説明

磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体および情報記憶装置

【課題】タクトタイムの短縮とともに、非磁性材の使用量(充填量)を低減でき、製造コストの抑制および低価格な磁気記録媒体を実現することができる磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体および情報記憶装置を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体2は、基板20上に成膜された多層膜層30と、多層膜層30に積層された磁性記録層40と、エッチングにより除去されるとともに、磁性記録層40の一部として残存された磁性層の凹部41に充填される非磁性材42と、磁性記録層40の一部として残存されている磁性層の底部44を酸化により変質させることで形成される非磁性層45とから形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体および情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記録装置は小型・大容量化が急速に進んでおり、磁気記録媒体の大容量化(記憶容量の増大化)に伴い高記録密度化も要求されている。ここで、高記録密度化を図るべく磁気記録媒体の磁気粒子は微細化となっており、かかる高密度化の要望に応えるため、記録面に対して垂直方向に磁化を行なう垂直磁気記録方式が用いられている。このような垂直磁気記録方式では、100Gbit/in2程度の記録密度を可能としている。
【0003】
ところで、高密度化を進めた場合、磁気ヘッドからの書き込み磁界の広がりが原因とされる隣接トラックへの影響や再生時のクロストーク問題などが顕著化しするため、現状の垂直磁気記録技術の延長では500Gbit/in2程度が限界となる。また、磁気記録媒体単体での記録能力も連続膜構造の場合では「熱揺らぎ問題」などにより1Tbit/in2程度が限界とされている。
【0004】
そこで、磁気記録媒体の高記録密度化を図る垂直磁気記録方式の媒体としては、隣接するトラック間に、非磁性体領域を形成し、磁性体によって形成されるトラック部にのみ記録するディスクリートトラック媒体(DTM:Discreet Track Media)が提案されている。また、磁性粒子を孤立させて、単一のビットパターンを作製し、記録分解能を向上させたビットパターンドメディア媒体(BPM:Bit Patterned Media)が提案されている。
【0005】
ディスクリートトラック媒体の場合は半径方向に、ビットパターンドメディア媒体は円周方向および半径方向ともにサーボ領域のサーボパターンに応じた凹部と凸部とを有する非パターンおよびパターン部が形成されるため記録密度を向上させることができる。
【0006】
上述した従来のパターンドメディアを製造する場合、フォトリソプロセス又はインプリントプロセスを用いて媒体表面の上面にレジストパターンを形成した後、エッチングにより磁性材料の記録部分以外を除去し所定の凹凸パターンを形成する。そして、このように形成した凹凸パターンの凹部に非磁性材料を埋設し、最後に平坦化処理を行なう方法が用いられている。
【0007】
[従来の磁気記録媒体の製造方法]
ここで、従来の磁気記録媒体の製造方法を図9(1)〜(6)を用いて説明する。図9(1)〜(6)は、従来の磁気記録媒体の製造方法を説明する説明図である。
【0008】
すなわち、従来の磁気記録媒体の製造方法では、図9(1)に示すように、基板(図示せず)上にスパッタ法などにより磁性層11を成膜する。そして、この成膜した磁性層11の上面にナノインプリント法などを用いて凹凸状のレジストマスク12(レジストパターン)を形成する。
【0009】
次に、図9(2)に示すように、エッチングガス(酸素ガス)を用いた反応性イオンエッチング法(RIE:Reactive Ion Etching)により、レジストマスク12として形成された凹部の底部領域のレジストを除去する。
【0010】
次に、図9(3)に示すように、イオンミリング法やイオンビームエッチング(IBE)法を用いて磁性層11に凹部13を形成する。ここで、この凹部13の深さ寸法(t)は磁性記録層の厚さ寸法(例えば、t=20nm)とする。
【0011】
次に、図9(4)に示すように、磁性層11に形成された凸部14の上面に残留しているレジストマスク12を酸素ガスを用いたRIE法により除去する。
【0012】
次に、図9(5)に示すように、磁性層11に形成された凹部13の内部に非磁性材15を充填する。ここでは、非磁性材15の充填量は、凹部13の深さ寸法の二倍(t×2=40nm)としている。
【0013】
