磁気粘性流体を用いた回転制動装置および直動制動装置
【課題】内外に配設された2つの筒体間に磁気粘性流体が充填され、その磁気粘性流体に与える磁場の強さを変えることにより、それら2つの筒体の軸線回りの相対回転を制動する、磁気粘性流体を用いた回転制動装置において、2つの筒体間の隙間を大きくしてもそれらの筒体間の相対回転を効率よく制動する。
【解決手段】同軸線N回りに相対回転自在に内外に配設された内筒10および外筒20と、内筒10と外筒20との間に充填された磁気粘性流体50と、内外筒10,20の半径方向または軸線Nと平行な方向に、磁気粘性流体50に磁場を与えるように設けられた磁場発生装置40と、を備える。そして、内筒10と外筒20との間に転動自在に複数の転動体30が配設されている。
【解決手段】同軸線N回りに相対回転自在に内外に配設された内筒10および外筒20と、内筒10と外筒20との間に充填された磁気粘性流体50と、内外筒10,20の半径方向または軸線Nと平行な方向に、磁気粘性流体50に磁場を与えるように設けられた磁場発生装置40と、を備える。そして、内筒10と外筒20との間に転動自在に複数の転動体30が配設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内外に配設された2つの筒体間に磁気粘性流体が充填され、その磁気粘性流体に与える磁場の強さを変えることにより、それら2つの筒体の軸線回りの相対回転や軸線方向への相対移動を制動する、磁気粘性流体を用いた回転制動装置および直動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気粘性流体は、磁化可能な金属粒子(以下「磁性粒子」という。)を分散媒に分散させてなる液体である。この磁気粘性流体は、磁場の作用のないときには流体として機能する一方、磁場を作用させたときには、磁性粒子がクラスターを形成して液体が増粘し、液体の内部応力が増大する。
【0003】
従来より、磁気粘性流体を用いたロータリダンパが提案されている。例えば、特許文献1に開示されているロータリダンパは、ケーシングと、ロータとの隙間に磁気粘性流体を封入しており、この磁気粘性流体に磁場を与えて所定の粘度を発現させ、ケーシングとロータとの間のずり応力によってロータの回転を制動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−202744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータの回転を十分に制動するには、ケーシングとロータとの間のずり応力を十分に発生させることが前提となる。そのためには、ケーシングとロータとの隙間を小さくして、隙間内の磁気粘性流体に十分な強さの磁場を与えることが必要である。仮に、ケーシングとロータとの隙間を大きくすれば、磁気抵抗が増すため、ケーシングとロータとの間の磁場が弱くなり、十分な制動力が得られなくなってしまう。勿論、コイルに供給する電力を増せば、磁気粘性流体に与える磁場を大きくすることができるが、その分、消費電力が増えてしまう。
【0006】
従来は、このような事情から、ケーシングとロータとの隙間を小さくすることを余儀なくされ、このことが、磁気粘性流体を用いた制動装置の設計の自由度を低下させる大きな要因となっていた。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、内外に配設された2つの筒体間に磁気粘性流体が充填され、その磁気粘性流体に与える磁場の強さを変えることにより、それら2つの筒体の軸線回りの相対回転や軸線方向への相対移動を制動する、磁気粘性流体を用いた制動装置において、2つの筒体間の隙間を大きくしてもそれらの筒体間の相対回転又は相対移動を効率よく制動することができる、磁気粘性流体を用いた回転制動装置および直動制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の磁気粘性流体を用いた回転制動装置は、同軸線回りに相対回転自在に内外に配設された内筒および外筒と、前記内筒と前記外筒との間に充填された磁気粘性流体と、前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられた磁場発生装置と、を備えるものを前提とし、前記内筒と前記外筒との間に転動自在に配設された複数の転動体を備えることを特徴としている。
【0009】
かかる構成を備える磁気粘性流体を用いた回転制動装置によれば、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒の隙間が大きい場合であっても、内外筒間の磁気粘性流体中で磁性粒子がクラスターを形成し、そのクラスターが転動体の回転を阻害するように作用するので、内筒と外筒の相対回転を効率よく制動することができる。
【0010】
例えば、前記磁場発生装置は、前記内外筒の半径方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられたものである。
【0011】
例えば、前記磁場発生装置は、前記軸線に平行な方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられたものである。
【0012】
例えば、前記転動体は磁性体とすることができる。この場合、転動体に磁路が形成され、全体の磁気抵抗が低下することにより、磁性粒子が比較的大きなクラスターを形成でき、より制動効果を高めることができる。
【0013】
例えば、前記転動体は非磁性体とすることができる。この場合、転動体に残留磁気が生じなくなり、基底トルクを低減することができる。
【0014】
本発明の磁気粘性流体を用いた直動制動装置は、同軸線方向に相対移動自在に内外に配設された内筒および外筒と、前記内筒と前記外筒との間に充填された磁気粘性流体と、前記内外筒の半径方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられた磁場発生装置と、を備えるものを前提とし、前記内筒と前記外筒との間に転動自在に配設された複数の転動体を備えることを特徴としている。
【0015】
かかる構成を備える磁気粘性流体を用いた回転制動装置によれば、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒の隙間が大きい場合であっても、内外筒間の磁気粘性流体中で磁性粒子がクラスターを形成し、そのクラスターが転動体の回転を阻害するように作用するので、内筒と外筒の相対移動を効率よく制動することができる。
【0016】
前記直動制動装置において、例えば、前記転動体は磁性体とすることができる。この場合、転動体に磁路が形成され、全体の磁気抵抗が低下することにより、磁性粒子が比較的大きなクラスターを形成でき、より制動効果を高めることができる。
【0017】
前記直動制動装置において、例えば、前記転動体は非磁性体とすることができる。この場合、転動体に残留磁気が生じなくなり、基底推力を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の磁気粘性流体を用いた回転制動装置によれば、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒の隙間が大きい場合であっても、内筒と外筒の相対回転を効率よく制動することができる。また、本発明の磁気粘性流体を用いた直動制動装置によれば、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒の隙間が大きい場合であっても、内筒と外筒の相対移動を効率よく制動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた回転制動装置を軸線を含む平面で切断して表した断面図であって、転動体として球が用いられている場合を示す図である。なお、保持器の図示は省略している。
【図2】図1のA−A断面図であって、転動体が磁性体である場合の磁路等を示す図である。
【図3】図1のA−A断面図であって、転動体が非磁性体である場合の磁路等を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた回転制動装置を軸線を含む平面で切断して表した断面図であって、転動体としてころが用いられている場合を示す図である。なお、保持器の図示は省略している。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた回転制動装置を軸線を含む平面で切断して表した断面図であって、転動体として球が用いられている場合を示す図である。なお、保持器の図示は省略している。
