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磁気記録媒体の表面エネルギーの極性成分を解析する方法
説明

磁気記録媒体の表面エネルギーの極性成分を解析する方法

【課題】本発明は、磁気記録媒体の表面エネルギーに影響を与える因子を明らかにするとともに、表面エネルギーを解析する方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、非磁性基板上に磁気記録層,保護層および潤滑膜を備えた磁気記録媒体において、潤滑膜形成時の温度を因子として含めて重回帰分析を行うことにより、磁気記録媒体の表面エネルギーの極性成分を解析することを特徴とする。
また、この方法は、膜厚が2.0nm以下の潤滑膜に適用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータの外部記憶装置等として用いられる磁気記録装置に用いられる磁気記録媒体において、その表面エネルギーの極性成分を解析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体と磁気記録ヘッド間に生ずる摩擦力を減少させ、耐久性・信頼性を向上させる目的のため、これまで磁気記録媒体、特に磁気ディスクに用いられる潤滑剤が開発されてきた。例えば,磁気記録媒体表面層の潤滑特性を改良するために、従来、ダイヤモンド状カーボン(DLC)保護層上に,分子内に水酸基などの有極性末端基や、環状トリホスファゼン末端基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を塗布することが行われてきた。
保護層上の潤滑膜は、2種の膜に分けられる。一方は保護層と結合した膜(以下、ボンド潤滑膜という)であり、他方は結合していない膜(以下、自由潤滑膜という)である。潤滑膜としては、自由潤滑膜が薄く、ボンド潤滑膜が厚いものが特性が優れているとされている。
【0003】
しかしながら、近年の磁気ディスクの高記録密度化傾向に伴う、潤滑剤特性に対する厳しい要求に応えるには、今後、ボンド潤滑膜の膜厚の上限を、さらに引き上げることが必要とされる。
加えて、近年のハードディスクドライブは、これまでの屋内で使用されるパソコン用途から、携帯機器やカーナビゲーションシステムなど屋外環境において用いられるケースが増大している。特に、高温高湿環境において、磁気記録ヘッドのスライダが浮上しにくくなる現象が存在し、高湿度空気に含まれる水分の凝着現象等によるものと考えられている。そのため、磁気ディスク表面へ凝着する水分量を減少させたり、有機物の付着を減少させることが必要である。
従来技術に比較し、潤滑剤とDLCカーボン保護層表面間の高吸着性を有しており、水分や有機物の付着を低減するためには、表面エネルギーを下げることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このための一方法としては、ボンド潤滑膜の膜厚を増加させればよいことが知られている。しかしながら、自由潤滑膜はたとえ薄くとも必要な膜であり、ボンド潤滑膜の量を増加させるには、単純には潤滑膜のトータル膜厚を増加させなければならないことになる。しかしながら、単純に潤滑膜の膜厚を増加させた場合、浮上スライダへの潤滑剤ピックアップ現象が生じやすくなり、スライダの浮上不安定性を生じさせる恐れがある。
【0004】
そのため、潤滑膜のトータル膜厚を変化させることなく、従来手法に比較して潤滑剤とカーボン表面との結合割合を高め、表面エネルギーを下げる手法が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−222633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでの磁気記録媒体の表面エネルギーの解析は、潤滑膜のトータル膜厚とボンド潤滑膜厚だけが考慮されてきた。表面エネルギーは分散成分(γsd)と極性成分(γsp)に分けられるが、この内で、分散成分はトータル膜厚のみに反比例し、膜厚が増加するに従い減少するため、従来の解析法が有効である。一方、表面エネルギーの極性成分は或る膜厚以下ではボンド潤滑膜厚が増加するに従って減少している。しかし、同じトータル膜厚、ボンド潤滑膜厚の時でも、極性成分の値は異なっていることがある。この場合、今までのようにトータル膜厚とボンド潤滑膜厚だけ考慮しただけでは、表面エネルギーの極性成分の違いが潤滑膜を作る工程でのプロセスのどこに関与して発生したのかをつきとめることができなかった。
