説明

磁気記録媒体、記録再生装置、磁気記録媒体磁化方法および磁気記録媒体磁化装置

【課題】再生信号の信号品質を向上させ得る磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】凸部21(記録領域)および凹部22(非記録領域)を有する凹凸パターン20によって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域Asにサーボパターン20sが形成されると共に少なくとも一面のデータ記録領域Atに凹凸パターン20によってデータトラックパターン20tが形成された回転型の磁気ディスク10であって、データ記録領域Atに記録データを未記録の状態において、サーボパターン領域As内の凸部21が直流磁化されると共に、データ記録領域Atにおける領域Ae1内の凸部21が交流磁化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録領域と非記録領域とを有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共にデータ記録領域にデータトラックパターンが形成された磁気記録媒体、その磁気記録媒体を備えた記録再生装置、その磁気記録媒体を磁化する磁気記録媒体磁化方法および磁気記録媒体磁化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の磁気記録媒体として、データトラック部およびサーボ信号部の一部がリソグラフィー法等によって磁気的に凹凸分離形成された磁性層エッチング型垂直磁気記録ディスク(ディスクリートトラック型の磁気記録媒体:以下、「磁気ディスク」ともいう)が特開平7−129953号公報に開示されている。この磁気ディスクの製造に際しては、まず、裏打ち層、磁気記録層および保護層を基板の上にこの順で形成した後に、保護層の上にフォトレジストを塗布する。次いで、フォトレジストの層に対する露光処理および現像処理(パターニング)を実行することによってエッチング用のマスクを形成する。続いて、例えばイオンミリング法による異方性エッチング処理を実行することによって、マスクから露出している部位において、保護層、磁気記録層および裏打ち層をエッチングする。
【0003】
次いで、酸素プラズマ処理およびアセトン洗浄処理を実行してフォトレジストを除去する。これにより、基材上に凹凸パターンが形成されて磁気ディスクが製造される。この後、一例として、電磁石を用いて磁気ディスクの全域を直流磁化することにより、サーボ信号部およびデータトラック部の双方の磁性層凸部(以下、「凸部」ともいう)が磁化されて、サーボ信号部に磁気的信号(磁化パターン)によってサーボ信号(サーボパターン)が記録された状態となる。これにより、磁気ディスクが完成する。
【特許文献1】特開平7−129953号公報(第3−6頁、第1−3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の磁気ディスクには、以下の問題点がある。すなわち、従来の磁気ディスクでは、サーボパターンに対応する凹凸パターンをサーボ信号部(サーボパターン領域)に形成すると共に磁気ディスクの全域において凸部を直流磁化することでサーボパターンを磁気的に読み出し可能に構成されている。この場合、従来の磁気ディスクでは、サーボパターン領域のみならず、データトラック部(データ記録領域)の凸部(ディスクリートトラック:データ記録トラック)までもが直流磁化された状態となっている。したがって、従来の磁気ディスクに対する記録データの記録に際しては、直流磁化された状態のデータ記録トラックを交流磁化することで記録データに対応する磁気的信号をデータ記録トラックに記録することとなる(以下、「記録データに対応する磁気的信号の記録」を「記録データの記録」ともいう)。
【0005】
このため、従来の磁気ディスクでは、記録データを記録したデータ記録トラックにおいて、記録データの記録に先立って(磁気ディスクの製造時において)直流磁化された領域が記録データの記録部位に対する回転方向の上流側および下流側に存在する状態となる。したがって、記録データの再生に際してデータ記録トラックから記録データに対応する磁気的信号を読み出す際には、記録データの記録部位における上流側の端部および下流側の端部(すなわち、データ記録トラックに対して記録データの記録を開始した位置および記録を終了した位置)において、記録データに対応する交流磁化成分に直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることとなる。このため、従来の磁気ディスクには、記録データを記録するデータ記録トラックが直流磁化されていることに起因して、記録データの再生時に磁気ヘッドから出力される再生信号の信号品質が悪化する結果、記録データの正常な再生が困難となるおそれがあるという問題点が存在する。
【0006】
また、従来の磁気ディスクでは、所定のデータ記録トラックに記録データを記録した状態において、そのデータ記録トラックに隣接するデータ記録トラックが直流磁化された状態となっている。したがって、記録データの再生に際して所定のデータ記録トラックから記録データに対応する磁気的信号を読み出す際には、そのデータ記録トラックに記録されている磁気的信号(交流磁化成分)に対して、隣接するデータ記録トラックに存在する直流磁化成分が重畳した状態で読み出されることとなる。このため、従来の磁気ディスクには、記録データを記録するデータ記録トラックに隣接するデータ記録トラックが直流磁化されていることに起因して、記録データの再生時に磁気ヘッドから出力される再生信号の信号品質が悪化する結果、記録データの正常な再生が困難となるおそれがあるという問題点が存在する。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、再生信号の信号品質を向上させ得る磁気記録媒体、記録再生装置、磁気記録媒体磁化方法および磁気記録媒体磁化装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく本発明に係る磁気記録媒体は、記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体であって、前記データ記録領域に記録データを未記録の状態において、前記サーボパターン領域内の前記記録領域が直流磁化されると共に、当該データ記録領域内の前記記録領域が交流磁化されている。この場合、「データ記録領域内の記録領域が交流磁化されている」との状態には、「データ記録領域の全域が交流磁化された状態」のみならず、「データ記録領域の一部が交流磁化された状態」も含まれる。
【0009】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体であって、記録再生装置に未搭載の状態において、前記サーボパターン領域内の前記記録領域が直流磁化されると共に、前記データ記録領域内の前記記録領域が交流磁化されている。この場合、「データ記録領域内の記録領域が交流磁化されている」との状態には、「データ記録領域の全域が交流磁化された状態」のみならず、「データ記録領域の一部が交流磁化された状態」も含まれる。
【0010】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体であって、前記サーボパターン領域内の前記記録領域が直流磁化されると共に、前記データ記録領域内の前記記録領域が交流磁化され、かつ、当該データ記録領域内の交流磁化された領域の全域において当該磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期が一定の周期となっている。この場合、「データ記録領域内の記録領域が交流磁化されている」との状態には、「データ記録領域の全域が交流磁化された状態」のみならず、「データ記録領域の一部が交流磁化された状態」も含まれる。
【0011】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体であって、前記サーボパターン領域内の前記記録領域が直流磁化されると共に、前記データ記録領域内の前記記録領域が交流磁化され、かつ、当該データ記録領域内の交流磁化された領域において当該磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期が当該データ記録領域に対する記録データの記録時に前記記録領域を交流磁化する際の磁化方向の反転周期とは相違している。この場合、「データ記録領域内の記録領域が交流磁化されている」との状態には、「データ記録領域の全域が交流磁化された状態」のみならず、「データ記録領域の一部が交流磁化された状態」も含まれる。
【0012】
また、本明細書における「記録領域」とは、「記録された磁気的信号を読み出し可能に保持するように構成された領域(つまり磁気的信号を読み出し可能に保持する能力を有するように構成された領域)」を意味する。また、本明細書における「非記録領域」とは、「磁気的信号を読み出し可能に保持する上記の能力が記録領域の能力よりも低くなるように構成された領域、または、その能力を実質的に有しないように構成された領域」を意味する。具体的には、本明細書における「非記録領域」とは、「磁気的信号を記録した状態において、その領域から発生する磁界が上記の記録領域よりも小さい領域、または、その領域から発生する磁界が実質的には存在しない領域」を意味する。さらに、本明細書における「直流磁化されている」との状態は、磁化方向が一定方向となるように記録領域が磁化された状態を意味する。また、本明細書における「交流磁化されている」との状態は、磁気記録媒体の回転方向において所定の周期で磁化方向が反転するように記録領域が磁化された状態を意味する。
【0013】
また、本明細書における「磁化方向の反転周期」とは、交流磁化によって一方の向きに磁化された領域の上を磁気ヘッドが通過する時間、または、他方の向きに磁化された領域の上を磁気ヘッドが通過する時間を半周期とする周期を意味する。したがって、記録データの記録再生時に角速度一定の条件で回転させられる磁気記録媒体において「交流磁化された領域の全域において磁化方向の反転周期が一定の周期となっている」との状態は、交流磁化によって一方の向きに磁化された領域の上を磁気ヘッドが通過する時間、または、他方の向きに磁化された領域の上を磁気ヘッドが通過する時間が交流磁化された領域の全域において等しい時間となっている状態を意味する。また、記録データの記録再生時に線速度一定の条件で回転させられる磁気記録媒体において「交流磁化された領域の全域において磁化方向の反転周期が一定の周期となっている」との状態は、交流磁化によって一方の向きに磁化された領域の回転方向に沿った長さ、または、他方の向きに磁化された領域の回転方向に沿った長さが交流磁化された領域の全域において等しい長さとなっている状態を意味する。
【0014】
さらに、本発明に係る磁気記録媒体は、前記データ記録領域が、当該磁気記録媒体の回転方向における前記サーボパターン領域側の端部領域を除いて前記記録領域が交流磁化されている。
【0015】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記のいずれかの磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体に対する磁気的信号の記録および当該磁気記録媒体からの磁気的信号の読み出しを実行する磁気ヘッドと、当該磁気ヘッドによる前記磁気的信号の記録および読み出しを制御する制御部とを備えている。
【0016】
また、本発明に係る記録再生装置は、記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成されて当該少なくとも一面の当該サーボパターン領域の前記記録領域が直流磁化された回転型の磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体に対する磁気的信号の記録および当該磁気記録媒体からの磁気的信号の読み出しを実行する磁気ヘッドと、当該磁気ヘッドによる前記磁気的信号の記録および読み出しを制御する制御部とを備えた記録再生装置であって、前記制御部は、前記データ記録領域に対する記録データの記録以前の所定の時点において、前記磁気ヘッドを介して前記データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する交流磁化処理を実行する。この場合、「少なくとも一面のサーボパターン領域の記録領域が直流磁化された」との状態には、「サーボパターン領域のみならず、データ記録領域の少なくとも一部の記録領域が直流磁化された状態」も含まれる。
【0017】
さらに、本発明に係る記録再生装置は、前記制御部が、外部装置から指示コマンドが出力されたときに前記交流磁化処理を実行する。
【0018】
また、本発明に係る記録再生装置は、記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成されて当該少なくとも一面の当該サーボパターン領域の前記記録領域が直流磁化された回転型の磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体に対する磁気的信号の記録および当該磁気記録媒体からの磁気的信号の読み出しを実行する磁気ヘッドと、当該磁気ヘッドによる前記磁気的信号の記録および読み出しを制御する制御部とを備えた記録再生装置であって、前記制御部は、前記データ記録領域内の前記記録領域で構成された所定のデータ記録トラックに対する記録データの記録に先立って、当該記録データを記録するデータ記録トラックに対して予め規定された処理範囲内の前記データ記録トラックを交流磁化する交流磁化処理を実行する。この場合、「少なくとも一面のサーボパターン領域の記録領域が直流磁化された」との状態には、「サーボパターン領域のみならず、データ記録領域の少なくとも一部の記録領域が直流磁化された状態」も含まれる。
【0019】
さらに、本発明に係る記録再生装置は、前記制御部が、前記交流磁化処理によって交流磁化した領域の全域において前記磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期が一定の周期となるように前記データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する。
【0020】
また、本発明に係る記録再生装置は、前記制御部が、前記交流磁化処理によって交流磁化した領域において前記磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期が記録データの記録時に前記記録領域を交流磁化する際の磁化方向の反転周期とは相違するように前記データ記録領域内の当該記録領域を交流磁化する。
【0021】
さらに、本発明に係る記録再生装置は、前記制御部が、前記交流磁化処理時において、前記磁気記録媒体の回転方向における前記サーボパターン領域側の端部領域を除いた前記データ記録領域の前記記録領域を交流磁化する。
【0022】
また、本発明に係る磁気記録媒体磁化方法は、記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体を磁化する磁気記録媒体磁化方法であって、前記少なくとも一面の前記サーボパターン領域の前記記録領域を直流磁化する第1の磁化処理と、当該磁気記録媒体を回転させつつ前記データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する第2の磁化処理とをこの順で実行する。この場合、「少なくとも一面のサーボパターン領域の記録領域を直流磁化する」との処理には、「サーボパターン領域のみならず、データ記録領域の少なくとも一部の記録領域を直流磁化する処理」も含まれる。
【0023】
また、本発明に係る磁気記録媒体磁化方法は、記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体を磁化する磁気記録媒体磁化方法であって、前記磁気記録媒体を回転させつつ、前記サーボパターン領域内の前記記録領域を直流磁化すると共に、前記データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する。
【0024】
また、本発明に係る磁気記録媒体磁化装置は、記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成されて当該少なくとも一面の当該サーボパターン領域の前記記録領域が直流磁化された回転型の磁気記録媒体を回転させる回転機構と、前記記録領域を磁化する磁気ヘッドと、当該磁気ヘッドに交流電圧を供給する電源部と、前記回転機構および前記電源部を制御する制御部とを備えて、前記磁気記録媒体を磁化する磁気記録媒体磁化装置であって、前記制御部は、前記回転機構を制御して前記磁気記録媒体を回転させつつ、前記磁気ヘッドが前記データ記録領域上に位置したときに前記電源部を制御して当該磁気ヘッドに前記交流電圧を供給して当該データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する。この場合、「少なくとも一面のサーボパターン領域の記録領域が直流磁化された」との状態には、「サーボパターン領域のみならず、データ記録領域の少なくとも一部の記録領域が直流磁化された状態」も含まれる。
