説明

磁気粘性流体緩衝器

【課題】シリンダに磁石が取り付けられる磁気粘性流体緩衝器において、ピストンのストローク量に対して減衰係数を連続的に変化させる。
【解決手段】非磁性体によって円筒形に形成され磁界の作用によって粘性が変化する磁気粘性流体が封入されるシリンダ10と、非磁性体によって形成されシリンダ10の内周との間に磁気粘性流体が通過可能な間隔をもってシリンダ10内に摺動自在に配置されるピストン21と、ピストン21が連結されるピストンロッド22と、シリンダ10内に磁界を作用させる磁石30とを備え、シリンダ10は、その外周面に形成されに形成され軸方向に向かってテーパ状に肉厚が変化するテーパ平面部15と、内周面に形成されるテーパ内周部216との少なくともいずれか一方を有し、磁石30は、テーパ平面部15,テーパ内周部216が形成される位置に対応してシリンダ10の外周に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界の作用によって見かけの粘性が変化する磁気粘性流体を利用した磁気粘性流体緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される緩衝器として、磁気粘性流体が通過する流路に磁界を作用させ、磁気粘性流体の見かけの粘性を変化させることによって、減衰力を変化させるものがある。
【0003】
特許文献1には、磁気粘性流体が封入されたシリンダにおける軸方向の両端部に永久磁石が取り付けられた磁気粘性流体ダンパが開示されている。この磁気粘性流体ダンパは、シリンダの外周にヨーク材が設けられ、ピストンとピストンロッドの一部とが強磁性体で形成されるものである。ピストンが中立領域に位置しているときには、永久磁石の磁力は磁気粘性流体に作用しないが、ピストンが中立領域を越えてストロークしたときには、永久磁石から、ピストンロッドとピストンとヨーク材とを介して磁気回路が形成される。これにより、永久磁石の磁力がピストンとシリンダとの間の磁気粘性流体に作用し、磁気粘性流体の粘度が高くなって減衰係数が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−239982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の磁気粘性流体ダンパは、ピストンが中立領域を越えてストロークしたときに、永久磁石の磁力が磁気粘性流体に作用して減衰係数が大きく変化するものである。即ち、この磁気粘性流体ダンパでは、ピストンが中立領域に位置するときと、ピストンが中立位置を越えたときとで、磁気粘性流体の粘度が段階的に変化する。これにより、この磁気粘性流体ダンパの減衰係数は、シリンダ内を摺動するピストンのストローク量に応じて段階的に変化することとなる。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、シリンダに磁石が取り付けられる磁気粘性流体緩衝器において、ピストンのストローク量に対して減衰係数を連続的に変化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、非磁性体によって円筒形に形成され、磁界の作用によって粘性が変化する磁気粘性流体が封入されるシリンダと、非磁性体によって形成され、前記シリンダの内周との間に磁気粘性流体が通過可能な間隔をもって前記シリンダ内に摺動自在に配置されるピストンと、前記ピストンが連結されるピストンロッドと、前記シリンダ内に磁界を作用させる磁石と、を備える磁気粘性流体緩衝器であって、前記シリンダは、その外周面と内周面との少なくともいずれか一方に形成され軸方向に向かってテーパ状に肉厚が変化するテーパ部を有し、前記磁石は前記テーパ部が形成される位置に対応して前記シリンダの外周に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、シリンダの軸方向に向かってテーパ状に肉厚が変化するテーパ部がシリンダに形成され、テーパ部が形成される位置に磁石が取り付けられる。よって、シリンダ内に封入される磁気粘性流体と磁石との距離は、テーパ部のテーパに倣って連続的に変化することとなる。したがって、ピストンのストローク量に対して磁気粘性流体に作用する磁界の強さが連続的にするため、減衰係数を連続的に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気粘性流体緩衝器の断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る磁気粘性流体緩衝器の断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る磁気粘性流体緩衝器の断面図である。
