説明

磁気記録媒体、磁気記憶装置および磁気記録媒体の製造方法

【課題】簡易な構成で、出力が大きく、安定なサーボパターンを形成すること。
【解決手段】サーボパターンを第1パターン群と第2パターン群に分け、サーボ情報エリアでは磁気ヘッドの進行方向に対して第1パターンと第2パターンとを交互に配置し、サーボ情報エリア以外の場所において前記第1パターンのみを配置した所定領域を設け、全ての第1パターンが所定領域に配置された部分とサーボ情報エリアに配置された部分とを有するように構成する。かかるサーボパーンに対し、一旦全体を同一方向に磁化した後、所定領域を選択的に磁化することで、第1パターン群と第2パターン群との磁化方向を反転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドの位置決めに用いるサーボパターンを垂直磁気記録面上に形成した磁気記録媒体、磁気記憶装置および磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクなどの磁気記憶装置は大容量化しており、磁気記録媒体の記録密度向上が求められてきた。かかる高密度化の要望に応えるため、記録面に対して垂直方向に磁化を行なう垂直磁気記録方式が用いられている。
【0003】
そして近年では、さらなる記録密度の改善を実現するため、DTM(Discreet Track Media)やBPM(Bit Patterned Media)に関する研究開発が盛んに行われている。
【0004】
DTMは記録トラックの間に物理的な溝や磁気特性のことなるラインを設けることで、隣接トラックの情報を消してしまうATI(Adjacent Track Interference)耐性を大幅に改善することが出来る。また、BPMは、ダウントラック方向にも構造を設けた3次元的な磁気ビットを形成することにより、前記ATI耐性に加えて、ダウントラック方向の記録再生特性を飛躍的に向上することができるために、次世代情報記録媒体として注目されている。
【0005】
DTMやBPMのように情報記録用の構造を予め形成する場合、磁気ヘッドの位置制御のためのサーボパターンも予め形成することとなる。
【0006】
ここで、垂直磁気記録方式においては、隣接磁化領域(隣接ビット)からの静磁界が反磁界として作用し、磁化を反転させる方向に働く。ユーザデータを書き込む領域については、磁化方向が比較的ばらつくので、磁化反転が発生する可能性は比較的低いが、サーボパターンではユーザデータに比して同一の磁化方向が連続することが多く、磁化反転が発生する可能性が高くなるので、書き込んだ情報は不安定となる。
【0007】
加えて、DTMやBPMでは、データ部の情報はN極とS極の出力の差分で検出されるが、サーボパターンで全体を一括して磁化し、所定の磁化方向の有無を検出することとすると、N極とS極の双方が存在するデータ部に比して出力が半分になり、サーボ情報の検出精度が低下してしまう。
【0008】
そこで従来、サーボパターンの下に磁性層を新たに設けることで、記録媒体の深さ方向に対して磁化の方向を変化させ、サーボ部の信号出力の確保と磁化状態の安定性を確保する手段が提案されていた。
【0009】
【特許文献1】特開2007−95115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、磁性層を新たに加えることとすると、磁性層の間で磁化の方向を変えるように保磁力や飽和磁化等の特性を精密に調整する必要がある。また、実際にユーザーが情報を記録するユーザデータエリアとサーボパターンとで積層構造を変えることはプロセス上非常に難しい。また、ユーザデータエリアの構造をサーボパターンに合わせると、ユーザーが情報を記録するエリアの特性が制限を受けてしまうといった問題がある。
【0011】
そのため、積層構造に変更を加えることなく、出力が大きく、安定なサーボパターンを形成することが重要な課題となっていた。
【0012】
