説明

磁気記録媒体、記録再生装置およびスタンパー

【課題】磁気的信号の確実な読み取りが可能で表面平滑性が良好な磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】複数の凸部40aと凹部40bとを有する凹凸パターン40によってサーボパターン領域Asにサーボパターンが形成されると共に、サーボパターン領域Asがアドレスパターン領域Aaおよびバーストパターン領域Abを備えて構成され、アドレスパターン領域Aaに形成された各凸部40aの突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qa1と、バーストパターン領域Abに形成された各凸部40aの突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qb1とのいずれか大きい一方がサーボパターン領域Asに形成された各凸部40aの突端面における各内接円Qx1,Qp1,Qa1,Qb1・・のうちの最大径の内接円となるように凹部40bがサーボパターン領域Asに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボパターン領域に凹凸パターンによってサーボパターンが形成された磁気記録媒体、その磁気記録媒体を備えた記録再生装置、およびその磁気記録媒体を製造するためのスタンパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の磁気記録媒体を備えた記録再生装置として、ディスクリートトラック型の磁気ディスクを備えて構成された磁気記録装置が特開平9−97419号公報に開示されている。この場合、この磁気記録装置に搭載されている磁気ディスクは、ガラスディスク基板(基材)の一面側に記録磁性部材(磁性材料)で同心円状の記録トラック(帯状の凸部)が形成されて各種記録データの記録および再生が可能に構成されている。また、各記録トラックの間の凹部には、磁気ディスクの表面平滑性を向上させると共に、隣り合う磁気トラックを磁気的に分離するためのガードバンド部材(非磁性材料)が埋め込まれてガードバンド部が形成されている。
【0003】
この磁気ディスクの製造に際しては、まず、基材の一面側に磁性材料をスパッタリングして記録磁気層を形成する。次いで、記録磁気層を覆うようにしてポジ形レジストをスピンコートしてプリベークした後に、原盤カッティング装置を用いてガードバンド部のパターンと同じパターンを描画して現像処理する。これにより、記録磁気層の上にレジストパターン(凹凸パターン)が形成される。続いて、レジストパターンをマスクとして用いて記録磁気層をエッチング処理した後に、アッシング装置によって磁気記録層上の残留マスクを除去する。これにより、基材の上に磁性材料からなる記録トラックおよびサーボパターン(凸部が磁性材料で形成された凹凸パターン)が形成される。次いで、この状態の基材に非磁性材料をスパッタリングする。この際には、サーボパターンを構成する凹部や各記録トラック間の凹部が非磁性材料で埋め尽くされ、かつ、サーボパターンを構成する凸部や各記録トラックが非磁性材料で覆われるまで非磁性材料を十分な厚みにスパッタリングする。続いて、スパッタリングした非磁性材料の表面をドライエッチング処理することにより、サーボパターンを構成する凸部や記録トラック等の突端面(磁性材料の表面)を非磁性材料から露出させる。これにより、磁気ディスクが完成する。
【特許文献1】特開平9−97419号公報(第6−12頁、第1−19図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の磁気ディスクには、以下の問題点がある。すなわち、従来の磁気ディスクでは、基材の全域を覆うようにして非磁性材料をスパッタリングした後に、サーボパターンを構成する凸部や記録トラック等の突端面(上面)が露出するまで非磁性材料をドライエッチング処理して表面を平滑化している。しかし、この製造方法に従って磁気ディスクを製造した場合、ドライエッチング処理に際して、その突端面が広い凸部(例えば、磁気ディスクの回転方向に沿った長さ、および半径方向に沿った長さの双方が長い凸部)の上に非磁性材料が大量に残留して(以下、凸部の上に残留した非磁性材料を「残渣」ともいう)、厚手の残渣によって凸部が覆われた状態となることがある。
【0005】
具体的には、例えば、図32に示すように、上記の製造方法に従って製造した磁気ディスク10zは、同心円状の複数のデータ記録トラックで構成されたデータトラックパターン40tzが形成されたデータ記録領域Atzと、トラッキングサーボ用のサーボパターン40szが形成されたサーボパターン領域Aszとが磁気ディスク10zの回転方向(同図に示す矢印Rの向き)で交互に並ぶように規定されて製造されている。この場合、図33に示すように、磁気ディスク10zのサーボパターン領域Aszは、一例として、プリアンブルパターンが形成されたプリアンブルパターン領域Apzと、アドレスパターンが形成されたアドレスパターン領域Aazと、バースト領域Ab1z〜Ab4zの各領域にバーストパターンが形成されたバーストパターン領域Abzとを備えている。また、データ記録領域Atzとプリアンブルパターン領域Apzとの間、プリアンブルパターン領域Apzとアドレスパターン領域Aazとの間、アドレスパターン領域Aazとバーストパターン領域Abzとの間、およびバーストパターン領域Abzとデータ記録領域Atzとの間の各領域には、磁性材料(磁性層14)からなる凸部で構成された非サーボ信号領域Axzが形成されている。さらに、バーストパターン領域Abzにおける各バースト領域Ab1z〜Ab4zの各領域の間には、磁性材料(磁性層14)からなる凸部で構成された非サーボ信号領域Axbzが形成されている。この場合、非サーボ信号領域Axz,Axbzには、トラッキングサーボ制御用の制御信号が記録されておらず、非サーボ信号領域Axz,Axbzの全域が上記の凸部で構成されて凹部が存在しない状態となっている。なお、同図において斜線で塗り潰した領域は、サーボパターン40szおよびデータトラックパターン40tzにおける凸部(図34における凸部40az)の形成領域を表している。
【0006】
この場合、出願人は、サーボパターン40sz等を覆うようにして形成した非磁性材料15の層(凸部40az,40az・・等の間にガードバンド部を形成するための材料の層:図34参照)をドライエッチング処理して各凸部40az,40az・・を露出させる際に、その下方に存在する凸部40azの突端面が広いほど(例えば、凸部40azの突端面における磁気ディスク10zの回転方向に沿った長さおよび半径方向に沿った長さが共に長いほど)、非磁性材料15に対するエッチングの進行が遅くなる現象を見出している。したがって、突端面が広い凸部が形成されている非サーボ信号領域Axz,Axbz・・等には、非磁性材料15の層に対するドライエッチング処理に際して厚手の残渣が生じることとなる。具体的には、図34に示すように、例えば、突端面の回転方向に沿った長さL11が短い凸部40az,40az・・上では、ドライエッチング処理によって非磁性材料15が十分にエッチングされて凸部40azの突端面が非磁性材料15から露出する。これに対して、突端面が過剰に広い凸部40az,40az・・上では、非磁性材料15に対するエッチングの進行が遅いため、長さL11が短い凸部40azの突端面が非磁性材料15から露出した時点でドライエッチング処理を終了したときに、厚みTの残渣が生じた状態(凸部40azが非磁性材料15によって覆われた状態)となる。この結果、残渣が生じた部位(非サーボ信号領域Axz,Axbz等)においてサーボパターン領域Asz内の表面平滑性が悪化する。
【0007】
一方、突端面が過剰に広い凸部40az上の残渣が完全に取り除かれるまでドライエッチング処理を継続した場合には、突端面の回転方向に沿った長さL11が短い凸部40azの部位で非磁性材料15のみならず磁性層14(凸部40az)までもがエッチングされる。したがって、非サーボ信号領域Axz,Axbzを含むサーボパターン領域Aszの全域に亘って凸部40az上の残渣が完全に取り除かれるまでドライエッチング処理を継続した場合には、突端面の回転方向に沿った長さまたは半径方向に沿った長さが比較的短いプリアンブルパターン領域Apz内の凹凸パターンやアドレスパターン領域Aaz内の凹凸パターン等における凸部40az,40az・・が過度にエッチングされて、磁気的信号の確実な読み取りが困難となるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、磁気的信号の確実な読み取りが可能で、しかも、表面平滑性が良好なサーボパターンを有する磁気記録媒体、および記録再生装置、並びに、このような磁気記録媒体を製造し得るスタンパーを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく本発明に係る磁気記録媒体は、少なくとも突端部が磁性材料で形成された複数の凸部と凹部とを有する凹凸パターンによって基材の少なくとも一面におけるサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に、当該サーボパターン領域がアドレスパターン領域およびバーストパターン領域を備えて構成され、前記アドレスパターン領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円(凸部の突端面における平面形状の内接円)のうちの最大径の内接円と、前記バーストパターン領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円とのいずれか大きい一方が前記サーボパターン領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円となるように前記凹部が当該サーボパターン領域に形成されている。
【0010】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、少なくとも突端部が前記磁性材料で形成された凸部によって複数のデータ記録トラックが前記基材の少なくとも前記一面におけるデータ記録領域に形成され、当該各データ記録トラックは、前記半径方向に沿った長さが前記いずれか大きい一方の内接円の直径以下となるように形成されている。