【図6】図5のB−B断面図であって、転動体が磁性体である場合を示す図である。
【図7】図5のB−B断面図であって、転動体が非磁性体である場合を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた回転制動装置を軸線を含む平面で切断して表した断面図であって、転動体としてころが用いられている場合を示す図である。なお、保持器の図示は省略している。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた直動制動装置を軸線を含む平面で切断して表した断面図である。
【図10】図9のC−C断面図である。
【図11】図9のE部拡大図であって、転動体が磁性体である場合の磁路等を示す図である。
【図12】図9のE部拡大図であって、転動体が非磁性体である場合の磁路等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた回転制動装置100を示す断面図であり、図2および図3は、図1のA−A断面図である。
【0021】
回転制動装置100は、内筒10、外筒20、これら内筒10および外筒20間に配設された複数の転動体30、磁場発生装置40、磁気粘性流体50などを備えている。
【0022】
内筒10および外筒20は同じ軸線N回りに相対回転自在に内外に配設されている。内筒10と外筒20との間には、転動体30が周方向に所定間隔をあけて転動自在に配設されている。内筒10の外周および外筒20の内周には、転動体30を周方向に案内する軌道11,21が形成されている。転動体30には、図1に示すように、玉30Aが採用されているが、図4に示すように、ころ30Bが採用されていてもよい。なお、本実施形態では、内筒10、外筒20および転動体30に磁性体が用いられている。
【0023】
回転制動装置100は、複数の転動体30を周方向に一定間隔をあけて保持する保持器60も備えている(図1において保持器の図示省略、図2参照)。この保持器60は、内筒10と外筒20との間において周方向に形成されており、その支持部61にて各転動体30を回転自在に支持している。この保持器60には、非磁性体が用いられることが望ましい。この保持器60としては、周知のラジアル玉軸受などに用いられる保持器と同様のものを採用することができる。また、転動体30としてころ30Bが採用された場合にも、複数のころ30Bを周方向に一定間隔をあけて保持する保持器が設けられることが望ましい。この場合の保持器としては、汎用のラジアル円筒ころ軸受などに用いられる保持器と同様のものを採用することができる。
【0024】
内筒10と外筒20との間には磁気粘性流体50が充填され、内外筒10,20間の隙間には、これの隙間をシールする環状パッキン70が設けられている。この環状パッキン70は、内外筒10,20の相対回転を阻害しないよう、内筒10および外筒20のうちの何れか一方に固定されている。上記磁気粘性流体50は、後述する理由により、その中に含まれる磁性粒子がナノサイズのものであることが望ましい。ここで、ナノサイズの磁性粒子とは、1〜数百ナノメートル(nm)程度の大きさのものを意味する。
【0025】
磁場発生装置40は、図1に示すように、ヨーク41、コイル42および電流供給装置(図示省略)を備えている。ヨーク41は、その両端部41a,41bが内筒10および外筒20を挟むように断面U字状に形成され、コイル42を概ね包囲している。この磁場発生装置40は、電流供給装置によってコイル42に電流が供給されると、ヨーク41に沿って磁路Yを形成し、さらにヨーク41の両端部41a,41b間でも磁路Yを形成する。これにより、内外筒10,20の半径方向に向かって、内外筒10,20間に充填された磁気粘性流体50に磁場が与えられる。
【0026】
なお、図1に示す回転制動装置100では、ヨーク41は外筒20に対して相対回転不能に固定され、内筒10に対しては相対回転自在となっている。この場合、内筒10側に、回転を制動したい対象物を回転一体に接続し、外筒20およびヨーク41を固定体とすることで、当該対象物の回転を制動することができる。勿論、ヨーク41を内筒10に対して相対回転不能に固定し、外筒20に対して相対回転自在とすれば、外筒20側に、回転を制動したい対象物を回転一体に接続し、内筒10およびヨーク41を固定体とすることで、当該対象物の回転を制動することもできる。
【0027】
上記回転制動装置100において、コイル42が励磁されず、磁気粘性流体50に磁場が与えられていないときは、磁気粘性流体50中のナノサイズの磁性粒子は、内筒10と転動体30との隙間、および、外筒20と転動体30との隙間を容易に通過する。この場合、転動体30は容易に転動し、内筒10は固定された外筒20内で容易に回転(相対回転)することができる。
【0028】
一方、コイル42が励磁されると、図2に示すように、ヨーク41の両端部41a,41b間において、磁性体からなる外筒20、転動体30、内筒10内に磁路Yが形成され、転動体30と内外筒10,20との間およびその近傍にある磁気粘性流体にも磁路Yが形成される。このため、磁場が作用する磁気粘性流体中の磁性粒子がクラスター51を形成して、見かけ上の粒子サイズを増大し、転動体30と内筒10との隙間、および、転動体30と外筒20との隙間に楔状に噛み込む。この結果、転動体30の回転が阻害され、内筒10および外筒20間で伝達されるトルクが増大し、内筒10の回転(内筒10と外筒20の相対回転)が制動されるようになる。
【0029】
従来は、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒との隙間が大きいことにより、磁気粘性流体に十分な強さの磁場を与えることができなければ、磁気粘性流体中に発生するずり応力が不十分となり、内外筒間の相対回転を十分に制動することができなかった。しかし、本実施形態に係る回転制動装置100によれば、内筒10と外筒20との間の磁気粘性流体中において、磁性粒子がクラスター51を形成し、そのクラスター51が転動体30の回転を阻害するので、内外筒10,20間の相対回転を十分に制動することが可能となっている。また、これにより、磁場発生装置40の消費電力が抑制され、効率的な回転制動も可能となる。
【0030】
また、本実施形態に係る回転制動装置100によれば、内筒10と外筒20との隙間を大きくすることができるので、磁場発生装置40の消磁中に内外筒10,20間で伝達されるトルク(基底トルク)が低減されるという利点も認められる。すなわち、基底トルクは、磁気粘性流体の基底粘度、内筒10と外筒20との間のずり応力に依存するため、内筒10と外筒20との隙間を大きくすることができれば、基底トルクが低減される。
【0031】
また、本実施形態に係る回転制動装置100によれば、内筒10と外筒20との隙間を大きくすることができるので、当該装置100の設計上の自由度が向上する。
【0032】
ところで、既述の回転制動装置100においては、転動体30に磁性体が用いられているが、既述の制動効果を得るためには、転動体30が磁性体であることは必ずしも要求されない。すなわち、転動体30として非磁性体を用いても一定の制動効果が得られる。
【0033】
すなわち、図3に示すように、転動体として非磁性体からなるもの(転動体30X)が用いられ、保持器として磁性体からなるもの(保持器60X)が用いられた場合、コイル42を励磁すると、ヨーク42の両端部42a,42b間において、磁路Yは、転動体30Xを避けて内外筒10,20間の磁気粘性流体中を通過する。この場合、内筒10と外筒20との間に形成される磁場は、比較的弱くなり、形成される磁性粒子のクラスター51の大きさも比較的小さいものに留まる。しかし、クラスター51の大きさは、転動体30Xと内筒10の軌道面11との隙間、および、転動体30Xと外筒20の軌道面21との隙間より大きければ、当該隙間に楔状に噛み込み、転動体30Xの回転を阻害させることができる。そして、その結果、内筒10の回転(内筒10と外筒20の相対回転)を制動することができる。
【0034】
制動力の面では、転動体を磁性体とした方が転動体と内外筒10,20との隙間に比較的大きなクラスター51が形成され易いので有利であるが、転動体を非磁性体とすることで、転動体に残留磁気が生じなくなり、基底トルクを下げることができる。また、非磁性体の転動体30Xとして、樹脂を採用すれば、上記残留磁気をなくすことができる上に軽量化も図られる。