本発明が解決しようとする課題は、前述の問題点を改善するために、表面エネルギーに影響を与える因子を明らかにするとともに、表面エネルギーを解析する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、非磁性基板上に磁気記録層,保護層および潤滑膜を備えた磁気記録媒体において、潤滑膜形成時の温度を因子として含めて重回帰分析を行うことにより、磁気記録媒体の表面エネルギーの極性成分を解析することを特徴とする。
また、この方法は、膜厚が2.0nm以下の潤滑膜に適用することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明による表面エネルギーの解析方法を磁気記録媒体の製造工程に適用することで、潤滑膜の形成工程において表面エネルギーに寄与するプロセスを明確にし、従来に比べて低い表面エネルギーの磁気記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態を説明するためのもので磁気記録媒体の構成を示す概念図である。
【図2】表面エネルギーの測定結果の例を示すグラフである。
【図3】表面エネルギーの測定結果の他の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明を適用する磁気記録媒体の構成例を説明するための概念図で、垂直磁気記録媒体を例にとって説明している。非磁性基板1上に、軟磁性裏打ち層2、中間層3、磁気記録層4、保護層5、潤滑膜6を形成している。
潤滑膜6を構成する材料としては、磁気記録媒体用の潤滑剤として通常使用される潤滑剤を使用することができ、例えば、パーフルオロポリエーテルなどのフッ素系液体潤滑剤を用いることができる。本発明の解析方法を適用する潤滑剤材料としては、(化1)または(化2)のように、潤滑剤の主鎖部分にパーフルオロポリエーテルを含み、末端部分R1、R2、R3の少なくとも1つが複数の官能基を有しており、数平均分子量が500〜10,000の間で規定される潤滑剤が特に適している。
1−(CF2CF2O)p−(CF2O)q−R2 ・・・(化1)
F−(CF2CF2CF2O)r−R3 ・・・(化2)
(ただし式中p、q、rはそれぞれ正の整数である。)
さらには、末端構造において、官能基が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、1級および2級アミン基、ニトロ基、ニトリル基、イソニトリル基、イソシアナート基、チオール基、スルホ基、複素環のうちいずれか一つまたは複数から選択される材料であることが好ましい。
【0011】
これは、保護層表面に多数存在するカルボキシル基やヒドロキシル基、アミン基などの官能基と、潤滑剤末端の官能基との相互作用を相対的に強くし、保護層との結合性を増大させることで、表面エネルギーを下げることが出来るためである。
例えば、ソルベイ・ソレクシス社製のFomblin−Z−DOL、AM3001あるいはZ−Tetraol(いずれも商品名)などの潤滑剤が含まれる。
このような液体潤滑剤を希釈するための溶剤は、潤滑剤と相溶性であり、均一な溶液を形成するものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、HFE7200(商品名、住友3M社)、バートレル(商品名、三井デュポンフロロケミカル社製)などのフロロカーボン系有機溶剤が挙げられる。潤滑剤の希釈は、保護膜の膜質および表面粗さRmaxに応じて適宜設定されるが、概ね0.01wt%〜5wt%の範囲に設定される。
【0012】
液体潤滑剤の塗布は、浸漬塗布法、スピンコート法、蒸着法といった公知の塗布方法を使用して実施することが可能である。
ここで、「潤滑膜のトータル膜厚」、「ボンド潤滑膜の膜厚」、「ボンド率」について説明する。一般に,カーボン表面に存在する官能基と潤滑剤との結合割合は,磁気記録媒体をフッ素系溶剤により洗浄し、その前後の膜厚を比較して測定する。即ち、洗浄前の潤滑剤層膜厚に対するフッ素系溶媒による洗浄後の潤滑剤層膜厚の割合として表され,その百分率値は「ボンド率」と呼ばれる。

