磁気記録媒体及び磁気記録再生装置
【課題】凹凸パターンで形成された記録層を有し記録層の磁気特性の変化が生じにくい信頼性が高い磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体10は、基板と、該基板の上に所定の凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素14Aを構成する記録層14と、記録要素14Aの間の凹部16を充填する充填部18と、を有し、該充填部18は金属系材料の主充填材料と酸素とを含んでなり、且つ、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に酸素が偏って分布している。
【解決手段】磁気記録媒体10は、基板と、該基板の上に所定の凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素14Aを構成する記録層14と、記録要素14Aの間の凹部16を充填する充填部18と、を有し、該充填部18は金属系材料の主充填材料と酸素とを含んでなり、且つ、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に酸素が偏って分布している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸パターンで形成された記録層を有する磁気記録媒体及びこれを備えた磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク等の磁気記録媒体は、記録層を構成する磁性粒子の微細化、材料の変更、ヘッド加工の微細化等の改良により著しい面記録密度の向上が図られており、今後も一層の面記録密度の向上が期待されているが、磁気ヘッドの加工限界、磁気ヘッドの記録磁界の広がりに起因する記録対象のトラックに隣り合うトラックへの誤った情報の記録、再生時のクロストークなどの問題が顕在化し、従来の改良手法による面記録密度の向上は限界にきている。
【0003】
これに対し、一層の面記録密度の向上を実現可能である磁気記録媒体の候補として、記録層が凹凸パターンで形成され、凹凸パターンの凸部が記録要素を構成するディスクリートトラックメディアや、パターンドメディアが提案されている(例えば、特許文献1参照)。一方、ハードディスク等の磁気記録媒体ではヘッド浮上高さを安定させて良好な記録/再生特性を得るために表面の平坦性が重視される。従って、凹凸パターンで形成された記録層の上に充填材料を成膜して記録要素の間の凹部を充填材料で充填し、記録層の上の余剰の充填材料を除去して記録要素及び充填材料の上面を平坦化することが好ましい。充填材料としては非磁性で化学的に安定している酸化物を用いることができる(例えば、特許文献2参照)。又、充填材料を成膜して凹部を充填する手法としては、スパッタリング法等を利用できる。余剰の充填材料を除去して表面を平坦化する手法としては、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法やドライエッチングを利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−97419号公報
【特許文献2】特開2006−139821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、充填材料として酸化物を用いた場合、記録層の磁気特性が経時的に変化することがあった。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、凹凸パターンで形成された記録層を有し記録層の磁気特性の変化が生じにくい信頼性が高い磁気記録媒体及びこれを備えた磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板と、基板の上に所定の凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素を構成する記録層と、記録要素の間の凹部を充填する充填部と、を有し、該充填部は金属系材料の主充填材料と酸素とを含んでなり、且つ、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部の上面部において充填部の下部におけるよりも高くなるように充填部中に酸素が偏って分布している磁気記録媒体により上記目的を達成したものである。
【0008】
発明者らは、本発明を完成する過程において、充填材料として酸化物を用いた場合に記録層の磁気特性が経時的に変化する原因について鋭意検討した。この結果、充填材料に含まれる酸素が記録要素に拡散し、記録要素の磁気特性を変化させることが原因であると推論した。
【0009】
上記の磁気記録媒体は、酸素の原子数の比率が充填部の上面部において充填部の下部におけるよりも高くなるように充填部中に酸素が偏って分布しており、酸素の比率が高い上面部は大気中の酸素等に触れても化学的変化を受けにくく安定している。又、酸素の原子数の比率は充填部の下部において充填部の上面部におけるよりも低いので充填部の下部から記録要素への酸素の拡散を防止又は抑制できる。従って、記録層の磁気特性の変化を防止又は抑制することができる。
【0010】
即ち、次のような本発明により、上記目的を達成することができる。
【0011】
(1)基板と、該基板の上に所定の凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素を構成する記録層と、前記記録要素の間の凹部を充填する充填部と、を有し、該充填部は金属系材料の主充填材料と酸素とを含んでなり、且つ、前記主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が前記充填部の上面部において前記充填部の下部におけるよりも高くなるように前記充填部中に酸素が偏って分布していることを特徴とする磁気記録媒体。
【0012】
(2) (1)において、前記充填部は実質的に前記上面部にのみ酸素を含有し、前記充填部の下部は実質的に酸素を含有しないことを特徴とする磁気記録媒体。
【0013】
(3) (1)又は(2)において、前記主充填材料は、Si、Al、Ti、Ta、Nb、Zr、Au、Cu、Ir、Ru、Pt、Rh、Cr、W、Znの少なくとも1の元素を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【0014】
(4) (1)乃至(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に対して磁気信号の記録/再生を行うための磁気ヘッドと、を備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
【0015】
尚、本出願において「凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素を構成する記録層」とは、連続記録層が所定のパターンで分割され記録要素を構成する凸部が相互に完全に分離した記録層の他、データ領域では相互に分離した凸部同士がデータ領域とサーボ領域との境界付近等では連続している記録層、又、例えば螺旋状の渦巻き形状の記録層のように基板の上の一部に連続して形成される記録層、凹凸パターンの下の層の凸部の上面と凹部の底面とに分離されて形成され凸部の上面に形成された部分が記録要素を構成する記録層、凹部が厚さ方向の途中まで形成されて底部において連続した記録層、凹凸パターンの下の層に倣って凹凸パターンで成膜された連続膜の記録層も含む意義で用いることとする。
【0016】
又、本出願において「金属系材料」とは、金属元素で構成される材料の他、Si等の半金属元素で構成される材料、金属元素と半金属元素との複合材料も含む意義で用いることとする。尚、本出願において炭素は半金属元素に該当しないこととする。
【0017】
又、本出願において「充填部の上面部」とは、充填部における基板と反対側の面及びその近傍の部分という意義で用いることとする。
【0018】
又、本出願において「充填部の下部」とは、充填部における上面部よりも基板側の部分という意義で用いることとする。
【0019】
又、本出願において「主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部の上面部において充填部の下部におけるよりも高い」とは、例えば充填部の下部に充填部の上部におけるよりも低い比率で酸素が含まれる場合や酸素の原子数の比率が充填部の上面部側から基板側に向かって次第に減少する場合のように充填部の全体に酸素が存在する場合に限定されず、実質的に充填部の上面部にのみ酸素が存在し充填部の下部には実質的に酸素が存在しない場合も含む意義で用いることとする。
【0020】
又、本出願において「磁気記録媒体」という用語は、情報の記録、読み取りに磁気のみを用いるハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ等に限定されず、磁気と光を併用するMO(Magneto Optical)等の光磁気記録媒体、磁気と熱を併用する熱アシスト型の記録媒体も含む意義で用いることとする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、凹凸パターンで形成された記録層を有し記録層の磁気特性の変化が生じにくい信頼性が高い磁気記録媒体及びこれを備えた磁気記録再生装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気記録再生装置の概略構造を模式的に示す斜視図
【図2】同磁気記録再生装置の磁気記録媒体の構造を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図3】同磁気記録媒体の充填部の構造を拡大して示す径方向に沿う断面図
【図4】同磁気記録媒体の製造工程の概要を示すフローチャート