次に、図9(6)に示すように、磁性層11の凸部14の上面に残留し溢れた非磁性材15(厚さ20nm)をIBE法により除去するとともに、磁性層11の表面の平坦化処理を行なう。以下、磁性層11の上面に保護膜としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜(図示せず)を成膜する。以上説明した図9(1)〜(6)の手順により磁気記録媒体2aを製造することができる。
【0014】
また、この種の従来の磁気記録媒体の製造方法として、イオン注入装置を使用したイオン注入法によりに形成される磁性記録層の凹部の底部に位置する磁性層を非磁性層とすることにより磁気記録媒体を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−293573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが、上述したような従来の磁気記録媒体の製造方法の場合には、非磁性材の充填時間や平坦処理に時間がかかるという問題がある。すなわち、スパッタ法で磁性層に形成した凹部に充填材(非磁性材)を充填し、且つ表面の凹凸を小さくするためには、凹部13(図9(3))の深さ寸法tの約2倍以上の充填厚が必要となる。
【0017】
具体的に説明すると、磁性層のエッチングのエッチング量を20nmとした場合には、充填する非磁性材の厚さ寸法は、40nmとなる。すなわち、凹凸パターンの凸部14の上面に、約20nmの余分な充填材料層が形成されることとなる。従って、磁性層11の表面を平坦化とするためには、少なくとも、この20nmの非磁性材料をエッチングする作業および時間が必要となる。
【0018】
具体的に説明すると、エッチングによるエッチングレートを2nm/秒とし、充填材料のスパッタレートを2nm/秒とした場合、磁性層11のエッチング(10秒)+充填材料の充填時間(20秒)+平坦化処理の時間(10秒)となり、磁気記録媒体2aの製造時間(タクトタイム)に多くの時間を費やしてしまうという問題がある。
【0019】
また、上記従来の特許文献1に開示された磁気記録媒体の製造方法の場合には、イオンエッチング装置に加えて、イオン注入装置が必要となることから、現在のインライン方式のプロセス装置に取り付ける場合には装置サイズが合わないという問題がある。すなわち、記録磁性層に対する凹部の形成後に装置外に取り出し、イオン注入装置でプロセスを行い、再度、他の装置で充填平坦化を行うことが必要となるため、装置台数が増え製造コストが高くなり、製造プロセスとして適していないという問題がある。
【0020】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、タクトタイム(製造時間)の短縮とともに、非磁性材の充填量を低減することができ、これによって、製造コストを抑えることが可能となり、低価格な磁気記録媒体を実現することができる磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体および情報記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
開示の発明は、磁気記録媒体を形成する記録磁性層に凹凸状のレジストパターンを形成し、エッチングによりレジストパターンおよびをレジストパターンにより覆われていない磁性記録層の一部を残存させて除去するとともに、磁性記録層の一部として残存されている磁性記録層を酸化により非磁性層として形成することを要件とする。
【発明の効果】
【0022】
開示の発明によれば、磁気記録磁性層に形成されるレジストパターンにより覆われない磁性記録層の一部(凹部の底部)に位置する磁性層を酸化により変質させて非磁性層として形成することができるので、非磁性材の使用量(充填量)および充填時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本実施例1に係る情報記憶装置の内部を示す外観図である。
【図2】図2は、本実施例1に係る磁気記録媒体の構造を示す断面図である。
【図3】図3は、磁気記録媒体の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】図4は、磁気記録媒体の製造方法を説明する図である。
【図5】図5は、磁気記録媒体の製造方法を説明する図である。
【図6】図6は、磁気記録媒体の製造方法を説明する図である。
【図7】図7は、磁気記録媒体の製造方法を説明する図である。
【図8】図8は、磁気記録媒体の製造方法を説明する図である。
