磁気記録媒体及び磁気記録媒体の製造方法
【課題】マスクパターンの剥離性が良好で、磁気特性の劣化を抑制した磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】磁気記録層上に金属剥離層、マスク層を形成した後、マスク層に対して凹凸パターンを設け、凹凸パターンを金属剥離層及び磁気記録層に順に転写し、溶媒を用いて金属剥離層を溶解、除去する。金属剥離層は、アルミニウム、またはアルミニウム化合物のいずれかである。溶媒としてアルカリ溶液を用いる。
【解決手段】磁気記録層上に金属剥離層、マスク層を形成した後、マスク層に対して凹凸パターンを設け、凹凸パターンを金属剥離層及び磁気記録層に順に転写し、溶媒を用いて金属剥離層を溶解、除去する。金属剥離層は、アルミニウム、またはアルミニウム化合物のいずれかである。溶媒としてアルカリ溶液を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器で扱われる情報量は増加の一途を辿っており、大容量記録装置の実現が渇望されている。HDD(ハードディスクドライブ)では高記録密度化を実現するため、垂直磁気記録を中心として種々の技術開発が進められている。さらに、記録密度の向上と熱ゆらぎ耐性を両立できる媒体として、記録パターンを面内で独立させたディスクリートトラック媒体やビットパターンド媒体が提案されており、その製造技術の開発が必須となっている。
【0003】
ビットパターンド媒体のように、1ビットの情報を1セルで記録するためには各セル同士が磁気的に分離されていれば良く、微細加工技術を基に磁性ドット部と非磁性ドット部を面内で形成する例が多い。
【0004】
具体的には、半導体製造技術を適用して基板上の磁気記録層を分離する。磁気記録層上部にパターニングマスクを成膜し、これに凹凸パターンを形成した後、磁気記録層へと転写することで、凹凸により記録パターンが独立した磁気記録媒体が得られる。
【0005】
マスクパターンに凹凸を設けるためには、半導体製造における汎用のレジスト材料が用いられ、エネルギー線を照射することで凹凸部分を選択的に改質することでパターンを得る方法や、レジスト膜内に化学的性質の異なるパターンを配列させた自己組織化膜をパターニングする方法、あるいは凹凸型を物理的にインプリントしてパターニングする方法などが挙げられる。
【0006】
他にも、マスクパターンに凹凸を設けた後、高エネルギーで照射されたイオンを磁気記録層へ注入し、パターンの磁性を選択的に失活させることで記録パターンが非記録領域を介して磁気的に分離された媒体を得る方法もある。
【0007】
ここで、磁気記録媒体への書き込みあるいは読み出しを行うための磁気ヘッドを媒体上で走査させる場合、磁気記録層上のマスクパターンが残存していると凹凸差が大きくなり、ヘッドクラッシュが生じてしまう。また、磁気記録層−磁気ヘッド間の距離が大きいと磁気ヘッドが検出できる信号S/Nが小さくなる。そのため、磁気記録層をパターニングした後では磁気記録層上のマスクパターンを除去して凹凸差を低くしておく必要があり、実プロセスでは磁気記録層とマスク層の間に剥離層を設けるのが一般的である。
【0008】
ビットパターンド媒体の剥離プロセスに関する例では、カーボン剥離層をドライエッチングで除去する方法が挙げられている。しかしながら、この場合はエッチングガスである酸素により磁気記録層が酸化してしまい、記録層の磁気特性を劣化してしまう問題がある。また、マスク層の凹凸パターン幅に対して同程度以上の巨大残渣がある場合、ドライエッチングを行う場合は残渣を除去することが困難であるためにこれが剥離不良箇所になり易く、媒体上に突起パターンとして残ってしまうといった問題がある。そのため、面内均一性を確保した媒体を得ることが難しい。
【0009】
一方、ドライ剥離に対し、ウェット剥離の場合は剥離溶液が剥離層と接触した時点で剥離が等方的に進行するため、ドライ剥離で残存するような巨大残渣を剥離することが可能となる。そこで、剥離層としてシリコン含有ポリマーを用い、これを有機溶媒でウェット剥離する例が挙げられている。
【0010】
しかしながら、シリコン含有ポリマーを剥離層として用いる場合、マスク層の成膜やエッチングなどにより剥離層に熱エネルギーが加わり、架橋反応が促進することで剥離層が著しく硬化する。そのため、溶液に対する溶解性が悪く剥離不良箇所が多くなってしまう他、剥離時間が長くなることでプロセスコストの増大につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−76676号公報
【特許文献2】特開2005−29779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
実施形態によれば、マスクパターンの剥離性が良好で、磁気特性の劣化を抑制した磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態によれば、基板上に磁気記録層を形成する工程と、
前記磁気記録層上に、アルミニウム及びアルミニウム化合物のうち1つからなる金属剥離層を形成する工程と、
前記金属剥離層上にマスク層を形成する工程と、
前記マスク層に凹凸パターンを設ける工程と、
前記凹凸パターンを金属剥離層に転写する工程と、
前記凹凸パターンを磁気記録層に転写する工程と、
アルカリ溶液を用いて前記金属剥離層を除去する工程とを具備することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1B】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1C】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1D】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1E】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1F】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1G】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図2A】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2B】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2C】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2D】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2E】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2F】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2G】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図3A】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3B】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3C】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3D】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3E】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3F】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3G】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3H】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3I】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図4】アルカリ溶液濃度と磁化との関係を表すグラフである。
【図5】アルカリ溶液濃度と保磁力との関係を表すグラフである。
【図6】水酸化ナトリウム溶液浸漬後におけるCoPt連続膜の表面の状態を表すSEM画像写真である。
【図7】水酸化ナトリウム溶液浸漬後におけるCoPt連続膜の表面の状態を表すSEM画像写真である。
【図8】磁気記録媒体の周方向に対する記録ビットパターンの一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法は、基板上に磁気記録層を形成する工程と、磁気記録層上に金属剥離層を形成する工程と、金属剥離層上にマスク層を形成する工程と、マスク層に対して凹凸パターンを設ける工程と、エッチングにより凹凸パターンを金属剥離層に転写する工程と、エッチングにより凹凸パターンを磁気記録層に転写する工程と、溶媒を用いて前記金属剥離層を溶解、除去する工程を含む。
【0016】
金属剥離層は、アルミニウム、またはアルミニウム化合物のいずれかである。
【0017】
溶媒としては、アルカリ溶液を用いる。
【0018】
凹凸パターンが形成された磁気記録層上に保護層をさらに形成することができる。
【0019】
また、第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法は、基板上に磁気記録層を形成する工程と、磁気記録層上に中間マスク層を形成する工程と、中間マスク層上に金属剥離層を形成する工程と、金属剥離層上にマスク層を形成する工程と、マスク層に対して凹凸パターンを設ける工程と、エッチングにより凹凸パターンを金属剥離層に転写する工程と、エッチングにより凹凸パターンを中間マスク層に転写する工程と、エッチングにより凹凸パターンを磁気記録層に転写する工程と、アルカリ溶液を用いて前記金属剥離層を除去する工程と、エッチングにより前記第1のマスク層を除去する工程とを含む。
【0020】
金属剥離層は、第1の実施形態と同様にアルミニウム、またはアルミニウム化合物のいずれかである。
【0021】
金属剥離層の除去は、第1の実施形態と同様にアルカリ溶液を用いて行われる。
【0022】
第1の実施形態と同様に凹凸パターンが形成された磁気記録層上に保護層をさらに形成することができる。
【0023】
実施形態によれば、磁気記録層へのダメージを抑制し、かつアルカリ溶液で剥離可能なアルミニウムを剥離層として用いることで、剥離残渣が少なく、HDI(Head Disk Interface)特性の良好な磁気記録媒体が得られる。
【0024】
アルミニウム化合物は、例えば窒素、ホウ素、珪素、及び炭素からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことができる。
【0025】
実施形態によれば、剥離層として使用されるアルミニウムへの上記成分の添加により、表面の平坦性が改善され、自己組織化膜のマクロな凹凸が小さくなるので、媒体の面内ムラが小さくなる。
【0026】
また、加工後に大気曝露されるアルミニウム剥離層の側面は自然酸化することになるが、上記成分の添加により酸化の影響が軽微になるため、エッチングレートが下がらず剥離性を良くすることができる。
【0027】
上記成分の添加によりアルミニウム剥離層の密度が小さくなるため、アルカリエッチングレートが速くなる。したがって、媒体の作製プロセス時間が短縮される。
【0028】
以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法では、磁気記録媒体上に、マスクパターン、剥離層、磁気記録層への凹凸を形成した後、剥離層を除去することで凹凸パターンを有する磁気記録媒体が得られる。
【0030】
図1Aないし図1Gに、第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図を示す。
【0031】
また、図2Aないし図2Gに、第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す。
【0032】
図2Aないし図2Gに示す方法は、レジスト層5の代わりに自己組織化層9を形成して、自己組織化層9に凹凸パターンを形成すること以外は図1Aないし図1Gと同様である。
【0033】
まず、図1Aに示すように、磁気記録媒体12を用意し、磁気記録媒体12上に、剥離層3、マスク層4、レジスト層5を順に形成する。
【0034】
磁気記録層形成工程
