説明

磁気記録媒体処理装置

【課題】データ消去に用いられる磁石が他の装置構成に与える影響を低減し、短時間に磁気記録媒体のデータ消去および物理的破損を行う。
【解決手段】磁気記録処理装置10は、回転保持機構109と、磁石部111と、破損装置と、を有している。回転保持機構109は、磁気記録媒体121を回転可能に保持する。磁石部111は、回転保持機構109に保持されている磁気記録媒体121の縁部から磁気記録媒体121の回転中心に向けて延びており、磁気記録媒体121のデータを消去する。破損装置は、磁石部から離れた位置に設けられ、磁気記録媒体121を物理的に破損させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の記録を消去し、磁気記録媒体を破損させる磁気記録媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープのような磁気記録媒体を廃棄する際、情報漏洩防止の観点から、磁気記録媒体に記録された情報を完全に消去し、磁気記録媒体を読み込み不能にすることが強く求められる。そのため、磁気記録媒体を廃棄する際には、強力な磁場によって磁気記録媒体の記録を消去したり、磁気記録媒体を物理的に破壊したりしている。
【0003】
特許文献1では、磁気テープを廃棄する際に、磁気テープを物理的に切断することが記載されている。特許文献1では、磁気テープのリールの巻心に渦巻状に巻かれている磁気テープを、押し刃を用いて、最外周部分から巻心に向けて切断する。
【0004】
特許文献2では、磁気ディスクに記録されたデータを消去するデータ消去装置が開示されている。特許文献2に記載のデータ消去装置は、永久磁石からなる磁場発生手段を有している。磁場発生手段である永久磁石は、磁気記録メディアを挟みこむように配置されている。磁場発生手段からの磁場によって、磁気ディスクの記録は消去される。
【0005】
特許文献3では、磁場または電磁場によるデータ消去と、データ記録媒体の物理的な破壊と、を行う装置が記載されている。特許文献3に記載のデータ記録媒体処理装置は、強度の磁界を発生させるコイルが巻かれた収容部と、データ記録媒体を物理的に破壊する破壊ピンと、を有している。データ記録媒体処理装置は、データ記録媒体を収容部に収容した状態で、データ記録媒体のデータを消去し、破壊ピンによってデータ記録媒体を突き刺す。
【特許文献1】特開2006−159328号公報
【特許文献2】特開2001−331904号公報
【特許文献3】特開2006−147044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
情報漏洩防止の観点から、磁気記録媒体を複数か所、物理的に破損させることが要求されることが多い。しかし、特許文献1に記載の方法では、磁気テープを複数個所で切断する場合、押し刃と磁気テープとの位置関係を手動で変える必要があり、作業に時間がかかり、作業者の負担も大きいという課題がある。
【0007】
特許文献2に記載のデータ消去装置では、磁気ディスクのデータ消去が行われる領域は、永久磁石の磁力が届く範囲に限られる。したがって、磁気ディスク全体のデータを消去するためには、磁気ディスク全体を覆う永久磁石を用いるか、磁気ディスク全体が永久磁石に晒されるように、手動で磁気ディスクを移動させる必要がある。
【0008】
磁気ディスク全体を覆う大型の永久磁石を用いる場合、永久磁石の磁力が、永久磁石のまわりに設置された他の装置構成に影響を与えるという課題がある。また、手動で磁気ディスクを移動させる場合には、作業に時間がかかるという課題がある。
【0009】
特許文献3に記載のデータ記録媒体処理装置では、データ記録媒体を収容する収容部を有しており、この収容部には磁力を発生するためのコイル(つまり、電磁石)が巻かれている。この場合にも、データ記録媒体全体を覆う大型の電磁石によって、他の装置構成に影響を与えるという課題がある。
【0010】
特許文献2,3に記載の磁石(電磁石を含む。)は強力な磁気を帯びるため、その付近に、金属を有する装置構成部を配置することは困難であった。
【0011】
また、特許文献1および特許文献3に記載されたように、物理的に磁気記録媒体を破壊する場合には、破壊時に、磁気記録媒体の磁性粉が大量に飛散する。また、磁気記録媒体がケースを有している場合には、ケース破片も大量に飛散する。このような破片や磁性粉が装置に堆積した場合、装置が劣化することがある。特に、磁性粉は、磁気記録媒体のデータを消去するための磁石(電磁石を含む。)に吸着するため、磁石の劣化を早めてしまう。
【0012】