【0011】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記のいずれかの磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体における前記サーボパターン領域から読み取られた所定の信号に基づいてトラッキングサーボ制御処理を実行する制御部とを備えている。
【0012】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、少なくとも突端部が磁性材料で形成された複数の凸部と凹部とを有する凹凸パターンによって基材の少なくとも一面におけるサーボパターン領域にサーボパターンが形成され、前記サーボパターン領域は、製造時に前記凹凸パターンによってトラッキングサーボ制御用の制御信号が記録された複数種類の第1機能領域と、当該各第1機能領域の前記凹凸パターンとは種類が異なる凹凸パターンが形成された第2機能領域とを備えて構成されている。
【0013】
さらに、本発明に係る磁気記録媒体は、前記サーボパターン領域は、前記複数種類の第1機能領域の一種としてのアドレスパターン領域およびバーストパターン領域を備えて構成され、前記第2機能領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円の直径が、前記アドレスパターン領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円と、前記バーストパターン領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円とのいずれか大きい一方の直径以下となるように前記凹部が当該第2機能領域に形成されている。
【0014】
また、本発明に係る磁気記録媒体は、少なくとも突端部が磁性材料で形成された複数の凸部と凹部とを有する凹凸パターンによって基材の少なくとも一面におけるサーボパターン領域にサーボパターンが形成され、前記サーボパターン領域は、製造時に前記凹凸パターンによってトラッキングサーボ制御用の制御信号が記録された複数種類の第1機能領域と、その全域に亘って前記凹部が形成された第2機能領域とを備えて構成されている。
【0015】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記のいずれかの磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体における前記第1機能領域から読み取られた所定の信号に基づいてトラッキングサーボ制御処理を実行する制御部とを備えている。
【0016】
また、本発明に係るスタンパーは、磁気記録媒体製造用のスタンパーであって、上記のいずれかの磁気記録媒体における前記凹凸パターンと相補的形状の凸凹パターンが形成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る磁気記録媒体によれば、アドレスパターン領域に形成した各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円と、バーストパターン領域に形成した各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円とのいずれか大きい一方がサーボパターン領域に形成した各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円となるように凹部をサーボパターン領域に形成したことにより、いずれか大きい一方の内接円の直径を超える直径の内接円が存在し得る広い突端面を有する凸部がサーボパターン領域内に存在しないため、サーボパターン領域内の凹凸パターンを覆うようにして形成した非磁性材料の層をエッチング処理する際に、各凸部の上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、サーボパターン領域内の平坦性が良好で、しかもサーボデータの確実な読み取りが可能な磁気記録媒体を提供することができる。
【0018】
また、本発明に係る磁気記録媒体によれば、半径方向に沿った長さがサーボパターン領域に形成した各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円の直径以下となるように各データ記録トラックをデータ記録領域に形成したことにより、データ記録領域内の各凸部の上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。したがって、サーボパターン領域およびデータ記録領域の双方(磁気記録媒体の全域)において平坦性が良好で、しかも安定した記録再生が可能な磁気記録媒体を提供することができる。
【0019】
また、本発明に係る記録再生装置によれば、上記のいずれかの磁気記録媒体と、その磁気記録媒体におけるサーボパターン領域から読み取られた所定の信号に基づいてトラッキングサーボ制御処理を実行する制御部とを備えたことにより、トラッキングサーボ制御用の制御信号を記録した領域を除く領域に形成された凹凸パターン(ダミーパターン)の存在に影響されることなく、データ記録領域内の各凸部(データ記録トラック)にオントラックさせた磁気ヘッドを介して記録データの記録再生を行うことができる。
【0020】
また、本発明に係る磁気記録媒体によれば、製造時に凹凸パターンによってトラッキングサーボ制御用の制御信号を記録した複数種類の第1機能領域と、各第1機能領域の凹凸パターンとは種類が異なる凹凸パターンを形成した第2機能領域とを備えてサーボパターン領域を構成したことにより、非サーボ信号領域Axz,Axbzの全域が凸部で構成された従来の磁気ディスク10zとは異なり、第2機能領域内に残渣が生じる事態を回避することができ、たとえ生じたとしてもその残渣を十分に薄くすることができる。
【0021】
さらに、本発明に係る磁気記録媒体によれば、第2機能領域に形成した各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円の直径が、アドレスパターン領域に形成した各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円と、バーストパターン領域に形成した各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円とのいずれか大きい一方の直径以下となるように凹部を第2機能領域に形成したことにより、第2機能領域内に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。
【0022】
また、本発明に係る磁気記録媒体によれば、製造時に凹凸パターンによってトラッキングサーボ制御用の制御信号を記録した複数種類の第1機能領域と、その全域に亘って凹部を形成した第2機能領域とを備えてサーボパターン領域を構成したことにより、残渣が生じるおそれのある凸部が第2機能領域内に存在せず、しかも第2機能領域を除く部位についても突端面が過剰に広い凸部(所定範囲内に凹部が存在しない凸部)が存在しないため、サーボパターン領域内の凹凸パターンを覆うようにして形成した非磁性材料の層をエッチング処理する際に、第2機能領域を含むサーボパターン領域の全域において各凸部の上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、サーボパターン領域内の平坦性が良好で、しかもサーボデータの確実な読み取りが可能な磁気記録媒体を提供することができる。
【0023】
また、本発明に係る記録再生装置によれば、上記のいずれかの磁気記録媒体と、その磁気記録媒体における第1機能領域から読み取られた所定の信号に基づいてトラッキングサーボ制御処理を実行する制御部とを備えたことにより、第2記録領域に形成された凹凸パターン(ダミーパターン)の存在に影響されることなく、データ記録領域内の各凸部(データ記録トラック)にオントラックさせた磁気ヘッドを介して記録データの記録再生を行うことができる。
【0024】
また、本発明に係るスタンパーによれば、上記のいずれかの磁気記録媒体における凹凸パターンと相補的形状の凸凹パターンを形成したことにより、例えば、磁気記録媒体を製造するための中間体に対するインプリント処理時に、アドレスパターン領域またはバーストパターン領域に形成される各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円の直径を超える直径の内接円が存在し得る広い突端面を有する凸部がサーボパターン領域内に形成される事態を回避することができる。このため、この凹凸パターンをマスクとして中間体に対するエッチング処理を実行することにより、上記の最大径の内接円の直径を超える直径の内接円が存在し得る広い突端面を有する凸部がサーボパターン領域内に形成される事態を回避することができる。したがって、この凹凸パターンを覆うようにして形成した非磁性材料の層をエッチング処理する際に、サーボパターン領域内の各凸部の上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、平坦性が良好で、しかもサーボデータの確実な読み取りが可能な磁気記録媒体を製造することができる。また、磁気記録媒体における各凸部の突端面に対応して、過剰に広い凹部がスタンパーに存在しないため、中間体における樹脂層(インプリント処理によって凹凸パターンを形成する層)にスタンパーの凹凸パターンを押し付けた際に、スタンパーの凹部内への樹脂材料(樹脂層)の移動量の不足に起因する凸部の高さ不足(樹脂マスクの厚み不足)が生じる事態を回避することができる。したがって、中間体に形成した凹凸パターンをマスクとして中間体をエッチングする際に、中間体に対するエッチングの完了に先立ってマスクとしての凸部が消失する事態を回避することができる結果、十分な深さの凹部を有する凹凸パターンを中間体に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る磁気記録媒体、記録再生装置およびスタンパーの最良の形態について説明する。
【0026】