本磁気記録媒体、磁気記憶装置および磁気記録媒体の製造方法は、上述した従来技術の問題点を解消し、課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で、出力が大きく、安定なサーボパターンを形成した磁気記録媒体、磁気記憶装置および磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、開示の媒体、装置および方法では、サーボパターンを第1パターン群と第2パターン群に分け、サーボ情報エリアでは磁気ヘッドの進行方向に対して第1パターンと第2パターンとを交互に配置し、サーボ情報エリア以外の場所において第1パターンのみを配置した所定領域を設け、全ての第1パターンが所定領域に配置された部分とサーボ情報エリアに配置された部分とを有するように構成する。かかるサーボパーンに対し、一旦全体を同一方向に磁化した後、所定領域を選択的に磁化することで、第1パターン群と第2パターン群との磁化方向を反転させる。
【発明の効果】
【0014】
開示の媒体、装置および方法によれば、簡易な構成で、磁化方向が交互に変化することで、大出力かつ安定なサーボパターンを形成した磁気記録媒体、磁気記憶装置および磁気記録媒体の製造方法を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本実施例にかかる磁気記録媒体、磁気記憶装置および磁気記録媒体の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本実施例にかかるサーボパターン形成の概要について説明する説明図である。図1に示したサーボパターンは、第1パターンであるパターンP1と、第2パターンであるパターンP2を有する。このパターンP1,P2は、磁気ヘッドがダウントラック方向に移動すると、パターンP1上とパターンP2上とを交互に通過するように配置する。パターンP1のみが存在し、パターンP2が存在しない領域を選択着磁領域として有する。この選択着時領域は、サーボパターンのうち、磁気ヘッドに位置決め用の情報を提供するサーボ情報エリア以外の場所、すなわちガードバンドに設ける。
【0017】
かかる配置のサーボパターン全体を同一方向に磁化した上で、選択着磁領域のみ逆方向に着磁すると、パターンP1のうち、選択着時領域に属する部分のみ逆方向に磁化される。
【0018】
その後、サーボパターン全体に対し、向きの異なる磁界を交互に複数回印加すると、パターンP2の磁化状態を維持したまま、パターンP1全体が逆方向に磁化される。
【0019】
この結果、ダウントラック方向に対して磁化方向の異なるパターンP1,P2を交互に配置することができる。
【0020】
図2は、本実施例にかかるサーボパターンを利用するハードディスク装置の概要構成を説明する概要構成図である。図2に示したように、ハードディスク装置1は、ベース10内部に、磁気情報を記録する記録媒体11、記録媒体11を回転させるスピンドルモータ17、磁気記録媒体11に対して磁気情報の読み書きを行なう磁気ヘッド12、磁気ヘッド12を保持するサスペンション14、サスペンション14を揺動させて磁気ヘッド12の位置制御を行なうボイスコイルモータ16、磁気記憶装置1全体を制御する制御回路15を有する。
【0021】
磁気記録媒体11の記録面には、図3に示したように、ユーザデータを格納する情報記録領域トラック11bをほぼ同心円状に形成し、また情報記録領域トラック11bに対してセクター状にヘッド位置制御用のサーボパターン11aを形成する。磁気ヘッド12は、このサーボパターン11aの情報に基づいて位置制御されることで、磁気記録媒体11上の所望の位置への情報の記録再生を行なうことができる。
【0022】
また、磁気記録媒体11は、DTMあるいはBPMである。図4は、DTMにおける情報記録領域トラック11bの形状を説明する説明図である。図4に示した構成では、トラック間に物理的に溝を設けることで、トラック同士を磁気的に分離している。図5は、BPMにおける情報記録領域トラック11bの形状を説明する説明図である。図5に示した構成では、トラック間に加え、ダウントラック方向についても溝を設けて各ビットを磁気的に分離している。
【0023】
図6は、従来のサーボパターンの一部を模式的に示した模式図である。一般にサーボパターンは、情報を記録するトラックのダウントラック方向に対して垂直な方向に連なるパターンを有している。そして、BPMやDTMの場合には、一般にサーボパターン部では、一定の方向に着磁されている。
【0024】