本発明の目的は上記背景技術の課題の少なくとも1つを解決できる磁気記録媒体処理装置を提供することにある。その目的の一例は、データ消去に用いられる磁石が他の装置構成に与える影響を低減し、短時間で磁気記録媒体のデータ消去および物理的破損を行うことができる磁気記録媒体処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題の少なくとも1つを解決するため、本発明の磁気記録処理装置は、回転保持機構と、磁石部と、破損装置と、を有している。回転保持機構は、磁気記録媒体を回転可能に保持する。磁石部は、回転保持機構に保持されている磁気記録媒体の縁部から磁気記録媒体の回転中心に向けて延びており、磁気記録媒体のデータを消去する。破損装置は、磁石部から離れた位置に設けられ、磁気記録媒体を物理的に破損させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、データ消去に用いられる磁石が他の装置構成に与える影響を低減し、短時間で磁気記録媒体のデータ消去および物理的破損を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明の磁気記録媒体処理装置は、磁気記録媒体の記録を消去し、磁気記録媒体を物理的に破損させる。磁気記録媒体としては、例えば磁気テープが挙げられる。
【0016】
図1は本実施形態の磁気記録媒体処理装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、磁気記録媒体処理装置の概略斜視図であり、図3は磁気記録媒体処理装置の概略上面図である。なお、図2では、各装置構成を収容する筐体130が、透視的に示されている。
【0017】
本実施形態に係る磁気記録媒体処理装置10は、磁気記録媒体121を物理的に破損させる破損装置と、磁気記録媒体121の磁気データを消去するデータ消去装置と、磁気記録媒体121を回転可能に保持する回転保持機構109と、を有している。
【0018】
データ消去装置としては、磁気記録媒体121の保磁力よりも大きな磁力を、磁気記録媒体121に印加する磁石部111を用いることができる。磁石部111は磁気記録媒体121の記録を消去することができれば、永久磁石であっても電磁石であっても良い。
【0019】
破損装置は、磁気記録媒体121に切り込みを入れ、切り込み部を溶融させる装置であることが好ましい。そのような装置の好適な例として、本実施形態では、超音波カッター101を用いた。磁気記録媒体121の切り込み部を溶融させることで、磁気記録媒体121の磁性粉の発生が抑制される。また、磁気記録媒体121がケースを有している場合には、ケースの破片の飛散が抑制される。
【0020】
超音波カッター101は、超音波振動するカッターを有している。この超音波振動により、カッターの切断能力は向上する。また、超音波カッター101の超音波振動による摩擦熱によって、磁気記録媒体121の切付け部は溶融する。超音波カッター101を用いると、切り込み部のみが溶融するため、ガスの発生が抑制されるという効果を有している。
【0021】
磁気記録媒体処理装置10は、超音波出力制御部102と、カッター移動機構112と、カッター位置センサ106と、をさらに有していることが好ましい。超音波出力制御部102は、超音波カッター101の超音波出力を制御する制御回路であり、超音波の出力制御やON/OFFの制御等を行う。
【0022】
カッター移動機構112は、超音波カッター101を移動させるための機構である。カッター移動機構112によって超音波カッター101を移動させることで、磁気記録媒体121に切り込みを入れる。
【0023】
超音波カッター101が初期位置にあることをカッター位置センサ106が検知した場合、超音波出力制御部102は超音波出力を停止する。これにより、超音波カッター101を使用しないときに、超音波カッター101が超音波振動することを防止することができる。
【0024】
図4(a)〜(c)では、超音波カッター101およびカッター移動機構112の一例が示されている。図4に示すカッター移動機構112は手動で動作するものである。カッター移動機構112は、レバー122を有している。レバー122を倒すと、超音波カッター101の刃部123が下方に飛び出す(図4(b)参照。)。これにより、刃部123が磁気記録媒体121に接触可能となる。更にレバー122を倒すと、超音波カッター101は、支持部124の固定点125を中心に回転する(図4(c)参照。)。これにより、刃部123が磁気記録媒体121の半径方向に移動する。このようにして、磁気記録媒体121に切り込みを入れることができる。
【0025】
逆に、レバー122を上げると、超音波カッター101の刃部123が引っ込む。更にレバー122を上げると、超音波カッター101が初期位置(図4(a)に示された位置。)に戻る。
【0026】