図1に示すハードディスクドライブ1は、本発明に係る記録再生装置の一例であって、モータ2、磁気ヘッド3、検出部4、ドライバ5、制御部6、記憶部7および磁気ディスク10を備えて各種データの記録再生が可能に構成されている。モータ2は、制御部6の制御に従って磁気ディスク10を一例として4200rpmの回転数で定速回転させる。磁気ヘッド3は、スイングアーム3aを介してアクチュエータ3bに取り付けられて磁気ディスク10に対する記録データの記録再生時においてアクチュエータ3bによって磁気ディスク10上を移動させられる。また、磁気ヘッド3は、磁気ディスク10のサーボパターン領域As(図2参照)からのサーボデータの読み出しと、データ記録領域At(図2参照)に対する記録データの磁気的な書き込みと、データ記録領域Atに磁気的に書き込まれている記録データの読み出しとを実行する。なお、磁気ヘッド3は、実際には磁気ディスク10に対して磁気ヘッド3を浮上させるためのスライダの底面(エアベアリング面)に形成されているが、このスライダについての説明および図示を省略する。アクチュエータ3bは、制御部6の制御下でドライバ5から供給される駆動電流によってスイングアーム3aをスイングさせることにより、磁気ヘッド3を磁気ディスク10上の任意の記録再生位置に移動させる。
【0027】
検出部4は、磁気ヘッド3から出力された出力信号(アナログ信号)からサーボデータを取得(検出)して制御部6に出力する。ドライバ5は、制御部6から出力された制御信号に従ってアクチュエータ3bを制御して磁気ヘッド3を所望のデータ記録トラックにオントラックさせる。制御部6は、ハードディスクドライブ1を総括的に制御する。また、制御部6は、本発明に係る制御部の一例であって、検出部4から出力されたサーボデータ(「サーボパターン領域から読み取られた所定の信号」の一例)に基づいてドライバ5を制御する(トラッキングサーボ制御処理の実行)。記憶部7は、制御部6の動作プログラムなどを記憶する。
【0028】
一方、磁気ディスク10は、本発明に係る磁気記録媒体の一例であって、前述したモータ2や磁気ヘッド3などと共にハードディスクドライブ1の筐体内に配設されている。この磁気ディスク10は、垂直記録方式による記録データの記録が可能なディスクリートトラック型の磁気ディスク(パターンド媒体)であって、図4に示すように、軟磁性層12、中間層13および磁性層14がガラス基材11の上にこの順で形成されている。この場合、磁性層14は、突端部(同図における上端部)から基端部(同図における下端部)までの全体が磁性材料で形成された凸部40a,40a・・と、凸部40a,40a・・間の凹部40b,40b・・とが形成されて凹凸パターン40を構成する。また、凹部40b,40b・・には、SiO等の非磁性材料15が埋め込まれて磁気ディスク10の表面が平坦化されている。さらに、凹部40b,40b・・に埋め込まれた非磁性材料15、および磁性層14(凸部40a)の表面には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等によって厚みが2nm程度の保護層16(DLC膜)が形成されている。また、保護層16の表面には、磁気ヘッド3および磁気ディスク10の双方の傷付きを回避するための潤滑剤(一例として、フォンブリン系の潤滑剤)が塗布されている。
【0029】
ガラス基材11は、本発明における基材に相当し、ガラス板を表面研磨して厚みが0.6mm程度の円板状に形成されている。なお、本発明における基材は、ガラス基材に限定されず、アルミニウムやセラミックなどの各種非磁性材料で円板状に形成した基材を使用することができる。軟磁性層12は、CoZrNb合金などの軟磁性材料をスパッタリングすることによって厚みが100nm〜200nm程度の薄膜状に形成されている。中間層13は、磁性層14を形成するための下地層として機能する層であって、CrやCoCr非磁性合金などの中間層形成用材料をスパッタリングすることによって厚みが40nm程度の薄膜状に形成されている。磁性層14は、凹凸パターン40(図3に示すデータトラックパターン40tおよびサーボパターン40s)を構成する層であって、後述するように、例えばCoCrPt合金をスパッタリングした層に対してエッチング処理することによって凹部40b,40b・・が形成されている。
【0030】
この場合、図2に示すように、この磁気ディスク10では、データ記録領域At,At・・の間にサーボパターン領域As,As・・が設けられてデータ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asが磁気ディスク10の回転方向(矢印Rの向き)において交互に並ぶように規定されている。なお、本明細書では、回転方向において並ぶ2つのデータ記録領域At,Atによって挟まれた領域(1つのデータ記録領域Atにおける回転方向側の端部から、他の1つのデータ記録領域Atにおける回転方向側の端部までの間の領域)をサーボパターン領域Asとする。また、データ記録領域Atにおける回転方向側の端部は、そのデータ記録領域Atに形成された複数のデータ記録トラック(後述する凸部40a,40a・・)における回転方向側の各端部を連結した仮想線分(磁気ディスク10の半径方向に沿った直線状または円弧状の線分)と一致しているものとする。
【0031】
また、この磁気ディスク10を搭載したハードディスクドライブ1では、前述したようにモータ2が制御部6の制御に従って磁気ディスク10を角速度一定で回転させるように構成されている。したがって、この磁気ディスク10では、単位時間当たりに磁気ヘッド3の下方を通過させられる磁気ディスク10上の長さに比例して、磁気ディスク10の回転方向に沿ったデータ記録領域Atの長さ、および回転方向に沿ったサーボパターン領域Asの長さが中心Oから離間するほど長くなるように(データ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asが内周側領域Aiよりも外周側領域Aoほど幅広となるように)規定されている。この結果、データ記録領域At内に形成されたデータ記録トラック(凸部40a)における突端面の回転方向に沿った長さや、サーボパターン領域As内に形成されたサーボパターン40s用の各凸部40a,40a・・における突端面および各凹部40b,40b・・における底面の回転方向に沿った基準の長さ(例えば、1ビット信号長に対応する長さ)は、磁気ディスク10の内周側領域Aiよりも外周側領域Aoほど長くなっている。
【0032】
なお、サーボパターン領域As内の各凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った基準の長さについては、磁気ディスク10の半径方向で隣接している数十トラックの範囲内でほぼ等しい長さとなっている。このため、本明細書では、この数十トラックの範囲内において回転方向に沿った基準の長さが等しいものとして説明する。具体的には、例えば内周側領域Aiに含まれる数十トラックの範囲内においては回転方向に沿った基準の長さが互いに等しく、外周側領域Ao内に含まれる数十トラックの範囲内においては回転方向に沿った基準の長さが互いに等しいものとする。また、各サーボパターン領域Asに形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った長さについての説明に際して特に限定しない限りにおいては、磁気ディスク10の中心からの距離が等しい同一半径位置(同一半径の領域内)における対応する長さを基準として説明するものとする。
【0033】
また、図3に示すように、データ記録領域Atには、データトラックパターン40tが形成されている。なお、同図および後に参照する図5〜11,26〜28,31において斜線で塗り潰した領域は、凹凸パターン40における凸部40aの形成領域を表している。この場合、図5に示すように、データトラックパターン40tは、中心O(図2参照)を中心とする同心円状の多数の凸部40a,40a・・(データ記録トラック)と、各凸部40a,40a・・の間の凹部40b,40b・・(トラック間凹部:従来の磁気ディスクにおけるガードバンド部)とで構成されている。なお、磁気ディスク10の回転中心とデータトラックパターン40tの中心Oとが一致しているのが好ましいが、磁気ディスク10の回転中心とデータトラックパターン40tの中心Oとの間には、製造誤差に起因する30〜50μm程度の極く小さなずれが生じることがある。しかし、この程度のずれ量であれば磁気ヘッド3に対するトラッキングサーボ制御が十分に可能であるため、回転中心と中心Oとは、実質的には同様であるといえる。
【0034】
また、図5に示すように、この磁気ディスク10のデータ記録領域Atでは、一例として、凸部40a(データ記録トラック)における突端面の磁気ディスク10の半径方向に沿った長さL3と、凹部40b(ガードバンド部)における底面の磁気ディスク10の半径方向に沿った長さL4とが互いに等しい長さ(長さ比が1:1)となっている。また、この磁気ディスク10では、データ記録領域Atに形成された凸部40aの半径方向に沿った長さL3、および凹部40bの半径方向に沿った長さL4が磁気ディスク10の内周側領域Aiから外周側領域Aoまで等しい長さに規定されている。さらに、データトラックパターン40tの凹部40b,40b・・には、非磁性材料15が埋め込まれてデータ記録領域Atが平滑化されている。
【0035】
一方、図3に示すように、サーボパターン領域Asには、プリアンブルパターン領域Apに形成されたプリアンブルパターンと、アドレスパターン領域Aaに形成されたアドレスパターンと、バーストパターン領域Abに形成されたバーストパターンと、非サーボ信号領域Axに形成されたダミーパターンとを有するサーボパターン40sが形成されている。この場合、プリアンブルパターン領域Ap、アドレスパターン領域Aaおよびバーストパターン領域Abが本発明における第1機能領域に相当し、これらの領域に形成されているサーボパターン40sが本発明における「トラッキングサーボ制御用の制御信号」に対応するパターンに相当する。また、サーボパターン40sのうち、プリアンブルパターン、アドレスパターンおよびバーストパターン(すなわち、ダミーパターンを除くパターン)は、凸部40a,40a・・および凹部40b,40b・・の形成位置やそれぞれの大きさ(磁気ディスク10の回転方向に沿った長さ等)が本発明における「トラッキングサーボ制御用の制御信号」に対応して規定されている。
【0036】