【0025】
また、本発明に係る磁気記録媒体磁化装置は、記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体を回転させる回転機構と、前記記録領域を磁化する磁気ヘッドと、当該磁気ヘッドに直流電圧または交流電圧を供給する電源部と、前記回転機構および前記電源部を制御する制御部とを備えて、前記磁気記録媒体を磁化する磁気記録媒体磁化装置であって、前記制御部は、前記回転機構を制御して前記磁気記録媒体を回転させつつ、前記磁気ヘッドが前記サーボパターン領域上に位置したときに前記電源部を制御して当該磁気ヘッドに前記直流電圧を供給して当該サーボパターン領域内の前記記録領域を直流磁化すると共に、前記磁気ヘッドが前記データ記録領域上に位置したときに前記電源部を制御して当該磁気ヘッドに前記交流電圧を供給して当該データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る磁気記録媒体では、データ記録領域に記録データを未記録の状態において、サーボパターン領域内の記録領域が直流磁化されると共に、データ記録領域内の記録領域が交流磁化されている。また、本発明に係る磁気記録媒体では、記録再生装置に未搭載の状態において、サーボパターン領域内の記録領域が直流磁化されると共に、データ記録領域内の記録領域が交流磁化されている。また、本発明に係る磁気記録媒体では、サーボパターン領域内の記録領域が直流磁化されると共に、データ記録領域内の記録領域が交流磁化され、かつ、データ記録領域内の交流磁化された領域の全域において磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期が一定の周期となっている。また、本発明に係る磁気記録媒体では、サーボパターン領域内の記録領域が直流磁化されると共に、データ記録領域内の記録領域が交流磁化され、かつ、データ記録領域内の交流磁化された領域において磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期がデータ記録領域に対する記録データの記録時に記録領域を交流磁化する際の磁化方向の反転周期とは相違している。
【0027】
したがって、これらの磁気記録媒体によれば、サーボパターン領域およびデータ記録領域の双方(磁気ディスクの全域)における凸部(記録領域)が直流磁化された状態となっている従来の磁気ディスクとは異なり、記録データの記録に先立ってデータ記録領域内の記録領域(データ記録トラック)が交流磁化されているため、記録データの再生時において、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分に直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることなく、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを読み出すことができる結果、再生信号の信号品質を十分に向上させることができる。
【0028】
また、本発明に係る磁気記録媒体では、データ記録領域が、磁気記録媒体の回転方向におけるサーボパターン領域側の端部領域を除いて記録領域が交流磁化されている。したがって、この磁気記録媒体によれば、サーボパターン領域におけるデータ記録領域側の端部が交流磁化されてサーボパターンの読み出しが困難となる事態を招くことなく、サーボパターン領域の全域からサーボパターン(サーボ信号)を確実に読み出すことができる。
【0029】
また、本発明に係る記録再生装置では、上記のいずれかの磁気記録媒体と、磁気的信号の記録および読み出しを実行する磁気ヘッドと、磁気ヘッドによる磁気的信号の記録および読み出しを制御する制御部とを備えている。したがって、この記録再生装置によれば、磁気記録媒体から記録データを読み出す際の再生信号の信号品質が十分に向上しているため、記録データを高精度で読み出すことができる。
【0030】
また、本発明に係る記録再生装置では、制御部が、データ記録領域に対する記録データの記録以前の所定の時点において、磁気ヘッドを介してデータ記録領域内の記録領域を交流磁化する交流磁化処理を実行する。したがって、この記録再生装置によれば、直流磁化された状態のデータ記録トラックに記録データを記録する構成の記録再生装置とは異なり、記録データの再生時において、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分に直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることなく、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを読み出すことができるため、再生信号の信号品質を十分に向上させることができる。この結果、この記録再生装置によれば、記録データを高精度で読み出すことができる。
【0031】
さらに、本発明に係る記録再生装置では、外部装置から指示コマンドが出力されたときに制御部が交流磁化処理を実行する。したがって、この記録再生装置によれば、データ記録領域が交流磁化されている必要が生じる時点(記録データの記録時点)以前の任意のタイミングにおいて交流磁化処理を確実に実行させることができる。
【0032】
また、本発明に係る記録再生装置では、制御部が、データ記録領域内の記録領域で構成された所定のデータ記録トラックに対する記録データの記録に先立って、記録データを記録するデータ記録トラックに対して予め規定された処理範囲内のデータ記録トラックを交流磁化する交流磁化処理を実行する。したがって、この記録再生装置によれば、直流磁化された状態のデータ記録トラックに記録データを記録する構成の記録再生装置とは異なり、記録データの再生時において、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分に直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることなく、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを読み出すことができるため、再生信号の信号品質を十分に向上させることができる。この結果、この記録再生装置によれば、記録データを高精度で読み出すことができる。また、記録データの記録時において、その直前に例えば磁気記録媒体上のすべてのデータ記録領域を交流磁化する構成の記録再生装置とは異なり、記録データの再生に際して直流磁化成分の影響を受ける可能性のある部位のみを短時間で交流磁化することができるため、磁気記録媒体に対する記録データの記録を短時間で開始することができる。
【0033】
さらに、本発明に係る記録再生装置では、交流磁化処理によって交流磁化した領域の全域において磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期が一定の周期となるように制御部がデータ記録領域内の記録領域を交流磁化する。したがって、この記録再生装置によれば、磁化方向の反転周期を磁気記録媒体の各部において相違させるようにして交流磁化する構成と比較して、記録データの再生に際して、交流磁化処理によってデータ記録トラックに印加された交流磁化成分が確実に平均化されて、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを確実に読み出すことができる。この結果、この記録再生装置によれば、再生信号の信号品質を一層向上させることができる。
【0034】
また、本発明に係る記録再生装置では、交流磁化処理によって交流磁化した領域において磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期が記録データの記録時に記録領域を交流磁化する際の磁化方向の反転周期とは相違するように制御部がデータ記録領域内の記録領域を交流磁化する。したがって、この記録再生装置によれば、交流磁化処理時に記録データの記録時と同一の反転周期で交流磁化する構成の記録再生装置とは異なり、交流磁化処理によって印加した交流磁化成分が記録データの一部として誤って読み出される事態を回避することができる。
【0035】
さらに、本発明に係る記録再生装置では、交流磁化処理時において、制御部が磁気記録媒体の回転方向におけるサーボパターン領域側の端部領域を除いたデータ記録領域の記録領域を交流磁化する。したがって、この記録再生装置によれば、サーボパターン領域におけるデータ記録領域側の端部が交流磁化されてサーボパターンの読み出しが困難となる事態を招くことなく、サーボパターン領域の全域からサーボパターン(サーボ信号)を確実に読み出すことができる。
【0036】
また、本発明に係る磁気記録媒体磁化方法では、少なくとも一面のサーボパターン領域の記録領域を直流磁化する第1の磁化処理と、磁気記録媒体を回転させつつデータ記録領域内の記録領域を交流磁化する第2の磁化処理とをこの順で実行する。また、本発明に係る磁気記録媒体磁化装置では、制御部が、回転機構を制御して磁気記録媒体を回転させつつ、磁気ヘッドがデータ記録領域上に位置したときに電源部を制御して磁気ヘッドに交流電圧を供給してデータ記録領域内の記録領域を交流磁化する。したがって、この磁気記録媒体磁化方法および磁気記録媒体磁化装置によれば、磁気記録媒体に対する記録データの記録に先立ってデータ記録トラックを交流磁化することで、磁気記録媒体に記録した記録データの再生時において、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分に直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることなく、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを読み出させることができるため、再生信号の信号品質が十分に高い磁気記録媒体を提供することができる。
【0037】
また、本発明に係る磁気記録媒体磁化方法では、磁気記録媒体を回転させつつ、サーボパターン領域内の記録領域を直流磁化すると共に、データ記録領域内の記録領域を交流磁化する。また、本発明に係る磁気記録媒体磁化装置では、制御部が、回転機構を制御して磁気記録媒体を回転させつつ、磁気ヘッドがサーボパターン領域上に位置したときに電源部を制御して磁気ヘッドに直流電圧を供給してサーボパターン領域内の記録領域を直流磁化すると共に、磁気ヘッドがデータ記録領域上に位置したときに電源部を制御して磁気ヘッドに交流電圧を供給してデータ記録領域内の記録領域を交流磁化する。したがって、この磁気記録媒体磁化方法および磁気記録媒体磁化装置によれば、磁気記録媒体に対する記録データの記録に先立ってデータ記録トラックを交流磁化することで、磁気記録媒体に記録した記録データの再生時において、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分に直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることなく、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを読み出させることができるため、再生信号の信号品質が十分に高い磁気記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る磁気記録媒体、記録再生装置、磁気記録媒体磁化方法および磁気記録媒体磁化装置の最良の形態について説明する。
【0039】
最初に、本発明に係る記録再生装置の構成について、図面を参照して説明する。
【0040】
図1に示すハードディスクドライブ1Aは、本発明に係る記録再生装置の一例であって、モータ2、コントローラ2a、磁気ヘッド3、検出部4a、電源部4b、ドライバ5、制御部6、記憶部7および磁気ディスク10を備えて、各種記録データの記録再生が可能に構成されている。この場合、磁気ディスク10は、本発明に係る磁気記録媒体の一例であるディスクリートトラック媒体(パターンド媒体)であって、図2に示すように、全体として円板状に形成されて、モータ2の回転軸に取り付けられている。一方、モータ2は、コントローラ2aの制御に従って磁気ディスク10を一例として7200rpmの角速度一定の条件で定速回転させる。また、コントローラ2aは、制御部6から出力された制御信号S4に従ってモータ2を回転させる。
【0041】
磁気ヘッド3は、スイングアーム3aを介してアクチュエータ3bに取り付けられると共に、磁気ディスク10に対する記録データの記録再生時においてアクチュエータ3bによってスイングアーム3aが回動させられることで磁気ディスク10上を移動させられる。また、磁気ヘッド3は、磁気ディスク10のサーボパターン領域As(図2,4参照)からのサーボデータの読み出しと、データ記録領域At(図2,4参照)に対する記録データの磁気的な書き込みと、データ記録領域Atに磁気的に書き込まれている記録データの読み出しとを実行する。なお、磁気ヘッド3は、実際には磁気ディスク10に対して磁気ヘッド3を浮上させるためのスライダの底面(エアベアリング面)に記録素子と再生素子とが形成されて構成されているが、スライダ、記録素子および再生素子等についての説明および図示を省略する。アクチュエータ3bは、制御部6の制御下でドライバ5から供給される駆動電流によってスイングアーム3aをスイングさせることにより、磁気ヘッド3を磁気ディスク10上の任意の記録再生位置に移動させる。
【0042】
検出部4aは、磁気ヘッド3によって出力された出力信号(アナログ信号:サーボ信号)からサーボデータを取得(検出)して検出信号S1を生成し、生成した検出信号S1を制御部6に出力する。電源部4bは、磁気ディスク10に対する記録データの記録時において、制御部6から出力された制御信号S2に従い、所定の周期で電位を反転させた交流電圧V1を磁気ヘッド3に供給することでデータ記録トラックを交流磁化させる。この場合、このハードディスクドライブ1Aでは、磁気ディスク10に対する記録データの記録時において、上記のように電源部4bから所定の周期で電位を反転させた交流電圧V1が磁気ヘッド3に供給されることにより、図5に示すように、磁気ヘッド3の下方に生じる磁界によって磁気ディスク10のデータ記録トラックが所定の反転周期で磁化方向が反転するようにして交流磁化される。
【0043】
なお、同図に示す各矢印は、交流磁化によってデータ記録トラックが磁化された方向を示している。この場合、同図に示すように、データ記録トラックに記録データを記録した部位(記録データに対応してデータ記録トラックを交流磁化した部位)においては、一方の向きに磁化された領域(一例として、下向きの矢印で磁化方向を示している領域)の回転方向に沿った長さ(その領域上を磁気ヘッド3が通過する時間)や、他方の向きに磁化された領域(一例として、上向きの矢印で磁化方向を示している領域)の回転方向に沿った長さ(その領域上を磁気ヘッド3が通過する時間)が記録データのデータ内容に応じて相違する状態となる。したがって、この種の磁気記録媒体における記録データの記録部位においては、「磁化方向の反転周期」が複数種類存在する(「記録信号の記録周波数」が複数種類存在する)こととなる。なお、同図では、記録データの記録部位に周期C、周期2Cおよび周期3Cの3種類の反転周期が存在する状態を例示しているが、実際には、記録データを記録する際の符号化技術の種類によって、2種類の反転周期、または、4種類以上のさらに多くの種類の反転周期が存在する状態となることもある。
【0044】
ドライバ5は、制御部6から出力された制御信号S3に従ってアクチュエータ3bを制御することで磁気ヘッド3を所望のデータ記録トラックにオントラックさせる。制御部6は、ハードディスクドライブ1Aを総括的に制御する。また、制御部6は、本発明における制御部の一例であって、検出部4aから出力された検出信号(サーボ信号)S1と、記憶部7に記憶されているサーボ制御プログラム31とに基づいて、コントローラ2a、電源部4bおよびドライバ5を制御する(トラッキングサーボ制御処理および記録データの記録再生処理の実行)。記憶部7は、上記のサーボ制御プログラム31などを記憶する。
【0045】
一方、磁気ディスク10は、本発明に係る磁気記録媒体の一例であって、モータ2や磁気ヘッド3などと共にハードディスクドライブ1Aの筐体内に配設されている。この磁気ディスク10は、図3に示すように、軟磁性層12、中間層13および磁性層14がガラス基板11の上にこの順で形成されて、一例として、垂直記録方式による記録データの記録が可能に構成されている。この場合、磁性層14は、一例として、突端部側(同図における上端部側)が磁性材料で形成された複数の凸部21と、隣り合う凸部21の間の凹部22とが形成されて凹凸パターン20を構成する。また、凹凸パターン20の各凹部22内には、SiO、C(炭素)および樹脂材料などの非磁性材料15が埋め込まれ、これにより、磁気ディスク10の表面が平坦化されている。