その際、図4に示したように、従来の構成では部分的に磁化反転部が生じていた。この磁化反転の発生について、図7を参照して説明する。図7では、基板30上にサーボ部磁性層31を形成し、全体を同一方向に磁化している。この時、垂直磁気記録方式で各々を垂直方向に磁化すると、隣からの静磁界が反磁界として作用し、磁化を反転させる方向に働く。このようにサーボパターンで磁化反転が生じると、磁気ヘッドの位置制御するうえで誤った位置情報を与えることになる。
【0025】
そのため、図8に示すように、サーボパターンがクロストラック方向に対して、磁化の方向が交互に反転するような構成が望ましい。この構成では、隣との磁化方向が互いに異なるため、互いの磁化方向を強める作用となるので、磁化反転を防ぐことができる。
【0026】
また、DTMやBPMでは、情報記録領域トラック11b、すなわち、ユーザデータを格納するデータ部の情報はN極とS極の出力の差分で検出されるが、図7に示したサーボパターン構成では、出力がその半分になり、サーボパターンの検出精度が低下する。
【0027】
図9に示したように、サーボ部磁性層31と基板30との間に磁性層32を設け、記録媒体の深さ方向に対して磁化の方向が変化する構成とすれば、サーボパターンの信号出力の確保と磁化状態の安定性を確保することができるが、サーボ部磁性層31と磁性層32との間で保磁力や飽和磁化等の特性の精密な調節を要する。
【0028】
このような従来技術に対し、本実施例に係るサーボパターンでは、サーボパターンの形状と磁化処理によって、積層構造を変化させることなく図8に示したように交互に磁化方向が反転するパターンを得ることができる。
【0029】
つぎに、図10〜図13を参照し、本実施例に係るサーボパターンの形状と磁化処理についてさらに詳細に説明する。図10はサーボパターンの具体的な形状の一例である。サーボパターンは、プリアンブル、グレーコードによるアドレス部および位相部を有する。
【0030】
ブリアンブルは、サーボパターンの開始を示す領域であり、アドレス部はアドレス自体を示し、位相部は同一アドレスの範囲内での位置ずれを示す。以下の説明では、説明を簡明にするため、主にプリアンブル部を例に説明を行なう。
【0031】
図10に示したパターンでは、磁気ヘッドが移動するダウントラック方向に対して垂直な、クロストラック方向にブリアンブル部分のパターンが延びている。また、ダウントラック方向には、連結部が伸びている。
【0032】
そして、クロストラック方向に伸びたパターンは、ダウントラック方向に一つ置きに連結部に繋がっており、櫛歯形状のパターンを組み合わせた形をしている。換言するならば、各連結部からは、ダウントラック方向の両側にプリアンブル部のパターンが伸びている。この各連結部は、一つおきにパターンP1,P2に対応しており、連結部から伸びたブリアンブル部のパターンもそれぞれパターンP1,P2のいずれかに属する。
【0033】
ブリアンブル部に属するいずれのパターンも、パターンP1,P2の双方に属することは無く、連結部はそれぞれのパターンについて他方のパターンを含まない所定領域となる。
【0034】
さらに、図10の状態は、サーボパターン全体、すなわちパターンP1,P2の双方を同一方向に着磁している。ここでは、図10を磁気ヘッド浮上面から見た上面図とし、磁気ヘッド側から基板側に垂直なN極→S極の一様な磁界で着磁したものとする。
【0035】
次に図11に示すように、パターンP1の連結部に対して逆の方向、すなわち磁気ヘッド側から基板側に垂直なN極→S極の方向に着磁すると、連結部のみS極となる。
【0036】
さらに、外部より磁気ヘッド側から基板側に垂直なN極→S極の一様な磁界を印加すると、図12に示したようにS極に着磁された領域が拡大する。次にS極→N極の磁界を印加し、さらに反転させた磁界N極→S極を印加することを繰り返すと、図13にように、交互に磁化の反転したプリアンブル部が形成される。なお、アドレス部および位相部に関しても原理的には同じように交互に反転したパターンが形成される。
【0037】
この磁化プロセスについて、フローチャートを参照して説明する。図14は、磁気転写用のモールドを用いる磁化プロセスについて説明するフローチャートである。磁気転写用モールドは、図15に示すように、同心円状に着磁用パターン42が形成されている。
【0038】