【図5】同製造工程における被加工体の出発体の構造を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図6】凹凸パターンの樹脂層が形成された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図7】記録層が凹凸パターンに加工された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図8】同記録層の上に主充填材料が成膜された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図9】表面が平坦化された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図10】本発明の第2実施形態に係る磁気記録媒体の構造を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図11】同磁気記録媒体の充填部の構造を拡大して示す径方向に沿う断面図
【図12】同磁気記録媒体の製造工程における被加工体の出発体の構造を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図13】凹凸パターンの樹脂層が形成された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図14】記録層及び隔膜が凹凸パターンに加工された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図15】同記録層及び隔膜の上に主充填材料が成膜された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図16】表面が平坦化された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図17】実施例2及び比較例2のサンプルの厚さ方向に沿う元素プロファイルを示すグラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係る磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体10と、磁気記録媒体10に対して磁気信号の記録/再生を行うために磁気記録媒体10の表面に近接して浮上可能であるように設置された磁気ヘッド4と、を備えている。
【0025】
尚、磁気記録媒体10は中心孔10Aを有し、中心孔10Aにおいてチャック6に固定され、該チャック6と共に回転自在とされている。又、磁気ヘッド4は、アーム8の先端近傍に装着され、アーム8はベース9に回動自在に取付けられている。これにより、磁気ヘッド4は磁気記録媒体10の表面に近接して磁気記録媒体10の径方向に沿う円弧軌道で可動とされている。
【0026】
磁気記録媒体10は垂直記録型のディスクリートトラックメディアであり、図2及び3に示されるように、基板12と、該基板12の上に所定の凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素14Aを構成する記録層14と、記録要素14Aの間の凹部16を充填する充填部18と、を有し、該充填部18は金属系材料の主充填材料と酸素とから実質的になり、且つ、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に酸素が偏って分布していることを特徴としている。他の構成については本第1実施形態の理解のために重要とは思われないため説明を適宜省略する。
【0027】
磁気記録媒体10は、軟磁性層24、配向層26、記録層14、保護層28、潤滑層30を備え、これらの層がこの順で前記基板12の上に形成されている。
【0028】
基板12は、中心孔を有する略円板形状である。基板12の材料としてはガラス、Al、Al2O3等を用いることができる。
【0029】
記録層14は、厚さが5〜30nmである。記録層14の材料としてはCoCrPt合金等のCoPt系合金、FePt系合金、これらの積層体、SiO2等の酸化物系材料の中にCoCrPt等の強磁性粒子をマトリックス状に含ませた材料等を用いることができる。記録層14の凸部である記録要素14Aは、データ領域において径方向に微細な間隔で分離された多数の同心の円弧形状で形成されており、図2及び3はこれを示している。データ領域における記録要素14Aの上面の径方向の幅は10〜100nmである。又、記録要素14Aの上面のレベルにおける凹部16の径方向の幅は10〜100nmである。尚、記録要素14Aはサーボ領域において、所定のサーボパターンで形成されている(図示省略)。
【0030】
充填部18は、上記のように、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に酸素が偏って分布している。言い換えれば、充填部18は、充填部18の厚さ方向の(基板12から遠い側の)上半分における酸素の原子数の比率が、充填部18の厚さ方向の(基板12に近い側の)下半分における酸素の原子数の比率よりも高い構成である。充填部18を構成する主充填材料は、半金属元素であるSiや、金属元素であるAl、Ti、Ta、Nb、Zr、Au、Cu、Ir、Ru、Pt、Rh、Cr、W、Znの少なくとも1の元素を含む金属系材料であることが好ましい。尚、主充填材料は、Al、Ti、Ta、Nb、Zr、Au、Cu、Ir、Ru、Pt、Rh、Cr、W、Znの合金でもよい。充填部18の上面部18Aは、このような主充填材料の酸化物で構成されていることが好ましい。尚、上面部18Aが化学的に充分に安定していれば充填部18は主充填材料の酸化物以外の分子や原子を含んでいてもよい。例えば、窒素を含んでいてもよい。充填部18の下部18Bは、酸素を含有していないことが好ましいが、充填部18の下部18Bは、上面部18Aにおけるよりも低い比率で酸素を含んでいてもよい。充填部18の上面部18Aと下部18Bとで酸素の原子数の比率が明確に異なる場合、上面部18Aの厚さは1〜5nmであることが好ましい。又、上面部18Aの厚さは、記録層14の厚さの1/4以下であることが好ましい。又、充填部18における酸素の原子数の比率は充填部18の上面部18A側から基板12側に向かって実質的に連続的に減少していてもよい。又、充填部18の下部18Bは酸素を実質的に含まず、充填部18の上面部18Aにおいて酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18A側から基板12側に向かって実質的に連続的に減少していてもよい。又、充填部18の下部18Bは上面部18Aに含まれる酸素の量に対して著しく少ない量の酸素を含み、充填部18の上面部18Aにおいて酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18A側から基板12側に向かって実質的に連続的に減少していてもよい。尚、酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて又は充填部18の全体において充填部18の上面部18A側から基板12側に向かって減少する場合、酸素の原子数の比率は単調に減少してもよく、又、ある程度変動(増減)しながら変動の中間的な値が巨視的に減少していてもよい。
【0031】
軟磁性層24は、厚さが50〜300nmである。軟磁性層24の材料としてはFe合金、Co合金等を用いることができる。
【0032】
配向層26は、厚さが2〜40nmである。配向層26の材料としては非磁性のCoCr合金、Ti、Ru、RuとTaの積層体、MgO等を用いることができる。
【0033】
保護層28は、厚さが1〜5nmである。保護層28の材料としてはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を用いることができる。
【0034】
潤滑層30は、厚さが1〜2nmである。潤滑層30の材料としてはPFPE(パーフロロポリエーテル)を用いることができる。
【0035】
次に、磁気記録媒体10の作用について説明する。
【0036】
磁気記録媒体10は、酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に酸素が偏って分布しているので、酸素の比率が高い上面部18Aは大気中の酸素等に触れても化学的変化を受けにくく安定している。又、酸素の原子数の比率は充填部18の下部18Bにおいて充填部18の上面部18Aにおけるよりも低いので、充填部18の下部18Bから記録要素14Aへの酸素の拡散を防止又は抑制できる。従って、記録層14の磁気特性の変化を防止又は抑制することができる。
【0037】
次に、磁気記録媒体10の製造方法について図4に示されるフローチャートに沿って説明する。
【0038】
まず、図5に示されるような被加工体40の出発体を用意する(S102)。被加工体40の出発体は基板12の上に、軟磁性層24、配向層26、(凹凸パターンに加工される前の連続膜の)記録層14、第1マスク層42、第2マスク層44をこの順でスパッタリング法等により成膜することにより得られる。
【0039】
第1マスク層42は、厚さが2〜50nmである。第1マスク層42の材料としては、DLCのようなC(炭素)が主成分である材料を用いることができる。第2マスク層44は、厚さが2〜30nmである。第2マスク層44の材料としては、Ni等を用いることができる。
【0040】
次に、図6に示されるように、被加工体40の第2マスク層44の上にスピンコート法により樹脂材料を塗布し、更に図示しないスタンパを用いてインプリント法により樹脂材料に記録層14の凹凸パターンに相当する凹凸パターンを転写し、凹凸パターンの樹脂層46を形成する(S104)。インプリント法としては、紫外線等による光インプリント、熱インプリント等を用いることができる。光インプリントの場合、樹脂層46の材料としては紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。又、熱インプリントの場合、樹脂層46の材料としては熱可塑性樹脂等を用いることができる。樹脂層46の厚さ(凸部の厚さ)は、例えば、10〜300nmである。又、樹脂材料として感光性レジスト又は電子線レジストを用い、光リソグラフィ又は電子線リソグラフィの手法で記録層14の凹凸パターンに相当する凹凸パターンの樹脂層46を形成してもよい。尚、凹部底部の樹脂層46はアッシング等により除去する。
【0041】