基板1上に磁気記録層2を形成し、磁気記録媒体12を得る。基板にはガラス基板、金属含有基板、セラミックス基板などを用いることが可能であるが、平坦性の良好なガラス基板を用いることが好ましい。磁気記録層2は金属からなる非磁性下地層とコバルトを主成分とした垂直磁気記録層から構成され、さらにPt、金属酸化物を含むことができる。非磁性下地層は垂直磁気記録層の結晶配向性を改善するためのもので、例えばRu系金属、Pd系金属、Pt系金属およびそれらの合金を用いることができる。また、垂直磁気記録層にはCoPt、CoCr、CoCrPt、CoCrSi、CoCrSiO2などの合金を用いることが可能である。基板1と磁気記録層2の間には密着層や軟磁性下地層を形成してもよい。密着層は基板との密着性を改善するためのもので、例えばCr、Ta、
Ti、NiTaなどを用いることができる。また、軟磁性下地層は磁気記録ヘッドからの記録磁界を垂直磁気記録層に還流させ、記録再生効率を向上するためのものであり、Coを主成分とした合金を用いるのが好適である。具体的には、CoZr、CoZrNb、
CoZrTaなどが挙げられる。
【0035】
これらの層は複数で形成されても構わない。
【0036】
垂直磁気記録層の厚さは、再生出力信号を高確度で測定するために5nm厚以上が好ましく、信号強度の歪を抑えるために40nm厚以下が好ましい。
【0037】
Co系垂直磁気記録層上部には保護層となるダイヤモンドライクカーボン膜を成膜することができる。これにより磁気記録層を得ることができる。
【0038】
剥離層形成工程
続いて、磁気記録層2上に剥離層3を形成する。剥離溶液を用いたウェットプロセスでは、溶液曝露に対して磁気記録層の磁気特性劣化を抑えることと、剥離層における現実的な剥離速度の確保を両立することが肝要である。すなわち、磁気記録層であるCo系金属が難溶であり、剥離層が易溶となるような剥離溶液と剥離層材料を選択すればよく、pHが7よりも大きいアルカリの範囲において上記項目を満足できる。
【0039】
一方、種々の剥離材料のうち、アルカリに対して可溶なものとしてAl、Zn、Snなどが挙げられるが、剥離速度が比較的速い材料としてAl及びその化合物を使用する。
【0040】
アルミニウム膜を用いる場合、表面に形成される自然酸化膜によりアルカリ溶液に対する剥離速度が低下する傾向があるため、剥離層を、半金属および非金属、もしくはそれらの化合物をAlに添加したアルミニウム化合物とすることで、この問題を解決できる。アルミニウムに添加する成分として、具体的には、炭素、窒素、ホウ素、珪素ならびにそれらの化合物が挙げられる。添加成分はAl原子と結合するか、あるいはAl格子間へ侵入することで酸素との結合を阻害する効果がある。また、正味のAl密度が低下することにより疎な膜が形成されることになる。したがって、Al表面の自然酸化の抑制とAl密度の低下により、剥離速度が増大することになるため、製造プロセスの短時間化が実現される。
【0041】
一方、Alに対する元素添加は、薄膜の平坦性を改善する効果もある。Alは成膜の段階で結晶粒を構成し易いため、剥離層の表面ラフネスを増大させることになるが、元素添加により結晶化が阻害されるため、表面ラフネスを低減することができる。例えば、アルミニウムへ10at.%BN、10at.%C、10at.%Si、10at.%B4Cなどを添加すれば良いが、剥離速度を維持できる範囲で添加量を変えることもできる。一例として、アルミニウム膜の平均ラフネスが0.64nmであるのに対し、10at.%BN添加により0.38nm、10at.%B4C添加により0.3nm程度に低減することが可能である。
【0042】
剥離溶液として、0.1%水酸化ナトリウム水溶液、及び0.05%水酸化ナトリウム水溶液(濃度は重量%)を用いた場合のアルミニウム及びその種々の化合物のエッチングレートの一例を下記表1に示す。
【表1】
【0043】
表の値はアルミニウム剥離材料における単位時間あたりの膜厚減少速度であり、この値が大きいと剥離速度が速いことを意味する。アルミニウムの値に対して各種元素を添加したアルミニウム化合物ではエッチングレートが向上し、低濃度アルカリ溶液でも溶解させることが可能となる。とりわけ、10at.%BNや10at.%B4Cを添加したアルミニウム化合物のエッチングレートは、アルミニウム単独材料のそれよりも数倍大きく、短時間で剥離を行うことが可能であることから、アルミニウム化合物としては、窒素およびホウ素、または窒素および炭素を含むことが好ましい。
【0044】
剥離層は物理的・化学的気相成長法をはじめとした種々の方法により磁気記録層上へ形成可能である。この場合、磁気記録層における磁気特性が熱履歴などにより劣化しないことが望ましい。また、下層の磁気記録層および上層のマスク層への元素拡散は少ないほどよい。
【0045】
Al膜に対する添加元素の割合に関して何ら限定は無く、剥離速度や表面性を考慮した上で添加割合を調整すればよい。
【0046】
マスク層形成工程
剥離層3の上部には凹凸パターンを転写するためのマスク層4を形成する。このマスク層4は上層の凹凸パターンを物理的あるいは化学的に転写可能な材料を選択すればよい。マスク層は、第1の層及び第1の層とは異なる材料からなる第2の層を含む多層体で構成することが可能である。
【0047】
マスク層は蒸着やスパッタリング,イオンプレーティングに代表される物理的気相成長法や,熱・プラズマを用いた化学的気相成長法により形成することが可能である。その厚さは、凹凸パターンのピッチや高さを考慮した上で調整すればよい。
【0048】
また、上層である凹凸パターンの均一性はマスク層の表面ラフネスに依存するところが大きいため、これを低減しておくことが好ましい。
【0049】
レジスト層形成工程
引き続き、図1Aに示すように、マスク層4の上部に凹凸パターン形成用のレジスト層5を形成する。レジスト層5の種類、ポジ型・ネガ型には何ら限定は無く、エネルギー線照射により潜像を形成する材料として主鎖切断型、化学増幅型、架橋型レジストを用いることができる。例えば、ノボラック系樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ−αメチルスチレン、ポリヒドロキシスチレン、水素シルセスキオキサンなどの高分子材料が挙げられる。
【0050】
また、第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例では、図2Aに示すように、レジスト層5の代わりに自己組織化層9を形成し、薄膜内部に微細な規則化パターンを形成できる自己組織化現象により、凹凸パターンを形成する。この場合、自己組織化膜の材料は少なくとも2つのポリマー鎖を有するブロックコポリマーやランダムコポリマーからなるものを選定することが好ましい。これらの基本構造は、(ブロックA)−(ブロックB)のように化学的特性が相互に異なるポリマー同士が共有結合しているものである。具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリビニルピリジン、ポリメチルメタアクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリ乳酸などを組み合わせて用いることができるが、その種類はこれらに限定されるわけではない。
【0051】
自己組織化材料をレジスト膜として適用する場合は、所望のパターン寸法となるように高分子材料の分子量などの各種パラメータを適切に設定しておく。
【0052】
他にも、凹凸型いわゆるスタンパを物理的にインプリントしてパターンを形成するナノインプリント法を適用しても良く、これに用いるレジスト層材料を適切に選択すれば良い。具体的には有機塗布ガラス(Spin on Glass)や加熱硬化レジスト材料、紫外線硬化レジスト材料を用いることができる。この場合は、レジスト層にスタンパを押下・保持した後、レジスト層から離型する。離型が良好であるとレジスト層の倒壊を少なくできるため、スタンパの凹凸パターンにはあらかじめシランカップリング剤などを用いた離型処理を行っておくことが望ましい。
【0053】
これらのレジスト層は、レジスト材料を溶媒で溶解したものをスピンコートあるいはスプレーコートなどの方法により塗布することで形成可能である。このとき、下地層との密着性を良好にするため、レジスト層下部に密着層を形成してもよい。あるいは、レジスト下地層を疏水化処理することでレジスト層の密着性を改善しても構わない。
【0054】
また、レジスト膜は単層で無くとも良く、エネルギー感度の異なるものや流動性の異なる材料を組み合わせて多層構造にしても構わない。
【0055】
レジスト層パターニング工程
次に、図1Bに示すように、レジスト層5に対し凹凸パターンを形成する。
【0056】
レジスト層はエネルギー線の照射により、その化学的性質が選択的に変化する。具体的なエネルギー線として、KrF、ArFなどの紫外線や電子線、荷電粒子線、極短紫外線やX線などを用いることができる。また、干渉露光、縮小投影露光などの方法であっても構わない。
【0057】
以下では、ポジ型レジストのパターニング例に従ってレジスト層5の凹凸形成工程を説明する。まず、レジスト層5の凹部を形成する箇所にエネルギー線を照射する、すなわち露光を行う。このとき、レジスト層5が現像可能となる量のエネルギーが必要となり、各種レジスト材料に対応して露光量を調整する。
【0058】
続いて現像を行い、露光箇所に相当するレジスト層を化学的に除去する。レジスト膜に対する現像液として、例えばテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどのアルカリ現像液を用いることができる。また、有機現像液として酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸ブチル,酢酸アミル,酢酸ヘキシル,酢酸オクチルのようなエステル系溶剤,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,プロピレングリコールモノエチルアセテートのようなケトン系溶剤,アニソール,キシレン,トルエン,テトラリンなどの芳香族系溶剤,エタノール,メタノール,イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤を用いることができる。
【0059】
現像に関わるパラメータとしては時間、液温、粘度などがあるが、所望のパターンを形成するためにこれらを適宜調整することができる。また、現像方法として現像液中に試料を浸す浸漬法や、試料上部に現像液を滴下するパドル法、スピン法などの種類があるが、所望のパターンに対応して適宜現像方法を選べばよい。
【0060】
現像後のパターンに対し、リンスを行うことで現像液をパターン上から除去する。リンス液は現像液と相溶の関係にあれば溶解除去することが可能である。代表的なリンス液としてイソプロピルアルコールやエタノールなどのアルコール系溶媒が挙げられるが、種類はこれに限るものでは無くレジスト膜との組み合わせから選択すれば良い。
【0061】
最後にレジスト膜上のリンス液を乾燥させることで、図2Bに示すように、レジスト層5の凹凸パターンを得る。乾燥方法としては,N2のような不活性ガスを直接試料に吹き付ける方法や,リンス液の沸点よりも高い温度で基板を加熱することでリンス液を揮発させる加熱乾燥の他,スピン乾燥,超臨界乾燥などを適用することができる。上記のようにして,レジスト膜の凹凸パターンを得る。
【0062】
ポリマーの自己組織化層9を用いる場合は、図2Aに示すように、ポリマー溶液の塗布後にアニールを行うことで膜内にミクロ相分離パターンを形成し、これをマスクパターンとして凹凸を形成することができる。例えば、2種類のポリマー鎖を含むジブロックコポリマー膜はアニールなどのエネルギー付与により各ポリマー相が相分離し、海状のポリマー相7と島状のポリマー相8のパターンを形成する。このとき、片方のポリマー相7をエッチングにより選択的に除去することで、図2Bに示すように、自己組織化層9の凹凸パターンを作製することができる。
【0063】
アニールでは高温雰囲気に試料を曝露・保持する熱アニールや、溶媒雰囲気に試料を曝露・保持する溶媒アニールを適用することが可能である。
【0064】
他にも、凹凸パターンを物理的に形成する方法としては、ナノインプリント法が挙げられる。この場合は、所望の凹凸パターンを有するスタンパを用いて、レジスト層に対して直接パターンを押し当てた後、スタンパを離型すればよい。その際、高圧でスタンパを押下する方法や、押下中に紫外線などのエネルギー線をレジスト層に照射し、レジストを硬化させた後で離型する方法などがあるが、パターン寸法や製造工程を考慮して種々の方法を適用することができる。以上により、マスク層4上に凹凸パターンが形成される。
【0065】
マスク層パターニング工程
次に、図1C及び図2Cに示すように、レジスト層5または自己組織化層9の凹凸パターンをマスク層4へ転写する。