【0035】
なお、既述の実施形態では、内外筒10,20が磁性体である場合を前提として説明したが、内外筒10,20に非磁性体が用いられてもその半径方向厚さ、与える磁場の強さ等によっては一定の制動効果が得られる場合がある。
【0036】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について図5および図6を参照しながら説明する。第1の実施の形態に係る回転制動装置100では、磁場発生装置40が内外筒10,20の半径方向に向かって磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられていた。これに対し、第2の実施の形態に係る回転制動装置100Aの磁場発生装置40Aは、内外筒10,20の軸線Nに平行な方向に向かって磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられている。以下、第2の実施の形態に係る回転制動装置100Aについて更に詳しく説明する。なお、以下では、第1の実施形態との相違点について主に説明し、第1の実施形態と同一の構成については図面において同符号を付してその説明を省略する。
【0037】
第2の実施形態に係る回転制動装置100Aも、内筒10A、外筒20A、これら内外筒10A,20A間に配設された複数の転動体30、磁場発生装置40A、内外筒10A,20A間に充填された磁気粘性流体50などを備えている。
【0038】
内筒10Aおよび外筒20Aは、第1の実施形態で説明した内筒10および外筒20と同様の形状、構造および組み合わせからなるが、本実施形態では、内外筒10A,20Aに非磁性体が用いられている。
【0039】
本実施形態においても、転動体30として、図5に示すように玉30Aや、図8に示すようにころ30Bを採用することができる。
【0040】
磁場発生装置40Aは、図5に示すように、ヨーク41A、コイル42および電流供給装置(図示省略)を備えている。ヨーク41Aは、その両端部41Aa,41Abが外筒20Aの両側面および、内外筒10A,20A間に充填された磁気粘性流体50を挟むように断面U字状に形成され、コイル42を概ね包囲している。この磁場発生装置40Aは、電流供給装置によりコイル42に電流が供給されると、ヨーク41Aに沿って磁路Zを形成し、さらにヨーク41Aの両端部41Aa,41Ab間でも磁路Zを形成する。これにより、内外筒10A,20Aの軸線Nに平行な方向に向かって、内外筒10,20間に充填された磁気粘性流体50に磁場が与えられる。
【0041】
なお、図5に示す回転制動装置100Aでは、ヨーク41Aは外筒20Aに対して相対回転不能に固定され、内筒10Aに対しては相対回転自在となっている。この場合、内筒10A側に、回転を制動したい対象物を回転一体に接続し、外筒20Aおよびヨーク41Aを固定体とすることで、当該対象物の回転を制動することができる。勿論、ヨーク41Aを内筒10Aに対して相対回転不能に固定し、外筒20Aに対して相対回転自在とすれば、外筒20A側に、回転を制動したい対象物を回転一体に接続し、内筒10Aおよびヨーク41Aを固定体とすることで、当該対象物の回転を制動することもできる。
【0042】
上記回転制動装置100Aにおいて、コイル42が励磁されず、磁気粘性流体50に磁場が与えられていないときは、磁気粘性流体50中のナノサイズの磁性粒子は、内筒10Aと転動体30との隙間、および、外筒20Aと転動体30との隙間を容易に通過する。この場合、転動体30は容易に転動でき、内筒10Aは固定された外筒20A内で容易に回転することができる。
【0043】
一方、コイル42が励磁されると、図5に示すように、ヨーク41Aの両端部41Aa,41Ab間において、磁気粘性流体50および転動体30内で軸線Nに平行な方向に磁路Zが形成される。このため、磁場が与えられた磁気粘性流体中の磁性粒子がクラスター51を形成して、見かけ上の粒子サイズを増大し、転動体30と内筒10Aとの隙間、および、転動体30と外筒20Aとの隙間に楔状に噛み込む。この結果、転動体30の回転が阻害され、内筒10Aおよび外筒20A間で伝達されるトルクが増大し、内筒10Aの回転(内筒10Aと外筒20Aの相対回転)が制動されるようになる。
【0044】
このように、第2の実施形態に係る回転制動装置100Aでも、内筒10Aと外筒20Aとの間の磁気粘性流体中において、磁性粒子がクラスター51を形成し、そのクラスター51が転動体30の回転を阻害するので、内外筒10A,20Aの隙間が大きくても、内外筒10A,20A間の相対回転を十分に制動することが期待できる。またこれにより、磁場発生装置40Aの消費電力が抑制され、効率的な回転制動も可能となる。
【0045】
また、既述の説明から明らかなように、第1の実施形態に係る回転制動装置100と同様に、第2の実施形態に係る回転制動装置100Aでも、基底トルクが低減されるという利点、設計上の自由度が向上するという利点が認められる。
【0046】
ところで、本実施形態に係る回転制動装置100Aにおいては、転動体30に磁性体が用いられていたが、既述の制動効果を得るためには、転動体30が磁性体であることは必ずしも要求されない。すなわち、転動体30として非磁性体を用いても一定の制動効果が得られる。
【0047】
すなわち、転動体として非磁性体からなるもの(転動体30X)が用いられ、保持器として磁性体からなるもの(保持器60X)が用いられた場合、コイル42を励磁すると、ヨーク42の両端部42a,42b間において、磁路Zは、転動体30Xを避けて内外筒10A,20A間の磁気粘性流体中を通過する。この場合、内筒10Aと外筒20Aとの間に形成される磁場は、比較的弱くなり、形成される磁性粒子のクラスター51の大きさも比較的小さいものに留まる。しかし、クラスター51の大きさは、転動体30Xと内筒10Aの軌道面11Aとの隙間、および、転動体30Xと外筒20Aの軌道面21Aとの隙間より大きければ、当該隙間に楔状に噛み込み、転動体30Xの回転を阻害させることができる。そして、その結果、内筒10Aの回転(内筒10Aと外筒20Aの相対回転)を制動することができる。
【0048】
第1の実施形態において説明したように、制動力の面では、転動体を磁性体とした方が有利であるが、転動体を非磁性体とすることで、転動体に残留磁気が生じなくなり、基底トルクを下げることができるという利点が得られる。また、非磁性体の転動体として、樹脂を採用すれば、上記残留磁気をなくすことができる上に軽量化も図られる。
【0049】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照しながら説明する。図9は、磁気粘性流体を用いた直動制動装置200を示す断面図であり、図10は図9のC−C断面図であり、図11は図9のE部拡大図である。
【0050】
直動制動装置200は、内筒210、外筒220、これら内筒210および外筒220間に配設された複数の転動体230、磁場発生装置240、磁気粘性流体50などを備えている。
【0051】
内筒210および外筒220は、同じ軸線M方向に相対移動自在に内外に配設されている。内筒210と外筒220との間には、転動体230が周方向および、軸線Mに平行な方向に所定間隔をあけて転動自在に配設されている。
【0052】
直動制動装置200は、複数の転動体230を周方向および、軸線Mに平行な方向に一定間隔をあけて保持する保持器260も備えている。この保持器260は、内筒210と外筒220との間に略円筒状に形成されており、その支持部261(図10参照)にて各転動体230を回転自在に支持している。この保持器260には、非磁性体が用いられることが望ましい。この保持器260としては、周知のリニアボール軸受などに用いられる保持器と同様のものを採用することができる。
【0053】
内筒210と外筒220との間には磁気粘性流体50が充填され、内外筒210,220間に装着された2つの環状パッキン270によって封止されている。この磁気粘性流体50としては、その中に含まれる磁性粒子がナノサイズのものであることが望ましい。
【0054】
磁場発生装置240は、ヨーク241、コイル242および電流供給装置(図示省略)を備えている。ヨーク241は、その両端部241a,241bが内筒210および外筒220を挟むように断面U字状に形成され、コイル242を概ね包囲している。この磁場発生装置240は、その電流供給装置によってコイル242に電流が供給されると、ヨーク241に沿って磁路Zを形成し、さらにヨーク241の両端部241a,241b間でも磁路Zを形成する。これにより、内外筒210,220の半径方向に向かって、内外筒210,220間に充填された磁気粘性流体50に磁場が与えられる。