具体的には、プリアンブルパターン領域Apに形成されたプリアンブルパターンは、アドレスパターン領域Aa等から各種制御信号を読み取るための基準クロックを磁気ディスク10の回転状態(回転速度)に応じて補正するためのサーボパターンであって、図6に示すように、磁気ディスク10の半径方向(同図における上下方向)に長い帯状の凸部40a,40a・・が磁気ディスク10の回転方向(矢印Rの向き)に沿って凹部40b,40b・・を挟んで形成されている。この場合、プリアンブルパターン領域Apに形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った長さ、および凹部40b,40b・・における底面の回転方向に沿った長さは、中心Oからの距離が等しい同一半径位置において互いに等しい長さで、かつ内周側領域Aiよりも外周側領域Ao側の方が長くなるように規定されている。
【0037】
この場合、プリアンブルパターン領域Apに形成された凸部40aの外周側領域Aoにおける突端面の回転方向に沿った長さは、一例として、データ記録領域Atに形成された凸部40a(データ記録トラック)における突端面の半径方向に沿った長さL3に対する1/2の長さに規定されている。なお、プリアンブルパターンの凸部40aおよび凹部40bの回転方向に沿った長さは上記の例に限定されるものではなく、また、凸部40aの長さと凹部40bの長さとを互いに相違する長さに規定することもできる。また、プリアンブルパターン領域Apに形成された凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った長さが同一半径位置において互いに等しいため、凸部40a,40a・・の突端面における回転方向側の両端部に2点で接する各内接円は、その直径が同一半径位置において互いに等しくなっている。さらに、この磁気ディスク10では、プリアンブルパターン領域Apにおける内周側領域Aiから外周側領域Aoまでの全域に形成されている凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうち、外周側領域Aoに形成されている凸部40aの突端面における内接円Qp1の直径L5が最大径となっている。
【0038】
また、アドレスパターン領域Aaに形成されたアドレスパターンは、磁気ヘッド3がオントラックしているトラックのトラック番号等を示すアドレスデータ等に対応して形成されたサーボパターンであって、図7に示すように、凸部40a,40a・・における突端面の回転方向に沿った各長さと、凹部40b,40b・・における底面の回転方向に沿った各長さとが上記のアドレスデータに対応して規定されている。この場合、アドレスパターン領域Aaに形成された凸部40a,40a・・における突端面の半径方向に沿った各長さのうちの最小の長さは、一例として、データトラックパターン40tの凸部40aにおける突端面の半径方向に沿った長さL3と凹部40bにおける底面の半径方向に沿った長さL4との和(すなわち、トラックピッチ)と等しくなるように規定されている。また、この磁気ディスク10では、アドレスパターン領域Aaに形成された凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qa1(図7に示す直径L1の内接円)が、サーボパターン領域As内のすべての凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円となるようにサーボパターン領域As内に凹部40b,40b・・が形成されている。
【0039】
また、図3に示すように、バーストパターン領域Abは、第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4の各バースト領域と、非サーボ信号領域Axb,Axb・・とを備えている。この場合、第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4に形成されたバーストパターンは、磁気ヘッド3を所望のトラックにオントラックさせるための位置検出用のサーボパターンであって、図8,9に示すように、磁気ディスク10の回転方向に沿って複数の凹部40b,40b・・が形成されることにより、凸部40aおよび凹部40bが回転方向に沿って交互に並ぶ領域と、凸部40aが回転方向において連続する領域とが形成されている。この場合、この磁気ディスク10では、バーストパターン領域Abにおけるバースト信号単位部(バーストパターン領域Ab内において回転方向に沿って並ぶ複数の矩形状の領域)が凹部40b,40b・・で構成されている。したがって、バースト信号単位部を凸部40a,40a・・で構成した磁気ディスクと比較して、バーストパターン領域Ab内における磁性層14の表面積が十分に大きくなっている。この結果、磁気ヘッド3の下方をバーストパターン領域Abが通過する際に磁気ヘッド3から出力される出力信号の信号レベルを十分に強くすることができる。
【0040】
この場合、バーストパターン領域Abにおける第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4において回転方向に沿って並ぶ凹部40b,40bの間の凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った長さは、一例として、同一半径位置におけるプリアンブルパターン領域Apに形成された凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った長さと等しくなるように規定されている。また、バーストパターン領域Abに形成された凹部40b,40b・・における底面の回転方向に沿った長さは、一例として、同一半径位置におけるプリアンブルパターン領域Apに形成された凹部40bにおける底面の回転方向に沿った長さと等しくなるように規定されている。さらに、バーストパターン領域Abにおける第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4において半径方向に沿って並ぶ凹部40b,40bの間の凸部40aにおける突端面の半径方向に沿った最小の長さは、アドレスパターン領域Aaに形成された凸部40aにおける突端面の半径方向に沿った最小の長さと等しく、かつ、データトラックパターン40tの凸部40aにおける突端面の半径方向に沿った長さL3と凹部40bにおける底面の半径方向に沿った長さL4との和(すなわち、トラックピッチ)と等しくなるように規定されている。
【0041】
また、図3に示すように、バーストパターン領域Abに形成された凹部40b,40b・・の列(回転方向において並ぶ列)は、第1バースト領域Ab1と第2バースト領域Ab2との間で1トラックピッチだけ半径方向にずれると共に、第3バースト領域Ab3と第4バースト領域Ab4との間で1トラックピッチだけ半径方向にずれている。さらに、第1バースト領域Ab1内の凹凸パターン40および第2バースト領域Ab2内の凹凸パターン40が一対となって構成されるバーストパターンと、第3バースト領域Ab3内の凹凸パターン40および第4バースト領域Ab4内の凹凸パターン40が一対となって構成されるバーストパターンとは、相互に1/2トラックピッチだけ半径方向にずれている。この場合、図8,9の両図に示すように、バーストパターン領域Abにおける第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4内に形成された凸部40aの突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qb1は、磁気ディスク10の回転方向に沿って並ぶ凹部40b,40bの列の間において4つの凹部40b,40b・・に対して4点で点接している。なお、この内接円Qb1の直径L2は、前述したアドレスパターン領域Aa内の内接円Qa1における直径L1よりも小さくなっている。
【0042】
さらに、図3に示すように、データ記録領域Atとプリアンブルパターン領域Apとの間、プリアンブルパターン領域Apとアドレスパターン領域Aaとの間、アドレスパターン領域Aaとバーストパターン領域Abとの間、およびバーストパターン領域Abとデータ記録領域Atとの間には、本発明における第2機能領域の一例である非サーボ信号領域Axがそれぞれ規定されている。この非サーボ信号領域Axには、上記のプリアンブルパターン領域Ap、アドレスパターン領域Aaおよびバーストパターン領域Ab(第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4)に形成された各種パターンとは相違するパターン(「第1機能領域の凹凸パターンとは種類が相違する凹凸パターン」の一例)が形成されている。具体的には、図10に示すように、非サーボ信号領域Axには、磁気ディスク10の半径方向(同図における上下方向)に長い帯状の凸部40a,40a・・が磁気ディスク10の回転方向(矢印Rの向き)に沿って凹部40b,40b・・を挟んで形成されている。
【0043】
この場合、非サーボ信号領域Axに形成された凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った長さ、および凹部40bにおける底面の回転方向に沿った長さは、一例として、中心Oからの距離が等しい同一半径位置において互いに等しい長さで、かつ内周側領域Aiよりも外周側領域Ao側の方が長くなるように規定されている。したがって、非サーボ信号領域Axに形成された凸部40a,40a・・の突端面における回転方向側の両端部に2点で接する各内接円は、その直径が同一半径位置において互いに等しく、かつ、凸部40aの突端面における外周側領域Aoの内接円Qx1(直径L6)が非サーボ信号領域Ax内における凸部40a,40a・・の各内接円のうちの最大径の内接円となっている。また、この磁気ディスク10では、非サーボ信号領域Axにおける外周側領域Aoに形成された凸部40aにおける突端面の回転方向に沿った長さ、および凹部40bにおける底面の回転方向に沿った長さがデータ記録領域Atの凸部40aにおける突端面の長さL3および凹部40bにおける底面の長さL4と等しくなるように規定されている。なお、非サーボ信号領域Axの凸部40aおよび凹部40bの回転方向に沿った長さは上記の例に限定されるものではなく、凸部40aの長さと凹部40bの長さとを互いに相違する長さに規定することができる。また、データ記録領域Atに形成された凸部40aの長さL3や凹部40bの長さL4とは相違する長さに規定することもできる。