【0046】
この場合、この磁気ディスク10では、凸部21の形成領域が本発明における記録領域に相当し、凹部22の形成領域が本発明における非記録領域に相当する。さらに、この磁気ディスク10では、各凹部22内に埋め込まれた(隣り合う凸部21,21の間に埋め込まれた)非磁性材料15、および磁性層14(凸部21)の表面を覆うようにして、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等によって厚みが4nm程度の保護層16(DLC膜)が形成されている。また、保護層16の表面には、磁気ヘッド3および磁気ディスク10の双方の傷付きを回避するための潤滑剤(一例として、フォンブリン系の潤滑剤)が塗布されている。
【0047】
ガラス基板11は、本発明における基材に相当し、ガラス板を表面研磨して厚みが0.6mm程度の円板状に形成されている。なお、本発明における基材は、ガラス基板に限定されず、アルミニウムやセラミックなどの各種非磁性材料で円板状に形成した基材を使用することができる。軟磁性層12は、CoZrNb合金などの軟磁性材料をスパッタリングすることによって厚みが100nm〜200nm程度の薄膜状に形成されている。中間層13は、磁性層14を形成するための下地層として機能する層であって、Ru、CrおよびCoCr非磁性合金などの中間層形成用材料をスパッタリングすることによって厚みが40nm程度の薄膜状に形成されている。磁性層14は、前述したように、凹凸パターン20(図4に示すデータトラックパターン20tおよびサーボパターン20s)を構成する層であって、例えばCoCrPt合金をスパッタリングした層に対してエッチング処理することによって各凹部22が形成されている。
【0048】
この場合、図2に示すように、この磁気ディスク10では、各データ記録領域Atの間にサーボパターン領域Asが規定されてデータ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asが磁気ディスク10の回転方向(矢印Rの向き)において交互に並ぶように規定されている。なお、本明細書では、回転方向において並ぶ2つのデータ記録領域Atによって挟まれた領域(1つのデータ記録領域Atにおける回転方向に対して下流側の端部から、他の1つのデータ記録領域Atにおける回転方向に対して上流側の端部までの間の領域)をサーボパターン領域Asとする。また、図4に示すように、データ記録領域Atにおける回転方向側の端部は、そのデータ記録領域に形成された複数のデータ記録トラック(各凸部21)における回転方向側の各端部を連結した仮想線分(磁気ディスク10の半径方向に沿った直線状または円弧状の線分)と一致しているものとする。
【0049】
また、この磁気ディスク10を搭載したハードディスクドライブ1Aでは、前述したようにモータ2が制御部6の制御に従って磁気ディスク10を角速度一定で回転させるように構成されている。したがって、図2に示すように、この磁気ディスク10では、単位時間当たりに磁気ヘッド3の下方を通過させられる磁気ディスク10上の長さに比例して、磁気ディスク10の回転方向に沿ったデータ記録領域Atの長さ、および回転方向に沿ったサーボパターン領域Asの長さがデータトラックパターン20tの中心Oから離間するほど長くなるように(データ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asがその内周側領域よりも外周側領域ほど幅広となるように)規定されている。
【0050】
また、図4に示すように、データ記録領域Atには、データトラックパターン20tが形成されている。なお、同図および後に参照する図9,11,13,14では、凹凸パターン20における凸部21の形成部位(本発明における記録領域)を斜線で塗り潰して図示している。この場合、データ記録領域At内のデータトラックパターン20tは、中心O(図2参照)を中心として所定の配列ピッチで互いに分割された同心円状(または、螺旋状)の数多くのデータ記録トラックを構成する複数の凸部21(磁気ディスク10の回転方向に沿って連続的に形成されて回転方向に長い帯状の凸部21)と、ガードバンド部を構成する複数の凹部22(各凸部21の間の凹部22:トラック間凹部)とを備えて構成されている。この場合、磁気ディスク10における最外周部および最内周部には、データトラックパターン20tと同様の凹凸パターンが形成されているものの、実質的には、データ記録トラックとしては寄与しない凸部21の形成領域(記録データの記録再生時に磁気ヘッドがその領域上に移動しない領域など)が存在する。このような領域が存在する場合においては、データ記録トラックとして実際に使用されるデータトラックパターン20tが形成されている領域を本発明におけるデータ記録領域とする。
【0051】
また、データ記録領域At内の各凸部21および各凹部22は、一例として、その半径方向の長さが互いにほぼ等しくなるように規定されると共に、凸部21の形成ピッチ(すなわち、データ記録トラックのトラックピッチ)や、磁気ディスク10における半径方向の長さ(すなわち、データ記録トラックやガードバンド部の半径方向の長さ)が磁気ディスク10の内周部から外周部までの全域において互いにほぼ等しくなるように形成されている。なお、磁気ディスク10の回転中心とデータトラックパターン20tの中心Oとが一致しているのが好ましいが、磁気ディスク10の回転中心とデータトラックパターン20tの中心Oとの間には、製造誤差に起因する30〜50μm程度の極く小さなずれが生じることがある。しかし、この程度のずれ量であれば磁気ヘッド3に対するトラッキングサーボ制御が十分に可能であるため、回転中心と中心Oとは、実質的には同様であるといえる。
【0052】
一方、サーボパターン領域Asには、トラッキングサーボ制御用の各種サーボパターンを構成する複数の凸部21および複数の凹部22を有する凹凸パターン20(サーボパターン20s)が形成されている。具体的には、サーボパターン領域As内には、サーボパターン20sによってプリアンブルパターンが形成されたプリアンブルパターン領域Apと、サーボパターン20sによってサーボアドレスマーク(サーボアドレスマークパターン)が形成されたサーボアドレスマーク領域Amと、サーボパターン20sによってアドレスパターンが形成されたアドレスパターン領域Aaと、サーボパターン20sによってバーストパターンが形成されたバーストパターン領域Abとが規定されている。また、バーストパターン領域Ab内には、バーストパターンにおける各信号領域に対応する4つのバースト領域が規定されている。この場合、磁気ディスク10における最外周部および最内周部には、サーボパターン20sと同様の凹凸パターンが形成されているものの、実質的には、サーボパターンとしては寄与しない凸部21や凹部22の形成領域(記録データの記録再生時に磁気ヘッドがその領域上に移動しない領域など)が存在する。このような領域が存在する場合においては、サーボパターンとして実際に使用されるサーボパターン20sが形成されている領域を本発明におけるサーボパターン領域とする。
【0053】
プリアンブルパターン領域Apに形成されたプリアンブルパターンは、アドレスパターン領域Aaやバーストパターン領域Ab等から各種制御信号を読み取るための基準クロックを磁気ディスク10の回転状態(回転速度)に応じて補正するためのサーボパターンであって、磁気ディスク10の半径方向(同図における上下方向)に長い帯状の複数の凸部21が磁気ディスク10の回転方向(矢印Rの向き)に沿って凹部22を挟んで形成されている。また、プリアンブルパターン領域Apに形成された各凸部21における回転方向に沿った長さ、および各凹部22の回転方向に沿った長さは、中心Oからの距離が等しい同一半径位置において互いに等しい長さで、かつ磁気ディスク10の内周側領域よりも磁気ディスク10の外周側領域側の方が長くなるように規定されている。
【0054】
また、サーボアドレスマーク領域Amに形成されたサーボアドレスマークは、アドレスパターンの読み取り開始位置を特定するためのサーボパターンであって、磁気ディスク10の半径方向(同図における上下方向)に長い帯状の複数の凸部21が磁気ディスク10の回転方向(矢印Rの向き)に沿って凹部22を挟んで形成されている。この場合、サーボアドレスマーク領域Amに形成された各凸部21における回転方向に沿った長さ、および各凹部22の回転方向に沿った長さは、中心Oからの距離が等しい同一半径位置において、一例として、凸部21の長さに対する凹部22の長さが2倍で、かつ磁気ディスク10の内周側領域よりも磁気ディスク10の外周側領域側の方が長くなるように規定されている。
【0055】
さらに、アドレスパターン領域Aaに形成されたアドレスパターンは、磁気ヘッド3がオントラックしているデータ記録トラックのトラック番号や、磁気ヘッド3が位置しているセクタのセクタ番号等を示すアドレスデータに対応して形成されたサーボパターンであって、各凸部21の回転方向に沿った各長さと、各凹部22の回転方向に沿った各長さとが上記のアドレスデータに対応して規定されている。また、バーストパターン領域Abに形成されたバーストパターンは、磁気ディスク10上における磁気ヘッド3の位置を補正するためのバースト信号を得るためのパターン(位置検出用のサーボパターン)であって、この磁気ディスク10では、回転方向において隣接する第1バースト領域〜第4バースト領域の4つの各バースト領域内に平面視四角形状の複数の凹部22が形成されて構成されている。なお、実際には、磁気ディスク10の内周側領域や外周側領域において各凹部22にスキュー角が付与されて凹部22が平行四辺形状となっているが、本発明についての理解を容易とするために、このスキュー角についての説明および図示を省略する。
【0056】
次に、磁気ディスク10の製造方法について説明する。
【0057】
上記の磁気ディスク10の製造に際しては、軟磁性層12、中間層13および磁性層14等がガラス基板11の上にこの順で積層された中間体(図示せず)と、凹凸パターン20に対応する凹凸パターンが形成されたスタンパー(図示せず)とを使用する。この場合、磁気ディスク10を製造する際に使用する中間体は、金属マスク層(図示せず)と、厚み80nm程度の樹脂マスク層(レジスト層:図示せず)とが磁性層14の上に形成されて構成されている。一方、スタンパーは、磁気ディスク10における凹凸パターン20(データトラックパターン20tおよびサーボパターン20s)を形成するためのマスクパターン(凹凸パターン:図示せず)を樹脂マスク層に形成可能な凹凸パターンが形成されて、インプリント法による磁気ディスク10の製造が可能に構成されている。この場合、スタンパーの凹凸パターンは、磁気ディスク10の凹凸パターン20における各凹部22に対応して各凸部が形成されると共に、磁気ディスク10の凹凸パターン20における各凸部21に対応して各凹部が形成されている。
【0058】
まず、中間体の樹脂マスク層にスタンパーの凹凸パターンをインプリント法によって転写する。具体的には、スタンパーにおける凹凸パターンの形成面を中間体の樹脂マスク層に押し付けることにより、凹凸パターンの各凸部を中間体の樹脂マスク層に押し込む。この際には、各凸部が押し込まれた部位のレジスト(樹脂マスク層)が凹凸パターンにおける各凹部内に向けて移動する。この後、中間体からスタンパーを剥離し、さらに、底面に残存する樹脂(残渣:図示せず)を酸素プラズマ処理によって除去することにより、中間体における金属マスク層の上に樹脂マスク層からなる凹凸パターン(樹脂マスクパターン)が形成される。
【0059】
次いで、上記の樹脂マスクパターンをマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、金属マスク層をエッチングして、磁性層14の上に金属マスク層からなる凹凸パターン(金属マスクパターン)を形成する。続いて、金属マスクパターンをマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、磁性層14をエッチングして、複数の凸部21および複数の凹部22を有する凹凸パターン20を中間体の磁性層14に形成する。これにより、データトラックパターン20tおよびサーボパターン20s(凹凸パターン20)が中間層13の上に形成される。次いで、各凸部21の上に残存している金属マスク層をエッチング処理によって選択的に除去して各凸部21の突端面を露出させる。
【0060】
続いて、非磁性材料15としてのSiOをスパッタリングすることで、凹凸パターン20の形成面を非磁性材料15で覆う。続いて、磁性層14の上(各凸部21の上および各凹部22の上)の非磁性材料15の層に対してイオンビームエッチング処理を実行する。この際には、一例として、各凸部21における突端面が非磁性材料15から露出するまでイオンビームエッチング処理を継続する。これにより、中間体の表面が平坦化される。次いで、中間体の表面を覆うようにしてCVD法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜を成膜することによって保護層16を形成した後に、保護層16の表面にフォンブリン系の潤滑剤を平均厚さが例えば2nm程度となるように塗布する。これにより、図3に示すように、磁気ディスク10が製造される。
【0061】
次いで、製造した磁気ディスク10におけるサーボパターン領域Asからのサーボパターン(サーボ信号)の読み出しを可能とするために、磁気ディスク10に対する磁化処理を実行する。この際には、まず、図6に示す磁化装置100を用いて、磁気ディスク10における少なくともサーボパターン領域As(一例として、サーボパターン領域Asおよびデータ記録領域Atの全域)における凸部21を直流磁化する処理(本発明における第1の磁化処理)を実行する。この場合、磁化装置100は、磁気ディスク10を支持可能に構成された支持アーム101aを有する搬送機構101と、磁気ディスク10に対して一定方向の磁界を印加することで磁気ディスク10の全域において凸部21(磁性層14)を直流磁化する一対の電磁石102と、電磁石102に直流電圧V2を供給する電源部103と、搬送機構101を制御して磁気ディスク10を一対の電磁石102の間に搬送させると共に電源部103を制御して両電磁石102に直流電圧V2を供給させる制御部104とを備えて構成されている。
【0062】
この磁化装置100による磁気ディスク10の磁化処理(第1の磁化処理)に際しては、まず、搬送機構101の支持アーム101aに磁気ディスク10をセットする。次いで、図示しない操作部を操作して磁化処理の開始を指示すると、制御部104が搬送機構101に制御信号S11を出力して磁気ディスク10を両電磁石102の間に搬送させる。続いて、制御部104は、電源部103に制御信号S12を出力して両電磁石102に対して直流電圧V2を供給させる。この際には、電源部103から供給された直流電圧V2によって両電磁石102の周囲に矢印Xで示す向きの磁界が生じて、磁気ディスク10の各凸部21(磁性層14)がこの矢印Xの向きと平行な一定方向に直流磁化される。これにより、磁気ディスク10の全域(サーボパターン領域Asおよびデータ記録領域Atのすべて)において凸部21(磁性層14)が直流磁化されて、本発明における第1の磁化処理が完了する。
【0063】
次いで、図7に示す磁化装置200を用いて、第1の磁化処理が完了した磁気ディスク10におけるデータ記録領域At内の凸部21を交流磁化する処理(本発明における第2の磁化処理)を実行する。この場合、磁化装置200は、本発明における磁気記録媒体磁化装置の一例であって、モータ202、コントローラ202a、磁気ヘッド203、検出部204a、電源部204b、ドライバ205、制御部206および記憶部207を備えて構成されている。モータ202は、コントローラ202aの制御に従って磁気ディスク10を一例として4200rpmの角速度一定の条件で定速回転させる。また、コントローラ202aは、制御部206から出力された制御信号S24に従ってモータ202を回転させる。
【0064】
磁気ヘッド203は、磁気ディスク10等の磁性層(記録領域:この例では、凸部21を構成する磁性層14)を磁化するための記録素子と、磁気的信号を読み出すための再生素子(図示せず)とを有する磁化処理専用の磁気ヘッドであって、一例として、その有効記録幅がデータ記録トラックの100トラックピッチ分の幅となるように構成されている。この磁気ヘッド203は、スイングアーム203aを介してアクチュエータ203bに取り付けられると共に、磁気ディスク10に対する磁化処理時においてアクチュエータ203bによってスイングアーム203aが回動させられることで磁気ディスク10上を移動させられる。また、磁気ヘッド203は、磁気ディスク10のサーボパターン領域As(図2,4参照)からのサーボアドレスマークの読み出しが可能に構成されている。アクチュエータ203bは、制御部206の制御下でドライバ205から供給される駆動電流によってスイングアーム203aをスイングさせることにより、磁気ヘッド203を磁気ディスク10上の任意の磁化処理位置に移動させる。
