磁気記録媒体及びその製造方法
【課題】良好な記録再生特性と信頼性を両立したディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体を作製する。
【解決手段】磁気記録層18,19に含まれる非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層20を磁気記録層上部に形成し、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成するための開口部を有するマスク層21′を非磁性層20の上部に形成する。マスク層21′をマスクとして非磁性元素23を非磁性層20を介してイオン注入することで、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分24を形成する。
【解決手段】磁気記録層18,19に含まれる非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層20を磁気記録層上部に形成し、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成するための開口部を有するマスク層21′を非磁性層20の上部に形成する。マスク層21′をマスクとして非磁性元素23を非磁性層20を介してイオン注入することで、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分24を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高記録密度に適したディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体に代表されるパターン媒体に関わり、特にトラックガイド分離域に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータで利用される情報量の増大や、映像記録機器、カーナビゲーションシステム等への用途拡大により、磁気記録再生装置はさらなる大容量化・高性能化の要求が高まっている。高記録密度化のためには磁気記録媒体の磁化反転単位を小さくし、媒体ノイズを低減する必要がある。その方法として従来の磁気記録媒体では、磁気記録層を構成する強磁性結晶粒があらかじめ磁気記録層に含まれる非磁性材料で分離される構造が採用された。
【0003】
現在、より積極的にこの分離域を制御し磁気記録密度を向上する案として、記録トラック間に分離加工を施したディスクリートトラック媒体、さらには、記録ビット間にも分離加工を施したビットパターン媒体が研究開発されており、いずれの場合も分離域形成加工技術が高記録密度化の重要なポイントとなっている。例えば、ディスクリートトラック媒体においては、分離域形成加工技術として基板に予め同心円状に凹凸形状を形成しておき、その上に磁性膜を形成することで、凹凸形状の磁性膜を形成する基板加工型や、磁性膜にマスクを施し凹部とすべき部分をエッチングすることによって凹凸形状を施す磁性膜加工型が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの技術において、凹部には非磁性材料を埋め戻し、さらにその表面を凸部となる磁性膜の高さにあわせて平坦化し、さらに平坦化した面に保護膜を形成するといった複数のプロセス工程を有することで、磁性膜や保護膜の表面に発生する異物の増加、表面粗さの増加という新たな問題が発生し、高記録密度化のためのもう一つのポイントとなる磁気ヘッドと磁気ディスクの隙間狭小化(ナノスペーシング化)を妨げてしまう。
【0005】
これらを解決する手段として、イオン注入を用いて分離域を形成する方法が試みられている。例えば、特許文献1では、ディスクリートトラック媒体の記録トラック間の分離域を、磁性層に窒素イオン等を打ち込むことによって非磁性化することで形成する方法が開示されている。この方法を用いれば、トラック密度を向上し、記録密度を向上できるとされている。
【0006】
また、特許文献2では、磁性膜上に形成したカーボンなどからなるイオンバッファ層を介してCrなどの元素をイオン注入し、熱処理を施すことによってイオンを注入した領域の保磁力を低下させて分離域を形成する方法が開示されている。この方法を用いれば、磁性層の厚み方向に対するイオン注入濃度を制御して、強磁性領域を特定領域に集中させることができるとされている。
【0007】
【特許文献1】特許第3034879号
【特許文献2】特開2006−309841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体において、記録トラック間や記録ビット間を分離する方法は重要な課題である。
【0009】
上記文献のような方法を用いる場合、分離域の磁性を変化させ記録トラックに書きにじみがないようにしてトラック密度を向上するためには多量のイオンを注入する必要がある。その場合、一部のイオンが記録トラック部分にまで拡散し、記録トラックの磁気特性が変化することにより、出力が大きく減少するなど記録再生特性が劣化する問題がある。熱処理を用いる場合も、一部のイオンが記録トラック部分にまで拡散し、記録トラックの磁気特性が変化することにより、出力が大きく減少するなど記録再生特性が劣化する問題がある。また、イオンバッファ層などを用いた場合は、イオンバッファ層を構成する元素と注入イオンの元素が異なる場合、各元素のイオン化傾向に差があるため、耐食性が劣化する問題がある。
【0010】
本発明の目的は、良好な記録再生特性と信頼性を両立したディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体を作製することである。特に、イオン注入によってディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体の分離域を形成する場合において、記録トラックや記録ビットに対するダメージがないように注入イオンを制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の磁気記録媒体においては、基板上に直接もしくは間接的に形成された磁気記録層を有し、磁気記録層は非磁性元素を含有し、磁気記録層面内方向に非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在し、磁気記録層の上部に磁気記録層に含まれる非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を有することを特徴とする。
【0012】
磁気記録層面内方向に非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在するようにする方法として、磁気記録層に含まれる非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を磁気記録層上部に形成し、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成するための開口部を有するマスク層を非磁性層上部に形成し、マスク層をマスクとして非磁性元素を非磁性層を介してイオン注入することで、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成するとよい。
【0013】
磁気記録層面内方向に非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在するようにする方法として、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成するための開口部を有するマスク層を磁気記録層上部に形成し、非磁性元素と同元素を主成分とする非磁性層をマスク層上部およびマスク層開口部の下にある磁気記録層上部に形成し、マスク層をマスクとして非磁性元素を非磁性層を介してイオン注入することで、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成する方法を用いてもよい。
【0014】
また、磁気記録層が複数の磁性層を有する場合、非磁性層を磁気記録層の上部ではなく、複数の磁性層の少なくとも2層の間に形成してもよい。この場合、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成するための開口部を有するマスク層を非磁性層上部に形成し、マスク層をマスクとして非磁性元素をイオン注入することで、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成する方法を用いるとよい。
【0015】
磁気記録層の非磁性元素の含有率の高い部分と低い部分をおおむね同心円状に形成することにより、ディスクリートトラック媒体を作製することができる。また、磁気記録層の非磁性元素の含有率が低い部分がおおむね同心円状に並んだドット状に形成することにより、ビットパターン媒体を作製することができる。
【0016】
非磁性元素として、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Ru、B、C、Si、Geからなる群から選ばれるいずれかの元素を用いるとよい。非磁性層厚は2nm以下であることが望ましい。非磁性層を磁気記録層上部に形成する場合、非磁性層の主成分がCr、Ta及びCのいずれかの元素であることが望ましい。
【0017】
磁気記録層が複数の磁性層を有し、非磁性層を磁気記録層の上部ではなく、複数の磁性層の少なくとも2層の間に形成する場合、非磁性層の主成分がRu、Ti、Cr、Mo、Wのいずれかの元素であることが望ましい。
【0018】
非磁性層を磁気記録層上部に形成する場合、マスク層を除去する工程の前後、もしくは同時に非磁性層を除去してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好な記録再生特性と信頼性を両立したディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[実施例1]
図1〜8を参照して、本発明の実施例1による磁気記録媒体及びその製造方法の一例を示す。本実施例ではディスクリートトラック媒体を作製し、磁気的書き込み幅Mww(Magnetic Write Width)の評価を行っている。
【0021】
図1を参照して説明する。基板10として、硼珪酸ガラス、或いはアルミノシリケートガラスからなる基板表面を化学強化した基板を洗浄後、乾燥して用いた。化学強化したガラス基板に替え、アルミニウム合金基板上にNi−Pめっき後表面研磨した基板やSiやTi合金からなる剛体基板を用いることもできる。
【0022】
