磁気記録媒体および磁気記録媒体駆動装置
【課題】記録密度の向上に大いに貢献することができる磁気記録媒体および磁気記録媒体駆動装置を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体14では、第2磁性ドット39は第1磁性ドット37同士の間で第1分離体38上に配置される。第1磁性ドット37は第1分離体38で個々に分離される。第2磁性ドット39は第2分離体41で個々に分離される。その結果、第1磁性ドット37に個別に磁気情報が書き込まれる。同様に、第2磁性ドット39に個別に磁気情報が書き込まれる。したがって、例えば第1磁性ドット37および第2磁性ドット39がこれまでの磁性ドットと同様の密度およびサイズで配置されれば、磁気記録媒体14にはこれまでに比べて単純に2倍の容量の磁気情報が書き込まれる。磁気記録媒体14の記録密度は飛躍的に向上することができる。
【解決手段】磁気記録媒体14では、第2磁性ドット39は第1磁性ドット37同士の間で第1分離体38上に配置される。第1磁性ドット37は第1分離体38で個々に分離される。第2磁性ドット39は第2分離体41で個々に分離される。その結果、第1磁性ドット37に個別に磁気情報が書き込まれる。同様に、第2磁性ドット39に個別に磁気情報が書き込まれる。したがって、例えば第1磁性ドット37および第2磁性ドット39がこれまでの磁性ドットと同様の密度およびサイズで配置されれば、磁気記録媒体14にはこれまでに比べて単純に2倍の容量の磁気情報が書き込まれる。磁気記録媒体14の記録密度は飛躍的に向上することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビットパターンドメディアといった磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるビットパターンドメディアは広く知られる。ビットパターンドメディアでは記録磁性層の表面で複数列の記録トラックが同心円状に延びる。例えば個々の記録トラックでは1列または複数列に磁性ドットが配列される。磁性ドット同士は非磁性体の働きで相互に磁気的に分離される。垂直磁気記録の実現にあたって軟磁性の裏打ち層上に記録磁性層は積層される。書き込みヘッドから漏れ出る磁界は裏打ち層の働きで記録磁性層の表面に垂直に記録磁性層を突き抜ける。
【特許文献1】特開2002−203306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
記録密度の向上にあたって、磁性ドットが微小化されるか、磁性ドット間の距離が短縮されなければならない。しかしながら、製造上の問題から磁性ドットの微小化や磁性ドット同士間の距離の短縮には限界が生じる。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、記録密度の向上に大いに貢献することができる磁気記録媒体および磁気記録媒体駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、磁気記録媒体は、基板と、前記基板の表面に沿って広がる第1分離体と、前記第1分離体の表面に沿って配列されつつ前記第1分離体で個々に分離される第1磁性ドットと、前記第1分離体の表面に沿って広がる第2分離体と、前記第2分離体の表面に沿って配列されつつ前記第2分離体で個々に分離され、前記第1磁性ドット同士の間で前記第1分離体上に配置される第2磁性ドットとを備えることを特徴とする。
【0006】
こうした磁気記録媒体では、第2磁性ドットは第1磁性ドット同士の間で第1分離体上に配置される。第1磁性ドットは第1分離体で個々に分離される。第2磁性ドットは第2分離体で個々に分離される。その結果、第1磁性ドットに個別に磁気情報が書き込まれる。同様に、第2磁性ドットに個別に磁気情報が書き込まれる。したがって、例えば第1磁性ドットおよび第2磁性ドットがこれまでの磁性ドットと同様の密度およびサイズで配置されれば、磁気記録媒体にはこれまでに比べて単純に2倍の容量の磁気情報が書き込まれる。磁気記録媒体の記録密度は飛躍的に向上することができる。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、磁気記録媒体および磁気記録媒体駆動装置は記録密度の向上に大いに貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0009】
図1は本発明に係る磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばAl(アルミニウム)といった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0010】
収容空間には磁気記録媒体の一具体例すなわち1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の回転軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。後述されるように、個々の磁気ディスク14はいわゆる垂直磁気記憶媒体に構成される。
【0011】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、ベース13の底板から垂直方向に立ち上がる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には、支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば押し出し成型に基づきAl(アルミニウム)から成型されればよい。
【0012】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが張り合わせられる。フレキシャ上にはヘッドすなわち浮上ヘッドスライダ22が支持される。フレキシャに基づき浮上ヘッドスライダ22はヘッドサスペンション21に対してその姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダ22にはヘッド素子すなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。
【0013】
電磁変換素子は書き込みヘッド素子と読み出しヘッド素子とを備える。書き込みヘッド素子にはいわゆる単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで磁界を生成する。磁界は主磁極および副磁極の働きで単磁極ヘッドおよび磁気ディスク14を循環する。こういった循環の働きで、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に磁界は誘導される。この磁界の働きで磁気ディスク14に情報は書き込まれる。その一方で、読み出しヘッド素子には巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TuMR)素子が用いられる。GMR素子やTuMR素子では、磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてスピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から情報は読み出される。
