説明

磁気記録媒体、磁気記録媒体製造方法、磁気記憶装置

【課題】磁気記録特性と耐食性に優れたディスクリートトラック媒体およびパターンド媒体を実現する。
【解決手段】基板上の凹凸パターンの凸部に形成された磁性体領域と、前記凹凸パターンの凹部に埋め込まれた充填体領域とを有する磁気記録層を備え、前記磁性体領域と前記充填体領域との間に、コバルトまたはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される層が存在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体、その製造方法、およびその磁気記録媒体を備えた磁気記憶装置に関し、特に高密度記録に好適なパターンドメディア、磁気記録媒体およびそれを用いた磁気記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータのみならず家庭用の電化製品にも小型で大容量の磁気ディスク装置が搭載されるなど、磁気記憶装置の大容量化の要求は強く、記録密度の向上が求められている。これに対応すべく、磁気ヘッドや磁気記録媒体などの開発が精力的に行われている。これまでは、面記録密度の向上が図られてきたが、一方で、ダウンサイジングやこれまで以上の飛躍的な記録密度の向上が求められてきている。
【0003】
そこで、隣接する記録トラックを溝または非磁性体で分離してトラック間の磁気的干渉を抑制するディスクリートトラック媒体(例えば、特許文献1参照)や、隣接する記録ビットを溝または非磁性体で分離してビット間の磁気的干渉を抑制するパターンド媒体(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
磁気記録媒体では、磁気ヘッドの浮上安定性を確保するために、表面の平坦性が重視される。面記録密度が高く、記録磁区が小さいディスクリートトラック媒体やパターンド媒体の場合、特に表面の平坦性が重要であるため、磁性体領域間の溝を非磁性体で充填する。
【0005】
さらに、従来の記録媒体と同様にディスクリート媒体やパターンド媒体においても、記録層の保護および潤滑剤の吸着のために、記録層の上に炭素系材料の保護膜が形成されるのが一般的である。
【0006】
炭素系材料の中でも、ダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCという)は、アモルファスであることから表面平滑性に優れ、耐久性、耐食性にも優れることから、上述の保護膜として利用されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
一方、ディスクリートトラック媒体やパターンド媒体の信頼性の向上に関しては、ドライエッチング等により磁性膜に凹凸加工をする際のダメージによる腐食や、記録層の磁性領域と非磁性領域との間の極微小な隙間や欠陥に起因する腐食の問題が顕在化している。
【0008】
従来の耐食性向上技術の例を挙げると、垂直磁気記録媒体においては、腐食が一番問題となる軟磁性下地層に関して、その上層であるシード層の材料や構造の組み合わせを選ぶことによって耐食性を向上させることが提案されている(たとえば、特許文献4)。
【0009】
さらに、ディスクリートトラック媒体やパターンド媒体においても、記録層と保護膜の間に導電膜を形成することで磁性体領域の腐食を抑制することが提案されている(たとえば、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−85406号公報(第1図)
【特許文献2】特許第3286291号公報(段落番号(0025))
【特許文献3】特開2006−120222号公報(段落番号(0025))
【特許文献4】特開2007−184019号公報(第1図)
【特許文献5】特開2006−228282号公報(段落番号(0051))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、磁性体領域の腐食を抑制するためにその上層に保護膜を形成すると、磁気ヘッドと磁気記録媒体の磁気的距離が増加し、磁気記録特性は劣化する。一方、磁気特性向上のために保護膜の薄膜化を進めていくと、耐食性の観点から製品性能を満足する結果を得ることが難しくなってくる。
【0012】
つまり、従来知られている磁気記録層の磁性体領域の防食技術では、高い磁気記録特性と耐食性を両立することができないという課題があることが判明した。
【0013】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、磁気記録特性と耐食性に優れたディスクリートトラック媒体およびパターンド媒体を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る磁気記録媒体は、基板上の凹凸パターンの凸部に形成された磁性体領域と、前記凹凸パターンの凹部に埋め込まれた充填体領域とを有する磁気記録層を備え、前記磁性体領域と前記充填体領域との間に、コバルトまたはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される層が存在しているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る磁気記録媒体によれば、磁気記録層の磁性体領域と充填体領域の間で腐食抑制作用が発揮されるので、耐食性に優れた磁気記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1に係る磁気記録媒体1の構造断面図である。