【0055】
なお、図9に示す直動制動装置200では、ヨーク241は外筒220に対して相対移動不能に固定され、内筒210に対しては相対移動自在となっている。この場合、内筒210側に、制動したい対象物を一体に接続し、外筒220およびヨーク241を固定体とすることで、当該対象物の動作を制動することができる。勿論、ヨーク241を内筒210に対して相対移動不能に固定し、外筒220に対して相対移動自在とすれば、外筒220側に、制動したい対象物を一体に接続し、内筒210およびヨーク241を固定体とすることで、当該対象物の動作を制動することもできる。
【0056】
上記直動制動装置200において、コイル242が励磁されず、磁気粘性流体50に磁場が与えられていないときは、磁気粘性流体50中のナノサイズの磁性粒子は、内筒210と転動体230との隙間、および、外筒220と転動体230との隙間を容易に通過する。この場合、転動体230は容易に転動し、内筒210は固定された外筒220内で軸線Mの方向に容易に移動(直動)することができる。
【0057】
一方、コイル242が励磁されると、図11に示すように、ヨーク241の両端部241a,41b間において、磁性体からなる外筒220、転動体230、内筒210内で半径方向に磁路Zが形成され、転動体230と内外筒210,220との間およびその近傍にある磁気粘性流体中にも磁路Yが形成される。このため、磁場が作用する磁気粘性流体中の磁性粒子がクラスター51を形成して、見かけ上の粒子サイズを増大し、転動体230と内筒210との隙間、および、転動体230と外筒220との隙間に楔状に噛み込む。この結果、転動体230の回転が阻害され、内筒210および外筒220間で伝達される軸線M方向の推力が増大し、内筒10の移動(内筒210と外筒220の相対移動)が制動されるようになる。
【0058】
従来は、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒との隙間が大きく、磁気粘性流体に十分な強さの磁場を与えることができなければ、磁気粘性流体中に発生するずり応力が不十分となり、内外筒間の相対移動を十分に制動することができなかった。しかし、本実施形態に係る直動制動装置200によれば、内筒210と外筒220との間の磁気粘性流体中において、磁性粒子がクラスター51を形成し、そのクラスター51が転動体230の回転を阻害するので、内外筒210,220間の相対移動を十分に制動することが可能となっている。また、これにより、磁場発生装置240の消費電力が抑制され、効率的な直動制動が可能となる。
【0059】
また、本実施形態に係る直動制動装置200によれば、内筒210と外筒220との隙間を大きくすることができるので、磁場発生装置240の消磁中に内外筒210,220間で伝達される推力(基底推力)が低減されるという利点も認められる。すなわち、基底推力は、磁気粘性流体の基底粘度、内筒210と外筒220との間のずり応力に依存するため、内筒210と外筒220との隙間を大きくすることができれば、基底トルクが低減される。
【0060】
また、本実施形態に係る直動制動装置200によれば、内筒210と外筒220との隙間を大きくすることができるので、当該装置200の設計上の自由度が向上する。
【0061】
ところで、既述の直動制動装置200においては、転動体230に磁性体が用いられているが、既述の制動効果を得るためには、転動体230が磁性体であることは必ずしも要求されない。すなわち、転動体230として非磁性体を用いても一定の制動効果が得られる。
【0062】
すなわち、図12に示すように、転動体として非磁性体からなるもの(転動体230X)が用いられ、保持器として磁性体からなるもの(保持器260X)が用いられた場合、
コイル242を励磁すると、ヨーク242の両端部242a,242b間において、磁路Zは、転動体230を避けて内外筒210,220間の磁気粘性流体を通過する。この場合、内筒210と外筒220との間に形成される磁場は、比較的弱くなり、形成される磁性粒子のクラスター51の大きさも比較的小さいものに留まる。しかし、クラスター51の大きさは、転動体230と内筒210との隙間、および、転動体230と外筒220との隙間より大きければ、当該隙間に楔状に噛み込むことができ、転動体230の回転を阻害させることができる。そして、その結果、内筒210の移動(内筒210と外筒220の相対移動)を制動することができる。
【0063】
制動力の面では、転動体を磁性体とした方が転動体と内外筒210,220との隙間に比較的大きなクラスター51が形成され易いので有利であるが、転動体230を非磁性体とすることで、転動体に残留磁気が生じなくなり、基底推力を下げることができる。また、非磁性体の転動体230Xとして、樹脂を採用すれば、上記残留磁気をなくすことができる上に軽量化も図られる。
【0064】
なお、第3の実施形態では、内外筒210,220が磁性体である場合を前提として説明したが、内外筒210,220に非磁性体が用いられてもその半径方向厚さ、磁場の強さ等によっては一定の制動効果が得られる場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、例えば、内外に配設された2つの筒体間に磁気粘性流体が充填され、その磁気粘性流体に与える磁場の強さを変えることにより、それら2つの筒体の軸線回りの相対回転や軸線方向への相対移動を制動する、ロータリダンパや直動型ダンパに適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
10,10A,210 内筒
20,20A,220 外筒
30,30A,30X,230 転動体
40,40A,240 磁場発生装置
50 磁気粘性流体
N
M 軸線
【技術分野】
【0001】
本発明は、内外に配設された2つの筒体間に磁気粘性流体が充填され、その磁気粘性流体に与える磁場の強さを変えることにより、それら2つの筒体の軸線回りの相対回転や軸線方向への相対移動を制動する、磁気粘性流体を用いた回転制動装置および直動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気粘性流体は、磁化可能な金属粒子(以下「磁性粒子」という。)を分散媒に分散させてなる液体である。この磁気粘性流体は、磁場の作用のないときには流体として機能する一方、磁場を作用させたときには、磁性粒子がクラスターを形成して液体が増粘し、液体の内部応力が増大する。
【0003】
従来より、磁気粘性流体を用いたロータリダンパが提案されている。例えば、特許文献1に開示されているロータリダンパは、ケーシングと、ロータとの隙間に磁気粘性流体を封入しており、この磁気粘性流体に磁場を与えて所定の粘度を発現させ、ケーシングとロータとの間のずり応力によってロータの回転を制動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−202744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータの回転を十分に制動するには、ケーシングとロータとの間のずり応力を十分に発生させることが前提となる。そのためには、ケーシングとロータとの隙間を小さくして、隙間内の磁気粘性流体に十分な強さの磁場を与えることが必要である。仮に、ケーシングとロータとの隙間を大きくすれば、磁気抵抗が増すため、ケーシングとロータとの間の磁場が弱くなり、十分な制動力が得られなくなってしまう。勿論、コイルに供給する電力を増せば、磁気粘性流体に与える磁場を大きくすることができるが、その分、消費電力が増えてしまう。
【0006】
従来は、このような事情から、ケーシングとロータとの隙間を小さくすることを余儀なくされ、このことが、磁気粘性流体を用いた制動装置の設計の自由度を低下させる大きな要因となっていた。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、内外に配設された2つの筒体間に磁気粘性流体が充填され、その磁気粘性流体に与える磁場の強さを変えることにより、それら2つの筒体の軸線回りの相対回転や軸線方向への相対移動を制動する、磁気粘性流体を用いた制動装置において、2つの筒体間の隙間を大きくしてもそれらの筒体間の相対回転又は相対移動を効率よく制動することができる、磁気粘性流体を用いた回転制動装置および直動制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の磁気粘性流体を用いた回転制動装置は、同軸線回りに相対回転自在に内外に配設された内筒および外筒と、前記内筒と前記外筒との間に充填された磁気粘性流体と、前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられた磁場発生装置と、を備えるものを前提とし、前記内筒と前記外筒との間に転動自在に配設された複数の転動体を備えることを特徴としている。