前記工程を経た基板上に密着層11として50at.%Al−50at.%Ti合金層を5nm、第一軟磁性層12として51at.%Fe−34at.%Co−10at.%Ta−5at.%Zr合金層を15nm、反強磁性結合層13としてRu層を0.5nm、第二軟磁性層14として51at.%Fe−34at.%Co−10at.%Ta−5at.%Zr合金層を15nm、下地層15として50at.%Cr−50at.%Ti合金層を2nm、第一配向制御層16として94at.%Ni−6at.%W合金層を7nm、第二配向制御層17としてRu層を17nm、第一磁性層18として59mol.%Co−16mol.%Cr−17mol.%Pt−8mol.% SiO2合金層を13nm、第二磁性層19として63at.%Co−15at.%Cr−14at.%Pt−8at.%B合金層を6nm、非磁性層20としてCr層を2nm順次積層した(図1)。
【0023】
上記各層の成膜には真空中で基板を搬送し、上記のような複数の層を連続成膜可能な枚様式のスパッタリング装置を用いた。所望の膜組成と同じ組成の合金ターゲットを用意し、それをスパッタすることで上記のような合金層を成膜した。成膜時のArガス圧は第二配向制御層17と第一磁性層18以外の層を成膜する際は1Paとした。第二配向制御層17を成膜する際のArガス圧は、第二配向制御層17の下部側9nmを1Paで成膜し、上部側8nmを5Paで成膜した。第一磁性層18成膜時はArに酸素を加えて成膜した。それぞれの分圧はArを4Pa、酸素を0.2Paとした。
【0024】
前記工程を経た媒体にレジスト21を塗布した後、記録トラックとサーボエリアの形状と同様のパターンが形成されたスタンパー22をレジスト21に押し付けることによって、レジスト21にパターンを転写した(図2〜4)。パターン転写後のレジスト21の溝部分のレジスト残膜を酸素を用いたRIE(Reactive Ion Etching)にて除去し、トラックピッチ120nm、トラック幅60nm、高さ150nmのレジストパターン21′を形成した(図5)。このレジストパターンには型押しによって同時に形成されたサーボエリアのパターンも含まれる。
【0025】
レジストパターン形成後、非磁性元素のイオン23としてCrイオンを媒体に照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部にトラック分離域24として非磁性元素Crの含有率が高い部分を形成した(図6)。
【0026】
イオンを媒体に照射する方法としては、照射する非磁性元素(ここではCr)を主成分とする陰極のアーク放電によりプラズマを生成し、生成したプラズマを湾曲した磁場ダクトにより輸送して、媒体にプラズマビームを照射する方法を用いた。あるいは、非磁性元素のイオンを照射する方法としてイオンビーム源を利用してもよい。Crイオン照射時の加速電圧は28kVとし、照射量は1×1015〜4×1016/cm2とした。
【0027】
Crイオン照射後、酸素を用いたRIEにてレジストパターン21′を除去し(図7)、CVDにてDLC(Diamond-like Carbon)保護膜25を2nm成膜し、パーフルオロアルキルポリエーテルを主成分とする潤滑剤を塗布して厚さ1nmの潤滑膜26を形成した(図8)。DLC保護膜の代わりに、スパッタリングによるカーボン保護膜や、磁場フィルタによるイオン輸送機構を備えたカソーディックアーク法を用いて形成したta−C(Tetrahedral Amorphous Carbon)保護膜などを用いることもできる。DLC保護膜成膜時の成膜ガスはC2H2にN2Oを混合したガスを使用した。
【0028】
作製した媒体のMwwを、スピンスタンドを用いて評価した。磁気ヘッドは再生トラック幅Twr(Track Width of Reader)が50nm、書き込み幅Tww(Track Width of Writer)が70nmのものを用いた。
【0029】
結果を図32に示す。Mwwは照射量が少ない3×1015/cm2以下のところではほぼ一定で、それ以降照射量が増えるに従って徐々にMwwが減少し、照射量が1×1016/cm2以上になるとMwwはほぼ一定となった。Crの照射量が最も少ない点でMwwが85nm以上あったのに対し、照射量が1×1016/cm2以上の領域ではMwwは70nm程度と大きく減少したことから、トラック幅を狭くしトラック密度を大きく向上できることが確認された。
【0030】
以上のようなMwwの変化の傾向は以下のように説明できる。照射量が少ない3×1015/cm2以下のMwwがほぼ一定の領域は、トラック分離域24における非磁性原子の濃度の増加が小さく磁性があまり変化しないため、トラック間を十分に分離できていない領域である。その後、照射量が増加してMwwがともに減少していく領域では、照射量に従ってトラック分離域24の非磁性原子の濃度が増加し、トラック分離域24の磁化が徐々に減少することで、トラック間の磁気的な結合が弱まっていきMwwが徐々に減少していく領域である。照射量が1×1016/cm2以上でMwwがほぼ一定になる領域では、トラック分離域24の磁化が十分に小さくなるまで非磁性原子の濃度が高くなり、トラック間を十分に分離できている領域である。
【0031】
本実施例のうち、Crイオンの照射量が2×1016/cm2のサンプルに関して、トラック分離域24と記録トラック部分におけるCr濃度を分析した。分析にはエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いた。トラック分離域の分析は、トラック分離域の面内方向中ほどの位置において、面垂直方向に非磁性層20の中ほどの位置(図33のP1の位置)から第二配向制御層17の上部付近の位置(図33のP2の位置)まで実施した。記録トラック部分の分析は同様に、記録トラック部分の面内方向中ほどの位置において、面垂直方向に非磁性層20の中ほどの位置(図33のP3の位置)から第二配向制御層17の上部付近の位置(図33のP4の位置)まで実施した。
【0032】
分析結果を図34に示す。トラック分離域24に関しては、第一磁性層18及び第二磁性層19におけるCr濃度はどの位置でも30at.%を越えていた。Co−Cr合金においてCrが30at.%以上ある場合、磁化はほぼ失われる。すなわち、トラック分離域24の磁化はほぼ失われており、この結果からもトラック分離域24が記録トラック間を十分に分離するように形成されていることが確認された。
【0033】
一方、記録トラック部分に関して、第一磁性層18及び第二磁性層19におけるCr濃度はどの位置でも15at.%前後で、スパッタした合金の組成とほぼ同じ値であることが確認された。
【0034】
なお、トラック分離域24において、第二配向制御層17の一部にまで注入したCrが入ってしまっているが特に問題はない。
【0035】
以上より、本実施例においてCrイオンを1×1016/cm2以上照射することにより、トラック密度を十分に向上できることが確認された。
【0036】
[実施例2]
実施例1の非磁性層20及び非磁性元素のイオン23を他の元素に変えて、実施例1と同様にディスクリートトラック媒体を作製した。非磁性層20及び非磁性元素のイオン23には、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Ru、B、C、Si、Geのうちのいずれかの材料を用いた。
【0037】
実施例1と同じヘッドを用いてMwwを評価した。結果を図35〜37に示す。まず、非磁性元素の照射量が最も少ない点では、各元素ともMwwの値は85nm程度で、実施例1の同じ照射量におけるMwwと同程度の値であった。非磁性元素のイオン23の照射量が1×1016/cm2以下の領域では、各元素とも照射量に従ってMwwが徐々に減少する様子が確認できたものの、Mwwの値には多少のばらつきがあった。しかし、非磁性元素のイオン23の照射量が1×1016/cm2以上の領域では、各元素ともMwwは70nm程度の値となり、実施例1の同じ照射量におけるMwwと同程度の値となった。
【0038】
すなわち、各元素とも照射量を1×1016/cm2以上とすることで、実施例1の場合と同等のトラック密度が得られることが確認できた。
【0039】
ただし、Mo、W、V、Nb、Ti、Zr、Hf、Ruを用いた媒体では、信頼性上問題のないレベルではあったが、Crを用いた場合に比べ耐食性が若干劣化した。B、C、Si、Geを用いた場合は浮上性に明確に影響するほどのレベルではなかったが、非磁性層20形成後の媒体表面粗さが若干大きくなった。ただし、Cを用いた媒体は実施例1に比べ耐食性がさらに良好であった。非磁性層20にTaを用いた場合は、耐食性や表面粗さも実施例1の媒体と同等の媒体が得られた。
【0040】
[比較例1]
実施例1の非磁性層20を形成しないディスクリートトラック媒体を以下の方法で作製し評価した。
【0041】
実施例1と同様の方法にて第二磁性層19まで形成した後、実施例1と同様の方法にてレジストパターン21′を形成した(図9)。実施例1と同様の方法で非磁性元素のイオン23としてCrイオンを照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部に非磁性元素の含有率が高い部分24を形成した(図10)。ただし、Crの照射量は1×1015〜1×1017/cm2とした。
【0042】
その後、実施例1と同様にレジストパターン21′を除去し、DLC保護膜25を4nm形成し、潤滑膜26を形成した(図11)。ここでは、磁性層とヘッド間の距離を実施例1の媒体と合わせるため、DLC保護膜25の膜厚を厚くしてある。
【0043】
実施例1の媒体を評価したヘッドと同じものを用い、スピンスタンドにてMwwを評価した。結果を図38に示す。
【0044】
実施例1で十分にMwwを低減できた照射量1×1016/cm2以上の領域において、本比較例の媒体はMwwが広くなることが確認された。これは、実施例1のように非磁性層20がある場合は非磁性層20からも非磁性原子(ここではCr)が拡散するために、トラック分離域24の非磁性原子の濃度がトラック間を分離するのに十分な濃度となるが、非磁性層20がない場合は非磁性層20からの非磁性原子の拡散がないため、トラック分離域24の非磁性原子の濃度が不十分となり、トラック間を十分に分離できなかったためである。ただし、照射量を7×1016/cm2以上まで増やした場合、Mwwは70nm程度まで減少し、実施例1の照射量1×1016/cm2以上とした媒体と同程度となった。
【0045】
本比較例のCrイオンの照射量を1×1017/cm2とした媒体と、実施例1のCrイオンの照射量を2×1016/cm2とした媒体に関して、スピンスタンドを用いて出力の経時変化を測定し、熱減磁特性を評価した。測定時の温度は70℃、線記録密度は24kFC/mmとし、10000秒後の出力を記録直後の出力と比較することで評価した。実施例1の照射量を2×1016/cm2とした媒体では、10000秒後の出力は記録直後に比べ1%程度の出力減少量だった。それに対し、本比較例の照射量を1×1017/cm2とした媒体の出力減少量は約5%となり、実施例1の媒体に比べ熱減磁の進行が約5倍も速いことが確認された。
【0046】
以上のような熱減磁特性の違いは以下のように説明できる。非磁性元素(ここではCr)のイオン23の照射量が少ない場合は、照射されたイオンが記録トラック部分にまで拡散する量も少ないため、記録トラック部分の磁気特性が変化するほどのダメージはない。しかし、イオンの照射量が増加すると記録トラック部分へイオンが拡散する量が増えるため、記録トラック部分の保磁力が減少し熱減磁特性が大きく悪化したものである。