【0014】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力および負圧とヘッドサスペンション21の押し付け力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0015】
キャリッジブロック17にはボイスコイルモータ(VCM)23が連結される。ボイスコイルモータ23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ22の浮上中に支軸18回りでキャリッジアーム19が揺動すると、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることができる。こうした浮上ヘッドスライダ22の移動に基づき電磁変換素子は目標記録トラックに対して位置決めされる。
【0016】
図2は本発明の第1実施形態に係る磁気ディスク14の断面構造を示す。磁気ディスク14は基板31を備える。基板31は、例えばプラスチック基板や結晶化ガラス基板、Si(シリコン)基板、Al(アルミニウム)基板のいずれかから形成される。
【0017】
基板31の表面には裏打ち層32が広がる。裏打ち層32は例えばCoNbZr(コバルトニオブジルコニウム)膜、CoTaZr(コバルトタンタルジルコニウム)膜、FeCoB(鉄コバルトボロン)膜、FeTaC(炭化鉄タンタル)膜、FeAlSi(鉄アルミニウムシリコン)膜およびNiFe(ニッケル鉄)膜のいずれかの軟磁性層から形成される。裏打ち層32の膜厚は10〜500nmの範囲で設定される。裏打ち層32では、基板31の表面に平行に規定される面内方向に磁化容易軸は確立される。なお、裏打ち層32には、1対の軟磁性層と、この軟磁性層同士の間に挟み込まれるRu膜とを備える積層体が用いられてもよい。
【0018】
裏打ち層32の表面には非磁性層33が広がる。非磁性層33は例えばNiCr(ニッケルクロム)膜、NiCu(ニッケル銅)膜、Ru(ルテニウム)膜、RuCo(ルテニウムコバルト)膜、RuCoCr(ルテニウムコバルトクロム)膜、RuCoB(ルテニウムコバルトボロン)膜およびRuCoCrTa(ルテニウムコバルトクロムタンタル)膜のいずれかから形成される。非磁性層33の膜厚は1〜20nmの範囲で設定される。なお、裏打ち層32および非磁性層33の間には密着層が挟み込まれてもよい。密着層は、例えばTa(タンタル)、W(タングステン)およびMo(モリブデン)のいずれかを主成分とする非磁性材料から形成される。密着層の膜厚は例えば1〜10nmの範囲で設定される。
【0019】
非磁性層33の表面には磁気記録層34が広がる。磁気記録層34の膜厚は3〜50nmの範囲で設定される。磁気記録層34に磁気情報が記録される。磁気記録層34は、非磁性層33上に順番に重ね合わせられる第1記録層35および第2記録層36を備える。第1記録層35は、基板31の表面に直交する方向に直立する角柱すなわち第1磁性ドット37を備える。第1磁性ドット37同士は、基板31の表面に平行に広がる第1分離体38で個々に分離される。第1分離体38は非磁性材料から形成される。第1磁性ドット37は所定の間隔で配列される。第2記録層36は、基板の表面に直交する方向に直立する角柱すなわち第2磁性ドット39を備える。第2磁性ドット39は、第1磁性ドット37同士の間で第1分離体38上に配置される。第2磁性ドット39同士は、基板31の表面に平行に広がる第2分離体41で個々に分離される。第2分離体41は非磁性材料から形成される。第2磁性ドット39は所定の間隔で配列される。なお、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39は例えば円柱状に形成されてもよい。
【0020】
第1磁性ドット37および第2磁性ドット39は、例えばCoCr(コバルトクロム)、CoPt(コバルト白金)、CoCrTa(コバルトクロムタンタル)、CoCrPt(コバルトクロム白金)およびCoCrPt(コバルトクロム白金)−Mのいずれかの磁性材料から形成される。なお、MにはB(ボロン)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、W(タングステン)およびCu(銅)の少なくともいずれかが含まれる。第1分離体38および第2分離体41は例えばSiO2(酸化シリコン)やAl2O3(アルミナ)、Cr(クロム)といった非磁性材料から形成される。なお、第1分離体38および第2分離体41はイオン注入に基づく変質域から形成されてもよい。このとき、第1分離体38および第2分離体41ではアモルファス化が実現される。
【0021】
こういった磁気記録層34では、第1磁性ドット37の異方性磁界Hk1は第2磁性ドット39の異方性磁界Hk2よりも小さく設定される。第1磁性ドット37の異方性磁界Hk1は例えば948[kA/m]に設定される。第2磁性ドット39の異方性磁界Hk2は例えば1027[kA/m]に設定される。こうして第2磁性ドット39で磁気情報の書き込みに必要とされる磁界の強度は、第1磁性ドット37で磁気情報の書き込みに必要とされる磁界の強度よりも大きく設定される。その一方で、第1磁性ドット37の残留磁化は第2磁性ドット39の残留磁化よりも大きく設定される。こうした異方性磁界Hkや残留磁化の設定にあたって、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39の間で材料が変更されてもよく、同一の材料が用いられてもよい。
【0022】
磁気記録層34の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜42やパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜43で被覆される。保護膜42の膜厚は1〜10nmの範囲で設定される。その他、保護膜42にはSiO2(酸化シリコン)膜やZrO2(酸化ジルコニウム)膜が用いられてもよい。潤滑膜43にはフッ素化アルコールやフッ素化カルボン酸が用いられてもよい。なお、基板31の裏面には同様に裏打ち層32、非磁性層33、磁気記録層34、保護膜42および潤滑膜43が順次積層される。
【0023】