【0009】
かかる構成を備える磁気粘性流体を用いた回転制動装置によれば、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒の隙間が大きい場合であっても、内外筒間の磁気粘性流体中で磁性粒子がクラスターを形成し、そのクラスターが転動体の回転を阻害するように作用するので、内筒と外筒の相対回転を効率よく制動することができる。
【0010】
例えば、前記磁場発生装置は、前記内外筒の半径方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられたものである。
【0011】
例えば、前記磁場発生装置は、前記軸線に平行な方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられたものである。
【0012】
例えば、前記転動体は磁性体とすることができる。この場合、転動体に磁路が形成され、全体の磁気抵抗が低下することにより、磁性粒子が比較的大きなクラスターを形成でき、より制動効果を高めることができる。
【0013】
例えば、前記転動体は非磁性体とすることができる。この場合、転動体に残留磁気が生じなくなり、基底トルクを低減することができる。
【0014】
本発明の磁気粘性流体を用いた直動制動装置は、同軸線方向に相対移動自在に内外に配設された内筒および外筒と、前記内筒と前記外筒との間に充填された磁気粘性流体と、前記内外筒の半径方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられた磁場発生装置と、を備えるものを前提とし、前記内筒と前記外筒との間に転動自在に配設された複数の転動体を備えることを特徴としている。
【0015】
かかる構成を備える磁気粘性流体を用いた回転制動装置によれば、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒の隙間が大きい場合であっても、内外筒間の磁気粘性流体中で磁性粒子がクラスターを形成し、そのクラスターが転動体の回転を阻害するように作用するので、内筒と外筒の相対移動を効率よく制動することができる。
【0016】
前記直動制動装置において、例えば、前記転動体は磁性体とすることができる。この場合、転動体に磁路が形成され、全体の磁気抵抗が低下することにより、磁性粒子が比較的大きなクラスターを形成でき、より制動効果を高めることができる。
【0017】
前記直動制動装置において、例えば、前記転動体は非磁性体とすることができる。この場合、転動体に残留磁気が生じなくなり、基底推力を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の磁気粘性流体を用いた回転制動装置によれば、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒の隙間が大きい場合であっても、内筒と外筒の相対回転を効率よく制動することができる。また、本発明の磁気粘性流体を用いた直動制動装置によれば、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒の隙間が大きい場合であっても、内筒と外筒の相対移動を効率よく制動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた回転制動装置を軸線を含む平面で切断して表した断面図であって、転動体として球が用いられている場合を示す図である。なお、保持器の図示は省略している。
【図2】図1のA−A断面図であって、転動体が磁性体である場合の磁路等を示す図である。
【図3】図1のA−A断面図であって、転動体が非磁性体である場合の磁路等を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた回転制動装置を軸線を含む平面で切断して表した断面図であって、転動体としてころが用いられている場合を示す図である。なお、保持器の図示は省略している。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた回転制動装置を軸線を含む平面で切断して表した断面図であって、転動体として球が用いられている場合を示す図である。なお、保持器の図示は省略している。
【図6】図5のB−B断面図であって、転動体が磁性体である場合を示す図である。
【図7】図5のB−B断面図であって、転動体が非磁性体である場合を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた回転制動装置を軸線を含む平面で切断して表した断面図であって、転動体としてころが用いられている場合を示す図である。なお、保持器の図示は省略している。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた直動制動装置を軸線を含む平面で切断して表した断面図である。
【図10】図9のC−C断面図である。
【図11】図9のE部拡大図であって、転動体が磁性体である場合の磁路等を示す図である。
【図12】図9のE部拡大図であって、転動体が非磁性体である場合の磁路等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る磁気粘性流体を用いた回転制動装置100を示す断面図であり、図2および図3は、図1のA−A断面図である。
【0021】
回転制動装置100は、内筒10、外筒20、これら内筒10および外筒20間に配設された複数の転動体30、磁場発生装置40、磁気粘性流体50などを備えている。
【0022】
内筒10および外筒20は同じ軸線N回りに相対回転自在に内外に配設されている。内筒10と外筒20との間には、転動体30が周方向に所定間隔をあけて転動自在に配設されている。内筒10の外周および外筒20の内周には、転動体30を周方向に案内する軌道11,21が形成されている。転動体30には、図1に示すように、玉30Aが採用されているが、図4に示すように、ころ30Bが採用されていてもよい。なお、本実施形態では、内筒10、外筒20および転動体30に磁性体が用いられている。
【0023】
回転制動装置100は、複数の転動体30を周方向に一定間隔をあけて保持する保持器60も備えている(図1において保持器の図示省略、図2参照)。この保持器60は、内筒10と外筒20との間において周方向に形成されており、その支持部61にて各転動体30を回転自在に支持している。この保持器60には、非磁性体が用いられることが望ましい。この保持器60としては、周知のラジアル玉軸受などに用いられる保持器と同様のものを採用することができる。また、転動体30としてころ30Bが採用された場合にも、複数のころ30Bを周方向に一定間隔をあけて保持する保持器が設けられることが望ましい。この場合の保持器としては、汎用のラジアル円筒ころ軸受などに用いられる保持器と同様のものを採用することができる。
【0024】
内筒10と外筒20との間には磁気粘性流体50が充填され、内外筒10,20間の隙間には、これの隙間をシールする環状パッキン70が設けられている。この環状パッキン70は、内外筒10,20の相対回転を阻害しないよう、内筒10および外筒20のうちの何れか一方に固定されている。上記磁気粘性流体50は、後述する理由により、その中に含まれる磁性粒子がナノサイズのものであることが望ましい。ここで、ナノサイズの磁性粒子とは、1〜数百ナノメートル(nm)程度の大きさのものを意味する。
【0025】
磁場発生装置40は、図1に示すように、ヨーク41、コイル42および電流供給装置(図示省略)を備えている。ヨーク41は、その両端部41a,41bが内筒10および外筒20を挟むように断面U字状に形成され、コイル42を概ね包囲している。この磁場発生装置40は、電流供給装置によってコイル42に電流が供給されると、ヨーク41に沿って磁路Yを形成し、さらにヨーク41の両端部41a,41b間でも磁路Yを形成する。これにより、内外筒10,20の半径方向に向かって、内外筒10,20間に充填された磁気粘性流体50に磁場が与えられる。
