を含む。磁気要素12が、その空中浮揚した平衡位置決め13から離れて移動するとき、コントローラ24は、制御コイル内の電流の1つまたは複数のフローを調整し、制御コイル22に、磁気要素12に印加される力を結果として生じる磁場を生成させる。その力は、不安定なx軸に沿う選択した方向に磁気要素12を押圧する。制御コイル内の電流の通過によって生成される可変磁場は、x軸の方向におけるモーションに対して、空中浮揚した磁気要素12を安定させる。図1に示される実施形態において、コイル22A,22Bは、互いに近接し、x軸に沿って離れて一定の間隔が開けられるそれらのセンターを有し、コイル22のそれぞれは、磁石14の1つを囲む。
【0027】
位置決めセンサ26は、コントローラ24に、不安定なx軸の空中浮揚した磁気要素12の移動を表わす信号を供給する。例示した実施形態において、センサ26は、平衡な位置13の真下のシステム10の対称のセンターに位置する。位置決めセンサ26は、たとえば、ホール効果センサを備えることができる。ホール効果センサは、x軸に平行な方向に、空中浮揚した磁気要素12からの磁場の強さを検出するように方向付けられることができる。磁気要素12は、平衡な位置13に位置するとき、その場合、磁気要素12の磁気双極子は、z軸に平行に方向付けられる、静磁場と整列される。磁気要素12の磁気双極子は、センサ26のロケーションにおけるx軸に平行な方向に正味磁場コンポーネントを生じない。磁気要素12が、いずれもの方向に不安定なx軸に沿って移動する場合、その場合、センサ26で検出されるように、磁気双極子からの磁場は、平衡な位置13から磁気要素12の増大する移動とともに増大するx方向にゼロでないコンポーネントを有する。したがって、ホール効果センサ26によって出力される信号は、不安定なx軸に沿う磁気要素12の位置決めに関して、コントローラ24にフィードバックを供給するのに使用されることが可能である。
【0028】
コントローラ24は、平衡な位置13に空中浮揚した磁気要素12を維持するためにコイル22内の電流を調整する。コントローラ24は、コンピュータ、プログラマブルコントローラ、あるいは、ディジタル信号プロセッサ、あるいは、適切なアナログ、または、ディジタルフィードバック制御回路などの適切にプログラムしたデータプロセッサを含むあらゆる適切な制御技術を備える。
【0029】
磁気要素12が安定して空中に浮揚される平衡な位置13と、磁石14,16に近接した平面18との間の間隔D3は、磁石14Aと磁石14Bとの間の間隔D1を調整することによって変えられることができる。磁気要素12が、空中に浮揚されている間にわずかに間隔D1を減少することにより、間隔D3を減少させると同時に、安定平面20(すなわち、図1におけるy−z平面)における平衡な位置13からの移動に対して磁気要素12の安定性を増大する。磁気要素12が、空中に浮揚されている間にわずかに間隔D1を増大することにより、間隔D3を増大させると同時に、安定平面20における平衡な位置13からの移動に対して磁気要素12の安定性を減少する。
【0030】
平衡な位置13は、磁石14,16の静磁場が、コイル22内を流れる電流がないとき、平衡な位置13における磁気要素12への重力を妨げるために充分な力をもたらすような位置決めであることが好ましい。磁気要素12は、x方向に不安定である。コイル22は、平衡な位置13から離れる磁気要素12のx方向におけるあらゆる動きを妨げるように操作される。そのような実施形態において、磁気要素12が、平衡な位置13から離れて、動いたとき、あるいは、動いているとき、電流をコイル22内に流させることが必要なだけである。これにより、平衡な位置13に磁気要素12を安定させるのに必要とされる電力消費量を最小にすることを可能にさせる。
【0031】
制御コイル22は、それらが不安定なx軸の磁気要素12の位置決めを制御するほど充分な磁場勾配(dBz/dx)を平衡な位置13近くにもたらすように操作されることが可能なように配列される。コイル22の寸法およびロケーションは、コイル22によって生成される磁場の大きさが平衡な位置13の付近においてきわめて小さいように選択されることが利点である。これにより、磁気要素12を回転することが多い磁気要素12のロケーションにおいてかなりの横方向磁場コンポーネントを導入することなく磁気要素12の安定性を可能にする。実際問題として、x方向,y方向およびz方向におけるコイル22からの磁場のコンポーネントが、平衡な位置13において実用的なように小さいのに対して、x軸の磁気要素12の位置決めを制御するために、充分な力をもたらすほどに充分に大きい勾配(dBz/dx)をx方向に有するということは好ましい。