【0065】
検出部204aは、磁気ヘッド203によって出力された出力信号(アナログ信号:サーボ信号)から、予め規定されたサーボパターン(一例として、サーボアドレスマーク)を検出して検出信号S21を制御部206に出力する。電源部204bは、磁気ディスク10に対する磁化処理時において、制御部206から出力された制御信号S22に従い、所定の周期で電位を反転させた交流電圧V1aを磁気ヘッド203に供給することでデータ記録トラックを交流磁化する。この場合、この磁化装置200では、磁気ディスク10に対する磁化処理時において、上記のように電源部204bから所定の周期で電位を反転させた交流電圧V1aが磁気ヘッド203に供給されることにより、磁気ヘッド203の下方に生じる磁界によって磁気ディスク10のデータ記録トラック(凸部21)が所定の反転周期で磁化方向が反転するようにして交流磁化する。
【0066】
また、図5に示すように、磁化装置200によってデータ記録トラックを交流磁化した部位(同図における「交流磁化A」または「交流磁化B」の処理部位)においては、一方の向きに磁化された領域(一例として、下向きの矢印で磁化方向を示している領域)の回転方向に沿った長さ(その領域上をハードディスクドライブ1Aの磁気ヘッド3が通過する時間)や、他方の向きに磁化された領域(一例として、上向きの矢印で磁化方向を示している領域)の回転方向に沿った長さ(その領域上をハードディスクドライブ1Aの磁気ヘッド3が通過する時間)が磁気ディスク10のすべてのデータ記録領域At内において一定となるように交流磁化されている(本発明における「交流磁化された領域の全域において回転方向における磁化方向の反転周期が一定の周期となっている」との状態の一例)。
【0067】
また、この磁化装置200では、一例として、ハードディスクドライブ1Aに搭載された状態における磁気ディスク10の記録データの記録部位における磁化方向の反転周期のうちの最短の反転周期(この例では、図5に示す周期C)に対する1/2の周期(周期C/2)で磁化方向が回転方向において反転するようにデータ記録トラックを交流磁化する(同図における「交流磁化Aの処理部位」:本発明における「記録データの記録時に記録領域を交流磁化する際の磁化方向の反転周期とは相違する」との状態の一例)。この場合、上記の交流磁化の周期については、記録データの記録部位における磁化方向の反転周期よりも短い周期に限定されるものではなく、例えば、記録データの記録部位における磁化方向の反転周期のうちの最長の反転周期(この例では、図5に示す周期3C)に対する2倍の周期(周期6C)で磁化方向が回転方向において反転するようにデータ記録トラックを交流磁化する(同図における「交流磁化Bの処理部位」:本発明における「記録データの記録時に記録領域を交流磁化する際の磁化方向の反転周期とは相違する」との状態の他の一例)こともできる。
【0068】
なお、磁化処理した部位における磁化方向の反転周期については、記録データの記録部位における磁化方向の反転周期(この例では、周期C、周期2Cおよび周期3C)とは相違する周期であって、かつ、最短の周期に対する1/5以上で最長の周期に対する3倍以下の範囲内の周期とするのが好ましい。このような反転周期となるように交流磁化することにより、後述するようにして、再生信号の信号品質を十分に向上させることが可能となる。
【0069】
ドライバ205は、制御部206から出力された制御信号S23に従ってアクチュエータ203bを制御することで磁気ヘッド203を所望の磁化処理位置に移動させる。制御部206は、磁化装置200を総括的に制御する。また、制御部206は、本発明における制御部の一例であって、検出部204aから出力された検出信号S21(この例では、サーボアドレスマークを検出した信号)と、記憶部207に記憶されている磁化処理プログラム41とに基づいてコントローラ202a、電源部204bおよびドライバ205を制御する(磁化処理の実行)。記憶部207は、上記の磁化処理プログラム41などを記憶する。
【0070】
この磁化装置200による磁気ディスク10の磁化処理(第2の磁化処理)に際しては、まず、モータ202における回転軸の先端部に磁気ディスク10をセットする。次いで、図示しない操作部を操作して磁化処理の開始を指示すると、制御部206が記憶部207に記憶されている磁化処理プログラム41に従って、磁気ディスク10におけるデータ記録領域At内の凸部21(磁性層14)を交流磁化させる処理を開始する。具体的には、制御部206は、まず、コントローラ202aに制御信号S24を出力することによって磁気ディスク10を定速回転させる。次いで、制御部206は、ドライバ205に制御信号S23を出力することにより、一例として、サーボパターン領域Asおよびデータ記録領域Atにおける最外周部の上に磁気ヘッド203を移動させる。
【0071】
この際に、磁化装置100によって磁気ディスク10の全域における凸部21が直流磁化されているため、磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド203の下方を磁気ディスク10のサーボパターン領域Asが通過した際には、磁気ヘッド203によってサーボパターンに対応する磁気的信号が読み出されて、サーボパターンに対応する出力信号(アナログ信号)が出力される。一方、検出部204aは、磁気ヘッド203から出力された出力信号に基づき、一例として、サーボアドレスマークを検出して検出信号S21を出力する。
【0072】
一方、制御部206は、各サーボパターン領域Asに対する交流磁化処理を開始する時点t1、および磁化処理を終了する時点t2(図8参照)をそれぞれ特定する。具体的には、制御部206は、検出部204aから出力された検出信号S21と、磁化装置200による磁化処理時における磁気ディスク10の回転数(この例では、4200rpm)と、例えば磁気ディスク10の設計データに基づいて特定されるサーボアドレスマーク領域Amの位置からデータ記録領域Atにおける磁化処理の開始位置(この例では、図9に示す開始位置P1es)および終了位置(この例では、図9に示す終了位置P1ee)とに基づいて時点t1,t2をそれぞれ特定する。
【0073】
この場合、データ記録領域Atの回転方向における一方の端部から他方の端部までの全域を磁気ヘッド203によって交流磁化したときには、磁化処理の開始タイミングおよび終了タイミングの極く僅かなずれや、磁気ヘッド203から生じる漏れ磁界の影響によって、データ記録領域At内の凸部21のみならず、サーボパターン領域Asにおけるデータ記録領域At側の端部(この例では、バーストパターン領域Abにおけるデータ記録領域At側の端部や、プリアンブルパターン領域Apにおけるデータ記録領域At側の端部)の凸部21までもが交流磁化されて、サーボパターン領域Asの端部領域において、サーボパターンの読み出しが困難となるおそれがある。したがって、この磁化装置200では、データ記録領域Atの全域を交流磁化処理するのではなく、図9に示すように、データ記録領域Atの回転方向におけるサーボパターン領域As側の2つの領域Ae0(本発明における端部領域)を除いて、開始位置P1esから終了位置P1eeまでの間の領域Ae1において凸部21(磁性層14)を交流磁化するように磁化処理プログラム41がプログラミングされている。
【0074】
また、磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド203の下方にサーボアドレスマーク領域Amが位置した(検出部204aから検出信号S21が出力された)時点t0から各データ記録領域Atに対する磁化処理を開始する(磁気ヘッド203の下方に開始位置P1esが位置する)時点t1までの時間T11や、時点t0から各データ記録領域Atに対する磁化処理を終了する(磁気ヘッド203の下方に終了位置P1eeが位置する)時点t2までの時間T12については、磁気ディスク10の回転数と、磁気ディスク10の設計データ(距離情報)とに基づいて演算することができる。
【0075】
したがって、制御部206は、検出部204aから検出信号S21が出力された時点t0から時間T11が経過した時点t1において、電源部204bに制御信号S22を出力して磁気ヘッド203に対して交流電圧V1aの供給を開始させる。この際には、電源部204bから供給された交流電圧V1aによって磁気ヘッド203の下方に磁界が生じ、この磁界における磁力線の向きが交流電圧V1aの周波数に対応する周期で相反する方向に交互に変化するため、磁気ヘッド203の下方に位置する凸部21(この例では、データ記録領域Atにおけるデータ記録トラックを構成する凸部21(磁性層14))が交流磁化される。
【0076】
また、制御部206は、検出部204aから検出信号S21が出力された時点t0から時間T12が経過した時点t2において、電源部204bに制御信号S22を出力して磁気ヘッド203に対する交流電圧V1aの供給を停止させる。これにより、時点t1において磁気ヘッド203の下方に位置していた開始位置P1esから時点t2において磁気ヘッド203の下方に位置していた終了位置P1eeまでのデータ記録領域Atの領域Ae1内の凸部21(磁性層14)が交流磁化される。続いて、制御部206は、交流磁化が完了したデータ記録領域Atに対して磁気ディスク10の回転方向において隣接する他のデータ記録領域Atについても、上記のデータ記録領域Atに対する磁化処理時と同様にして、開始位置P1esから終了位置P1eeまでの領域Ae1内の凸部21(磁性層14)を交流磁化する。
【0077】
また、磁気ディスク10の一周に亘って各データ記録領域Atに対する交流磁化処理が完了したときには、制御部206は、ドライバ205に制御信号S23を出力して、磁気ヘッド203における記録ヘッドの有効記録幅を上限とし、有効記録幅の1/2程度を下限とする範囲内の距離だけ磁気ヘッド203を磁気ディスク10の内周側に移動させて、各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を実行する。この後、各データ記録領域Atの最内周部についての交流磁化処理が完了したときに、制御部206は、コントローラ202aに制御信号S24を出力してモータ202を停止させる。以上により、磁気ディスク10のすべてのデータ記録領域Atについて、サーボパターン領域As側の領域Ae0を除く領域Ae1内の凸部21(磁性層14)が交流磁化された状態となり、本発明における第2の磁化処理が完了する。これにより、磁気ディスク10が完成する。この後、完成した磁気ディスク10をモータ2の回転軸に取り付けて磁気ヘッド3等と共に筐体内に取り付けることにより、図1に示すハードディスクドライブ1Aが完成する。
【0078】
このハードディスクドライブ1Aでは、前述した第1および第2の磁化処理によって、磁気ディスク10におけるサーボパターン領域Asとデータ記録領域Atにおけるサーボパターン領域As側の領域Ae0,Ae0とが直流磁化され、かつ、磁気ディスク10におけるデータ記録領域Atの領域Ae0,Ae0を除く領域Ae1が交流磁化された状態となっている。したがって、記録データを記録する部位(データ記録トラック)の全域が直流磁化されている従来の磁気ディスクとは異なり、この磁気ディスク10では、データ記録トラックに記録データを記録した状態において、記録データの記録部位、並びにその近傍(記録データの記録部位に対する上流側および下流側の部位や、隣接するデータ記録トラック等)に第1の磁化処理によって印加された直流磁化成分が存在することなく、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分、および第2の磁化処理によって印加された交流磁化成分のみが存在することとなる。
【0079】
このため、記録データを記録した(記録データに応じてデータ記録トラックを交流磁化した)磁気ディスク10からの記録データの再生に際しては、第1の磁化処理によって印加された直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることなく、実質的には記録データに対応する交流磁化成分のみが再生信号として読み出されることとなる。このため、従来の磁気ディスクと比較して、記録データの再生時に磁気ヘッドから出力される再生信号の信号品質が十分に向上する。この場合、前述した第2の磁化処理によって各データ記録トラックが交流磁化された磁気ディスク10では、記録データの記録によって交流磁化された部位(記録データの記録部位)における磁化方向の反転周期とは相違する周期(この例では、1/2の周期)で磁化方向が反転し、かつ、交流磁化された領域の全域において磁化方向の反転周期が一定となるように各データ記録トラックが交流磁化されている。したがって、第2の磁化処理によって各データ記録トラックに印加された交流磁化成分が記録データの一部として誤って読み出される事態が回避されている。
【0080】
また、このハードディスクドライブ1Aでは、磁気ディスク10に対する記録データの記録に際して、図9に示すように、データ記録領域Atにおいて交流磁化されている領域Ae1の回転方向におけるサーボパターン領域As側の2つの端部の領域Aw0,Aw0に対する磁気的信号の記録を行うことなく、開始位置Pwsから終了位置Pweまでの領域Awに記録データに対応する磁気的信号の記録を行う構成が採用されている。この場合、第2の磁化処理によって交流磁化された領域Ae1の回転方向における一方の端部から他方の端部までの全域に対して記録データ(磁気的信号)を記録した場合には、記録データの記録部位における回転方向側の端部の極く近傍(記録データの記録部位に対する上流側および下流側)に第1の磁化処理によって直流磁化された領域Ae0が存在することとなる。このため、記録データの再生に際して、記録データの記録に伴ってデータ記録トラック(凸部21)に印加された交流磁化成分のみならず、領域Ae0内の凸部21に存在する直流磁化成分が重畳した状態で磁気的信号が読み出されて再生信号の信号品質が悪化するおそれがある。
【0081】
これに対して、このハードディスクドライブ1Aでは、前述したように、記録データに対応する磁気的信号を領域Awに記録する構成が採用されている。したがって、記録データの記録部位における回転方向側の端部の極く近傍に第1の磁化処理によって直流磁化された領域が存在する事態が確実に回避される。
【0082】
なお、前述した製造方法では、磁化装置100によって磁気ディスク10の全域における凸部21を直流磁化する処理(第1の磁化処理)を実行した後に、磁化装置200によってデータ記録領域At内の所定の領域を交流磁化する処理(第2の磁化処理)を実行しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、磁化装置100を使用することなく、磁化装置200のみを用いて第1の磁化処理および第2の磁化処理をこの順で実行することもできる。この場合、第1の磁化処理時において、データ記録領域Atについては、その一部分のみを直流磁化する方法を採用することもできる。このような方法で製造した磁気ディスク10においても、磁化装置100,200を用いて製造した磁気ディスク10と同様にして、サーボパターン領域Asとデータ記録領域Atにおけるサーボパターン領域As側の領域Ae0,Ae0とが直流磁化され、かつ、磁気ディスク10におけるデータ記録領域Atの領域Ae0,Ae0を除く領域Ae1が交流磁化された状態となる。
【0083】
このように、この磁気ディスク10では、データ記録領域Atに記録データを未記録の状態において、サーボパターン領域As内の凸部21(記録領域)が直流磁化されると共に、データ記録領域At内の凸部21(データ記録トラック:記録領域:この例では、領域Ae1)が交流磁化されている。また、この磁気ディスク10では、ハードディスクドライブ1A(記録再生装置)に未搭載の状態において、サーボパターン領域As内の凸部21が直流磁化されると共に、データ記録領域At内の凸部21(この例では、領域Ae1)が交流磁化されている。また、この磁気ディスク10では、サーボパターン領域As内の凸部21が直流磁化されると共に、データ記録領域At内の凸部21(この例では、領域Ae1)が交流磁化され、かつ、データ記録領域At内の交流磁化された領域の全域において磁気ディスク10の回転方向における磁化方向の反転周期が一定の周期となっている。また、この磁気ディスク10では、サーボパターン領域As内の凸部21が直流磁化されると共に、データ記録領域At内の凸部21(この例では、領域Ae1)が交流磁化され、かつ、データ記録領域At内の交流磁化された領域において磁気ディスク10の回転方向における磁化方向の反転周期がデータ記録領域Atに対する記録データの記録時に凸部21を交流磁化する際の磁化方向の反転周期とは相違している。