【0026】
なお、図1に示す回転制動装置100では、ヨーク41は外筒20に対して相対回転不能に固定され、内筒10に対しては相対回転自在となっている。この場合、内筒10側に、回転を制動したい対象物を回転一体に接続し、外筒20およびヨーク41を固定体とすることで、当該対象物の回転を制動することができる。勿論、ヨーク41を内筒10に対して相対回転不能に固定し、外筒20に対して相対回転自在とすれば、外筒20側に、回転を制動したい対象物を回転一体に接続し、内筒10およびヨーク41を固定体とすることで、当該対象物の回転を制動することもできる。
【0027】
上記回転制動装置100において、コイル42が励磁されず、磁気粘性流体50に磁場が与えられていないときは、磁気粘性流体50中のナノサイズの磁性粒子は、内筒10と転動体30との隙間、および、外筒20と転動体30との隙間を容易に通過する。この場合、転動体30は容易に転動し、内筒10は固定された外筒20内で容易に回転(相対回転)することができる。
【0028】
一方、コイル42が励磁されると、図2に示すように、ヨーク41の両端部41a,41b間において、磁性体からなる外筒20、転動体30、内筒10内に磁路Yが形成され、転動体30と内外筒10,20との間およびその近傍にある磁気粘性流体にも磁路Yが形成される。このため、磁場が作用する磁気粘性流体中の磁性粒子がクラスター51を形成して、見かけ上の粒子サイズを増大し、転動体30と内筒10との隙間、および、転動体30と外筒20との隙間に楔状に噛み込む。この結果、転動体30の回転が阻害され、内筒10および外筒20間で伝達されるトルクが増大し、内筒10の回転(内筒10と外筒20の相対回転)が制動されるようになる。
【0029】
従来は、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒との隙間が大きいことにより、磁気粘性流体に十分な強さの磁場を与えることができなければ、磁気粘性流体中に発生するずり応力が不十分となり、内外筒間の相対回転を十分に制動することができなかった。しかし、本実施形態に係る回転制動装置100によれば、内筒10と外筒20との間の磁気粘性流体中において、磁性粒子がクラスター51を形成し、そのクラスター51が転動体30の回転を阻害するので、内外筒10,20間の相対回転を十分に制動することが可能となっている。また、これにより、磁場発生装置40の消費電力が抑制され、効率的な回転制動も可能となる。
【0030】
また、本実施形態に係る回転制動装置100によれば、内筒10と外筒20との隙間を大きくすることができるので、磁場発生装置40の消磁中に内外筒10,20間で伝達されるトルク(基底トルク)が低減されるという利点も認められる。すなわち、基底トルクは、磁気粘性流体の基底粘度、内筒10と外筒20との間のずり応力に依存するため、内筒10と外筒20との隙間を大きくすることができれば、基底トルクが低減される。
【0031】
また、本実施形態に係る回転制動装置100によれば、内筒10と外筒20との隙間を大きくすることができるので、当該装置100の設計上の自由度が向上する。
【0032】
ところで、既述の回転制動装置100においては、転動体30に磁性体が用いられているが、既述の制動効果を得るためには、転動体30が磁性体であることは必ずしも要求されない。すなわち、転動体30として非磁性体を用いても一定の制動効果が得られる。
【0033】
すなわち、図3に示すように、転動体として非磁性体からなるもの(転動体30X)が用いられ、保持器として磁性体からなるもの(保持器60X)が用いられた場合、コイル42を励磁すると、ヨーク42の両端部42a,42b間において、磁路Yは、転動体30Xを避けて内外筒10,20間の磁気粘性流体中を通過する。この場合、内筒10と外筒20との間に形成される磁場は、比較的弱くなり、形成される磁性粒子のクラスター51の大きさも比較的小さいものに留まる。しかし、クラスター51の大きさは、転動体30Xと内筒10の軌道面11との隙間、および、転動体30Xと外筒20の軌道面21との隙間より大きければ、当該隙間に楔状に噛み込み、転動体30Xの回転を阻害させることができる。そして、その結果、内筒10の回転(内筒10と外筒20の相対回転)を制動することができる。
【0034】
制動力の面では、転動体を磁性体とした方が転動体と内外筒10,20との隙間に比較的大きなクラスター51が形成され易いので有利であるが、転動体を非磁性体とすることで、転動体に残留磁気が生じなくなり、基底トルクを下げることができる。また、非磁性体の転動体30Xとして、樹脂を採用すれば、上記残留磁気をなくすことができる上に軽量化も図られる。
【0035】
なお、既述の実施形態では、内外筒10,20が磁性体である場合を前提として説明したが、内外筒10,20に非磁性体が用いられてもその半径方向厚さ、与える磁場の強さ等によっては一定の制動効果が得られる場合がある。
【0036】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について図5および図6を参照しながら説明する。第1の実施の形態に係る回転制動装置100では、磁場発生装置40が内外筒10,20の半径方向に向かって磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられていた。これに対し、第2の実施の形態に係る回転制動装置100Aの磁場発生装置40Aは、内外筒10,20の軸線Nに平行な方向に向かって磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられている。以下、第2の実施の形態に係る回転制動装置100Aについて更に詳しく説明する。なお、以下では、第1の実施形態との相違点について主に説明し、第1の実施形態と同一の構成については図面において同符号を付してその説明を省略する。
【0037】
第2の実施形態に係る回転制動装置100Aも、内筒10A、外筒20A、これら内外筒10A,20A間に配設された複数の転動体30、磁場発生装置40A、内外筒10A,20A間に充填された磁気粘性流体50などを備えている。
【0038】
内筒10Aおよび外筒20Aは、第1の実施形態で説明した内筒10および外筒20と同様の形状、構造および組み合わせからなるが、本実施形態では、内外筒10A,20Aに非磁性体が用いられている。
【0039】
本実施形態においても、転動体30として、図5に示すように玉30Aや、図8に示すようにころ30Bを採用することができる。
【0040】
磁場発生装置40Aは、図5に示すように、ヨーク41A、コイル42および電流供給装置(図示省略)を備えている。ヨーク41Aは、その両端部41Aa,41Abが外筒20Aの両側面および、内外筒10A,20A間に充填された磁気粘性流体50を挟むように断面U字状に形成され、コイル42を概ね包囲している。この磁場発生装置40Aは、電流供給装置によりコイル42に電流が供給されると、ヨーク41Aに沿って磁路Zを形成し、さらにヨーク41Aの両端部41Aa,41Ab間でも磁路Zを形成する。これにより、内外筒10A,20Aの軸線Nに平行な方向に向かって、内外筒10,20間に充填された磁気粘性流体50に磁場が与えられる。
【0041】
なお、図5に示す回転制動装置100Aでは、ヨーク41Aは外筒20Aに対して相対回転不能に固定され、内筒10Aに対しては相対回転自在となっている。この場合、内筒10A側に、回転を制動したい対象物を回転一体に接続し、外筒20Aおよびヨーク41Aを固定体とすることで、当該対象物の回転を制動することができる。勿論、ヨーク41Aを内筒10Aに対して相対回転不能に固定し、外筒20Aに対して相対回転自在とすれば、外筒20A側に、回転を制動したい対象物を回転一体に接続し、内筒10Aおよびヨーク41Aを固定体とすることで、当該対象物の回転を制動することもできる。
【0042】
上記回転制動装置100Aにおいて、コイル42が励磁されず、磁気粘性流体50に磁場が与えられていないときは、磁気粘性流体50中のナノサイズの磁性粒子は、内筒10Aと転動体30との隙間、および、外筒20Aと転動体30との隙間を容易に通過する。この場合、転動体30は容易に転動でき、内筒10Aは固定された外筒20A内で容易に回転することができる。
【0043】