【図4】本発明の第1から第3の各実施の形態に係る磁気粘性流体緩衝器の作用を説明するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気粘性流体緩衝器100について説明する。
【0012】
磁気粘性流体緩衝器100は、磁界の作用によって粘性が変化する磁気粘性流体を用いることで減衰係数が変化可能なダンパである。磁気粘性流体緩衝器100は、その減衰係数が、ストローク量に応じて比例的に変化するように形成される。
【0013】
磁気粘性流体緩衝器100は、磁気粘性流体が封入されるシリンダ10と、シリンダ10内に摺動自在に配置されるピストン21と、ピストン21が連結されるピストンロッド22と、シリンダ10の外周に固定されシリンダ10内に磁界を作用させる磁石30と、を備える。
【0014】
シリンダ10内に封入される磁気粘性流体は、磁界の作用によって見かけの粘性が変化するものであり、油等の液体中に強磁性を有する微粒子を分散させた液体である。磁気粘性流体の粘性は、作用する磁界の強さに応じて変化し、磁界の影響がなくなると元の状態に戻る。
【0015】
シリンダ10は、その両端に開口部を有する円筒状に形成される円筒部11と、円筒部11における両端の開口部に取り付けられるヘッド部材12とボトム部材13とを備える。
【0016】
円筒部11は、一方の開口部における内周に形成される螺合部11aと、他方の開口部における内周に形成される螺合部11bとを有する。
【0017】
ヘッド部材12の外周には、螺合部11aと螺合する螺合部12bが形成される。円筒部11の内周とヘッド部材12の外周との間には、シール部材14aが設けられ、シリンダ10内の磁気粘性流体がシールされる。ヘッド部材12には、ピストンロッド22が挿通する孔12aが形成される。
【0018】
同様に、ボトム部材13の外周には、螺合部11bと螺合する螺合部13bが形成される。円筒部11の内周とボトム部材13の外周との間には、シール部材14bが設けられ、シリンダ10内の磁気粘性流体がシールされる。ボトム部材13には、ピストンロッド22が挿通する孔13aが形成される。
【0019】
シリンダ10は、非磁性体によって形成される。これにより、シリンダ10が磁路になることが防止され、シリンダ10内に封入された磁気粘性流体に効率的に磁場が作用するようにできる。
【0020】
シリンダ10は、円筒部11の外周面に設けられ軸方向に向かってテーパ状に形成されて円筒部11の肉厚を徐々に変化させるテーパ平面部15を有する。磁気粘性流体緩衝器100では、テーパ平面部15がテーパ部に該当する。
【0021】
テーパ平面部15は、シリンダ10における円筒部11の外周面に凹状に形成される。テーパ平面部15は、180度間隔で二箇所に形成される。一対のテーパ平面部15は、矩形に形成され、互いに対向するように設けられる。テーパ平面部15は、円筒状に形成されるシリンダ10の接線方向に形成される。
【0022】
テーパ平面部15は、ピストンロッド22がシリンダ10内に最も進入したときのピストン21の位置に対応する位置に対応してシリンダ10の外周面に形成される。テーパ平面部15は、ピストンロッド22がシリンダ10内へ進入する方向に向かって、シリンダ10における円筒部11の肉厚が薄くなるように形成される。
【0023】
テーパ平面部15を形成するかわりに、シリンダ10の外周面の曲面に沿って凹状に形成されるテーパ部を設け、テーパ部の曲面に沿った円弧状の形状に磁石30を形成してもよい。
【0024】
ピストン21は、その外径がシリンダ10における円筒部11の内径より小さな円柱状に形成される。つまり、ピストン21は、シリンダ10における円筒部11の内周との間に磁気粘性流体が通過可能な環状の間隔をもって形成される。
【0025】
ピストン21がシリンダ10内を軸方向に摺動すると、ピストン21とシリンダ10との間の間隔を磁気粘性流体が通過する。磁気粘性流体緩衝器100は、ピストン21とシリンダ10との間の環状の間隔が絞りの役割をすることによって、減衰力を発生するものである。