【図2】実施の形態2に係る磁気記録媒体1の製造方法を説明する図である。
【図3】実施の形態3に係る磁気記録媒体1の製造方法を説明する図である。
【図4】実施の形態4に係る磁気記録媒体1の製造方法の1部を説明する図である。
【図5】実施の形態5に係る磁気記憶装置の概略構成図である。
【図6】図5のA−A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の実施の形態の説明に先立ち、各実施の形態に共通する事項として、磁気記録層の磁性体領域に設ける有機物層に求められる特性を説明しておく。
【0018】
磁気記録媒体の磁気記録層において腐食が一番問題となるのは、磁性体領域に使用しているCo系合金である。Co合金は耐食性に優れていないばかりではなく、水溶液環境中において非常に卑な電位を持つため、近隣する金属との間においてガルバニック腐食(異種金属間腐食)を生じる。
【0019】
グラニュラー型磁気記録層の場合には、磁気記録層の結晶粒界への酸化物の偏析を促進させるために、RuまたはRu合金等で構成された層が、磁気記録層の下層に形成される。
【0020】
磁気記録層の加工部である凹部において、加工時に生じたダメージにより、RuまたはRu合金層が磁気記録層との間の接触部に露出した場合、磁気記録層のCo合金の腐食がガルバニック腐食を生じる。これは、RuまたはRu合金は貴金属であるために、非常に電位が高いことによる。このガルバニック腐食により、単体の腐食よりも腐食が加速される。
【0021】
また、ディスクリートトラック媒体やパターンド媒体においては、ドライエッチング等により磁気記録層に凹凸加工をする際に、エッチングによるダメージが生じる。そのため、磁性体領域の界面において腐食が加速されるという問題が顕在化している。
【0022】
本発明者は、上記のような磁性体領域の腐食を抑制するには、磁気記録層の磁性体領域の加工部位において、コバルトもしくはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される層を設ける手法が有効であることを見出した。これにより、異種金属接触による腐食や加工ダメージによる腐食を防止することができる。ただしこの場合、選定する有機物の特性が重要となる。
【0023】
腐食防止の観点から、磁気記録層の磁性体領域の加工部位に設ける有機物層の性質としては、以下の(要求項目1)〜(要求項目3)が要求される。
(要求項目1)CoまたはCo合金に対して腐食抑制作用を示すこと。
(要求項目2)欠陥ができるだけ少なく、平滑で緻密な膜が構成されていること。
(要求項目3)磁気ヘッドと磁気記録媒体の磁気的距離の増加による磁気記録特性の劣化を引き起こさない構造を有すること。
【0024】
また、有機物層そのものの性質ではないが、有機物層を形成させる際に、磁性体領域に影響を与えないことが上げられる。
【0025】
腐食環境は、基本的には水系であるが、潤滑剤の分解による酸性化またはアルカリ化、塩化物の混入等の要素があり、幅広いpH環境での耐食性が要求される。
【0026】
特に腐食が問題となる箇所は、磁気記録層の磁性体領域と非磁性体領域との境界部である。この部分は隙間を形成すると考えられるために、この部分で腐食(隙間腐食)が生じると、環境としては酸性となる。このことから、特に酸性領域における耐食性が要求される。
【0027】
上記(要求項目1)に関し、本発明者は、種々検討した結果、ベンゾトリアゾール(BTA)で代表される複素環を有する有機化合物層またはアルカンチオールで代表される自己組織化膜による有機物層を形成させることにより、CoまたはCo合金の腐食を抑制することが可能であることを見出した。
【0028】
ベンゾトリアゾールで代表される複素環を有する有機化合物層に関しては、複素環中のヘテロ原子と記録層中のCoとが強く結合するとともに、ベンゾトリアゾール同士がネットワークを形成するために、耐食性が向上すると考えられる。
【0029】
また、アルカンチオールで代表される自己組織化膜に関しては、たとえばアルカンチオールがCoまたはCo合金上に強く吸着または結合することにより、あらかじめ吸着している腐食開始物質であるH2OやO2と交換吸着または結合し、これら物質を表面から追い出すため、耐食性が向上すると考えられる。
【0030】
上記(要求項目2)に関しては、以下のようにして達成されると考えられる。
CoまたはCo合金材の表面には、必ず、原子オーダーの薄い酸化Coの皮膜が自然に形成されている。複素環を有する化合物層、たとえばBTAの場合、BTA分子はこの酸化Coと強い配位結合を形成するとともに、BTA分子同士も共有結合を形成して、CoまたはCo合金の表面に強固なBTA高分子膜を形成する。そのため、極めて緻密な欠陥のない、しかも密着性に優れた皮膜が形成される。
【0031】
アルカンチオールで代表される自己組織化膜を使用した場合、単分子が一定の角度で規則正しく配列するとともに、CoまたはCo合金材とキレート結合を作る。これにより、欠陥の少ない緻密でかつ密着性の良い皮膜が生成される。また自己組織化により、SがCoまたはCo合金材側に、アルキル鎖がそれとは逆側に配列するために、接触角がおおきくなり、水分をはじく作用を有する。
【0032】