上述のように、図4に示す手動式のカッター移動機構は、作業者がレバーを下ろす力を利用して超音波カッター101を移動させる。もちろん、カッター移動機構112は、自動で動作するものであっても良い。
【0027】
カッター位置センサ106は、超音波カッター101の位置を検出するセンサである。本実施形態では、カッター位置センサ106は、超音波カッター101が初期位置にあるかどうかを検出する。カッター位置センサ106は、マイクロスイッチ、フォトセンサ、フォトスイッチなどにより構成することができる。
【0028】
回転保持機構109は、磁気記録媒体121を保持した状態で回転することで、磁気記録媒体121を回転させる。回転保持機構109は、回転制御部110によって、その回転が制御されている。回転保持機構109としては、磁気記録媒体の位置決め機能が付いたギヤモータ又はステッピングモータ等を用いることができる。
【0029】
本実施形態では、回転保持機構109は、磁気記録媒体処理装置10の内部から外部へ、または外部から内部へ移動可能に構成されている。これにより、磁気記録媒体121を、磁気記録媒体処理装置10の内部に搬送したり、磁気記録媒体処理装置10の内部から排出したりすることができる。回転保持機構109の搬送は、搬送機構107によって行われる。
【0030】
本実施形態の搬送機構107は、回転保持機構109を搬送するものであるが、搬送機構107は磁気記録媒体121を直接搬送するものであってもよい。この場合、磁気記録媒体処理装置10は、磁気記録媒体121を投入するための開口を有している。この開口から投入された磁気記録媒体121は、搬送機構107によって直接搬送され、回転保持機構109に保持される。
【0031】
また、搬送機構107は搬送制御部108を有している。搬送制御部108は、磁気記録媒体121または回転保持機構109の搬送を制御する。
【0032】
磁石部111は、回転保持機構109に保持されている磁気記録媒体121の縁部から磁気記録媒体121の回転中心に向けて延びている。具体的には、磁石部111は、略「U」の字形状をしており、磁気記録媒体121の一部を挟みこむように構成されている。なお、磁石部111の、回転保持機構109の回転方向Rの幅は狭いことが好ましい。
【0033】
「U」の字形状の対向する2つの面は互いに異なる磁極を有している。この2つの面が、回転保持機構109に保持されている磁気記録媒体121の縁部から磁気記録媒体121の回転中心に向けて延びている。この2つの対向する面には、磁束密度の高い磁石(一例として約0.6T(テスラ)程度)が配置されている。
【0034】
磁石部111に挟まれた部分の磁気記録媒体121のデータは、磁石部111の磁場によって消去される。本実施形態では、磁気記録媒体121の回転によって、磁気記録媒体121全体が磁石部111を通過するため、磁気記録媒体121の全データを消去することができる。磁気記録媒体121の回転は、自動で行われるため、作業者の負担は減り、短時間で作業が完了する。
【0035】
上記のように、磁石部111を、磁気記録媒体121よりも小さくすることができるため、磁石部111の磁力が他の装置構成に影響を与えることが抑制される。特に、磁気記録媒体121の近傍であって磁石部111が設けられた位置から離れた位置に、超音波カッター101や搬送機構107などを設置することが可能になる。また、これにより、磁気記録媒体処理装置10が小型化されるという効果もある。
【0036】
本実施形態では、図3に示すように、超音波カッター101は、磁石部111から離れた位置に配置されている。これにより、磁気記録媒体121のデータを消去しつつ、磁気記録媒体121を破損させることができるため、作業が短時間で完了する。
【0037】
また、回転保持機構109を搬送する搬送機構107も、磁石部111から離れた位置に配置されている。回転保持機構109に備えられている回転制御部110は、磁気記録媒体121を自動で位置決めする。これにより、磁気記録媒体121のデータ消去および切付けが容易になる。
【0038】
磁気記録媒体処理装置10は、媒体検知センサ104と、媒体位置センサ105と、動作スイッチ113と、動作モード表示部114と、データベース115と、メモリ部116と、CPU117と、電源部118と、を有していることが好ましい。
【0039】
媒体検知センサ104は、磁気記録媒体121が回転保持機構109に正常に保持されているかどうかを検知する。媒体検知センサ104としては、マイクロスイッチ、光センサ、光スイッチ、又はそれらの組み合わせなどを用いることができる。
【0040】