【0066】
マスク層4は磁気記録層の加工用パターンとなるため、磁気記録層の加工耐性を有することが望まれる。具体的には、磁気記録層のエッチングレートよりも遅い値を有するマスク層を選定する。マスク層4の加工ではウェットエッチング、ドライエッチングを適用することができるが、ウェットエッチングではパターン凹凸に対して横方向に広がるサイドエッチの影響によりパターン寸法が大きく変化するため,パターンの矩形性を比較的良好に維持できるドライエッチングを適用するのが好ましい。
【0067】
マスク層4は異なる材料とエッチングガスの組み合わせにより、多様な構成を有する。例えば、マスク材料としてSiとCの多層マスクを用いる方法がある。SiはO2プラズマに対するエッチング耐性が高く、逆にF2プラズマに対するエッチング耐性が低い。逆に、CはF2プラズマに対するエッチング耐性が高く、O2プラズマに対するエッチング耐性が低い。したがって、両ハードマスクとエッチングガスを組み合わせることで、マスク層を高アスペクト比で加工することができる。
【0068】
ただし、上記材料および方法に限らずエッチングガスと試料の構成から最適なマスク材料を選定すれば、エッチング選択比の問題を解決することが可能である。他にもハードマスクとして、例えばAl、Ti、Cr、Ni、Cu、Ge、Mo、Cr、Ta、W、もしくはこれらの化合物、酸化物などが挙げられる。
【0069】
マスク層が多層体の場合の例としては、基板側から、C/Si層、Si/C/Si、
Si/Cu、Si/Ni、Si/Cr、Ta/Cu、Ta/Ni、Ta/Cr、などが挙げられるが、エッチングガスの組み合わせにより上層と下層の順序を逆にしても良い。
【0070】
また一般的に、ベンゼン環のようにCおよびHを多く含む材料はエッチング耐性が高いため、これに準ずる各種高分子材料をマスク材料に適用することも可能である。
【0071】
エッチングガスにはCF4、C2F6、C3F8、C4F8、ClF3、CCl3F5、C2ClF5、CHF3、NF3などのフッ素系ガスや、Cl2、BCl3、CCl4、SiCl4などの塩素系ガスがある。他にもH2、N2、HBr、NH3、CO、He、Ne、Ar、Kr、Xeなどの各種ガスを適用してもよく、エッチング速度やエッチング選択比を調整するためにこれらのガスを2種類以上混ぜた混合ガスを使用することも可能である。また、プラズマを発生させる方式として容量結合、誘導結合、電子サイクロトロン共鳴、多周波重畳結合などの種々の方法を適用することが可能である。パターン寸法の調整に関しては、プロセスガス圧力、ガス流量、プラズマ投入電力、基板温度、チャンバー雰囲気、到達真空度などのパラメータを適宜設定すればよい。
【0072】
なお、マスク層のエッチング耐性を十分に確保できる場合は、イオンミリングのような物理的エッチングを行っても構わない。
【0073】
剥離層パターニング工程
続いて、図1D及び図2Dに示すように、マスク層4下部の剥離層3に凹凸パターンを転写する。剥離層3となるAl化合物は物理的なエッチング耐性が上層のマスク層4よりも低いことが好ましい。この場合は、イオンミリングなどの方法により容易にパターンを転写することができる。
【0074】
化学的に活性なガスを用いてドライエッチングを行う場合は、Al剥離層3表面の改質が少なくすることが好ましい。表面が改質するとエッチング溶液に対する反応が阻害されるためにエッチングレートが低下し、剥離性が劣化する。この場合は、改質部分をエッチングにより除去しておくとよい。
【0075】
磁気記録層パターニング工程
図1E及び図2Eに示すように、剥離層3下部の磁気記録層2に対し、凹凸パターンを転写する。
【0076】
磁気的な孤立ドットを形成するためには、上記の反応性イオンエッチングやイオンミリング法を適用して凹凸パターンを設ける方法の他、磁気記録層2内へのイオン注入を行っても良い。ミリング時に発生するリデポ(エッチング、ミリングによって削られた材料の再付着)成分が剥離層3の側壁に付着すると、剥離層の側壁部分が露出せずに剥離性が劣化するため、リデポ成分は少ないことが好ましい。
【0077】
剥離工程
図1F及び図2Fに示すように、磁気記録層2上のマスクパターンを剥離層3ごと除去することで、凹凸パターンを有する磁気記録層を得る。コバルト系垂直磁気記録層における磁気特性の劣化抑制と、剥離層3の剥離性を確保するため、剥離溶液にはアルカリ溶液を用いる。溶液のpHは磁気記録層の低ダメージ化と剥離層の剥離性を両立するために適宜溶液調製を行うことで変更可能であるが、特にpHが10以下の範囲で上記項目を満足することが可能である。この場合はアルカリ溶液を希釈する他、緩衝液を添加することでpHを調節するとよい。
【0078】
アルカリ剥離溶液として、トリメチルエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、メチルトリヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイドのような有機アルカリ溶液を用いることができる。
【0079】
また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、ヒドラジンなどのような無機アルカリ溶液を適用することも可能である。
【0080】
磁気記録層がアルカリ剥離溶液に曝される場合、コバルト基水和物が磁気記録層から溶出し、磁気記録層上に付着することで媒体の平坦性が阻害されることになる。代表的な
Co溶出物としては、CoCl2、Co(OH)2、Co(NH2)2、Co(OH)3、Co(NH2)3、Co(NO3)2・6H2O、Co(CH3COO)2などが挙げられる。磁気記録層からのこれらの溶出物は少ないほど好ましく、Co有機物の析出が少ない無機アルカリ溶液を用いることが望ましい。
【0081】
剥離方法は、アルカリ溶液中に試料を浸漬する方法の他、種々の方法を適用することが可能である。また、剥離層とアルカリ溶液の反応性を変えるため液温を調節してもよい。
【0082】
剥離層表面の改質を避けるため、Arなどの不活性雰囲気中で剥離を行うことも可能である。さらに、微細パターン間への溶液の浸透を改善するため、アルカリ溶液に界面活性剤を添加しても構わない。
【0083】
保護層形成工程
最後に、図1G及び図2Gに示すように、凹凸を有する磁気記録層パターン2上にC系保護層6と図示しないフッ素系潤滑膜を成膜することで、凹凸パターンが設けられた磁気記録媒体10,20を得る。
【0084】
(第2の実施形態)
図3Aないし図3Iに第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図を示す。
【0085】
図3Aないし図3Iに示すように、第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法を用いると、磁気記録層2と金属剥離層3との間にさらに中間マスク層11を形成する工程と、凹凸パターンを金属剥離層3に転写する工程と凹凸パターンを磁気記録層2に転写する工程の間に、前記凹凸パターンを中間マスク層11に転写する工程と、金属剥離層3を除去する工程の後、エッチングにより中間マスク層11を除去する工程とをさらに有すること以外は、実施例1と同様にして、凹凸パターンが形成された磁気記録媒体30を形成することができる。
【0086】
中間マスク層の材料として例えばNi、Ta、Cu、Cr、Si、C、Mo、Al、
Zn、Au、Ag、Wおよびそれらの合金を使用することができる。また、高分子と金属を混合させたコンポジット材料を用いてもよい。
【0087】
凹凸パターンを中間マスク層に転写する方法としては、前述の反応性イオンエッチングやArイオンミリングに代表されるドライエッチングや、溶液を用いたウェットエッチング等を適用することができる。また、中間マスク層のエッチング、すなわち磁気記録層上からの除去でも同様に、反応性イオンエッチングやArイオンミリング、アッシング、ウェットエッチングを適用可能であるが、この場合は磁気記録層の劣化を小さくすることが好ましい。
【0088】
実施例
【実施例1】
【0089】
実施例1では、凹凸パターン形成工程においてレジスト膜を用いたパターニング方法を適用した例を説明する。
【0090】
かかる実施形態を下記のように説明する。まず、基板上に磁気記録層をDCスパッタ法により形成した。ガス圧力は0.7Paとし、投入電力は500Wに設定し、基板側から10nm厚NiTa下地層/4nm厚Pd下地層/20nm厚Ru下地層/10nm厚CoPt記録層を順次成膜し、最後に3.5nm厚C保護層を形成することで磁気記録層を得た。
【0091】
続いて、磁気記録層上にアルミニウム金属剥離層をスパッタ法により形成した。ガス圧力は0.6Paとし、投入電力は500Wとした。このアルミニウム層の平坦性は、最上部であるパターニングマスク層の形成に強く影響するため、その表面粗さは小さいほど良い。アルミニウムのみで剥離層を形成する場合、結晶化による表面粗さの増大がパターニング層の凹凸パターン劣化につながるため、アルミニウムは非晶質であることが好ましい。また、数nmのパターニング後は、大気に曝露されたアルミニウム剥離層の表面が自然酸化し、剥離性の劣化につながるが、金属添加によりこれを抑制することが可能である。本例ではアルミニウムを剥離層に適用し、磁気記録媒体の作製を行った例を示す。
【0092】
金属離層上のパターニング用マスク層を形成では、30nm厚C/3nm厚Siを基板側から順次積層した。成膜では対向ターゲット式DCスパッタ装置を用い、Arガス流量 35sccm、Arガス圧力0.3Pa、投入電力200Wとした。
【0093】
次いで、パターニング用のレジスト膜を成膜した。本例では汎用電子線ポジ型レジストを用いた。電子線レジストとして日本ゼオン株式会社製のZEP−520Aを用い、アニソールを溶媒として重量比1:3で希釈した溶液に調製した後、回転数を2500rpmに設定し基板上にスピンコートした。試料は真空ホットプレートを用いて180℃に保持した下、180秒間プリベークすることで電子線レジストを硬化させた。
【0094】
このようにして磁気記録媒体上に、剥離層、マスク層、及びレジスト層を形成した。
【0095】
次いで、ZrO/O熱電界放出型電子源を有し、加速電圧100kV・ビーム径
10nm径のビームを具備した電子線描画装置を用い、電子線レジストにパターン描画を行った。電子線描画装置は,描画パターンを形成するための信号と、試料ステージの一方向移動機構と回転機構とを具備した、いわゆるx−θ型描画装置である。試料の描画では電子線を偏向するための信号を同期させるとともに,半径方向に対してステージを移動させている。ここで、描画線速度0.15m/s、ビーム電流値13nA、半径方向への送り量を10nmとして、電子線レジストにピッチ30nmを有するドット/スペースパターンの潜像を形成した。
【0096】
図8に、磁気記録媒体の周方向に対する記録ビットパターンの一例を表す図を示す。
【0097】
磁気記録層のパターンは図8に示すように、ディジタル信号の1と0に相当するデータを記録する記録ビット領域21’と、磁気ヘッドの位置決め信号となるプリアンブルアドレスパターン22、バーストパターン23からなる、いわゆるサーボ領域24とに大別され、これを面内パターンとして形成した。
【0098】
続いて、レジストパターンの現像を行い凹凸パターンを形成した。現像では100 %酢酸ノルマルアミルを成分とした有機現像液を用い、20秒間浸漬することで電子線レジストの現像を行った。次いで、イソプロピルアルコールに20秒間浸漬してリンスを行い、N2の直接ブローにより試料表面を乾燥させた。
【0099】
次に、電子線レジストパターンをマスクとしてSi層のエッチングを行った。エッチングでは誘導結合型リアクティブイオンエッチング装置を用いた。エッチングガスをCF4として、到達真空度1.0×10−5、ガス流量5 sccm、アンテナ電力100W、バイアス電力5W、エッチングガス圧0.1Pa、エッチング時間17秒に設定し、Si層のエッチングを行った。また同様に、エッチングガスをO2としてアンテナ電力
100W、バイアス電力20W、エッチングガス圧0.1Pa、エッチング時間30sとして、下層Cのエッチングを行った。
【0100】
C直下のAl剥離層はArイオンミリングによりパターニングした。Arイオン加速電圧300V,ガス流量3sccm,ミリング圧力0.1Paで12秒間ミリングを行い,Al膜を5nm厚でパターニングした。
【0101】
同様に、磁気記録層への凹凸パターン転写は、加速電圧300V、ミリング時間120秒としたArイオンミリングにより行った。
【0102】
凹凸が形成された磁気記録層上のマスクを除去するため、溶媒として水酸化ナトリウム0.05%水溶液を用い、剥離層、マスク層、及びレジスト層が形成された磁気記録媒体を300秒浸漬し、アルミニウム金属剥離層をアルカリ溶媒で溶解して、剥離層とともにマスク層及びレジスト層をリフトオフした。