【0047】
なお、上述したような非磁性層20から非磁性原子が拡散する現象は、非磁性層の膜厚が変わっても同様に発現する。非磁性層20が薄くなる場合は特に問題ないが、厚くなる場合は磁気ヘッドと記録媒体の間のスペーシングロスが大きくなり記録再生特性が劣化してしまう。その場合、DLC保護膜25を薄くしてスペーシングを調整することも可能だが、極端に保護膜厚が薄くなると膜のカバレッジが悪くなり信頼性を損なう。信頼性を考慮した場合、DLC保護膜厚は2nm以上必要であるため、スペーシングを極端に悪化させない条件として実施例1などでは非磁性層20の厚さは2nmとしている。
【0048】
[比較例2]
実施例1の非磁性層20の主成分と照射する非磁性元素のイオン23を異なる元素にしたディスクリートトラック媒体を以下の方法で作製し評価した。
【0049】
実施例1と同様の方法にて第二磁性層19まで形成した後、非磁性層20としてMo層を2nm積層した(図1)。その後、実施例1と同様の方法にてレジストパターン21′を形成した(図5)。その後、実施例1と同様の方法で非磁性元素のイオン23としてCrイオンを照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部にトラック分離域24を形成した(図6)。その後、実施例1と同様にレジストパターン21′を除去し、DLC保護膜25を形成し、潤滑膜26を形成した(図8)。
【0050】
実施例1と同様の方法でMwwを評価した。結果を図39に示す。本比較例の媒体は、特に照射量が1×1016/cm2以上の領域において、実施例1の媒体よりもMwwが広くなったが、比較例1の媒体よりは狭くなった。これは、非磁性層20の主成分と照射する非磁性元素のイオン23が異なるため、非磁性層20からの原子の拡散の仕方が変化したことが原因である。
【0051】
また、本比較例の媒体は実施例1の媒体に比べて記録トラック部分の耐食性が大きく劣化した。これは、イオン化傾向の異なる元素が媒体表面とトラック間に配置されたことが原因である。
【0052】
[実施例3]
以下に示す方法でディスクリートトラック媒体を作製し評価した。
実施例1と同様の方法にて第二磁性層19まで形成した後、第一マスク層27としてC層を50nm、第二マスク層28としてTa層を20nm形成した(図12)。その後、実施例1と同様の方法でレジストパターン21′を形成した(図13)。その後、CF4ガスを用いたRIEにて、レジストパターン21′の開口部の下にある第二マスク層28をエッチングし、第二マスク層28にレジストパターンを転写した(図14)。その後、酸素を用いたRIEを用いて、レジストパターン21′及び第二マスク層28の開口部の下にある第一マスク層27をエッチングし、第二マスク層28のパターンを第一マスク層27に転写した(図15)。この第一マスク層27のパターンを形成する際の酸素を用いたRIEで、レジストパターン21′はすべて除去された。
【0053】
その後、第二マスク層28上部及び開口部の下にある第二磁性層19上部に非磁性層20としてTa層を2nm形成した(図16)。その後、プラズマビームを用いて非磁性元素のイオン23としてTaイオンを媒体に照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部に非磁性元素(ここではTa)の含有率が高い部分24を形成した(図17)。Taイオン照射時の加速電圧は28kVとし、照射量は1×1015〜4×1016/cm2とした。その後、CF4ガスを用いたRIEにて第二マスク層28及び非磁性層20を除去し、さらに酸素を用いたRIEにて第一マスク層27を除去した(図18)。その後、実施例1と同様の方法でDLC保護膜25を4nm形成し、潤滑膜26を形成した(図19)。
【0054】
実施例1と同様の方法でMwwを評価した。結果を図40に示す。非磁性元素のイオン23の照射量に対するMwwの依存性は実施例1と同様の傾向を示した。すなわち、照射量が最も少ない点ではMwwは85nm程度で、それから照射量を増加させると照射量が1×1016/cm2になるまではMwwが徐々に減少した。照射量が1×1016/cm2以上の領域でMwwの値は70nm前後の値でほぼ一定となった。
【0055】
すなわち、本実施例の方法において、非磁性元素のイオン23の照射量を1×1016/cm2以上とすることで、実施例1の場合と同等のトラック密度が得られることが確認できた。
【0056】
[実施例4]
以下に示す方法でディスクリートトラック媒体を作製し評価した。
実施例1と同様の方法にて第一磁性層18まで形成した後、非磁性層20として70at.%Ru−30at.%Cr層を1nm、第二磁性層19として64at.%Co−12at.%Cr−14at.%Pt−10at.%B合金層を6nm順次積層した(図20)。その上に実施例1と同様の方法でレジストパターン21′を形成した(図21)。
【0057】
その後、プラズマビームを用いて非磁性元素のイオン23としてRuイオンを媒体に照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部に非磁性元素(ここではRu)の含有率が高い部分24を形成した(図22)。Ruイオン照射時の加速電圧は23kVとし、照射量は1×1015〜4×1016/cm2とした。その後、実施例1と同様にレジストパターン21′を除去し、DLC保護膜25を4nm形成し、潤滑膜26を形成した(図23)。
【0058】
実施例1と同様の方法でMwwを評価した。結果を図41に示す。非磁性元素のイオン23の照射量に対するMwwの依存性は実施例1と同様の傾向を示した。すなわち、照射量が最も少ない点ではMwwは85nm程度で、それから照射量を増加させると照射量が1×1016/cm2になるまではMwwが徐々に減少した。照射量が1×1016/cm2以上の領域でMwwの値は70nm前後の値でほぼ一定となった。
【0059】
本実施例の方法で実施例1と同等のMwwを示す媒体が得られるのは、非磁性層20を第一磁性層18と第二磁性層19の間に形成しても、実施例1と同様に非磁性元素のイオン23照射時に非磁性層20からの非磁性原子(本実施例ではRu)の拡散があるためである。この非磁性原子が非磁性層20から拡散する現象は非磁性層20の膜厚が変わっても同様に発現するが、本実施例のように磁性層の間に形成する場合は、磁性層の結晶配向性の劣化や磁性層間の磁気結合が極端に弱くなることで記録再生特性を悪化させることを防ぐため、非磁性層20の膜厚は2nm以下とする必要がある。
【0060】
すなわち、本実施例の方法において、非磁性元素のイオン23の照射量を1×1016/cm2以上とすることで、実施例1の場合と同等のトラック密度が得られることが確認できた。
【0061】
[実施例5]
実施例4の非磁性層20及び非磁性元素のイオン23を他の材料に変えたディスクリートトラック媒体を作製した。非磁性層20の材料及び照射する非磁性元素23として、Ti、Cr、Mo、Wを用い、実施例4と同様に媒体を作製した。
【0062】
実施例4と同様の方法でMwwを評価した結果を図42に示す。まず、非磁性元素の照射量が最も少ない点では、各元素ともMwwの値は85nm程度で、実施例4の同じ照射量におけるMwwと同程度の値であった。非磁性元素のイオン23の照射量が1×1016/cm2以下の領域では、各元素とも照射量に従ってMwwが徐々に減少する様子が確認できたものの、Mwwの値には多少のばらつきがあった。しかし、非磁性元素のイオン23の照射量が1×1016/cm2以上の領域では、各元素ともMwwは70nm程度の値となり、実施例4の同じ照射量におけるMwwと同程度の値となった。
【0063】
すなわち、各元素とも照射量を1×1016/cm2以上とすることで、実施例4の場合と同等のトラック密度が得られることが確認できた。
【0064】
[実施例6]
以下に示す方法でビットパターン媒体を作製した。
実施例1と同様の方法にて第二磁性層19まで形成した後、非磁性層20としてC層を2nm形成した(図24)。その上にレジスト21を塗布し、ドットパターンが形成されたスタンパー22をレジスト21に押し付けることによってレジスト21にパターンを転写した(図25〜27)。パターンの溝部分のレジスト残膜を酸素アッシングで除去し、ドットピッチ80nm、ドット幅40nm、高さ120nmのレジストパターン21′を形成した(図28)。その後、プラズマビームを用いて非磁性元素のイオン23としてCイオンを媒体に照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部に非磁性元素(ここではC)の含有率が高い部分24を形成した(図29)。Cイオン照射時の加速電圧は28kVとし、照射量は1×1015〜4×1016/cm2とした。その後、酸素を用いたRIEにてレジストパターン21′と非磁性層20を除去し、実施例1と同様の方法でDLC保護膜25を4nm形成した(図30〜31)。
【0065】
ビットパターン媒体に関しては、RW評価を実施可能なシステムがなかったため、実施例1で実施した元素分析と同様の方法で、イオン照射量を1×1016/cm2とした媒体に関してトラック分離域24と記録トラック部分のCの濃度を分析した。なお、本実施例ではRW評価をしなかったため、媒体に潤滑膜は形成しなかった。
【0066】
トラック分離域24において、面垂直方向に第二磁性層19の上部付近の位置(図43のP1の位置)から第二配向制御層17の上部付近の位置(図43のP2の位置)まで分析した。記録トラック部分において、面垂直方向に第二磁性層19の上部付近の位置(図43のP3の位置)から第二配向制御層17の上部付近の位置(図43のP4の位置)まで分析した。分析にはエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いた。
【0067】
分析結果を図44に示す。トラック分離域24に関しては、第一磁性層18及び第二磁性層19におけるC濃度はほぼどの位置でも15at.%を越えていた。磁性層に含まれるCrの濃度が15at.%程度で、かつBやSiO2も8at.%(もしくはmol.%)程度含まれていることから、非磁性材料は磁性膜中のどの位置においても40at.%前後含まれていることが確認された。この程度の非磁性材料の濃度の場合、磁性層の磁化はほぼ失われるため、トラック分離域は記録トラック間を十分に分離できていると言える。記録トラック部分からはCは特に検出されず、測定ノイズ程度の値しか現れなかった。
【0068】