次に、Arガス等の希ガスを用いたIBE(Ion Beam Etching)又はRIE(Reactive Ion Etching)により、凹部底部の第2マスク層44を除去し、更に、O2ガスを用いたIBE又はRIEにより、凹部底部の第1マスク層42を除去し、更にArガス等の希ガスを用いたIBE又はRIEにより、凹部底部の記録層14を除去する(S106)。これにより、図7に示されるように多数の記録要素14Aに分割された前記凹凸パターンの記録層14が形成される。尚、記録要素14Aの上面に残存する第1マスク層42はN2ガス、NH3ガスやH2ガスのような窒素又は水素を含むガスを用いたIBE又はRIEにより除去する。
【0042】
尚、本出願において「IBE」という用語は、例えばイオンミリング等の、イオン化したガスを被加工体に照射して加工対象物を除去する加工方法の総称という意義で用いることとする。又、本出願では、希ガスのように加工対象物と化学的に反応しないガスを用いる場合でも、RIE装置を用いてエッチングを行う場合には「RIE」という用語を用いることとする。
【0043】
次に、図8に示されるようにスパッタリング法又はバイアススパッタリング法により、凹凸パターンの記録層14を有する被加工体40の上に金属系材料の主充填材料17を成膜し、記録要素14Aの間の凹部16に充填部18を形成する(S108)。この際、初めは真空チャンバー内にAr等の希ガスのみを供給する。凹部16における主充填材料17の上面の高さが記録要素14Aの上面よりも数nm低い位置まで主充填材料17の成膜が進行したところで、真空チャンバー内にAr等の希ガスに加えてO2ガス等の酸素を含むガスの供給を開始する。尚、記録要素14Aの上面とは、記録要素14Aにおける基板12と反対側の面という意義で用いることとする。酸素を含むガスはプラズマ化されていることが好ましい。これにより、凹部16の上端近傍の数nmの部分には酸化した主充填材料17が成膜され、これよりも下の部分には実質的に酸化していない主充填材料17が成膜される。Ar等の希ガスとO2ガス等の酸素を含むガスとの比率は一定でもよい。又、例えば、酸素を含むガスの比率が徐々に増加するように徐々に変化してもよい。又、例えば、凹部16の上端近傍の数nmの部分に主充填材料17を成膜する時のみ酸素を含むガスを供給し、この部分よりも上の部分(基板12から離れる側の部分)に主充填材料17を成膜する時は、真空チャンバー内に酸素を含まない希ガス等のガスのみを供給してもよい。主充填材料17は、記録層14を覆うように記録要素14Aの上にも成膜される。
【0044】
次に、図9に示されるように、Arガス等の希ガスを用いたIBE又はRIEにより、余剰の主充填材料17を除去し、被加工体40の表面を平坦化する(S110)。尚、余剰の主充填材料17とは、主充填材料17における記録層14の上面のレベルよりも上側(基板12と反対側)に存在する部分という意義で用いることとする。図9中の矢印は加工用ガスの照射方向を模式的に示したものである。
【0045】
次に、CVD法により記録要素14A及び充填部18の上に保護層28を形成する(S112)。更に、ディッピング法により保護層28の上に潤滑層30を塗布する(S114)。これにより、前記図2及び3に示される磁気記録媒体10が完成する。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。前記第1実施形態に係る磁気記録媒体10は、記録要素14Aの上面が保護層28に接しているのに対し、図10及び11に示されるように、本第2実施形態に係る磁気記録媒体50は、記録要素14Aの上面と保護層28との間に隔膜52が形成されている。他の構成については前記第1実施形態に係る磁気記録媒体10と同様であるので、同様の構成については図1〜9と同一符号を付することとして説明を省略する。
【0047】
隔膜52は、厚さが1〜5nmである。隔膜52の材料としてはTaSi、Ti、TiN、SiC等を用いることができる。又、隔膜52の材料としてSi、Ge、Mn、Ta、Nb、Mo、Zr、W、Al、Ni、Cu、Cr、Co等やこれらの合金、化合物(酸化物を除く)を用いてもよい。
【0048】
このように、記録要素14Aと保護層28との間に隔膜52が形成され、隔膜52の側面と充填部18の上面部18Aの側面とが接しているので、充填部18の上面部18Aの側面と記録要素14の側面との接触を防止、又は接触面積を低減することができる。従って、充填部18の上面部18Aから記録要素14への酸素の拡散を防止又は低減することができる。
【0049】
次に、磁気記録媒体50の製造方法について説明する。
【0050】
まず、図12に示されるように、(凹凸パターンに加工される前の連続膜の)記録層14と第1マスク層42との間に(凹凸パターンに加工される前の連続膜の)隔膜52が成膜された被加工体60を用意する(S102)。尚、隔膜52は、他の層と同様にスパッタリング法等により成膜することができる。
【0051】
この被加工体60に、前記第1実施形態と同様に、図13〜16に示されるように樹脂層形成工程(S104)、記録層加工工程(S106)、第1マスク層42の除去工程、主充填材料成膜工程(S108)、平坦化工程(S110)を実行し、更に保護層成膜工程(S112)、潤滑層成膜工程(S114)を実行することにより、図10及び11に示される磁気記録媒体50が得られる。
【0052】
尚、記録層加工工程(S106)では凹部底部の記録層14と共に凹部底部の隔膜52も除去する。又、主充填材料成膜工程(S108)において凹部16における主充填材料17の上面の高さが記録要素14Aの上の隔膜52の上面よりも数nm低い位置まで主充填材料17の成膜が進行したところで、真空チャンバー内にAr等の希ガスに加えてO2ガス等の酸素を含むガスの供給を開始する。尚、例えば、記録要素14Aの上の隔膜52の上面近傍の数nmの部分に相当する高さに主充填材料17を成膜する時にのみ酸素を含むガスを供給し、この部分よりも上の部分(基板12から離れる側の部分)に主充填材料17を成膜する時は、真空チャンバー内に酸素を含まない希ガス等のガスのみを供給してもよい。又、平坦化工程(S110)では、主充填材料17における隔膜52の上面のレベルよりも上側(基板12と反対側)に存在する余剰の部分を除去する。
【0053】
尚、前記第1及び第2実施形態において、充填部18は金属系材料の主充填材料と酸素とから実質的になるが、充填部18が金属系材料の主充填材料と酸素に加えて窒素も含み、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に酸素が偏って分布し、且つ、主充填材料の原子数及び窒素の原子数の合計値に対する窒素の原子数の比率も充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に窒素も偏って分布していてもよい。主充填材料成膜工程(S108)において、凹部16における主充填材料17の上面の高さが記録要素14Aの上面又は記録要素14Aの上の隔膜52の上面よりも数nm低い位置まで主充填材料17の成膜が進行したところで、真空チャンバー内にAr等の希ガスに加えてO2ガス等の酸素を含むガスと共にN2ガス等の窒素を含むガスの供給も開始することで、このように充填部18中に酸素だけでなく窒素も偏って分布している充填部を形成することができる。
【0054】
又、前記第1及び第2実施形態において、第1マスク層42、第2マスク層44、樹脂層46を連続膜の記録層14の上に形成し、3段階のドライエッチングで記録層14を凹凸パターンに分割しているが、記録層14を高精度で加工できれば、マスク層、樹脂層の材料、積層数、厚さ、ドライエッチングの種類等は特に限定されない。
【0055】
又、前記第1及び第2実施形態において、記録層14の下に軟磁性層24、配向層26が形成されているが、記録層14の下の層の構成は、磁気記録媒体の種類に応じて適宜変更すればよい。例えば、軟磁性層24と基板12との間に下地層や反強磁性層を形成してもよい。又、軟磁性層24、配向層26の一方又は両方を省略してもよい。又、基板上に記録層を直接形成してもよい。
【0056】
又、前記第1及び第2実施形態において、磁気記録媒体10(50)は記録層14がトラックの径方向に微細な間隔で分割された垂直記録型のディスクリートトラックメディアであるが、トラックの径方向及び周方向の両方向に微細な間隔で分割されたパターンドメディア、渦巻き形状の記録層を有する磁気ディスク、凹凸パターンの下の層の凸部の上面と凹部の底面とに分離して形成され凸部の上面に形成された部分が記録要素である記録層を有する磁気ディスク、凹部が厚さ方向の途中まで形成されて底部において連続した記録層を有する磁気ディスク、凹凸パターンの下の層に倣って凹凸パターンで成膜された連続膜の凹凸パターンの記録層を有する磁気ディスクにも本発明は当然適用可能である。又、面内記録型の磁気ディスクにも本発明は当然適用可能である。又、基板の両面に記録層等が形成された両面記録式の磁気記録媒体にも本発明は適用可能である。又、MO等の光磁気ディスク、磁気と熱を併用する熱アシスト型の磁気ディスク、更に、磁気テープ等ディスク形状以外の他の凹凸パターンの記録層を有する磁気記録媒体にも本発明を適用可能である。
【実施例1】
【0057】
前記第1実施形態のとおり磁気記録媒体10を作製した。
【0058】
具体的には、被加工体40の出発体用意工程(S102)において、記録層14を20nmの厚さに成膜した。
【0059】
樹脂層形成工程(S104)では、樹脂材料として紫外線硬化性樹脂を用い、光インプリントの手法で記録層14の凹凸パターンに相当する凹凸パターンの樹脂層46を形成した。
【0060】
記録層加工工程(S106)では、データ領域において記録要素14Aの上面の径方向の幅が50nm、記録要素14Aの上面のレベルにおける凹部16の径方向の幅が50nmになるように記録層14を加工した。尚、記録要素14Aの上面と凹部16の底面との段差は20nmだった。
【0061】
主充填材料成膜工程(S108)では、Siの主充填材料17を100nmの厚さでバイアススパッタリング法により成膜した。この際、初めは真空チャンバー内にArガスのみを供給した(1段階目)。凹部16における主充填材料17の厚さが約18.5nmとなり、凹部16における主充填材料17の上面の高さが凹部16の上端よりも約1.5nm低い位置まで主充填材料17の成膜が進行したところで、真空チャンバー内にArガスに加えてO2ガスの供給を開始した(2段階目)。ArガスとO2ガスとの流量比は1:1だった。成膜条件は以下のとおりであった。