【0103】
ここで、磁気記録層が水酸化ナトリウム水溶液に曝されることによる影響を調べるため、水酸化ナトリウム溶液浸漬後のCoPt膜の静磁気特性を評価した。さらに、水酸化ナトリウム0.1%水溶液を用いて同様にして300秒の浸漬を行い、静磁気特性を評価した。その結果として、アルカリ溶液濃度と磁化との関係を表すグラフを図4に示す。また、アルカリ溶液濃度と保磁力との関係を表すグラフを図5に示す。
【0104】
図示するように、飽和磁化の減少ならびに保磁力の増大は比較的軽微であるため、磁気記録層の特性劣化を抑制しながらマスクを剥離することが可能であることがわかった。
【0105】
また、水酸化ナトリウム溶液浸漬後におけるCoPt連続膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。水酸化ナトリウム0.05%水溶液を用いた場合のCoPt連続膜の表面のSEM画像を図6に、水酸化ナトリウム0.1%水溶液を用いた場合のCoPt連続膜の表面のSEM画像を図7に、各々示す。0.05%以下の濃度を有する溶液浸漬後ではCo系溶出物の付着を少なくすることができることがわかった。
【0106】
水酸化ナトリウム溶液に対するアルミニウム化合物の剥離速度は、金属添加によりアルミニウムのそれよりも数倍程度速くできるため、プロセス時間短縮の観点からも有効である。
【0107】
その後、凹凸が形成された磁気記録層上に5nm厚のダイヤモンドライクカーボン保護層を、DCスパッタ法により形成した。
【0108】
最後に、パーフルオロポリエーテル系潤滑膜をディップコートにより1.5nm厚で形成することで磁気記録媒体を得た。
【0109】
本実施例のように、金属を添加したアルミニウムを剥離層とすることで平坦性が良好になるため、パターンのばらつきを小さくすることが可能である。また、マクロなパターンムラが抑制されるので、面内均一性の良好な磁気記録媒体を作製できる。さらに、エッチングレートの増大により剥離性が改善され、グライド特性と信号S/Nの良い磁気記録媒体が得られる。
【実施例2】
【0110】
実施例2では、凹凸パターン形成工程においてジブロックコポリマーで構成される自己組織化膜をレジスト層に適用した例を説明する。
【0111】
以下、磁気記録層形成工程、剥離層形成工程、マスク層形成工程は第1の実施形態と実質的に相違する訳でないので,詳細な説明を省略する。
【0112】
マスク層上に自己組織化膜を成膜した。まずは、ブロックコポリマー溶液を基板上に塗布した。ブロックコポリマー溶液にはポリスチレンとポリジメチルシロキサンからなるブロック共重合体を塗布溶媒に溶解したものを用いた。ポリスチレンとポリジメチルシロキサンの分子量はそれぞれ11700、2900である。また、溶媒にはアニソールを用い、重量パーセント濃度1.5%でポリマー溶液の調製を行った。
【0113】
この溶液をマスク上に回転数5000rpmでスピナー塗布し、単層自己組織化膜を成膜した。さらに、自己組織化膜内部にポリジメチルシロキサンからなるドットパターンと、ポリスチレンからなるマトリックスをミクロ相分離させるため、熱アニールを行った。
【0114】
熱アニールでは真空加熱炉を用い、炉内圧力0.2Paの減圧雰囲気下で170℃・
12時間のアニールを行い、自己組織化膜内部にミクロ相分離構造を形成した。なお、このアニールは有機溶媒雰囲気化で試料を曝露する、いわゆる溶媒アニールであってもよい。
【0115】
続いて、相分離パターンを基にエッチングにより凹凸パターンを形成した。エッチングでは誘導結合プラズマ型リアクティブイオンエッチングにより行った。プロセスガス圧力は0.1Pa、ガス流量は5sccmとした。まず、自己組織化膜の表層のポリジメチルシロキサンを除去するため、CF4ガスをエッチャントとし、アンテナ電力50W、バイアス電力5Wで7秒のエッチングを行った。次いで、マトリックスのポリスチレンを除去するため、O2ガスをエッチャントとしてアンテナ電力50W、バイアス電力5Wで
200秒エッチングを行った。ポリスチレンの除去に用いるO2エッチャントは、下層のCマスクもエッチングするため、Siをストッパ層としてエッチングが終了する。これにより、ジブロックコポリマーからなる凹凸パターンが形成される。
【0116】
さらに、凹凸パターンを下層のマスク層に転写した。自己組織化膜における凹凸形成と同様に、誘導結合プラズマ型リアクティブイオンエッチングによりマスク層の加工を行った。プロセス圧力は0.1Pa、ガス流量は5sccmである。Si層の除去ではCF4エッチャントでアンテナ電力50W、バイアス電力5Wで20秒のエッチングを行った。また、C層の除去ではO2エッチャントでアンテナ電力100W、バイアス電力10Wで20秒のエッチングを行った。
【0117】
以下実施例1と同様に、剥離層、磁気記録層へのパターン転写を行い、凹凸パターンを磁気記録層上に形成した後、NaOH溶液への浸漬によりAl化合物剥離層を除去した。最後にC系保護層およびF系保護層を成膜することで、面内均一性が良く剥離残渣の少ない磁気記録媒体が得られた。
【実施例3】
【0118】
実施例3では、レジスト層に対するナノインプリントにより凹凸パターンを形成した例を説明する。凹凸パターンの転写、剥離プロセスに関しては実施例1および2と同様である。
【0119】
Siマスク上に紫外線硬化レジスト層を40nm厚でスピンコートした。紫外線硬化レジスト材料にはZEONOR1060R(日本ゼオン(株)製)を用いた。このレジスト層に対し、30nmピッチドットパターンが形成された樹脂スタンパをインプリント・保持し、紫外線を照射することでレジストパターンを硬化させた後、樹脂スタンパを離型することでレジスト層の凹凸パターンを得た。
【0120】
インプリントされた凹部分には残渣があるため、反応性イオンエッチングによりこれを除去しSiマスク層を露出させた。反応性イオンエッチングではO2ガスを用い、アンテナ電力100W、バイアス電力20W、7秒間のエッチングを行うことで残渣を除去した。
【0121】
引き続き、実施例1と同様に、剥離層、磁気記録層へのパターン転写を行い、凹凸パターンを磁気記録層上に形成した後、NaOH溶液への浸漬によりAl化合物剥離層を除去した。最後にC系保護層およびF系保護層を成膜することで、面内均一性が良く剥離残渣の少ない磁気記録媒体が得られた。
【実施例4】
【0122】
実施例4では、磁気記録層とアルミニウム金属剥離層の間に中間マスク層をさらに1層設けた例を説明する。
【0123】
磁気記録層上の第1のマスク層にはNiTaを選定し、DCスパッタ法により5nm厚で成膜した。剥離層および剥離層上のマスク層形成およびレジストパターニング層の形成に関しては実施例1ならびに2と同様である。O2エッチングにより剥離層に凹凸パターンを設けた後、加速電圧300VのArイオンミリングによりNiTaマスク層と磁気記録層に凹凸パターンを転写した。磁気記録層に対してNiTa膜のミリング耐性が低いため、記録層の形状劣化を抑えながらNiTaマスク層を物理的に除去することが可能である。次いで、水酸化ナトリウム溶液によるリフトオフを行い、NiTaマスク上のパターンを除去した。さらに、Arイオンミリングを行うことで NiTaマスクを物理的に剥離し、凹凸が設けられた磁気記録層を得た。最後に、パーフルオロポリエーテル系潤滑膜を1.5nm厚で形成することで実施例1と同様の効果が得られる磁気記録媒体となる。
【0124】
通常、マスク層が複数に渡る場合はパターンアスペクト比の増大によりウェットエッチング時間が増長するため、磁気記録層が溶液に曝露される時間も長くなる。そのため、磁気記録層へのダメージが増大することにつながる。しかしながら、本例のようにあらかじめマスク層数を減らしておくことで、磁気記録層上部のマスク剥離は容易になるため、剥離残渣が少なく信号S/Nの良い磁気記録媒体が得られる。
【比較例1】
【0125】
比較例1では、磁気記録層上の剥離層にAl化合物以外の金属を適用した例を説明する。
【0126】
剥離層材料として、Si、SiO2、MoSi2、Ni、NiTa、Ta、W、Mo、Cr、Cr2O3、C、Ti、TiNを適用した。また、アルミニウムへ半金属ならびに非金属を添加したAl−10%BN、Al−10%C、Al−10%Si、Al−10%B4Cを添加したアルミニウム化合物を適用すること以外は、実施例1ないし3のいずれかと同様にして、磁気記録媒体上に、任意にマスク中間層、剥離層、マスク層、及びレジストあるいは自己組織化層を形成した。磁気記録層へのパターン転写後、水酸化ナトリウム溶液を用いて剥離層を除去したところ、Alを含まない各金属はいずれも剥離液に対して不溶となり、マスク剥離を行うことができなかった。
【0127】
一方、元素添加を行ったAl化合物の場合は剥離性が良好で剥離速度も速く、剥離残渣が少ない磁気記録媒体を得ることができた。
【0128】
実施形態の磁気記録媒体製造方法は、磁気記録層上にアルミニウムもしくはアルミニウム化合物からなる剥離層を形成し、磁気記録層へ凹凸パターンを形成した後、アルカリ溶液による溶解により剥離層を除去してマスクパターンを磁気記録層から剥離する工程を含む。
【0129】
アルミニウム剥離層は溶液のpHが比較的低い弱アルカリ溶液を用いて溶解できるため、磁気記録層へのダメージが軽微となる。したがって、磁気記録層における磁気特性を劣化することなく、記録媒体を作製することができる。
【0130】
また、剥離性の向上により磁気記録層上のマスクパターン残渣を少なくできるため、媒体上の平坦性が向上する。よって、HDI特性の良好な磁気記録媒体が得られる。
【0131】
アルミニウム剥離層は、大気曝露された表層において自然酸化膜を形成するため、剥離性が純アルミニウムのそれよりも劣化することになる。これに対し元素添加を行い、酸化を抑制したアルミニウム剥離層を適用することもできる。この場合、純アルミニウムよりも迅速に剥離を行うことが可能となる。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0133】
1…基板、2…磁気記録層、3…剥離層、4…マスク層、5…レジスト層、6…保護層、7…海状のポリマー相、8…島状のポリマー相、9…自己組織化層、10,20,30…凹凸パターンが形成された磁気記録媒体、11…中間マスク層、12…磁気記録媒体
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器で扱われる情報量は増加の一途を辿っており、大容量記録装置の実現が渇望されている。HDD(ハードディスクドライブ)では高記録密度化を実現するため、垂直磁気記録を中心として種々の技術開発が進められている。さらに、記録密度の向上と熱ゆらぎ耐性を両立できる媒体として、記録パターンを面内で独立させたディスクリートトラック媒体やビットパターンド媒体が提案されており、その製造技術の開発が必須となっている。
【0003】
ビットパターンド媒体のように、1ビットの情報を1セルで記録するためには各セル同士が磁気的に分離されていれば良く、微細加工技術を基に磁性ドット部と非磁性ドット部を面内で形成する例が多い。
【0004】
具体的には、半導体製造技術を適用して基板上の磁気記録層を分離する。磁気記録層上部にパターニングマスクを成膜し、これに凹凸パターンを形成した後、磁気記録層へと転写することで、凹凸により記録パターンが独立した磁気記録媒体が得られる。
【0005】
マスクパターンに凹凸を設けるためには、半導体製造における汎用のレジスト材料が用いられ、エネルギー線を照射することで凹凸部分を選択的に改質することでパターンを得る方法や、レジスト膜内に化学的性質の異なるパターンを配列させた自己組織化膜をパターニングする方法、あるいは凹凸型を物理的にインプリントしてパターニングする方法などが挙げられる。
【0006】
他にも、マスクパターンに凹凸を設けた後、高エネルギーで照射されたイオンを磁気記録層へ注入し、パターンの磁性を選択的に失活させることで記録パターンが非記録領域を介して磁気的に分離された媒体を得る方法もある。
【0007】
ここで、磁気記録媒体への書き込みあるいは読み出しを行うための磁気ヘッドを媒体上で走査させる場合、磁気記録層上のマスクパターンが残存していると凹凸差が大きくなり、ヘッドクラッシュが生じてしまう。また、磁気記録層−磁気ヘッド間の距離が大きいと磁気ヘッドが検出できる信号S/Nが小さくなる。そのため、磁気記録層をパターニングした後では磁気記録層上のマスクパターンを除去して凹凸差を低くしておく必要があり、実プロセスでは磁気記録層とマスク層の間に剥離層を設けるのが一般的である。
【0008】