以上により、本実施例の方法でビットパターン媒体が作製できていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図2】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図3】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図4】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図5】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図6】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図7】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図8】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図9】比較例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図10】比較例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図11】比較例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図12】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図13】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図14】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図15】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図16】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図17】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図18】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図19】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図20】実施例4による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図21】実施例4による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図22】実施例4による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図23】実施例4による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図24】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図25】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図26】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図27】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図28】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図29】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図30】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図31】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図32】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図33】媒体の元素分析を実施したときの分析位置を示す模式図。
【図34】媒体の元素分析結果を示す模式図。
【図35】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図36】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図37】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図38】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図39】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図40】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図41】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図42】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図43】媒体の元素分析を実施したときの分析位置を示す模式図。
【図44】媒体の元素分析結果を示す模式図。
【符号の説明】
【0070】
10:基板
11:密着層、
12:第一軟磁性層
13:反強磁性結合層
14:第二軟磁性層
15:下地層
16:第一結晶配向制御層
17:第二結晶配向制御層
18:第一磁性層
19:第二磁性層
20:非磁性層
21:レジスト
21′:レジストパターン
22:スタンパー
23:非磁性元素のイオン
24:トラック分離域
25:DLC保護膜
26:潤滑膜
27:第一マスク層
28:第二マスク層
【技術分野】
【0001】
本発明は、高記録密度に適したディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体に代表されるパターン媒体に関わり、特にトラックガイド分離域に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータで利用される情報量の増大や、映像記録機器、カーナビゲーションシステム等への用途拡大により、磁気記録再生装置はさらなる大容量化・高性能化の要求が高まっている。高記録密度化のためには磁気記録媒体の磁化反転単位を小さくし、媒体ノイズを低減する必要がある。その方法として従来の磁気記録媒体では、磁気記録層を構成する強磁性結晶粒があらかじめ磁気記録層に含まれる非磁性材料で分離される構造が採用された。
【0003】
現在、より積極的にこの分離域を制御し磁気記録密度を向上する案として、記録トラック間に分離加工を施したディスクリートトラック媒体、さらには、記録ビット間にも分離加工を施したビットパターン媒体が研究開発されており、いずれの場合も分離域形成加工技術が高記録密度化の重要なポイントとなっている。例えば、ディスクリートトラック媒体においては、分離域形成加工技術として基板に予め同心円状に凹凸形状を形成しておき、その上に磁性膜を形成することで、凹凸形状の磁性膜を形成する基板加工型や、磁性膜にマスクを施し凹部とすべき部分をエッチングすることによって凹凸形状を施す磁性膜加工型が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの技術において、凹部には非磁性材料を埋め戻し、さらにその表面を凸部となる磁性膜の高さにあわせて平坦化し、さらに平坦化した面に保護膜を形成するといった複数のプロセス工程を有することで、磁性膜や保護膜の表面に発生する異物の増加、表面粗さの増加という新たな問題が発生し、高記録密度化のためのもう一つのポイントとなる磁気ヘッドと磁気ディスクの隙間狭小化(ナノスペーシング化)を妨げてしまう。
【0005】
これらを解決する手段として、イオン注入を用いて分離域を形成する方法が試みられている。例えば、特許文献1では、ディスクリートトラック媒体の記録トラック間の分離域を、磁性層に窒素イオン等を打ち込むことによって非磁性化することで形成する方法が開示されている。この方法を用いれば、トラック密度を向上し、記録密度を向上できるとされている。
【0006】
また、特許文献2では、磁性膜上に形成したカーボンなどからなるイオンバッファ層を介してCrなどの元素をイオン注入し、熱処理を施すことによってイオンを注入した領域の保磁力を低下させて分離域を形成する方法が開示されている。この方法を用いれば、磁性層の厚み方向に対するイオン注入濃度を制御して、強磁性領域を特定領域に集中させることができるとされている。
【0007】
【特許文献1】特許第3034879号
【特許文献2】特開2006−309841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体において、記録トラック間や記録ビット間を分離する方法は重要な課題である。
【0009】
上記文献のような方法を用いる場合、分離域の磁性を変化させ記録トラックに書きにじみがないようにしてトラック密度を向上するためには多量のイオンを注入する必要がある。その場合、一部のイオンが記録トラック部分にまで拡散し、記録トラックの磁気特性が変化することにより、出力が大きく減少するなど記録再生特性が劣化する問題がある。熱処理を用いる場合も、一部のイオンが記録トラック部分にまで拡散し、記録トラックの磁気特性が変化することにより、出力が大きく減少するなど記録再生特性が劣化する問題がある。また、イオンバッファ層などを用いた場合は、イオンバッファ層を構成する元素と注入イオンの元素が異なる場合、各元素のイオン化傾向に差があるため、耐食性が劣化する問題がある。
【0010】
本発明の目的は、良好な記録再生特性と信頼性を両立したディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体を作製することである。特に、イオン注入によってディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体の分離域を形成する場合において、記録トラックや記録ビットに対するダメージがないように注入イオンを制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の磁気記録媒体においては、基板上に直接もしくは間接的に形成された磁気記録層を有し、磁気記録層は非磁性元素を含有し、磁気記録層面内方向に非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在し、磁気記録層の上部に磁気記録層に含まれる非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を有することを特徴とする。
【0012】
磁気記録層面内方向に非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在するようにする方法として、磁気記録層に含まれる非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を磁気記録層上部に形成し、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成するための開口部を有するマスク層を非磁性層上部に形成し、マスク層をマスクとして非磁性元素を非磁性層を介してイオン注入することで、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成するとよい。