【0062】
ソースパワー(ターゲットに印加された電力):500W
バイアスパワー(被加工体50に印加された電力):100W
チャンバー内圧力:0.3Pa
ターゲットと被加工体との距離:300mm
Arガスの流量:50sccm(1段階目)
:25sccm(2段階目)
O2ガスの流量:0sccm(1段階目)
:25sccm(2段階目)
【0063】
平坦化工程(S110)では、Arガスを用いたIBEにより凹部16の上の主充填材料17を記録要素14Aの上面のレベルまで除去した。又、記録要素14Aの上の主充填材料17は完全に除去した。エッチング条件は以下のとおりであった。
【0064】
Arガスの流量:11sccm
チャンバー内圧力:0.03Pa
加工用ガスの照射角:90°
ビーム電圧:1000V
ビーム電流:500mA
サプレッサー電圧:−400V
【0065】
更に、保護層成膜工程(S112)、潤滑層成膜工程(S114)を実行して磁気記録媒体10を作製した。
【0066】
このようにして得られた磁気記録媒体10を磁気記録再生装置2に設置し、磁気ヘッド4の浮上特性を検査した。浮上特性は安定していた。
【0067】
又、磁気記録再生装置2の記録再生特性を検査した。記録再生特性は良好であった。
【0068】
次に、磁気記録媒体10を磁気記録再生装置2から取外して磁気記録媒体10を温度85℃、相対湿度80%の高温高湿環境下に48時間保持し、その後磁気記録媒体10を磁気記録再生装置2に再度設置して磁気ヘッド4の浮上特性及び磁気記録再生装置2の記録再生特性を検査した。磁気ヘッド4の浮上特性は、磁気記録媒体10を高温高湿環境下に保持する前と同様に安定していた。又、磁気記録再生装置2の記録再生特性も、磁気記録媒体10を高温高湿環境下に保持する前と同様に良好であった。
【実施例2】
【0069】
表面が平坦なガラス基板を用意し、このガラス基板の上に実施例1の主充填材料成膜工程(S108)と同じ条件で、バイアススパッタリング法によりSiの主充填材料17を100nmの厚さで成膜した。初めは真空チャンバー内にArガスのみを供給し主充填材料17の厚さが約18.5nmとなったところで、真空チャンバー内にArガスに加えてO2ガスの供給を開始した。
【0070】
次に、実施例1の平坦化工程(S110)と同じ条件で、成膜された主充填材料17のうち上側(ガラス基板と反対側)の80nmの部分をArガスを用いたIBEにより除去した。
【0071】
更に、残存した主充填材料17の上に4nmの厚さのDLCの保護膜を成膜した。
【0072】
このようにして得られたサンプルAに対し、オージェ電子分光法でサンプルを表面からエッチングしつつ、飛散した元素の量を検出し、サンプルAの厚さ方向に沿う元素プロファイル(サンプルA中の厚さ方向の位置と構成元素の組成比率との関係)を測定した。測定結果を図17に示す。尚、符号Aを付した曲線が実施例2のサンプルAの測定結果である。
【0073】
[比較例1]
上記実施例1に対し、充填材料成膜工程(実施例1の主充填材料成膜工程に相当)において、SiO2の充填材料を100nmの厚さで成膜した。尚、充填材料成膜工程において真空チャンバー内にO2ガスは供給しなかった。又、平坦化工程において凹部16の上のSiO2の充填材料を記録要素14Aの上面のレベルまでエッチングした。他は実施例1と同じ条件で磁気記録媒体を作製した。
【0074】
このようにして得られた磁気記録媒体を磁気記録再生装置に設置し、磁気ヘッドの浮上特性を検査した。浮上特性は安定していた。
【0075】
又、磁気記録再生装置の記録再生特性を検査した。記録再生特性は良好であった。
【0076】
更に、実施例1と同様に磁気記録媒体を磁気記録再生装置から取外して磁気記録媒体を温度85℃、相対湿度80%の高温高湿環境下に48時間保持し、その後磁気記録媒体を磁気記録再生装置に再度設置して磁気ヘッドの浮上特性及び磁気記録再生装置の記録再生特性を検査した。磁気ヘッドの浮上特性は、磁気記録媒体を高温高湿環境下に保持する前と同様に安定していた。一方、磁気記録再生装置の記録再生特性は、磁気記録媒体を高温高湿環境下に保持する前に対して変化していた。具体的には、再生信号のS/N比が磁気記録媒体を高温高湿環境下に保持する前に対して約0.5dB低下していた。尚、高温高湿環境下に保持する前及び後のいずれにおいても、磁気記録媒体の表面に腐食の発生は観察されなかった。SiO2の充填材料に含まれるO(酸素)が記録要素中に拡散したことにより、高温高湿環境下に保持する前に対し、高温高湿環境下に保持した後の再生信号のS/N比が低下したと考えられる。
【0077】
[比較例2]
実施例2に対し、主充填材料成膜工程(S108)においてO2ガスを供給しなかった。その他の条件は実施例2と同じ条件に設定し、サンプルBを作製した。
【0078】
このようにして得られたサンプルBに対し、実施例2と同様の手法で、サンプルBの厚さ方向に沿う元素プロファイルを測定した。測定結果を図17に示す。尚、符号Bを付した曲線が比較例2のサンプルBの測定結果である。
【0079】
上記のように、主充填材料成膜工程(S108)において初めは真空チャンバー内にArガスのみを供給してSiの主充填材料を成膜し、凹部16における主充填材料17の上面の高さが凹部16の上端よりも約1.5nm低い位置まで主充填材料17の成膜が進行したところで、真空チャンバー内にArガスに加えてO2ガスの供給を開始した実施例1は、SiO2の充填材料を成膜して充填部を形成した比較例と同様に磁気ヘッドの良好な浮上特性が得られ、且つ、比較例1よりも良好な記録再生特性が得られることが確認された。
【0080】
又、図17に示されるように、主充填材料成膜工程(S108)においてO2ガスを供給しなかった比較例2のSiの膜は酸素を殆ど含んでいなかったのに対し、初めは真空チャンバー内にArガスのみを供給し主充填材料17の厚さが約18.5nmとなったところで、真空チャンバー内にArガスに加えてO2ガスの供給を開始した実施例2のSiの膜は表面から2nm程度の上面部に相当する部分に酸素が添加されていることが確認された。更に、Siの膜の上面部に相当する部分において酸素の原子数の比率が基板側に向かって実質的に連続的に減少していることが確認された。又、実施例2のSiの膜の下部に相当する部分は酸素を殆ど含んでいないことが確認された。即ち、初めは真空チャンバー内にAr等の希ガスのみを供給し、途中から真空チャンバー内にArガスに加えてO2ガスの供給を開始することで、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部の上面部において充填部の下部におけるよりも高くなるように充填部中に酸素を偏って分布させることができることが確認された。尚、図17中の符号Aを付した曲線におけるSiの膜の表面から2nm以上の領域の部分や、符号Bを付した曲線が部分的に0よりも大きな値を示しているが、これはノイズであって酸素の存在を示すものではないと推測される。
【0081】
最後に、磁気記録媒体10の充填部18の構成元素の組成比率を確認する方法の一例を説明しておく。
【0082】
まず、磁気記録媒体10の潤滑層30を剥離し、保護層28の上に厚さ20nm程度のカーボンをコーティングしてから、FIB(Focused Ion Beam)法により、記録要素14A及び充填部18を含む部分を、厚さが50nm程度となるように磁気記録媒体の厚さ方向及び径方向に平行な切断面に沿って切断し、断面TEM試料を作製する。この試料の作製には、例えばFB2100(日立ハイテクノロジーズ株式会社製)等を用いることができる。
【0083】
このようにして得られた試料を、(基板12の)厚さ方向の複数個所においてTEM(Transmission Electron Microscope)観察及びEDS(Energy−Dispersive x−ray Spectroscopy)分析することによりプロファイル(試料中の厚さ方向の位置と構成元素の組成比率との関係をプロットしたグラフ)が得られる。この測定には、例えば、FE−TEM(JEM−2100F:日本電子株式会社製)又はFE−STEM(HD2000:日立ハイテクノロジーズ株式会社製)を用いることができる。尚、酸素の原子数の組成比率の分析が困難な場合であっても、酸素以外の元素の組成比率を測定することで酸素の組成比率を算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、例えば、ディスクリートトラックメディア、パターンドメディア等の凹凸パターンの記録層を有する磁気記録媒体に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
2…磁気記録再生装置
4…磁気ヘッド
10、50…磁気記録媒体
12…基板
14…記録層
14A…記録要素
16…凹部
17…主充填材料
18…充填部
18A…上面部
18B…下部
24…軟磁性層
26…配向層
28…保護層
30…潤滑層
40、60…被加工体
42…第1マスク層
44…第2マスク層
46…樹脂層
52…隔膜
S102…被加工体の加工出発体用意工程
S104…樹脂層形成工程
S106…記録層加工工程
S108…主充填材料成膜工程
S110…平坦化工程
S112…保護層成膜工程
S114…潤滑層成膜工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸パターンで形成された記録層を有する磁気記録媒体及びこれを備えた磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク等の磁気記録媒体は、記録層を構成する磁性粒子の微細化、材料の変更、ヘッド加工の微細化等の改良により著しい面記録密度の向上が図られており、今後も一層の面記録密度の向上が期待されているが、磁気ヘッドの加工限界、磁気ヘッドの記録磁界の広がりに起因する記録対象のトラックに隣り合うトラックへの誤った情報の記録、再生時のクロストークなどの問題が顕在化し、従来の改良手法による面記録密度の向上は限界にきている。
【0003】