【0044】
この非サーボ信号領域Axに形成された凹凸パターン40は、製造時に磁気ディスク10の表面平滑性が悪化するのを回避するためのダミーパターンであって、この磁気ディスク10に対する記録データの記録再生時には、磁気ヘッド3による磁気的信号の読み取りや、検出部4によるサーボデータの検出処理は実行されるものの、この非サーボ信号領域Axに形成された凹凸パターン40に対応するデータは、制御部6によってトラッキングサーボ用のサーボデータとは相違するデータと判別される。したがって、非サーボ信号領域Ax内に形成された凸部40aや凹部40bの長さについては、他のパターンの長さに影響されることなく、磁気ディスク10の表面平滑性を良好にし得る範囲内で任意に規定することができる。また、凸部40aや凹部40bの形状についても任意に規定することができる。
【0045】
さらに、図3に示すように、バーストパターン領域Abにおける第1バースト領域Ab1と第2バースト領域Ab2との間、第2バースト領域Ab2と第3バースト領域Ab3との間、および第3バースト領域Ab3と第4バースト領域Ab4との間には、非サーボ信号領域Axbがそれぞれ形成されている。この非サーボ信号領域Axbは、上記の非サーボ信号領域Axと同様にして、製造時に磁気ディスク10の表面平滑性が悪化するのを回避するためのダミーパターンが形成された領域であって、図11に示すように、第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4までの各領域に形成されたバーストパターンと同種(同じ形状)のパターンがダミーパターンとして形成されている。具体的には、第1バースト領域Ab1と第2バースト領域Ab2との間の非サーボ信号領域Axb(図中左側の非サーボ信号領域Axb)には、回転方向における第1バースト領域Ab1側に第1バースト領域Ab1と同種のバーストパターン(凸部40a,40a・・および凹部40b,40b・・)が形成され、回転方向における第2バースト領域Ab2側に第2バースト領域Ab2と同種のバーストパターン(凸部40aおよび凹部40b,40b・・)が形成されている。
【0046】
また、第2バースト領域Ab2と第3バースト領域Ab3との間の非サーボ信号領域Axb(図11における中央の非サーボ信号領域Axb)には、回転方向における第2バースト領域Ab2側に第2バースト領域Ab2と同種のバーストパターンが形成され、回転方向における第3バースト領域Ab3側に第3バースト領域Ab3と同種のバーストパターンが形成されている。さらに、第3バースト領域Ab3と第4バースト領域Ab4との間の非サーボ信号領域Axb(図中右側の非サーボ信号領域Axb)には、回転方向における第3バースト領域Ab3側に第3バースト領域Ab3と同種のバーストパターンが形成され、回転方向における第4バースト領域Ab4側に第4バースト領域Ab4と同種のバーストパターンが形成されている。したがって、バーストパターン領域Abは、恰も非サーボ信号領域Axbが存在することなく第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4が互いに接して連続する状態に視認される。しかし、この磁気ディスク10に対する記録データの記録再生時には、非サーボ信号領域Axbからの磁気ヘッド3による磁気的信号の読み取りなどは実行されるものの、この非サーボ信号領域Axbに形成された凹凸パターン40に対応するデータは、制御部6によってトラッキングサーボ用のサーボデータとは相違するデータと判別される。
【0047】
この場合、図11に示すように、非サーボ信号領域Axb内に形成された凸部40aの突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qb1は、第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4内に形成された凸部40aの突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qb1と同様にして、回転方向に沿って並ぶ凹部40b,40bの列の間において4つの凹部40b,40b・・に対して4点で点接している。また、この内接円Qb1の直径L2は、前述したアドレスパターン領域Aa内の内接円Qa1における直径L1よりも小さくなっている。なお、非サーボ信号領域Axb内に形成する凸部40aや凹部40bの長さや形状については、他のパターンの長さに影響されることなく、磁気ディスク10の表面平滑性を良好にし得る範囲内で任意に規定することができる。
【0048】
この磁気ディスク10では、前述したように、アドレスパターン領域Aaに形成された各凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qa1(直径L1)がサーボパターン領域As内に形成された各凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円となっている。言い換えれば、この磁気ディスク10では、上記の内接円Qa1の直径L1を超える直径の内接円が存在し得る突端面を有する凸部40aがサーボパターン領域As内に存在しないように凹部40b,40b・・がサーボパターン領域As内に形成されている。また、この磁気ディスク10では、データ記録領域Atに形成された凸部40aにおける突端面の半径方向に沿った長さL3が上記の内接円Qa1の直径L1よりも十分に短くなっている。言い換えれば、この磁気ディスク10では、上記の内接円Qa1の直径L1を超える直径の内接円が存在し得る突端面を有する凸部40aがデータ記録領域At内に存在しないように凹部40b,40b・・がデータ記録領域At内に形成されている。
【0049】
次に、磁気ディスク10の製造方法について説明する。
【0050】
上記の磁気ディスク10の製造に際しては、図12に示す中間体20と図13に示すスタンパー30とを使用する。この場合、図12に示すように、中間体20は、軟磁性層12、中間層13、および磁性層14がガラス基材11の上にこの順で形成されると共に、磁性層14の上に、マスク層17と、厚み80nm程度の樹脂層(レジスト層)18とが形成されて構成されている。一方、スタンパー30は、本発明に係る磁気記録媒体製造用のスタンパーの一例であって、図13に示すように、磁気ディスク10における凹凸パターン40(データトラックパターン40tおよびサーボパターン40s)と相補的形状の凹凸パターン39が形成されて、インプリント法による磁気ディスク10の製造が可能に構成されている。この場合、スタンパー30の凹凸パターン39は、凸部39a,39a・・が磁気ディスク10の凹凸パターン40における凹部40b,40b・・に対応し、凹部39b,39b・・が凹凸パターン40における凸部40a,40a・・に対応して形成されている。
【0051】
このスタンパー30の製造に際しては、図14に示すように、まず、ガラス基材31の上に、一例としてポジ型レジストをスピンコートした後にベーク処理することにより、厚みが150nm程度のレジスト層32をガラス基材31の上に形成する。次いで、図15に示すように、スタンパー30の凹部39b,39b・・に対応する部位(すなわち、磁気ディスク10の凸部40a,40a・・に対応する部位)に電子ビーム32aを照射してレジスト層32に潜像32b(トラックパターンおよびサーボパターン)を形成する。続いて、レジスト層32に対する現像処理を実行することにより、図16に示すように、レジスト層32からなる凹凸パターン33(凸部33aおよび凹部33b)をガラス基材31の上に形成する。次いで、図17に示すように、凹凸パターン33の凸部33a,33a・・および凹部33b,33b・・を覆うようにして厚みが30nm程度のニッケル層34をスパッタリング法によって形成する。続いて、このニッケル層34を電極として使用してめっき処理を実行することにより、図18に示すように、ニッケル層34の上にニッケル層35を形成する。この際には、レジスト層32によって形成された凹凸パターン33がニッケル層34,35の積層体に転写されて凹凸パターン33における凸部33a,33a・・の部位に凹部36b,36b・・が形成されると共に、凹部33b,33b・・の部位に凸部36a,36a・・が形成されてニッケル層34,35の積層体に凹凸パターン36が形成される。
【0052】
続いて、ガラス基材31、レジスト層32およびニッケル層34,35の積層体をレジスト剥離液に浸すことにより、ニッケル層34,35の積層体とガラス基材31との間のレジスト層32を除去する。これにより、図19に示すように、ニッケル層34,35の積層体がガラス基材31から剥離されて、スタンパー37が完成する。次いで、スタンパー37をマスタースタンパーとして使用してスタンパー30(マザースタンパー)を製作する。具体的には、まず、スタンパー37に対する表面処理を実行することにより、スタンパー37における凹凸パターン36の形成面に酸化膜を形成する。次いで、図20に示すように、酸化膜の形成が完了したスタンパー37にメッキ処理によってニッケル層38を形成する。この際には、スタンパー37の凹凸パターン36がニッケル層38に転写されて凸部36a,36a・・の部位に凹部39b,39b・・が形成されると共に、凹部36b,36b・・の部位に凸部39a,39a・・が形成されてニッケル層38に凹凸パターン39が形成される。この後、ニッケル層38からスタンパー37を剥離した後に、ニッケル層38の裏面(凹凸パターン39の形成面に対する裏面)を研磨処理して平坦化することにより、図13に示すように、スタンパー30が完成する。
【0053】
一方、中間体20の製造に際しては、まず、ガラス基材11の上にCoZrNb合金をスパッタリングすることによってガラス基材11の上に軟磁性層12を形成した後に、軟磁性層12の上に中間層形成用材料をスパッタリングすることによって中間層13を形成する。次いで、中間層13の上にCoCrPt合金をスパッタリングすることによって厚みが15nm程度の磁性層14を形成する。続いて、磁性層14の上にマスク層17を形成し、さらに、マスク層17の上に一例としてレジストをスピンコートして厚みが80nm程度の樹脂層18を形成する。これにより、中間体20が完成する。