【0032】
図3は、平衡な位置13の付近においてコイル22からの磁場を最小にする制御コイル22の1つの形状を有するシステム10Aを示している。同じ参照符号が、システム10Aのパーツを示すのに使用され、それは、図1のシステム10にも見られる。システム10Aは、4つのコイル22、すなわち、コイル22A,22B,22C,22Dを有する。コイル22Aから22Dは、平面18に平行に、かつ、互いに平行に配列される矩形のコイルである。コイル22Aから22Dの長側面は、y軸に平行に、かつ、不安定なx軸に横方向に延在する。コイル22Aから22Dは、x軸に沿って対称的に配列されている。磁石14A,14Bは、示されるように、それぞれに、コイル22A,22B内にある。コイル22Aから22Dは、y−z安定平面に対して対称的に位置する。コイル22A,22Bは、互いに近接し、コイル22A,22Cは、互いに近接し、そして、コイル22B,22Dは、互いに近接することが理想的である。コイル22C,22Dは、x軸に平行なそれらの寸法がコイル22A,22Bより幅広いことが好ましい。例示した実施形態において、コイル22Aは、コイル22Bと同じ寸法を有し、そして、コイル22Cは、コイル22Dと同じ寸法を有する。
【0033】
平面18に平行なコイル22によって生成される磁場の少なくともこれらのコンポーネントが、平衡な位置13の少なくとも付近において実質的に互いに相殺することが好ましい。この結果は、コイル22の寸法を適切に選択し、そして、適切な方向に、コイル22Aを通って適切な1つまたは複数の電流を通すことによって生成できる。電流は、磁石12に安定磁気力を生成するために、対向する方向に、内側のコイル22A,22Bを通過する。電流が時計回りの方向にコイル22Aを通過する場合、電流はコイル22Bを逆時計回りに通過する必要がある。同時に、コイル22C内の電流のフローは、逆時計回りであり、そして、コイル22D内の電流のフローは、時計回りである。これにより、不安定なx軸に沿う1つの方向に磁気要素12を押し進めるために力を印加する安定磁場を生成する。不安定なx軸に沿う対向する方向に磁気要素12を押し進めるために力を印加する安定磁場を生成するために、電流がコイル22のそれぞれに流れる方向は、逆にされることが可能である。
【0034】
図3に示されるコイル22の配列は、コイル22が、巻線の等しい数と、適切な寸法とを有し、そして、各コイル内において正確な方向に流れる等しい電流を搬送するとき、平衡な位置13において磁気四極子磁場を生成する。磁気四極子は、磁場の大きさがゼロであるのに対して、磁場の勾配が線形であり、そして、ポイントまわりに対称である、スペースにおいてポイントである。この場合、コイル22は、磁気要素12に印加される安定磁気力を生じる。磁気要素12に印加される安定力の大きさは、磁気要素12のロケーションにおける磁場の勾配dBz/dxの大きさに比例する。
【0035】
図7は、コイル22を通るx−z平面についての断面図である。平衡な位置13において四極子磁場を生成するためのコイル22については、コイル22A,22Bは、等しい幅W1を有し、コイル22C,22Dは、等しい幅W2を有することと、W1は、W1=D3およびW2≧D3によって、W2および間隔D3に相関していることとが好ましい。コイル22のすべては、同じ長さを有することがよい。不安定なx軸に対して横に作用する方向における各コイル22の長さは、その幅よりも大きい。
【0036】
コントローラ24は、磁気要素12が平衡な位置13の付近にあるとき、センサ26によって検出されないことに備えて、システム10の操作を抑制することが好ましい。たとえば、磁気要素12が機能を停止する場合、コントローラ24がコイル22を通して電流を通すことによって、磁気要素12の位置決めを補正しようとすることを防止することが好ましい。これは、エネルギーを消耗し、コイル22を過熱させ、極論すれば、コイル22に電力を供給する制御回路を損傷する可能性がある。磁気要素12が平衡な位置13の所望の間隔内にないことを、センサ26からの信号が表示するときは必ず、コントローラ24は、不活動モードにスイッチするように構成できる。コントローラ24は、リセットするまで不活動のモード状態のままであるように構成できる。システム10は、コントローラ24をリセットするために、ユーザーによって操作されることが可能なリセットスイッチを含むことができる。
【0037】