【0084】
したがって、この磁気ディスク10によれば、サーボパターン領域およびデータ記録領域の双方(磁気ディスクの全域)における凸部(記録領域)が直流磁化された状態となっている従来の磁気ディスクとは異なり、記録データの記録に先立ってデータ記録トラックが交流磁化されているため、記録データの再生時において、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分に直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることなく、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを読み出すことができる結果、再生信号の信号品質を十分に向上させることができる。
【0085】
また、この磁気ディスク10では、データ記録領域Atの回転方向におけるサーボパターン領域As側の領域Ae0(端部領域)を除いて凸部21が交流磁化されている。したがって、この磁気ディスク10によれば、サーボパターン領域Asにおけるデータ記録領域At側の端部が交流磁化されてサーボパターンの読み出しが困難となる事態を招くことなく、サーボパターン領域Asの全域からサーボパターン(サーボ信号)を確実に読み出すことができる。
【0086】
また、この磁気ディスク10によれば、データ記録領域At内の交流磁化された領域の全域において磁気ディスク10の回転方向における磁化方向の反転周期が一定の周期となるように交流磁化したことにより、磁化方向の反転周期をデータ記録トラック上の各部において相違させた状態と比較して、記録データの再生に際して、記録データの記録に先立ってデータ記録トラックに印加された交流磁化成分(一定周期で交流磁化した部位の磁化成分)が確実に平均化されて、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを確実に読み出すことができる。この結果、この磁気ディスク10によれば、再生信号の信号品質を一層向上させることができる。
【0087】
また、この磁気ディスク10によれば、データ記録領域At内の交流磁化された領域において磁気ディスク10の回転方向における磁化方向の反転周期がデータ記録領域Atに対する記録データの記録時に凸部21を交流磁化する際の磁化方向の反転周期とは相違するように交流磁化したことにより、交流磁化処理時において記録データの記録時と同一の反転周期で交流磁化された磁気記録媒体とは異なり、交流磁化処理によって印加された交流磁化成分が記録データの一部として誤って読み出される事態を回避することができる。
【0088】
また、このハードディスクドライブ1Aでは、磁気ディスク10と、磁気的信号の記録および読み出しを実行する磁気ヘッド3と、磁気ヘッド3による磁気的信号の記録および読み出しを制御する制御部6とを備えている。したがって、このハードディスクドライブ1Aによれば、磁気ディスク10から記録データを読み出す際の再生信号の信号品質が十分に向上しているため、記録データを高精度で読み出すことができる。
【0089】
また、このハードディスクドライブ1Aでは、制御部6が、磁気ディスク10に対する記録データの記録時において、記録データの記録に先立って交流磁化されている領域のうちの磁気ディスク10の回転方向におけるサーボパターン領域As側の端部領域(領域Aw0)を除いたデータ記録領域At内の凸部21(データ記録トラック:記録領域)に記録データを記録する。したがって、このハードディスクドライブ1Aによれば、記録データの記録部位の近傍に直流磁化された領域が存在する事態を確実に回避することができるため、記録データの再生に際して、記録データの記録に伴ってデータ記録トラック(凸部21)に印加された交流磁化成分のみを読み出すことができる結果、再生信号の信号品質を一層向上させることができる。
【0090】
また、この磁化装置100,200による磁気ディスク10の磁化方法では、少なくとも磁気ディスク10におけるサーボパターン領域As(一例として、サーボパターン領域Asおよびデータ記録領域Atの全域)において凸部21を直流磁化する第1の磁化処理と、磁気ディスク10を回転させつつデータ記録領域At内の凸部21を交流磁化する第2の磁化処理とをこの順で実行する。したがって、この磁化装置100,200による磁気ディスク10の磁化方法によれば、磁気ディスク10に対する記録データの記録に先立ってデータ記録トラックを交流磁化することで、磁気ディスク10に記録した記録データの再生時において、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分に直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることなく、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを読み出させることができるため、再生信号の信号品質が十分に高い磁気ディスク10を提供することができる。
【0091】
また、この磁化装置200による磁気ディスク10の磁化方法では、交流磁化処理時において、磁気ディスク10を回転させつつ、サーボパターン領域Asから予め規定されたサーボパターン(この例では、サーボアドレスマーク)を検出すると共に、検出時点(時点t0)から各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を開始する(磁気ヘッド203の下方に開始位置P1esが位置する)時点t1までの時間T11が経過したときに、電源部204bを制御して磁気ヘッド203に交流電圧V1aさせる。したがって、この磁化装置200によれば、非常に簡易な構成であるにも拘わらず、交流磁化処理を開始すべきタイミングを正確に特定して所望の範囲内の凸部21(この例では、開始位置P1esから終了位置P1eeまでの領域Ae1内の凸部21)を確実に交流磁化することができる。
【0092】
次いで、磁気ディスク10の他の製造方法について説明する。なお、以下に説明する製造方法に従って製造した磁気ディスク10、およびその磁気ディスク10を備えたハードディスクドライブ1Aや、製造時に使用する磁化装置200のについて、上記の磁気ディスク10、ハードディスクドライブ1Aおよび磁化装置200と同一の機能を有する構成要素についての説明を省略する。
【0093】
上記の製造方法(磁気ディスク10の磁化方法)では、保護層16の形成および潤滑剤の塗布が完了した磁気ディスク10の全域において凸部21を磁化装置100によって直流磁化した後に、磁化装置200を用いてデータ記録領域At内の凸部21のみを交流磁化しているが、本発明における磁気記録媒体磁化方法はこれに限定されない。例えば、保護層16の形成および潤滑剤の塗布が完了した磁気ディスク10を磁化装置200にセットして、サーボパターン領域As内の凸部21を直流磁化すると共にデータ記録領域At内の凸部21を交流磁化する方法を採用することができる。
【0094】
具体的には、まず、磁化処理すべき磁気ディスク10を磁化装置200におけるモータ202の回転軸にセットする。次いで、図示しない操作部を操作して磁化処理の開始を指示すると、制御部206が記憶部207に記憶されている磁化処理プログラム41aに従って、磁気ディスク10を磁化する処理を開始する。この処理では、制御部206は、まず、コントローラ202aに制御信号S24を出力することによって磁気ディスク10を定速回転させる。次いで、制御部206は、ドライバ205に制御信号S23を出力することにより、一例として、サーボパターン領域Asおよびデータ記録領域Atにおける最外周部の上に磁気ヘッド203を移動させる。続いて、制御部206は、電源部204bに制御信号S22を出力して磁気ヘッド203に対して直流電圧V2を所定時間(一例として、磁気ディスク10が一回転する間)に亘って供給させる。この際には、磁気ヘッド203の下方に磁界が生じて磁気ヘッド203の下方を通過した部位において凸部21が直流磁化される。
【0095】
この際に、磁気ヘッド203によって磁気ディスク10が直流磁化されることにより、磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド203の下方を磁気ディスク10のサーボパターン領域Asが通過した際には、磁気ヘッド203によってサーボパターンに対応する磁気的信号が読み出されて、サーボパターンに対応する出力信号(アナログ信号)が出力される。一方、検出部204aは、磁気ヘッド203から出力された出力信号に基づき、予め規定されたサーボパターン(一例として、サーボアドレスマーク)を検出する。また、制御部206は、各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を開始する時点t2,t4・・、および各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を終了する時点t3,t5・・(図10参照)と、各サーボパターン領域Asに対する直流磁化処理(本発明における第1の磁化処理)を開始する時点t3,t5・・、および各サーボパターン領域Asに対する直流磁化処理を終了する時点t4,t6・・(図10参照)とをそれぞれ特定する。
【0096】
具体的には、制御部206は、検出部204aから出力された検出信号S21と、コントローラ202aから出力されるモーターインデックス信号S25と、磁化装置200による磁化処理時における磁気ディスク10の回転数と、例えば磁気ディスク10の設計データに基づいて特定されるサーボアドレスマーク領域Amの位置からデータ記録領域Atにおける交流磁化処理の開始位置(この例では、図11に示す開始位置P2es)、交流磁化処理の終了位置(この例では、図11に示す終了位置P2ee)、直流磁化処理の開始位置(この例では、図11に示す開始位置P3es)、および直流磁化処理の終了位置(この例では、図11に示す終了位置P3ee)とに基づいて時点t2,t3・・をそれぞれ特定する。
【0097】
この場合、サーボパターン領域Asの回転方向における一方の端部から他方の端部までの間のみを磁気ヘッド203によって直流磁化したときには、磁化処理の開始タイミングおよび終了タイミングの極く僅かなずれ等によって、サーボパターン領域Asにおけるデータ記録領域At側の端部領域の凸部21が直流磁化されない状態となって、サーボパターン領域Asの端部領域において、サーボパターンの読み出しが困難となるおそれがある。また、データ記録領域Atの回転方向における一方の端部から他方の端部までの全域を磁気ヘッド203によって交流磁化したときには、磁化処理の開始タイミングおよび終了タイミングの極く僅かなずれや、磁気ヘッド203から生じる漏れ磁界の影響により、データ記録領域At内の凸部21のみならず、サーボパターン領域Asにおけるデータ記録領域At側の端部(この例では、バーストパターン領域Abにおけるデータ記録領域At側の端部や、プリアンブルパターン領域Apにおけるデータ記録領域At側の端部)の凸部21までもが交流磁化されて、サーボパターン領域Asの端部領域において、サーボパターンの読み出しが困難となるおそれがある。
【0098】
したがって、この磁化装置200では、サーボパターン領域As内のみを直流磁化したり、データ記録領域Atの全域を交流磁化処理したりするのではなく、図11に示すように、サーボパターン領域Asのみならず、開始位置P3esから終了位置P3eeまでの領域Ae3において凸部21(磁性層14)を直流磁化することでデータ記録領域Atの回転方向におけるサーボパターン領域As側の領域Ae0(本発明における端部領域)も直流磁化すると共に、データ記録領域Atの領域Ae0を除いて、開始位置P2esから終了位置P2eeまでの間の領域Ae2において凸部21(磁性層14)を交流磁化するように磁化処理プログラム41aがプログラミングされている。
【0099】
また、上記のモーターインデックス信号S25は、一例として、磁気ディスク10の回転に同期してコントローラ202aから磁気ディスク10の一回転当りに1回出力される基準信号(回転機構による磁気記録媒体の回転に同期して回転機構から出力される基準信号)であって、このモーターインデックス信号S25が出力された時点t0から、検出部204aによってサーボアドレスマークが検出されて検出信号S21が出力される(磁気ヘッド203の下方にサーボアドレスマーク領域Amが位置する)時点t1までの時間T10は、磁気ディスク10を定速回転させている限り常に等しい時間となる。したがって、この磁化装置200では、後述するようにして、基準信号としてのモーターインデックス信号S25と、予め規定されたサーボパターンとしてのサーボアドレスマークを検出した際に出力される検出信号S21とに基づいて、交流磁化処理や直流磁化処理の開始タイミングおよび終了タイミングを規定する。
【0100】
なお、磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド203の下方にサーボアドレスマーク領域Amが位置した(検出部204aから検出信号S21が出力された)時点t1から各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を開始する(磁気ヘッド203の下方に開始位置P2esが位置する)時点t2,t4・・までの時間T11,T13・・や、時点t1から各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を終了する(磁気ヘッド203の下方に終了位置P2eeが位置する)時点t3,t5・・までの時間T12,T14・・については、磁気ディスク10の回転数と、磁気ディスク10の設計データ(距離情報)とに基づいて演算することができる。同様にして、時点t1から各サーボパターン領域Asに対する直流磁化処理を開始する(磁気ヘッド203の下方に開始位置P3esが位置する)時点t3,t5・・までの時間T12,T14・・や、時点t1から各サーボパターン領域Asに対する直流磁化処理を終了する(磁気ヘッド203の下方に終了位置P3eeが位置する)時点t4,t6・・までの時間T13,T15・・については、磁気ディスク10の回転数と、磁気ディスク10の設計データ(距離情報)とに基づいて演算することができる。
【0101】
したがって、制御部206は、コントローラ202aからモーターインデックス信号S25が出力された時点t0から時間T21(上記の時間T10と時間T11との合計時間)が経過した時点t2において、電源部204bに制御信号S22を出力して磁気ヘッド203に対して交流電圧V1aの供給を開始させる。この際には、電源部204bから供給された交流電圧V1aによって磁気ヘッド203の下方に磁界が生じ、この磁界における磁力線の向きが交流電圧V1aの周波数に対応する周期で相反する方向に交互に変化するため、磁気ヘッド203の下方に位置する凸部21(この例では、データ記録領域Atにおけるデータ記録トラックを構成する凸部21(磁性層14))が交流磁化される。
【0102】
また、制御部206は、時点t0から時間T22(上記の時間T10と時間T12との合計時間)が経過した時点t3において、電源部204bに制御信号S22を出力して磁気ヘッド203に対する交流電圧V1aの供給を停止させる。これにより、時点t2において磁気ヘッド203の下方に位置していた開始位置P2esから時点t3において磁気ヘッド203の下方に位置していた終了位置P2eeまでのデータ記録領域Atの領域Ae2内の凸部21(磁性層14)が交流磁化される。また、制御部206は、交流電圧V1aの供給停止の指示と同時に、電源部204bに対して磁気ヘッド203に直流電圧V2の供給を開始させる。これにより、電源部204bから供給された直流電圧V2によって磁気ヘッド203の下方に磁界が生じ、磁気ヘッド203の下方に位置する凸部21(この例では、データ記録領域Atにおける領域Ae0内の凸部21(磁性層14)、およびサーボパターン領域As内の凸部21(磁性層14))が直流磁化される。
【0103】
さらに、制御部206は、時点t0から時間T23(上記の時間T10と時間T13との合計時間)が経過した時点t4において、電源部204bに制御信号S22を出力して磁気ヘッド203に対する直流電圧V2の供給を停止させる。これにより、時点t3において磁気ヘッド203の下方に位置していた開始位置P3esから時点t4において磁気ヘッド203の下方に位置していた終了位置P3eeまでの領域Ae3内の凸部21(磁性層14)が直流磁化される。続いて、制御部206は、直流磁化が完了したサーボパターン領域Asに隣接するデータ記録領域At、およびそのデータ記録領域Atに隣接するサーボパターン領域Asについても、上記の手順と同様にして、交流磁化処理および直流磁化処理を交互に実行する。
【0104】