ボンド率(%)=100×(洗浄後の潤滑膜の膜厚)/(洗浄前の潤滑膜の膜厚)

ここで,洗浄前の潤滑膜の膜厚を「潤滑膜のトータル膜厚」,洗浄後の潤滑膜の膜厚を「ボンド潤滑膜の膜厚」と呼ぶ。「ボンド潤滑膜の膜厚」は,実際にカーボン表面と結合している潤滑剤の厚さ(量)を表している。「自由潤滑膜の膜厚」は、潤滑膜のトータル膜厚からボンド潤滑膜の膜厚を差し引いた値である。
【0013】
本発明を適用する磁気記録媒体は、潤滑膜6を除いて磁気記録媒体の構成ならびに各層の材料および成膜条件などは特に限定されるものではない。当技術分野における慣用の技術を適用することが可能である。すなわち、磁気記録媒体の構成については、非磁性基板1、磁気記録層4、保護層5および潤滑膜6を基本とし、必要に応じて追加の層を設けてもよい。
非磁性基板1は、アルミ合金、強化ガラス、結晶化ガラス、セラミック、シリコン、ポリカーボネート、高分子樹脂などの材料からなる基板であってよく、特に限定されるものではない。しかし、ヘッドの浮上安定性や磁気特性(磁気配向性)向上のために、基板表面は平滑な加工を施したものが好ましい。
軟磁性裏打ち層2は、磁気記録に用いる磁気ヘッドからの磁束を制御して記録・再生特性を向上するために形成することが好ましい層で、結晶性のNiFe合金、センダスト(FeSiAl)合金、CoFe合金等、微結晶性のFeTaC,CoTaZr,CoFeNi,CoNiP等を用いることができるが、非晶質のCo合金、例えばCoNbZr、CoTaZrなどを用いることでより良好な電磁変換特性を得ることができる
中間層3は、磁気記録層4の結晶配向性、結晶粒径、粒径分布、粒界偏析を好適に制御するために磁気記録層4の直下に形成することが好ましい層である。磁気記録層4の結晶配向制御の観点からは、六方最密充填の結晶構造(hcp)を有するTi、Re、Ru、Os、Zr、Zn、Tcのいずれかの金属またはその合金が好ましい。あるいは面心立方格子構造をとる金属として、Cu,Rh,Pd,Ag,Ir,Pt,Au,Ni,Co含む合金が好ましく用いられる。
【0014】
磁気記録層4は、例えば、CoCrPt、CoCrTa、CoCrPtB、CoPt−SiO2、CoCrPt−SiO2などの磁性材料を使用し、それらをスパッタ法などの成膜方法に従い成膜することよって形成することが可能である。
保護層は、SiO2またはカーボンからなる薄膜等により形成することが可能であるが、特にカーボンからなる薄膜を保護層とすることが好ましい。カーボン薄膜の形成には、CVD法(例えば、エチレンガスを用いたイオンビーム方式のCVD法)、またはスパッタ法(例えば、グラファイトをターゲットとする、アルゴンガス+窒素ガスによるDCマグネトロン式のスパッタ法)を適用することが可能である。
以下、実施例を用いてさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0015】
(サンプルの作成)
直径95mmのアルミニウム製磁気ディスク基板1を良く洗浄した後に、スパッタ装置に導入してCoTaZr軟磁性裏打ち層2、Ru中間層3、CoCrTaPt磁気記録層4を順次成膜した。引き続き、プラズマCVD装置に導入して膜厚3.0nmの非晶質カーボン保護層5を成膜した。引き続き、浸漬塗布装置を用いて潤滑膜6を成膜した。潤滑剤として末端基に−OHを持つZ−Tetraol(ソルベイ・ソレクシス社製)を用い、溶剤としてVertrel XF(三井デュポンフロロケミカル社製)を用いて潤滑剤溶液を作製し、保護膜まで成膜した磁気ディスク基板を潤滑剤溶液に浸漬した後、2.0mm/secの速度で引上げ、その後乾燥させた。塗布後のサンプルに対し、後処理として、加熱をしないサンプル、70℃,100℃で加熱したサンプルをそれぞれ作製した。
(サンプルの評価)
まず、サンプルの潤滑膜膜厚を、フーリエ変換式赤外分光光度計(FT−IR)により測定した。ボンド潤滑膜厚等の評価に用いた溶剤はVertrel XFである。結果を表1に示す。
【0016】
【表1】

引き続き、作製した各サンプルに対し,表面エネルギー測定を実施した。まず、各サンプルに対し、画像処理式接触角計(協和界面科学株式会社製)を用いて接触角を測定した。使用液体はヘキサデカンと水を使用し、液滴法θ/2θ法で角度算出後、Owens and Wendt理論式を用いて表面エネルギーを算出した。