上記(要求項目3)に関しては、磁気記録媒体を製造する過程において、平面方向の磁気記録層上(ヘッドが読み書きする部分)に、後述するように、不動態化する金属またはその合金、もしくはカーボン層を設け、後にそれを除去する。そのため、この問題を避けることが可能である。
【0033】
また仮に、BTAで代表される複素環化合物の皮膜、またはアルカンチオールで代表される自己組織化膜が磁気記録層上に残ってしまった場合でも、生成される皮膜は単分子膜かそれに近い膜であるため非常に薄く、磁気記録特性の劣化には至らない。
以上、磁気記録層の磁性体領域に設ける有機物層に求められる特性を説明した。
【0034】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る磁気記録媒体1の構造断面図である。
【0035】
本実施の形態1に係る磁気記録媒体1は、基板としてのガラスディスク基板11を有し、その上に密着層12、軟磁性下地層13、シード層14、中間層15、磁気記録層16が形成されている。
【0036】
磁気記録層16には凹凸パターンが形成されており、凸部が磁性体領域17、凹部が非磁性体領域18となっている。
【0037】
凹部の底部には、保護膜B25が形成されている。
磁性体領域17と非磁性体領域18の界面には、コバルトもしくはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される有機物層19が形成されている。
【0038】
磁気記録層16の上には、保護膜A20が形成されている。なお、ここでは図示していないが、保護膜A20の上には潤滑剤が塗布されている。
【0039】
密着層12の材料としては、基板の密着性、表面平坦性に優れていれば特に限定するものではないが、Ni、Al、Ti、Ta、Cr、Zr、Co、Hf、Si、Bのうち少なくとも2種以上の金属を含む合金で構成することが好ましい。より具体的には、NiTa、AlTi、AlTa、CrTi、CoTi、NiTaZr、NiCrZr、CrTiAl、CrTiTa、CoTiNi、CoTiAl等を用いることができる。
【0040】
軟磁性下地層13は、飽和磁束密度(Bs)が少なくとも1テスラ以上で、ディスク基板11の半径方向に一軸異方性が付与されており、ヘッド走行方向に測定した保磁力が1.6kA/m以下で、さらに表面平坦性に優れていれば、特に材料を限定するものではない。
【0041】
具体的には、Co、NiもしくはFeを主成分とし、これにTa、Hf、Nb、Zr、Si、B、C等を添加した非晶質合金を用いると上記特性が得られやすい。
【0042】
さらに軟磁性下地層13に非磁性層を挿入した積層構造にすることにより、ノイズを低減することが可能となる。この非磁性層の材料としては、CoCr合金、Ru、Cr、Cu、MgOなどを用いることが望ましい。
【0043】
シード層14の役割は、中間層15の配向および結晶粒径を制御することである。
シード層14には、例えばNiを主成分としたfcc合金を使用することができる。代表的なものとして、NiにW、Fe、Ta、Ti、Nb、Cr、Mo、V、Cu等から選ばれた1種以上の金属を含む合金を用いることができる。
【0044】
また耐食性を向上させるために、シード層を2層構造としてもよい。この場合、上記シード層14は、2層のシード層のうち磁気記録層16側のシード層(第2シード層)とし、第2シード層と軟磁性下地層13の間に、第1シード層として新たに、CrにTa、Ti、Nb、Alを添加した合金を挿入してもよい。
【0045】
中間層15としては、Ru単体か、Ruを主成分とした六方稠密格子(hcp)構造やfcc構造の合金を用いることができる。
【0046】
なお、中間層15として上記組成以外の構成を用いた場合であっても、CoまたはCo合金との間でガルバニック腐食を生じやすい構成を中間層15として用いた場合は、有機物層19が本発明と同様の効果を発揮することを付言しておく。
【0047】
磁気記録層16の凸部に形成される磁性体領域17の材料としては、CoCrPt合金等のCoCr系合金、FePt系合金等を主成分とし、これにSiO2などの酸化物を添加したグラニュラー構造を有する合金を用いることができる。具体的には、CoCrPt−SiO2、CoCrPt−MgO、CoCrPt−TaOなどが挙げられる。
【0048】
また、凹部に形成される非磁性体領域18の材料としては、SiO2、Al2O3、TiO2、フェライト等の酸化物、AlN等の窒化物、SiC等の炭化物を用いることができる。Co濃度は15〜25at%(原子百分率)、Pt濃度は10〜20at%が良好である。
【0049】
磁性体領域17の底部に形成される保護膜B層25は、磁性体領域17を加工する時に受けるダメージによる欠陥を抑える目的で導入される層である。保護膜B層25は、不動態化する金属またはその合金、もしくはカーボンの層で構成される。
【0050】
不動態化する金属としては、Cr、Ti、Ni、Mo、Nb、W、Ta、Zrや、それらを少なくとも1種以上を含有する合金を使用することができる。特にCrを含有する合金が望ましい。
【0051】
磁性体領域17と非磁性体領域18との界面に形成させる有機物層19としては、コバルトもしくはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示すことが必要である。この有機物層19としては、BTAで代表される複素環を有する化合物、またはアルカンチオールで代表される自己組織化膜が有効であるが、特にこれに限定されるものではない。
【0052】