媒体位置センサ105は、回転保持機構109で磁気記録媒体121を回転させる際に、その回転角度を測定するために用いられる。具体的には、回転保持機構109に、一定角度毎にフラグが配されている。そして、媒体位置センサ105は、磁気記録媒体処理装置10内の静止した位置に設けられている。この媒体位置センサ105によって、フラグを検知することで、回転保持機構109の回転角度が測定される。なお、回転保持機構109に媒体位置センサ105配置して、静止した位置にフラグを配置しても良い。媒体位置センサ105としては、例えば、フォトセンサを用いることができる。
【0041】
回転制御部110は、磁気記録媒体121が磁気記録媒体処理装置10の内部に搬送された直後、または磁気記録媒体121に切り込みを入れた後に、回転保持機構109を一定角度回転させる。
【0042】
動作スイッチ113は、磁気記録媒体処理装置10の動作モードを選択するため、並びに各動作モードの動作を開始するために用いられる。なお、磁気記録媒体処理装置10が取り得る動作モードの例としては、超音波出力モード、媒体搬送モード、媒体回転モード、異常時の割り込み処理モードなどがある。動作スイッチ113としては、例えば押しボタンを用いることができる。動作モード表示部114は、LEDや液晶ディスプレイ等からなり、現在の動作モードおよび動作結果を表示する。
【0043】
CPU117は、マイクロプロセッサ等から構成される中央処理装置である。CPU117は、超音波出力制御部102、媒体検知センサ104、媒体位置センサ105、カッター位置センサ106、搬送制御部108、回転制御部110、動作スイッチ113、動作モード表示部114、メモリ部116等を、データベース115内の情報を基に制御する。メモリ部116は、CPU117によって直接読み書き可能なRAMやROMなどの半導体記憶装置であり、動作モードや各構成部からの情報等を一時的に格納する。
【0044】
データベース115には、磁気記録媒体処理装置10の動作モードの情報が関連付けされて格納されている。これらの情報に基づいて、磁気記録媒体121の記録を消去しつつ、磁気記録媒体121に切り込みを入れる。
【0045】
データベース115に格納されている情報の例としては、超音波出力のON/OFFのタイミング、搬送機構の動作タイミングおよび搬送距離、回転保持機構の動作のタイミングおよび回転角度、異常発生時の割り込み処理等がある。ここで、異常とは、超音波カッターが過負荷状態になること、一定時間内に搬送機構の搬送が完了しないこと、回転保持機構109の回転中に、媒体位置センサ105が一定時間何も検知しないこと、などが挙げられる。これらの異常が発生した場合は、処理を中止し、動作モード表示部114にその旨を出力することが好ましい。
【0046】
電源部118は、AC入力からDCへ変換するパワーサプライ等であり、電力が必要な各モジュールへ電力を供給する。
【0047】
次に、図5のフローチャートを参照して、磁気記録媒体処理装置10の動作を詳細に説明する。ます、磁気記録媒体121を回転保持機構109にセットする(ステップA1)。具体的には、磁気記録媒体処理装置10の電源を入れた後、投入口103にある回転保持機構109に磁気記録媒体121をセットする。本実施形態では、投入口103は扉付きの出入り口であり、回転保持機構109が搬送されるとともに扉が開くように構成されている。
【0048】
次に、磁気記録媒体121を磁気記録媒体処理装置10の内部に搬送する(ステップA2)。具体的には、磁気記録媒体121が回転保持機構109にセットされたことを、媒体検知センサ104が検知すると、回転保持機構109を磁気記録媒体処理装置10の内部へ向けて一定距離(一例として200mm)移動させる。このようにして、磁気記録媒体121が、磁気記録媒体処理装置10の内部に搬送される。このとき、磁気記録媒体121の一部が、磁石部111に挟みこまれた状態になる(図2および図3参照。)。磁気記録媒体121が磁石部111の間を通過すると、磁石部111の磁力によって、磁気記録媒体121のデータが消去される。
【0049】
次に、動作スイッチ113により、所望の動作モードを選択後、処理をスタートさせると、データベース115に格納されている情報に基づいて、回転保持機構109が一定角度回転する(ステップA3)。このとき、媒体位置センサ105がフラグを一定回数検知することによって、磁気記録媒体121の回転角度が測定される。処理開始直後の磁気記録媒体121の回転角度は、一例としては240°である。
【0050】
次に、カッター移動機構112を用いて超音波カッター101を移動(一例として140mm)させ、磁気記録媒体121に切り込みを入れる。(ステップA4)。このとき、磁気記録媒体121の縁部から中心部を結ぶ半径方向に沿って切り込みを入れることが好ましい。
【0051】
磁気記録媒体121に切り込みを入れた後、カッター移動機構112を用いて、超音波カッター101を初期位置に戻すと、カッター位置センサ106がその旨を検知し、超音波カッター101の超音波出力が停止する。
【0052】