図3に示されるように、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39の配列で磁気ディスク14の周方向に延びる1つの記録トラック44が規定される。第1磁性ドット37同士は等間隔に配列される。第2磁性ドット39同士は等間隔で配置される。ここでは、例えば1列の第1磁性ドット37および1列の第2磁性ドット39で1記録トラック44が形成される。個々の記録トラック44中ではダウントラック方向に第1磁性ドット37および第2磁性ドット39は交互に等間隔に配列される。記録トラック44同士は第1分離体38および第2分離体41で磁気的に分離される。しかも、個々の記録トラック44中では第1磁性ドット37同士は第1分離体38で個々に分離される。同様に、個々の記録トラック44中では第2磁性ドット39同士は第2分離体41で個々に分離される。ここでは、1つの第1磁性ドット37は1ビットを構成する。同様に、1つの第2磁性ドット39は1ビットを構成する。
【0024】
いま、書き込みヘッド素子すなわち単磁極ヘッドが磁気ディスク14の表面に向き合わせられると、所定のタイミングで主磁極から漏れ出る磁界は第1磁性ドット37や第2磁性ドット39で磁気記録層34に作用する。磁気記録層34には、磁気記録層34の表面に直交する垂直方向に磁界は誘導される。磁界は裏打ち層32から単磁極ヘッドの副磁極に循環する。こうして磁気記録層34では第1磁性ドット37ごとに上向き(垂直方向に外向き)の磁化または下向き(垂直方向に内向き)の磁化が確立される。同様に、第2磁性ドット39ごとに上向きの磁化または下向きの磁化が確立される。こうして第1磁性ドット37および第2磁性ドット39に個別に磁気情報は記録される。
【0025】
前述のように、第1磁性ドット37の異方性磁界Hk1は第2磁性ドット39の異方性磁界Hk2よりも小さく設定される。その結果、第2磁性ドット39では第1磁性ドット37に比べて磁化の向きは反転しにいく。したがって、単磁極ヘッドから第1磁性ドット37までの距離が単磁極ヘッドから第2磁性ドット39までの距離より大きいにも拘わらず、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39ではできる限り等しい磁界強度で磁化が反転することができる。一般に、単磁極ヘッドから距離が増大するにつれて磁界の強度は弱まる。したがって、単磁極ヘッドから漏れ出る磁界で第1磁性ドット37および第2磁性ドット39には一定の磁界強度で磁気情報が書き込まれる。
【0026】
その一方で、磁気情報の読み出し時、読み出しヘッド素子が磁気ディスク14の表面に向き合わせられると、第1磁性ドット37や第2磁性ドット39から漏れ出る磁界はスピンバルブ膜やトンネル接合膜に個別に作用する。スピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき第1磁性ドット37および第2磁性ドット39から個別に情報は読み出される。前述のように、第1磁性ドット37の残留磁化は第2磁性ドット39の残留磁化よりも大きく設定される。したがって、単磁極ヘッドから第1磁性ドット37までの距離が単磁極ヘッドから第2磁性ドット39までの距離より大きいにも拘わらず、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39からはできる限り等しい強度の磁界が個別に漏れ出ることができる。磁気情報は正確に読み出される。
【0027】
こうした磁気ディスク14によれば、磁気記録層34は第1記録層35および第2記録層36の2層構造で形成される。第1記録層35では第1磁性ドット37に個別に磁気情報が書き込まれる。同様に、第2記録層36では第2磁性ドット39に個別に磁気情報が書き込まれる。第1磁性ドット37は第2磁性ドット39の間に配置される。したがって、例えば第1磁性ドット37および第2磁性ドット39がこれまでの磁性ドットと同様の密度およびサイズで配置されれば、磁気ディスク14にはこれまでに比べて単純に2倍の容量の磁気情報が書き込まれる。磁気ディスク14の記録密度は飛躍的に向上することができる。
【0028】
発明者は磁気ディスク14の実現性を検証した。検証にあたってマイクロマグネティックシミュレーションが実施された。実施にあたってLLG(Laudau-Lifshitz-Gilbert)方程式が用いられた。前述の通り、第1磁性ドット37の異方性磁界Hk1は例えば948[kA/m]に設定された。第2磁性ドット39の異方性磁界Hk2は例えば1027[kA/m]に設定された。その結果、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39ではそれぞれ個別に磁気情報が書き込まれることが確認された。このとき、磁気ディスク14では、1Tbpsi(テラビット平方インチ)の記録密度が実現されることが確認された。
【0029】
次に磁気ディスク14の製造方法を簡単に説明する。まず、基板31が用意される。基板31はスパッタリング装置に装着される。スパッタリング装置のチャンバ内には真空環境が確立される。チャンバ内で基板31の表面には順番に裏打ち層32および非磁性層33が形成される。形成にあたってチャンバ内には所定のターゲットがセットされる。
【0030】
その後、図4に示されるように、非磁性層33の表面には第1磁性連続膜51が形成される。形成にあたってチャンバ内には所定のターゲットがセットされる。チャンバ内には所定の圧力で例えばAr(アルゴン)ガスが充填される。第1磁性連続膜51の表面には所定のパターンでレジスト膜52が形成される。レジスト膜52は前述の第1磁性ドット37に相当する領域を覆い隠す。レジスト膜52の形成にあたって例えばフォトリソグラフィー技術が利用される。第1磁性連続膜51にはエッチング処理が実施される。その結果、図5に示されるように、レジスト膜52の周囲で第1磁性連続膜51には空隙53が形成される。同時に、レジスト膜52直下で非磁性層33の表面に第1磁性ドット37が形成される。空隙53内で非磁性層33の表面は露出する。レジスト膜52は除去される。その後、図6に示されるように、空隙53内には非磁性材料54が充填される。空隙53から溢れる非磁性材料54は除去される。空隙53内に第1分離体38が形成される。こうして第1記録層35が形成される。
【0031】
その後、図7に示されるように、第1記録層35の表面には第2磁性連続膜56が形成される。形成にあたってチャンバ内には所定のターゲットがセットされる。チャンバ内には所定の圧力で例えばAr(アルゴン)ガスが充填される。第2磁性連続膜56の表面には所定のパターンでレジスト膜57が形成される。レジスト膜57は前述の第2磁性ドット39に相当する領域を覆い隠す。第2磁性連続膜56にはエッチング処理が実施される。その結果、図8に示されるように、レジスト膜57の周囲で第2磁性連続膜56には空隙58が形成される。同時に、レジスト膜57直下で第1分離体38の表面に第2磁性ドット39が形成される。空隙58内で第1磁性ドット37および第1分離体38の一部の表面は露出する。レジスト膜57は除去される。その後、図9に示されるように、空隙58内には非磁性材料59が充填される。空隙58から溢れる非磁性材料59は除去される。その結果、空隙58内に第2分離体41が形成される。こうして第2記録層36が形成される。
【0032】