【図9】図9は、従来の磁気記録媒体の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、本願の開示する磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体および情報記憶装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施例1により本願に開示する磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体および情報記憶装置が限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
先ず、実施例1に係る情報記憶装置1の概要について説明する。図1は、実施例1に係る情報記憶装置の内部を示す外観図である。図1に示すように、情報記憶装置1は、磁気記録媒体2と、スピンドルモータ4とボイスコイルモータ5と磁気ヘッド7を先端部に設けたアクチュエータ3とを有する。
【0026】
磁気記録媒体2は、各種の磁気情報を高記録密度に記録する磁気記録媒体であり、スピンドルモータ(以下、「SPM」という)4により所定の方向に回転駆動される。この磁気記録媒体2は、各種の情報を記録する凹凸部のパターンとして形成されたサーボ領域(図示せず)を有するとともに、互いに孤立した記録再生のための磁化領域が非磁化領域によって隔離されて配置されているパターンドメディアである。
【0027】
磁気記録媒体2は、サーボ情報等を記憶するサーボ領域と、ユーザデータを記憶するデータ領域(図示せず)とを有する。アクチュエータ3の先端部には、磁気記録媒体2の読み書きを行なうための磁気ヘッド7が設けられている。
【0028】
すなわち、アクチュエータ3の一方の端に設けられたヘッド駆動機構であるボイスコイルモータ(以下、「VCM」という)5の駆動により、アクチュエータ3が軸6を中心とする円弧上を回動する。そして、磁気記録媒体2のトラック幅方向に磁気ヘッド7を移動させることで読み書き対象となるトラックを変更する。
【0029】
磁気ヘッド7は、磁気記録媒体2の回転によって生じる揚力によって、磁気記録媒体2の表面からわずかに浮いた状態を維持しつつ、読み書き対象となるトラックまで移動し、リード処理およびライト処理(データの読み書き処理)を行う。
【0030】
[磁気記録媒体2の構成]
次に、図2を用いて、情報記憶装置1に設けられる磁気記録媒体2の構造について説明する。図2は、実施例1に係る情報記憶装置1が備えた磁気記録媒体2の構造を示す図である。
【0031】
図2に示すように、磁気記録媒体2は、非磁性材を用いた基板20の上面に中間層および軟磁性裏打ち層(SUL:Soft under Layer)を積層することで多層膜層30を形成し、この多層膜層30の上面にパターンドメディアとしての凹凸パターンを形成した磁性記録層40を設けた構造を有している。また、磁性記録層40に形成される非磁性材42(非磁性層43)を充填する凹部41の底部44に位置する磁性層を酸化により非磁性層45として形成している。
【0032】
具体的に説明すると、図2に示すように、磁性記録層40には、所定の厚さ寸法(T=10nm)を有する非磁性材42が充填された非磁性層43と酸化により所定の厚さ寸法(T=10nm)を有する非磁性層45とが形成されている。この場合、従来の磁気記録媒体と同様に、サーボパターンからの磁気的出力を考慮した高出力を得ることができる非磁性層の深さ寸法(T=T+T=10nm+10nm=20nm)を有する非磁性層を備えることができる。
【0033】
すなわち、このように磁性記録層40に形成する凹部41の深さ寸法を浅く形成することで、この凹部41の内部に充填する非磁性材42の充填量および充填時間を低減することができる。これによって、タクトタイム(製造時間)の短縮化を可能とすることができる。
【0034】
[磁気記録媒体2の製造方法]
次に、本実施例1に係る磁気記録媒体2の製造方法を図3および図4〜図8を用いて説明する。ここで、図3は、実施例1に係る磁気記録媒体2の製造工程を示すフローチャートである。
【0035】
また、図4〜図8は、実施例1に係る磁気記録媒体2の製造工程を説明する図である。なお、以下の説明において、本実施例1の磁気記録媒体2の製造方法は、磁気記録媒体2を所定の手順で製造する製造システムにより行なうこととして説明する。
【0036】
図3のフローチャートに示すように、磁気記録媒体2の製造システムでは、多層膜形成工程(ステップS1)と、レジスト工程(ステップS2)と、エッチング工程(ステップS3)と、非磁性層形成工程(ステップS4)と、非磁性材充填工程(ステップS5)とを順に行なう。
【0037】
すなわち、図3のフローチャートに示すように、本実施例1の製造システムでは、先ず、基板の上面に複数の薄膜を積層させる多層膜形成工程を行なう(ステップS1)。この多層膜形成工程は、非磁性の基板の上面に、非磁性の下地層および非磁性の中間層と磁性記録層とを順次積層させる工程である。