一方、コイル42が励磁されると、図5に示すように、ヨーク41Aの両端部41Aa,41Ab間において、磁気粘性流体50および転動体30内で軸線Nに平行な方向に磁路Zが形成される。このため、磁場が与えられた磁気粘性流体中の磁性粒子がクラスター51を形成して、見かけ上の粒子サイズを増大し、転動体30と内筒10Aとの隙間、および、転動体30と外筒20Aとの隙間に楔状に噛み込む。この結果、転動体30の回転が阻害され、内筒10Aおよび外筒20A間で伝達されるトルクが増大し、内筒10Aの回転(内筒10Aと外筒20Aの相対回転)が制動されるようになる。
【0044】
このように、第2の実施形態に係る回転制動装置100Aでも、内筒10Aと外筒20Aとの間の磁気粘性流体中において、磁性粒子がクラスター51を形成し、そのクラスター51が転動体30の回転を阻害するので、内外筒10A,20Aの隙間が大きくても、内外筒10A,20A間の相対回転を十分に制動することが期待できる。またこれにより、磁場発生装置40Aの消費電力が抑制され、効率的な回転制動も可能となる。
【0045】
また、既述の説明から明らかなように、第1の実施形態に係る回転制動装置100と同様に、第2の実施形態に係る回転制動装置100Aでも、基底トルクが低減されるという利点、設計上の自由度が向上するという利点が認められる。
【0046】
ところで、本実施形態に係る回転制動装置100Aにおいては、転動体30に磁性体が用いられていたが、既述の制動効果を得るためには、転動体30が磁性体であることは必ずしも要求されない。すなわち、転動体30として非磁性体を用いても一定の制動効果が得られる。
【0047】
すなわち、転動体として非磁性体からなるもの(転動体30X)が用いられ、保持器として磁性体からなるもの(保持器60X)が用いられた場合、コイル42を励磁すると、ヨーク42の両端部42a,42b間において、磁路Zは、転動体30Xを避けて内外筒10A,20A間の磁気粘性流体中を通過する。この場合、内筒10Aと外筒20Aとの間に形成される磁場は、比較的弱くなり、形成される磁性粒子のクラスター51の大きさも比較的小さいものに留まる。しかし、クラスター51の大きさは、転動体30Xと内筒10Aの軌道面11Aとの隙間、および、転動体30Xと外筒20Aの軌道面21Aとの隙間より大きければ、当該隙間に楔状に噛み込み、転動体30Xの回転を阻害させることができる。そして、その結果、内筒10Aの回転(内筒10Aと外筒20Aの相対回転)を制動することができる。
【0048】
第1の実施形態において説明したように、制動力の面では、転動体を磁性体とした方が有利であるが、転動体を非磁性体とすることで、転動体に残留磁気が生じなくなり、基底トルクを下げることができるという利点が得られる。また、非磁性体の転動体として、樹脂を採用すれば、上記残留磁気をなくすことができる上に軽量化も図られる。
【0049】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照しながら説明する。図9は、磁気粘性流体を用いた直動制動装置200を示す断面図であり、図10は図9のC−C断面図であり、図11は図9のE部拡大図である。
【0050】
直動制動装置200は、内筒210、外筒220、これら内筒210および外筒220間に配設された複数の転動体230、磁場発生装置240、磁気粘性流体50などを備えている。
【0051】
内筒210および外筒220は、同じ軸線M方向に相対移動自在に内外に配設されている。内筒210と外筒220との間には、転動体230が周方向および、軸線Mに平行な方向に所定間隔をあけて転動自在に配設されている。
【0052】
直動制動装置200は、複数の転動体230を周方向および、軸線Mに平行な方向に一定間隔をあけて保持する保持器260も備えている。この保持器260は、内筒210と外筒220との間に略円筒状に形成されており、その支持部261(図10参照)にて各転動体230を回転自在に支持している。この保持器260には、非磁性体が用いられることが望ましい。この保持器260としては、周知のリニアボール軸受などに用いられる保持器と同様のものを採用することができる。
【0053】
内筒210と外筒220との間には磁気粘性流体50が充填され、内外筒210,220間に装着された2つの環状パッキン270によって封止されている。この磁気粘性流体50としては、その中に含まれる磁性粒子がナノサイズのものであることが望ましい。
【0054】
磁場発生装置240は、ヨーク241、コイル242および電流供給装置(図示省略)を備えている。ヨーク241は、その両端部241a,241bが内筒210および外筒220を挟むように断面U字状に形成され、コイル242を概ね包囲している。この磁場発生装置240は、その電流供給装置によってコイル242に電流が供給されると、ヨーク241に沿って磁路Zを形成し、さらにヨーク241の両端部241a,241b間でも磁路Zを形成する。これにより、内外筒210,220の半径方向に向かって、内外筒210,220間に充填された磁気粘性流体50に磁場が与えられる。
【0055】
なお、図9に示す直動制動装置200では、ヨーク241は外筒220に対して相対移動不能に固定され、内筒210に対しては相対移動自在となっている。この場合、内筒210側に、制動したい対象物を一体に接続し、外筒220およびヨーク241を固定体とすることで、当該対象物の動作を制動することができる。勿論、ヨーク241を内筒210に対して相対移動不能に固定し、外筒220に対して相対移動自在とすれば、外筒220側に、制動したい対象物を一体に接続し、内筒210およびヨーク241を固定体とすることで、当該対象物の動作を制動することもできる。
【0056】
上記直動制動装置200において、コイル242が励磁されず、磁気粘性流体50に磁場が与えられていないときは、磁気粘性流体50中のナノサイズの磁性粒子は、内筒210と転動体230との隙間、および、外筒220と転動体230との隙間を容易に通過する。この場合、転動体230は容易に転動し、内筒210は固定された外筒220内で軸線Mの方向に容易に移動(直動)することができる。
【0057】
一方、コイル242が励磁されると、図11に示すように、ヨーク241の両端部241a,41b間において、磁性体からなる外筒220、転動体230、内筒210内で半径方向に磁路Zが形成され、転動体230と内外筒210,220との間およびその近傍にある磁気粘性流体中にも磁路Yが形成される。このため、磁場が作用する磁気粘性流体中の磁性粒子がクラスター51を形成して、見かけ上の粒子サイズを増大し、転動体230と内筒210との隙間、および、転動体230と外筒220との隙間に楔状に噛み込む。この結果、転動体230の回転が阻害され、内筒210および外筒220間で伝達される軸線M方向の推力が増大し、内筒10の移動(内筒210と外筒220の相対移動)が制動されるようになる。
【0058】
従来は、磁気粘性流体を封入した内筒と外筒との隙間が大きく、磁気粘性流体に十分な強さの磁場を与えることができなければ、磁気粘性流体中に発生するずり応力が不十分となり、内外筒間の相対移動を十分に制動することができなかった。しかし、本実施形態に係る直動制動装置200によれば、内筒210と外筒220との間の磁気粘性流体中において、磁性粒子がクラスター51を形成し、そのクラスター51が転動体230の回転を阻害するので、内外筒210,220間の相対移動を十分に制動することが可能となっている。また、これにより、磁場発生装置240の消費電力が抑制され、効率的な直動制動が可能となる。
【0059】
また、本実施形態に係る直動制動装置200によれば、内筒210と外筒220との隙間を大きくすることができるので、磁場発生装置240の消磁中に内外筒210,220間で伝達される推力(基底推力)が低減されるという利点も認められる。すなわち、基底推力は、磁気粘性流体の基底粘度、内筒210と外筒220との間のずり応力に依存するため、内筒210と外筒220との隙間を大きくすることができれば、基底トルクが低減される。
【0060】
また、本実施形態に係る直動制動装置200によれば、内筒210と外筒220との隙間を大きくすることができるので、当該装置200の設計上の自由度が向上する。
【0061】
ところで、既述の直動制動装置200においては、転動体230に磁性体が用いられているが、既述の制動効果を得るためには、転動体230が磁性体であることは必ずしも要求されない。すなわち、転動体230として非磁性体を用いても一定の制動効果が得られる。
【0062】
すなわち、図12に示すように、転動体として非磁性体からなるもの(転動体230X)が用いられ、保持器として磁性体からなるもの(保持器260X)が用いられた場合、