【0013】
磁気記録層面内方向に非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在するようにする方法として、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成するための開口部を有するマスク層を磁気記録層上部に形成し、非磁性元素と同元素を主成分とする非磁性層をマスク層上部およびマスク層開口部の下にある磁気記録層上部に形成し、マスク層をマスクとして非磁性元素を非磁性層を介してイオン注入することで、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成する方法を用いてもよい。
【0014】
また、磁気記録層が複数の磁性層を有する場合、非磁性層を磁気記録層の上部ではなく、複数の磁性層の少なくとも2層の間に形成してもよい。この場合、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成するための開口部を有するマスク層を非磁性層上部に形成し、マスク層をマスクとして非磁性元素をイオン注入することで、磁気記録層の非磁性元素の含有率が高い部分を形成する方法を用いるとよい。
【0015】
磁気記録層の非磁性元素の含有率の高い部分と低い部分をおおむね同心円状に形成することにより、ディスクリートトラック媒体を作製することができる。また、磁気記録層の非磁性元素の含有率が低い部分がおおむね同心円状に並んだドット状に形成することにより、ビットパターン媒体を作製することができる。
【0016】
非磁性元素として、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Ru、B、C、Si、Geからなる群から選ばれるいずれかの元素を用いるとよい。非磁性層厚は2nm以下であることが望ましい。非磁性層を磁気記録層上部に形成する場合、非磁性層の主成分がCr、Ta及びCのいずれかの元素であることが望ましい。
【0017】
磁気記録層が複数の磁性層を有し、非磁性層を磁気記録層の上部ではなく、複数の磁性層の少なくとも2層の間に形成する場合、非磁性層の主成分がRu、Ti、Cr、Mo、Wのいずれかの元素であることが望ましい。
【0018】
非磁性層を磁気記録層上部に形成する場合、マスク層を除去する工程の前後、もしくは同時に非磁性層を除去してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好な記録再生特性と信頼性を両立したディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[実施例1]
図1〜8を参照して、本発明の実施例1による磁気記録媒体及びその製造方法の一例を示す。本実施例ではディスクリートトラック媒体を作製し、磁気的書き込み幅Mww(Magnetic Write Width)の評価を行っている。
【0021】
図1を参照して説明する。基板10として、硼珪酸ガラス、或いはアルミノシリケートガラスからなる基板表面を化学強化した基板を洗浄後、乾燥して用いた。化学強化したガラス基板に替え、アルミニウム合金基板上にNi−Pめっき後表面研磨した基板やSiやTi合金からなる剛体基板を用いることもできる。
【0022】
前記工程を経た基板上に密着層11として50at.%Al−50at.%Ti合金層を5nm、第一軟磁性層12として51at.%Fe−34at.%Co−10at.%Ta−5at.%Zr合金層を15nm、反強磁性結合層13としてRu層を0.5nm、第二軟磁性層14として51at.%Fe−34at.%Co−10at.%Ta−5at.%Zr合金層を15nm、下地層15として50at.%Cr−50at.%Ti合金層を2nm、第一配向制御層16として94at.%Ni−6at.%W合金層を7nm、第二配向制御層17としてRu層を17nm、第一磁性層18として59mol.%Co−16mol.%Cr−17mol.%Pt−8mol.% SiO2合金層を13nm、第二磁性層19として63at.%Co−15at.%Cr−14at.%Pt−8at.%B合金層を6nm、非磁性層20としてCr層を2nm順次積層した(図1)。
【0023】
上記各層の成膜には真空中で基板を搬送し、上記のような複数の層を連続成膜可能な枚様式のスパッタリング装置を用いた。所望の膜組成と同じ組成の合金ターゲットを用意し、それをスパッタすることで上記のような合金層を成膜した。成膜時のArガス圧は第二配向制御層17と第一磁性層18以外の層を成膜する際は1Paとした。第二配向制御層17を成膜する際のArガス圧は、第二配向制御層17の下部側9nmを1Paで成膜し、上部側8nmを5Paで成膜した。第一磁性層18成膜時はArに酸素を加えて成膜した。それぞれの分圧はArを4Pa、酸素を0.2Paとした。
【0024】
前記工程を経た媒体にレジスト21を塗布した後、記録トラックとサーボエリアの形状と同様のパターンが形成されたスタンパー22をレジスト21に押し付けることによって、レジスト21にパターンを転写した(図2〜4)。パターン転写後のレジスト21の溝部分のレジスト残膜を酸素を用いたRIE(Reactive Ion Etching)にて除去し、トラックピッチ120nm、トラック幅60nm、高さ150nmのレジストパターン21′を形成した(図5)。このレジストパターンには型押しによって同時に形成されたサーボエリアのパターンも含まれる。
【0025】
レジストパターン形成後、非磁性元素のイオン23としてCrイオンを媒体に照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部にトラック分離域24として非磁性元素Crの含有率が高い部分を形成した(図6)。
【0026】
イオンを媒体に照射する方法としては、照射する非磁性元素(ここではCr)を主成分とする陰極のアーク放電によりプラズマを生成し、生成したプラズマを湾曲した磁場ダクトにより輸送して、媒体にプラズマビームを照射する方法を用いた。あるいは、非磁性元素のイオンを照射する方法としてイオンビーム源を利用してもよい。Crイオン照射時の加速電圧は28kVとし、照射量は1×1015〜4×1016/cm2とした。
【0027】
Crイオン照射後、酸素を用いたRIEにてレジストパターン21′を除去し(図7)、CVDにてDLC(Diamond-like Carbon)保護膜25を2nm成膜し、パーフルオロアルキルポリエーテルを主成分とする潤滑剤を塗布して厚さ1nmの潤滑膜26を形成した(図8)。DLC保護膜の代わりに、スパッタリングによるカーボン保護膜や、磁場フィルタによるイオン輸送機構を備えたカソーディックアーク法を用いて形成したta−C(Tetrahedral Amorphous Carbon)保護膜などを用いることもできる。DLC保護膜成膜時の成膜ガスはC2H2にN2Oを混合したガスを使用した。
【0028】
作製した媒体のMwwを、スピンスタンドを用いて評価した。磁気ヘッドは再生トラック幅Twr(Track Width of Reader)が50nm、書き込み幅Tww(Track Width of Writer)が70nmのものを用いた。
【0029】
結果を図32に示す。Mwwは照射量が少ない3×1015/cm2以下のところではほぼ一定で、それ以降照射量が増えるに従って徐々にMwwが減少し、照射量が1×1016/cm2以上になるとMwwはほぼ一定となった。Crの照射量が最も少ない点でMwwが85nm以上あったのに対し、照射量が1×1016/cm2以上の領域ではMwwは70nm程度と大きく減少したことから、トラック幅を狭くしトラック密度を大きく向上できることが確認された。
【0030】
以上のようなMwwの変化の傾向は以下のように説明できる。照射量が少ない3×1015/cm2以下のMwwがほぼ一定の領域は、トラック分離域24における非磁性原子の濃度の増加が小さく磁性があまり変化しないため、トラック間を十分に分離できていない領域である。その後、照射量が増加してMwwがともに減少していく領域では、照射量に従ってトラック分離域24の非磁性原子の濃度が増加し、トラック分離域24の磁化が徐々に減少することで、トラック間の磁気的な結合が弱まっていきMwwが徐々に減少していく領域である。照射量が1×1016/cm2以上でMwwがほぼ一定になる領域では、トラック分離域24の磁化が十分に小さくなるまで非磁性原子の濃度が高くなり、トラック間を十分に分離できている領域である。
【0031】
本実施例のうち、Crイオンの照射量が2×1016/cm2のサンプルに関して、トラック分離域24と記録トラック部分におけるCr濃度を分析した。分析にはエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いた。トラック分離域の分析は、トラック分離域の面内方向中ほどの位置において、面垂直方向に非磁性層20の中ほどの位置(図33のP1の位置)から第二配向制御層17の上部付近の位置(図33のP2の位置)まで実施した。記録トラック部分の分析は同様に、記録トラック部分の面内方向中ほどの位置において、面垂直方向に非磁性層20の中ほどの位置(図33のP3の位置)から第二配向制御層17の上部付近の位置(図33のP4の位置)まで実施した。
【0032】
分析結果を図34に示す。トラック分離域24に関しては、第一磁性層18及び第二磁性層19におけるCr濃度はどの位置でも30at.%を越えていた。Co−Cr合金においてCrが30at.%以上ある場合、磁化はほぼ失われる。すなわち、トラック分離域24の磁化はほぼ失われており、この結果からもトラック分離域24が記録トラック間を十分に分離するように形成されていることが確認された。
【0033】
一方、記録トラック部分に関して、第一磁性層18及び第二磁性層19におけるCr濃度はどの位置でも15at.%前後で、スパッタした合金の組成とほぼ同じ値であることが確認された。
【0034】
なお、トラック分離域24において、第二配向制御層17の一部にまで注入したCrが入ってしまっているが特に問題はない。
【0035】
以上より、本実施例においてCrイオンを1×1016/cm2以上照射することにより、トラック密度を十分に向上できることが確認された。
【0036】
[実施例2]
実施例1の非磁性層20及び非磁性元素のイオン23を他の元素に変えて、実施例1と同様にディスクリートトラック媒体を作製した。非磁性層20及び非磁性元素のイオン23には、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Ru、B、C、Si、Geのうちのいずれかの材料を用いた。
【0037】