ある場合、平衡な位置13における静磁場の強さを増大する付加的な磁石をもたらすことが好ましいことがある。覆すモーメントに対する磁気要素12の安定性は、平衡な位置13における静磁場の強さとともに増大する。これは、磁気要素12の磁気双極子が周囲磁場とそれ自体を整列することが多いからである。磁気要素12の磁気双極子が、磁場と調整不良になる場合、その場合、磁気要素12は、補正トルクを受ける。補正トルクの大きさは、磁気要素12のロケーションにおける磁場の強さに比例する。
【0038】
図4は、平衡な位置13における磁場の強さを増大するが、平衡な位置13に磁気要素12維持するのに使用される力を生成する磁場勾配に悪影響を及ぼさない付加的な磁石30の配列を示す。付加的な磁石30は、リング31に配置される。各付加的な磁石30は、磁石14と同じ方向に方向付けられる磁気双極子をもたらす。
【0039】
リング31は、平面18内に、あるいは、平面18に平行な平面内に位置する。平衡な位置13は、リング31のセンターからリング31の平面に直交して延在するライン上に位置する。リング31の半径は、磁石30によって生成される磁場のzコンポーネントが平衡な位置13においてz方向に実質的に勾配を持たないように選択され(すなわち、平衡な位置13において、dB(30)z/dz=0)、式中、B(30)zは、磁石30によって生成される磁場のzコンポーネントである。この状況において、“実質的に勾配がない”ということは、磁気要素12に、平衡な位置13において空中に浮揚させる磁石14,16によって生成される静磁場の勾配よりも少なくともかなり小さい、好ましくは、その静磁場の勾配の25%未満、そして、最も好ましくは、7%未満である勾配を意味する。z軸まわりのリング31内の磁石の対称によって、磁気要素12にあらゆる方向であるが、z軸に平行にそれ自体を整列させる平衡な位置13における磁石30によって生成される磁場の正味水平コンポーネントがない。
【0040】
システム10は、最初は、平衡な位置13の付近に磁気要素12を支持し、コントローラ24に連動し、そして、次に、サポートが、磁気要素12に初期サポートをもたらすのに使用されるときは必ず、取り外すことによって開始することができる。たとえば、システム10は、図5に示されるように降下位置42Aと上昇位置42Bとの間を、磁石14,16に対して移動可能である非磁気サポート40を含むことができる。サポート40が上昇位置42Bにあるとき、それは、平衡な位置13に磁気要素12を支持する。システム10が、平衡な位置13に磁気要素12を維持するために作動後、サポート40は、位置42Aに降下されることが可能である。
【0041】
サポート40は、アーム、テーブル、コラムなどを備えることができる。サポート40は、それが平衡な位置13に、あるいは、近くに、磁気要素12を支持する第1の位置決めと、それが平衡な位置13から常道を離れる第2の位置決めとの間を移動可能である。あらゆる適切なメカニズムは、サポート40が第1の位置決めと第2の位置決めとの間を移動することを可能にするために設けられることができる。そのメカニズムは、たとえば、1つ以上のヒンジ、ピボット、スライド部材、フレキシブルな部材などを備えることができる。
【0042】
図1Bに示されるように、システム10は、任意に、1つ以上の二次電磁石22′を含むことができる。二次電磁石22′は、さらに、磁気要素12を安定するのに使用することができる。一例を挙げれば、z軸まわりに対称であり、そして、平面18に平衡に位置する電磁石は、磁石14,16からの静磁場を増加するz軸に平行な磁場勾配を生成することが可能である。この磁場勾配は、z軸に平行な方向における磁気要素12への力を生成する。その力の大きさおよび方向は、二次電磁石22′内を流れる電流によって制御される。z軸に沿う磁気要素のモーションを検出するように方向付けられる二次センサ26Bは、二次コントローラ24Bにフィードバックをもたらす(それは、コントローラ24をもたらすのに使用されるのと同じハードウェア/ソフトウェアによって供給される独立制御経路であり得る、あるいは、分離独立コントローラであり得る)。コントローラ24Bは、二次電磁石22′内の電流フローを制御する。その二次電磁石システムは、z軸に沿う磁気要素12の震動を緩和するのに、あるいは、磁気要素12に平衡な位置13まわりの+z方向、または、−z方向に移動することをもたらすのに使用することができる。適切な速度で二次電磁石22′内の電流のフローを繰り返して逆にすることによって、コントローラ24Bは、磁気要素12にz軸に沿って平衡な位置13まわりに振動することをもたらすことを可能にする。