これに対し、一層の面記録密度の向上を実現可能である磁気記録媒体の候補として、記録層が凹凸パターンで形成され、凹凸パターンの凸部が記録要素を構成するディスクリートトラックメディアや、パターンドメディアが提案されている(例えば、特許文献1参照)。一方、ハードディスク等の磁気記録媒体ではヘッド浮上高さを安定させて良好な記録/再生特性を得るために表面の平坦性が重視される。従って、凹凸パターンで形成された記録層の上に充填材料を成膜して記録要素の間の凹部を充填材料で充填し、記録層の上の余剰の充填材料を除去して記録要素及び充填材料の上面を平坦化することが好ましい。充填材料としては非磁性で化学的に安定している酸化物を用いることができる(例えば、特許文献2参照)。又、充填材料を成膜して凹部を充填する手法としては、スパッタリング法等を利用できる。余剰の充填材料を除去して表面を平坦化する手法としては、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法やドライエッチングを利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−97419号公報
【特許文献2】特開2006−139821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、充填材料として酸化物を用いた場合、記録層の磁気特性が経時的に変化することがあった。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、凹凸パターンで形成された記録層を有し記録層の磁気特性の変化が生じにくい信頼性が高い磁気記録媒体及びこれを備えた磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板と、基板の上に所定の凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素を構成する記録層と、記録要素の間の凹部を充填する充填部と、を有し、該充填部は金属系材料の主充填材料と酸素とを含んでなり、且つ、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部の上面部において充填部の下部におけるよりも高くなるように充填部中に酸素が偏って分布している磁気記録媒体により上記目的を達成したものである。
【0008】
発明者らは、本発明を完成する過程において、充填材料として酸化物を用いた場合に記録層の磁気特性が経時的に変化する原因について鋭意検討した。この結果、充填材料に含まれる酸素が記録要素に拡散し、記録要素の磁気特性を変化させることが原因であると推論した。
【0009】
上記の磁気記録媒体は、酸素の原子数の比率が充填部の上面部において充填部の下部におけるよりも高くなるように充填部中に酸素が偏って分布しており、酸素の比率が高い上面部は大気中の酸素等に触れても化学的変化を受けにくく安定している。又、酸素の原子数の比率は充填部の下部において充填部の上面部におけるよりも低いので充填部の下部から記録要素への酸素の拡散を防止又は抑制できる。従って、記録層の磁気特性の変化を防止又は抑制することができる。
【0010】
即ち、次のような本発明により、上記目的を達成することができる。
【0011】
(1)基板と、該基板の上に所定の凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素を構成する記録層と、前記記録要素の間の凹部を充填する充填部と、を有し、該充填部は金属系材料の主充填材料と酸素とを含んでなり、且つ、前記主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が前記充填部の上面部において前記充填部の下部におけるよりも高くなるように前記充填部中に酸素が偏って分布していることを特徴とする磁気記録媒体。
【0012】
(2) (1)において、前記充填部は実質的に前記上面部にのみ酸素を含有し、前記充填部の下部は実質的に酸素を含有しないことを特徴とする磁気記録媒体。
【0013】
(3) (1)又は(2)において、前記主充填材料は、Si、Al、Ti、Ta、Nb、Zr、Au、Cu、Ir、Ru、Pt、Rh、Cr、W、Znの少なくとも1の元素を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【0014】
(4) (1)乃至(3)のいずれかに記載の磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に対して磁気信号の記録/再生を行うための磁気ヘッドと、を備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
【0015】
尚、本出願において「凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素を構成する記録層」とは、連続記録層が所定のパターンで分割され記録要素を構成する凸部が相互に完全に分離した記録層の他、データ領域では相互に分離した凸部同士がデータ領域とサーボ領域との境界付近等では連続している記録層、又、例えば螺旋状の渦巻き形状の記録層のように基板の上の一部に連続して形成される記録層、凹凸パターンの下の層の凸部の上面と凹部の底面とに分離されて形成され凸部の上面に形成された部分が記録要素を構成する記録層、凹部が厚さ方向の途中まで形成されて底部において連続した記録層、凹凸パターンの下の層に倣って凹凸パターンで成膜された連続膜の記録層も含む意義で用いることとする。
【0016】
又、本出願において「金属系材料」とは、金属元素で構成される材料の他、Si等の半金属元素で構成される材料、金属元素と半金属元素との複合材料も含む意義で用いることとする。尚、本出願において炭素は半金属元素に該当しないこととする。
【0017】
又、本出願において「充填部の上面部」とは、充填部における基板と反対側の面及びその近傍の部分という意義で用いることとする。
【0018】
又、本出願において「充填部の下部」とは、充填部における上面部よりも基板側の部分という意義で用いることとする。
【0019】
又、本出願において「主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部の上面部において充填部の下部におけるよりも高い」とは、例えば充填部の下部に充填部の上部におけるよりも低い比率で酸素が含まれる場合や酸素の原子数の比率が充填部の上面部側から基板側に向かって次第に減少する場合のように充填部の全体に酸素が存在する場合に限定されず、実質的に充填部の上面部にのみ酸素が存在し充填部の下部には実質的に酸素が存在しない場合も含む意義で用いることとする。
【0020】
又、本出願において「磁気記録媒体」という用語は、情報の記録、読み取りに磁気のみを用いるハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ等に限定されず、磁気と光を併用するMO(Magneto Optical)等の光磁気記録媒体、磁気と熱を併用する熱アシスト型の記録媒体も含む意義で用いることとする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、凹凸パターンで形成された記録層を有し記録層の磁気特性の変化が生じにくい信頼性が高い磁気記録媒体及びこれを備えた磁気記録再生装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気記録再生装置の概略構造を模式的に示す斜視図
【図2】同磁気記録再生装置の磁気記録媒体の構造を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図3】同磁気記録媒体の充填部の構造を拡大して示す径方向に沿う断面図
【図4】同磁気記録媒体の製造工程の概要を示すフローチャート
【図5】同製造工程における被加工体の出発体の構造を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図6】凹凸パターンの樹脂層が形成された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図7】記録層が凹凸パターンに加工された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図8】同記録層の上に主充填材料が成膜された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図9】表面が平坦化された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図10】本発明の第2実施形態に係る磁気記録媒体の構造を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図11】同磁気記録媒体の充填部の構造を拡大して示す径方向に沿う断面図
【図12】同磁気記録媒体の製造工程における被加工体の出発体の構造を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図13】凹凸パターンの樹脂層が形成された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図14】記録層及び隔膜が凹凸パターンに加工された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図15】同記録層及び隔膜の上に主充填材料が成膜された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図16】表面が平坦化された同被加工体の形状を模式的に示す径方向に沿う断面図
【図17】実施例2及び比較例2のサンプルの厚さ方向に沿う元素プロファイルを示すグラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係る磁気記録再生装置2は、磁気記録媒体10と、磁気記録媒体10に対して磁気信号の記録/再生を行うために磁気記録媒体10の表面に近接して浮上可能であるように設置された磁気ヘッド4と、を備えている。
【0025】