【0054】
続いて、図21に示すように、中間体20の樹脂層18にスタンパー30の凹凸パターン39をインプリント法によって転写する。具体的には、スタンパー30における凹凸パターン39の形成面を中間体20の樹脂層18に押し付けることにより、凹凸パターン39の凸部39a,39a・・を中間体20の樹脂層18に押し込む。この際には、凸部39a,39a・・が押し込まれた部位のレジスト(樹脂層18)が凹凸パターン39における凹部39b,39b・・内に向けて移動する。この後、中間体20からスタンパー30を剥離し、さらに、底面に残存する樹脂(図示せず)を酸素プラズマ処理によって除去することにより、図22に示すように、中間体20におけるマスク層17の上に樹脂層18からなる凹凸パターン41が形成される。この場合、凹凸パターン41における凸部41a,41a・・の高さ(凹部41b,41b・・)の深さは、130nm程度となる。
【0055】
次いで、上記の凹凸パターン41(樹脂層18)をマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、凹凸パターン41における凹部41b,41b・・の底部においてマスク(凸部41a,41a・・)から露出しているマスク層17をエッチングして、図23に示すように、凸部42aおよび凹部42bを有する凹凸パターン42を中間体20のマスク層17に形成する。続いて、凹凸パターン42(マスク層17)をマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、凹凸パターン42における凹部42b,42b・・の底部においてマスク(凸部42a,42a・・)から露出している磁性層14をエッチングして、図24に示すように、凸部40aおよび凹部40bを有する凹凸パターン40を中間体20の磁性層14に形成する。これにより、データトラックパターン40tおよびサーボパターン40s(凹凸パターン40)が中間層13の上に形成される。次いで、凸部40a,40a・・の上に残存しているマスク層17に対して選択的にエッチング処理を行うことにより、残存しているマスク層17を完全に除去して凸部40a,40a・・の突端面を露出させる。
【0056】
次いで、図25に示すように、非磁性材料15としてのSiOをスパッタリングする。この際には、非磁性材料15によって凹部40b,40b・・が完全に埋め尽くされ、かつ、凸部40a,40a・・の上に例えば厚みが60nm程度の非磁性材料15の層が形成されるように、非磁性材料15を十分にスパッタリングする。続いて、磁性層14の上(凸部40a,40a・・の上および凹部40b,40bの上)の非磁性材料15の層に対してイオンビームエッチング処理を実行する。この際には、中間体20における外周側(後に磁気ディスク10の外周側領域Aoとなる部位)のアドレスパターン領域Aaにおいて各凸部40a,40a・・の突端面が非磁性材料15から露出するまでイオンビームエッチング処理を継続する。
【0057】
この場合、この磁気ディスク10(中間体20)では、前述したように、サーボパターン領域Asの全域およびデータ記録領域Atの全域において、上記の内接円Qa1の直径L1を超える直径の内接円が存在し得る突端面を有する凸部40aが存在しないように(突端面が過剰に広い凸部40aが存在しないように)凹部40b,40b・・が形成されてサーボパターン領域Asおよびデータ記録領域Atに凹凸パターン40(サーボパターン40sおよびデータトラックパターン40t)が形成されている。したがって、従来の磁気ディスク10zとは異なり、サーボパターン領域As内の凸部40a,40a・・およびデータ記録領域At内の凸部40a,40a・・の上に厚手の残渣が生じることなく、各凸部40a,40a・・の突端面(上面)が非磁性材料15から露出する。これにより、非磁性材料15の層に対するイオンビームエッチング処理が完了して中間体20の表面が平坦化される。続いて、中間体20の表面を覆うようにしてCVD法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜を成膜することによって保護層16形成した後に、保護層16の表面にフォンブリン系の潤滑剤を平均厚さが例えば2nm程度となるように塗布する。これにより、図4に示すように、磁気ディスク10が完成する。
【0058】
この磁気ディスク10を搭載したハードディスクドライブ1では、前述したように、磁気ディスク10に対する記録データの記録再生時において、非サーボ信号領域Ax,Ax・・および非サーボ信号領域Axb,Axb・・に形成された凹凸パターン40に対応するデータが制御部6によってトラッキングサーボ用のサーボデータとは相違するデータと判別される。具体的には、制御部6は、検出部4から出力されるサーボデータを含むデータのうち、プリアンブルパターン領域Ap、アドレスパターン領域Aaおよびバーストパターン領域Ab(非サーボ信号領域Axbを除く)に形成された凹凸パターン40に対応するデータに基づいてドライバ5を制御することにより、アクチュエータ3bを駆動させて磁気ヘッド3を所望のトラックにオントラックさせる。この結果、非サーボ信号領域Ax,Axbに形成された凹凸パターン40(ダミーパターン)の存在に影響されることなく、データ記録領域At内の凸部40a,40a・・(データ記録トラック)にオントラックさせた磁気ヘッド3を介して記録データの記録再生を行うことが可能となる。
【0059】
このように、この磁気ディスク10およびハードディスクドライブ1によれば、アドレスパターン領域Aaに形成した各凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qa1がサーボパターン領域Asに形成した各凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円となるように凹部40b,40b・・をサーボパターン領域Asに形成したことにより、上記の内接円Qa1の直径L1を超える直径の内接円が存在し得る広い突端面を有する凸部40aがサーボパターン領域As内に存在しないため、サーボパターン領域As内の凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、凸部40a,40a・・の上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、サーボパターン領域As内の平坦性が良好で、しかもサーボデータの確実な読み取りが可能な磁気ディスク10、およびその磁気ディスク10を備えたハードディスクドライブ1を提供することができる。
【0060】
また、この磁気ディスク10およびハードディスクドライブ1によれば、半径方向に沿った長さL3がサーボパターン領域Asに形成した各凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円の直径(この例では、アドレスパターン領域Aaに形成した凸部40aの突端面における内接円Qa1の直径L1)以下となるように各データ記録トラック(凸部40a,40a・・)をデータ記録領域Atに形成したことにより、データ記録領域At内の凸部40a,40a・・上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。したがって、サーボパターン領域Asおよびデータ記録領域Atの双方(磁気ディスク10の全域)において平坦性が良好で、しかも安定した記録再生が可能な磁気ディスク10、およびその磁気ディスク10を備えたハードディスクドライブ1を提供することができる。
【0061】
さらに、この磁気ディスク10およびハードディスクドライブ1によれば、製造時に凹凸パターン40によってトラッキングサーボ制御用の制御信号を記録した複数種類の第1機能領域(この例では、プリアンブルパターン領域Ap、アドレスパターン領域Aaおよびバーストパターン領域Ab)と、各第1機能領域の凹凸パターン40とは種類が異なる凹凸パターン40を形成した第2機能領域(非サーボ信号領域Ax)とを備えてサーボパターン領域Asを構成したことにより、非サーボ信号領域Axz,Axbzの全域が凸部で構成された従来の磁気ディスク10zとは異なり、第2機能領域内に残渣が生じる事態を回避することができ、たとえ生じたとしてもその残渣を十分に薄くすることができる。
【0062】
また、この磁気ディスク10およびハードディスクドライブ1によれば、非サーボ信号領域Axに形成した各凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円の直径が、アドレスパターン領域Aaに形成した各凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qa1の直径以下となるように凹部40b,40b・・を非サーボ信号領域Axに形成したことにより、非サーボ信号領域Ax内に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。
【0063】
また、このハードディスクドライブ1によれば、磁気ディスク10におけるサーボパターン領域Asから読み取られた所定の信号に基づいてトラッキングサーボ制御処理を実行する制御部6を備えたことにより、非サーボ信号領域Ax(第2機能領域)に形成された凹凸パターン40(ダミーパターン)の存在に影響されることなく、データ記録領域At内の凸部40a,40a・・(データ記録トラック)にオントラックさせた磁気ヘッド3を介して記録データの記録再生を行うことができる。
【0064】