図14に戻り、まず、磁気記録媒体の全体に対し、電磁石または永久磁石を用いて、記録面の上方からN極→S極方向に着磁させる(S101)。次に、図15に示した磁気転写用モールド40を磁気記録媒体に近接させて配置する(S102)。図15には図示していないが、磁気記録媒体と、磁気転写用モールド40には、内周領域および外周領域に位置会わせ用の十字マークを予め形成しておき、この位置を合わせるようにモールドを配置する。これによりX−Y方向にそれぞれ±10μm以下の精度で位置を合わせることができる。
【0039】
つぎに、磁気転写用モールド40を配置した状態で、記録面上方からS極→N極に磁界を印加する(S103)。この磁界の印加によって連結部の選択的着磁ができる。
【0040】
その後、磁気転写用モールド40を退避させ(S104)、記録面上方からS極→N極方向の磁界の印加(S105)と、記録面上方からN極→S極方向の磁界を行なう(S106)。このステップS105,S106の実行回数Nを規定回数N0と比較し(S107)、規定回数に達していなければ(S107,Yes)、実行回数Nに1を加えて(S108)、ステップS105に戻る。そして、実行回数Nが規定回数に達した場合に(S107,No)、処理を終了する。
【0041】
なお、図14では磁気転写モールドを用いる選択的着磁を例示したが、例えば図16に示した着磁装置を用い、磁気ヘッドにより連結部を選択的に磁化することもできる。図16に示した着磁装置50は、その内部にメインコントローラユニット51、メモリ52、データバッファメモリ53、プリアンプ54およびサーボコントローラ55を有する。
【0042】
データバッファメモリ53は、BPMの着時箇所、すなわち連結部の位置データを記憶している。メインコントローラユニット51は、この連結部の位置データを読み出し、メモリ52を主記憶装置として使用しつつ、プリアンプ54やサーボコントローラ55を制御して、BPMの着磁を行なう。
【0043】
サーボコントローラ55は、スピンドルモータ61を動作させてBPMを回転させるとともに、ボイスコイルモータ62を動作させることでサスペンション63に取り付けられた磁気ヘッド64の位置制御を行なう。そして、プリアンプ54は、磁気ヘッド64の磁界を制御して、BPMに対する着磁を実行する。
【0044】
図17は、着磁装置50を用いる磁化プロセスについて説明するフローチャートである。この磁化プロセスでは、まず、磁気記録媒体の全体に対し、電磁石または永久磁石を用いて、記録面の上方からN極→S極方向に着磁させる(S201)。次に、図16に示した磁気ヘッド64をロードする(S202)。
【0045】
つぎに、磁気ヘッド64の位置を制御しつつ、記録面上方からS極→N極に磁界を印加する(S203)。この磁界の印加によって連結部の選択的着磁ができる。
【0046】
その後、磁気ヘッド64を退避させ(S204)、記録面上方からS極→N極方向の磁界の印加(S205)と、記録面上方からN極→S極方向の磁界を行なう(S206)。このステップS205,S206の実行回数Nを規定回数N0と比較し(S207)、規定回数に達していなければ(S207,Yes)、実行回数Nに1を加えて(S208)、ステップS205に戻る。そして、実行回数Nが規定回数に達した場合に(S207,No)、処理を終了する。
【0047】
つぎに、BPMの作製について説明する。図18は、BPM作製プロセスを説明する説明図である。BPM作製においては、まず、精密に研磨したガラス原盤上に厚み数十nmの厚みのレジストを塗布し(S301)、電子線露光(S302)後にエッチング(S303)によりビットパターンを形成する。その後アッシング等でレジスト除去(S304)を行い、洗浄により原盤が完成する(S305)。
【0048】
電子ビーム露光に当たっては、例えば図19に示した構成の露光装置を用いる。図19に示した露光装置では、メインコントローラ71がスピンドルモータドライバ75とステージドライバ76を制御してBPM原盤の位置を制御するとともに、電子源コントローラ73および電子ビームコントローラ74を制御することで、BPMに照射する電子線を制御する。
【0049】