実施例1と同じヘッドを用いてMwwを評価した。結果を図35〜37に示す。まず、非磁性元素の照射量が最も少ない点では、各元素ともMwwの値は85nm程度で、実施例1の同じ照射量におけるMwwと同程度の値であった。非磁性元素のイオン23の照射量が1×1016/cm2以下の領域では、各元素とも照射量に従ってMwwが徐々に減少する様子が確認できたものの、Mwwの値には多少のばらつきがあった。しかし、非磁性元素のイオン23の照射量が1×1016/cm2以上の領域では、各元素ともMwwは70nm程度の値となり、実施例1の同じ照射量におけるMwwと同程度の値となった。
【0038】
すなわち、各元素とも照射量を1×1016/cm2以上とすることで、実施例1の場合と同等のトラック密度が得られることが確認できた。
【0039】
ただし、Mo、W、V、Nb、Ti、Zr、Hf、Ruを用いた媒体では、信頼性上問題のないレベルではあったが、Crを用いた場合に比べ耐食性が若干劣化した。B、C、Si、Geを用いた場合は浮上性に明確に影響するほどのレベルではなかったが、非磁性層20形成後の媒体表面粗さが若干大きくなった。ただし、Cを用いた媒体は実施例1に比べ耐食性がさらに良好であった。非磁性層20にTaを用いた場合は、耐食性や表面粗さも実施例1の媒体と同等の媒体が得られた。
【0040】
[比較例1]
実施例1の非磁性層20を形成しないディスクリートトラック媒体を以下の方法で作製し評価した。
【0041】
実施例1と同様の方法にて第二磁性層19まで形成した後、実施例1と同様の方法にてレジストパターン21′を形成した(図9)。実施例1と同様の方法で非磁性元素のイオン23としてCrイオンを照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部に非磁性元素の含有率が高い部分24を形成した(図10)。ただし、Crの照射量は1×1015〜1×1017/cm2とした。
【0042】
その後、実施例1と同様にレジストパターン21′を除去し、DLC保護膜25を4nm形成し、潤滑膜26を形成した(図11)。ここでは、磁性層とヘッド間の距離を実施例1の媒体と合わせるため、DLC保護膜25の膜厚を厚くしてある。
【0043】
実施例1の媒体を評価したヘッドと同じものを用い、スピンスタンドにてMwwを評価した。結果を図38に示す。
【0044】
実施例1で十分にMwwを低減できた照射量1×1016/cm2以上の領域において、本比較例の媒体はMwwが広くなることが確認された。これは、実施例1のように非磁性層20がある場合は非磁性層20からも非磁性原子(ここではCr)が拡散するために、トラック分離域24の非磁性原子の濃度がトラック間を分離するのに十分な濃度となるが、非磁性層20がない場合は非磁性層20からの非磁性原子の拡散がないため、トラック分離域24の非磁性原子の濃度が不十分となり、トラック間を十分に分離できなかったためである。ただし、照射量を7×1016/cm2以上まで増やした場合、Mwwは70nm程度まで減少し、実施例1の照射量1×1016/cm2以上とした媒体と同程度となった。
【0045】
本比較例のCrイオンの照射量を1×1017/cm2とした媒体と、実施例1のCrイオンの照射量を2×1016/cm2とした媒体に関して、スピンスタンドを用いて出力の経時変化を測定し、熱減磁特性を評価した。測定時の温度は70℃、線記録密度は24kFC/mmとし、10000秒後の出力を記録直後の出力と比較することで評価した。実施例1の照射量を2×1016/cm2とした媒体では、10000秒後の出力は記録直後に比べ1%程度の出力減少量だった。それに対し、本比較例の照射量を1×1017/cm2とした媒体の出力減少量は約5%となり、実施例1の媒体に比べ熱減磁の進行が約5倍も速いことが確認された。
【0046】
以上のような熱減磁特性の違いは以下のように説明できる。非磁性元素(ここではCr)のイオン23の照射量が少ない場合は、照射されたイオンが記録トラック部分にまで拡散する量も少ないため、記録トラック部分の磁気特性が変化するほどのダメージはない。しかし、イオンの照射量が増加すると記録トラック部分へイオンが拡散する量が増えるため、記録トラック部分の保磁力が減少し熱減磁特性が大きく悪化したものである。
【0047】
なお、上述したような非磁性層20から非磁性原子が拡散する現象は、非磁性層の膜厚が変わっても同様に発現する。非磁性層20が薄くなる場合は特に問題ないが、厚くなる場合は磁気ヘッドと記録媒体の間のスペーシングロスが大きくなり記録再生特性が劣化してしまう。その場合、DLC保護膜25を薄くしてスペーシングを調整することも可能だが、極端に保護膜厚が薄くなると膜のカバレッジが悪くなり信頼性を損なう。信頼性を考慮した場合、DLC保護膜厚は2nm以上必要であるため、スペーシングを極端に悪化させない条件として実施例1などでは非磁性層20の厚さは2nmとしている。
【0048】
[比較例2]
実施例1の非磁性層20の主成分と照射する非磁性元素のイオン23を異なる元素にしたディスクリートトラック媒体を以下の方法で作製し評価した。
【0049】
実施例1と同様の方法にて第二磁性層19まで形成した後、非磁性層20としてMo層を2nm積層した(図1)。その後、実施例1と同様の方法にてレジストパターン21′を形成した(図5)。その後、実施例1と同様の方法で非磁性元素のイオン23としてCrイオンを照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部にトラック分離域24を形成した(図6)。その後、実施例1と同様にレジストパターン21′を除去し、DLC保護膜25を形成し、潤滑膜26を形成した(図8)。
【0050】
実施例1と同様の方法でMwwを評価した。結果を図39に示す。本比較例の媒体は、特に照射量が1×1016/cm2以上の領域において、実施例1の媒体よりもMwwが広くなったが、比較例1の媒体よりは狭くなった。これは、非磁性層20の主成分と照射する非磁性元素のイオン23が異なるため、非磁性層20からの原子の拡散の仕方が変化したことが原因である。
【0051】
また、本比較例の媒体は実施例1の媒体に比べて記録トラック部分の耐食性が大きく劣化した。これは、イオン化傾向の異なる元素が媒体表面とトラック間に配置されたことが原因である。
【0052】
[実施例3]
以下に示す方法でディスクリートトラック媒体を作製し評価した。
実施例1と同様の方法にて第二磁性層19まで形成した後、第一マスク層27としてC層を50nm、第二マスク層28としてTa層を20nm形成した(図12)。その後、実施例1と同様の方法でレジストパターン21′を形成した(図13)。その後、CF4ガスを用いたRIEにて、レジストパターン21′の開口部の下にある第二マスク層28をエッチングし、第二マスク層28にレジストパターンを転写した(図14)。その後、酸素を用いたRIEを用いて、レジストパターン21′及び第二マスク層28の開口部の下にある第一マスク層27をエッチングし、第二マスク層28のパターンを第一マスク層27に転写した(図15)。この第一マスク層27のパターンを形成する際の酸素を用いたRIEで、レジストパターン21′はすべて除去された。
【0053】
その後、第二マスク層28上部及び開口部の下にある第二磁性層19上部に非磁性層20としてTa層を2nm形成した(図16)。その後、プラズマビームを用いて非磁性元素のイオン23としてTaイオンを媒体に照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部に非磁性元素(ここではTa)の含有率が高い部分24を形成した(図17)。Taイオン照射時の加速電圧は28kVとし、照射量は1×1015〜4×1016/cm2とした。その後、CF4ガスを用いたRIEにて第二マスク層28及び非磁性層20を除去し、さらに酸素を用いたRIEにて第一マスク層27を除去した(図18)。その後、実施例1と同様の方法でDLC保護膜25を4nm形成し、潤滑膜26を形成した(図19)。
【0054】
実施例1と同様の方法でMwwを評価した。結果を図40に示す。非磁性元素のイオン23の照射量に対するMwwの依存性は実施例1と同様の傾向を示した。すなわち、照射量が最も少ない点ではMwwは85nm程度で、それから照射量を増加させると照射量が1×1016/cm2になるまではMwwが徐々に減少した。照射量が1×1016/cm2以上の領域でMwwの値は70nm前後の値でほぼ一定となった。
【0055】
すなわち、本実施例の方法において、非磁性元素のイオン23の照射量を1×1016/cm2以上とすることで、実施例1の場合と同等のトラック密度が得られることが確認できた。
【0056】
[実施例4]
以下に示す方法でディスクリートトラック媒体を作製し評価した。
実施例1と同様の方法にて第一磁性層18まで形成した後、非磁性層20として70at.%Ru−30at.%Cr層を1nm、第二磁性層19として64at.%Co−12at.%Cr−14at.%Pt−10at.%B合金層を6nm順次積層した(図20)。その上に実施例1と同様の方法でレジストパターン21′を形成した(図21)。
【0057】
その後、プラズマビームを用いて非磁性元素のイオン23としてRuイオンを媒体に照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部に非磁性元素(ここではRu)の含有率が高い部分24を形成した(図22)。Ruイオン照射時の加速電圧は23kVとし、照射量は1×1015〜4×1016/cm2とした。その後、実施例1と同様にレジストパターン21′を除去し、DLC保護膜25を4nm形成し、潤滑膜26を形成した(図23)。
【0058】
実施例1と同様の方法でMwwを評価した。結果を図41に示す。非磁性元素のイオン23の照射量に対するMwwの依存性は実施例1と同様の傾向を示した。すなわち、照射量が最も少ない点ではMwwは85nm程度で、それから照射量を増加させると照射量が1×1016/cm2になるまではMwwが徐々に減少した。照射量が1×1016/cm2以上の領域でMwwの値は70nm前後の値でほぼ一定となった。
【0059】
本実施例の方法で実施例1と同等のMwwを示す媒体が得られるのは、非磁性層20を第一磁性層18と第二磁性層19の間に形成しても、実施例1と同様に非磁性元素のイオン23照射時に非磁性層20からの非磁性原子(本実施例ではRu)の拡散があるためである。この非磁性原子が非磁性層20から拡散する現象は非磁性層20の膜厚が変わっても同様に発現するが、本実施例のように磁性層の間に形成する場合は、磁性層の結晶配向性の劣化や磁性層間の磁気結合が極端に弱くなることで記録再生特性を悪化させることを防ぐため、非磁性層20の膜厚は2nm以下とする必要がある。
【0060】
すなわち、本実施例の方法において、非磁性元素のイオン23の照射量を1×1016/cm2以上とすることで、実施例1の場合と同等のトラック密度が得られることが確認できた。
【0061】
[実施例5]
実施例4の非磁性層20及び非磁性元素のイオン23を他の材料に変えたディスクリートトラック媒体を作製した。非磁性層20の材料及び照射する非磁性元素23として、Ti、Cr、Mo、Wを用い、実施例4と同様に媒体を作製した。