トータル膜厚に対する表面エネルギーの分散成分(γsd)、極性成分(γsp)を図2に、ボンド潤滑膜厚に対する表面エネルギーの分散成分(γsd)、極性成分(γsp)を図3に示す。それぞれ潤滑膜塗布後の後工程として行った加熱処理の温度ごとに分けて表記した。分散成分はトータル膜厚の増加と共に減少している。これは、分散成分が膜厚のみに依存し、膜厚が厚くなるとカーボン層からの距離が増加し、カーボン層からのファンデルワールス力の影響を受けにくくなり、潤滑剤自体の値に近付いているためである。極性成分はトータル膜厚に対する傾向は見られないが、各温度で分けて見るとボンド潤滑膜厚の増加と共に減少している。一般的に極性成分はカーボンに含まれる極性の官能基と表面エネルギー測定に用いる極性の溶媒(水)のなじみ具合に影響を受けるため、結合膜厚が厚くなるに従って小さくなる。このため、低表面エネルギー化にはボンド潤滑膜厚が厚いほうが寄与していると認められる。
【0017】
膜厚が2nmを超えると、表面エネルギーが潤滑剤本来の値に近接して、潤滑剤のバルク値となる。しかしながら、2nm以下の場合では、潤滑剤が本来有する値以外の他の因子が影響していることが分かる。すなわち、膜厚が2nm以下の潤滑膜においては、表面エネルギーに影響を与える因子を解析し、表面エネルギーを制御することが必要となる。
次に、トータル膜厚上の表面エネルギー極性成分においてボンド潤滑膜厚とトータル膜厚からボンド潤滑膜厚を引いた自由潤滑膜厚の影響を定量化するために、重回帰分析を行い各パラメーターの寄与度を解析した。
まず、目的変数を表面エネルギー極性成分とし、説明変数をボンド潤滑膜厚と自由潤滑膜厚として解析した。これを解析例1とする。計算の結果を表2に示すが、ボンド潤滑膜厚の寄与度が55.58%で、自由潤滑膜厚の寄与度は7.00%で、その他の成分については寄与度が37.42%と高かった。即ち、ボンド潤滑膜厚と自由潤滑膜厚だけでは適切な説明ができない。低表面エネルギー化に寄与する極性成分の表面エネルギーは、ボンド潤滑膜厚、すなわちカーボン保護層表面に対する潤滑剤分子の被覆性起因であり、カーボン保護層と結合していない潤滑剤分子の表面エネルギー極性成分への寄与度は低く、潤滑剤分子起因は少ない。
【0018】
次に、目的変数を表面エネルギー極性成分とし、説明変数をボンド潤滑膜厚、自由潤滑膜厚および後処理の加熱温度として解析を行った。これを解析例2とする。ボンド潤滑膜厚の寄与度が55.58%で、自由潤滑膜厚の寄与度は7.00%、加熱温度の寄与度が30.86%、その他の寄与は6.56%であった。その他の寄与としては、通常ボンド潤滑膜厚は両末端で結合しているが、片末端で結合しているボンド潤滑膜厚によるものと考えられる。
【0019】
【表2】

解析例2は、解析例1と比較して、その他要因の寄与が格段に低減しており、磁気記録媒体の表面エネルギーを解析するに当たり、プロセス要因である後処理工程の加熱温度の影響を考慮することが重要であることが認められる。
本発明によって、従来技術に比較して表面エネルギーを下げた磁気記録媒体を提供するために必要である表面エネルギーの解析方法を改善し、不明瞭であったプロセスの制御、依存パラメーターを考慮して解析することが可能となる。
【符号の説明】
【0020】
1 非磁性基板
2 軟磁性裏打ち層
3 中間層
4 磁気記録層
5 保護層
6 潤滑膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板上に磁気記録層,保護層および潤滑膜を備えた磁気記録媒体において、潤滑膜形成時の温度を因子として含めて重回帰分析を行うことにより、磁気記録媒体の表面エネルギーの極性成分を解析する方法。
【請求項2】
前記潤滑膜の膜厚が2.0nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の表面エネルギーの極性成分を解析する方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−282705(P2010−282705A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137071(P2009−137071)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】