具体的には、レジストを塗布し、プリベークを行ったBPM用原盤をエアースピンドルモータ78に取り付け、所望の回転数で回転させる。一方、電子源からの電子線を電磁界による電子線調整系を介した後、同じく電磁石により構成された電子線集束系により、BPM原盤上に集束させる。メインコントローラ71は、フォーマッタ72からの情報に基づきスピンドルモータドライバ75により原盤の回転位置を調整するとともに、ステージドライバ76を用いて電子線集束位置に対するポジションを調整する。さらに、フォーマッタ72からの情報に基づいて、電子線の強弱と位置を高速で変調して、ビット情報の記録を行なう。
【0050】
図18に戻り、説明を続けると、BPM媒体に使用するガラス基板(S311)上に密着層成膜(S312)、SUL(Soft Under Layer)層成膜(S313)、下地層と中間層成膜(S314)、垂直磁性層成膜(S315)、保護層成膜(S316)を順次実行する。この各成膜については、たとえばスパッタリング法などを用いることができる。
【0051】
この基板に対して、上述したBPM原盤を用いて、ナノインプリント用のレジストを充填し(S317)、UVを照射し(S318)、原盤の剥離(S319)を行なうことで、基板上にビットを形成する。
【0052】
さらに、形成されたレジストビットに対して、エッチングを行い(S320)、アッシングによりレジストを除去する(S321)ことで、磁性ビットパターンが形成される。さらに金属等の充填層を製膜した(S322)後、逆スパッタリング等により前記BPM媒体の平坦化(S323)を行なう。そして洗浄(S324)後に保護膜を形成して(325)潤滑剤を塗布する(S326)ことで、図20に示したBPMの構造が形成できる。
【0053】
本実施例では、垂直磁性層として、CoとPdをサブナノメーターの厚みで交互に積層した人工格子膜を使用している。特にプリアンブル部に関しては、図21に示す構成からなっている。詳細なパラメータの一例は、
保磁力Hc:0.3 T(=3kOe)
飽和磁束密度 Bs:0.08T(800 emu/cc)
磁性層厚:15 nm
プリアンブルピッチ:60nm
プリアンブル幅:40nm
Lp:2.4μm
Lk:300μm
トラックピッチ:100nm
トラックセクター数:220
である。
【0054】
図22は、選択着磁後に交互に印加する磁界強度を3通りに変えてプリアンブル部の磁化反転エラー率を磁化印加サイクルに対してプロットしたものである。H=Hc-Bs = 0.22Tにすることで、10サイクルの印加で、ほぼエラーのない磁化反転が達成できる。それ以上の磁界では、磁化の印加ごとに反転位置が大きく移動するため、エラーが減少しない。また、H=Hc-Bs 未満の磁界では、サイクル数をさらに増やさないとエラー率が低下しない。H=Hc-Bsとすることで安定に素早く所望の磁化状態が実現できる。
【0055】
以上説明してきたように、本実施例にかかるサーボパターンは、磁気的に連続して形成されているライン形状部をほぼ平行に形成された磁気バターンを有し、且つ、該複数の磁気パターンのうちライン形状とほぼ直角方向に隣接するパターンが1つ置きに連結されている構成を有する。これにより、ライン形状を連結した磁気パターンは、ライン形状を歯、連結部を背とする櫛歯形状を有し、かつ連結部が情報を記録するトラックと平行である構成となる。
【0056】
そして、磁気パターンは、第一のステップとして全体を一方向に磁化した後、第二のステップとして、特定の連結部を反対方向に磁化させ、第三のステップとして外部より交互に向きのことなる磁界を複数回印加させることにより、ライン形状部が隣接ライン形状間で磁化方向が反転している構成となる。
【0057】
このように、サーボパターンを第1パターン群と第2パターン群に分け、サーボ情報エリアでは磁気ヘッドの進行方向に対して第1パターンと第2パターンとを交互に配置し、サーボ情報エリア以外の場所において前記第1パターンのみを配置した所定領域を設け、全ての第1パターンが所定領域に配置された部分とサーボ情報エリアに配置された部分とを有するように構成すれば、一旦全体を同一方向に磁化した後、所定領域を選択的に磁化することで、第1パターン群と第2パターン群との磁化方向を反転させることができる。
【0058】
このため、簡易な構成で、出力が大きく、安定なサーボパターンを形成することができる。これにより、信頼性が高く、高密度記録可能な情報記録媒体が安価に提供できる。
【0059】