【0062】
実施例4と同様の方法でMwwを評価した結果を図42に示す。まず、非磁性元素の照射量が最も少ない点では、各元素ともMwwの値は85nm程度で、実施例4の同じ照射量におけるMwwと同程度の値であった。非磁性元素のイオン23の照射量が1×1016/cm2以下の領域では、各元素とも照射量に従ってMwwが徐々に減少する様子が確認できたものの、Mwwの値には多少のばらつきがあった。しかし、非磁性元素のイオン23の照射量が1×1016/cm2以上の領域では、各元素ともMwwは70nm程度の値となり、実施例4の同じ照射量におけるMwwと同程度の値となった。
【0063】
すなわち、各元素とも照射量を1×1016/cm2以上とすることで、実施例4の場合と同等のトラック密度が得られることが確認できた。
【0064】
[実施例6]
以下に示す方法でビットパターン媒体を作製した。
実施例1と同様の方法にて第二磁性層19まで形成した後、非磁性層20としてC層を2nm形成した(図24)。その上にレジスト21を塗布し、ドットパターンが形成されたスタンパー22をレジスト21に押し付けることによってレジスト21にパターンを転写した(図25〜27)。パターンの溝部分のレジスト残膜を酸素アッシングで除去し、ドットピッチ80nm、ドット幅40nm、高さ120nmのレジストパターン21′を形成した(図28)。その後、プラズマビームを用いて非磁性元素のイオン23としてCイオンを媒体に照射し、第一磁性層18及び第二磁性層19の一部に非磁性元素(ここではC)の含有率が高い部分24を形成した(図29)。Cイオン照射時の加速電圧は28kVとし、照射量は1×1015〜4×1016/cm2とした。その後、酸素を用いたRIEにてレジストパターン21′と非磁性層20を除去し、実施例1と同様の方法でDLC保護膜25を4nm形成した(図30〜31)。
【0065】
ビットパターン媒体に関しては、RW評価を実施可能なシステムがなかったため、実施例1で実施した元素分析と同様の方法で、イオン照射量を1×1016/cm2とした媒体に関してトラック分離域24と記録トラック部分のCの濃度を分析した。なお、本実施例ではRW評価をしなかったため、媒体に潤滑膜は形成しなかった。
【0066】
トラック分離域24において、面垂直方向に第二磁性層19の上部付近の位置(図43のP1の位置)から第二配向制御層17の上部付近の位置(図43のP2の位置)まで分析した。記録トラック部分において、面垂直方向に第二磁性層19の上部付近の位置(図43のP3の位置)から第二配向制御層17の上部付近の位置(図43のP4の位置)まで分析した。分析にはエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いた。
【0067】
分析結果を図44に示す。トラック分離域24に関しては、第一磁性層18及び第二磁性層19におけるC濃度はほぼどの位置でも15at.%を越えていた。磁性層に含まれるCrの濃度が15at.%程度で、かつBやSiO2も8at.%(もしくはmol.%)程度含まれていることから、非磁性材料は磁性膜中のどの位置においても40at.%前後含まれていることが確認された。この程度の非磁性材料の濃度の場合、磁性層の磁化はほぼ失われるため、トラック分離域は記録トラック間を十分に分離できていると言える。記録トラック部分からはCは特に検出されず、測定ノイズ程度の値しか現れなかった。
【0068】
以上により、本実施例の方法でビットパターン媒体が作製できていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図2】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図3】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図4】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図5】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図6】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図7】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図8】実施例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図9】比較例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図10】比較例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図11】比較例1による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図12】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図13】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図14】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図15】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図16】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図17】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図18】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図19】実施例3による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図20】実施例4による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図21】実施例4による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図22】実施例4による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図23】実施例4による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図24】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図25】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図26】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図27】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図28】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図29】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図30】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図31】実施例6による磁気記録媒体の製造工程を示す図。
【図32】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図33】媒体の元素分析を実施したときの分析位置を示す模式図。
【図34】媒体の元素分析結果を示す模式図。
【図35】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図36】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図37】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図38】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図39】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図40】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図41】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図42】磁気的書き込み幅Mwwの評価結果を示す図。
【図43】媒体の元素分析を実施したときの分析位置を示す模式図。
【図44】媒体の元素分析結果を示す模式図。
【符号の説明】
【0070】
10:基板
11:密着層、
12:第一軟磁性層
13:反強磁性結合層
14:第二軟磁性層
15:下地層
16:第一結晶配向制御層
17:第二結晶配向制御層
18:第一磁性層
19:第二磁性層
20:非磁性層
21:レジスト
21′:レジストパターン
22:スタンパー
23:非磁性元素のイオン
24:トラック分離域
25:DLC保護膜
26:潤滑膜
27:第一マスク層
28:第二マスク層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に直接もしくは間接的に形成された磁気記録層を有し、
前記磁気記録層は非磁性元素を含有し、
前記磁気記録層面内方向に前記非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在し、
前記磁気記録層の上部に前記非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
基板上に直接もしくは間接的に形成された、複数の磁性層からなる磁気記録層を有し、
前記磁気記録層は非磁性元素を含有し、
前記磁気記録層面内方向に前記非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在し、
前記磁気記録層の前記非磁性元素の含有率が低い部分は、前記磁気記録層を構成する複数の磁性層のうちの少なくとも2つの層の間に形成された非磁性層を有し、
前記非磁性層の主成分は前記非磁性元素と同じ元素であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の磁気記録媒体において、前記磁気記録層の前記非磁性元素の含有率の高い部分と低い部分がおおむね同心円状に形成あるいは前記非磁性元素の含有率の低い部分が同心円状に並んだドット状に形成されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】
請求項1又は2記載の磁気記録媒体おいて、前記非磁性元素はCr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Ru、B、C、Si、Geからなる群から選ばれるいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項5】