磁気記録媒体121に切り込みを入れる回数が1回である場合、磁気記録媒体121を磁気記録媒体処理装置10の外部へ搬送して、処理を終了する。なお、切り込みを入れる回数が1回である場合、磁気記録媒体121全体のデータを消去するため、ステップA3において磁気記録媒体121を360°以上回転させる。複数回切り込みを入れる場合には、継続して以下の処理を行う。
【0053】
まず、回転保持機構109により、磁気記録媒体121を再び一定角度(一例として60°)回転させる(ステップA3)。このとき、媒体位置センサ105がフラグを検知した回数によって、回転角度が測定される。
【0054】
次に、超音波カッター101を作動させて、磁気記録媒体121に切り込みを入れる(ステップA4)。この後、磁気記録媒体121に切り込みを入れた回数をカウントし、当該回数が所定の値に達しているかどうか判断する(ステップA5)。
【0055】
所定の回数切り込みを入れた場合には、磁気記録媒体121を磁気記録媒体処理装置10の外部へ搬送して、処理を終了する。そうでなければ、再びステップA3およびステップA4を繰り返す。
【0056】
本実施形態の磁気記録媒体処理装置は、ステップA2〜A6までの処理を自動化することできるため、処理時間が低減し、作業者の負担も激減する。なお、磁気記録媒体121に切り込みを入れる力を大きくするために、磁気記録媒体に切り込みを入れる作業は手動で行ってもよい。この場合、磁気記録媒体処理装置10は、切り込みを入れるタイミングを作業者に通知する。
【0057】
上記の一連の処理において、磁気記録媒体121は少なくとも一回転するように制御される。これにより、磁石部111によって、磁気記録媒体121の全記録を消去することができる。
【0058】
本構成によれば、データを消去しながら磁気記録媒体121に切り込みを入れることができるため、大量の磁気記録媒体の廃棄を行う際にも、短時間で容易に処理することができる。また、処理が完了するまで作業者が磁気記録媒体121に触れる必要がないため、作業者は安全に作業を行うことができる。
【0059】
データが消去された磁気記録媒体121には切り込みが入れられているため、磁気記録媒体121のデータの読み込みは不能となっており、データの消去が完了した磁気記録媒体121かどうかを容易に判別することもできる。
【0060】
次に、磁気記録媒体121への切り込みの入れ方の一例について説明する。図6は、磁気記録媒体121の切り込み部の一例を示している。
【0061】
まず、回転保持機構109によって磁気記録媒体121を240°回転させた後、磁気記録媒体121に切り込みを入れる。その後、磁気記録媒体121を60°回転させるごとに、磁気記録媒体121に切り込みを入れる。このようにして、合計4回、磁気記録媒体121に切り込みを入れる。この場合、磁気記録媒体121は合計420°回転するため、磁気記録媒体121のすべてのデータが消去される。
【0062】
上述のように、磁気記録媒体121には、60°間隔で4か所、切り込み部131が形成される。最初に形成された切り込み部131は、その後の磁気記録媒体121の回転とともに180°回転する。本実施形態では、図3に示すように、超音波カッター101の位置から磁石部111の位置までの回転方向Rの角度は、180°よりも大きい。したがって、磁気記録媒体121の切り込み部131は、磁石部111の位置に到達しない。このため、切り込み部131に生じるバリが、磁石部111に吸着することを抑制できる。
【0063】
上記の例のように、超音波カッター101が磁気記録媒体121の切り込み部131が磁石部111に到達しないように、磁気記録媒体121の回転角度が制御されていることが好ましい。これにより、磁気記録媒体121に切り込みを入れた際に生じたバリが、磁石部111に付着することを抑制することができる。
【0064】
また、搬送機構107は、磁石部111よりも磁気記録媒体121の回転方向Rの上流側、かつ超音波カッター101よりも回転方向Rの下流側に配置されることが好ましい。これにより、磁気記録媒体121と磁石部111との間の回転方向の角度が、大きくなる。この角度が大きいと、磁気記録媒体121の広い領域にわたって、切り込みを入れることができる。
【0065】
超音波カッター101が磁気記録媒体121に切り込みを入れる箇所は、4か所以上であることが好ましい。つまり、予め設定された角度だけ磁気記録媒体121を回転させた後、超音波カッター101で磁気記録媒体121に切り込みを入れる動作を、4回以上行う。これは、市場の要求によると、切り込み部が3か所未満の場合では、情報漏洩防止の観点から不十分であると判断されることがあるためである。一般的には、切り込み部は最低2か所必要であるが、情報漏洩の防止が十分であれば、切り込み部は1か所であっても良い。
【0066】