複素環化合物は、ヘテロ原子を含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子としては、好ましくは窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ホウ素原子などがある。最も好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子である。
複素環化合物に含まれるヘテロ原子の数に制限はないが、2個以上含むものが、強い防食作用を示す。
【0053】
具体的な複素環としては、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、キノリン環、トリアゾール環などが挙げられる。それ以外にもチアジアゾール類などがある。しかしこれに限定されるものではない。
【0054】
さらに置換基を有する化合物も有効である。置換基として、たとえばアルキル基、スルホ基、カルボキシル基などがある。具体的な化合物としては、ベンゾトリアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,3,4-テトラゾール、3-アミノ-1,2,4,-トリアゾール、ニトロ-1H-ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、5-メチル-ベンゾトリアゾール、尿酸などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0055】
複素環化合物を使用して有機物層19を形成させる方法としては、上記複素環を含有する水溶液または有機溶媒中に磁性体領域17を一定時間浸漬させること、上記水溶液または有機溶媒をスプレーすること、などが挙げられる。
【0056】
なお、複素環を有しなくとも、吸着作用を持つ不対電子を持つN、S、Oなどを含有する化合物、たとえばアミンなどもまた、有機物層19を構成する材質として有効である。
【0057】
自己組織化する有機化合物には、アンカー基としてチオール基を有するアルカンチオールがある。アルカンチオールの構造は、R(CH2)nSHである。
【0058】
前記式においてRはメチル(-CH3)、アミノ(-NH2)、カルボキシ(-COOH)、カルボキシライト(-COO-)、ヒドロキシ(-OH)、アミド(-CONH2)、などを含む。nは、アルカン鎖内の炭素数を示している。
【0059】
自己組織化する有機化合物の代表的なものとしては、たとえば、1-オクタデカンチオールなどが挙げられる。アルカンチオール以外には、アンカー基としてヒドロキサム酸基を有する物質がある。これらの物質のなかには、腐食性のイオンの接近を阻止するアルキル基などの疎水性を有する化合物がある。たとえば、n-ドデカンヒドロキサム酸などがある。
【0060】
磁性体領域17と非磁性体領域18との界面に上述のような自己組織化膜を形成させる方法としては、後で述べるように、これらの物質を溶媒に溶解した溶液中に磁性体領域17と非磁性体領域18を一定時間浸漬させること、上記溶液をスプレーすること、などが挙げられる。使用する溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、アミド類などが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0061】
上記の他、化学修飾により自己組織化膜のアルカンチオール分子のアルキル鎖を長くし、隣接分子と1次元に重合させ、より耐食性を上げる方法もある。
【0062】
たとえば、11-メルカプト-1ウンデノールに浸漬させて自己組織化膜を形成させた後に、アルキルトリクロロシランを反応させて、Si-O-Si結合によって横につながった1次元膜を形成させることも有効である。さらにこの皮膜にテトラクロロシランを反応させて加水分解させ、ついでアルキルトリクロロシランと反応させることにより、2方向にSi-O-Si架橋構造を持つ自己組織化膜を形成させる方法もある。
【0063】
磁気記録層16上に形成される保護膜A20の材質には、ダイヤモンドライクカーボン等で代表される、硬質炭素膜が使用される。さらに図1では示していないが、保護膜A20の上には、潤滑層が形成されている。潤滑層としては、PFPE(パーフルオロポリエーテル)やフォンプリン系潤滑剤を用いることができる。
以上、本実施の形態1に係る磁気記録媒体1の構造について説明した。
【0064】
以上のように、本実施の形態1では、磁気記録層16の磁性体領域17と非磁性体領域18の界面に、コバルトまたはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される有機物層19を設けた。これにより、磁気記録媒体1の耐食性を向上させることができる。
【0065】
なお、本実施の形態1において、有機物層19は、磁性体領域17と非磁性体領域の界面の一部のみに形成してもよい。この場合でも、有機物層19を形成した部分において、耐食性向上効果を発揮することができる。
【0066】
上記を換言すると、磁性体領域17と非磁性体領域18は、少なくとも部分的には有機物層19を介して接触または結合していることになる。これにより、磁気記録媒体1の耐食性が向上しているということもできる。
【0067】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2では、実施の形態1で説明した磁気記録媒体1を製造する方法の1例について説明する。