その後、第2記録層36の表面には保護膜42が形成される。形成にあたって例えばCVD法(化学的気相蒸着法)が用いられる。保護膜42の表面には潤滑膜43が塗布される。塗布にあたって例えばディップ法が用いられる。ディップ法では基板31は例えばパーフルオロポリエーテルを含む溶液に浸される。
【0033】
以上のような製造方法では、第1磁性連続膜51および第2磁性連続膜56の形成時、チャンバ内ではArガスの圧力が調整されればよい。例えば圧力の増大に基づき磁性ドットの異方性磁界Hkは高められる。こうして第1磁性ドット37および第2磁性ドット39の異方性磁界Hkは制御される。なお、異方性磁界Hkの調整にあたって第1磁性連続膜51および第2磁性連続膜56の間で膜厚が変更されればよい。
【0034】
その他、裏打ち層32、非磁性層33、第1磁性連続膜51および第2磁性連続膜56の形成にあたって、前述のスパッタリングに代えて、真空蒸着やイオンプレーティングが実施されてもよい。保護膜42の形成にあたって、前述のCVD法に代えて、例えばイオンビーム法やスパッタリング法が実施されてもよい。潤滑膜43の形成にあたって、前述のディップ法に代えて、スピンコート法が実施されてもよい。
【0035】
以上のような製造方法に代えて、磁気記録層34の形成にあたってイオン注入が実施されてもよい。イオン注入に先立って、前述と同様に、基板31の表面に裏打ち層32および非磁性層33が形成される。その後、図10に示されるように、非磁性層33の表面には順番に第1磁性連続膜61および第2磁性連続膜62が形成される。形成にあたってチャンバ内には所定のターゲットがセットされる。第2磁性連続膜62の表面には所定のパターンでレジスト膜63が形成される。レジスト膜63は前述の第1磁性ドット37に相当する領域を覆い隠す。
【0036】
図11に示されるように、第1磁性連続膜61および第2磁性連続膜62にはイオン注入が実施される。イオン注入機では電圧の制御に基づきイオンの到達深度が調整される。到達深度は第1磁性連続膜61に設定される。その結果、第1磁性連続膜61ではレジスト膜63の周囲でアモルファス化される。イオンには例えばN(窒素)、O(酸素)、F(フッ素)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、B(ボロン)およびP(リン)といったイオンが含まれる。このアモルファス化に応じて第1磁性連続膜61の磁性は失われる。こうして変質域すなわち第1分離体38が形成される。レジスト膜63直下で第1磁性ドット37が形成される。その後、レジスト膜63は除去される。
【0037】
その後、図12に示されるように、第2磁性連続膜62の表面には所定のパターンでレジスト膜64が形成される。レジスト膜64は前述の第2磁性ドット39に相当する領域を覆い隠す。イオン注入が実施される。イオンの到達深度は第2磁性連続膜62に設定される。第2磁性連続膜62ではレジスト膜64の周囲でアモルファス化される。このアモルファス化に応じて第2磁性連続膜62の磁性は失われる。こうして変質域すなわち第2分離体41が形成される。レジスト膜64直下で第2磁性ドット39が形成される。その後、レジスト膜64は除去される。
【0038】
図13は本発明の第2実施形態に係る磁気ディスク14aの断面構造を示す。この磁気ディスク14aでは第1記録層35および第2記録層36の間に中間層71が挟み込まれる。中間層71は軟磁性層から構成される。中間層71と第1記録層35との間、および、中間層71と第2記録層36との間には非磁性層72が挟み込まれる。非磁性層72は例えばRu(ルテニウム)膜から形成される。その他、前述の磁気ディスク14と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。こうした磁気ディスク14aでは第1磁性ドット37および中間層71や第2磁性ドット39および中間層71に基づきいわゆるECC(Exchange Coupled Composite)構造が確立される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った垂直断面図であり、本発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体すなわち磁気ディスクの断面構造を概略的に示す。
【図3】本発明に係る磁気ディスクの表面を概略的に示す部分拡大平面図である。
【図4】第1磁性連続層の表面に形成されるレジスト膜を概略的に示す垂直断面図である。
【図5】エッチング処理に基づき第1磁性連続膜に形成される空隙を概略的に示す垂直断面図である。
【図6】空隙内に充填される非磁性材料を概略的に示す垂直断面図である。
【図7】第2磁性連続層の表面に形成されるレジスト膜を概略的に示す垂直断面図である。
【図8】エッチング処理に基づき第2磁性連続膜に形成される空隙を概略的に示す垂直断面図である。
【図9】空隙内に充填される非磁性材料を概略的に示す垂直断面図である。
【図10】第2連続磁性膜の表面に形成されるレジスト膜を概略的に示す垂直断面図である。
【図11】イオンの注入に基づき第1非磁性体が形成される工程を示す垂直断面図である。
【図12】イオンの注入に基づき第2非磁性体が形成される工程を示す垂直断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る磁気ディスクの断面構造を概略的に示す。
【符号の説明】
【0040】
11 磁気記録媒体駆動装置(ハードディスク駆動装置)、14 磁気記録媒体、22 ヘッド(浮上ヘッドスライダ)、31 基板、37 第1磁性ドット、38 第1非磁性体、39 第2磁性ドット、41 第2非磁性体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビットパターンドメディアといった磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるビットパターンドメディアは広く知られる。ビットパターンドメディアでは記録磁性層の表面で複数列の記録トラックが同心円状に延びる。例えば個々の記録トラックでは1列または複数列に磁性ドットが配列される。磁性ドット同士は非磁性体の働きで相互に磁気的に分離される。垂直磁気記録の実現にあたって軟磁性の裏打ち層上に記録磁性層は積層される。書き込みヘッドから漏れ出る磁界は裏打ち層の働きで記録磁性層の表面に垂直に記録磁性層を突き抜ける。
【特許文献1】特開2002−203306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