【0043】
適切なフィードバックセンサを有する他のオリエンテーションでの電磁石は、適切なコントローラとともに供給されることができ、y軸に沿って磁気要素12に力をもたらす、あるいは、磁気要素12に磁気トルクをもたらす。この方法で、空中浮揚した要素は、限定した程度に、平衡な位置まわりに操縦されることが可能である、あるいは、ある方向に震動させることが可能である。
【0044】
システム10は、磁気要素12を活動させる、あるいは、照明するためのメカニズムを含むことができる。図6は、新型おもちゃ50を示しており、それは、磁気要素12を活動させるメカニズムと、磁気要素を照明するシステムとを含む。図6は、明確化のために磁気要素12を空中に浮揚するメカニズムの詳細を省略している。空中浮揚メカニズムは、ベース17内に封入されている。
【0045】
おもちゃ50において、磁気要素12は、ヘリコプターの胴体に類似する軽量シェル52を備えている。永久磁石54は、シェル52内に取り付けられている。磁石54は、平衡な位置に磁気要素12を空中浮揚するために、上記に説明されるように、空中浮揚システムと相互に作用する。おもちゃ50は、アニメーションメカニズム60を含む。アニメーションメカニズム60は、ロータ56を駆動する小さいモータ62を含む。モータ62は、高周波結合システムによって供給される電力によって動力が与えられる。その結合システムは、空心変成器を備えることができる。ベース17に取り付けられる伝送コイル66は、高周波(たとえば、無線周波)電気信号で励磁される。伝送コイル66によって出される信号は、磁気要素12内の受容コイル67に結合される。これにより、受容コイル67に電流を誘導する。その電流は、モータ62を駆動する電気を生成するために、整流回路68によって整流される。整流回路68からの電気は、モータ62以外の、あるいは、モータ62に加えて、電気装置に動力を与えるのに使用することができる。たとえば、その電気は、小さなランプ(たとえば、発光ダイオード(LEDs)でよい)を作動するのに使用されることが可能である。
【0046】
おもちゃ50は、さらに、照明システム70を含む。照明システム70は、ベース17に高輝度光源72を備えている。光源72は、光のビーム73を生成する。ビーム73は、磁気要素12の光受容器74を照明する。例示した実施形態において、光受容器74は、ビーム73からの光を一束の光ファイバ76に集束するレンズ75を備えている。光ファイバ76は、ナビゲーション灯などに対応するシェル52のロケーションに延入する。ビーム73は、それがおもちゃ50を監視する人にたやすく見えないようにしっかりと閉じ込まれるのがよい。ミラー、ディフーザ−、あるいは、他の光学部材は、光ファイバ76の代わりに、あるいは、光ファイバ76に加えて、磁気要素12の表面形体を照明するために光受容器74からの光を方向付けるのに使用することができる。
【0047】
コンポーネント(たとえば、磁石、アセンブリ、装置、回路など)は、上記に言及されているが、特に明記されなければ、そのコンポーネントへの言及(“手段”への言及を含む)は、そのコンポーネントの同等物として、説明したコンポーネントの機能を行う(すなわち、それは、機能的に同等である)あらゆるコンポーネントを含むように解釈されるべきであり、本発明の図示した例示的な実施形態における機能を行う開示した構造に構造上同等でないコンポーネントを含む。
【0048】
前述の開示を鑑みて当業者には明らかなように、多くの変更および修正は、本発明の精神、あるいは、範囲から逸脱することなく、本発明の実施において可能である。たとえば、
・例示した実施形態において、磁石14,16の磁気双極子モーメントは、互いに平行である。本発明のいくつかの実施形態において、磁石14および/または16は、それらの磁気双極子モーメントが、平面18に対して鋭角に位置するように方向付けられる。
・例示した実施形態において、磁石14,16の最上層極は、同一平面上にあり、そして、すべて、平面18に近接して位置する。磁石14,16は、必ずしも同一平面上でない。
・例示した実施形態において、磁石14,16の“N”極は、平衡な位置13に面する。磁石14,16の極性は、磁石14,16の“S”極が平衡な位置13に面するように逆にされることが可能である。
・制御コイル22は、複数のディスクリートコイルから必ずしも形成されない。シングル巻線は、多数のディスクリートコイルによってもたらされる磁場とほぼ同じ磁場をもたらすように配列することができる。