【0068】
本発明に係る磁気記録媒体1は、例えば、ANELVA製スパッタ装置(C3010)を用いて製造することができる。このスパッタ装置は、10個のプロセスチャンバと1個の基板導入チャンバから構成され、それぞれのチャンバは独立に排気されている。全てのチャンバの排気能力は、6×10−6Pa以下である。
【0069】
図2は、本実施の形態2に係る磁気記録媒体1の製造方法を説明する図である。以下、同図に示す各工程について説明する。
(工程1):図2(A)
ガラスディスク基板11には、直径63.5mmのガラス基板を用いた。スパッタリング法により、ガラスディスク基板11の上に、密着層12、軟磁性下地層13、シード層14、中間層15、磁気記録層16の磁性体領域17に相当する部分を順次形成した。
【0070】
代表的な各層の組成および膜厚は、表1に示す通りである。なお、表1の下添え字の数値の合計が100になっている組成は、合金組成(原子百分率)を示すものである。
【0071】
表1に示した組成および膜厚は、あくまで代表的なものであり、これ以外の組成や膜厚のものを使用しても、同様の結果を得ることができる。
【0072】
たとえば、(1)第1シード層にCr50Ti50、第2シード層にNi90Ti10を使用した場合、(2)シード層14を2重シードにせずNiWTa等を使用した場合、(3)磁気記録層16にCoCrPt-TaOを使用した場合、などにおいても、同様の結果を得ることができる。
【0073】
【表1】

【0074】
(工程2):図2(B)
磁気記録層16の磁性体領域17に相当する部位上に、保護膜C24を形成する。この保護膜C24は、後にレジスト21を塗布してディスクリートトラックを形成する工程において、磁性体領域17の腐食を防止する目的で形成されるものである。
【0075】
(工程3):図2(C)
保護膜C24上に、スピンコート法などを用いてレジスト21を塗布する。
【0076】
(工程4):図2(D)
転写装置22を使用して、レジスト21の層に、サーボ領域のサーボパターンおよびデータ領域のトラックパターンに相当する、所定の間隔を有する凹凸パターンを、ナノ・インプリント法により転写する。
【0077】
(工程5):図2(E)
反応性イオンビームエッチング法により、レジスト21を除去した部分の保護膜C24を除去する。
【0078】
(工程6):図2(F)
イオンミリング法を用いて、磁気記録層16の磁性体領域17のうち保護膜C24を除去した部分を除去して凹部を形成する。
【0079】
(工程7):図2(G)
保護膜C24およびレジスト21を除去する。
【0080】
(工程8):図2(H)
不動態化する金属やその合金、またはカーボン膜などを使用して、保護膜B25を、スパッタ法により磁気記録層16上に形成する。
【0081】
(工程9):図2(I)
磁気記録層16の磁性体領域17において、保護膜B25が十分に形成されていない領域、すなわち図2(I)の磁性体領域17と非磁性体領域18の界面における縦方向の部分に、有機物層19を形成する。
【0082】
(工程10):図2(J)
スパッタリング法を用いて、磁気記録層16の凹部に、非磁性体で構成された充填体を凹部の厚さよりも若干厚く充填して充填体領域を形成する。この非磁性体は、磁気記録層16の非磁性体領域18となる。
【0083】
(工程11):図2(K)
エッチング法、例えばCMP(Chemical Mechanical Planarization)法により、図2(J)で充填した充填体のうち非磁性体領域18を形成しない余剰部分と、保護膜B25のうち磁気記録層16の磁性体領域17の上部にある部分を除去する。
これにより、図2(D)〜図2(J)に示した工程で生じた、磁気記録媒体1の表面の凹凸を、平滑化することができる。
【0084】
(工程12):図2(L)
図2(K)で平滑化した面に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて保護膜A20を堆積する。次に、保護膜A20の上に液体潤滑層23を塗布する。
【0085】
以上、実施の形態1で説明した磁気記録媒体1を製造する方法の1例を説明した。
なお、実施の形態1〜2で説明した磁気記録媒体1の耐食性評価については、後述の実施例で改めて説明する。
【0086】
以上のように、本実施の形態2では、コバルトまたはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物を溶媒に溶かした溶液に磁性体領域17を浸漬し、またはその溶液を磁性体領域17に噴射(スプレー)して、有機物層19を形成する。この有機物層19は、磁性体領域17と非磁性体領域18の界面に相当する部分に形成される。
これにより、磁気記録媒体1の耐食性を向上させることができる。
【0087】
また、本実施の形態2の図2(H)に示す工程において、磁気記録層16の凹凸パターンの底部および頂部に、不動態化する金属またはカーボンで構成される保護膜B25を形成する。
これにより、磁性体領域17を加工する時に受けるダメージによる欠陥を補修することができる。
【0088】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3では、磁気記録媒体1を製造する方法について、実施の形態2とは別の手法を説明する。
【0089】
図3は、本実施の形態3に係る磁気記録媒体1の製造方法を説明する図である。以下、同図に示す各工程について説明する。