なお、本実施例はあくまで一例であり、本発明は適宜その構成および手順を変形して実施することができる。例えば、本実施例では、第1パターンと第2パターンの双方に連結部を持たせ、第1パターンの連結部のみを選択的に磁化する場合を例に説明を行なったが、パターンの形状は適宜変更して実施することが可能である。
【0060】
例えば、図23に示すように、第1パターンP1と第2パターンP2の双方の形状を、短いライン部分の長手がクロストラック方向に間隙を有して並ぶ形状とし、第1パターンP1と第2パターンP2とがダウントラック方向に交互に、かつ間隙の位置をずらして配置するようにしても良い。この場合、第2パターンP2の間隙部分は、第1パターンP1のみが存在する所定領域となり、この所定領域を選択的な着磁に用いることができる。
【0061】
また、図24に示すように、第2パターンP2の形状を、短いライン部分の長手がクロストラック方向に間隙を有して並ぶ形状とし、第1パターンP1はクロストラック方向に連続して延びる形状としても良い。そして、第1パターンP1と第2パターンP2とをダウントラック方向に交互に配置すれば、第2パターンP2の間隙部分は、第1パターンP1のみが存在する所定領域となり、この所定領域を選択的な着磁に用いることができる。
【0062】
また、図25に示すように、第2パターンP2の形状を、短いライン部分の長手がクロストラック方向に間隙を有して並ぶ形状とし、第1パターンP1はクロストラック方向に連続して延び、かつダウントラック方向に連結した形状としても良い。この構成では、第2パターンP2の間隙部分は、第1パターンP1の連結部のみが存在する所定領域となり、この所定領域を選択的な着磁に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本実施例にかかるサーボパターン形成の概要について説明する説明図である。
【図2】図2は、本実施例にかかるサーボパターンを利用するハードディスク装置の概要構成を説明する概要構成図である。
【図3】図3は、磁気記録媒体の記録面について説明する説明図である。
【図4】図4は、DTMにおける情報記録領域トラックの形状を説明する説明図である。
【図5】図5は、BPMにおける情報記録領域トラックの形状を説明する説明図である。
【図6】図6は、従来のサーボパターンの一部を模式的に示した模式図である。
【図7】図7は、磁化反転の発生について説明する説明図である。
【図8】図8は、磁化方向が交互に反転するサーボパターンについて説明する説明図である。
【図9】図9は、記録媒体の深さ方向に対して磁化の方向が変化する構成について説明する説明図である。
【図10】図10は、サーボパターンの具体的な形状を説明する説明図である。
【図11】図11は、連結部を選択的に着磁したサーボパターンについて説明する説明図である。
【図12】図12は、連結部の磁化方向の拡大について説明する説明図である。
【図13】図13は、交互に磁化の反転したプリアンブル部について説明する説明図である。
【図14】図14は、磁気転写用のモールドを用いる磁化プロセスについて説明するフローチャートである。
【図15】図15は、磁気転写用モールドの構成について説明する説明図である。
【図16】図16は、着磁装置の構成について説明する説明図である。
【図17】図17は、着磁装置50を用いる磁化プロセスについて説明するフローチャートである。
【図18】図18は、BPM作製プロセスを説明する説明図である。
【図19】図19は、露光装置の構成について説明する説明図である。
【図20】図20は、BPMの断面構造について説明する説明図である。
【図21】図21は、ブリアンブル部の構成について説明する説明図である。
【図22】図22は、磁界強度とプリアンブル部の磁化反転エラー率の関係について説明する説明図である。
【図23】図23は、サーボパターン形状の変形例である。(その1)
【図24】図24は、サーボパターン形状の変形例である。(その2)
【図25】図25は、サーボパターン形状の変形例である。(その3)
【符号の説明】
【0064】
1 磁気ディスク装置
10 ベース
11 記録媒体
11a サーボパターン
11b 情報記録領域トラック
12 磁気ヘッド
14 サスペンション
15 制御回路
16 ボイスコイルモータ
17 スピンドルモータ
30 基板
31 サーボ部磁性層
32 磁性層
50 着磁装置
51 メインコントローラユニット
52 メモリ