ビットパターンド媒体の剥離プロセスに関する例では、カーボン剥離層をドライエッチングで除去する方法が挙げられている。しかしながら、この場合はエッチングガスである酸素により磁気記録層が酸化してしまい、記録層の磁気特性を劣化してしまう問題がある。また、マスク層の凹凸パターン幅に対して同程度以上の巨大残渣がある場合、ドライエッチングを行う場合は残渣を除去することが困難であるためにこれが剥離不良箇所になり易く、媒体上に突起パターンとして残ってしまうといった問題がある。そのため、面内均一性を確保した媒体を得ることが難しい。
【0009】
一方、ドライ剥離に対し、ウェット剥離の場合は剥離溶液が剥離層と接触した時点で剥離が等方的に進行するため、ドライ剥離で残存するような巨大残渣を剥離することが可能となる。そこで、剥離層としてシリコン含有ポリマーを用い、これを有機溶媒でウェット剥離する例が挙げられている。
【0010】
しかしながら、シリコン含有ポリマーを剥離層として用いる場合、マスク層の成膜やエッチングなどにより剥離層に熱エネルギーが加わり、架橋反応が促進することで剥離層が著しく硬化する。そのため、溶液に対する溶解性が悪く剥離不良箇所が多くなってしまう他、剥離時間が長くなることでプロセスコストの増大につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−76676号公報
【特許文献2】特開2005−29779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
実施形態によれば、マスクパターンの剥離性が良好で、磁気特性の劣化を抑制した磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態によれば、基板上に磁気記録層を形成する工程と、
前記磁気記録層上に、アルミニウム及びアルミニウム化合物のうち1つからなる金属剥離層を形成する工程と、
前記金属剥離層上にマスク層を形成する工程と、
前記マスク層に凹凸パターンを設ける工程と、
前記凹凸パターンを金属剥離層に転写する工程と、
前記凹凸パターンを磁気記録層に転写する工程と、
アルカリ溶液を用いて前記金属剥離層を除去する工程とを具備することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1B】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1C】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1D】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1E】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1F】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図1G】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図2A】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2B】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2C】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2D】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2E】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2F】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図2G】第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す図である。
【図3A】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3B】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3C】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3D】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3E】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3F】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3G】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3H】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図3I】第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図である。
【図4】アルカリ溶液濃度と磁化との関係を表すグラフである。
【図5】アルカリ溶液濃度と保磁力との関係を表すグラフである。
【図6】水酸化ナトリウム溶液浸漬後におけるCoPt連続膜の表面の状態を表すSEM画像写真である。
【図7】水酸化ナトリウム溶液浸漬後におけるCoPt連続膜の表面の状態を表すSEM画像写真である。
【図8】磁気記録媒体の周方向に対する記録ビットパターンの一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法は、基板上に磁気記録層を形成する工程と、磁気記録層上に金属剥離層を形成する工程と、金属剥離層上にマスク層を形成する工程と、マスク層に対して凹凸パターンを設ける工程と、エッチングにより凹凸パターンを金属剥離層に転写する工程と、エッチングにより凹凸パターンを磁気記録層に転写する工程と、溶媒を用いて前記金属剥離層を溶解、除去する工程を含む。
【0016】
金属剥離層は、アルミニウム、またはアルミニウム化合物のいずれかである。
【0017】
溶媒としては、アルカリ溶液を用いる。
【0018】
凹凸パターンが形成された磁気記録層上に保護層をさらに形成することができる。
【0019】
また、第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法は、基板上に磁気記録層を形成する工程と、磁気記録層上に中間マスク層を形成する工程と、中間マスク層上に金属剥離層を形成する工程と、金属剥離層上にマスク層を形成する工程と、マスク層に対して凹凸パターンを設ける工程と、エッチングにより凹凸パターンを金属剥離層に転写する工程と、エッチングにより凹凸パターンを中間マスク層に転写する工程と、エッチングにより凹凸パターンを磁気記録層に転写する工程と、アルカリ溶液を用いて前記金属剥離層を除去する工程と、エッチングにより前記第1のマスク層を除去する工程とを含む。
【0020】
金属剥離層は、第1の実施形態と同様にアルミニウム、またはアルミニウム化合物のいずれかである。
【0021】
金属剥離層の除去は、第1の実施形態と同様にアルカリ溶液を用いて行われる。
【0022】
第1の実施形態と同様に凹凸パターンが形成された磁気記録層上に保護層をさらに形成することができる。
【0023】
実施形態によれば、磁気記録層へのダメージを抑制し、かつアルカリ溶液で剥離可能なアルミニウムを剥離層として用いることで、剥離残渣が少なく、HDI(Head Disk Interface)特性の良好な磁気記録媒体が得られる。
【0024】
アルミニウム化合物は、例えば窒素、ホウ素、珪素、及び炭素からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことができる。
【0025】
実施形態によれば、剥離層として使用されるアルミニウムへの上記成分の添加により、表面の平坦性が改善され、自己組織化膜のマクロな凹凸が小さくなるので、媒体の面内ムラが小さくなる。
【0026】
また、加工後に大気曝露されるアルミニウム剥離層の側面は自然酸化することになるが、上記成分の添加により酸化の影響が軽微になるため、エッチングレートが下がらず剥離性を良くすることができる。
【0027】
上記成分の添加によりアルミニウム剥離層の密度が小さくなるため、アルカリエッチングレートが速くなる。したがって、媒体の作製プロセス時間が短縮される。
【0028】
以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法では、磁気記録媒体上に、マスクパターン、剥離層、磁気記録層への凹凸を形成した後、剥離層を除去することで凹凸パターンを有する磁気記録媒体が得られる。
【0030】
図1Aないし図1Gに、第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図を示す。
【0031】
また、図2Aないし図2Gに、第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例を示す。
【0032】
図2Aないし図2Gに示す方法は、レジスト層5の代わりに自己組織化層9を形成して、自己組織化層9に凹凸パターンを形成すること以外は図1Aないし図1Gと同様である。
【0033】
まず、図1Aに示すように、磁気記録媒体12を用意し、磁気記録媒体12上に、剥離層3、マスク層4、レジスト層5を順に形成する。
【0034】
磁気記録層形成工程
基板1上に磁気記録層2を形成し、磁気記録媒体12を得る。基板にはガラス基板、金属含有基板、セラミックス基板などを用いることが可能であるが、平坦性の良好なガラス基板を用いることが好ましい。磁気記録層2は金属からなる非磁性下地層とコバルトを主成分とした垂直磁気記録層から構成され、さらにPt、金属酸化物を含むことができる。非磁性下地層は垂直磁気記録層の結晶配向性を改善するためのもので、例えばRu系金属、Pd系金属、Pt系金属およびそれらの合金を用いることができる。また、垂直磁気記録層にはCoPt、CoCr、CoCrPt、CoCrSi、CoCrSiO2などの合金を用いることが可能である。基板1と磁気記録層2の間には密着層や軟磁性下地層を形成してもよい。密着層は基板との密着性を改善するためのもので、例えばCr、Ta、
Ti、NiTaなどを用いることができる。また、軟磁性下地層は磁気記録ヘッドからの記録磁界を垂直磁気記録層に還流させ、記録再生効率を向上するためのものであり、Coを主成分とした合金を用いるのが好適である。具体的には、CoZr、CoZrNb、
CoZrTaなどが挙げられる。
【0035】
これらの層は複数で形成されても構わない。
【0036】
垂直磁気記録層の厚さは、再生出力信号を高確度で測定するために5nm厚以上が好ましく、信号強度の歪を抑えるために40nm厚以下が好ましい。
【0037】
Co系垂直磁気記録層上部には保護層となるダイヤモンドライクカーボン膜を成膜することができる。これにより磁気記録層を得ることができる。
【0038】
剥離層形成工程
続いて、磁気記録層2上に剥離層3を形成する。剥離溶液を用いたウェットプロセスでは、溶液曝露に対して磁気記録層の磁気特性劣化を抑えることと、剥離層における現実的な剥離速度の確保を両立することが肝要である。すなわち、磁気記録層であるCo系金属が難溶であり、剥離層が易溶となるような剥離溶液と剥離層材料を選択すればよく、pHが7よりも大きいアルカリの範囲において上記項目を満足できる。
【0039】
一方、種々の剥離材料のうち、アルカリに対して可溶なものとしてAl、Zn、Snなどが挙げられるが、剥離速度が比較的速い材料としてAl及びその化合物を使用する。
【0040】
アルミニウム膜を用いる場合、表面に形成される自然酸化膜によりアルカリ溶液に対する剥離速度が低下する傾向があるため、剥離層を、半金属および非金属、もしくはそれらの化合物をAlに添加したアルミニウム化合物とすることで、この問題を解決できる。アルミニウムに添加する成分として、具体的には、炭素、窒素、ホウ素、珪素ならびにそれらの化合物が挙げられる。添加成分はAl原子と結合するか、あるいはAl格子間へ侵入することで酸素との結合を阻害する効果がある。また、正味のAl密度が低下することにより疎な膜が形成されることになる。したがって、Al表面の自然酸化の抑制とAl密度の低下により、剥離速度が増大することになるため、製造プロセスの短時間化が実現される。
【0041】
一方、Alに対する元素添加は、薄膜の平坦性を改善する効果もある。Alは成膜の段階で結晶粒を構成し易いため、剥離層の表面ラフネスを増大させることになるが、元素添加により結晶化が阻害されるため、表面ラフネスを低減することができる。例えば、アルミニウムへ10at.%BN、10at.%C、10at.%Si、10at.%B4Cなどを添加すれば良いが、剥離速度を維持できる範囲で添加量を変えることもできる。一例として、アルミニウム膜の平均ラフネスが0.64nmであるのに対し、10at.%BN添加により0.38nm、10at.%B4C添加により0.3nm程度に低減することが可能である。