(工程1)〜(工程6):図3(A)〜図3(F)
図3(F)までの工程は、実施の形態2の図2(F)までの工程と同様である。
【0090】
(工程7):図3(G)
レジスト21を除去する。図2(G)では保護膜C24を除去しているのに対し、本工程では保護膜C24を残している点が異なる。
【0091】
(工程8):図3(H)
図2(I)と同様の手順で、磁性体領域17と非磁性体領域18の界面における縦方向の部分に、有機物層19を形成する。
【0092】
(工程9)〜(工程11):図3(I)〜図3(K)
これらの工程は、図2(J)〜図2(L)と同様である。
【0093】
以上、本実施の形態3に係る磁気記録媒体1の製造方法について説明した。本実施の形態3に係る製造方法で磁気記録媒体1を製造すると、図3(K)と図2(L)を比較して分かるように、磁性体領域17の凹部の底部に、不動態化する金属またはその合金、もしくはカーボンの層(保護膜B25)が存在するか否かの差が生じる。
なお、本実施の形態3で説明した磁気記録媒体1の耐食性評価については、後述の実施例で改めて説明する。
【0094】
以上のように、本実施の形態3では、実施の形態2と同様に、磁性体領域17と非磁性体領域18の界面に相当する部分に有機物層19を形成する。これにより、磁気記録媒体1の耐食性を向上させることができる。
【0095】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4では、磁気記録媒体1を製造する方法について、実施の形態2〜3とは別の手法を説明する。
【0096】
図4は、本実施の形態4に係る磁気記録媒体1の製造方法の1部を説明する図である。以下、同図に示す工程について説明する。
本実施の形態4では、磁気記録層16の磁性体領域17に凹凸パターンを形成する工程において、凹部底部の磁気記録層16を全て除去し、中間層15を露出させる。これは、図2(F)の工程において、中間層15に到達する段階まで磁性体領域17を除去することに相当する。
【0097】
図4(A)は、本実施の形態4において上記工程を実行した状態を示す構造断面図である。図2(F)と比較すると、磁気記録層16の底部において、中間層15が露出している点が異なる。以後の製造工程は、実施の形態2で説明したものと同様である。
【0098】
図4(B)は、本実施の形態4の製造方法を実行して得られる磁気記録媒体1の構造断面図である。
【0099】
以上、本実施の形態4に係る磁気記録媒体1の製造方法について説明した。
なお、本実施の形態4で説明した磁気記録媒体1の耐食性評価については、後述の実施例で改めて説明する。
【0100】
以上のように、本実施の形態4では、実施の形態2〜3と同様に、磁性体領域17と非磁性体領域18の界面に相当する部分に有機物層19を形成する。これにより、磁気記録媒体1の耐食性を向上させることができる。
【0101】
実施の形態5.
図5は、本発明の実施の形態5に係る磁気記憶装置の概略構成図である。
図6は、図5のA−A’断面図である。
【0102】
以下、図5〜図6に示す構成について説明する。
本実施の形態5に係る磁気記憶装置は、パターンドメディア30、磁気ヘッド31、記録再生部32、磁気ヘッド駆動部33、パターンドメディア駆動部34を備える。
【0103】
パターンドメディア30は、実施の形態1〜4いずれかで説明した磁気記録媒体1を用いて構成されている。
パターンドメディア駆動部34は、パターンドメディア30を記録方向に回転させる。
【0104】
磁気ヘッド31は、複合型ヘッドであり、トレーリングシールドヘッド型記録ヘッドとシールド型MR再生素子(GMR膜、TMR膜など)を用いた再生ヘッドとを含む。これにより、パターンドメディア30に情報を書き込み、またはパターンドメディア30から情報を読み込む。
【0105】
磁気ヘッド駆動部33は、磁気ヘッド31をパターンドメディア30に対して相対運動させる。
記録再生部32は、磁気ヘッド31がパターンドメディア30から読み取った信号、および、磁気ヘッド31がパターンドメディア30に出力する信号を処理する。
【0106】
以上のように、本実施の形態5によれば、実施の形態1〜4で説明した磁気記録媒体1と磁界勾配が急峻な磁気ヘッド31を搭載することにより、優れた耐食性を実現することができる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明の実施例として、種々の構成の下で耐食性を評価した結果を説明する。
耐食性の評価は、以下の手順で行った。
(1)温度60℃、相対湿度90%RH(Relative Humidity)以上の高温多湿状態の条件下にサンプルを96時間放置する。
(2)Optical Surface Analyzerを用いて、半径14mmから25mmまでの範囲内における腐食点の数をカウントし、以下のようにランク付けした。実用的にはB以上のランクが望ましい。
(2.1)Aランク:カウント数が50未満
(2.2)Bランク:カウント数が50以上200未満
(2.3)Cランク:カウント数が200以上500未満
(2.4)Dランク:カウント数が500以上
【0108】
[実施例1]
本発明の実施例1では、図1および表1に示した層構成のものを使用した。保護膜B25には、カーボンを使用し、2nmの厚さで成膜した。使用した充填剤はSiO2である。
【0109】
図2(H)の状態のディスクを、1wt%のベンゾトリアゾールを含む水溶液中に10分間浸漬させ、図2(I)に示すように、磁気記録層16の磁性体領域17の凹部の縦部の位置にベンゾトリアゾール層(有機物層19)を作製した。