また、磁気ディスク10の一周に亘って各データ記録領域Atに対する交流磁化処理、および各サーボパターン領域Asに対する直流磁化処理を実行したときには、制御部206は、ドライバ205に制御信号S23を出力して磁気ヘッド203における記録ヘッドの有効記録幅を上限とし、有効記録幅の1/2程度を下限とする範囲内の距離だけ磁気ヘッド203を磁気ディスク10の内周側に移動させて、最外周部においてデータ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asに対して実行した手順と同様にして、各データ記録領域Atに対する交流磁化処理、および各サーボパターン領域Asに対する直流磁化処理を実行する。
【0105】
この後、各データ記録領域Atの最内周部に対する交流磁化処理、および各サーボパターン領域Asの最内周部に対する直流磁化処理を完了したときに、制御部206は、コントローラ202aに制御信号S24を出力してモータ202を停止させる。以上により、磁気ディスク10のすべてのデータ記録領域Atについて、サーボパターン領域As側の領域Ae0を除く領域Ae2内の凸部21(磁性層14)が交流磁化された状態となり、かつ、データ記録領域Atにおける領域Ae0およびサーボパターン領域Asの全域(領域Ae3)内の凸部21が直流磁化された状態となる。これにより、磁気ディスク10が完成する。この後、完成した磁気ディスク10をモータ2の回転軸に取り付けて磁気ヘッド3等と共に筐体内に取り付けることにより、図1に示すハードディスクドライブ1Aが完成する。
【0106】
このように、この磁化装置200による磁気ディスク10の磁化方法では、磁気ディスク10を回転させつつ、サーボパターン領域As内の凸部21を直流磁化すると共に、データ記録領域At内の凸部21を交流磁化する。したがって、この磁化装置200による磁気ディスク10の磁化方法によれば、磁気ディスク10に対する記録データの記録に先立ってデータ記録トラックを交流磁化することで、磁気ディスク10に記録した記録データの再生時において、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分に直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることなく、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを読み出させることができるため、再生信号の信号品質が十分に高い磁気ディスク10を提供することができる。
【0107】
また、この磁化装置200による磁気ディスク10の磁化方法では、交流磁化処理時において、磁気ディスク10の回転に同期してコントローラ202aから出力される基準信号(回転機構による磁気記録媒体の回転に同期して回転機構から出力される基準信号)の出力時点(時点t0)を基準として、各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を開始する(磁気ヘッド203の下方に開始位置P2esが位置する)時点t2,t4・・、交流磁化処理を終了する(磁気ヘッド203の下方に終了位置P2eeが位置する)時点t3,t5・・、各サーボパターン領域Asに対する直流磁化処理を開始する(磁気ヘッド203の下方に開始位置P3esが位置する)時点t3,t5・・、および直流磁化処理を終了する(磁気ヘッド203の下方に終了位置P3eeが位置する)時点t4,t6・・を特定して磁気ディスクを磁化する。
【0108】
したがって、この磁化装置200による磁気ディスク10の磁化方法によれば、非常に簡易な構成であるにも拘わらず、交流磁化処理の開始タイミングおよび終了タイミングを正確に特定して所望の範囲内の凸部21(この例では、開始位置P2esから終了位置P2eeまでの領域Ae2内の凸部21)を確実に交流磁化することができると共に、直流磁化処理の開始タイミングおよび終了タイミングを正確に特定して所望の範囲内の凸部21(この例では、開始位置P3esから終了位置P3eeまでの領域Ae3内の凸部21)を確実に直流磁化することができる。
【0109】
なお、上記の磁化装置200による磁気ディスク10の磁化方法では、コントローラ202aから出力される基準信号(モーターインデックス信号S25)を基準として、交流磁化処理の開始タイミングおよび終了タイミング、並びに、直流磁化処理の開始タイミングおよび終了タイミングを特定しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、磁気ディスク10を回転させつつ、磁気ヘッド203を例えばサーボパターン領域Asおよびデータ記録領域Atの最外周部に移動させた状態において、所定範囲内(例えば、磁気ディスク10の1/4周程度)の凸部21を直流磁化すると共に、直流磁化した範囲内のいずれかのサーボパターン領域Asから予め規定されたサーボパターン(一例として、サーボアドレスマーク)を検出し、この検出時点(図10における時点t1)を基準として、各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を開始する(磁気ヘッド203の下方に開始位置P2esが位置する)時点t2,t4・・、交流磁化処理を終了する(磁気ヘッド203の下方に終了位置P2eeが位置する)時点t3,t5・・、各サーボパターン領域Asに対する直流磁化処理を開始する(磁気ヘッド203の下方に開始位置P3esが位置する)時点t3,t5・・、および直流磁化処理を終了する(磁気ヘッド203の下方に終了位置P3eeが位置する)時点t4,t6・・を特定して磁気ディスクを磁化する処理をサーボパターン領域Asおよびデータ記録領域Atの最内周部まで複数回に亘って実行する構成を採用することもできる。
【0110】
また、前述したように、磁化装置100によって全域の凸部21を直流磁化した磁気ディスク10を磁化装置200にセットしてデータ記録領域Atの凸部を交流磁化する磁化方法では、磁化装置200による交流磁化処理時において、サーボパターン領域Asから予め規定されたサーボパターン(サーボアドレスマーク)を検出すると共に、検出時点(図8における時点t0)を基準として、各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を開始するタイミングを特定しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、磁化装置200による交流磁化処理時において、磁気ディスク10の回転に同期してコントローラ202aから出力される基準信号(回転機構による磁気記録媒体の回転に同期して回転機構から出力される基準信号)の出力時点を基準として、各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を開始する(磁気ヘッド203の下方に開始位置P1esが位置する)時点t1および交流磁化処理を終了する(磁気ヘッド203の下方に終了位置P1eeが位置する)時点t2を特定して磁気ディスク10を磁化する構成を採用することもできる。
【0111】
続いて、本発明に係る磁気記録媒体、記録再生装置および磁気記録媒体磁化方法の他の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、前述した磁気ディスク10および磁気ディスク10を備えたハードディスクドライブ1Aや磁化装置100,200と同一の機能を有する同一の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、磁気ディスク10に対する記録データの記録処理については、上記のハードディスクドライブ1Aによる記録処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0112】
図12に示すハードディスクドライブ1Bは、前述したハードディスクドライブ1Aとは異なり、例えば磁化装置100等によってサーボパターン領域Asおよびデータ記録領域Atが直流磁化された状態の磁気ディスク10(すなわち、磁化状態が従来の磁気ディスクと同様の磁気ディスク10)が搭載されて構成されている。また、このハードディスクドライブ1Bでは、データ記録領域Atに対する記録データの記録以前の所定の時点において、本発明における交流磁化処理を実行してデータ記録領域At内の凸部21(データ記録トラック)を交流磁化する磁化処理プログラム32が記憶部7に記憶されている。この場合、「所定の時点」としては、例えば、このハードディスクドライブ1Bを接続する外部装置(パーソナルコンピュータや、各種の録画再生装置等)から初期化指示コマンドが出力された時点や、ハードディスクドライブ1Bに対して電源が供給された時点などの各種の状態が含まれる。以下、一例として、外部装置から初期化指示コマンドが出力された時点を「所定の時点」として磁化処理を実行する磁化処理プログラム32が記憶部7に記憶されているものとして、ハードディスクドライブ1Bの動作原理を説明する。
【0113】
このハードディスクドライブ1Bでは、外部装置に接続された状態において、外部装置から初期化指示コマンドが出力されたときに、制御部6が、記憶部7に記憶されている磁化処理プログラム32に従って、磁気ディスク10の各データ記録領域At内の凸部21を交流磁化させる交流磁化処理を開始する。なお、交流磁化処理時における磁化方法の反転周期については、上記の磁化装置200による交流磁化処理時と同様であるため、その具体的な説明を省略する。
【0114】
この交流磁化処理時に際して、制御部6は、まず、コントローラ2aに制御信号S4を出力することによって磁気ディスク10を定速回転させる。次いで、制御部6は、ドライバ5に制御信号S3を出力することにより、例えば最外周のデータ記録トラックの上に磁気ヘッド3を移動させる。この際に、ハードディスクドライブ1Bに搭載されている磁気ディスク10の全域において凸部21が直流磁化されているため、磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド3の下方を磁気ディスク10のサーボパターン領域Asが通過した際には、磁気ヘッド3によってサーボパターンに対応する磁気的信号が読み出されて、サーボパターンに対応する出力信号(アナログ信号)が出力される。一方、検出部4aは、磁気ヘッド3から出力された出力信号に基づき、一例として、サーボアドレスマークを検出する。
【0115】
また、制御部6は、検出部4aから出力された検出信号S1と、磁気ディスク10の回転数と、例えば磁気ディスク10の設計データに基づいて特定されるサーボアドレスマーク領域Amの位置からデータ記録領域Atにおける交流磁化処理の開始位置および終了位置とに基づいて、そのデータ記録トラックのデータ記録領域Atに対する交流磁化処理を開始する時点および交流磁化処理を終了する時点をそれぞれ特定する。この場合、データ記録領域Atの回転方向における一方の端部から他方の端部までの全域を磁気ヘッド3によって交流磁化したときには、前述したように、サーボパターン領域Asの端部領域において、サーボパターンの読み出しが困難となるおそれがある。したがって、このハードディスクドライブ1Bでは、データ記録領域Atの全域を交流磁化処理するのではなく、図13に示すように、データ記録領域Atの回転方向におけるサーボパターン領域As側の2つの領域Ae0(本発明における端部領域)を除いて、開始位置P4esから終了位置P4eeまでの間の領域Ae4の凸部21(磁性層14)を交流磁化するように磁化処理プログラム32がプログラミングされている。
【0116】
一方、磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド3の下方にサーボアドレスマーク領域Amが位置した(検出部4aから検出信号S1が出力された)時点から、各データ記録領域Atに対する磁化処理を開始する(磁気ヘッド3の下方に開始位置P4esが位置する)時点までの時間(以下、「第1の時間」ともいう)や、検出信号S1が出力された時点から各データ記録領域Atに対する磁化処理を終了する(磁気ヘッド3の下方に終了位置P4eeが位置する)時点までの時間(以下、「第2の時間」ともいう)については、磁気ディスク10の回転数と、磁気ディスク10の設計データ(距離情報)とに基づいて演算することができる。
【0117】
したがって、制御部6は、検出部4aから検出信号S1が出力された時点から上記の第1の時間が経過した時点において、電源部4bに制御信号S2を出力して磁気ヘッド3に対して交流電圧V1aの供給を開始させる。この際には、電源部4bから供給された交流電圧V1aによって磁気ヘッド3の下方に磁界が生じ、この磁界における磁力線の向きが交流電圧V1aの周波数に対応する周期で相反する方向に交互に変化するため、磁気ヘッド3の下方に位置する凸部21(この例では、データ記録領域Atにおけるデータ記録トラックを構成する凸部21(磁性層14))が交流磁化される。
【0118】
また、制御部6は、検出部4aから検出信号S1が出力された時点から上記の第2の時間が経過した時点において、電源部4bに制御信号S2を出力して磁気ヘッド3に対する交流電圧V1aの供給を停止させる。これにより、開始位置P4esから終了位置P4eeまでのデータ記録領域Atの領域Ae4内の凸部21(磁性層14)が交流磁化される。続いて、制御部6は、交流磁化が完了したデータ記録領域Atに対して同一のデータ記録トラック上において磁気ディスク10の回転方向において隣接する他のデータ記録領域Atについても、上記のデータ記録領域Atに対する磁化処理時と同様にして、開始位置P4esから終了位置P4eeまでの領域Ae4内の凸部21(磁性層14)を交流磁化する。
【0119】
また、磁気ディスク10の一周に亘って各データ記録領域Atに対する交流磁化処理が完了したときには、制御部6は、ドライバ5に制御信号S3を出力して磁気ヘッド3を1トラック分だけ内周側のデータ記録トラックの上に移動させて、このデータ記録トラックに対して、上記の交流磁化処理と同様にして各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を実行する。さらに、磁気ディスク10の一周に亘って各データ記録領域Atに対する交流磁化処理が完了したときには、制御部6は、ドライバ5に制御信号S3を出力して磁気ヘッド3を1トラック分だけ内周側のデータ記録トラックの上に移動させて、このデータ記録トラックに対して、上記の交流磁化処理と同様にして各データ記録領域Atに対する交流磁化処理を実行する。
【0120】
この後、制御部6は、最外周から最内周まで各データ記録領域At内の各データ記録トラックを順に交流磁化処理する。これにより、前述した磁化装置100および磁化装置200によって磁化処理した磁気ディスク10や、磁化装置200のみによって磁化処理した磁気ディスク10と同様にして、ハードディスクドライブ1B内の磁気ディスク10が、サーボパターン領域As側の領域Ae0を除く領域Ae4内の凸部21(磁性層14)が交流磁化された状態となる。この後、公知の手順に従って所望サイズのパーテーションが確保されることにより、磁気ディスク10の初期化が完了して記録データを記録可能な状態となる。
【0121】
このように、このハードディスクドライブ1Bでは、制御部6がデータ記録領域Atに対する記録データの記録以前の所定の時点(この例では、初期化処理時)において、磁気ヘッド3を介してデータ記録領域At内の凸部21(データ記録トラック:記録領域)を交流磁化する交流磁化処理を実行する。したがって、このハードディスクドライブ1Bによれば、直流磁化された状態のデータ記録トラックに記録データを記録する構成の記録再生装置とは異なり、記録データの再生時において、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分に直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることなく、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを読み出すことができるため、再生信号の信号品質を十分に向上させることができる。この結果、このハードディスクドライブ1Bによれば、記録データを高精度で読み出すことができる。
【0122】
また、このハードディスクドライブ1Bでは、外部装置(この例では、パーソナルコンピュータ等)から指示コマンド(この例では、初期化指示コマンド)が出力されたときに制御部6が本発明における交流磁化処理を実行する。したがって、このハードディスクドライブ1Bによれば、データ記録領域Atが交流磁化されている必要が生じる時点(記録データの記録時点)以前の任意のタイミング(この例では、初期化処理時)において交流磁化処理を確実に実行させることができる。
【0123】