尚、磁気記録媒体10は中心孔10Aを有し、中心孔10Aにおいてチャック6に固定され、該チャック6と共に回転自在とされている。又、磁気ヘッド4は、アーム8の先端近傍に装着され、アーム8はベース9に回動自在に取付けられている。これにより、磁気ヘッド4は磁気記録媒体10の表面に近接して磁気記録媒体10の径方向に沿う円弧軌道で可動とされている。
【0026】
磁気記録媒体10は垂直記録型のディスクリートトラックメディアであり、図2及び3に示されるように、基板12と、該基板12の上に所定の凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素14Aを構成する記録層14と、記録要素14Aの間の凹部16を充填する充填部18と、を有し、該充填部18は金属系材料の主充填材料と酸素とから実質的になり、且つ、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に酸素が偏って分布していることを特徴としている。他の構成については本第1実施形態の理解のために重要とは思われないため説明を適宜省略する。
【0027】
磁気記録媒体10は、軟磁性層24、配向層26、記録層14、保護層28、潤滑層30を備え、これらの層がこの順で前記基板12の上に形成されている。
【0028】
基板12は、中心孔を有する略円板形状である。基板12の材料としてはガラス、Al、Al2O3等を用いることができる。
【0029】
記録層14は、厚さが5〜30nmである。記録層14の材料としてはCoCrPt合金等のCoPt系合金、FePt系合金、これらの積層体、SiO2等の酸化物系材料の中にCoCrPt等の強磁性粒子をマトリックス状に含ませた材料等を用いることができる。記録層14の凸部である記録要素14Aは、データ領域において径方向に微細な間隔で分離された多数の同心の円弧形状で形成されており、図2及び3はこれを示している。データ領域における記録要素14Aの上面の径方向の幅は10〜100nmである。又、記録要素14Aの上面のレベルにおける凹部16の径方向の幅は10〜100nmである。尚、記録要素14Aはサーボ領域において、所定のサーボパターンで形成されている(図示省略)。
【0030】
充填部18は、上記のように、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に酸素が偏って分布している。言い換えれば、充填部18は、充填部18の厚さ方向の(基板12から遠い側の)上半分における酸素の原子数の比率が、充填部18の厚さ方向の(基板12に近い側の)下半分における酸素の原子数の比率よりも高い構成である。充填部18を構成する主充填材料は、半金属元素であるSiや、金属元素であるAl、Ti、Ta、Nb、Zr、Au、Cu、Ir、Ru、Pt、Rh、Cr、W、Znの少なくとも1の元素を含む金属系材料であることが好ましい。尚、主充填材料は、Al、Ti、Ta、Nb、Zr、Au、Cu、Ir、Ru、Pt、Rh、Cr、W、Znの合金でもよい。充填部18の上面部18Aは、このような主充填材料の酸化物で構成されていることが好ましい。尚、上面部18Aが化学的に充分に安定していれば充填部18は主充填材料の酸化物以外の分子や原子を含んでいてもよい。例えば、窒素を含んでいてもよい。充填部18の下部18Bは、酸素を含有していないことが好ましいが、充填部18の下部18Bは、上面部18Aにおけるよりも低い比率で酸素を含んでいてもよい。充填部18の上面部18Aと下部18Bとで酸素の原子数の比率が明確に異なる場合、上面部18Aの厚さは1〜5nmであることが好ましい。又、上面部18Aの厚さは、記録層14の厚さの1/4以下であることが好ましい。又、充填部18における酸素の原子数の比率は充填部18の上面部18A側から基板12側に向かって実質的に連続的に減少していてもよい。又、充填部18の下部18Bは酸素を実質的に含まず、充填部18の上面部18Aにおいて酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18A側から基板12側に向かって実質的に連続的に減少していてもよい。又、充填部18の下部18Bは上面部18Aに含まれる酸素の量に対して著しく少ない量の酸素を含み、充填部18の上面部18Aにおいて酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18A側から基板12側に向かって実質的に連続的に減少していてもよい。尚、酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて又は充填部18の全体において充填部18の上面部18A側から基板12側に向かって減少する場合、酸素の原子数の比率は単調に減少してもよく、又、ある程度変動(増減)しながら変動の中間的な値が巨視的に減少していてもよい。
【0031】
軟磁性層24は、厚さが50〜300nmである。軟磁性層24の材料としてはFe合金、Co合金等を用いることができる。
【0032】
配向層26は、厚さが2〜40nmである。配向層26の材料としては非磁性のCoCr合金、Ti、Ru、RuとTaの積層体、MgO等を用いることができる。
【0033】
保護層28は、厚さが1〜5nmである。保護層28の材料としてはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を用いることができる。
【0034】
潤滑層30は、厚さが1〜2nmである。潤滑層30の材料としてはPFPE(パーフロロポリエーテル)を用いることができる。
【0035】
次に、磁気記録媒体10の作用について説明する。
【0036】
磁気記録媒体10は、酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に酸素が偏って分布しているので、酸素の比率が高い上面部18Aは大気中の酸素等に触れても化学的変化を受けにくく安定している。又、酸素の原子数の比率は充填部18の下部18Bにおいて充填部18の上面部18Aにおけるよりも低いので、充填部18の下部18Bから記録要素14Aへの酸素の拡散を防止又は抑制できる。従って、記録層14の磁気特性の変化を防止又は抑制することができる。
【0037】
次に、磁気記録媒体10の製造方法について図4に示されるフローチャートに沿って説明する。
【0038】
まず、図5に示されるような被加工体40の出発体を用意する(S102)。被加工体40の出発体は基板12の上に、軟磁性層24、配向層26、(凹凸パターンに加工される前の連続膜の)記録層14、第1マスク層42、第2マスク層44をこの順でスパッタリング法等により成膜することにより得られる。
【0039】
第1マスク層42は、厚さが2〜50nmである。第1マスク層42の材料としては、DLCのようなC(炭素)が主成分である材料を用いることができる。第2マスク層44は、厚さが2〜30nmである。第2マスク層44の材料としては、Ni等を用いることができる。
【0040】
次に、図6に示されるように、被加工体40の第2マスク層44の上にスピンコート法により樹脂材料を塗布し、更に図示しないスタンパを用いてインプリント法により樹脂材料に記録層14の凹凸パターンに相当する凹凸パターンを転写し、凹凸パターンの樹脂層46を形成する(S104)。インプリント法としては、紫外線等による光インプリント、熱インプリント等を用いることができる。光インプリントの場合、樹脂層46の材料としては紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。又、熱インプリントの場合、樹脂層46の材料としては熱可塑性樹脂等を用いることができる。樹脂層46の厚さ(凸部の厚さ)は、例えば、10〜300nmである。又、樹脂材料として感光性レジスト又は電子線レジストを用い、光リソグラフィ又は電子線リソグラフィの手法で記録層14の凹凸パターンに相当する凹凸パターンの樹脂層46を形成してもよい。尚、凹部底部の樹脂層46はアッシング等により除去する。
【0041】
次に、Arガス等の希ガスを用いたIBE(Ion Beam Etching)又はRIE(Reactive Ion Etching)により、凹部底部の第2マスク層44を除去し、更に、O2ガスを用いたIBE又はRIEにより、凹部底部の第1マスク層42を除去し、更にArガス等の希ガスを用いたIBE又はRIEにより、凹部底部の記録層14を除去する(S106)。これにより、図7に示されるように多数の記録要素14Aに分割された前記凹凸パターンの記録層14が形成される。尚、記録要素14Aの上面に残存する第1マスク層42はN2ガス、NH3ガスやH2ガスのような窒素又は水素を含むガスを用いたIBE又はRIEにより除去する。
【0042】
尚、本出願において「IBE」という用語は、例えばイオンミリング等の、イオン化したガスを被加工体に照射して加工対象物を除去する加工方法の総称という意義で用いることとする。又、本出願では、希ガスのように加工対象物と化学的に反応しないガスを用いる場合でも、RIE装置を用いてエッチングを行う場合には「RIE」という用語を用いることとする。
【0043】
次に、図8に示されるようにスパッタリング法又はバイアススパッタリング法により、凹凸パターンの記録層14を有する被加工体40の上に金属系材料の主充填材料17を成膜し、記録要素14Aの間の凹部16に充填部18を形成する(S108)。この際、初めは真空チャンバー内にAr等の希ガスのみを供給する。凹部16における主充填材料17の上面の高さが記録要素14Aの上面よりも数nm低い位置まで主充填材料17の成膜が進行したところで、真空チャンバー内にAr等の希ガスに加えてO2ガス等の酸素を含むガスの供給を開始する。尚、記録要素14Aの上面とは、記録要素14Aにおける基板12と反対側の面という意義で用いることとする。酸素を含むガスはプラズマ化されていることが好ましい。これにより、凹部16の上端近傍の数nmの部分には酸化した主充填材料17が成膜され、これよりも下の部分には実質的に酸化していない主充填材料17が成膜される。Ar等の希ガスとO2ガス等の酸素を含むガスとの比率は一定でもよい。又、例えば、酸素を含むガスの比率が徐々に増加するように徐々に変化してもよい。又、例えば、凹部16の上端近傍の数nmの部分に主充填材料17を成膜する時のみ酸素を含むガスを供給し、この部分よりも上の部分(基板12から離れる側の部分)に主充填材料17を成膜する時は、真空チャンバー内に酸素を含まない希ガス等のガスのみを供給してもよい。主充填材料17は、記録層14を覆うように記録要素14Aの上にも成膜される。