【0042】
剥離溶液として、0.1%水酸化ナトリウム水溶液、及び0.05%水酸化ナトリウム水溶液(濃度は重量%)を用いた場合のアルミニウム及びその種々の化合物のエッチングレートの一例を下記表1に示す。
【表1】
【0043】
表の値はアルミニウム剥離材料における単位時間あたりの膜厚減少速度であり、この値が大きいと剥離速度が速いことを意味する。アルミニウムの値に対して各種元素を添加したアルミニウム化合物ではエッチングレートが向上し、低濃度アルカリ溶液でも溶解させることが可能となる。とりわけ、10at.%BNや10at.%B4Cを添加したアルミニウム化合物のエッチングレートは、アルミニウム単独材料のそれよりも数倍大きく、短時間で剥離を行うことが可能であることから、アルミニウム化合物としては、窒素およびホウ素、または窒素および炭素を含むことが好ましい。
【0044】
剥離層は物理的・化学的気相成長法をはじめとした種々の方法により磁気記録層上へ形成可能である。この場合、磁気記録層における磁気特性が熱履歴などにより劣化しないことが望ましい。また、下層の磁気記録層および上層のマスク層への元素拡散は少ないほどよい。
【0045】
Al膜に対する添加元素の割合に関して何ら限定は無く、剥離速度や表面性を考慮した上で添加割合を調整すればよい。
【0046】
マスク層形成工程
剥離層3の上部には凹凸パターンを転写するためのマスク層4を形成する。このマスク層4は上層の凹凸パターンを物理的あるいは化学的に転写可能な材料を選択すればよい。マスク層は、第1の層及び第1の層とは異なる材料からなる第2の層を含む多層体で構成することが可能である。
【0047】
マスク層は蒸着やスパッタリング,イオンプレーティングに代表される物理的気相成長法や,熱・プラズマを用いた化学的気相成長法により形成することが可能である。その厚さは、凹凸パターンのピッチや高さを考慮した上で調整すればよい。
【0048】
また、上層である凹凸パターンの均一性はマスク層の表面ラフネスに依存するところが大きいため、これを低減しておくことが好ましい。
【0049】
レジスト層形成工程
引き続き、図1Aに示すように、マスク層4の上部に凹凸パターン形成用のレジスト層5を形成する。レジスト層5の種類、ポジ型・ネガ型には何ら限定は無く、エネルギー線照射により潜像を形成する材料として主鎖切断型、化学増幅型、架橋型レジストを用いることができる。例えば、ノボラック系樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ−αメチルスチレン、ポリヒドロキシスチレン、水素シルセスキオキサンなどの高分子材料が挙げられる。
【0050】
また、第1の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の他の例では、図2Aに示すように、レジスト層5の代わりに自己組織化層9を形成し、薄膜内部に微細な規則化パターンを形成できる自己組織化現象により、凹凸パターンを形成する。この場合、自己組織化膜の材料は少なくとも2つのポリマー鎖を有するブロックコポリマーやランダムコポリマーからなるものを選定することが好ましい。これらの基本構造は、(ブロックA)−(ブロックB)のように化学的特性が相互に異なるポリマー同士が共有結合しているものである。具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリビニルピリジン、ポリメチルメタアクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリ乳酸などを組み合わせて用いることができるが、その種類はこれらに限定されるわけではない。
【0051】
自己組織化材料をレジスト膜として適用する場合は、所望のパターン寸法となるように高分子材料の分子量などの各種パラメータを適切に設定しておく。
【0052】
他にも、凹凸型いわゆるスタンパを物理的にインプリントしてパターンを形成するナノインプリント法を適用しても良く、これに用いるレジスト層材料を適切に選択すれば良い。具体的には有機塗布ガラス(Spin on Glass)や加熱硬化レジスト材料、紫外線硬化レジスト材料を用いることができる。この場合は、レジスト層にスタンパを押下・保持した後、レジスト層から離型する。離型が良好であるとレジスト層の倒壊を少なくできるため、スタンパの凹凸パターンにはあらかじめシランカップリング剤などを用いた離型処理を行っておくことが望ましい。
【0053】
これらのレジスト層は、レジスト材料を溶媒で溶解したものをスピンコートあるいはスプレーコートなどの方法により塗布することで形成可能である。このとき、下地層との密着性を良好にするため、レジスト層下部に密着層を形成してもよい。あるいは、レジスト下地層を疏水化処理することでレジスト層の密着性を改善しても構わない。
【0054】
また、レジスト膜は単層で無くとも良く、エネルギー感度の異なるものや流動性の異なる材料を組み合わせて多層構造にしても構わない。
【0055】
レジスト層パターニング工程
次に、図1Bに示すように、レジスト層5に対し凹凸パターンを形成する。
【0056】
レジスト層はエネルギー線の照射により、その化学的性質が選択的に変化する。具体的なエネルギー線として、KrF、ArFなどの紫外線や電子線、荷電粒子線、極短紫外線やX線などを用いることができる。また、干渉露光、縮小投影露光などの方法であっても構わない。
【0057】
以下では、ポジ型レジストのパターニング例に従ってレジスト層5の凹凸形成工程を説明する。まず、レジスト層5の凹部を形成する箇所にエネルギー線を照射する、すなわち露光を行う。このとき、レジスト層5が現像可能となる量のエネルギーが必要となり、各種レジスト材料に対応して露光量を調整する。
【0058】
続いて現像を行い、露光箇所に相当するレジスト層を化学的に除去する。レジスト膜に対する現像液として、例えばテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどのアルカリ現像液を用いることができる。また、有機現像液として酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸ブチル,酢酸アミル,酢酸ヘキシル,酢酸オクチルのようなエステル系溶剤,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,プロピレングリコールモノエチルアセテートのようなケトン系溶剤,アニソール,キシレン,トルエン,テトラリンなどの芳香族系溶剤,エタノール,メタノール,イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤を用いることができる。
【0059】
現像に関わるパラメータとしては時間、液温、粘度などがあるが、所望のパターンを形成するためにこれらを適宜調整することができる。また、現像方法として現像液中に試料を浸す浸漬法や、試料上部に現像液を滴下するパドル法、スピン法などの種類があるが、所望のパターンに対応して適宜現像方法を選べばよい。
【0060】
現像後のパターンに対し、リンスを行うことで現像液をパターン上から除去する。リンス液は現像液と相溶の関係にあれば溶解除去することが可能である。代表的なリンス液としてイソプロピルアルコールやエタノールなどのアルコール系溶媒が挙げられるが、種類はこれに限るものでは無くレジスト膜との組み合わせから選択すれば良い。
【0061】
最後にレジスト膜上のリンス液を乾燥させることで、図2Bに示すように、レジスト層5の凹凸パターンを得る。乾燥方法としては,N2のような不活性ガスを直接試料に吹き付ける方法や,リンス液の沸点よりも高い温度で基板を加熱することでリンス液を揮発させる加熱乾燥の他,スピン乾燥,超臨界乾燥などを適用することができる。上記のようにして,レジスト膜の凹凸パターンを得る。
【0062】
ポリマーの自己組織化層9を用いる場合は、図2Aに示すように、ポリマー溶液の塗布後にアニールを行うことで膜内にミクロ相分離パターンを形成し、これをマスクパターンとして凹凸を形成することができる。例えば、2種類のポリマー鎖を含むジブロックコポリマー膜はアニールなどのエネルギー付与により各ポリマー相が相分離し、海状のポリマー相7と島状のポリマー相8のパターンを形成する。このとき、片方のポリマー相7をエッチングにより選択的に除去することで、図2Bに示すように、自己組織化層9の凹凸パターンを作製することができる。
【0063】
アニールでは高温雰囲気に試料を曝露・保持する熱アニールや、溶媒雰囲気に試料を曝露・保持する溶媒アニールを適用することが可能である。
【0064】
他にも、凹凸パターンを物理的に形成する方法としては、ナノインプリント法が挙げられる。この場合は、所望の凹凸パターンを有するスタンパを用いて、レジスト層に対して直接パターンを押し当てた後、スタンパを離型すればよい。その際、高圧でスタンパを押下する方法や、押下中に紫外線などのエネルギー線をレジスト層に照射し、レジストを硬化させた後で離型する方法などがあるが、パターン寸法や製造工程を考慮して種々の方法を適用することができる。以上により、マスク層4上に凹凸パターンが形成される。
【0065】
マスク層パターニング工程
次に、図1C及び図2Cに示すように、レジスト層5または自己組織化層9の凹凸パターンをマスク層4へ転写する。
【0066】
マスク層4は磁気記録層の加工用パターンとなるため、磁気記録層の加工耐性を有することが望まれる。具体的には、磁気記録層のエッチングレートよりも遅い値を有するマスク層を選定する。マスク層4の加工ではウェットエッチング、ドライエッチングを適用することができるが、ウェットエッチングではパターン凹凸に対して横方向に広がるサイドエッチの影響によりパターン寸法が大きく変化するため,パターンの矩形性を比較的良好に維持できるドライエッチングを適用するのが好ましい。
【0067】
マスク層4は異なる材料とエッチングガスの組み合わせにより、多様な構成を有する。例えば、マスク材料としてSiとCの多層マスクを用いる方法がある。SiはO2プラズマに対するエッチング耐性が高く、逆にF2プラズマに対するエッチング耐性が低い。逆に、CはF2プラズマに対するエッチング耐性が高く、O2プラズマに対するエッチング耐性が低い。したがって、両ハードマスクとエッチングガスを組み合わせることで、マスク層を高アスペクト比で加工することができる。
【0068】
ただし、上記材料および方法に限らずエッチングガスと試料の構成から最適なマスク材料を選定すれば、エッチング選択比の問題を解決することが可能である。他にもハードマスクとして、例えばAl、Ti、Cr、Ni、Cu、Ge、Mo、Cr、Ta、W、もしくはこれらの化合物、酸化物などが挙げられる。
【0069】
マスク層が多層体の場合の例としては、基板側から、C/Si層、Si/C/Si、
Si/Cu、Si/Ni、Si/Cr、Ta/Cu、Ta/Ni、Ta/Cr、などが挙げられるが、エッチングガスの組み合わせにより上層と下層の順序を逆にしても良い。
【0070】
また一般的に、ベンゼン環のようにCおよびHを多く含む材料はエッチング耐性が高いため、これに準ずる各種高分子材料をマスク材料に適用することも可能である。
【0071】
エッチングガスにはCF4、C2F6、C3F8、C4F8、ClF3、CCl3F5、C2ClF5、CHF3、NF3などのフッ素系ガスや、Cl2、BCl3、CCl4、SiCl4などの塩素系ガスがある。他にもH2、N2、HBr、NH3、CO、He、Ne、Ar、Kr、Xeなどの各種ガスを適用してもよく、エッチング速度やエッチング選択比を調整するためにこれらのガスを2種類以上混ぜた混合ガスを使用することも可能である。また、プラズマを発生させる方式として容量結合、誘導結合、電子サイクロトロン共鳴、多周波重畳結合などの種々の方法を適用することが可能である。パターン寸法の調整に関しては、プロセスガス圧力、ガス流量、プラズマ投入電力、基板温度、チャンバー雰囲気、到達真空度などのパラメータを適宜設定すればよい。
【0072】
なお、マスク層のエッチング耐性を十分に確保できる場合は、イオンミリングのような物理的エッチングを行っても構わない。
【0073】
剥離層パターニング工程
続いて、図1D及び図2Dに示すように、マスク層4下部の剥離層3に凹凸パターンを転写する。剥離層3となるAl化合物は物理的なエッチング耐性が上層のマスク層4よりも低いことが好ましい。この場合は、イオンミリングなどの方法により容易にパターンを転写することができる。
【0074】