記録密度の向上にあたって、磁性ドットが微小化されるか、磁性ドット間の距離が短縮されなければならない。しかしながら、製造上の問題から磁性ドットの微小化や磁性ドット同士間の距離の短縮には限界が生じる。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、記録密度の向上に大いに貢献することができる磁気記録媒体および磁気記録媒体駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、磁気記録媒体は、基板と、前記基板の表面に沿って広がる第1分離体と、前記第1分離体の表面に沿って配列されつつ前記第1分離体で個々に分離される第1磁性ドットと、前記第1分離体の表面に沿って広がる第2分離体と、前記第2分離体の表面に沿って配列されつつ前記第2分離体で個々に分離され、前記第1磁性ドット同士の間で前記第1分離体上に配置される第2磁性ドットとを備えることを特徴とする。
【0006】
こうした磁気記録媒体では、第2磁性ドットは第1磁性ドット同士の間で第1分離体上に配置される。第1磁性ドットは第1分離体で個々に分離される。第2磁性ドットは第2分離体で個々に分離される。その結果、第1磁性ドットに個別に磁気情報が書き込まれる。同様に、第2磁性ドットに個別に磁気情報が書き込まれる。したがって、例えば第1磁性ドットおよび第2磁性ドットがこれまでの磁性ドットと同様の密度およびサイズで配置されれば、磁気記録媒体にはこれまでに比べて単純に2倍の容量の磁気情報が書き込まれる。磁気記録媒体の記録密度は飛躍的に向上することができる。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、磁気記録媒体および磁気記録媒体駆動装置は記録密度の向上に大いに貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0009】
図1は本発明に係る磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばAl(アルミニウム)といった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0010】
収容空間には磁気記録媒体の一具体例すなわち1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の回転軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。後述されるように、個々の磁気ディスク14はいわゆる垂直磁気記憶媒体に構成される。
【0011】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、ベース13の底板から垂直方向に立ち上がる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には、支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば押し出し成型に基づきAl(アルミニウム)から成型されればよい。
【0012】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが張り合わせられる。フレキシャ上にはヘッドすなわち浮上ヘッドスライダ22が支持される。フレキシャに基づき浮上ヘッドスライダ22はヘッドサスペンション21に対してその姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダ22にはヘッド素子すなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。
【0013】
電磁変換素子は書き込みヘッド素子と読み出しヘッド素子とを備える。書き込みヘッド素子にはいわゆる単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで磁界を生成する。磁界は主磁極および副磁極の働きで単磁極ヘッドおよび磁気ディスク14を循環する。こういった循環の働きで、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に磁界は誘導される。この磁界の働きで磁気ディスク14に情報は書き込まれる。その一方で、読み出しヘッド素子には巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TuMR)素子が用いられる。GMR素子やTuMR素子では、磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてスピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から情報は読み出される。
【0014】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力および負圧とヘッドサスペンション21の押し付け力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0015】
キャリッジブロック17にはボイスコイルモータ(VCM)23が連結される。ボイスコイルモータ23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ22の浮上中に支軸18回りでキャリッジアーム19が揺動すると、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることができる。こうした浮上ヘッドスライダ22の移動に基づき電磁変換素子は目標記録トラックに対して位置決めされる。
【0016】
図2は本発明の第1実施形態に係る磁気ディスク14の断面構造を示す。磁気ディスク14は基板31を備える。基板31は、例えばプラスチック基板や結晶化ガラス基板、Si(シリコン)基板、Al(アルミニウム)基板のいずれかから形成される。
【0017】
基板31の表面には裏打ち層32が広がる。裏打ち層32は例えばCoNbZr(コバルトニオブジルコニウム)膜、CoTaZr(コバルトタンタルジルコニウム)膜、FeCoB(鉄コバルトボロン)膜、FeTaC(炭化鉄タンタル)膜、FeAlSi(鉄アルミニウムシリコン)膜およびNiFe(ニッケル鉄)膜のいずれかの軟磁性層から形成される。裏打ち層32の膜厚は10〜500nmの範囲で設定される。裏打ち層32では、基板31の表面に平行に規定される面内方向に磁化容易軸は確立される。なお、裏打ち層32には、1対の軟磁性層と、この軟磁性層同士の間に挟み込まれるRu膜とを備える積層体が用いられてもよい。
【0018】
裏打ち層32の表面には非磁性層33が広がる。非磁性層33は例えばNiCr(ニッケルクロム)膜、NiCu(ニッケル銅)膜、Ru(ルテニウム)膜、RuCo(ルテニウムコバルト)膜、RuCoCr(ルテニウムコバルトクロム)膜、RuCoB(ルテニウムコバルトボロン)膜およびRuCoCrTa(ルテニウムコバルトクロムタンタル)膜のいずれかから形成される。非磁性層33の膜厚は1〜20nmの範囲で設定される。なお、裏打ち層32および非磁性層33の間には密着層が挟み込まれてもよい。密着層は、例えばTa(タンタル)、W(タングステン)およびMo(モリブデン)のいずれかを主成分とする非磁性材料から形成される。密着層の膜厚は例えば1〜10nmの範囲で設定される。