さらに、このハードディスクドライブ1Bでは、本発明における交流磁化処理時において、交流磁化処理によって交流磁化した領域Ae4の全域において磁気ディスク10の回転方向における磁化方向の反転周期が一定の周期となるように制御部6がデータ記録領域At内の凸部21を交流磁化する。したがって、このハードディスクドライブ1Bによれば、磁化方向の反転周期をデータ記録トラック上の各部において相違させるようにして交流磁化する構成と比較して、記録データの再生に際して、記録データの記録に先立ってデータ記録トラックに印加された交流磁化成分が確実に平均化されて、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを確実に読み出すことができる。この結果、このハードディスクドライブ1Bによれば、再生信号の信号品質を一層向上させることができる。
【0124】
また、このハードディスクドライブ1Bでは、本発明における交流磁化処理時において、制御部6が、交流磁化処理によって交流磁化した領域Ae4において磁気ディスク10の回転方向における磁化方向の反転周期が記録データの記録時に凸部21(データ記録トラック)を交流磁化する際の磁化方向の反転周期とは相違するように、データ記録領域内の記録領域を交流磁化する。したがって、このハードディスクドライブ1Bによれば、交流磁化処理時に記録データの記録時と同一の反転周期で交流磁化する構成の記録再生装置とは異なり、交流磁化処理によって印加した交流磁化成分が記録データの一部として誤って読み出される事態を回避することができる。
【0125】
さらに、このハードディスクドライブ1Bでは、本発明における交流磁化処理時において、制御部6が回転方向におけるサーボパターン領域As側の領域Ae0(端部領域)を除いてデータ記録領域At内の凸部21を交流磁化する。したがって、このハードディスクドライブ1Bによれば、サーボパターン領域Asにおけるデータ記録領域At側の端部が交流磁化されてサーボパターンの読み出しが困難となる事態を招くことなく、サーボパターン領域Asの全域からサーボパターン(サーボ信号)を確実に読み出すことができる。
【0126】
次いで、本発明に係る磁気記録媒体、記録再生装置および磁気記録媒体磁化方法のさらに他の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、前述した磁気ディスク10および磁気ディスク10を備えたハードディスクドライブ1A,1Bや磁化装置100,200と同一の機能を有する同一の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0127】
図12に示すハードディスクドライブ1Cは、前述したハードディスクドライブ1Bと同様にして、例えば磁化装置100等によってその全域において凸部21が直流磁化された状態の磁気ディスク10(すなわち、磁化状態が従来の磁気ディスクと同様の磁気ディスク10)が搭載されて構成されている。また、このハードディスクドライブ1Cでは、前述したハードディスクドライブ1Bとは異なり、データ記録領域At内の所定のデータ記録トラック(凸部21)に対する記録データの記録に先立って、記録データを記録するデータ記録トラックに対して予め規定された処理範囲内のデータ記録トラックを交流磁化する交流磁化処理を実行する磁化処理プログラム32aが記憶部7に記憶されている。
【0128】
このハードディスクドライブ1Cでは、外部装置によって記録データの記録を指示するコマンドが出力されたときに、制御部6が、その記録データを記録するデータ記録トラック、およびそのデータ記録に対して半径方向において内周側および外周側で隣接する2本のデータ記録トラックの計3本のデータ記録トラック(本発明における「予め規定された処理範囲内のデータ記録トラック」の一例)について、以下に説明する交流磁化処理が完了しているか否かを判別する。この場合、このハードディスクドライブ1Cでは、交流磁化処理を実行したデータ記録トラック(または、交流磁化処理を実行したセクタ)を特定可能な処理済み情報33が記憶部7に記憶されている。この際に、例えば、ハードディスクドライブ1Cが未使用の状態において記録データの記録を指示されたとき(磁気ディスク10に対して記録データを初めて記録するとき)には、制御部6は、処理済み情報33に基づき、対応する3本のデータ記録トラックに対する交流磁化処理が実行されていないと判別する。
【0129】
次いで、制御部6は、記憶部7に記憶されている磁化処理プログラム32aに従って、磁気ディスク10における上記の3本のデータ記録トラック(データ記録領域At内の凸部21)を交流磁化しつつ記録データを記録する処理を開始する。具体的には、制御部6は、まず、コントローラ2aに制御信号S4を出力することによって磁気ディスク10を定速回転させる。次いで、制御部6は、ドライバ5に制御信号S3を出力することにより、上記の3本のデータ記録トラックのうちの例えば最外周のデータ記録トラックTo(図14参照)の上に磁気ヘッド3を移動させる。この際に、ハードディスクドライブ1Cに搭載されている磁気ディスク10の全域において凸部21が直流磁化されているため、磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド3の下方を磁気ディスク10のサーボパターン領域Asが通過した際には、磁気ヘッド3によってサーボパターンに対応する磁気的信号が読み出されて、サーボパターンに対応する出力信号(アナログ信号)が出力される。一方、検出部4aは、磁気ヘッド3から出力された出力信号に基づき、一例として、サーボアドレスマークを検出する。
【0130】
また、制御部6は、検出部4aから出力された検出信号S1と、磁気ディスク10の回転数と、例えば磁気ディスク10の設計データに基づいて特定されるサーボアドレスマーク領域Amの位置からデータ記録領域Atにおける交流磁化処理の開始位置および終了位置とに基づいて、そのデータ記録トラックのデータ記録領域Atに対する交流磁化処理を開始する時点および交流磁化処理を終了する時点をそれぞれ特定する。この場合、データ記録領域Atの回転方向における一方の端部から他方の端部までの全域を磁気ヘッド3によって交流磁化したときには、前述したように、サーボパターンの読み出しが困難となるおそれがある。
【0131】
したがって、このハードディスクドライブ1Cの記憶部7に記憶されている磁化処理プログラム32aでは、データ記録領域Atの全域を交流磁化処理するのではなく、図14に示すように、記録データを記録するデータ記録トラックTcに対して磁気ディスク10の半径方向で隣接するデータ記録トラックTo,Tiについては、データ記録領域Atの回転方向におけるサーボパターン領域As側の2つの領域Ae0(本発明における端部領域)を除いて、開始位置P4esから終了位置P4eeまでの間の領域Ae4において凸部21(磁性層14)を交流磁化するようにプログラミングされている。また、磁化処理プログラム32aでは、記録データを記録するデータ記録トラックTcについては、データ記録領域Atの回転方向におけるサーボパターン領域As側の2つの領域Ae0(本発明における端部領域)を除いて、開始位置P5esから終了位置P5eeまでの間の領域Ae5と、開始位置P6esから終了位置P6eeまでの間の領域Ae6との2つの領域の凸部21(磁性層14)を交流磁化するようにプログラミングされている。
【0132】
具体的には、制御部6は、磁化処理プログラム32aに従い、磁気ディスク10の回転に伴って磁気ヘッド3の下方にサーボアドレスマーク領域Amが位置した(検出部4aから検出信号S1が出力された)時点から、データ記録トラックToに対する磁化処理を開始する(磁気ヘッド3の下方に開始位置P4esが位置する)時点までの時間(以下、「第1の時間」ともいう)が経過した時点において、電源部4bに制御信号S2を出力して磁気ヘッド3に対して交流電圧V1aの供給を開始させる。これにより、磁気ヘッド3の下方に位置する凸部21(この例では、データ記録領域Atにおけるデータ記録トラックToを構成する凸部21(磁性層14))が交流磁化される。なお、交流磁化処理時における磁化方法の反転周期については、上記の磁化装置200やハードディスクドライブ1Bによる交流磁化処理時と同様であるため、その具体的な説明を省略する。
【0133】
また、制御部6は、検出部4aから検出信号S1が出力された時点からデータ記録トラックToに対する磁化処理を終了する(磁気ヘッド3の下方に終了位置P4eeが位置する)時点までの時間(以下、「第2の時間」ともいう)が経過した時点において、電源部4bに制御信号S2を出力して磁気ヘッド3に対する交流電圧V1aの供給を停止させる。これにより、開始位置P4esから終了位置P4eeまでの領域Ae4内においてデータ記録トラックToが交流磁化される。続いて、制御部6は、記録データを記録すべき範囲が複数のセクタに跨っている(複数のデータ記録領域Atに記録データを記録する)場合においては、交流磁化が完了したデータ記録領域At(セクタ)に対して同一のデータ記録トラックTo上で磁気ディスク10の回転方向において隣接する他のデータ記録領域Atについても、上記のデータ記録領域Atに対する磁化処理時と同様にして、開始位置P4esから終了位置P4eeまでの領域Ae4内の凸部21(磁性層14)を交流磁化する。
【0134】
また、制御部6は、記録データを記録すべきセクタに半径方向において隣接するセクタ内のデータ記録トラックToに対する交流磁化処理が完了したときに、ドライバ5に制御信号S3を出力して磁気ヘッド3を1トラック分だけ内周側のデータ記録トラックTc(記録データを記録すべきデータ記録トラック)の上に移動させる。次いで、制御部6は、検出部4aから検出信号S1が出力された時点から、データ記録トラックTcに対する磁化処理を開始する(磁気ヘッド3の下方に開始位置P5esが位置する)時点までの時間が経過した時点において、電源部4bに制御信号S2を出力して磁気ヘッド3に対して交流電圧V1aの供給を開始させる。また、制御部6は、検出部4aから検出信号S1が出力された時点からデータ記録トラックTcに対する磁化処理を終了する(磁気ヘッド3の下方に終了位置P5eeが位置する)時点までの時間が経過した時点において、電源部4bに制御信号S2を出力して磁気ヘッド3に対する交流電圧V1aの供給を停止させる。これにより、開始位置P5esから終了位置P5eeまでの領域Ae5内においてデータ記録トラックTcが交流磁化される。
【0135】
続いて、制御部6は、外部装置から出力された指示コマンドに従い、データ記録トラックTcに対して開始位置Pwsから終了位置Pweまでの領域Awに記録データに対応する磁気的信号を記録する。また、データ記録トラックTcに対する記録データの記録が完了したときには、制御部6は、記録データの記録が完了した時点(磁気ヘッド3の下方に開始位置P6esが位置する時点:すなわち、終了位置Pweが位置する時点)において、電源部4bに制御信号S2を出力して磁気ヘッド3に対して交流電圧V1aの供給を開始させる。また、制御部6は、検出部4aから検出信号S1が出力された時点からデータ記録トラックTcに対する磁化処理を終了する(磁気ヘッド3の下方に終了位置P6eeが位置する)時点までの時間が経過した時点において、電源部4bに制御信号S2を出力して磁気ヘッド3に対する交流電圧V1aの供給を停止させる。これにより、開始位置P6es(終了位置Pwe)から終了位置P6eeまでの領域Ae6内においてデータ記録トラックTcが交流磁化される。
【0136】
また、制御部6は、データ記録トラックTcに対する2回の交流磁化処理および記録データの記録処理が完了したときに、ドライバ5に制御信号S3を出力して磁気ヘッド3を1トラック分だけ内周側のデータ記録トラックTiの上に移動させる。次いで、制御部6は、上記のデータ記録トラックToに対する交流磁化処理時と同様にして、データ記録トラックTcの開始位置P4esから終了位置P4eeまでの領域Ae4内の凸部21(磁性層14)を交流磁化する。これにより、記録データの記録、および記録データの記録に伴って実行される交流磁化処理が完了する。この後、制御部6は、交流磁化処理が完了したデータ記録トラックを特定可能に処理済み情報33を記憶部7に記憶させる。
【0137】
このようにして交流磁化処理および記録データの記録処理を実行した状態の磁気ディスク10では、例えば、ハードディスクドライブ1Bによって所定のデータ記録トラックに記録データを記録した状態の磁気ディスク10と同様にして、記録データを記録した記録部位(この例では、データ記録トラックTcにおける領域Aw)の周囲に直流磁化されている領域が存在しない状態となる。一方、外部装置によって他の記録データを記録する旨の指示コマンドが出力されたときに、制御部6は、その記録データを記録するデータ記録トラックと、そのデータ記録トラックに内周側および外周側で隣接する2本のデータ記録トラックとの計3本のデータ記録トラックに対する交流磁化処理が完了しているか否かを記憶部7に記憶させた処理済み情報33に基づいて判別する。この際に、3本のうちのいずれかのデータ記録トラックに対する交流磁化処理が実行されていないと判別したときには、制御部6は、上記の交流磁化処理時と同様の手順で、交流磁化処理および記録データの記録処理を実行する。
【0138】
具体的には、制御部6は、記録データを記録するデータ記録トラックに隣接するデータ記録トラックの交流磁化処理が完了していないと判別したときには、前述したデータ記録トラックTo,Tiに対する交流磁化処理時と同様にして、そのデータ記録トラックの開始位置P4esから終了位置P4eeまでの領域Ae4内の凸部21(磁性層14)を交流磁化する。また、記録データを記録するデータ記録トラックの交流磁化処理が完了していないと判別したときには、前述したデータ記録トラックTcに対する交流磁化処理および記録データの記録処理時と同様にして、そのデータ記録トラックの開始位置P5esから終了位置P5eeまでの領域Ae5内の凸部21(磁性層14)を交流磁化した後に、開始位置Pws(終了位置P5ee)から記録データの記録を開始すると共に、終了位置Pweまで記録データの記録が完了したときに、終了位置Pwe(開始位置P6es)から終了位置P6eeまでの領域Ae6内の凸部21(磁性層14)を交流磁化する。一方、上記の3本のデータ記録トラックのすべてに対して交流磁化処理が実行されていると判別したときには、制御部6は、交流磁化処理を実行することなく、所望のデータ記録トラックに対する記録データの記録を直ちに実行する。
【0139】
なお、このハードディスクドライブ1Cでは、記録データを記録するデータ記録トラックTcについて、領域Ae5内の凸部21を交流磁化した後に、領域Awに記録データを記録し、その後に領域Ae6内の凸部21(磁性層14)を交流磁化する交流磁化方法を採用しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、データ記録トラックTcおよびデータ記録トラックTcに隣接するデータ記録トラックTo,Tiの3本のデータ記録トラックについて、記録データの記録に先立って各データ記録トラックTc,To,Tiの開始位置P4esから終了位置P4eeまでの領域Ae4内の凸部21(磁性層14)を交流磁化した後に、データ記録トラックTcの領域Awに記録データを記録する構成を採用することもできる。このような構成においても、上記のハードディスクドライブ1Cによって所定のデータ記録トラックに記録データを記録した状態の磁気ディスク10と同様にして、記録データを記録した記録部位(この例では、データ記録トラックTcにおける領域Aw)の周囲に直流磁化されている領域が存在しない状態となる。
【0140】
このように、このハードディスクドライブ1Cでは、制御部6が、データ記録領域At内におけるデータ記録トラックTcに対する記録データの記録に先立って、データ記録トラックTcに対して予め規定された処理範囲内のデータ記録トラック(この例では、データ記録トラックTcおよびデータ記録トラックTo,Ti)を交流磁化する交流磁化処理を実行する。したがって、このハードディスクドライブ1Cによれば、直流磁化された状態のデータ記録トラックに記録データを記録する構成の記録再生装置とは異なり、記録データの再生時において、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分に直流磁化成分が重畳した状態の磁気的信号が読み出されることなく、記録データの記録に伴って印加された交流磁化成分のみを読み出すことができるため、再生信号の信号品質を十分に向上させることができる。この結果、このハードディスクドライブ1Cによれば、記録データを高精度で読み出すことができる。また、記録データの記録時において、その直前に例えば磁気ディスク10上のすべてのデータ記録領域Atを交流磁化する構成の記録再生装置とは異なり、記録データの再生に際して直流磁化成分の影響を受ける可能性のある部位のみを短時間で交流磁化することができるため、磁気ディスク10に対する記録データの記録を短時間で開始することができる。
【0141】
また、このハードディスクドライブ1Cでは、制御部6が、交流磁化処理を実行したデータ記録トラック(または、交流磁化処理を実行したセクタ)を特定可能な処理済み情報33を記憶部7に記憶させると共に、その処理済み情報33に基づき、予め規定された処理範囲内のデータ記録トラックのうちのいずれかを未処理と判別したときに、未処理のデータ記録トラックを対象とする上記の交流磁化処理を実行する。したがって、このハードディスクドライブ1Cによれば、交流磁化処理が完了しているデータ記録トラックに対して重複する交流磁化処理を実行しない分だけ、磁気ディスク10に対する記録データの記録を一層短時間で開始することができる。