・リング31と同心の磁気双極子の付加的なリングが設けられることができる。1つまたは複数のリングは、異なる直径のリングがある平衡な位置13において、dB(30)z/dz=0である磁場を生成することは好ましいので、各リングは、dB(30)z/dz=0を保持するために、平衡な位置13から異なる間隔に位置することが好ましい。
・リング31は、ディスクリート双極子の代わりに、1つ以上のリング磁石を備えることができる。
・磁石14および/または磁石16は、類似の磁場を生成する対称的に配列したより小さい磁石の配置と置き換えられることが可能である。とはいえ、磁石によって占められるスペースを最小にするように、多いのではなくて、小数のディスクリート磁石を使用することは、一般に好ましい。
・コイル22は、矩形であるように例示されているのに対して、他のコイルの形状が、さらに、磁気要素12の安定磁気力を生成するのに使用されることが可能である。たとえば、コイルは、図8Aのコイル22E,22Fのように三角形、あるいは、図8Bの22G,22Hのように半円形でよい。
・あらゆる適切な非接点センサが、センサ26に使用することができる。センサ26は、たとえば、適切な光学センサ、容量性センサ、あるいは、他のセンサを備えることが可能である。センサ26は、あらゆる適切な方法で不安定な軸に沿う磁気要素12の位置を検出することができる。好ましい実施形態において、センサ26は、平面18と平衡な位置13との間の間隔に等しい間隔だけ平衡な位置13から移動されるロケーションから、不安定な軸に沿う磁気要素12のモーションを検出することが可能なタイプのものである。
【0049】
それゆえに、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される内容により解釈されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気要素を空中に浮揚する装置であって、前記装置が、
縦軸および横軸を有する平面に配置された環状磁石であって、該環状磁石が同一平面から離間した平衡な位置において静磁場を生成するように構成され、該静磁場が平面に対して直交する方向に傾斜する実質的に最小限化された磁場を画定する、環状磁石と、
前記平衡な位置に対する磁気要素の位置を示すフィードバック信号を生成するように構成された位置センサと、
前記位置センサに接続され、平衡な位置に対する磁気要素の動作を制御するための制御磁場を生成するように構成された電磁石と、
位置センサおよび電磁石に接続されたコントローラであって、位置センサからのフィードバック信号を受信し、これに応答する電磁石を制御するように構成されたコントローラとを備えた装置。
【請求項2】
前記環状磁石が、単一の環状磁石からなる請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記環状磁石が、複数の個別の双極子からなる請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記電磁石が、環状磁石と実質的に同一平面に配置されてなる請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記電磁石が、コイルからなる請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記電磁石が、環状磁石内に配置された請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記電磁石および環状磁石と実質的に同一平面に配置された第3の磁石をさらに備えた請求項4記載の装置。
【請求項8】
前記第3の磁石が、第2の電磁石からなる請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記第2の電磁石が、環状磁石内に配置されてなる請求項8記載の装置。
【請求項10】
磁気要素を空中に浮揚する装置であって、前記装置が、
縦軸および横軸を有する平面に配置された環状磁石であって、該環状磁石が同一平面から離間した平衡な位置において静磁場を生成するように構成され、該静磁場が平面に対して直交する方向に傾斜する実質的に最小限化された磁場を画定する、環状磁石と、
前記平衡な位置に対する磁気要素の位置を示すフィードバック信号を生成するように構成された位置センサと、
前記環状磁石と実質的に同一平面に環状磁石内に配置された第1および第2の電磁石であって、該第1および第2の電磁石が前記位置センサに接続され、平衡な位置に対する磁気要素の動作を制御するための制御磁場を生成するように構成された第1および第2の電磁石と、