【0044】
次に、図9に示されるように、Arガス等の希ガスを用いたIBE又はRIEにより、余剰の主充填材料17を除去し、被加工体40の表面を平坦化する(S110)。尚、余剰の主充填材料17とは、主充填材料17における記録層14の上面のレベルよりも上側(基板12と反対側)に存在する部分という意義で用いることとする。図9中の矢印は加工用ガスの照射方向を模式的に示したものである。
【0045】
次に、CVD法により記録要素14A及び充填部18の上に保護層28を形成する(S112)。更に、ディッピング法により保護層28の上に潤滑層30を塗布する(S114)。これにより、前記図2及び3に示される磁気記録媒体10が完成する。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。前記第1実施形態に係る磁気記録媒体10は、記録要素14Aの上面が保護層28に接しているのに対し、図10及び11に示されるように、本第2実施形態に係る磁気記録媒体50は、記録要素14Aの上面と保護層28との間に隔膜52が形成されている。他の構成については前記第1実施形態に係る磁気記録媒体10と同様であるので、同様の構成については図1〜9と同一符号を付することとして説明を省略する。
【0047】
隔膜52は、厚さが1〜5nmである。隔膜52の材料としてはTaSi、Ti、TiN、SiC等を用いることができる。又、隔膜52の材料としてSi、Ge、Mn、Ta、Nb、Mo、Zr、W、Al、Ni、Cu、Cr、Co等やこれらの合金、化合物(酸化物を除く)を用いてもよい。
【0048】
このように、記録要素14Aと保護層28との間に隔膜52が形成され、隔膜52の側面と充填部18の上面部18Aの側面とが接しているので、充填部18の上面部18Aの側面と記録要素14の側面との接触を防止、又は接触面積を低減することができる。従って、充填部18の上面部18Aから記録要素14への酸素の拡散を防止又は低減することができる。
【0049】
次に、磁気記録媒体50の製造方法について説明する。
【0050】
まず、図12に示されるように、(凹凸パターンに加工される前の連続膜の)記録層14と第1マスク層42との間に(凹凸パターンに加工される前の連続膜の)隔膜52が成膜された被加工体60を用意する(S102)。尚、隔膜52は、他の層と同様にスパッタリング法等により成膜することができる。
【0051】
この被加工体60に、前記第1実施形態と同様に、図13〜16に示されるように樹脂層形成工程(S104)、記録層加工工程(S106)、第1マスク層42の除去工程、主充填材料成膜工程(S108)、平坦化工程(S110)を実行し、更に保護層成膜工程(S112)、潤滑層成膜工程(S114)を実行することにより、図10及び11に示される磁気記録媒体50が得られる。
【0052】
尚、記録層加工工程(S106)では凹部底部の記録層14と共に凹部底部の隔膜52も除去する。又、主充填材料成膜工程(S108)において凹部16における主充填材料17の上面の高さが記録要素14Aの上の隔膜52の上面よりも数nm低い位置まで主充填材料17の成膜が進行したところで、真空チャンバー内にAr等の希ガスに加えてO2ガス等の酸素を含むガスの供給を開始する。尚、例えば、記録要素14Aの上の隔膜52の上面近傍の数nmの部分に相当する高さに主充填材料17を成膜する時にのみ酸素を含むガスを供給し、この部分よりも上の部分(基板12から離れる側の部分)に主充填材料17を成膜する時は、真空チャンバー内に酸素を含まない希ガス等のガスのみを供給してもよい。又、平坦化工程(S110)では、主充填材料17における隔膜52の上面のレベルよりも上側(基板12と反対側)に存在する余剰の部分を除去する。
【0053】
尚、前記第1及び第2実施形態において、充填部18は金属系材料の主充填材料と酸素とから実質的になるが、充填部18が金属系材料の主充填材料と酸素に加えて窒素も含み、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に酸素が偏って分布し、且つ、主充填材料の原子数及び窒素の原子数の合計値に対する窒素の原子数の比率も充填部18の上面部18Aにおいて充填部18の下部18Bにおけるよりも高くなるように充填部18中に窒素も偏って分布していてもよい。主充填材料成膜工程(S108)において、凹部16における主充填材料17の上面の高さが記録要素14Aの上面又は記録要素14Aの上の隔膜52の上面よりも数nm低い位置まで主充填材料17の成膜が進行したところで、真空チャンバー内にAr等の希ガスに加えてO2ガス等の酸素を含むガスと共にN2ガス等の窒素を含むガスの供給も開始することで、このように充填部18中に酸素だけでなく窒素も偏って分布している充填部を形成することができる。
【0054】
又、前記第1及び第2実施形態において、第1マスク層42、第2マスク層44、樹脂層46を連続膜の記録層14の上に形成し、3段階のドライエッチングで記録層14を凹凸パターンに分割しているが、記録層14を高精度で加工できれば、マスク層、樹脂層の材料、積層数、厚さ、ドライエッチングの種類等は特に限定されない。
【0055】
又、前記第1及び第2実施形態において、記録層14の下に軟磁性層24、配向層26が形成されているが、記録層14の下の層の構成は、磁気記録媒体の種類に応じて適宜変更すればよい。例えば、軟磁性層24と基板12との間に下地層や反強磁性層を形成してもよい。又、軟磁性層24、配向層26の一方又は両方を省略してもよい。又、基板上に記録層を直接形成してもよい。
【0056】
又、前記第1及び第2実施形態において、磁気記録媒体10(50)は記録層14がトラックの径方向に微細な間隔で分割された垂直記録型のディスクリートトラックメディアであるが、トラックの径方向及び周方向の両方向に微細な間隔で分割されたパターンドメディア、渦巻き形状の記録層を有する磁気ディスク、凹凸パターンの下の層の凸部の上面と凹部の底面とに分離して形成され凸部の上面に形成された部分が記録要素である記録層を有する磁気ディスク、凹部が厚さ方向の途中まで形成されて底部において連続した記録層を有する磁気ディスク、凹凸パターンの下の層に倣って凹凸パターンで成膜された連続膜の凹凸パターンの記録層を有する磁気ディスクにも本発明は当然適用可能である。又、面内記録型の磁気ディスクにも本発明は当然適用可能である。又、基板の両面に記録層等が形成された両面記録式の磁気記録媒体にも本発明は適用可能である。又、MO等の光磁気ディスク、磁気と熱を併用する熱アシスト型の磁気ディスク、更に、磁気テープ等ディスク形状以外の他の凹凸パターンの記録層を有する磁気記録媒体にも本発明を適用可能である。
【実施例1】
【0057】
前記第1実施形態のとおり磁気記録媒体10を作製した。
【0058】
具体的には、被加工体40の出発体用意工程(S102)において、記録層14を20nmの厚さに成膜した。
【0059】
樹脂層形成工程(S104)では、樹脂材料として紫外線硬化性樹脂を用い、光インプリントの手法で記録層14の凹凸パターンに相当する凹凸パターンの樹脂層46を形成した。
【0060】
記録層加工工程(S106)では、データ領域において記録要素14Aの上面の径方向の幅が50nm、記録要素14Aの上面のレベルにおける凹部16の径方向の幅が50nmになるように記録層14を加工した。尚、記録要素14Aの上面と凹部16の底面との段差は20nmだった。
【0061】
主充填材料成膜工程(S108)では、Siの主充填材料17を100nmの厚さでバイアススパッタリング法により成膜した。この際、初めは真空チャンバー内にArガスのみを供給した(1段階目)。凹部16における主充填材料17の厚さが約18.5nmとなり、凹部16における主充填材料17の上面の高さが凹部16の上端よりも約1.5nm低い位置まで主充填材料17の成膜が進行したところで、真空チャンバー内にArガスに加えてO2ガスの供給を開始した(2段階目)。ArガスとO2ガスとの流量比は1:1だった。成膜条件は以下のとおりであった。
【0062】
ソースパワー(ターゲットに印加された電力):500W
バイアスパワー(被加工体50に印加された電力):100W
チャンバー内圧力:0.3Pa
ターゲットと被加工体との距離:300mm
Arガスの流量:50sccm(1段階目)
:25sccm(2段階目)
O2ガスの流量:0sccm(1段階目)
:25sccm(2段階目)
【0063】
平坦化工程(S110)では、Arガスを用いたIBEにより凹部16の上の主充填材料17を記録要素14Aの上面のレベルまで除去した。又、記録要素14Aの上の主充填材料17は完全に除去した。エッチング条件は以下のとおりであった。
【0064】
Arガスの流量:11sccm
チャンバー内圧力:0.03Pa
加工用ガスの照射角:90°
ビーム電圧:1000V
ビーム電流:500mA
サプレッサー電圧:−400V
【0065】
更に、保護層成膜工程(S112)、潤滑層成膜工程(S114)を実行して磁気記録媒体10を作製した。
【0066】
このようにして得られた磁気記録媒体10を磁気記録再生装置2に設置し、磁気ヘッド4の浮上特性を検査した。浮上特性は安定していた。
【0067】
又、磁気記録再生装置2の記録再生特性を検査した。記録再生特性は良好であった。
【0068】
次に、磁気記録媒体10を磁気記録再生装置2から取外して磁気記録媒体10を温度85℃、相対湿度80%の高温高湿環境下に48時間保持し、その後磁気記録媒体10を磁気記録再生装置2に再度設置して磁気ヘッド4の浮上特性及び磁気記録再生装置2の記録再生特性を検査した。磁気ヘッド4の浮上特性は、磁気記録媒体10を高温高湿環境下に保持する前と同様に安定していた。又、磁気記録再生装置2の記録再生特性も、磁気記録媒体10を高温高湿環境下に保持する前と同様に良好であった。
【実施例2】
【0069】
表面が平坦なガラス基板を用意し、このガラス基板の上に実施例1の主充填材料成膜工程(S108)と同じ条件で、バイアススパッタリング法によりSiの主充填材料17を100nmの厚さで成膜した。初めは真空チャンバー内にArガスのみを供給し主充填材料17の厚さが約18.5nmとなったところで、真空チャンバー内にArガスに加えてO2ガスの供給を開始した。