【0026】
ピストン21は、非磁性体によって形成される。これにより、ピストン21に磁石30の磁界が直接作用することはなく、また、ピストン21が片側に寄せられてフリクションが増加することを防止できる。
【0027】
ピストンロッド22は、ピストン21と同軸になるように形成され、ピストン21の中心を挿通する。ピストンロッド22は、ピストン21と一体に形成される。ピストンロッド22をピストン21と別体に形成して、ねじ等によって接合してもよい。
【0028】
ピストンロッド22の一方の端部22aは、ヘッド部材12の孔12aを挿通し、ヘッド部材12に摺動自在に支持されるとともに、シリンダ10の外部へと延在する。ピストンロッド22の他方の端部22bは、ボトム部材13の孔13aを挿通し、ボトム部材13に摺動自在に支持される。
【0029】
このように、ピストンロッド22は、ヘッド部材12及びボトム部材13に摺動自在に支持されることによって、ピストン21の外周面とシリンダ10の内周との間に環状の間隔があいていても、シリンダ10内にて径方向にずれることなく軸方向に摺動可能である。
【0030】
磁石30は、その端面31がシリンダ10のテーパ平面部15に対応した形状に形成される永久磁石である。磁石30は、一対のテーパ平面部15に各々取り付けられる。テーパ平面部15は、シリンダ10の外周面に凹状に形成されるため、シリンダ10の他の部分と比較して薄肉である。よって、磁石30の磁界がシリンダ10内に封入される磁気粘性流体に作用することを妨げない。
【0031】
磁石30は、矩形に形成されるテーパ平面部15に対応して、その端面31が矩形になるような直方体状に形成される。この他にも、テーパ平面部15を円形に形成して、磁石30を、その端面31が円形になるような円柱状に形成してもよい。
【0032】
このように、シリンダ10の外周面にテーパ平面部15が形成されることによって、取り付けられる磁石30をシリンダ10の外周面に対応した円弧状の形状に形成する必要はなく、磁石30の端面31を平面状に形成することが可能となる。よって、磁石30の加工コストを低減できるとともに、シリンダ10への磁石30の取付性を向上できる。
【0033】
磁石30は、互いに対向するように一対設けられる。一方の磁石30は、シリンダ10のテーパ平面部15と当接する端面31がN極であり、他方の磁石30は、シリンダ10のテーパ平面部15と当接する端面31がS極である。これにより、対向する一対の磁石30の間に直線的な磁界を発生させ、シリンダ10内の磁気粘性流体に磁界を作用させることを可能としている。
【0034】
磁石30を、テーパ平面部15に取り付けられたときに、シリンダ10の外径寸法に収まる厚さの平板状に形成してもよい。この場合、磁石30がシリンダ10から外周に突出しないため、磁石30が設けられない通常の緩衝器と同様に用いることが可能である。例えば、磁気粘性流体緩衝器100の外周にコイルばねを取り付けて、スプリングダンパとして用いることが可能である。
【0035】
磁石30は、ピストンロッド22がシリンダ10内に最も進入したときのピストン21の位置に対応して配設される。つまり、図1では、磁石30は、ピストン21が最も下降したときにピストン21の外周に臨むように配設される。
【0036】
これにより、シリンダ10内の磁気粘性流体は、磁石30から離れた位置では、磁界の影響が小さいため粘度が低く、磁石30に近付くほど磁界の影響が大きくなり強磁性を有する微粒子が集まることによって粘度が高くなる。
【0037】
また、磁石30は、テーパ平面部15に取り付けられるため、磁石30とシリンダ10内の磁気粘性流体との距離は、軸方向の位置によって相違する。そのため、一対の磁石30間においても、シリンダ10内の磁気粘性流体の粘度は、軸方向の位置によって相違することとなる。
【0038】
具体的には、一対の磁石30間では、テーパ平面部15が形成されることによって、ピストンロッド22がシリンダ10内に進入する方向に向かって、円筒部11の肉厚が徐々に小さくなる。そのため、テーパ平面部15に取り付けられる磁石30と、シリンダ10内の磁気粘性流体との間の距離は、テーパ平面部15のテーパに倣って連続的に小さく変化する。よって、磁気粘性流体の粘度は、ピストンロッド22がシリンダ10内に進入する方向に向かって徐々に高くなる。
【0039】