53 データバッファメモリ
54 プリアンプ
55 サーボコントローラ
61 スピンドルモータ
62 ボイスコイルモータ
63 サスペンション
64 磁気ヘッド
71 メインコントローラ
72 フォーマッタ
73 電子源コントローラ
74 電子ビームコントローラ
75 スピンドルモータドライバ
76 ステージドライバ
77 ステージ
78 スピンドルモータ
P1 第1パターン
P2 第2パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドの位置決めに用いるサーボパターンを垂直磁気記録面上に形成した磁気記録媒体であって、
前記サーボパターンは、互いに異なる方向に磁化された第1パターン群と第2パターン群とを有し、
前記サーボパターンのうち、前記磁気ヘッドに位置決め用の情報を提供するサーボ情報エリアにおいて、前記磁気ヘッドの進行方向に対して第1パターンと第2パターンとを交互に配置し、
前記サーボパターンのうち、前記サーボ情報エリア以外の場所において前記第1パターンのみを配置した1または複数の所定領域を有し、
全ての第1パターンが前記所定領域に配置された部分と前記サーボ情報エリアに配置された部分とを有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記所定領域に、複数の第1パターンを磁気的に連結する連結部を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記第1パターンと第2パターンとは同一方向に磁化された後、前記所定領域に対する選択的な磁化によって逆方向に着磁した上で、交互に向きの異なる磁界を印加したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
磁気転写モールドを用いて前記選択的な磁化を行なったことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記向きの異なる磁界を交互に印加する際に、印加する磁界の強さは、前記サーボパターンの保磁力と飽和磁束密度との差の値とほぼ同一であることを特徴とする請求項3または4に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
磁気情報の読み書きを行なう磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドの位置決めに用いるサーボパターンを垂直磁気記録面上に形成した磁気記録媒体とを有し、
前記サーボパターンは、互いに異なる方向に磁化された第1パターン群と第2パターン群とを有し、
前記サーボパターンのうち、前記磁気ヘッドに位置決め用の情報を提供するサーボ情報エリアにおいて、前記磁気ヘッドの進行方向に対して第1パターンと第2パターンとを交互に配置し、
前記サーボパターンのうち、前記サーボ情報エリア以外の場所において前記第1パターンのみを配置した1または複数の所定領域を有し、
全ての第1パターンが前記所定領域に配置された部分と前記サーボ情報エリアに配置された部分とを有することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項7】
磁気ヘッドの位置決めに用いるサーボパターンを垂直磁気記録面上に形成した磁気記録媒体の製造方法であって、
前記磁気ヘッドの進行方向に対して交互に配置された第1パターンと第2パターンについて、第1パターン群と第2パターン群の双方を同一方向に磁化する同方向磁化ステップと、
前記第1パターンを含み、前記第2パターンを含まない所定領域に対し、選択的に、かつ前記同方向磁化ステップの磁化方向とは反対方向の磁化を行なう選択磁化ステップと、
前記第1パターン群と前記第2パターン群の双方に対し、向きの異なる磁界を交互に印加する異方向磁化ステップと、
を含んだことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−146687(P2010−146687A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326458(P2008−326458)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】