また、上記のスタンパー30によれば、磁気ディスク10における凹凸パターン40と相補的形状の凸凹パターン39を形成したことにより、中間体20に対するインプリント処理時に、突端面が広い凸部41a(例えば、回転方向に沿った長さおよび半径方向に沿った長さが過剰に長い凸部41a)がサーボパターン領域As等に存在しない凹凸パターン41を形成することができる。したがって、この凹凸パターン41と凹凸位置関係が一致するマスク(この例では、凹凸パターン42)を用いて中間体20に対するエッチング処理を実行することにより、アドレスパターン領域Aaに形成される凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円(この例では、内接円Qa1)の直径L1を超える直径の内接円が存在し得る広い突端面を有する凸部40aがサーボパターン領域As内に形成される事態を回避することができる。したがって、この凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、サーボパターン領域As内の凸部40a上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、平坦性が良好で、しかもサーボデータの確実な読み取りが可能な磁気ディスク10を製造することができる。また、磁気ディスク10における各凸部40aの突端面に対応して、過剰に広い凹部39bがスタンパー30に存在しないため、中間体20における樹脂層18に凹凸パターン39を押し付けた際に、凹部39b内への樹脂材料(樹脂層18)の移動量の不足に起因する凸部41aの高さ不足(樹脂マスクの厚み不足)が生じる事態を回避することができる。したがって、凹凸パターン41をマスクとしてマスク層17をエッチングする際に、マスク層17に対するエッチングの完了に先立って凸部41aが消失する事態を回避することができる結果、十分な深さの凹部42bを有する凹凸パターン42を磁性層14の上に形成することができる。これにより、この凹凸パターン42をマスクとして磁性層14に対するエッチング処理を実行する際に、十分な深さの凹部40bを有する凹凸パターン40を中間層13上に形成することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、上記の磁気ディスク10では、アドレスパターン領域Aaに形成された各凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径(この例では、直径L1)の内接円Qa1がサーボパターン領域As内に形成されたすべての凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円となるようにサーボパターン領域As内に凹部40b,40b・・が形成されているが、本発明はこれに限定されず、例えば、図26に示す磁気ディスク10aのように、バーストパターン領域Ab(第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4)に形成された各凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qb2がサーボパターン領域As内に形成されたすべての凸部40a,40a・・の突端面における各内接円(この例では、内接円Qx2,Qp2,Qa2)のうちの最大径の内接円となるようにサーボパターン領域As内に凹部40b,40b・・を形成することもできる。具体的には、この磁気ディスク10aでは、図27に示すように、バーストパターン領域Abに形成された凸部40aの突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qb2が、磁気ディスク10の回転方向に沿って並ぶ凹部40b,40b・・の列の間において4つの凹部40b,40b・・に対して4点で点接している。また、図28に示すように、アドレスパターン領域Aaに形成された凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qa2は、凸部40aの回転方向側の両端部において凹部40b,40bに対して2点で点接しており、この内接円Qa2における直径L1aは、上記の内接円Qb2の直径L2aよりも小さくなっている。
【0066】
この磁気ディスク10aでは、上記のようにバーストパターン領域Abに形成された各凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円Qb2(直径L2a)がサーボパターン領域As内に形成された各凸部40a,40a・・の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円となっている。言い換えれば、この磁気ディスク10aでは、上記の内接円Qb2の直径L2aを超える直径の内接円が存在し得る突端面を有する凸部40aが存在しないように凹凸パターン40がサーボパターン領域As内に形成されている。また、この磁気ディスク10aでは、データ記録領域Atにおける凸部40aの半径方向に沿った長さL3が上記の内接円Qb2の直径L2aよりも十分に短くなっている。言い換えれば、この磁気ディスク10aでは、上記の内接円Qb2の直径L2aを超える直径の内接円が存在し得る突端面を有する凸部40aが存在しないように凹凸パターン40がデータ記録領域At内に形成されている。
【0067】
したがって、この磁気ディスク10aによれば、前述した磁気ディスク10と同様にして、サーボパターン領域Asおよびデータ記録領域At内の凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、凸部40a,40a・・の上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、全域において平坦性が良好でサーボデータの確実な読み取りが可能な磁気ディスク10aを提供することができる。
【0068】
また、上記の磁気ディスク10では、凹凸パターン40における凸部40aの突端部から基端部までの全体が磁性層14(磁性材料)で形成されているが、本発明における凹凸パターンを構成する凸部はこれに限定されない。具体的には、例えば、図29に示す磁気ディスク10bのように、ガラス基材11に形成した凹凸パターン(凹凸パターン40と凹凸の位置関係が同様の凹凸パターン)を覆うようにして薄厚の磁性層14を形成することにより、その表面が磁性材料で形成された複数の凸部40a,40a・・と底面が磁性材料で形成された複数の凹部40b,40b・・とによって凹凸パターン40を構成することができる。また、図30に示す磁気ディスク10cのように、凸部40aだけではなく凹部40bの底部を含めて磁性層14で形成して凹凸パターン40を構成することもできる。さらに、例えば凹凸パターン40における凸部40aの突端部のみが磁性層14で形成されて基端部側が非磁性材料または軟磁性材料で形成された凸部40a,40a・・を備えて凹凸パターン40を構成することもできる(図示せず)。
【0069】
また、上記の磁気ディスク10では、非サーボ信号領域Ax,Ax・・および非サーボ信号領域Axb,Axb・・にダミーパターン(凹凸パターン40)が形成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図31に示す磁気ディスク10dのように、データ記録領域Atとプリアンブルパターン領域Apとの間、プリアンブルパターン領域Apとアドレスパターン領域Aaとの間、アドレスパターン領域Aaとバーストパターン領域Abとの間、およびバーストパターン領域Abとデータ記録領域Atとの間に非サーボ信号領域An(本発明における第2機能領域の他の一例)を規定すると共に、バーストパターン領域Abにおける第1バースト領域Ab1と第2バースト領域Ab2との間、第2バースト領域Ab2と第3バースト領域Ab3との間、および第3バースト領域Ab3と第4バースト領域Ab4との間にも非サーボ信号領域Anを規定して、各非サーボ信号領域Anの全域を凹部40bで構成することもできる。
【0070】
この磁気ディスク10dでは、前述した磁気ディスク10および磁気ディスク10aと同様にして、非サーボ信号領域Anを除く部位については、アドレスパターン領域Aaに形成された凸部40aと、バーストパターン領域Ab(第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4)に形成された凸部40aとのいずれか一方の突端面における最大径の内接円がサーボパターン領域As内のすべての凸部40a,40aの突端面における内接円のうちの最大径の内接円となるように凹凸パターン40が形成されている。また、この磁気ディスク10dでは、非サーボ信号領域An,An・・の全域が凹部40bで構成されている。したがって、この磁気ディスク10dによれば、残渣が生じるおそれのある凸部40aが非サーボ信号領域An,An・・内に存在せず、しかも非サーボ信号領域An,An・・を除く部位についても突端面が過剰に広い凸部40a(所定範囲内に凹部40bが存在しない凸部40a)が存在しないため、サーボパターン領域As内の凹凸パターン40を覆うようにして形成した非磁性材料15の層をエッチング処理する際に、非サーボ信号領域An,An・・を含むサーボパターン領域Asの全域において凸部40a,40a・・の上に厚手の残渣が生じる事態を回避することができる。これにより、サーボパターン領域As内の平坦性が良好で、しかもサーボデータの確実な読み取りが可能な磁気ディスク10dを提供することができる。
【0071】
また、上記の磁気ディスク10では、外周側領域Aoにおける回転方向に沿った長さがデータ記録領域At内の凸部40aの半径方向に沿った長さL3(データ記録トラックのトラック幅)と等しい帯状の凸部40a,40a・・を有する凹凸パターン40が非サーボ信号領域Ax,Ax・・内にダミーパターンとして形成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、磁気ディスク10における非サーボ信号領域Axbのように、非サーボ信号領域Axに対して回転方向で隣接する領域内に形成されている凹凸パターン40と同種のパターンをダミーパターンとして形成する構成(サーボパターン領域As内に本発明における第2機能領域が存在しない構成)や、本発明における第1機能領域内の凹凸パターン40とは形状が相違する任意の形状の凹凸パターン40をダミーパターンとして形成する構成を採用することができる。さらに、上記の磁気ディスク10では、第1バースト領域Ab1〜第4バースト領域Ab4内の凹凸パターン40と同種の凹凸パターン40が非サーボ信号領域Axb内にダミーパターンとして形成されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、非サーボ信号領域Axb内に非サーボ信号領域Ax内の凹凸パターン40と同種の凹凸パターン40を形成する構成や、本発明における第1機能領域内の凹凸パターン40とは形状が相違する任意の形状の凹凸パターン40をダミーパターンとして形成する構成を採用することができる。加えて、上記の磁気ディスク10〜10dでは、ガラス基材11の片面にのみサーボパターン40sおよびデータトラックパターン40tが形成されているが、本発明に係る磁気記録媒体はこれに限定されず、ガラス基材11の表裏両面にサーボパターン40sおよびデータトラックパターン40tを形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ハードディスクドライブ1の構成図である。