以上より、ピストンロッド22がシリンダ10内に進入する方向にストロークすると、ピストン21とシリンダ10との間の間隔を通過する磁気粘性流体への磁石30による磁界の影響が徐々に大きくなる。これにより、シリンダ10内に進入する方向へのピストンロッド22のストローク量に応じて、磁気粘性流体の見かけの粘度が比例的に高くなる。したがって、磁気粘性流体緩衝器100の減衰係数は、ピストンロッド22がシリンダ10内に進入するほど大きくなることとなる。
【0040】
ここで、図4を参照して、磁気粘性流体緩衝器100における減衰係数の変化について説明する。図4において、横軸は、シリンダ10に対するピストンロッド22の進入量であるストローク量[m]であり、縦軸は、磁気粘性流体緩衝器100の減衰係数[N・s/m]である。
【0041】
磁気粘性流体緩衝器100の減衰係数は、図4における直線Aのように、比例的に大きくなる。
【0042】
具体的には、ストローク量がSminの状態からピストンロッド22がシリンダ10内に進入してゆくと、減衰係数は比例的に大きくなり、ストローク量がSmaxのときに減衰係数が最大となる。これは、ピストン21とシリンダ10との間の環状の間隔における磁気粘性流体の粘度が徐々に高くなるためである。
【0043】
このように、シリンダ10にテーパ平面部15が形成されることによって、シリンダ10内に封入される磁気粘性流体と磁石30との距離は、テーパ平面部15のテーパに倣って連続的に変化することとなる。したがって、ピストン21のストローク量に対して磁気粘性流体に作用する磁界の強さが連続的に変化するため、減衰係数を連続的に変化させることができる。
【0044】
なお、テーパ平面部15におけるテーパの角度を調整することで、ストローク量に対する減衰係数の変化率を調整することが可能である。
【0045】
以上の第1の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0046】
シリンダ10の軸方向に向かってテーパ状に肉厚が変化するテーパ平面部15が円筒部11に形成され、テーパ平面部15が形成される位置に磁石30が取り付けられることによって、シリンダ10内に封入される磁気粘性流体と磁石30との距離は、テーパ平面部15のテーパに倣って連続的に変化することとなる。したがって、ピストン21のストローク量に対して磁気粘性流体に作用する磁界の強さが連続的に変化するため、減衰係数を連続的に変化させることができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
以下、図2を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る磁気粘性流体緩衝器200について説明する。なお、以下に示す各実施の形態では、前述した実施の形態と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0048】
第2の実施の形態では、シリンダ210の外周面に平面部215が形成され、シリンダ210の内周にテーパ内周部216が形成される点で、前述した実施の形態とは相違する。
【0049】
シリンダ210は、円筒部11の外周面にシリンダ210の他の部分と比較して薄肉に形成される一対の平面部215と、円筒部11の内周に設けられ軸方向に向かってテーパ状に形成されて円筒部11の肉厚を徐々に変化させるテーパ内周部216とを有する。磁気粘性流体緩衝器200では、テーパ内周部216がテーパ部に該当する。
【0050】
平面部215は、シリンダ210における円筒部11の外周面に凹状に形成される。平面部215は、180度間隔で二箇所に形成される。一対の平面部215は、互いに平行に対向するように設けられる。平面部215は、円筒状に形成されるシリンダ10の接線方向に平行な平面として矩形に形成される。一対の平面部215には、磁石30が各々取り付けられる。
【0051】
このように、シリンダ210の外周面に平面部215が形成されることによって、取り付けられる磁石30をシリンダ210の外周面に対応した円弧状の形状に形成する必要はなく、磁石30の端面31を平面状に形成することが可能となる。よって、磁石30の加工コストを低減できるとともに、シリンダ210への磁石30の取付性を向上できる。
【0052】