【0110】
図2(L)に示す構造(サンプル1−1)の耐食性と媒体S/N比を調べたところ、18dB以上の高いS/N比とAランクの優れた耐食性を得ることができた。
【0111】
[実施例2]
本発明の実施例2では、磁気記録層16の磁性体領域17の凹部の縦部の位置に形成させる有機物層19に用いる複素環化合物の種類を変えたサンプルを作製した。
【0112】
浸漬させる水溶液中の複素環化合物の濃度は1.0wt%である。完全に溶解しないものに関しては、あらかじめエタノール等の有機溶媒で溶解させた後に、水溶液中に混合させた。
【0113】
本実施例2における有機物層19の組成および耐食性を評価した結果を表2に示す。サンプル2−10と2−11は、複素環式化合物ではないが、不対電子を有する化合物で有効な場合のサンプルである。
【0114】
【表2】

【0115】
有機物層19を形成したいずれのサンプルも、優れた耐食性を示した。また媒体S/N比も18dB以上であり良好であった。これらの金属は、耐食性が優れている点から、本実施例2において磁気記録層16に用いたCoCrPt-SiO2との密着性も優れていることが分かる。
【0116】
[実施例3]
本発明の実施例3では、磁気記録層16の磁性体領域17の凹部の縦部の位置に形成させる有機物層19として、自己組織化膜を形成する有機物を用いたサンプルを作製した。自己組織化膜を形成する化合物の構成と耐食性ランクを、下記表3に示す。
【0117】
【表3】

【0118】
(サンプル3−1)
0.05M(モル濃度、以下同じ)の1-オクタデカンチオールのエタノール溶液中に、図2(H)のサンプルを5分間浸漬することにより、図2(I)のサンプルを作製したものである。
【0119】
(サンプル3−2)
エタノール対水の比率が4:1の溶液に0.03Mのメルカプトヘキサデカン酸を溶解した溶液中に、図2(H)のサンプルを1分間浸漬させることにより、図2(I)のサンプルを作製したものである。
【0120】
(サンプル3−3)
アセトン対水の比率が1:1の溶液に1.0wt%になるようにモノ-n-ドデシルりん酸エステルに溶解した溶液中に、図2(H)のサンプルを1分間浸漬させることにより、図2(I)のサンプルを作製したものである。
【0121】
(サンプル3−4)
エタノール対水の比率が1:1の溶液に2.0wt%になるようにメルカプトヘキサデカン酸を溶解した溶液中に、図2(H)のサンプルを1分間浸漬させることにより、図2(I)のサンプルを作製したものである。
【0122】
(サンプル3−5)
0.5mMのエタノール溶液に、図2(H)のサンプルを2時間浸漬させることにより、図2(I)のサンプルを作製したものである。
【0123】
本実施例3に示す手法で作製した各サンプルの最終的な構造(図2(L)に示す磁気記録媒体1の構造)の耐食性と媒体S/N比を調べたところ、表3に示すように、いずれの場合も18dB以上の高いS/N比とAランクの優れた耐食性を得ることができた。
【0124】
[実施例4]
本発明の実施例4では、図2(H)の工程において、実施例1で使用した保護膜B25に使用したカーボンの代りに、不動態化する金属を使用した場合の耐食性を評価した。不動態化する金属の構成例および耐食性ランクを下記表4に示す。
【0125】
最終的な構造(図2(L)に示す磁気記録媒体1の構造)の耐食性と媒体S/N比を調べたところ、いずれの場合においても、18dB以上の高いS/N比とAランクの優れた耐食性を得ることができた。
【0126】
【表4】

【0127】
[実施例5]
本発明の実施例5では、実施の形態3で説明した製造方法で磁気記録媒体1を製造した場合の例を示す。本実施例5における耐食性の評価はBランクであった。すなわち、磁性体領域17の凹部の底部にカーボン層(保護膜B25)がある場合と比較して、耐食性が若干低下した。
【0128】
これは、磁気記録層16の凹部の加工によるダメージにより欠陥が生じ、磁気記録層16の一部に、下地の中間層15のRuとの間のパスが生じたためと考えられる。
【0129】
[実施例6]
本発明の実施例6では、磁気記録層16の組成を変更した例を示す。磁気記録層16の最大部の膜厚は、15nmである。磁気記録層16以外の基本的な構造は、実施例1のサンプル1−1と同様である。下記表5に、磁気記録層16の組成と耐食性ランクを示す。
【0130】
【表5】

【0131】
表5のサンプル6−2における[Co/Pd]20は、Co層とPd層を交互に20層重ねて構成したことを意味する。サンプル6−3の記載法も同様である。
【0132】
サンプル6−1は、CoCrPtにTa酸化物を添加したグラニュラー構造からなる。サンプル6−2、6−3の磁気記録層16は、それぞれ交互にCoとPdまたはCoとPtが積層された多層膜で構成されている。
【0133】
表5に示すように、磁気記録層16の構成が変化しても、耐食性ランクに変化はない。したがって、磁気記録層16と不動態化する金属との密着性は良好であると推察される。
【0134】
[実施例7]
本発明の実施例7では、実施の形態4で説明した製造方法で磁気記録媒体1を製造した場合の例を示す。磁気記録層16の材料および各膜厚は、実施例1のサンプル1−1と同様である。
本実施例7の磁気記録媒体1は、18dB以上の高いS/N比と、Aランクの優れた耐食性を発揮した。
【0135】
[実施例8]
(比較のための実施例1).