【0019】
非磁性層33の表面には磁気記録層34が広がる。磁気記録層34の膜厚は3〜50nmの範囲で設定される。磁気記録層34に磁気情報が記録される。磁気記録層34は、非磁性層33上に順番に重ね合わせられる第1記録層35および第2記録層36を備える。第1記録層35は、基板31の表面に直交する方向に直立する角柱すなわち第1磁性ドット37を備える。第1磁性ドット37同士は、基板31の表面に平行に広がる第1分離体38で個々に分離される。第1分離体38は非磁性材料から形成される。第1磁性ドット37は所定の間隔で配列される。第2記録層36は、基板の表面に直交する方向に直立する角柱すなわち第2磁性ドット39を備える。第2磁性ドット39は、第1磁性ドット37同士の間で第1分離体38上に配置される。第2磁性ドット39同士は、基板31の表面に平行に広がる第2分離体41で個々に分離される。第2分離体41は非磁性材料から形成される。第2磁性ドット39は所定の間隔で配列される。なお、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39は例えば円柱状に形成されてもよい。
【0020】
第1磁性ドット37および第2磁性ドット39は、例えばCoCr(コバルトクロム)、CoPt(コバルト白金)、CoCrTa(コバルトクロムタンタル)、CoCrPt(コバルトクロム白金)およびCoCrPt(コバルトクロム白金)−Mのいずれかの磁性材料から形成される。なお、MにはB(ボロン)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、W(タングステン)およびCu(銅)の少なくともいずれかが含まれる。第1分離体38および第2分離体41は例えばSiO2(酸化シリコン)やAl2O3(アルミナ)、Cr(クロム)といった非磁性材料から形成される。なお、第1分離体38および第2分離体41はイオン注入に基づく変質域から形成されてもよい。このとき、第1分離体38および第2分離体41ではアモルファス化が実現される。
【0021】
こういった磁気記録層34では、第1磁性ドット37の異方性磁界Hk1は第2磁性ドット39の異方性磁界Hk2よりも小さく設定される。第1磁性ドット37の異方性磁界Hk1は例えば948[kA/m]に設定される。第2磁性ドット39の異方性磁界Hk2は例えば1027[kA/m]に設定される。こうして第2磁性ドット39で磁気情報の書き込みに必要とされる磁界の強度は、第1磁性ドット37で磁気情報の書き込みに必要とされる磁界の強度よりも大きく設定される。その一方で、第1磁性ドット37の残留磁化は第2磁性ドット39の残留磁化よりも大きく設定される。こうした異方性磁界Hkや残留磁化の設定にあたって、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39の間で材料が変更されてもよく、同一の材料が用いられてもよい。
【0022】
磁気記録層34の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜42やパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜43で被覆される。保護膜42の膜厚は1〜10nmの範囲で設定される。その他、保護膜42にはSiO2(酸化シリコン)膜やZrO2(酸化ジルコニウム)膜が用いられてもよい。潤滑膜43にはフッ素化アルコールやフッ素化カルボン酸が用いられてもよい。なお、基板31の裏面には同様に裏打ち層32、非磁性層33、磁気記録層34、保護膜42および潤滑膜43が順次積層される。
【0023】
図3に示されるように、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39の配列で磁気ディスク14の周方向に延びる1つの記録トラック44が規定される。第1磁性ドット37同士は等間隔に配列される。第2磁性ドット39同士は等間隔で配置される。ここでは、例えば1列の第1磁性ドット37および1列の第2磁性ドット39で1記録トラック44が形成される。個々の記録トラック44中ではダウントラック方向に第1磁性ドット37および第2磁性ドット39は交互に等間隔に配列される。記録トラック44同士は第1分離体38および第2分離体41で磁気的に分離される。しかも、個々の記録トラック44中では第1磁性ドット37同士は第1分離体38で個々に分離される。同様に、個々の記録トラック44中では第2磁性ドット39同士は第2分離体41で個々に分離される。ここでは、1つの第1磁性ドット37は1ビットを構成する。同様に、1つの第2磁性ドット39は1ビットを構成する。
【0024】
いま、書き込みヘッド素子すなわち単磁極ヘッドが磁気ディスク14の表面に向き合わせられると、所定のタイミングで主磁極から漏れ出る磁界は第1磁性ドット37や第2磁性ドット39で磁気記録層34に作用する。磁気記録層34には、磁気記録層34の表面に直交する垂直方向に磁界は誘導される。磁界は裏打ち層32から単磁極ヘッドの副磁極に循環する。こうして磁気記録層34では第1磁性ドット37ごとに上向き(垂直方向に外向き)の磁化または下向き(垂直方向に内向き)の磁化が確立される。同様に、第2磁性ドット39ごとに上向きの磁化または下向きの磁化が確立される。こうして第1磁性ドット37および第2磁性ドット39に個別に磁気情報は記録される。
【0025】
前述のように、第1磁性ドット37の異方性磁界Hk1は第2磁性ドット39の異方性磁界Hk2よりも小さく設定される。その結果、第2磁性ドット39では第1磁性ドット37に比べて磁化の向きは反転しにいく。したがって、単磁極ヘッドから第1磁性ドット37までの距離が単磁極ヘッドから第2磁性ドット39までの距離より大きいにも拘わらず、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39ではできる限り等しい磁界強度で磁化が反転することができる。一般に、単磁極ヘッドから距離が増大するにつれて磁界の強度は弱まる。したがって、単磁極ヘッドから漏れ出る磁界で第1磁性ドット37および第2磁性ドット39には一定の磁界強度で磁気情報が書き込まれる。
【0026】
その一方で、磁気情報の読み出し時、読み出しヘッド素子が磁気ディスク14の表面に向き合わせられると、第1磁性ドット37や第2磁性ドット39から漏れ出る磁界はスピンバルブ膜やトンネル接合膜に個別に作用する。スピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき第1磁性ドット37および第2磁性ドット39から個別に情報は読み出される。前述のように、第1磁性ドット37の残留磁化は第2磁性ドット39の残留磁化よりも大きく設定される。したがって、単磁極ヘッドから第1磁性ドット37までの距離が単磁極ヘッドから第2磁性ドット39までの距離より大きいにも拘わらず、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39からはできる限り等しい強度の磁界が個別に漏れ出ることができる。磁気情報は正確に読み出される。