テーパ内周部216は、外周面に平面部215が形成された位置に対応してシリンダ210の内周に形成される。テーパ内周部216は、ピストンロッド22がシリンダ210内に最も進入したときのピストン21の位置に対応する位置に対応してシリンダ210の内周に形成される。テーパ内周部216は、ピストンロッド22がシリンダ210内へ進入する方向に向かって、シリンダ210における円筒部11の肉厚が薄くなるように形成される。
【0053】
磁石30は、テーパ内周部216が形成された位置に対応してシリンダ210の外周面に形成される平面部215に取り付けられる。そのため、一対の磁石30間では、ピストンロッド22がシリンダ10内に進入する方向に向かって、円筒部11の肉厚が徐々に小さくなる。即ち、磁石30と、シリンダ10内の磁気粘性流体との間の距離は、テーパ内周部216のテーパに倣って連続的に小さく変化する。よって、ピストンロッド22がシリンダ210内に進入する方向に向かって、磁石30から磁気粘性流体に作用する磁界が徐々に強くなるため、磁気粘性流体の粘度は徐々に高くなる。
【0054】
以上より、ピストンロッド22がシリンダ210内に進入する方向にストロークすると、ピストン21とシリンダ210との間の間隔を通過する磁気粘性流体への磁石30による磁界の影響が徐々に大きくなる。これにより、シリンダ210内に進入する方向へのピストンロッド22のストローク量に応じて、磁気粘性流体の見かけの粘度が比例的に高くなる。したがって、磁気粘性流体緩衝器100の減衰係数は、ピストンロッド22がシリンダ10内に進入するほど大きくなることとなる。
【0055】
磁気粘性流体緩衝器200の減衰係数は、図4における直線Bのように、比例的に大きくなる。磁気粘性流体緩衝器200の減衰係数は、第1の実施の形態における磁気粘性流体緩衝器100の減衰係数と比較すると、ストローク量に対する増加率が小さい。これは、磁石30と磁気粘性流体との距離が徐々に近付くのと同時に、絞りの役割をするピストン21とシリンダ10との間の環状の間隔が徐々に大きくなるためである。
【0056】
磁気粘性流体緩衝器200では、ピストン21とシリンダ10との間の環状の間隔が大きくなることによる影響と比較して、磁石30が近付くことによって磁気粘性流体の粘度が高くなることによる影響の方が大きい。これにより、磁気粘性流体緩衝器200の減衰係数は、ストローク量に対して比例的に大きくなる。
【0057】
以上の第2の実施の形態によれば、シリンダ210にテーパ内周部216が形成されるため、シリンダ210内に封入される磁気粘性流体と磁石30との距離は、テーパ内周部216のテーパに倣って連続的に変化することとなる。したがって、ピストン21のストローク量に対して磁気粘性流体に作用する磁界の強さが連続的に変化するため、減衰係数を連続的に変化させることができる。
【0058】
(第3の実施の形態)
以下、図3を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る磁気粘性流体緩衝器300について説明する。
【0059】
第3の実施の形態では、シリンダ310の外周面にテーパ平面部15が形成されるとともに、シリンダ310の内周にテーパ内周部216が形成される点で、前述した実施の形態とは相違する。
【0060】
シリンダ310は、円筒部11の外周面に設けられ軸方向に向かってテーパ状に形成されて円筒部11の肉厚を徐々に変化させるテーパ平面部15と、円筒部11の内周に設けられ軸方向に向かってテーパ状に形成さて円筒部11の肉厚を徐々に変化させるテーパ内周部216とを有する。磁気粘性流体緩衝器300では、テーパ平面部15とテーパ内周部216とがテーパ部に該当する。
【0061】
磁気粘性流体緩衝器300の減衰係数は、図4における直線Cのように、比例的に大きくなる。磁気粘性流体緩衝器300の減衰係数は、ストローク量に対する増加率が、第1の実施の形態における磁気粘性流体緩衝器100の減衰係数と比較すると小さく、第2の実施の形態における磁気粘性流体緩衝器200と比較すると大きい。
【0062】
これは、テーパ内周部216が形成されることによって、磁石30と磁気粘性流体との距離が徐々に近付くとともに、絞りの役割をするピストン21とシリンダ10との間の環状の間隔が徐々に大きくなるが、テーパ平面部15が形成されることによって、磁石30と磁気粘性流体との距離が更に近付くためである。
【0063】