【0070】
次に、実施例1の平坦化工程(S110)と同じ条件で、成膜された主充填材料17のうち上側(ガラス基板と反対側)の80nmの部分をArガスを用いたIBEにより除去した。
【0071】
更に、残存した主充填材料17の上に4nmの厚さのDLCの保護膜を成膜した。
【0072】
このようにして得られたサンプルAに対し、オージェ電子分光法でサンプルを表面からエッチングしつつ、飛散した元素の量を検出し、サンプルAの厚さ方向に沿う元素プロファイル(サンプルA中の厚さ方向の位置と構成元素の組成比率との関係)を測定した。測定結果を図17に示す。尚、符号Aを付した曲線が実施例2のサンプルAの測定結果である。
【0073】
[比較例1]
上記実施例1に対し、充填材料成膜工程(実施例1の主充填材料成膜工程に相当)において、SiO2の充填材料を100nmの厚さで成膜した。尚、充填材料成膜工程において真空チャンバー内にO2ガスは供給しなかった。又、平坦化工程において凹部16の上のSiO2の充填材料を記録要素14Aの上面のレベルまでエッチングした。他は実施例1と同じ条件で磁気記録媒体を作製した。
【0074】
このようにして得られた磁気記録媒体を磁気記録再生装置に設置し、磁気ヘッドの浮上特性を検査した。浮上特性は安定していた。
【0075】
又、磁気記録再生装置の記録再生特性を検査した。記録再生特性は良好であった。
【0076】
更に、実施例1と同様に磁気記録媒体を磁気記録再生装置から取外して磁気記録媒体を温度85℃、相対湿度80%の高温高湿環境下に48時間保持し、その後磁気記録媒体を磁気記録再生装置に再度設置して磁気ヘッドの浮上特性及び磁気記録再生装置の記録再生特性を検査した。磁気ヘッドの浮上特性は、磁気記録媒体を高温高湿環境下に保持する前と同様に安定していた。一方、磁気記録再生装置の記録再生特性は、磁気記録媒体を高温高湿環境下に保持する前に対して変化していた。具体的には、再生信号のS/N比が磁気記録媒体を高温高湿環境下に保持する前に対して約0.5dB低下していた。尚、高温高湿環境下に保持する前及び後のいずれにおいても、磁気記録媒体の表面に腐食の発生は観察されなかった。SiO2の充填材料に含まれるO(酸素)が記録要素中に拡散したことにより、高温高湿環境下に保持する前に対し、高温高湿環境下に保持した後の再生信号のS/N比が低下したと考えられる。
【0077】
[比較例2]
実施例2に対し、主充填材料成膜工程(S108)においてO2ガスを供給しなかった。その他の条件は実施例2と同じ条件に設定し、サンプルBを作製した。
【0078】
このようにして得られたサンプルBに対し、実施例2と同様の手法で、サンプルBの厚さ方向に沿う元素プロファイルを測定した。測定結果を図17に示す。尚、符号Bを付した曲線が比較例2のサンプルBの測定結果である。
【0079】
上記のように、主充填材料成膜工程(S108)において初めは真空チャンバー内にArガスのみを供給してSiの主充填材料を成膜し、凹部16における主充填材料17の上面の高さが凹部16の上端よりも約1.5nm低い位置まで主充填材料17の成膜が進行したところで、真空チャンバー内にArガスに加えてO2ガスの供給を開始した実施例1は、SiO2の充填材料を成膜して充填部を形成した比較例と同様に磁気ヘッドの良好な浮上特性が得られ、且つ、比較例1よりも良好な記録再生特性が得られることが確認された。
【0080】
又、図17に示されるように、主充填材料成膜工程(S108)においてO2ガスを供給しなかった比較例2のSiの膜は酸素を殆ど含んでいなかったのに対し、初めは真空チャンバー内にArガスのみを供給し主充填材料17の厚さが約18.5nmとなったところで、真空チャンバー内にArガスに加えてO2ガスの供給を開始した実施例2のSiの膜は表面から2nm程度の上面部に相当する部分に酸素が添加されていることが確認された。更に、Siの膜の上面部に相当する部分において酸素の原子数の比率が基板側に向かって実質的に連続的に減少していることが確認された。又、実施例2のSiの膜の下部に相当する部分は酸素を殆ど含んでいないことが確認された。即ち、初めは真空チャンバー内にAr等の希ガスのみを供給し、途中から真空チャンバー内にArガスに加えてO2ガスの供給を開始することで、主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が充填部の上面部において充填部の下部におけるよりも高くなるように充填部中に酸素を偏って分布させることができることが確認された。尚、図17中の符号Aを付した曲線におけるSiの膜の表面から2nm以上の領域の部分や、符号Bを付した曲線が部分的に0よりも大きな値を示しているが、これはノイズであって酸素の存在を示すものではないと推測される。
【0081】
最後に、磁気記録媒体10の充填部18の構成元素の組成比率を確認する方法の一例を説明しておく。
【0082】
まず、磁気記録媒体10の潤滑層30を剥離し、保護層28の上に厚さ20nm程度のカーボンをコーティングしてから、FIB(Focused Ion Beam)法により、記録要素14A及び充填部18を含む部分を、厚さが50nm程度となるように磁気記録媒体の厚さ方向及び径方向に平行な切断面に沿って切断し、断面TEM試料を作製する。この試料の作製には、例えばFB2100(日立ハイテクノロジーズ株式会社製)等を用いることができる。
【0083】
このようにして得られた試料を、(基板12の)厚さ方向の複数個所においてTEM(Transmission Electron Microscope)観察及びEDS(Energy−Dispersive x−ray Spectroscopy)分析することによりプロファイル(試料中の厚さ方向の位置と構成元素の組成比率との関係をプロットしたグラフ)が得られる。この測定には、例えば、FE−TEM(JEM−2100F:日本電子株式会社製)又はFE−STEM(HD2000:日立ハイテクノロジーズ株式会社製)を用いることができる。尚、酸素の原子数の組成比率の分析が困難な場合であっても、酸素以外の元素の組成比率を測定することで酸素の組成比率を算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、例えば、ディスクリートトラックメディア、パターンドメディア等の凹凸パターンの記録層を有する磁気記録媒体に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
2…磁気記録再生装置
4…磁気ヘッド
10、50…磁気記録媒体
12…基板
14…記録層
14A…記録要素
16…凹部
17…主充填材料
18…充填部
18A…上面部
18B…下部
24…軟磁性層
26…配向層
28…保護層
30…潤滑層
40、60…被加工体
42…第1マスク層
44…第2マスク層
46…樹脂層
52…隔膜
S102…被加工体の加工出発体用意工程
S104…樹脂層形成工程
S106…記録層加工工程
S108…主充填材料成膜工程
S110…平坦化工程
S112…保護層成膜工程
S114…潤滑層成膜工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の上に所定の凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素を構成する記録層と、前記記録要素の間の凹部を充填する充填部と、を有し、該充填部は金属系材料の主充填材料と酸素とを含んでなり、且つ、前記主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が前記充填部の上面部において前記充填部の下部におけるよりも高くなるように前記充填部中に酸素が偏って分布していることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
請求項1において、
前記充填部は実質的に前記上面部にのみ酸素を含有し、前記充填部の下部は実質的に酸素を含有しないことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記主充填材料は、Si、Al、Ti、Ta、Nb、Zr、Au、Cu、Ir、Ru、Pt、Rh、Cr、W、Znの少なくとも1の元素を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に対して磁気信号の記録/再生を行うための磁気ヘッドと、を備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項1】
基板と、該基板の上に所定の凹凸パターンで形成され該凹凸パターンの凸部が記録要素を構成する記録層と、前記記録要素の間の凹部を充填する充填部と、を有し、該充填部は金属系材料の主充填材料と酸素とを含んでなり、且つ、前記主充填材料の原子数及び酸素の原子数の合計値に対する酸素の原子数の比率が前記充填部の上面部において前記充填部の下部におけるよりも高くなるように前記充填部中に酸素が偏って分布していることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
請求項1において、
前記充填部は実質的に前記上面部にのみ酸素を含有し、前記充填部の下部は実質的に酸素を含有しないことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記主充填材料は、Si、Al、Ti、Ta、Nb、Zr、Au、Cu、Ir、Ru、Pt、Rh、Cr、W、Znの少なくとも1の元素を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に対して磁気信号の記録/再生を行うための磁気ヘッドと、を備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−27193(P2010−27193A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74662(P2009−74662)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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