コイル242を励磁すると、ヨーク242の両端部242a,242b間において、磁路Zは、転動体230を避けて内外筒210,220間の磁気粘性流体を通過する。この場合、内筒210と外筒220との間に形成される磁場は、比較的弱くなり、形成される磁性粒子のクラスター51の大きさも比較的小さいものに留まる。しかし、クラスター51の大きさは、転動体230と内筒210との隙間、および、転動体230と外筒220との隙間より大きければ、当該隙間に楔状に噛み込むことができ、転動体230の回転を阻害させることができる。そして、その結果、内筒210の移動(内筒210と外筒220の相対移動)を制動することができる。
【0063】
制動力の面では、転動体を磁性体とした方が転動体と内外筒210,220との隙間に比較的大きなクラスター51が形成され易いので有利であるが、転動体230を非磁性体とすることで、転動体に残留磁気が生じなくなり、基底推力を下げることができる。また、非磁性体の転動体230Xとして、樹脂を採用すれば、上記残留磁気をなくすことができる上に軽量化も図られる。
【0064】
なお、第3の実施形態では、内外筒210,220が磁性体である場合を前提として説明したが、内外筒210,220に非磁性体が用いられてもその半径方向厚さ、磁場の強さ等によっては一定の制動効果が得られる場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、例えば、内外に配設された2つの筒体間に磁気粘性流体が充填され、その磁気粘性流体に与える磁場の強さを変えることにより、それら2つの筒体の軸線回りの相対回転や軸線方向への相対移動を制動する、ロータリダンパや直動型ダンパに適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
10,10A,210 内筒
20,20A,220 外筒
30,30A,30X,230 転動体
40,40A,240 磁場発生装置
50 磁気粘性流体
N
M 軸線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸線回りに相対回転自在に内外に配設された内筒および外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に充填された磁気粘性流体と、
前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられた磁場発生装置と、を備える磁気粘性流体を用いた回転制動装置であって、
前記内筒と前記外筒との間に転動自在に配設された複数の転動体を備えることを特徴とする、磁気粘性流体を用いた回転制動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気粘性流体を用いた回転制動装置において、
前記磁場発生装置は、前記内外筒の半径方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられたものである、ことを特徴とする磁気粘性流体を用いた回転制動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気粘性流体を用いた回転制動装置において、
前記磁場発生装置は、前記軸線に平行な方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられたものである、ことを特徴とする磁気粘性流体を用いた回転制動装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気粘性流体を用いた回転制動装置において、
前記転動体が磁性体からなることを特徴とする磁気粘性流体を用いた回転制動装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気粘性流体を用いた回転制動装置において、
前記転動体が非磁性体からなることを特徴とする磁気粘性流体を用いた回転制動装置。
【請求項6】
同軸線方向に相対移動自在に内外に配設された内筒および外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に充填された磁気粘性流体と、
前記内外筒の半径方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられた磁場発生装置と、を備える磁気粘性流体を用いた直動制動装置であって、
前記内筒と前記外筒との間に転動自在に配設された複数の転動体を備えることを特徴とする、磁気粘性流体を用いた直動制動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の磁気粘性流体を用いた直動制動装置において、
前記転動体が磁性体からなることを特徴とする磁気粘性流体を用いた直動制動装置。
【請求項8】
請求項6に記載の磁気粘性流体を用いた直動制動装置において、
前記転動体が非磁性体からなることを特徴とする磁気粘性流体を用いた直動制動装置。
【請求項1】
同軸線回りに相対回転自在に内外に配設された内筒および外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に充填された磁気粘性流体と、
前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられた磁場発生装置と、を備える磁気粘性流体を用いた回転制動装置であって、
前記内筒と前記外筒との間に転動自在に配設された複数の転動体を備えることを特徴とする、磁気粘性流体を用いた回転制動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気粘性流体を用いた回転制動装置において、
前記磁場発生装置は、前記内外筒の半径方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられたものである、ことを特徴とする磁気粘性流体を用いた回転制動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気粘性流体を用いた回転制動装置において、
前記磁場発生装置は、前記軸線に平行な方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられたものである、ことを特徴とする磁気粘性流体を用いた回転制動装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気粘性流体を用いた回転制動装置において、
前記転動体が磁性体からなることを特徴とする磁気粘性流体を用いた回転制動装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気粘性流体を用いた回転制動装置において、
前記転動体が非磁性体からなることを特徴とする磁気粘性流体を用いた回転制動装置。
【請求項6】
同軸線方向に相対移動自在に内外に配設された内筒および外筒と、
前記内筒と前記外筒との間に充填された磁気粘性流体と、
前記内外筒の半径方向に向かって前記磁気粘性流体に磁場を与えるように設けられた磁場発生装置と、を備える磁気粘性流体を用いた直動制動装置であって、
前記内筒と前記外筒との間に転動自在に配設された複数の転動体を備えることを特徴とする、磁気粘性流体を用いた直動制動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の磁気粘性流体を用いた直動制動装置において、
前記転動体が磁性体からなることを特徴とする磁気粘性流体を用いた直動制動装置。
【請求項8】
請求項6に記載の磁気粘性流体を用いた直動制動装置において、
前記転動体が非磁性体からなることを特徴とする磁気粘性流体を用いた直動制動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−197841(P2012−197841A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61827(P2011−61827)
【出願日】平成23年3月20日(2011.3.20)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月20日(2011.3.20)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
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