本実施例は、上記各実施例と比較するための実施例である。
本実施例8では、保護膜B25をカーボン層とし、有機物層19を設けなかった場合について評価した。結果、耐食性ランクはDランクであり、非常に悪い耐食性となった。
【0136】
[実施例9]
(比較のための実施例2).
本実施例では、図1に示した、磁性体領域17と非磁性体領域18の界面に形成する有機物層19(複素環式化合物)の代わりに、他の表面処理で使用する方法を使用して界面を処理した場合の例を示す。それ以外の基本的な組成、各膜厚は、実施例1と同様である。
いずれの場合も、下記表6に示すように、磁気記録層16が消失してしまい、ディスクを構成することができなかった。
【0137】
【表6】

【0138】
なお、以上の実施の形態および実施例で説明した、各層の形成手法、使用する装置などは、1例を提示したものである。これら以外の手法、装置等を用いて同様の工程等を実行することができる場合は、本発明と同等の効果を発揮することができることは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0139】
1:磁気記録媒体、11:基板、12:密着層、13:軟磁性下地層、14:シード層、15:中間層、16:磁気記録層、17:磁性体領域、18:非磁性体領域、19:有機物層、20:保護膜A、21:レジスト、22:転写装置、23:潤滑層、24:保護膜C、25:保護膜B、30:パターンドメディア、31:磁気ヘッド、32:記録再生部、33:磁気ヘッド駆動部、34:パターンドメディア駆動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の凹凸パターンの凸部に形成された磁性体領域と、前記凹凸パターンの凹部に埋め込まれた充填体領域とを有する磁気記録層を備え、
前記磁性体領域と前記充填体領域との間に、コバルトまたはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される層が存在している
ことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
基板上の凹凸パターンの凸部に形成された磁性体領域と、前記凹凸パターンの凹部に埋め込まれた充填体領域とを有する磁気記録層を備え、
前記磁性体領域と前記充填体領域との界面の少なくとも1部に、コバルトまたはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される層が形成されている
ことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】
基板上の凹凸パターンの凸部に形成された磁性体領域と、前記凹凸パターンの凹部に埋め込まれた充填体領域とを有する磁気記録層を備え、
前記磁性体領域と前記充填体領域との界面に、コバルトまたはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される層が形成されている
ことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】
基板上の凹凸パターンの凸部に形成された磁性体領域と、前記凹凸パターンの凹部に埋め込まれた充填体領域とを有する磁気記録層を備え、
前記磁性体領域と前記充填体領域が、コバルトまたはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される層を介して接触または結合している
ことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項5】
少なくとも前記磁性体領域の底部に、
不動態化する金属の層、不動態化する金属を少なくとも1種含む合金の層、またはカーボン層が存在する
ことを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記腐食抑制作用を示す有機物として、複素環式化合物を用いた
ことを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
前記腐食抑制作用を示す有機物として、自己組織化膜を形成する化合物を用いた
ことを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
前記不動態化する金属、または前記不動態化する金属を少なくとも1種含む合金の成分として、Cr、Ti、Ta、Zr、Nb、Al、Si、またはNiを用いた
ことを特徴とする請求項5記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
前記磁気記録層上に保護膜が形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項10】
前記基板上に、軟磁性下地層、中間層、前記磁気記録層が順次積層されている
ことを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
基板上の凹凸パターンの凸部に磁性体領域を形成する工程と、
前記磁性体領域上にコバルトまたはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される層を形成する有機物層形成工程と、
を有し、
前記有機物層形成工程では、
前記腐食抑制作用を示す抑制剤を含有する液中に前記磁性体領域を浸漬し、または前記抑制剤を前記磁性体領域にスプレーする
ことを特徴とする磁気記録媒体製造方法。
【請求項12】
基板上の凹凸パターンの凸部に磁性体領域を形成する工程と、
不動態化する金属の層、不動態化する金属を少なくとも1種含む合金の層、またはカーボンの層によって、少なくとも前記凹凸パターンの底部を被覆する工程と、
前記磁性体領域上にコバルトまたはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される層を形成する工程と、
を有することを特徴とする磁気記録媒体製造方法。
【請求項13】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に情報を記録しまたは前記磁気記録媒体から情報を読み取る磁気ヘッドと、
を備え、
前記磁気記録媒体は、
基板上の凹凸パターンの凸部に形成された磁性体領域と、前記凹凸パターンの凹部に埋め込まれた充填体領域とを有する磁気記録層を備え、
前記磁性体領域と前記充填体領域との間に、コバルトまたはコバルト合金に対して腐食抑制作用を示す有機物で構成される層が存在している
ことを特徴とする磁気記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−3261(P2011−3261A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148067(P2009−148067)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】