化学的に活性なガスを用いてドライエッチングを行う場合は、Al剥離層3表面の改質が少なくすることが好ましい。表面が改質するとエッチング溶液に対する反応が阻害されるためにエッチングレートが低下し、剥離性が劣化する。この場合は、改質部分をエッチングにより除去しておくとよい。
【0075】
磁気記録層パターニング工程
図1E及び図2Eに示すように、剥離層3下部の磁気記録層2に対し、凹凸パターンを転写する。
【0076】
磁気的な孤立ドットを形成するためには、上記の反応性イオンエッチングやイオンミリング法を適用して凹凸パターンを設ける方法の他、磁気記録層2内へのイオン注入を行っても良い。ミリング時に発生するリデポ(エッチング、ミリングによって削られた材料の再付着)成分が剥離層3の側壁に付着すると、剥離層の側壁部分が露出せずに剥離性が劣化するため、リデポ成分は少ないことが好ましい。
【0077】
剥離工程
図1F及び図2Fに示すように、磁気記録層2上のマスクパターンを剥離層3ごと除去することで、凹凸パターンを有する磁気記録層を得る。コバルト系垂直磁気記録層における磁気特性の劣化抑制と、剥離層3の剥離性を確保するため、剥離溶液にはアルカリ溶液を用いる。溶液のpHは磁気記録層の低ダメージ化と剥離層の剥離性を両立するために適宜溶液調製を行うことで変更可能であるが、特にpHが10以下の範囲で上記項目を満足することが可能である。この場合はアルカリ溶液を希釈する他、緩衝液を添加することでpHを調節するとよい。
【0078】
アルカリ剥離溶液として、トリメチルエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、メチルトリヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイドのような有機アルカリ溶液を用いることができる。
【0079】
また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、ヒドラジンなどのような無機アルカリ溶液を適用することも可能である。
【0080】
磁気記録層がアルカリ剥離溶液に曝される場合、コバルト基水和物が磁気記録層から溶出し、磁気記録層上に付着することで媒体の平坦性が阻害されることになる。代表的な
Co溶出物としては、CoCl2、Co(OH)2、Co(NH2)2、Co(OH)3、Co(NH2)3、Co(NO3)2・6H2O、Co(CH3COO)2などが挙げられる。磁気記録層からのこれらの溶出物は少ないほど好ましく、Co有機物の析出が少ない無機アルカリ溶液を用いることが望ましい。
【0081】
剥離方法は、アルカリ溶液中に試料を浸漬する方法の他、種々の方法を適用することが可能である。また、剥離層とアルカリ溶液の反応性を変えるため液温を調節してもよい。
【0082】
剥離層表面の改質を避けるため、Arなどの不活性雰囲気中で剥離を行うことも可能である。さらに、微細パターン間への溶液の浸透を改善するため、アルカリ溶液に界面活性剤を添加しても構わない。
【0083】
保護層形成工程
最後に、図1G及び図2Gに示すように、凹凸を有する磁気記録層パターン2上にC系保護層6と図示しないフッ素系潤滑膜を成膜することで、凹凸パターンが設けられた磁気記録媒体10,20を得る。
【0084】
(第2の実施形態)
図3Aないし図3Iに第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法の一例を表す図を示す。
【0085】
図3Aないし図3Iに示すように、第2の実施形態にかかる磁気記録媒体の製造方法を用いると、磁気記録層2と金属剥離層3との間にさらに中間マスク層11を形成する工程と、凹凸パターンを金属剥離層3に転写する工程と凹凸パターンを磁気記録層2に転写する工程の間に、前記凹凸パターンを中間マスク層11に転写する工程と、金属剥離層3を除去する工程の後、エッチングにより中間マスク層11を除去する工程とをさらに有すること以外は、実施例1と同様にして、凹凸パターンが形成された磁気記録媒体30を形成することができる。
【0086】
中間マスク層の材料として例えばNi、Ta、Cu、Cr、Si、C、Mo、Al、
Zn、Au、Ag、Wおよびそれらの合金を使用することができる。また、高分子と金属を混合させたコンポジット材料を用いてもよい。
【0087】
凹凸パターンを中間マスク層に転写する方法としては、前述の反応性イオンエッチングやArイオンミリングに代表されるドライエッチングや、溶液を用いたウェットエッチング等を適用することができる。また、中間マスク層のエッチング、すなわち磁気記録層上からの除去でも同様に、反応性イオンエッチングやArイオンミリング、アッシング、ウェットエッチングを適用可能であるが、この場合は磁気記録層の劣化を小さくすることが好ましい。
【0088】
実施例
【実施例1】
【0089】
実施例1では、凹凸パターン形成工程においてレジスト膜を用いたパターニング方法を適用した例を説明する。
【0090】
かかる実施形態を下記のように説明する。まず、基板上に磁気記録層をDCスパッタ法により形成した。ガス圧力は0.7Paとし、投入電力は500Wに設定し、基板側から10nm厚NiTa下地層/4nm厚Pd下地層/20nm厚Ru下地層/10nm厚CoPt記録層を順次成膜し、最後に3.5nm厚C保護層を形成することで磁気記録層を得た。
【0091】
続いて、磁気記録層上にアルミニウム金属剥離層をスパッタ法により形成した。ガス圧力は0.6Paとし、投入電力は500Wとした。このアルミニウム層の平坦性は、最上部であるパターニングマスク層の形成に強く影響するため、その表面粗さは小さいほど良い。アルミニウムのみで剥離層を形成する場合、結晶化による表面粗さの増大がパターニング層の凹凸パターン劣化につながるため、アルミニウムは非晶質であることが好ましい。また、数nmのパターニング後は、大気に曝露されたアルミニウム剥離層の表面が自然酸化し、剥離性の劣化につながるが、金属添加によりこれを抑制することが可能である。本例ではアルミニウムを剥離層に適用し、磁気記録媒体の作製を行った例を示す。
【0092】
金属離層上のパターニング用マスク層を形成では、30nm厚C/3nm厚Siを基板側から順次積層した。成膜では対向ターゲット式DCスパッタ装置を用い、Arガス流量 35sccm、Arガス圧力0.3Pa、投入電力200Wとした。
【0093】
次いで、パターニング用のレジスト膜を成膜した。本例では汎用電子線ポジ型レジストを用いた。電子線レジストとして日本ゼオン株式会社製のZEP−520Aを用い、アニソールを溶媒として重量比1:3で希釈した溶液に調製した後、回転数を2500rpmに設定し基板上にスピンコートした。試料は真空ホットプレートを用いて180℃に保持した下、180秒間プリベークすることで電子線レジストを硬化させた。
【0094】
このようにして磁気記録媒体上に、剥離層、マスク層、及びレジスト層を形成した。
【0095】
次いで、ZrO/O熱電界放出型電子源を有し、加速電圧100kV・ビーム径
10nm径のビームを具備した電子線描画装置を用い、電子線レジストにパターン描画を行った。電子線描画装置は,描画パターンを形成するための信号と、試料ステージの一方向移動機構と回転機構とを具備した、いわゆるx−θ型描画装置である。試料の描画では電子線を偏向するための信号を同期させるとともに,半径方向に対してステージを移動させている。ここで、描画線速度0.15m/s、ビーム電流値13nA、半径方向への送り量を10nmとして、電子線レジストにピッチ30nmを有するドット/スペースパターンの潜像を形成した。
【0096】
図8に、磁気記録媒体の周方向に対する記録ビットパターンの一例を表す図を示す。
【0097】
磁気記録層のパターンは図8に示すように、ディジタル信号の1と0に相当するデータを記録する記録ビット領域21’と、磁気ヘッドの位置決め信号となるプリアンブルアドレスパターン22、バーストパターン23からなる、いわゆるサーボ領域24とに大別され、これを面内パターンとして形成した。
【0098】
続いて、レジストパターンの現像を行い凹凸パターンを形成した。現像では100 %酢酸ノルマルアミルを成分とした有機現像液を用い、20秒間浸漬することで電子線レジストの現像を行った。次いで、イソプロピルアルコールに20秒間浸漬してリンスを行い、N2の直接ブローにより試料表面を乾燥させた。
【0099】
次に、電子線レジストパターンをマスクとしてSi層のエッチングを行った。エッチングでは誘導結合型リアクティブイオンエッチング装置を用いた。エッチングガスをCF4として、到達真空度1.0×10−5、ガス流量5 sccm、アンテナ電力100W、バイアス電力5W、エッチングガス圧0.1Pa、エッチング時間17秒に設定し、Si層のエッチングを行った。また同様に、エッチングガスをO2としてアンテナ電力
100W、バイアス電力20W、エッチングガス圧0.1Pa、エッチング時間30sとして、下層Cのエッチングを行った。
【0100】
C直下のAl剥離層はArイオンミリングによりパターニングした。Arイオン加速電圧300V,ガス流量3sccm,ミリング圧力0.1Paで12秒間ミリングを行い,Al膜を5nm厚でパターニングした。
【0101】
同様に、磁気記録層への凹凸パターン転写は、加速電圧300V、ミリング時間120秒としたArイオンミリングにより行った。
【0102】
凹凸が形成された磁気記録層上のマスクを除去するため、溶媒として水酸化ナトリウム0.05%水溶液を用い、剥離層、マスク層、及びレジスト層が形成された磁気記録媒体を300秒浸漬し、アルミニウム金属剥離層をアルカリ溶媒で溶解して、剥離層とともにマスク層及びレジスト層をリフトオフした。
【0103】
ここで、磁気記録層が水酸化ナトリウム水溶液に曝されることによる影響を調べるため、水酸化ナトリウム溶液浸漬後のCoPt膜の静磁気特性を評価した。さらに、水酸化ナトリウム0.1%水溶液を用いて同様にして300秒の浸漬を行い、静磁気特性を評価した。その結果として、アルカリ溶液濃度と磁化との関係を表すグラフを図4に示す。また、アルカリ溶液濃度と保磁力との関係を表すグラフを図5に示す。
【0104】
図示するように、飽和磁化の減少ならびに保磁力の増大は比較的軽微であるため、磁気記録層の特性劣化を抑制しながらマスクを剥離することが可能であることがわかった。
【0105】
また、水酸化ナトリウム溶液浸漬後におけるCoPt連続膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。水酸化ナトリウム0.05%水溶液を用いた場合のCoPt連続膜の表面のSEM画像を図6に、水酸化ナトリウム0.1%水溶液を用いた場合のCoPt連続膜の表面のSEM画像を図7に、各々示す。0.05%以下の濃度を有する溶液浸漬後ではCo系溶出物の付着を少なくすることができることがわかった。
【0106】
水酸化ナトリウム溶液に対するアルミニウム化合物の剥離速度は、金属添加によりアルミニウムのそれよりも数倍程度速くできるため、プロセス時間短縮の観点からも有効である。
【0107】
その後、凹凸が形成された磁気記録層上に5nm厚のダイヤモンドライクカーボン保護層を、DCスパッタ法により形成した。
【0108】
最後に、パーフルオロポリエーテル系潤滑膜をディップコートにより1.5nm厚で形成することで磁気記録媒体を得た。
【0109】
本実施例のように、金属を添加したアルミニウムを剥離層とすることで平坦性が良好になるため、パターンのばらつきを小さくすることが可能である。また、マクロなパターンムラが抑制されるので、面内均一性の良好な磁気記録媒体を作製できる。さらに、エッチングレートの増大により剥離性が改善され、グライド特性と信号S/Nの良い磁気記録媒体が得られる。
【実施例2】
【0110】
実施例2では、凹凸パターン形成工程においてジブロックコポリマーで構成される自己組織化膜をレジスト層に適用した例を説明する。
【0111】
以下、磁気記録層形成工程、剥離層形成工程、マスク層形成工程は第1の実施形態と実質的に相違する訳でないので,詳細な説明を省略する。
【0112】
マスク層上に自己組織化膜を成膜した。まずは、ブロックコポリマー溶液を基板上に塗布した。ブロックコポリマー溶液にはポリスチレンとポリジメチルシロキサンからなるブロック共重合体を塗布溶媒に溶解したものを用いた。ポリスチレンとポリジメチルシロキサンの分子量はそれぞれ11700、2900である。また、溶媒にはアニソールを用い、重量パーセント濃度1.5%でポリマー溶液の調製を行った。
【0113】
この溶液をマスク上に回転数5000rpmでスピナー塗布し、単層自己組織化膜を成膜した。さらに、自己組織化膜内部にポリジメチルシロキサンからなるドットパターンと、ポリスチレンからなるマトリックスをミクロ相分離させるため、熱アニールを行った。
【0114】
熱アニールでは真空加熱炉を用い、炉内圧力0.2Paの減圧雰囲気下で170℃・