【0142】
なお、本発明は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、ハードディスクドライブ1Bをパーソナルコンピュータ等に接続した状態において、パーソナルコンピュータからの指示コマンドに応じて交流磁化処理を実行する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、製造者が専用の動作指示装置(本発明における外部装置の他の一例)にハードディスクドライブ1Bを接続して、ハードディスクドライブ1Bの出荷に先立って交流磁化処理を実行させる方法を採用することができる。また、記録データの記録に際して、記録データを記録するデータ記録トラックTcと、そのデータ記録トラックTcに隣接する2本のデータ記録トラックTo,Tiの3本を対象として交流磁化処理を実行する構成のハードディスクドライブ1Cについて説明したが、本発明はこれに限定されず、記録データの記録に先立って記録データを記録するデータ記録トラックTcのみに対して交流磁化磁化処理を実行する構成や、記録データを記録するデータ記録トラックTcに対する交流磁化処理を実行することなく、データ記録トラックTcに隣接する1本または複数本のデータ記録トラック(データ記録トラックTo,Ti等)のみを対象として交流磁化処理を実行する構成を採用することもできる。
【0143】
また、例えば、凹凸パターン20(データトラックパターン20tおよびサーボパターン20s)における各凸部21の突端部側から基端部までの全体を磁性層14(磁性材料)で形成した磁気ディスク10を例に挙げて説明したが、本発明に係る磁気記録媒体の構成はこれに限定されない。具体的には、例えば、突端部側が磁性層14で構成されると共に基端部側が中間層13や軟磁性層12で構成された凸部21と、その底面が中間層13や軟磁性層12の厚み内に形成された凹部22とを有する凹凸パターン20でデータトラックパターン20tおよびサーボパターン20sを構成することもできる。
【0144】
また、例えば、図15に示す磁気ディスク10Aのように、ガラス基板11に形成した凹凸パターン(凹凸パターン20と凹凸の位置関係が同様の凹凸パターン)を覆うようにして磁性層14を形成することにより、その表面が磁性材料で形成された複数の凸部21と底面が磁性材料で形成された複数の凹部22とによって凹凸パターン20(データトラックパターン20tおよびサーボパターン20s)を構成することができる。さらに、図16に示す磁気ディスク10Bのように、各凸部21のみならず、各凹部22の底部を含めて磁性層14で形成して凹凸パターン20を構成することもできる。
【0145】
また、図17に示す磁気ディスク10Cのように、その突端部のみが磁性層14で形成されて基端部側が非磁性材料または軟磁性材料(この例では、ガラス基板11)で形成された複数の凸部21を備えて凹凸パターン20を構成することもできる。この場合、同図に示す磁気ディスク10Cでは、凸部21の突端部のみが磁性層14で形成されているが、隣り合う凸部21,21の間の凹部22の底面にも磁性層14を形成した構成(前述した磁気ディスク10Aにおける凸部21の側面部位に磁性層14が存在しない構成:図示せず)を採用することもできる。
【0146】
さらに、非磁性材料の層に形成した凹部内に上記の磁性層14を構成する磁性材料を埋め込むことで非磁性材料の層における凸部の部位を非記録領域(磁気ディスク10等における凹部22に対応する領域)とし、凹部内に埋め込まれた磁性材料の部位を記録領域(磁気ディスク10等における凸部21に対応する領域)として磁気ディスクを構成することもできる(図示せず)。また、磁性材料の層における所望の領域を選択的に変質させることで磁気的信号を読み出し可能に保持する能力が周囲よりも低い領域、または、その能力を実質的に有しない領域を形成し、磁気的信号を読み出し可能に保持する能力が高い領域を記録領域(磁気ディスク10等における凸部21に対応する領域)とし、磁気的信号を読み出し可能に保持する能力が低い領域を非記録領域(磁気ディスク10等における凹部22に対応する領域)として磁気ディスクを構成することもできる(図示せず)。
【0147】
加えて、データトラックパターン20tおよびサーボパターン20sの双方を凸部21および凹部22を有する凹凸パターン20で構成した例について説明したが、本発明における磁気記録媒体はこれに限定されず、サーボパターン領域As内に凹凸パターン20でサーボパターン20sを形成すると共に、データ記録領域At内に連続磁性膜(凹凸が存在しない平坦な磁性層14)を形成して記録データの記録再生を可能に構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】ハードディスクドライブ1Aの構成を示す構成図である。
【図2】磁気ディスク10,10A〜10Cの平面図である。
【図3】磁気ディスク10の断面図である。
【図4】磁気ディスク10,10A〜10Cにおけるデータ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asの平面図である。
【図5】記録データの記録時および交流磁化処理時における交流磁化の周期について説明するための説明図である。
【図6】磁化装置100の構成を示す構成図である。
【図7】磁化装置200の構成を示す構成図である。
【図8】磁化装置200による磁気ディスク10の磁化方法について説明するための説明図である。
【図9】磁化装置200による磁気ディスク10の磁化方法について説明するための他の説明図である。
【図10】磁化装置200による磁気ディスク10の他の磁化方法について説明するための説明図である。
【図11】磁化装置200による磁気ディスク10の他の磁化方法について説明するための他の説明図である。
【図12】ハードディスクドライブ1B,1Cの構成を示す構成図である。
【図13】ハードディスクドライブ1Bによる磁気ディスク10の磁化方法について説明するための説明図である。
【図14】ハードディスクドライブ1Cによる磁気ディスク10の磁化方法について説明するための説明図である。
【図15】他の実施の形態に係る磁気ディスク10Aの断面図である。
【図16】他の実施の形態に係る磁気ディスク10Bの断面図である。
【図17】他の実施の形態に係る磁気ディスク10Cの断面図である。
【符号の説明】
【0149】
1A〜1C ハードディスクドライブ
2 モータ
2a コントローラ
3 磁気ヘッド
4a 検出部
4b 電源部
6 制御部
10,10A〜10C 磁気ディスク
11 ガラス基板
14 磁性層
15 非磁性材料
20 凹凸パターン
20s サーボパターン
20t データトラックパターン
21 凸部
22 凹部
31 サーボ制御プログラム
32,32a 磁化処理プログラム
33 処理済み情報
100,200 磁化装置
102 電磁石
103 電源部
104 制御部
202 モータ
202a コントローラ
203 磁気ヘッド
204a 検出部
204b 電源部
206 制御部
Ae0〜Ae4,Aw 領域
Am サーボアドレスマーク領域
Ap プリアンブルパターン領域
As サーボパターン領域
At データ記録領域
P1es〜P6es,Pws 開始位置
P1ee〜P6ee,Pwe 終了位置
S1,S21 検出信号
S2〜S4,S11,S12,S22〜S24 制御信号
S25 モーターインデックス信号
t0〜t6 時点
T10〜T15,T21〜T25 時間
Tc,Ti,To データ記録トラック
V1,V1a 交流電圧
V2 直流電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体であって、
前記データ記録領域に記録データを未記録の状態において、前記サーボパターン領域内の前記記録領域が直流磁化されると共に、当該データ記録領域内の前記記録領域が交流磁化されている磁気記録媒体。
【請求項2】
記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体であって、
記録再生装置に未搭載の状態において、前記サーボパターン領域内の前記記録領域が直流磁化されると共に、前記データ記録領域内の前記記録領域が交流磁化されている磁気記録媒体。
【請求項3】
記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体であって、
前記サーボパターン領域内の前記記録領域が直流磁化されると共に、前記データ記録領域内の前記記録領域が交流磁化され、かつ、当該データ記録領域内の交流磁化された領域の全域において当該磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期が一定の周期となっている磁気記録媒体。
【請求項4】
記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体であって、
前記サーボパターン領域内の前記記録領域が直流磁化されると共に、前記データ記録領域内の前記記録領域が交流磁化され、かつ、当該データ記録領域内の交流磁化された領域において当該磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期が当該データ記録領域に対する記録データの記録時に前記記録領域を交流磁化する際の磁化方向の反転周期とは相違している磁気記録媒体。
【請求項5】
前記データ記録領域は、当該磁気記録媒体の回転方向における前記サーボパターン領域側の端部領域を除いて前記記録領域が交流磁化されている請求項1から4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体に対する磁気的信号の記録および当該磁気記録媒体からの磁気的信号の読み出しを実行する磁気ヘッドと、当該磁気ヘッドによる前記磁気的信号の記録および読み出しを制御する制御部とを備えている記録再生装置。
【請求項7】
記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成されて当該少なくとも一面の当該サーボパターン領域の前記記録領域が直流磁化された回転型の磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体に対する磁気的信号の記録および当該磁気記録媒体からの磁気的信号の読み出しを実行する磁気ヘッドと、当該磁気ヘッドによる前記磁気的信号の記録および読み出しを制御する制御部とを備えた記録再生装置であって、
前記制御部は、前記データ記録領域に対する記録データの記録以前の所定の時点において、前記磁気ヘッドを介して前記データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する交流磁化処理を実行する記録再生装置。
【請求項8】
前記制御部は、外部装置から指示コマンドが出力されたときに前記交流磁化処理を実行する請求項7記載の記録再生装置。
【請求項9】
記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成されて当該少なくとも一面の当該サーボパターン領域の前記記録領域が直流磁化された回転型の磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体に対する磁気的信号の記録および当該磁気記録媒体からの磁気的信号の読み出しを実行する磁気ヘッドと、当該磁気ヘッドによる前記磁気的信号の記録および読み出しを制御する制御部とを備えた記録再生装置であって、
前記制御部は、前記データ記録領域内の前記記録領域で構成された所定のデータ記録トラックに対する記録データの記録に先立って、当該記録データを記録するデータ記録トラックに対して予め規定された処理範囲内の前記データ記録トラックを交流磁化する交流磁化処理を実行する記録再生装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記交流磁化処理によって交流磁化した領域の全域において前記磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期が一定の周期となるように前記データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する請求項7から9のいずれかに記載の記録再生装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記交流磁化処理によって交流磁化した領域において前記磁気記録媒体の回転方向における磁化方向の反転周期が記録データの記録時に前記記録領域を交流磁化する際の磁化方向の反転周期とは相違するように前記データ記録領域内の当該記録領域を交流磁化する請求項7から10のいずれかに記載の記録再生装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記交流磁化処理時において、前記磁気記録媒体の回転方向における前記サーボパターン領域側の端部領域を除いた前記データ記録領域の前記記録領域を交流磁化する請求項7から11のいずれかに記載の記録再生装置。
【請求項13】
記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体を磁化する磁気記録媒体磁化方法であって、
前記少なくとも一面の前記サーボパターン領域の前記記録領域を直流磁化する第1の磁化処理と、当該磁気記録媒体を回転させつつ前記データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する第2の磁化処理とをこの順で実行する磁気記録媒体磁化方法。
【請求項14】
記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体を磁化する磁気記録媒体磁化方法であって、
前記磁気記録媒体を回転させつつ、前記サーボパターン領域内の前記記録領域を直流磁化すると共に、前記データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する磁気記録媒体磁化方法。
【請求項15】
記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成されて当該少なくとも一面の当該サーボパターン領域の前記記録領域が直流磁化された回転型の磁気記録媒体を回転させる回転機構と、前記記録領域を磁化する磁気ヘッドと、当該磁気ヘッドに交流電圧を供給する電源部と、前記回転機構および前記電源部を制御する制御部とを備えて、前記磁気記録媒体を磁化する磁気記録媒体磁化装置であって、
前記制御部は、前記回転機構を制御して前記磁気記録媒体を回転させつつ、前記磁気ヘッドが前記データ記録領域上に位置したときに前記電源部を制御して当該磁気ヘッドに前記交流電圧を供給して当該データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する磁気記録媒体磁化装置。
【請求項16】
記録領域および非記録領域を有するパターンによって円板状の基材における少なくとも一面のサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に当該少なくとも一面のデータ記録領域に当該パターンによってデータトラックパターンが形成された回転型の磁気記録媒体を回転させる回転機構と、前記記録領域を磁化する磁気ヘッドと、当該磁気ヘッドに直流電圧または交流電圧を供給する電源部と、前記回転機構および前記電源部を制御する制御部とを備えて、前記磁気記録媒体を磁化する磁気記録媒体磁化装置であって、
前記制御部は、前記回転機構を制御して前記磁気記録媒体を回転させつつ、前記磁気ヘッドが前記サーボパターン領域上に位置したときに前記電源部を制御して当該磁気ヘッドに前記直流電圧を供給して当該サーボパターン領域内の前記記録領域を直流磁化すると共に、前記磁気ヘッドが前記データ記録領域上に位置したときに前記電源部を制御して当該磁気ヘッドに前記交流電圧を供給して当該データ記録領域内の前記記録領域を交流磁化する磁気記録媒体磁化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−21009(P2009−21009A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275029(P2008−275029)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【分割の表示】特願2006−353625(P2006−353625)の分割
【原出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】