請求項1又は2記載の磁気記録媒体において、前記非磁性層は厚さが2nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項6】
請求項1記載の磁気記録媒体において、前記非磁性層の主成分がCr、Ta及びCのいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
請求項2記載の磁気記録媒体の製造方法において、前記非磁性層の主成分がRu、Ti、Cr、Mo、Wのいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
基板上に直接もしくは間接的に形成された磁気記録層を有し、前記磁気記録層は非磁性元素を含有し、前記磁気記録層面内方向に前記非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在する磁気記録媒体の製造方法であって、
基板上に磁気記録層を形成する工程と、
前記非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を形成する工程と、
前記磁気記録層の前記非磁性元素の含有率が高い部分を形成するための開口部を有するマスク層を形成する工程と、
前記マスク層をマスクとして前記非磁性層を介して前記磁性層に前記非磁性元素をイオン注入する工程と
を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を、前記磁気記録層の上部に形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を、前記マスク層を形成した後に形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項11】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記磁気記録層は複数の磁性層から構成され、
前記非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を、前記磁気記録層を構成する少なくとも2つの磁性層の間に形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項12】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記マスク層は、前記磁気記録層の前記非磁性元素の含有率の低い部分がおおむね同心円状あるいは同心円状に並んだドット状に形成されるようなマスクパターンを有することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項13】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、前記非磁性元素はCr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Ru、B、C、Si、Geからなる群から選ばれるいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項14】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記非磁性層は厚さが2nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項15】
請求項9又は10記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記非磁性層の主成分がCr、Ta及びCのいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項16】
請求項11記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記非磁性層の主成分がRu、Ti、Cr、Mo、Wのいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項17】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記マスク層を除去する工程の前後、もしくは同時に前記非磁性層を除去する工程を有することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項1】
基板上に直接もしくは間接的に形成された磁気記録層を有し、
前記磁気記録層は非磁性元素を含有し、
前記磁気記録層面内方向に前記非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在し、
前記磁気記録層の上部に前記非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
基板上に直接もしくは間接的に形成された、複数の磁性層からなる磁気記録層を有し、
前記磁気記録層は非磁性元素を含有し、
前記磁気記録層面内方向に前記非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在し、
前記磁気記録層の前記非磁性元素の含有率が低い部分は、前記磁気記録層を構成する複数の磁性層のうちの少なくとも2つの層の間に形成された非磁性層を有し、
前記非磁性層の主成分は前記非磁性元素と同じ元素であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の磁気記録媒体において、前記磁気記録層の前記非磁性元素の含有率の高い部分と低い部分がおおむね同心円状に形成あるいは前記非磁性元素の含有率の低い部分が同心円状に並んだドット状に形成されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】
請求項1又は2記載の磁気記録媒体おいて、前記非磁性元素はCr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Ru、B、C、Si、Geからなる群から選ばれるいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項5】
請求項1又は2記載の磁気記録媒体において、前記非磁性層は厚さが2nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項6】
請求項1記載の磁気記録媒体において、前記非磁性層の主成分がCr、Ta及びCのいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
請求項2記載の磁気記録媒体の製造方法において、前記非磁性層の主成分がRu、Ti、Cr、Mo、Wのいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
基板上に直接もしくは間接的に形成された磁気記録層を有し、前記磁気記録層は非磁性元素を含有し、前記磁気記録層面内方向に前記非磁性元素の含有率が高い部分と低い部分が存在する磁気記録媒体の製造方法であって、
基板上に磁気記録層を形成する工程と、
前記非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を形成する工程と、
前記磁気記録層の前記非磁性元素の含有率が高い部分を形成するための開口部を有するマスク層を形成する工程と、
前記マスク層をマスクとして前記非磁性層を介して前記磁性層に前記非磁性元素をイオン注入する工程と
を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を、前記磁気記録層の上部に形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を、前記マスク層を形成した後に形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項11】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記磁気記録層は複数の磁性層から構成され、
前記非磁性元素と同じ元素を主成分とする非磁性層を、前記磁気記録層を構成する少なくとも2つの磁性層の間に形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項12】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記マスク層は、前記磁気記録層の前記非磁性元素の含有率の低い部分がおおむね同心円状あるいは同心円状に並んだドット状に形成されるようなマスクパターンを有することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項13】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、前記非磁性元素はCr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Ru、B、C、Si、Geからなる群から選ばれるいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項14】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記非磁性層は厚さが2nm以下であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項15】
請求項9又は10記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記非磁性層の主成分がCr、Ta及びCのいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項16】
請求項11記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記非磁性層の主成分がRu、Ti、Cr、Mo、Wのいずれかの元素であることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項17】
請求項8記載の磁気記録媒体の製造方法において、
前記マスク層を除去する工程の前後、もしくは同時に前記非磁性層を除去する工程を有することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【公開番号】特開2009−199683(P2009−199683A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41615(P2008−41615)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
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