【図2】磁気ディスク10の平面図である。
【図3】外周側領域Aoにおけるデータ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asに形成された各種パターンの一例を示す磁気ディスク10の平面図である。
【図4】磁気ディスク10の層構造を示す断面図である。
【図5】データ記録領域Atに形成されたデータトラックパターン40tの一例を示す磁気ディスク10の平面図である。
【図6】外周側領域Aoにおけるプリアンブルパターン領域Apに形成されたプリアンブルパターンの一例を示す磁気ディスク10の平面図である。
【図7】外周側領域Aoにおけるアドレスパターン領域Aaに形成されたアドレスパターンの一例を示す磁気ディスク10の平面図である。
【図8】外周側領域Aoにおけるバーストパターン領域Abの第1バースト領域Ab1および第2バースト領域Ab2に形成されたバーストパターンの一例を示す磁気ディスク10の平面図である。
【図9】外周側領域Aoにおけるバーストパターン領域Abの第3バースト領域Ab3および第4バースト領域Ab4に形成されたバーストパターンの一例を示す磁気ディスク10の平面図である。
【図10】外周側領域Aoにおける非サーボ信号領域Axに形成された凹凸パターン40の一例を示す磁気ディスク10の平面図である。
【図11】外周側領域Aoにおける非サーボ信号領域Axbに形成された凹凸パターン40の一例を示す磁気ディスク10の平面図である。
【図12】中間体20の層構造を示す断面図である。
【図13】スタンパー30の断面図である。
【図14】ガラス基材31の上にレジスト層32を形成した状態の断面図である。
【図15】レジスト層32に電子ビーム32aを照射して潜像32b,32b・・を形成した状態の断面図である。
【図16】潜像32b,32b・・が形成されたレジスト層32を現像処理して凹凸パターン33を形成した状態の断面図である。
【図17】凹凸パターン33を覆うようにしてニッケル層34を形成した状態の断面図である。
【図18】メッキ処理によってニッケル層35を形成した状態の断面図である。
【図19】ニッケル層34,35の積層体をガラス基材31から剥離して形成したスタンパー37の断面図である。
【図20】スタンパー37における凹凸パターン36の形成面にニッケル層38を形成した状態(凹凸パターン36をニッケル層38に転写した状態)の断面図である。
【図21】中間体20の樹脂層18にスタンパー30の凹凸パターン39を押し付けた状態の断面図である。
【図22】図21に示す状態の樹脂層18からスタンパー30を剥離してマスク層17の上に凹凸パターン41(樹脂マスク)を形成した状態の断面図である。
【図23】凹凸パターン41をマスクとしてマスク層17をエッチング処理して磁性層14の上に凹凸パターン42(マスク)を形成した状態の断面図である。
【図24】凹凸パターン42をマスクとして磁性層14をエッチング処理して中間層13の上に凹凸パターン40を形成した状態の断面図である。
【図25】凹凸パターン40を覆うようにして非磁性材料15の層を形成した状態の中間体20の断面図である。
【図26】外周側領域Aoにおけるデータ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asに形成された各種パターンの他の一例を示す磁気ディスク10aの平面図である。
【図27】外周側領域Aoにおけるサーボパターン領域Asのバーストパターン領域Abに形成されたバーストパターンの一例を示す磁気ディスク10aの平面図である。
【図28】外周側領域Aoにおけるサーボパターン領域Asのアドレスパターン領域Aaに形成されたアドレスパターンの一例を示す磁気ディスク10aの平面図である。
【図29】磁気ディスク10bの層構造を示す断面図である。
【図30】磁気ディスク10cの層構造を示す断面図である。
【図31】外周側領域Aoにおけるデータ記録領域Atおよびサーボパターン領域Asに形成された各種パターンの一例を示す磁気ディスク10dの平面図である。
【図32】従来の磁気ディスク10zの平面図である。
【図33】データ記録領域Atzおよびサーボパターン領域Aszに形成された各種パターンの一例を示す磁気ディスク10zの平面図である。
【図34】磁気ディスク10zの層構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ハードディスクドライブ
6 制御部
10,10a〜10d 磁気ディスク
11 ガラス基材
14 磁性層
15 非磁性材料
30 スタンパー
39,40 凹凸パターン
39a,40a 凸部
39b,40b 凹部
40s サーボパターン
40t データトラックパターン
Aa アドレスパターン領域
Ab バーストパターン領域
Ab1〜Ab4 第1〜第4バースト領域
An,Ax,Axb 非サーボ信号領域
Ap プリアンブルパターン領域
As サーボパターン領域
At データ記録領域
L1,L2,L1a,L2a,L5 直径
L3,L4 長さ
Qa1,Qb1,Qp1,Qx1,Qa2,Qb2,Qp2,Qx2 内接円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも突端部が磁性材料で形成された複数の凸部と凹部とを有する凹凸パターンによって基材の少なくとも一面におけるサーボパターン領域にサーボパターンが形成されると共に、当該サーボパターン領域がアドレスパターン領域およびバーストパターン領域を備えて構成され、
前記アドレスパターン領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円と、前記バーストパターン領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円とのいずれか大きい一方が前記サーボパターン領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円となるように前記凹部が当該サーボパターン領域に形成されている磁気記録媒体。
【請求項2】
少なくとも突端部が前記磁性材料で形成された凸部によって複数のデータ記録トラックが前記基材の少なくとも前記一面におけるデータ記録領域に形成され、当該各データ記録トラックは、前記半径方向に沿った長さが前記いずれか大きい一方の内接円の直径以下となるように形成されている請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
少なくとも突端部が磁性材料で形成された複数の凸部と凹部とを有する凹凸パターンによって基材の少なくとも一面におけるサーボパターン領域にサーボパターンが形成され、
前記サーボパターン領域は、製造時に前記凹凸パターンによってトラッキングサーボ制御用の制御信号が記録された複数種類の第1機能領域と、当該各第1機能領域の前記凹凸パターンとは種類が異なる凹凸パターンが形成された第2機能領域とを備えて構成されている磁気記録媒体。
【請求項4】
前記サーボパターン領域は、前記複数種類の第1機能領域の一種としてのアドレスパターン領域およびバーストパターン領域を備えて構成され、
前記第2機能領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円の直径が、前記アドレスパターン領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円と、前記バーストパターン領域に形成された前記各凸部の突端面における各内接円のうちの最大径の内接円とのいずれか大きい一方の直径以下となるように前記凹部が当該第2機能領域に形成されている請求項3記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
少なくとも突端部が磁性材料で形成された複数の凸部と凹部とを有する凹凸パターンによって基材の少なくとも一面におけるサーボパターン領域にサーボパターンが形成され、
前記サーボパターン領域は、製造時に前記凹凸パターンによってトラッキングサーボ制御用の制御信号が記録された複数種類の第1機能領域と、その全域に亘って前記凹部が形成された第2機能領域とを備えて構成されている磁気記録媒体。
【請求項6】
請求項1または2記載の磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体における前記サーボパターン領域から読み取られた所定の信号に基づいてトラッキングサーボ制御処理を実行する制御部とを備えている記録再生装置。
【請求項7】
請求項3から5のいずれかに記載の磁気記録媒体と、当該磁気記録媒体における前記第1機能領域から読み取られた所定の信号に基づいてトラッキングサーボ制御処理を実行する制御部とを備えている記録再生装置。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の磁気記録媒体における前記凹凸パターンと相補的形状の凸凹パターンが形成された磁気記録媒体製造用のスタンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2008−310957(P2008−310957A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249418(P2008−249418)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【分割の表示】特願2005−28853(P2005−28853)の分割
【原出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】