12時間のアニールを行い、自己組織化膜内部にミクロ相分離構造を形成した。なお、このアニールは有機溶媒雰囲気化で試料を曝露する、いわゆる溶媒アニールであってもよい。
【0115】
続いて、相分離パターンを基にエッチングにより凹凸パターンを形成した。エッチングでは誘導結合プラズマ型リアクティブイオンエッチングにより行った。プロセスガス圧力は0.1Pa、ガス流量は5sccmとした。まず、自己組織化膜の表層のポリジメチルシロキサンを除去するため、CF4ガスをエッチャントとし、アンテナ電力50W、バイアス電力5Wで7秒のエッチングを行った。次いで、マトリックスのポリスチレンを除去するため、O2ガスをエッチャントとしてアンテナ電力50W、バイアス電力5Wで
200秒エッチングを行った。ポリスチレンの除去に用いるO2エッチャントは、下層のCマスクもエッチングするため、Siをストッパ層としてエッチングが終了する。これにより、ジブロックコポリマーからなる凹凸パターンが形成される。
【0116】
さらに、凹凸パターンを下層のマスク層に転写した。自己組織化膜における凹凸形成と同様に、誘導結合プラズマ型リアクティブイオンエッチングによりマスク層の加工を行った。プロセス圧力は0.1Pa、ガス流量は5sccmである。Si層の除去ではCF4エッチャントでアンテナ電力50W、バイアス電力5Wで20秒のエッチングを行った。また、C層の除去ではO2エッチャントでアンテナ電力100W、バイアス電力10Wで20秒のエッチングを行った。
【0117】
以下実施例1と同様に、剥離層、磁気記録層へのパターン転写を行い、凹凸パターンを磁気記録層上に形成した後、NaOH溶液への浸漬によりAl化合物剥離層を除去した。最後にC系保護層およびF系保護層を成膜することで、面内均一性が良く剥離残渣の少ない磁気記録媒体が得られた。
【実施例3】
【0118】
実施例3では、レジスト層に対するナノインプリントにより凹凸パターンを形成した例を説明する。凹凸パターンの転写、剥離プロセスに関しては実施例1および2と同様である。
【0119】
Siマスク上に紫外線硬化レジスト層を40nm厚でスピンコートした。紫外線硬化レジスト材料にはZEONOR1060R(日本ゼオン(株)製)を用いた。このレジスト層に対し、30nmピッチドットパターンが形成された樹脂スタンパをインプリント・保持し、紫外線を照射することでレジストパターンを硬化させた後、樹脂スタンパを離型することでレジスト層の凹凸パターンを得た。
【0120】
インプリントされた凹部分には残渣があるため、反応性イオンエッチングによりこれを除去しSiマスク層を露出させた。反応性イオンエッチングではO2ガスを用い、アンテナ電力100W、バイアス電力20W、7秒間のエッチングを行うことで残渣を除去した。
【0121】
引き続き、実施例1と同様に、剥離層、磁気記録層へのパターン転写を行い、凹凸パターンを磁気記録層上に形成した後、NaOH溶液への浸漬によりAl化合物剥離層を除去した。最後にC系保護層およびF系保護層を成膜することで、面内均一性が良く剥離残渣の少ない磁気記録媒体が得られた。
【実施例4】
【0122】
実施例4では、磁気記録層とアルミニウム金属剥離層の間に中間マスク層をさらに1層設けた例を説明する。
【0123】
磁気記録層上の第1のマスク層にはNiTaを選定し、DCスパッタ法により5nm厚で成膜した。剥離層および剥離層上のマスク層形成およびレジストパターニング層の形成に関しては実施例1ならびに2と同様である。O2エッチングにより剥離層に凹凸パターンを設けた後、加速電圧300VのArイオンミリングによりNiTaマスク層と磁気記録層に凹凸パターンを転写した。磁気記録層に対してNiTa膜のミリング耐性が低いため、記録層の形状劣化を抑えながらNiTaマスク層を物理的に除去することが可能である。次いで、水酸化ナトリウム溶液によるリフトオフを行い、NiTaマスク上のパターンを除去した。さらに、Arイオンミリングを行うことで NiTaマスクを物理的に剥離し、凹凸が設けられた磁気記録層を得た。最後に、パーフルオロポリエーテル系潤滑膜を1.5nm厚で形成することで実施例1と同様の効果が得られる磁気記録媒体となる。
【0124】
通常、マスク層が複数に渡る場合はパターンアスペクト比の増大によりウェットエッチング時間が増長するため、磁気記録層が溶液に曝露される時間も長くなる。そのため、磁気記録層へのダメージが増大することにつながる。しかしながら、本例のようにあらかじめマスク層数を減らしておくことで、磁気記録層上部のマスク剥離は容易になるため、剥離残渣が少なく信号S/Nの良い磁気記録媒体が得られる。
【比較例1】
【0125】
比較例1では、磁気記録層上の剥離層にAl化合物以外の金属を適用した例を説明する。
【0126】
剥離層材料として、Si、SiO2、MoSi2、Ni、NiTa、Ta、W、Mo、Cr、Cr2O3、C、Ti、TiNを適用した。また、アルミニウムへ半金属ならびに非金属を添加したAl−10%BN、Al−10%C、Al−10%Si、Al−10%B4Cを添加したアルミニウム化合物を適用すること以外は、実施例1ないし3のいずれかと同様にして、磁気記録媒体上に、任意にマスク中間層、剥離層、マスク層、及びレジストあるいは自己組織化層を形成した。磁気記録層へのパターン転写後、水酸化ナトリウム溶液を用いて剥離層を除去したところ、Alを含まない各金属はいずれも剥離液に対して不溶となり、マスク剥離を行うことができなかった。
【0127】
一方、元素添加を行ったAl化合物の場合は剥離性が良好で剥離速度も速く、剥離残渣が少ない磁気記録媒体を得ることができた。
【0128】
実施形態の磁気記録媒体製造方法は、磁気記録層上にアルミニウムもしくはアルミニウム化合物からなる剥離層を形成し、磁気記録層へ凹凸パターンを形成した後、アルカリ溶液による溶解により剥離層を除去してマスクパターンを磁気記録層から剥離する工程を含む。
【0129】
アルミニウム剥離層は溶液のpHが比較的低い弱アルカリ溶液を用いて溶解できるため、磁気記録層へのダメージが軽微となる。したがって、磁気記録層における磁気特性を劣化することなく、記録媒体を作製することができる。
【0130】
また、剥離性の向上により磁気記録層上のマスクパターン残渣を少なくできるため、媒体上の平坦性が向上する。よって、HDI特性の良好な磁気記録媒体が得られる。
【0131】
アルミニウム剥離層は、大気曝露された表層において自然酸化膜を形成するため、剥離性が純アルミニウムのそれよりも劣化することになる。これに対し元素添加を行い、酸化を抑制したアルミニウム剥離層を適用することもできる。この場合、純アルミニウムよりも迅速に剥離を行うことが可能となる。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0133】
1…基板、2…磁気記録層、3…剥離層、4…マスク層、5…レジスト層、6…保護層、7…海状のポリマー相、8…島状のポリマー相、9…自己組織化層、10,20,30…凹凸パターンが形成された磁気記録媒体、11…中間マスク層、12…磁気記録媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に磁気記録層を形成する工程と、
前記磁気記録層上に、アルミニウム及びアルミニウム化合物のうち1つからなる金属剥離層を形成する工程と、
前記金属剥離層上にマスク層を形成する工程と、
前記マスク層に凹凸パターンを設ける工程と、
前記凹凸パターンを金属剥離層に転写する工程と、
前記凹凸パターンを磁気記録層に転写する工程と、
アルカリ溶液を用いて前記金属剥離層を除去する工程とを具備することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記アルミニウム化合物は、窒素、ホウ素、珪素、及び炭素からなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記アルミニウム化合物は、窒素およびホウ素を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記アルミニウム化合物は、炭素およびホウ素を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記マスク層は、第1の層及び該第1の層とは異なる材料からなる第2の層を含む多層体で構成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記磁気記録層と金属剥離層との間に中間マスク層を形成する工程と、
前記凹凸パターンを金属剥離層に転写する工程と前記凹凸パターンを磁気記録層に転写する工程の間に、前記凹凸パターンを前記中間マスク層に転写する工程と、
前記金属剥離層を除去する工程の後、エッチングにより前記中間マスク層を除去する工程とをさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記マスク層の凹凸パターンは、少なくとも2つのポリマー鎖を有するブロックコポリマーあるいはランダムコポリマーからなる自己組織化膜を用いて転写されることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ溶液は有機アルカリであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ溶液は無機アルカリであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
前記請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法により作製されることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項1】
基板上に磁気記録層を形成する工程と、
前記磁気記録層上に、アルミニウム及びアルミニウム化合物のうち1つからなる金属剥離層を形成する工程と、
前記金属剥離層上にマスク層を形成する工程と、
前記マスク層に凹凸パターンを設ける工程と、
前記凹凸パターンを金属剥離層に転写する工程と、
前記凹凸パターンを磁気記録層に転写する工程と、
アルカリ溶液を用いて前記金属剥離層を除去する工程とを具備することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記アルミニウム化合物は、窒素、ホウ素、珪素、及び炭素からなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記アルミニウム化合物は、窒素およびホウ素を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記アルミニウム化合物は、炭素およびホウ素を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記マスク層は、第1の層及び該第1の層とは異なる材料からなる第2の層を含む多層体で構成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記磁気記録層と金属剥離層との間に中間マスク層を形成する工程と、
前記凹凸パターンを金属剥離層に転写する工程と前記凹凸パターンを磁気記録層に転写する工程の間に、前記凹凸パターンを前記中間マスク層に転写する工程と、
前記金属剥離層を除去する工程の後、エッチングにより前記中間マスク層を除去する工程とをさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記マスク層の凹凸パターンは、少なくとも2つのポリマー鎖を有するブロックコポリマーあるいはランダムコポリマーからなる自己組織化膜を用いて転写されることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ溶液は有機アルカリであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ溶液は無機アルカリであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
前記請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法により作製されることを特徴とする磁気記録媒体。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−58294(P2013−58294A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197480(P2011−197480)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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