位置センサおよび第1および第2の電磁石に接続されたコントローラであって、位置センサからのフィードバック信号を受信し、これに応答する第1および第2の電磁石を制御するように構成されたコントローラとを備えた装置。
【請求項1】
磁気要素を空中に浮揚する装置であって、前記装置が、
縦軸および横軸を有する平面に配置された環状磁石であって、該環状磁石が同一平面から離間した平衡な位置において静磁場を生成するように構成され、該静磁場が平面に対して直交する方向に傾斜する実質的に最小限化された磁場を画定する、環状磁石と、
前記平衡な位置に対する磁気要素の位置を示すフィードバック信号を生成するように構成された位置センサと、
前記位置センサに接続され、平衡な位置に対する磁気要素の動作を制御するための制御磁場を生成するように構成された電磁石と、
位置センサおよび電磁石に接続されたコントローラであって、位置センサからのフィードバック信号を受信し、これに応答する電磁石を制御するように構成されたコントローラとを備えた装置。
【請求項2】
前記環状磁石が、単一の環状磁石からなる請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記環状磁石が、複数の個別の双極子からなる請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記電磁石が、環状磁石と実質的に同一平面に配置されてなる請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記電磁石が、コイルからなる請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記電磁石が、環状磁石内に配置された請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記電磁石および環状磁石と実質的に同一平面に配置された第3の磁石をさらに備えた請求項4記載の装置。
【請求項8】
前記第3の磁石が、第2の電磁石からなる請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記第2の電磁石が、環状磁石内に配置されてなる請求項8記載の装置。
【請求項10】
磁気要素を空中に浮揚する装置であって、前記装置が、
縦軸および横軸を有する平面に配置された環状磁石であって、該環状磁石が同一平面から離間した平衡な位置において静磁場を生成するように構成され、該静磁場が平面に対して直交する方向に傾斜する実質的に最小限化された磁場を画定する、環状磁石と、
前記平衡な位置に対する磁気要素の位置を示すフィードバック信号を生成するように構成された位置センサと、
前記環状磁石と実質的に同一平面に環状磁石内に配置された第1および第2の電磁石であって、該第1および第2の電磁石が前記位置センサに接続され、平衡な位置に対する磁気要素の動作を制御するための制御磁場を生成するように構成された第1および第2の電磁石と、
位置センサおよび第1および第2の電磁石に接続されたコントローラであって、位置センサからのフィードバック信号を受信し、これに応答する第1および第2の電磁石を制御するように構成されたコントローラとを備えた装置。
【図1】
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【公開番号】特開2010−88298(P2010−88298A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8439(P2010−8439)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【分割の表示】特願2004−538624(P2004−538624)の分割
【原出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【出願人】(506282366)レビテイション アーツ インコーポレーテッド (1)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【分割の表示】特願2004−538624(P2004−538624)の分割
【原出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【出願人】(506282366)レビテイション アーツ インコーポレーテッド (1)
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