以上では、超音波カッター101によって、「磁気記録媒体に切り込みを入れる」と表現したが、超音波カッター101は磁気記録媒体121を切断しても良い。
【0067】
また、磁気テープを処理する場合、超音波カッター101は、磁気テープのリールのハブ部に触れる所まで切り込みを入れ、ハブ部を完全に切断しなくても良い。この場合、磁気テープが分断されて、回転保持機構109から脱落することを防ぐことができる。
【0068】
以上、本発明の望ましい実施形態について提示し、詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限り、さまざまな変更及び修正が可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】一実施形態に係る磁気記録媒体処理装置の構成を示すブロック図。
【図2】一実施形態に係る磁気記録媒体処理装置の概略斜視図。
【図3】一実施形態に係る磁気記録媒体処理装置の概略平面図。
【図4】(a)〜(c)は、超音波カッターおよびカッター移動機構の一例を示す概略図。
【図5】磁気記録媒体処理装置の動作の一例を示すフローチャート。
【図6】磁気記録媒体の切り込み部の一例を示す平面図。
【符号の説明】
【0070】
10 磁気記録媒体処理装置
101 超音波カッター
102 超音波出力制御部
103 投入口
104 媒体検知センサ
105 媒体位置センサ
106 カッター位置センサ
107 搬送機構
108 搬送制御部
109 回転保持機構
110 回転制御部
111 磁石部
112 カッター移動機構
113 動作スイッチ
114 動作モード表示部
115 データベース
116 メモリ部
117 CPU
118 電源
121 磁気記録媒体
122 レバー
123 刃部
124 支持部
125 固定点
130 筐体
131 切り込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体を回転可能に保持する回転保持機構と、
前記回転保持機構に保持されている前記磁気記録媒体の縁部から前記磁気記録媒体の回転中心に向けて延び、前記磁気記録媒体のデータを消去する磁石部と、
前記磁石部から離れた位置に設けられ、前記磁気記録媒体を物理的に破損させる破損装置と、を有する、磁気記録媒体処理装置。
【請求項2】
前記破損装置は、前記磁気記録媒体に切り込みを入れつつ、切り込み部を溶融させる装置である、請求項1に記載の磁気記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記破損装置は、超音波振動するカッターを備えた超音波カッターである、請求項2に記載の磁気記録媒体処理装置。
【請求項4】
前記回転保持機構の回転および前記破損装置の破損動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、予め設定された回転角度だけ前記磁気記録媒体を回転させた後、前記破損装置によって前記磁気記録媒体を破損させる動作を行わせる、請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記動作を少なくとも4回行わせる、請求項4に記載の磁気記録媒体処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記破損装置によって破損された部分が前記磁石部に到達しないように、前記磁気記録媒体の回転角度を制御する、請求項4または5に記載の磁気記録媒体処理装置。
【請求項7】
前記磁気記録媒体を前記磁石部が設けられた位置まで搬送する搬送機構をさらに有している、請求項1から6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体処理装置。
【請求項8】
前記搬送機構は、前記磁石部よりも前記磁気記録媒体の回転方向の上流側、かつ前記破損装置よりも前記回転方向の下流側に配置されている、請求項7に記載の磁気記録媒体処理装置。
【請求項9】
前記磁石部は互いに異なる磁極を有する対向する2つの面を備え、該2つの面が前記回転保持機構に保持されている前記磁気記録媒体の前記縁部から前記磁気記録媒体の前記回転中心に向けて延びている、請求項1から8のいずれか1項に記載の磁気記録媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−140539(P2010−140539A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314746(P2008−314746)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000232140)NECフィールディング株式会社 (373)