【0027】
こうした磁気ディスク14によれば、磁気記録層34は第1記録層35および第2記録層36の2層構造で形成される。第1記録層35では第1磁性ドット37に個別に磁気情報が書き込まれる。同様に、第2記録層36では第2磁性ドット39に個別に磁気情報が書き込まれる。第1磁性ドット37は第2磁性ドット39の間に配置される。したがって、例えば第1磁性ドット37および第2磁性ドット39がこれまでの磁性ドットと同様の密度およびサイズで配置されれば、磁気ディスク14にはこれまでに比べて単純に2倍の容量の磁気情報が書き込まれる。磁気ディスク14の記録密度は飛躍的に向上することができる。
【0028】
発明者は磁気ディスク14の実現性を検証した。検証にあたってマイクロマグネティックシミュレーションが実施された。実施にあたってLLG(Laudau-Lifshitz-Gilbert)方程式が用いられた。前述の通り、第1磁性ドット37の異方性磁界Hk1は例えば948[kA/m]に設定された。第2磁性ドット39の異方性磁界Hk2は例えば1027[kA/m]に設定された。その結果、第1磁性ドット37および第2磁性ドット39ではそれぞれ個別に磁気情報が書き込まれることが確認された。このとき、磁気ディスク14では、1Tbpsi(テラビット平方インチ)の記録密度が実現されることが確認された。
【0029】
次に磁気ディスク14の製造方法を簡単に説明する。まず、基板31が用意される。基板31はスパッタリング装置に装着される。スパッタリング装置のチャンバ内には真空環境が確立される。チャンバ内で基板31の表面には順番に裏打ち層32および非磁性層33が形成される。形成にあたってチャンバ内には所定のターゲットがセットされる。
【0030】
その後、図4に示されるように、非磁性層33の表面には第1磁性連続膜51が形成される。形成にあたってチャンバ内には所定のターゲットがセットされる。チャンバ内には所定の圧力で例えばAr(アルゴン)ガスが充填される。第1磁性連続膜51の表面には所定のパターンでレジスト膜52が形成される。レジスト膜52は前述の第1磁性ドット37に相当する領域を覆い隠す。レジスト膜52の形成にあたって例えばフォトリソグラフィー技術が利用される。第1磁性連続膜51にはエッチング処理が実施される。その結果、図5に示されるように、レジスト膜52の周囲で第1磁性連続膜51には空隙53が形成される。同時に、レジスト膜52直下で非磁性層33の表面に第1磁性ドット37が形成される。空隙53内で非磁性層33の表面は露出する。レジスト膜52は除去される。その後、図6に示されるように、空隙53内には非磁性材料54が充填される。空隙53から溢れる非磁性材料54は除去される。空隙53内に第1分離体38が形成される。こうして第1記録層35が形成される。
【0031】
その後、図7に示されるように、第1記録層35の表面には第2磁性連続膜56が形成される。形成にあたってチャンバ内には所定のターゲットがセットされる。チャンバ内には所定の圧力で例えばAr(アルゴン)ガスが充填される。第2磁性連続膜56の表面には所定のパターンでレジスト膜57が形成される。レジスト膜57は前述の第2磁性ドット39に相当する領域を覆い隠す。第2磁性連続膜56にはエッチング処理が実施される。その結果、図8に示されるように、レジスト膜57の周囲で第2磁性連続膜56には空隙58が形成される。同時に、レジスト膜57直下で第1分離体38の表面に第2磁性ドット39が形成される。空隙58内で第1磁性ドット37および第1分離体38の一部の表面は露出する。レジスト膜57は除去される。その後、図9に示されるように、空隙58内には非磁性材料59が充填される。空隙58から溢れる非磁性材料59は除去される。その結果、空隙58内に第2分離体41が形成される。こうして第2記録層36が形成される。
【0032】
その後、第2記録層36の表面には保護膜42が形成される。形成にあたって例えばCVD法(化学的気相蒸着法)が用いられる。保護膜42の表面には潤滑膜43が塗布される。塗布にあたって例えばディップ法が用いられる。ディップ法では基板31は例えばパーフルオロポリエーテルを含む溶液に浸される。
【0033】
以上のような製造方法では、第1磁性連続膜51および第2磁性連続膜56の形成時、チャンバ内ではArガスの圧力が調整されればよい。例えば圧力の増大に基づき磁性ドットの異方性磁界Hkは高められる。こうして第1磁性ドット37および第2磁性ドット39の異方性磁界Hkは制御される。なお、異方性磁界Hkの調整にあたって第1磁性連続膜51および第2磁性連続膜56の間で膜厚が変更されればよい。
【0034】
その他、裏打ち層32、非磁性層33、第1磁性連続膜51および第2磁性連続膜56の形成にあたって、前述のスパッタリングに代えて、真空蒸着やイオンプレーティングが実施されてもよい。保護膜42の形成にあたって、前述のCVD法に代えて、例えばイオンビーム法やスパッタリング法が実施されてもよい。潤滑膜43の形成にあたって、前述のディップ法に代えて、スピンコート法が実施されてもよい。
【0035】
以上のような製造方法に代えて、磁気記録層34の形成にあたってイオン注入が実施されてもよい。イオン注入に先立って、前述と同様に、基板31の表面に裏打ち層32および非磁性層33が形成される。その後、図10に示されるように、非磁性層33の表面には順番に第1磁性連続膜61および第2磁性連続膜62が形成される。形成にあたってチャンバ内には所定のターゲットがセットされる。第2磁性連続膜62の表面には所定のパターンでレジスト膜63が形成される。レジスト膜63は前述の第1磁性ドット37に相当する領域を覆い隠す。
【0036】
図11に示されるように、第1磁性連続膜61および第2磁性連続膜62にはイオン注入が実施される。イオン注入機では電圧の制御に基づきイオンの到達深度が調整される。到達深度は第1磁性連続膜61に設定される。その結果、第1磁性連続膜61ではレジスト膜63の周囲でアモルファス化される。イオンには例えばN(窒素)、O(酸素)、F(フッ素)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、B(ボロン)およびP(リン)といったイオンが含まれる。このアモルファス化に応じて第1磁性連続膜61の磁性は失われる。こうして変質域すなわち第1分離体38が形成される。レジスト膜63直下で第1磁性ドット37が形成される。その後、レジスト膜63は除去される。
【0037】
その後、図12に示されるように、第2磁性連続膜62の表面には所定のパターンでレジスト膜64が形成される。レジスト膜64は前述の第2磁性ドット39に相当する領域を覆い隠す。イオン注入が実施される。イオンの到達深度は第2磁性連続膜62に設定される。第2磁性連続膜62ではレジスト膜64の周囲でアモルファス化される。このアモルファス化に応じて第2磁性連続膜62の磁性は失われる。こうして変質域すなわち第2分離体41が形成される。レジスト膜64直下で第2磁性ドット39が形成される。その後、レジスト膜64は除去される。