以上の第3の実施の形態によれば、シリンダ310にテーパ平面部15とテーパ内周部216とが形成されるため、シリンダ210内に封入される磁気粘性流体と磁石30との距離は、テーパ平面部15とテーパ内周部216とのテーパに倣って連続的に変化することとなる。したがって、ピストン21のストローク量に対して磁気粘性流体に作用する磁界の強さが連続的に変化するため、減衰係数を連続的に変化させることができる。
【0064】
以上のように、第1の実施の形態では、テーパ部としてシリンダ10の外周面にテーパ平面部15が形成される。第2の実施の形態では、テーパ部としてシリンダ10の内周にテーパ内周部216が形成される。第3の実施の形態では、テーパ部としてシリンダ10の外周面と内周との双方にテーパ平面部15とテーパ内周部216とが形成される。
【0065】
このように、シリンダの外周面と内周面との少なくともいずれか一方にテーパ部を形成すれば、シリンダの肉厚は軸方向に向かってテーパ状に変化し、ピストン21のストローク量に対して磁気粘性流体に作用する磁界の強さが連続的に変化するため、減衰係数を連続的に変化させることができる。
【0066】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る磁気粘性流体緩衝器は、車両などに搭載される緩衝器として利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
100 磁気粘性流体緩衝器
10 シリンダ
11 円筒部
15 テーパ平面部(テーパ部)
21 ピストン
22 ピストンロッド
30 磁石
31 端面
200 磁気粘性流体緩衝器
210 シリンダ
215 平面部
216 テーパ内周部(テーパ部)
300 磁気粘性流体緩衝器
310 シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体によって円筒形に形成され、磁界の作用によって粘性が変化する磁気粘性流体が封入されるシリンダと、
非磁性体によって形成され、前記シリンダの内周との間に磁気粘性流体が通過可能な間隔をもって前記シリンダ内に摺動自在に配置されるピストンと、
前記ピストンが連結されるピストンロッドと、
前記シリンダ内に磁界を作用させる磁石と、を備える磁気粘性流体緩衝器であって、
前記シリンダは、その外周面と内周面との少なくともいずれか一方に形成され軸方向に向かってテーパ状に肉厚が変化するテーパ部を有し、
前記磁石は前記テーパ部が形成される位置に対応して前記シリンダの外周に取り付けられることを特徴とする磁気粘性流体緩衝器。
【請求項2】
前記テーパ部は、前記ピストンロッドが前記シリンダ内へ進入する方向に向かって、前記シリンダの肉厚が薄くなるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気粘性流体緩衝器。
【請求項3】
前記テーパ部は、前記ピストンロッドが前記シリンダ内に最も進入したときの前記ピストンの位置に対応して形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気粘性流体緩衝器。
【請求項4】
前記テーパ部は、前記シリンダの外周に凹状に形成され前記磁石が取り付けられるテーパ平面部であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の磁気粘性流体緩衝器。
【請求項5】
前記シリンダは、その外周に凹状に形成され前記磁石が取り付けられる平面部を有し、
前記テーパ部は、前記シリンダの内周に形成されるテーパ内周部であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の磁気粘性流体緩衝器。
【請求項6】
前記テーパ部は、前記シリンダの外周に凹状に形成され前記磁石が取り付けられるテーパ平面部と、前記シリンダの内周に形成されるテーパ内周部とであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の磁気粘性流体緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−177406(P2012−177406A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39994(P2011−39994)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】