【0038】
具体的に説明すると、本実施例1に示す磁気記録媒体の製造システムでは、図4に示すように、HDD用として用意した所定寸法(例えば、φ2.5インチ)の基板20の上面にスパッタ法により、下地層(非磁性層)を積層する。また、下地層の上面にAPS(Antiparallel-structure)と、軟磁性裏打ち層(SUL:Soft under Layer)と、非磁性中層と、磁性グラニュラー層との順で成膜を行ない多層膜層30を形成する。また、多層膜層30の上面には、磁性記録層40を積層する。
【0039】
ここで、基板20には、例えば、Al合金、NiPめっき付きのAl合金やガラス材などの非磁性金属板を使用する。なお、この基板としては、表面の平坦性が高く、機械的強度の高い磁気特性に影響を与えないような金属板が望ましい。
【0040】
また、図3のフローチャートに示すように、本実施例1の製造システムでは、多層膜層の上面にレジストマスク(レジストパターン)を形成するレジスト工程を行なう(ステップS2)。このレジスト工程は、多層膜層の上面に積層された磁性記録層の上面にレジストを塗布しナノインプリント法によりレジストマスク(レジストパターン)を形成する工程である。
【0041】
具体的に説明すると、本実施例1に示す磁気記録媒体の製造システムでは、図4に示すように、磁性記録層40の上面にレジストパターンである凹凸状のレジストマスク50を形成する。ここで、レジストパターンによる凹凸パターンとは、逆の凹凸部を有する原盤を用いてナノインプリントにより凹凸部を形成するもので、このように形成されたレジストはパターニングを行なうためのレジストマスク50となる。
【0042】
ここで使用したレジストマスクは、所定のピッチ(例えば、100nmピッチ)でランド/グルーブ比1:1の同心円パターンであり、磁性記録層40の全面にレジストパターンが形成される。なお、このレジスト工程では、酸素などのエッチングガスを用いた反応性イオンエッチング法(RIE:Reactive Ion Etching)によりレジストマスク50の凹部の底だしも行なわれる。
【0043】
また、図3のフローチャートに示すように、本実施例1の製造システムでは、レジストパターンおよび磁性記録層に対するエッチング工程を行なう(ステップS3)。このエッチング工程は、レジストパターン形成工程により形成されたレジストパターンおよびレジスト工程により形成されたレジストパターンにより覆われていない磁性記録層の一部を残存させて除去するエッチング工程である。
【0044】
具体的に説明すると、図5に示すように、IBE法によりレジストマスク50および磁性記録層40のエッチングを徐々に行う。その結果、このエッチングにより、図6に示すように、磁性記録層40の所定の位置に凹部41を形成する。なお、ここでの磁性記録層のエッチング量は10nm(凹部41の深さ寸法T=10nm)とする。
【0045】
ここで、レジストマスク50に対するエッチング工程は、後述する磁性記録層40の一部として残存されている磁性記録層40を酸化により所望の厚さ寸法(T=10nm)にするために必要な非磁性層45として形成する時間としている。
【0046】
次に、図3のフローチャートに示すように、本実施例1の製造システムでは、磁性記録層の一部の磁性記録層を非磁性層として形成する非磁性層形成工程を行なう(ステップS4)。この非磁性層形成工程は、磁性記録層の一部として残存されている磁性記録層を酸化処理により変質させて非磁性層として形成する工程である。
【0047】
具体的に説明すると、図7に示すように、RIE法によりエッチングガスに酸素を用いて、磁性記録層40の凸部上に残存したレジストを除去する。このとき、凹部41の底部44に位置する磁性層も同時に酸化を行い非磁性化し非磁性層45とする処理を行なう。
【0048】
このように、本実施例1では、酸化により磁性層を非磁性層45とする場合は、前述したレジストマスク50の除去およびレジストマスク50により覆われていない磁性記録層40の一部を残存させて除去するエッチング工程と同時に行うことができる。
【0049】
次に、図3のフローチャートに示すように、本実施例1の製造システムでは、磁性記録層の一部に非磁性層となる非磁性材を充填する非磁性材充填工程を行なう(ステップS5)。この非磁性材充填工程は、磁性記録層に形成された凹部41の内部に非磁性材を充填する工程である。
【0050】
具体的に説明すると、図8に示すように、スパッタ法を用いて磁性記録層40に形成された凹部41の内部に非磁性材42を充填する。この充填材として使用される非磁性材42には、アモルファス系や結晶系の材料(例えば、Ta)が使用される。
【0051】