【0038】
図13は本発明の第2実施形態に係る磁気ディスク14aの断面構造を示す。この磁気ディスク14aでは第1記録層35および第2記録層36の間に中間層71が挟み込まれる。中間層71は軟磁性層から構成される。中間層71と第1記録層35との間、および、中間層71と第2記録層36との間には非磁性層72が挟み込まれる。非磁性層72は例えばRu(ルテニウム)膜から形成される。その他、前述の磁気ディスク14と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。こうした磁気ディスク14aでは第1磁性ドット37および中間層71や第2磁性ドット39および中間層71に基づきいわゆるECC(Exchange Coupled Composite)構造が確立される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った垂直断面図であり、本発明の第1実施形態に係る磁気記録媒体すなわち磁気ディスクの断面構造を概略的に示す。
【図3】本発明に係る磁気ディスクの表面を概略的に示す部分拡大平面図である。
【図4】第1磁性連続層の表面に形成されるレジスト膜を概略的に示す垂直断面図である。
【図5】エッチング処理に基づき第1磁性連続膜に形成される空隙を概略的に示す垂直断面図である。
【図6】空隙内に充填される非磁性材料を概略的に示す垂直断面図である。
【図7】第2磁性連続層の表面に形成されるレジスト膜を概略的に示す垂直断面図である。
【図8】エッチング処理に基づき第2磁性連続膜に形成される空隙を概略的に示す垂直断面図である。
【図9】空隙内に充填される非磁性材料を概略的に示す垂直断面図である。
【図10】第2連続磁性膜の表面に形成されるレジスト膜を概略的に示す垂直断面図である。
【図11】イオンの注入に基づき第1非磁性体が形成される工程を示す垂直断面図である。
【図12】イオンの注入に基づき第2非磁性体が形成される工程を示す垂直断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る磁気ディスクの断面構造を概略的に示す。
【符号の説明】
【0040】
11 磁気記録媒体駆動装置(ハードディスク駆動装置)、14 磁気記録媒体、22 ヘッド(浮上ヘッドスライダ)、31 基板、37 第1磁性ドット、38 第1非磁性体、39 第2磁性ドット、41 第2非磁性体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面に沿って広がる第1分離体と、
前記第1分離体の表面に沿って配列されつつ前記第1分離体で個々に分離される第1磁性ドットと、
前記第1分離体の表面に沿って広がる第2分離体と、
前記第2分離体の表面に沿って配列されつつ前記第2分離体で個々に分離され、前記第1磁性ドット同士の間で前記第1分離体上に配置される第2磁性ドットとを備えることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記録媒体において、前記第1磁性ドットの異方性磁界は前記第2磁性ドットの異方性磁界よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気記録媒体において、前記第1磁性ドットの残留磁化は前記第2磁性ドットの残留磁化よりも大きいことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体において、前記第1および第2分離体は、イオン注入に基づき形成される変質域であることを特徴とする磁気記憶媒体。
【請求項5】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体の表面に向き合わせられて、前記磁気記録媒体に対して磁気情報の書き込みおよび読み出しを実施するヘッドとを備え、
前記磁気記録媒体は、基板と、前記基板の表面に沿って広がる第1分離体と、前記第1分離体の表面に沿って配列されつつ前記第1分離体で個々に分離される第1磁性ドットと、前記第1分離体の表面に沿って広がる第2分離体と、前記第2分離体の表面に沿って配列されつつ前記第2分離体で個々に分離され、前記第1磁性ドット同士の間で前記第1分離体上に配置される第2磁性ドットとを備えることを特徴とする磁気記録媒体駆動装置。
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面に沿って広がる第1分離体と、
前記第1分離体の表面に沿って配列されつつ前記第1分離体で個々に分離される第1磁性ドットと、
前記第1分離体の表面に沿って広がる第2分離体と、
前記第2分離体の表面に沿って配列されつつ前記第2分離体で個々に分離され、前記第1磁性ドット同士の間で前記第1分離体上に配置される第2磁性ドットとを備えることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記録媒体において、前記第1磁性ドットの異方性磁界は前記第2磁性ドットの異方性磁界よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気記録媒体において、前記第1磁性ドットの残留磁化は前記第2磁性ドットの残留磁化よりも大きいことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体において、前記第1および第2分離体は、イオン注入に基づき形成される変質域であることを特徴とする磁気記憶媒体。
【請求項5】
磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体の表面に向き合わせられて、前記磁気記録媒体に対して磁気情報の書き込みおよび読み出しを実施するヘッドとを備え、
前記磁気記録媒体は、基板と、前記基板の表面に沿って広がる第1分離体と、前記第1分離体の表面に沿って配列されつつ前記第1分離体で個々に分離される第1磁性ドットと、前記第1分離体の表面に沿って広がる第2分離体と、前記第2分離体の表面に沿って配列されつつ前記第2分離体で個々に分離され、前記第1磁性ドット同士の間で前記第1分離体上に配置される第2磁性ドットとを備えることを特徴とする磁気記録媒体駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−27122(P2010−27122A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185519(P2008−185519)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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