ここで、磁性記録層40の凹部41の深さ寸法は、T(T=10nm)であるため、非磁性材42の充填量は凹部41の深さ寸法の倍である20nmとする。そして、以下では、IBE法により非磁性材42を充填した後の磁性記録層40およびTa層に対するエッチングを行なう。ここで、この場合のエッチング量はTa層の深さ寸法である10nm程度となる。
【0052】
そして、この非磁性材充填工程により、磁性記録層40には、所定の厚さ寸法(T=10nm)を有する非磁性材42が充填された非磁性層43と酸化により所定の厚さ寸法(T=10nm)を有する非磁性層45とが形成された磁気記録媒体2を製造することができる。この場合、従来と同様に、所定の厚さ寸法(T=T+T=10nm+10nm=20nm)を有する非磁性層を備えることができる。
【0053】
なお、充填された磁性記録層40の余剰部分は、イオンビームエッチング(IBE)などのエッチングによりエッチング処理され平坦化する。さらに、この平坦化された磁性記録層40および非磁性層43の上面には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの保護層60と潤滑のためのフッ素系潤滑層(図示せず)などを順に積層する。
【0054】
以下、最後に、磁性記録層40および非磁性材42が充填された非磁性層43の上面に保護膜としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)などをスパッタ法により成膜する。
【0055】
ここで、本実施例1の磁気記録媒体の発明者は、上述した磁気記録媒体2の製造方法による製造時間を検証した。すなわち、従来の磁気記録媒体の製造方法と同様に、エッチングによるエッチングレートを2nm/秒とし、充填材料のスパッタレートを2nm/秒とする条件では、磁性記録層40のエッチング時間が5秒となる。また、非磁性材42の充填時間が10秒となり、平坦化処理に要する時間は、5秒となり製造時間(タクトタイム)は充填時間の10秒となる。
【0056】
すなわち、本実施例1の磁気記録媒体の製造方法では、従来の磁気記録媒体の製造方法で要する時間(10秒)のほぼ半分の時間で済むことがわかった。また、磁気記録媒体2を形成する磁性記録層40の凹部41に充填する非磁性材42の充填量は、20nmとなり従来による非磁性材42の充填量(40nm)と比較するとほぼ半分の量となるため、材料費も大きく低減できることがわかった。
【0057】
上述したように、本実施例1の磁気記録媒体の製造方法で製造される磁気記録媒体2は、基板20上に成膜された多層膜層30と、多層膜層30に積層された磁性記録層40と、エッチングにより除去されるとともに、磁性記録層40の一部として残存された磁性層にの凹部41に充填される非磁性材42と、磁性記録層40の一部として残存されている磁性層の底部44を酸化により変質させることで形成される非磁性層45とから形成されるので、タクトタイム(製造時間)の短縮化および充填材料の使用量低減により、製造コストを抑えることが可能となり、低価格な磁気記録媒体を実現することができる。
【0058】
以上の実施例1を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0059】
(付記1)磁気記録媒体を形成する磁性記録層に凹凸状のレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
前記レジストパターン形成工程により形成されたレジストパターンおよび前記レジストパターン形成工程により形成されたレジストパターンにより覆われていない前記磁性記録層の一部を残存させて除去するエッチング工程と、
前記磁性記録層の一部として残存されている磁性記録層を酸化により非磁性層として形成する非磁性層形成工程と
を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0060】
(付記2)前記非磁性層形成工程は、前記レジストパターン形成工程により形成されたレジストパターンおよび前記レジストパターン形成工程により形成されたレジストパターンにより覆われていない前記磁性記録層の一部を残存させて除去するエッチング工程と同時に行うことを特徴とする付記1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0061】
(付記3)前記エッチング工程は、前記磁性記録層の一部として残存されている磁性記録層を酸化により所望厚さにするために必要な非磁性層として形成する時間であることを特徴とする付記1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0062】
(付記4)前記非磁性層形成工程による磁性記録層の一部として残存されている磁性記録層を酸化により非磁性層として形成する酸化処理は、反応性イオンエッチング法を用いることを特徴とする付記1〜付記3の何れか一つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0063】
(付記5)基板上に成膜された多層膜層と、
前記多層膜層に積層された磁性記録層と、
エッチングにより除去されるとともに、前記磁性記録層の一部として残存された磁性層に形成された凹部に充填される非磁性材と、
前記磁性記録層の一部として残存されている磁性層を酸化により変質させることで形成される非磁性層と
を備えたことを特徴とする磁気記録媒体。
【0064】
(付記6)基板上に成膜された多層膜層と、前記多層膜層に積層された磁性記録層と、エッチングにより除去されるとともに、前記磁性記録層の一部として残存された磁性層に形成された凹部に充填される非磁性材と、前記磁性記録層の一部として残存されている磁性層を酸化により変質させることで形成される非磁性層とを有する磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対してデータの読み書き処理を行なう磁気ヘッドと
を備えることを特徴とする情報記憶装置。
【符号の説明】
【0065】
1 情報記憶装置
2、2a 磁気記録媒体
3 アクチュエータ
4 スピンドルモータ
5 ボイスコイルモータ
6 軸部
7 磁気ヘッド
11 磁性記録層
12、50 レジストパターン
13、41 凹部
14 凸部
15、42 非磁性材
20 基板
30 多層膜層
40 磁性記録層
42 非磁性材
43、45 非磁性層
44 底部
45 非磁性層
60 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体を形成する磁性記録層に凹凸状のレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
前記レジストパターン形成工程により形成されたレジストパターンおよび前記レジストパターン形成工程により形成されたレジストパターンにより覆われていない前記磁性記録層の一部を残存させて除去するエッチング工程と、
前記磁性記録層の一部として残存されている磁性記録層を酸化により非磁性層として形成する非磁性層形成工程と
を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記非磁性層形成工程は、前記レジストパターン形成工程により形成されたレジストパターンおよび前記レジストパターン形成工程により形成されたレジストパターンにより覆われていない前記磁性記録層の一部を残存させて除去するエッチング工程と同時に行うことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記エッチング工程は、前記磁性記録層の一部として残存されている磁性記録層を酸化により所望厚さにするために必要な非磁性層として形成する時間であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記非磁性層形成工程による磁性記録層の一部として残存されている磁性記録層を酸化により非磁性層として形成する酸化処理は、反応性イオンエッチング法を用いることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
基板上に成膜された多層膜層と、
前記多層膜層に積層された磁性記録層と、
エッチングにより除去されるとともに、前記磁性記録層の一部として残存された磁性層に形成された凹部に充填される非磁性材と、
前記磁性記録層の一部として残存されている磁性層を酸化により変質させることで形成される非磁性層と
を備えたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項6】
基板上に成膜された多層膜層と、前記多層膜層に積層された磁性記録層と、エッチングにより除去されるとともに、前記磁性記録層の一部として残存された磁性層に形成された凹部に充填される非磁性材と、前記磁性記録層の一部として残存されている磁性層を酸化により変質させることで形成される非磁性層とを有する磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対してデータの読み書き処理を行なう磁気ヘッドと
を備えることを特徴とする情報記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−277648(P2010−277648A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129422(P2009−129422)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】